本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。さらに組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。また、本明細書において「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構成に加え、一部に形成されている形状の構成も包含される。
<太陽電池素子>
本発明の太陽電池素子は、受光面及び前記受光面とは反対側の裏面を有し、前記裏面にp型拡散領域及びn型拡散領域を有する半導体基板と、前記半導体基板の裏面の一部又は全部の領域に設けられ、Nb2O5、Ta2O5、V2O5、Y2O3及びHfO2からなる群より選択される1種以上(以下、「特定金属酸化物」ともいい、それぞれの金属酸化物に含まれる金属元素を「特定金属元素」ともいう)を含有するパッシベーション層と、前記p型拡散領域の少なくとも一部に設けられる第一の金属電極と、前記n型拡散領域の少なくとも一部に設けられる第二の金属電極と、を含む。
半導体基板の裏面に電極及び特定金属酸化物を含有するパッシベーション層を有する太陽電池素子は、変換効率に優れ且つ経時的な太陽電池特性の低下が抑制される。これは例えば、パッシベーション層が特定金属酸化物を含有することで、優れたパッシベーション効果が発現し、半導体基板内のキャリアの寿命が長くなるため、高効率化が可能となるためと考えられる。また、特定金属酸化物を含有することでパッシベーション層のパッシベーション効果が維持され、経時的な太陽電池特性(例えば、変換効率)の低下を抑制することができるためと考えられる。ここで経時的な太陽電池特性の低下は、恒温恒湿槽中で所定の時間、放置した後の太陽電池特性で評価することができる。
半導体基板の裏面に電極及び特定金属酸化物を含有するパッシベーション層を有する太陽電池素子が変換効率に優れ且つ経時的な太陽電池特性の低下が抑制される理由については、以下のように考えることができる。すなわち、特定金属酸化物は固定電荷を有する化合物である。半導体基板表面に固定電荷を有する化合物が存在することにより、バンドベンディングが生じてキャリアの再結合が抑制されると考えることができる。また、固定電荷が小さいまたは固定電荷を有さない化合物であっても、半導体基板表面の欠陥を修復する機能を持つなどのパッシベーション効果を示していればよい。
半導体基板表面に存在する化合物の固定電荷は、CV法(Capacitance Voltage Measurement)で評価することが可能である。後述するパッシベーション層形成用組成物を熱処理して形成されたパッシベーション層の表面準位密度をCV法で評価すると、ALD法又はCVD法で形成されたパッシベーション層の場合と比べ、大きな値となる場合がある。しかし本発明の太陽電池素子が有するパッシベーション層は、電界効果が大きく少数キャリアの濃度が低下して表面ライフタイムτsが大きくなる。そのため、表面準位密度は相対的に問題にはならない。
本明細書において、半導体基板のパッシベーション効果は、パッシベーション層が形成された半導体基板内の少数キャリアの実効ライフタイムを、日本セミラボ株式会社、WT−2000PVN等の装置を用いて、反射マイクロ波導電減衰法によって測定することで評価することができる。
ここで、実効ライフタイムτは、半導体基板内部のバルクライフタイムτbと、半導体基板表面の表面ライフタイムτsとによって下記式(A)のように表される。半導体基板表面の表面準位密度が小さい場合にはτsが長くなる結果、実効ライフタイムτが長くなる。また、半導体基板内部のダングリングボンド等の欠陥が少なくなっても、バルクライフタイムτbが長くなって実効ライフタイムτが長くなる。すなわち、実効ライフタイムτの測定によってパッシベーション層と半導体基板との間の界面特性、ダングリングボンド等の半導体基板の内部特性を評価することができる。
1/τ=1/τb+1/τs (A)
尚、実効ライフタイムが長いほど少数キャリアの再結合速度が遅いことを示す。また実効ライフタイムが長い半導体基板を用いて太陽電池素子を構成することで、変換効率が向上する。
太陽電池素子は、受光面及び前記受光面とは反対側の裏面を有し、前記裏面にp型拡散領域及びn型拡散領域を有する半導体基板を含む。前記半導体基板としては、シリコン、ゲルマニウム等にp型不純物又はn型不純物をドープ(拡散)したものが挙げられる。前記半導体基板は、p型半導体基板であっても、n型半導体基板であってもよい。
半導体基板の厚みは特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば50μm〜1000μmとすることができ、75μm〜750μmであることが好ましい。半導体基板の形状及び大きさは特に制限されず、例えば、一辺が125mm〜156mmの正方形とすることができる。
半導体基板は裏面にp型拡散領域とn型拡散領域とを有する。p型拡散領域及びn型拡散領域の形状及び大きさは特に制限されず、目的等に応じて適宜選択することができる。p型拡散領域とn型拡散領域とは、離間して配置されていることが好ましい。
p型拡散領域及びn型拡散領域の数及び形状は、本発明の効果が達成される数及び形状であれば特に制限されない。例えば、p型拡散領域とn型拡散領域とがそれぞれ長辺及び短辺を有する複数の矩形部分を有していることが好ましい。なお、前記矩形部分の短辺及び長辺はそれぞれ全体が直線であっても、直線ではない部分が含まれていてもよい。
p型拡散領域とn型拡散領域とがそれぞれ長辺及び短辺を有する複数の矩形部分を有している場合、p型拡散領域の矩形部分及びn型拡散領域の矩形部分の配置は特に制限されず、目的等に応じて適宜選択することができる。例えば、前記p型拡散領域が有する複数の矩形部分は、前記複数の矩形部分の長辺の方向が前記n型拡散領域が有する複数の矩形部分の長辺の方向に沿うように配置されていることが好ましく、複数のp型拡散領域の矩形部分と複数のn型拡散領域の矩形部分とが交互に配置されていることがより好ましい。
p型拡散領域とn型拡散領域とがそれぞれ長辺及び短辺を有する複数の矩形部分を有している場合、p型拡散領域の複数の矩形部分が連結していてもよい。例えば、p型拡散領域の複数の矩形部分の長辺方向の一端が接するように配置された矩形状のp型拡散領域によって連結していてもよい。同様に、n型拡散領域の複数の矩形部分が連結していてもよい。例えば、n型拡散領域の複数の矩形部分の長辺方向の一端が接するように配置された矩形状のn型拡散領域によって連結していてもよい。
図1は半導体基板の裏面に設けられたp型拡散領域及びn型拡散領域の形状及び配置の一例を模式的に示す平面図である。
図1に示すように、p型拡散領域14はn型拡散領域12と離間して配置されている。p型拡散領域14は、短辺14aと長辺14bとを有する複数の矩形部分を有しており、複数の矩形部分はそれぞれの長辺14bの方向の一端に配置された矩形状のp型拡散領域14cで連結されている。
n型拡散領域12も短辺12aと長辺12bとを有する複数の矩形部分を有しており、複数の矩形部分はそれぞれの長辺12bの方向の一端に配置された矩形状のn型拡散領域12cで連結されている。
図1では、p型拡散領域14の複数の矩形部分を連結している矩形部分14cは、n型拡散領域12の複数の矩形部分を連結している矩形部分12cとは長辺方向にみて逆側に配置されている。これにより、p型拡散領域14の複数の矩形部分及びn型拡散領域12の複数の矩形部分をそれぞれ連結しつつ、p型拡散領域14の複数の矩形部分とn型拡散領域12の複数の矩形部分とを交互に配置することができる。このような裏面電極構造は「交差指型」とも称されている。また、図1に示す構造を有する太陽電池素子としては、バックコンタクト型の太陽電池素子が挙げられる。
裏面にp型拡散領域及びn型拡散領域を有する半導体基板がp型半導体基板である場合、変換効率とキャリアの長寿命化の観点から、p型拡散領域に含有されるp型不純物の濃度はp型半導体基板にもともと含有されるp型不純物の濃度よりも高いことが好ましい。例えば、p型拡散領域に含有されるp型不純物の濃度が1018atoms/cm3以上であり、p型半導体基板にもともと含有されるp型不純物の濃度が105atoms/cm3以上1017atoms/cm3以下であることが好ましく、p型拡散領域に含有されるp型不純物の濃度が1019atoms/cm3以上1022atoms/cm3以下であり、p型半導体基板にもともと含有されるp型不純物の濃度が1010atoms/cm3以上1016atoms/cm3以下であることがより好ましい。
裏面にp型拡散領域及びn型拡散領域を有する半導体基板がn型半導体基板である場合、変換効率とキャリアの長寿命化の観点から、n型拡散領域に含有されるn型不純物の濃度はn型半導体基板にもともと含有されるn型不純物の濃度よりも高いことが好ましい。例えば、n型拡散領域に含有されるn型不純物の濃度が1018atoms/cm3以上であり、n型半導体基板にもともと含有されるn型不純物の濃度が105atoms/cm3以上1017atoms/cm3以下であることが好ましく、n型拡散領域に含有されるn型不純物の濃度が1019atoms/cm3以上1022atoms/cm3以下であり、n型半導体基板にもともと含有されるn型不純物の濃度が1010atoms/cm3以上1016atoms/cm3以下であることがより好ましい。
半導体基板の裏面のp型拡散領域の少なくとも一部には第一の金属電極が設けられ、n型拡散領域の少なくとも一部には第二の金属電極が設けられる。第一の金属電極及び第二の金属電極の材質は特に制限されず、銀、銅、アルミニウム等が挙げられる。第一の金属電極及び第二の金属電極の厚さは特に制限されず、導電性及び均質性の観点からは0.1μm〜50μmであることが好ましい。
第一の金属電極の形状及び大きさは特に制限されない。例えば、第一の金属電極が形成される領域の大きさは、p型拡散領域の全面積中に50%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
第二の金属電極の形状及び大きさは特に制限されない。例えば、第二の金属電極が形成される領域の大きさは、n型拡散領域の全面積中に50%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
第一の金属電極は、電極を形成し、かつ半導体基板中にアルミニウム原子を拡散させてp+型拡散層を形成できる観点から、アルミニウムを含むことが好ましく、その厚さは0.1μm〜50μmであることが好ましい。
第一の金属電極及び第二の金属電極は、通常用いられる方法で製造することができる。例えば、半導体基板の所望の領域に、銀ペースト、アルミニウムペースト、銅ペースト等の電極形成用ペーストを付与し、必要に応じて熱処理することで製造することができる。
太陽電池素子は、更に必要に応じて半導体基板の受光面上で電流を集める電極を有していてもよい。受光面上で電流を集める電極の材質、形状及び厚さは特に制限されず、銀電極、銅電極、アルミニウム電極等が挙げられ、厚さは0.1μm〜50μmであることが好ましい。受光面上に設けられる電極は、半導体基板を貫通するスルーホール電極を介して裏面の第一の金属電極又は第二の金属電極と接続されていてもよい。受光面上に設けられる電極は、通常用いられる方法で製造することができる。例えば、半導体基板の所望の領域に、銀ペースト、アルミニウムペースト、銅ペースト等の電極形成用ペーストを付与し、必要に応じて熱処理することで製造することができる。
本発明の太陽電池素子は、半導体基板の裏面の一部又は全部の領域に、特定金属酸化物を含有するパッシベーション層を有する。
パッシベーション層が半導体基板の裏面の一部の領域に設けられる場合、パッシベーション層は、半導体基板の裏面の領域面積の50%以上に設けられることが好ましく、80%以上に設けられることがより好ましい。
また例えばパッシベーション層は、半導体基板の裏面に加えて、半導体基板の側面の一部又は全部に設けられていてもよく、受光面の一部又は全部に設けられていてもよい。
半導体基板の裏面において、パッシベーション層が形成される領域の面方向における形状及び大きさは特に制限されず、目的等に応じて適宜選択することができる。パッシベーション層が半導体基板の裏面の一部に形成される場合、例えば、第一の金属電極及び第二の金属電極が形成される領域以外の領域の一部又は全部に少なくともパッシベーション層が形成されていることが好ましく、第一の金属電極及び第二の金属電極が形成される領域以外の全領域に少なくともパッシベーション層が形成されていることがより好ましい。
パッシベーション効果をより充分に得る観点からは、電極とパッシベーション層との間に電極又はパッシベーション層のいずれも存在していない領域が存在しないことが更に好ましい。この場合、電極とパッシベーション膜とが重なり合う領域が存在してもよい。
パッシベーション層中に含有される特定金属酸化物の含有率は、充分なパッシベーション効果を得る観点から、0.1質量%〜100質量%であることが好ましく、1質量%〜100質量%であることがより好ましく、10質量%〜100質量%であることが更に好ましい。
パッシベーション層中に含有される特定金属酸化物の含有率は、以下のようにして測定できる。すなわち、原子吸光分析法、誘導結合プラズマ発光分光分析法、熱重量分析法、X線光電分光法等を用いて、熱重量分析法から無機物の割合を算出する。次いで原子吸光分析法、誘導結合プラズマ発光分光分析法等で無機物中の特定金属元素を含む化合物の割合を算出し、更にX線光電分光法、X線吸収分光法等で特定金属元素を含む化合物中の特定金属酸化物の割合を算出することで、特定金属酸化物の含有率を得ることができる。
パッシベーション層は、特定金属酸化物以外の金属酸化物を更に含んでいてもよい。そのような金属酸化物としては、特定金属酸化物と同様に固定電荷を有する化合物が好ましく、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ガリウム、酸化ジルコニウム、酸化ホウ素、酸化インジウム、酸化リン、酸化亜鉛、酸化ランタン、酸化プラセオジム、酸化ネオジム、酸化プロメチウム、酸化サマリウム、酸化ユウロピウム、酸化ガドリニウム、酸化テルビウム、酸化ジスプロシウム、酸化ホルミウム、酸化エルビウム、酸化ツリウム、酸化イッテルビウム、酸化ルテチウム等を挙げることができる。パッシベーション層が特定金属酸化物以外の金属酸化物としては、高いパッシベーション効果及び安定したパッシベーション効果を得る観点からは酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム及び酸化ネオジムが好ましく、酸化アルミニウムがより好ましい。
パッシベーション層が特定金属酸化物以外の金属酸化物を含む場合、その含有率はパッシベーション層の99.9質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。パッシベーション層中に含有される特定金属酸化物以外の金属酸化物の含有率は、上述の特定金属酸化物の含有率の測定と同様にして測定することができる。
<パッシベーション層形成用組成物>
本発明の太陽電池素子のパッシベーション層は、パッシベーション層形成用組成物の熱処理物であることが好ましい。前記パッシベーション層形成用組成物は、熱処理することにより特定金属酸化物を含むパッシベーション層を形成できるものであれば特に制限されず、特定金属酸化物そのものを含んでいても、特定金属元素を含む金属アルコキシド等の特定金属酸化物の前駆体を含んでいてもよい。以下、特定金属酸化物及びその前駆体を特定金属化合物ともいう。
特定金属化合物は、特定金属酸化物そのもの及び下記一般式(I)で表される化合物(以下、式(I)化合物ともいう)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
M(OR1)m (I)
式中、MはNb、Ta、V、Y及びHfからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を含む。R1はそれぞれ独立して炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜14のアリール基を表す。mは1〜5の整数を表す。
一般式(I)において、MはNb、Ta、V、Y及びHfからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を含む。パッシベーション効果、パッシベーション層形成用組成物の保存安定性、及びパッシベーション層形成用組成物を調製する際の作業性の観点から、MはNb、Ta又はYであることが好ましい。
一般式(I)において、R1はそれぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜14のアリール基を表し、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜9のアリール基であることが好ましい。R1で表されるアルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。R1で表されるアルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、2−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、フェニル基等を挙げることができる。R1で表されるアリール基として具体的には、フェニル基を挙げることができる。R1で表されるアルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよく、アルキル基の置換基としては、ハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン基、ニトロ基等が挙げられる。アリール基の置換基としては、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン基、ニトロ基等が挙げられる。
中でもR1は、保存安定性とパッシベーション効果の観点から、炭素数1〜8の無置換のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜4の無置換のアルキル基であることがより好ましい。
一般式(I)において、mは1〜5の整数を表す。MがNbである場合にはmが5であることが好ましく、MがTaである場合にはmが5であることが好ましく、MがVOである場合にはmが3であることが好ましく、MがYである場合にはmが3であることが好ましく、MがHfである場合にはmが4であることが好ましい。
一般式(I)で表される化合物は、パッシベーション効果の観点から、MがNb、Ta又はYであることが好ましく、保存安定性とパッシベーション効果の観点から、R1が炭素数1〜4の無置換のアルキル基であることがより好ましく、保存安定性の観点から、mが1〜5の整数であることが好ましい。また、パッシベーション層の固定電荷密度を負にする観点からは、Mは、Nb、Ta、V及びHfからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を含むことが好ましく、Nb、Ta、VO及びHfからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
式(I)化合物は、固体であっても液体であってもよい。パッシベーション層形成用組成物の保存安定性、及び後述する一般式(II)で表わされる有機アルミニウム化合物を併用する場合はそれとの混合性の観点から、式(I)化合物は、液体であることが好ましい。
式(I)化合物としては、ニオブメトキシド、ニオブエトキシド、ニオブイソプロポキシド、ニオブn−プロポキシド、ニオブn−ブトキシド、ニオブt−ブトキシド、ニオブイソブトキシド、タンタルメトキシド、タンタルエトキシド、タンタルイソプロポキシド、タンタルn−プロポキシド、タンタルn−ブトキシド、タンタルt−ブトキシド、タンタルイソブトキシド、イットリウムメトキシド、イットリウムエトキシド、イットリウムイソプロポキシド、イットリウムn−プロポキシド、イットリウムn−ブトキシド、イットリウムt−ブトキシド、イットリウムイソブトキシド、バナジウムメトキシドオキシド、バナジウムエトキシドオキシド、バナジウムイソプロポキシドオキシド、バナジウムn−プロポキシドオキシド、バナジウムn−ブトキシドオキシド、バナジウムt−ブトキシドオキシド、バナジウムイソブトキシドオキシド、ハフニウムメトキシド、ハフニウムエトキシド、ハフニウムイソプロポキシド、ハフニウムn−プロポキシド、ハフニウムn−ブトキシド、ハフニウムt−ブトキシド、ハフニウムイソブトキシド等を挙げることができ、中でもニオブエトキシド、ニオブn−プロポキシド、ニオブn−ブトキシド、タンタルエトキシド、タンタルn−プロポキシド、タンタルn−ブトキシド、イットリウムイソプロポキシド及びイットリウムn−ブトキシドが好ましい。負の固定電荷密度を得る観点からは、ニオブエトキシド、ニオブn−プロポキシド、ニオブn−ブトキシド、タンタルエトキシド、タンタルn−プロポキシド、タンタルn−ブトキシド、バナジウムエトキシドオキシド、バナジウムn−プロポキシドオキシド、バナジウムn−ブトキシドオキシド、ハフニウムエトキシド、ハフニウムn−プロポキシド及びハフニウムn−ブトキシドが好ましい。
式(I)化合物は、調製したものを用いても、市販品を用いてもよい。市販品としては、株式会社高純度化学研究所のペンタメトキシニオブ、ペンタエトキシニオブ、ペンタ−i−プロポキシニオブ、ペンタ−n−プロポキシニオブ、ペンタ−i−ブトキシニオブ、ペンタ−n−ブトキシニオブ、ペンタ−2−ブトキシニオブ、ペンタメトキシタンタル、ペンタエトキシタンタル、ペンタ−i−プロポキシタンタル、ペンタ−n−プロポキシタンタル、ペンタ−i−ブトキシタンタル、ペンタ−n−ブトキシタンタル、ペンタ−2−ブトキシタンタル、ペンタ−t−ブトキシタンタル、バナジウム(V)トリメトキシドオキシド、バナジウム(V)トリエトキシオキシド、バナジウム(V)トリ−i−プロポキシドオキシド、バナジウム(V)トリ−n−プロポキシドオキシド、バナジウム(V)トリ−i−ブトキシドオキシド、バナジウム(V)トリ−n−ブトキシドオキシド、バナジウム(V)トリ−2−ブトキシドオキシド、バナジウム(V)トリ−t−ブトキシドオキシド、トリ−i−プロポキシイットリウム、トリ−n−ブトキシイットリウム、テトラメトキシハフニウム、テトラエトキシハフニウム、テトラ−i−プロポキシハフニウム、テトラ−t−ブトキシハフニウム;北興化学工業株式会社のペンタエトキシニオブ、ペンタエトキシタンタル、ペンタブトキシタンタル、イットリウム−n−ブトキシド、ハフニウム−t−ブトキシド;日亜化学工業株式会社のバナジウムオキシトリエトキシド、バナジウムオキシトリノルマルプロポキシド、バナジウムオキシトリノルマルブトキシド、バナジウムオキシトリイソブトキシド、バナジウムオキシトリセカンダリーブトキシド等を挙げることができる。
式(I)化合物を調製する場合、その調製方法としては、式(I)化合物に含まれる金属元素(M)のハロゲン化物とアルコールとを不活性有機溶媒の存在下で反応させ、さらにハロゲンを引き抜くためにアンモニア又はアミン化合物を添加する方法(例えば、特開昭63−227593号公報、特開平3−291247号公報等を参照)など、既知の製法を用いることができる。
前記パッシベーション層形成用組成物に含まれる式(I)化合物の含有率は、必要に応じて適宜選択することができる。式(I)化合物の含有率は、保存安定性とパッシベーション効果の観点から、パッシベーション層形成用組成物中に0.1質量%〜80質量%とすることができ、0.5質量%〜70質量%であることが好ましく、1質量%〜60質量%であることがより好ましく、1質量%〜50質量%であることが更に好ましい。
前記パッシベーション層形成用組成物が式(I)化合物を含む場合、キレート試薬(キレート化剤)を添加してもよい。キレート試薬としては、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、ビピリジン、ヘム、ナフチリジン、ベンズイミダゾリルメチルアミン、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、酒石酸、マレイン酸、フタル酸などのジカルボン酸化合物、β−ジケトン化合物、β−ケトエステル化合物、及びマロン酸ジエステル化合物を例示することができる。化学的安定性の観点からは、β−ジケトン化合物及びβ−ケトエステル化合物が好ましい。
β−ジケトン化合物として具体的には、アセチルアセトン、3−メチル−2,4−ペンタンジオン、2,3−ペンタンジオン、3−エチル−2,4−ペンタンジオン、3−ブチル−2,4−ペンタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオン、6−メチル−2,4−ヘプタンジオン等を挙げることができる。
β−ケトエステル化合物として具体的には、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピル、アセト酢酸イソブチル、アセト酢酸ブチル、アセト酢酸t−ブチル、アセト酢酸ペンチル、アセト酢酸イソペンチル、アセト酢酸ヘキシル、アセト酢酸n−オクチル、アセト酢酸ヘプチル、アセト酢酸3−ペンチル、2−アセチルヘプタン酸エチル、2−ブチルアセト酢酸エチル、4,4−ジメチル−3−オキソ吉草酸エチル、4−メチル−3−オキソ吉草酸エチル、2−エチルアセト酢酸エチル、ヘキシルアセト酢酸エチル、4−メチル−3−オキソ吉草酸メチル、アセト酢酸イソプロピル、3−オキソヘキサン酸エチル、3−オキソ吉草酸エチル、3−オキソ吉草酸メチル、3−オキソヘキサン酸メチル、2−メチルアセト酢酸エチル、3−オキソヘプタン酸エチル、3−オキソヘプタン酸メチル、4,4−ジメチル−3−オキソ吉草酸メチル等を挙げることができる。
マロン酸ジエステル化合物として具体的には、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジプロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジブチル、マロン酸ジ−t−ブチル、マロン酸ジヘキシル、マロン酸t−ブチルエチル、メチルマロン酸ジエチル、エチルマロン酸ジエチル、イソプロピルマロン酸ジエチル、ブチルマロン酸ジエチル、2−ブチルマロン酸ジエチル、イソブチルマロン酸ジエチル、1−メチルブチルマロン酸ジエチル等を挙げることができる。
式(I)化合物がキレート構造を有する場合、そのキレート構造の存在は、通常用いられる分析方法で確認することができる。例えば、赤外分光スペクトル、核磁気共鳴スペクトル、融点等を用いて確認することができる。
式(I)化合物は、加水分解及び脱水縮重合させた状態で使用してもよい。加水分解及び脱水縮重合させるには、水及び触媒が存在する状態で反応を進行させることができ、加水分解及び脱水縮重合させた後は、水及び触媒を留去してもよい。触媒としては、塩酸、硝酸、硫酸、ホウ酸、リン酸、フッ化水素酸等の無機酸;及び蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、オレイン酸、リノール酸、サリチル酸、安息香酸、フタル酸、蓚酸、乳酸、コハク酸等の有機酸を例示することができる。また、触媒として、アンモニア、アミン等の塩基を加えてもよい。
前記パッシベーション層形成用組成物は、式(I)化合物以外の特定金属酸化物の前駆体を含んでいてもよい。特定金属酸化物の前駆体は、熱処理により特定金属酸化物になるものであれば特に制限されない。具体的には、ニオブ酸、塩化ニオブ、一酸化ニオブ、炭化ニオブ、水酸化ニオブ、タンタル酸、塩化タンタル、五臭化タンタル、オキシ塩化バナジウム、三酸化二バナジウム、オキソビス(2,4−ペンタンジオナト)バナジウム、塩化イットリウム、硝酸イットリウム、シュウ酸イットリウム、ステアリン酸イットリウム、炭酸イットリウム、ナフテン酸イットリウム、プロピオン酸イットリウム、硝酸イットリウム、オクチル酸イットリウム、塩化ハフニウム、テトラキス(2,4−ペンタンジオナト)ハフニウム等を例示することができる。
前記パッシベーション層形成用組成物は、特定金属化合物以外の金属酸化物又はその前駆体を更に含んでいてもよい。そのような金属酸化物又はその前駆体としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ガリウム、酸化ジルコニウム、酸化ホウ素、酸化インジウム、酸化リン、酸化亜鉛、酸化ランタン、酸化プラセオジム、酸化ネオジム、酸化プロメチウム、酸化サマリウム、酸化ユウロピウム、酸化ガドリニウム、酸化テルビウム、酸化ジスプロシウム、酸化ホルミウム、酸化エルビウム、酸化ツリウム、酸化イッテルビウム、酸化ルテチウム、及びこれらの前駆体を挙げることができる。パッシベーション効果の安定性の観点からは、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ネオジム又はこれらの前駆体が好ましく、パッシベーション効果の高さの観点からは酸化アルミニウム又はその前駆体がより好ましい。
前記パッシベーション層形成用組成物は、特定金属化合物以外に、更に酸化アルミニウム及びその前駆体からなる群より選択される1種以上を含むことが好ましい。酸化アルミニウムの前駆体としては、下記一般式(II)で表される化合物(以下、有機アルミニウム化合物ともいう)が好ましい。
前記有機アルミニウム化合物は、アルミニウムアルコキシド、アルミニウムキレート等と呼ばれる化合物である。Nippon Seramikkusu Kyokai Gakujitsu Ronbunshi、97(1989)369−399にも記載されているように、前記有機アルミニウム化合物は熱処理により酸化アルミニウム(Al2O3)となる。
一般式(II)中、R2はそれぞれ独立して炭素数1〜8のアルキル基を表す。nは0〜3の整数を表す。X2及びX3はそれぞれ独立して酸素原子又はメチレン基を表す。R3、R4及びR5はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。
一般式(II)において、R2はそれぞれ独立して炭素数1〜8のアルキル基を表し、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましい。R2で表されるアルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。R2で表されるアルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、2−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、エチルヘキシル基等を挙げることができる。中でもR2で表されるアルキル基は、保存安定性とパッシベーション効果の観点から、炭素数1〜8の無置換のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜4の無置換のアルキル基であることがより好ましい。
一般式(II)において、nは0〜3の整数を表わす。nは保存安定性の観点から、1〜3の整数であることが好ましく、1又は3であることがより好ましい。X2及びX3はそれぞれ独立して酸素原子又はメチレン基を表す。保存安定性の観点から、X2及びX3の少なくとも一方は酸素原子であることが好ましい。
一般式(II)において、R3、R4及びR5はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。R3、R4及びR5で表されるアルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。R3、R4及びR5で表されるアルキル基は、置換基を有していても、無置換であってもよく、無置換であることが好ましい。R3、R4及びR5で表されるアルキル基はそれぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基であり、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましい。R3、R4及びR5で表されるアルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、2−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基等を挙げることができる。中でも保存安定性とパッシベーション効果の観点から、一般式(II)におけるR3及びR4はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜8の無置換のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1〜4の無置換のアルキル基であることがより好ましい。
また一般式(II)におけるR5は、保存安定性とパッシベーション効果の観点から、水素原子又は炭素数1〜8の無置換のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1〜4の無置換のアルキル基であることがより好ましい。
一般式(II)で表される有機アルミニウム化合物は、保存安定性の観点から、nが1〜3の整数であり、R5がそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である化合物であることが好ましい。
一般式(II)で表される有機アルミニウム化合物は、保存安定性とパッシベーション効果の観点から、nが0であり、R2がそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基である化合物、並びにnが1〜3であり、R2がそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基であり、X2及びX3の少なくとも一方が酸素原子であり、R3及びR4がそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R5が水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
更に、一般式(II)で表される有機アルミニウム化合物は、nが0であり、R2がそれぞれ独立して炭素数1〜4の無置換のアルキル基である化合物、並びにnが1〜3であり、R2がそれぞれ独立して炭素数1〜4の無置換のアルキル基であり、X2及びX3の少なくとも一方が酸素原子であり、前記酸素原子に結合するR3又はR4が炭素数1〜4のアルキル基であり、X2又はX3がメチレン基の場合、前記メチレン基に結合するR3又はR4が水素原子であり、R5が水素原子である化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
一般式(II)で表され、nが0の有機アルミニウム化合物であるアルミニウムトリアルコキシドとして具体的には、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリ2−ブトキシアルミニウム、モノ2−ブトキシ−ジイソプロポキシアルミニウム、トリt−ブトキシアルミニウム、トリn−ブトキシアルミニウム等を挙げることができる。
一般式(II)で表され、nが1〜3である有機アルミニウム化合物として具体的には、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート、トリス(エチルアセトアセタト)アルミニウム等を挙げることができる。
一般式(II)で表され、nが1〜3である有機アルミニウム化合物は、調製したものを用いても、市販品を用いてもよい。市販品としては例えば、川研ファインケミカル株式会社の商品名、ALCH、ALCH−50F、ALCH−75、ALCH−TR、ALCH−TR−20等を挙げることができる。
前記有機アルミニウム化合物は、nが1〜3である、すなわちアルミニウムアルコキシド構造に加えてアルミニウムキレート構造を有していることが好ましい。nが0である、すなわちアルミニウムアルコキシド構造の状態でパッシベーション層形成用組成物中に存在する場合には、キレート試薬(キレート化剤)をパッシベーション層形成用組成物に添加することが好ましい。キレート試薬の例としては、上述のキレート試薬の例が挙げられる。
前記有機アルミニウム化合物がキレート構造を有する場合、そのキレート構造の存在は、通常用いられる分析方法で確認することができる。例えば、赤外分光スペクトル、核磁気共鳴スペクトル、融点等を用いて確認することができる。
アルミニウムアルコキシドとキレート試薬とを併用する、又はキレート化した有機アルミニウム化合物を用いることで、有機アルミニウム化合物の熱的及び化学的安定性が向上し、熱処理した際の酸化アルミニウムへの転移が抑制されると考えられる。結果として、熱力学的に安定な結晶状態の酸化アルミニウムへの転移が抑制され、アモルファス状態の酸化アルミニウムが形成され易くなると考えられる。
なお、形成されたパッシベーション層中の金属酸化物の状態はX線回折スペクトル(XRD、X−ray diffraction)を測定することにより確認できる。例えば、XRDが特定の反射パターンを示さないことでアモルファス構造であることが確認できる。パッシベーション層形成用組成物が有機アルミニウム化合物を含む場合、これを熱処理して得られるパッシベーション層中の酸化アルミニウムはアモルファス構造であることが好ましい。酸化アルミニウムがアモルファス状態であると、アルミニウム欠損又は酸素欠損が生じやすく、パッシベーション層中に固定電荷が発生しやすく、大きなパッシベーション効果が得られやすい。
一般式(II)で表され、nが1〜3である有機アルミニウム化合物は、前記アルミニウムトリアルコキシドと、キレート試薬とを混合することで調製することができる。キレート試薬としては、2つのカルボニル基を有する特定構造の化合物を挙げることができる。具体的には、前記アルミニウムトリアルコキシドと、2つのカルボニル基を有する特定構造の化合物とを混合すると、アルミニウムトリアルコキシドのアルコキシド基の少なくとも一部が特定構造の化合物と置換して、アルミニウムキレート構造を形成する。このとき必要に応じて、溶媒が存在してもよく、また加熱処理や触媒の添加を行ってもよい。アルミニウムアルコキシド構造の少なくとも一部がアルミニウムキレート構造に置換されることで、有機アルミニウム化合物の加水分解や重合反応に対する安定性が向上し、これを含むパッシベーション層形成用組成物の保存安定性がより向上する。
前記2つのカルボニル基を有する特定構造の化合物としては、反応性と保存安定性の観点から、β−ジケトン化合物、β−ケトエステル化合物及びマロン酸ジエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。β−ジケトン化合物、β−ケトエステル化合物及びマロン酸ジエステルの具体例としては、キレート試薬として上述した化合物を挙げることができる。
前記有機アルミニウム化合物がアルミニウムキレート構造を有する場合、アルミニウムキレート構造の数は1〜3であれば特に制限されない。中でも、保存安定性の観点から、1又は3であることが好ましく、溶解度の観点から、1であることがより好ましい。アルミニウムキレート構造の数は、例えば前記アルミニウムトリアルコキシドと、アルミニウムとキレートを形成し得る化合物とを混合する比率を適宜調整することで制御することができる。また市販のアルミニウムキレート化合物から所望の構造を有する化合物を適宜選択してもよい。
一般式(II)で表される有機アルミニウム化合物のうち、パッシベーション効果及び必要に応じて添加される溶剤との相溶性の観点から、具体的にはアルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート及びトリイソプロポキシアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレートを用いることがより好ましい。
有機アルミニウム化合物は、液状であっても固体であってもよく、特に制限はない。パッシベーション効果と保存安定性の観点から、常温(10℃〜40℃程度)での安定性や、溶解性又は分散性が良好な有機アルミニウム化合物を用いることで、形成されるパッシベーション層の均一性がより向上し、所望のパッシベーション効果を安定的に得ることができる。
前記パッシベーション層形成用組成物が、Al2O3及び前記有機アルミニウム化合物からなる群より選択される1種以上のアルミニウム化合物を含む場合、前記パッシベーション層形成用組成物中の前記アルミニウム化合物の総含有率は0.1質量%〜80質量%であることが好ましく、10〜70質量%であることが更に好ましい。パッシベーション効果の高さの観点からは、特定金属化合物及び前記アルミニウム化合物の総量中の前記アルミニウム化合物の合計の比率が0.1質量%以上99.9質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上99質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上95質量%以下であることが更に好ましい。
前記パッシベーション層形成用組成物が前記アルミニウム化合物を含む場合、パッシベーション層形成用組成物を熱処理して得られるパッシベーション層中の特定金属酸化物の組成としては、Nb2O5−Al2O3、Al2O3−Ta2O5、Al2O3−Y2O3、Al2O3−V2O5、Al2O3−HfO2等の二元系複合酸化物;Nb2O5−Al2O3−Ta2O5、Al2O3−Y2O3−Ta2O5、Nb2O5−Al2O3−V2O5、Al2O3−HfO2−Ta2O5等の三元系複合酸化物などが挙げられる。
パッシベーション効果の高さ及びパッシベーション効果の経時安定性の観点からは、前記パッシベーション層形成用組成物は、Nb2O5及び前記一般式(I)においてMがNbである化合物からなる群より選択される少なくとも1種のニオブ化合物を含むことが好ましい。また、パッシベーション層形成用組成物中の前記ニオブ化合物の総含有率が、Nb2O5換算で0.1質量%〜99.9質量%であることが好ましく、1質量%〜99質量%であることがより好ましく、5質量%〜90質量%であることが更に好ましい。Nb2O5及び前記一般式(I)においてMがNbである化合物からなる群より選択される少なくとも1種のニオブ化合物を含むパッシベーション層形成用組成物を熱処理して得られるパッシベーション層中の特定金属酸化物の組成としては、例えば、Nb2O5−Al2O3、Nb2O5−Ta2O5、Nb2O5−Y2O3、Nb2O5−V2O5、Nb2O5−HfO2等の二元系複合酸化物;Nb2O5−Al2O3−Ta2O5、Nb2O5−Y2O3−Ta2O5、Nb2O5−Al2O3−V2O5、Nb2O5−HfO2−Ta2O5等の三元系複合酸化物などが挙げられる。
特定金属化合物を含むパッシベーション層形成用組成物を半導体基板に付与して所望の形状の組成物層を形成し、前記組成物層を熱処理することで、優れたパッシベーション効果を有するパッシベーション層を所望の形状に形成することができる。
前記パッシベーション層形成用組成物を熱処理することにより優れたパッシベーション効果を有するパッシベーション層を形成できる理由について、発明者らは以下のように考えている。特定金属化合物を含有するパッシベーション層形成用組成物を熱処理することにより、金属原子や酸素原子の欠陥等が生じて半導体基板との界面付近に大きな固定電荷が発生すると考えられる。この大きな固定電荷が半導体基板の界面近辺で電界を発生することで少数キャリアの濃度を低下させることができ、結果的に界面でのキャリア再結合速度が抑制されるため、優れたパッシベーション効果を有するパッシベーション層を形成することができると考えられる。更に、前記パッシベーション層形成用組成物はゲル化等の不具合の発生が抑制されて経時的な保存安定性に優れると考えられる。
(液状媒体)
前記パッシベーション層形成用組成物は液状媒体を含むことが好ましい。パッシベーション層形成用組成物が液状媒体を含有することで、粘度の調整がより容易になり、付与性がより向上するとともにより均一なパッシベーション層を形成することができる。前記液状媒体は、特定金属化合物を溶解又は分散可能であれば特に制限されず、必要に応じて適宜選択することができる。
液状媒体として具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン等のケトン溶剤;ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチル−n−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチル−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、テトラエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、テトラエチレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチルエチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、テトラプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル等のエーテル溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸2−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸2−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸2−(2−ブトキシエトキシ)エチル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸ジエチレングリコールメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリエチレングリコール、酢酸イソアミル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸イソアミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、エチレングリコールメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のエステル溶剤;アセトニトリル、N−メチルピロリジノン、N−エチルピロリジノン、N−プロピルピロリジノン、N−ブチルピロリジノン、N−ヘキシルピロリジノン、N−シクロヘキシルピロリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、オクタン、エチルベンゼン、2−エチルヘキサン酸、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等の疎水性有機溶剤;メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、イソペンタノール、2−メチルブタノール、2−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、2−ヘキサノール、2−エチルブタノール、2−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、2−オクタノール、n−ノニルアルコール、n−デカノール、2−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、2−テトラデシルアルコール、2−ヘプタデシルアルコール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、イソボルニルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のアルコール溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールモノエーテル溶剤;テルピネン、テルピネオール、ミルセン、アロオシメン、リモネン、ジペンテン、ピネン、カルボン、オシメン、フェランドレン等のテルペン溶剤;水などが挙げられる。これらの液状媒体は1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
前記液状媒体は、半導体基板への付与性及びパターン形成性(パッシベーション層形成用組成物の付与時及び乾燥時のパターンの肥大化抑制)の観点から、テルペン溶剤、エステル溶剤及びアルコール溶剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、テルペン溶剤の少なくとも1種を含むことがより好ましい。
パッシベーション層形成用組成物が液状媒体を含む場合、その含有率は、付与性、パターン形成性、保存安定性を考慮して決定される。例えば液状媒体の含有率は、組成物の付与性とパターン形成性の観点から、パッシベーション層形成組成物の総質量中に5質量%〜98質量%であることが好ましく、10質量%〜95質量%であることがより好ましい。
(樹脂)
パッシベーション層形成用組成物は、樹脂の少なくとも1種を更に含むことが好ましい。樹脂を含むことで、前記パッシベーション層形成組成物が半導体基板上に付与されて形成される組成物層の形状安定性がより向上し、パッシベーション層を前記組成物層が形成された領域に、所望の形状で選択的に形成することがより容易になる。
樹脂の種類は特に制限されず、パッシベーション層形成用組成物を半導体基板上に付与する際に、良好なパターン形成ができる範囲に粘度調整が可能な樹脂であることが好ましい。樹脂として具体的には、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリスルホン、ポリアクリルアミドアルキルスルホン、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース等のセルロースエーテルなどのセルロース誘導体、ゼラチン及びゼラチン誘導体、澱粉及び澱粉誘導体、アルギン酸ナトリウム及びアルギン酸ナトリウム誘導体、キサンタン及びキサンタン誘導体、グアーガム及びグアーガム誘導体、スクレログルカン及びスクレログルカン誘導体、トラガカント及びトラガカント誘導体、デキストリン及びデキストリン誘導体、(メタ)アクリル酸樹脂、(メタ)アクリル酸エステル樹脂(例えば、アルキル(メタ)アクリレート樹脂、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート樹脂等)、ブタジエン樹脂、スチレン樹脂、シロキサン樹脂、これらの共重合体などを挙げることができる。これらの樹脂は1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
これらの樹脂の中でも、保存安定性とパターン形成性の観点から、酸性及び塩基性の官能基を有さない中性樹脂を用いることが好ましく、含有量が少量の場合においても容易に粘度及びチキソ性を調節できる観点から、セルロース誘導体を用いることがより好ましい。
樹脂の分子量は特に制限されず、パッシベーション層形成用組成物としての所望の粘度を鑑みて適宜調整することが好ましい。前記樹脂の重量平均分子量は、保存安定性とパターン形成性の観点から、1,000〜10,000,000であることが好ましく、3,000〜5,000,000であることがより好ましい。なお、樹脂の重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて測定される分子量分布から標準ポリスチレンの検量線を使用して換算して求められる。検量線は、標準ポリスチレンの5サンプルセット(PStQuick MP−H、PStQuick B[東ソー(株)製、商品名])を用いて3次式で近似する。GPCの測定条件を以下に示す。
装置:(ポンプ:L−2130型[株式会社日立ハイテクノロジーズ])
(検出器:L−2490型RI[株式会社日立ハイテクノロジーズ])
(カラムオーブン:L−2350[株式会社日立ハイテクノロジーズ])
カラム:Gelpack GL−R440 + Gelpack GL−R450 + Gelpack GL−R400M(計3本)(日立化成株式会社、商品名)
カラムサイズ:10.7mm(内径)×300mm
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:10mg/2mL
注入量:200μL
流量:2.05mL/分
測定温度:25℃
パッシベーション層形成用組成物が樹脂を含有する場合、パッシベーション層形成用組成物中の樹脂の含有率は、必要に応じて適宜選択することができる。例えば、パッシベーション層形成用組成物の総質量中に0.1質量%〜30質量%であることが好ましい。パターン形成をより容易にするようなチキソ性を発現させる観点から、前記含有率は1質量%〜25質量%であることがより好ましく、1.5質量%〜20質量%であることが更に好ましく、1.5質量%〜10質量%であることが更により好ましい。
パッシベーション層形成用組成物が樹脂を含有する場合、前記パッシベーション層形成用組成物における前記有機アルミニウム化合物と前記樹脂の含有比率は、必要に応じて適宜選択することができる。中でも、パターン形成性と保存安定性の観点から、特定金属化合物並びに必要に応じて含まれる酸化アルミニウム及びその前駆体からなる群より選択される1種以上の総量を1とした場合の樹脂の比率は、0.001〜1000であることが好ましく、0.01〜100であることがより好ましく、0.1〜1であることが更に好ましい。
前記パッシベーション層形成用組成物は、酸性化合物又は塩基性化合物を含有してもよい。パッシベーション層形成用組成物が酸性化合物又は塩基性化合物を含有する場合、保存安定性の観点から、パッシベーション層形成用組成物中の酸性化合物又は塩基性化合物の含有率は、それぞれ1質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましい。
酸性化合物としては、ブレンステッド酸及びルイス酸を挙げることができる。具体的には、塩酸、硝酸等の無機酸、酢酸等の有機酸などを挙げることができる。また塩基性化合物としては、ブレンステッド塩基及びルイス塩基を挙げることができる。具体的には、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物等の無機塩基;トリアルキルアミン、ピリジン等の有機塩基などを挙げることができる。
前記パッシベーション層形成用組成物は、必要に応じて、その他の成分として、増粘剤、湿潤剤、界面活性剤、無機粉末、ケイ素原子を含む樹脂、チキソ剤等の各種添加剤を含有してもよい。
無機粉末としてはシリカ(酸化ケイ素)、クレイ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、モンモリロナイト、ベントナイト、カーボンブラック等を例示することができる。これらの中でもシリカを成分として含むフィラーを用いることが好ましい。ここで、クレイとは層状粘土鉱物を示し、具体的にはカオリナイト、イモゴライト、モンモリロナイト、スメクタイト、セリサイト、イライト、タルク、スチーブンサイト、ゼオライト等が挙げられる。パッシベーション層形成用組成物が無機粉末を含有する場合、パッシベーション層形成用組成物の付与性が向上する傾向にある。
界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤等が挙げられる。中でも、半導体デバイスへの重金属等の不純物の持ち込みが少ないことからノニオン系界面活性剤又はカチオン系界面活性剤が好ましい。ノニオン系界面活性剤としては、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、炭化水素系界面活性剤等が挙げられる。パッシベーション層形成用組成物が界面活性剤を含有する場合、パッシベーション層形成用組成物から形成される組成物層の厚さ及び組成の均一性が向上する傾向にある。
ケイ素原子を含む樹脂としては、両末端リジン変性シリコーン、ポリアミド・シリコーン交互共重合体、側鎖アルキル変性シリコーン、側鎖ポリエーテル変性シリコーン、末端アルキル変性シリコーン、シリコーン変性プルラン、シリコーン変性アクリル樹脂等を例示することができる。パッシベーション層形成用組成物がケイ素を含む樹脂を含有する場合、前記パッシベーション層形成用組成物から形成される組成物層の厚さ及び組成の均一性が向上する傾向にある。
チキソ剤としてはポリエーテル化合物、脂肪酸アミド、ヒュームドシリカ、水素添加ひまし油、尿素ウレタンアミド、ポリビニルピロリドン、オイル系ゲル化剤等を例示することができる。パッシベーション層形成用組成物がチキソ剤を含有する場合、パッシベーション層形成用組成物を付与する際のパターン形成性が改善する傾向にある。ポリエーテル化合物としてはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレン−プロピレン)グリコール共重合体等を例示することができる。
パッシベーション層形成用組成物の粘度は特に制限されず、半導体基板への付与方法等に応じて適宜選択することができる。例えば、パッシベーション層形成用組成物の粘度は0.01Pa・s〜10000Pa・sとすることができる。中でもパターン形成性の観点から、パッシベーション層形成用組成物の粘度は0.1Pa・s〜1000Pa・sであることが好ましい。なお、前記粘度は回転式せん断粘度計を用いて、25℃、せん断速度1.0s−1で測定された値である。
パッシベーション層形成用組成物は、チキソ性を有していることが好ましい。特に、パッシベーション層形成用組成物が樹脂を含む場合、パターン形成性の観点から、せん断速度1.0s−1におけるせん断粘度η1をせん断速度10s−1におけるせん断粘度η2で除して算出されるチキソ比(η1/η2)が1.05〜100であることが好ましく、1.1〜50であることがより好ましい。なお、せん断粘度は、コーンプレート(直径50mm、コーン角1°)を装着した回転式のせん断粘度計を用いて、温度25℃で測定される。
パッシベーション層形成用組成物の製造方法には特に制限はない。例えば、特定金属化合物と、必要に応じて含まれる液状媒体等とを、通常用いられる方法で混合して製造することができる。また樹脂を溶解させた液状媒体と特定金属化合物を混合することで製造してもよい。
更に特定金属化合物は、式(I)化合物と、式(I)化合物に含まれる金属元素とキレートを形成可能な化合物とを混合して調製してもよい。その際、適宜溶媒を用いても、加熱処理を行ってもよい。このようにして調製した特定金属化合物を用いてパッシベーション層形成用組成物を製造してもよい。
なお、前記パッシベーション層形成用組成物中に含まれる成分、及び各成分の含有量は示熱−熱重量同時測定(TG/DTA)等の熱分析、核磁気共鳴(NMR)、赤外分光法(IR)等のスペクトル分析、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)等のクロマトグラフ分析などを用いて確認することができる。
<太陽電池素子の製造方法>
本発明の太陽電池素子の製造方法は、受光面及び前記受光面とは反対側の裏面を有し、前記裏面にp型拡散領域及びn型拡散領域を有する半導体基板の前記p型拡散領域の少なくとも一部に第一の金属電極を、前記n型拡散領域の少なくとも一部に第二の金属電極をそれぞれ形成する工程と、 前記半導体基板の裏面の一部又は全部の領域に、特定金属酸化物及び一般式(I)で示される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むパッシベーション層形成用組成物を付与して組成物層を形成する工程と、
前記組成物層を熱処理して特定金属酸化物の少なくとも1種を含有するパッシベーション層を形成する工程と、を有する。本発明の太陽電池素子の製造方法は、必要に応じてその他の工程を更に有していてもよい。
上記方法によれば、優れたパッシベーション効果を有するパッシベーション層を半導体基板上に形成することができる。更に、前記パッシベーション層は蒸着装置等を必要としない簡便で生産性の高い方法により形成することができ、マスク処理等の煩雑な工程を要することなく所望の形状に形成することができる。従って、上記方法によれば、変換効率に優れる太陽電池素子を簡便な方法で製造することができる。
裏面にp型拡散領域及びn型拡散領域を有する半導体基板は、通常用いられる方法で製造することができる。例えば、特許第3522940号公報等に記載の方法に準じて製造することができる。p型拡散領域の少なくとも一部及びn型拡散領域の少なくとも一部にそれぞれ金属電極を形成する方法としては、例えば、半導体基板の裏面の所望の領域に、銀ペースト、アルミニウムペースト等の電極形成用ペーストを付与し、必要に応じて熱処理することで形成することができる。本発明においてp型拡散領域の少なくとも一部及びn型拡散領域の少なくとも一部にそれぞれ金属電極を形成する工程は、パッシベーション層を形成する工程の前に行われてもよく、パッシベーション層を形成する工程の後に行われてもよい。
半導体基板の裏面の一部又は全部の領域に特定金属化合物を含有するパッシベーション層形成用組成物を付与して組成物層を形成する方法は特に制限されない。具体的には、浸漬法、スクリーン印刷法等の印刷法、スピンコート法、刷毛塗り、スプレー法、ドクターブレード法、ロールコーター法、インクジェット法などを挙げることができる。これらの中でもパターン形成性の観点から、印刷法及びインクジェット法が好ましく、スクリーン印刷法がより好ましい。
パッシベーション層形成用組成物の半導体基板への付与量は、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、形成されるパッシベーション層の厚さが、所望の厚さとなるように適宜調整することができる。
パッシベーション層形成用組成物を半導体基板上に付与して形成された組成物層を熱処理して、前記組成物層に由来する熱処理物層を形成することで、半導体基板上にパッシベーション層を形成することができる。
組成物層の熱処理条件は、パッシベーション層形成用組成物に含まれる特定金属化合物が特定金属酸化物に変換される条件であれば特に制限はない。例えば、組成物層に含まれる一般式(I)で表される化合物をその熱処理物である特定金属酸化物に変換可能であれば特に制限されない。中でも、結晶構造を有しないアモルファス状の特定金属酸化物層を形成可能な条件であることが好ましい。パッシベーション層がアモルファス状の特定金属酸化物から構成されることで、パッシベーション層により効果的に負電荷を持たせることができ、より優れたパッシベーション効果を得ることができる。具体的には、熱処理温度は400℃以上であることが好ましく、400℃〜900℃であることがより好ましく、600℃〜800℃であることが更に好ましい。熱処理時間は熱処理温度等に応じて適宜選択できる。例えば、5秒〜10時間とすることができ、10秒〜5時間であることが好ましい。
パッシベーション層の密度は1.0g/cm3〜10.0g/cm3であることが好ましく、2.0g/cm3〜8.0g/cm3であることがより好ましく、3.0g/cm3〜7.0g/cm3であることが更に好ましい。パッシベーション層の密度が1.0g/cm3〜10.0g/cm3であると、充分なパッシベーション効果が得られ、また、その高いパッシベーション効果が経時変化しにくい傾向にある。その理由としては、パッシベーション層の密度が1.0g/cm3以上であると外界の水分及び不純物ガスが半導体基板とパッシベーション層との界面に到達しにくいためにパッシベーション効果が持続しやすくなり、10.0g/cm3以下であると半導体基板との相互作用が大きくなる傾向にあるためと推測される。パッシベーション層の密度の測定方法としては、パッシベーション層の質量及び体積を測定して算出する方法、X線反射率法により、X線を試料表面にごく浅い角度で入射させ、その入射角対鏡面方向に反射したX線強度プロファイルを測定し、測定で得られたプロファイルをシミュレーション結果と比較し、シミュレーションパラメータを最適化することによって、試料の膜厚及び密度を決定する方法等が挙げられる。
パッシベーション層の平均厚さは5nm〜50μmであることが好ましく、20nm〜20μmであることがより好ましく、30nm〜5μmであることが更に好ましい。パッシベーション層の平均厚さが5nm以上であると、充分なパッシベーション効果が得られやすく、50μm以下であると、太陽電池素子を構成する他の部材を考慮した素子構造の設計が可能となる傾向にある。
パッシベーション層の平均厚さは、干渉式膜厚測定計を用いて測定した5点の厚さの算術平均値とする。
次に図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図2は、本実施形態にかかるパッシベーション層を有する太陽電池素子の製造方法の一例を模式的に示す工程図を断面図として示したものである。但し、この工程図は本発明をなんら制限するものではない。
図2(a)に示すように、n型半導体基板11の受光面側にはn型+拡散層12が形成され、受光面側の最表面に反射防止膜13が形成されている。裏面にはp型拡散領域14であるp+型拡散層及びn型拡散領域12であるn+型拡散層が形成されている。なお、図2(a)は図1に示す裏面電極構造を有する半導体基板をAA線で切断したときの断面図である。
p型拡散領域14は、例えば、熱拡散処理によりp+型拡散層を形成可能なp型拡散層形成用組成物又はアルミニウム電極ペーストを所望の領域に付与した後に熱処理して形成することができる。またn型拡散領域12は、例えば、熱拡散処理によりn+型拡散層を形成可能なn型拡散層形成用組成物を所望の領域に付与した後に熱処理して形成することができる。n型拡散層形成用組成物としては、例えば、ドナー元素含有物質とガラス成分とを含む組成物を挙げることができる。反射防止膜13としては、窒化ケイ素膜、酸化チタン膜等が挙げられる。反射防止膜13とp型半導体基板11との間に酸化ケイ素膜等の表面保護膜(図示せず)が更に存在していてもよい。また表面保護膜として前記パッシベーション層を使用してもよい。
次いで図2(b)に示すように、裏面のp型拡散領域14及びn型拡散領域12の上にそれぞれ第一の金属電極15及び第二の金属電極17を形成する。これらの金属電極は、銀電極ペースト、アルミニウム電極ペースト、銅電極ペースト等の通常用いられる電極形成用ペーストを付与した後に熱処理して形成することができる。なお、第一の金属電極15とp型拡散領域14とは、アルミニウム電極ペースト等の電極を形成する材料を付与した後に熱処理してそれぞれ形成してもよい。
n型半導体基板11の表面は、パッシベーション層形成用組成物を付与する前に、アルカリ水溶液で洗浄することが好ましい。アルカリ水溶液で洗浄することで、半導体基板表面に存在する有機物、パーティクル等を除去することができ、パッシベーション効果がより向上する傾向にある。アルカリ水溶液による洗浄の方法としては、一般的に知られているRCA洗浄等を例示することができる。例えば、アンモニア水と過酸化水素水の混合溶液に半導体基板を浸し、60℃〜80℃で処理することで、有機物及びパーティクルを除去することができる。処理時間は10秒〜10分間であることが好ましく、30秒〜5分間であることがより好ましい。
次に図2(c)に示すように、n型半導体基板11の裏面の第一の金属電極15及び第二の金属電極17が形成された領域以外の領域に、パッシベーション層形成用組成物を付与して組成物層を形成する。付与の方法は特に制限されず、公知の方法から選択することができる。具体的には、浸漬法、スクリーン印刷法等の印刷法、スピンコート法、刷毛塗り、スプレー法、ドクターブレード法、ロールコーター法、インクジェット法などを挙げることができる。これらの中でもパターン形成性の観点から、印刷法及びインクジェット法が好ましく、スクリーン印刷法がより好ましい。前記パッシベーション層形成用組成物の付与量は、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、形成されるパッシベーション層の厚さが、上記の好ましい厚さとなるように適宜調整することができる。
パッシベーション層形成用組成物を付与する工程と、熱処理によってパッシベーション層を形成する工程との間に、パッシベーション層形成用組成物からなる組成物層を乾燥処理する工程を更に有していてもよい。組成物層を乾燥処理する工程を有することで、より均一なパッシベーション効果を有するパッシベーション層を形成できる傾向にある。
組成物層を乾燥処理する工程は、パッシベーション層形成用組成物に含まれることがある液状媒体の少なくとも一部を除去することができれば、特に制限されない。乾燥処理は例えば30℃〜250℃で10秒間〜60分間の熱処理とすることができ、40℃〜220℃で30秒間〜10分間の熱処理であることが好ましい。また乾燥処理は、常圧下で行なっても減圧下で行なってもよい。
最後に、n型半導体基板11の裏面上に形成された組成物層を熱処理してパッシベーション層16を形成する。組成物層の熱処理条件は、上述したとおりである。以上のようにして、本発明の太陽電池素子を製造することができる。
図2に示すような構造の太陽電池素子は、受光面側に電極が存在しないため、受光領域の面積を大きくでき、発電効率に優れる。更に、パッシベーション層形成用組成物を用いて裏面にパッシベーション層を形成することで、より発電効率に優れる太陽電池素子とすることができる。
図2(c)ではn型半導体基板11の裏面にのみパッシベーション層を形成しているが、裏面に加えて側面(エッジ)にパッシベーション層を更に形成してもよい(図示せず)。これにより、発電効率により優れた太陽電池素子を製造することができる。パッシベーション層は、側面のような結晶欠陥が多い場所に使用すると、その効果が特に大きい。
本発明の太陽電池素子は、図3に示すように、受光面側にもパッシベーション層16を有していてもよい。また、図2に示す製造方法の一例では電極の形成後にパッシベーション層を形成しているが、パッシベーション層の形成後に電極を形成してもよい。更に、図2では半導体基板としてn型半導体基板を用いた例を示したが、p型半導体基板を用いた場合も同様の方法で変換効率に優れる太陽電池素子を製造することができる。
本発明の太陽電池素子は、ビアホール型バックコンタクト構造を有していてもよい。図4はビアホール型バックコンタクト構造の一例を模式的に示す。図4に示すように、ビアホール型バックコンタクト構造の太陽電池素子は、半導体基板の受光面から裏面に貫通したスルーホールを有している。スルーホールは、例えば、半導体基板にレーザー光を照射することによって形成される。スルーホールの開口部の直径は、例えば50μm〜150μm程度とすることができ、半導体基板表面におけるスルーホールの開口部の密度は、例えば100個/cm2程度とすることができる。
スルーホールの形成後に、半導体基板へのレーザー光の照射により生じたダメージ層をエッチングにより除去し、裏面の所望の領域にp型拡散領域14を形成する。次いで、受光面にn型拡散領域12を形成する。形成されたp型拡散領域14及びn型拡散領域12の上に、第一の金属電極15及び第二の金属電極17をそれぞれ形成する。更に、裏面の電極が形成されていない領域にパッシベーション層16を形成する。p型拡散領域、n型拡散領域、電極及びパッシベーション層の形成方法は、上記した方法と同様とすることができる。パッシベーション層16は半導体基板の裏面以外に形成してもよく、側面及びスルーホールの壁面にも形成してよい(図示せず)。
図5は図4に示すビアホール型バックコンタクト構造を有する太陽電池素子の裏面の電極パターンの一例を模式的に示す平面図である。図5においてBB線で切断したときの断面図が図4に相当する。図5ではパッシベーション層16の記載を省略してある。
<太陽電池モジュール>
本発明の太陽電池モジュールは、本発明の太陽電池素子と、前記太陽電池素子の電極上に配置された配線材料と、を有する。前記太陽電池モジュールは、配線材料を介して連結された複数の太陽電池素子を含んでもよく、封止材で封止されていてもよい。前記配線材料及び封止材は特に制限されず、当技術分野で通常用いられている材料から適宜選択することができる。前記太陽電池モジュールの大きさに特に制限はなく、例えば0.5m2〜3m2とすることができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
(パッシベーション層形成用組成物の調製)
Al2O3薄膜塗布材料(株式会社高純度化学研究所、SYM−Al04、Al2O3:2質量%、キシレン:87質量%、2−プロパノール:5質量%、安定化剤:6質量%)を1.0g、Nb2O5薄膜塗布材料(株式会社高純度化学研究所、Nb−05、Nb2O5:5質量%、酢酸n−ブチル:56質量%、安定化剤:16.5質量%、粘度調整剤:22.5質量%)を1.0g混合し、パッシベーション層形成用組成物1を調製した。
(パッシベーション層の形成)
半導体基板として、表面がミラー形状の単結晶型p型シリコン基板(株式会社SUMCO、50mm角、厚さ:625μm)を用いた。シリコン基板をRCA洗浄液(関東化学株式会社、Frontier Cleaner−A01)を用いて70℃にて5分間、浸漬洗浄し、前処理を行った。
その後、上記で得られたパッシベーション層形成用組成物1を前処理したシリコン基板の片面の全面に、スピンコータ(ミカサ株式会社、MS−100)を用いて、4000rpm(min−1)で30秒間の条件で付与した。その後、150℃で3分間乾燥処理した。次いで700℃で10分間、空気中で熱処理した後、室温(25℃)で放冷して、パッシベーション層を有する評価用基板を作製した。
(実効ライフタイムの測定)
上記で得られた評価用基板のパッシベーション層が形成された領域の実効ライフタイム(μs)を、ライフタイム測定装置(日本セミラボ株式会社、WT−2000PVN)を用いて、室温(25℃)で反射マイクロ波光電導減衰法により測定した。実効ライフタイムは、480μsであった。
(平均厚さの測定)
干渉式膜厚計(フィルメトリクス株式会社、F20膜厚測定システム)を用いて、パッシベーション層の厚さを面内の5点について測定し、平均値を算出した。平均値は82nmであった。
(密度の測定)
パッシベーション層の質量及び平均厚さから密度を算出した。密度は3.2g/cm3であった。
(太陽電池素子の製造方法)
上記で得られたパッシベーション層形成用組成物を用いて、図4に示したようなビアホール型バックコンタクト構造を有する太陽電池素子を作製した。具体的には、レーザードリルでn型半導体基板11(株式会社アドバンテック、125mm角、厚さ:200μm、アズスライス後のn型シリコン基板)の両面を貫通した直径100μmのスルーホールを0.2個/cm2形成した。n型半導体基板11を40質量%水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業株式会社)に浸し、60℃にて10分間処理してダメージ層を除去した。その後、8質量%水酸化ナトリウム水溶液で、60℃で10分間処理し、両面にテクスチャーを形成した。次いで、拡散炉(光洋サーモシステム株式会社、206A−M100)を用い、POCl3を用いて870℃で20分間処理して全面にn型拡散層12を形成した。その後、基板を40質量%水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業株式会社)に浮かべ、80℃で10分間処理して裏面のみをエッチングした。その後、パッシベーション層形成用組成物を受光面の全面及び裏面の電極形成予定領域以外の領域にインクジェット装置(株式会社マイクロジェット、MJP−1500V、ヘッド:IJH−80、ノズルサイズ:50μm×70μm)を用いて付与し、150℃で乾燥処理して組成物層を形成した。その後、700℃で熱処理して、Nb2O5及びAl2O3を含有するパッシベーション層16を形成した。
次いで、受光面の半導体パッシベーション層16の上に窒化珪素を蒸着することで反射防止膜13を形成した。なお、n型拡散領域12は、スルーホール内部、及び裏面の一部にもそれぞれ形成した。次に、貫通孔内部にテルピネオールで5倍に希釈した銀電極ペースト(デュポン株式会社、PV159A)をインクジェット法により充填し、受光面側にも銀電極ペーストをスルーホール内部の電極同士が導通するパターン状にスクリーン印刷により付与した。
一方、n型シリコン基板11に由来する裏面のn型拡散領域には、スルーホールの開口部を覆うように図5に示す第二の金属電極17の形状に銀電極ペースト(デュポン株式会社、PV159A)を付与した。また、アルミニウム電極ペースト(PVG Solutions株式会社、PVG−AD−02)を図5に示す第一の金属電極15の形状に付与した。銀電極ペースト及びアルミニウム電極ペーストの付与にはインクジェット装置(株式会社マイクロジェット、MJP―1500V、ヘッド:IJH−80、ノズルサイズ:50μm×70μm)を使用した。
銀電極ペースト及びアルミニウム電極ペーストが付与されたn型シリコン基板11について、トンネル炉(株式会社ノリタケカンパニーリミテッド)を用いて大気雰囲気下、最高温度800℃で保持時間10秒の熱処理を行って、第一の金属電極15及び第二の金属電極17が形成された太陽電池素子を作製した。アルミニウム電極ペーストを付与した部分には第一の金属電極15が形成され、n型シリコン基板11の内部にアルミニウムが拡散することでp型拡散領域14が形成されていた。
太陽電池素子の作製直後(1時間後)に太陽電池素子ソーラシュミレータ(株式会社ワコム電創、XS−155S−10)を用いて発電特性を評価した。
評価は、擬似太陽光(装置名:WXS−155S−10、株式会社ワコム電創)と、電圧−電流(I−V)評価測定器(装置名:I−V CURVE TRACER MP−160、英弘精機株式会社)の測定装置を組み合わせて行った。太陽電池としての発電性能を示すJsc(短絡電流密度)、Voc(開放電圧)、FF(フィルファクター)、Eff1(変換効率)は、それぞれJIS−C−8913(2005年度)及びJIS−C−8914(2005年度)に準拠して測定を行い得られたものである。
結果を表2に示す。なお、受光面積は125mm×125mmとなるようにマスクを被せて評価した。 また、作製した太陽電池素子を、50℃、80%RHの恒温恒湿槽の中に入れ、1ヶ月保存した後の発電特性を評価した。結果を表3に示す。太陽電子素子の保存後の変換効率は保存前の変換効率Eff2の98.8%であり、変換効率が1.2%低下した。
<実施例2>
(パッシベーション層形成用組成物の調製)
Ta2O5薄膜塗布材料(株式会社高純度化学研究所、Ta−10−P、Ta2O5:10質量%、n−オクタン:9質量%、酢酸n−ブチル:60質量%、安定化剤:21質量%)をパッシベーション層形成用組成物2として使用した。
上記のパッシベーション層形成用組成物2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、前処理したシリコン基板上にパッシベーション層を形成して評価用基板を作製し、実施例1と同様にして評価した。実効ライフタイムは、450μsであった。パッシベーション層の平均厚さ及び密度はそれぞれ75nm、3.6g/cm3であった。
パッシベーション層形成用組成物1の代わりにパッシベーション層形成用組成物2を用いた以外は実施例1と同様にして太陽電池素子を作製し、発電特性を評価した。結果を表2及び3に示す。太陽電子素子の保存後の変換効率は保存前の変換効率の98.2%であり、変換効率が1.8%低下した。
<実施例3>
HfO2薄膜塗布材料(株式会社高純度化学研究所、Hf−05、HfO2:5質量%、酢酸イソアミル:73質量%、n−オクタン:10質量%、2−プロパノール:5質量%、安定化剤:7質量%)をパッシベーション層形成用組成物3として使用した。
上記で調製したパッシベーション層形成用組成物3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、前処理したシリコン基板上にパッシベーション層を形成して評価用基板を作製し、実施例1と同様にして評価した。実効ライフタイムは、380μsであった。パッシベーション層の平均厚さ及び密度はそれぞれ71nm、3.2g/cm3であった。
パッシベーション層形成用組成物1の代わりにパッシベーション層形成用組成物3を用いた以外は実施例1と同様にして太陽電池素子を作製し、発電特性を評価した。結果を表2及び3に示す。太陽電子素子の保存後の変換効率は保存前の変換効率の98.3%であり、変換効率が1.7%低下した。
<実施例4>
Y2O3薄膜塗布材料(株式会社高純度化学研究所、Y−03、Y2O3:3質量%、2−エチルヘキサン酸:12.5質量%、酢酸n−ブチル:22.5質量%、酢酸エチル:8質量%、テルピン油:45質量%、粘度調製剤:9質量%)をパッシベーション層形成用組成物4として使用した。
上記で調製したパッシベーション層形成用組成物4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、前処理したシリコン基板上にパッシベーション層を形成して評価用基板を作製し、実施例1と同様にして評価した。実効ライフタイムは、390μsであった。パッシベーション層の平均厚さ及び密度はそれぞれ68nm、2.8g/cm3であった。
パッシベーション層形成用組成物1の代わりにパッシベーション層形成用組成物4を用いた以外は実施例1と同様にして太陽電池素子を作製し、発電特性を評価した。結果を表2及び3に示す。太陽電子素子の保存後の変換効率は保存前の変換効率の97.6%であり、変換効率が2.4%低下した。
<実施例5>
アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート(川研ファインケミカル株式会社、ALCH)、ペンタエトキシニオブ(北興化学工業株式会社)、アセチルアセトン(和光純薬工業株式会社)、キシレン(和光純薬工業株式会社)、2−プロパノール(和光純薬工業株式会社)、テルピネオール(日本テルペン化学株式会社)を表1に示す割合となるように混合し、パッシベーション層形成用組成物5として使用した。
上記で調製したパッシベーション層形成用組成物5を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、前処理したシリコン基板上にパッシベーション層を形成して評価用基板を作製し、実施例1と同様にして評価した。実効ライフタイムは、420μsであった。パッシベーション層の平均厚さ及び密度はそれぞれ94nm、2.6g/cm3であった。
パッシベーション層形成用組成物1の代わりにパッシベーション層形成用組成物5を用いた以外は実施例1と同様にして太陽電池素子を作製し、発電特性を評価した。結果を表2及び3に示す。太陽電子素子の保存後の変換効率は保存前の変換効率の97.9%であり、変換効率が2.1%低下した。
<比較例1>
実施例1において、パッシベーション層形成用組成物1の付与を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして評価用基板を作製し、実施例1と同様にして評価した。実効ライフタイムは、20μsであった。
実施例1において、パッシベーション層形成用組成物1の付与を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして太陽電池素子を作製し、発電特性を評価した。結果を表2及び3に示す。太陽電子素子の保存後の変換効率は保存前の変換効率の91.9%であり、変換効率が8.1%低下した。
<比較例2>
エチルセルロース(ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー、STD200)6.0g及びテルピネオール(日本テルペン化学株式会社製、ターピネオール−LW)34.0gを混合し、150℃で2時間混合して溶解し、15質量部エチルセルロース/テルピネオール溶液を調製した。次いで、Al2O3粒子(株式会社高純度化学研究所、平均粒子径1μm)を2.00g、テルピネオールを3.9g及び上記で調製した15質量部エチルセルロース/テルピネオール溶液4.1gを混合して、組成物C2を調製した。
上記で調製した組成物C2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして前処理したシリコン基板上にパッシベーション層を形成して評価用基板を作製し、実施例1と同様にして評価した。実効ライフタイムは、21μsであった。パッシベーション層の平均厚さ及び密度はそれぞれ2.1μm、1.4g/cm3であった。パッシベーション層の平均厚さは触針式段差計(Ambios社、XP−2)で測定した。具体的には、パッシベーション層の一部をスパチュラで削り取り、パッシベーション層が残存する部分と削り取った部分の段差を速度0.1mm/s、針荷重0.5mgの条件で測定した。測定は3回行い、その平均値を算出して膜厚とした。
パッシベーション層形成用組成物1の代わりに上記で調製した組成物C2を用いたこと以外は実施例1と同様にして太陽電池素子を作製し、発電特性を評価した。結果を表2及び3に示す。太陽電子素子の保存後の変換効率は保存前の変換効率の93.0%であり、変換効率が7.0%低下した。
<比較例3>
テトラエトキシシランを2.01g、上記で調製した15質量部エチルセルロース/テルピネオール溶液4.02g及びテルピネオール3.97gを混合して無色透明の組成物C3を調製した。
上記で調製した組成物C3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして前処理したシリコン基板上にパッシベーション層を形成して評価用基板を作製し、実施例1と同様にして評価した。実効ライフタイムは、23μsであった。パッシベーション層の平均厚さ及び密度はそれぞれ85nm、2.1g/cm3であった。
パッシベーション層形成用組成物1の代わりに上記で調製した組成物C3を用いたこと以外は実施例1と同様にして太陽電池素子を作製し、発電特性を評価した。結果を表2及び3に示す。太陽電子素子の保存後の変換効率は保存前の変換効率の92.4%であり、変換効率が7.6%低下した。
以上から、本発明の太陽電池素子は優れたパッシベーション効果を有するパッシベーション層を有するために高い変換効率を示し、かつ経時的な太陽電池特性の低下が抑制されていることがわかる。更に、本発明の太陽電池素子のパッシベーション層は簡便な工程で所望の形状に形成できることがわかる。
<参考実施形態1>
以下は、参考実施形態1に係るパッシベーション膜、塗布型材料、太陽電池素子及びパッシベーション膜付シリコン基板である。
<1> 酸化アルミニウムと酸化ニオブとを含み、シリコン基板を有する太陽電池素子に用いられるパッシベーション膜。
<2> 前記酸化ニオブと前記酸化アルミニウムの質量比(酸化ニオブ/酸化アルミニウム)が30/70〜90/10である<1>に記載のパッシベーション膜。
<3> 前記酸化ニオブ及び前記酸化アルミニウムの総含有率が90質量%以上である<1>又は<2>に記載のパッシベーション膜。
<4> 更に有機成分を含む<1>〜<3>のいずれか1項に記載のパッシベーション膜。
<5> 酸化アルミニウム前駆体及び酸化ニオブ前駆体を含む塗布型材料の熱処理物である<1>〜<4>のいずれか1項に記載のパッシベーション膜。
<6> 酸化アルミニウム前駆体及び酸化ニオブ前駆体を含み、シリコン基板を有する太陽電池素子のパッシベーション膜の形成に用いられる塗布型材料。
<7> 単結晶シリコン又は多結晶シリコンからなり、受光面及び前記受光面とは反対側の裏面を有するp型のシリコン基板と、
前記シリコン基板の受光面側に形成されたn型の不純物拡散層と、
前記シリコン基板の受光面側の前記n型の不純物拡散層の表面に形成された第1電極と、
前記シリコン基板の裏面側の表面に形成され、複数の開口部を有する酸化アルミニウムと酸化ニオブを含むパッシベーション膜と、
前記複数の開口部を通して、前記シリコン基板の裏面側の表面と電気的な接続を形成している第2電極と、
を備える太陽電池素子。
<8> 単結晶シリコン又は多結晶シリコンからなり、受光面及び前記受光面とは反対側の裏面を有するp型のシリコン基板と、
前記シリコン基板の受光面側に形成されたn型の不純物拡散層と、
前記シリコン基板の受光面側の前記n型の不純物拡散層の表面に形成された第1電極と、
前記シリコン基板の裏面側の一部又は全部に形成され、前記シリコン基板より高濃度に不純物が添加されたp型の不純物拡散層と、
前記シリコン基板の裏面側の表面に形成され、複数の開口部を有する酸化アルミニウムと酸化ニオブを含むパッシベーション膜と、
前記複数の開口部を通して、前記シリコン基板の裏面側の前記p型の不純物拡散層の表面と電気的な接続を形成している第2電極と、
を備える太陽電池素子。
<9> 単結晶シリコン又は多結晶シリコンからなり、受光面及び前記受光面とは反対側の裏面を有するn型のシリコン基板と、
前記シリコン基板の受光面側に形成されたp型の不純物拡散層と、
前記シリコン基板の裏面側に形成された第2電極と、
前記シリコン基板の受光面側の表面に形成され、複数の開口部を有する酸化アルミニウムと酸化ニオブを含むパッシベーション膜と、
前記シリコン基板の受光面側の前記p型の不純物拡散層の表面に形成され、前記複数の開口部を通して前記シリコン基板の受光面側の表面と電気的な接続を形成している第1電極と、
を備える太陽電池素子。
<10> パッシベーション膜における酸化ニオブと酸化アルミニウムの質量比(酸化ニオブ/酸化アルミニウム)が30/70〜90/10である<7>〜<9>のいずれか1項に記載の太陽電池素子。
<11> 前記パッシベーション膜における前記酸化ニオブ及び前記酸化アルミニウムの総含有率が90質量%以上である<7>〜<10>のいずれか1項に記載の太陽電池素子。
<12> シリコン基板と、
前記シリコン基板上の全面又は一部に設けられる<1>〜<5>のいずれか1項に記載のパッシベーション膜と、
を有するパッシベーション膜付シリコン基板。
上記の参考実施形態によれば、シリコン基板のキャリアライフタイムを長くし且つ負の固定電荷を有するパッシベーション膜を低コストで実現することができる。また、そのパッシベーション膜の形成を実現するための塗布型材料を提供することができる。また、そのパッシベーション膜を用いた効率の高い太陽電池素子を低コストで実現することができる。また、キャリアライフタイムを長くし且つ負の固定電荷を有するパッシベーション膜付シリコン基板を低コストで実現することができる。
本実施の形態のパッシベーション膜は、シリコン太陽電池素子に用いられるパッシベーション膜であり、酸化アルミニウムと酸化ニオブとを含むようにしたものである。
また、本実施の形態では、パッシベーション膜の組成を変えることにより、その膜が持つ固定電荷量を制御することができる。
また、酸化ニオブと酸化アルミニウムの質量比が30/70〜80/20であることが、負の固定電荷を安定化できるという観点からより好ましい。また、酸化ニオブと酸化アルミニウムの質量比が35/65〜70/30であることが、負の固定電荷を更に安定化することができるという観点から更に好ましい。また、酸化ニオブと酸化アルミニウムの質量比が50/50〜90/10であることが、キャリアライフタイムの向上と負の固定電荷を両立できるという観点から好ましい。
パッシベーション膜中の酸化ニオブと酸化アルミニウムの質量比は、エネルギー分散型X線分光法(EDX)、二次イオン質量分析法(SIMS)及び高周波誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)によって測定することができる。具体的な測定条件は次の通りである。パッシベーション膜を酸又はアルカリ水溶液に溶解し、この溶液を霧状にしてArプラズマに導入し、励起された元素が基底状態に戻る際に放出される光を分光して波長及び強度を測定し、得られた波長から元素の定性を行い、得られた強度から定量を行う。
パッシベーション膜中の酸化ニオブ及び酸化アルミニウムの総含有率が、80質量%以上であることが好ましく、良好な特性を維持できる観点から90質量%以上であることがより好ましい。パッシベーション膜中の酸化ニオブ及び酸化アルミニウムの成分が多くなると、負の固定電荷の効果が大きくなる。
パッシベーション膜中の酸化ニオブ及び酸化アルミニウムの総含有率は、熱重量分析、蛍光X線分析、ICP−MS及びX線吸収分光法を組み合わせることによって測定することができる。具体的な測定条件は次の通りである。熱重量分析によって無機成分の割合を算出し、蛍光X線やICP−MS分析によってニオブ及びアルミニウムの割合を算出し、酸化物の割合はX線吸収分光法で調べることができる。
また、パッシベーション膜中には、膜質の向上や弾性率の調整の観点から、酸化ニオブ及び酸化アルミニウム以外の成分が有機成分として含まれていてもよい。パッシベーション膜中の有機成分の存在は、元素分析及び膜のFT−IRの測定から確認することができる。
パッシベーション膜中の有機成分の含有率は、パッシベーション膜中、10質量%未満であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
パッシベーション膜は、酸化アルミニウム前駆体及び酸化ニオブ前駆体を含む塗布型材料の熱処理物として得てもよい。塗布型材料の詳細を次に説明する。
本実施の形態の塗布型材料は、酸化アルミニウム前駆体及び酸化ニオブ前駆体を含み、シリコン基板を有する太陽電池素子用のパッシベーション膜の形成に用いられる。
酸化アルミニウム前駆体は、酸化アルミニウムを生成するものであれば、特に限定されることなく用いることができる。酸化アルミニウム前駆体としては、酸化アルミニウムをシリコン基板上に均一に分散させる点、及び化学的に安定な点から、有機系の酸化アルミニウム前駆体を用いることが好ましい。有機系の酸化アルミニウム前駆体の例として、アルミニウムトリイソプロポキシド(構造式:Al(OCH(CH3)2)3、(株)高純度化学研究所SYM−AL04等を挙げることができる。
酸化ニオブ前駆体は、酸化ニオブを生成するものであれば、特に限定されることなく用いることができる。酸化ニオブ前駆体としては、酸化ニオブをシリコン基板上に均一に分散させる点、及び化学的に安定な観点から有機系の酸化ニオブ前駆体を用いることが好ましい。有機系の酸化ニオブ前駆体の例として、ニオブ(V)エトキシド(構造式:Nb(OC2H5)5、分子量:318.21)、(株)高純度化学研究所Nb−05等を挙げることができる。
有機系の酸化ニオブ前駆体及び有機系の酸化アルミニウム前駆体を含む塗布型材料を塗布法又は印刷法を用いて成膜し、その後の熱処理(焼成)により有機成分を除去することにより、パッシベーション膜を得ることができる。したがって、結果として、有機成分を含むパッシベーション膜であってもよい。
<太陽電池素子の構造説明>
本実施の形態の太陽電池素子の構造について図7〜図10を参照しながら説明する。図7〜図10は、本実施の形態の裏面にパッシベーション膜を用いた太陽電池素子の第1〜第4構成例を示す断面図である。
本実施の形態で用いるシリコン基板(結晶シリコン基板、半導体基板)101としては、単結晶シリコン、又は、多結晶シリコンのどちらを用いてもよい。また、シリコン基板101としては、導電型がp型の結晶シリコン、又は、導電型がn型の結晶シリコンのどちらを用いてもよい。本実施の形態の効果をより発揮する観点からは、導電型がp型の結晶シリコンがより適している。
以下の図7〜図10においては、シリコン基板101として、p型単結晶シリコンを用いた例について説明する。尚、当該シリコン基板101に用いる単結晶シリコン又は多結晶シリコンは、任意のものでよいが、抵抗率が0.5Ω・cm〜10Ω・cmである単結晶シリコン又は多結晶シリコンが好ましい。
図7(第1構成例)に示すように、p型のシリコン基板101の受光面側(図中上側、第1面)に、リン等のV族の元素をドーピングしたn型の拡散層102が形成される。そして、シリコン基板101と拡散層102との間でpn接合が形成される。拡散層102の表面には、窒化ケイ素(SiN)膜等の受光面反射防止膜103、及び銀(Ag)等を用いた第1電極105(受光面側の電極、第1面電極、上面電極、受光面電極)が形成される。受光面反射防止膜103は、受光面パッシベーション膜としての機能を兼ね備えてもよい。SiN膜を用いることで、受光面反射防止膜と受光面パッシベーション膜の機能を両方兼ね備えることができる。
尚、本実施の形態の太陽電池素子は、受光面反射防止膜103を有していても有していなくてもよい。また、太陽電池素子の受光面には、表面での反射率を低減するため、凹凸構造(テクスチャー構造)が形成されることが好ましいが、本実施の形態の太陽電池素子は、テクスチャー構造を有していても有していなくてもよい。
一方、シリコン基板101の裏面側(図中下側、第2面、裏面)には、アルミニウム、ボロン等のIII族の元素をドーピングした層であるBSF(Back Surface Field)層104が形成される。ただし、本実施の形態の太陽電池素子は、BSF層104を有していても有していなくてもよい。
このシリコン基板101の裏面側には、BSF層104(BSF層104が無い場合はシリコン基板101の裏面側の表面)とコンタクト(電気的接続)をとるために、アルミニウム等で構成される第2電極106(裏面側の電極、第2面電極、裏面電極)が形成されている。
更に、図7(第1構成例)においては、BSF層104(BSF層104が無い場合はシリコン基板101の裏面側の表面)と第2電極106とが電気的に接続されているコンタクト領域(開口部OA)を除いた部分に、酸化アルミニウム及び酸化ニオブを含むパッシベーション膜(パッシベーション層)107が形成されている。本実施の形態のパッシベーション膜107は、負の固定電荷を有することが可能である。この固定電荷により、光によりシリコン基板101内で発生したキャリアのうち少数キャリアである電子を表面側へ跳ね返す。このため、短絡電流が増加し、光電変換効率が向上することが期待される。
次いで、図8に示す第2構成例について説明する。図7(第1構成例)においては、第2電極106は、コンタクト領域(開口部OA)とパッシベーション膜107上の全面に形成されているが、図8(第2構成例)においては、コンタクト領域(開口部OA)のみに第2電極106が形成されている。コンタクト領域(開口部OA)とパッシベーション膜107上の一部のみに第2電極106が形成される構成としてもよい。図8に示す構成の太陽電池素子であっても図7(第1構成例)と同様の効果を得ることができる。
次いで、図9に示す第3構成例について説明する。図9に示す第3構成例においては、BSF層104が、第2電極106とのコンタクト領域(開口部OA部)を含む裏面側の一部のみに形成され、図7(第1構成例)のように、裏面側の全面に形成されていない。このような構成の太陽電池素子(図9)であっても、図7(第1構成例)と同様の効果を得ることができる。また、図9の第3構成例の太陽電池素子によれば、BSF層104、つまり、アルミニウム、ボロン等のIII族の元素をドーピングすることでシリコン基板101よりも不純物が高い濃度でドーピングされた領域が少ないため、図7(第1構成例)より高い光電変換効率を得ることが可能である。
次いで、図10に示す第4構成例について説明する。図9(第3構成例)においては、第2電極106は、コンタクト領域(開口部OA)とパッシベーション膜107上の全面に形成されているが、図10(第4構成例)においては、コンタクト領域(開口部OA)のみに第2電極106が形成されている。コンタクト領域(開口部OA)とパッシベーション膜107上の一部のみに第2電極106が形成される構成としてもよい。図10に示す構成の太陽電池素子であっても図9(第3構成例)と同様の効果を得ることができる。
また、第2電極106を印刷法で付与し、高温で焼成することにより裏面側の全面に形成した場合は、降温過程で上に凸の反りが発生しやすい。このような反りは、太陽電池素子の破損を引き起こす場合があり、歩留りが低下する恐れがある。また、シリコン基板の薄膜化が進む際には反りの問題が大きくなる。この反りの原因は、シリコン基板よりも金属(例えばアルミニウム)よりなる第2電極106の熱膨張係数が大きく、その分、降温過程での収縮が大きいため、応力が発生することにある。
以上のことから、図8(第2構成例)及び図10(第4構成例)のように第2電極106を裏面側の全面に形成しない方が、電極構造が上下で対称になり易く、熱膨張係数の差による応力が発生しにくいため好ましい。ただし、その場合は、別途反射層を設けることが好ましい。
<太陽電池素子の製法説明>
次に、上記構成をもつ本実施の形態の太陽電池素子(図7〜図10)の製造方法の一例について説明する。ただし、本実施の形態は、以下に述べる方法で作製した太陽電池素子に限るものではない。
まず、図7等に示すシリコン基板101の表面にテクスチャー構造を形成する。テクスチャー構造の形成は、シリコン基板101の両面に形成しても、片面(受光面側)のみに形成してもよい。テクスチャー構造を形成するため、まず、シリコン基板101を加熱した水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムの溶液に浸して、シリコン基板101のダメージ層を除去する。その後、水酸化カリウム及びイソプロピルアルコールを主成分とする溶液に浸すことで、シリコン基板101の両面又は片面(受光面側)にテクスチャー構造を形成する。尚、上述したとおり、本実施の形態の太陽電池素子は、テクスチャー構造を有していても有していなくてもよいため、本工程は省略してもよい。
続いて、シリコン基板101を塩酸、フッ酸等の溶液で洗浄した後、シリコン基板101にオキシ塩化リン(POCl3)等の熱拡散により、拡散層102としてリン拡散層(n+層)を形成する。リン拡散層は、例えば、リンを含んだ塗布型のドーピング材の溶液をシリコン基板101に付与し、熱処理をすることによって形成できる。熱処理後、表面に形成されたリンガラスの層をフッ酸等の酸で除去することで、拡散層102としてリン拡散層(n+層)が形成される。リン拡散層を形成する方法は特に制限されない。リン拡散層は、シリコン基板101の表面からの深さが0.2μm〜0.5μmの範囲、シート抵抗が40Ω/□〜100Ω/□(ohm/square)の範囲となるように形成することが好ましい。
その後、シリコン基板101の裏面側にボロン、アルミニウム等を含んだ塗布型のドーピング材の溶液を付与し、熱処理を行うことで、裏面側のBSF層104を形成する。付与には、スクリーン印刷、インクジェット、ディスペンス、スピンコート等の方法を用いることができる。熱処理後、裏面に形成されたボロンガラス、アルミニウム等の層をフッ酸、塩酸等によって除去することでBSF層104が形成される。BSF層104を形成する方法は特に制限されない。好ましくは、BSF層104は、ボロン、アルミニウム等の濃度の範囲が1018cm−3〜1022cm−3となるように形成されることが好ましく、ドット状又はライン状にBSF層104を形成することが好ましい。尚、本実施の形態の太陽電池素子は、BSF層104を有していても有していなくてもよいため、本工程は省略してもよい。
また、受光面の拡散層102、及び裏面のBSF層104とも塗布型のドーピング材の溶液を用いて形成する場合は、上記のドーピング材の溶液をそれぞれシリコン基板101の両面に付与して、拡散層102としてのリン拡散層(n+層)とBSF層104の形成を一括して行い、その後、表面に形成したリンガラス、ボロンガラス等を一括して除去してもよい。
その後、拡散層102の上に、受光面反射防止膜103である窒化ケイ素膜を形成する。受光面反射防止膜103を形成する方法は特に制限されない。受光面反射防止膜103は、厚さが50〜100nmの範囲、屈折率が1.9〜2.2の範囲となるように形成することが好ましい。受光面反射防止膜103は、窒化ケイ素膜に限られず、酸化ケイ素膜、酸化アルミニウム膜、酸化チタン膜等であってもよい。窒化イ素膜等の表面反射防止膜103は、プラズマCVD、熱CVD等の方法で作製でき、350℃〜500℃の温度範囲で形成可能なプラズマCVDで作製することが好ましい。
次に、シリコン基板101の裏面側にパッシベーション膜107を形成する。パッシベーション膜107は、酸化アルミニウムと酸化ニオブを含み、例えば、熱処理(焼成)により酸化アルミニウムが得られる有機金属分解塗布型材料に代表される酸化アルミニウム前駆体と、熱処理(焼成)により酸化ニオブが得られる市販の有機金属分解塗布型材料に代表される酸化ニオブ前駆体とを含む材料(パッシベーション材料)を付与し、熱処理(焼成)することにより形成される。
パッシベーション膜107の形成は、例えば、以下のようにして行うことができる。上記の塗布型材料を、濃度0.049質量%のフッ酸で自然酸化膜をあらかじめ除去した725μm厚で8インチ(20.32cm)のp型のシリコン基板(8Ωcm〜12Ωcm)の片面に回転塗布し、ホットプレート上において120℃、3分間のプリベークを行う。その後、窒素雰囲気下で、650℃、1時間の熱処理を行う。この場合、酸化アルミニウム及び酸化ニオブを含むパッシベーション膜が得られる。上記のような方法で形成されるパッシベーション膜107のエリプソメーターにより測定される膜厚は、通常は数十nm程度である。
上記の塗布型材料は、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェットによる印刷、ディスペンサーによる印刷等の方法により、コンタクト領域(開口部OA)を含んだ所定のパターンに付与される。尚、上記の塗布型材料は、付与後、80℃〜180℃の範囲でプリベークして溶媒を蒸発させた後、窒素雰囲気下又は空気中において、600℃〜1000℃で、30分〜3時間程度の熱処理(アニール)を施し、パッシベーション膜107(酸化物の膜)とすることが好ましい。
更に、開口部(コンタクト用の孔)OAは、BSF層104上に、ドット状又はライン状に形成することが好ましい。
上記の太陽電池素子に用いるパッシベーション膜107としては、酸化ニオブと酸化アルミニウムの質量比(酸化ニオブ/酸化アルミニウム)が30/70〜90/10であることが好ましく、30/70〜80/20であることがより好ましく、35/65〜70/30であることが更に好ましい。これにより、負の固定電荷を安定化させることができる。また、酸化ニオブと酸化アルミニウムの質量比が50/50〜90/10であることが、キャリアライフタイムの向上と負の固定電荷を両立できるという観点から好ましい。
更にパッシベーション膜107において、酸化ニオブ及び酸化アルミニウムの総含有率が80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
次に、受光面側の電極である第1電極105を形成する。第1電極105は、受光面反射防止膜103上に銀(Ag)を主成分とするペーストをスクリーン印刷により形成し、熱処理(ファイアースルー)を行うことで形成される。第1電極105の形状は、任意の形状でよく、例えば、フィンガー電極とバスバー電極とからなる周知の形状でよい。
そして、裏面側の電極である第2電極106を形成する。第2電極106は、アルミニウムを主成分とするペーストをスクリーン印刷又はディスペンサーを用いて付与し、それを熱処理することによって形成できる。また、第2電極106の形状は、BSF層104の形状と同じ形状、裏面側の全面を覆う形状、櫛型状、格子状等であることが好ましい。尚、受光面側の電極である第1電極105と第2電極106とを形成するためのペーストの印刷をそれぞれ先に行って、その後、熱処理(ファイアスルー)することにより第1電極105と第2電極106とを一括して形成してもよい。
また第2電極106の形成にアルミニウム(Al)を主成分とするペーストを用いることにより、アルミニウムがドーパントとして拡散して、自己整合で第2電極106とシリコン基板101との接触部にBSF層104が形成される。尚、先に述べたように、シリコン基板101の裏面側にボロン、アルミニウム等を含んだ塗布型のドーピング材の溶液を付与し、それを熱処理することで別途BSF層104を形成してもよい。
尚、上記においては、シリコン基板101にp型のシリコンを用いた構造例及び製法例を示したが、シリコン基板101としてn型のシリコン基板も用いることができる。この場合は、拡散層102は、ボロン等のIII族の元素をドーピングした層で形成され、BSF層104は、リン等のV族の元素をドーピングして形成される。ただし、この場合は、負の固定電荷により界面に形成された反転層と裏面側の金属が接触した部分を通じて漏れ電流が流れ、変換効率が上がりにくい場合がある点に留意すべきである。
またn型のシリコン基板を用いる場合には、酸化ニオブ及び酸化アルミニウムを含むパッシベーション膜107を図11に示すように受光面側に用いることができる。図11は、本実施の形態の受光面パッシベーション膜を用いた太陽電池素子の構成例を示す断面図である。
この場合、受光面側の拡散層102は、ボロンをドーピングしてp型となっており、生成したキャリアのうち正孔を受光面側に、電子を裏面側に集める。このために、負の固定電荷をもったパッシベーション膜107が受光面側にあることが好ましい。
酸化ニオブ及び酸化アルミニウムを含むパッシベーション膜の上には、更にCVD等によりSiN等で構成される反射防止膜を形成してもよい。
以下、本実施の形態の参考実施例及び参考比較例を参照しながら詳細に説明する。
[参考実施例1−1]
熱処理(焼成)により酸化アルミニウム(Al2O3)が得られる市販の有機金属分解塗布型材料[株式会社高純度化学研究所SYM−AL04、濃度2.3質量%]を3.0gと、熱処理(焼成)により酸化ニオブ(Nb2O5)が得られる市販の有機金属分解塗布型材料[株式会社高純度化学研究所Nb−05、濃度5質量%]を3.0gとを混合して、塗布型材料であるパッシベーション材料(a−1)を調製した。
パッシベーション材料(a−1)を、濃度0.049質量%のフッ酸で自然酸化膜をあらかじめ除去した725μm厚で8インチのp型のシリコン基板(8Ωcm〜12Ωcm)の片面に回転塗布し、ホットプレート上において120℃、3分間のプリベークを行った。その後、窒素雰囲気下で、650℃、1時間の熱処理(焼成)を行い、酸化アルミニウム及び酸化ニオブを含むパッシベーション膜[酸化ニオブ/酸化アルミニウム=68/32(質量比)]を得た。エリプソメーターにより膜厚を測定したところ43nmであった。パッシベーション膜のFT−IRを測定したところ、1200cm−1付近に、ごくわずかのアルキル基に起因するピークが見られた。
次に、上記のパッシベーション膜上に、メタルマスクを介して、直径1mmのアルミ電極を複数個蒸着により形成し、MIS(Metal−Insulator−Semiconductor;金属−絶縁体−半導体)構造のキャパシタを作製した。このキャパシタの静電容量の電圧依存性(C−V特性)を市販のプローバー及びLCRメーター(HP社、4275A)により測定した。その結果、フラットバンド電圧(Vfb)が理想値の−0.81Vから、+0.32Vにシフトしたことが判明した。このシフト量からパッシベーション材料(a−1)から得たパッシベーション膜は、固定電荷密度(Nf)が−7.4×1011cm−2で負の固定電荷を示すことがわかった。
上記と同様に、パッシベーション材料(a−1)を8インチのp型のシリコン基板の両面に付与し、プリベークして、窒素雰囲気下で、650℃、1時間の熱処理(焼成)を行い、シリコン基板の両面がパッシベーション膜で覆われたサンプルを作製した。このサンプルのキャリアライフタイムをライフタイム測定装置(株式会社コベルコ科研、RTA−540)により行った。その結果、キャリアライフタイムは530μsであった。比較のために、同じ8インチのp型のシリコン基板をヨウ素パッシベーション法によりパッシベーションして測定したところ、キャリアライフタイムは、1100μsであった。
以上のことから、パッシベーション材料(a−1)を熱処理(焼成)して得られるパッシベーション膜は、ある程度のパッシベーション性能を示し、負の固定電荷を示すことがわかった。
[参考実施例1−2]
参考実施例1−1と同様に、熱処理(焼成)により酸化アルミニウム(Al2O3)が得られる市販の有機金属分解塗布型材料[株式会社高純度化学研究所、SYM−AL04、濃度2.3質量%]と、熱処理(焼成)により酸化ニオブ(Nb2O5)が得られる市販の有機金属分解塗布型材料[株式会社高純度化学研究所、Nb−05、濃度5質量%]とを、比率を変えて混合して、表4に示すパッシベーション材料(a−2)〜(a−7)を調製した。
参考実施例1−1と同様に、パッシベーション材料(a−2)〜(a−7)のそれぞれをp型のシリコン基板の片面に付与し、熱処理(焼成)してパッシベーション膜を作製した。得られたパッシベーション膜の静電容量の電圧依存性を測定し、そこから固定電荷密度を算出した。
更に、参考実施例1−1と同様に、パッシベーション材料をp型のシリコン基板の両面に付与し、熱処理(焼成)して得たサンプルを用いて、キャリアライフタイムを測定した。得られた結果を表4にまとめた。
熱処理(焼成)後の酸化ニオブ/酸化アルミニウムの比率(質量比)により、異なる結果ではあるが、パッシベーション材料(a−2)〜(a−7)については、熱処理(焼成)後にキャリアライフタイムもある程度の値を示していることから、パッシベーション膜として機能することが示唆された。パッシベーション材料(a−2)〜(a−7)から得られるパッシベーション膜は、いずれも安定的に負の固定電荷を示し、p型のシリコン基板のパッシベーションとしても好適に用いることができることが分かった。
[参考実施例1−3]
市販のニオブ(V)エトキシド(構造式:Nb(OC2H5)5、分子量:318.21)を3.18g(0.010mol)と、市販のアルミニウムトリイソプロポキシド(構造式:Al(OCH(CH3)2)3、分子量:204.25)を1.02g(0.005mol)とをシクロヘキサン80gに溶解して、濃度5質量%のパッシベーション材料(c−1)を調製した。
パッシベーション材料(c−1)を、濃度0.049質量%のフッ酸で自然酸化膜をあらかじめ除去した725μm厚で8インチのp型のシリコン基板(8Ωcm〜12Ωcm)の片面に回転塗布し、ホットプレート上において120℃、3分間のプリベークをした。その後、窒素雰囲気下で、600℃、1時間の熱処理(焼成)を行い、酸化アルミニウム及び酸化ニオブを含むパッシベーション膜を得た。エリプソメーターにより膜厚を測定したところ50nmであった。元素分析の結果、Nb/Al/C=81/14/5(質量%)であることがわかった。パッシベーション膜のFT−IRを測定したところ、1200cm−1付近に、ごくわずかのアルキル基に起因するピークが見られた。
次に、上記のパッシベーション膜上に、メタルマスクを介して、直径1mmのアルミ電極を複数個蒸着により形成し、MIS(Metal−Insulator−Semiconductor;金属−絶縁体−半導体)構造のキャパシタを作製した。このキャパシタの静電容量の電圧依存性(C−V特性)を市販のプローバー及びLCRメーター(HP社、4275A)により測定した。その結果、フラットバンド電圧(Vfb)が理想値の−0.81Vから、+4.7Vにシフトしたことが判明した。このシフト量からパッシベーション材料(c−1)から得たパッシベーション膜は、固定電荷密度(Nf)が−3.2×1012cm−2で負の固定電荷を示すことがわかった。
上記と同様に、パッシベーション材料(c−1)を8インチのp型のシリコン基板の両面に付与し、プリベークして、窒素雰囲気下で、600℃、1時間の熱処理(焼成)を行い、シリコン基板の両面がパッシベーション膜で覆われたサンプルを作製した。このサンプルのキャリアライフタイムをライフタイム測定装置(株式会社コベルコ科研、RTA−540)により行った。その結果、キャリアライフタイムは330μsであった。比較のために、同じ8インチのp型のシリコン基板をヨウ素パッシベーション法によりパッシベーションして測定したところ、キャリアライフタイムは、1100μsであった。
以上のことから、パッシベーション材料(c−1)を熱処理(焼成)して得られるパッシベーション膜は、ある程度のパッシベーション性能を示し、負の固定電荷を示すことがわかった。
[参考実施例1−4]
市販のニオブ(V)エトキシド(構造式:Nb(OC2H5)5、分子量:318.21)を2.35g(0.0075mol)と、市販のアルミニウムトリイソプロポキシド(構造式:Al(OCH(CH3)2)3、分子量:204.25)を1.02g(0.005mol)と、ノボラック樹脂10gとを、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート10gとシクロヘキサン10gに溶解して、パッシベーション材料(c−2)を調製した。
パッシベーション材料(c−2)を、濃度0.049質量%のフッ酸で自然酸化膜をあらかじめ除去した725μm厚で8インチのp型のシリコン基板(8Ωcm〜12Ωcm)の片面に回転塗布し、ホットプレート上において120℃、3分間のプリベークをした。その後、窒素雰囲気下で、600℃、1時間の熱処理(焼成)を行い、酸化アルミニウム及び酸化ニオブを含むパッシベーション膜を得た。エリプソメーターにより膜厚を測定したところ14nmであった。元素分析の結果、Nb/Al/C=75/17/8(質量%)であることがわかった。パッシベーション膜のFT−IRを測定したところ、1200cm−1付近に、ごくわずかのアルキル基に起因するピークが見られた。
次に、上記のパッシベーション膜上に、メタルマスクを介して、直径1mmのアルミ電極を複数個蒸着して形成し、MIS(Metal−Insulator−Semiconductor;金属−絶縁体−半導体)構造のキャパシタを作製した。このキャパシタの静電容量の電圧依存性(C−V特性)を市販のプローバー及びLCRメーター(HP社、4275A)により測定した。その結果、フラットバンド電圧(Vfb)が理想値の−0.81Vから、+0.10Vにシフトしたことが判明した。このシフト量からパッシベーション材料(c−2)から得たパッシベーション膜は、固定電荷密度(Nf)が−0.8×1011cm−2で負の固定電荷を示すことがわかった。
上記と同様に、パッシベーション材料(c−2)を8インチのp型のシリコン基板の両面に付与し、プリベークして、窒素雰囲気下で、600℃、1時間の熱処理(焼成)を行い、シリコン基板の両面がパッシベーション膜で覆われたサンプルを作製した。このサンプルのキャリアライフタイムをライフタイム測定装置(株式会社コベルコ科研コ、RTA−540)により行った。その結果、キャリアライフタイムは200μsであった。比較のために、同じ8インチのp型のシリコン基板をヨウ素パッシベーション法によりパッシベーションして測定したところ、キャリアライフタイムは、1100μsであった。
以上のことから、パッシベーション材料(c−2)から得られるパッシベーション膜は、ある程度のパッシベーション性能を示し、負の固定電荷を示すことがわかった。
[参考実施例1−5及び参考比較例1−1]
参考実施例1−1と同様に、熱処理(焼成)により酸化アルミニウム(Al2O3)が得られる市販の有機金属分解塗布型材料[株式会社高純度化学研究所SYM−AL04、濃度2.3質量%]と、熱処理(焼成)により酸化ニオブ(Nb2O5)が得られる市販の有機金属分解塗布型材料[株式会社高純度化学研究所Nb−05、濃度5質量%]とを、比率を変えて混合して、表5に示すパッシベーション材料(b−1)〜(b−7)を調製した。
参考実施例1−1と同様に、パッシベーション材料(b−1)〜(b−7)のそれぞれをp型のシリコン基板の片面に付与し、熱処理(焼成)して、パッシベーション膜を作製し、それを用いて、静電容量の電圧依存性を測定し、そこから固定電荷密度を算出した。
更に、参考実施例1−1と同様に、パッシベーション材料(塗布型材料)をp型のシリコン基板の両面に付与し、硬化させたサンプルを用いて、キャリアライフタイムを測定した。得られた結果を表5にまとめた。
パッシベーション材料(b−1)〜(b−6)から得られるパッシベーション膜は、キャリアライフタイムがいずれも大きくパッシベーションとしての機能があることがわかった。また、酸化ニオブ/酸化アルミニウムが10/90及び20/80の場合には、固定電荷密度の値にばらつきが大きく、負の固定電荷密度を安定的に得ることができなかったが、酸化アルミニウムと酸化ニオブを用いることで負の固定電荷密度を実現できることが確認できた。酸化ニオブ/酸化アルミニウムが10/90及び20/80のパッシベーション材料を用いてCV法により測定した際には、場合によって正の固定電荷を示すパッシベーション膜となるため、負の固定電荷を安定的に示すまでには至っていないことが分かる。なお、正に固定電荷を示すパッシベーション膜は、n型のシリコン基板のパッシベーションとして使用可能である。一方、酸化アルミニウムが100質量%となるパッシベーション材料(b−7)では、負の固定電荷密度を得ることができなかった。
[参考比較例1−2]
パッシベーション材料(d−1)として、熱処理(焼成)により酸化チタン(TiO2)が得られる市販の有機金属分解塗布型材料[株式会社高純度化学研究所Ti−03−P、濃度3質量%]、パッシベーション材料(d−2)として、熱処理(焼成)によりチタン酸バリウム(BaTiO3)が得られる市販の有機金属分解塗布型材料[株式会社高純度化学研究所BT−06、濃度6質量%]、パッシベーション材料(d−3)として、熱処理(焼成)により酸化ハフニウム(HfO2)が得られる市販の有機金属分解塗布型材料[株式会社高純度化学研究所Hf−05、濃度5質量%]を準備した。
参考実施例1−1と同様に、パッシベーション材料(d−1)〜(d−3)のそれぞれをp型のシリコン基板の片面に付与し、その後、熱処理(焼成)して、パッシベーション膜を作製し、それを用いて、静電容量の電圧依存性を測定し、そこから固定電荷密度を算出した。
更に、参考実施例1−1と同様に、パッシベーション材料をp型のシリコン基板の両面に付与し、熱処理(焼成)により得たサンプルを用いて、キャリアライフタイムを測定した。得られた結果を表6にまとめた。
パッシベーション材料(d−1)〜(d−3)から得られるパッシベーション膜は、キャリアライフタイムがいずれも小さくパッシベーションとしての機能が不充分であることがわかった。また、正の固定電荷を示した。パッシベーション材料(d−3)から得られるパッシベーション膜は、負の固定電荷ではあるが、その値が小さかった。またキャリアライフタイムも比較的小さくパッシベーションとして機能が不十分であることがわかった。
[参考実施例1−6]
シリコン基板101として、ボロンをドーパントした単結晶シリコン基板を用いて、図9に示す構造の太陽電池素子を作製した。シリコン基板101の表面をテクスチャー処理した後、塗布型のリン拡散材を受光面側に付与し、熱処理により拡散層102(リン拡散層)を形成した。その後、塗布型のリン拡散材を希フッ酸で除去した。
次に、受光面側に、受光面反射防止膜103として、プラズマCVDで作製したSiN膜を形成した。その後、参考実施例1−1で調製したパッシベーション材料(a−1)をインクジェット法により、シリコン基板101の裏面側に、コンタクト領域(開口部OA)を除いた領域に付与した。その後、熱処理を行って、開口部OAを有するパッシベーション膜107を形成した。
また、パッシベーション膜107として、参考実施例1−3で調製したパッシベーション材料(c−1)を用いたサンプルも別途作製した。
次に、シリコン基板101の受光面側に形成された受光面反射防止膜103(SiN膜)の上に、銀を主成分とするペーストを所定のフィンガー電極及びバスバー電極の形状でスクリーン印刷した。裏面側においては、アルミニウムを主成分とするペーストを全面にスクリーン印刷した。その後、850℃で熱処理(ファイアスルー)を行って、電極(第1電極105及び第2電極106)を形成し、且つ裏面の開口部OAの部分にアルミニウムを拡散させて、BSF層104を形成して、図9に示す構造の太陽電池素子を形成した。
尚、ここでは、受光面の銀電極に関しては、SiN膜に穴あけをしないファイアスルー工程を記載したが、SiN膜に初めに開口部OAをエッチング等により形成し、その後に銀電極を形成することもできる。
比較のために、上記作製工程のうち、パッシベーション膜107の形成を行わず、裏面側の全面にアルミニウムペーストを印刷し、BSF層104と対応するp+層114及び第2電極と対応する電極116を全面に形成して、図6に示す構造の太陽電池素子を形成した。これらの太陽電池素子について、特性評価(短絡電流、開放電圧、曲線因子及び変換効率)を行った。特性評価は、JIS−C−8913(2005年度)及びJIS−C−8914(2005年度)に準拠して測定した。その結果を表7に示す。
表7より、酸化ニオブ及び酸化アルミニウム層を含むパッシベーション膜107を有する太陽電池素子は、パッシベーション膜107を有しない太陽電池素子と比較すると、短絡電流及び開放電圧が共に増加しており、変換効率(光電変換効率)が最大で1%向上することが判明した。
<参考実施形態2>
以下は、参考実施形態2に係るパッシベーション膜、塗布型材料、太陽電池素子及びパッシベーション膜付シリコン基板である。
<1>酸化アルミニウムと、酸化バナジウム及び酸化タンタルからなる群より選択される少なくとも1種のバナジウム族元素の酸化物と、を含み、シリコン基板を有する太陽電池素子に用いられるパッシベーション膜。
<2>前記バナジウム族元素の酸化物と前記酸化アルミニウムの質量比(バナジウム族元素の酸化物/酸化アルミニウム)が30/70〜90/10である<1>に記載のパッシベーション膜。
<3>前記バナジウム族元素の酸化物及び前記酸化アルミニウムの総含有率が90%以上である<1>又は<2>に記載のパッシベーション膜。
<4>前記バナジウム族元素の酸化物として、酸化バナジウム、酸化ニオブ及び酸化タンタルよりなる群から選択される2種又は3種のバナジウム族元素の酸化物を含む<1>〜<3>のいずれか1項に記載のパッシベーション膜。
<5>酸化アルミニウムの前駆体と、酸化バナジウムの前駆体及び酸化タンタルの前駆体からなる群より選択される少なくとも1種のバナジウム族元素の酸化物の前駆体と、を含む塗布型材料の熱処理物である<1>〜<4>のいずれか1項に記載のパッシベーション膜。
<6>酸化アルミニウムの前駆体と、酸化バナジウムの前駆体及び酸化タンタルの前駆体からなる群より選択される少なくとも1種のバナジウム族元素の酸化物の前駆体と、を含み、シリコン基板を有する太陽電池素子のパッシベーション膜の形成に用いられる塗布型材料。
<7>p型のシリコン基板と、
前記シリコン基板の受光面側である第1面側に形成されたn型の不純物拡散層と、
前記不純物拡散層上に形成された第1電極と、
前記シリコン基板の受光面側とは逆の第2面側に形成され、開口部を有するパッシベーション膜と、
前記シリコン基板の第2面側に形成され、前記シリコン基板の第2面側と前記パッシベーション膜の開口部を通して電気的に接続されている第2電極と、を備え、
前記パッシベーション膜は、酸化アルミニウムと、酸化バナジウム及び酸化タンタルからなる群より選択される少なくとも1種のバナジウム族元素の酸化物と、を含む太陽電池素子。
<8>前記シリコン基板の第2面側の一部又は全部に形成され、前記シリコン基板より高濃度に不純物が添加されたp型の不純物拡散層を有し、
前記第2電極は、前記p型の不純物拡散層と前記パッシベーション膜の開口部を通して電気的に接続されている、<7>に記載の太陽電池素子。
<9>n型のシリコン基板と、
前記シリコン基板の受光面側である第1面側に形成されたp型の不純物拡散層と、
前記不純物拡散層上に形成された第1電極と、
前記シリコン基板の受光面側とは逆の第2面側に形成され、開口部を有するパッシベーション膜と、
前記シリコン基板の第2面側に形成され、前記シリコン基板の第2面側と前記パッシベーション膜の開口部を通して電気的に接続されている第2電極と、を備え、
前記パッシベーション膜は、酸化アルミニウムと、酸化バナジウム及び酸化タンタルからなる群より選択される少なくとも1種のバナジウム族元素の酸化物と、を含む太陽電池素子。
<10>前記シリコン基板の第2面側の一部又は全部に形成され、前記シリコン基板より高濃度に不純物が添加されたn型の不純物拡散層を有し、
前記第2電極は、前記n型の不純物拡散層と前記パッシベーション膜の開口部を通して電気的に接続されている、<9>に記載の太陽電池素子。
<11>前記パッシベーション膜の前記バナジウム族元素の酸化物と前記酸化アルミニウムの質量比が30/70〜90/10である、<7>〜<10>のいずれか1項に記載の太陽電池素子。
<12>前記パッシベーション膜の前記バナジウム族元素の酸化物及び前記酸化アルミニウムの総含有率が90%以上である、<7>〜<11>のいずれか1項に記載の太陽電池素子。
<13>前記バナジウム族元素の酸化物として、酸化バナジウム、酸化ニオブ、及び酸化タンタルよりなる群から選択される2種又は3種のバナジウム族元素の酸化物を含む、<7>〜<12>のいずれか1項に記載の太陽電池素子。
<14>シリコン基板と、
前記シリコン基板上の全面又は一部に設けられる<1>〜<5>のいずれか1項に記載の太陽電池素子用パッシベーション膜と、
を有するパッシベーション膜付シリコン基板。
上記の参考実施形態によれば、シリコン基板のキャリアライフタイムを長くし且つ負の固定電荷を有するパッシベーション膜を低コストで実現することができる。また、そのパッシベーション膜の形成を実現するための塗布型材料を提供することができる。また、そのパッシベーション膜を用いた低コストで効率の高い太陽電池素子を実現することができる。また、シリコン基板のキャリアライフタイムを長くし且つ負の固定電荷を有するパッシベーション膜付シリコン基板を低コストで実現することができる。
本実施の形態のパッシベーション膜は、シリコン太陽電池素子に用いられるパッシベーション膜であり、酸化アルミニウムと、酸化バナジウム及び酸化タンタルからなる群より選択される少なくとも1種のバナジウム族元素の酸化物と、を含むようにしたものである。
また、本実施の形態では、パッシベーション膜の組成を変えることにより、パッシベーション膜が有する固定電荷の量を制御することができる。ここで、バナジウム族元素とは、周期律表の第5族元素であり、バナジウム、ニオブ及びタンタルから選ばれる元素である。
また、バナジウム族元素の酸化物と酸化アルミニウムの質量比が35/65〜90/10であることが、負の固定電荷を安定化できるという観点からより好ましく、50/50〜90/10であることが更に好ましい。
パッシベーション膜中のバナジウム族元素の酸化物と酸化アルミニウムの質量比は、エネルギー分散型X線分光法(EDX)、二次イオン質量分析法(SIMS)及び高周波誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)によって測定することができる。具体的な測定条件は、例えばICP−MSの場合は次の通りである。パッシベーション膜を酸又はアルカリ水溶液に溶解し、この溶液を霧状にしてArプラズマに導入し、励起された元素が基底状態に戻る際に放出される光を分光して波長及び強度を測定し、得られた波長から元素の定性を行い、得られた強度から定量を行う。
パッシベーション膜中のバナジウム族元素の酸化物及び酸化アルミニウムの総含有率は80質量%以上であることが好ましく、良好な特性を維持できる観点から90質量%以上であることがより好ましい。パッシベーション膜中のバナジウム族元素の酸化物及び酸化アルミニウム以外の成分が多くなると、負の固定電荷の効果が大きくなる。
また、パッシベーション膜中には、膜質の向上及び弾性率の調整の観点から、バナジウム族元素の酸化物及び酸化アルミニウム以外の成分が有機成分として含まれていてもよい。パッシベーション膜中の有機成分の存在は、元素分析及び膜のFT−IRの測定から確認することができる。
前記バナジウム族元素の酸化物としては、より大きい負の固定電荷を得る観点からは、酸化バナジウム(V2O5)を選択することが好ましい。
前記パッシベーション膜は、バナジウム族元素の酸化物として、酸化バナジウム、酸化ニオブ及び酸化タンタルからなる群より選択される2種又は3種のバナジウム族元素の酸化物を含んでもよい。
前記パッシベーション膜は、塗布型材料を熱処理することにより得られることが好ましく、塗布型材料を塗布法や印刷法を用いて成膜し、その後に熱処理により有機成分を除去することにより得られることがより好ましい。すなわち、パッシベーション膜は、酸化アルミニウム前駆体及びバナジウム族元素の酸化物の前駆体を含む塗布型材料の熱処理物として得てもよい。塗布型材料の詳細を後述する。
本実施の形態の塗布型材料は、シリコン基板を有する太陽電池素子用のパッシベーション膜に用いる塗布型材料であって、酸化アルミニウムの前駆体と、酸化バナジウムの前駆体及び酸化タンタルの前駆体からなる群より選択される少なくとも1種のバナジウム族元素の酸化物の前駆体と、を含む。塗布型材料が含有するバナジウム族元素の酸化物の前駆体としては、塗布材料より形成されるパッシベーション膜の負の固定電荷の観点からは、酸化バナジウム(V2O5)の前駆体を選択することが好ましい。塗布型材料は、バナジウム族元素の酸化物の前駆体として、酸化バナジウムの前駆体、酸化ニオブの前駆体及び酸化タンタルの前駆体からなる群より選択される2種又は3種のバナジウム族元素の酸化物の前駆体を含んでもよい。
酸化アルミニウム前駆体は、酸化アルミニウムを生成するものであれば、特に限定されることなく用いることができる。酸化アルミニウム前駆体としては、酸化アルミニウムをシリコン基板上に均一に分散させる点、及び化学的に安定な観点から、有機系の酸化アルミニウム前駆体を用いることが好ましい。有機系の酸化アルミニウム前駆体の例として、アルミニウムトリイソプロポキシド(構造式:Al(OCH(CH3)2)3、(株)高純度化学研究所、SYM−AL04を挙げることができる。
バナジウム族元素の酸化物の前駆体は、バナジウム族元素の酸化物を生成するものであれば、特に限定されることなく用いることができる。バナジウム族元素の酸化物の前駆体としては、酸化アルミニウムをシリコン基板上に均一に分散させる点、及び化学的に安定な観点から有機系のバナジウム族元素の酸化物の前駆体を用いることが好ましい。
有機系の酸化バナジウムの前駆体の例としては、バナジウム(V)オキシトリエトキシド(構造式:VO(OC2H5)3、分子量:202.13)、(株)高純度化学研究所、V−02を挙げることができる。有機系の酸化タンタルの前駆体の例としては、タンタル(V)メトキシド(構造式:Ta(OCH3)5、分子量:336.12)、(株)高純度化学研究所、Ta−10−Pを挙げることができる。有機系の酸化ニオブ前駆体の例としては、ニオブ(V)エトキシド(構造式:Nb(OC2H5)5、分子量:318.21)、(株)高純度化学研究所、Nb−05を挙げることができる。
有機系のバナジウム族元素の酸化物の前駆体及び有機系の酸化アルミニウム前駆体を含む塗布型材料を塗布法又は印刷法を用いて成膜し、その後の熱処理により有機成分を除去することにより、パッシベーション膜を得ることができる。したがって、結果として、有機成分を含むパッシベーション膜であってもよい。パッシベーション膜中の有機成分の含有率は、10質量%未満であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
本実施の形態の太陽電池素子(光電変換装置)は、シリコン基板の光電変換界面の近傍に上記実施の形態で説明したパッシベーション膜(絶縁膜、保護絶縁膜)、すなわち、酸化アルミニウムと、酸化バナジウム及び酸化タンタルからなる群より選択される少なくとも1種のバナジウム族元素の酸化物とを含む膜を有するものである。酸化アルミニウムと、酸化バナジウム及び酸化タンタルからなる群より選択される少なくとも1種のバナジウム族元素の酸化物とを含むことにより、シリコン基板のキャリアライフタイムを長くし且つ負の固定電荷を有することができ、太陽電池素子の特性(光電変換効率)を向上させることができる。
本実施の形態に係る太陽電池素子の構造説明及び製法説明は、参考実施形態1に係る太陽電池素子の構造説明及び製法説明を参照することができる。
以下、本実施の形態の参考実施例及び参考比較例を参照しながら詳細に説明する。
<バナジウム族元素の酸化物として酸化バナジウムを使用した場合>
[参考実施例2−1]
熱処理(焼成)により酸化アルミニウム(Al2O3)が得られる市販の有機金属薄膜塗布型材料[(株)高純度化学研究所、SYM−AL04、濃度2.3質量%]を3.0gと、熱処理(焼成)により酸化バナジウム(V2O5)が得られる市販の有機金属薄膜塗布型材料[(株)高純度化学研究所、V−02、濃度2質量%]を6.0gとを混合して、塗布型材料であるパッシベーション材料(a2−1)を調製した。
パッシベーション材料(a2−1)を、濃度0.49質量%のフッ酸で自然酸化膜をあらかじめ除去した725μm厚で8インチのp型のシリコン基板(8Ω・cm〜12Ω・cm)の片面に回転塗布し、ホットプレート上に置いて120℃、3分間のプリベークを行った。その後、窒素雰囲気下で、700℃、30分の熱処理(焼成)を行い、酸化アルミニウム及び酸化バナジウムを含むパッシベーション膜[酸化バナジウム/酸化アルミニウム=63/37(質量%)]を得た。エリプソメーターにより膜厚を測定したところ51nmであった。パッシベーション膜のFT−IRを測定したところ、1200cm−1付近に、ごくわずかのアルキル基に起因するピークが見られた。
次に、上記のパッシベーション膜上に、メタルマスクを介して、直径1mmのアルミ電極を複数個蒸着により形成し、MIS(metal-insulator-semiconductor;金属−絶縁体−半導体)構造のキャパシタを作製した。このキャパシタの静電容量の電圧依存性(C−V特性)を市販のプローバー及びLCRメーター(HP社、4275A)により測定した。その結果、フラットバンド電圧(Vfb)が理想値の−0.81Vから、+0.02Vにシフトしたことが判明した。このシフト量からパッシベーション材料(a2−1)から得たパッシベーション膜は、固定電荷密度(Nf)が−5.2×1011cm−2で負の固定電荷を示すことがわかった。
上記と同様に、パッシベーション材料(a2−1)を8インチのp型のシリコン基板の両面に塗布し、プリベークして、窒素雰囲気下で、650℃、1時間の熱処理(焼成)を行い、シリコン基板の両面がパッシベーション膜で覆われたサンプルを作製した。このサンプルのキャリアライフタイムをライフタイム測定装置((株)コベルコ科研、RTA−540)により測定した。その結果、キャリアライフタイムは400μsであった。比較のために、同じ8インチのp型のシリコン基板をヨウ素パッシベーション法によりパッシベーションして測定したところ、キャリアライフタイムは、1100μsであった。また、サンプルの作製から14日後に、再度キャリアライフタイムを測定したところ、キャリアライフタイムは380μsであった。これにより、キャリアライフタイムの低下(400μsから380μs)は−10%以内となり、キャリアライフタイムの低下が小さいことがわかった。
以上のことから、パッシベーション材料(a2−1)を熱処理(焼成)して得られるパッシベーション膜は、ある程度のパッシベーション性能を示し、負の固定電荷を示すことがわかった。
[参考実施例2−2]
参考実施例2−1と同様に、熱処理(焼成)により酸化アルミニウム(Al2O3)が得られる市販の有機金属薄膜塗布型材料[(株)高純度化学研究所、SYM−AL04、濃度2.3質量%]と、熱処理により酸化バナジウム(V2O5)が得られる市販の有機金属薄膜塗布型材料[(株)高純度化学研究所、V−02、濃度2質量%]とを、比率を変えて混合して、表8に示すパッシベーション材料(a2−2)〜(a2−7)を調製した。
参考実施例2−1と同様に、パッシベーション材料(a2−2)〜(a2−7)のそれぞれをp型のシリコン基板の片面に塗布し、熱処理(焼成)してパッシベーション膜を作製した。得られたパッシベーション膜の静電容量の電圧依存性を測定し、そこから固定電荷密度を算出した。
更に、参考実施例2−1と同様に、パッシベーション材料をp型のシリコン基板の両面に塗布し、熱処理(焼成)して得たサンプルを用いて、キャリアライフタイムを測定した。
得られた結果を表8にまとめた。またサンプルの作製から14日後に、再度キャリアライフタイムを測定したところ、キャリアライフタイムの低下は、表8に示すパッシベーション材料(a2−2)〜(a2−7)を用いたパッシベーション膜のいずれも−10%以内であり、キャリアライフタイムの低下が小さいことがわかった。
熱処理(焼成)後の酸化バナジウム/酸化アルミニウムの比率(質量比)により、異なる結果ではあるが、パッシベーション材料(a2−2)〜(a2−7)については、熱処理(焼成)後にいずれも負の固定電荷を示し、キャリアライフタイムもある程度の値を示していることから、パッシベーション膜として機能することが示唆された。パッシベーション材料(a2−2)〜(a2−7)から得られるパッシベーション膜は、いずれも安定的に負の固定電荷を示し、p型のシリコン基板のパッシベーションとしても好適に用いることができることが分かった。
[参考実施例2−3]
熱処理(焼成)により酸化バナジウム(V2O5)が得られる化合物として、市販のバナジウム(V)オキシトリエトキシド(構造式:VO(OC2H5)3、分子量:202.13)を1.02g(0.010mol)と、熱処理(焼成)により酸化アルミニウム(Al2O3)が得られる化合物として、市販のアルミニウムトリイソプロポキシド(構造式:Al(OCH(CH3)2)3、分子量:204.25)を2.04g(0.010mol)とをシクロヘキサン60gに溶解して、濃度5質量%のパッシベーション材料(b2−1)を調製した。
パッシベーション材料(b2−1)を、濃度0.49質量%のフッ酸で自然酸化膜をあらかじめ除去した725μm厚で8インチのp型のシリコン基板(8Ω・cm〜12Ω・cm)の片面に回転塗布し、ホットプレート上において120℃、3分間のプリベークを行った。その後、窒素雰囲気下で、650℃、1時間の熱処理(焼成)を行い、酸化アルミニウム及び酸化バナジウムを含むパッシベーション膜を得た。エリプソメーターにより膜厚を測定したところ、60nmであった。元素分析の結果、V/Al/C=64/33/3(質量%)であることがわかった。パッシベーション膜のFT−IRを測定したところ、1200cm−1付近に、ごくわずかのアルキル基に起因するピークが見られた。
次に、上記のパッシベーション膜上に、メタルマスクを介して、直径1mmのアルミ電極を複数個蒸着により形成し、MIS(metal-insulator-semiconductor;金属−絶縁体−半導体)構造のキャパシタを作製した。このキャパシタの静電容量の電圧依存性(C−V特性)を市販のプローバー及びLCRメーター(HP社、4275A)により測定した。その結果、フラットバンド電圧(Vfb)が理想値の−0.81Vから、+0.10Vにシフトしたことが判明した。このシフト量からパッシベーション材料(b2−1)から得たパッシベーション膜は、固定電荷密度(Nf)が−6.2×1011cm−2で負の固定電荷を示すことがわかった。
上記と同様に、パッシベーション材料(b2−1)を8インチのp型のシリコン基板の両面に塗布し、プリベークして、窒素雰囲気下で、600℃、1時間の熱処理(焼成)を行い、シリコン基板の両面がパッシベーション膜で覆われたサンプルを作製した。このサンプルのキャリアライフタイムをライフタイム測定装置((株)コベルコ科研、RTA−540)により行った。その結果、キャリアライフタイムは400μsであった。比較のために、同じ8インチのp型のシリコン基板をヨウ素パッシベーション法によりパッシベーションして測定したところ、キャリアライフタイムは、1100μsであった。
以上のことから、パッシベーション材料(b2−1)を熱処理(焼成)して得られるパッシベーション膜は、ある程度のパッシベーション性能を示し、負の固定電荷を示すことがわかった。
[参考実施例2−4]
市販のバナジウム(V)オキシトリエトキシド(構造式:VO(OC2H5)3、分子量:202.13)を1.52g(0.0075mol)と、市販のアルミニウムトリイソプロポキシド(構造式:Al(OCH(CH3)2)3、分子量:204.25)を1.02g(0.005mol)と、ノボラック樹脂10gとを、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート10gとシクロヘキサン10gに溶解して、パッシベーション材料(b2−2)を調製した。
パッシベーション材料(b2−2)を、濃度0.49質量%のフッ酸で自然酸化膜をあらかじめ除去した725μm厚で8インチのp型のシリコン基板(8Ω・cm〜12Ω・cm)の片面に回転塗布し、ホットプレート上に置いて120℃、3分間のプリベークを行った。その後、窒素雰囲気下で、650℃、1時間の加熱を行い、酸化アルミニウム及び酸化バナジウムを含むパッシベーション膜を得た。エリプソメーターにより膜厚を測定したところ、22nmであった。元素分析の結果、V/Al/C=71/22/7(質量%)であることがわかった。パッシベーション膜のFT−IRを測定したところ、1200cm−1付近に、ごくわずかのアルキル基に起因するピークが見られた。
次に、上記のパッシベーション膜上に、メタルマスクを介して、直径1mmのアルミ電極を複数個蒸着により形成し、MIS(metal-insulator-semiconductor;金属−絶縁体−半導体)構造のキャパシタを作製した。このキャパシタの静電容量の電圧依存性(C−V特性)を市販のプローバー及びLCRメーター(HP社、4275A)により測定した。その結果、フラットバンド電圧(Vfb)が理想値の−0.81Vから、+0.03Vにシフトしたことが判明した。このシフト量からパッシベーション材料(b2−2)から得たパッシベーション膜は、固定電荷密度(Nf)が−2.0×1011cm−2で負の固定電荷を示すことがわかった。
上記と同様に、パッシベーション材料(b2−2)を8インチのp型のシリコン基板の両面に塗布し、プリベークして、窒素雰囲気下で、600℃、1時間の熱処理(焼成)を行い、シリコン基板の両面がパッシベーション膜で覆われたサンプルを作製した。このサンプルのキャリアライフタイムをライフタイム測定装置((株)コベルコ科研、RTA−540)により行った。その結果、キャリアライフタイムは170μsであった。比較のために、同じ8インチのp型のシリコン基板をヨウ素パッシベーション法によりパッシベーションして測定したところ、キャリアライフタイムは、1100μsであった。
以上のことから、パッシベーション材料(b2−2)が硬化したパッシベーション膜は、ある程度のパッシベーション性能を示し、負の固定電荷を示すことがわかった。
<バナジウム族元素の酸化物として酸化タンタルを使用した場合>
[参考実施例2−5]
熱処理(焼成)により酸化アルミニウム(Al2O3)が得られる市販の有機金属薄膜塗布型材料[(株)高純度化学研究所、SYM−AL04、濃度2.3質量%]と、熱処理により酸化タンタル(Ta2O5)が得られる市販の有機金属薄膜塗布型材料[(株)高純度化学研究所、Ta−10−P、濃度10質量%]とを比率を変えて混合して、表9に示すパッシベーション材料(c2−1)〜(c2−6)を調製した。
パッシベーション材料(c2−1)〜(c2−6)のそれぞれを濃度0.49質量%のフッ酸で自然酸化膜をあらかじめ除去した725μm厚で8インチのp型のシリコン基板(8Ω・cm〜12Ω・cm)の片面に回転塗布し、ホットプレート上に置いて120℃、3分間のプリベークを行った。その後、窒素雰囲気下で、700℃、30分の熱処理(焼成)を行い、酸化アルミニウム及び酸化タンタルを含むパッシベーション膜を得た。このパッシベーション膜を用いて、静電容量の電圧依存性を測定し、そこから固定電荷密度を算出した。
次いで、パッシベーション材料(c2−1)〜(c2−6)のそれぞれを8インチのp型のシリコン基板の両面に塗布し、プリベークして、窒素雰囲気下で、650℃、1時間の熱処理(焼成)を行い、シリコン基板の両面がパッシベーション膜で覆われたサンプルを作製した。このサンプルのキャリアライフタイムをライフタイム測定装置((株)コベルコ科研、RTA−540)により行った。
得られた結果を表9にまとめた。またサンプルの作製から14日後に、再度キャリアライフタイムを測定したところ、キャリアライフタイムの低下は、表9に示すパッシベーション材料(c2−1)〜(c2−6)を用いたパッシベーション膜のいずれも−10%以内であり、キャリアライフタイムの低下が小さいことがわかった。
熱処理(焼成)後の酸化タンタル/酸化アルミニウムの比率(質量比)により、異なる結果ではあるが、パッシベーション材料(c2−1)〜(c2−6)については、熱処理(焼成)後にいずれも負の固定電荷を示し、キャリアライフタイムもある程度の値を示していることから、パッシベーション膜として機能することが示唆された。
[参考実施例2−6]
熱処理(焼成)により酸化タンタル(Ta2O5)が得られる化合物として、市販のタンタル(V)メトキシド(構造式:Ta(OCH3)5、分子量:336.12)を1.18g(0.0025mol)と、熱処理(焼成)により酸化アルミニウム(Al2O3)が得られる化合物として、市販のアルミニウムトリイソプロポキシド(構造式:Al(OCH(CH3)2)3、分子量:204.25)を2.04g(0.010mol)とをシクロヘキサン60gに溶解して、濃度5質量%のパッシベーション材料(d2−1)を調製した。
パッシベーション材料(d2−1)を、濃度0.49質量%のフッ酸で自然酸化膜をあらかじめ除去した725μm厚で8インチのp型のシリコン基板(8Ω・cm〜12Ω・cm)の片面に回転塗布し、ホットプレート上に置いて120℃、3分間のプリベークをした。その後、窒素雰囲気下で、700℃、1時間の加熱を行い、酸化アルミニウム及び酸化タンタルを含むパッシベーション膜を得た。エリプソメーターにより膜厚を測定したところ、40nmであった。元素分析の結果、Ta/Al/C=75/22/3(wt%)であることがわかった。パッシベーション膜のFT−IRを測定したところ、1200cm−1付近に、ごくわずかのアルキル基に起因するピークが見られた。
次に、上記のパッシベーション膜上に、メタルマスクを介して、直径1mmのアルミ電極を複数個蒸着により形成し、MIS(metal-insulator-semiconductor;金属−絶縁体−半導体)構造のキャパシタを作製した。このキャパシタの静電容量の電圧依存性(C−V特性)を市販のプローバー及びLCRメーター(HP社、4275A)により測定した。その結果、フラットバンド電圧(Vfb)が理想値の−0.81Vから、−0.30Vにシフトしたことが判明した。このシフト量から、パッシベーション材料(d2−1)から得たパッシベーション膜は、固定電荷密度(Nf)が−6.2×1010cm−2で負の固定電荷を示すことがわかった。
上記と同様に、パッシベーション材料(d2−1)を8インチのp型のシリコン基板の両面に塗布し、プリベークして、窒素雰囲気下で、600℃、1時間の熱処理(焼成)を行い、シリコン基板の両面がパッシベーション膜で覆われたサンプルを作製した。このサンプルのキャリアライフタイムをライフタイム測定装置((株)コベルコ科研、RTA−540)により行った。その結果、キャリアライフタイムは610μsであった。比較のために、同じ8インチのp型のシリコン基板をヨウ素パッシベーション法によりパッシベーションして測定したところ、キャリアライフタイムは、1100μsであった。
以上のことから、パッシベーション材料(d2−1)を熱処理して得られるパッシベーション膜は、ある程度のパッシベーション性能を示し、負の固定電荷を示すことがわかった。
[参考実施例2−7]
熱処理(焼成)により酸化タンタル(Ta2O5)が得られる化合物として、市販のタンタル(V)メトキシド(構造式:Ta(OCH3)5、分子量:336.12)1.18g(0.005mol)と、熱処理(焼成)により酸化アルミニウム(Al2O3)が得られる化合物として、市販のアルミニウムトリイソプロポキシド(構造式:Al(OCH(CH3)2)3、分子量:204.25)を1.02g(0.005mol)と、ノボラック樹脂10gとを、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート10gとシクロヘキサン10gの混合物に溶解して、パッシベーション材料(d2−2)を調製した。
パッシベーション材料(d2−2)を、濃度0.49質量%のフッ酸で自然酸化膜をあらかじめ除去した725μm厚で8インチのp型のシリコン基板(8Ω・cm〜12Ω・cm)の片面に回転塗布し、ホットプレート上において120℃、3分間のプリベークをした。その後、窒素雰囲気下で、650℃、1時間の加熱を行い、酸化アルミニウム及び酸化タンタルを含むパッシベーション膜を得た。エリプソメーターにより膜厚を測定したところ、18nmであった。元素分析の結果、Ta/Al/C=72/20/8(wt%)であることがわかった。パッシベーション膜のFT−IRを測定したところ、1200cm−1付近に、ごくわずかのアルキル基に起因するピークが見られた。
次に、上記のパッシベーション膜上に、メタルマスクを介して、直径1mmのアルミ電極を複数個蒸着により形成し、MIS(metal-insulator-semiconductor;金属−絶縁体−半導体)構造のキャパシタを作製した。このキャパシタの静電容量の電圧依存性(C−V特性)を市販のプローバー及びLCRメーター(HP社、4275A)により測定した。その結果、フラットバンド電圧(Vfb)が理想値の−0.81Vから、−0.43Vにシフトしたことが判明した。このシフト量から、パッシベーション材料(d−2)から得たパッシベーション膜は、固定電荷密度(Nf)が−5.5×1010cm−2で負の固定電荷を示すことがわかった。
上記と同様に、パッシベーション材料(d2−2)を8インチのp型のシリコン基板の両面に塗布し、プリベークして、窒素雰囲気下で、600℃、1時間の熱処理(焼成)を行い、シリコン基板の両面がパッシベーション膜で覆われたサンプルを作製した。このサンプルのキャリアライフタイムをライフタイム測定装置((株)コベルコ科研、RTA−540)により行った。その結果、キャリアライフタイムは250μsであった。比較のために、同じ8インチのp型のシリコン基板をヨウ素パッシベーション法によりパッシベーションして測定したところ、キャリアライフタイムは、1100μsであった。
以上のことから、パッシベーション材料(d2−2)を熱処理(焼成)して得たパッシベーション膜は、ある程度のパッシベーション性能を示し、負の固定電荷を示すことがわかった。
<2種以上のバナジウム族元素の酸化物を使用した場合>
[参考実施例2−8]
熱処理(焼成)により酸化アルミニウム(Al2O3)が得られる市販の有機金属薄膜塗布型材料[(株)高純度化学研究所、SYM−AL04、濃度2.3質量%]、熱処理(焼成)により酸化バナジウム(V2O5)が得られる市販の有機金属薄膜塗布型材料[(株)高純度化学研究所、V−02、濃度2質量%]、及び熱処理(焼成)により酸化タンタル(Ta2O5)が得られる市販の有機金属薄膜塗布型材料[(株)高純度化学研究所、Ta−10−P、濃度10質量%]を混合して、塗布型材料であるパッシベーション材料(e2−1)を調製した(表10参照)。
熱処理(焼成)により酸化アルミニウム(Al2O3)が得られる市販の有機金属薄膜塗布型材料[(株)高純度化学研究所SYM−AL04、濃度2.3質量%]、熱処理(焼成)により酸化バナジウム(V2O5)が得られる市販の有機金属薄膜塗布型材料[(株)高純度化学研究所V−02、濃度2質量%]、及び熱処理(焼成)により酸化ニオブ(Nb2O5)が得られる市販の有機金属薄膜塗布型材料[(株)高純度化学研究所、Nb−05、濃度5質量%]を混合して、塗布型材料であるパッシベーション材料(e2−2)を調製した(表10参照)。
熱処理(焼成)により酸化アルミニウム(Al2O3)が得られる市販の有機金属薄膜塗布型材料[(株)高純度化学研究所SYM−AL04、濃度2.3質量%]、熱処理(焼成)により酸化タンタル(Ta2O5)が得られる市販の有機金属薄膜塗布型材料[(株)高純度化学研究所Ta−10−P、濃度10質量%]、及び熱処理(焼成)により酸化ニオブ(Nb2O5)が得られる市販の有機金属薄膜塗布型材料[(株)高純度化学研究所Nb−05、濃度5質量%]を混合して、塗布型材料であるパッシベーション材料(e2−3)を調製した(表10参照)。
熱処理(焼成)により酸化アルミニウム(Al2O3)が得られる市販の有機金属薄膜塗布型材料[(株)高純度化学研究所SYM−AL04、濃度2.3質量%]、熱処理(焼成)により酸化バナジウム(V2O5)が得られる市販の有機金属薄膜塗布型材料[(株)高純度化学研究所V−02、濃度2質量%]、熱処理(焼成)により酸化タンタル(Ta2O5)が得られる市販の有機金属薄膜塗布型材料[(株)高純度化学研究所Ta−10−P、濃度10質量%]、及び熱処理(焼成)により酸化ニオブ(Nb2O5)が得られる市販の有機金属薄膜塗布型材料[(株)高純度化学研究所Nb−05、濃度5質量%]を混合して、塗布型材料であるパッシベーション材料(e2−4)を調製した(表10参照)。
パッシベーション材料(e2−1)〜(e2−4)のそれぞれを、参考実施例2−1と同様に、濃度0.49質量%のフッ酸で自然酸化膜をあらかじめ除去した725μm厚で8インチのp型のシリコン基板(8Ω・cm〜12Ω・cm)の片面に回転塗布し、ホットプレート上に置いて120℃、3分間のプリベークをした。その後、窒素雰囲気下で、650℃、1時間の熱処理(焼成)を行い、酸化アルミニウムと2種以上のバナジウム族元素の酸化物を含むパッシベーション膜を得た。
上記で得られたパッシベーション膜を用いて、静電容量の電圧依存性を測定し、そこから固定電荷密度を算出した。
次いで、パッシベーション材料(e2−1)〜(e2−4)のそれぞれを8インチのp型のシリコン基板の両面に塗布し、プリベークして、窒素雰囲気下で、650℃、1時間の熱処理(焼成)を行い、シリコン基板の両面がパッシベーション膜で覆われたサンプルを作製した。このサンプルのキャリアライフタイムをライフタイム測定装置((株)コベルコ科研、RTA−540)により行った。
得られた結果を表10にまとめた。
熱処理(焼成)後の2種以上のバナジウム族元素の酸化物と酸化アルミニウムの比率(質量比)により、異なる結果ではあるが、パッシベーション材料(e2−1)〜(e2−4)を用いたパッシベーション膜については、熱処理(焼成)後にいずれも負の固定電荷を示し、キャリアライフタイムもある程度の値を示していることから、パッシベーション膜として機能することが示唆された。
[参考実施例2−9]
参考実施例2−1と同様に、熱処理(焼成)により酸化アルミニウム(Al2O3)が得られる市販の有機金属薄膜塗布型材料[(株)高純度化学研究所、SYM−AL04、濃度2.3質量%]と、熱処理(焼成)により酸化バナジウム(V2O5)が得られる市販の有機金属薄膜塗布型材料[(株)高純度化学研究所、V−02、濃度2質量%]、又は熱処理(焼成)により酸化タンタル(Ta2O5)が得られる市販の有機金属薄膜塗布型材料[(株)高純度化学研究所、Ta−10−P、濃度10質量%]を混合して、塗布型材料であるパッシベーション材料(f2−1)〜(f2−8)を調製した(表11参照)。
また、酸化アルミニウムを単独で用いたパッシベーション材料(f2−9)を調製した(表11参照)。
参考実施例2−1と同様に、パッシベーション材料(f2−1)〜(f2−9)のそれぞれをp型のシリコン基板の片面に塗布し、その後、熱処理(焼成)を行って、パッシベーション膜を作製し、それを用いて、静電容量の電圧依存性を測定し、そこから固定電荷密度を算出した。
更に、参考実施例2−1と同様に、パッシベーション材料(f2−1)〜(f2−9)のそれぞれをp型のシリコン基板の両面に塗布し、熱処理(焼成)して得られたサンプルを用いて、キャリアライフタイムを測定した。得られた結果を表11にまとめた。
表11に示すように、パッシベーション材料中の酸化アルミニウム/酸化バナジウム又は酸化タンタルが90/10及び80/20の場合には、固定電荷密度の値にばらつきが大きく、負の固定電荷密度を安定的に得ることができなかったが、酸化アルミニウムと酸化ニオブを用いることで負の固定電荷密度を実現できることが確認できた。酸化アルミニウム/酸化バナジウム又は酸化タンタルが90/10及び80/20のパッシベーション材料を用いてCV法により測定した際には、場合によって正の固定電荷を示すパッシベーション膜となるため、負の固定電荷を安定的に示すまでには至っていないことが判る。なお、正の固定電荷を示すパッシベーション膜は、n型のシリコン基板のパッシベーション膜として使用可能である。一方、酸化アルミニウムが100質量%となるパッシベーション材料(f2−9)では、負の固定電荷密度を得ることができなかった。
[参考実施例2−10]
シリコン基板101として、ボロンをドーパントとした単結晶シリコン基板を用いて、図9に示す構造の太陽電池素子を作製した。シリコン基板101の表面をテクスチャー処理した後、塗布型のリン拡散材を受光面側のみに塗布し、熱処理により拡散層102(リン拡散層)を形成した。その後、塗布型のリン拡散材を希フッ酸で除去した。
次に、受光面側に、受光面反射防止膜103として、プラズマCVDでSiN膜を形成した。その後、参考実施例2−1で調製したパッシベーション材料(a2−1)を、インクジェット法により、シリコン基板101の裏面側に、コンタクト領域(開口部OA)を除いた領域に塗布した。その後、熱処理を行って、開口部OAを有するパッシベーション膜107を形成した。また、パッシベーション膜107として、参考実施例2−5で調製したパッシベーション材料(c2−1)を用いたサンプルも別途作製した。
次に、シリコン基板101の受光面側に形成された受光面反射防止膜103(SiN膜)の上に、銀を主成分とするペーストを所定のフィンガー電極及びバスバー電極の形状でスクリーン印刷した。裏面側においては、アルミニウムを主成分とするペーストを全面にスクリーン印刷した。その後、850℃で熱処理(ファイアスルー)を行って、電極(第1電極105及び第2電極106)を形成し、且つ裏面の開口部OAの部分にアルミニウムを拡散させて、BSF層104を形成して、図9に示す構造の太陽電池素子を形成した。
尚、ここでは、受光面の銀電極の形成に関しては、SiN膜に穴あけをしないファイアスルー工程を記載したが、SiN膜に初めに開口部OAをエッチング等により形成し、その後に銀電極を形成することもできる。
比較のために、上記作製工程のうち、パッシベーション膜107の形成を行わず、裏面側の全面にアルミニウムペーストを印刷し、BSF層104と対応するp+層114及び第2電極と対応する電極116を全面に形成して、図6の構造の太陽電池素子を形成した。これらの太陽電池素子について、特性評価(短絡電流、開放電圧、曲線因子及び変換効率)を行った。特性評価は、JIS−C−8913(2005年度)及びJIS−C−8914(2005年度)に準拠して測定した。その結果を表12に示す。
表12より、パッシベーション膜107を有する太陽電池素子は、パッシベーション膜107を有しない太陽電子素子と比較すると、短絡電流及び開放電圧が共に増加しており、変換効率(光電変換効率)が最大で0.6%向上することが判明した。
日本国特許出願第2012−160336号、第2012−218389号、第2013−011934号、第2013−040153号及び第2013−040154号の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。
パッシベーション層は、特定金属酸化物以外の金属酸化物を更に含んでいてもよい。そのような金属酸化物としては、特定金属酸化物と同様に固定電荷を有する化合物が好ましく、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ガリウム、酸化ジルコニウム、酸化ホウ素、酸化インジウム、酸化リン、酸化亜鉛、酸化ランタン、酸化プラセオジム、酸化ネオジム、酸化プロメチウム、酸化サマリウム、酸化ユウロピウム、酸化ガドリニウム、酸化テルビウム、酸化ジスプロシウム、酸化ホルミウム、酸化エルビウム、酸化ツリウム、酸化イッテルビウム、酸化ルテチウム等を挙げることができる。パッシベーション層が含む特定金属酸化物以外の金属酸化物としては、高いパッシベーション効果及び安定したパッシベーション効果を得る観点からは酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム及び酸化ネオジムが好ましく、酸化アルミニウムがより好ましい。
前記有機アルミニウム化合物は、アルミニウムアルコキシド、アルミニウムキレート等と呼ばれる化合物である。Nippon Seramikkusu Kyokai Gakujutsu Ronbunshi、97(1989)369−399にも記載されているように、前記有機アルミニウム化合物は熱処理により酸化アルミニウム(Al2O3)となる。
液状媒体として具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン等のケトン溶剤;ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチル−n−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチル−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、テトラエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、テトラエチレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチルエチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、テトラプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル等のエーテル溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸2−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸2−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸2−(2−ブトキシエトキシ)エチル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸ジエチレングリコールメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリエチレングリコール、酢酸イソアミル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸イソアミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、エチレングリコールメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のエステル溶剤;アセトニトリル、N−メチルピロリジノン、N−エチルピロリジノン、N−プロピルピロリジノン、N−ブチルピロリジノン、N−ヘキシルピロリジノン、N−シクロヘキシルピロリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、オクタン、エチルベンゼン、2−エチルヘキサン酸、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等の疎水性有機溶剤;メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、イソペンタノール、2−メチルブタノール、2−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、2−ヘキサノール、2−エチルブタノール、2−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、2−オクタノール、n−ノニルアルコール、n−デカノール、2−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、2−テトラデシルアルコール、2−ヘプタデシルアルコール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、イソボルニルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のアルコール溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールモノエーテル溶剤;テルピネン、テルピネオール、ミルセン、アロオシメン、リモネン、ジペンテン、ピネン、カルボン、オシメン、フェランドレン等のテルペン溶剤;水などが挙げられる。これらの液状媒体は1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
半導体基板の裏面の一部又は全部の領域に特定金属化合物を含有するパッシベーション層形成用組成物を付与して組成物層を形成する方法は特に制限されない。具体的には、浸漬法、スクリーン印刷法等の印刷法、スピンコート法、刷毛塗り、スプレー法、ドクターブレード法、ロールコート法、インクジェット法などを挙げることができる。これらの中でもパターン形成性の観点から、印刷法及びインクジェット法が好ましく、スクリーン印刷法がより好ましい。
次に図2(c)に示すように、n型半導体基板11の裏面の第一の金属電極15及び第二の金属電極17が形成された領域以外の領域に、パッシベーション層形成用組成物を付与して組成物層を形成する。付与の方法は特に制限されず、公知の方法から選択することができる。具体的には、浸漬法、スクリーン印刷法等の印刷法、スピンコート法、刷毛塗り、スプレー法、ドクターブレード法、ロールコート法、インクジェット法などを挙げることができる。これらの中でもパターン形成性の観点から、印刷法及びインクジェット法が好ましく、スクリーン印刷法がより好ましい。前記パッシベーション層形成用組成物の付与量は、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、形成されるパッシベーション層の厚さが、上記の好ましい厚さとなるように適宜調整することができる。
パッシベーション層形成用組成物1の代わりにパッシベーション層形成用組成物2を用いた以外は実施例1と同様にして太陽電池素子を作製し、発電特性を評価した。結果を表2及び3に示す。太陽電池素子の保存後の変換効率は保存前の変換効率の98.2%であり、変換効率が1.8%低下した。
パッシベーション層形成用組成物1の代わりにパッシベーション層形成用組成物3を用いた以外は実施例1と同様にして太陽電池素子を作製し、発電特性を評価した。結果を表2及び3に示す。太陽電池素子の保存後の変換効率は保存前の変換効率の98.3%であり、変換効率が1.7%低下した。
パッシベーション層形成用組成物1の代わりにパッシベーション層形成用組成物4を用いた以外は実施例1と同様にして太陽電池素子を作製し、発電特性を評価した。結果を表2及び3に示す。太陽電池素子の保存後の変換効率は保存前の変換効率の97.6%であり、変換効率が2.4%低下した。
パッシベーション層形成用組成物1の代わりにパッシベーション層形成用組成物5を用いた以外は実施例1と同様にして太陽電池素子を作製し、発電特性を評価した。結果を表2及び3に示す。太陽電池素子の保存後の変換効率は保存前の変換効率の97.9%であり、変換効率が2.1%低下した。
実施例1において、パッシベーション層形成用組成物1の付与を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして太陽電池素子を作製し、発電特性を評価した。結果を表2及び3に示す。太陽電池素子の保存後の変換効率は保存前の変換効率の91.9%であり、変換効率が8.1%低下した。
パッシベーション層形成用組成物1の代わりに上記で調製した組成物C2を用いたこと以外は実施例1と同様にして太陽電池素子を作製し、発電特性を評価した。結果を表2及び3に示す。太陽電池素子の保存後の変換効率は保存前の変換効率の93.0%であり、変換効率が7.0%低下した。
パッシベーション層形成用組成物1の代わりに上記で調製した組成物C3を用いたこと以外は実施例1と同様にして太陽電池素子を作製し、発電特性を評価した。結果を表2及び3に示す。太陽電池素子の保存後の変換効率は保存前の変換効率の92.4%であり、変換効率が7.6%低下した。
その後、拡散層102の上に、受光面反射防止膜103である窒化ケイ素膜を形成する。受光面反射防止膜103を形成する方法は特に制限されない。受光面反射防止膜103は、厚さが50〜100nmの範囲、屈折率が1.9〜2.2の範囲となるように形成することが好ましい。受光面反射防止膜103は、窒化ケイ素膜に限られず、酸化ケイ素膜、酸化アルミニウム膜、酸化チタン膜等であってもよい。窒化ケイ素膜等の表面反射防止膜103は、プラズマCVD、熱CVD等の方法で作製でき、350℃〜500℃の温度範囲で形成可能なプラズマCVDで作製することが好ましい。
上記と同様に、パッシベーション材料(c−2)を8インチのp型のシリコン基板の両面に付与し、プリベークして、窒素雰囲気下で、600℃、1時間の熱処理(焼成)を行い、シリコン基板の両面がパッシベーション膜で覆われたサンプルを作製した。このサンプルのキャリアライフタイムをライフタイム測定装置(株式会社コベルコ科研、RTA−540)により行った。その結果、キャリアライフタイムは200μsであった。比較のために、同じ8インチのp型のシリコン基板をヨウ素パッシベーション法によりパッシベーションして測定したところ、キャリアライフタイムは、1100μsであった。