WO2025126840A1 - ペーパープラグ及び香味吸引物品 - Google Patents

Abstract

充填材と、前記充填材を巻装するインナープラグラップとを有する、ペーパープラグであって、以下の式（１）で表される長軸と垂直な方向の硬さは、７０．０％以上である、ペーパープラグが提供される。　長軸と垂直な方向の硬さ（％）＝（Ｄｄ／Ｄｓ）×１００　（１） （式（１）中、Ｄｓ（ｍｍ）は、負荷Ｆをかける前の前記ペーパープラグの長軸方向に垂直な方向の断面の直径であり、Ｄｄ（ｍｍ）は、負荷Ｆをかけたときの前記ペーパープラグの長軸方向に垂直な方向の断面の直径であり、負荷Ｆは、前記ペーパープラグに対し、その長軸と垂直な方向に圧縮荷重３Ｎ、加圧治具ヘッド直径：φ１２ｍｍ及び圧縮時間１０秒の条件で付与される荷重である。）

Description

ペーパープラグ及び香味吸引物品

　本開示は、ペーパープラグ及び香味吸引物品に関する。

　香味吸引物品のフィルタとして、セルロースアセテートトウ等の合成繊維を棒状に加工したアセテートフィルタに代えて、紙（純パルプ）などの濾材をプラグラップで巻装したペーパーフィルタを用いることが行われている。例えば、特許文献１は、香味吸引物品用ペーパーフィルタを開示している。

　香味吸引物品の製造工程において、既存の製造設備において円滑に処理を実行するために、ペーパーフィルタ等の香味吸引物品を構成する各セグメントには十分な硬さが求められる。また、製品としての香味吸引物品に高級感を付与するためにも、香味吸引物品を構成する各セグメントが十分な硬さを備えていることが好ましい。

国際公開第２０２２／２３０４０８号

　本開示は、十分な硬さを備えた、ペーパープラグと、ペーパープラグを含む香味吸引物品とを提供する。

　本開示の第１の態様は、充填材と、前記充填材を巻装するインナープラグラップとを有する、ペーパープラグであって、以下の式（１）で表される長軸と垂直な方向の硬さは、７０．０％以上である、ペーパープラグである。
　　　　長軸と垂直な方向の硬さ（％）＝（Ｄｄ／Ｄｓ）×１００　（１）
（式（１）中、Ｄｓ（ｍｍ）は、負荷Ｆをかける前の前記ペーパープラグの長軸方向に垂直な方向の断面の直径であり、Ｄｄ（ｍｍ）は、負荷Ｆをかけたときの前記ペーパープラグの長軸方向に垂直な方向の断面の直径であり、負荷Ｆは、前記ペーパープラグに対し、その長軸と垂直な方向に圧縮荷重３Ｎ、加圧治具ヘッド直径：φ１２ｍｍ及び圧縮時間１０秒の条件で付与される荷重である。）

　上記第１の態様では、ペーパープラグにおいて、上記の式（１）で定義される長軸と垂直な方向の硬さは、７０．０％以上である。よって第１の態様によれば、十分な硬さを備えたペーパープラグを提供できるため、香味吸引物品の製造工程において円滑に処理を実行できるとともに、香味吸引物品に高級感を与えることに寄与し得る。

　本開示の第２の態様は、上記第１の態様において、前記充填材の原反の幅（ｍｍ）と坪量（ｇ／ｍ^２）との比が、以下の式（２）で表される範囲にある、ペーパープラグである。
　　　　　２．２＜　幅（ｍｍ）／坪量（ｇ／ｍ^２）　＜８．８　　　（２）

　上記第２の態様では、充填材の原反の幅と坪量との比が、上記の式（２）を満たす。このような幅と坪量を備えた原反から製造される充填材を巻装したペーパープラグは、香味吸引物品に用いられる上で適切な通気抵抗を有する。また、この範囲内で適切な数値を選択することで、７０．０％以上の硬さを担保しつつ、所望の通気抵抗のペーパープラグが得られる。具体的には、この原反の幅と坪量との比が大きな値となるように充填材の原反を選択すると、ペーパープラグの通気抵抗を高くすることができ、この比が小さくなるように選択すると、ペーパープラグの通気抵抗を低くすることができる。よって第２の態様によれば、充填材の原反の幅と坪量との比を調節することにより、適切な硬さと通気抵抗とを備えたペーパープラグを提供できる。

　本開示の第３の態様は、上記第１及び第２の態様において、前記ペーパープラグにおける前記充填材の充填密度は、０．１３８ｍｇ／ｍｍ^３以上である、ペーパープラグである。

　上記第３の態様では、ペーパープラグにおける充填材の充填密度は、０．１３８ｍｇ／ｍｍ^３以上である。このような構成のペーパープラグは、適切な硬さを有する。よって第３の態様によれば、適切な硬さを備えたペーパープラグを提供できる。

　本開示の第４の態様は、上記第１～第３の態様において、前記充填材は、セルロースを含み、クリンプ処理されたシートから形成されている、ペーパープラグである。

　上記第４の態様では、充填材は、セルロースを含み、クリンプ処理されたシートから形成されている。セルロースを含みクリンプ処理されたシートから充填材を製造すると、一般にペーパープラグの硬さが増し、通気抵抗が高くなる。またクリンプ処理により、ペーパープラグの長手方向に垂直な断面内に形成される鬆（小さい穴）が目立ちにくくなり、また製造されたペーパープラグ毎の通気抵抗のばらつきが低減する。よって第４の態様では、充填材の原反となるシートにクリンプ処理を施すことによって、容易にペーパープラグの硬さ及び通気抵抗を向上させるとともに、鬆を目立ちにくくさせ、通気抵抗を安定させることができる。

　本開示の第５の態様は、上記第４の態様において、前記シートのクリンプ深さは、０．３ｍｍ以上である、ペーパープラグである。

　上記第５の態様では、充填材の原反となるセルロースを含むシートには、クリンプ深さが０．３ｍｍ以上となるようにクリンプ処理が施される。０．３ｍｍ以上のクリンプ深さが付与されたシートを用いた場合、ペーパープラグの長手方向に垂直な断面内に形成される鬆は、許容範囲内である。よって第５の態様によれば、アピアランスの観点から望ましいペーパープラグを提供できる。

　本開示の第６の態様は、上記第１～第５の態様において、前記充填材の原反の幅は、１１０ｍｍ以上２２０ｍｍ以下であり、前記充填材の原反の坪量は、２５ｇ／ｍ^２以上５０ｇ／ｍ^２以下である、ペーパープラグである。

　上記第６の態様では、前記充填材の原反は、幅が１１０ｍｍ以上２２０ｍｍ以下であり、坪量は、２５ｇ／ｍ^２以上５０ｇ／ｍ^２以下である。このような原反から製造された充填材を巻装して構成したペーパープラグは、適切な硬さと通気抵抗とを有する。よって第６の態様によれば、適切な硬さと通気抵抗とを備えたペーパープラグを提供できる。

　本開示の第７の態様は、上記第１～第６の態様において、通気方向の１ｍｍ毎の通気抵抗は、０．７ｍｍＨ_２Ｏ／ｍｍ以上３．５ｍｍＨ_２Ｏ／ｍｍ以下であり、香味吸引物品に用いられる、ペーパープラグである。

　上記第７の態様では、ペーパープラグの通気方向の通気抵抗は、０．７ｍｍＨ_２Ｏ／ｍｍ以上３．５ｍｍＨ_２Ｏ／ｍｍ以下であり、ペーパープラグは香味吸引物品に用いられる。よって第７の態様によれば、香味吸引物品に使用するために好適な硬さ及び通気抵抗を有するペーパープラグを提供できる。

　本開示の第８の態様は、上記第７の態様において、前記充填材の原反は、香味を調整するための添加剤を含む、ペーパープラグである。

　上記第８の態様では、香味吸引物品に使用するペーパープラグの充填材の原反が、香味を調整するための添加剤を含んでいる。よって第８の態様によれば、加熱されると好適な香味を生成する香味吸引物品を構成するペーパープラグを提供できる。

　本開示の第９の態様は、上記第８の態様において、前記添加剤は、フェノール低減材および香料の少なくとも一つを含む、ペーパープラグである。

　上記第９の態様では、香味吸引物品に使用するペーパープラグの充填材の原反が、フェノール低減材および香料の少なくとも一つを含んでいる。よって第９の態様によれば、より好適な香味を生成する香味吸引物品を構成するペーパープラグを提供できる。

　本開示の第１０の態様は、第１プラグとしての請求項１～９のいずれか一項に記載のペーパープラグと、香味源を含む第２プラグと、前記第１プラグと前記第２プラグとを巻装するチッピングペーパーとを含む、香味吸引物品である。

　上記第１０の態様では、上記の式（１）で定義される長軸と垂直な方向の硬さは、７０．０％以上である第１プラグとしてのペーパープラグと、香味源を含む第２プラグと、第１プラグと第２プラグとを巻装するチッピングペーパーとを含むように、香味吸引物品が構成される。一例として、第１プラグは、香味吸引物品においてペーパーフィルタとして機能することができる。よって第１０の態様によれば、十分な硬さが担保されたペーパープラグを種々の形態で含む香味吸引物品が製造できる。

　本開示の第１１の態様は、上記第１０の態様において、前記ペーパープラグは、前記第２プラグに対して上流側に配置される、香味吸引物品である。

　上記第１１の態様では、ユーザの吸引に際して上流から下流に向かって空気が流れる香味吸引物品の内部において、香味源を含む第２プラグの上流側に、第１プラグとしてのペーパープラグが配置される。特に、第１プラグは、香味吸引物品の上流側の先端（ユーザによって吸引される下流側端部の反対側）を構成することも可能である。よって第１１の態様によれば、ペーパープラグによって、香味源で発生した蒸気またはエアロゾルが香味吸引物品の上流側へ漏出することを抑制することができる。

本実施形態に係るフィルタロッドの全体斜視図である。 図１の矢視Ａ－Ａでのフィルタロッドの断面図である。 ペーパーシートに０．３ｍｍの深さのクリンプ処理を施した場合の、フィルタロッドの重量と長軸方向の硬さとの関係を示すグラフである。 ペーパーシートに０．５ｍｍの深さのクリンプ処理を施した場合の、フィルタロッドの重量と長軸方向の硬さとの関係を示すグラフである。 ペーパーシートに０．７ｍｍの深さのクリンプ処理を施した場合の、フィルタロッドの重量と長軸方向の硬さとの関係を示すグラフである。 クリンプ処理が施されたペーパーシートを示す模式図である。 第１～第３実施例に０．３ｍｍの深さのクリンプ処理を施した場合の長軸方向の硬さ及び通気抵抗を示すグラフである。 各実施例に０．５ｍｍの深さのクリンプ処理を施した場合の長軸方向の硬さ及び通気抵抗を示すグラフである。 各実施例に０．７ｍｍの深さのクリンプ処理を施した場合の長軸方向の硬さ及び通気抵抗を示すグラフである。 各実施例に対してクリンプ深さと長軸方向の硬さとの関係を示すグラフである。 各実施例に対してクリンプ深さと見た目（アピアランス）との関係を示す図である。 原反の坪量と幅とがそれぞれ異なる、各実施例を含む複数のペーパーシートに０．３ｍｍの深さのクリンプ処理を施した場合の、フィルタロッドの充填重量及び通気抵抗を示すグラフである。 原反の坪量と幅とがそれぞれ異なる、各実施例を含む複数のペーパーシートに０．５ｍｍの深さのクリンプ処理を施した場合のフィルタロッドの充填重量及び通気抵抗を示すグラフである。 原反の坪量と幅とがそれぞれ異なる、各実施例を含む複数のペーパーシートに０．７ｍｍの深さのクリンプ処理を施した場合のフィルタロッドの充填重量及び通気抵抗を示すグラフである。 所定の原反から作成したペーパーシートを含むフィルタロッドについて、クリンプ深さとアピアランスとの関係を示す図である。 図９のフィルタロッドについて、クリンプ深さと、鬆（小さい穴）の面積及び個数との関係を示すグラフである。 ペーパーフィルタを使用した香味吸引物品の一例を示す概略側断面図である。 フィルタロッドを長手方向に切断して得られたペーパープラグを使用した香味吸引物品の他の一例を示す概略側断面図である。 フィルタロッドの硬さの測定方法を示す模式図である。

　以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一の又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。

　図１は、本実施形態に係るフィルタロッド１０の全体斜視図である。図２は、図１の矢視Ａ－Ａでのフィルタロッド１０の断面図である。

　フィルタロッド１０は、香味吸引物品の一部を構成するペーパーフィルタの材料である。フィルタロッド１０を長手方向において所定の長さを有するように切断して、ペーパーフィルタ（後述するペーパープラグ２０）を得ることができる。

　図１に示すように、フィルタロッド１０は、円筒状であり、ペーパーシート１２と、ペーパーシート１２を巻装した第１プラグラップ１４とを含む。ペーパーシート１２は、セルロースを含む所定の原反を所定の長さに切断し、適宜クリンプ処理を施して形成されるシートであり、折り畳まれて、円筒状に巻かれた第１プラグラップ１４の内部に収容される。なお、ペーパーシート１２は、折り畳まれる代わりに、巻き取られて第１プラグラップ１４の内部に収容されてもよい。なお、以降ではペーパーシート１２は単一のシートであるものとして記載するが、複数のシートの組であってもよい。つまり、原反を所定の長さに切断して得られたペーパーシート１２に対して、例えば更に１／２の長さに切断して得られた２枚のシートの組を、同様にペーパーシート１２と考えることが可能である。ペーパーシート１２は、本開示の充填材の一例である。第１プラグラップ１４は、本開示のインナープラグラップの一例である。

　第１プラグラップ１４の材質は、パルプが主成分のものを例示することができる。パルプとしては、針葉樹パルプや広葉樹パルプなどの木材パルプで抄造される以外にも、亜麻パルプ、大麻パルプ、サイザル麻パルプ、エスパルトなど一般的にたばこ製品用の巻紙に使用される非木材パルプを混抄して製造して得たものでもよい。これらのパルプは、単独の種類で用いてもよく、複数の種類を任意の割合で組み合わせて用いてもよい。また、炭酸カルシウム等の充填剤等を含んでいてよい。

　第１プラグラップ１４の態様は特段制限されず、一列以上の接着剤を含む継ぎ目を含んでいてよい。接着剤は、ホットメルト接着剤を含んでいてよく、さらにホットメルト接着剤は、ポリビニルアルコールを含み得る。また、接着剤は、酢酸ビニル系接着剤を含んでもよい。第１プラグラップ１４の材料は特段制限されず、公知のものを用いることができ、また、炭酸カルシウム等の充填剤等を含んでいてよい。また、第１プラグラップ１４は、コーティングされていても、されていなくともよいが、強度や構造剛性などの機能を付与できる観点からは、所望の材料でコーティングされることが好ましい。なお、第１プラグラップ１４は複数の細孔を有して通気性を有するポーラス紙であっても良い。

　一例として、以下では、原反を切断する際の長さ（つまり、フィルタロッド１０の長手方向の長さ）を１２０ｍｍとし、フィルタロッド１０の円周を２１．３ｍｍとする。したがって、フィルタロッド１０の半径は、円周率を３．１４として、
　　２１．３ｍｍ／（３．１４×２）＝３．３９１７１９（以下略）
　　　　　　　　　　　　　　　　　≒３．４０　ｍｍ
である。またフィルタロッド１０の長手方向に垂直な断面（図２に示す面）での断面積は、
　　２１．３ｍｍ×３．４ｍｍ／２　＝　３６．２１　ｍｍ^２
である。さらにフィルタロッド１０の体積は、
　　１２０ｍｍ×３６．２１ｍｍ^２　＝４，３４５．２　ｍｍ^３
である。

　香味吸引物品の製造工程において、既存の製造システムにおいて円滑に処理を実行するためには、ペーパーフィルタ（及びその材料としてのフィルタロッド１０）はある程度の硬さを備えていることが求められる。具体的には、フィルタロッド１０の長手方向と垂直な方向の硬さが７０％以上であることが望ましい。さらに、フィルタロッド１０の長手方向と垂直な方向の硬さは７５％以上であることがより好ましく、８０％以上であることがさらに好ましい。

　図３Ａは、ペーパーシート１２に０．３ｍｍの深さのクリンプ処理を施した場合の、フィルタロッド１０の重量と長軸方向の硬さとの関係を示すグラフである。図３Ｂは、ペーパーシート１２に０．５ｍｍの深さのクリンプ処理を施した場合の、フィルタロッド１０の重量と長軸方向の硬さとの関係を示すグラフである。図３Ｃは、ペーパーシート１２に０．７ｍｍの深さのクリンプ処理を施した場合の、フィルタロッド１０の重量と長軸方向の硬さとの関係を示すグラフである。

　なお、フィルタロッド１０の長手方向と垂直な方向の硬さ（％）は、以下の式によって求められる量である。
　　長軸と垂直な方向の硬さ（％）＝（Ｄｄ／Ｄｓ）×１００
　ここで、Ｄｓ（ｍｍ）は、負荷Ｆをかける前のフィルタロッド１０の長軸方向に垂直な方向の断面の直径であり、Ｄｄ（ｍｍ）は、負荷Ｆをかけたときのフィルタロッド１０の長軸方向に垂直な方向の断面の直径であり、負荷Ｆは、フィルタロッド１０に対し、その長軸と垂直な方向に圧縮荷重３Ｎ、加圧治具ヘッド直径：φ１２ｍｍ及び圧縮時間１０秒の条件で付与される荷重である。なお、第１プラグラップ１４としては、以下の紙を用いた。日本製紙パピリア株式会社製の紙であるＳ５２－７０００（坪量：５２ｇｓｍ、通気度：７０００ＣＯＲＥＳＴＡ単位、厚さ：１１０μｍ）。以降、本開示における硬さの測定においては、この紙を第１プラグラップ１４として測定を行うものとする。

　本開示に係る発明者は、坪量及び幅が互いに異なる種々の原反を用いて上述のようにフィルタロッド１０を複数作成し、フィルタロッド１０内のペーパーシート１２の充填重量と、長手方向と垂直な方向の硬さとの関係について調べた。坪量及び幅が互いに異なる種々の原反を用いて上述のようにフィルタロッド１０を複数作成し、特にペーパーシート１２に対し、０．３ｍｍ、０．５ｍｍ、０．７ｍｍの３種類の深さのクリンプ処理を施した。

　図３Ａ～図３Ｃに示されるように、一般にペーパーシート１２に深いクリンプ処理を施した場合、フィルタロッド１０の長手方向と垂直な方向の硬さは上昇する傾向がある。ただしいずれのクリンプ処理を施した場合であっても、フィルタロッド１０が０．６ｇ以上の重量のペーパーシートを内包していれば、７０％以上の長手方向と垂直な硬さが担保されることが見いだされた。ここでフィルタロッド１０内のペーパーシート１２の充填密度を考えると、上述の通りフィルタロッド１０の体積が４，３４５．２ｍｍ^３であることを用いて、
　　６００ｍｇ／４，３４５．２ｍｍ^３　＝　０．１３８０８（略）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ≒　０．１３８　ｍｇ／ｍｍ^３
が閾値となる。つまり、フィルタロッド１０内のペーパーシート１２の充填密度を０．１３８ｍｇ／ｍｍ^３であるように構成すれば、７０％以上の長手方向と垂直な硬さが担保される。また特に、ペーパーシート１２に０．５ｍｍの深さのクリンプ処理を施した場合、７０％以上の長手方向と垂直な硬さを担保するためのペーパーシート１２の充填密度の閾値は、０．１１１ｍｇ／ｍｍ^３であり、０．５ｍｍの深さのクリンプ処理を施した場合の閾値は、０．１０６ｍｇ／ｍｍ^３であることが見出された。

　ここで、クリンプ深さについて説明する。図４は、クリンプ処理が施されたペーパーシート１２を示す模式図である。

　図４に示すように、平坦なペーパーシート１２にクリンプ処理を施すと、山部１２ａと谷部１２ｂとが形成される。ペーパーシート１２の山部１２ａの最大高さと谷部１２ｂの最大深さとの差ｈを、ペーパーシート１２のクリンプ深さという。クリンプ深さは、一例として、平坦なペーパーシート１２（またはその原反）にクリンプ処理を施すための一対のローラの組の噛み合い深さ（噛み合わせ量）の設定に応じて定まる。

［実施例］
　以上の結果に基づき、本開示に係る発明者は、以下の３つの実施例について綿密な測定を行った。図５Ａは、各実施例に０．３ｍｍの深さのクリンプ処理を施した場合の長軸方向の硬さ及び通気抵抗を示すグラフである。図５Ｂは、各実施例に０．５ｍｍの深さのクリンプ処理を施した場合の長軸方向の硬さ及び通気抵抗を示すグラフである。図５Ｃは、各実施例に０．７ｍｍの深さのクリンプ処理を施した場合の長軸方向の硬さ及び通気抵抗を示すグラフである。図６は、各実施例に対してクリンプ深さと長軸方向の硬さとの関係を示すグラフである。図７は、各実施例に対してクリンプ深さと見た目（アピアランス）との関係を示す図である。

 

　３つの実施例は、表１に示す坪量と幅を備えた原反を、上述のように１２０ｍｍの長さで切断して得られたペーパーシート１２を用いて、円周が２１．３ｍｍとなるように構成したフィルタロッド１０である。図５Ａ～５Ｃにおいては、ロッド毎のペーパーシートの充填重量を記載している。例えば、第１実施例の場合、原反の坪量が２５ｇ／ｍ^２、幅が２２０ｍｍであり、１２０ｍｍの長さで切断しているため、フィルタロッド１０に内包されるペーパーシート１２の充填重量は、
　２５ｇ／ｍ^２×０．２２ｍ×０．１２ｍ　＝　０．６６　ｇ
と求められる。同様にして、第２実施例で０．６４８ｇ、第３実施例で０．６７２ｇと求められる。これらの数値を小数点第３位で四捨五入すると、図５Ａ～５Ｃに記載されたロッド毎のペーパーシートの充填重量となる。第１～第３実施例の全てについて、フィルタロッド１０が０．６ｇ以上の重量のペーパーシート１２を内包している。

　図５Ａに示すように、０．３ｍｍの深さのクリンプ処理を施した場合、フィルタロッド１０の長軸方向の硬さは、第１実施例で７１．５％、第２実施例で７２．６％、第３実施例で７５．２％と測定された。一方、この場合のフィルタロッド１０の通気抵抗は、第１実施例で１５２ｍｍＨ_２Ｏ、第２実施例で１２３ｍｍＨ_２Ｏ、第３実施例で８４ｍｍＨ_２Ｏと測定された。長さ１ｍｍ毎の通気抵抗を求めると、第１実施例で
　１５２ｍｍＨ_２Ｏ／１２０ｍｍ　＝　１．２６６（略）　ｍｍＨ_２Ｏ／ｍｍ
となる。同様にして、第２実施例で１．０２５ｍｍＨ_２Ｏ／ｍｍ、第３実施例で０．７ｍｍＨ_２Ｏ／ｍｍとなる。なお上述のように、第１プラグラップ１４としては、日本製紙パピリア株式会社製の紙であるＳ５２－７０００（坪量：５２ｇｓｍ、通気度：７０００ＣＯＲＥＳＴＡ単位、厚さ：１１０μｍ）を用いた。

　なお、フィルタロッド１０内のペーパーシート１２の充填密度を求めると、上述の通りフィルタロッド１０の体積が４，３４５．２ｍｍ^３であることを用いて、第１実施例で
　６６０ｍｇ／４，３４５．２ｍｍ^３　＝０．１５１８９（以下略）　ｍｇ／ｍｍ^３
となる。同様にして、第２実施例で０．１５３７４４ｍｇ／ｍｍ^３、第３実施例で０．１５９４３９ｍｇ／ｍｍ^３となる。第１～第３実施例の全てについて、フィルタロッド１０におけるペーパーシート１２の充填密度は、０．１３８ｍｇ／ｍｍ^３以上である。このことから、上述の通り７０％以上の長手方向と垂直な硬さが担保されることが（実際に各実施例の硬さを測定する前から）分かる。

　次に図５Ｂに示すように、０．５ｍｍの深さのクリンプ処理を施した場合、フィルタロッド１０の長軸方向の硬さは、第１実施例で８２．８％、第２実施例で８１．３％、第３実施例で８０．４％と測定された。一方、この場合のこの場合のフィルタロッド１０の通気抵抗は、第１実施例で５３０ｍｍＨ_２Ｏ、第２実施例で３７８ｍｍＨ_２Ｏ、第３実施例で２６９ｍｍＨ_２Ｏと測定された。長さ１ｍｍ毎の通気抵抗を求めると、第１実施例で
　５３０ｍｍＨ_２Ｏ／１２０ｍｍ　＝　４．４１６　ｍｍＨ_２Ｏ／ｍｍ
となる。同様にして、第２実施例で３．１５ｍｍＨ_２Ｏ／ｍｍ、第３実施例で２．４１６（以下略）≒　２．４２ｍｍＨ_２Ｏ／ｍｍとなる。

　さらに図５Ｃに示すように、０．７ｍｍの深さのクリンプ処理を施した場合、フィルタロッド１０の長軸方向の硬さは、第１実施例で８４．２％、第２実施例で８３．５％、第３実施例で８４．０％と測定された。一方、この場合のこの場合のフィルタロッド１０の通気抵抗は、第１実施例で７１０ｍｍＨ_２Ｏ、第２実施例で５７９ｍｍＨ_２Ｏ、第３実施例で４１９ｍｍＨ_２Ｏと測定された。長さ１ｍｍ毎の通気抵抗を求めると、第１実施例で
　７１０ｍｍＨ_２Ｏ／１２０ｍｍ　＝　６　ｍｍＨ_２Ｏ／ｍｍ
となる。同様にして、第２実施例で４．８２５　≒　４．８３ｍｍＨ_２Ｏ／ｍｍ、第３実施例で３．４９１６（以下略）≒　３．４９ｍｍＨ_２Ｏ／ｍｍとなる。

　以上の測定結果は、以下の表２にまとめられる。

 

　充填重量（ｇ）、充填密度（ｍｇ／ｍｍ^３）及び幅（ｍｍ）と坪量（ｇ／ｍ^２）の比は、ペーパーシート１２の原反の幅と坪量とから定まる量であり、各実施例に固有の量である。各実施例について実際に測定された値は、長軸方向の硬さ（％）及び通気抵抗（ｍｍＨ_２Ｏ）である。

　表２に示されるように、各実施例について、７０％以上の長軸方向の硬さが得られた。上述の通り、この測定結果は各実施例のペーパーシート１２の原反の幅と坪量の選択から予想された通りである。また、図６に示されるように、ペーパーシート１２に施すクリンプ深さが増すと、フィルタロッド１０の長手方向と垂直な方向の硬さが上昇することが具体的に確かめられた。

　また、図７に示されるように、第１～第３実施例のいずれについても、クリンプ深さが小さいほどフィルタロッド１０に鬆（小さい穴）が目立つようになり、外観（アピアランス）の好ましさが低下することが分かった。図７から分かるように、第１～第３実施例については、ペーパーシート１２の原反に少なくとも０．３ｍｍ以上のクリンプを施すことにより、好ましいアピアランスが得られる。さらに、各実施例についてペーパーシート１２の原反に０．５ｍｍ以上のクリンプを施すことにより、より好ましいアピアランスが得られる。

　表１に示したように、３つの実施例は、ペーパーシート１２の原反の坪量と幅とがそれぞれ異なるものである。表２に示されるように、原反の坪量と幅との比を適切に選択することで、長軸方向の硬さを７０％以上に担保しつつ、通気抵抗の値を所望の値に設定可能であることが分かった。具体的には、原反の坪量を小さく幅を大きく選択すれば、通気抵抗が高いフィルタロッド１０を製造することができ、原反の坪量を大きく紙幅を小さく選択すれば、通気抵抗が低いフィルタロッド１０を製造することができることが分かった。また、各実施例について、原反の幅と坪量との比を求めると、第１実施例で、
　２２０（ｍｍ）／２５（ｇ／ｍ２） ＝　　８．８
となる。同様にして、第２実施例で６、第３実施例で３．５となる。この原反の幅と坪量との比を大きな値となるようにペーパーシート１２の原反を選択すると、フィルタロッド１０の通気抵抗を高くすることができ、この比が小さくなるように選択すると、フィルタロッド１０の通気抵抗を低くすることができる。

　図８Ａは、原反の坪量と幅とがそれぞれ異なる、各実施例を含む複数のペーパーシート１２に０．３ｍｍの深さのクリンプ処理を施した場合のフィルタロッド１０の充填重量及び通気抵抗を示すグラフである。図８Ｂは、原反の坪量と幅とがそれぞれ異なる、各実施例を含む複数のペーパーシート１２に０．５ｍｍの深さのクリンプ処理を施した場合のフィルタロッド１０の充填重量及び通気抵抗を示すグラフである。図８Ｃは、原反の坪量と幅とがそれぞれ異なる、各実施例を含む複数のペーパーシート１２に０．３ｍｍの深さのクリンプ処理を施した場合のフィルタロッド１０の充填重量及び通気抵抗を示すグラフである。

　図８Ａ～図８Ｃにおいて、楕円で囲まれた３つの点が、上述の第１～第３実施例を示している。具体的には、楕円で囲まれた点のうち、上方の点が第１実施例、中央の点が第２実施例、下方の点が第３実施例を示す。図８Ａ～図８Ｃに示された結果から、同程度の充填量を維持した場合でも、紙条件（つまり、原反の幅と坪量）の変更を行うことにより、通気抵抗を調整できることがわかる。

　表２及び図８Ａ～図８Ｃに示された第１～第３実施例の通気抵抗の測定値は、香味吸引器において加熱される香味吸引物品に用いられるフィルタロッド１０として好適な範囲に収まっている。具体的には、非燃焼側加熱式香味吸引器で加熱される香味吸引物品について、香味吸引物品の通気方向に沿って、４５～１３５ｍｍＨ_２Ｏの範囲の通気抵抗を有することが好ましいことが知られている。特に６０～１２０ｍｍＨ_２Ｏであることがより好ましく、８０～１１０ｍｍＨ_２Ｏであることが最も好ましい。　

　香味吸引物品の通気抵抗は、上流側（ユーザによって吸引される下流側端部の反対側）に位置する香味源の通気抵抗と、下流に位置するフィルタの通気抵抗とを加算したものと考えられる。ここで香味吸引物品に流入する空気は、香味吸引物品の上流側の先端（ユーザによって吸引される下流側端部の反対側）から流入するものと、より下流のフィルタ近傍に設けられた通気孔から流入するものとに分けられる。ユーザの口腔内に到達する空気のうち、下流のフィルタ近傍に設けられた通気孔から流入するものをＶｆ（％）として表す。香味源の通気抵抗は、下流のフィルタ近傍に設けられた通気孔から流入する空気には作用しないので、その全てが香味吸引物品全体の通気抵抗に寄与するわけではなく、１００－Ｖｆ（％）を乗じたもののみが寄与する。

　具体例として、Ｖｆが６０％であり、通気抵抗が７０ｍｍＨ_２Ｏである香味源と、長さ１ｍｍ当たりの通気抵抗が０．７ｍｍＨ_２Ｏ／ｍｍであるフィルタロッド１０を８ｍｍのセグメントに切断して作成したフィルタとを含む香味物品を考える。この場合、香味物品の通気抵抗は、
　　　７０ｍｍＨ_２Ｏ　×　（１－０．６）　　　　（香味源からの寄与）
　　　０．７ｍｍＨ_２Ｏ／ｍｍ　×　８ｍｍ　　　　（フィルタからの寄与）
を加算して、
　　　２８　＋　５．６　＝　３３．６　ｍｍＨ_２Ｏ
となる。

　計算の詳細は省略するが、一例としてＶｆが４０％以上６０％以下であり香味源の通気抵抗が７０ｍｍＨ_２Ｏ以上２５０ｍｍＨ_２Ｏとした場合、香味吸引物品全体の通気抵抗を４５～１３５ｍｍＨ_２Ｏの範囲に収めるには、ペーパーフィルタとして用いるフィルタロッド１０は、長さ１ｍｍ当たりの通気抵抗が０．７ｍｍＨ_２Ｏ／ｍｍ以上３．５ｍｍＨ_２Ｏ／ｍｍであることが好ましい。表２に示された各実施例の値は、第１実施例に０．５ｍｍまたは０．７ｍｍの深さのクリンプを施した場合、及び第２実施例に０．７ｍｍの深さのクリンプを施した場合を除けば、この範囲に収まっている。

　上述のように、原反の幅（ｍｍ）／坪量（ｇ／ｍ^２）の値は、第１実施例で８．８、第２実施例で６、第３実施例で３．５である。ペーパーシート１２の原反の幅と坪量との比がフィルタロッド１０の通気抵抗の値を規定するという事実には一般性があると考えられるので、ペーパーシート１２の原反が３．５＜　幅（ｍｍ）／坪量（ｇ／ｍ^２）　＜８．８を満たす場合、好適な通気抵抗を備えたフィルタロッド１０が製造できると言える。なお、範囲の下限を以下のように広げても、フィルタロッド１０の好適な通気抵抗が得られることが分かっている。
　２．２＜　幅（ｍｍ）／坪量（ｇ／ｍ^２）　＜８．８

　なお、３つの実施例は、ペーパーシート１２の原反の幅が１４０ｍｍ以上２２０ｍｍ以下であり、坪量が２５ｇ／ｍ^２以上４０ｇ／ｍ^２以下である。ただし、範囲を以下のように広げても、好適な通気抵抗及び硬さを備えたフィルタロッド１０が製造できることが分かっている。
　ペーパーシート１２の原反の幅は、１１０ｍｍ以上２２０ｍｍ以下であり、
　ペーパーシート１２の原反の坪量は、２５ｇ／ｍ^２以上５０ｇ／ｍ^２以下である。

［クリンプ深さの下限についての研究］
　本開示に係る発明者は、さらに、望ましいクリンプ深さの下限について調べた。図９は、所定の原反から作成したペーパーシート１２を含むフィルタロッド１０について、クリンプ深さとアピアランスとの関係を示す図である。図１０は、図９のフィルタロッド１０について、クリンプ深さと、鬆（小さい穴）の面積及び個数との関係を示すグラフである。

　ここでは、上述の第１～第３実施例とは異なり、坪量が４０ｇ／ｍ^２であり、幅が２８０ｍｍである原反を使用した。上述のように、原反を１２０ｍｍの長さで切断して得られたペーパーシート１２を用いて、円周が２１．３ｍｍとなるように構成したフィルタロッド１０について測定を行った。

　図９に示されるように、クリンプ深さが０．１６ｍｍまたは０．２ｍｍの場合には、フィルタロッド１０に鬆が目立ち、アピアランスの観点から好ましくない。一方、クリンプ深さが０．３ｍｍ及び０．３５ｍｍの場合には、フィルタロッド１０に形成される鬆は許容範囲内であるといえる。

　図１０は、図９に示した４種のフィルタロッド１０について行った画像解析の結果を示したグラフである。図１０に示した画像解析では、カメラとして、株式会社キーエンス製の「高機能１６倍速４７万画素白黒カメラ　ＣＡ－Ｈ０４８ＭＸ」をもちいている。その他の設備は、以下の表３に示す通りである。

 

　図１０に得られた結果は、当業者が通常実施している画像解析に基づくものである。具体的には、（１）フィルタロッド１０の長手方向に垂直な断面の撮像を行い、（２）前処理としてシェーディング補正及び２値化を施し、（３）ブロブ処理を行って、黒い部分の塊（鬆に相当する）の面積を抽出する、という処理フローに沿った解析である。

　図１０の縦軸はフィルタロッド１０の断面内の鬆の個数、横軸はピクセル数を表す。ここで、１ピクセルは０．０００４３６ｍｍ^２の面積に相当する。図１０において、黒丸（１２ＹＡＦ）の点は、従来のアセテートフィルタのロッドの測定値を示している。図１０に示されるように、クリンプ深さが０．１６ｍｍまたは０．２ｍｍの場合には、フィルタロッド１０の断面内に面積の大きな鬆が形成され、グラフの形状はアセテートフィルタのロッドから大きく異なる。一方、クリンプ深さが０．３ｍｍ及び０．３５ｍｍの場合には、グラフの形状はアセテートフィルタのロッドに近いものとなる。

　なお、フィルタロッド１０における鬆の存在は、アピアランスの審美的観点からのみ問題になるものではなく、技術的にも問題となり得る。具体的には、フィルタロッド１０内に鬆が形成されていると、香味源（一例として、たばこ葉を刻んだものやたばこシートを刻んだもの）がフィルタロッド１０及び香味源を含んで構成された香味吸引物品の先端から零れ落ちることがあり得、または香味源から生成された副流煙が香味吸引物品から漏れ出して、香味吸引器の汚れを引き起こす可能性がある。

　以上の測定結果を鑑みると、フィルタロッド１０に用いるペーパーシート１２には、少なくとも０．３ｍｍのクリンプ深さを付与することが望ましいと言える。

［香味吸引物品の構成］
　フィルタロッド１０を長手方向に沿って所定の長さに切断して得られたペーパープラグをフィルタとして用いて、香味吸引物品を構成することができる。図１１は、ペーパーフィルタを使用した香味吸引物品１１０の一例を示す概略側断面図である。図１２は、フィルタロッド１０を長手方向に切断して得られたペーパープラグ２０を使用した他の一例の香味吸引物品２００の概略側断面図である。

　図１１に示す例においては、香味吸引物品１１０は、喫煙可能物１１１と、筒状部材１１４と、中空フィルタ部１１６と、フィルタ部１１５と、を有する。フィルタ部１１５は、フィルタロッド１０を長手方向に切断して得られたペーパープラグ２０により構成される。フィルタ部１１５は、本開示の第１プラグの一例である。

　喫煙可能物１１１は、シガレットペーパー１１２によって巻装される。筒状部材１１４、中空フィルタ部１１６、及びフィルタ部１１５は、シガレットペーパー１１２により巻装された喫煙可能物１１１の一部とともに、シガレットペーパー１１２とは異なるチッピングペーパー１１３によって巻装される。チッピングペーパー１１３は、喫煙可能物１１１を巻装するシガレットペーパー１１２の一部も巻装する。これにより、筒状部材１１４、中空フィルタ部１１６、及びフィルタ部１１５と喫煙可能物１１１とが連結される。シガレットペーパー１１２により巻装された喫煙可能物１１１は、本開示の第２プラグの一例である。

　チッピングペーパー１１３のフィルタ部１１５側の端部近傍の外面には、ユーザの唇がチッピングペーパー１１３から離しやすくするためのリップリリース剤１１７が塗布される。香味吸引物品１１０のリップリリース剤１１７が塗布される部分は、香味吸引物品１１０の吸口として機能する。

　なお、筒状部材１１４には、筒状部材１１４の周方向に同心状に開孔が設けられてもよい。この開孔は、ユーザの吸引による外部からの空気の流入を促進させるためのものであり、開孔から流入する空気により、香味吸引物品１１０から流入する成分や空気の温度を下げることができる。

　喫煙可能物１１１は、例えばたばこ等の香味源と、エアロゾル源とを含み得る。また、喫煙可能物１１１を巻くシガレットペーパー１１２は、通気性を有するシート部材であり得る。筒状部材１１４は、紙管又は中空フィルタであり得るが、特に限定されずその他の材料を用いてもよい。図２に示す例では、香味吸引物品１１０は、喫煙可能物１１１、筒状部材１１４、中空フィルタ部１１６、及びフィルタ部１１５を備えているが、香味吸引物品１１０の構成はこれに限られない。例えば、中空フィルタ部１１６が省略され、筒状部材１１４とフィルタ部１１５とが互いに隣接配置されてもよい。

　なお、香味吸引物品の香味を調整するために、フィルタロッド１０を製造する際にペーパーシート１２の原反に処理を施してもよい。例えば、ペーパーシート１２の原反に、フェノール低減材及び香料の少なくとも１つを添加してもよい。

  「フェノール類」という用語は、１つ以上のヒドロキシル基が芳香族炭化水素基に結合する化合物の種類を意味する。その例としては、フェノール、ｏ－クレゾール、ｍ－クレゾール、ｐ－クレゾール、カテコールが挙げられる。したがって、本開示の「フェノール低減材」とは、例えば標準的な喫煙試験を用いて測定できるように、ペーパープラグ２０が香味吸引物品１１０のフィルタ部１１５として使用される場合に、フェノール類、例えばフェノール、ｏ－クレゾール、ｍ－クレゾール、ｐ－クレゾール、及び／又はカテコールなどの少なくとも１つを減少させることができる添加剤である。

　なお、本開示に係る発明者は、フィルタ部１１５を構成するペーパープラグ２０について、通気方向の１ｍｍ毎の通気抵抗が０．７ｍｍＨ_２Ｏ／ｍｍ以上３．５ｍｍＨ_２Ｏ／ｍｍ以下であることが、非燃焼加熱型香味吸引器で使用される香味吸引物品１１０を構成する上で好ましいことを見出した。

　また、図１１では香味吸引物品１１０のフィルタ部１１５を構成するためにペーパープラグ２０を用いたが、香味吸引物品におけるペーパープラグ２０の用途はペーパーフィルタに限られるものではない。例えば、図１２に示すように、ペーパープラグ２０が香味吸引物品の上流側の先端（ユーザによって吸引される下流側端部の反対側）を構成する、香味吸引物品２００を製造することも可能である。

　図１２に示すように、香味吸引物品２００は、第１セグメント２１０と、香味発生セグメント２２０と、冷却セグメント２３０と、第２セグメント２４０とを備える。香味吸引物品２００は、香味吸引器に挿入される第１端２０１と、第１端２０１の反対側の第２端１０２とを備える。図１２に示す例では、香味吸引物品２００は、中心軸ＡＸに沿って長手方向に延び、長手方向に沿って両端にそれぞれ第１端２０１および第２端２０２が形成されている。以下、第１端２０１側および第２端２０２側を、それぞれ上流側および下流側と称する。また、以下において、特に断りのない限り、「径方向」および「周方向」は、中心軸ＡＸを軸とする回転座標系の径方向および周方向を指す。

　第１セグメント２１０は、香味発生セグメント２２０の第１端１０１側に配置されたセグメントである。第１セグメント２１０は、第１端２０１から、香味発生セグメント２２０の第１端２０１側の端部まで延びていることが好ましい。第１セグメント２１０は、プラグ部２１１と、プラグ部２１１を覆う筒状の第２チッピングペーパー２５０とを有する。プラグ部２１１は、フィルタロッド１０を長手方向に切断して得られたペーパープラグ２０により構成される。また、第２チッピングペーパー２５０は、プラグ部２１１だけでなく後述のシガレットペーパー２４８に巻装された香味源２２１をも覆っており、第１セグメント２１０と香味発生セグメント２２０とを連結している。プラグ部２１１は、本開示の第１プラグの一例である。

　香味発生セグメント２２０は、香味源２２１と、香味源２２１を覆う筒状のシガレットペーパー２４８とを有する。香味源２２１は、加熱により香味を発生すれば特に限定されないが、たばこ材料であることが好ましい。たばこ材料としては、たばこ刻み等の、乾燥したたばこ葉を加工して得られた材料、または、たばこ抽出物（水、有機溶媒、またはこれらの混合溶液による抽出物）等が挙げられる。香味源２２１は、１以上のたばこシートで構成されてもよい。たばこシートは、例えば、乾燥たばこ葉を、抄造、スラリー、圧延等の公知の方法で均一化されたシート（以下、均一化シートと称する）に加工することにより形成されてもよい。また、香味源２２１はたばこシートを刻んだものであってもよい。香味源２２１は、たばこ材料に代替的または追加的に、香料、清涼剤および風味料の少なくとも１つを含むことができる。香味発生セグメント２２０（シガレットペーパー２４８により巻装された香味源２２１）は、本開示の第２プラグの一例である。

　冷却セグメント２３０は、中空管２３１と、中空管２３１を覆う筒状のチッピングペーパー２６０とを有する。中空管２３１は、例えば紙管等であり得る。中空管２３１は、香味源２２１で発生した蒸気またはエアロゾルを冷却する。このように、香味源２２１の下流側に中空管２３１を配置することで、香味源２２１で発生した蒸気またはエアロゾルを冷却することができる。なお図１２に示されるように、チッピングペーパー２６０は、中空管２３１だけでなく、第２チッピングペーパー２５０及びシガレットペーパー２４８に巻装された香味源２２１の一部と、後述するアウタープラグラップ３５０とを覆って、香味発生セグメント２２０と、冷却セグメント２３０と、第２セグメント２４０とを連結している。

　中空管２３１およびチッピングペーパー２６０には、中空管２３１の周方向に並んで同心状に、両者の壁面を径方向に貫通する複数の円形の貫通孔２３２が形成されている。貫通孔２３２は、ユーザの吸引による外部からの空気の流入を促進するための孔であり、この空気の流入により香味源２２１で発生した蒸気またはエアロゾルをさらに冷却することができる。

　第２セグメント２４０は、冷却セグメント２３０の第２端１０２側に配置されたセグメントである。第２セグメント２４０は、長手方向に並んだ第１フィルタ２４１および第２フィルタ２４２と、第１フィルタ２４２および第２フィルタ２４２を覆うアウタープラグラップ３５０とを有する。第２セグメント２４０は、香味吸引の際の空気の流れの調整、または香味若しくは他の混入物の量の調整等のフィルタとしての機能を有していれば特に制限されない。第２セグメント２４０は、第２セグメント２４０より第１端２０１側にある部材の落下を防止する後方プラグとしても機能し得る。

　なお、第１フィルタ２４１の位置は、図１２に示される位置に限定されず、例えば第１フィルタ２４１と第２フィルタ２４２との位置を入れ替えてもよい。また、香味吸引物品２００において、第２フィルタ２４２は省略されてもよいし、第２セグメント２４０が３以上のフィルタを含んでもよい。

　第１フィルタ１４１は、充填材３１０と、充填材３１０を包む筒状の第１インナープラグラップ３２０とを有する。充填材３１０は、濾材であれば特に限定されず、繊維状材料または多孔質材料等とすることができる。充填材３１０は、例えば、酢酸セルロース繊維、紙、不織布等とすることができる。充填材３１０を、フィルタロッド１０を長手方向に切断して得られたペーパープラグ２０により構成してもよい。

　第２フィルタ２４２は、中空部を有する充填層３３０と、充填層３３０を覆う第２インナープラグラップ３４０とで構成される。充填層３３０は、例えば酢酸セルロース繊維が高密度で充填され、トリアセチンを含む可塑剤が添加されて硬化されたロッドとすることができる。なお、第２インナープラグラップ３４０は、省略されてもよい。

　なお、本開示における「硬さ（％）」の測定方法について述べる。測定装置としては、「ＳＯＤＩＵＭ－Ｈ　ｈａｒｄｎｅｓｓ　ｍｏｄｕｌｅ」（KORBER社）またはその代替機器を用いることができる。図１３に示すように、１２０ｍｍの長さのフィルタロッド１０を測定装置３０の所定箇所に鉛直上方から挿入し、側方から円筒状の治具３２により圧力を印加する。本試験では、圧力を３００ｇと設定した。治具３２としては、直径φ１２ｍｍのものを使用した。圧力を掛ける位置は、フィルタロッド１０の鉛直下端から鉛直上方向へ６ｍｍ以上離れた位置に治具３２を配置して、圧力を印加した。

　測定装置の測定条件を以下に記載する。
　装置：ＳＯＤＩＵＭ－Ｈ　ｈａｒｄｎｅｓｓ　ｍｏｄｕｌｅ
　操作：試験片の側面から加圧し、加圧前後の直径から演算された値を硬さとして読み取る。
＜演算式＞
　長軸と垂直な方向の硬さ（％）＝（Ｄｄ／Ｄｓ）×１００　　
　　Ｄｓ（ｍｍ）は、圧力を掛ける前のフィルタロッド１０の長軸方向に垂直な方向の断面の直径であり、
　　Ｄｄ（ｍｍ）は、圧力を掛けたときのフィルタロッド１０の長軸方向に垂直な方向の断面の直径である。
＜測定器条件＞
　加圧：３００ｇ、加圧時間：１０秒、加圧治具ヘッド直径：φ１２ｍｍ、測定時試験片数：１

（本実施形態の作用）
　本実施形態では、（フィルタロッド１０を長手方向に所定の長さで切断して得られた）ペーパープラグ２０において、下記の式（１）で定義される長軸と垂直な方向の硬さは、７０．０％以上である。よって本実施形態によれば、十分な硬さを備えたペーパープラグ２０を提供できるため、香味吸引物品１１０の製造工程において円滑に処理を実行できるとともに、香味吸引物品１１０に高級感を与えることに寄与し得る。
　　　　長軸と垂直な方向の硬さ（％）＝（Ｄｄ／Ｄｓ）×１００　（１）
（式（１）中、Ｄｓ（ｍｍ）は、負荷Ｆをかける前の前記ペーパープラグの長軸方向に垂直な方向の断面の直径であり、Ｄｄ（ｍｍ）は、負荷Ｆをかけたときの前記ペーパープラグの長軸方向に垂直な方向の断面の直径であり、負荷Ｆは、前記ペーパープラグに対し、その長軸と垂直な方向に圧縮荷重３Ｎ、加圧治具ヘッド直径：φ１２ｍｍ及び圧縮時間１０秒の条件で付与される荷重である。）

　また本実施形態では、ペーパーシート１２の原反の幅と坪量との比が、下記の式（２）を満たす。
　　　　　２．２＜　幅（ｍｍ）／坪量（ｇ／ｍ２）　＜８．８　　（２）
このような幅と坪量を備えた原反から製造されるペーパーシート１２を巻装して構成したペーパープラグ２０は、香味吸引物品１１０に用いられる上で適切な硬さと通気抵抗とを有する。よって本実施形態によれば、適切な硬さと通気抵抗とを備えたペーパープラグ２０を提供できる。

　また本実施形態では、ペーパープラグ２０におけるペーパーシート１２の充填密度は、０．１３８ｍｇ／ｍｍ^３以上である。このような構成のペーパープラグ２０は、適切な硬さを有する。よって本実施形態によれば、適切な硬さを備えたペーパープラグ２０を提供できる。

　また本実施形態では、ペーパーシート１２は、セルロースを含み、クリンプ処理されたシートから形成されている。セルロースを含みクリンプ処理されたシートからペーパーシート１２を製造すると、一般にペーパープラグ２０の硬さが増し、通気抵抗が高くなる。またクリンプ処理により、ペーパープラグ２０の長手方向に垂直な断面内に形成される鬆（小さい穴）が目立ちにくくなり、また製造されたペーパープラグ２０毎の通気抵抗のばらつきが低減する。よって本実施形態では、ペーパーシート１２の原反となるシートにクリンプ処理を施すことによって、容易にペーパープラグ２０の硬さ及び通気抵抗を向上させるとともに、鬆を目立ちにくくさせ、通気抵抗を安定させることができる。

　また本実施形態では、ペーパーシート１２の原反となるセルロースを含むシートには、クリンプ深さが０．３ｍｍ以上となるようにクリンプ処理が施される。０．３ｍｍ以上のクリンプ深さが付与されたシートを用いた場合、ペーパープラグ２０の長手方向に垂直な断面内に形成される鬆は、許容範囲内である。よって本実施形態によれば、アピアランスの観点から望ましいペーパープラグ２０を提供できる。

　また本実施形態では、ペーパーシート１２の原反は、幅が１１０ｍｍ以上２２０ｍｍ以下であり、坪量は、２５ｇ／ｍ^２以上５０ｇ／ｍ^２以下である。このような原反から製造されたペーパーシート１２を巻装して構成したペーパープラグ２０は、適切な硬さと通気抵抗とを有する。よって本実施形態によれば、適切な硬さと通気抵抗とを備えたペーパープラグ２０を提供できる。

　また本実施形態では、ペーパープラグ２０の通気方向の通気抵抗は、０．７ｍｍＨ_２Ｏ／ｍｍ以上３．５ｍｍＨ_２Ｏ／ｍｍ以下であり、ペーパープラグ２０は香味吸引物品１１０のフィルタ部１１５として用いられる。よって本実施形態によれば、香味吸引物品１１０のフィルタ部１１５として使用するために好適な硬さ及び通気抵抗を有するペーパープラグ２０を提供できる。

　また本実施形態では、香味吸引物品１１０に使用するペーパープラグ２０の充填材の原反が、香味を調整するための添加剤を含んでいる。よって本実施形態によれば、加熱されると好適な香味を生成する香味吸引物品１１０を構成するペーパープラグ２０を提供できる。

　また本実施形態では、香味吸引物品１１０に使用するペーパープラグ２０のペーパーシート１２の原反が、フェノール低減材および香料の少なくとも一つを含んでいる。よって本実施形態によれば、より好適な香味を生成する香味吸引物品を構成するペーパープラグ２０を提供できる。

　また本実施形態では、フィルタ部１１５としての上記の式（１）で定義される長軸と垂直な方向の硬さが７０．０％以上であるペーパープラグ２０と、香味源を含むシガレットペーパー１１２により巻装された喫煙可能物１１１と、ペーパープラグ２０とシガレットペーパー１１２により巻装された喫煙可能物１１１を巻装するチッピングペーパー１１３とを含むように、香味吸引物品１１０が構成される。よって本実施形態によれば、十分な硬さが担保されたフィルタ部１１５を含む香味吸引物品１１０が提供できる。また、ペーパープラグ２０をペーパーフィルタとしてではなく、香味吸引物品の上流側の先端（ユーザによって吸引される下流側端部の反対側）を構成する部材として使用することもできる。

　また本実施形態では、ユーザの吸引に際して上流から下流に向かって空気が流れる香味吸引物品２００の内部において、香味発生セグメント２２０（シガレットペーパー２４８により巻装された香味源２２１）の上流側に、ペーパープラグ２０により構成されるプラグ部２１１が配置される。よって本実施形態によれば、ペーパープラグ２０により構成されるプラグ部２１１によって、香味発生セグメント２２０で発生した蒸気またはエアロゾルが香味吸引物品２００の上流側へ漏出することを抑制することができる。

　以上に本開示の実施形態を説明したが、本開示は上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状や材質であっても、本開示の作用を奏する以上、本開示の技術的思想の範囲内である。

（付記１）
　本開示の第１の態様は、充填材と、前記充填材を巻装するインナープラグラップとを有する、ペーパープラグであって、以下の式（１）で表される長軸と垂直な方向の硬さは、７０．０％以上である、ペーパープラグである。
　　　　長軸と垂直な方向の硬さ（％）＝（Ｄｄ／Ｄｓ）×１００　（１）
（式（１）中、Ｄｓ（ｍｍ）は、負荷Ｆをかける前の前記ペーパープラグの長軸方向に垂直な方向の断面の直径であり、Ｄｄ（ｍｍ）は、負荷Ｆをかけたときの前記ペーパープラグの長軸方向に垂直な方向の断面の直径であり、負荷Ｆは、前記ペーパープラグに対し、その長軸と垂直な方向に圧縮荷重３Ｎ、加圧治具ヘッド直径：φ１２ｍｍ及び圧縮時間１０秒の条件で付与される荷重である。）

（付記２）
　本開示の第２の態様は、上記第１の態様において、前記充填材の原反の幅（ｍｍ）と坪量（ｇ／ｍ^２）との比が、以下の式（２）で表される範囲にある、ペーパープラグである。
　　　　　２．２＜　幅（ｍｍ）／坪量（ｇ／ｍ^２）　＜８．８　　　（２）

（付記３）
　本開示の第３の態様は、上記第１及び第２の態様において、前記ペーパープラグにおける前記充填材の充填密度は、０．１３８ｍｇ／ｍｍ^３以上である、ペーパープラグである。

（付記４）
　本開示の第４の態様は、上記第１～第３の態様において、前記充填材は、セルロースを含み、クリンプ処理されたシートから形成されている、ペーパープラグである。

（付記５）
　本開示の第５の態様は、上記第４の態様において、前記シートのクリンプ深さは、０．３ｍｍ以上である、ペーパープラグである。

（付記６）
　本開示の第６の態様は、上記第１～第５の態様において、前記充填材の原反の幅は、１１０ｍｍ以上２２０ｍｍ以下であり、前記充填材の原反の坪量は、２５ｇ／ｍ^２以上５０ｇ／ｍ^２以下である、ペーパープラグである。

（付記７）
　本開示の第７の態様は、上記第１～第６の態様において、通気方向の１ｍ毎の通気抵抗は、０．７ｍｍＨ_２Ｏ／ｍｍ以上３．５ｍｍＨ_２Ｏ／ｍｍ以下であり、香味吸引物品に用いられる、ペーパープラグである。

（付記８）
　本開示の第８の態様は、上記第７の態様において、前記充填材の原反は、香味を調整するための添加剤を含む、ペーパープラグである。

（付記９）
　本開示の第９の態様は、上記第８の態様において、前記添加剤は、フェノール低減材および香料の少なくとも一つを含む、ペーパープラグである。

（付記１０）
　本開示の第１０の態様は、第１プラグとしての請求項１～９のいずれか一項に記載のペーパープラグと、香味源を含む第２プラグと、前記第１プラグと前記第２プラグとを巻装するチッピングペーパーとを含む、香味吸引物品である。

（付記１１）
　本開示の第１１の態様は、上記第１０の態様において、前記ペーパープラグは、前記第２プラグに対して上流側に配置される、香味吸引物品である。

　　１０…フィルタロッド
　　１２…ペーパーシート
　　１２ａ…山部
　　１２ｂ…谷部
　　１４…第１プラグラップ
　　２０…ペーパープラグ
　　１１０…香味吸引物品
　　１１１…喫煙可能物
　　１１２…シガレットペーパー
　　１１３…チッピングペーパー
　　１１４…筒状部材
　　１１５…フィルタ部
　　１１６…中空フィルタ部
　　１１７…リップリリース剤
　　２００…香味吸引物品
　　２０１…第１端
　　２０２…第２端
　　２１０…第１セグメント
　　２１１…プラグ部
　　２２０…香味発生セグメント
　　２２１…香味源
　　２３０…冷却セグメント
　　２３１…中空管
　　２３２…貫通孔
　　２４０…第２セグメント
　　２４１…第１フィルタ
　　２４２…第２フィルタ
　　２４８…シガレットペーパー
　　２５０…第２チッピングペーパー
　　２６０…チッピングペーパー
　　３１０…充填材
　　３２０…第１インナープラグラップ
　　３３０…充填層
　　３４０…第２インナープラグラップ
　　３５０…アウタープラグラップ

Claims (11)

1. 　充填材と、前記充填材を巻装するインナープラグラップとを有する、ペーパープラグであって、
   　以下の式（１）で表される長軸と垂直な方向の硬さは、７０．０％以上である、
   　ペーパープラグ。
   　　　　長軸と垂直な方向の硬さ（％）＝（Ｄｄ／Ｄｓ）×１００　　（１）
   （式（１）中、
   　Ｄｓ（ｍｍ）は、負荷Ｆをかける前の前記ペーパープラグの長軸方向に垂直な方向の断面の直径であり、
   　Ｄｄ（ｍｍ）は、負荷Ｆをかけたときの前記ペーパープラグの長軸方向に垂直な方向の断面の直径であり、
   　負荷Ｆは、前記ペーパープラグに対し、その長軸と垂直な方向に圧縮荷重３Ｎ、加圧治具ヘッド直径：φ１２ｍｍ及び圧縮時間１０秒の条件で付与される荷重である。）
2. 　前記充填材の原反の幅（ｍｍ）と坪量（ｇ／ｍ^２）との比が、以下の式（２）で表される範囲にある、
   　請求項１に記載のペーパープラグ。
   　　　　　２．２＜　幅（ｍｍ）／坪量（ｇ／ｍ^２）　＜８．８　　　　　（２）
3. 　前記ペーパープラグにおける前記充填材の充填密度は、０．１３８ｍｇ／ｍｍ^３以上である、
   　請求項１または２に記載のペーパープラグ。
4. 　前記充填材は、セルロースを含み、クリンプ処理されたシートから形成されている、
   　請求項１～３のいずれか一項に記載のペーパープラグ。
5. 　前記シートのクリンプ深さは、０．３ｍｍ以上である、
   　請求項４に記載のペーパープラグ。
6. 　前記充填材の原反の幅は、１１０ｍｍ以上２２０ｍｍ以下であり、
   　前記充填材の原反の坪量は、２５ｇ／ｍ^２以上５０ｇ／ｍ^２以下である、
   　請求項１～５のいずれか一項に記載のペーパープラグ。
7. 　通気方向の１ｍ毎の通気抵抗は、０．７ｍｍＨ_２Ｏ／ｍｍ以上３．５ｍｍＨ_２Ｏ／ｍｍ以下であり、
   　香味吸引物品に用いられる、
   　請求項１～６のいずれか一項に記載のペーパープラグ。
8. 　前記充填材の原反は、香味を調整するための添加剤を含む、
   　請求項７に記載のペーパープラグ。
9. 　前記添加剤は、フェノール低減材および香料の少なくとも一つを含む、
   　請求項８に記載のペーパープラグ。
10. 　第１プラグとしての請求項１～９のいずれか一項に記載のペーパープラグと、
    　香味源を含む第２プラグと、
    　前記第１プラグと前記第２プラグとを巻装するチッピングペーパーと
    　を含む、
    　香味吸引物品。
11. 　前記ペーパープラグは、前記第２プラグに対して上流側に配置される、
    　請求項１０に記載の香味吸引物品。

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