JP3920847B2 - 双極性鉗子 - Google Patents

Description

本発明は請求項１の前文に記載される双極性鉗子に関する。

双極性鉗子は、例えばＰＣＴ出願Ｗ０９９／２３９３３及びＷ０９９／２３９５９により公知となっている。双極性鉗子は絶縁性ねじ又は類似したピボットジョイントにより相互に機械的に連結された２つの鉗子部材から成り、この絶縁性ねじを中心にこれら２つの鉗子部材が互いに対して絶縁状態で回動する。鉗子部材の先端には、組織を掴み、これを凝固させる為に当該組織に電流を通電させる電極部品が設けられる。双極性鉗子を操作する為に、鉗子部材の後端にはハンドル装置が設けられる。鉗子部材の少なくとも一方の後端に設けられた電流供給端子により凝固電流が供給される。双極性鉗子を閉鎖位置にロックする為、鉗子部材のピボットジョイントと後端との間に連結ラチェットが配置される。これにより、鉗子が閉鎖位置にある時に、鉗子が組織を確実に把持することができる。

しかし、Ｗ０９９／２３９３３に開示された双極性鉗子には２つの問題点がある。
第１の問題点は、一方の鉗子部材でしか電流は供給されないことである。詳細には、鉗子部材の後端に設けられたハンドル装置に固定された端子から、２つの鉗子部材の間のピボットジョイントまで共通のルートをたどる２本のワイヤにより電流が供給される。その地点から、ワイヤはそれらが電気的に接続された電極へと分かれて延びる。この構成により鉗子の操作が容易となるが、ワイヤの構成、特に鉗子部材を接続するジョイントの近傍のワイヤの構成により、特に鉗子を頻繁に使用する場合にそれらを摩耗しやすく裂けやすくし、電気リード線に破損が生じ得る。この種の鉗子に大きな機械的負荷がかかる為に、上記のような不都合が生じやすい。

更に、電流を流す時間は作業者が決める為、鉗子部材を閉鎖位置にロックする前にでも凝固電流を流すことは可能である。従って、作業者は組織を凝固させる為に３つの作業、即ち、組織を掴み、鉗子部材を互いにロックし、電流を流すという作業を行わなければならない。これにより作業が複雑になる。主な問題点は、ロックが完了する前に、偶然に作業者は容易に電流を流すことが可能なことにより、意図しない凝固を引き起こすことである。
Ｗ０９９／２３９３３ Ｗ０９９／２３９５９

従って、本発明の目的は、公知の双極性鉗子をより確実に、またより簡単に操作できるように改良することにある。

前記の目的は、請求項１に記載の特徴を有する双極性鉗子により達成される。この双極性鉗子の好適な実施例は従属項から明らかとなろう。

本発明は、電流供給手段を設け、電流供給手段を介して電極へ電流を流すことが閉鎖位置でのみ可能となるようにラチェットを構成するという考えに基づいている。この手段により、鉗子により組織を掴んで鉗子を閉鎖位置にロックするまでは電流を流すことができない為、特に安全な双極性鉗子を得ることができる。

換言すれば、組織を鉗子の２つの掴み具の間で確実に保持した後にのみ組織を凝固させることができる。これにより、把持される組織に凝固電流を流すのが早過ぎるという事態が確実に防止される。更に、原理的には電流の流れは鉗子部材のロックにより制御される為、操作が簡単になる。即ち、作業者は、組織を凝固させる為に、当該組織を掴んで鉗子部材を互いにロックさせるだけで良い。

本発明によれば、双極性鉗子は絶縁性ねじ又は類似したピボットジョイントにより互いに機械的に連結された２つの鉗子部材を備え、これら２つの鉗子部材が互いに対して絶縁状態で回動する。鉗子部材の先端で組織を把持し、その組織に電流を流して凝固させる為の電極が設けられる。双極性鉗子を容易な方法で操作する為、鉗子部材の後端にはハンドル装置が設けられる。更に、電流供給手段が設けられ、該手段を介して凝固電流を流すことができる。鉗子部材を閉鎖位置で互いにロックさせる為に、ピボットジョイントと後端との間に連結ラチェットが配置される。電流供給手段とラチェットは、閉鎖位置でのみ電流供給端子から電極への通電が可能となるように構成される。

電流供給の為の端子（以下、「電流供給端子」と言う）は鉗子部材の後端に配置され、その際ラチェットは電流供給手段の導通部を形成するのが好ましい。その結果、電供給装置は、前方のピボットジョイントから離れた位置で、鉗子部材の内の一方の後端領域と互いに分離させることができる。その結果、電流供給装置は鉗子の動きに殆ど影響されない。これに関し、ラチェットが一方の電流供給手段の為のガイド部として機能するには、滑らかな金属製のものが、特に適している。とりわけ、上記構成は、Ｗ０９９／２３９３３に開示される双極性鉗子にみられる様な、ピボットジョイントまで互いに延びるワイヤが電流供給手段として機能する分岐点を回避することができる。鉗子を開閉する際に、ジョイント領域のワイヤに機械的応力がかかることがない。これにより、鉗子が摩耗したり引き裂かれることはなく、動作不良の危険性も低減する。

電流供給手段としては、少なくとも鉗子部材の外部又は内部の特定の部分で案内される電気リード線を備えたものであっても良い。電流供給の為の電気リード線が鉗子部材の外部に延びる場合、電気リード線はできる限り電気的に絶縁し、鉗子部材に固定すべきである。好ましいと考えられる固定の手段としては、接着、鉗子による連結、又は鉗子部材に設けた特殊な案内装置による固定が挙げられる。電気リード線が鉗子部材の内部に延びる場合、その部材は、例えば穴又は溝（リード線を収容する為）の形態の様に、中空とするか又はガイド用のチャネルを備えていなければならない。

電気リード線を案内する為に案内装置を使用する場合、鉗子部材は少なくとも部分的に絶縁材料で形成するのが好ましい。この場合、電流供給手段としてむき出しのワイヤを使用することができる。その場合、ラチェットは導電性のロック部とキャリア部とを有する。ロック部に電気的に接続、特にはんだ付けされた電気リード線の部分を収容することのできる間隙がロック部とキャリア部との間に形成されるように、ロック部をキャリア部に取り付ける。

２本の電気リード線は、電流供給端子が取り付けられた鉗子部材に沿って案内するのが好ましい。電気リード線の一方は、電流供給端子を担持する鉗子部材の先端の電極に導かれている。他方の電気リード線は、ラチェットのロック部に導かれ、それと電気的に接続されている。他方の鉗子部材は、全体的にその先端に配置された電極と一体的に導電性材料で構成されているのが好ましい。電流をラチェットにより、より正確には電気リード線により第１ラチェットのロック部まで流し、次いで第２ラチェットのロック部、最後に電極の鉗子部材を介して流す。この種の双極性鉗子は最小の電気リード線で機能することができ、結果として構造も比較的単純である。

本発明による鉗子の別の好適な実施形態では、電流供給端子は一方のラチェットに配置される。前記鉗子部材は、導電性材料、特に金属でできており、それらの外側は電気的に絶縁されている。前記ラチェットは、前記電流供給手段の導電部を形成する。この構成により、特に鉗子部材に金属を用いた場合、高い機械的負荷に耐え、本発明の主な利点、即ち安全な操作性を発揮することのできる双極性鉗子が得られる。例えば、電流供給端子として機能する二芯の電気プラグを、一方のラチェットに直接配置することができる。鉗子部材は導電材料でできている為、鉗子部材は凝固電流を電極に流すことができる。鉗子部材の外部は絶縁性である為、当該鉗子部材と接触しても組織の損傷を防ぐ。鉗子が閉鎖位置に到達するまで凝固させる機能が働かない様に、ラチェットは電流供給手段の導電部を形成する。本実施の形態は僅かな部品しか必要とせず、経済的である一方、摩耗や引き裂きの影響を殆ど受けない。

鉗子部材を互いに確実に絶縁する為に、ピボットジョイントに、鉗子部材の一方内で特にセラミック製の絶縁ソケット内に着座するくぎを軸線として採用する。セラミック製ソケット内で着座させることにより、ピボットジョイントの摩耗を防ぐ効果がある。更に、セラミックは絶縁性に優れている。しかし、双極性鉗子の構造を安価にする為に、絶縁性ソケットを例えばプラスチック製にすることも可能である。その場合、ソケットは、ピボットジョイントを介して２つの鉗子部材間に感知できる程の電流が流れることを防ぐことができる程の絶縁性を備えていなければならない。最も単純な形態として、非常に高い電流抵抗を有する絶縁コーティングをソケットに施すことができる。

以下、本発明による双極性鉗子の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。

図１の斜視図に示す双極性鉗子１０は、２つの鉗子部材１２及び１４を備える。鉗子部材１２及び１４は、その後端３０及び３２にハンドル装置２６及び２８をそれぞれ備える。ハンドル装置２６及び２８は、ハサミの取っ手の様なリング状であり、作業者が容易に操作できるようになっている。鉗子部材１２及び１４はピボットジョイント１６により互いに機械的に連結しており、互いに対して回転可能である。ピボットジョイント１６は、鉗子部材１２及び１４の先端２２及び２４の近くに位置している。鉗子部材１２及び１４の先端２２及び２４には、導電性電極２０及び１８がそれぞれ固定される。導電性電極２０及び１８は、両方とも組織を掴み、組織に凝固電流を流す為に使用される。後者の目的の為に、導電性電極２０及び１８は金属製であるのが好ましい。鉗子部材１４のハンドル装置２８には、電流供給手段の端子３４が設けられる。端子３４には、電流供給手段により電極１８及び２０に通電した高周波凝固電流を発生させるＨＦ発生器（図示せず）が接続される。

図２の破線はチャネルを示し、そのチャネルに沿って図１に示す鉗子１０の電流供給装置が案内される。電流供給手段は、鉗子部材１２及び１４内を案内される電気リード線４０、４２及び４３を有する。電気リード線４３は、鉗子部材１４のハンドル装置２８に位置する電流供給手段３４の端子から鉗子部材１４の後端３２の第１ラチェット３８まで延びている。電気リード線４２の一端は、後端３０で第２ラチェット３６に電気的に接続され、電気リード線４２の他端は鉗子部材１２の先端で電極２０に接続されている。電気リード線４２は、鉗子部材１２の外部又は内部の何れかに沿って案内される。ここで、電気リード線４２がピボットジョイント１６により影響されないこと、即ち電気リード線４２は２つの鉗子部材１２及び１４の動作中に曲がらないことが重要である。その結果、例えば、Ｗ０９９／２３９３３により公知となっている双極性鉗子の場合に比較して、鉗子を頻繁に使用した為にリード線が破壊されるという危険性が低くなる。第３リード線４０は、電流供給手段の端子３４から鉗子部材１４の先端２２の電極１８まで直接延びている。この電気リード線４０も、双極性鉗子１０の使用中に曲がることはない。図２において、電気リード線４０はピボットジョイント１６を越えて延びているが、勿論電気リード線４０を例えばピボットジョイント１６の下方に案内する等、別の方法で案内することも出来る。

図３は、ピボットジョイント１６の構造を詳細に示している。ピボットジョイント１６は、鉗子部材１２及び１４を回転自在に互いに連結するリベットのように作用するピボットピン４６を備える。該ピンの一端は鉗子部材１２に設けられた開口部内に圧入されたソケット４４内でシールされている。ソケット４４は、絶縁材料、特にセラミックでできている。又は、ピボットジョイント１６を介して鉗子部材１４から鉗子部材１２、又はその逆に電流が流れてもそれが凝固電流に比べて無視できるくらい小さなものとなるように、ソケット４４を非常に僅かな導電性材料、即ち電気抵抗の非常に高い材料で形成しても良い。

最後に、図４はラチェット３８の構造の断面を示している。ラチェット３８は、鉗子部材１４と一体に形成されたキャリア部５０に取り付けられたロック部４８を備えている。キャリア部５０は、絶縁材料でできている。ロック部４８は導電材料でできており、ロック部４８は電気リード線４３のリード部５４にはんだ接合５２により電気的に接合されている。ロック部４８は、特に接着剤又は鉗子によりキャリア部５０に固定することができる。

本発明による双極性鉗子の実施の形態を示す。 破線で示した電気リード線を有する図１の双極性鉗子を示す。 図１に示す双極性鉗子の絶縁ピボットジョイントの側部断面図である。 図２に示す双極性鉗子の一方のラチェットの長手方向断面図である。

符号の説明

１０ 双極性鉗子
１２ 鉗子部材
１４ 鉗子部材
１６ 絶縁性ピボットジョイント
１８ 電極
２０ 電極
２２ 鉗子部材の先端
２４ 鉗子部材の先端
２６ ハンドル装置
２８ ハンドル装置
３０ 鉗子部材の後端
３２ 鉗子部材の後端
３４ 電流供給手段の端子
３６ ラチェット
３８ ラチェット
４０ 電気リード線
４２ 電気リード線
４３ 電気リード線
４４ 絶縁ソケット
４６ ピン
４８ ロック部
５０ キャリア部
５２ はんだ接合
５４ リード部

Claims (7)

1. 絶縁性ねじ又はそれに類似したピボットジョイント（１６）により、相互に機械的に連結されると共に、互いに対して回転自在であり、互いに対して電気的に絶縁された２つの鉗子部材（１２、１４）と、
   前記鉗子部材（１２、１４）の先端（２２、２４）に設けられ、組織を掴み、組織に電流を流して凝固を生じさせる為の電極（１８、２０）と、
   前記鉗子部材（１２、１４）の後端（３０、３２）に設けられたハンドル装置（２６、２８）と、
   前記ピボットジョイント（１６）と前記後端（３０、３２）との間に設けられ、閉鎖位置で前記鉗子部材（１２、１４）を互いにロックさせるラチェット（３６、３８）と、よりなる双極性鉗子（１０）であって、
   前記鉗子部材（１２、１４）は前記電極（１８、２０）にそれぞれ電流を供給する電流供給手段として機能し、
   前記一方の鉗子部材（１４）の後端には、前記鉗子部材（１２、１４）にそれぞれ電流を供給する前記電流供給手段の端子（３４）が設けられ、
   前記一方の電極（２０）は、一方の鉗子部材（１４）を介して端子（３４）と電気的に接続されており、
   前記他方の電極（１８）は、前記ラチェット（３６、３８）が閉鎖位置にある場合のみ、他方の鉗子部材（１２）及びラチェット（３６、３８）を介して端子（３４）と電気的に接続されることを特徴とする双極性鉗子部材。
2. 前記電流供給手段としての前記鉗子部材（１２、１４）は、その外部及び／又は内部に沿って少なくとも部分的に案内される電気リード線（４０、４２、４３）を備えることを特徴とする請求項１に記載の双極性鉗子。
3. 前記鉗子部材（１２、１４）は少なくとも部分的に絶縁材料でできており、
   前記電気リード線（４０、４２、４３）は、前記鉗子部材（１２、１４）上又は内部に設けられた、案内装置としての溝、穴又はチャネルにより案内されることを特徴とする請求項１又は２に記載の双極性鉗子。
4. 前記ラチェット（３６、３８）の少なくとも一方は、導電性のロック部（４８）とキャリア部（５０）とを備え、
   前記ロック部（４８）に電気的に接続、特に半田接合された電気リード部（５４）を収容する間隙がロック部（４８）とキャリア部（５０）との間に形成されるように、ロック部（４８）をキャリア部（５０）に固定することを特徴とする請求項３に記載の双極性鉗子。
5. 前記電流供給手段としての前記一方の鉗子部材（１４）の内部には、２本の電気リード線（４０、４３）が案内され、
   該電気リード線の一方（４０）は、前記鉗子部材（１４）の先端（２２）の電極（１８）まで延び、かつ、電気的に接続され、
   他方の電気リード線（４３）は、前記ラチェット（３８）のロック部（４８）まで延び、かつ、電気的に接続され、
   前記他方の鉗子部材（１２）は導電材料からなることを特徴とする請求項４に記載の双極性鉗子。
6. 前記電流供給手段としての前記鉗子部材（１２、１４）は導電性材料、特に金属で構成されており、それらの外側は電気的に絶縁されていることを特徴とする請求項１に記載の双極性鉗子。
7. 前記ピボットジョイント（１６）は絶縁性であり、回転軸としてのピン（４６）を備え、
   該ピン（４６）は、特にセラミック製の絶縁性ソケット（４４）内で前記他方の鉗子部材（１２）内に着座していることを特徴とする請求項１〜６の何れか１項に記載の双極性鉗子。

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