JP2020190760A - 腹腔シミュレータ用臓器固定具 - Google Patents
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Abstract
Description
しかしながら、腹腔鏡下手術は手術難易度が高く、執刀医の技術の差が出やすいという問題がある。そのため、腹腔鏡下手術の手技トレーニングを効果的に行う技術が望まれている。
上記特許文献1に開示された腹腔シミュレータでは、手術器具を挿通し得る複数のポートが設けられ、繰り返しトレーニングを行うことが可能となっている。また、シミュレータ内に生体質感臓器モデルを取り付ける際に、位置合わせが簡便に行える構成となっており、利便性の高いシミュレータとなっている。
このような腹腔シミュレータを使用したトレーニングが効果的に行われるためには、術者が内視鏡を通して得られた術野が、実際の術野と近似している必要があり、そのため、腹腔シミュレータ内に取り付ける生体質感臓器モデルは、解剖学的に見て正確な3次元的位置に取り付けられることが必要である。
しかしながら、上記特許文献1に開示された腹腔シミュレータでは、生体質感臓器モデルを取り付けるために用いられるモデル把持部に、生体質感臓器モデルを解剖学的に正確な3次元的位置に取り付ける機構が設けられているかについては、十分な開示がなされていない。
しかしながら、上記特許文献2に開示された解剖学的モデルは、より正確に臓器を再現しようとしたものではあるが、臓器モデルの作製コストが高くなるという問題がある。
しかしながら、特許文献3に開示されたヘルニア模型についても、特許文献2に開示された解剖学的モデルと同様に、臓器モデルの作製コストが高くなるという問題がある。
かかる状況に鑑みて、本発明は、腹腔シミュレータに生体質感臓器モデルが取り付けられた際に、解剖学的に正確な3次元的位置に配置され、かつ、低コストで生体質感臓器モデルを作製可能な腹腔シミュレータ用臓器固定具を提供することを目的とする。
本発明の臓器固定具が用いられることにより、臓器モデルと臓器固定具を組み合わせた状態を想定した上で、別々に設計することが可能となり、柔軟で質の高い設計が可能となる。すなわち、臓器固定具によって臓器モデルの正確かつ安定的な固定が可能となり、一方、臓器モデルについては、取り付け後の状態を想定した上で、例えば、略平面形状で臓器モデルを設計することが可能となる。
また、手技トレーニングにおいて重要な部分については、臓器モデルで精密に再現し、必ずしも重要ではない部分については臓器固定具によりデフォルメすることができるため、低コストでの臓器モデルの作製が可能である。
かかる構成とされることにより、胃の臓器モデルを解剖学的に正しい位置になるように載設することが可能となる。
また、本発明の腹腔シミュレータ用臓器固定具において、胃モデル固定具は、トレー表面の頭側から見た右プレートの骨盤側に、胃の臓器モデルの十二指腸を固定する手段が更に設けられたことが好ましい。
胃の臓器モデルの食道を挟持し固定する手段や、十二指腸を固定する手段が設けられることにより、胃の臓器モデルの3次元的配置位置を安定的に保持し得るだけではなく、手技トレーニングの際に胃の臓器モデルを把持したときの弾力等を正確に再現できることとなる。
第2の隆起部が設けられることにより、より正確な位置に臓器モデルを配置することが可能となる。
脾臓は仰臥位において、背骨よりも落ち込んだ位置に存在するので、陥没部が設けられることにより、脾臓をより正確な位置に配置することが可能となる。
大網を模擬するシート状モデル上に、胃の臓器モデルが載設されることにより、解剖学的に正確な位置に配置されることとなる。また、胃の臓器モデルには、更に、脾臓、胃周辺部血管、リンパ節、横行結腸、膵臓及び腹膜が設けられることが好ましい。その場合、横行結腸や膵臓については大網を模擬するシート状モデルの下に配置される。
内側臍襞部等の臓器モデルが配置されることにより、特に、内視鏡で見た際の術野がより正確に再現され、効果的なトレーニングが可能となる。なお、内側臍襞部等の臓器モデルについても、鼠径ヘルニアモデル固定具に取り付けられた際に、正確な3次元的配置位置となるように設けられる。
手技トレーニングは、一般に繰り返し行われるため、張り替えて再使用可能とされることにより、低コストでのトレーニングが可能となる。
泡状の筋膜モデル又は泡状の疎結合織モデルが設けられることにより、内視鏡で見た際の術野がより正確に再現されるだけではなく、剥離や切開といった手技をよりリアルに行うことができる。なお、疎結合織は、疎性結合組織とも呼ばれる。
図3(1)及び(2)に示すように、胃統合モデル固定具1は、トレー4及び取付部材(5a,5b)から成る。トレー4は、生体質感臓器モデルを配置し固定する箇所であり、トレー(4a,4b)から成る。本実施例では、2枚のトレー(4a,4b)を組み合わせる構成を示しているが、トレー(4a,4b)は一体成形されていてもよい。
取付部材(5a,5b)は、後述する腹腔シミュレータに取り付けるためのアダプタの役割を果たすものであり、取り付け対象となる腹腔シミュレータの形状に合わせて作製されている。
トレー4aと取付部材(5a,5b)は、それぞれ2つの螺子51を用いて固定されている。また、トレー4bと取付部材(5a,5b)についても、同様にそれぞれ2つの螺子51を用いて固定されている。このように、トレー4と取付部材(5a,5b)は、螺子51により脱着自在となっているため、使用する腹腔シミュレータの大きさ等に合わせて取付部材(5a,5b)を付け替えることも可能である。また、かかる構成とは異なり、トレー4と取付部材(5a,5b)を一体成形することも可能である。
図4(1)及び(2)に示すように、取付部材5aには雌螺子部(6a,6b)、取付部材5bには雌螺子部(6c,6d)が設けられており、後述する螺子52を用いて腹腔シミュレータに容易に取り付けることが可能である。
図5は、胃統合モデル固定具のトレーの説明図であり、(1)は平面のトレーを用いた場合、(2)は凹凸のあるトレーを用いた場合を示している。
詳しくは後述するが、胃統合モデル10には、胃だけではなく、脾臓や横行結腸等様々な臓器のモデルが含まれる。そしてそれらの臓器モデルは、本来は人体の内部において高低差が設けられて存在するものである。しかしながら、図5(1)に示すように、トレー400上に胃統合モデル10を設置すると、トレー400は平面形状であるため、高低差を再現することはできない。すなわち、平面形状のトレーを利用する場合には、胃統合モデル10自体に高低差を設ける必要が生じることとなる。しかしながら、高低差を精密に再現した胃統合モデルを作製するのでは、手技トレーニングに必要のない部位についても精密に作製しなければならず、作製コストが高くなるという問題がある。
そこで、図5(2)に示すように、トレー4自体に高低差を設けることで、略平面形状に作製された胃統合モデル10を設置した場合でも、解剖学的に正確な3次元的位置に臓器を配置することが可能となる。
すなわち、部位10aよりも部位10bを高い位置に配置し、部位10cを部位(10a,10b)よりも低い位置に配置したいという場合には、図5(2)に示すトレー4のように、上段部4c、下段部4d及び隆起部4eが形成された部材を用いることで、確実かつ容易に高低差を演出できるのである。なお、説明の便宜上、ここでは陥没部4fについては図示していない。
胃11は、胃だけではなく、噴門部に食道11aが設けられ、幽門部に十二指腸11bが設けられている。胃11はデルタ吻合に対応した構成となっている。
また、材質としてはポリビニルアルコール(PVA)樹脂が用いられており、ポリビニルアルコール樹脂は水分を含むため、電気メス等の使用も可能となっている。
なお以下の実施例においても、「胃」などのように呼んでいる臓器は、実際の臓器ではなく、生体質感臓器モデルのことである。
トレー4には上段部4c、下段部4d、隆起部4e及び陥没部4fの4つの高低差が設けられている。そのため、胃統合モデル10が配置された場合、例えば、胃11の中央部は、盛り上がった形態となり、肝臓近傍の上段部4cに配置された胃11よりも高く配置されることになる。肝臓近傍は肝臓に繋がる血管や胆管などが走行するが、落ち込みはない。胃統合モデル固定具1を用いることで、このような3次元的な位置関係を正確に再現できる。同様に、横行結腸15についても、上段部4c、隆起部4e、下段部4dと配置される箇所に応じて高低差が設けられることとなる。
さらに、脾臓12については、陥没部4fに配置されるため、他の臓器よりも最も低い位置に配置されることになる。これにより、脾臓底部が略背側に落ち込む様子を再現できる。
このように、胃統合モデル10をトレー4上に適切に配置するだけで、解剖学的に正確な3次元的位置に臓器を配置することができる。
図9(1)に示すように、胃統合モデル固定具1に設けられた雌螺子部(6a〜6d)と、腹腔シミュレータ9の背中部93に設けられた雌螺子部(93a〜93d)の位置を合わせて、図9(2)に示すように、螺子52を用いて固定する。隆起部4eは、背骨93hに嵌合するように取り付けられるが、それだけではなく、その上に配置する胃統合モデル10の配置位置を調整する機能を有している。
なお、ここでは説明の都合上、胃統合モデル固定具1に胃統合モデル10を固定していない状態で、腹腔シミュレータ9の背中部93に取り付けているが、実際には、先に胃統合モデル固定具1に胃統合モデル10を固定した上で、背中部93に取り付ける。
具体的な胃統合モデル固定具の使用フローについて、図10を参照して説明する。図10は、実施例1の胃統合モデル固定具の使用フロー図を示している。
図10に示すように、胃統合モデル固定具を使用する場合には、まず、トレー4上に胃統合モデル10を配置する(ステップS01)。次に、食道固定機構7aを用いて食道11aを固定する(ステップS02)。十二指腸固定機構7bを用いて十二指腸11bを固定する(ステップS03)。胃統合モデル固定具1を腹腔シミュレータ9の背中部93に取り付ける(ステップS04)。最後に、気腹カバーである腹部91を背中部93に取り付ける(ステップS05)。
図12(1)及び(2)に示すように、鼠径ヘルニアモデル固定具3は、3つのトレー(3a〜3c)から成り、トレー3aとトレー3b、トレー3bとトレー3cがそれぞれ嵌合して接着されている。
トレー(3a〜3c)には、それぞれ固定部(30a〜30c)が設けられており、固定部(30a〜30c)には、それぞれ面ファスナ(71d〜71f)が設けられている。面ファスナ(71d〜71f)はフック部で形成されており、後述する鼠径ヘルニアモデル40のゲル膜47は材質上、面ファスナのループ部と同じ役割を果たしうるため、鼠径ヘルニアモデル40の取付位置を自在に調整可能である。
トレー(3a,3c)には、それぞれ取付機構(31,32)が設けられており、取付機構31には雌螺子部31a、取付機構32には雌螺子部32aが設けられている。
ゲル膜47は、1層のゲル状組織であり、腹膜前筋膜の剥離層の質感を再現したものとなっている。また、ゲル膜47は、張り替えて再使用することが可能であるため、トレーニングコストを低減することができる。
動脈部44aおよび静脈部44bは、トレーニングにおいてメルクマールとなるものであり、動脈部44a、静脈部44bおよび筋肉などの生体構造を取捨選択し再現することが可能となっている。
このように、鼠径ヘルニアモデル40は、鼠径ヘルニアモデル固定具3と一体となることで解剖学的に正しい3次元的位置に臓器を配置することができる。
なお、ここでは、骨盤部92を背中部93と接続する前に、鼠径ヘルニアモデル固定具3を骨盤部92に取り付けているが、一般的には、骨盤部92を背中部93と接続した後に鼠径ヘルニアモデル固定具3を取り付ける。但し、図18に示すように、先に鼠径ヘルニアモデル固定具3を骨盤部92に取り付けても構わない。
腹腔シミュレータに生体質感臓器モデルとしての直腸モデルを取り付ける場合に、直腸モデルを上方から押さえて固定する固定具であってもよい。これにより直腸モデルを解剖学的に正しい3次元的位置に配置し、固定することができる。
6a〜6d,31a,32a,92a,92b,93a〜93d 雌螺子部
3 鼠径ヘルニアモデル固定具
3a〜3c,4,4a,4b,400 トレー
4c 上段部
4d 下段部
4e 隆起部
4f 陥没部
5a,5b 取付部材
7a 食道固定機構
7b 十二指腸固定機構
7c 貫通孔
8a 頭側開口部
8b 足側開口部
9 腹腔シミュレータ
10 胃統合モデル
11 胃
11a 食道
11b 十二指腸
12 脾臓
13 胃周辺部血管
14 リンパ節
15 横行結腸
16 大網
17 膵臓
18,40a 腹膜
30a〜30c 固定部
31,32 取付機構
33 凸部
34 凹部
40 鼠径ヘルニアモデル
41 ヘルニア門
42 内側臍襞部
43 正中臍襞部
44a 動脈部
44b 静脈部
46 精管
47 ゲル膜
51,52 螺子
71a〜71f 面ファスナ
91 腹部
92 骨盤部
93 背中部
93h 背骨
94 蓋部
Claims (10)
- 腹腔鏡下手技習得用の腹腔シミュレータ内腔の3次元空間に臓器モデルを配置する臓器固定具において、
前記腹腔シミュレータは、人体形状を模擬した骨盤部と、左右横腹部及び背骨隆起部を有する背中部と、腹腔鏡手技下で用いられる手術器具を挿通し得る複数のポートが設けられた腹部とから少なくとも構成され、
前記臓器固定具は、
胃モデル固定具、鼠径ヘルニアモデル固定具の少なくとも1つであり、何れの固定具も、臓器モデルを取り付けた場合に、臓器モデルの腹腔シミュレータ内腔における3次元的配置位置が、解剖学的に正しい位置になるように、固定具自体の表面が、隆起、陥没、又は、湾曲しており、
前記胃モデル固定具は、少なくとも3段階の高低差を有し、食道の一部と十二指腸を有する胃の臓器モデルを少なくとも載設するトレーであり、トレー表面の前記3段階の高低差は、中央、頭側から見た右プレート、頭側から見た左プレートの順に高低差が設けられるものであり、
前記鼠径ヘルニアモデル固定具は、前記骨盤部の内壁に取り付けられ、内面は曲面形状であり、左右対象に設けられた2つのヘルニア門の臓器モデルを有する屈曲性シート状の鼠径ヘルニアモデルの裏面を取り付け得るものであり、内面の曲面形状に沿って、略平面形状の前記鼠径ヘルニアモデルを湾曲させて取り付けた際に、解剖学的に正しい3次元的位置に2つのヘルニア門の臓器を配置させ、前記2つのヘルニア門とその周囲を走る動脈、静脈及び精管の裏面は、固定具が当接しないように固定具の形状が形成されるものである、
ことを特徴とする腹腔シミュレータ用臓器固定具。 - 前記胃モデル固定具は、
トレー裏面が前記背中部の前記背骨隆起部に嵌合し、
トレー側面が前記左右横腹部と係合し、
トレー表面の中央は前記背骨隆起部に沿って湾曲して隆起し、
トレー表面の中央を挟んで左右はプレート状である、
ことを特徴とする請求項1に記載の腹腔シミュレータ用臓器固定具。 - 前記胃モデル固定具は、
トレー表面の中央の頭側に、前記胃の臓器モデルの食道を挟持し固定する手段が更に設けられたことを特徴とする請求項2に記載の腹腔シミュレータ用臓器固定具。 - 前記胃モデル固定具は、
トレー表面の頭側から見た右プレートの骨盤側に、前記胃の臓器モデルの十二指腸を固定する手段が更に設けられたことを特徴とする請求項2又は3に記載の腹腔シミュレータ用臓器固定具。 - 前記胃モデル固定具は、
トレー表面の中央の前記背骨隆起部に沿った隆起部の上に、前記胃の臓器モデルを載設する第2の隆起部が更に設けられたことを特徴とする請求項2〜4の何れかに記載の腹腔シミュレータ用臓器固定具。 - 前記胃モデル固定具は、
トレー表面の頭側から見た左プレートの頭側に、脾臓の臓器モデルを載設する陥没部が更に設けられたことを特徴とする請求項2〜5の何れかに記載の腹腔シミュレータ用臓器固定具。 - 前記胃モデル固定具は、
トレー表面上に載設した大網を模擬するシート状モデル上に、前記胃の臓器モデルを載設することを特徴とする請求項2〜6の何れかに記載の腹腔シミュレータ用臓器固定具。 - 前記鼠径ヘルニアモデル固定具に取り付けられる前記鼠径ヘルニアモデルは、
シート状の表面が腹膜前筋膜の剥離層の質感を有するゲル状膜で覆われており、
前記2つのヘルニア門の臓器モデルに加え、
内側臍襞部、正中臍襞部、動脈部、静脈部、膀胱、精管から選択される少なくとも1つの臓器モデルが更に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の腹腔シミュレータ用臓器固定具。 - 前記ゲル状膜は、張り替えて再使用可能であることを特徴とする請求項8に記載の腹腔シミュレータ用臓器固定具。
- 臓器モデル同士の間には、
泡状の筋膜モデル又は泡状の疎結合織モデルが更に設けられたことを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の腹腔シミュレータ用臓器固定具。
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