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JP2015050277A - 太陽電池およびその製造方法 - Google Patents

太陽電池およびその製造方法 Download PDF

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JP2015050277A JP2013180106A JP2013180106A JP2015050277A JP 2015050277 A JP2015050277 A JP 2015050277A JP 2013180106 A JP2013180106 A JP 2013180106A JP 2013180106 A JP2013180106 A JP 2013180106A JP 2015050277 A JP2015050277 A JP 2015050277A
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祐司 栗本
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Abstract

【課題】特殊な材料を含まない電極を備えた太陽電池等を提供する。
【解決手段】裏面パッシベーション膜(25)は、酸化アルミニウム膜および窒化シリコン膜を含む積層膜構造を有しており、前記窒化シリコン膜の屈折率は2.4以上かつ3.1以下であり、裏面電極(28)は、ファイヤースルー現象により、裏面パッシベーション膜(25)を貫通している。
【選択図】図1

Description

本発明は、太陽電池およびその製造方法に関し、例えば、裏面パッシベーション型の太陽電池およびその製造方法に関する。
光電変換素子の一種である太陽電池は、受光することで発生した+電荷の正孔が集まるp型半導体層と、−電荷の電子が集まるn型半導体層とが接合したpn接合を基本構成として有している。pn接合は、例えば、p型シリコン基板の表面に、n型不純物拡散層(n+層)を堆積することによって形成される。
(従来のアルミBSF型太陽電池900)
従来、太陽電池の一種として、アルミBSF(Back Surface Field)型太陽電池が知られている。アルミBSF型太陽電池は、以下で説明するアルミニウム合金で形成されたp+層を、受光面とは反対側の裏面側に備えた太陽電池である。アルミBSF型太陽電池は、製造が比較的簡単であるため、量産に適している。図14に、従来のアルミBSF型太陽電池900(以下、単に太陽電池900と呼ぶ)の模式図を示す。
図14に示すように、太陽電池900の受光面側および裏面側には、それぞれ、主面電極927および裏面電極928が設けられている。裏面電極928は、p型シリコン基板920(以下、シリコン基板920と呼ぶ)の裏面側に形成されたp+層929の上に設けられている。なお、裏面電極928とp+層929とを合わせて、裏面電極は二層構造として構成されているともいえる。
太陽電池900では、シリコン基板920とp+層929との界面(以下では、p/p+界面と表す)に、シリコン基板920とp+層929との間のポテンシャル差に由来する電界が形成される。この電界は、主として、シリコン基板920内で発生した電子および正孔が、拡散現象によりp/p+界面まで移動してきたとき、電子をシリコン基板920内部に反射する一方、正孔を選択的にp+層929内へ通過させる。言い換えれば、p/p+界面に生じる電界は、太陽電池900の裏面近傍における正孔の密度分布と電子の密度分布とを、空間的に引き離す。
これにより、太陽電池900の裏面近傍において、正孔と電子とが再結合する確率が低減される。従って、p/p+界面の電界は、電子を排斥し、正孔および電子が再結合することによって生じるキャリア損失を低減する効果を奏することになる。この効果は、フィールドパッシベーション効果と呼ばれている。
(アルミBSF型太陽電池900の問題点)
前記のように、p/p+界面に生じる電界によって、比較的高い変換効率を得ることができる。しかしながら、太陽電池900は、発電効率の更なる高効率化という観点から見た場合、以下に説明する問題点を有している。
太陽電池900では、大部分の電子はp/p+界面の電界によってシリコン基板920内部に反射されるが、シリコン基板920とp+層929との間のポテンシャル差より高い運動エネルギーを有する少数の電子は、p/p+界面を乗り越えて、p+層929内へと侵入する。ところが、p+層929内では、高濃度にドーピングされたアルミニウムが再結合中心を形成しているため、再結合中心の存在密度が高くなっている。言い換えれば、p+層929は、半導体としての品質が悪い層となっている。そのため、p+層929内へ侵入した電子は、p+層929内において、高い確率で再結合を起こして消滅する。
一方、p+層929内で消滅しなかった電子は、p+層929と裏面電極928との界面(以下では、p+/裏面電極界面と表す)に到達する。ところが、p+/裏面電極界面には、正孔および電子が再結合する速度を減らすためのパッシベーション処理が何らなされていない。そのため、電子は、p+/裏面電極界面において、高い確率で、再結合により消滅する。以上のようにして生じる電子の消滅は、太陽電池900の電気的出力を損失する原因となる。
さらに、太陽電池900では、p+層929の光吸収率が高い。そのため、太陽電池900の光入射面側で光電変換されずに裏面側に到達した光の大部分は、p+層929で吸収される。また、光がp+層929で吸収される際に生じた電子正孔対は、再結合によってただちに消滅する。従って、p+層929に吸収された光は、太陽電池900の電気的出力には寄与しない。
また、一般に、p+/裏面電極界面は滑らかではなく、その物理的形状は凹凸が激しくなっている。そのため、p+/裏面電極界面の光反射率は低い。
太陽電池900の受光面から入射して裏面に到達した一部の光は、裏面において反射されることにより、再び太陽電池900の内部に戻り発電に寄与することが望ましい。しかし、アルミBSF型太陽電池900では、上記のように、p+層929の光吸収率が高いことと、p+/裏面電極界面の光反射率が低いこととによって、p+/裏面電極界面に到達した光を発電に有効に利用することができないという問題を有している。
(従来の裏面パッシベーション型太陽電池800)
裏面パッシベーション型太陽電池は、上述したアルミBSF型太陽電池の問題点を克服し、アルミBSF型太陽電池に置き換わることを目指して、開発が進められている。裏面パッシベーション型太陽電池は、アルミBSF型太陽電池のようには、キャリアが再結合する速度を抑制しようとする技術思想に基づいて設計されていない。その代わりに、裏面パッシベーション型太陽電池は、太陽電池の裏面近傍に存在する再結合中心の密度を低減することにより、キャリアが再結合する頻度を減少させようとする技術思想に基づいて設計されている。
図13に、従来の裏面パッシベーション型太陽電池800(以下、単に太陽電池800と呼ぶ)の模式図を示す。図13に示すように、太陽電池800は、太陽電池900とは異なり、シリコン基板820の裏面の大部分が、絶縁性の裏面パッシベーション膜825で覆われている。裏面パッシベーション膜825は絶縁体であるため、絶縁体に覆われた部分から太陽電池の電力を取り出すのは不可能である。このために、シリコン基板820の裏面の局所的な残りの部分には、裏面電極828が設けられている。裏面電極828は、一般的に、シリコン基板820の裏面全体の10%またはそれ以下の面積を占めるように設計される。また、裏面電極828とシリコン基板820とが接触する部位には、p+層829が形成されている。
(i)p型のシリコン基板820と裏面パッシベーション膜825との界面(以下、p/裏面パッシベーション膜界面と表す)に本来的に存在し、(ii)電子と正孔とが再結合する原因となる、未結合手は、裏面パッシベーション膜825の膜中の元素によって終端される結果、再結合中心ではなくなる。そのため、正孔および電子が、p/裏面パッシベーション膜界面において未結合手に捕捉される可能性が低減される。従って、p/裏面パッシベーション膜界面に到達した正孔および電子の多くは、該界面で反射して、シリコン基板820側に戻っていく。本効果は、アルミBSF太陽電池900裏面のフィールドパッシベーションに対して、ケミカルパッシベーションと呼ばれる。
太陽電池800では、裏面パッシベーション膜825において上記ケミカルパッシベーション性能を十分に高くし、従来型アルミBSF太陽電池900裏面のp/p+界面で得られているフィールドパッシベーション性能を上回らせることができた場合、より高い変換効率が期待できる。また、従来型アルミBSF太陽電池900に比べ、p+層829が裏面に占める面積割合が大幅に減るので、p+層829に起因した光の吸収量も減少する。これにより、より多くの光およびキャリアを、電気的出力として有効に利用することができるので、太陽電池800の発電効率を向上させることができる。
さらに、太陽電池800のp/裏面パッシベーション膜界面は、太陽電池900のp+/裏面電極界面と比較して、より滑らかな形状に形成することができるので、裏面側から入射面側へ、光を効率よく反射することができる。これにより、太陽電池800の裏面側から入射面側に戻る光量が増加するので、光電変換される光量も増加する。これら、電気的及び光学的特性の改善の結果、太陽電池800の変換効率を向上させることができる。
近年、酸化アルミニウム膜(Al膜)と窒化シリコン膜(SiNx膜)とがこの順でシリコン基板820の裏面上に堆積された複合層構造(トポロジー)を有する裏面パッシベーション膜825の研究および開発が世界的な潮流になっている。複合層構造を構成する各層の厚みはどの程度であることが望ましいかなどの細かい点には、様々な議論があるものの、裏面パッシベーション膜825は上記のトポロジーを有することが望ましいという大きな点には、議論の余地がない。
上記トポロジーを有する裏面パッシベーション膜825では、Al膜が、p/裏面パッシベーション膜界面に負の固定電荷を与えるので、シリコン基板820中の正孔が上記界面に引き寄せられる。その結果、p+層829内と、上記界面の近傍との両者において、高密度となるキャリアはどちらも正孔となる。これにより、裏面電極828の近傍において、電子と正孔との再結合が起こりにくくなる。裏面電極近傍での電子と正孔との再結合損失は、従来、界面に正の固定電荷を与えるSiNx膜等の使用によって生じることが知られ、パラサイティックシャンティング現象と呼ばれていた。Al膜の使用は本問題を解決する。
ただし、Al膜は、高温(例えば、700℃〜900℃)で焼成された場合に、ブリスタリングと呼ばれるミクロな膜剥がれ現象を発生させることが知られている。これを防止する保護膜として、一般的には、Al膜の上に、SiNx膜が積層される。
(アルミBSF太陽電池900及び裏面パッシベーション型太陽電池800における主面電極構造)
本発明の焦点は太陽電池の裏面にあるので、裏面の作製方法について詳しく述べるべきである。しかし太陽電池800、900光入射面の電極(以後主面電極)の作製方法は、本発明における裏面の作製方法と大きな関連性を有するため、予備説明として、これに言及する。
p型のシリコン基板920を用いた太陽電池900及びp型のシリコン基板820を用いた800においては、光入射面にはシリコン基板920または820とn+層とのpn接合が形成されることは既に述べた。よって、光入射面にはn+層が存在しているので、同層の上に金属を堆積すれば、「n+層/金属」なる構造の接触抵抗の十分に低い主面電極927及び827を作製できる。
ただし、光入射面にはn+層の上にSiNxなどの絶縁体層が反射防止と表面パッシベーションとのために形成されている。したがって、単に金属をこの上に堆積しただけでは、絶縁体層が邪魔をして、n+層と金属との電気的接触を得ることはできない。このため、主面電極928及び828を形成する部分のSiNxを剥離すればよいが、これには手間がかかる。
そこで、この問題を解決したのはガラスフリットと銀を主成分とするペーストである。本ペーストをSiNx上に印刷し焼成することで、銀は絶縁体層であるSiNxを貫通し、シリコンに接触する。このようにして、SiNxを部分的にエッチングすることなくシリコン上に望む形の電極を形成することができる。本技術はファイヤースルー技術と呼ばれている。
(太陽電池900における裏面電極構造)
裏面電極928の材料は金属であり、例えば、アルミニウムが材料として用いられる。裏面電極928およびp+層929を形成するためには、アルミニウム膜をシリコン基板920の裏面に堆積させた後、アルミニウム膜およびシリコン基板920を700℃以上の温度で焼成する。これにより、シリコン基板920中にアルミニウムが拡散した拡散領域が形成され、アルミニウムとシリコンの合金(上記アルミニウム合金)が生成される。アルミニウムは、正孔を供給するドーパントとして働くので、上記拡散領域には、p+層929が形成される。p+層929は、アルミニウムとシリコンとからなるアルミニウム合金の層である。このように、シリコン基板920上に堆積されたアルミニウム膜の一部は、p+層929の形成に寄与する。残りのアルミニウム膜は、p+層929上に裏面電極928を形成する。このように、アルミニウムを用いれば、上記裏面構造を極めて合理的に作製することができる。
具体的には、シリコン基板920の裏面全面に、アルミニウムを含む導電性ペーストをベタ塗りし焼成すれば、上記裏面構造を完成させることができる。
(太陽電池800における電極構造;裏面電極)
次に、太陽電池800の裏面電極828について説明する。前述のように、p型のシリコン基板820を用いた太陽電池800において、裏面の大部分は裏面パッシベーション膜825という絶縁膜で覆われた構造になっているものの、裏面の一部を占める裏面電極828が存在する一部分に於いては、「p型シリコン基板820/p+シリコン層829/金属828」というアルミBSF構造になる必要がある。
裏面パッシベーション膜825上の裏面電極828を形成する部分のみ裏面パッシベーション膜825を除去し、本部分にのみアルミペーストを塗布して焼成すると、上記裏面構造を合理的に作製することができる。アルミ合金p+層の形成が必要なため、裏面電極828を形成するための金属ペーストは、アルミペーストであることが望ましい。
(太陽電池800の裏面電極828作製プロセスにおける問題点)
前述のように、従来型のアルミBSF型太陽電池900においては、裏面全面が電極となっているので、シリコン基板920の全面にアルミペーストをベタ塗りし焼成すれば、簡単に裏面構造を完成させることができた。
しかし、前述の裏面パッシベーション型太陽電池800においては、裏面の作製はこれほど簡単ではない。まず第一に裏面パッシベーション膜825を堆積する必要があり、第二に、局所的に裏面電極828を作製する必要がある。裏面電極828の作製に必要なアルミペーストは、裏面パッシベーション膜825の一部に使用されるSiNx膜をファイヤースルーしないので、裏面電極828を作製したい箇所の裏面パッシベーション膜825上にアルミペーストを印刷し焼成しても、SiNx膜が邪魔をするため、裏面電極828は形成されない。即ち主面電極827で用いたファイヤースルー法は通用しない。かといって、ファイヤースルー性能を持った銀ペーストはシリコンと合金化してp+層829を作らないという理由により使用できない。
このような背景によって、従来、裏面パッシベーション型太陽電池においては、裏面電極形成に先立ってまず、裏面電極を作りたい部分の裏面パッシベーション膜を除去し、シリコンを露出させ、しかる後に該シリコン基板露出部にアルミペーストを部分印刷し焼成している。
この方法によれば、シリコン露出部のみに「p型シリコン基板/p+シリコン層/アルミニウム」なる裏面構造を有した電極を作製することができるので、裏面パッシベーション型太陽電池が必要とする局所電極を作製することができる。
現在、量産ラインに於いて提案されているパッシベーション膜除去法は、レーザー加熱法である。これはレーザー光で裏面パッシベーション膜を部分的に加熱することにより、裏面パッシベーション膜を除去し孔を開ける方法である。しかし、レーザー加工装置は機構が複雑でコストが高い。また、半導体素子に開口パターンを作製する工程に用いられてきた伝統的方法として、フォトリソグラフィー法がある。この方法はレーザー加熱法に輪をかけてコストと手間がかかる。
このように、フォトリソグラフィー法またはレーザー加熱法などの方法を用いて裏面電極を作製することは、工数が多く、かつ、高価な装置と設備とを必要とするため、太陽電池のコストを押し上げる原因となっている。
そこで、裏面パッシベーション膜に部分的開口を形成する工程の簡略化を目指して、アルミニウムを含むペーストを用いて裏面パッシベーション膜をファイヤースルーさせる技術が探索されている。
例えば、下掲の特許文献1には、アルミペーストに銀などの金属を混入させることにより、該アルミペーストに、SiNx膜に対するファイヤースルー性能を獲得させることが記載されている。
また、下掲の特許文献2には、アルミニウム粉末を含有するペーストに、アニオン性部位を有する分散剤等を混入することで生成されるペースト組成物に、SiNx膜に対するファイヤースルー性能が出現すると記載されている。
特表2010−538466号公報(2010年12月9日公開) 特開2013−8759号公報(2013年1月10日公開)
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、アルミペーストに追加される材料として、銀などの特殊で高価な重金属を使用する必要があるという問題がある。このことは、アルミペーストの高価格化を招く原因となる。さらに、特許文献1には、近年世界的な潮流となっているAl膜に対する上記アルミペーストのファイヤースルー性能は示されていない。そのため、Al膜およびSiNx膜からなる複合層構造を有する裏面パッシベーション膜に対する上記アルミペーストのファイヤースルー性能は不明である。
また、特許文献2に記載の技術では、ペースト組成物の材料として、特殊な分散剤を使用する必要があるという問題がある。さらに、特許文献2には、SiNx膜に対するペースト組成物のファイヤースルー実験は開示されているものの、Al膜に対するペースト組成物のファイヤースルー性能を示す実験結果は開示されていない。従って、引用文献2に記載のペースト組成物も、Al膜およびSiNx膜からなる複合層構造を有する裏面パッシベーション膜に対して、十分なファイヤースルー性能を現すか否かが不明である。さらに、特許文献2には、上記ペースト組成物を用いて作製された裏面パッシベーション型太陽電池の性能を実証する実験結果が記載されていない。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、特殊な材料を含まない電極を備えた太陽電池等を提供することにある。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る太陽電池は、不純物の拡散した拡散層が形成されたp型半導体基板と、前記p型半導体基板の表面上に形成されたパッシベーション膜と、前記パッシベーション膜を貫通して、前記拡散層と電気的に接続している電極と、を備え、前記電極には、材料として、アルミニウムが含まれており、前記拡散層には、前記不純物として、前記電極に含まれるアルミニウムが拡散しており、前記パッシベーション膜は、酸化アルミニウム膜および窒化シリコン膜を含む積層膜構造を有しており、前記窒化シリコン膜の屈折率は2.4以上かつ3.1以下であることを特徴とする。
本発明の一態様によれば、特殊な材料を含まない電極を備えた太陽電池等を提供することができるという効果を奏する。
本発明の一実施形態に係る太陽電池の構成を示す模式図である。 図1に示す太陽電池の製造方法を示す工程図である。 図1に示す太陽電池の製造方法を示す他の工程図である。 図1に示す太陽電池のサンプル、および従来の太陽電池のサンプルの短絡電流密度、開放電圧、曲線因子、および、変換効率の測定結果を示す表である。 図1に示す太陽電池のサンプル、および従来の太陽電池のサンプルの各分光感度特性を示すグラフである。 発明者らが実験で使用したアルミペーストの詳細な成分比を示す表である。 (a)は発明者らが実験で作製したサンプルの顕微鏡写真であり、(b)はその拡大図である。 (a)は発明者らが実験で作製した他のサンプルの顕微鏡写真であり、(b)はその拡大図である。 発明者らが実験で作製したさらに他のサンプルの顕微鏡写真である。 発明者らが実験で作製したさらに他のサンプルのファイヤースルー性能を示す実験結果である。 従来の裏面パッシベーション型太陽電池の作製プロセスを示す工程図である。 従来のアルミBSF型太陽電池の作製プロセスを示す工程図である。 従来の裏面パッシベーション型太陽電池の構成を示す模式図である。 従来のアルミBSF型太陽電池の構成を示す模式図である。 (a)はガラスフリットを含まないアルミペーストの成分組成を示す表であり、(b)はガラスフリットを含むアルミペーストの成分組成を示す表である。
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、図1〜図10、および図15を用いて詳細に説明する。
(本発明の概要)
発明者らは、従来のアルミBSF型太陽電池に使用されてきた一般的なアルミペースト(主成分;アルミニウム、ガラスフリット)が、以下の特性を有することを発見した。
特性1.Al膜をファイヤースルーすることができる。すなわち、アルミペーストはAl膜に対するファイヤースルー性能を有する。
特性2.高屈折率(屈折率2.4以上)のSiNx膜をファイヤースルーすることができる。
また、発明者らは、SiNx膜が、以下の特性を有することを発見した。
特性3.高屈折率(屈折率2.4以上)のSiNx膜は、p型シリコン基板の表面に直接に堆積されている場合、パッシベーション膜としての機能は示さない。すなわち、高屈折率SiNx膜/p型シリコン界面は、パッシベーション性能が低い。
発明者らは、上記の特性1〜3から、アルミペーストは、「Al膜/高屈折率SiNx膜」の複合膜構造を有する裏面パッシベーション膜をファイヤースルーすることができるのではないかと推測した。さらに、シリコン基板が直接的に接するパッシベーション膜の界面は、高屈折率SiNx膜/p型シリコン界面ではなく、Al膜/p型シリコン界面となるので、パッシベーション性能も担保される。ここで、「Al膜/高屈折率SiNx膜」の複合膜構造とは、基板の表面に、Al膜が第一層として堆積され、続いて、高屈折率(屈折率2.4以上)のSiNx膜が第二層として堆積された構造のことである。基板は、シリコン基板ではなく、その他の半導体基板であってもよい。本構造では、基板の表面上に直接に堆積されたAl膜は、基板に対して、十分なパッシベーション性能を示す。また、本構造は、先述したような、世界的に広く研究されている裏面パッシベーション型太陽電池のトポロジーとも矛盾しない。なお、上記の特性1および特性2を実証するために発明者らが行った実験およびその結果を後述する。
(太陽電池100の構成)
以下に、図1を用いて、本実施形態に係る太陽電池100の構成を説明する。図1は、太陽電池100の構成を示す模式図である。図1に示すように、太陽電池100は、p型シリコン基板(p型半導体基板)20(以下では、シリコン基板20と呼ぶ)、反射防止膜24、裏面パッシベーション膜(パッシベーション膜)25、アルミニウム膜26、主面電極27、および裏面電極(電極)28を備えている。
シリコン基板20は、p型シリコンを材料に形成されている。すなわち、シリコン基板20の導電型はp型である。シリコン基板20の上面(太陽電池100の受光面に対応する面)には、高さ数μmの微小ピラミッド構造21が形成されている。微小ピラミッド構造21は、太陽電池100の受光面での光の反射を抑制する。これにより、太陽電池100内に入射する光量が増加するので、太陽電池内で光電変換される光量が増大する。
反射防止膜24は、微小ピラミッド構造21の形成されたシリコン基板20の上面を被覆するように形成されている。反射防止膜24は、太陽光が太陽電池100の受光面で反射することを抑制する機能の他に、太陽電池100の受光面を保護するパッシベーション膜としての機能も有している。反射防止膜24とシリコン基板20との間には、n+層23が形成されている。n+層23は、シリコン基板20の上面にリンを熱拡散させることにより形成される。
裏面パッシベーション膜25は、シリコン基板20の裏面の大部分を覆っている。裏面パッシベーション膜25は、Al膜(酸化アルミニウム膜)と、SiNx膜(窒化シリコン膜)とが、この順番でシリコン基板20上に積層されてなる積層膜構造を有している。以降、この構造を、「Al膜/SiNx膜」と表記する場合がある。なお、裏面パッシベーション膜25の構造は、「Al膜/SiNx膜」構造に限定されず、Al膜およびSiNx膜を含む積層構造を有していればよい。
主面電極27は、太陽電池100の受光面上に設けられている。主面電極27は、反射防止膜24を貫通して、n+層23にまで達しており、主面電極27とn+層23とは電気的に接続している。
裏面電極28は、シリコン基板20の裏面上の一部に設けられている。裏面電極28は、アルミニウムを主材料として形成されている。裏面電極28とシリコン基板20とが接触する部位には、裏面電極28を構成するアルミニウムがシリコン基板20中に拡散することによって、p+層(拡散層)29が形成されている。p+層29は、アルミニウム合金で構成された層である。
(太陽電池100の製造方法)
以下では、図2および図3を用いて、太陽電池100の製造方法を説明する。図2および図3は、太陽電池100の製造方法を示す工程図である。太陽電池100の製造方法は、S1〜S9で構成される。S1〜S4の説明では、図2を参照する。S5〜S9の説明では、図3を参照する。なお、ここで説明する製造方法は単なる一例であり、太陽電池100の製造方法は、これに限定されない。
始めに、RCA社が開発したRCA洗浄法を用いて、シリコン基板20(縦横10cm×10cm、厚さ200μm、抵抗率1Ωcm、材料はp型多結晶シリコン(p−Si))を洗浄しておく。ここで、シリコン基板20の材料となるp型多結晶シリコンは、例えば、多結晶シリコン基板に、ホウ素、アルミニウム、またはガリウムなどの3価元素を微量に加えることによって得られる。あるいは、シリコン基板20は、単結晶シリコンを用いて作製されてもよい。
太陽電池100の製造方法では、第一に、NaOH水溶液とイソプロピルアルコールとの混合液を用いて、液温約90℃の条件下で、シリコン基板20にテクスチャエッチングを行う(S1)。これにより、図2に示すように、シリコン基板20の表面に、高さ数μmの微小ピラミッド構造21(微細凸凹構造)が形成される。なお、テクスチャエッチングを行うために用いる方法は、例えば反応性イオンエッチング法であってもよい。
第二に、POCl(塩化ホスホリル)を含む高温気体が充填された拡散炉中に、シリコン基板20を置くことにより、熱拡散現象により、シリコン基板20内にリンを拡散させる(S2)。S2では、例えば、シリコン基板20の表面および裏面に、厚さ1.0μm、不純物濃度1.2×1020cm−3のn型シリコン層22および23を形成する。蒸着処理の間、シリコン基板20の温度および拡散炉の温度は、例えば、850℃に設定する。また、リンの拡散時間は、例えば、10分に設定する。
なお、シリコン基板20の表面および裏面にリンを拡散させる方法は、上述したPOClを用いた気相拡散法以外に、Pを用いた塗布拡散法、または、シリコン基板にリンイオンを直接的に拡散させるイオン打ち込み法であってもよい。
第三に、汎用の平行平板型プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて、シリコン基板20の光入射面に反射防止膜24を堆積する(S3)。反射防止膜24は、例えばSiNxを材料に構成される。堆積される反射防止膜24の厚みは80nmであってよい。反射防止膜24の堆積条件は、ガス流量:SiH/NH/N=25/50/300SCCM(Standard Cubic Centimeter per Minutes)、圧力:100Pa、RF(Radio Frequency)電力密度:0.086W/cm、基板温度:450℃であってよい。
なお、反射防止膜24は、上述したSiNxの代わりに、例えば、Al、酸化シリコン、または酸化チタンを材料として構成されてもよい。反射防止膜24は、これらのいずれの材料で構成された場合であっても、反射防止機能に加えて、パッシベーション効果を奏する不活性化膜の機能も兼ね備えている。
ただし、シリコン基板20が多結晶シリコンで構成されている場合、太陽電池100の変換効率を向上させる観点から、反射防止膜24は、水素を含んだSiNを用いて構成されることが好ましい。
また、シリコン基板20上に反射防止膜24を堆積する際、上述したプラズマCVD法の代わりに、例えば、触媒CVD法、常圧熱CVD法、減圧熱CVD法、または光CVD法などの各種CVD法を用いてもよい。あるいは、真空蒸着法またはスパッタリング法などのPVD(Physical Vapor Deposition;物理気相堆積)法を用いてもよい。なお、SiNxを材料に反射防止膜24を構成する場合には、膜厚の制御し易さの観点から、プラズマCVD法を用いることが好ましい。
第四に、シリコン基板20の光入射面に保護テープを貼付してから、シリコン基板20を硝酸およびフッ酸の溶液(例えば、硝酸:フッ酸=3:1の溶液)に所定時間(例えば、4分間)浸漬する(S4)。その結果、シリコン基板20の光入射面のn型シリコン層(すなわち、n+層23)は残る一方、裏面のn型シリコン層は除去されて、p型シリコン基板20の裏面が露出する。その後、シリコン基板20の光入射面から保護テープを剥がし、シリコン基板20をフッ酸に浸漬して、RCA法でシリコン基板20裏面に堆積した酸化膜を除去する。
第五に、ALD(Atomic Layer Deposition)法を用いて、シリコン基板20の裏面に、Al膜を堆積する。原料ガスは、トリメチルアルミニウム(TMA)を使用することができ、また酸化ガスは、オゾンを使用することができる。堆積するAl膜の膜厚は、例えば30nmであってよい。また、堆積時のシリコン基板20の温度は、例えば、175℃であってよい。続けて、平行平板型プラズマCVDを用いて、Al膜の上に、屈折率2.4以上の高屈折率SiNx膜を堆積する(S5)。
堆積する高屈折率SiNx膜の膜厚は、例えば、100nmであってよい。高屈折率SiNx膜の堆積条件は、例えば、ガス流量:SiH/NH/N=50/25/300SCCM、圧力:100Pa、RF電力密度:0.086W/cm、基板温度450℃であってよい。S5で、「Al膜/高屈折率SiNx膜」の複合膜構造を有する裏面パッシベーション膜25が形成される。
第六に、スクリーン印刷機を用いて、裏面パッシベーション膜25の上に、アルミペーストをドット状に印刷する(S6;印刷ステップ)。例えば、ドットの径は100μm、ピッチは1mmであってよい。
第七に、電極焼成用の炉を用いて、中間生成物のアニールを行う(S7;焼成ステップ)。炉の温度は810℃に固定し、加熱時間は12秒に設定してよい。アニールによって、アルミペーストは裏面パッシベーション膜25をファイヤースルーする。その結果、アルミペーストは裏面パッシベーション膜25を貫通し、且つシリコン基板20中にp型不純物として拡散する。これにより、p+層29が形成される。
このように、S7では、ファイヤースルー技術を用いてp+層29と裏面電極28を作製するので、太陽電池800における裏面電極828の作製工程のようには裏面パッシベーション膜25に開口部を設ける処理が必要でない。そのため、太陽電池100における裏面電極28の作製プロセスは、太陽電池800のそれと比較して格段に簡略化される。
第八に、真空蒸着法を用いて、裏面パッシベーション膜25上に、アルミニウム膜26を堆積する(S8)。アルミニウム膜26の膜厚は、例えば2μmであってよい。
第九に、光入射面側の反射防止膜24上に、導電性ペーストを印刷してから、中間生成物をアニールする(S9)。その結果、導電性ペーストは、反射防止膜24をファイヤースルーして、n型シリコン層23に到達する。硬化した導電性ペーストは、n+層23と電気的に接続した主面電極27となる。
なお、主面電極27の材料は特に限定されないが、例えば、アルミニウム、銀、チタン、パラジウム、または金などを用いてもよい。これらの材料は、従来、太陽電池の技術分野で用いられている。ただし、主面電極27の材料は、反射防止膜24をファイヤースルーする性能の高さの観点から、銀とガラスフリットとの混合物であることが最も好ましい。また、主面電極27を形成する際に用いる方法も、ファイヤースルー技術を用いる方法には限定されず、例えば、スクリーン印刷法、または真空蒸着法などであってもよい。生産性の向上の観点、および製造コストの削減の観点からは、スクリーン印刷法が好ましい。
以上で、太陽電池100が完成する。
(太陽電池100の性能評価)
発明者らは、太陽電池100の性能を評価するため、太陽電池100のサンプルを作製し、そのサンプルの変換効率等を測定する実験を行った。また、太陽電池100の性能と比較するために、従来の裏面パッシベーション型太陽電池800(図13参照)、および従来のアルミBSF型太陽電池900(図14参照)の各サンプルも作製し、それらのサンプルの変換効率等も測定した。なお、本実施形態の最後に、太陽電池800、900の製造方法を補足として記載している。
以下では、太陽電池100、太陽電池800、太陽電池900の各サンプルの短絡電流密度、開放電圧、曲線因子、変換効率、および分光感度効率の測定結果から、太陽電池100の性能を評価する。
(1.短絡電流密度、開放電圧、曲線因子、および、変換効率)
図4に、太陽電池100、および従来の太陽電池800、900の短絡電流密度Jsc、開放電圧Voc、曲線因子FF、および、変換効率Effの測定結果を示す。なお、図4では、太陽電池100および太陽電池800の各測定値を、従来のアルミBSF型太陽電池900の対応する各測定値で規格化している。
全ての測定値は、AM(エア・マス)1.5条件において測定した。ここで、AM1.5条件とは、大気圏に入射する太陽光の入射角が90度(真上)である場合に太陽光が大気圏を通過する距離を基準として、太陽光の大気圏通過距離が基準値の1.5倍となる入射条件(入射角41.8度)を表わす。
図4より、従来のアルミBSF型太陽電池900の変換効率Effと比較して、太陽電池100の変換効率Effは、約3%向上していることがわかる。なお、従来の裏面パッシベーション型太陽電池800の変換効率Effは、アルミBSF型太陽電池900の変換効率Effと比較して、約4%向上している。従って、太陽電池100の変換効率Effは、従来の裏面パッシベーション型太陽電池800の変換効率Effよりも約1%低い。しかしながら、前述のとおり、太陽電池100の製造方法には、裏面パッシベーション膜25を開口する工程が含まれないので、太陽電池100は、太陽電池800に比べて格段に簡略化されたプロセスで作製される。この点を鑑みれば、太陽電池100は、トータルとして高い進歩性を有している。
(2.分光感度特性)
図5に、太陽電池100、太陽電池900、および太陽電池800の各分光感度特性を示す。各分光感度特性は、AM1.5の条件下で測定した。
図5のグラフから、1000nm以上の長波長領域において、太陽電池100および太陽電池800の分光感度特性は、どちらも、太陽電池900の分光感度特性に比べて、約10%から約20%改善している。また、太陽電池100の長波長分光感度特性と、太陽電池800のそれの間には、大きな差はないことが判る。従って、長波長領域における太陽電池100および太陽電池800の分光感度の改善は、裏面パッシベーション構造の効果、すなわち裏面における再結合中心の密度を低減する効果によりもたらされた結果であると考えられる。
従って、太陽電池100は、その製造方法が従来の裏面パッシベーション型太陽電池800に比べて劇的に簡略化されたにもかかわらず、裏面パッシベーション構造の効果を十分に保持しているといえる。
(特性1および特性2の実証;アルミペーストのファイヤースルー性能)
ここでは、前述した特性1および特性2を実証するために発明者らが行った実験およびその結果を説明する。発明者らは、シリコン基板上にAl膜が堆積されたサンプルX1、および、シリコン基板上に屈折率2.5のSiNx膜が堆積されたサンプルY1を作製し、各サンプルに対するアルミペーストのファイヤースルー性能を測定した。図6に、実験に使用されたアルミペーストの詳細な成分比を示す。図6において、各物質名の横に記載された分量は、重量比を表している。アルミペーストに主な成分として含まれるアルミニウムの分量は、65重量%以上かつ75重量%以下である。
さらに、発明者らは、サンプルY1に対するアルミペーストのファイヤースルー性能と比較するため、シリコン基板上に屈折率2.0のSiNx膜が堆積されたサンプルZ1も作製し、サンプルZ1に対する上記アルミペーストのファイヤースルー性能も測定した。ここで、屈折率が2.0程度のSiNx膜は、シリコン基板の表面に対して高いパッシベーション性能を有するため、太陽電池の受光面側の反射防止膜または表面パッシベーション膜として一般的に用いられる。以下では、各サンプルの作製手順と、各サンプルのファイヤースルー性能の測定結果を示す。
(1.特性1の実証;Al膜に対するファイヤースルー性能)
サンプルX1の作製プロセスでは、まず、ALD法を用いて、シリコン基板上に、Al膜を堆積した。原料ガスとして、トリメチルアルミニウム(TMA)を使用し、酸化ガスとして、オゾンを使用した。堆積時のシリコン基板の温度は175℃に設定した。堆積処理後、シリコン基板上に堆積されたAl膜の膜厚は30nmであった。
次に、Al膜の上に、アルミペーストをドット状に印刷した。ドットの径は150μm、ピッチは1mmに設定した。こうして、シリコン基板上にAl膜およびアルミペーストが堆積された中間生成物が完成した。
続いて、窒素と酸素の混合雰囲気下で、中間生成物の焼成を行った。焼成炉の温度は810℃、焼成時間は12秒に設定した。以上で、サンプルX1が完成した。その後、塩酸を用いて、サンプルX1から、アルミペーストを印刷した部分に形成された金属部(裏面電極)を除去した。そして、金属部を除去したサンプルX1を顕微鏡で観察した。
図7の(a)および(b)に、顕微鏡を通して観察したサンプルX1の写真を示す。図7の(a)に示す図及びその拡大図である図7の(b)を見ると、アルミペーストの印刷跡に金属光沢を持つ部分MP1が形成されていることが判る。これは、アルミがAl膜を貫通し、この部分に、シリコンとアルミの合金層ができている証拠である。以上の実験結果から、アルミペーストは、Al膜をファイヤースルーすることが可能であることが判った。
さらに、発明者らは、ガラス粉(PbO)またはシリカ粉(SiO)などのいわゆるガラスフリットを含まないアルミペースト、のファイヤースルー性能を調べる目的で、厚さ2μmのアルミ蒸着膜を用いて、上記と同様な実験を行った。その結果、該アルミ蒸着膜は、Al膜をファイヤースルーすることが可能であった。このことは、アルミニウムが、Al膜のファイヤースルーに対して本質的な役割を果たすこと、および、Al膜上に堆積されたアルミニウムの厚さが2μm以上であれば、ファイヤースルーが生じ得ることを意味している。
ここで、ガラスフリットを含まないアルミペーストの成分組成表を図15の(a)に示す。同図に示すアルミペーストの成分のうち、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及びジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートは150℃、エチルセルロースは350℃でそれぞれ蒸発する。そのため、基板およびAl膜上に、上記成分組成表に示す成分比のアルミペーストを堆積した場合、ファイヤースルーが生じる700℃以上では、基板上に残留するのはアルミニウムのみとなる。この状況は、Al膜上にアルミ膜を蒸着して行った上記実験時の状況と等価である。従って、本実験結果から、ガラスフリットを含まないアルミペーストは、Al膜に対するファイヤースルー性能を示すと予測することができる。なお、上記アルミペーストを用いて、上記の実験を行った場合、焼成後の裏面電極部分におけるアルミニウムの濃度は100%(100重量%)となる。
ところで、アルミニウムの濃度を減少させ、代わりにガラスフリットを増加させるように、上記アルミペーストの成分比を変更することができる。このとき、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、及びエチルセルロースの濃度を変えないようにする。ガラスフリットは、焼成後も裏面電極部分に残るので、上記のように成分比を変更したアルミペーストを用いて、Al膜をファイヤースルーさせた場合、焼成後の電極部分におけるガラスフリットの濃度が高くなる一方、アルミニウムの濃度は低くなる。具体的には、焼成後の電極部分におけるアルミニウムの濃度は以下のように表わされる。
(焼成後の電極部分におけるアルミニウムの濃度)
=(アルミペースト中のアルミニウム濃度)
/(アルミペースト中のアルミニウム濃度+アルミペースト中のガラスフリット濃度)
ただし、一般的に、ガラスフリットの成分、すなわちガラス粉(PbO)とシリカ粉(SiO)の濃度がどちらも5%を超えるようなアルミペーストを用いて、Al膜をファイヤースルーさせた場合、アルミニウムとシリコンの合金層の形成が不十分になるという不具合を生じる。そのため、ガラス粉(PbO)とシリカ粉(SiO)の濃度がどちらも5%を超えるようなアルミペーストは、Al膜をファイヤースルーさせるためのアルミペーストとして採用されることはない。
図15の(b)に、ガラス粉(PbO)とシリカ粉(SiO)の濃度がどちらも5%ちょうどであるアルミペーストの成分組成表を示す。この成分組成を有するアルミペーストを採用した場合、上式に基づいて、焼成後の裏面電極部分におけるアルミニウムの濃度を計算すると、85%(85重量%)となる。焼成後の裏面電極部分において、アルミニウムの濃度がこの値(85%)を下回ることはないので、本値が、焼成後の裏面電極部分におけるアルミニウムの濃度の下限値であることになる。ゆえに、アルミニウムペーストにAl膜をファイヤースルーさせた場合、焼成後の裏面電極部分におけるアルミニウムの濃度は、85重量%から100重量%までの間の値となる。
(2.特性2の実証;屈折率2.5のSiNx膜に対するファイヤースルー性能)
サンプルY1の作製プロセスでは、まず、プラズマCVD法を用いて、シリコン基板上にSiNx膜を堆積した。堆積時のシリコン基板の温度は450℃、RF電力密度は0.086W/cm、RF周波数は13.56Mhz、圧力は100Paに設定した。また、SiNx膜の屈折率が2.5となるように、SiNx膜の原料ガスであるNHガスおよびSiHガスの流量比を、NH:SiN=1:2に制御した。堆積処理後、シリコン基板上に堆積されたSiNx膜の膜厚は200nmであった。
このように、SiNx膜の屈折率を、SiNx膜の原料ガスであるNHガスおよびSiHガスの流量比によって制御することができる。
次に、サンプルX1の作製プロセスにおける焼成処理と同様に、SiNx膜の上に、アルミペーストをドット状に印刷した後、中間生成物を焼成した。以上で、サンプルY1が完成した。その後、塩酸を用いて、サンプルY1から、アルミペーストを印刷した部分に形成された金属部を除去した。そして、金属部を除去したサンプルY1を顕微鏡で観察した。
図8の(a)および(b)に、顕微鏡を通して観察したサンプルY1の写真を示す。図8の(a)及びその拡大図である図8の(b)を見ると、アルミペーストの印刷跡に金属光沢を持つ部分MP2が形成されていることが判る。これは、アルミがSiNx膜を貫通し、この部分に、シリコンとアルミの合金層ができている証拠である。以上のことから、アルミペーストは、屈折率2.5のSiNx膜をファイヤースルーすることが可能であることが判った。
さらに、発明者らは、ガラスフリットを含まないアルミペーストのファイヤースルー性能を調べる目的で、厚さ2μmのアルミ蒸着膜を用いて、上記と同様な実験を行った。その結果、該アルミ蒸着膜は、屈折率2.5のSiNx膜をファイヤースルーすることが可能であった。このことは、アルミニウムが、屈折率2.5のSiNx膜のファイヤースルーに対して本質的な役割を果たすこと、および、屈折率2.5のSiNx膜上に堆積されたアルミニウムの厚さが2μm以上であれば、ファイヤースルーが生じ得ることを意味している。
上述したように、アルミ蒸着膜は、アルミニウム100%なので、ほぼ「ガラスフリットを含まないアルミペースト」と等価と考えてよい。本実験結果から、ガラスフリットを含まないアルミペーストが、屈折率2.5のSiNx膜に対するファイヤースルー性能を示すことを予測することができる。
さらに、アルミペーストにSiNx膜をファイヤースルーさせる場合、焼成後の裏面電極部分におけるアルミニウムの濃度に関しては、Al膜をファイヤースルーさせる場合と同様の議論が成立すると考えることができる。従って、アルミニウムペーストに屈折率2.5のSiNx膜をファイヤースルーさせる場合にも、焼成後の裏面電極部分におけるアルミニウムの濃度の下限値は85%となり、また、上限値は100%となる。
(3.サンプルZ1;屈折率2.0のSiNx膜に対するファイヤースルー性能)
サンプルZ1の作製プロセスでは、まず、プラズマCVD法を用いて、シリコン基板上にSiNx膜を堆積した。堆積時のシリコン基板の温度は450℃、RF電力密度は0.086W/cm、RF周波数は13.56Mhz、圧力は100Paに設定した。これらの堆積条件は、屈折率2.5のSiNx膜の前記堆積条件と同一である。なお、SiNx膜の屈折率が2.0となるように、NHガスおよびSiHガスの流量比を、NH:SiN=2:1に設定した。
次に、フォトリソグラフィー法を用いて、SiNx膜に開口部を設け、シリコン基板を露出させた。続いて、露出した開口部を含むSiNx膜の領域にアルミペーストを印刷した後、中間生成物を焼成した。以上で、サンプルZ1が完成した。その後、塩酸を用いて、サンプルZ1から、アルミペーストを印刷した部分に形成された金属部を除去した。そして、金属部を除去したサンプルZ1を顕微鏡で観察した。
図9に、顕微鏡を通して観察したサンプルZ1の写真を示す。図9では、SiNx膜において、印刷処理時にアルミペーストが塗布された領域HLを点線で囲っている。また、領域HLの更に中心部にある領域UDは、SiNx膜にフォトリソグラフィー法を用いて開口部を設けた部分である。領域UDに於いては、アルミペーストの印刷跡にシリコン基板が露出しており、シリコンとアルミの合金層ができている。ここで、焼成処理時に、アルミペーストがSiNx膜をファイヤースルーしたならば、アルミペーストの塗布された全領域、すなわち点線で囲まれた領域HLから、SiNx膜が消失していなければならない。しかしながら、図9からわかるように、点線で囲まれた領域HLのうち、開口部の外側の領域には、SiNx膜が残っており、さらには、同領域のSiNx膜には、ダメージさえも見られない。以上のことから、アルミペーストは、屈折率2.0のSiNx膜をファイヤースルーすることが不可能であること、本膜を用いて裏面パッシベーション太陽電池を作製しようとすれば、SiNx膜の開口が不可欠であることが判った。
(4.その他の実験)
発明者らは、上記のサンプルX1、サンプルY1、およびサンプルZ1を用いた実験の他に、屈折率2.3、2.4、2.7、3.1の各SiNx膜に対するアルミペーストのファイヤースルー性能を調査するための実験も行った。
図10に、上記の各屈折率のSiNx膜のサンプルに関する実験の結果を示す。図10において、マルはファイヤースルー性能が高いことを示し、三角はファイヤースルー性能がやや認められることを示し、バツはファイヤースルー性能が低いことを示す。図10から、アルミペーストは、屈折率2.4未満のSiNx膜をファイヤースルーすることが不可能であることがわかる。一方、アルミペーストは、屈折率2.4以上、特に、屈折率2.5以上のSiNx膜をファイヤースルーすることが可能である。従って、SiNx膜の屈折率は、2.4以上であることが好ましく、2.5以上であることがより好ましい。
なお、発明者らは、3.1を超える屈折率を有するSiNx膜に対するアルミペーストのファイヤースルー性能を研究する価値は無いと判断し、実験を行わなかった。その理由は、SiNx膜の屈折率が大き過ぎる場合、SiNx膜には、太陽電池の裏面パッシベーション膜としての機能の面で問題が生じるためである。より詳細には、SiNx膜の屈折率が大き過ぎる場合、SiNx膜内部での光吸収量が大きくなるので、SiNx膜での光の反射率が低下する。SiNx膜に吸収された太陽光、および、SiNx膜で反射しなかった太陽光は、太陽電池の電気的出力に寄与しないので、SiNx膜の屈折率が大き過ぎることは、太陽電池の変換効率の観点から望ましくないことになる。
(補足;従来の太陽電池800、900の作製プロセス)
以下に、補足として、従来の太陽電池800および太陽電池900の作製プロセスをそれぞれ説明する。太陽電池800および太陽電池900の作製プロセスは、太陽電池100の作製プロセスと比較して、S1〜S4の工程は同じであり、S5に対応する工程以降が異なる。
(1.従来の裏面パッシベーション型太陽電池800の作製プロセス)
図11を用いて、従来の裏面パッシベーション型太陽電池800(以下では、太陽電池800と呼ぶ)の作製プロセスを説明する。図11は、太陽電池800の作製プロセスを示す工程図である。太陽電池800の作製プロセスは、前述した太陽電池100の作製プロセスと比較した場合、以下の第一の相違点および第二の相違点において相違する。太陽電池800の作製プロセスのその他の工程は、太陽電池100の作製プロセスの対応する工程と同じである。
第1の相違点;太陽電池800の作製プロセスは、太陽電池100の製造方法と比較して、S5(図3参照)に対応する工程、すなわち裏面パッシベーション膜825を形成する工程において、同膜の第二層目の作製方法が異なる。すなわち、太陽電池800の作製プロセスにおいて、裏面パッシベーション膜825として、シリコン基板820に直接接する第一層に太陽電池100と同じAlを堆積し、その上に屈折率2.0のSiNxを堆積し、これにより「Al膜/SiNx膜」の複合膜構造を作製する。太陽電池100に使用された第二層目の高屈折率SiNx(屈折率2.5)とは異なり、太陽電池800に使用される屈折率2.0のSiNx膜は、太陽電池のパッシベーション膜として一般的に使用されるものである。第二層目SiNxの堆積処理は、汎用の平行平板型プラズマCVD法を用いて行う。堆積時の条件は以下のとおりである。ガス流量:SiH/NH/N=25/50/300SCCM、圧力:100Pa、RF電力密度:0.086W/cm、基板温度:450℃。膜厚:100nm。
第2の相違点;さらに、太陽電池800の作製プロセスは、太陽電池100の製造方法と比較して、S6〜S8(図3参照)に対応する工程、すなわち裏面電極828を作製する工程が異なる。屈折率2.0のSiNx膜はアルミペーストに対するファイヤースルー性能を有さないため、太陽電池800の裏面電極828は、ファイヤースルー技術を用いて作製することはできない。そのため、太陽電池800の作製プロセスにおいて、太陽電池100のS6に対応する工程では、フォトリソ法を用いて、裏面パッシベーション膜825に開口部825aを設けた(S106)後、開口部825a内に裏面電極828を設ける(S107)。裏面電極828とシリコン基板820とが接する部位には、拡散現象により、p+層829が形成される。
S106のように、フォトリソ法を用いて裏面パッシベーション膜に開口部を設ける処理は、実験室で裏面パッシベーションセルを作製しようとする際には、最も従来的且つ常套的に実施される。しかしながら、この処理は、工数が多く、かつ、高価な装置と設備を必要とするため、太陽電池800を量産する際に実施することは非現実的である。
なお、太陽電池800の作製プロセスでは、S107の後、中間生成物の焼成を行う(S108)。これにより、太陽電池100の作製プロセスにおけるS7(図3参照)を実施した後の中間生成物と同等な中間生成物が完成する。その後、裏面パッシベーション膜825上にアルミニウム膜826を形成し(S109)、最後に、太陽電池800の受光面側に主面電極827を形成する(S110)。なお、S109およびS110は、太陽電池100の製造方法におけるS8〜S9と同じ工程である。以上で、太陽電池800が完成する。
(2.従来のアルミBSF型太陽電池900の作製プロセス)
ここでは、図12を用いて、従来のアルミBSF型太陽電池900(以下では、太陽電池900と呼ぶ)の作製プロセスを説明する。図12は、太陽電池900の作製プロセスを示す工程図である。太陽電池900の製造方法は、太陽電池100の製造方法とは、以下の点において相違する。
相違点;太陽電池900の作製プロセスには、太陽電池100の製造方法におけるS5の工程、すなわち、裏面パッシベーション膜を形成する工程が存在しない。太陽電池100の製造方法では、S4(図2参照)の後、裏面パッシベーション膜を形成せずに、シリコン基板920の裏面全面に、アルミペースト(ペーストの状態の裏面電極928)を塗布する(S205)。その後、中間生成物をアニールする(S206)。これにより、シリコン基板920と裏面電極928との間には、p+層929が形成される。これで、太陽電池900の裏面は完成する。最後に、太陽電池900の受光面側に、太陽電池100の主面電極27の形成方法と同様の方法で、主面電極927を形成する(S207)。以上で、太陽電池900が完成する。
〔実施形態2〕
前記実施形態では、太陽電池100の製造方法のS8(図3参照)において、真空蒸着法を用いて、裏面パッシベーション膜25上にアルミニウム膜26を形成した。一方、本実施形態では、S8に対応する工程において、スパッタ法を用いて、裏面パッシベーション膜25上にアルミニウム膜26を形成する。
スパッタ法は、真空蒸着法と比較して、(i)アルミニウム膜26の原料となる粒子のエネルギーが大きいので、裏面パッシベーション膜25への粒子の拡散力が大きい、(ii)堆積時間を制御するだけで、膜厚を高精度に制御することができるという利点を有する。その他にも、(iii) 裏面パッシベーション膜25が大面積であっても、裏面パッシベーション膜25全体の上に、均一な膜厚のアルミニウム膜26を形成することができる、などの点で優れている。
〔実施形態3〕
前記実施形態2では、散点状(図7の(a)参照)に配置された複数の裏面電極28同士を接続するために、裏面パッシベーション膜25上にアルミニウム膜26を形成する方法を説明した。一方、本実施形態では、太陽電池100の製造方法のS8に対応する工程において、接着材を用いて、金属箔を裏面パッシベーション膜25上に接着する。ここで、裏面パッシベーション膜25と金属箔とを接着する際、裏面パッシベーション膜25の全面に接着材を塗布する必要はなく、例えば、裏面パッシベーション膜25の表面の4コーナーの近傍へ接着材を点付けしてもよい。裏面パッシベーション膜25(太陽電池100)と金属箔とは、後に、太陽電池1をモジュール化するモジュール化プロセスのラミネート工程において、強固に圧着される。
本実施形態の方法は、真空蒸着法やスパッタ法では不可欠な真空のプロセスが不要となるので、設備管理の負荷が低減するというメリットを有する。その他にも、裏面電極28の電気抵抗が低下する等のメリットを有する。
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る太陽電池(100)は、不純物の拡散した拡散層(p+層29)が形成されたp型半導体基板(シリコン基板20)と、前記p型半導体基板の表面上に形成されたパッシベーション膜(裏面パッシベーション膜25)と、前記パッシベーション膜を貫通して、前記拡散層と電気的に接続している電極(裏面電極28)と、を備え、前記電極には、材料として、アルミニウムが含まれており、前記拡散層には、前記不純物として、前記電極に含まれるアルミニウムが拡散しており、前記パッシベーション膜は、酸化アルミニウム膜(Al膜)および窒化シリコン膜(SiNx膜)を含む積層膜構造を有しており、前記窒化シリコン膜の屈折率は2.4以上かつ3.1以下である構成である。
上記の構成によれば、窒化シリコン膜の屈折率は2.4以上かつ3.1以下である。発明者らが実証した通り、裏面電極に含まれるアルミニウムは、酸化アルミニウム膜だけでなく、屈折率2.4以上の窒化シリコン膜もファイヤースルーすることに重要な役割を果たしている。
そのため、上記の構成の太陽電池の電極は、例えば、アルミニウムを含むペーストをパッシベーション膜上に印刷してできる中間生成物を焼成することにより作製することができる。すなわち、上記の構成の太陽電池の電極は、従来の太陽電池の電極のようには、パッシベーション膜を開口して、開口内に電極を設ける工程を行うことなく、作製することができる。従って、上記の構成の太陽電池は、従来の太陽電池に比べて、格段に簡略化された製造方法で作製することができる。
本発明の態様2に係る太陽電池(100)は、上記態様1において、前記酸化アルミニウム膜が前記p型半導体基板(シリコン基板20)の表面と接している構成であってもよい。
上記の構成によれば、酸化アルミニウム膜が、p型半導体基板とパッシベーション膜との間の界面に負の固定電荷を与えるので、パッシベーション膜界面と電極との間で生じるパラサイティックシャンティング現象の発生が抑制される。これにより、パラサイティックシャンティング現象を原因とする太陽電池の特性劣化を低減することができる。
本発明の態様3に係る太陽電池(100)は、上記態様1または2において、前記電極(裏面電極28)には、85重量%以上かつ100重量%以下のアルミニウムが含まれている構成であってもよい。
上記の構成において、パッシベーション膜を貫通し、拡散層と電気的に接続する電極をアルミニウムを主要な成分とする材料によって形成する場合、一般に、焼成工程を実施する。電極に85重量%以上かつ100重量%以下のアルミニウムが含まれている構成では、焼成工程によって、十分な量のアルミニウムが、パッシベーション膜を貫通し、半導体基板中に拡散する。これにより、アルミニウムを十分に含む拡散層を形成することができる。
なお、電極に85重量%以上100重量%未満のアルミニウムが含まれている構成では、アルミニウムとガラスフリットを主成分とするアルミペーストを、上記材料として選択することができる。一方、電極に100重量%のアルミニウムが含まれている構成では、ガラスフリットを含まないアルミペーストが、上記材料として選択される。
本発明の態様4に係る太陽電池(100)は、上記態様1〜3のいずれかにおいて、前記拡散層(p+層29)の導電型がp型であってもよい。
上記の構成によれば、パッシベーション膜に含まれた酸化アルミニウム膜が、p型半導体基板とパッシベーション膜との界面に負の固定電荷を与えるので、p型半導体基板内で発生した電子および正孔のうち、正孔が上記界面に引き寄せられる。その結果、p型拡散層内と、上記界面の近傍との両者において、高密度となるキャリアはどちらも正孔となる。これにより、パッシベーション膜を貫通して設けられている前記電極の近傍において、電子と正孔との再結合が起こりにくくなるので、光電変換効率を向上させることができる。
本発明の態様5に係る太陽電池(100)の製造方法は、態様1〜4に係る太陽電池の製造方法であって、前記パッシベーション膜上に、アルミニウムを含む前記電極を形成するためのペーストを印刷する印刷ステップと、上記印刷ステップにより生成された中間生成物を焼成して、これにより、前記ペーストに前記パッシベーション膜をファイヤースルーさせて、前記ペーストと前記p型半導体基板とを電気的に接続する焼成ステップとを含む構成である。
上記の各態様に係る太陽電池では、窒化シリコン膜の屈折率は2.4以上かつ3.1以下である。発明者らが実証した通り、アルミニウムを含む電極のペーストは、酸化アルミニウム膜だけでなく、屈折率2.4以上の窒化シリコン膜もファイヤースルーすることができる。
そのため、上記の構成の太陽電池の電極は、従来の太陽電池の電極のようには、パッシベーション膜を開口して、開口内に電極を設ける工程を行うことなく、作製することができる。従って、態様5に係る太陽電池(100)の製造方法によれば、従来の太陽電池の製造方法に比べて、格段に簡略化された製造方法を提供することができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
本発明は、太陽電池に利用することができる。
100 太陽電池
20 p型シリコン基板(p型半導体基板)
25 裏面パッシベーション膜(パッシベーション膜)
28 裏面電極(電極)
29 p+層(拡散層)

Claims (5)

  1. 不純物の拡散した拡散層が形成されたp型半導体基板と、
    前記p型半導体基板の表面上に形成されたパッシベーション膜と、
    前記パッシベーション膜を貫通して、前記拡散層と電気的に接続している電極と、を備え、
    前記電極には、材料として、アルミニウムが含まれており、
    前記拡散層には、前記不純物として、前記電極に含まれるアルミニウムが拡散しており、
    前記パッシベーション膜は、酸化アルミニウム膜および窒化シリコン膜を含む積層膜構造を有しており、
    前記窒化シリコン膜の屈折率は2.4以上かつ3.1以下である
    ことを特徴とする太陽電池。
  2. 前記酸化アルミニウム膜が前記p型半導体基板の表面と接している
    ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
  3. 前記電極には、85重量%以上かつ100重量%以下のアルミニウムが含まれている
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の太陽電池。
  4. 前記拡散層の導電型がp型である
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽電池の製造方法であって、
    前記パッシベーション膜の上に、アルミニウムを含む前記電極を形成するためのペーストを印刷する印刷ステップと、
    上記印刷ステップにより生成された中間生成物を焼成して、これにより、前記ペーストに前記パッシベーション膜をファイヤースルーさせて、前記ペーストと前記p型半導体基板とを電気的に接続する焼成ステップとを含む
    ことを特徴とする太陽電池の製造方法。
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