WO2018163357A1 - スライドファスナー付き製品及びスライドファスナー付き製品の製造方法 - Google Patents

Abstract

本発明のスライドファスナー付き製品(1,1a,1b)は、一対のファスナーストリンガー(20,60)と、一対のストリンガー取付部(12)を備えるファスナー被着部材(10)とを有し、ファスナーストリンガー(20,60)はファスナー被着部材(10)にストリンガー縫製糸(27)により縫着される。ファスナーストリンガー(20,60)のテープ部材(21,51,61)は、ファスナーエレメント(31,71)が取着される第１テープ片部(24,54,64)と、第１テープ片部(24,54,64)から延びてＵ字状に折り返されるテープ折曲部(25,55,65)と、ストリンガー取付部(12)の第２表面に固着される第２テープ片部(26,56,66)とを有する。第２テープ片部(26,56,66)は、ストリンガー取付部(12)の第２表面上に表出するストリンガー縫製糸(27)を被覆する。これにより、ファスナー被着部材(10)の側端縁(13)がテープ部材(21,51,61)に保護されて、ほつれに起因するスライダー(40)の摺動性の低下を防止できる。

Description

スライドファスナー付き製品及びスライドファスナー付き製品の製造方法

　本発明は、連続状の複数のファスナーエレメントがテープ部材に取着された一対のファスナーストリンガーが、衣料品などの製品に縫い付けて固定されるスライドファスナー付き製品、及びそのスライドファスナー付き製品の製造方法に関する。

　スライドファスナーは、一般的に、衣料品、日用雑貨品、産業用資材などの製品や、自動車、列車、航空機等の各種シート類などの製品の開閉具として多く使用されている。各種の製品の開閉部に使用されるスライドファスナーは、一般に、エレメント列が形成された一対のファスナーストリンガーと、エレメント列に沿って摺動可能に配されたスライダーとを有する。

　スライドファスナーのファスナーストリンガーは、一般的に、モノフィラメントをコイル状等に成形して得られる連続状の複数のファスナーエレメントが、織成又は編成された帯状のファスナーテープの一側縁部に縫製糸で縫い付けられて固定されることにより形成される。また、その他の形態のファスナーストリンガーとして、ファスナーテープが織成又は編成されるときに、連続状の複数のファスナーエレメントがテープの一側縁部に織り込まれる又は編み込まれることによって形成されるファスナーストリンガーも知られている。

　上述のようにファスナーテープの一側縁部に複数のファスナーエレメントが取り付けられている一対のファスナーストリンガーを有するスライドファスナーを、衣料品などの製品に取り付ける場合、ファスナーテープのファスナーエレメントが取着されていないテープ部分（一般的にテープ主体部と言う）を、製品のファスナー取付部に重ね合せた状態で両者をミシンによって縫い合わせる縫製加工が行われる。それによって、開閉部にスライドファスナーが取着されたスライドファスナー付き製品が製造される。

　一方、国際公開第２０１４／１１８９４９号（特許文献１）には、従来のようにファスナーテープのテープ主体部を、製品を形成するファスナー被着部材に縫い合わせるのではなく、ファスナーストリンガーのファスナーエレメント及びエレメント固定部材（ファスナーテープ）をミシンで同時にファスナー被着部材に固定することによって形成されるスライドファスナー付き製品が記載されている。

　この特許文献１のスライドファスナー付き製品は、ファスナーストリンガーをファスナー被着部材に縫い付ける際に、ファスナーエレメントのエレメント列上にミシンで縫製を行うことにより製造されている。
　ここで、特許文献１のスライドファスナー付き製品について、図１１を参照しながら簡単に説明する。特許文献１のスライドファスナー８１付き製品８０は、スライドファスナー８１が衣服の生地８２に取り付けられて形成されている。この場合、スライドファスナー８１は、左右一対のファスナーストリンガー８３と、ファスナーストリンガー８３のエレメント列８４に沿って摺動するスライダー８５とを有する。

　ファスナーストリンガー８３は、細幅のファスナーテープ８６と、モノフィラメントから成形されるコイル状のファスナーエレメント８７と、ファスナーエレメント８７の内側に挿通される芯紐８８とを有する。また、このファスナーストリンガー８３は、複数のファスナーエレメント８７内に芯紐８８を挿通させた状態で、ファスナーエレメント８７を芯紐８８とともにファスナーテープ８６に第１縫製糸８９によって縫着することにより形成されている。この場合、ファスナーテープ８６は、ファスナーエレメント８７よりもテープ幅方向の寸法を小さくして形成されており、ファスナーテープ８６が、テープ幅方向において、ファスナーエレメント８７の外側に飛び出さないように配されている。

　このような特許文献１のファスナーストリンガー８３は、ファスナーテープ８６が上述のように細幅に形成されているため、軽量である。また、ファスナーストリンガー８３を湾曲状などに曲げたときに、ファスナーテープ８６に波打ち状の皺が発生し難くなる。

　更に、特許文献１のファスナーストリンガー８３は、同ファスナーストリンガー８３のファスナーテープ８６と、衣服の生地８２とが対面するように生地８２に載置された状態で、ミシンを用いて、第２縫製糸９０によって縫い付けられて固定される。これによって、ファスナーストリンガー８３が生地８２の側縁部（ストリンガー取付部）に取り付けられたスライドファスナー８１付き製品８０が得られる。

　以上のような特許文献１のスライドファスナー８１付き製品８０では、ファスナーテープ８６をファスナーエレメント８７よりも細幅にしてスライドファスナー８１が形成されているため、スライドファスナー８１の軽量化やコスト削減を実現することが可能となる。更に、ファスナーストリンガー８３を湾曲状などに曲げた状態で生地８２に取り付ける際に、ファスナーテープ８６に浮き上がりや沈み込み、又は波打ち状の皺を発生させ難くすることができる。従って、スライドファスナー８１が取着された製品の見栄え（外観品質）を向上できる。更に、スライドファスナー８１の取り付け作業を容易にかつ安定して行うことができるため、比較的簡単な縫製工程で製品を綺麗に仕上げることが可能となる。

国際公開第２０１４／１１８９４９号

　特許文献１に記載されているスライドファスナー８１付き製品８０の場合、ファスナーストリンガー８３におけるファスナーテープ８６のテープ幅を細くできることにより、上述のような様々な優れた効果が得られる。一方、特許文献１では、生地８２の側縁部にファスナーストリンガー８３が縫い付けられるため、生地８２の側縁部の側端縁（生地端）がむき出しの状態となる。

　このため、例えばその生地８２の側端縁が裁断されたままの状態で形成されている場合には、ファスナーストリンガー８３を取り付けた生地８２の側縁部に糸のほつれが生じ易くなる。特に、スライドファスナー８１を開閉するためのスライダー８５の摺動操作が繰り返し行われると、ファスナーストリンガー８３を取り付けられている側縁部の生地端が、スライダー８５の連結柱に擦れることや、噛合相手側のファスナーエレメント８７が縫い付けられている側縁部の生地端を繰り返し接触すること等によって、ほつれが酷くなることも考えられる。その結果、生地端に生じるほつれに起因して、左右のファスナーエレメント８７の噛み合わせやスライダー８５の摺動性が低下することがある。

　なお、ファスナーエレメントを縫い付ける生地の側端部にほつれが生じても、ファスナーエレメントの噛み合わせやスライダーの摺動性に影響を与えないように、生地の側端部を折り返すなどの折り返し処理を行うことも考えられる。しかしこの場合、生地の側端部が折り返されることにより、特許文献１の利点である軽量化が阻害されることや、製品（衣服）の開閉部における柔軟性が低下するなどの不具合が新たに生じることが考えられる。

　更に、特許文献１に記載されているスライドファスナー８１付き製品８０の場合、ミシンを用いてファスナーストリンガー８３と衣服の生地８２とが第２縫製糸９０によって縫い付けられるため、衣服の生地８２におけるファスナーストリンガー８３の取付面とは反対側の面に第２縫製糸９０が露出する。このように生地面に露出する第２縫製糸９０は、摺動するスライダー８５の上翼板及び下翼板の一方に擦れ易くなる。このため、スライダー８５の摺動が繰り返して行われたときに、ファスナーストリンガー８３を固定する第２縫製糸９０に摩耗や切断が生じることも考えられる。また、上述の第２縫製糸９０が露出する場合、スライドファスナー８１付き製品８０の外観品質やデザイン性が損なわれることが考えられる。

　本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その具体的な目的は、ファスナーエレメントのエレメント列上にミシンで縫製を行うことによりファスナーストリンガーを生地等のファスナー被着部材に縫着して得られるスライドファスナー付き製品において、ファスナー被着部材のファスナーストリンガーが取り付けられる側縁部の側端縁がむき出しになることを防止可能で、また、ファスナーストリンガーをファスナー被着部材に固定する縫製糸の一部を被覆して保護することが可能なスライドファスナー付き製品、及び、そのスライドファスナー付き製品の製造方法を提供することにある。

　上記目的を達成するために、本発明により提供されるスライドファスナー付き製品は、モノフィラメントから成形される連続状の複数のファスナーエレメントがテープ部材に取着されて形成される一対のファスナーストリンガーと、一対のストリンガー取付部を互いに対向する位置に備えるファスナー被着部材とを有し、前記ファスナーストリンガーは、前記ファスナー被着部材の前記ストリンガー取付部に、ストリンガー縫製糸により縫着され、前記ストリンガー縫製糸は、前記ファスナーエレメントの一部を押さえるとともに前記テープ部材と前記ファスナー被着部材の前記ストリンガー取付部とを刺通することにより前記ファスナーストリンガーを前記ストリンガー取付部に固定するスライドファスナー付き製品であって、前記ファスナー被着部材の前記ストリンガー取付部は、互いに反対側に配される第１表面及び第２表面を有し、且つ、Ｕ字状に折り曲げられる前記テープ部材の内周側に配され、前記テープ部材は、前記テープ部材の長さ方向に直交する断面視にて、前記ストリンガー取付部の前記第１表面上に配されるとともに前記ファスナーエレメントが取着される第１テープ片部と、前記第１テープ片部から延びるとともにＵ字状に折り返されて前記ストリンガー取付部の側端縁を包むテープ折曲部と、前記テープ折曲部から更に延び、且つ、前記ストリンガー取付部の前記第２表面に固着される第２テープ片部とを有し、前記テープ部材の前記第２テープ片部は、前記ストリンガー取付部の前記第２表面上に表出する前記ストリンガー縫製糸の表出部分を被覆してなることを最も主要な特徴とするものである。

　このような本発明に係るスライドファスナー付き製品において、前記ファスナーエレメントは、エレメント縫製糸により前記テープ部材に縫着されていることが好ましい。
　また、前記テープ部材の前記第２テープ片部は、前記ストリンガー取付部の前記第２表面に接着層を介して固着されていることが好ましい。
　更に、前記テープ部材の前記第１テープ片部は、前記ファスナー被着部材の前記第１表面に接着層を介して固着されていることが好ましい。この場合、前記テープ部材の前記テープ折曲部は、前記ファスナー被着部材の前記側端縁に固着されていることが好ましい。

　本発明のスライドファスナー付き製品において、前記ファスナーエレメントは、噛合頭部と、前記噛合頭部から延出する上下脚部と、隣接する前記ファスナーエレメント間を連結する連結部とを有し、前記第１テープ片部のテープ先端位置は、前記ファスナーストリンガーの幅方向に関し、前記ファスナーエレメントの前記連結部の先端位置と同じ位置、又は前記連結部の先端位置に対して前記噛合頭部寄りに配されていることが好ましい。

　また、前記第２テープ片部のテープ先端位置は、前記ファスナーストリンガーの幅方向に関し、前記第１テープ片部のテープ先端位置と同じ位置、又は前記第１テープ片部の前記テープ先端位置に対して前記ファスナー被着部材の内方に配されていることが好ましい。
　更に、上翼板及び下翼板間にエレメント案内路が形成されるスライダーが、一対の前記ファスナーストリンガーにおける複数のファスナーエレメントにより形成されるエレメント列に摺動可能に配され、前記第２テープ片部は、前記ファスナーストリンガーの幅方向に関し、前記スライダーの前記下翼板又は前記上翼板よりも外側に延出していることが好ましい。

　次に、本発明により提供されるスライドファスナー付き製品の製造方法は、モノフィラメントから成形される連続状の複数のファスナーエレメントがテープ部材に取着されて形成される一対のファスナーストリンガーを、ファスナー被着部材の互いに対向する位置に配される一対のストリンガー取付部に取り付けることにより製造されるスライドファスナー付き製品の製造方法であって、前記ファスナーエレメントと前記テープ部材の第１テープ片部とを、ストリンガー縫製糸を用いて、前記ファスナー被着部材の前記ストリンガー取付部の第１表面上に縫い付けることにより、前記ファスナーストリンガーを前記ストリンガー取付部に縫着すること、及び、前記ファスナーストリンガーの縫着後、前記テープ部材を前記ストリンガー取付部が内側に包まれるようにＵ字状に折り曲げて、前記テープ部材の第２テープ片部を前記ストリンガー取付部の第２表面に固着することにより、前記第２テープ片部で前記ストリンガー取付部の前記第２表面上に表出する前記ストリンガー縫製糸の表出部分を被覆することを含んでなることを最も主要な特徴とするものである。

　このような本発明の製造方法は、前記ファスナーエレメントを前記テープ部材の第１テープ片部にエレメント縫製糸を用いて縫着することにより、前記ファスナーストリンガーを形成することを含むことが好ましい。

　本発明により提供されるスライドファスナー付き製品では、ストリンガー縫製糸が、ファスナーストリンガーのファスナーエレメントの一部を押さえるとともに、ファスナーストリンガーのテープ部材とファスナー被着部材のストリンガー取付部とを刺通することにより、ファスナーストリンガーがファスナー被着部材に取り付けられている。

　また、ファスナーストリンガーのテープ部材がＵ字状に折り曲げられるとともに、そのＵ字状のテープ部材の内周側に、ファスナー被着部材のストリンガー取付部が、Ｕ字状に折り返されることなく、テープ部材の長さ方向に直交する断面視において直線状を呈するような真っ直ぐな状態で挟まれている。

　更に、ファスナーストリンガーのテープ部材は、テープ部材の長さ方向に直交する断面視にて、ファスナー被着部材のストリンガー取付部の第１表面上に配されるとともにファスナーエレメントが取着される第１テープ片部と、第１テープ片部から延びるとともにＵ字状に折り返されてストリンガー取付部の側端縁を包むテープ折曲部と、テープ折曲部から更に延び、且つ、ストリンガー取付部の第２表面に固着される第２テープ片部とを有する。更に、この第２テープ片部は、ストリンガー取付部の第２表面上に表出するストリンガー縫製糸の表出部分を被覆している。

　このような本発明のスライドファスナー付き製品によれば、ファスナー被着部材のファスナーストリンガーが取り付けられる側縁部の側端縁（側端面）が、ファスナーストリンガーのテープ部材によって外側から包まれて保護される。従って、本発明では、例えばファスナー被着部材の側端縁が裁断されたままの状態で形成されているような場合に、ファスナー被着部材の側縁部を折り返す等の側端縁（生地端）の処理を行わなくても、当該側端縁が、例えば特許文献１の場合のようにむき出しになることはない。このため、ファスナー被着部材の側端縁に生じるほつれに起因して、左右のファスナーエレメントの噛み合わせやスライダーの摺動性が低下すること効果的に防止できる。

　ここで、ファスナー被着部材の側端縁が裁断されたままの状態とは、例えば側端縁の裁断方向に対して交差する方向に配される糸の裁断による断面が、その側端縁の端面（側端面）に露呈して配される状態のことを言う。例えば、ファスナー被着部材が経糸と緯糸を用いて織成される織物であって、そのファスナー被着部材が経糸方向に沿って裁断されて側端縁が形成される場合、裁断された当該側端縁に、その裁断により形成される緯糸の切断面がそのまま見えていて、何の処理も施されていない状態を、側端縁が裁断されたままの状態と表現する。

　また、このように織成されたファスナー被着部材の側端縁が裁断されたままの状態で保持される場合、ファスナー被着部材の側端部における最も外側（裁断端縁側）に配される経糸と切断された緯糸との交絡が解けて、当該経糸が側端縁の外側に移動し易くなり、その結果、経糸のほつれがファスナー被着部材の側端縁に生じる。このような経糸のほつれは、織目のほころびと言い換えることもできる。更に、例えばファスナー被着部材が編物である場合、ファスナー被着部材が編組織のウェール方向に沿って裁断されて形成される側端縁には、鎖編糸等の経編糸のほつれが生じ易くなる。本発明では、ファスナー被着部材の側端縁に上述のような経糸（又は経編糸）のほつれが生じる場合でも、当該側端縁を有する側縁部が、テープ部材によって外側から包まれて保護されるため、上述したように、その経糸（又は経編糸）のほつれが、ファスナーエレメントの噛み合わせやスライダーの摺動性に与える影響を限りなく小さくすることができる。

　更に、ファスナー被着部材の側端縁がテープ部材によって包まれて保護されるため、スライダーの摺動操作が繰り返し行われても、ファスナー被着部材の側端縁がスライダーの連結柱や噛合相手側のファスナー被着部材に直接接触することもない。このため、ファスナー被着部材の側端縁に、ほつれをより生じ難くすることができる。

　更にまた、本発明のスライドファスナー付き製品では、ファスナー被着部材の第２表面に、テープ部材の第２テープ片部が、ストリンガー縫製糸の上述した第２表面上に表出する表出部分を被覆して固着される。これにより、スライダーの摺動操作が繰り返して行われても、ストリンガー縫製糸の摩耗や切断を生じ難くすることができる。また、ストリンガー縫製糸がテープ部材の第２テープ片部により覆い隠されて、ファスナー被着部材の第２表面側に見えなくなる。このため、スライドファスナー付き製品の外観品質を向上させることが可能となり、また、ストリンガー縫製糸の表出によって製品のデザイン性が損なわれることも防止できる。

　このような本発明のスライドファスナー付き製品において、連続状のファスナーエレメントは、エレメント縫製糸によりテープ部材に縫着されている。これにより、複数のファスナーエレメントをテープ部材の所定位置に安定して固定できる。また、ストリンガー縫製糸でファスナーストリンガーをファスナー被着部材に固定する際に、各ファスナーエレメントをストリンガー縫製糸でしっかりと押さえることができる。なお本発明では、連続状のファスナーエレメントは、テープ部材を織成又は編成するときに同テープ部材の一部に織り込まれる又は編み込まれることによって、テープ部材に取り付けられていても良い。

　また本発明において、テープ部材の第２テープ片部は、ストリンガー取付部の第２表面に接着層を介して固着されている。これにより、テープ部材の第２テープ片部をストリンガー取付部の第２表面に容易に且つ安定して固定できる。なお本発明では、テープ部材の第２テープ片部を、超音波溶着等の溶着によりストリンガー取付部の第２表面に固着されていても良い。

　更に本発明において、テープ部材の第１テープ片部は、ファスナー被着部材の第１表面に接着層を介して固着されている。これにより、第１テープ片部がファスナー被着部材から浮き上がることを防止できる。また、ファスナーストリンガーをより強固にファスナー被着部材に固定することができる。更に、ファスナー被着部材のストリンガー取付部の構造（織組織又は編み組織）が崩れ難くなり、ファスナー被着部材の側端縁にほつれが生じることを、より効果的に防止できる。またこの場合、テープ部材のテープ折曲部は、ファスナー被着部材の側端縁に固着されている。これにより、ファスナーストリンガーを更に強固にファスナー被着部材に固定できる。また、ファスナー被着部材の側端縁にほつれをより一層生じ難くすることができる。

　本発明において、連続状の各ファスナーエレメントは、噛合頭部と、噛合頭部から延出する上下脚部と、隣接するファスナーエレメント間を連結する連結部とを有する。この場合、第１テープ片部のテープ先端位置は、ファスナーストリンガーの幅方向に関し、ファスナーエレメントの連結部の先端位置と同じ位置、又は連結部の先端位置に対して噛合頭部寄りに配されている。

　このようにテープ部材における第１テープ片部の幅方向の寸法を、ファスナーエレメントに対して設定することにより、テープ部材にファスナーエレメントを所定の姿勢で安定して取着できる。また、第１テープ片部を細幅に形成できるため、テープ部材の軽量化が図れるとともにファスナーストリンガーの柔軟性も向上させることができる。また、ファスナーストリンガーを湾曲状などに曲げた状態でファスナー被着部材に縫い付けた場合に、テープ部材に浮き上がりや沈み込みを発生させ難くするとともに、波打ち状の皺を発生させ難くすることができる。

　また本発明において、第２テープ片部のテープ先端位置は、ファスナーストリンガーの幅方向に関し、第１テープ片部のテープ先端位置と同じ位置、又は第１テープ片部のテープ先端位置に対してファスナー被着部材の内方に配されている。これにより、ファスナーストリンガーの柔軟性を適切に確保しつつ、ファスナー被着部材に対するファスナーストリンガーの取付強度を安定して確保できる。

　更に本発明では、上翼板及び下翼板間にエレメント案内路が形成されるスライダーが、一対の前記ファスナーストリンガーのエレメント列に摺動可能に取り付けられる、この場合、テープ部材の第２テープ片部は、ファスナーストリンガーの幅方向に関し、スライダーの下翼板又は上翼板よりもスライダーの外側に延出する。これにより、スライダーを摺動させたときにスライダーの下翼板又は上翼板がファスナー被着部材に直接摺接することを防げるため、スライダーの摺動によってファスナー被着部材の摩耗や損傷が生じることを防止して、スライドファスナー付き製品の耐久性を高めることができる。

　次に、本発明に係るスライドファスナー付き製品の製造方法では、ファスナーエレメントとテープ部材の第１テープ片部とを、ストリンガー縫製糸を用いて、ファスナー被着部材のストリンガー取付部の第１表面上に縫い付ける。これにより、ファスナーストリンガーがファスナー被着部材のストリンガー取付部に縫着されて固定される。

　そして、ファスナーストリンガーをファスナー被着部材に縫着した後、テープ部材をストリンガー取付部が内側に包まれるように、同テープ部材のテープ折曲部でＵ字状に折り曲げるとともに、そのテープ部材のテープ折曲部から延びる第２テープ片部を、ストリンガー取付部の第２表面に、例えば接着層を介して固着し、当該第２テープ片部でストリンガー取付部の第２表面上に表出するストリンガー縫製糸の表出部分を被覆する。その後、例えばファスナー被着部材に固定したファスナーストリンガーのエレメント列にスライダーを取り付ける。これにより、上述したような構造を有する本発明のスライドファスナー付き製品を安定して製造することができる。

　特に、上述のような本発明の製造方法において、ファスナーエレメントをテープ部材の第１テープ片部にエレメント縫製糸を用いて縫着してファスナーストリンガーを形成することにより、複数のファスナーエレメントをテープ部材の所定位置に安定して固定できる。また、ストリンガー縫製糸でファスナーストリンガーをファスナー被着部材に固定する際に、各ファスナーエレメントをストリンガー縫製糸でしっかりと押さえることができる。なお本発明では、テープ部材を織成又は編成するときに同テープ部材の一部にファスナーエレメントを織り込む又は編み込むことによって、ファスナーストリンガーを形成することも可能である。

本発明の実施例１に係るスライドファスナー付き製品の要部を模式的に拡大して示す拡大模式図である。 図１に示したＩＩ－ＩＩ線における断面図である。 図２の一部を拡大して示す要部拡大断面図である。 実施例１に係る一対のファスナーストリンガーを示す平面図である。 図４に示したＶ－Ｖ線における断面図である。 実施例１のファスナーストリンガーをファスナー被着部材（生地）に縫い付ける作業を模式的に説明する模式図である。 ファスナーストリンガーのテープ部材の一部をファスナー被着部材（生地）の第２表面に固着させた状態を模式的に示す模式図である。 実施例１の変形例に係るスライドファスナー付き製品の断面を模式的に示す断面図である。 実施例１の別の変形例に係るスライドファスナー付き製品を模式的に示す斜視図である。 本発明の実施例２に係るスライドファスナー付き製品のファスナーストリンガーのみを模式的に示す断面図である。 従来のスライドファスナー付き製品を模式的に示す斜視図である。

　以下、本発明の好適な実施の形態について、実施例を挙げて図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。

　例えば、以下の各実施例では、スライドファスナー付き製品がスライドファスナー付き衣服である場合について説明するが、本発明に係るスライドファスナー付き製品は、衣服（衣料品）に限定されるものではなく、靴類や鞄類などの日用雑貨品、産業用資材などの物品、自動車、列車、航空機等の各種シート類などの様々な製品が含まれる。

　また、以下の各実施例のファスナーストリンガーにおいて、連続状の複数のファスナーエレメントは、モノフィラメントをコイル状に成形することにより形成されている。しかし、本発明のファスナーエレメントはこれに限定されず、モノフィラメントをジグザグ状に成形することによって形成されていても良い。

　図１は、本実施例１に係るスライドファスナー付き製品の要部を模式的に拡大して示す拡大模式図である。図２は、図１に示したＩＩ－ＩＩ線における断面図であり、図３は、図２の一部を拡大して示す要部拡大断面図である。また、図４及び図５は、本実施例１に係る一対のファスナーストリンガーを示す平面図及び断面図である。

　なお、以下の説明において、前後方向とは、スライダーの摺動方向に平行なファスナーストリンガー（又はテープ部材）の長さ方向を言い、特に、スライダーが左右のエレメント列を噛合させるように摺動する方向を前方とし、左右のエレメント列を分離させるように摺動する方向を後方とする。

　左右方向とは、ファスナーストリンガーの幅方向、又はファスナー被着部材となる生地の幅方向を言い、例えば、スライダーの摺動方向に直交し、且つ、生地の表面及び裏面（第１表面及び第２表面）に平行な方向である。上下方向とは、前後方向と左右方向とに直行するファスナーストリンガーの厚さ方向を言い、例えば生地の表裏面に直交する方向を指す。特に本実施例１では、ファスナーストリンガーに対してスライダーの引手が配されている側の方向を上方とし、その反対側の方向を下方とする。

　本実施例１に係るスライドファスナー５付き製品１は、衣服１（衣料品）であり、この衣服１の前身頃に設けられた開閉部に、後述する左右一対のファスナーストリンガー２０と、スライダー４０とが取り付けられる。すなわち、本実施例１において、衣服１の前身頃を構成する生地（生地パーツ）１０が、ファスナーストリンガー２０が取着されるファスナー被着部材となる。この場合、ファスナー被着部材である生地１０は、その衣服１に必要な性能や性質（柔らかさ、厚さ、質感、色合いなど）を適切に備えている。

　この場合、衣服１の生地１０は、例えば図２に示すように、衣服１の外面として上側に向いて配される第１表面と、衣服１の内面（裏面）として下側に向いて配される第２表面とを有する。生地１０における第１表面（上面）と第２表面（下面）は、互いに生地１０の反対側に配されている。また、左右のファスナーストリンガー２０は、後述するエレメント列３０が生地１０の第１表面（外面）側に露呈するようにして、衣服１の前身頃を形成する左右の生地１０にそれぞれ取り付けられている。

　この場合、左右の生地（生地パーツ）１０は、生地本体１１と、生地本体１１から連続的に形成されるとともに、左右の生地１０の互いに対向して配されるストリンガー取付部１２とを有する。生地１０のストリンガー取付部１２は、左右の前身頃を構成する生地１０の互いに対向する対向側端縁（生地端）１３から、ファスナーストリンガー２０の幅方向において、その生地１０の内側に向けて所定の寸法を有する部分（領域）である。

　また、生地１０のストリンガー取付部１２は、図２に示す断面図において、ファスナーストリンガー２０の後述するテープ部材２１に包まれる部分である。このストリンガー取付部１２に、ファスナーストリンガー２０が、左右の生地１０の対向側端縁１３に沿ってストリンガー縫製糸（第２縫製糸）２７の本縫いによって取り付けられている。

　ここで、例えば左右の生地１０の対向側端縁１３が直線状に形成されている場合は、ファスナーストリンガー２０は、その生地１０のストリンガー取付部１２に、直線状のまっすぐな状態で取り付けられる。一方、左右の生地１０の対向側端縁１３が、互いに対応するように湾曲状に曲がって形成されている場合は、ファスナーストリンガー２０は、その生地１０のストリンガー取付部１２に、対向側端縁１３に対応して湾曲状に曲がった状態で取り付けられる。

　本実施例１の生地１０のストリンガー取付部１２は、生地１０の側端部を折り返すなどの折り返し処理が施されていない。言い換えると、ストリンガー取付部１２は、図２に示す断面図において、ストリンガー取付部１２の第１表面（上面）及び第２表面（下面）が、生地本体１１の第１表面（上面）及び第２表面（下面）から連続的な平面を形成するように、生地本体１１から相手側の生地１０に向けて左右方向に沿ってまっすぐに延びて配されている。

　更に、生地１０のストリンガー取付部１２は、上述のようにＵ字状に折り曲げられたテープ部材２１の内周側に挟まれており、ストリンガー取付部１２の第１表面及び第２表面が、Ｕ字状に折り曲げられたテープ部材２１の内周面にそれぞれ固着されている。

　本実施例１のスライドファスナー５は、連続状のファスナーエレメント３１がテープ部材２１に縫い付けられて形成される左右一対のファスナーストリンガー２０と、ファスナーストリンガー２０の複数のファスナーエレメント３１によって形成される左右のエレメント列３０に沿って摺動可能なスライダー４０とを有する。

　左右の各ファスナーストリンガー２０は、織成されたテープ部材２１と、そのテープ部材２１にエレメント縫製糸（第１縫製糸）３３により固定される連続状の複数のファスナーエレメント３１と、各ファスナーエレメント３１の後述する上脚部３１ｂ及び下脚部３１ｃ間に配され、ファスナーエレメント３１とともにテープ部材２１に固定される芯紐３２とを有する。

　テープ部材２１は、平織で織成されるテープ本体２２と、テープ本体２２の一面（後述するようにＵ字状に折り曲げられるときの内周側の表面）に形成される接着層２３とを有する。テープ部材２１のテープ本体２２は、強度が高くて細い糸を用いて薄く形成される。このテープ本体２２は、伸縮性が小さく（又は伸縮性がなく）、且つ、テープ厚さ方向に容易に折り曲げることが可能に形成される。

　なお本発明において、テープ部材２１のテープ本体２２は、これに限定されるものではなく、平織以外の織構造を有していても良いし、編成により形成されていても良い。また、テープ本体２２には、合成樹脂製の薄いフィルム状の部材を用いることも可能である。更に本発明では、テープ部材２１のテープ本体２２と接着層２３との間に、補強や防水性の付与等の目的で、合成樹脂製フィルム部材を貼着したり、合成樹脂からなる保護層を形成したりすることも可能である。

　テープ部材２１の接着層２３は、テープ本体２２にホットメルト型接着剤を塗布する又はコーティングすることにより形成されている。特に本実施例１の場合、織成されたテープ本体２２に対してファスナーエレメント３１をエレメント縫製糸３３で縫い付ける前に、ホットメルト型接着剤による接着層２３が、テープ本体２２の内周面となるテープ面の全体に予め形成される。このようにテープ部材２１の内周面全体に接着層２３が形成されていることにより、ファスナー被着部材の生地１０に対するファスナーストリンガー２０の固着強度を効果的に高めることができる。なお本発明において、テープ部材２１の接着層２３は、テープ部材２１の後述する第２テープ片部２６の内周面に少なくとも形成されていれば、テープ部材２１の第１テープ片部２４及びテープ折曲部２５に設けられていなくても良い。

　また本実施例１では、上述のようなホットメルト型接着剤の接着層２３がテープ部材２１に形成されているが、本発明の接着層２３は、例えば１液硬化型接着剤、２液硬化型接着剤、瞬間接着剤、エマルジョン系接着剤、又は、紫外線や電子線等によって硬化する光硬化型接着剤等により、テープ部材２１に、又は、テープ部材２１とファスナー被着部材の生地１０との間に形成されていても良い。この場合、接着層２３は、後述するようにストリンガー縫製糸２７を用いてファスナーストリンガー２０をファスナー被着部材である生地１０に縫い付けた後に、所要の部分に形成される。

　本実施例１のテープ部材２１は、図２で示すような前後方向（ファスナーストリンガー２０の長さ方向）に直交する断面図において、生地１０の第１表面上に配されて固着される第１テープ片部２４と、その第１テープ片部２４から延びるとともにＵ字状に折り返されるテープ折曲部２５と、テープ折曲部２５から更に延びるとともに生地１０の第２表面に固着される第２テープ片部２６とを有する。

　この場合、テープ部材２１のテープ折曲部２５は、左右の生地１０の互いに対向して配される対向側端縁（側端面）１３をテープ部材２１の内周側に包み込むとともに、その対向側端縁１３に接着層２３を介して固着される。ここで、生地１０の対向側端縁１３とは、図２の断面図において、ストリンガー取付部１２における幅方向の最も先端の部位を言う。

　これにより、生地１０のストリンガー取付部１２の対向側端縁１３がテープ部材２１によって外側から保護されるため、生地１０のストリンガー取付部１２を折り返す等の折り返し処理を行わなくても、生地１０の対向側端縁１３に生じるほつれに起因して、左右のファスナーエレメント３１の噛み合わせやスライダー４０の摺動性が低下すること効果的に防止できる。

　このような本実施例１のテープ部材２１では、複数のファスナーエレメント３１が、テープ部材２１の第１テープ片部２４の外周面に載置された状態で、エレメント縫製糸３３の二重環縫いによって縫い付けられている。すなわち、ファスナーエレメント３１は、テープ部材２１の第１テープ片部２４の外周面に固定されている。テープ部材２１のテープ折曲部２５は、左右のエレメント列３０が噛合している状態において、噛合相手側のファスナーストリンガー２０におけるテープ部材２１のテープ折曲部２５と相互に接触（好ましくは密接）している。

　また図２及び図３に示したように、本実施例１のテープ部材２１における第１テープ片部２４、テープ折曲部２５、及び第２テープ片部２６の各内周面は、接着層２３によって、生地１０のストリンガー取付部１２における第１表面、対向側端縁（側端面）１３、及び第２表面にそれぞれ接着されている。これによって、生地１０のストリンガー取付部１２を形成する糸も接着層２３に固定されて動き難くなるため、ストリンガー取付部１２の強度を高めるとともに、生地１０の対向側端縁１３にほつれを生じ難くすることができる。また、テープ部材２１の第１テープ片部２４及び第２テープ片部２６が、ストリンガー取付部１２の第１表面及び第２表面から浮き上がって離れることを防止して、テープ部材２１の第１テープ片部２４及び第２テープ片部２６の全体をストリンガー取付部１２に安定して固定することができる。

　なお、本実施例１では、テープ部材２１の内周面の全体が、接着層２３によって、生地１０のストリンガー取付部１２に接着されていることが好ましいが、本発明において、テープ部材２１の内周面が接着層２３によって生地１０のストリンガー取付部１２に固着されるとは、接着層２３が部分的に設けられていないことや、接着層２３が形成されていても接着が不十分であること等によって、非固着部分が部分的に形成されている場合も含む。

　この場合、テープ部材２１の内周面と生地１０のストリンガー取付部１２とは、接着を要する面積の５０％以上の割合で、好ましくは８０％以上の割合で接着されていれば良い。例えばテープ部材２１の第２テープ片部２６のみを生地１０のストリンガー取付部１２の第２表面に接着層２３を介して接着する場合には、テープ部材２１の第２テープ片部２６の面積（又は、ストリンガー取付部１２の第２表面）の面積の５０％以上の割合で、好ましくは８０％以上の割合で両者が接着していれば良い。

　また、テープ部材２１の第２テープ片部２６は、ファスナーストリンガー２０を生地１０に固定するストリンガー縫製糸２７がストリンガー取付部１２の第２表面（下面）上に表出して走行するストリンガー縫製糸２７の表出部分（言い換えると、ストリンガー縫製糸２７における第２表面上の走行部分）を被覆して、ストリンガー取付部１２の第２表面に接着されている。すなわち、ストリンガー縫製糸２７におけるストリンガー取付部１２の第２表面上に表出する表出部分は、ストリンガー取付部１２の第２表面に接着されるテープ部材２１の第２テープ片部２６によって覆い隠されて保護される。

　この場合、ストリンガー縫製糸２７により形成されるストリンガー縫製部（ストリンガー縫製線）は、エレメント縫製糸３３の二重環縫いにより形成されるエレメント縫製部（エレメント縫製線）の形成範囲に重なるよう配されている。

　更に本実施例１のテープ部材２１において、第１テープ片部２４における生地１０の内方側に形成されるテープ先端位置２４ａは、ファスナーストリンガー２０の幅方向に関して、ファスナーエレメント３１の後述する連結部３１ｄの先端位置と同じ位置、又は当該連結部３１ｄの先端位置に対してファスナーエレメント３１の噛合頭部３１ａ寄りの位置に配されている。すなわち、テープ部材２１の第１テープ片部２４は、ファスナーストリンガー２０を上方から見た図４の平面視において、ファスナーエレメント３１の外側に延出する（食み出す）ことはなく、第１テープ片部２４の多くの部分がファスナーエレメント３１の下に隠れて見えなくなるような細幅の形態に形成されている。なおこの場合、第１テープ片部２４の一部が、ファスナーストリンガー２０の長さ方向に隣接するファスナーエレメント３１間の隙間から見えることもある。

　このようにテープ部材２１の第１テープ片部２４が、ファスナーストリンガー２０の幅方向における寸法をファスナーエレメント３１よりも小さくした細幅の形状に形成されることにより、テープ部材２１の軽量化が図れる。また、ファスナーストリンガー２０を幅方向に曲げ易くしてファスナーストリンガー２０の柔軟性を高めることができる。更に、ファスナーストリンガー２０を湾曲状などに曲げた状態で生地１０に縫い付ける場合、テープ部材２１の第１テープ片部２４に浮き上がりや沈み込みを発生させ難くするとともに、波打ち状の皺を発生させ難くすることができる。このため、ファスナーストリンガー２０を生地１０に縫い付ける縫製作業が行い易くなるとともに、テープ部材２１に皺等が発生することに起因する衣服１の外観品質の低下を招き難くすることができる。

　また本実施例１のテープ部材２１において、第２テープ片部２６における生地１０の内方側に形成されるテープ先端位置２６ａは、ファスナーストリンガー２０の幅方向に関して、第１テープ片部２４における上述したテープ先端位置２４ａと同じ位置に配されている。これにより、テープ部材２１の第２テープ片部２６が第１テープ片部２４と同様に細幅に形成されるため、テープ部材２１の軽量化が図れるとともにファスナーストリンガー２０の柔軟性を高めることができる。また、第１テープ片部２４の場合と同様に、ファスナーストリンガー２０を湾曲状などに曲げた状態で生地１０に縫い付ける場合、テープ部材２１の第２テープ片部２６に浮き上がりや沈み込みを発生させ難くするとともに、波打ち状の皺を発生させ難くすることができる。更に、第２テープ片部２６の幅方向における寸法を適切に確保できるため、第２テープ片部２６に設けた接着層２３によるファスナーストリンガー２０と生地１０との固着強度が適切に確保される。

　なお本実施例１において、テープ部材２１の第２テープ片部２６は、そのテープ先端位置２６ａが、ファスナーストリンガー２０の幅方向に関して、第１テープ片部２４のテープ先端位置２４ａと、ストリンガー縫製糸２７が生地１０のストリンガー取付部１２を刺通する刺通位置との間に配されるように、本実施例１よりも細幅に形成されていても良い。

　本実施例１のファスナーエレメント３１は、ポリアミドやポリエステルなどの熱可塑性合成樹脂製のモノフィラメントをコイル状に成形することによって、長さ方向に連続する形態で形成されている。連続状の複数のファスナーエレメント３１がエレメント縫製糸３３によってテープ部材２１に縫い付けられることによって、エレメント列３０がテープ部材２１の長さ方向に沿って形成される。

　この場合、各ファスナーエレメント３１は、前後方向に膨出する部分を備えた噛合頭部３１ａと、噛合頭部３１ａからテープ幅方向に延設される上脚部３１ｂ及び下脚部３１ｃと、長さ方向に隣接するファスナーエレメント３１間を連結する連結部３１ｄとを有する。この場合、ファスナーエレメント３１の下脚部３１ｃは、テープ部材２１に接して配されており、上脚部３１ｂは、テープ部材２１から離間して配されている。

　本実施例１の芯紐３２は、各ファスナーエレメント３１の上脚部３１ｂと下脚部３１ｃの間に挟まれるようにしてファスナーストリンガー２０の長さ方向に沿って挿通されている。この芯紐３２は、ファスナーエレメント３１をテープ部材２１に縫い付けるエレメント縫製糸（第１縫製糸）３３に刺通されて、ファスナーエレメント３１とともにテープ部材２１の第１テープ片部２４に固定される。また、芯紐３２は、ファスナーストリンガー２０を生地１０のストリンガー取付部１２に縫い付けるストリンガー縫製糸（第２縫製糸）２７に刺通されて、ファスナーエレメント３１及びテープ部材２１とともに生地１０のストリンガー取付部１２に固定される。なお本発明では、芯紐３２を設けずに、ファスナーエレメント３１とテープ部材２１とからファスナーストリンガー２０が形成されていても良い。

　上述のような本実施例１のファスナーストリンガー２０は、芯紐３２がファスナーエレメント３１の上脚部３１ｂ及び下脚部３１ｃ間に挿通されるとともに、ファスナーエレメント３１がテープ部材２１の第１テープ片部２４の外周面に載置された状態で、エレメント縫製用のミシンを用いて、ファスナーエレメント３１、芯紐３２、及びテープ部材２１に縫製加工を行うことにより形成される。なお、このファスナーストリンガー２０の縫製加工を行うとき、テープ部材２１は図５に示すようにＵ字状に折り曲げられてなく、テープ部材２１を第１テープ片部２４と第２テープ片部２６が離間するように開いた状態（例えば、テープ部材２１が断面視にてＬ字を呈するような状態）で、テープ部材２１の第１テープ片部２４にファスナーエレメント３１及び芯紐３２が縫い付けられる。

　この場合、連続状のファスナーエレメント３１は、その長さ方向全体に亘って、エレメント縫製糸（第１縫製糸）３３の二重環縫いによってテープ部材２１に固定される。また、エレメント縫製糸３３は、各ファスナーエレメント３１の上脚部３１ｂに接して上脚部３１ｂ及び下脚部３１ｃをテープ部材２１に向けて押さえるとともに、隣接するファスナーエレメント３１の上脚部３１ｂ間を通って芯紐３２を刺通し、更に、隣接するファスナーエレメント３１の下脚部３１ｃ間を通ってテープ部材２１の第１テープ片部２４を刺通する。

　これによって、ファスナーエレメント３１、芯紐３２、及びテープ部材２１の第１テープ片部２４が、二重環縫いを形成するエレメント縫製糸３３の針糸とルーパ糸との間に挟み込まれて一体的に固定される。

　このように複数のファスナーエレメント３１がエレメント縫製糸３３によりテープ部材２１の第１テープ片部２４に固定されることによって、ファスナーエレメント３１の形状が安定して保持されるとともに、長さ方向に隣接して配されるファスナーエレメント３１間の間隔（ファスナーエレメント３１の取付ピッチ）も一定の大きさに安定して保持される。

　特に、テープ部材２１に対するファスナーエレメント３１の固定に、エレメント縫製糸３３の二重環縫いが用いられることにより、ファスナーストリンガー２０の製造を高い生産性で行うことができる。また、二重環縫いは、縫い目の強度に優れており、ファスナーエレメント３１を固定しているエレメント縫製糸３３が切れたとしても、エレメント縫製糸３３のほつれを生じ難くすることができる。なお、本発明では、エレメント縫製糸３３のステッチ形式として、二重環縫い以外のものを採用することも可能である。

　そして、上述のような縫製加工を行った後、テープ部材２１を第１テープ片部２４の内周面と第２テープ片部２６の内周面とが向き合うようにＵ字状に折り曲げる。また、テープ部材２１をＵ字状に折り曲げた後、得られたファスナーストリンガー２０に対して、必要に応じて熱セット処理を行う。なお本実施例１では、テープ部材２１をＵ字状に折り曲げてから、そのＵ字状のテープ部材２１の第１テープ片部２４に複数のファスナーエレメント３１を固定することも可能である。

　以上の工程を行うことによって、本実施例１のファスナーストリンガー２０が形成される。更に、形成されたファスナーストリンガー２０を２つ一組で組み合わせてエレメント列３０同士を噛み合わせることによって、図４及び図５に示したような左右一対のファスナーストリンガー２０が得られる。

　本実施例１に用いられるスライダー４０は、図１及び図２などに模式的に示したように、スライダー胴体４１と、スライダー胴体４１に取り付けられる引手４２とを有する。スライダー胴体４１は、上翼板４３と、上翼板４３と離間して平行に配される下翼板４４と、上翼板４３及び下翼板４４の前端部（肩口側端部）間を連結する図示しない連結柱と、上翼板４３の左右側縁部から下翼板４４に向けて垂設されるフランジ部４５と、上翼板４３の上面に配される引手取付部４６とを有する。

　スライダー胴体４１の前端部には、案内柱を間に挟んで左右の肩口が形成され、スライダー胴体４１の後端部には後口が形成されている。また、上翼板４３と下翼板４４の間には、左右の肩口と後口とを連通する略Ｙ字形状のエレメント案内路が形成されている。特に、本実施例１におけるスライダー胴体４１のエレメント案内路は、上下方向に、左右の生地１０のストリンガー取付部１２と、各ストリンガー取付部１２に固定された左右のファスナーストリンガー２０とが挿通可能な寸法をもって形成される。

　このようなスライダー４０を、左右のファスナーストリンガー２０のエレメント列３０に沿って前方又は後方に摺動させることにより、スライダー胴体４１のエレメント案内路内で左右のファスナーエレメント３１を順次円滑に噛合・分離させることができる。

　次に、上述のようなファスナーストリンガー２０を生地１０のストリンガー取付部１２に取り付けて、本実施例１のスライドファスナー５付き衣服１を製造する方法について説明する。
　先ず、１つのファスナーストリンガー２０と、衣服１の前身頃を構成する生地１０とをそれぞれ準備する。

　本実施例１のファスナーストリンガー２０を形成する工程として、上述したように、コイル状に連続する複数のファスナーエレメント３１と芯紐３２とを、テープ部材２１の第１テープ片部２４の一方のテープ面（外周面となるテープ面）にエレメント縫製糸３３で縫い付けて固定する。

　このとき、テープ部材２１の他方のテープ面（内周面となるテープ面）に接着層２３を予め形成しておき、ファスナーエレメント３１及び芯紐３２は、テープ部材２１の接着層２３が形成されていない側のテープ面に固定される。テープ部材２１にファスナーエレメント３１及び芯紐３２を固定した後、そのテープ部材２１をＵ字状に折り曲げることによって、本実施例１のファスナーストリンガー２０が作製される。

　また、ファスナーストリンガー２０を作製する工程とは別の工程として、ファスナー被着部材となる衣服１用の生地を編成や織成などによって作製する。このとき、例えば生地に防水性を付与したい場合には、編成又は織成された生地に合成樹脂をコーティングしたり、樹脂フィルムを貼り付けたりすることも可能である。更に、得られた生地を、衣服１の前身頃に対応する所定の形状となるように裁断し、ファスナー被着部材となる左右一対の前身頃用の生地（生地パーツ）１０を作製する。この場合、左右の生地（生地パーツ）１０の対向側端縁１３には、上述したように折り返すなどの折り返し処理が施されていない。また、左右の生地１０におけるそれぞれの対向側端縁１３から一定の幅寸法を有する部分が、生地１０のストリンガー取付部１２として形成される。

　次に、上述のようにして作製したファスナーストリンガー２０を、所定の形状に裁断された生地（生地パーツ）１０のストリンガー取付部１２に取り付ける取付工程を行う。

　この取付工程では、先ず、図６に示すように、Ｕ字状に折り曲げられているテープ部材２１を、第２テープ片部２６が第１テープ片部２４から離れるように開いた状態で、ファスナーストリンガー２０を生地１０のストリンガー取付部１２に載置する。このとき、テープ部材２１の第１テープ片部２４の内周面に形成した接着層２３と、生地１０のストリンガー取付部１２の第１表面とを対面させて接触させるとともに、テープ部材２１のテープ折曲部２５の位置と生地１０の対向側端縁１３の位置と合わせるようにして、ファスナーストリンガー２０を生地１０のストリンガー取付部１２に重ねる。

　続いて、図６に示した状態のファスナーストリンガー２０及び生地１０に対して、ストリンガー縫製用のミシンを用いて両者を縫い合わせる縫製加工を行う。これにより、ファスナーストリンガー２０が、その長さ方向全体に亘って、ストリンガー縫製糸（第２縫製糸）２７の本縫いによって、生地１０のストリンガー取付部１２に縫い付けられる。

　この場合、ストリンガー縫製糸２７は、各ファスナーエレメント３１の上脚部３１ｂに接して上脚部３１ｂ及び下脚部３１ｃを生地１０に向けて押さえるとともに、隣接するファスナーエレメント３１の上脚部３１ｂ間を通って芯紐３２を刺通する。更に、ストリンガー縫製糸２７は、隣接するファスナーエレメント３１の下脚部３１ｃ間を通ってテープ部材２１の第１テープ片部２４と生地１０のストリンガー取付部１２とを刺通する。これによって、ファスナーエレメント３１、芯紐３２、テープ部材２１の第１テープ片部２４、及び生地１０のストリンガー取付部１２が、本縫いを形成するストリンガー縫製糸２７の針糸とボビン糸との間に挟み込まれて一体的に固定される。また、ストリンガー縫製糸２７の本縫いにより形成されるストリンガー縫製部は、エレメント縫製糸３３の二重環縫いにより形成されたエレメント縫製部に重なるようにして配される。

　特に本実施例１では、生地１０に対するファスナーストリンガー２０の固定に、ストリンガー縫製糸２７の本縫いが用いられている。これにより、ファスナーストリンガー２０と生地１０とを円滑に且つ安定して縫い合わせることができる。

　この場合、ストリンガー縫製糸２７により形成されるストリンガー縫製部は、ストリンガー縫製糸２７が生地１０のストリンガー取付部１２を刺通してストリンガー取付部１２の第２表面（下面）上に表出して走行するストリンガー縫製糸２７の表出部分を有する。なお、本発明では、ストリンガー縫製糸２７のステッチ形式として、本縫い以外のものを採用することも可能である。

　ファスナーストリンガー２０を生地１０のストリンガー取付部１２に縫い付けた後、図６に仮想線で示すように、テープ部材２１の第２テープ片部２６をストリンガー取付部１２の第２表面に重ねるようにテープ部材２１をＵ字状に折り曲げる。これにより、図７に示すように、ストリンガー取付部１２の第２表面に表出して走行するストリンガー縫製糸２７の表出部分が、テープ部材２１の第２テープ片部２６によって被覆されて、外部から見えないように隠される。

　このとき、テープ部材２１は、第１テープ片部２４の内周面に形成されている接着層２３を生地１０のストリンガー取付部１２の第１表面に接触させ、且つ、第２テープ片部２６の内周面に形成されている接着層２３を生地１０のストリンガー取付部１２の第２表面に接触させて保持される。また、テープ部材２１のテープ折曲部２５は、生地１０の対向側端縁１３を包み込むとともに、生地１０の対向側端縁１３に接着層２３を接触させて保持される。すなわち、テープ部材２１が、生地１０のストリンガー取付部１２を、ストリンガー取付部１２の第１表面から対向側端縁１３を介して第２表面まで連続して包み込んでいる。

　そして、テープ部材２１で生地１０のストリンガー取付部１２を包み込んでいる状態で、テープ部材２１をストリンガー取付部１２に向けて押さえながら所定の温度の熱処理を行う。これにより、テープ部材２１の内周面を、ホットメルト型接着剤の接着層２３で生地１０のストリンガー取付部１２に接着させることができる。すなわち、図３に示したように、テープ部材２１の第１テープ片部２４、テープ折曲部２５、及び第２テープ片部２６を、生地１０のストリンガー取付部１２における第１表面、対向側端縁１３、及び第２表面にそれぞれ固着させることができる。

　なお本実施例１では、テープ部材２１が生地１０のストリンガー取付部１２に接着層２３を介して固着されるが、本発明では、接着層２３を設けずにテープ部材２１を形成し、そのテープ部材２１と生地１０のストリンガー取付部１２とを密着させた状態で熱溶着処理や超音波溶着処理等により溶着させて両者を固着することも可能である。

　上述のようなファスナーストリンガー２０の取付工程が行われることにより、所定の形状に裁断された生地１０のストリンガー取付部１２にファスナーストリンガー２０が取着された前身頃の衣服構成パーツが作製される。そして、左右の前身頃用のファスナーストリンガー２０付きの構成パーツを作製した後、作製した各部位の衣服構成パーツを互いに縫製等により結合させて、衣服１を組み立てる。更に、左右のファスナーストリンガー２０のエレメント列３０に、スライダー４０を摺動可能に取り付ける。これによって、本実施例１のスライドファスナー５付き衣服１が製造される。

　このようにして製造された本実施例１のスライドファスナー５付き衣服１では、ファスナーストリンガー２０のテープ部材２１が衣服１の外側から見え難いように配されているため、スライドファスナー５付き衣服１の外観品質が高められる。また、衣服１に形成されるスライドファスナー５が、衣服１のデザインに与える影響を小さく抑えることが可能となる。

　また、本実施例１のスライドファスナー５付き衣服１では、前身頃の生地１０の対向側端縁（側端面）１３が、ファスナーストリンガー２０のテープ部材２１によって包まれて保護されているため、外側に露呈していない。このため、生地１０の対向側端縁１３が裁断されたままの状態で対向側端縁１３にほつれが生じていたり、対向側端縁１３から糸が出ていたりする場合でも、その対向側端縁１３をテープ部材２１の内側に隠すことができる。また同時に、噛合相手側のファスナーストリンガー２０には、Ｕ字状に折り返されたテープ部材２１のテープ折曲部２５の綺麗な外周面を対向させることができる。

　従って、本実施例１の衣服１に設けられるスライドファスナー５において、生地１０の対向側端縁１３に生じるほつれや、対向側端縁１３から飛び出している糸等に起因して、左右のファスナーエレメント３１の噛み合わせが悪くなることや、スライダー４０の摺動性が低下することを効果的に防止できる。

　更に、本実施例１のスライドファスナー５付き衣服１では、生地１０の対向側端縁１３がテープ部材２１によって保護されているだけでなく、生地１０のストリンガー取付部１２における第１表面（上面）、対向側端縁１３、及び第２表面（下面）がテープ部材２１に設けた接着層２３に固着している。これにより、本実施例１では、スライダー４０の摺動操作が繰り返し行われても、例えば生地１０の対向側端縁１３がむき出しで形成されている場合に比べて、生地１０の対向側端縁１３に新たなほつれを生じ難くすることができる。その結果、生地１０のストリンガー取付部１２における耐久性を高めて、スライドファスナー５の機能を長期に亘って維持することができる。

　その上、本実施例１のスライドファスナー５付き衣服１では、生地１０のストリンガー取付部１２の第２表面がテープ部材２１の第２テープ片部２６に覆われており、ストリンガー取付部１２の第２表面上を走行するストリンガー縫製糸２７の表出部分を第２テープ片部２６で隠して見えなくすることができる。これにより、スライダー４０の摺動操作が繰り返して行われても、スライダー４０の下翼板４４がストリンガー縫製糸２７を擦ることがないため、ストリンガー縫製糸２７の摩耗や切断を生じ難くすることができる。更に、ストリンガー取付部１２の第２表面側にストリンガー縫製糸２７が見えなくなるため、スライドファスナー５付き衣服１の外観品質を更に向上させることも可能となる。

　また、本実施例１のスライドファスナー５付き衣服１では、左右のエレメント列３０を噛合させて左右のファスナーエレメント３１が互いに噛み合っている状態にしたときに、左右のテープ部材２１のテープ折曲部２５同士を密接（又は当接）させることができる。このため、本実施例１のスライドファスナー５付き衣服１は、たとえば衣服１の生地１０が防水性を備える場合等において、スライドファスナー５の閉鎖時に水などの液体が衣服１の外側から内側に入り込み難くする止水性を備えることも可能である。

　また本実施例１では、上述のように、テープ部材２１の第２テープ片部２６が、生地１０のストリンガー取付部１２の第２表面に接着層２３を介して固着されているとともに、ストリンガー縫製糸２７の第２表面上を走行して表出する表出部分を被覆している。これにより、スライドファスナー５付き衣服１が上述のような止水性を備える場合に、例えば水などの液体が、ファスナーストリンガー２０を生地１０に固定するストリンガー縫製糸２７を伝って、生地１０の第２表面側に浸入するようなときでも、その水の浸入を、テープ部材２１の第２テープ片部２６と生地１０のストリンガー取付部１２とを固着している接着層２３で阻止することが可能となる。このため、スライドファスナー５付き衣服１の止水性能をより高めることができる。

　なお、上述した実施例１のスライドファスナー５付き衣服１において、テープ部材２１の第２テープ片部２６における生地１０の内方側に形成されるテープ先端位置２６ａは、同テープ部材２１の第１テープ片部２４におけるテープ先端位置２４ａと同じ位置に配されている。しかし、本発明では、例えば図８に実施例１の変形例を示すように、テープ部材５１の第２テープ片部５６の幅方向における寸法を大きくして、第２テープ片部５６のテープ先端位置５６ａを、第１テープ片部５４におけるテープ先端位置５４ａよりも更に生地１０の内方側に設定することも可能である。

　ここで、図８に示した実施例１の変形例に係るスライドファスナー５ａ付き衣服１ａについて説明する。この変形例に係るスライドファスナー５ａ付き衣服１ａは、テープ部材５１の第２テープ片部５６を、上述した実施例１の第２テープ片部２６よりも幅方向の寸法を大きくして形成されている。

　なお、この変形例に係るスライドファスナー５ａ付き衣服１ａは、第２テープ片部５６の幅を大きくしたことを除いて、上述した実施例１のスライドファスナー５付き衣服１と同様に形成されている。従って、この変形例では、上述の実施例１と実質的に同じ構成を有する部品及び部材については同じ符号を用いて表すことによって、その説明を省略することとする。

　図８に示したスライドファスナー５ａ付き衣服１ａでは、テープ部材５１の第２テープ片部５６におけるテープ先端位置５６ａが、ファスナーストリンガー２０の幅方向に関し、スライダー胴体４１の後口側端部における下翼板４４の左右側縁の位置よりも、更に生地１０の内方側（スライダー胴体４１の外側）に配されている。すなわち、テープ部材５１の第２テープ片部５６が、スライダー胴体４１の下翼板４４の左右側縁よりも外側に突出して配されている。

　このようにテープ部材５１の第２テープ片部５６の幅寸法を大きくして、第２テープ片部５６をスライダー胴体４１の下翼板４４よりも外側に延ばすことにより、スライダー４０を左右のエレメント列３０に沿って摺動させるときに、下翼板４４が衣服１ａの生地１０に直接摺接することを防止できる。このため、スライダー４０の摺動を繰り返しても生地１０に摩耗や損傷が生じ難くなり、スライドファスナー５ａ付き衣服１ａの耐久性を高めることができる。

　また、図８に示したスライドファスナー５ａ付き衣服１ａにおいても、上述の実施例１の場合と同様に、左右のエレメント列を噛合させて左右のファスナーエレメント３１が互いに噛み合っている状態にしたときに、左右のテープ部材５１のテープ折曲部５５同士を密接（又は当接）させることができる。それにより、この変形例に係るスライドファスナー５ａ付き衣服１ａに、スライドファスナー５ａの閉鎖時に水を内部に浸入させ難くする止水性を備えさせることも可能である。

　また、上述した実施例１で形成されるスライドファスナー５は、図１及び図２に示したように、左右のエレメント列３０が、衣服１の生地１０の外面となる第１表面上に配されて外部に露出する形態で衣服１に取り付けられている。このように左右のエレメント列３０が外側に露出するように形成されるスライドファスナー５の形態は、通常タイプのスライドファスナー又は表使いのスライドファスナーと呼ばれることがある。

　しかし、本発明におけるスライドファスナーの形態は、これに限定されるものではない。例えば図９に実施例１の別の変形例を示すように、左右のエレメント列３０が衣服１ｂの内側に隠れるように配されることによってエレメント列３０が外側からでは見え難くなるように形成される所謂裏使いの形態でスライドファスナー５ｂが衣服１ｂに形成されていても良い。

　この図９に示した裏使いのスライドファスナー５ｂ付き衣服１ｂでは、エレメント列３０が生地１０のストリンガー取付部１２の第２表面側に配されるようにしてファスナーストリンガー２０が生地１０に固定されるものの、それ以外については、上述の実施例１のスライドファスナー５付き衣服１と実質的に同様に形成されている。従って、図９に示した変形例に係るスライドファスナー５ｂ付き衣服１ｂにおいても、衣服１ｂの外観品質やデザインに関する点を除いて、上述した実施例１のスライドファスナー５付き衣服１と同様の効果を得ることができる。

　図１０は、本実施例２に係るスライドファスナー付き製品のファスナーストリンガーのみを部分的に且つ模式的に示す断面図である。
　前述した実施例１のファスナーストリンガー２０は、ファスナーエレメント３１をテープ部材２１の第１テープ片部２４に、エレメント縫製糸３３を用いて縫い付けて固定することにより形成されている。一方、本実施例２のファスナーストリンガー６０は、テープ部材６１のテープ本体６２が織成されると同時に、そのテープ本体６２の一部にファスナーエレメント７１が織り込まれて固定される所謂織り込みファスナーストリンガー６０として形成されている。

　すなわち、本実施例２のファスナーストリンガー６０は、テープ部材６１と、そのテープ部材６１のテープ本体６２に織り込み固定される連続状の複数のファスナーエレメント７１とを有する。また、本実施例２のテープ部材６１は、織成されるテープ本体６２と、そのテープ本体６２の内周面に設けられる接着層６３とを有する。この場合、テープ部材６１の接着層６３は、前述した実施例１の場合と同様に、テープ本体６２にホットメルト型接着剤を塗布する又はコーティングすることにより、テープ部材６１の内周面全体に形成されている。

　また、本実施例２のテープ部材６１は、図１０に示す断面図において、図示しない生地のストリンガー取付部の第１表面に固着される第１テープ片部６４と、その第１テープ片部６４から延びるとともにＵ字状に折り返されるテープ折曲部６５と、テープ折曲部６５から更に延びるとともに生地のストリンガー取付部の第２表面に固着される第２テープ片部６６とを有する。

　本実施例２におけるファスナーエレメント７１は、熱可塑性合成樹脂製のモノフィラメントをコイル状に成形することによって、長さ方向に連続する形態で形成されている。本実施例２の連続状の複数のファスナーエレメント７１がテープ部材６１のテープ本体６２に織り込み固定されることによって、エレメント列がテープ部材６１の長さ方向に沿って形成される。また、各ファスナーエレメント７１は、噛合頭部７１ａと、噛合頭部７１ａからテープ幅方向に延設される上脚部７１ｂ及び下脚部７１ｃと、長さ方向に隣接するファスナーエレメント７１間を連結する連結部７１ｄとを有する。

　上述のようなテープ部材６１及びファスナーエレメント７１を有する本実施例２のファスナーストリンガー６０は、前述した実施例１のファスナーストリンガー２０を生地１０のストリンガー取付部１２に取り付けて固定する場合（図６及び図７を参照）と同様の方法を用いることによって、図示しない生地のストリンガー取付部に取り付けられて固定される。

　更に、左右の生地に固定されたファスナーストリンガー６０のエレメント列に、スライダーを摺動可能に取り付けることによって、本実施例２に係るスライドファスナー付き衣服が製造される。
　そして、上述のようにして製造される本実施例２のスライドファスナー付き衣服においても、前述した実施例１のスライドファスナー５付き衣服１と同様の効果を得ることができる。

　　１，１ａ，１ｂ　　スライドファスナー付き衣服（製品）
　　５，５ａ，５ｂ　　スライドファスナー
　１０　　　　　　　　生地（生地パーツ）
　１１　　　　　　　　生地本体
　１２　　　　　　　　ストリンガー取付部
　１３　　　　　　　　対向側端縁（側端面）
　２０　　　　　　　　ファスナーストリンガー
　２１　　　　　　　　テープ部材
　２２　　　　　　　　テープ本体
　２３　　　　　　　　接着層
　２４　　　　　　　　第１テープ片部
　２４ａ　　　　　　　第１テープ片部のテープ先端位置
　２５　　　　　　　　テープ折曲部
　２６　　　　　　　　第２テープ片部
　２６ａ　　　　　　　第２テープ片部のテープ先端位置
　２７　　　　　　　　ストリンガー縫製糸（第２縫製糸）
　３０　　　　　　　　エレメント列
　３１　　　　　　　　ファスナーエレメント
　３１ａ　　　　　　　噛合頭部
　３１ｂ　　　　　　　上脚部
　３１ｃ　　　　　　　下脚部
　３１ｄ　　　　　　　連結部
　３２　　　　　　　　芯紐
　３３　　　　　　　　エレメント縫製糸（第１縫製糸）
　４０　　　　　　　　スライダー
　４１　　　　　　　　スライダー胴体
　４２　　　　　　　　引手
　４３　　　　　　　　上翼板
　４４　　　　　　　　下翼板
　４５　　　　　　　　フランジ部
　４６　　　　　　　　引手取付部
　５１　　　　　　　　テープ部材
　５４　　　　　　　　第１テープ片部
　５４ａ　　　　　　　第１テープ片部のテープ先端位置
　５５　　　　　　　　テープ折曲部
　５６　　　　　　　　第２テープ片部
　５６ａ　　　　　　　第２テープ片部のテープ先端位置
　６０　　　　　　　　ファスナーストリンガー
　６１　　　　　　　　テープ部材
　６２　　　　　　　　テープ本体
　６３　　　　　　　　接着層
　６４　　　　　　　　第１テープ片部
　６５　　　　　　　　テープ折曲部
　６６　　　　　　　　第２テープ片部
　７１　　　　　　　　ファスナーエレメント
　７１ａ　　　　　　　噛合頭部
　７１ｂ　　　　　　　上脚部
　７１ｃ　　　　　　　下脚部
　７１ｄ　　　　　　　連結部

Claims (10)

1. 　モノフィラメントから成形される連続状の複数のファスナーエレメント(31,71) がテープ部材(21,51,61)に取着されて形成される一対のファスナーストリンガー(20,60) と、一対のストリンガー取付部(12)を互いに対向する位置に備えるファスナー被着部材(10)とを有し、前記ファスナーストリンガー(20,60) は、前記ファスナー被着部材(10)の前記ストリンガー取付部(12)に、ストリンガー縫製糸(27)により縫着され、前記ストリンガー縫製糸(27)は、前記ファスナーエレメント(31,71) の一部を押さえるとともに前記テープ部材(21,51,61)と前記ファスナー被着部材(10)の前記ストリンガー取付部(12)とを刺通することにより前記ファスナーストリンガー(20,60) を前記ストリンガー取付部(12)に固定するスライドファスナー付き製品(1,1a,1b) であって、
   　前記ファスナー被着部材(10)の前記ストリンガー取付部(12)は、互いに反対側に配される第１表面及び第２表面を有し、且つ、Ｕ字状に折り曲げられる前記テープ部材(21,51,61)の内周側に配され、
   　前記テープ部材(21,51,61)は、前記テープ部材(21,51,61)の長さ方向に直交する断面視にて、前記ストリンガー取付部(12)の前記第１表面上に配されるとともに前記ファスナーエレメント(31,71) が取着される第１テープ片部(24,54,64)と、前記第１テープ片部(24,54,64)から延びるとともにＵ字状に折り返されて前記ストリンガー取付部(12)の側端縁(13)を包むテープ折曲部(25,55,65)と、前記テープ折曲部(25,55,65)から更に延び、且つ、前記ストリンガー取付部(12)の前記第２表面に固着される第２テープ片部(26,56,66)とを有し、
   　前記テープ部材(21,51,61)の前記第２テープ片部(26,56,66)は、前記ストリンガー取付部(12)の前記第２表面上に表出する前記ストリンガー縫製糸(27)の表出部分を被覆してなる、
   ことを特徴とするスライドファスナー付き製品。
2. 　前記ファスナーエレメント(31)は、エレメント縫製糸(33)により前記テープ部材(21,51) に縫着されてなる請求項１記載のスライドファスナー付き製品。
3. 　前記テープ部材(21,51,61)の前記第２テープ片部(26,56,66)は、前記ストリンガー取付部(12)の前記第２表面に接着層(23,63) を介して固着されてなる請求項１又は２記載のスライドファスナー付き製品。
4. 　前記テープ部材(21,51,61)の前記第１テープ片部(24,54,64)は、前記ファスナー被着部材(10)の前記第１表面に接着層(23,63)を介して固着されてなる請求項１～３のいずれかに記載のスライドファスナー付き製品。
5. 　前記テープ部材(21,51,61)の前記テープ折曲部(25,55,65)は、前記ファスナー被着部材(10)の前記側端縁(13)に固着されてなる請求項４に記載のスライドファスナー付き製品。
6. 　前記ファスナーエレメント(31)は、噛合頭部(31a) と、前記噛合頭部(31a) から延出する上下脚部(31b,31c) と、隣接する前記ファスナーエレメント(31)間を連結する連結部(31d) とを有し、
   　前記第１テープ片部(24,54) のテープ先端位置(24a,54a) は、前記ファスナーストリンガー(20)の幅方向に関し、前記ファスナーエレメント(31)の前記連結部(31d) の先端位置と同じ位置、又は前記連結部(31d) の先端位置に対して前記噛合頭部(31a) 寄りに配されてなる、
   請求項１～５のいずれかに記載のスライドファスナー付き製品。
7. 　前記第２テープ片部(26,56,66)のテープ先端位置は、前記ファスナーストリンガー(20,60) の幅方向に関し、前記第１テープ片部(24,54,64)のテープ先端位置(24a,54a) と同じ位置、又は前記第１テープ片部(24,54,64)の前記テープ先端位置(24a,54a) に対して前記ファスナー被着部材(10)の内方に配されてなる請求項１～６のいずれかに記載のスライドファスナー付き製品。
8. 　上翼板(43)及び下翼板(44)間にエレメント案内路が形成されるスライダー(40)が、一対の前記ファスナーストリンガー(20,60) における複数のファスナーエレメント(31,71) により形成されるエレメント列(30)に摺動可能に配され、
   　前記第２テープ片部(56)は、前記ファスナーストリンガー(20)の幅方向に関し、前記スライダー(40)の前記下翼板(44)又は前記上翼板(43)よりも外側に延出してなる、
   請求項１～７のいずれかに記載のスライドファスナー付き製品。
9. 　モノフィラメントから成形される連続状の複数のファスナーエレメント(31,71) がテープ部材(21,51,61)に取着されて形成される一対のファスナーストリンガー(20,60) を、ファスナー被着部材(10)の互いに対向する位置に配される一対のストリンガー取付部(12)に取り付けることにより製造されるスライドファスナー付き製品(1,1a,1b)の製造方法であって、
   　前記ファスナーエレメント(31,71) と前記テープ部材(21,51,61)の第１テープ片部(24,54,64)とを、ストリンガー縫製糸(27)を用いて、前記ファスナー被着部材(10)の前記ストリンガー取付部(12)の第１表面上に縫い付けることにより、前記ファスナーストリンガー(20,60) を前記ストリンガー取付部(12)に縫着すること、及び、
   　前記ファスナーストリンガー(20,60) の縫着後、前記テープ部材(21,51,61)を前記ストリンガー取付部(12)が内側に包まれるようにＵ字状に折り曲げて、前記テープ部材(21,51,61)の第２テープ片部(26,56,66)を前記ストリンガー取付部(12)の第２表面に固着することにより、前記第２テープ片部(26,56,66)で前記ストリンガー取付部(12)の前記第２表面上に表出する前記ストリンガー縫製糸(27)の表出部分を被覆すること、
   を含んでなることを特徴とするスライドファスナー付き製品の製造方法。
10. 　前記ファスナーエレメント(31)を前記テープ部材(21,51) の第１テープ片部(24,54) にエレメント縫製糸(33)を用いて縫着することにより、前記ファスナーストリンガー(20)を形成することを含んでなる請求項９記載のスライドファスナー付き製品の製造方法。

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