明 細 書
免疫調節剤
技術分野
[0001] 本発明は免疫調節に関するものであり、とりわけ、ラタトスクロースを含んでなる免疫 調節剤及びラタトスクロースを利用する免疫調節方法に関するものである。
背景技術
[0002] ヒトをはじめとする高等生物は、細菌、ウィルス、寄生虫などの病原体の感染を防護 するために、免疫機能を備えており、各種の抗体やサイト力インの産生が生体内にお いて、適正に調節されている。特に、抗体は、ィムノグロブリン G (IgG)、ィムノグロブリ ン A (IgA)、ィムノグロブリン E (IgE)などが知られ、免疫系における極めて重要な因 子である。近年、生活環境が清潔になるにつれ、食中毒などの経口感染症は減少傾 向にある。し力しながら、逆に清潔な生活環境は、抗原刺激の機会を少なくするため 、常在的な IgAや IgEのレベルを低下させ、経口感染症に対する抵抗力を弱め、また 、アレルゲンや自己抗原に対して過度に反応して、抗原特異的 IgEや自己抗体を産 生しやすくする。よって、結果的に、現代人は、経口感染症や、花粉症や食物アレル ギーなどのアレルギー症、自己免疫疾患に罹患しやすい体質になっていると考えら れる。
[0003] 腸管免疫を調節する方法として、国際公開 WO02Z038146号公報は、糖質の一 種のトレハロースがパイエル板細胞に作用して、 IgAやインターフェロン一 γ (IFN- γ )の産生調節作用を有していることを開示している。また、特開 2002— 325555号 公報は、 -ゲロオリゴ糖が栄養障害による免疫機能低下を防止することを開示してい る。また、全身性免疫を調節する方法として、特開 2003— 40779号公報は、アレル ギー症の予防又は治療に、非還元末端に α— 1, 6結合のガラクトースを有するオリ ゴ糖を利用する方法を開示している。し力しながら、それらの効果は十分でない。
[0004] β—D—ガラクトシノレ一 (1, 4) - a—D—グノレコシノレ一 (1, 2) - β— D—フラタト シド、すなわちラタトスクロースは、例えば、特開平 3— 27285号公報に記載されてい るように、スクロースとラタトースとを含有する溶液に、微生物由来の 13ーフラタトフラノ
シダーゼを作用させ、この j8—フラタトフラノシダーゼが触媒する糖転移反応によつ て工業的に製造される。近年、ラタトスクロースは、難消化性、ビフィズス菌増殖促進 性、難う蝕性、保湿性を有することが明かになり、食品、化粧品、医薬品など広範な 用途に使用されている。しかしながら、ラタトスクロースの免疫調節作用については知 られていない。
発明の開示
[0005] 斯かる状況に鑑み、本発明は、日常の食生活で継続的に摂取可能であり、副作用 の心配のない免疫調節剤及び免疫調節方法を提供することを課題とする。
[0006] 本発明者等が鋭意研究したところ、ラタトスクロースは、経口摂取により、パイエル板 細胞などの腸管免疫組織を介して、腸内における IgAの分泌を促進するという新規 な知見を得た。さらに、ラタトスクロースは、アレルゲンをァラムアジュバントと共に免疫 することによって増強する IgEの産生を抑制することを発見した。さらに、ラタトスクロ ースを含有する組成物は、経口摂取により、腸管免疫を増強するとともに、アレルギ 一などの全身性免疫を抑制することを確認し、本発明を完成するに至った。
[0007] すなわち、本発明は、有効成分としてラタトスクロースを含んでなる免疫調節剤及び ラタトスクロースを経口摂取させることを特徴とする動物の免疫調節方法を提供するこ とによって、前記課題を解決するものである。
[0008] 本発明によれば、手軽に免疫調節することができるので、経口感染症、アレルギー 症、自己免疫疾患などの予防又は治療に効果的である。また、本発明の免疫調節剤 は、日常の食生活で継続的に摂取可能であり、副作用の心配がない。
図面の簡単な説明
[0009] [図 1]花粉症による鼻の臨床症状のスコアの経時的変化を示す図である。
[図 2]花粉症による眼の臨床症状のスコアの経時的変化を示す図である。
[図 3]花粉症による日常生活の支障度のスコアの経時的変化を示す図である。
符号の説明
[0010] ◊:対照摂取群のスコア
參:ラタトスクロース摂取群のスコア
I:スギ花粉の飛散開始時期
発明を実施するための最良の形態
[0011] 本発明の免疫調節剤は、有効成分としてのラタトスクロースを含有するものである。
ラタトスクロースの形態としては、本発明の効果を損ねない範囲で、通常、シラップ、 含蜜結晶粉末、含水結晶、非晶質固体等力も適宜選択することができる。また、市販 品を利用することができ、例えば、株式会社林原商事 (商品名『乳果オリゴ 550』、『乳 果オリゴ 700』など)や塩水港精糖株式会社 (商品名『LS - 90P』など)により販売さ れているラタトスクロース含有糖質を利用してもよい。本発明の免疫調節剤における ラタトスクロースの含量としては、ヒトを含む動物に摂取せしめて免疫調節作用が発揮 されればよぐ通常、固形物当たり、 1乃至 100% (wZw)、好ましくは 10乃至 100% (w/w)、さらに好ましくは 20乃至 100% (wZw)である。
[0012] 本発明でいう免疫調節作用とは、腸管免疫においては IgAの分泌を促進すること によって強化する作用、及び、全身性免疫においては過剰な免疫反応を制御する作 用という二とおりの免疫調節作用を意味するものである。すなわち、前者は、パイエル 板細胞などの腸管免疫組織を活性ィ匕して、腸管内においては、 IgA、あるいは、 IgA の産生を促進するサイト力イン類、例えばインターロイキン 6 (IL— 6)やトランスフォ 一ミングダロースファクタ一一 /3 (TGF )の産生を促進することによって発揮され るものであり、後者は、脾臓細胞などの全身性の免疫担当細胞に対して、制御性 T細 胞の活性化等を介して、アレルギーや自己免疫疾患などの過剰な免疫応答を抑制 することによって発揮されるものである。
[0013] 本発明の免疫調節剤は、ラタトスクロース単独であってもよいが、有効成分としてラ タトスクロースを含む、飲食物、医薬品、医薬部外品、健康食品、飼料又は餌料など の形態の組成物とすることもできる。組成物としては、上記形態において許容される 成分、例えば、水、アルコール、澱粉、蛋白質、食物繊維、糖質、脂質、ビタミン、ミネ ラル、着香料、着色料、甘味料、調味料、香辛料、安定剤、酸化防止剤、防腐剤など を配合することができる。とりわけ、ラタトフエリン、カゼイン、コラーゲン、大豆蛋白質 などの蛋白質またはその分解物、ルチン、ヘスペリジン、ケルセチン、イソフラボンな どのフラボノイド又はそれらの配糖体、乳酸カルシウム、グリセ口リン酸カルシウムなど のカルシウム塩、ビタミン A、ビタミン B ビタミン B、ビタミン B、ビタミン B 、ビタミン C
、ビタミン D、ビタミン Eなどのビタミン類またはその誘導体、ショ糖 (スクロース)、マルト ース、トレノヽロース、マノレトシノレトレノヽロース、 -ゲロース、イソマノレトース、 -ゲロオリゴ 糖、イソマルトオリゴ糖、環状四糖、サイクロデキストリンなどの糖類、ダルコサミン、ガ ラタトサミン、マンノサミンなどのアミノ糖、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、へパラン 硫酸などのグリコサミノダリカン、ソルビトール、マルチトールなどの糖アルコール、力 ルシトニン、エストロゲン、蛋白質同化ホルモンなどのホルモン類、感光素 101号、感 光素 201号、感光素 301号、感光素 401号などの感光色素、藍、シソ、中国パセリ、 パフィァ、鹿角霊芝、ァガリタス、メシマコブ、コタラヒム、プロポリス、ローヤルゼリーな どの植物、菌類又はそれらの抽出物、さらには、ビフィズス菌増殖糖質、粉末ミルク、 貝殻粉末、珊瑚粉末、蜂蜜、 Lーァスコルビン酸 2—ダルコシドなどを配合することが できる。
本発明の免疫調節剤は、上記のとおり IgAの分泌を促進して腸管免疫を強化する こと力ら、 A型肝炎ウィルス、ポリオウイルス、ロタウィルスなどのウィルス、コレラ菌、赤 痢菌、腸チフス菌、サルモネラ菌、キャンピロパクター、類鼻疽菌、腸炎ビブリオ菌、 ブルセラ菌、大腸菌 O— 157などの細菌、広節裂頭条虫、横川吸虫、肝吸虫、棘口 吸虫、肺吸虫、ァ-サキス、顎口虫、広東住血線虫、赤痢アメーバ、クリプトスポリジゥ ム、マラリア、ミクロフィラリアなどの寄生虫などが原因となる疾患の予防又は治療に有 利に用いられる。また、本発明の免疫調節剤は、抗原特異的な IgEの分泌を抑制し たり、特異抗原に対する過剰な免疫応答を抑制するので、例えば、卵、乳、小麦、そ ば、落花生、あわび、いか、いくら、えび、オレンジ、力に、キウイフルーツ、牛肉、くる み、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチンなど による食物アレルギー、例えば、スギ花粉、ヒノキ花粉、カモガヤ花粉、ォオアヮガエ リ花粉、ハンノキ花粉、ホソムギ花粉、シラカバ花粉、ブタクサ花粉、ォォブタクサ花 粉、ョモギ花粉、カナムダラ花粉、セィダカァヮダチソゥ花粉、前記以外のイネ科植物 の花粉などによる花粉症、例えば、ハウスダスト、金属、化学物質などによるアレルギ 一、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性胃腸 炎、喘息、蓴麻疹などのアレルギー症、クローン病、関節リウマチ、全身性エリテマト 一デス、全身性強皮症、多発性筋炎、混合性結合組織病、結節性動脈周囲炎、バ
セドウ病、橋本病、重症筋無力症、糖尿病、原発性胆汁性肝硬変、ギラン'バレー症 候群、シエーダレン症候群、抗リン脂質抗体症候群、多発性硬化症などの自己免疫 疾患の予防又は治療、さらには、これらの疾患に伴う臨床症状やそれに伴う日常生 活の支障の緩和などにも有利に用いられる。また、本発明の免疫調節剤は、免疫調 節作用、上記疾患や症状に対する予防'治療効果やその疾患に伴う日常生活の支 障の緩和作用があることを標榜して販売することも有利に実施できる。
[0015] 本発明の腸管免疫調節剤の投与又は摂取方法としては、腸内にラタトスクロースを 到達させることができるのならばいかなる方法でもよぐ通常、経口または経管経路が 選択される。投与又は摂取量としては、投与方法又は摂取方法、適用する動物の種 類などを考慮して適宜決定すればよぐ有効成分としてのラタトスクロースを、 1日当 たり通常 0. 001乃至 20gZkg体重、好ましくは 0. 01乃至 15gZkg体重、さらに好ま しくは 0. 02乃至 lOgZkg体重の範囲内で投与又は摂取すればよい。 0. 001g/kg 体重未満だと、所期の効果が発揮されず、 20gZkg体重を超えても量の割に効果が 発揮されない。なお、ヒトに投与又は摂取する場合、ラタトスクロースの最大無作用量 は 0. 6乃至 0. 8gZkg体重であることが確認されていることから、この範囲を超えた 投与又は摂取は、下痢を起こす可能性があるので注意が必要である。
[0016] 本発明の免疫調節剤は、通常、ヒトに適用されるものである力 ヒトと同様の免疫系 を有する脊椎動物全般に適用することができる。例えば、ゥシ、ゥマ、ブタ、ヒッジなど の家畜、ィヌ、ネコ、サルなどのペット、 -ヮトリ、ァヒル、七面鳥などの家禽、タイ、ブリ などの魚類があげられ、それらの飼育用の飼料や餌料に配合することができる。ラクト スクロースを含有する飼料や餌料は、高温、低温などの環境ストレスにより免疫力が 低下した家畜や家禽に対して、ウィルスや細菌等の感染症への罹患を予防すること 力 Sできるし、アレルギー症状を緩和することができるので、家畜や家禽の体力消耗を 防止し、効率よく生育させることができる。また、例えば、乳牛に対しては搾乳量の低 下を防止し、 -ヮトリに対しては産卵率の低下を防止するという効果も発揮する。
[0017] 以下、この発明の実施の形態につき、実験に基づいて説明する。
[0018] <実験 1:ラタトスクロース摂取マウスにおける IgA産生調節作用 >
ラタトスクロース摂取により、腸管免疫が増強されるかどうか、糞中の IgA量を測定
すること〖こより調べた。 6週齢雌性 BALB/cマウスを、米国国立栄養研究所から 199 3年に発表されたマウス ·ラットを用いた栄養研究のための標準精製飼料 (繁殖用)で ある AIN— 93G (コーンスターチ 400/0 (w/w)、カゼイン 200/0 (w/w)、 aコーンス ターチ 13. 2% (w/w)、スクロース 10% (w/w)、大豆油 7% (w/w)、セノレロース 5% (w/w)、ミネラル混合物 3. 5% (w/w)、ビタミン混合物 1% (w/w)、 L—シス チン 0. 3% (wZw)、ヒドロキノン 0. 0014% (wZw) )で 1週間予備飼育した後、上 記精製飼料に、市販のラタトスクロース含有糖質 (商品名『LS— 90P』、塩水港精糖 株式会社販売、固形物換算で、ラタトスクロース 91. 8% (wZw)含有)を配合して、 ラタトスクロース含量を 5% (w/w)とした試験飼料 (ラタトスクロース含有糖質の質量 分を、コーンスターチ力も減じた)を 1群 5匹のマウスに自由摂食させた。また、対照と して、ラタトスクロースを配合しな 、標準精製飼料 (AIN- 93G)を与えたマウスを用 意した。試験飼料又は対照飼料の自由摂食を開始してから、 1週間、 2週間、 3週間 、 4週間後に、マウス力も新鮮な糞を採取して、抗 IgA抗体を用いる ELIS A法 (マウス IgA ELISA Quantitation Kit, BETHYL社製)で IgA量を測定した。 IgA量は 糞の湿質量当たりのミリグラムで表し、 5匹のマウスの平均値を求めた。その結果を表 1に示す。なお、表中の括弧内のパーセント数値はそれぞれの週における対照との 相対値を示す。
[0019] [表 1]
[0020] 表 1の結果から、対照の精製飼料によって飼育されたマウスは、飼育期間(週齢)が 進むにつれ、糞中の IgA量が減少する現象が確認された。この現象は、マウスに清 潔な精製飼料を与えて飼育したため、経口摂取される抗原量が減少し、マウスの腸
管免疫機能が低下したものと考えられる。一方、ラタトスクロースを含有する精製飼料 もまた、清潔であるものの、これを与えて飼育したマウスでは、その糞中の IgA量が飼 育期間を通じて高かった。したがって、ラタトスクロースは、腸管免疫系を活性化し、 高水準で IgAの分泌量を維持する作用を有していることが判明した。
[0021] <実験 2 :盲腸内容物中の IgA及び IgG量 >
さらに、腸管免疫の増強作用を盲腸内容物中の IgA及び IgG量を測定することによ り調べた。実験 1において、 5% (wZw)ラタトスクロース入りの精製飼料あるいは対照 の精製飼料 (AIN— 93G)で 4週間飼育したマウスを屠殺し、盲腸を摘出した。盲腸 内容物を盲腸から取りだし、その pH、質量、 IgA量及び IgG量を測定した。 IgA量に ついては、抗 IgA抗体を用いる ELIS A法、 IgG量については、抗 IgG抗体を用いる E LISA法(マウス IgG ELISA Quantitation Kit, BETHYL社製)で内容物グ ラム当りの抗体量を測定した。結果を表 2に示す。なお、表中の括弧内のパーセント 数値はそれぞれの週における対照との相対値を示す。
[0022] [表 2]
[0023] 表 2に示すとおり、ラタトスクロースは盲腸内容物の pHを低下させ、内容物の量を著 しく増カロさせたことから、有機酸量を増加させ、腸内環境を改善する作用を有すること が示唆された。また、ラタトスクロースは、 IgG量に影響を与えないで、 IgAの分泌量を 約 10倍近く増カロさせた。表 1及び表 2の結果は、ラタトスクロースが腸管免疫を増強 する作用を有することを示して!/ヽる。
[0024] <実験 3:パイエル板又は腸間膜リンパ節における IgA、 IgG及び各種サイト力インの 産生 >
腸管免疫増強作用がどの免疫担当組織を介してなされているかを、 IgA、 IgG及び 各種サイト力インの産生量を測定することにより調べた。実験 1と同様にして、 6週齢 雌性 BALBZcマウスを、実験 1で用いた標準精製飼料 (AIN— 93G)で 1週間予備
飼育した後、上記精製飼料に、市販のラタトスクロース含有糖質 (商品名『LS— 90P 』、塩水港精糖株式会社販売、固形物換算でラタトスクロース含有 91. 8% (w/w) ) を配合して、ラタトスクロース含量を 2% (w/w)又は 5% (w/w)とした試験飼料 (ラ タトスクロース含有糖質の質量分を、コーンスターチ力も減じた)を 1群 5匹のマウスに 自由摂食させた。また、対照として、ラ外スクロースを配合しない標準精製飼料 (AI N— 93G)を与えたマウスを用意した。試験飼料を与え始めて力も 4週間後に、マウス からパイエル板及び腸管リンパ節をそれぞれ摘出し、ハサミで裁断し、 0. 2% (w/v )コラゲナーゼ水溶液で 37°C、 30分間処理し、セルストレーナ一で濾過して、細胞を 含むろ液を得、これを遠心分離して細胞を回収し、 45% (vZv)パーコール (GEへ ルスサイエンス社販売)溶液中に浮遊させて細胞浮遊液を調製した。これをさら〖こ 75 % (vZv)パーコールに重層して、 1, OOOgで 10分間遠心した。 45% (vZv)バーコ ール層と 75% (vZv)パーコール層との界面辺りに浮遊する細胞を回収し、 10%FC S及び 10mM HEPESを含有する RPMI 1640培地で懸濁し、細胞濃度 1 X 106個 Zmlに調製した。それを 24ウェルマイク口プレートに 1ゥエルに lmlずつ播種し、さら に、 T細胞に対する刺激剤としての 2 gZmlのコンカナパリン A (ConA)又は B細胞 やマクロファージ細胞に対する刺激剤としての 10 μ gZmlのリポ多糖 (LPS)を添カロ し、 5% (vZv)炭酸ガス雰囲気中で 37°Cで 48時間培養した。各ゥエルから培地上清 を回収し、それに含まれる IgA、 IgG、 IFN- y、インターロイキン一 4 (IL— 4)、 IL— 6、インターロイキン— 10 (IL— 10)及び TGF— βの量を、抗マウス IgA抗体、抗マウ ス IgG抗体、抗マウス IFN— γ抗体(ぺプロテック社販売)、抗マウス IL 4抗体(ァ 一ルアンドディー社販売)抗マウス IL 6抗体 (アールアンドディー社販売)、抗マウ ス IL— 10抗体 (アールアンドディー社販売)又は抗マウス TGF— β抗体 (プロメガ社 販売)を用いる ELIS Α法で測定し、 5匹の平均値を求めた。パイエル板細胞につい ての結果を表 3に、腸管リンパ節細胞についての結果を表 4に示す。なお、表中の括 弧内のパーセント数値は対照のマウス力も採取したパイエル板細胞又は腸管リンパ 節細胞において産生された IgA、 IgG、 IFN - y、 IL— 4、 IL— 6、 IL— 10又は TGF β量に対しての相対値を示す。
[0026] [表 4]
[0027] 表 3に示す結果のとおり、ラタトスクロースは、用量依存的にパイエル板細胞力 の I gA及び IgGの産生量を増加させ、加えて、 IL 6や TGF— βなどの IgAの分泌を促 進するサイト力インも産生促進した。この結果は、ラタトスクロースはパイエル板細胞に
対して IgAの分泌促進作用を有することを示している。一方、表 4に示すとおり、腸間 膜リンパ節においては、 IgAや各種サイト力インの産生量の増加は認められな力つた 。以上から、ラタトスクロースによる腸管免疫機能の増強効果は、主にパイエル板細 胞が関与して発揮されるものである考えられる。
[0028] <実験 4 :血清中における抗体産生 >
ラタトスクロースが全身性免疫に関与するかを、抗体の血清レベルを測定することに より調べた。実験 1と同様にして、 6週齢雌性 BALBZcマウスを、実験 1で用いた標 準精製飼料 (AIN— 93G)で 1週間予備飼育した後、上記精製飼料に、市販のラクト スクロース含有糖質 (商品名『乳果オリゴ 700』、株式会社林原商事販売、固形物換 算でラタトスクロース 71. 4% (wZw)含有)を配合して、ラタトスクロース含量を 2% ( w/w)又は 5% (w/w)とした試験飼料 (ラタトスクロース含有糖質の質量分を、コー ンスターチ力も減じた)を 1群 5乃至 7匹のマウスに自由摂食させた。また、対照として 、ラタトスクロースを配合しな 、標準精製飼料 (AIN- 93G)を与えたマウスを用意し た。試験飼料を与え始めてから 10日後に抗原として 20 μ gの卵白アルブミン (OVA) (シグマ社販売、グレード V)及び免疫アジュバントとして 4. 5mgのァラム (登録商標『 ImjectJ,ピアス社製)を腹腔内投与することで抗原感作し、その 15日後に再度同様 に抗原感作した。 2回目の感作から 1、 2又は 3週間後に、マウスの尾静脈力も採血し 、遠心分離により血清を採取し、 OVAに対する IgE量を EIA法で測定した。また、 Ig Glまたは IgG2aについては、 2回目の抗原感作から 2週間後に採取した血清中の抗 体量を測定した。なお、 IgE抗体価及び IgG2a抗体価はキヤプチヤー EIA法により、 I gGl抗体価はインダイレクト EIA法により測定した。標準血清には、抗 OVAマウス血 ft (IgE : 1, 760U/ml, IgGl : 128, OOOU/ml, IgG2a : 7, 040UZml)を使用 し、作成した検量線により検体の各抗体価を算出した。 2回目の抗原感作から 1、 2又 は 3週間後の IgE量を表 5に、 2回目の抗原感作から 2週間後の IgGl又は IgG2a量 を表 6に示す。なお、表中の括弧内のパーセント数値は対照のマウスの血清中の各 抗体濃度に対する相対値を表す。
[0029] [表 5]
抗 OVA-lgE (U/ml)
2% (w/w) 5 (w/w) 対照 ラクトスクロース ラク卜スクロース
270±160 290±77
2回目の感作から 1週間後 310±43
(87%) (94%)
150±35 120±32
2回目の感作から 2週間後 260 ±30
(58%) (46%)
110±62 160±57
2回目の感作から 3週間後 210±38
(52%) (48%)
[0030] [表 6]
[0031] 表 5の結果が示すとおり、 2回目の感作から 1週間後には、ラタトスクロースの摂取の 有無に関係なく多量の抗 OVA— IgEが分泌したが、感作から 2週間後で比較すると 抗 OVA— IgEの血清レベルがラタトスクロース摂取群において有意に低下すること が判明した。また、表 6の結果が示すとおり、 2回目の感作から 2週間後の IgGlおよ び IgG2aの血清レベルについてもラタトスクロース摂取群の方が有意に低下したこと から、ラタトスクロースはァラムアジュバントで免疫した抗原 (OVA)に対する、宿主の 免疫応答を抑制する作用を有しており、抗 OVA— IgEの血清レベルを減少させたも のと推測される。したがって、ラタトスクロースは全身性免疫に対して抑制的に作用し 、アレルギーなどの過剰な免疫応答を抑制する作用を発揮するものと考えられる。
[0032] <実験 5:血清中における抗体産生 (Cryj 1) >
スギ花粉症の治療又は予防にラタトスクロースの摂取が有効力どうかを調べるため に、スギ花粉抗原 Cryj 1により惹起される IgE産生に対する抑制効果を調べた。すな わち、 OVAの代わりに Cryj 1 (商品名『精製スギ花粉アレルゲン Cryj 1』、生化学ェ 業株式会社販売) 20 μ gを投与する以外は実験 4におけると同様の方法により実験
を行い、 2回目の感作から 1週間後又は 2週間後の抗 Cryj l— IgE量を測定した。ま た、同時に、 2回目の感作から 2週間後の抗 Cryj l— IgGlの測定も行った。抗 Cryj l — IgE量及び抗 Cryj 1— IgGlの測定は、固相に「精製スギ花粉抗原 Cryj 1— Biotin 」(生化学工業株式会社販売)を用いる以外は実験 4と同様にして行った。 IgEにつ V、ての結果を表 7に、 IgG 1につ!/、ての結果を表 8に示す。
[0033] [表 7]
[0034] [表 8]
[0035] 表 7の結果力も明らかなように、スギ花粉抗原 Cryj lで 2回目の感作により対照群の マウスの抗 Cryj l— IgE抗体の血清レベルは急激に増加し、 1週間後では 800UZ ml、 2週間後では 1, OOOUZmlを越えるところ、 2% (wZw)ラタトスクロース摂取群 では 44% (1週間後)、さらには 23% (2週間後)にまで抑制された。なお、 5% (wZ w)ラタトスクロース摂取群での抑制効果は、 2% (w/w)ラタトスクロース摂取群よりも 劣る結果であつたが、統計的な有意差は無ぐ誤差の範囲であると考えられた。また 、表 8の結果から明らかなように、ラタトスクロース投与群は抗 Cryj l— IgGl抗体の血 清レベルが低下しており、免疫応答が抑制されていると考えられた。
[0036] <実験 6 :月卑臓におけるサイト力イン産生 >
ラタトスクロースの全身性免疫への影響を調べるために、脾臓細胞におけるサイト力
イン産生能について調べた。実験 4において、 2回目の感作から 2週間後のマウス (ラ タトスクロース投与群及び対照群)力 それぞれ脾臓を摘出し、脾細胞を細胞濃度 1
X 107個/ mlに調製した後、それを 24ゥエルプレートに播種した。 50 μ g/mlの OV Aを添カ卩してから 2日後或いは 4日後に培養上清中の IFN— y、インターロイキン 2 (IL— 2)、 IL—4、インターロイキン 5 (IL— 5)、 IL— 10をそれぞれに対する抗体
(全て BD ファーミンゲン社販売)を用いた常法の EIA法で測定した。結果を表 7に 示す。表中の括弧内のパーセント数値は対照のマウスの脾細胞力 産生された各サ イト力イン濃度に対する相対値を表す。
[0037] [表 9]
(表中、「一」は測定していないことを示す。)
[0038] 表 9に示す結果から、ラタトスクロースは、 OVAにより感作したマウスの脾細胞にお ける IFN— γ、 IL- 2, IL— 4及び IL— 5の産生を抑制したことから、 Thl及び Th2 の両方を抑制する作用を有していることが示唆された。一方、他のサイト力インの産 生は抑制傾向にあるにもかかわらず、 IL 10量のみがやや増加した。この結果は、 ラタトスクロースは、全身性免疫を抑制傾向に誘導すること、及び、この免疫抑制は制 御性 T細胞が関与していることを示している。以上から、ラタトスクロースは、全身性免 疫においては、過度の免疫反応を抑制する作用を有しており、各種アレルギー症及 び自己免疫疾患の予防又は治療に有利に利用できる。
[0039] <実験 7 : OVAにょるIgE誘導抑制>
アレルギー患者へのラタトスクロースの適用を考慮し、既に OVAにより感作され、 O
VAアレルギー状態になっているマウスを作製し、これにラタトスクロースを摂取させる 実験系にお 、て、 OVAに暴露させた際の抗 OVA— IgE抗体の産生抑制効果を調 ベた。すなわち、 6週齢雌性 BALBZcマウス(1群 5匹)を、実験 1で用いた標準精製 飼料 (AIN— 93G)で 1週間予備飼育した後、実験 4と同様〖こ 20 gの OVAと 4. 5m gのァラムを腹腔内投与し、上記標準精製飼料を与えて 2週間飼育した後、 1回目と 同様にして OVAとァラムの 2回目の投与をした。 2週間後、実験 1で使用した 2% (w Zw)又は 5% (w/w)ラタトスクロースが配合された試験飼料を 6週間与え、 IgE抗 体量を測定し、 OVAアレルギー状態になっていることを確認した後、 1回目と 2回目 と同様にして OVAとァラムを投与した。試験飼料で 2週間飼育した後、血液を採取し 、実験 4と同様の方法で抗 OVA— IgE、抗 OVA—IgGl及び抗 OVA—IgG2aの濃 度を測定した。結果を表 10に示す。
[0040] [表 10]
[0041] 表 10の結果から明らかなとおり、 3回目の OVA感作により、抗 OVA— IgE抗体の 血清レベルは、約 lOOUZmlから約 2000UZmlに急激に増加した。一方、ラタトス クロース投与群は、 62%乃至 72%に抑制され、ラタトスクロースはアレルギー症状を 緩和する作用を有していると考えられた。また、抗 OVA—IgGl及び抗 OVA—IgG2 aについては、 5% (wZw)ラタトスクロース投与群において約半分に抑制されており 、免疫応答が抑制されていることが示唆された。この結果は、ラタトスクロースをあるァ レルゲンに対してアレルギー状態にあるアレルギー症患者に投与すると、当該アレル
ゲンに再度暴露された際の IgE抗体の産生を抑制し、アレルギー症状を緩和する作 用を有することを示して!/、る。
<実験 8:スギ ·ヒノキ花粉症の臨床症状の抑制 >
実験 4乃至 7において、ラタトスクロースの摂取によりアレルギーの発症に関与する I gEやサイト力イン類の産生が抑制されることが確認されたので、ラタトスクロース摂取 によるスギ'ヒノキ花粉症の臨床症状に対する抑制効果を調べる試験を実施した。す なわち、過去 2乃至 3年間において、スギ花粉'ヒノキ花粉の飛散時期(各年の 2乃至 5月)に、鼻や眼などにアレルギー症状があつたと自己判断したボランティアを被験者 として募集した。応募のあったボランティアに対して、花粉症診断のガイドライン (鼻ァ レルギ一診療ガイドライン作成委員会作成、『鼻アレルギー診療ガイドライン 一通年 性鼻炎と花粉症 2005年度版』、株式会社ライフ,サイエンス発行、第 20乃至 24 頁(2006年)参照)等を参考にして、過去 2乃至 3年間の鼻及び眼の臨床症状につ いて問診を行い、その結果に基づいて、スギ'ヒノキ花粉症と考えられる 40名を被験 者として選定した。被験者の臨床症状をスコア化して群間で差がでな 、ように 2群に 分け、無作為にラタトスクロース摂取群 (ラタトスクロースとして 3gを毎日摂取)と対照 摂取群に割り付けた。被験物質として、予め、ラタトスクロース含有水飴 (商品名『乳 果オリゴ 700』、固形分 76% (wZw) )、株式会社林原商事販売、固形物換算で、ラ タトスクロース 71. 5% (wZw)、スクロース 13. 7% (wZw)、ラタトース 7. 5% (w/ w)、その他の糖 7. 3% (wZw)含有)を、アルミピロ一の容器にラタトスクロースが 3g となるように小分 (ラタトスクロース含有水飴として約 6g)して、ラタトスクロース摂取群と して割り付けた被験者に渡した。同様に、砂糖混合異性化液糖 (商品名『コーンシュ ガー A— 33』、三和澱粉工業株式会社販売、固形分約 75% (wZw)、固形物換算 で、スクロース 33. 5% (wZw)、グルコース 33. 7% (wZw)、フラタトース 29. 2% ( wZw)含有)を、 1容器当たりの固形分量がラ外スクロース含有水飴を小分けした場 合と同一となるように小分 (砂糖混合異性ィ匕液糖として約 6g)して、対照摂取群として 割り付けた被験者に渡した。スギ花粉が飛散しはじめる前の 2007年 1月 16日に、被 験物質の摂取を開始 (0週)し、以後、毎日 1回 18週間、任意の時間に、小分けした 容器 1個分の被験物質を摂取させた。被験物質の摂取方法は任意とし、小分けした
容器力もそのまま摂取しても、他の飲食品と混合して摂取しても可とした。試験は二 重盲検法により実施し、被験者に対しては、被験物質を摂取する以外に制限は行わ ず、抗アレルギー剤を含む薬物の使用も自由とした。被験物質の摂取によるアレルギ 一症状抑制の評価のために、被験物質摂取開始の 1週間前 (アンケートは被験物質 摂取開始日(0週)に実施)から摂取終了の 2週間後まで、 21週間に渡り、毎週 1回、 その週における鼻及び眼の臨床症状、並びに、日常生活の支障度に関するアンケ ートを行った。ラタトスクロース摂取群と対照摂取群のそれぞれのアンケート結果を基 に、その摂取による効果を、試験期間中に使用した薬物 (抗アレルギー剤等)による アレルギー症状抑制効果も勘案してスコア化し、鼻、眼及び日常生活の支障度の経 時変化を、各々図 1乃至 3に示す。なお、インターネットに掲載された花粉の飛散情 報等 (例えば、環境省花粉情報サイト参照)から、本試験期間における試験実施地域 (岡山県南部)でのスギ花粉の飛散開始日は 2007年 2月 9日、飛散のピークは 3月 初旬、飛散の終了は 3月末、ヒノキ花粉の飛散開始日は 2007年 3月 27日、飛散の 終了は 4月末と判断したので、本試験における被験物質摂取は、スギ花粉飛散の約 3週前からとなった。また、アンケート結果のスコア化は、下記方法により行い、試験 期間中の被験者の健康状態を合わせてモニターし、風邪などの花粉症以外の原因 により、花粉症と類似の臨床症状や日常生活に支障が発生したと判断した期間中は 、当該被験者を本試験のスコア集計力 除外した。また、試験期間中に、試験地域 以外の、花粉飛散量の大きく異なる複数の地域に滞在したラタトスクロース摂取群の 被験者 1名は、臨床症状や日常生活の支障度のスコアが滞在地の違いにより大きく 変化したため、スコアの集計から除外した。
<アンケート結果に基づく鼻及び眼の臨床症状のスコア化方法 >
日本アレルギー学会提唱の方法 (大久保公裕ら、『アレルギーの領域』、第 5卷、第 11号、第 1491乃至 1499頁(1998年)参照)に従い、鼻の臨床症状については表 1 1に示す判定基準に基づきアンケート結果を解析し、表 12に示す基準によりスコア化 した。また、眼の臨床症状については、表 13に示す判定基準に基づきアンケート結 果を解析し、表 14に示す基準によりスコア化した。
<試験期間中に使用した薬物のスコア化方法 >
アンケート結果には、試験期間中に異なる薬物を使用して 、る被験者のアレルギー 症状が含まれているので、その薬物によるアレルギー症状の抑制効果を反映させて 比較するために、個々の薬物を、 日本アレルギー学会提唱の方法 (Y. Ishida、『Bio sci. Biotechnol. Biochem.』、第 69卷、第 9号、第 1652乃至 1660頁(2005年) 及び鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会作成、『鼻アレルギー診療ガイドライ ン —通年性鼻炎と花粉症— 2005年度版』、株式会社ライフ ·サイエンス発行、第 24乃至 27頁(2006年)参照)に従い、表 15に示す基準によりスコア化した。
<薬物によるアレルギー症状抑制効果を勘案した臨床症状のスコア化方法 > 薬物によるアレルギー症状抑制効果を勘案した臨床症状のスコア化は、鼻又は眼 の臨床症状のスコアと薬物のスコアとを合計したスコアとした。
<日常生活の支障度のスコア化方法 >
鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会作成、『鼻アレルギー診療ガイドライン —通年性鼻炎と花粉症— 2005年度版』、株式会社ライフ,サイエンス発行、第 24 乃至 27頁 (2006年)参照)に従 、、仕事、勉学、家事、睡眠、外出などの日常生活 を営む上での支障の程度を、表 16に示す基準によりスコア化した。
[0044] [表 11]
[0045] [表 12]
※くしゃみか鼻汁の強い方を採用する
[0046] [表 13]
[0047] [表 14]
※眼のかゆみか涙の強い方を採用する
※仕事、 勉学、 家事、 睡眠、 外出などへの支障
図 1乃至 3の結果が示すとおり、対照摂取群では、被験物質摂取開始 4週から、経 時的に鼻及び眼の臨床症状、並びに、日常生活の支障度のスコアが上昇し、鼻の臨 床症状のスコアは被験物質摂取開始 8週をピークに 11週まで下降後、 15週までほ ぼ同じスコアで推移し、その後さらに降下した。眼の臨床症状のスコアは被験物質摂 取開始 7週をピークに下降した。また、日常生活の支障度のスコアは被験物質摂取
開始 8週をピークに 12週まで下降後、 15週までほぼ同じスコアで推移し、その後さら に降下した。これに対して、ラタトスクロース摂取群では、これらのスコア力 何れも、 被験物質摂取開始 5週から経時的に上昇したものの、対照摂取群に較べて、臨床症 状及び日常生活の支障の発生が 1週間遅延した。鼻の臨床症状のスコアは、被験物 質摂取開始 7週をピーク 9週まで下降後、 17週までほぼ同じスコアで推移し、その後 さらに降下した。眼の臨床症状のスコアは、被験物質摂取開始 8週をピークに下降し た。また、 日常生活の支障度のスコアは被験物質摂取開始 7週をピークに 10週まで 下降後、 17週までほぼ同じスコアで推移し、その後さらに下降した。また、対照摂取 群とラタトスクロース摂取群の各スコアの程度を比較すると、鼻の臨床症状のスコアは 、被験物質摂取開始 3週までは、ラ外スクロース摂取群と対照摂取群とで差はないも のの、被験物質摂取開始 4乃至 10週は、ラタトスクロース摂取群の方が対照摂取群 よりも低く推移し、その後は両群に差は認められな力つた。眼の臨床症状及び日常生 活の支障度のスコアは、ほぼ全試験期間を通して、ラタトスクロース摂取群の方が対 照摂取群よりも低く推移した。
この結果は、対照摂取群ではスギ花粉の飛散開始直後 (被験物質摂取開始 4週) から花粉症の症状が発現し、砂糖混合異性化液糖の摂取は、花粉症の症状に対す る抑制効果のないことを示している。これに対して、ラタトスクロース摂取群 (ラタトスク ロース 3gを毎日摂取)では、対照摂取群よりも、スギ花粉飛散開始後のアレルギー症 状の発現時期が遅れると共に、スギ花粉の飛散終了とほぼ同時に始まったヒノキ花 粉の飛散時期を含めて、発現した臨床症状や日常生活の支障度のスコアが低く維 持されており、ラタトスクロースの経口摂取は、スギ'ヒノキ花粉などによる花粉症の臨 床症状を緩和し、日常生活の支障を改善するために利用できることを示している。な お、試験の後半に、前半と較べて両群の各スコアの差が減少乃至無くなっているの は、ヒノキ花粉の飛散量が減少し、鼻や目の臨床症状及び日常生活の支障が、前半 に較べて全般的に低くなつたためと考えられる。また、本試験における被験者の各ス コアは、スギ花粉の飛散開始 (被験物質摂取開始 4週)、ピーク (被験物質摂取開始 7週)、終了 (被験物質摂取開始 11週)、ヒノキ花粉の飛散開始 (被験物質摂取開始 11週)、及び、終了 (被験物質摂取開始 15週)時期と相関して推移しているので、ス
ギ'ヒノキ花粉の飛散量と、アレルギー症状の程度や日常生活の支障度との関係を 的確に反映して 、ると判断した。
[0052] 以下、実施例で本発明の詳細を示すが、本発明は何ら実施例に限定されるもので はない。
実施例 1
[0053] <甘味料 >
ラ外スクロース含有糖質 (商品名『LS— 90P』、塩水港精糖株式会社販売、固形 物換算でラタトスクロース約 90% (wZw)含有) 1質量部に、 (X—ダルコシルステビォ シド (商品名『ひ G—スイート』、東洋精糖株式会社販売) 0. 05質量部を均一に混合 し、顆粒成形機にカゝけて、顆粒状甘味料を得た。本品は、低カロリー甘味料として、 カロリー摂取を制限している肥満者、糖尿病者などのための低カロリー飲食物などに 対する甘味付けに好適であり、経口摂取により、免疫機能を調節できるので、健康を 維持'増進する健康食品としても有用である。
実施例 2
[0054] く健康食品〉
ガムベース 2質量部を柔ら力べなる程度に加熱融解し、これにマルトース粉末 2質量 部、ショ糖 (砂糖)粉末 4質量部及び実施例 1で得た甘味料 1質量部を加え、更に適 量のハツ力香料と着色料とを混合した後、常法にしたがってロールにより練り合わせ、 成形することによってチューインガムを得た。本品は、風味良好なチューインガムであ り、経口摂取により免疫機能を調節できるので、健康を維持'増進する健康食品とし て有用である。
実施例 3
[0055] <経口流動健康食 >
下記の成分を配合し、経口流動食を得た。
ラタトスクロース含有糖質 (商品名『LS— 90P』、塩水港精糖株式会社販売、固形物 換算でラタトスクロース約 90% (w/w)含有)
2質量部
脱脂粉乳 43質量部
全粉乳
水飴
グルコース
ビタミン A
ビタミン D
塩酸チアミン
リボフラビン
塩酸ピリドキシン
シァノコバラミン
酒石酸水素コリン
ニコチン酸アミド
パントテン酸カルシウム
ァスコノレビン酸
酢酸トコフエロール
硫酸鉄
アラビアゴム
本品を適量の水に溶解し、経口摂取すれば、通常の食事の摂取ができない患者の 栄養補給が可能な上に、免疫機能が調節され、患者の良好な回復が期待できる。 実施例 4
く健康食品〉
下記の成分を均一に混合した後、直径 6mmの杵を装着した打錠機により打錠して 、 1錠が約 200mgの錠剤を得た。本品は風味良好であり、摂取すれば免疫機能を調 節するので、健康を維持、増進する健康食品として有用である。
ラタトスクロース含有糖質 (商品名『乳果オリゴ 550』、株式会社林原商事販売、固形 物換算でラタトスクロース 55% (w/w)以上含有)
40質量部
天然珊瑚粉末 20質量部
乳酸カルシウム 10質量部
粉末ヨーグルト 10質量部
グァーガム 12質量部
L ァスコルビン酸 2—ダルコシド (商品名『AA2G』、株式会社林原商事販売)
3質量部
糖転移ヘスペリジン (商品名『 α Gヘスペリジン』、株式会社林原商事販売)
0. 5質量部
実施例 5
[0057] く健康食品〉
下記の材料を配合し、常法にしたがってチーズクラッカーを製造した。 小麦粉 100質量部
油脂 9質量部
麦芽エキス 1. 3質量部
重曹 0. 6質量部
チーズパウダー 13質量部
ラタトスクロース含有糖質 (商品名『乳果オリゴ 700』、株式会社林原商事販売、固形 物換算でラタトスクロース約 70% (w/w)含有)
2質量部
砂糖 2質量部
食塩 1質量部
炭酸アンモニゥム 0. 6質量部
スパイス 適量
水 33質量部
本品は、風味良好であり、経口摂取すれば免疫機能を調節するので、健康を維持 、増進する健康食品として有用である。
実施例 6
[0058] く健康食品〉
カカオペースト 40質量部、カカオバター 10質量部、砂糖 20質量部、ラタトスクロー
ス含有糖質 (商品名『乳果オリゴ 700』、株式会社林原商事販売、固形物換算でラタ トスクロース約 70% (wZw)含有) 30質量部を混合してレフアイナ一に通して粒度を 下げた後、コンチェに入れて 50°Cで 2日間練り上げた。この間に、レシチン 0. 5質量 部を加え十分に混和分散させた。次いで、温度調節機で 31°Cに調節し、バターの固 まる直前に型に流し込み、振動機でァヮ抜きを行い、 10°Cの冷却トンネルを 20分間 くぐらせて固化させた。これを型抜きして包装しチョコレートを得た。本品は、吸湿性 がなぐ色、光沢共によぐ内部組織も良好で、口内でなめらかに溶け、上品な甘味と まろやかな風味を有するチョコレートであり、経口摂取により免疫機能を調節できるの で、健康を維持'増進する健康食品として有用である。
実施例 7
[0059] く健康食品〉
ヨーグルト 100質量部、ラタトスクロース含有糖質 (商品名『乳果オリゴ 550』、株式 会社林原商事販売、固形物換算でラ外スクロース 55% (w/w)以上含有) 50質量 部、トレハロース 10質量部、ヨーグルトフレーバー 0. 25質量部及びレモンエッセンス 0. 1質量部に水を加えて全体を 1, 000質量部とする配合で、常法に従って、ョーグ ルト飲料を製造した。本品は、風味が豊かで、かつ、腸内の菌叢を整える整腸機能に 優れたヨーグルトであり、免疫機能を調節できるので、健康を維持'増進する健康食 品として有用である。
実施例 8
[0060] く健康食品〉
ラ外スクロース含有糖質粉末 (商品名『乳果オリゴ LS - 90P』、塩水港精糖株式会 社販売、固形物換算でラタトスクロース約 90% (wZw)含有) 70質量部、エリスリトー ル 10質量部、ローヤルゼリー抽出物 (株式会社林原生物化学研究所販売、商品名「 林原ローヤルゼリー X」 ) 20質量部、コェンザィム Q 10質量部、ァスコルビン酸 2—
10
ダルコシド (株式会社林原商事、商品名「ァスコフレッシュ」) 10質量部、ビタミン B 1 質量部、ビタミン B 1質量部、ビタミン B 1質量部、オレンジパウダー 0. 5質量部、レ
2 6
モンエッセンス 0. 1質量部を混合し、乾燥後、整粒して、 2gずつ分包して健康食品 を製造した。本品は、風味が豊かで、かつ、腸内の菌叢を整える整腸機能に優れ、
且つ、免疫機能を調節できるので、健康を維持'増進する健康食品として有用である 。また、本品は免疫調節作用があることを標榜して、免疫調節剤として販売することも できる。
実施例 9
[0061] <健康食品 >
ラ外スクロース含有糖質粉末 (商品名『乳果オリゴ LS - 90P』、塩水港精糖株式会 社販売、固形物換算でラタトスクロース 90% (wZw)含有) 50質量部、バラ花びら抽 出物 30質量部、ローヤルゼリー抽出物 (株式会社林原生物化学研究所販売、商品 名「林原ローヤルゼリー χ」 3質量部、黄杞葉抽出物 3質量部、甜茶抽出物 3質量部、 含水結晶 OC , OC—トレハロース (株式会社林原商事販売、商品名「トレハ」 ) 7質量部 、乳化剤 (ショ糖脂肪酸エステル) 3質量部、粗製海水塩ィ匕マグネシウム 1質量部を混 合し、乾燥後、整粒して、 2gずつ分包して健康食品を製造した。本品は、風味が豊 かで、かつ、腸内の菌叢を整える整腸機能に優れ、且つ、免疫機能を調節できるの で、健康を維持'増進する健康食品として有用である。また、本品は免疫調節作用が あることを標榜して、免疫調節剤として販売することもできる。
実施例 10
[0062] <産卵鶏用飼料 >
下記成分の市販の産卵鶏用飼料に、ラタトスクロース含有糖質 (商品名『乳果オリゴ 550』、株式会社林原商事販売、固形物換算でラタトスクロース 55% (wZw)以上含 有)を、飼料中のラタトスクロース含量が 0. 5% (w/w)になるように混合して、ラタトス クロース含有鶏用飼料を製造した。
トウモロコシ 54. 8質量部
大豆粕 12. 6質量部
菜種粕 3. 2質量部
マイ口 7. 0質量部
炭酸カルシウム 8. 5質量部
グルテンミール 3. 5質量部
グルテンフィード 2. 0質量部
動物性油脂、食塩、ビタミン、ミネラル類など 5. 9質量部 本品は、 -ヮトリ用の飼料として有用であり、特に、高温、低温などの環境ストレスに より免疫力の低下した-ヮトリに対して腸管免疫を増強させるので、夏期、冬期を問 わず、ウィルスや細菌等の感染症を予防し、 -ヮトリの健康を維持 ·増進することがで きる。したがって、 -ヮトリの体力消耗を防止し、産卵率の低下を防止することができ る。
産業上の利用可能性
叙述のとおり、本発明の免疫調節剤は、副作用がなぐ 日常的に経口摂取すること によって、免疫機能を調節するので、食中毒などの感染症、アレルギー症、自己免 疫疾患などを予防又は治療することができる。また、乳酸菌やビフィズス菌などの有 用な腸内細菌を増加させ、腸内環境を改善するので、健康の維持、増進に適してい る。