明 細 書
タバコ刻およびタバコ処理方法
技術分野
[0001] 本発明は、タバコ刻およびタバコ処理方法に関する。
背景技術
[0002] 乾燥葉タバコやこれを裁刻して得られるタバコ刻中には、 N'— -トロソノルニコチン
(NNN) N -トロソアナタビン(NAT) N -トロソアナバシン(NAB) 4一(N —ニトロソメチルァミノ)— 1— (3—ピリジル)—1—ブタノン (NNK)により代表される タバコ特異的-トロソァミン(以下「TSNA」と 、う)類やポリフエノール類が含まれて ヽ る。これら TSNA類やポリフエノール類は、除去することが望ましいとされている物質 である。
[0003] タバコ刻に含まれる TSNA類やポリフエノール類を除去する試みがこれまで多くな されている。例えば、特表 2003— 526345には、タバコに含まれる-トロソァミン類を 、超臨界二酸化炭素を用いて除去する方法が記載されている。また、特表 2002— 5 20005には、タバコ材料をフエノール酸化酵素を用いて処理することにより、タバコ 材料中のフエノール系化合物を除去する方法が記載されている。
[0004] し力しな力ら、特表 2003— 526345および特表 2002— 520005の方法 ίま、 ヽず れも、 TSNA類およびポリフエノール類の双方を同時に低減させ得るものではな 、。 また、特表 2003— 526345の方法は、高圧下での操作を要するために特殊な設備 が必要とされる。特表 2002— 520005の方法は、酵素反応を用いているため、処理 中の温度を酵素活性が保たれる温度に制御する必要があり、また、処理に多くのェ 程を必要としている。
発明の開示
[0005] 本発明は、 TSNA類およびポリフエノール類の双方を同時に低減させたタバコ刻、 および特殊な設備を必要とせず、単純な処理方法によりタバコ刻中の TSNA類およ びポリフエノール類の双方を同時に低減させるタバコ処理方法を提供することを目的 とする。
[0006] 上記目的を解決するために、本発明の 1つの側面によれば、ヨウ素酸金属塩で処 理したことを特徴とするタバコ刻が提供される。
[0007] また、本発明の別の側面によれば、ヨウ素酸金属塩をタバコ刻に添加して、タバコ 刻中の TSNA類およびポリフエノール類を分解により低減させることを特徴とするタ バコ処理方法が提供される。 発明を実施するための最良の形態
[0008] 以下、本発明をさらに詳しく説明する。
[0009] 本発明のタバコ刻は、ヨウ素酸金属塩で処理される。また、本発明のタバコ処理方 法は、ヨウ素酸金属塩をタバコ刻に添カ卩して、タバコ刻中の TSNA類およびポリフエ ノール類を分解により低減させることを包含する。
[0010] ヨウ素酸金属塩としては、ヨウ素酸アルカリ金属塩が好ましぐなかでも、ヨウ素酸ナ トリウム、ヨウ素酸リチウムまたはヨウ素酸カリウムが好まし 、。
[0011] タバコ刻に添加するヨウ素酸金属塩の量は、タバコ刻の重量に対して 0. 5重量%
〜 10重量%であることが好ましい。
[0012] ヨウ素酸金属塩は、水溶液の形態で添加されることが好ましい。タバコ刻に均一に ヨウ素酸金属塩を添加するために、例えば、ヨウ素酸金属塩の水溶液をタバコ刻に 噴霧添加することができる。
[0013] タバコ刻中の TSNA類およびポリフエノール類を十分に分解するために、タバコ刻 にヨウ素酸金属塩を添加した後、例えば 20°C〜30°Cで、 3時間以上放置することが 好ましい。また、この放置時間は 2日以下で充分である。
[0014] 本発明によるタバコ処理方法により、タバコ刻中の NNN、 NAT, NAB、 NNKによ り代表される TSNA類、およびクロロゲン酸、ルチン、スコポレチンにより代表されるポ リフエノール類の双方を同時に低減させることができる。
[0015] 強力な酸化剤であるヨウ素酸金属塩は、タバコ刻中の TSNA類およびポリフエノー ル類を分解し、従って、 TSNA類およびポリフエノール類の双方を有意に低減させる
。この TSNA類とポリフエノール類の双方に対する分解作用は、ハロゲン酸金属塩の 中でもヨウ素酸金属塩に特有の作用であって、塩素酸金属塩や臭素酸金属塩のよう な他のハロゲン酸塩では達成し得な!/、ものである。塩素酸金属塩や臭素酸金属塩を
用いた場合には、 TSNA類がかえって増加する傾向にあり、ポリフエノール類も有意 には低減しない。
[0016] 本発明のヨウ素酸金属塩で処理されたタバコ刻は、例えば、シガレットに用いられる 。シガレットは、本発明のタバコ刻を巻紙で巻き上げて作製することができる。このシ ガレットの一端に、フィルタープラグをチップペーパーにより接続することができる。
[0017] 一般に、シガレットを燃焼させると、タバコ刻中の TSNA類およびポリフエノール類 の煙中移行や熱分解等により、生じるシガレット煙中に TSNA類およびフエノール類 が含まれることが報告されている(Hoffinann D., Dong M., Hecht S.S., J. Natl. Cance r Inst., 58, 1841—1844, 1977、および Carmella S., Hecht S.S., Hoffmann D., J. Agri. Food Chem. Supporting Information, 32, 267-273, 1984)。本発明によれば、タバコ 刻中の TSNA類およびポリフエノール類が分解により低減するために、このタバコ刻 を用いて作製したシガレットの煙中の TSNA類、並びにハイドロキノンおよびカテコ ールにより代表されるフエノール類も低減することが確認できた。
[0018] 以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではな い。
[0019] 以下の例で使用したタバコ刻中成分分析法およびシガレット煙中成分分析法は次 の通りである。
[0020] A:タバコ刻中成分分析法
タバコ刻中のポリフエノール類および TSNA類の分析を以下の通り行った。なお、 分析にあたり、タバコ刻からの成分抽出効率を上げるために、タバコ刻を研究室用ミ ルで粉砕し、粉末状サンプルを調製して分析に使用した。
[0021] A1.ポリフエノール類
タバコ粉末 lgにメタノール一水混合液(体積比 80 : 20) 50mLを加え、ソックスレー 抽出器 (ァクタック社製)により 130°Cで 30分間抽出操作を行った。抽出液を 0. 45 μ mPTFEフィルター、続いて 0. 20 μ mPTFEフィルターを用いてろ過した後、ろ液 を高速液体クロマトグラフで分析し、ポリフエノール類を定量した。
[0022] A2. TSNA類
タノくコ粉末 250mgに、 NNN、 NNK各々の重水素置換体をァセトニトリルに溶解さ
せた分析用内部標準液 100 /z Lを添加した後、 0. 1M酢酸アンモ-ゥム水溶液を加 えた。これをアルミホイルで遮光し、 30分間振とう抽出した。抽出液を 0. 45 /z mPTF Eフィルターを用いてろ過し、ろ液を高速液体クロマトグラフ—タンデム型質量分析計 (クロマトグラフ:アジレント社製、質量分析計:アプライドバイオ社製)で分析し、 TSN A類を定量した。
[0023] B:シガレット煙中成分分析法
シガレット煙中、タール、ニコチン、フエノール類の定量は、 Health Canadaの煙中 成分分析法に準拠した方法を用いて行った。 TSNA類の定量は、 Karl A. Wagner 等(55th TSRC #57, 2001)の分析法を応用して行った。
[0024] B1.タールおよびニコチン
シガレット 2本の煙をガラス繊維フィルターを用いて捕集した。フィルターの重量変 化測定力もシガレット 1本当たりの粗タール量を算出した。この粗タールを含んだフィ ルターを、分析用内部標準としてキノリンとエタノールを含んだイソプロパノール 10m Lを用いる 20分間の振とう抽出に供した。得られた抽出液をガスクロマトグラフ FIDお よびガスクロマトグラフ TCD (アジレント社製)で分析し、ニコチンおよび水を定量した 。予め測定した粗タール重量から、ニコチンおよび水の重量を差し引き、タール値を 算出した。
[0025] B2.フ ノール類
シガレット 2本の煙をガラス繊維フィルターを用いて捕集した。フィルターの重量変 化測定力もシガレット 1本当たりの粗タール量を算出した。この粗タールを含むフィル ターを 1%酢酸水溶液 (粗タール lmgに対して溶媒 lmlの割合)を用いる 30分間の 振とう抽出に供した後、得られた抽出液を 0. 45 /z mPTFEフィルターでろ過した。ろ 液を 1%酢酸水溶液で 5倍に希釈し、この希釈サンプルを高速液体クロマトグラフ(ァ ジレント社製)で分析し、各フエノール類を定量した。
[0026] B3. TSNA類
シガレット 3本の煙をガラス繊維フィルターを用いて捕集した。粗タールを含むフィ ルターを、 0. 1M酢酸アンモ-ゥム水溶液を用いる 30分間の振とう抽出に供した後、 得られた抽出液を 0. 45 mPTFEフィルターでろ過した。ろ液を高速液体クロマトグ
ラフ タンデム型質量分析計 (クロマトグラフ:アジレント社製、質量分析計:アプライ ドバイオ社製)で分析し、各 TSNA類を定量した。
実施例 1〜5
黄色タバコとバーレ一タバコを重量で 1: 1の割合で混合したタバコ刻 60gに、水 24 〜48mLに溶解させた、タバコ刻重量に対して 0. 5重量%〜10重量%のヨウ素酸金 属塩 (表 1参照)を噴霧添加した後、温度 22°C、相対湿度 60%の条件で 2日以上放 置して対象のタバコ刻サンプルとした。このサンプルを、上記したタバコ刻中成分分 析法を用いて分析し、タバコ刻 lg中のポリフエノール類および TSNA類を定量した。 各成分分析は 3回繰り返して行って各成分量の平均値を算出し、この平均値をタパ コ刻 lg中の成分値とした。また、各成分値について、 t検定を用いて、比較例 1の成 分値に対する統計的有意差を検定した。結果を表 1に示す。
[表 1]
: タバコ刻み 1 g中成分値
: 検定で有意差あり
W B : ゥエツ卜ベース
D :検出限界以下
[0028] 比較例 1
ヨウ素酸金属塩の水溶液の代わりに、水 24mlのみを噴霧添加した以外は、実施例 1〜5と同様の方法および分析を行って、タバコ刻中成分値を求めた。結果を表 1に 併記する。
[0029] 比較例 2〜3
ヨウ素酸金属塩の代わりに、タバコ刻重量に対して 3. 16重量%の塩素酸金属塩ま たは 4. 48重量%の臭素酸金属塩を用いたこと以外は、実施例 1〜5と同様の方法 および分析を行って、タバコ刻 lg中の成分値を求め、統計的有意差を検定した。結 果を表 1に併記する。
[0030] 表 1に示す通り、実施例 1〜5において、タバコ刻へのヨウ素酸塩添加により、タバコ 刻中のポリフエノール類は検出限界以下にまで低減することがわ力つた。また、タバコ 刻中の TSNA類も低減することがわ力つた。比較例 2〜3の結果力もわ力るように、酸 ィ匕剤としてヨウ素酸塩以外のハロゲン酸塩を用いた場合には、ポリフエノール類の低 減は観察されな力つた。
[0031] シガレット
実施例 1〜5、比較例 1〜3で調製したタバコ刻をそれぞれ用いて、小型紙卷タバコ 巻き上げ器(RIZLA UK Ltd.)により、長さ 59mm、卷周 25mmの単卷シガレットを 作製した。この単卷シガレットに 25mmの長さのチップペーパー付フィルターを接続 し、フィルタートウをピンセットで除いてシガレットサンプルを調製した。なお、シガレツ ト 1本当たりのタバコ刻充填量 (mgZcig)は、加えたハロゲン酸塩の添加量(重量% )に応じて、以下の計算式に従い決定した。
[数 1]
シガレツト 1本当たりのたばこ刻充填量 [mg/cig. ]
100+ハロゲン酸塩の添加量(重量%)
= 650 X
100
[0032] すなわち、 10重量%のハロゲン酸塩を添カ卩した場合、シガレット 1本当たり 715mg のタバコ刻を充填し、ハロゲン酸塩を添カ卩しない場合は、シガレット 1本当たり 650mg
のタバコ刻を充填することとなる。シガレット 1本当たりの各タバコ刻充填量を、下記表 2に示す。
[0033] 作製したシガレットサンプルを、 ISOで規定される標準喫煙条件に従って燃焼させ た。すなわち、自動喫煙器で、喫煙容量: 1服について 35ml、喫煙時間: 1服につき 2秒間、喫煙頻度: 1分間に 1服、吸殻の長さ: 35nm (チップペーパーを含む)の条 件で喫煙させた。
[0034] 燃焼させたシガレットサンプルの煙を、上記したシガレット煙中成分分析法を用いて 分析した。各成分分析は 3回繰り返して行い、シガレット 1本当たりの各成分量平均 値を算出し、この平均値をシガレット 1本当たりのシガレット煙中成分値とした。また、 各成分値について、 t検定を用いて、比較例 1の添加剤無添加のタバコ刻を充填した シガレットの成分値に対する統計的有意差を検定した。結果を表 2に示す。
[表 2]
表 2 : シガレット 1本当たりの刻み充填量およびタバコ煙中成分値
*: t検定で有意差ぁリ
[0035] 表 2に示す通り、ヨウ素酸金属塩で処理したタバコ刻を充填したシガレットにおいて 、比較例 1のタバコ刻を充填したシガレットと比べて、シガレット煙中の殆どのフエノー ル類および TSNA類力 統計上 95%以上の有意差をもって低減した。特に TSNA 類のうち、 NNKは、最大で約 50%低減した。ヨウ素酸金属塩以外のハロゲン酸金属 塩で処理したタバコ刻を充填したシガレットでは、比較例 1のタバコ刻を充填したシガ レット煙中成分と比べて、 TSNA類は増加する傾向にあり、フエノール類も有意には 低減しなカゝつた。
[0036] 本発明のさらなる利益及び変形は、当業者には容易である。それゆえ、本発明は、 そのより広い側面において、ここに記載された特定の記載や代表的な態様に限定さ れるべきではない。したがって、添付の請求の範囲及びその均等物によって規定さ れる本発明の包括的概念の真意又は範囲力 逸脱しない範囲内で、様々な変形が 可能である。