明 細書 新規な味覚異常検査法 .技術分野
本発明は、 呈味性物質反応性組成物 (味覚受容体) の発現量を指標に用いる味 覚異常検査方法に関する。 また本発明は、 味覚受容体を増幅するためのプライマ 一及び当該プライマーを含む味覚異常検查用のキットに関する。 背景技術
味覚は、 生活上重要な感覚である。 そのため、 味覚の異常は、 患者の精神に強 いストレスを与える。 しかし、 味覚は、 それを感じる本人にしか認識できない主 観的なものであるため、 その病態を客観的にとらえることは難しく、 現状では味 覚異常に対して有効な治療が施されているとは言い難い。 さらに、 味覚障害はヒ トの生死に直接結びつくものではないため、 研究者の興味の対象になることが多 くない。 これまでに、 味覚異常の検查は大きく分けて 2種類の方法で行われてい る。 1つは、 電気味覚検査と呼ばれるものであり、 舌に弱い電流を流し、 味に似 た電気刺激を与えたときの感じ方の程度で味覚障害を判定するという方法である。 し力 し、 この方法は、 甘味、 苦みといったそれぞれの味質についての異常を検出 することは困難である。 もう 1つは、 濾紙ディスク法と呼ばれる方法である。 濾紙ディスク法では、 種々の濃度の呈味物質をしみこませた濾紙を舌の各所に乗 せて、 被験者に味の有無を聴取する方法がとられており、 甘味、 塩味、 酸味、 苦 みといつた 4基本味の感じ方の程度や正しさを検出することが可能である。 しか し、 この検査を理解できる年齢や知識がないとよレ、結果を得ることができないこ とが問題である。 さらに味を感じても.どのように表現すればよいか分からないと きなども、 また同様に問題である。 このことから乳幼児を対象とする場合、 ある いは高齢で耳に障害がある患者を対象とする場合は、 このような検査はほとんど 意味をなさない。 ,
また、 上記の方法を用いると、 味覚の異常の有無を検出することが可能である 力 味覚異常の原因を明らかにすることはできない。
ところで、 哺乳動物の味覚は、 甘味、 苦味、 旨味、 酸味及ぴ塩味の 5つに分類 されると考えられている。 そして、 それぞれの味質は異なる情報伝達系を介する と考えられており、 甘味、 苦味、 旨味は Gタンパク質共役型受容体 (G protein-coupled receptors, GPCR)が関与し、塩味、酸味はイオンチャネルが深く 関与すると言われているが、 受容体と呈味物質との関連は未だに明らカにされて いない。 外界からの化学刺激に対して、 これらの味覚受容体 (GPCR又はチヤネ ルタンパク質) が選択的に活性ィヒ又は不活性ィヒすると、 受容体を発現する舌の細 胞 (味覚細胞) が応答を発信し、 呈味性物質に対する情報が中枢神経へと伝達さ れると考えられている。
前述の通り、 いくつかの味覚受容体は 7回膜貫通型構造を有する Gタンパク質 共役受容体に属している。 呈味性物質の Gタンパク質共役受容体にっレ、ての研究 が近年進んでおり、現在 T1R、 T2R、 THTRファミリー(Takeda et al. FEBS Lett. 520, 97-101, 2002) が味覚受容体として同定されている (特表 2 0 0 3— 5 3 0 0 9 8号公報、 特表 2 0 0 3— 5 1 0 0 3 7号公報)。 しかし、 これらの受容体、 特に THTRフアミリーがどのような物質をリガンド (ァゴニスト) としているか はほとんど不明である。
従って、 味覚受容体を解明し、 呈味性物質としてのリガンドを探索することが 望まれている。 また、 被験者の主観に依存しない新しい味覚異常の検查法の開発 が望まれている。 発明の開示
本発明は、 味覚異常を検出するための方法、 及び味覚異常を検出するためのキ ットを提供することを目的とする。 .
本発明者は、 上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、 複数の味覚受容体の舌 上での発現を確認することによって、 舌痛症などの味覚異常を検査する方法を完 成するに至った。 即ち本発明は以下の通りである。
( 1 )口腔由来のサンプル'から THTRフアミリーに属する味覚受容体をコードす る遺伝子及び T2Rファミリ一に属する味覚受容体をコードする遺伝子の少な くとも一部を増幅することを特徴とする、 味覚異常検査方法。
( 2 )口腔由来のサンプルから THTRフアミリーに属する味覚受容体をコードす る遺伝子及び T2Rファミリ一に属する味覚受容体をコードする遺伝子の少な くとも一部を増幅することを特徴とする、 舌痛症の検査方法。
( 3 )口腔由来のサンプルから THTRフアミリーに属する味覚受容体をコードす る遺伝子及び T2Rファミリ一に属する味覚受容体をコードする遺伝子の少な くとも一部を増幅することを特徴とする、 ストレス検査方法。
( 4 ) THTRフアミリーに属する味覚受容体が、 ΤΗΊΈ1,2,3,4,5,6,7,9,11,12およ ぴ 14からなる群から選択される少なくとも 1つである、 (1 )〜(3 ) のいず れか 1項記載の方法。
( 5 ) THTR ファミリーに属する味覚受容体が、 以下の (a)又は (b)のポリぺプチ ドである (4 ) 記載の方法。
(a)配列番号 2,4,6,8,10,12,14,16,18,20若しくは 22で表されるアミノ酸配列か らなるポリべプチド
(b)配列番号 2,4,6,8,10,12,14,16,18,20若しくは 22で表されるアミノ酸配列に おいて、 1若しくは数個のアミノ酸配列が欠失、 置換若しくは付加されたァ ミノ酸配列からなり、 かつ味覚受容体として機能するポリぺプチド
( 6 ) THTRフアミリ一に属する味覚受容体が、以下の (a)又は (b)の DNAにより コードされるポリペプチドである (4 ) 記載の方法。
(a)配列番号 1,3,5,7,9,11,13,15,17,19若しくは 21で表される塩基配列からな る DNA
(b)配列番号 1,3,5,7,9,11,13,15,Γ7,19若しくは 21で表される塩基配列からな る DNAと相補的な塩基配列からなる DNAとストリンジヱントな条件下でハ イブリダイズし、 かつ味覚受容体として機能するポリペプチドをコードする DNA
( 7 ) T2Rファミ リーに属する味覚受容体が、 T2R1,3,4,5,7,8,9,10,13,14および
16からなる群から選抉される少なくとも 1つである、 (1) 〜 (3) のいずれ か 1項記載の方法。
(8) T2R ファミリーに属する味覚受容体が、 以下の (a)又は (b)のポリペプチド である (7) 記載の方法。
(a) 配列番号 24,26,28,30,32,34,36,38,40,42若しくは 44で表されるアミノ酸配 列からなるポリペプチド
(b)配列番号 24,26,28,30,32,34,36,38,40,42若しくは 44で表されるアミノ酸配 列において、 1若しくは数個のアミノ酸配列が欠失、 置換若しくは付カ卩され たァミノ酸配列からなり、 かつ味覚受容体として機能するポリぺプチド (9) T2Rファミリーに属する味覚受容体力 以下の (a)又は (b)の DNAによりコ ードされるポリペプチドである (7) 記載の方法。
(a) 配列番号 23,25,27,29,31,33,35,37,39,41若しくは 43で表される塩基配列か らなる DNA
(b) 配列番号 23,25,27,29,31,33,35,37,39,41若しくは 43で表される塩基配列か らなる DNAと相補的な塩基配列からなる DNAとストリンジェントな条件下 でハイプリダイズし、 かつ味覚受容体として機能するポリぺプチドをコ一ド する DNA
(10) 口腔由来のサンプルが、擦過法で採取される舌組織サンプルである (1) 〜 (3) のいずれか 1項記載の方法。
(11) 味覚異常が、 味覚障害、 舌痛症、 金属アレルギー、 口腔扁平苔癬、 口腔 乾燥症、 口腔乾燥味覚障害、 舌炎、 口内痛、 頰部蜂窩織炎、 および舌痛炎から なる群から選択される少なくとも 1つである (1) 記載の方法。
(12) 味覚異常がストレスに関連するものである、 (1) 記載の方法。
(13) 増幅が、 (4) 又は (7) に記載の味覚受容体の全長を RT-PCRにより 増幅するものである (1) 〜 (3) .のいずれか 1項記載の方法。
(14) (5) 又は (8) に記載のポリペプチドをコードする DNAとその相補 的な塩基配列からなる DNAから設計される、 18-27塩基長を有するプライマ
(15) ( 6 )又は( 9 に記載の DNAとその相補的な塩基配列からなる DNA 力 ら設計される、 18〜27塩基長を有するプライマー。
(16) 以下の (a)又は (b)の DNAから設計されるプライマー。
(a)配列番号 45〜88で表される塩基配列からなる DNA
(b) 配列番号 45〜88で表される塩基配列からなる DNAと相補的な塩基配列か らなる DNAとストリ'ンジヱントな条件下でハイプリダイズする DNA
(17) 増幅に用いるプライマーが、 (14) 〜 (16) のいずれか 1項に記載の プライマーである (13) 記載の方法。
(18) (14) 〜 (16) のいずれか 1項に記載のプライマーを含むことを 特徴とする味覚異常、 舌痛症又はストレスを検査するためのキット。 図面の簡単な説明
図 1は、 味覚に関与するチャネルと受容体を示す図である。
図 2は、 擦過法に使用するエツペンドルフチューブを示す図である。
図 3は、 ヒト舌の各部の名称を示す図である。
図 4は、 PCRのサイクル数と PCR産物生成の関係を示す図である。
図 5は、 定量化 PCRの原理を示す図である。
図 6は、 外科的手法によって採取した組織を用いて解析した、 舌各部位にお ける味覚受容体の発 を示す図である。
図 7は、 擦過法によって採取した組織を用いて解析した、 舌各部位における 味覚受容体の発現を示す図である。
図 8は、 味覚受容体の検查対象となった患者における味覚受容体 (THTRフ アミリー) の発現を示す図である。
図 9は、 味覚受容体の検査対象となった患者における味覚受容体 (T2R ファ ミリ一)の発現を示す図である。 .
図 10は、 舌痛症回復時の味覚受容体発現の変化を示す図である。
発明を実施するためめ最 ίの形態
以下、 本発明を詳細に説明するが、 以下の実施の形態は本発明を説明するため の例示であり、 本発明はその要旨を逸脱しない限りさまざまな形態で実施するこ とができる。 なお、 本明細書において引用した文献、 特許文献は、 参照として本 明細書に組み込むものとする。 本発明は、甘味、苦味、 旨味を受容すると言われる GPCR型の複数の受容体の 舌組織における発現量の変化と、 舌痛症などの味覚異常の程度との関連性に基づ いた味覚異常の検査方法、 および当該受容体の発現量と、 味覚異常の原因の一つ であるストレスの程度との関連性に基づいたストレスの検查方法を提供する。 本 発明は、 従来のようにヒトの感覚を判断の指標にした味覚検查ではなく、 口腔由 来のサンプルを用いた RT"PCR法により複数の味覚受容体の発現を確認すること によって行う、 味覚異常の検查方法、 ストレスの検查方法を提供する。
本発明者は、味覚受容体としてすでに報告された 11種類の受容体(T2R 1, 3, 4, 5, 7, 8, 9, 10, 13, 14, 16)、 そして Takedaら (Takeda et al. FEBS Lett. 520, 97, 2002)が味覚受容体の候補としてあげている 11種類の受容体(THTR 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 9, 11, 12, 14) について tト舌組織における発現量を RT-PCR法で検出し、 味覚異常と関連させて、 従来のようなヒトの感覚に頼らない味覚異常検査方法お ょぴストレス検査方法を開発した。 下記の表 1に、 検査に用いる 22種類の受容 体名、 並びにその塩基配列及びアミノ酸配列を示す配列番号を示す。
表 1
表 1の受容体名中、 TAS2RX(Xは任意の番号)は GenBankにおける登録名を意 味する。
呈味性物質による情報の受け口である受容体の発現量の変化は、 舌痛症などの 味覚異常に結びつくことが予想され、 受容体の発現量の変化を検查することによ り味覚異常の有無とその原因、さらには治療ターゲットを知ることが可能となる。 また、 味覚異常、 特に舌痛症は、 ストレスに関連することが知られていることか ら、 味覚受容体の発現量の変化を調べることにより、 ストレスの程度の変化を知 ることが可能になる。
さらに、 本発明は味覚異常の検查を実施するにあたり、 口腔由来の組織の採取 方法が、 メスを用いた組織採取によるのではなく、 ほとんど無痛で非観血的な採 取による点 (被験者の負担が少ない点) で有用である。 1 . 呈味性物質反応性組成物 (味覚受容体)
本発明の呈味性物質反応性組成物 (以下、 味覚受容体とも称する。) は、 呈味性 物質を受容し、 呈味性物質による情報を体内に発信する機能を有する。 本発明で 用いる味覚受容体は、味覚受容体の中でも GPCRに含まれる THTRと T2Rのフ アミリーに属するものである。 特に、 ΤΗΊΈフアミリーには、 THTR 1, 2, 3, 4, 5,
6, 7, 9, 11, 12, 14 (アミヌ 配列:配列番号:!〜 2 2 (偶数番号のみ)、 (2,4,6,8, 10, 12, 14, 16, 18,20,22)) を、 また、 T2Rファミリーには、 T2R 1, 3, 4, 5, 7, 8, 9, 10, 13, 14, 16 (アミノ酸配列:配列番号 2 3〜4 4 (偶数番号のみ)、 (24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44)) を用いることができる。 その際、 上記の THT.R フアミリーに属する味覚受容体、 若しくは THTR ファミリ一に属する味 覚受容体と T2Rフアミリーに属する味覚受容体の 22個の全ての受容体を用いて もよいし、 又はその複数を適宜組み合わせて用いてもよい。 本発明で用いる上記 の受容体の名前と塩基配列、 及びアミノ酸配列を示す配列番号の一覧を上述の表 1に示す。 また、 GPCRタイプの上記味覚受容体は、 甘味、 苦味、 旨味に関する 受容体であるが、 これらの受容体の中には、 リガンドである呈味性物質が未同定 であるために、 そのアミノ酸配列の相同性から味覚受容体として推定されている ものも含まれている。
さらに、 本発明で用いる味覚受容体は、 味覚受容体として機能する限り、 上記 の配列番号 1〜4 4 ( 1〜4 4のうち、 偶数番号のもの) に示すアミノ酸配列か らなるポリぺプチドのうち複数個、 好ましくは 1個若しくは数個のアミノ酸に欠 失、 置換、 付加等の変異が生じているものであってもよい。
ァミノ酸配列において 1又は複数個のァミノ酸が欠失、 挿入、 置換又は付カロさ れたァミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、 「Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd e .J (Cold Spring Harbor Press (1989))、 「Current Protocols in Molecular Biology」 (John Wiley & Sons (1987.1997);特に Section8.1-8.5)、 Kunkel (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 488-92、 等に記 載の部位特異的変異誘発法等の方法に従って調製することができる。 また、 ポリ ヌクレオチドに変異を導入するには、 Kunkel法や Gapped duplex法等の公知手 法により、 部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット、 例えば QuickChange™ Site-Directed Mutagenesis Kit (ス トラタジーン社製)、 GeneTailor™ Site-Directed Mutagenesis System (ィンビトロジェン社製)、 TaKaRa Site-Directed Mutagenesis System (Mutan-K、 Mutan- Super Express
Kin等:タカラバイオ社製) 等を用いて行うことができる。
「味覚受容体としての機能」 としては、 例えば、 呈味性物質との結合活性、 呈 味性物質を介したシグナル情報伝達作用などが挙げられる。「味覚受容体として機 能する」 とは、 例えばそれぞれの配列番号に示すアミノ酸配列からなるタンパク 質とほぼ同等の機能を有することを指す。 従って、 配列番号 1 ~ 4 4 ( 1〜4 4 のうち、 偶数番号のもの) に示すァミノ酸配列のうち、 複数個、 好ましくは 1個 若しくは数個のアミノ酸に欠失、置換、付加等の変異を含むタンパク質の活性が、 それぞれの配列番号に示すァミノ酸配列からなるタンパク質と同等又はそれ以上 (0.5〜: 1.5倍程度) であることが好ましいが、 これらの活性の程度やタンパク質 の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
また、 本発明において使用する味覚受容体としては、 当該受容体の部分べプチ ドも包含される。そのような部分べプチドとしては、例えば、受容体分子のうち、 細胞膜の外に露出している部位であって、 受容体結合活性を有するものなどが用 いられる。 具体的には、 受容体の部分ペプチドとしては、 ヒドロパシープロット 解析において細胞外領域 (親水性部位) であると分析された部分を含むぺプチド である。 また、 疎水性部位を一部に含むペプチドも同様に用いることができる。 個々のドメインを個別に含むペプチドも用いることもでき、 複数のドメインを同 時に含む部分のペプチドでもよい。 本発明において、 当該部分ペプチドには、 ァ ミノ酸配列に、 前述の欠失、 置換、 付加等の変異が生じているものであってもよ レ、。
本発明で用いる味覚受容体をコードする DNAは、 配列番号 1〜4 4 ( 1〜4 4のうち偶数番号のもの) に示すァミノ酸配列を有するポリぺプチド若しくはそ の上記変異体、またはその部分をコードするものであればよい。そのような DNA には、 例えば配列番号 1〜 4 4 ( 1〜 4 4の う ち奇数番号のもの (1,3,5,7,9,11,13,15,17,19,21,23,25,27,29,31,33,35,37,39,41,43)) で示す塩基配列 を有する DNAを挙げることができる。. さらに、 味覚受容体として機能するもの であれば、 配列番号 1〜4 4 ( 1〜4 4のうち奇数番号のもの) で示す塩基配列 のうち、 1塩基以上の欠失、 置換、 付加等の変異が生じているものであってもよ い。 さらに、 本発明で用いる味覚受容体ポリべプチドをコ一ドする DNAには、
配列番号 1〜4 4 ( 1 4 4のうち奇数番号のもの) で示す塩基配列からなる DNA と相補的な塩基配列からなる DNA とストリンジェントな条件下でハイブ リダィズすることのできる DNAであって、 味覚受容体として機能するポリぺプ チドをコードするものも含まれる。 「ストリンジェントな条件」 とは、いわゆる特 異的なハイプリッドが形成され、 非特異的なハイプリッドが形成されない条件を いう。 例えば、 相同性が高い DNA、 すなわち 60%以上、 好ましくは 80%以上、 より好ましくは 90%以上、 さらに好ましくは 99%以上の相同性を有する DNAの 相捕鎖がハイブリダイズし、 それより相同性が低い DNAの相捕鎖がハイブリダ ィズしない条件が挙げられる。 具体的なストリンジェントな条件としては、 例え ばナトリウム濃度が、 10〜300ηιΜ、 好ましくは 20〜100mMであり、 温度が 25 〜70°C、 好ましくは 42〜55°Cにおける条件が挙げられる。
上記の味覚受容体ポリぺプチドをコ一ドする DNA量を検出するためには、 そ れぞれに特異的な DNAを用いる PCR法を用いることができる。
本発明で用いる味覚受容体の塩基配列及びアミノ酸配列は、 GenBank等のデ —タベース上で公開されており、 この遺伝子情報を用いて本発明のプライマーを 設計することができる。 プライマーは、 PCR法に用いたときに、 目的の受容体の みを増幅できるように設計するべきである。 本発明は、 味覚受容体発現量の変化 の検出に使用する DNAとして、 味覚受容体ポリべプチドをコ一ドする DNAの うち、 PCR法により当該味覚受容体を特異的に増幅することのできる前記部分配 歹 lj (プライマー) の他、 当該味覚受容体に特異的にハイブリダィズする部分配列 (プローブ) を含む DNAも含むことができる。 高感度に受容体遺伝子の発現を 検査するには、 PCR法によって受容体遺伝子を増幅することが好ましい。 このよ うな部分配列は、 THTRファミリー、 T2Rファミリ一の全長を増幅するものであ つてもよい。 また、 例えばこのような部分配列は、 本発明で用いる味覚受容体ポ リぺプチド (例えば配列番号 1〜 4 4. (偶数番号のもの) とその変異体) をコー ドする DNAと、 その相補的な塩基配列からなる DNAのそれぞれから設計され るものであってもよレ、。あるいは、本発明で用いる味覚受容体をコードする DNA
(例えば配列番号 1〜4 4 (奇数番号のもの) とその変異体) と、 その相補的な
塩基配列からなる DNAめそれぞれから設計される部分配列であってもよい。 本 発明において、プライマーは、 18〜27の塩基長のいずれかであることが好ましレ、。 いずれの場合も、増幅部分として、全長の他、 300〜: L000塩基長、好ましくは 500 〜900塩基長、 より好ましくは 700〜800塩基長の部分配列を設計できる。
さらに、 本発明の部分配列、 特にプライマーには、 例えば、 後に示す表 2に挙 げた味覚受容体を増幅するためのプライマー、 配列番号 4 5〜 8 8又は配列番号 4 5〜 8 8で示す塩基配列からなる DNAと相補的な塩基配列からなる DNAと ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることのできる DNAを挙げるこ とができる。 ここで、 ストリンジェントな条件とは前述の通りである。
配列番号 (2n+43) (nは 1〜22までの整数を表す) に示す塩基配列 (配列番号 45,47, - · · ,85,87) は、 配列番号 (2η·1) (ηは 1〜22までの整数を表す) に示す 塩基配列 (配列番号 1,3, · · · ,41,43) のうち 1番目の塩基から 1 8〜 2 6番目 の塩基までの配列を表す。 配列番号 (2η+44) (ηは 1〜22までの整数を表す) (配 列番号 46,48, - · · ,86,88) は、 配列番号 (2η·1)に示す塩基配列のうち最後の 1 8〜 2 6塩基の相補配列を示す。 従って、 配列番号 (2η+43)と(2η+44)とはペアプ ライマーであり、 PCR法により配列番号 (2η_ 1)に示す塩基配列を有する DNAの 全長を増幅することができる。
本発明のプライマーは、 目的受容体の特異的増幅を示す限り、 タグや制限酵素 認識配列等を適宜その 5'末端側に付加することができる。
本発明のプライマーで増幅される DNAの長さは、 味覚受容体ポリペプチド全 長又は一部分をコードする DNAであるが、 検出の感度と増幅の特異性から、 増 幅する DNAは味覚受容体 DNAの全長であることが望ましい。 さらに、 本発明 で用いられる味覚受容体を増幅するための DNAは、 その 5'末端側に必要な配列 を付加することもできる。 そのような配列としては、 制限酵素認識配列等を挙げ ることができる。
本発明の上記プライマー又はプローブは、 公知の方法に従って、 あるいは市販 の DNA合成装置を使用して製造することができる。 ·
表 2
本発明において、 味覚受容体の発現量の変化は、 被験者の口腔由来組織、 例え ば舌組織サンプルから抽出した DNAを用いて検出することができる。 前述のと おり、 本発明は味覚異常の検査を実施するにあたり、 メスを用いて舌組織を採取 するのではなく、 ほとんど無痛で非観血的に (出血させることなく) 採取できる という特徴をもつ。
舌組織の採取は、 図 2に示すように通常ェッペンドルフチューブといわれる、 滅菌済みの使い捨て微量高速遠沈管を用いる。 図 2の (* ) で示したフタのエツ ジの部分を利用して、 図 3 (医学書院、 系統看護学講座専門基礎 1人体の構造 と機能 [1] 解剖生理学 日野原重明著より) 中の舌背部、 茸状乳頭組織、 葉状乳 頭付近又はほおの裏側の口腔内粘膜組織を 1〜 1 0回、 好ましくは 2〜 7回、 よ り好ましくは 3〜 5回程度擦過して、 舌表層又はほおの組織を得る。 採取部位は 好ましくは、 葉状乳頭付近である。 なお、 一度擦過した後は、 2〜3日の間、 同 じ擦過部位から組織を採取せずに放置しておくことが好ましい。 微量高速遠沈管 は市販されており、 例えば、 エツペンドルフ社、 アシスト社などから購入するこ とができる。 遠沈管は、 未滅菌の状態のものを購入し、 オートクレープで滅菌し たものを用いても、 滅菌済みのものを購入して用いてもよい。 一度使用した遠沈 管は、 廃棄し、 舌組織の採取の目的で再使用しないことが好ましい。
舌組織サンプルの採取にあたっては、 口腔内を水などでよく洗浄してから採取 する。 そして、 組織サンプルを採取した直後に、 RNA抽出試薬、 例えば TRIzol をチューブに 0.5 mLカロえ、 撹拌混和した後、 -20°Cで使用まで保存することがで きる。 3 . 味覚受容体の検出方法 .
上記 「2 . 口腔由来組織の採取方法」 で採取された組織から total RNA又は mRNAを抽出し、 RT-PCRを施行する。 このとき、 組織からの RNA抽出方法は 例えば TRIzol(Invitrogen)、 Quick Prep Total RNA Extraction Kit(Amersham
Biosciences), RNeasy KiKQIAGEN)を用いることができる。得られた RNAは、 適宜 DEPC処理水 (例えば DEPC treated Water(Invitrogen)) に溶解し、 濃度 を測定し、 _80°Cで保存することもできる。
また、 逆転写反応には逆転写酵素として Superscript III (Invitrogen)、 プライ マーとしてランダムプライマー、 Oligo dTプライマー、 配列特異的プライマー等 を利用できる。逆転写反応は、酵素に添付されたマニュアルに従って行えばょレ、。
PCR反応には DNAポリメラーゼとして Ex Taqを用いることができる。 PCR 反応に用いるプライマーは、 上記 「1 . 呈味性物質反応性組成物 (味覚受容体)」 に記載したプライマー (例えば表 2 ) を用いることができる。 PCRは、 当業者で あれば公知の方法に従い適宜設定することができるが、 例えば、 94°Cに 3分間処 置した後、 94°Cで 30秒、 59°Cで 30秒、 72°Cで 1分のセットを 35サイクル行い、 72°Cで Ί分間処置し、 4°Cで反応を終了させる条件で実施することができる。 本発明における R PCRの実施方法は 2つの特徴を有する。 一つは PCRのサ イクルを 35回以上とすること、 そしてもう一つは PCRによって、増幅対象の受 容体を特異的に確実に増幅して検出することである。
PCRのサイクル数については、 PCRのサイクル数と PCR産物の生成量との関 係が図 4 (秀潤社バイオ実験イラストレイテツド 3本当にふえる PCR 中山広 樹著より) のように変化し、 35サイクル付近では、 PCR産物はすでにプラトー に達することが知られている。 本発明において、 35サイクル以上で PCRを行う ことは、 図 5 (秀潤社バイォ実験ィラストレイテッド 3本当にふえる PCR 中 山広樹著より)に示すように初期のテンプレート量に関わらず(図 5の矢印部分、 PCRサイクル数 0の位置)、 反応生成物 (PCR産物) がプラトーに達し、 一定の 値を取るようになることから、 組織内の味覚受容体 RNAの発現量の多寡を検討 することよりも、 むしろ、 発現する味覚受容体 RNAの有無を検討することにな る。 すなわち、 味覚受容体の発現については定量 I1生はあまり考慮せず、 主として 定性的な検出を考慮する。 そのため、 PCR反応産物の検出段階(例えばアジレン ト社の 2100 Bioanalyzerを用いた PCR産物の検出段階) において、 薄いバンド として見える PCR産物は、.ほとんど発現していないと解釈できる。つまり、 PCR
生成量がブラトーに達しこ反応生成物を用いて、 味覚受容体の発現を定性的に検 討することが本発明の特徴の 1つである。 以上より、本発明において、 PCRのサ イタル数は 3 5〜 5 0サイクル、 好ましくは 3 5〜 4 0サイクル、 より好ましく は 3 5サイクルである。
次に、 増幅対象の受容体を特異的に確実に増幅して検出することは、 相同性の 高い受容体フアミリーの発現の有無を PCR法によって検出する場合には必要不 可欠である。 増幅産物が対象とする受容体であり、 他の受容体ではないことを確 実にするには、 増幅産物の塩基配列を解析すること、 対象とする受容体の全長を PCR法で増幅すること、又は増幅される塩基長を受容体毎に異なものとすること などの方法が考えられる。 味覚受容体をコードする遺伝子の少なくとも一部を増 幅してもよいが、 なかでも、 プライマー設計の簡便性点、 あるいは類似塩基配列 の増幅防止の点から、 全長を PCR法で増幅することが望ましい。 対象とする味 覚受容体の全長を RT"PCR法で増幅する意義は、 PCRで増幅する場合、 増幅さ れた PCR産物そのものをチェックすることは困難を伴うため、 増幅された PCR 産物の大きさを指標に正常な増幅が行われ、 増幅対象である味覚受容体を確実に 増幅したことを確認することにある。 また、全長を増幅する場合、サンプル RNA 中に検出対象の味覚受容体の全長に相当する RNAが存在しなければ増幅されな いことから、 味覚受容体遺伝子の少なくとも一部を増幅する場合よりもより確実 にチヱックを行うことができる。 さらに、 味覚受容体の全長を PCR法で増幅す る利点には、 ごく少量の、 検出対象以外の味覚受容体の RNAがサンプル中に存 在する場合、 当該他の受容体遺伝子の増幅は多量に発現している検出対象の味覚 受容体よりも困難になるため、 本発明の目的である舌における味覚受容体の定性 的な観測にとって、 より有利である点が挙げられる。 そこで、 PCR用プライマー は、受容体のコード領域全部を増幅できるように設計することが好ましい (前述)。
PCR産物の大きさや量を測定するには、 ァガロースゲル電気泳動で PCR産物 を泳動し、 その大きさ毎に分離してパンドの濃さによって測定する方法や、 DNA
LabChip(Agilent Technologies)を用いて、 PCR産物に含まれるフラグメントの 分子量を測定する方法を用.いることができる。 中でも、 PCR産物の大きさを正確
に、 かつ高感度に測定できる T—ジレント社の 2100 Bioanalyzerが本発明の検査 には有効である。 このようにして得られた PCR産物のバンドの濃さ及び/又は数 を指標として、 味覚受容体が発現しないことによる味覚異常の有無等を検討する のが本発明である。 すなわち、 複数の ΤΗΊΈ受容体およぴ T2R受容体のうち、 例えば、異なる 1 0個受容体の発現を検討した場合、 PCR産物の濃いバンドが所 定数出現したときを、 味覚異常、 舌痛症、 又はストレスの状態と判断する。 本発 明は PCR反応生成物がプラトーに達するまで PCRを行うこと力ゝら、薄いバンド として見える PCR産物はほとんど受容体が発現していないと考えられる。 した がって、 このような薄いパンドは出現したパンドの数には加算しない。
薄いバンドとはピークエリア数値 (ピーク面積) 10以下のものをさす。 本 発明では PCR産物の塩基の長さと増幅された遺伝子産物量の測定にはアジレン ト社の 2100BioanaIyzerを用いた。 2100Bioanalyzerは、 PCR等で増幅した産 物をはじめ、 遺伝子産物に対し電気泳動を行い、 その量と塩基の長さを測定する 装置である。 この測定装置は、 電気的な力によってキヤビラリ一中を泳動する遺 伝子産物が検出器を通過するまでの時間から塩基の長さ (大きさ) を求め、 また 検出器が検出するシグナルの強さを表すピークエリアの面積の大小をパンドの濃 淡として示すものである。 2100Bioanalyzerは遺伝子産物シグナルのピークエリ ァの大きさを味覚受容体遺伝子発現パターンの擬似電気泳動像として示している。 この擬似電気泳動像測定時に記録されているピークエリアの数値が 20以上の場 合、 濃いくっきりしたパンドで表されるため、 本発明ではこれを 「濃いパンド」 として示し、 舌上皮組織における味覚受容体遺伝子が発現しているものと判断す る。 一方、 このピークエリアの値が 5以下の場合は非常に薄いパンドとして表現 され、 本件では味覚受容体遺伝子がほとんど発現していないことを示している。 5以上 10以下の数値が得られた場合は、 「わずかに発現」 としているが、 発現は あるものの組織中に発現する受容体数 少ないため、 味覚受容体として機能して いないと想像される。 2100Bioanalyzerを構成する解析ソフトが認識しないほど の小さなピークでは味覚受容体遺伝子の発現がないと判断する。 本件を味覚検査 の集団検診に用いた場合ピークエリア数値が 10以下のものは 「味覚受容体遣伝
子発現がない(遺伝子発瑰はあっても味覚を感じるほどの機能はない)」 と判断し てもよい。
味覚障害患者治療時に、 ピークエリアの数値が 5-10程度の「わずかな発現」 と 判断されるようなパンドの濃さでも、 これらバンドを経時的に検討し、 それを患 者に示したときにバンドの濃さ (ピークエリア数値の増カロ) が治療の目標や、 患 者の治療への動機付けとして有用に働く場合には、 患者に対して 「味覚受容体が わずかに発現」 または 「味覚受容体遺伝子発現はない」 のように、 ネガティブな 意見又は判断を示すことは、患者の治療意欲を減退させる可能性がある。そこで、 味覚受容体発現量の表現に関し 「わずかな発現」 と判断されるようなパンドのと きは、 患者の治療意欲を考慮して、 単に数値的に割り切らないほうがよい治療結 果を生み出すものと考える。これは実施例 4の 5回目の検査(2005年 2月 14日) にあらわれている。
実施例 4における 5回目の回復期にある結果において、 舌右側から得られた組 織中に発現する味覚受容体遺伝子のピークエリアの数値は 6以上 10以下であり、 この結果からは組織中の味覚受容体発現がほとんどないものとされる数値となつ た。 しかしこの実施例 4では薄いながらも、 T2R8-16の大部分でバンドが認めら れる特 的なパターンであり、 今まで示してきた味覚障害患者ではほとんど見ら れないものであった。このように 6以上 10以下のピークエリァ数値であっても、 4-6つ以上の味覚受容体遺伝子が同時にほぼ同じような発現量と認められる場合、 味覚を以前にもまして感じるようになつたという患者の感覚も考慮して、 味覚異 常の診断を行うことが好ましい。 本発明によって検査される味覚異常には、 例えば、 味覚障害、 舌痛症、 金属ァ レルギ一、 口腔扁平苔癬、 口腔乾燥症、 口腔乾燥味覚障害、 舌炎、 口内痛、 頰部 蜂窩織炎、 舌痛炎等からなる群から選択される 1以上を挙げることができる。 特 に本発明の方法によって、味覚障害、舌痛症の有無を検査することが可能となる。 ストレスに関連して発症する味覚異常も、本発明によって検査することができる。 舌痛症は、 「心理情動因子に起因し、舌に表在性の異常感を訴えるが、それに見
合うだけの器質的(肉眼的)変化がないもの」 と定義される場合もある。 しかし、 本発明は、 舌痛症の患者において味覚受容体の発現量の低下が認められ、 症状の 改善に伴って受容体の発現量が上昇することを明らかにした。 したがって、 味覚 受容体の発現量を検出することによって、 舌痛症の有無を検査をすることができ る。 .
また、 本発明者は、 舌痛症患者のストレスのあった時期と、 味覚受容体遺伝子 の発現量減少の時期が重なること、 および、 ストレスからの解放に伴って味覚受 容体遺伝子の発現量が増大し、 舌痛症の症状も改善することを明らかにした。 す なわち、 舌痛症の原因の一つであるストレスと味覚受容体の発現量とは関連する といえるため、 味覚受容体の発現量を調べることによりストレス負荷状態を明ら かにすることができる。
4 . キット
本発明のプライマーは、 味覚異常を検査するためのキット、 舌痛症を検査する ためのキット、 ストレスを検査するためのキットとして提供することができる。 本発明の検査用キット (以下、 「本キット」 という) は、 当該プライマーの他、 本 発明の検査方法を実施するために有用な成分を含むものである。 そのような成分 としては、 例えば、 以下の (a ) 〜 (c ) のものを挙げることができる。
( a ) 組織から total RNAを抽出する際に使用する器具又は試薬
TRIzol溶液、 1 mL針付きディスポーザプルシリンジ (例えば、 トップ、 ディ スポーザブルトッププラスチックシリンジ 25GX 1" R.B.) , イソプロパノール、 リンス用 70%エタノール、 及び RNase free DEPC treated Water
上記 (a ) の試薬、 器具の使用方法は、 以下のとおりである。 1 サンプルあた り 0.5〜: Lml (好ましくは、 0.5 ml) の TRIzol溶液を、 口腔内サンプルを採取し たチューブに入れて激しく攪拌するこ.とによって、 チューブのフタに付着した口 + 腔内サンプルと TRIzolを混和する。 そして、 このシリンジを使って TRIzol中の 口腔内サンプルをチューブ中で 20〜30回程度、 強く吸引、 吐出することによつ て、サンプルから RNAを抽出しやすくすることができる。イソプロパノールは、
使用した TRIzolの半量 έ用いて、 RNA沈殿に使用する。 RNA沈殿で使うチュ ーブは RNase freeであることが望ましい。 リンス用 70% エタノールは、 イソプ ロパノールで沈殿させた total RNAをリンスするために使用する。 RNase free DEPC treated Waterは、 得られた total RNAを溶解するために使用する。
( b ). total RNAを逆転写するための器具 ·試薬
反応用チューブ(DNase RNase free tube)、 dNTP、 Random primer混合液、 逆転写用バッファー、 RNase Inhibito DTT、逆転写反応酵素(Superscript III (Invitrogen)が好ましい)、 RNase H
( c ) PCR反応を行うための器具 ·試薬
反応用チューブ (DNase RNase free tube) , PGR反応用バッファー、 dNTP 溶夜、 DNase-RNase free water, DNA polymerase (Ex Taq, Takaraが好ましい) 上記のバッファーには、 例えば、 pH4〜: 10のリン酸バッファー、 トリス塩酸バ ッファーなどが挙げられ、 SDSなどの界面活性剤を含んでいてもよい。 さらに本 キッドには、 口腔内サンプルを擦過法にて採取するための微量高速遠沈管、 サン プルから RNAを抽出するためのカラム、 バッファー、 界面活性剤等を含んでも よい。
本キットを利用することにより、 本発明の味覚異常検査方法、 舌痛症の検査方 法、 ストレス検査方法を簡便に行うことができる。 以下、 実施例により本発明をさらに具体的に説明する。 但し、 本発明は下記実 施例にその技術的範囲が限定されるものではない。 実施例 1 味覚受容体遺伝子の増幅
( 1 ) 組織採取方法
本実施例において採取部位等を検討するために a) メスによる外科的採取法、 b)擦過による組織採取法の 2種類の採取方法を実施した。但し、 図 8、 図 9に示 す味覚障害患者からの組織採取は b)の擦過法による組織採取を実施した。 これら の採取法においては口腔内を水等でよく洗浄してから、 組織を採取した。
a) メスによる組織採琅方法
図 3に示すように、 舌背部の茸状乳頭 (目視で確認)、 舌尖部から 3 センチ離 れた部位の舌側面の茸状乳頭、 葉状乳頭よりメスで 2mm角の組織を採取した。
b)擦過法による組織採取方法
舌背部、 茸状乳頭組織、 そして葉状乳頭付近、 ほおの裏側の口腔内粘膜組織を 図 2に示したエツペンドルフチューブのフタのエッジ部分で 3-5回擦過して採取 した。
上記のように採取した直後に、 これら組織にィンビトロゲン社の TRIzol を 0.5ml加え、 よく攪拌混和し、 -20°Cで保存した後使用した。
( 2 ) RNA抽出方法
採取した組織から total RNAを抽出した。 抽出方法は TRIzolに添付された説 に溶かし、 得られた totalRNA濃度を測定した後、 -80°Cで保存した。
( 3 ) RT_PCR実施方法
ί导られた Total RNA 0.65 gを random primer (Invitrogen)とともに Super Script III (Invitrogen)で逆転写反応を行つた。 ここで得られた反応液 0.5 μ 1をテ ンプレートにして Ex Taq (Takara)を用いて、 50/z 1の系で PCRを行った。 用い たプライマーを表 2に示す。 逆転写反応も PCR反応も添付されたマニュアルに 従つて行つた。 PCRはアプライドバイォシステムズ社の GeneAmp PCR System · 9700を用いた。 PCRの条件は 94°Cで 3分間反応させた後、 94°C-30秒、 59°C-30 秒、 72°C-1分を 35サイクル、 そして、 72°C- 7分処置した後、 4°Cでアジレント 社の 2100 Bioanalyzerで測定するまで保存した。
( 4 ) PCR産物の検討
上記の条件で得られた PCR産物をアジレント社の 2100 Bioanalyzerを用いて 検討した。 . 実施例 2 採取場所及び採取方法の検討 · 本実施例の検討には、 健常者の舌組織を用いた。 図 6は実施例 1 ( 1 ) a)に示
す外科的手法により組織'を採 ¾したときの舌組織各所における味覚受容体の発現 を示した。図 6の A〜Cは THTRファミリ一の発現を示し、 D〜Fは T2Rフアミ リ一の発現を示している。 図 6の A, Dは舌背部より得られた組織、 B, Eは舌尖 部から 3センチ離れた部位の舌側面より得られた茸状乳頭組織、 C, Fは葉状乳頭 組織より得られた組織より RT-PCRを施行した結果である。舌背部より得られた 組織からは味覚受容体はほとんど発現していないのに対し、 茸状乳頭組織、 葉状 乳頭組織には THTR, T2Rファミリ一の味覚受容体の発現が認められた (図 6 )。 しかしながら、 これらの組織の採取にはメスを用いた外科的な手法を用いるた め、 痛みや出血を伴い、 多数の味覚障害患者の検査に用いるのには問題が多い。 そこで、次に出血や痛みを伴わない擦過による組織採取の方法(実施例 1 ( 1 ) b) に示す) を施行した。 その結果を図 7に示す。 図 7の A〜Dは ΤΗΊΈフアミ リーの発現を、 E〜Hは T2Rファミリーの発現を示している。 A, Eは舌背部、 B, Fは茸状乳頭組織、 C, Gは葉状乳頭組織、 D, Hはほおの裏側の口腔内粘膜組 織における味覚受容体の発現を示している。 これらの組織で RTXPCRを施行した 結果、 葉状乳頭組織を擦過したときに、 もっとも多くの味覚受容体を得られた。 この結果から、 本発明では、 ヒトの舌組織 total RNAは葉状乳頭組織を擦過して 得ることがより好ましいといえる。 実施例 3 味覚障害患者の味覚受容体発現
本実施例は、 味覚障害患者における味覚受容体の発現パターンを検討したもの である。組織の採取は、非観血的な、葉状乳頭組織を擦過する方法(実施例 1 ( 1 ) b) に示す) を用いた。
図 8 (THTRファミリー)と図 9 (T2Rファミリー)に、味覚障害を含むのべ 17人 の味覚受容体の発現パターンを示した。 図 8、 図 9ともに 16, 17, 20 は組織から total RNAをほとんど抽出できなかつ.たため、 欠番となっている。 これら被験者 の診断等の詳細は表 3に示した。
表 3には患者の番号、 性別、 診断結果、 合併症、 現在飲んでいる薬、 唾液分泌 試験の結果、 血中の亜鉛と鉄の濃度を示した。 また、 1, 3, 4, 5, 7, 8, 9, 10, 17, 19 番の患者の備考欄には、 従来、 味覚異常の診断に用いられる濾紙ディスク法によ る味覚検査の結果を示した。
血清中の亜鉛は 65〜: L10 が正常である。亜鉛の不足は味覚異常をもたらすと言 われているが、 本件の結果から血清中の亜鉛濃度と味覚受容体発現には大きな関 連はないと思われる。
備考欄に記載されている味覚検査の数値は 3を基準とし、 数字が大きくなると 味を感じにくいと判断され、 3以下であれば正常と判断される。 例えば番号 5は 甘味 2.0,塩味 2.0, 酸味 3.0, 苦味 3.0というスコアを得ている。 そして、 味覚受 容体の発現は図 7の C, Gで示した発明者由来のサンプルとほぼ同じ結果を得て いることから (図 8、 図 9の 5)、 味覚受容体の発現は正常と判断した。 また番号 4を見ると、 本人からは味覚異常を訴えることはなくとも、 味覚受容体発現は非 常に悪く (図 8、 図 9の 4).、 また味覚検査の結果も非常に悪いという結果を得て
レ、る。 このことから本人め自覚がなくとも、 味覚受容体発現の低下が起こるもの と考えられる。
味覚障害と診断され(表 3 「診断」欄)、かつ、味覚検査を実施された(表 3 「備 考」欄)患者 1, 3, 8, 9のいずれも力 味覚受容体の発現が非常に低かった(図 8、 図 9 )。 この結果から、味覚障害と診断された患者における舌葉状乳頭組織中に発 現する味覚受容体は非常に少ないことが明らかとなった。患者 11と 15は味覚障 害と診断されていない 5歳と 7歳の子供であるが、彼らは味覚が未発達であると 推測された。 患者 8と 13は同一の患者であり、 口腔内乾燥からカンジタ症を発 症したものであり、 8は治療前、 13は治療中の結果である。 図 8、 図 9の 8 と 13を比較すると T2Rフアミリーでやや発現パターンが異なるものの、 治療によ る味覚受容体発現に対する大きな影響は認められない (図 9 )。 また、 図 8、 図 9 の 12と 19は、 同一患者における食道癌に対する化学療法を行う前と、 治療中の 結果である。 化学療法による治療によつて味覚受容体は治療前と比較して発現が 増加している。 この味覚受容体の発現増加は、 おそらく、 癌に対する化学療法に より、 全身症状が回復したことに起因すると考えられる。 いずれにしても、 正常 の味覚受容体発現レベルと比較すると、 発現量は化学療法によって良好になった ものの、 かなり低いレベルのままである。 そのため、 19に示す化学療法中に行わ れた味覚検查結果においても、 ょ 、結果を得ることができないと予想できる。 以上の結果から、 本発明は味覚障害患者の一次スクリーニングに非常に有用な ツールであると言える。 実施例 4 舌痛症と味覚受容体遺伝子の発現
( 1 ) 対象と検査方法
本実施例において、 検査の対象は 69歳の舌痛症と診断された女性であり、 舌 痛症は舌の左側に顕著に出現している。検査は 2004年 10月 18日から 2005年 2 月 14曰までの間、 5回施行した。
図 1 0左端の各電気泳動図には、 実施日時 (月 Z日/年)、 血清亜鉛濃度 (μ g/100ml) (正常範囲 69-79 i g/100ml、 Zn:で表示)、 被験者が感じる痛みの程度
を本人の感覚で示した数儘 (VAS, Visual Analogue Scale, P:で表示) を示した。 VASについて、 「初診の時の症状の程度を 1 0とすると、 今はいくつ位ですか?」 と問診した結果、 患者から得た程度が 3以下の場合に、 舌痛症の治療は成功と判 断する。
R "PCR用のサンプルの採取はひどい舌痛が発症している左側と舌痛症がない 右側から同時に採取した。 採取したサンプルからの : RNAの抽出は、 逆転写反応 には逆転写酵素として Superscript III (Invitrogen)を用いて行つた。 増幅対象の 味覚受容体は、 THTR 5、 1 1、 4、 9、 および T2R 3、 8、 9、 1 0、 1 3、 1 6の 1 0種を用いた。 R PCRには、 表 2に記載したプライマーを使用し、 反 応は実施例 1 (3)と同様の条件で行った。舌上皮から得られた組織中に発現する味 覚受容体遺伝子は電気泳動の結果の一部を切り抜いて表示した (図 1 0、 味覚受 容体発現の量が増加すると RT-PCRの結果である PCR産物のパンドが濃く太く なっていく)。
被験者の感覚を元にした電気刺激法 (舌に電極 押し当て通電し、 電気刺激を 感じる値を表示する方法。 E;と表示し、 _6〜36までの数値で表し、 数値が小さく なるにしたがって味覚は良好である)、濾紙デイスク法 (異なる濃度の甘味、塩味、 酸味、 苦味物質を舌に載せた円形の濾紙に滴下し、 呈味物質刺激を感じる濃度を スコア化する方法。 D:と表示。 _1〜6 までの数値で表し、 数値が減少するに従つ て、 良好な味覚と判断する、 平均は 3。) を味覚受容体の遺伝子増幅と同時に施行 した。 電気刺激法 (E)、 濾紙ディスク法 (D) の結果は電気泳動の結果の下段に 示した (図 1 0 )。
( 2 ) 結果と考察
(i)被験者が感じる痛みの程度(Pで示しだ値)は 10/18/04に 10であったのが、 時間経過に伴い 7, 5, 2,1-2と減少していることから、 初診時の痛みは検查 5回目 にはかなり減少したことがわかる。 したがって上記判断基準から、 本実施例の患 者は舌痛症治療に成功したといえる。
(ii) 血清中の亜鉛濃度 (Znで示した値) は一回目、 三回目、 五回目の検査時に 測定され、 回数をかさねるごとに 73, 102, 105 g/100mlと増加することがわか
る。 亜鉛は初診時から g口投与されていた。
(iii) 図 1 0左は左側の葉状乳頭組織から擦過して得られた組織中に発現する味 · 覚受容体遺伝子のパターンである。 10/18/04のとき、 舌痛を有する左側葉状乳頭 組織では PCR産物のバンドは認められなかった。 このとき濾紙ディスク法によ る味覚検查は 4味のすべてでスコア 6を示し (Dで示した値)、 電気刺激法によ る味覚検查でも舌に対する電気刺激がスケールオーバーして (Eで示した値) い た。 すなわち、 遺伝子発現で見ても呈味物質、 電気による刺激に対してもまった く反応しなかった。
一方、 右側葉状乳頭組織内の味覚受容体発現は THTR11は明瞭な PCR産物の パンドが見える他は T2R8,9にやや PCR産物のパンドが見えるだけで、塩味の他 は濾紙ディスク法も、 電気刺激法でも良好な結果は得られていない。
(iv)一段目からほぼ一ヶ月が経過した二段目の 11/15/04でも左側には味覚受容 体の発現は認められず、 また一ヶ月前と比較するとやや味箕に対する感覚が増し てきたもののあまり良好な結果は得られていない (D値)。
右側は T2R3,9,10,13 の発現が認められるが、 塩味、 酸味、 苦みに対する良好 な応答は認められなかった (D値)。 しかし電気刺激に対する応答は良好な結果 であった (E値)。
(V) 図 3段目の 12/13/04では THTR11/T2R8の PCR産物のバンドがわずかな がら認められた。 T2R3のバンドは本来の位置とは異なるため T2R3は発現して いないと思われる。 しかし濾紙ディスク法による味覚検査 (D値)、 電気刺激に 対する応答 (E値) は 10/18/04と比較するとかなり良好なものとなった。 このと き抑鬱傾向を判定するため日本版 SDS検査を施行した。 これは被験者が正常、 神経症状、 精神病を判断するための検査である。 このとき患者は神経症状である という結果が得られた。
同日の右側葉状組織における発現は THTR11,4, T2R3,9,10,16がかろうじてバ ンドが視認された。 T2R8はかなり明瞭なバンドが確認された。
(vi) 1/17/05は左側のみ検査が行われたが、味覚受容体の発現はわずかであった。 このとき甘み、 塩味に対する応答は良好であったものの、 患者はこの検查中、 甘
味と苦味を取り違えた (f)値)。
(vii) 5回目の検查 (2/14/05)時、 患者は家庭内の問題が解決し、 気持ちも楽にな り、 食事の味がよくわかると担当歯科医に説明した。 すなわち、 · 5回目の検查時 には、患者はストレスから解放されていたといえる。 VASは 4回目の検査とほぼ 同様の 1-2と舌痛からの痛みはかなり消失している (Ρ値)。濾紙ディスク法によ る味覚検査は酸味は 4とやや不良ではあるが、 甘味、 塩味、 苦味は 3であり、 ほ ぼ正常である (D値)。 また電気刺激による味覚検査は左右とも- 4であり、 初回 の検査でスケールオーバーしても電気刺激に応答しなかつた状態と比較すると、 ほとんど正常に近い結果が得られた (Ε値)。
舌痛症を発症していなレ、右側でも濾紙デイスク法も電気刺激法もほぼ正常なス コアを得た (D値、 Ε値)。
味覚受容体遺伝子発現を検討したところ、 左右ともこの 5回の検査の中でもつ とも発現しており、 患者本人からの自発的な感覚とも一致する。 ストレスのあつ た 1回目の検査から 4回目の検査に比べて、 5回目の検査では味覚受容体遺伝子 発現量が増大しており、 濾紙ディスク法、 電気刺激法の結果も良好であった。。
(viii) 患者本人によると、 3年以上前に配偶者と死別以降、 やや抑鬱傾向が認め られ、 同時期に入歯の治療から舌痛症を発症し、 発症とほぼ同時期から味覚を感 じなくなつたということである。 二回目の検查時に抑鬱傾向を検査したところ抑 鬱傾向が認められた。 本人の表情が明るくなり、 また本人から家庭内のトラブル (娘との同居等) が円満に解決したとの説明、 さらに最近は食事の味がよくわか ると報告した 5回目の検査(2/14/05) 以前は、持続的に抑鬱的な状況にあったも のと思われる。
上記のように、 狭義の舌痛症は 「心理情動因子に起因し、 舌に表在性の異常感 を訴えるが、 それに見合うだけの器質的 (肉眼的) 変化がないもの」 と定義され ているが、 この舌痛症の検查基準の一つとしてこの味覚受容体発現の検査を加え ることにより、 遺伝子発現の変化がない心因性の舌痛症なのか、 あるいは味覚異 常も併発した舌痛症なのか、 という舌痛症の新たな判断基準を作り出す可能性が 考えられる。 すなわち、 本発明により、 舌痛症は患者本人の気持ちの問題、 心気
症的なものとして分類さ ているが、 この心気症的なものとして分類される舌痛 症を、 遺伝子発現の有無という具体的にスコア化が可能な指標をもとに検査する ことが可能である。
本実施例では、 舌痛症の痛みがなくなることによって、 味覚受容体遺伝子発現 の増加と濾紙ディスク、 電気刺激法による味覚検査の良好な結果がパラレルに起 きた。 したがって、 舌痛症の患者に患者でも理解できる具体的な治療結果として 味覚受容体遺伝子発現の程度を示すことが可能である。 また、 舌痛症、 抑鬱な どを包括したストレスという事象は、 現代の我々に日常茶飯事に向き合うもので ある。 しかしながらその実態は明らかではなく、 結果的に高血圧、 生活習慣病、 胃潰瘍などの病気を発症することはあっても、 ス トレスの程度を具体的に表した 信頼できる指標は多くない。 本実施例の結果から、 大きなストレスによって舌上 皮中の味覚受容体遺伝子発現が抑えられることから、 味覚受容体遺伝子発現の検 討は、 ストレスのスコア化に寄与する可能性が高いといえる。 · 本実施例は、 舌痛症と診断された患者において以下の事項を示している。
1)舌痛症とともに味覚異常を併発していることがわかる。 また、 濾紙ディスク 法の検査結果が不良な味覚異常時には舌上皮の味覚受容体遺伝子発現が抑制され ていることが明らかである。
2)患者の舌痛症が改善するに従い、 味覚受容体遺伝子発現が認められ、 それに ともなって濾紙ディスク法による味覚検査も良好な結果が得られている。 このこ とから味覚受容体遺伝子発現と濾紙ディスク法による検査結果に関連があること がわかる。 味覚受容体遺伝子の発現量を舌痛症の診断基準の一つに加え得るとい える。
3)—般的に舌痛症はストレスと関連することから、 味覚受容体遺伝子の発現量 を測定することによって、 味覚と遺伝子発現の関連のみならず、 ストレスの程度 と舌味覚受容体遺伝子発現との関連が推測可能である。すなわち、本発明により、 スコア化が困難なストレスの程度を味覚受容体遺伝子発現で表現することができ る。 .
産業上の利用の可能性
本発明によれば、 非観血的な方法で採取する口腔由来サンプルを用いた味覚異 常の検査方法が提供される。 当該方法により、 味覚異常を認識しない初期段階に おいても異常を見つけることが可能となる。 また、 本発明により新たな舌痛症の 検查方法およびストレスの検査方法が提供される。 配列表フリーテキスト
配列番号 4 5〜配列番号 8 8 :プライマー