5 一フタランカルボ二トリル及びシ夕ロプラムの製造方法
技術分野
本発明は、 抗うつ剤であるシ夕ロプラム及びその中間体として有用な 5 一フタラン力ルポ二トリル化合物の製造方法に関する。
明
細
背景技術
式 (III)
で表される化合物 (シ夕口プラム) は、 抗うつ剤として有用な化合物であ り、 その製造方法としては、 以下の反応スキームで表される方法が知られ ている (例えば、 JP2002-121161-A、 WO2001/62754-A参照)。
上記反応スキームの式 ( I ) で表されるォキシム化合物の脱水工程にお いて、 従来より、 脱水剤として、 無水酢酸又は塩化チォニルが用いられて いる。
発明の開示
本発明の一の目的は、 ォキシム化合物の脱水工程を含むシタロプラムの 製造方法において、 該脱水工程が比較的低い温度でも工業的に十分適用可
能な反応速度で実施でき、 且つ該脱水工程における生成物、 延いては次ェ 程で得られるシ夕ロプラムの着色を抑制することができる方法を提供する ことにある。
本発明は以下の通りである。
< 1 > 式 ( I )
で表される化合物を、 ォキサリルクロリ ドと反応させることを含む式 (II)
で表される化合物の製造方法。
< 2 > 反応が、 0〜 5 0 °Cの温度範囲で行なわれる < 1 >に記載の方法。 < 3 > 反応が、 芳香族炭化水素溶媒と非プロトン性極性溶媒との混合物 中で行われるぐ 1 >または < 2 >に記載の方法。
<4> 芳香族炭化水素類と非プロトン性極性溶媒との混合物が、 トルェ ンと 1 , 3—ジメチルー 2—イミダゾリジノンとの混合物である < 3 >に 記載の方法。
< 5>式 ( 1 )
で表される化合物を、 ォキサリルクロリ ドと反応させて式 (II)
で表される化合物を得ることを含む工程、 及び
該式 (II)で表される化合物を、 3ージメチルァミノプロピル八ライドと反応 させることを含む工程を含む式 (III)
で表される化合物の製造方法。
発明を実施するための最良の形態
まず、 本発明における製造方法の工程スキームを以下に示す。
脱水工程
当該工程は、 化合物 ( I ) をォキサリルクロリ ドと反応させることによ り実施することができ、 通常は有機溶媒中で行われる。 具体的には、 例え ば、 化合物 ( I ) を有機溶媒に溶解させ、 該溶液にォキサリルクロリ ドを 添加する方法によって行うことができる。 また、 ォキサリルクロリ ドと有 機溶媒の混合液中に、 化合物 ( I ) を添加する方法でもよい。 反応収率、 副生成物の生成などを考慮すると、 ォキサリルクロリ ドと有機溶媒の混合 液中に、 化合物 ( I ) を添加する方法が好ましい。
出発物質である化合物 ( I ) は、 例えば特開 2 0 0 2 — 1 2 1 1 6 1号
公報に記載の方法に準じて製造することができる。 ォキサリルクロリ ドは 公知方法により合成したもの又は市販品を使用することができる。
有機溶媒としては、 反応を阻害しない溶媒であれば特に限定はなく、 酢 酸ェチル; ァセトニトリル;ニトロェタン; トルエン、 キシレン等の芳香 族炭化水素溶媒; クロ口ベンゼン、 1 , 2—ジクロロベンゼン、 ジクロロ メタン等のハロゲン化炭化水素溶媒; N, N—ジメチルホルムアミド (D MF)、 N, N—ジメチルァセトアミ ド (DMA)、 N—メチルー 2—ピロ リ ドン (NMP)、 1, 3—ジメチルー 2—イミダゾリジノン (DM I )、 ジメチルスルホキシド (DMS O) 等の非プロトン性極性溶媒;及びこれ らの混合溶媒等が挙げられる。 これらのうち、 好ましくは非プロトン性極 性溶媒と、 ァセトニトリル、 トルエン、 キシレン、 N—メチルピロリ ドン、 ニトロェタン、 酢酸ェチル及び芳香族炭化水素から選ばれる少なくとも 1 種との混合溶媒等が挙げられる。 特に、 芳香族炭化水素溶媒と非プロトン 性極性溶媒との混合溶媒は、少ない溶媒量および低い反応温度においても、 反応系の撹拌性が低下することなく反応が進行するため、 収率及び経済性 の観点から、 とりわけ好ましい。中でも、 トルエンと DM I との混合溶媒、 トルエンと DMFとの混合溶媒、 トルエンと DMAとの混合溶媒、 キシレ ンと DM I との混合溶媒、 キシレンと DM Fとの混合溶媒及びキシレンと DMAとの混合溶媒がさらに好ましく、 特にトルエンと DM I との混合溶 媒が特に好ましい。 芳香族炭化水素溶媒と非プロトン性極性溶媒との混合 溶媒における好ましい混合比 (体積比) は、 2 0/ l〜 l Z l (芳香族炭 化水素溶媒 Z非プロトン性極性溶媒) であり、 より好ましくは、 1 0 1 〜 2 / 1である。
芳香族炭化水素溶媒と非プロトン性極性溶媒との混合溶媒を使用する場 合は、 芳香族炭化水素類、 非プロトン性極性溶媒およびォキサリルクロリ ドの混合液中に、 化合物 ( I ) と芳香族炭化水素溶媒の混合液を添加する のが好ましい。 この際、 非プロトン性極性溶媒の使用量は、 ォキサリルク ロリ ドに対して 0. 2〜 2重量倍となるのが好ましく、 0. 7〜 1. 5重
量倍となるのがより好ましい。
有機溶媒の量は、 化合物 ( I ) 1 k gに対し、 通常 0. 5〜 5 0 Lであ り、 好ましくは 1〜2 0 Lである。 ただし、 芳香族炭化水素類と非プロト ン性極性溶媒との混合溶媒を用いる場合には、化合物( I ) 1 k gに対し、 通常 5〜 2 0 L、 好ましくは 1〜: 1 0 L程度でよい。
さらに詳細には、 芳香族炭化水素溶媒、 非プロトン性極性溶媒およびォ キサリルクロリ ドの混合液中に化合物 ( I ) と芳香族炭化水素類の混合液 を添加する場合は、 化合物 ( 1 ) 1 k gに対し、 通常 2〜 1 0 L、 好まし くは 2〜 5 Lの芳香族炭化水素類、 非プロトン性極性溶媒およびォキサリ ルクロリ ドの混合液中に、 化合物 ( I ) と化合物 ( I ) 1 k gに対し、 通 常 1. 5〜 1 0 L、 好ましくは 1. 5〜 5 Lの芳香族炭化水素類の混合液 を滴下する態様が特に好ましい。
ォキサリルクロリ ドの使用量は、 化合物 ( I ) 1モルに対し、 通常 1〜 2モルであり、 好ましくは 1〜 1. 5モルである。
反応温度は、 通常 0〜 5 0 °Cであり、 好ましくは 1 0〜 40 °Cである。 反応時間は、 通常 1 0分〜 5時間であり、 好ましくは 3 0分〜 2時間で ある。
反応終了後、 反応液を中和後、抽出、 結晶化、濃縮等の公知方法により、 目的の化合物 (II) を単離することができる。 さらに、 再結晶、 シリカゲ ルカラムクロマトグラフィー等の方法により目的の化合物 (II) を精製す ることができる。 アルキル化工程
当該工程は、 化合物 (II) を 3—ジメチルァミノプロピルハラィド (例、 3ージメチルァミノプロピルク口リ ド、 3—ジメチルァミノプロピルプロ ミ ド、 3—ジメチルァミノプロピルョ一ジド等) と反応させることにより 実施することができる。
具体的には、 W098-19511-Aまたは US6458975に記載の方法によって実
施することができ、 US6458975 に記載の、 化合物 (II) 及び 1, 3—ジメ チル— 2—イミダゾリジノンの溶液に N, N , N,, N '—テトラメチルェ チレンジァミンを添加する方法、 及び化合物 (II) 及び N, N, N,, N, —テトラメチルエチレンジァミンの溶液に 1, 3—ジメチルー 2—イミダ ゾリジノンを添加する方法が好ましい。
これにより、 抗うつ薬として有用な化合物である化合物 (III) (シタ口 プラム) を製造することができる。 以下、 実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、 本発明はこ れらに限定されるものではない。
実施例 1 1-(4'-フルオロフェニル)-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン- 5-カル ポニトリルの合成 (脱水工程)
トルエン (55mL)、 D M I (7mL) および 1-(4'-フルオロフェニル)-1,3- ジヒドロイソべンゾフラン- 5-カルバルデヒド ォキシム (13.6g, 0.0529モ ル) を仕込み、 20±2°Cでォキサリルクロリ ド (7.3g, 0.0575モル, 1.09eq) を 40分かけて滴下し、 1時間同温度で保温した。 L C分析で原料消失を確 認後、 反応混合物にトルエン (14mL) を仕込み、 水 (70mL) を 20〜25°C で滴下した。 30分間攪拌後水層を分液し、有機層を 10%ソーダ灰水(70g)、 次いで水 (70g) で洗浄した。 水層を分液し、 有機層に無水硫酸マグネシゥ ム (1.36 g ) を加えて脱水した後、 無機物をろ別して 1-(4'-フルオロフェニ ル) -1,3-ジヒドロイソべンゾフラン- 5-力ルポ二トリルのトルエン溶液(90.0 g ) を得た。反応液のガードナー色数を JIS K5400に準拠して評価した結 果、 10であった。 濃縮して 1-(4'-フルオロフェニル)-1,3-ジヒドロイソベン ゾフラン- 5-力ルポ二トリル ( ll.7g) を得た (収率 = 93.7%)。
融点 96 _ 98°C ;
IR(KBr)v=3050(w), 2867(m), 2228(s), 1603(s), 1510(s), 1224(s), 1157(m), 1048(s), 1031(s), 832(8)0 -1;
1H-NMR (CDC13, 400MHz) d=5.21(lH, d, J=13Hz), 5.34(1H, d, J=13Hz),
6.16(1H, s), 7.06(2H, t, J=9Hz), 7.10(1H, d, J=8Hz), 7.27(2H, dd, J=9Hz, J=5Hz), 7.55(1H, d, J=8Hz), 7.60(1H, s)ppm. 実施例 2 1-(4'-フルオロフェニル )-l,3-ジヒドロイソベンゾフラン -5-カル ポニトリルの合成 (脱水工程)
トルエン(27mL)、 D M I (7mL)およびォキサリルクロリ ド(7.3g, 0.0575 モル, 1.09eq) を仕込み、 30±2°Cで 1-(4'-フルオロフェニル)-1,3-ジヒドロ イソべンゾフラン- 5-カルバルデヒド ォキシム (13.6g, 0.0529モル) とト ルェン (34mL) の混合スラリー溶液を 40分かけて滴下し、 同温度で 30分 保温した。 L C分析で原料消失を確認後、 反応混合物に水 (70mL) を 20 〜25°Cで滴下した。 30分攪拌後水層を分液し、有機層を 10%ソ一ダ灰水(70 g ) , 次いで水 (70 g ) で洗浄した。 水層を分液後、 1-(4'-フルオロフェニ ル) -1,3-ジヒドロイソベンゾフラン -5-力ルポ二トリルのトルエン溶液(75.3 g ) を得た。 濃縮して 1-(4'-フルオロフェニル )-1,3-ジヒドロイソべンゾフ ラン- 5-力ルポ二トリル (12.3 g ) を得た (収率 = 97.8%)。 実施例 3 1-(4'-フルオロフェニル)-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン- 5-カル ポニトリルの合成 (脱水工程)
トルエン (129mL)、 D M I (26mL) およびォキサリルクロリ ド (27.9g) を仕込み、 25±5°Cで 1-(4'-フルオロフェニル )-1,3-ジヒドロイソベンゾフラ ン -5-カルバルデヒド ォキシム (51.5g) とトルエン (103mL) の混合スラ リー溶液を 52分かけて滴下し、 トルエン (26mL) で洗浄の後、 同温で 30 分保温した。 L C分析で原料消失を確認後、 反応混合物に水 (257mL) を 20〜30°Cで滴下した。 30分攪拌後水層を分液し、 有機層をソーダ灰 (10.3 g )、 並塩 (25.7 g ) 及び水 (232mL) の混合溶液、 次いで並塩 (25.7 g ) 及び水 (232mL) の混合溶液で洗浄した。 水層分液後、 有機層に無水硫酸 マグネシウム (5.1 g ) を加えて 28°Cで 1時間攪拌した。 硫酸マグネシゥ ムをろ別し、 トルエン (26mL) で洗浄し、 1-(4'-フルオロフェニル )-1,3-ジ
ヒドロイソベンゾフラン -5-カルボ二トリルのトルエン溶液(278.5 g ) を得 た。 L C定量分析により、 1-(4'-フルオロフェニル )-1,3-ジヒドロイソベン ゾフラン- 5-力ルポ二トリルの含量は、 15.4%であった。 実施例 4 (色相比較)
トルエン (12 mL)、 D M I (1.5 mL) および 1-(4'-フルオロフェニル)-1,3- ジヒドロイソベンゾフラン -5-力ルバルデヒド 才キシム (3.0g) を仕込み、 30±2°Cでォキサリルクロリ ド (1. 78g) を 30分かけて滴下し、 30分同温 で保温した。 L C分析で原料消失を確認後、反応液のガードナ一色数を JIS K5400に準拠して測定した結果、 10であった。 比較例 1 (色相比較)
トルエン ( 10 mL)、 1-(4'-フルオロフェニル)-1,3-ジヒドロイソべンゾフ ラン- 5-カルバルデヒド ォキシム(2.6g)を仕込み、 80±2°Cでチォニルクロリ ド(1.3 mL)を 10分かけて滴下し、 1時間同温で保温した。 L C分析で原料 消失を確認後、反応液のガ一ドナー色数を JIS K5400に準拠して測定した 結果、 14であった。 比較例 2
トルエン (10mL;)、 1-(4'-フルオロフェニル)-1,3-ジヒドロイソベンゾフラ ン -5-カルバルデヒド 才キシム (2.6g) を仕込み、 80±2°Cでチォニルクロ リ ド (1.3mL) を 10分かけて滴下し、 1時間同温度で保温した。 LC分析で 原料消失を確認後、反応液のガードナー色数を JIS K5400に準拠して評価 した結果、 14であった。
冷却後、 反応液を濃縮し、 ヘプタンで再結晶することにより 1-(4'-フル オロフェニル )-1,3-ジヒドロイソべンゾフラン- 5-力ルポ二トリル (2.0g) を 得た (収率 = 84%)。
実施例 5 l-(3-ジメチルァミノプロピル) -1-(4'-フルオロフェニル )-1, 3-ジ ヒドロイソべンゾフラン- 5-力ルポ二トリル (シ夕口プラム) の合成 (アル キル化工程)
60 %水素化ナトリウム (0.92g) をテトラヒドロフラン (THF, 30mL) に 分散させた懸濁液に、 実施例 1と同様の方法で得られた 1-(4'-フルオロフ ェニル)-1, 3-ジヒドロイソべンゾフラン- 5-力ルポ二トリル (4.80g) の THF ( lOmL) 溶液を 40〜50°Cで滴下した。 同温度で 30分間攪拌した後、 3— ジメチルァミノプロピルクロリ ド (3.2g) のトルエン (20mL) 溶液を滴下 し、 10分間攪拌した。
その後、 更にジメチルスルホキシド (30mL) を滴下し、 65〜70°Cで 3時間 攪拌した。 反応液を氷水 (200mL) にあけ、 トルエン (60mL) で 3回抽出 した。 有機層を 20 %酢酸水 (60mL) で 2 回抽出し、 水層を中和後、 トル ェン (60mL) で 2回抽出した。 有機層を水洗後、 無水炭酸カリウム (2g) およびシリカゲル (2g) を加え、 攪拌、 濾過し、 溶媒を留去することによ り、 粘稠オイル状の 1-(3-ジメチルアミノプロピル) -1-(4'-フルオロフェニ ル) -1, 3-ジヒドロイソベンゾフラン -5-力ルポ二トリル (シタ口プラムべ一 ス, 3.37g) を得た (収率 = 51.6 % )。
1H-NMR(CDC13, 400MHz) d=1.26〜 .52(2H, m), 2.11〜2.26(4H, m), 2.13(6H, s), 5.15(1H, d, J=13Hz), 5.19(1H, d, J=13Hz), 7.00(2H, t, J=9Hz), 7.41(1H, d, J=8Hz), 7.43(2H, dd, J=9Hz, J=5Hz), 7.50(1H, s), 7.59(1H, d, J=8Hz)ppm. このものを常法により臭化水素酸塩とした結晶の融点は 184〜186°Cで あった。 実施例 6 1-(3-ジメチルァミノプロピル) -1-(4'-フルオロフェニル )-1 , 3-ジ ヒドロイソベンゾフラン -5-力ルポ二トリル (シ夕口プラム) の合成 (アル キル化工程)
1,3-ジメチル -2-ィミダゾリジノン (540mL) およびトルエン ( 240mL) の混合溶媒中で、 実施例 4と同様の方法で得られた 1-(4'-フルオロフェニ
ル) -1,3-ジヒドロべンゾフラン- 5-力ルポ二トリル (120g)、 3- (ジメチルアミ ノ)プロピルクロリ ド (82g) および 60重量%水素化ナトリウム (24g) を 混合し、 内温 60°Cで反応させた。 反応終了後、 5重量%塩酸 700gに反応液 を加え、 静置後、 有機層と水層に分離した。 水層を 25重量%水酸化ナトリ ゥム水溶液 160gで中和した後、 トルエンで 2回 (1回目 600mL使用、 2回 目 240mL使用) 抽出した。 有機層を水洗後、 無水炭酸カリウム 48gおよび シリカゲル 18gを加え、 攪拌、 濾過し、 溶媒を留去することにより、 粘稠 オイル状の 1-(3-ジメチルアミノプロピル) -1-(4,-フルオロフェニル)-1,3-ジ ヒドロイソベンゾフラン -5-力ルポ二トリル (シタ口プラムべ一ス) 51gを 得た。 (収率 =93%) 本発明によれば、 ォキシム化合物の脱水反応を室温程度の比較的低い温 度で実施でき、また当該反応における生成物の着色を抑えることができる。 従って本発明は、 ォキシム化合物の脱水工程を含むシタロプラムの製造方 法の工業的な規模での実施に際し、 好適である。