明 細 書
γーァミノ酪酸含有食品の製造方法、及び γ—ァミノ酪酸高生成能を有 する酵母
技術分野
[0001] 本発明は、 γ—ァミノ酪酸含有食品の製造方法、及びそれに使用される —ァミノ 酪酸高生成能を有する酵母に関する。
背景技術
[0002] γーァミノ酪酸( γ -aminobutyric acid,本明細書中で GABAと略記することがある) は自然界に広く分布している非タンパク質組成アミノ酸の 1種である。食品の成分とし て、微量ながら各種の穀類、野菜、果物、キノコに含有されている。動物の脳や脊髄 にも存在し、哺乳類の中枢神経系の代表的な抑制系の神経伝達物質として知られて いる。
[0003] yーァミノ酪酸の生理機能として、上記の神経伝達物質としての機能をはじめ、血 圧降下作用、神経安定作用、腎機能活性化作用、肝機能改善作用、肥満防止作用 、アルコール代謝促進作用など多岐に亘る機能が知られている。そして、脳の血流を 改善し酸素供給量を増加させ脳代謝を亢進させる働きをもつことから、実際に医薬 品として、脳卒中後遺症の改善、脳動脈硬化による頭痛、耳鳴り、意欲低下などの治 療にも応用されている。
[0004] 従って、 日常の食生活から γ—ァミノ酪酸を充分に摂取できれば、人々の健康維 持や各種疾病の予防に役に立つことが期待されるため、各種物理的又は化学的な 処理を施して食品中の γ —アミノ酪酸含量を高める様々な方法が開発され、報告さ れている。例えば、茶葉を窒素ガス中に嫌気処理して得られた「ギヤバロン茶」(特開 昭 63-103285号公報)、米胚芽や胚芽を含む米糠を水に浸漬処理して得られた GA ΒΑ富化素材「オリザギヤバ」(特許第 2810993号)、玄米を発芽させて得られた GAB A含有「発芽玄米」(特開平 11-24694号公報)、ァガリタス酵素の分解による得られた GABA高含有「発酵ァガリタスエキス」などが知られている。
[0005] 一方、乳酸菌や酵母、麹菌など天然微生物の発酵反応機能や酵素分解機能を利
用することによって、 γーァミノ酪酸を高含有食品素材の製造方法も数多く研究され 、報告されている。例えば、乳酸菌による方法 (特許文献 1〜8)、酵母による方法 (特 許文献 9)、麹菌による方法(特許文献 10及び 11)などが知られている。
し力、しながら、以上の物理的又は化学的な処理によって得られた食品中の Ί—アミ ノ酪酸含量は市場の要求を満足するレベルのものとは言い難い。そして、これらの処 理品自身が最終的に消費される食品形態であるため、機能性素材として他の食品に 添加できる範囲が限られ、汎用性に欠ける。また、乳酸菌による発酵反応によって多 量の γ—アミノ酪酸を生成する方法では、 y—ァミノ酪酸は乳酸菌の持つグノレタミン 酸デカルボキシラーゼによる単純な酵素反応の産物として生成されるため、 γ—アミ ノ酪酸以外の機能性成分はあまり得られず、より総合的な機能性作用の発揮が期待 できない。また、酵母、麹菌などの微生物処理により Ί—ァミノ酪酸を生成する方法 では、例えば、酵母を予めアセトン処理して乾燥させたものでなければ、望ましい γ ーァミノ酪酸の生成効果は得られないため、処理工程が複雑となり、工場での大量 生産に適さずコスト増につながる。そして、アセトン処理した酵母を使用した場合であ つても、酵母(乾燥物基準)を反応液総量に対して 30〜40%程度以上の高濃度で添 加しなければ、 Ίーァミノ酪酸を多量に生成することはできないため、これらの方法 は実用性のなレ、方法だと言わざるを得なレ、。
特許文献 1 :特開平 6— 45141号公報
特許文献 2:特開平 10— 295394号公報
特許文献 3:特開 2000— 308457号公報
特許文献 4 :特開 2000— 210075号公報
特許文献 5 :特開 2001— 120179号公報
特許文献 6 :特開 2003— 180389号公報
特許文献 7:特開 2003— 70462号公報
特許文献 8:特許第 2704493号公報
特許文献 9:特開平 9一 238650号公報
特許文献 10 :特開平 10— 165191号公報
特許文献 11:特開平 11 _ 103825号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0007] 本発明は微生物を用いて γ —アミノ酪酸を簡便かつ大量に生成する手段を提供す ることを目的とする。
課題を解決するための手段
[0008] (1)糖類若しくは糖代謝中間体、又は、糖類若しくは糖代謝中間体及びグルタミン酸 若しくはその塩に、糖類又は糖代謝中間体の存在下において発酵反応により Ί—ァ ミノ酪酸を生成する能力を有する酵母又はその処理物を作用させることを特徴とする yーァミノ酪酸含有食品の製造方法。
[0009] (2)前記酵母がピキア属又はカンジダ属に属する酵母であることを特徴とする(1)に 記載の方法。
[0010] (3)前記酵母がピキア.ァノマラ MR— 1 (受託番号 FERM BP— 10134)又はその γ—ァミノ酪酸を生成する能力を有する変異株である(1)又は(2)に記載の方法。
[0011] (4)糖類若しくは糖代謝中間体、又は、糖類若しくは糖代謝中間体及びグルタミン酸 若しくはその塩を含有する、動物、植物若しくは微生物の可利用部分、動物、植物若 しくは微生物から抽出されたエキス、又は前記可利用部分若しくはエキスを原料とす る食品材料に前記酵母又はその処理物を作用させることを特徴とする(1)〜(3)のい ずれかに記載の方法。
[0012] (5) γ—ァミノ酪酸生成反応が初発 ρΗ3. 0〜6. 0且つ温度 32〜55°Cの条件にお いて行われることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
[0013] (6) yーァミノ酪酸を含有する反応液を更に分離、精製、濃縮又は乾燥することによ り Ίーァミノ酪酸の濃度を高める工程を含む(1)〜(5)のレ、ずれかに記載の方法。
[0014] (7) (1)〜(6)のいずれかに記載の方法により製造された γ—アミノ酪酸含有食品。
[0015] (8) 200ml容の三角フラスコ中のグルコース 5重量%及びグルタミン酸 1重量%を含 む水溶液 50mlに、水分 78. 8重量%の生菌体を 1. Og添カロし、 45°Cにおレ、て 24時 間振とうした後、 85°Cにおいて 15分間加熱失活させ、遠心分離し、上清を濃縮して 容量を 25mlに定容して得られる溶液中の γ—アミノ酪酸濃度を測定した場合に、該 濃度が 150mg/l00ml以上となる量の γ—アミノ酪酸を生成する能力を有する、ピ
キア'ァノマラに属する酵母。
[0016] (9)ピキア 'ァノマラ MR—1 (受託番号 FERM BP— 10134)又はその γ—アミノ酪 酸を生成する能力を有する変異株である酵母。
[0017] (10)ピキア属に属する酵母を含有する食品。
発明の効果
[0018] 本発明により Ί—ァミノ酪酸を簡便かつ大量に生成することができる。本発明の酵 母は γ—ァミノ酪酸を発酵反応により生成することから、本発明の酵母を用いて製造 された γ —アミノ酪酸含有食品は、 yーァミノ酪酸だけでなく他の有用な発酵産物を 含有する。
[0019] 本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願 2004-333671号の明細書 および/または図面に記載される内容を包含する。
図面の簡単な説明
[0020] [図 1]本発明の MR—1株と公知のピキア ·ァノマラ酵母(AY231611.1)との ITS-5.8S r DNA遺伝子の塩基配列の比較結果を示す図である。相同性は 97.6%であった。
[図 2]本発明の MR_ 1酵母と公知の NBRC— 100267酵母の増殖に及ぼす食塩濃 度の影響の差異を示す図である。
[図 3]MR— 1酵母の増殖に及ぼす培養温度の影響を示す図である。
発明を実施するための最良の形態
[0021] 以下、本発明をより詳細に説明する。なお本明細書において「%」とは特に断りのな い限り「重量%」を意味する。
[0022] 本発明者らは、機能性成分である Ίーァミノ酪酸のより幅広い食品への利用を可 能にするため、微生物による γ _アミノ酪酸を簡単かつ大量に生成する方法につい て検討を行った。特に、生菌体のままで特別な処理を施すことなく Ί—ァミノ酪酸を 生成することができる微生物の探索を目的として鋭意研究を重ねた結果、海洋に生 息している微生物の一種であり、糖類又は糖代謝中間体の存在下において生菌体 内反応によって、高い γ —アミノ酪酸生成能を有する海洋酵母を発見した。この酵母 を用いることにより、簡単な方法で短時間に τ —ァミノ酪酸をはじめとした天然代謝 産物を多量に生成できることが確認された。また、遺伝学的、生理生化学的同定試
験を通じて、この酵母はピキア ·ァノマラ(Pichia anomala)に属する新規株であるこ とが確認され、本発明者らにより Pichia anomala MR— 1 (ピキア'ァノマラ MR 1)と命名され、 2004年 9月 28日付けで独立行政法人産業技術総合研究所特許 生物寄託センター (日本国 茨城県つくば巿東 1丁目 1番地 1中央第 6)に寄託されて レ、る(受託番号 FERM BP— 10134)。当該寄託は 2004年 9月 28日付けで株式会 社二チレィ'加工食品カンパニー(日本国千葉県千葉巿美浜区新港 9番地 (郵便番 号 261— 8545) )によりなされ、本出願前の 2005年 10月 18曰(受領曰 2005年 10 月 21日)に本出願の出願人である株式会社ニチレイフーズ(日本国東京都中央区 築地 6— 19— 20 (郵便番号 104— 8402) )に名義が変更された。
[0023] 本発明の Ί—ァミノ酪酸またはそれを含有する食品の製造方法には、ピキア 'ァノ マラ MR— 1株に限らず、糖類又は糖代謝中間体の存在下において発酵反応により y—ァミノ酪酸を生成する能力を有する酵母が好適に使用される。このような能力を 有する酵母としては例えばピキア属又はカンジダ属に属する酵母が挙げられる。より 具体的には、ピキア 'ァノマラ(例えばピキア 'ァノマラ NBRC— 10213、ピキア 'ァノ マラ NBRC— 100267)、ピキア 'ジャジニ(Pichia jadinii, anamorph: Candida utilis) (例えばピキア 'ジャジニ NBRC— 0987)、カンジダ'ュチリス(Candida ut ilis) (例えばカンジダ*ュチリス NBRC— 10707)が挙げられるがこれには限定され ない。上記の酵母はいずれも、酵母菌体自体の懸濁液として本発明の方法に使用 すること力 Sできる。上記の酵母は、適当な担体に担持させた、いわゆる固定化酵母の 形態で使用することもできる。本明細書における酵母の「処理物」としては例えばこの 固定化酵母が挙げられる。
[0024] ピキア 'ァノマラ MR— 1株と同等又はそれ以上の γ _アミノ酪酸生成能を有する酵 母は従来知られていなレ、。このような酵母としては、例えば、 200ml容の三角フラスコ 中のグルコース 5重量%及びグルタミン酸 1重量%を含む水溶液 50mlに、水分 78. 8重量%の生菌体を 1. 0g添カ卩し、 45°Cにおいて 24時間振とうした後、 85°Cにおい て 15分間加熱失活させ、遠心分離し、上清を濃縮して容量を 25mlに定容して得ら れる溶液中の γ—アミノ酪酸濃度を測定した場合に、該濃度が 150mg/l00ml以 上、好ましくは 200mgZl00ml、より好ましくは 300mg/l00mlとなる量の γ—アミ
ノ酪酸を生成する能力を有する酵母が挙げられる。また、 γーァミノ酪酸を生成する 能力を有する限り、ピキア 'ァノマラ MR— 1の変異株もまた好適に使用される。変異 誘発処理は任意の適当な変異原を用いて行われ得る。ここで、「変異原」なる語は、 その広義において、例えば変異原効果を有する薬剤のみならず UV照射のごとき変 異原効果を有する処理をも含むものと理解すべきである。適当な変異原の例としてェ チルメタンスルホネート、 UV照射、 N—メチル一 N' —ニトロ一 N—ニトロソグァニジ ン、プロモウラシノレのようなヌクレオチド塩基類似体及びアタリジン類が挙げられるが 、他の任意の効果的な変異原もまた使用され得る。
[0025] ピキア 'ァノマラ MR— 1は、糖類又は糖代謝中間体の存在下において GABAを生 成し、糖類又は糖代謝中間体が存在せずグルタミン酸が存在する条件下では GAB Aを少量しか生成できない。従来公知の GABA生成酵母は、グルタミン酸又はその 塩が存在しない限り GABAを生成できないとレ、う点で顕著に相違する。またピキア · ァノマラ MR— 1は驚くべき事に、糖類又は糖代謝中間体とグルタミン酸又はその塩 とが共存する条件下においては相乗的に多量の GABAを生成することが可能である
[0026] ピキア 'ァノマラ MR— 1による GABA生成反応は以下の特徴を有する。 (1)糖類又 は糖代謝中間体さえ添加すれば、グルタミン酸がほとんど存在しなレ、条件下でも GA BAの多量生成が認められる。 (2)糖類又は糖代謝中間体の存在下で GABAが多 量に生成されるだけでなぐ他の成分、例えば遊離のァラニン (本明細書では「Ala」 と記載することがある)も生成される。 (3)糖類又は糖代謝中間体が存在しない条件 下で、グルタミン酸を追加しでも GABAの多量生成がほとんど認められない。 (4)糖 類又は糖代謝中間体の存在下での GABA生成反応液中にエタノール成分が多量 に検出される。 (5)菌体を 2日間以上凍結保管させてから GABAの生成反応に使用 した場合、 GABAの生成量は同じ日数で冷蔵保管した菌体のそれより、約 50%程度 以上に大きく減少する。
[0027] ピキア ·ァノマラ MR— 1による GABA生成力 乳酸菌における GABA生成のように 特定の酵素による単純な酵素反応に基づくものであると仮定すれば、細胞が死細胞 であっても生細胞であっても関連する酵素が失活しない限り GABA生成量に大きな
差異はないはずであるが、それでは上記(5)の現象は説明できなレ、。従って、ピキア 'ァノマラ MR—1による GABA生成は、菌体内における代謝機能が組み合わされて 起こる一種の発酵によるものと推定される。このことは、上記(2)及び (4)に記載した ように、 Alaやエタノールが同時に生成されることからも支持される。従って、本発明の 方法により GABAを生成する場合、他の有用成分もまた同時に生成することができる ものと期待される。また、ピキア 'ァノマラ MR— 1による GABA生成は、通常の酵母の ようなアセトン処理などの予備的処理は不要であり、生菌体そのまま利用できるという 点でも有利である。ピキア属又はカンジダ属酵母の生菌体による GABA生成能は試 験例 9に示す通り他の酵母の 5〜: 15倍又はそれ以上であり、極めて高い。本発明に 使用される他の酵母菌株、例えばピキア 'ァノマラ NBRC— 10213、ピキア'ァノマ ラ NBRC— 100267、ピキア'ジャジ二 NBRC_0987、カンジダ 'ュチリス NBR C—10707による GABA生成もまた同様に発酵反応によるものと推測される。
[0028] 本発明において GABA生成に利用し得る糖類としては例えば、単糖類、二糖類、 糖アルコール類、オリゴ糖類などの糖類が挙げられる。単糖類としては、果糖、グノレコ ース、キシロース、ソルボース、ガラクトースなどがある。二糖類としては、麦芽糖、乳 糖、トレハロース、ショ糖、異性化乳糖、パラチノースなどがある。糖アルコール類とし ては、マルチトール、キシリトーノレ、ソノレビトーノレ、マンニトール、パラチニットなどがあ る。なかでも、グノレコース、果糖、麦芽糖、ショ糖が好ましい。
[0029] 本発明において糖代謝中間体とは、例えば、糖代謝経路である解糖系又は TCA サイクルの各成分を指し、具体的には、例えば解糖系のグリコーゲン、各種リン酸化 グルコース及びその分解物、ピルビン酸等、又は TCAサイクルのクェン酸、イソタエ ン酸、ケトグルタル酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、ォキサ口酢酸等が挙げられる。 安定性及び原料としての実用性などを考慮すれば、グリコーゲン、クェン酸、ピルビ ン酸、ケトグノレタル酸、コハク酸、リンゴ酸が好ましい。なお糖代謝中間体が GABA生 成反応の基質となり得るということからも、本発明の GABA生成反応が発酵反応によ るものであることがわかる。
[0030] またグルタミン酸は塩の形態、例えばグルタミン酸ナトリウム塩の形態であってよレ、。
[0031] 糖類、糖代謝中間体及びグルタミン酸の添カ卩量には特に制限はなレ、が、例えば本
発明の酵母 (水分含量 78%)が反応系中に 2重量%の濃度で存在する場合におい て、糖類として使用されるグルコースの濃度は 1. 0〜10. 0重量%が好ましい。例え ばピキア'ァノマラ MR— 1が反応系中に 2重量%の濃度で存在する場合において試 験例 1 (グノレタミン酸不存在)ではグルコースの添加量は 1重量%以上であれば充分 である。また、試験例 2 (グルタミン酸存在)ではグノレコースの最適添力卩量は 7. 5重量 %であった。このとき GABA生成量はグルコース無添加の条件と比較してそれぞれ 約 8倍又は約 100倍以上増加した。また、グルタミン酸又はその塩は、例えば本発明 の酵母 (水分含量 78%)が反応系中に 2重量%の濃度で存在する場合において、好 ましくは約 0. 25-2. 0重量%、より好ましくは 0. 5〜: 1. 5重量%の濃度で添加され る。
[0032] GABA生成反応では、反応開始時の初発 pHは好ましくは 3. 0〜6. 0、より好まし くは 4. 0〜5. 0である。
[0033] 反応温度は使用する基質毎に反応温度と GABA生成量との関係を調べることによ り最適な範囲を容易に決定することができるのである力 典型的には 32〜55°C、好 ましくは 40〜50°C、より好ましくは 43〜48°Cの温度範囲が選択される。この温度範 囲内で GABAが多量に生成されることは、試験例 4に示した通りである。本発明者は また、 GABAが多量に生成される上記温度条件下では MR— 1株の細胞増殖がほと んど起こっていないことを確認した (試験例 4を参照)。すなわち、 MR— 1株による G ABA生成反応は、細胞増殖が起こりにくい条件下で進行することに特徴があると言 える。
[0034] 菌体の添加量は通常、反応液重量の 2〜: 10重量% (水分含量 78%の菌体を使用 した場合)の範囲内であればよいが、 GABAの生成量と原料のコストを総合的に考え れば、 2〜5重量% (同)の範囲内であることが好ましい。
[0035] 反応時間についても反応温度と同様に、基質毎に反応時間と GABA生成量の関 係を調べることにより最適な範囲を容易に決定することができるのであるが、典型的 には 12〜72時間であり、特に反応温度が 35〜40°Cの場合は約 48〜72時間、反 応温度が 40〜50°Cの場合は約 12〜48時間であれば十分と考えられる。
[0036] 例えば、ピキア ·ァノマラ MR— 1株と糖類又は糖代謝中間体とグルタミン酸のみか
らなる反応系の場合は、 45°Cにおいて 24時間以内、 37°Cにおいて 72時間以内の 反応時間が適当である。他に温度に弱い成分や、高温で変色しやすい成分が含ま れている場合には、低温で長時間の反応が好ましい場合がある。
[0037] 上述の GABA生成反応は例えばバッチ式、半連続式、連続式などいずれの様式 で行ってもよい。
[0038] 本発明における反応基質である糖類若しくは糖代謝中間体、又は、糖類若しくは 糖代謝中間体及びグノレタミン酸若しくはその塩は、これらの成分単独で、あるいは水 等の適当な溶媒中の溶液 (すなわち反応液)として提供される。
[0039] これらの反応基質は糖類若しくは糖代謝中間体、又は、糖類若しくは糖代謝中間 体及びグノレタミン酸若しくはその塩を含有する食品材料として提供されてもよい。この ような食品材料としては、例えば動物、植物若しくは微生物の可利用部分、動物、植 物若しくは微生物から抽出されたエキス、又は前記可利用部分若しくはエキスを原料 とする食品材料等が挙げられる。本発明において「可利用部分」とは動物、植物若し くは微生物の食品として利用できる部分、又は該部分を適当に処理 (例えば粉砕、 加熱、焼成、フライ、乾燥、蒸煮)したものを意味する。
[0040] 食品材料に糖類、糖代謝中間体、グノレタミン酸又はその塩類が元々含有されてい れば、特にこれら成分を追加する必要はなぐそのまま反応基質として本発明に使用 すること力 Sできる。例えば、市販の酵母エキスや、大豆 ·小麦などを原料として得られ た各種発酵調味料には、糖類又は糖代謝中間体及びグルタミン酸が十分に含まれ ている場合が多い。また、昆布エキスゃ魚醤などのような天然調味料には原料由来 のグルタミン酸が多く含まれている力 糖類又は糖代謝中間体がそれほど含まれて レ、ない場合がある。そのような場合はこれらの食品材料中の固形物含量及びダルタミ ン酸含量を考慮して、グノレコースなどの糖類又は糖代謝中間体を適当量 (例えば M R_ 1酵母菌体 (水分 78重量%)が 5%添加された系に対して糖類が 1〜5%)添加し たものを、反応基質として本発明に使用することができる。また、食品材料にアミラー ゼゃプロテアーゼなどの食品用酵素を添加することにより、食品材料中の成分(主に 澱粉やタンパク質など)を分解し、比較的分子量の小さい糖類又は糖代謝中間体や グノレタミン酸含量を高めた食品材料も反応基質として本発明に使用することができる
[0041] 所定の酵母と所定の基質とを反応させて得られた γ—ァミノ酪酸を含有する反応 液は、そのまま各種の飲料や食物に添加するなどして用いてもよいが、さらに、通常 の食品処理工程 (濾過、濃縮、乾燥、粉末化など)によって γ—ァミノ酪酸の含有量 を高めて力も利用することも可能である。また、これらの粉末品を打錠して錠剤として も利用することも可能である。なお、 γ—ァミノ酪酸の含有量を高めたもの(例えばィ オン交換やクロマトグラフィー等の通常の分離手段により単離された γ—アミノ酪酸) もまた、本発明により製造される「τ ーァミノ酪酸含有食品」に包含される。
[0042] 本発明により製造される食品中において、酵母は生細胞で含まれていても、死細胞 として含まれていても、細胞破砕物として含まれていてもよぐまた、酵母細胞及びそ の破砕物は食品中から除去されてレ、てもよレ、。
[0043] 本発明はまた、ピキア属に属する酵母 (特にピキア ·ァノマラ)を含有する食品に関 する。この場合もまた、酵母は生細胞で含まれていても、死細胞として含まれていても 、細胞破砕物として含まれていてもよい。この場合、好ましくは、ピキア属に属する酵 母は細胞中に γ—ァミノ酪酸を含有する。本発明のこの態様は、ピキア属酵母の新 規用途を提供する。
実施例
[0044] 以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定される ものではない。
[0045] (参考例 1)
ピキア ·ァノマラ MR—1は、 日本国八戸沖の海水から下記の手順により単離された 海洋酵母の一種である。
[0046] [海水からの分離]
まず、青森海岸より約 15キロ離れた八戸沖の海上の船から無菌採水器を用いて、 水深約 5メートルにおける海水約 50リットルを採集した。これらの海水を冷蔵温度に 保持しながら輸送し、翌日に孔径 0.45 μ mの滅菌メンブランフィルターを用いてこれ らの海水を濾過した。フィルター上に残った微生物菌体を滅菌水 15mlに懸濁し、海 水からの採取菌試料として次の実験に供した。
[0047] この採取菌試料(15ml)から 200 / 1ずつを取り出して、耐塩酵母菌分離培養用の 専用 YPD寒天培地(グノレコース 2%、ペプトン 2%、酵母エキスパウダー 1%、食塩 3% 、寒天 2%、クロラムフエ二コール 0.01%)に塗布し、 25°Cにおいて 5 日間培養した。 Y PD培地上に生じた酵母様コロニーから釣菌し、細胞の形態を光学顕微鏡を用いて 1 000倍の倍率で観察し、酵母様微生物と思われる単一コロニーをそれぞれ選定した 。次に白金耳を用いてこれらの各単一コロニーから再び釣菌し、それぞれ約 1 mlの 滅菌水に分散させた後、新しい別の YPD寒天培地上に再び画線塗布し、 25°Cにお いてさらに 3〜5 日間培養した。なお、コロニーからの菌株を完全に単離するため、以 上の釣菌〜分散〜培養操作を少なくとも 5回以上繰り返して行った。以上の分離培 養によって 50リットノレの海水から酵母様微生物を 58株分離した。
[0048] [分離菌の増殖培養]
最終的に単離された各コロニーから再び釣菌し、それぞれ YPD液体培地(ダルコ ース 2%、ペプトン 2%、酵母エキスパウダー 1%、食塩 3%、 KH PO 0.05%、 MgSO 0.
05%、 (NH ) SO 0.1%)各 200 mlに接種し、 25°Cにおいて 2〜3 日間振とう培養した
。続いて培養液を無菌的な状態で遠心分離し、菌体を滅菌水で洗浄してから、再び 遠心分離した。なお、菌体を充分に洗浄するために、この遠心〜洗浄操作は 2〜3回 繰り返して行った。
[0049] [ γ ァミノ酪酸生成能の比較]
5%グノレコース及び 1%グノレタミン酸を含む反応液各 25 mlにそれぞれ上記分離し洗 浄された酵母様微生物菌体を各 0.5g添加し、窒素ガスで充填した後、 37°Cにおいて 3 日間反応させた。得られた反応液を 85°Cで 15分間加熱失活してから遠心分離し、 上清液を各 50 mlに定容して、遊離アミノ酸含量の分析に供した。分析結果より、 58 株の菌株から若干の GABA生成能を有する酵母様微生物は 3株見出され、なかでも 高い γ—アミノ酪酸生成能を有する菌株はそのうち 1株であった。この γ—アミノ酪 酸高生成能を有する酵母様微生物を MR-1と仮に命名した。
[0050] なお、 GABA成分をはじめとした遊離アミノ酸含量の分析には日本電子 (株)製の 全自動アミノ酸分析装置 JLC-500/Vを使用した(以下同)。
[0051] [分子系統解析]
上記の γ—ァミノ酪酸高生成能を有する酵母様微生物 MR-1の生菌体から、常法 によってゲノム DNA成分を抽出し、リボソームの ITS- 5.8S領域の rDNA配列を解析し た (配列番号 1参照)。
[0052] この ITS-5.8S rDNA遺伝子の塩基配列(配列番号 1)の相同性検查を、 GenBankの データベースにアクセスし BLASTプログラムにより行ったところ、 Pichia anomala酵母(
AY231611.1)と 97.6%の相同性が確認された(図 1参照)。
[0053] また実験データは示していないが、 18S rDNAの塩基配列に基づく分子系統解析に よっても、本菌株が Pichia anomala酵母と高い相同性を示すことが明ら力、となった。
[0054] また DNAデータベースにより入手したピキア属及び代表的な酵母種の塩基配列を 多重整列後、ホモロジ一検索を行ったところ、本菌株の分子系統樹上の位置は Pichi a anomala酵母と一致した。
[0055] [菌学'生理生化学的性質]
上記 MR-1株の菌学的性質及び生理、生化学的性質を表 1に示す。
[表 1]
1. 菌学的な性質
菌の形態 栄養細胞球形、 出芽による増殖、
コロニ一形態 円形、 扁平状、 乳白色粘状、 全縁平滑
胞子 子のう胞子有
生育温度
生育 H H 3. (!〜 8.0
好気 ·嫌気 通性嫌気菌
2. 生理、 生化学的性質
炭素源に対する発酵性
D - Glucose + - a - Trehalose ― Raff inose +
D - Galactose ― Melibiose - Inulin ―
Maltose Lactose ― Soluble Starch ―
Me α-D-Glucopyranoside - Cellobiose ― D-Xylose -
Sucrose + Melezitose - 炭素源に対する資化性
D - Glucose + Arbutin + myo - Inositol -
D - Galactose + D Melibiose ― D-Glucono-1.5- + lactone
L - Sorbose ― Lactose ― D - Gluconate +
D - Glucosamine - af f inose + D-Glucuronate ―
D- ibose + Melezitose + D-Galacturonate ―
D - Xylose + D Inulin ― DL-Lactate +
L-Arabinose 一 Soluble Starch + Succinate +
D-Arabinose 一 Glycerol + Citrate +
L-Rhamnose ― Erythritol Methanol ―
Sucrose + Eibitol + D Ethanol +
Maltose + Xylitol + Propane 1.2-diol + D - - Trehalose + L-Arabinitol ― Butane 2.3-dioI + D
Me a-D-Glucopyranoside + D-GIucitoI + Quinic Acid +
Cellobiose + D-Mannitol +
Sal icin + Galactitol ― 窒素源に対する資化性
Nitrate + Cadaverine + Imidazole ―
Nitrite + D Creatine + D - Tryptophane 十
Ethylamine + Creatinine +
し - Lysine + Glucosamine + 表示符号説明:
+ :陽性
D: 7日間より長い遅れ
- :陰性 表 1に示した菌学的、生理生化学的性質に基づき、 YEASTS: Characteristics and i ndentification (2000)を参考に分類'同定を行ったとこと、 MR-1菌株はピキア'ァノマ ラに属することが示された。
なお、 MR - 1株は公知のピキア'ァノマラ株と完全には同一でない。例えば表 2に示 すとおり、 MR-1株と公知のピキア ·ァノマラ株である NBRC-100267とは、幾つかの生 理生化学的性質が相違する。
2]
MR - 1酵母と公知の P i ch ia anomal a NBRC- 100267酵母との生理生化学性質の差異、
* 表示符号は表 1 と同じ。
[0058] また、 MR- 1株と公知のピキア ·ァノマラ株との増殖速度を各種塩濃度で比較したと ころ両者は相違した(図 2)。よって MR-1株は新規な株であるといえる。
[0059] 本酵母は、 Pichia anomala MR-1として独立行政法人産業技術総合研究所特許生 物寄託センターに寄託されている(受託番号 FERM BP— 10134)。
[0060] (参考例 2)
[保管菌株の復元]
凍結又は凍結乾燥で保管している MR-1菌株を室温で解凍した後、白金耳を用い て釣菌し、約 1 mlの滅菌水に分散させてから、 YPD寒天培地上に画線接種し、 25°C において 5 日間培養した。培地上に乳白色の円形コロニーとして MR-1菌体を得るこ とができ、以下の前培養にそのまま使用することができる。なお、この寒天培地上の 菌株は 5〜10°Cの温度で冷蔵保管すれば、 2ヶ月以内であれば前培養などに使用す ること力 Sできる。
[0061] [前培養]
上記寒天培地上のコロニーから釣菌し、三角フラスコ中の滅菌した 200 mlの YPD 液体培地に接種し、 25°Cにおいて 2〜3 日間振とう培養した。培養中に培養液 1 ml を取り出して波長 660 nmでの菌体濁度を測定し、 2.0以上に達したものを次の本培
養に使用した。
[0062] [本培養]
10リットル容のジャーフアーメンターに 7リットルの液体培地(グルコース 2%、尿素 2 %、酵母エキスパウダー 1.0%、食塩 0.5%、 KH PO 0.05%、 MgSO 0.05%、硫酸ァ
2 4 4
ンモユア 0.1%)を投入し、 121°Cで、 60分間加熱滅菌した。液体培地の温度を 30°C まで冷却してから、希塩酸と希アルカリを用いて培養液の pHを 5.0に調整した。その 後、上記前培養液 200 mlを無菌的な状態で添加し、 25°Cにおいて攪拌しながら 2 日 間通気培養した。培養液を遠心分離し、滅菌水で菌体を充分に洗浄した後、さらに 遠心分離した。以上の遠心分離〜洗浄を 2回繰り返して行い、 MR- 1菌体 150g (水 分 78.8%)を得た。これらの菌体を、以下の試験例及び実施例において MR-1酵母 菌体として使用した。
[0063] (試験例 1)
200 ml容の三角フラスコ 6個にそれぞれ所定濃度のグルコース水溶液 50 ml及び 上記参考例 2で得られた MR-1菌体 1.0g (2%濃度)を添加し、 45°Cにおいて振とうし ながら 24時間反応させた。その後、 85°Cにおいて 15分間加熱失活し、遠心分離した 。それぞれの上清液を濃縮して 25 mlに定容し、 GABAをはじめとする遊離アミノ酸 の分析に供した。なお、遊離アミノ酸の分析結果より、 GABAと Alaの濃度は他の遊 離アミノ酸と比べてより高いことが明らかとなったので、表 3にはこれらの 2種類アミノ 酸の濃度を示した。また、グノレタミン酸の濃度は僅かであった力 GABAの生成と重 要な関わりがあるので、その濃度も併せて表 3に示した。
[表 3]
以上の結果より、グルコースを添加しない場合は、 GABA及び Alaの生成がほとん ど認められなかった力 S、グルコースを添加すれば、 GABA及び Alaの生成量が共に 大きく増加したことがわかった。
(試験例 2)
各反応液にグルタミン酸を 1%濃度で追加した以外は試験例 1と同じ条件で GABA の生成反応を行い、濃縮液各 25 mlを調製した。これらの濃縮液中の GABA及び Ala の濃度を表 4に示す。また、発酵反応の指標としてエタノール濃度も測定した。
[表 4]
[0066] 以上の結果より、グルコースを添カ卩しない場合は、グルタミン酸を添加しても GABA 及び Alaの生成があまり見られな力、つたのに対して、グルコースとグルタミン酸とが共 に添加された系では、 GABA及び Alaの生成量が試験例 1と比較して著しく増加した ことがわかった。
[0067] グノレコースを添カ卩しない場合に、グノレタミン酸を添カ卩しても GABA生成があまり認 められなかった理由としては、糖類が存在しないために酵母による発酵反応が進行 しなかったためであると考えられる。
[0068] (試験例 3)
pH 3 〜 7.0の各種クェン酸一リン酸ナトリウム緩衝液(0.1 Mクェン酸- 0.2 Mリン 酸水素ニナトリウム)に、上記参考例 2で得られた MR-1菌体 2%、グルコース 5%、グ ルタミン酸 1%になるように添加し、 50 mlに定容した後、試験例 1と同じ条件で GABA 生成反応を行い、濃縮液各 25 mlを得た。これらの濃縮液中の GABA濃度を表 5に 示す。
[表 5]
GABA 生成に及ぼす反応液 pH の影響
[0069] 以上の結果より、 pH 3.0〜6.0の広い範囲内で GABAは多量に生成されることがわ かった。また最適 pHは約 pH 5.0付近であった。
(試験例 4)
20ml容の L字型試験管 12本にそれぞれ、上記参考例 2で得られた MR-1菌体 2% 、グルコース 5%、グルタミン酸 1 %を含む反応液 10 mlを添加し、 20 rpmで振とうしな がら 15〜60°Cの温度勾配で 3 日間反応させた。その後、試験例 1と同じように分離、 精製し、濃縮液各 5 mlを調製した。これらの濃縮液中の GABA濃度を表 6に示す。
[表 6]
[0071] 以上の結果より、 GABAは 32〜55°Cの温度範囲内で比較的多量に生成され、最適 反応温度は 44°C付近であることがわかった。なお、 44°Cにおいての GABA濃度は 36 °Cのそれの約 3倍となることから、反応温度による影響が極めて大きいことが推測さ れる。
[0072] 本結果もまた次の理由により MR-1による GABA生成が発酵反応によるものであるこ とを支持する。 52.9°Cにおける GABA生成量は、 44°Cにおけるそれの約 3割しかなぐ また同様の条件下で行った別の実験(データは示していなレ、)においても、 50°Cにお ける GABA生成量は 45°Cにおけるそれの約 18%しかな力、つた。 50°C条件下の酵素活 性と、 45°Cにおける酵素活性との間にこれほど著しい相違があることは通常は稀であ ることから、 GABA生成量の相違は、温度の上昇により生菌体の数が減少して発酵が あまり行われなくなったことに起因していると考えられる。
[0073] 発明者は更にまた、上記と同様の条件下で、 15.0°C、 19.8°C、 23.5°C、 26.9°C、 30.3 。C、 33.5。C、 36.5°C、 40.7。C、 44.3。C、 48.2°C、 53.1。C、 60.0°Cの各温度において MR- 1菌体を培養し、培養液中の濁度(OD )を経時的に追跡することにより、反応温度
660
と菌体増殖との関係を調査した。その結果、 36.5°C以上の温度条件下では菌体の増 殖はほとんど確認されな力つた(図 3)。
[0074] (試験例 5)
上記参考例 2で得られた MR-1菌体 2。/。及びグルコース 5%を含む反応液 50 mlに
それぞれ所定濃度のグルタミン酸を添加し、試験例 1と同じ条件で GABA生成反応 を行い、濃縮液各 25 mlを調製した。これらの濃縮液中の GABA濃度を表 7に示す。
[表 7]
GABA の生成に及ぼすグルタミン酸添加濃度の影響
[0075] 以上の結果より、グルタミン酸添加の適当濃度は約 0.25〜2.0%の範囲内であり、よ り好ましくは 0.5〜1.5%の範囲内であることが分った。またこの範囲を超えてグノレタミ ン酸の濃度を高めると、逆に GABAの生成量が減少する傾向もみられた。
[0076] (試験例 6)
グノレコース 5%及びグノレタミン酸 1%を含む反応液 50 mlにそれぞれ所定濃度の上 記参考例 2で得られた MR-1菌体を添加し、試験例 1と同じ条件で GABA生成反応を 行レ、、濃縮液各 25 mlを調製した。これらの濃縮液中の GABA濃度を表 8に示す。
[表 8]
GABA の生成に及ぼす MR-1 菌体添加濃度の影響
[0077] 以上の結果より、 MR-1菌体の最適添加濃度は約 2〜5%程度であることが示され た。またこの範囲を超えて菌体量を増加させても、 GABA生成量は増大しない傾向 が示された。
[0078] (試験例 7)
上記参考例 2で得られた MR- 1菌体 2%及びグルタミン酸 1%を含む反応液各 50 ml にそれぞれ所定の糖質を 5%添加し、試験例 1と同じ条件で GABA生成反応を行い
、濃縮液各 25 mlを調製した。これらの濃縮液中の GABA濃度を表 9に示す。
[表 9]
GABAの生成に及ぼす添加糖質の種類の影響
[0079] 以上の結果より、添カ卩した糖質の種類によって GABAの生成量が異なる傾向が示 された。なかでも、グルコース、果糖のような単糖、及び麦芽糖、蔗糖のような二糖は 、より高い GABA生成促進効果があり、特にグルコースと果糖は最も効果があることが わかった。
[0080] (試験例 8)
グルコース 5%及びグルタミン酸 1 %を含む反応液各 50 mlにそれぞれ 5°Cで 2 日間 冷蔵保管した MR-1菌体、又は— 25°Cで 2 日間凍結保管した MR-1菌体を所定濃 度に添加し、試験例 1と同じ条件で GABA生成反応を行い、濃縮液各 25 mlを調製 した。なお菌体は上記参考例 2で得られたものである。これらの濃縮液中の GABA濃 度を表 10に示す。
[表 10]
GABA の生成に及ぼす MK-1 菌体保管状態の影響
[0081] 以上の結果より、菌体の凍結保管によって、 GABA生成能が大きく減少したことが わかった。このこと力、ら、本発明においては酵母の生菌体を使用することが好ましいこ とがわかる。
[0082] (試験例 9)
グルコース 5%及びグルタミン酸 1 %を含む反応液各 50 mlにそれぞれ本発明の MR -1菌体(参考例 2)、ピキア属又はカンジダ属に属する他の酵母(寄託機関より入手) 、市販海洋酵母 (イースト · Μ、三共 (株)製)、パン酵母 (オリエンタル酵母工業 (株) 製)、又は清酒協会 7号酵母を各 lg添加し、試験例 1と同じ条件で GABA生成反応 を行い、濃縮液各 25 mlを調製した。これらの濃縮液中の GABA濃度を表 1 1に示す
[表 11]
[0083] 以上の結果より、ピキア属又はカンジダ属に属する酵母は他の酵母より、かなり高 い GABA生成能を有することが分かった。特に、本発明の MR-1酵母による GABA生 成能は通常酵母の 10〜15倍程度と非常に高かった。
[0084] (試験例 10)
グノレタミン酸無添加又は 1%添加された、下表所定の糖又は糖代謝中間体を 50 m M含有し MR-1菌体 (参考例 2)を 2%含有する反応液を各 50 ml調製し、試験例 1と同 じ条件で GABA生成反応を行い、濃縮液各 25 mlを調製した。これらの濃縮液中の G ABA濃度を表 12に示す。
[0085] 以上の結果より、グルタミン酸無添加の系において各種糖代謝中間体から GABA が生成され、更にグノレタミン酸が 1 %添加された系では GABA生成がより促進される こと力 S示された。
[0086] (実施例 1)
上記参考例 2における本培養に準じた方法により、 10リットノレ容のジャーフアーメン ターに 7リットルの液体培地を投入し、滅菌してから参考例 2で得られた MR-1菌株 0. 7gを無菌的状態で接種し、 PH 5.0で 30°Cにおいて 2 日間通気培養した。培養液を
遠心分離し、滅菌水で菌体を洗浄し、 R-1菌体 160g (水分 79.2%)を得た。これら の菌体をグノレコース 3.0%及びグルタミン酸 0.5%を含む反応液 8リットルに分散させ てから、 45°Cにおいて振とうしながら 24時間で GABA生成反応を行わせた。その後、 反応液を 85°Cで 15分間加熱失活し、遠心分離した。上清液をろ過してから、減圧濃 縮し、固形分 40%の濃縮液 800 mlを得た。なお、この濃縮液中の GABA含量及びそ の他成分の分析値を表 13に示す。
[表 13]
M - 1株による GABA生成反応液中の各種有用成分含量 (単位: m /100 ml
[0087] (実施例 2)
市販"粉末発酵うまみ調味料 S" (キッコーマン (株)製) 20gを蒸留水で 5倍希釈し、 それに参考例 2で得られた本発明の MR-1菌体 5g (5%濃度)を添加し分散させた後 、希塩酸で反応液の初発 pHを 5.0に調整してから、 45°Cにおいて 24時間で GABA 生成反応を行わせた。その後、反応液を 85°Cで 15分間加熱失活し、遠心分離し、上 清液を濃縮して濃縮液 60gを得た。この濃縮液中の GABA濃度は 171.2 mg/100 ml で、処理前原料を 3倍希釈した液中の GABA濃度 4.1 mg/100 mlと比べて、 GABA 含量は約 40倍増加した。
[0088] (実施例 3)
市販魚肉エキス"タイミ JF" (仙味エキス (株)製) 100gを蒸留水で 3倍希釈し、それ に参考例 2で得られた本発明の MR-1菌体 15g (5%濃度)を添加し分散させた後、実 施例 2と同じように GABA生成反応をさせ、濃縮液 100gを得た。この濃縮液中の GA BA濃度は 246.8 mg/100 mlで、処理前原料中の同濃度 5.3 mg/100 mlと比べて 、 GABA含量は約 46倍増加した。
[0089] (実施例 4)
市販"鰹節エキス J" (仙味エキス (株)製) 100gを蒸留水で 3倍希釈し、それに参考 例 2で得られた本発明の MR-1菌体 15g (5%濃度)、グルコース 15g (5%濃度)及び グルタミン酸ナトリウム 3g (l%濃度)を添加し分散させた後、実施例 2と同じように GA
BA生成反応をさせ、濃縮液 100gを得た。この濃縮液中の GABA濃度は 306.3 mg/ 100 mlであり、処理前原料(GABA含量ゼロ)と比べて、 GABAを多く生成できた。 (実施例 5)
市販"コンブだし KW- 1" (富士食品工業 (株)製)各 100gを蒸留水で 3倍希釈し、そ れぞれ表 14に記載の所定濃度の、参考例 2で得られた MR-1菌体、グルコース及び グルタミン酸ナトリウムを添加し分散させた後、実施例 2と同じように GABA生成反応を 行わせ、濃縮液各 100gを得た。これらの濃縮液中の GABA濃度を調べると、処理前 原料(GABA含量ゼロ)と比べて、本発明の菌体 MR- 1のみを添加しただけでも、 GAB Aを多く生成できた力 さらにグノレコースとグノレタミン酸を追加した場合は、 GABA濃 度は約 1.7倍に増加できた。
[表 14]
MR-1菌体の添加によるコンプエキス中の GABA濃度の比較
(実施例 6)
巿販畜肉エキス"チキンミートエキス C-501NAC" (富士食品工業 (株)製)各 100gを 蒸留水で 3倍希釈し、それぞれ表 15に記載の所定濃度の、参考例 2で得られた MR- 1菌体、グルコース及びグノレタミン酸ナトリウムを添加し分散させた後、実施例 2と同 じょうに GABA生成反応を行わせ、濃縮液各 100gを得た。これらの濃縮液中の GAB A濃度を調べると、処理前原料 (GABA含量ゼロ)と比べて、本発明の菌体 MR-1の みを添加しただけでも、 GABAを多く生成できたが、さらにグルコースとグルタミン酸 を追加した場合は、 GABA濃度は 2倍以上に増加できた。
[表 15]
MR-1 菌体の添加によるチキンエキス中の GA1 3A 濃度の比較
①原料のみ ②原料 +5% MR- 1菌体 ③原料 +5 %MR- 1菌体
+59≤グルコース +1 % グル夕ミン酸
GABA濃度 (mg/100 ml) 0 146. 5 328. 4
[0092] (実施例 7)
巿販畜肉エキス"ポークミートエキス FP-301" (富士食品工業 (株)製)各 lOOgを蒸留 水で 3倍希釈し、それぞれ表 16に記載の所定濃度の、参考例 2で得られた MR-1菌 体、グノレコース及びグルタミン酸ナトリウムを添加し分散させた後、実施例 2と同じよう に GABA生成反応を行わせ、濃縮液各 lOOgを得た。これらの濃縮液中の GABA濃度 を調べると、処理前原料(GABA含量ゼロ)と比べて、本発明の菌体 MR-1のみを添 加しただけでも、 GABAを多く生成できたが、さらにグルコースとグルタミン酸を追加 した場合は、 GABA濃度は約 4倍に増加できた。
[表 16]
[0093] 本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本 明細書にとり入れるものとする。