明 細 書
プロピベリン含有経口粉粒状製剤及びその製造法
技術分野
[0001] 本発明は、プロピベリンを含有する経口粉粒状製剤並びにその製造法に関する。
背景技術
[0002] プロピベリンは、下記の構造を有し、抗コリン作用及び平滑筋直接作用により排尿 運動抑制効果を発揮し、神経因性膀胱、神経性頻尿、不安定膀胱、膀胱刺激状態 ( 慢性膀胱炎、慢性前立腺炎)に伴う尿失禁、頻尿に優れた効果を発揮する医薬品と して有用である(特公昭 62-51242号公報)。
[0003] [化 1]
[0004] プロピべリンの塩酸塩、すなわち塩酸プロピベリンは水溶性(512mg/mL, 37°C)で あり、服用の際に不快な味 (刺激を伴う著しい苦味)を有し、現在はフィルムコーティ ングされた錠剤が販売されて!ヽる。
[0005] しかし、尿失禁,頻尿等をわずらつている患者としては高齢者が多ぐ加齢に伴う嚥 下障害により、錠剤の服薬コンプライアンスは低下しがちである。
[0006] 臨床現場では、錠剤の嚥下困難な患者 (特に、高齢者)に対して、服薬コンプライ アンスを向上させるために、錠剤を粉砕し粉薬として服用する手法が採られることが ある。しかしながら、この手法を、不快な味をマスキングするためにコーティングを施し た錠剤に用いた場合、コーティング膜が粉砕の操作によって破壊されてマスキング効 果を失うため、粉砕された粉薬は非常に不快な味を呈し、結果として患者の服薬コン プライアンスを低下させる恐れがある。
[0007] 一方、不快な味を有する薬物の顆粒剤、細粒剤及び散剤のような経口粉粒状製剤 の不快な味をマスキングする手法としては、(1)フィルムコーティングを施す方法、(2) 砂糖、サッカリン、アスパルテーム等の甘味料を配合する方法などが知られている。
[0008] しかし、上記 (1)の方法で製造した製剤はコーティングにより粒子が硬くなるため、粒 子が歯茎と義歯あるいは頰粘膜との間に挟まった時、疼痛を引き起こす。更に、口腔 内に粒子が残留すると砂を口に含んだようなざらざらした感覚がいつまでも残り、時 間経過とともにコーティング膜が溶解して不快な味が口腔内にひろがる。
[0009] また、上記 (2)の方法を用いる場合、特に水溶性の薬剤に対しては、糖類を多量に 添加しても不快な味の隠蔽効果は弱い。更に、サッカリン、ァスノ ルテームなどの合 成甘味料は、増量することで逆に苦味を発現させてしまう。
[0010] したがって、塩酸プロピベリンのような水溶性で不快な味を有する薬物を含有する 経口粉粒状製剤の味マスキングにお 、ては、上記 (1)又は (2 、ずれの手法を用いて も服用感が良好な製剤はでき難ぐ患者の服薬コンプライアンスの改善に充分な効 果が得られて 、な 、のが実状である。
[0011] また、苦味を有する薬物の味マスキング方法として、 pH緩衝剤、 pH調節剤を用いて 、当該薬物を不溶ィ匕することも知られている (非特許文献 1、特許文献 1〜3参照)。し かし、塩酸プロピベリンに対して、この手法を適用できるかどうかは知られていない。 非特許文献 1 : PHARM TECH JAPAN Vol.6, No.7 (1990), 77-86
特許文献 1:特開平 2-96526号公報
特許文献 2:特開昭 58-4714号公報
特許文献 3:国際公開 WO99/16470号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0012] 本発明の目的は、薬効成分として一般に入手される塩酸プロピベリンを用いて、服 用感が良好で、患者の服薬コンプライアンスの低下が回避できる経口投与製剤を製 造することにある。
[0013] なお、本明細書及び請求の範囲において、「服用感が良好」とは、口に含んだ時、 不快な味が軽減されており、口腔内に製剤の残留感 (ざらざらした感覚)がないことを
いう。
課題を解決するための手段
[0014] 本発明者らは上記課題を解決するべぐ前記非特許文献 1などに記載されている p H調節剤を用いて、当該薬物を不溶化する手法を塩酸プロピべリンに適用することを ρ み/こ。
[0015] し力しながら、この手法には、次のような問題があることが明ら力となった。 ρΗ調節 剤又はその水溶液と塩酸プロピベリン水溶液とを混合すると、 100 mを超える大きな 粒子が多数生成し、最悪の場合、巨大なロウ状の物質が生成し、反応容器に付着し てしまう。その結果、(0懸濁液中の粒子径が大きくなり、スプレーによる噴霧が困難と なり、またたとえスプレーすることが出来たとしても各成分の含量が均一な製剤を得る ことが難しくなる、 GO析出したロウ状物質が反応容器に付着するため、懸濁液とはな らず、ロウ状物質と水とからなる二相系となりやすい、(m)該ロウ状物質は一般的な粉 体に比べハンドリング性が劣り、これを用いて粉粒状製剤を製造することは困難であ る。
[0016] そのため,粒径が 100 μ m超の大きな粒子が少なぐ且つ、粒子の分散状態が良好 であって、粉粒状製剤を製造するのに適した懸濁液を得ることは不可能力と思われ た。
[0017] し力しながら、本発明者らは、引き続き種々の検討を行ったところ、次の知見を得た
[0018] (a)塩酸プロピベリン水溶液と pH調節剤又はその水溶液とを混合するのではなぐ更 に特定の界面活性剤を用いると、 100 mを超える大きな粒子が少なぐ且つ、粒子 の分散状態が良好な懸濁液を得ることができる。
[0019] (b)該懸濁液と、通常の粉粒状製剤に使用されている製剤用添加剤とを用いて造粒 することにより、粉粒状製剤を製造することができる。
[0020] (c)こうして得られる粉粒状製剤は、不快な味が著しく改善され、口腔内に製剤の残 留感がなぐ服用感が良好である。
[0021] 本発明は、かかる知見に基づき、更に検討を行って完成されたものであり、次の粉 粒状製剤、その製造法等を提供するものである。
[0022] 項 1 (a)プロピベリン、(b)界面活性剤及び (c)pH調節剤を含有する服用感が良好な 経口粉粒状製剤。
[0023] 項 2 (a)プロピベリンを、塩酸プロピベリン換算で 0.5〜10%(w/w)含有し、更に、(b)界 面活性剤及び (c)pH調節剤を含有する経口粉粒状製剤であって、プロピベリンを塩 酸プロピベリン換算で 25mg含有する該製剤を 25mLの水に加えて振とうして得られる 懸濁液の pHが 6.5〜8.0である経口粉粒状製剤。
[0024] 項 3 pH調節剤がリン酸塩類であり、界面活性剤の HLBが 11〜18である項 1又は 2 に記載の経口粉粒状製剤。
[0025] 項 4 界面活性剤力 ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 60、ポリソルベート 80及びス テアリン酸ポリオキシル 40からなる群力 選ばれる少なくとも 1種である項 3に記載の 経口粉粒状製剤。
[0026] 項 5 pH調節剤が炭酸塩類であり、界面活性剤の HLBが 11〜40である項 1又は 2に 記載の経口粉粒状製剤。
[0027] 項 6 界面活性剤力 ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 60、ポリソルベート 80、ステア リン酸ポリオキシル 40、ショ糖ステアリン酸エステル及びラウリル硫酸ナトリウム力ゝらな る群力 選ばれる少なくとも 1種である項 5に記載の経口粉粒状製剤。
[0028] 項 7 界面活性剤の HLBが 14〜18であり、 pH調節剤がリン酸二カリウムである項 1〜
3の 、ずれかに記載の経口粉粒状製剤。
[0029] 項 8 界面活性剤力 ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 60、ポリソルベート 80及びス テアリン酸ポリオキシル 40からなる群力 選ばれる少なくとも 1種である項 7に記載の 経口粉粒状製剤。
[0030] 項 9 界面活性剤がステアリン酸ポリオキシル 40であり、 pH調節剤がリン酸二力リウ ムである項 1〜3及び 7の 、ずれかに記載の経口粉粒状製剤。
[0031] 項 10 界面活性剤の含有量が、プロピべリンの塩酸プロピベリン換算重量に対して 、 0.1〜100% (w/w)である項 1〜9のいずれかに記載の経口粉粒状製剤。
[0032] 項 11 プロピベリン、界面活性剤及び pH調節剤を含有する経口粉粒状製剤の製 造方法であって、
(1)塩酸プロピベリン、界面活性剤、 pH調節剤及び水を混合してなり、該 pH調節剤
で pH6.5〜8.0に調節された懸濁液を得る工程、及び
(2)工程 (1)で得られた懸濁液を、製剤用添加剤と共に造粒する工程
を含むことを特徴とする製造方法。
[0033] 項 12 工程 (2)において、上記懸濁液を、製剤用添加剤に噴霧して造粒する項 11 に記載の製造方法。
[0034] 項 13 工程 (1)において、懸濁液が、(0界面活性剤と塩酸プロピベリンとを含む水溶 液と GOpH調節剤又は pH調節剤水溶液とを、懸濁液の pHが 6.5〜8.0となるように混合 することにより得られる項 11に記載の製造方法。
[0035] 項 14 工程 (1)において、懸濁液が、(iii)界面活性剤、 pH調節剤及び水を含む混合 物と、 Gv)塩酸プロピベリン水溶液とを、懸濁液の pHが 6.5〜8.0となるように混合する ことにより得られる項 11に記載の製造方法。
[0036] 項 15 該懸濁液中にプロピベリンが塩酸プロピベリン換算で l〜45%(w/w)存在す る項 11〜14の 、ずれかに記載の製造方法。
[0037] 項 16 pH調節剤が、リン酸塩類又は炭酸塩類である項 11〜14のいずれかに記載 の製造方法。
[0038] 項 17 pH調節剤がリン酸塩類であり、界面活性剤の HLBが 11〜18である項 11に 記載の製造方法。
[0039] 項 18 界面活性剤力 ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 60、ポリソルベート 80及びス テアリン酸ポリオキシル 40からなる群力も選ばれる少なくとも 1種である項 17に記載の 製造方法。
[0040] 項 19 pH調節剤が炭酸塩類であり、界面活性剤の HLBが 11〜40である項 11に記 載の製造方法。
[0041] 項 20 界面活性剤力 ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 60、ポリソルベート 80、ステ アリン酸ポリオキシル 40、ショ糖ステアリン酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム力もなる 群力 選ばれる少なくとも 1種である項 19に記載の製造方法。
[0042] 項 21 界面活性剤の HLBが 14〜18であり、 pH調節剤がリン酸二カリウムである項 1 1に記載の製造方法。
[0043] 項 22 界面活性剤力 ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 60、ポリソルベート 80及びス
テアリン酸ポリオキシル 40からなる群力も選ばれる少なくとも 1種である項 21に記載の 製造方法。
[0044] 項 23 界面活性剤がステアリン酸ポリオキシル 40である項 21に記載の製造方法。
[0045] 項 24 懸濁液中の界面活性剤の含有量が、塩酸プロピベリンの重量に対して 0.1
〜100%(w/w)である項 11〜23の!、ずれかに記載の製造方法。
[0046] 項 25 項 11〜24のいずれかに記載の製造方法で得ることができる(又は得られた
)経口粉粒状製剤。
[0047] 項 26 塩酸プロピベリン,界面活性剤, pH調節剤及び水を混合してなり,該 pH調 節剤で pH6.5〜8.0に調節された懸濁液。
[0048] 項 27 プロピべリンが塩酸プロピベリン換算で l〜45%(w/w)存在し、界面活性剤の 含有量力 塩酸プロピベリンの重量に対して 0.1〜100%(w/w)である項 26に記載の懸
[0049] 項 28 粒径が 100 mを超える大きな粒子の存在率力 約 50%以下である項 26又 は 27に記載の懸濁液。
[0050] 項 29 塩酸プロピベリン、界面活性剤、 pH調節剤及び水を混合してなり、該 pH調 節剤で pH6.5〜8.0に調節された懸濁液の製造方法であって、
(0界面活性剤と塩酸プロピべリンとを含む水溶液と、 GOpH調節剤又は pH調節剤水 溶液とを、懸濁液の pHが 6.5〜8.0となるように混合する力 又は、
(iii)界面活性剤、 pH調節剤及び水を含む混合物と、(iv)塩酸プロピベリン水溶液と を、懸濁液の pHが 6.5〜8.0となるように混合する
ことを特徴とする製造方法。
[0051] 本明細書及び請求の範囲にぉ 、て、 r%(w/w)jは、溶液又は懸濁液又は製剤の重 量に対する重量の百分率を示している。例えば、製剤 Sのある成分 Cの濃度 (含有量
)が 10%(w/w)である場合、該成分 Cは、製剤 SlOOg当たり、 10g含まれていることを示 す。
[0052] また、「%(w/w)」は、成分 Xの重量に対する成分 Yの重量の百分率を示す。例えば、 成分 Yの量が、成分 Xに対して l%(w/w)である場合、該成分 Yは、成分 X100g当たり、 lg存在することを示す。
[0053] また、本明細書及び請求の範囲において、「粉粒状製剤」とは、医薬品を粉又は粒 状に製した製剤を指す。これら粉又は粒状に製した医薬品の粒度分布によって、散 剤、細粒剤、顆粒剤等の分類がなされる。ここで、散剤、細粒剤、顆粒剤は、日本薬 局方に記載の分類に従うものである。
発明の効果
[0054] 本発明によれば、次の優れた効果が奏される。
[0055] (a)塩酸プロピベリン水溶液と pH調節剤又はその水溶液とを混合するのではなぐ更 に特定の界面活性剤を用いることに基づき、 100 mを超える大きな粒子が少なぐ且 つ、粒子の分散状態が良好な懸濁液を得ることができる。
[0056] (b)通常の粉粒状製剤に使用されている製剤用添加剤と該懸濁液を用いて造粒す ることにより、粉粒状製剤を製造することができる。
[0057] (c)こうして得られる粉粒状製剤は、不快な味が著しく改善され、口腔内に製剤の残 留感がなぐ服用感が良好である。
[0058] ( したがって、本発明により、塩酸プロピベリンの不快な味及び服用感カも生じる 服薬コンプライアンス低下を回避できる。 発明を実施するための最良の形態
[0059] 上記のように、本発明は、(a)プロピベリン、(b)界面活性剤及び (c)pH調節剤を含有 する服用感が良好な経口粉粒状製剤を提供するものである。
[0060] 塩酸プロピベリン
本発明の粉粒状製剤を製造するに際しては、薬効成分として塩酸プロピベリンを使 用する。塩酸プロピベリンは、市販されており、入手容易である。
本発明における pH調節剤としては、界面活性剤を添加した又は添加して!/、な!/、塩 酸プロピベリン水溶液の PHを 6.5〜8.0に調節できるものであれば特に制限はなぐ例 えば、有機酸のアルカリ金属塩、有機酸のアルカリ土類金属塩、アミノ酸、アミノ酸の 金属塩、及び無機化合物を挙げることができる。
[0062] 有機酸のアルカリ金属塩としては、具体的には、クェン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク 酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、酢酸、乳酸等の有機酸とナトリウム、カリウム等
のアルカリ金属との塩を挙げることができる。有機酸のアルカリ土類金属塩としては、 上記有機酸とマグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属との塩を挙げることが できる。
[0063] アミノ酸としては、具体的には、グリシン、セリン、スレオニン、ァスパラギン、ダルタミ ン、リジン、アルギニン及びヒスチジン等を挙げることができ、アミノ酸の金属塩として は、アミノ酸のアルカリ金属塩が好ましぐ該アルカリ金属塩としては、上記アミノ酸と ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩を挙げることができる。
[0064] また、無機化合物としては、乾燥水酸ィ匕アルミニウムゲル、ケィ酸アルミン酸マグネ シゥム、ケィ酸マグネシウム、合成ケィ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、酸化マグ ネシゥム、水酸化アルミナマグネシウム、水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニゥ ム'炭酸水素ナトリウム共沈生成物、水酸ィ匕アルミニウム ·炭酸マグネシウム混合乾燥 ゲル、水酸ィ匕アルミニウム '炭酸マグネシウム '炭酸カルシウム共沈生成物、水酸化マ グネシゥム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、メタケイ酸 アルミン酸マグネシウム、無水リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸二 カリウム、リン酸水素ナトリウム、無水リン酸一水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素 カリウム、炭酸ナトリウム及びポリリン酸ナトリウム等をあげることができる。
[0065] 上記有機酸のアルカリ金属塩、有機酸のアルカリ土類金属塩、アミノ酸、アミノ酸の 金属塩、及び無機化合物のうち、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩等の 、水に殆ど溶解しない塩を用いて製剤化した場合、服用時にこれらの塩が残って舌 上がざらざらとした感じとなる場合があり、服用感の低下につながる傾向があるので、 ナトリウム塩、カリウム塩に比べると、若干劣るが、カルシウム塩、マグネシウム塩、ァ ルミ二ゥム塩等も使用可能である。
[0066] また、上記有機酸のアルカリ金属塩、有機酸のアルカリ土類金属塩、アミノ酸、アミ ノ酸の金属塩、及び無機化合物のうち、ナトリウム塩類を用いて製剤化した場合は、 服用時のざらざら感はないものの、上記カリウム塩類を用いて製剤化した場合に比べ て塩味が強ぐ服用感が若干劣る場合があるので、上記カリウム塩類を使用するのが より好まし 、。
[0067] 本発明における上記 pH調節剤のうちでも、製剤化時の分散性の観点又は服用感-
風味の観点から、炭酸塩類又はリン酸塩類が好ましぐ特にリン酸塩類が更に好まし い。
[0068] 炭酸塩類としては、具体的には、水酸ィ匕アルミニウム '炭酸水素ナトリウム共沈生成 物、水酸ィ匕アルミニウム '炭酸マグネシウム混合乾燥ゲル、水酸ィ匕アルミニウム '炭酸 マグネシウム '炭酸カルシウム共沈生成物、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、 沈降炭酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられ、 特に好ましくは炭酸水素ナトリウムである。なお、炭酸塩類を用いた場合、炭酸ガスの 発生により薬物粒子の分散性が改善されることがある。
[0069] リン酸塩類としては、具体的には、無水リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシゥ ム、リン酸二カリウム、リン酸水素ナトリウム、無水リン酸一水素ナトリウム、ポリリン酸ナ トリウム等が挙げられ、より好ましくはリン酸二カリウム (即ち、リン酸水素二カリウム)で ある。
[0070] 本発明にお 、ては、塩酸プロピベリン、界面活性剤、 pH調節剤を混合してなる混合 液(後述の本発明の懸濁液)の pHが 6.5〜8.0の範囲、好ましくは 6.8〜7.4の範囲とな る量で pH調節剤を使用することが好ましい。混合液の pHが 6.5より低ければ、製造さ れた粉粒状製剤の味が苦ぐ服用感が悪い。一方、混合液の pHを 8.0より高くするた めに pH調節剤を多量に用いても製剤の苦味や服用感に著 U、変化はな!/、。
[0071] 上記 pH調節剤の配合割合は、各々の pH調節能力により適宜調整することができ、 例えば、リン酸二カリウムの場合、塩酸プロピベリン 1モルに対し 2〜5モル、特に 2.5〜 3.5モルの割合で配合することができる。
[0072] 界 rif活件剤
本発明における界面活性剤としては、塩酸プロピベリン水溶液に添加し、薬物粒子 を微細に分散できるものであれば特に制限はなぐ各種のものを使用できる。具体的 には、コレステロール、ショ糖脂肪酸エステル (例えば、ショ糖ラウリン酸エステル,ショ 糖ミリスチン酸エステル,ショ糖パルミチン酸エステル,ショ糖ステアリン酸エステル, ショ糖ォレイン酸エステル等のショ糖 C12-C18脂肪酸エステル)、ステアリルアルコー ル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル (例えば、ステアリン酸ポリオキシル 40 (日 本薬局方)等)、セスキォレイン酸ソルビタン、セタノール、ポリオキシエチレンヒマシ
油誘導体 (例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 40、ポリオキシエチレン硬化ヒマ シ油 60等)、ポリオキシエチレン (105)ポリオキシプロピレン (5)グリコール、ポリオキシェ チレン (160)ポリオキシプロピレン (30)グリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸 エステル(例えば、ポリソルベート 60 (医薬品添加物規格)、ポリソルベート 80 (日本薬 局方)等)、ポリエチレングリコール(例えば、マクロゴール 300、マクロゴール 400、マク 口ゴール 600等)、モノステアリン酸グリセリン、ァ-オン性界面活性剤(例えば、ラウリ ル硫酸ナトリウム等)等を挙げることができる。これらは、 2種類以上を混合して用いて ちょい。
[0073] 本発明にお!/、ては、 pH調節剤の種類に応じて、特定の HLB (Hydrophile Lipophile Balance)値を有する界面活性剤を上記界面活性剤力 適宜選択して使用することが 通常好ましい。例えば、上記 pH調節剤として前記リン酸塩類を使用する場合は、 HL Bが 11〜18、特に 14〜18の界面活性剤が好ましい。具体的には、 HLBが 11〜18であ るポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体又はポ リオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが好ましく、更には HLBが 14〜 18である ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体又はポリ ォキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが好ましぐ特にステアリン酸ポリオキシル 4 0、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 60、ポリソルベート 80が好ましい。
[0074] また、上記 pH調節剤として前記炭酸塩類を使用する場合は、 HLBが 11〜40、特 に 14〜40の界面活性剤が好ましい。具体的には、 HLBが 11〜40であるショ糖脂肪酸 エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導 体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル又はァ-オン性界面活性剤が好ま しぐ更には HLBが 14〜40であるショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪 酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪 酸エステル又はァ-オン性界面活性剤が好ましぐ特にショ糖ステアリン酸エステル、 ステアリン酸ポリオキシル 40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 60、ポリソルベート 80、 ラウリル硫酸ナトリウムが好まし 、。
[0075] HLBがこの範囲内の界面活性剤を用いることにより、懸濁液中の薬物粒子を微細 に分散することができ、スプレーガンを用いて噴霧できない粗粒子の存在比を小さく
することができ、大規模な粉粒状製剤の製造に適して ヽる流動層による造粒が容易 となるため好ましい。
[0076] なお、 HLB (Hydrophile Lipophile Balance)値とは界面活性剤の親油性、親水性を 表す指標であり 0に近いほど親油性が高ぐ値が大きくなるほど親水性が高いことを 表している。
[0077] 上記 HLB値は、 種々の計算式により計算することができるが、本発明では、例えば 「新版界面活性剤ハンドブック (工学図書株式会社) PP234-236〔1987〕」に記載される 方法で計算することができる。
[0078] 本発明経口粉粒状製剤の製诰方法
本発明の経口粉粒状製剤を製造するには、種々の方法が採用できるが、一般には 、まず、塩酸プロピベリン,界面活性剤, pH調節剤及び水を混合し、該 pH調節剤で p H6.5〜8.0に調節された懸濁液を得る。次いで、公知の製剤用添加剤と該懸濁液を 用いて造粒することにより、本発明の粉粒状製剤を製造することができる。
[0079] 該懸濁液は、(0界面活性剤と塩酸プロピベリンとを含む水溶液と、 GOpH調節剤又 は pH調節剤水溶液とを、懸濁液の pHが 6.5〜8.0となるように混合することにより得ら れる。或いは、該懸濁液は、例えば、(iii)界面活性剤、 pH調節剤及び水を含む混合 物と、 Gv)塩酸プロピベリン水溶液とを、懸濁液の pHが 6.5〜8.0となるように混合する ことにより得ることもできる。これらの方法に限らず、本発明の懸濁液は、他の方法に よっても製造可能である。
[0080] 得られる懸濁液中にお!、ては、 pH調節剤を使用して原料の塩酸プロピベリンが中 和されて!、るので、実質上全量の塩酸プロピベリンが遊離塩基 (遊離のプロピベリン) となっている。しかしながら、プロピべリンの塩、例えば、塩酸プロピベリン又はプロピ ベリンと pH調節剤との塩等が、若干量、特に、最終的な製剤中に苦味を感じさせな い程度の量で含まれていてもよい。該プロピベリンの塩の量は、塩酸プロピベリンの 仕込み量に対して 5%未満、特に 2%未満であるのが好ま U、。
[0081] V、ずれの場合も、得られる懸濁液の組成が下記のようになるように混合する:
プロピべリンの含有量:懸濁液に対して、塩酸プロピベリン換算で l〜45%(w/w)、 特に 2〜10%(w/w)、
界面活性剤の含有量:上記プロピベリンの塩酸プロピベリン換算量に対し、 0.1〜10 0%(w/w)、好ましくは 0.5〜15%(w/w)、より好ましくは 0.65〜13%(w/w)、
pH調節剤の含有量:懸濁液の pHが 6.5〜8.0、好ましくは 6.8〜7.4となる量、 懸濁液の !"[ : 6.5〜8.0、好ましくは 6.8〜7.4。
[0082] 得られる懸濁液が上記組成となる限り、各成分の濃度、使用形態などは特に限定さ れないが、典型的には、次のようにすればよい。
[0083] 上記 (0の界面活性剤と塩酸プロピベリンとを含む水溶液において、塩酸プロピベリ ンの使用量は、溶媒である水に対して、 l〜50%(w/w)、特に 2〜10%(w/w)であるの が好ましい。
[0084] 界面活性剤は、懸濁液中の薬物粒子を微細に分散させ、ロウ状の物質が生成して 反応容器に付着するのを防止するために添加するものであり、その添加量は、塩酸 プロピべリンの重量に対し、一般には 0.1〜100%(w/w)、好ましくは 0.5〜15%(w/w)、よ り好ましくは 0.65〜13%(w/w)の範囲で添加すればよい。該範囲内であると、界面活性 剤の作用で薬物が多量溶解すること及び界面活性剤自体の味を感じやすくなること を防止できるので、苦味が抑制され、服用感も良好である。また、界面活性剤を用い ない場合、噴霧懸濁液中の粗粒子の存在比が高くなり、流動層による造粒ができな い。
[0085] また、上記 (ii)の PH調節剤の使用量も所望の懸濁液が得られる限り広い範囲から適 宜選択できる力 通常は、最終的に得られる懸濁液の pHが 6.5〜8.0、好ましくは 6.8 〜7.4となるような量で使用するのが好ましい。 pH調節剤は、そのまま使用してもよい 力 予め水溶液の形態にしておいて使用することもできる。
[0086] 上記 (iii)の界面活性剤、 pH調節剤及び水を含む混合物において、界面活性剤の 添加量は、塩酸プロピベリンの重量に対し、一般には 0.1〜100%(w/w)、好ましくは 0.5 〜15%(w/w)、より好ましくは 0.65〜13%(w/w)の範囲で添カ卩すればよい。また、 pH調節 剤の使用量も所望の懸濁液が得られる限り広い範囲力 適宜選択できるが、通常は 、最終的に得られる懸濁液の pHが 6.5〜8.0、好ましくは 6.8〜7.4となるような量で使 用するのが好ましい。上記 (iii)の界面活性剤、 pH調節剤及び水を含む混合物におい て、界面活性剤及び pH調節剤の合計量は、広い範囲力も適宜選択できるが、一般
には水に対して 0.1〜500%(w/w)、特に l〜150%(w/w)とするのが好ましい。
[0087] 上記 (iv)の塩酸プロピベリン水溶液にぉ 、て、塩酸プロピベリンの使用量は、溶媒 である水に対して、 l〜50%(w/w)、特に 2〜10%(w/w)であるのが好ましい。
[0088] 本発明の製造法においては、前記のように、 pH調節剤として前記リン酸塩類を使用 する場合は、 HLBが 11〜18、特に 14〜18である界面活性剤を用いるのが好ましい。 また、 pH調節剤として前記炭酸塩類を使用する場合は、 HLBが 11〜40、特に 14〜40 である界面活性剤を使用するのが好ま 、。
[0089] 更に、界面活性剤の HLBが 14〜18であり、 pH調節剤がリン酸二カリウムであるのが より好ましい。この場合、界面活性剤としては、ステアリン酸ポリオキシル 40であるのが 特に好ましい。
[0090] 上記懸濁液を製造するに際して、上記 (0と (ii)との混合、及び、( )と Gv)との混合は、 公知の装置、例えば、マグネチックスターラー,ホモジナイザー,ホモミクサ一,ホモ デイスパー、撹拌プロペラ等を用いて行えばよい。
[0091] 混合条件は、広い範囲力も適宜選択でき、特に限定されないが、一般には、 15〜3 0°C、特に 20〜25°Cの温度で、両者が十分混合されるような撹拌速度で所望の懸濁 液が得られるまで混合操作を行えばょ ヽ。
[0092] こうして得られる、塩酸プロピベリン、界面活性剤、 pH調節剤及び水を混合し、該 p H調節剤で pH6.8〜7.4に調節された懸濁液は、粒径が 100 mを超える大きな粒子 が少なぐ且つ、粒子の分散状態が良好である。粒径が 100 /z mを超える大きな粒子 の存在率は、通常、 50%以下、特に 10〜45%程度である。
[0093] なお、上記存在率の求め方は、次の通りである。即ち、析出した薬物粒子を目開き 100 μ mのフィルターで濾取し、 50°Cで 21時間以上真空乾燥する。これを秤量し、粒 子径が 100 μ mより大きな薬物粒子の存在率 (%)を仕込んだ塩酸プロピベリン量から 算出する。
[0094] 本発明の上記懸濁液及び必要に応じて公知の製剤添加物を用いると、粉粒状製 剤の製造に使用されている公知の方法により、不快な味が著しく改善され、口に含ん だ時に服用感が良好な粉粒状製剤が得られ、不快な味及び服用感力 生じる服薬 コンプライアンス低下を回避できる。従って、本発明は、上記塩酸プロピベリン、界面
活性剤、 pH調節剤及び水を混合してなり、該 pH調節剤で pH6.5〜8.0に調節された 懸濁液を提供するものでもある。
[0095] 上記本発明の懸濁液を用いて本発明の経口粉粒状製剤を製造するには、必要に 応じて公知の製剤添加物を用いて、公知の経口粉粒状製剤の製造方法、例えば、 流動層造粒法、撹拌造粒法、転動流動層造粒法、押出し造粒法、噴霧乾燥法等を 用いることができる力 これらに限定されない。これらの中でも、上記本発明の懸濁液 を公知の製剤用添加剤に噴霧して造粒するのが好ま 、。
[0096] 上記製剤添加物は、これを使用する場合、本発明の効果を妨げない範囲で使用さ れる。カゝかる製剤添加物としては、粉粒状製剤の製造に一般に用いられる種々の製 剤添加物であり、例えば、糖類、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、着香剤 、矯味剤等を挙げることができる。
[0097] 糖類としては、具体的には単糖類 (ァラビノース、キシロース、ブドウ糖、果糖、ガラ クトース、マンノース、ソルボースなど)、オリゴ糖 (ショ糖、乳糖、麦芽糖、還元麦芽糖 、イソマルトースなど)、糖アルコール(キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マ ン-トールなど)が挙げられる。これらの糖類は、単独で又は 2種以上組み合わせて 使用してちょい。
[0098] 賦形剤としては、デンプン、結晶セルロース、軽質無水ケィ酸及びケィ酸カルシウム 等を挙げることができる。
[0099] 崩壊剤としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、クロスポビ ドン、カルメロースカルシウム及びクロスカルメロースナトリウム等を挙げることができる
[0100] 結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロー ス、ポリビュルアルコール、ポリビュルピロリドン等を挙げることができる。
[0101] 滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク及びショ 糖脂肪酸エステル等を挙げることができる。
[0102] 着色剤としては、食用黄色 5号色素、食用赤色 2号色素、食用青色 2号色素、食用 レーキ色素、黄色三二酸ィ匕鉄及び酸ィ匕チタン等を挙げることができる。
[0103] 着香剤としては、オレンジ、レモン各種香料等を挙げることができる。
[0104] 矯味剤としては、 L-メントール、カンフル、ノ、ッカ等を挙げることができる。
[0105] 本発明の経口粉粒状製剤の典型的な製造法としては、例えば、流動層造粒コーテ イング装置を用いて、上記本発明の懸濁液を、流動状態の製剤添加物に噴霧して造 粒する方法を挙げることがでさる。
[0106] 本発明の経口粉粒状製剤
上記本発明の製造方法により得られる本発明の経口粉粒状製剤の剤形は、特に 限定されるものではないが、例えば顆粒剤、散剤、及び細粒剤等を挙げることができ る。なお、顆粒剤、散剤及び細粒剤には、用時溶解して用いるドライシロップ剤を含 み、また、口腔内で速やかに溶解、崩壊し、水なしでも服用できる粒状物を含む。
[0107] 本発明の経口粉粒状製剤は、(a)プロピベリン、(b)界面活性剤及び (c)pH調節剤、 及び必要に応じて、前記製剤添加物を含有するものであり、苦味が抑制されており、 また、服用感が良好な経口粉粒状製剤である。
[0108] 本発明においては、製剤処方中にプロピベリンを、塩酸プロピベリン換算で 0.5〜10 %(w/w)、特に l〜5%(w/w)含むのが一般的である。薬効成分濃度がこの範囲を外れて もよいが、通常は、現実的ではない。なぜなら、塩酸プロピベリンの 1回投与量はお およそ 20mg程度が見込まれる力 薬物濃度が 0.5%(w/w)より低い場合、塩酸プロピべ リン 20mg相当量を服用するには 4gより多くの粉粒状製剤を服用する必要があり、服 用しやすいとは言い難ぐまた、薬物濃度が 10%(w/w)より高い場合、塩酸プロピベリン 20mg相当量は 200mgより少なくなる力 この量は一般的な分包装置では充填すること が非常に困難な量となるためである。
[0109] 本発明の経口粉粒状製剤においては、塩酸プロピベリンは、 pH調節剤で中和され 、その結果、塩酸プロピべリンの遊離塩基の形態で存在している。本発明の製剤に おいては、該遊離塩基のみを含んでいてもよいが、若干量のプロピベリンの塩、例え ば、塩酸プロピベリン、プロピベリンと pH調節剤との塩が含まれていてもよい。該プロ ピベリンの塩の量は、仕込んだ塩酸プロピベリンの量に対して、 5%未満、特に 2%未 満であるのが好ましぐこの程度の量であれば、一般には服用コンプライアンス上問 題となるような苦味は感じな 、。
[0110] より詳しくは、本発明の経口粉粒状製剤は、(a)プロピベリンを、塩酸プロピベリン換
算で 0.5〜10%(w/w)含有し、更に、(b)界面活性剤及び (c)pH調節剤を含有する経口 粉粒状製剤であって、最終製剤において塩酸プロピベリン 25mgに相当する量の該製 剤を、 25mLの水に加えて振とうして得られる懸濁液の pHが 6.5〜8.0、好ましくは 7.0 〜7.5である。
[0111] なお、振とうは、温度を 25°Cに設定した恒温槽中、幅 30mm、速度 120rpmの条件で 6 0分間行う。
[0112] 上記において、界面活性剤の含有量は、(a)のプロピベリンの塩酸プロピベリン換算 重量に対し、 0.1〜100% (w/w)、特に 0.5〜15%(w/w)、更に 0.65〜13% (w/w)であるの が好ましい。
[0113] また、 pH調節剤の量は、塩酸プロピベリン 25mgに相当する量の該製剤を、 25mLの 水に加えて振とうして得られる懸濁液の pHが 6.5〜8.0となるのに有効な量である。
[0114] 本発明の製剤においては、前記のように、 pH調節剤として前記リン酸塩類を使用す る場合は、 HLBが 11〜18、特に 14〜18である界面活性剤を用いるのが好ましい。ま た、 pH調節剤として前記炭酸塩類を使用する場合は、 HLBが 11〜40、特に 14〜40で ある界面活性剤を使用するのが好ましい。
[0115] 更に、界面活性剤の HLBが 14〜18であり、 pH調節剤がリン酸二カリウムであるのが より好ましい。この場合、界面活性剤としては、ステアリン酸ポリオキシル 40であるのが 好ましい。
[0116] 本発明の粉粒状製剤は、塩酸プロピべリンの不快な味が著しく改善され、口に含ん だ時に服用感が良好な粉粒状製剤が得られ、不快な味及び服用感力 生じる服薬 コンプライアンス低下を回避できる。
実施例
[0117] 以下に、実施例及び試験例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこ れらの実施例のみに限定されるものではない。
[0118] ¾細
塩酸プロピベリン 10g、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 60 (日光ケミカルズ株式会社 製) 0.13gを精製水 225gに溶解し、得られた溶液 (液 A)を、マグネチックスターラーを 用いて充分に撹拌した。一方、リン酸二カリウム 12.94gを精製水 150gに溶解した溶液
(液 B)を、前記塩酸プロピベリン水溶液 (液 A)に加えて、均一となるまで撹拌し、本 発明の懸濁液を調製した。得られた懸濁液 (液 A +液 B)の pHは 7.0であった。
[0119] 実施例 2及び 3
実施例 1と同様の方法に従い、表 1に示す界面活性剤を表 1に記載の量で用 、て 本発明の懸濁液を調製した。得られた懸濁液の pHを表 1に示す。なお、これら実施 例において、ポリソルベート 80は和光純薬株式会社製、ステアリン酸ポリオキシル 40 は日光ケミカルズ株式会社製を用いた。
[0120] 比較例 1
界面活性剤であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 60を添加しな力つた以外は実施 例 1と同様にして、比較懸濁液を調製した。得られた懸濁液の pHを表 1に示す。
[0121] ¾細14
塩酸プロピベリン 10g、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 60 (日光ケミカルズ株式会社 製) 0.13gを精製水 225gに溶解した溶液 (液 A)を、マグネチックスターラーを用いて充 分に撹拌した。一方、炭酸水素ナトリウム 6.24gを精製水 150gに溶解した溶液 (液 C) を、前記塩酸プロピベリン水溶液 (液 A)に加えて、均一となるまで撹拌し、本発明の 懸濁液を調製した。得られた懸濁液 (液 A +液 C)の pHは 7.0であった。
[0122] 実飾 15〜8
実施例 4の方法に従 、、表 1に示す界面活性剤を表 1に記載の量で用いて本発明 の懸濁液を調製した。得られた懸濁液の pHを表 1に示す。なお、これら実施例にお いて、ポリソルベート 80は和光純薬株式会社製、ステアリン酸ポリオキシル 40は日光 ケミカルズ株式会社製、ショ糖ステアリン酸エステルは第一工業製薬株式会社、ラウリ ル硫酸ナトリウムは和光純薬株式会社製を用いた。
[0123] 比較例 2
界面活性剤であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 60を添加しな力つた以外は実施 例 4と同様にして、比較懸濁液を調製した。得られた懸濁液の pHを表 1に示す。
[0124] 試験例 1
実施例 1〜8及び比較例 1及び 2において調製された懸濁液の分散状態を下記評 価法に従って評価した。結果を表 1に示す。
[0125] <評価法>
懸濁液中の析出した薬物粒子を、 目開き 100 mのフィルターで濾取し、 50°Cで 21 時間以上真空乾燥する。これを秤量し (WL)、粒子径が 100 /z mより大きな薬物粒子 の存在率 P(%)を、仕込んだ薬物量 (Wo、即ち、塩酸プロピベリンの仕込量)の遊離 塩基換算量に基づいて、下記式から算出した:
存在率 P(%)= [WL/ (Wo X (367.48)/(403.94)) ] X 100
上記式中、 367.48はプロピベリンの分子量であり、 403.94は塩酸プロピベリンの分子 量である。
[0126] 存在率 Pが小さ!/、ほど粒子径 100 μ m以下の粒子が懸濁液中に多く存在して!/、るこ とを意味しており、分散状態が良好であるといえる。
[0127] [表 1]
[0128] 表 1の結果力も明らかなように、界面活性剤を添加することにより分散状態が良好な 懸濁液が製造されることが判る。
[0129] 界面活性剤を使用しな力 た比較例 1及び 2では、巨大なロウ状の物質が生成し、
反応容器に付着していた。
[0130] これに対して、 pH調節剤を界面活性剤と併用した場合、例えば、 pH調節剤としてリ ン酸塩類 (リン酸二カリウム)を使用し、 HLBが 14〜18の界面活性剤を用いた場合 (実 施例 1〜3)、粒子径が 100 mより大きな薬物粒子の存在率 (%)力 比較例 1に比べて 低ぐ分散状態が改善されることが判明した。また、 pH調節剤として、発泡性を有する 炭酸塩類 (炭酸水素ナトリウム)を用いた場合、界面活性剤の HLBが 14〜40で、界面 活性剤を使用しない比較例 2に比し、分散状態が改善されることが判明した。
[0131] 実施例 9
塩酸プロピベリン 10g、ステアリン酸ポリオキシル 40 (日光ケミカルズ株式会社製) 0.1 3gを精製水 225gに溶解した (液 A' )。また、リン酸二カリウム 12.94gを精製水 150gに 溶解した溶液 (液 B)を、前記塩酸プロピベリン水溶液 (液 Α' )に加えマグネチックスタ 一ラーを用いて 600rpmで 1時間撹拌を行った。この時、懸濁液 (液 A' +液 B)の pHは 7.0であった。
[0132] 一方、 D-マン-トール 379.87g、精製白糖 43g、低置換度ヒドロキシプロピルセル口 ース (商品名「LH-31」信越化学工業株式会社製) 47g、軽質無水ケィ酸 2gを、流動層 造粒コーティング装置(商品名「マルチプレックス MP-01」、株式会社パゥレック製)に 仕込み、上記懸濁液をスプレー速度 6.2g/分で噴霧し、造粒を行った。乾燥後、得ら れた造粒物を目開き 500 μ mの篩で篩過し、細粒剤を得た。
[0133] 実施例 10
塩酸プロピベリン 10g、ステアリン酸ポリオキシル 40 (日光ケミカルズ株式会社製) 0.1 3gを精製水 225gに溶解する(液 A' )。また、炭酸水素ナトリウム 6.24gを精製水 150gに 溶解した溶液 (液 Β' )を、前記塩酸プロピベリン水溶液 (液 Α' )にカ卩え、マグネチック スターラーを用いて 600rpmで 1時間撹拌を行った。この時、懸濁液 (液 A, +液 B,)の pHは 7.0であった。
[0134] 一方、 D-マン-トール 379.87g、精製白糖 43g、低置換度ヒドロキシプロピルセル口 ース (LH-31) 47g、軽質無水ケィ酸 2gを流動層造粒コーティング装置(マルチプレック ス MP-01)に仕込み、上記懸濁液をスプレー速度 5.5g/分で噴霧し造粒を行った。乾 燥後、得られた造粒物を目開き 500 μ mの篩で篩過し、細粒剤を得た。
[0135] 試験例 2
実施例 9及び 10で得られた製剤につき、苦味と服用感についての官能試験 (標準 的なパネル試験)を行った。評価項目は下記の通りである。
評価項目:製剤の苦味および服用感にっき、下記判定基準で評価する。
[0136] 〔苦味〕
4 :極めて苦い
3 :苦い
2 :やや苦い
1 :苦味を感じない。
[0137] 〔服用感〕
4 :服用できない
3 :服用しにくい
2 :やや服用しにくい
1 :服用できる。
[0138] 結果、苦味につ!、ては、「極めて苦 、」 t 、う評価はなく、「苦味を感じな!/、」か又は「 やや苦い」との評価が得られ、服用感については、「服用できない」という評価はなぐ 月 β用感が良好であった。なお、両者を比較すると、苦味についての官能試験に関し ては、両者同等であつたが、服用感についての官能試験においては、 pH調節剤とし て炭酸水素ナトリウムを用いた実施例 10の製剤に比べて、 pH調節剤としてリン酸二 カリウムを用いた実施例 9の製剤の方が、優れているとの評価が得られた。
[0139] 実施例 11及び 12
pH調節剤を表 2に示す仕込み量で使用した以外は実施例 9に記載の方法に従い 細粒剤を製造した。得られた懸濁液の pHを表 2に示す。なお、表 2には、前記実施例 9の処方及び pHも併記する。
[0140] 比較例 3
塩酸プロピベリン 10g、ステアリン酸ポリオキシル 40 (日光ケミカルズ株式会社製) 0.1 3gを精製水 225gに溶解した (液 A, )。更に精製水 150g (液 C)をカ卩ぇマグネチックスタ 一ラーを用いて 600rpmで 1時間撹拌を行った。この時、溶液 (液 A, +液 C)の pHは 4.
2であった (表 2参照)。
[0141] 一方、 D-マン-トール 379.87g、精製白糖 43g、低置換度ヒドロキシプロピルセル口 ース (LH-31) 47g、軽質無水ケィ酸 2gを流動層造粒コーティング装置(マルチプレツ タス MP-01)に仕込み、上記混合液をスプレー速度 6.4g/分で噴霧し造粒を行った。 乾燥後、得られた造粒物を目開き 500 μ mの篩で篩過し、細粒剤を得た。
[0142] [表 2]
[0143] 試験例 3
実施例 9、 11, 12、及び比較例 3で得られた製剤につき、苦味と服用感についての 官能試験を行った。官能試験は、試験例 2に準じて行った。
[0144] 結果、懸濁液の pHが、 6.8 (実施例 11)、 7.0 (実施例 9)及び 7.4 (実施例 12)の場合 は、苦味については、「極めて苦い」という評価はなぐ「苦味を感じない」か又は「や や苦い」との評価が得られ、服用感については、「服用できない」という評価はなぐ服 用感が良好であった。中でも pH7.0(実施例 9)は苦味が最も弱ぐ服用感も最良である との評価を得た。
[0145] 一方、溶液の pHが 4.2 (比較例 3)の場合は、苦味についての官能試験に関しては
、「苦い」という評価が多ぐ服用感についての官能試験においては、「服用しにくい」 又は「服用できない」との評価が多力つた。
[0146] 上記結果から明らかなように、 pHが 6.8〜7.4の懸濁液を用いて製造した実施例 11
, 9, 12は、 pH力 .2の溶液を用いて製造した比較例 3に比べ、製剤の苦味及び服用 感が改善された。
[0147] 実施例 13及び 14
実施例 9に従い、同様の方法で表 3に示す仕込み量で細粒剤を製造した。なお表
3には、比較のために実施例 9の処方をあわせて示した。
[0148] また、表 3には、塩酸プロピベリンに対するステアリン酸ポリオキシル 40 (日光ケミカ ルズ株式会社製)の添加量 (重量 %)を記載する。
[0149] 比較例 4
塩酸プロピベリン 10gを精製水 225gに溶解する(液 D)。また、リン酸二カリウム 12.94 gを精製水 150gに溶解した溶液 (液 B)を、前記塩酸プロピベリン水溶液 (液 D)に加え マグネチックスターラーを用いて 600rpmで 1時間撹拌を行った。
[0150] 得られた懸濁液を目視にて観察したところ、巨大なロウ状の物質が生成し、反応容 器に付着していた。また、懸濁液 (液 B+液 D)中の反応容器に付着していない固体に ついては、非常に大きな粒子が確認され、試験例 1で用いた評価法により粒子径カ^ 00 μ mより大きな薬物粒子の存在率 Ρを求めたところ 87.2(%)であり、スプレーガンから の噴霧は困難であると考えられたため、細粒剤を得ることができな力つた。
[0152] 試験例 4
実施例 9 13及び 14で得られた製剤につき、苦味と服用感についての官能試験を 行った。官能試験は、試験例 2に準じて行った。
[0153] 結果、塩酸プロピベリンに対するステアリン酸ポリオキシル (日光ケミカルズ株式会 社製)の添加量 (%)力 0.65% (実施例 13)、 1.3% (実施例 9)、 13% (実施例 14)の場合 は、苦味については、「極めて苦い」という評価はなぐ苦味を感じないか又は「やや 苦い」との評価が得られ、服用感については、「服用できない」という評価はなぐ服用 感が良好であった。この中でもステアリン酸ポリオキシルの添加量 (%)が 1.3% (実施例
9)の場合は、苦味が最も弱く,服用感も最良であるとの評価を得た。
[0154] これに対して、混合液中にステアリン酸ポリオキシル 40を添加しな 、場合 (比較例 4
)は、巨大なロウ状の物質が生成し、反応容器に付着し、薬物粒子が十分分散され ず、流動層造粒で製剤を得ることができな 、ことが分力つた。
[0155] 試験例 5
前記実施例 11、 9、 12及び比較例 3で得られた製剤の一定量、即ち、プロピベリン を塩酸プロピベリン換算で 25mg含有する量を秤量し、これを、 25mLの水に加えて振 とうして得られる液の pHを調べた。
[0156] 振とう条件は、次の通りである。
恒温槽設定温度: 25°C
振幅:幅 30mm
振とう速度: 120rpm
振とう時間 : 60分間
結果を下記の表 4に示す。
[0157] [表 4]
寸
表 4から、上記振とう試験で得られた液の pHが、比較例 3の製剤の場合は弱酸性で あるのに対して、本発明の製剤 (実施例 11、 9、 12)の場合は、中性付近であることが
判る。従って、上記試験例 3〜5の結果を考慮すると、本発明製剤についての上記振 とう試験で得られた pHが中性付近であれば不快な味を改善出来るものと考えられる。 産業上の利用可能性
本発明によれば、界面活性剤を加えた塩酸プロピベリン水溶液と pH調節剤を含む 液を混合した液を用いて粉粒状製剤を製造すると、不快な味が著しく改善され、口に 含んだ時に服用感が良好な製剤が得られる。したがって、本発明により不快な味及 び服用感から生じる服薬コンプライアンス低下を回避できる。