明 細 書
樹脂被覆 Snめっき鋼板、それを用いた缶、および樹脂被覆 Snめっき鋼 板の製造方法
技術分野
[0001] 本発明は、樹脂被覆層の加工接着性に優れた樹脂被覆 Snめっき鋼板、それを絞 り加工等の厳しい成形加工を施してなる缶、およびこの樹脂被覆 Snめっき鋼板の製 造方法に関する。
背景技術
[0002] 近年、樹脂を被覆してなる鋼板を絞り加工、絞り加工後のさらなるストレッチ加工、 絞り加工後のさらなるしごき加工、絞り加工後のさらなるストレッチ加工としごき加工を 併用する加工などの厳しい加工を施してなる缶胴部と缶底部が一体でカ卩ェ成形され た缶に内容物を充填し、天板を卷締めたものが市販されている。これらの缶において は、これらの厳しい成形加工中および成形加工後に被覆樹脂が剥離もしくは破断す ることがないように、鋼板に対する樹脂の優れた接着性が要求される。そのため、これ らの用途における樹脂被覆鋼板としては、有機樹脂との加工接着性に優れるクロメ ート皮膜を表面に形成させたティンフリースチールなどのクロメート処理鋼板に樹脂 を被覆したものが用いられてレヽた。
[0003] しかし、樹脂被覆クロメート処理鋼板を用いた缶においては、樹脂層に鋼板面に達 する微細な孔ゃ亀裂が生じた場合、クロメート処理鋼板が耐食性に乏しいために、特 に酸性度の大きな内容物を充填した場合に鋼板の腐食が急速に進行して穿孔しや すい欠点を有している。そのため、酸性度の大きな内容物を充填した場合に優れた 耐食性を示す Snめっき鋼板に樹脂を被覆してなる樹脂被覆 Snめっき鋼板の適用が 試みられたが、 Snめっき層に対する樹脂の接着性、特に加工接着性に乏しぐ上記 のような厳しい加工用途に適用可能な樹脂被覆 Snめっき鋼板が求められている。
[0004] 本発明の発明者等は、厳しい加工用途に適用可能な樹脂被覆 Snめっき鋼板とし て、樹脂被覆 Snめっき鋼板を提案した (例えば特許文献 1参照)。この公報に記載さ れた樹脂被覆 Snめっき鋼板は、ノーリフロー Snめっき鋼板またはリフロー Snめっき
鋼板の Snめっき層上にシランカップリング剤塗布層を設けてなる Snめっき鋼板に有 機樹脂皮膜を積層してなる樹脂被覆 Snめっき鋼板である。この樹脂被覆 Snめっき 鋼板においては、缶に成形加工する前の有機樹脂皮膜の接着強度が Tピール強度 で 2kg/l0mm以上であることを特徴としている。しかし、この樹脂被覆 Snめっき鋼 板を成形加工して缶に成形加工した場合、特により厳しい、絞り加工後にさらにストレ ツチ加工としごき加工を併用して缶に成形加工した場合、問題なく成形加工可能な 場合もある力 成形加工途中で缶の上部で樹脂が剥離することがあり、 Snめっき層 に対する樹脂の優れた接着性が安定して得られないことが判明した。また、缶に成形 加工する前の有機樹脂皮膜の接着強度では、成形加工時や成形加工後の接着性 を必ずしも正確に反映していないことも判明した。
[0005] 本発明においては、ノーリフロー Snめっき鋼板またはリフロー Snめっき鋼板の Sn めっき層上にシランカップリング剤塗布層を設けてなる Snめっき鋼板に、コロナ放電 処理を施した有機樹脂皮膜を積層することにより、成形加工時や成形加工後の安定 した接着性を示す樹脂被覆 Snめっき鋼板が得られることが判明した。また、ポリプロ ピレン系樹脂フィルムにコロナ放電処理を施すことが開示されている(例えば特許文 献 2参照)。これは有機樹脂にコロナ放電処理を施すことにより積層する基板との接 着性が向上することは公知である。しかし、有機樹脂との加工接着性に乏しい Snめ つき鋼板に有機樹脂を積層して、絞り加工後にさらにストレッチ加工としごき加工を併 用して缶に成形加ェする過酷な加ェに耐える加ェ接着性を得るために、 Snめっき 層上にシラン力ップリング剤塗布層を設け、このシラン力ップリング剤塗布層にコロナ 放電処理面が接するようにしてコロナ放電処理を施した有機樹脂を被覆することによ り、耐食性に優れた Snめっき鋼板を基板とする樹脂被覆 Snめっき鋼板からこのよう な過酷な加工による缶を安定して得られることが初めて可能となったのである。
特許文献 1 :特開 2002 - 285354号公報
特許文献 2:特許 3352553号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0006] 本発明は、厳しい成形加工を施した際の優れた加工接着性を有する樹脂被覆 Sn
めっき鋼板、それを用いた缶、およびこの樹脂被覆 Snめっき鋼板の製造方法を提供 することを目的とする。
問題を解決するための手段
[0007] 本発明の樹脂被覆 Snめっき鋼板は、 Snめっき層上にシランカップリング剤塗布層 を形成させてなる Snめっき鋼板の少なくとも片面に、コロナ放電処理を施した有機樹 脂フィルムを被覆してなる樹脂被覆 Snめっき鋼板 (請求項 1)であり、 Snめっき鋼板 1S 鋼板上に Snめっき層を形成させたままの Snめっき鋼板(ノーリフロー Snめっき鋼 板)、または鋼板と Snめっき層の間に Sn— Fe合金層を形成させてなる Snめっき鋼板 (リフロー Snめっき鋼板)であること、(請求項 2)またシランカップリング剤の塗布量が 、 Si量で 1一 50mg/m2であること(請求項 3)、さらにまた、コロナ放電処理が電圧: 200V、電流: 0. 2— 8A/25cmの条件で施したものであること(請求項 4)、さらにま た上記の請求項 1一 4のいずれかの樹脂被覆 Snめっき鋼板を、絞り比: 1. 64の 1段 絞り加工で径: 96mm、高さ: 42mmの絞りカップに成形した後の、カップ側壁部の樹 脂フィルムの剥離強度が 0. 05kg/15mm以上であること(請求項 5)を特徴とする。
[0008] また、本発明の缶は、上記の請求項 1一 5のいずれかの樹脂被覆 Snめっき鋼板を 絞り加工してなる缶(請求項 6)、または絞り加工後さらにストレッチ加工してなる缶(請 求項 7)、さらにまたは絞り加工後さらにしごき加工してなる缶 (請求項 8)、さらにまた は絞り加工後さらにストレッチ加工としごき加工を併用して加工してなる缶 (請求項 9) である。
[0009] また本発明の樹脂被覆 Snめっき鋼板の製造方法は、鋼板の少なくとも片面に Sn めっき層を形成させ、次いで Snめっき層上にシランカップリング剤を塗布し乾燥させ た後、シランカップリング剤塗布層上にコロナ放電処理面が接するようにしてコロナ放 電処理を施した有機樹脂フィルムを積層することを特徴とする、樹脂被覆 Snめっき鋼 板の製造方法、または鋼板の少なくとも片面に Snめっき層を形成させ、次いで Snの 溶融温度以上に加熱した後急冷することにより鋼板と Snめっき層の間に Sn— Fe合金 層を形成させ、その後 Snめっき層上にシランカップリング剤を塗布し乾燥させた後、 シランカップリング剤塗布層上にコロナ放電処理面が接するようにしてコロナ放電処 理を施した有機樹脂フィルムを積層することを特徴とする、樹脂被覆 Snめっき鋼板の
製造方法である。
図面の簡単な説明
[0010] [図 1]図 1は、 Sピール強度測定用の試片の形状を示す平面図である。
[図 2]図 2は、 Sピール強度測定用の試片の樹脂面に切れ目を入れる箇所を示す平 面図である。
[図 3]図 3は、 Sピール強度測定用の試片にスコアを入れる箇所を示す平面図である
[図 4]図 4は、スコアを入れた部分の形状を示す試片の一部の断面図である。
[図 5]図 5は、試片ホルダーの概略図である。符号については、 1は試片を、 laは試 片の一方の端部を、 lbは試片の他方の端部を、 2は切れ目を、 3はスコアを、 4は試 片ホルダーを、 4aは試片揷入部を、 4bは試片ホルダー上部をそれぞれ示す。
発明を実施するための最良の形態
[0011] 以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の樹脂被覆 Snめっき鋼板に用レ、る鋼板としては、通常のアルミキルド鋼の 熱間圧延板を冷間圧延し、焼鈍した後調質圧延した冷延鋼板、または焼鈍後さらに 冷間圧延を施して強度を増加させた冷延鋼板のレ、ずれかが、用途に応じて選択的 に用いられる。これらの冷延鋼板を電解脱脂し酸洗した後、鋼板上に Snめっき層を 形成させて Snめっき鋼板とする。 Snめっき鋼板としては、公知のフヱロスタン浴ゃハ ロゲン浴を用いて Snをめつきしたままの Snめっき鋼板(ノーリフロー Snめっき鋼板)、 Snをめつきした後、 Snの溶融温度以上に加熱した後急冷することにより、 Snめっき 層の間に Sn— Fe合金層を形成させた Snめっき鋼板(リフロー Snめっき鋼板)がある。 またこれらの Snめっき鋼板の他に、 Niを電気めつきし、その上層にそのまま、または Niめっき後加熱して Niを鋼中に拡散させて Ni— Fe合金層を形成させ、その後 Snを 電気めつきした後、 Snの溶融温度以上に加熱した後急冷する、などの方法を用いて 、島状の Sn層を形成させた島状 Snめっき鋼板なども用いることができる。
[0012] 無光沢のノーリフロー Snめっき鋼板における Snめっき量は、耐食性および経済性 の観点から 0. 1— 10g/m2の範囲にあることが好ましレ、。光沢を有するリフロー Sn めっき鋼板においては Snめっき層と鋼板の間に Sn— Fe合金層が形成されるので、
めっき鋼板の表面に金属 Snを残存させる場合は全 Snめっき量は 1一 lOg/m の 範囲にあることが必要である。めっき鋼板の表面に金属 Snを残存させず、 Sn— Fe合 金層のみからなる層を表面層とする場合は、全 Snめっき量は 0. 1— 10g/m2の範 囲にあることが好ましい。
[0013] 島状 Snめっき鋼板の場合は、 Snめっきを施す前に鋼板上に形成させる Niめっき の量が 0. 005—0. lg/m2、その上層に形成させる Snめっきの量が 0. 1— 1. 5g /m2の範囲にあることが好ましい。このようなめっき量でそれぞれのめっき層を形成 させた後、または Niを上記のめっき量でめっきした後拡散熱処理を施し、その後 Sn を上記のめっき量でめっきした後、 Snの溶融温度以上に加熱することにより、表面に Snが島状に分散して存在する島状 Snめっき鋼板が得られる。
[0014] 上記のようにして得られる Snめっき鋼板の表面にシランカップリング剤を塗布し乾 燥させる。シランカップリング剤としては、ビュル系、アクリル系、エポキシ系、アミノ系 、メルカプト系、クロ口ピル系などの各種のものがある力 本発明においてはァミノ系 のシランカップリング剤を用いることが好ましい。ァミノ系のシランカップリング剤として は、ァミノプロピルトリメトキシシラン、ァミノプロピルメチルジェトキシシラン、ァミノプロ ピルトリエトキシシラン、フエニルァミノプロピルトリメトキシシランなどを用いることがで きる。これらのシランカップリング剤の 5— 200g/Lの水溶液を上記の Snめっき鋼板 に塗布し、乾燥させる。塗布方法としては公知の方法が適用でき、例えば、浸漬法、 ロールコート法、浸漬後に絞りロールを用いて余剰分を絞る方法、スプレー法、電解 処理法など、いずれも適用することができる。乾燥後の塗布膜量は、蛍光 X線法で測 定した Si量で 1一 50mg/m2であることが好ましレ、。 Si量で lmg/m2未満である 場合はこのシランカップリング剤塗布層上に積層する樹脂皮膜の加工接着強度に乏 しくなる。一方、 Si量で 50mg/m2を超えても樹脂皮膜の加工接着強度は不十分と なり、また経済的でなくなる。このようにして本発明の樹脂被覆 Snめっき鋼板に用い る Snめっき鋼板が得られる。
[0015] 本発明の樹脂被覆 Snめっき鋼板は、上記のようにして得られた Snめっき鋼板の片 面または両面に、コロナ放電処理を施した有機樹脂フィルムをコロナ放電処理面が シランカップリング剤塗布層に接するようにして積層することにより得られる。有機樹
脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリェチ レンナフタレート、エチレンテレフタレート'エチレンイソフタレート共重合体、ブチレン テレフタレート.ブチレンイソフタレート共重合体などのポリエステル樹脂、あるいはこ れらのポリエステル樹脂の 2種類以上をブレンドした樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレ ン、エチレン.プロピレン共重合体、およびそれらをマレイン酸変性したもの、エチレン •酢酸ビュル共重合体、エチレン 'アクリル酸共重合体などのポリオレフイン樹脂、 6_ ナイロン、 6, 6_ナイロン、 6, 10—ナイロンなどのポリアミド樹脂、ポリカーボネート、ポ リメチルペンテン、さらに上記のポリエステル樹脂とアイオノマーをブレンドしたものか らなる単層の樹脂フィルム、さらにこれらの樹脂の 2種類以上からなる複層の樹脂フィ ルムなどを用いることができる。樹脂フィルムの厚さとしては、フィルム積層作業のしゃ すさ、樹脂被覆 Snめっき鋼板の成形加工した後の成形体 (缶)における樹脂フィルム の接着強度、耐食性、および経済性の観点から 10— 100 z mであることが好ましい。
[0016] これらの樹脂フィルムは、樹脂ペレットを加熱溶融し、それを押出機の Tダイから押 し出して所望の厚さのフィルムに製膜したものを上記の Snめっき鋼板に熱接着法を 用いて接着積層する。熱接着法は、樹脂が接着する温度範囲に加熱した Snめっき 鋼板に樹脂フィルムを当接し、 1対の加圧ロールで挟み付けて加圧して圧接する方 法であり、樹脂フィルムに延伸加工を施さずに製膜した樹脂フィルムを用いることによ り、 Snの溶融温度よりかなり低い温度で熱接着することができる。 1軸方向、または 2 軸方向に延伸加工して製膜した樹脂フィルムを積層する場合は、延伸加工後の熱固 定を Snの溶融温度よりかなり低い温度で行わないと、樹脂の溶融温度より高温に加 熱しないかぎり Snめっき鋼板に対する良好な加工接着強度が得られないので、溶融 温度が Snの溶融温度よりも高い樹脂を用いる場合は、熱接着することが困難になる こと力 Sfeる。
[0017] 本発明においては、特に、絞り加工後さらにストレッチ加工としごき加工を併用して 加工して缶に成形するような厳しい成形加工を施した場合でも安定した優れた樹脂 膜の加工接着性を得るために、上記のようにして得られる樹脂フィルムの Snめっき鋼 板に当接する面にコロナ放電処理を施したものを用いる。コロナ放電処理は電圧: 2 00V、電流: 0. 2— 8A/25cmの条件で行う。電流が 0. 2A/25cm未満であるとコ
ロナ放電処理の効果が発現しない。一方、電流が 8A/25cmを超えると放電電流が 過剰となり、樹脂フィルムに皺や膨れが生じるようになり、好ましくない。より好ましレヽ 電流の範囲は 1一 5A/25cmである。このようにして樹脂フィルムのコロナ放電処理 を施した側を、上記の Snめっき鋼板のシランカップリング剤を塗布した面に当接して 上記のようにして熱接着することにより、厳しい成形加工を施した場合でも安定した優 れた樹脂膜の加工接着性が得られるようになる。
[0018] 樹脂膜の Snめっき鋼板に対する剥離強度すなわち接着強度は、従来は加工前の 平板の状態で Tピール強度を測定して評価していた。しかし、平板の状態で測定した Tピール強度では、特に、絞り加工後さらにストレッチ加工としごき加工を併用して加 ェして缶に成形するような厳しい成形加工を施した場合の加工中および加工後の接 着強度、すなわち加工接着強度を必ずしも正確に反映しないことが判明した。そこで 本発明においては、樹脂被覆 Snめっき鋼板に絞り加工を施してカップに成形加工し 、カップ側壁力 試片を切り出し、その試片の樹脂膜の剥離強度で加工接着強度( 以下 Sピール強度という)を評価する。
[0019] Sピール強度の測定方法を以下に示す。上記のようにして得られる本発明の樹脂 被覆 Snめっき鋼板から 154mmのブランクを打ち抜き、絞り比: 1. 64で 1段の絞り加 ェを施して、径: 96mm、高さ: 42mmの絞りカップに成形する。このカップから、カツ プ高さ方向: 30mm、カップ周方向: 120mmの大きさで側壁部を切り出して平板状 に曲げ戻した後、図 1に示す T字状の形状の試片 1を打ち抜く。次いで図 2に示すよ うにカッターナイフを用いて試片 1の一方の端部 laの接着強度測定面と反対の側の 樹脂膜に Snめっき鋼板面に達するように切れ目 2を入れる。次いで図 3および図 4に 示すようにして、スコア加工用ダイセットを用いて接着強度測定面と反対の側からスコ ァ 3を入れた後、スコア部を折り曲げて Snめっき鋼板を切断する。この時、接着強度 測定面においては樹脂膜は切断されることなぐ切断された Snめっき鋼板の両側に 繋がったまま残っている。次いで図 5に示すように、試片ホルダー 4の試片揷入部 4a に片端部 laを揷入して試片 1を試片ホルダー 4に固定した後、試片ホルダー 4の上 部 4bと試片 1の他方の端部 lbをテンシロン引張試験機のチャック部で挟んで引張つ て、樹脂膜を Snめっき鋼板から強制剥離して引張強度を測定し、 Sピール強度として
加工接着強度を評価する。
[0020] 上記のようにして測定される Sピール強度は 0. 05kg/15mm以上であることが好 ましレ、。 Sピール強度が 0. 05kg/15mm未満であると、特に、絞り加工後さらにスト レツチ加工としごき加工を併用して加工して缶に成形するような厳しい成形加工を施 した場合に安定した良好な加工接着強度が得られない。
[0021] 本発明の樹脂被覆 Snめっき鋼板を絞り缶に成形カ卩ェする場合は、片面または両 面に樹脂を積層した樹脂被覆 Snめっき鋼板から打ち抜いたブランクを絞りダイスを 用いてカップ状に絞り加工する。径を狭めて側壁の高さを高める場合は、前段よりも 小径の絞りダイスを用いて再絞り加工する。絞り加工は通常 1段または 2段の絞りカロ ェで行われ、比較的缶径が大きぐ側壁高さが低い缶に適用される。
[0022] 本発明の樹脂被覆 Snめっき鋼板を絞り加工し次いでストレッチ加工して缶に成形 加工する場合は、片面または両面に樹脂を積層した樹脂被覆 Snめっき鋼板から打 ち抜いたブランクを絞りダイスを用いてカップ状に絞り加工する。次いで複数段の絞り ダイスを用いて、順次縮径しつつ側壁高さを高めていくが、ストレッチ加工において は、カップが加工ポンチに押されて絞り加工ダイスおよびしわ抑え治具に出入りする 際に側壁が曲げおよび曲げ戻し加工され、側壁部分が伸びて薄肉化しながら絞り加 ェされる。比較的缶径が小さぐ側壁高さが高い缶に適用される。
[0023] 本発明の樹脂被覆 Snめっき鋼板を絞り加工し次いでしごき加工して缶に成形加工 する場合は、片面または両面に樹脂を積層した樹脂被覆 Snめっき鋼板から打ち抜 いたブランクを 1段または複数段の絞りダイスを用いてカップ状に絞り加工する。次い で 1段または複数段のしごきダイスを用いて、力ップの側壁厚みより小さく設定したし ごきダイスとパンチの間のクリアランス部分に側壁部を強制的に押し込んで薄肉化し ながら側壁高さを高めてレ、くしごき加工を施す。このため、比較的缶径が小さぐ側壁 高さが高ぐかつ側壁厚みの小さい缶に適用される。片面のみに樹脂を積層した樹 脂被覆 Snめっき鋼板を、非樹脂被覆面が缶外面となるようにしてしごき加工すると、 Snめっき層がしごきダイスに擦られて鏡面になり、美麗な表面光沢が得られる。
[0024] 本発明の樹脂被覆 Snめっき鋼板を絞り加工し次いでストレッチ加工としごき加工を 併用して缶に成形加工する場合は、片面または両面に樹脂を積層した樹脂被覆 Sn
めっき鋼板から打ち抜レ、たブランクを 1段または複数段の絞りダイスを用いてカップ状 に絞り加工する。次いで通常のストレッチ加工と同様にして複数段の絞りダイスを用 いて、順次縮径しつつ側壁高さを高めていくが、しごき加工におけるしごきダイスのよ うにダイスとパンチの間のクリアランス部分をカップの側壁厚みより小さく設定しておく ことにより、側壁が曲げおよび曲げ戻しカ卩ェされると同時にしごき加工され、側壁部 分が伸びて薄肉化しながら絞りしごき加工される。この加工において、片面のみに樹 脂を積層した樹脂被覆 Snめっき鋼板を用いた場合も、美麗な表面光沢が得られる。 実施例
[0025] 以下、実施例にて本発明をさらに詳細に説明する。
[Snめっき鋼板の作成]
表 1に示す板厚およびテンパーの冷延鋼板をアルカリ水溶液中で電解脱脂し、水 洗し、次いで硫酸酸洗し、水洗した後、公知のフエロスタン浴を用いて、表 1に示す条 件で Snめっき層を形成させる力、または Snめっき層を形成させた後リフロー処理を 施して鋼板と Snめっき層の間に Sn— Fe合金層を形成させた。次いで表 1に示す処 理浴を用い、表 1に示すシランカップリング剤の 5— 200g/L水溶液を、表 1に示す 塗布量となるように、浸漬法を用いて塗布し乾燥して Snめっき上にシランカップリング 剤塗布層を形成させた。また比較材として、試料番号 10で示す、冷延鋼板に電解ク ロム酸処理を施して Crめっき層と Cr水和酸化物層の 2層を形成させたティンフリース チールを作成した。
[0026] [表 1]
試 鋼 板 めっき量 リフ I>- Cr水和酸化物 シランか;;フ Ίンク"処理剤塗布 区 分 料 処理 付着量
番 板厚 テンハ" " 種類 付着量 (Crとして 処理液の種類 付着量 号 (mm) (g/ms) mg/m2) (S iとして
mg/m2)
1 0. 18 D -6 Sn 7 有 ― 匪- 903 10 本発明
2 0. 18 DR-6 Sn 5 有 ― 誦 -903 8 本発明
3 0. 24 T-3CA Sn 3 無 ― KBM-903 17 本删
4 0. 24 T-3CA Sn 10 有 ― 翻- 903 5 本麵
5 0. 24 T-3CA Sn 7 有 ― KBM-903 15 本発明
6 0. 18 DR-6 Sn 3 ― KBM-603 20 本発明
7 0. 18 DR-6 Sn 8 有 ― KBM-903 8 本発明
8 0. i8 DR-6 Sn 6 有 ― KBM-603 2 本発明
9 0. 18 DR-6 Sn 5 ― KBM-903 15 比較例
10 0. 18 DR-6 Cr 0. 12 18 ― ― 比較例 注) KBM903:信越化学株式会社製 ァミノプロピル卜リメ トキシシラン
KBM603:信越化学株式会社製 ァミノプロピルトリエトキシシラン 2]
コ Dナ放電処理 区 分
料
番 電圧:雇''にお
ける電流値
(A)
1 8 本翻
2 0. 2 本棚
3 1 本発明
4 4 本発明
5 4 本発明
6 5 本発明
7 4 本発明
8 3 本発明
9 ― 比較例
10 ― 比較例
[樹脂被覆 Snめっき鋼板の作成]
表 1に示す Snめっき鋼板およびティンフリースチールの片面に、片側に表 2に示す 条件でコロナ放電処理を施した厚さ: 28 μ mの無配向の透明のエチレンテレフタレ ート.エチレンイソフタレート共重合体 (PETIで表示)の 2層フィルム (上層力 SPETI15( 厚さ: 12 μ m)、下層が PETI5(厚さ: 16 /i m)、数字はエチレンイソフタレートのモル %を示し、 PETI5側が鋼板側と接する)、他の片面に同一のエチレンテレフタレート' エチレンイソフタレート共重合体にチタン系白色顔料を 20重量%含有させた白色の 無配向の 2層フィルム (上層力 SPETI15(厚さ: 5 μ m)、下層力 ^ΡΕΤΙ5(厚さ: 1 1 μ m)) を熱接着法を用い、 225°Cで熱接着して積層し、試料番号 1一 8で示す樹脂被覆 Sn めっき鋼板および試料番号 10で示す樹脂被覆ティンフリースチールを作成した。ま た比較材として、試料番号 9で示すコロナ放電処理を施さなレ、樹脂フィルムを積層し
た被覆 Snめっき鋼板も作成した。
[0029] [Sピール強度測定用の試片の作成]
表 1に示す樹脂被覆 Snめっき鋼板および樹脂被覆ティンフリースチールから、透明 樹脂フィルム被覆面がカップ内面側となるようにして、先に示したようにして絞り比: 1 . 64の 1段絞り加工を施して絞りカップを作成し、透明樹脂フィルム被覆面が測定面 となるようにして、先に示したようにして Sピール強度測定用の試片を作成した。次い でテンシロンを用いて先に示したようにして Sピール強度を測定した。結果を表 3に示 す。
[0030] [表 3]
[0031] [絞り加工缶の成形]
表 1に示す試料番号 1一 2、 6— 9の樹脂被覆 Snめっき鋼板および試料番号 10の
樹脂被覆ティンフリースチールを、直径: 112mmのブランクに打ち抜いた後、透明榭 脂フィルム被覆面がカップ内面側となるようにして、絞り比:1. 50の絞り比で絞り加工 し、次いで絞り比: 2. 1で再絞り加工し、缶径: 53mmの絞り缶に成形加工した。次い で公知の方法で缶上部をトリミングし、ネックインカ卩ェ、フランジカ卩ェを施した。このよ うにして 1000個の絞り缶を成形した後、樹脂フィルムの剥離の有無を肉眼観察し、 剥離が認められた成形缶の発生率を%で評価した。結果を表 4に示す。
[0032] [絞り加工後ストレッチ加工を施してなる缶の成形]
表 1に示す試料番号 1一 2、 6— 9の樹脂被覆 Snめっき鋼板および試料番号 10の 樹脂被覆ティンフリースチールを、直径: 187mmのブランクに打ち抜いた後、透明樹 脂フィルム被覆面がカップ内面側となるようにして、絞り比:1. 70の絞り比で絞り加工 し、カップに成形した。次いで第一次再絞り比: 1. 29、第二次再絞り比:1. 24、第三 次再絞り比: 1. 20、再絞りダイス肩の曲率半径: 0. 4mm、しわ抑え荷重: 58Nの条 件で複数段のストレッチ加工を行レ、、缶径: 66mmのストレッチ加工缶に成形加工し た。次いで公知の方法で缶上部をトリミングし、ネックイン加工、フランジ加工を施した 。このようにして 1000個のストレッチ加工缶を成形した後、樹脂フィルムの剥離の有 無を肉眼観察し、剥離が認められた成形缶の発生率を%で評価した。結果を表 4に 示す。
[0033] [絞り加工後しごき加工を施してなる缶の成形]
表 2に示す試料番号 3— 5の樹脂被覆 Snめっき鋼板および樹脂被覆ティンフリース チールを、直径: 140mmのブランクに打ち抜いた後、透明樹脂フィルム被覆面が力 ップ内面側となるようにして、絞り比: 1. 63の絞り比で絞り加工し、次いで絞り比: 1. 30の絞り比で再絞り加工して缶径: 66mmのカップに成形した。次いで 3段のしごき 加工 (総しごき率: 65%)を施し、缶径: 66mmの缶に成形加工した。次いで公知の方 法で缶上部をトリミングし、ネックインカ卩ェ、フランジカ卩ェを施した。このようにして 100 0個のストレッチ加工缶を成形した後、樹脂フィルムの剥離の有無を肉眼観察し、剥 離が認められた成形缶の発生率を%で評価した。結果を表 4に示す。
[0034] [絞り加工後ストレッチ加工としごき加工を併用して加工してなる缶の成形]
表 1に示す試料番号 1一 2、 6— 9の樹脂被覆 Snめっき鋼板およびおよび試料番号
10の樹脂被覆ティンフリースチールを、直径: 160mmのブランクに打ち抜いた後、 透明樹脂フィルム被覆面がカップ内面側となるようにして、缶径: 100mmのカップに 絞り加工した。次いで再絞り加工により缶径: 80mmの再絞りカップとした。さらにこの 再絞りカップにストレッチ加工としごき加工を併用して缶径: 65mmの缶とした。ストレ ツチ加工としごき加工を併用する加工は、缶の上端部となる再絞り加工部としごき加 ェ部の間隔が 20mm、再絞りダイス肩の曲率半径が板厚の 1. 5倍、再絞りダイスとポ ンチのクリアランスが板厚の 1. 0倍、しごき加工部のクリアランスが板厚の 0. 5倍とな る条件で実施した。次いで公知の方法で缶上部をトリミングし、ネックインカ卩ェ、フラン ジ加工を施した。このようにして 300個のストレッチ加工缶を成形した後、樹脂フィル ムの剥離の有無を肉眼観察し、剥離が認められた成形缶の発生率を%で評価した。 結果を表 4に示す。
[表 4]
試 樹脂 剥 離 の 発 生 率 (%) 区 分
料
番
号 絞り加工 絞り加工後 絞り加工後 絞り加工後
ストレッチ加工 しごき加工 ストいノチ加工
としごき加
ェを併用
1 0 0 ― 0 本発明
2 0 0 ― 0. 2 本発明
3 ― ― 0 ― 本発明
4 ― 0 ― 本発明
5 ― 0 ― 本発明
6 0 ― 0 本発明
7 0 0 ― 0 本発明
8 0 0 ― 0. 1 本発明
9 0 0 ― 3. 3 比較例
10 0 0 0 比較例 表 4に示すように、コロナ放電処理を施した樹脂フィルムを、シランカップリング塗布 層を設けた Snめっき鋼板に積層してなる本発明の樹脂被覆 Snめっき鋼板は、コロナ 放電処理を施さなレ、樹脂フィルムを、シランカップリング塗布層を設けた Snめっき鋼 板に積層してなる樹脂被覆 Snめっき鋼板に比べて樹脂フィルムの Snめっき鋼板に 対する加工接着性に優れており、表 3に示した Sピール強度、すなわち 1段の絞り加 ェによる加工後の接着性の結果と一致している。このように、本発明の樹脂被覆 Sn めっき鋼板は、複数段の絞り加工、絞り加工後のスチレツチ加工、絞り加工後のしご き加工、絞り加工後ストレッチ加工としごき加工を併用して加工する厳しい加工を施し た場合に、樹脂被覆ティンフリースチールにおけるのと同様に、安定した優れた加工
接着性を示す。
産業上の利用可能性
本発明の樹脂被覆 Snめっき鋼板は、 Snめっき層上にシランカップリング塗布層を 設けてなる Snめっき鋼板に、コロナ放電処理を施した樹脂フィルムを熱接着して積 層してなり、絞り加工、絞り加工後のさらなるストレッチ加工、絞り加工後のさらなるし ごき加工、のレ、ずれの加工を施しても樹脂フィルムが剥離することなく安定した優れ た加工接着性を示す。さらに、より過酷な絞り加工後にさらにストレッチ加工としごき 加工を併用する加工を施した場合においても、樹脂フィルムが剥離することがなぐ S nめっき層上にシランカップリング塗布層を設けてなる Snめっき鋼板に、コロナ放電 処理を施さない樹脂フィルムを熱接着して積層してなる樹脂被覆 Snめっき鋼板に比 ベて安定した優れた加工接着性を示す。