明 細 書
ヘリカーゼをコードするヒトの遺伝子, R e c Q4 技術分野
本発明は、 ヘリ力一ゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、 該遺伝 子がコードするタンパク質、 該タンパク質の製造方法、 並びに該タンパク質及び 該遺伝子の用途に関する。 背景技術
DNAヘリカーゼは、 生体内又は微生物細胞中に於いて DNAが関与する各種の生 物反応に作用する重要な酵素であり、 その種類も多い。
DNA ヘリカーゼが多種類にわたって存在することは、 DNA が関与する反応が細 胞の複製及び増殖、 個体の発生及び成長、 さらに生命維持など多岐にわたること から明らかである。 これまでに判っている細胞レベルでの生化学反応としては、 DNA の複製 (replication) 、 修復 (repairing) 、 転写 (transcription) 、 DNA の分離 (segregation) 及び解合 (recombination) の少なくとも 5種類が想定さ れている。 一般的に、 DNAヘリカーゼの作用は二本鎖 DNAを一本鎖 DNA に分別す ることが知られており、 この作用に必要なェネルギ一は ATPの加水分解により得 られていると考えられている。
数ある DNAヘリカーゼの中でも、 最近、 RecQ タイプの DNAヘリ力一ゼ (大腸 菌 recQ遺伝子のヘリ力一ゼドメインとアミノ酸レベルで約 40%以上の相同性を 示すヘリ力一ゼドメインを有するヘリカーゼ) が見出され、 ヒトの病気及び老化 現象と関連するという観点から注目が集まっている。 例えば、 ブルーム症候群は 若年で種々の癌を多発する疾患であり、 ウェルナー症候群は早老と異常癌を誘発 する遺伝性疾患である。 最近これらの疾患の原因が、 それぞれ異なるヒト RecQ タイプの MAヘリ力一ゼをコードする遺伝子の変異によることが明らかにされた (Cell,83,pp655-666(1995) 及び Science, 272, pp258- 262(1996) ) 。
RecQ タイ プへリ カーゼは、 元来、 中山等 (Mol.Gen.Genet., 195,pp474 - 480(1984)) により大腸菌中に於いて発見されたものであるが、 このへリカーゼ
に高い相同性を有するタンパク質をコードする遺伝子が、 酵母とヒ卜癌細胞中 Ίこ 発見 さ れ、 そ れぞれ sgsl(Gangloff et al..Mol.Cel l.Biol.14,pp8391- 8398(1994))及び RecQKSeki et al., Nuc. Acids Res.22, pp4566- 4573(1994)) と 命名された。
.大腸菌や酵母のような単一細胞生命体に於いては、 このフアミリーに属する ヘリ力一ゼとしては、 最初に見出された大腸菌 RecQヘリカーゼ及び sgslの各一 種類であるが、 多細胞からなるヒトに於いては、 前述した疾患に関連するブル一 ム DNA ヘリ力一ゼ (Ellis et al., Cel 1, 83, pp655- 666(1995)) 及びウェルナー DNA ヘリカーゼ (Yu et al. , Science, 272, pp258- 262(1996))の二種類、 並びにい まだ疾患との関連が見出されていない RecQlヘリ力一ゼの合計 3種類がこれまで に知られている。 発明の開示
本発明は、 ヒト RecQ4型 DNAヘリ力一ゼ遺伝子及び該遺伝子がコードするタン パク質、 該タンパク質の製造方法、 並びに該タンパク質及び該遺伝子の用途を提 供することを目的とする。
本発明者らは、 RecQ ファミリ一に属する DNA ヘリカーゼが、 ヒトに於いては 前記 3種類のほかにも多数存在するのではないかと考えた。 そして、 それらの遺 伝子が変異を受けた時、 ブルーム症候群やウェルナー症候群の例に於いて見られ たように、 各種疾患を誘発し、 いまだ原因不明となっている難病の原因遺伝子と なっているのではないかと考察した。 そして、 本発明者らは、 上記課題を解決す るため鋭意研究を行った結果、 いわゆる RACE 法により、 新たにヒト RecQ4 型 DNAヘリ力一ゼ遺伝子をクローニングすることに成功し、 本発明を完成するに至 つた。
すなわち、 本発明は、 以下の(a)又は(b)のタンパク質をコードする遺伝子であ る。
(a) 配列番号 2で表されるアミノ酸配列を含むタンパク質
(b) 配列番号 2で表されるアミノ酸配列において少なく とも 1個のアミノ酸 が欠失、 置換若しくは付加された配列を含み、 ヘリカーゼ活性を有するタン
パク質
さらに、 本発明は、 以下の(c)又は(d)の DNAを含む遺伝子である。
(c) 配列番号 1で表される塩基配列からなる DNA
(d) 配列番号 1で表される塩基配列からなる DNA とストリンジェントな条件 下でハイブリダイズし、 かつヘリ力一ゼ活性を有するタンパク質をコードす る DNA
さらに、 本発明は、 前記遺伝子の少なくとも一部とハイブリダィズするオリ ゴヌクレオチドプロ一ブである。
さらに、 本発明は、 前記遺伝子を含有する組換えベクターである。
さらに、 本発明は、 前記組換えべクタ一を含む形質転換体である。
さらに、 本発明は、 前記形質転換体を培養し、 得られる培養物からへリカ一 ゼ活性を有するタンパク質を採取することを特徴とする前記タンパク質の製造方 法である。
さらに、 本発明は、 以下の(a)又は(b)の組換えタンパク質である。
(a) 配列番号 2で表されるアミノ酸配列を含むタンパク質
(b) 配列番号 2で表されるアミノ酸配列において少なく とも 1個のアミノ酸 が欠失、 置換若しくは付加された配列を含み、 ヘリカーゼ活性を有するタン パク質
さらに、 本発明は、 前記タンパク質のアミノ酸配列と少なくとも 7 0 %のホモ ロジ一を有するアミノ酸配列を含む、 マウス又はラット由来のヘリカーゼ活性を 有するタンパク質、 及び該タンパク質をコードするマウス又はラット由来の遺伝 子である。
さらに、 本発明は、 前記形質転換体を培養し、 得られる培養物からへリカ一ゼ 活性を有するタンパク質を採取することを特徴とする前記タンパク質の製造方法 である。
さらに、 本発明は、 前記タンパク質と特異的に反応するモノクロナール抗体又 はポリクロナ一ル抗体である。
さらに、 本発明は、 前記タンパク質で免疫された抗体産生細胞とミエローマ細 胞とを融合させることにより得られる、 前記モノクローナル抗体を産生するハイ
ブリ ドーマである。
さらに、 本発明は、 前記オリゴヌクレオチドプローブを含む、 ヘリ力一ゼをコ ―ドする遺伝子の検出用試薬である。
さらに、 本発明は、 前記タンパク質、 並びに前記モノクローナル抗体及び 又 はポリクローナル抗体を含む、 ヘリカーゼ活性を有するタンパク質をコードする 遺伝子異常により引き起こされる疾患の診断用キットである。
さらに、 本発明は、 前記遺伝子の発現レベルを上昇又は下降するように修飾 された遺伝子が導入されたトランスジエニック動物、 及び前記遺伝子の機能が失 われるように処理されたノックァゥトマウスである。 以下、 本発明を詳細に説明する。
本発明により明らかになつた遺伝子は、 新規ヒト RecQ4型 DNAヘリ力一ゼをコ —ドするものであり、 配列番号 2で表されるアミノ酸配列を含むタンパク質、 又 は該アミノ酸配列において少なくとも 1個のアミノ酸が欠失、 置換、 付加したァ ミノ酸配列を含み、 かつへリカ一ゼ活性を有するタンパク質をコードするもので ある。
本発明のタンパク質は、 図 2に示すように、 これまで知られている RecQ 型 DNA ヘリ力一ゼにおいて、 アミノ酸レベルでは、 大腸菌、 酵母及びヒトとの間で 良く保存された 7つのへリカ一ゼ,モチーフを含む。 また、 図 3に示すラジェ一 シヨンハイブッリ ドマッピングの結果から明白なように、 本発明のヒト RecQ 型 DNAヘリカーゼ遺伝子は、 図 4に示すヒト第 8染色体の長腕、 8q24. 3に存在する ことが確認された。 なお、 本発明のヒト由来の遺伝子に相当する他種生物由来の 遺伝子は、 公知技術によりクロ一ニングすることが可能である。
本発明の遺伝子が各種臓器に於てどのように発現しているかを調べる多組織 (Mul t i -Ti ssue) ノーザンプロットによる解析結果 (図 5 ) から、 当該遺伝子は、 全ての組織において発現し、 特に、 胸腺及び精巣において著しく強く発現してる ことが認められた。
以上の結果を総合すると、 本発明の遺伝子は、 生体の基本的な恒常性の維持 に関わる遺伝子の一つであることが強く示唆される。 従って、 本発明の遺伝子は、
発育及び老化との関連を解明するための研究に有用であると共に、 この遺伝チの 発現制御の解明は、 生体の恒常性維持を司るメカニズムを解明するうえでも有用 であり、 また、 生命の基本的な恒常性を維持するための新規医薬品の創製にも有 用である。 本発明の遺伝子は、 例えば以下のようにして同定し取得することができる。
1. ヒト RecQ型 DNAヘリカーゼ遺伝子のクローニング。
本発明の遺伝子 (ヒト RecQ4型遺伝子、 又はヒト RecQ型 DNAへリ力一ゼ遺伝 子ともいう) は、 Long-distance (LD) PCR 法及び Suppression PCR 法の 2つの 原理に基づいて RACE [Rapid Amplification of cDNA Ends; Frohman, M. A. et al., Methods Enzymol. Vol.218, pp340-358 (1993)]を行うことにより得ること ができる。
すなわち、 本発明のヒト RecQ型 DNAヘリ力一ゼ遺伝子は、 既知の部分配列を 有する DNA断片と、 5' 及び 3' 末端を有するが配列が未知の DNA 断片とを 増幅し、 さらに、 これらの DNA 断片の融合により、 完全長の cDNA として得る ことができる。 本発明では、 完全長の cDNA のクローニングは、 例えば市販のキ ット (MarathonTM cDNA Amplification Kit; CLONETECH 社) を用いて行うこと ができる。
まず、 ヒト由来の既知配列を有する DNA 断片を増幅する。 既知配列は、 ヒ卜 組織又は器官由来の poly(A)+ RNA 、 例えばヒト精巣又は脾臓由来の poly(A) + RNA から得ることができる。 すなわち、 該 RNAから逆転写酵素を用いて cDNAを 合成し、 RT-PCR により部分 cDNA 断片を調製する (図 1 (1) ) 。 次に、 得られ た部分 cDNA 断片の配列を決定した後、 該部分 cDNA の配列を基に 4種類の遺伝 子特異的プライマ一 (GSp)を設計する (5'GSP1 及び 5'GSP2 並びに 3'GSP1 及 び 3'GSP2 という) 。 GSP は、 当該部分 cDNA 配列より 5' 側及び 3'側の領域 に存在する DNA 断片であって配列が未知の DNA 断片を増幅するために必要とさ れるプライマーである。 GSP の配列は、 当該部分 cDNA 配列から任意に選択する ことができ、 その配列は化学合成により得ることができる。 本発明では、 当該部 分 cDNA よりも 5' 側の未知配列を増幅する際に使用する GSP を 5'GSP1 及び
5' GSP2 、 また 3'側の未知配列を増幅する際に使用する GSP を 3' GSP 1 及—び 3' GSP2 とする (図 1 ( 1 ) の枠囲み部分) 。
次に、 部分 cDNA よりも 5'側及び 3'側の DNA断片を増幅する (図 1 (2) ) 。 錡型としては、 市販のヒト精巣、 脾臓等の由来の cDNA [例えば、 CLONETECH 社 の cDNA Ready1" M ]を用いることができる。 この錡型となる DNA断片の配列は未 知であるが、 各 DNA断片の末端にはアダプタ一配列が付加されている。 そこで、 アダプタ一配列にハイブリダィズするプライマ一 [アダプタープライマー (AP) という] 及び前記 GSP をプライマ一として用いて、 アダプタ一が連結された、 配列が未知の cDNA 断片の増幅反応 (LD PCR) を 2回行う (図 1 (2) ) 。 例えば、 5'側の未知配列を増幅するために、 まず API及び 5' GSP1 を用いて PCRを行い、 得られた断片を铸型として、 次は前記 API 及び 5' GSP1 の位置よりも内側の領 域にハイブリダィズすることができるプライマ一 (AP2 及び 5' GSP2)を用いて PCR を行う (nested PCR)。 3'側の未知配列も、 3' GSP1 及び 3' GSP2 を用いて 5' 側の未知配列を増幅したと同様に増幅することができる。
本発明では、 前記既知の部分配列の断片の位置を基準として、 その既知配列よ リも上流に位置する DNA断片を 5' - RACE 産物、 下流に位置する DNA断片を 3' - RACE 産物とする。 なお、 AP はアダプタ一の突出末端と同じ配列を持っため、 ァ ダブターにはアニーリングせず、 一回目の増幅では、 遺伝子特異的プライマ一 (GSP)からのみ伸長する (これを Suppress i on PCRという)。
得られた cDNA の塩基配列の決定は、 Hattor i ら [ El ectrophores i s 13, PP560-565 ( 1992) ] により記載された PCR をベースにした方法により行う。 す なわち、 Perkin Elmer 社製の蛍光ダイデォキシタ一ミネーターを含有する PRISM シ一クェンシングキットを使って反応を行い、 Appl i ed Biosystem 社製の ォ一トシ一クェンサ一 (モデル AB I 373) で塩基配列を読み取り、 附属の コン ピュータ一(例えば Mac i ntoshコンピュ一ター)によリデータの解析を行う。
上記のようにして得られた既知の部分配列、 5' - RACE 産物及び 3' -RACE 産物 の塩基配列からァセンブリにより全長 cDNA の塩基配列を得ることができる。 す なわち、 各塩基配列間でオーバ一ラップしている部分を繋げて 5'及び 3'部分を 含む塩基配列を得ることができる (図 1 ) 。
配列番号 1に本発明の遺伝子の塩基配列を、 配列番号 2に該遺伝子によ "コ 一ドされるアミノ酸配列を示すが、 配列番号 2で表されるアミノ酸配列を有する タンパク質がヘリ力一ゼ活性を有する限り、 当該タンパク質に含まれるアミノ酸 配列、 又は当該遺伝子の塩基配列に欠失、 置換、 付加、 挿入等の変異が生じても よい。 例えば、 配列番号 2で表わされるアミノ酸配列の少なくとも 1個、 好まし くは 1 〜10 個、 さらに好ましくは 1 〜 5個のアミノ酸が欠失してもよく、 配列 番号 2で表わされるアミノ酸配列に少なくとも 1個、 好ましくは 1〜10 個、 さ らに好ましくは 1〜 5個のアミノ酸が付加してもよく、 あるいは、 配列番号 2で 表わされるアミノ酸配列の少なくとも 1個、 好ましくは 1〜10 個、 さらに好ま しくは 1〜 5個のアミノ酸が他のアミノ酸に置換してもよい。 従って、 配列番号 2で表されるアミノ酸配列の第 1番目のメチォニン(Met)が欠失しているものな ども、 このアミノ酸配列の変化によるタンパク質に含まれる。 また、 本発明のタ ンパク質に含まれるアミノ酸をコードする塩基配列のほか、 縮重コドンにおいて のみ異なる同一のタンパク質をコードする縮重異性体も本発明の遺伝子に含まれ る。
さらに、 本発明は、 配列番号 1で表される塩基配列からなる DNA を含む遺伝 子のほか、 該 DNAとストリンジェントな条件下でハイブリダィズし、 かつへリカ ーゼ活性を有するタンパク質をコードする DNAを含む遺伝子も、 本発明の遺伝子 に含まれる。 ここで、 ストリンジェントな条件とは、 例えばナトリウム濃度が 15〜60mM、 好ましくは 15〜30mMであり、 温度が 55〜70°C、 好ましくは 60〜70°C での条件をいう。 なお、 上記変異の導入は、 公知のいずれかの手法により行うことができ、 例え ば点突然変異導入キッ ト (例えば宝酒造社製の TAKARA LA PCR in vi tro Mutagenes i s K i t) 等を用いることにより行うことができる。
また、 前記タンパク質のアミノ酸配列と少なくとも 7 0 %のホモロジ一を有す るアミノ酸配列を含むタンパク質も、 本発明のタンパク質に含まれ、 そのタンパ ク質をコードする遺伝子も、 本発明の遺伝子に含まれる。 このタンパク質及び遺 伝子としては、 例えばマウス又はラット由来のものが挙げられる。
塩基配列が一旦決定されると、 その後は、 化学合成によって、 又は決定され—た 当該塩基配列から合成したプライマー (例えば配列番号 35 及び 36) を用いた PCRによって、 あるいは該塩基配列を有する DNA断片をプローブとしてハイプリ ダイズさせることによって、 所望の遺伝子を得ることができる。
2 . 組換えベクター及び形質転換体の作製
本発明の組換えべクタ一は、 適当なベクタ一に遺伝子を組み込むことにより作 製することができる。 また、 本発明の形質転換体は、 本発明の組み換え体 DNA を、 該組換えべクタ一を作製する際に用いたベクターに適合する宿主中に導入す ることにより得ることができる。
精製された遺伝子を、 適当なベクタ一 DNA の制限酵素部位又はマルチクロ一 ニングサイ トに挿入して組換えベクターを作製し、 当該組換えベクターを用いて、 宿主細胞を形質転換する。
DNA 断片を揷入するためのベクター DNA は、 宿主細胞で複製可能なものであ れば特に限定されず、 例えば、 プラスミ ド DNA、 ファージ DNA等が挙げられる。 プラスミ ド DNA としては、 例えばプラスミ ド pUC1 18 (宝酒造社製)、 PUC119 (宝酒造社製)、 pB luescript SK+ (Stratagene 社製)、 pGEM-T (Promega 社製) 等が挙げられ、 ファージ DNA としては、 例えば M13mpl8、 M13mpl9 等が挙げら れる。
宿主としては、 目的とする遺伝子を発現できるものであれば特に限定されず、 真核細胞及び原核細胞のいずれをも用いることができる。 例えば、 大腸菌 (Escheri chi a co l i ) 、 バチルス . ズブチリス (Bac i l l us subt i 1 i s)等の細菌、 サッカロミセス ·セレビシェ (Saccharomyces cerev i s i ae) 等の酵母、 COS 細胞、 CH0 細胞等の動物細胞などが挙げられる。
大腸菌等の細菌を宿主として用いる場合は、 本発明の組換えベクターが該宿主 中で自立複製可能であると同時に、 プロモータ一、 本発明の DNA、 転写終結配列 を含む構成であるこ とが好ま しい。 例えば、 大腸菌と しては XU-B lue (St ratagene 社製)、 JM109 (宝酒造社製) 等が挙げられ、 発現ベクターとしては、 例えば pBTrp2 等が挙げられる。 プロモーターとしては、 大腸菌等の宿主中で発
現できるものであればいずれを用いてもよい。 例えば、 trp プロモータ一、 rac プロモータ一、 PL プロモータ一、 PR プロモータ一などの大腸菌やファージ等に 由来するプロモータ一が用いられる。
本発明では、 形質転換は、 例えば Hanahan の方法 [Techniques for Transformat ion of E. co l i In DNA Cloning, vol . 1, Glover, D. M. (ed. ) , ppl09- 136, IRL Press ( 1985) ]により行うことができる。
酵母を宿主として用いる場合は、 発現ベクターとして、 例えば YEpl3、 YCP50 等が挙げられる。 プロモータ一としては、 例えば gal 1 プロモータ一、 gal 10 プロモーター等が挙げられる。 酵母への組換えベクターの導入方法としては、 例 えばエレクトロボレ一シヨン法 [Methods. Enzymo l . , 194, ppl82-187 ( 1990)]、 スフエロプラスト法 [Proc. Nat l . Acad. Sci . USA, 84, ppl929-1933 ( 1978) ]、 酢酸リチウム法 [J. Bacterio l . , 153, 163-168 ( 1983) ] 等が挙げられる。
動物細胞を宿主として用いる場合は、 発現ベクターとして例えば pcDNAI、 pcDNAI /Amp (インビトロジェン社) 等が用いられる。 動物細胞への組換えべクタ —の導入方法としては、 例えば、 エレクトロボレ一シヨン法、 リン酸カルシウム 沈殿法等が挙げられる。
ベクタ一 DNA としてプラスミ ド DNA を用いる場合、 例えば EcoRI DNA断片を 挿入する際、 プラスミ ド DNA を制限酵素 EcoRI (NEB 社製) を用いて消化して おく。 次いで、 DNA 断片と切断されたべクタ一 DNA とを混合し、 これに、 例え ば T4 DNA リガーゼ (宝酒造社製) を作用させて組換えベクターを得る。
上記形質転換株のスクリーニングは、 目的遺伝子の一部を含む MA 断片をプ ローブとしたコロニーハイブリダィゼ一シヨン、 あるいは、 目的の遺伝子の塩基 配列に基づいた 5, プライマー (FP ; forward primer) を合成し、 次いで、 相補 鎖 DNAの塩基配列に基づいた 3' プライマ一 (RP ; reverse primer) を合成し、 これらのプライマーを用いた PCR 法により、 目的とする遺伝子を含むコロニー を選択することができる。
3 . ヒト RecQ4型遺伝子がコードするタンパク質 (ポリペプチド) の生産
前記のようにして得られた組換えべクタ一を保有する形質転換体を培養すれば、
本発明のタンパク質を生産することができる。 培養方法は、 通常の固体培養'; e もよいが、 液体培養法を採用することが好ましい。
形質転換体を培養する培地としては、 例えば酵母エキス、 ペプトン、 肉エキス 等から選ばれる 1種以上の窒素源に、 リン酸水素二カリウム、 硫酸マグネシウム、 塩化第二鉄等の無機塩類の 1種以上を添加し、 更に必要により糖質原料、 抗生物 質、 ビタミ ン等を適宜添加したものが用いられる。 また、 必要により培地に
IPTG 等を添加して、 遺伝子の発現を誘導してもよい。 培養開始時の培地の PH は 7. 2〜7. 4 に調節し、 培養は通常 36〜38で、 好ましくは 37°C前後で 14〜20時 間、 通気撹拌培養、 振盪培養等により行う。
培養終了後、 培養物より本発明のタンパク質を採取するには、 通常のタンパク 質精製手段を用いることができる。
すなわち、 リゾチーム等の酵素を用いた溶菌処理、 超音波破砕処理、 磨碎処理 等により菌体を破壊し、 本発明の遺伝子がコードするタンパク質を菌体外に排出 させる。 次いで、 濾過又は遠心分離等を用いて不溶物を除去し、 粗タンパク質溶 液を得る。
上記粗タンパク質溶液から、 該タンパク質をさらに精製するには、 通常のタン パク質精製法を使用することができる。 例えば、 硫安塩析法、 イオン交換クロマ トグラフィ一、 疎水クロマトグラフィー、 ゲルろ過クロマトグラフィー、 ァフィ 二ティークロマトグラフィー、 電気泳動法等を、 単独又は適宜組み合わせること によリ行う。
4 . モノクローナル抗体の作製
本発明のヒト RecQ4型遺伝子がコードするタンパク質に特異的なモノクロ一ナ ル抗体は、 以下のようにして得ることができる。
( 1 ) 抗原の調製
前記 3の方法により得られたタンパク質を緩衝液に溶解し、 次いでアジュバン トを添加する。 アジュバントとしては、 市販のフロイント完全アジュバント、 フ ロイン卜の不完全アジュバント等が挙げられ、 これらの何れのものを混合しても よい。
( 2) 免疫及び抗体産生細胞の採取
上記のようにして得られた免疫原を哺乳動物、 例えばラット、 マウスなどに投 与する。 抗原の免疫量は 1回に動物 1匹当たり、 10〜500 ^ § 用いる。 免疫部位 は、 主として静脈内、 皮下、 腹腔内に注入する。 また、 免疫の間隔は特に限定さ れず、 数日から数週間間隔で、 好ましくは 1〜 3週間間隔で、 2〜 5回、 好まし くは 3〜4回免疫する。 最終の免疫日から 2〜 7日後、 好ましくは 4〜 5日後に、 抗体産生細胞を採集する。 抗体産生細胞としては、 脾臓細胞、 リンパ節細胞、 末 梢血細胞等が挙げられるが、 脾臓細胞又は局所リンパ節細胞が好ましい。
(3) 細胞融合
抗体産生細胞と融合させるミエ口一マ細胞として、 マウスなどの動物の一般に 入手可能な株化細胞を使用する。 使用する細胞株としては、 薬剤選択性を有し、 未融合の状態では選択培地 (HAT 培地: ヒポキサンチン、 アミノプテリン、 チミ ンを含む) で生存できず、 抗体産生細胞と融合した状態でのみ生存できる性質を 有するものが好ましい。 ミエローマ細胞の具体例としては、 P3U- 1 (大日本製薬 社製)、 P3x63Ag8. 653 などのマウスミエ口一マ細胞株が挙げられる。 次に、 上記 ミエローマ細胞と抗体産生細胞とを細胞融合させる。 細胞融合は、 血清を含まな い DMEM、 RPMI - 1640 培地などの動物細胞培養用培地中で、 ミエ口一マ細胞 1に 対して抗体産生細胞 100〜500 の割合、 例えば 108 細胞/ ml の抗体産生細胞と 2 X 105細胞/ ml のミエローマ細胞とを等容量混合し、 融合促進剤存在のもとで 融合反応を行う。 細胞融合を促進させるためには、 平均分子量 1,500 ダルトン のポリエチレングリコール等を使用することができる。 また、 電気刺激 (例えば エレクトロポレーシヨン) を利用した市販の細胞融合装置を用いて抗体産生細胞 とミエ口一マ細胞とを融合させることもできる。
(4) ハイプリ ドーマの選択及びクロ一ニング
細胞融合処理後の細胞から目的とするハイプリ ドーマを選別する。 その方法と して、 細胞懸濁液を例えばゥシ胎児血清含有 RPMI -1640 培地などで適当に希釈 後、 マイクロタイタ一プレート上に 5〜10 細胞/ゥエル程度まき、 各ゥエルに選 択培地を加え、 以後適当に選択培地を交換して培養を行う。 その結果、 選択培地 で培養開始後、 約 14 日前後から生育してくる細胞をハイプリ ドーマとして得る
ことができる。 増殖してきたハイブリ ド一マの培養上清中に、 目的とする抗 ^が 存在するか否かをスクリーニングする。 ハイプリ ドーマのスクリーニングは、 通 常の方法に従えばよく、 特に限定されない。 例えば、 ハイプリ ドーマとして生育 したゥエルに含まれる培養上清の一部を採集し、 酵素免疫測定法 (EIA; enzyme immuno assay)、 RIA (rad i o iramuno assayリ等によってスクリ一ニンクを ί了つこ とができる。
融合細胞のクローニングは、 限界希釈法等により行い、 最終的にモノクロ一ナ ル抗体産生細胞であるハイプリ ドーマを樹立する。
(5) モノクローナル抗体の採取
樹立したハイプリ ドーマからモノクローナル抗体を採取する方法として、 通常 の細胞培養法又は腹水形成法等が採用できる。 細胞培養法においては、 ハイプリ ドーマを 10%ゥシ胎児血清含有 RPMI- 1640 培地、 MEM 培地又は無血清培地等の 動物細胞培養培地中で、 通常の培養条件 (例えば 37°C, 5 %C02濃度) で 10〜 14 日間培養し、 その培養上清から抗体を取得することができる。 腹水形成法の 場合は、 ミエ口一マ細胞由来の哺乳動物と同種系動物の腹腔内にハイプリ ドーマ を約 5 X 106個投与し、 ハイプリ ドーマを大量に増殖させる。 そして、 1〜2週 間後に腹水または血清を採集する。 上記抗体の採取方法において、 抗体の精製が 必要とされる場合は、 硫安塩析法、 イオン交換クロマトグラフィー、 ァフィニテ ィークロマトグラフィー、 ゲルクロマトグラフィ一などの公知の方法を適宜に選 択して、 又はこれらを組み合わせることにより精製することができる。
5 . ポリクローナル抗体の作製
( 1) 抗原の調製
前記 3の方法により得られたタンパク質を緩衝液に溶解し、 次いでアジュバン トを添加する。 アジュバントとしては市販のフロイント完全アジュバント、 フロ ィント不完全アジュバントを用いる。
(2) 免疫
動物としては、 通常、 ゥサギ、 モルモット、 ャギ、 ヒッジなどを用いる。 ゥサ ギを例にとると、 ゥサギの足踱に、 通常 100 g から 500 z g のタンパク質をフ
口イント完全アジュバントとともに皮下注射する。 二週間後に同量の抗原をァロ ィント不完全アジュバントと混合して筋肉内注射をする。 さらに二週間後に筋肉 内注射を繰り返し、 最終免疫の一週間後に耳より部分採血して E IA 法等により 抗体価を測定する。 抗体価が目的の値に達していれば全採血し、 抗体価が低けれ ば筋肉内注射を繰り返し、 抗体価が目的の値に達するまで免疫を繰り返す。 血清 から硫安分画による抗体の精製は、 モノクローナル抗体の項で述べた方法を採用 できる。
6 . ヒト RecQ4型遺伝子及びその遺伝子がコードするタンパク質の検出用試薬 ヒト RecQ4型遺伝子は、 染色体の不安定性を生じ、 高頻度発ガンや早老症を引 き起こすブルーム症候群やウェルナー症候群の原因遺伝子と高い相同性を有し (図 2 ) 、 かつ、 ヒトのさまざまな組織において高い発現が認められたことから (図 5 ) 、 生体の基本的な恒常性の維持に関わる DNA ヘリ力一ゼをコードしてい る遺伝子の一つであるといえる。 従って、 この遺伝子の発現制御の解明は、 生体 の恒常性維持を司るメカニズムを解明するうえで有用であり、 また、 生体の基本 的な恒常性を維持するための新規医薬品の創製にも有用であると共に、 老化との 関連を解明するための研究にも有用である。 そして、 本発明の試薬は、 ヘリ力一 ゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子の異常により引き起こされる疾患、 例えばブル一ム症候群やウェルナー症候群 (これらに限定されるものではない) の検出、 診断に有用である。
本発明の遺伝子を検出用試薬として使用する場合は、 クローニングされたヒト RecQ4 遺伝子の少なくとも一部分を含むオリゴヌクレオチドをプローブとしてハ イブリダイセーシヨンを行い、 サザン又はノーザンプロット法により検出が行わ れる。 なお、 オリゴヌクレオチドプローブとしては、 DNA プローブ、 RNA プロ一 ブ等が挙げられる。
また、 本発明の遺伝子をコードするタンパク質に対するポリクローナル抗体及 びモノクローナル抗体を検出用試薬として使用する場合は、 E I A、 R IA 又はゥェ スタンブロット解析により検出が行われる。
7 . 遺伝子の発現レベルを上昇又は下降するように修飾された遺伝子が導入ざれ たトランスジエニック動物
本発明においては、 遺伝子の発現を正常に調節しているいくつかの重要な部位 (ェンハンサ一、 プロモーター、 イントロン等) の一部に欠失、 置換、 付加、 揷 入等の変異を起こさせることにより、 本来の遺伝子の発現レベルと比較して人工 的に上昇又は下降するように修飾することができる。
上記変異の導入は、 公知のいずれかの手法により行うことができ、 例えば、 点 突然変異導入キット (例えば宝酒造社の TAKARA LA PCR in vi tro Mutagenes i s ki t)等を用いることができる。 トランスジエニック動物としては、 例えばトラン スジエニックマウス、 トランスジエニックラット等が挙げられる。 前記変異を導 入した遺伝子を保有するべクタ一としては、 各動物種 RecQ4 型遺伝子を過剰発 現させるようなベクタ一、 逆にその発現を抑制するようなアンチセンスのベクタ 一の二つが考えられる。 いずれの場合にも、 遺伝子の選択のためのポジティブ選 別用の薬剤 (例えば、 ネオマイシンなど) 耐性遺伝子を連結させておく。
細胞への遺伝子の導入は、 受精卵に直接 DNAを注入する方法も使用し得るが、 ES 細胞は、 培養が可能でしかもこの細胞からマウス等を発生させることができ るという利点を有しているため、 各種 ES 細胞を用いる方法がより効率的で好ま しい。 ES 細胞としては、 例えば TT2 細胞が挙げられる (相沢慎一, ジーンター ゲッティング, 1995 年, 羊土社) 。 そして、 例えばマウス RecQ4 型遺伝子を含 む上記べクタ一 DNA をエレクトロボレ一シヨンにより ES 細胞へ導入し、 ネオ マイシンでポジティブ選別し、 目的の変異 ES 細胞を得る。 上記 ES 細胞を、 胚 胎盤胞又は 8細胞期胚に毛細管等を用いて注入する。 その後、 胚胎盤胞又は 8細 胞期胚を直接仮親の卵管に移植するか、 一日培養して胚盤胞まで発生したものを 仮親の子宮に移植する。 仮親から生まれた子のうちキメラ動物を選ぶ。 キメラの 寄与率が高い動物は、 生殖系列の可能性が高いが、 キメラ動物を正常動物と交配 することにより、 生殖系列のキメラ動物であることの確認が可能である。 生殖系 列のキメラ動物と正常動物との交配により、 ヘテロ接合体動物が得られ、 接合体同士の交配によりホモ接合体動物を得ることができる。
8 . ノックアウトマウス
本発明のノックアウトマウスは、 マウス RecQ4遺伝子の機能が失われるように 処理されたものである。 その処理方法について説明する。
マウス RecQ4遺伝子を含むゲノム DNAを、 マウス ES細胞から調製したゲノム DNAから PCRにより、 又はゲノムライブラリ一から得、 そのいずれかのェクソン の中に neo 耐性遺伝子を揷入したベクターを構築する。 この操作により、 この ェクソンの機能は破壊される。 これと同時に、 このべクタ一の中にネガティブ選 別用のチミジンキナーゼ (tk) 遺伝子又はジフテリア (DT) 毒素遺伝子を繋げて おく。 エレクト口ポレーシヨンにより該ベクタ一 DNA を ES 細胞に導入する。 次に、 この細胞をポジティブ選別用のネオマイシン及びネガティブ選別用の核酸 類似体 FIAU (f luoro i odoadenosylurac i l ) , 又はジフテリア毒素の存在下で培養 する。 この操作により非相同組換えを起こしたジフテリア毒素感受性細胞、 及び 組換えを全く起こさない G418 感受性細胞が除去され、 相同組換えを起こした細 胞のみが残る。 この細胞では、 破壊されたェクソンを含む遺伝子がノックアウト される。 得られた細胞をマウスの胚胎盤胞又は 8細胞期胚に注入する。 その後は、 トランスジエニック動物の作製と同様の手法によリ、 ノックアウトマウスを作製 することができる。 図面の簡単な説明
図 1は、 本発明の遺伝子のクロ一ニング手法を示す図である。
図 2は、 ヒト RecQ4型遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列について、 他の遺伝子由来のものと相同性の比較をした図である。
図 3は、 ヒト RecQ4型遺伝子のヒト第 8番染色体上の位置を示すラジェーショ ンマッピング分析を示す図である。
図 4は、 ヒト第 8番染色体を示す図である。
図 5は、 ヒト RecQ4型遺伝子のノーザンブロットによる解析結果を示す電気泳 動写真である。
図 6は、 EST- DNA ACC. H16879 によリコ一ドされるアミノ酸配列について、 大 腸菌由来のものと相同性の比較をした図である。
図 7は、 本発明の遺伝子のアセンブリを示す図である。 発明を実施するための最良の形態
以下、 実施例により本発明をさらに具体的に説明する。 但し、 本発明はこれら 実施例にその技術的範囲を限定するものではない。
〔実施例 1〕 全長ヒト RecQ4cDNA のクロ一ニング
( 1) 大腸菌 RecQ4 DNAヘリ力一ゼに相同性を有する cDNA断片の同定。
まず、 本発明の DNAをクローニングするにあたり、 大腸菌 RecQヘリカーゼに 相同性を有する cDNA配列を dbest データ一ベースで探索した。 この結果、 EST - DNA ACC. H16879 (図 6, H16879のアミノ酸配列をコードする DNA) を含む十数種 の EST(Expessed Sequence Tag) DNA 配列が得られた。 但し、 これらの EST と、 ヒト以外の例えば大腸菌、 酵母、 線虫等の生物種由来の EST-DNA とのヌクレオ チド配列に於ける相同性、 あるいは前記 EST と、 ヒト由来のすでに知られてい るブルーム病ヘリ力一ゼ、 ウェルナー病ヘリカーゼ及び RecQlヘリ力一ゼの各遺 伝子とのヌクレオチド配列に於ける相同性を考慮し、 これらの遺伝子と相同性の 高い EST- DNAについては除外した。
(2) EST-DNA ACC. H16879がヒト組織で発現している遺伝子であることの確認 次に、 EST-DNA ACC. H16879 の配列が真にヒト組織において発現している遺伝 子であることを確認する一連の予備実験を行った。 即ち、 EST- DNA 断片に含まれ る塩基配列から PCR(Po lymerase Chain React i on)用のプライマ一としてセンス プライマー (配列番号 3 ) 及びアンチセンスプライマー (配列番号 4 ) を用意し た。 一方ではヒト精巣由来の mRNAから逆転写反応により cDNAを作製し、 先に調 製したプライマ一を用いて PCRを行い、 ヒト精巣 cDNA中に EST-DNAが存在する か否かを確認した。
すなわち、 (3- i ) に後述された方法で RT- PCR を行い、 EST- DNA ACC. H16879の 配列から予想される約 320 塩基対の PCR 産物を検出することができた。
PCR による当該 EST- DNA 配列の有無は、 PCR によって増幅された DNA 断片を 大腸菌のプラスミ ド DNA 中に組み込みクローン化し、 得られたプラスミ ドク口
―ン DNA の塩基配列を分析することによつても確認された。 このようにし " EST-DNA ACC.H16879 が新規へリカーゼ遺伝子の一部であることを確認した (方 法は、 後述の(3- Π)及び(3- iii) を参照) 。
(3) RT-PCRによるヒ卜 RecQ4型遺伝子の部分 cDNA 断片のクロ一ニング
(3-i)逆転写による cDNA の調製及び増幅
ヒト精巣由来の Poly(A)+ RNA (CLONETECH社) 約 1 g、 ジチオスレィトール、 dNTP (dATP, dCTP, dGTP 及び dTTP;)、 逆転写酵素用バッファ一及び逆転写酵素 Super Sucript II を含む反応液を、 42°Cで 30 分反応させ、 その後 RNase 処理 をして cDNA を調製した。 この cDNA をテンプレートとして PCR を行った。
PCR には宝酒造社製の TAKARA Taq 及びこれに添付のバッファ一を用いた。 後 述される Taq DNA ポリメラ一ゼ及び PCR バッファ一は、 特別の指定がない限り TAKARA Taq 及びこれに添付のバッファ一をそれぞれ指すものとする。 PCR は、 1 XPCR バッファー、 0.2mM dNTP, 0.4 zM RecQ4 プライマ一 (配列番号 3及び 4) 及び 0.625unit Taq DNA ポリメラ一ゼを含む溶液に、 適当量の上記ヒト精 巣 cDNAを加えた 25μ 1 の混合反応液中で行った。
まず、 上記反応液を 94°Cで 5分反応させ、 次に、 94°Cで 30秒、 55°Cで 30秒 及び 72°Cで 1分の反応を 1サイクルとしてこれを 35サイクル行った。 得られた 反応液をさらに 72°Cで 5分反応させた。
(3-ii) 塩基配列決定のための RT- PCR 産物のサブクロ一ニング
上記(3-i) で得られた RT- PCR産物、 T4 DNA リガ一ゼ (宝酒造社製) 、 バッフ ァ一 (宝酒造社製) 及び PGEM-T ベクタ一 (Promega 社製) を含む溶液を 15°C で 3時間反応させて、 RT-PCR 産物の断片を pGEM-T ベクターに組み込んだ。 こ のベクターで大腸菌 JM109 を トランスフォームさせ、 この大腸菌を、 X-gal、 IPTG 及びアンピシリン (最終濃度 50^g/ml) を含む LB パクトァガ一プレート に播き、 37°Cで 12 時間インキュベートした。 出現した白色の大腸菌コロニーに ついて、 アンピシリン (最終濃度 50 g/ml) を含む LB 培地で、 37°Cで 16 時 間以上振盪培養し、 Kurabo 社製のロボッ ト (Ρί- 100Σ) を用いてプラスミ ド DNAを調製した。
10^g/ml RNase を含む dH20 ΙΟΟ 1 にプラスミ ド DNA を溶解し、 DNA シ^ "ク エンス用の試料とした。
(3-iii)塩基配列の決定
上記(3-ii)で調製したプラスミ ド DNA を铸型 DNAとして、 非標識プライマ一、 4種類の蛍光標識ヌクレオチド- 5'-トリフォスフェイ ト及び Taq ポリメラ一ゼ を加えた反応系で PCR を行った。 反応混合液は以下の通りである。
Thermal Ready 反応混合物 8.0 1
铸型 DNA 3.0 1
プライマ一 (3.2pmol/ zl ) 1.0 β \
dH20 8.0
20 1 なお、 塩基配列決定用プライマ一として、 配列番号 5〜19 に示すものを用い た。
PCR は、 96°Cで 30秒 (変性) 、 55°Cで 15秒 (ァ二一リング) 及び 60°Cで 4 分 (伸長) の反応を 1サイクルとしてこれを 25サイクル行った。 この反応では、 無作為に蛍光色素の入った DNA 断片が合成され、 それをシークェンサ一で解析 することで、 最終的には連続した塩基配列を決定することができる。 PCR 反応物 の解析は、 Applied Biosystera 社製の自動 DNA シークェンサ一 (model ABI 373)により行った。 得られたヒト RecQ4 部分 cDNAの塩基配列を配列番号 31 に 示す。
(4) Marathon cDNA Amplification kit を用いたヒト RecQ4 遺伝子の 5 ' 及び 3' 領域のクロ一ニング
前記(3)により得られた RecQ4部分 cDNA断片の塩基配列を基にして、 5' 及び 3, 領域のクロ一ニングを、 Marathon cDNA Amplification kit (CL0NTECH 社) を用いて行った。 まず 5, RACE産物を増幅するため、 Marathon Ready精巣 cDNA を铸型として、 アダプター配列特異的なプライマー API (配列番号 20) と、 RecQ4部分 cDNA断片に特異的なプライマ一 5'GSP1 (配列番号 22) とを用いて 1
回目の PCRを行った。 PCR の反応混合液は以下の通りである。 テンプレー卜 5
プライマー(10 raM) 1 β ΐ X 2
lOXKlen Taq反応バッファ一 5 ΐ
2.5mM dNTPs ミックス 4 ΐ
Klen Taq (Klontech社製) 1 ( \
dH20 33 1
50
PCR は、 94°Cで 1分で変性し、 94°Cで 30 秒 (変性) 、 72°Cで 4分 (ァ二一リ ング及び伸長) の反応を 1サイクルとしてこれを 5サイクル、 次に 94°Cで 30秒
(変性) 、 70°Cで 4分 (アニーリング及び伸長) の反応を 1サイクルとしてこれ を 5サイクル、 さらに 94°Cで 30秒 (変性) 、 68°Cで 4分 (アニーリング及び伸 長) の反応を 1サイクルとしてこれを 25サイクル行った。
この反応液を希釈したものを铸型として、 更に内側のプライマ一、 即ち、 AP2
(配列番号 21) と 5'GSP2 (配列番号 23) を用いた 2回目の PCRを行った。 これ により、 約 2キロ塩基対の 5 ' RACE 産物を得た。 同様の方法により、 3'GSP1
(配列番号 24) 及び 3'GSP2 (配列番号 25) プライマ一を用いて約 1· 5キロ塩基 対の 3, RACE 産物を得た。 これらを pGEM- T ベクターにサブクローニングし、 5, 及び 3, RACE 産物の全長の配列を決定した [方法は(3- ii)及び(3- iii)に記 載] 。
得られたヒト RecQ4 遺伝子の 5 ' 及び 3' RACE 産物の塩基配列をそれぞれ配 列番号 32及び 33に示す。
(5) RecQ4 遺伝子の転写開始点の決定
5' - RACE 産物の塩基配列を解析した結果、 RecQ4 遺伝子がコードすると予想さ れるタンパク質の第一メチォニンはこの 5,- RACE 産物中には見られず、 さらに 上流に存在すると予想されたので、 この遺伝子の転写開始点を調べた。
RecQ4 遺伝子の転写開始点を含む 5' 領域はオリゴキヤッビング法により決定 した。 ヒト精巣由来 mRNA を宝酒造製の子牛小腸由来アルカリホスファタ一ゼ
(CIAP)で処理し脱リン酸化を行った。 反応混合液は以下の通りである。 ヒト精巣由来 mRNA 10 βも
10x CIAPバッファー (宝酒造) 10 (J 1
RNasin (Promega) 4 β 1
CIAP (宝酒造) 1 1
dH20 100 β ΐ にする
反応は 37°Cで 30分行った。 次に脱リン酸化した mRNAに含まれる 5' CAP構造 を除く為、 二ツボンジーン製タバコ酸性ピロホスファターゼ(TAP)で処理した。 反応混合液は以下の通リである。 脱リン酸化 mRNA 10 a
10x TAP バッファ一 (二ツボンジーン) 10 1
RNasin (Promega) 4 ΐ
TAP (二ッポンジ一ン 300 U/μ Ι ) Ι Ι
dH20 100 1 にする
反応は 37°Cで 60分行った。 次に CAP構造が除かれた mRNA(TAP- RNA)の 5 ' 端 にアダプタ一として 30 塩基からなるオリ ゴ RNA (配列番号 26) を宝酒造製 T4RNAリガ一ゼを用いて繋げた。 反応混合液は以下の通りである。
TAP-RNA 10 f g
オリゴ RNA (2 /β \ ) 5 μ.1
10χ リガ一ゼバッファー (宝酒造) 10 μ 1
100 mM ATP 0.5
RNasin (Promega) 4 β \
RNA リガーゼ (宝酒造) 5 1
60% PEG6000 (二ッポンジーン) 42 1
dH20 100 1 にする
反応は 18°Cで 16時間行った。 この反応物をフエノール処理にて除タンパクし エタノール沈殿にてオリゴキヤッビング RNAを回収した後 50^ 1 の dH20に溶解 した。 次にこのオリゴキヤッビング RNA を錄型にして一本鎖 cDNA を合成した。
反応混合液は以下の通りである,
オリゴキヤッビング RNA 50
ランダムへキサマ一(20 Μ) 5
55 1
70 °Cで 10分間熱した後氷中にて冷却しさらに以下の試薬を加えた (
5x第一鎖バッファー(Gibco) 20 n 1
0.1 M DTT (Gibco) 10 1
20 dNTP 5 1
RNasin (Promega) 5 β 1
95 1
37°Cで 2分間保温し、 さらに Superscript II (Gibco) 5μ 1 を加えて 37°Cで 30分間反応させた。 反応の後 95°Cで 10分間加熱して dH20を加えて全量 500 1 としたものをオリゴキヤッビング cDNA とした。 次にォリゴキヤッビング cDNA を铸型として PCRを行った。 PCRは 2回行い、 1回目の PCR産物を铸型として 2 回目の PCR に用いる nested PCR法を行った。 1回目の反応混合液は以下の通り である。 オリゴキヤッピング cDNA 1
マー (配列番号 27)(20μΜ) 0.5 1
マー (配列番号 29)(20μΜ) 0.5
10x PCR バッファ一 2.5 1
2.5 mM dNTP 2.0 \
50% グリセロール 2.5 1
Taq DNA ポリメラ一ゼ 0.5 1
dH20 15.5 l
25 1
PCRは 95°Cで 5分 (変性) を一回行った後、 94°Cで 30秒 (変性) 、 60°Cで 30 秒 (アニーリング) 、 72°Cで 1分 (伸長) を 1サイクルとしてこれを 35 サイク ル行った。 そして最後に 72°Cで 5分反応させた。 次にこの PCR 産物を铸型にし てさらに 2回目の PCRを行った。 反応混合液は以下の通りである。
PCR 産物 1
マ一 (配列番号 28) (20 μΜ) Q. 5 n\
マー (配列番号 30) (20 ζΜ) 0.5 1
10x PCR バッファ一 2.5
2.5 mM dNTP 2.0 1
50% グリセロール 2.5 1
Taq DNA ポリメラ一ゼ 0.5 ΐ
dH20 15.5 1
σ 5Τ 25 1
2回目の PCRのサイクルは 1回目と同様に行った。 2 ァガロースゲル電気泳動 にて約 400塩基対の大きさの PCR産物が認められたので、 この産物を pGEM- Τベ クタ一にサブクローニングし、 塩基配列を決定した [方法は(3- ii)及び(3-iii) に記載] 。 塩基配列決定には配列番号 5及び 6に記載のプライマ一を用いた。 得られたヒト RecQ4遺伝子の 5' 転写開始点領域の塩基配列を配列番号 34に 示す。
(6) 塩基配列アセンブリによる全長 RecQ4 cDNAの構築
前記(3)、 (4)及び(5)の結果得られたヒト RecQ4 cDNAの 4つの塩基配列を配列 番号 31〜34 に示す。 これらの配列は部分的に重複し、 その相対的位置関係は図 7のように示すことができる。 図 7において、 転写開始領域は配列番号 34、 5' RACE産物は配列番号 32、 部分 cDNAは配列番号 31、 3' RACE産物は配列番号 33 で表されるものである。
この領域を DNASYS ソフトを用いてコンピュータで解析し、 上記 4つの塩基配 列を繋げて RecQ4 cDNA 全長の配列を得ることができた。 このようにして得られ た cDMは、 3' 端の polyA配列を除く全長 3850 ヌクレオチドにより示された (配列番号 1 ) 。 そのうちオープンリーディングフレーム(0RF)は 3624ヌクレオ チドであり、 これがコードするタンパク質は 1208 アミノ酸から成り、 分子量 133070 ダルトンであることがわかった。 また、 この遺伝子がコードするタンパ ク質のアミノ酸配列を配列番号 2に示す。
〔実施例 2〕 ヒト RecQ4型遺伝子のノーザンプロットによる解析
(1) ヒト RecQ4 型遺伝子のノーザンブロット解析
(1-i) ヒト多組織ノーザン (Multiple Tissue Northern; MTN-1 and - Π)プロ ッ卜
本実施例においては、 市販のプリメイドフィルタ一 (Clontech 社製) を使用 して MTN プロットを行った。 なお、 プリメイドフィルタ一は、 16 種類のヒトの 組織 ·臓器よリ抽出した poly(A)+ RNA 各 2 g をァガロース電気泳動にかけ、 ナイロン膜にブロットすることによリ作製されたものである。
(1-ii) ヒト RecQ4 cDNAプローブ
ヒト RecQ4 cDNA の一部であるオープンリ一ディングフレーム (配列番号 1で 表される塩基配列の第 2097-2417 番目の残基, 321bp)を後述の方法に従い放射 性ラベルし、 これをヒト RECQ4 遺伝子の検出プローブとして用いた。
(2) ハイプリダイゼ一シヨン
(2-i) プレハイブリダィゼーシヨン
フィルタ一を弁当箱型ポリ容器の中で、 100 ml のプレハイブリダィゼーショ ンバッファ一に浸し、 42°Cで 4時間インキュベーションした。 プレハイブリダィ ゼ一シヨンバッファーには、 50%ホルムアミ ド、 5 XSSPE、 lOxDenhardt's 溶 液、 2% SDS及び lOOyUg/m 変性サケ精子 DNA断片を含むものを用いた。
(2-ii) ヒト RecQ4 cDNAプローブの放射性ラベリング
テンプレートとして前述のヒト RecQ4 cDNA 断片 50 ng、 プライマーとしてラ ンダムへキサマ一 50 pmol を用い、 ランダムプライマ一 DNA ラベリングキット Ver.2 (宝酒造社製) により [a- 32P]-dCTP (NEN 社製、 第一化学薬品社製) で 放射性ラベルした。
(2-iii) ハイブリダィゼ一シヨン
プレハイブリダィゼーシヨンバッファ一を棄て、 新たに 50ml のプレハイプリ ダイゼ一ションバッファ一を加え、 気泡がフィルタ一の下に入りこまないように 穏やかに振盪した。 これに [32P]- dCTP で放射性ラベルしたプローブを比活性 が約 1 Xl0scpm/ml となるように加え、 42°Cで 16時間ハイプリダイズした。
ハイブリダィゼ一シヨンの後、 フィルタ一に対し、 100 ml の 2 X SSC、 0. 1 "% SDS溶液を用いて室温で 15分のリンスを 2回繰り返し、 次に 100 mlの 0. 2 x SSC、 0. 1 % SDS溶液を用いて室温で 15分のリンスを 2回行った。
フィルターがやや湿った状態になるまで水分を除き、 サランラップ (旭化成社 製) にはさんで BAS 1500 システム (富士フィルム社製) によるオートラジオ グラフィー解析を行った。
(3) Fuj i BAS 1500 システムによる解析
輝尽性蛍光体を用いた放射線エネルギーメモリ型 2次元センサ一 (イメージン グプレート ; IP) に、 X線フィルム同様にサンプルを密着露光させ、 この IP を He-Ne レーザー光で励起させ、 露光量に応じて放出される蛍光を PSL (Photo St imul ated Lumi nescence) というデジタル量に変換して定量した。 定量は BAS 1500 システムを用いた。 このシステムによる定量値の直線性は良好であり、 バ ックグラウンドの減算、 指定領域内の放射線強度の計測、 比較が行える。
(4) ヒト RecQ4 mRNAの組織特異的発現結果
ヒト各組織 ·臓器由来の 2 poly(A) + RNA を含む MTN ブロット(CLONTECH 社製) に [ 3 2P] 標識したヒト RecQ4 cDNAの一部である 0RF (配列番号 1で表さ れる塩基配列の第 2097-2417番目 ; 321bp)をプローブにハイブリダィズさせた。 ヒト RecQ4mRNA の発現は、 各種の臓器で幅広く認められ、 図 5のようなパタ ーンを示した。 すなわち、 ヒト RecQ4 遺伝子は、 全ての組織において発現し、 特に、 胸腺及び精巣において著しく強く発現してることが認められた。 図 5にお いて、 Po ly (A) + RNA の起源は以下の通りである。
a, i臓 b, 脳; c, 胎盤; d, 肺; e, 肝臓 ; f, 骨格筋; g, 腎臓 h, 膝臓 i, 脾臓; j, 胸腺; k, 前立腺; 1 , 精巣; m, 卵巣
n, 小腸 o, 大腸; p, 末梢血リンパ球 産業上の利用可能性
本発明により、 ヒト RecQ4 型遺伝子が提供される,
本発明のヒト RecQ4型遺伝子は、 ヒ卜の恒常性維持及び細胞老化との関連を"^ 明するための研究に有用であると共に、 発育及び老化に伴って発症する疾患の病 因解明、 症状の改善。緩和を目指す治療薬として、 また、 老化に伴う他の疾病と の関連性のある病気の検査 '予防のための診断プローブとして、 あるいは、 ヒト 個体の発生に関する医科学的、 細胞生物学的、 免疫学的、 生化学的及び分子生物 学的研究のための試薬として有用である。