明 細 書 制 振 合 金 技 術 分 野
こ の発明は、 優れた振動減衰性能を持ち、 構造物、 機 械等の構成要素に使用する こ と で、 それら 自 体の振動や 騒音の発生を効果的に低減する こ と のでき る制振合金に 関する も のである。 背 景 技 術
公害問題の一つ と して生活環境での振動、 騒音が注目 されている。 ま た、 精密機械に要求 される精度が微小に なる につれ、 機器 自 体の振動を抑える手段を講 じ る必要 が生 じている。 こ の よ う な問題や要請に対応する手段の —つ と して、 振動の発生源 と なる構成要素 自 体を振動減 衰の著 し く 大き い材料 (制振材料) に置き換える方法が あ る。
現在までに、 巨視的に一様な合金で、 かつ振動減衰性 能の大き な素材がい く つか開発 されてお リ 、 その主な も の と して 、 片状黒鉛铸鉄、 Fe基合金、 Mg- N i合金、 Cu-Mn 合金、 Ni-Ti合金がある。 これ ら の う ち、 大量に使用 さ
れる部材については強度と コ ス 卜 の点か ら Fe基合金が最 も実用的である と いえる。
こ の Fe基合金 と して、 特公昭 52 - 803号において Fe - A 1 合金が提案されてお リ 、 こ の合金は F eに A 1を 2〜 8 %添加 する こ と で高い振動減衰能が得られる と されている。 ま た、 特公昭 56 -28982号で提案されている合金は、 Feに S i を 0.4 ~ 4 %、 Mnを 0. 1〜 .5 %加え、 且つフ ェ ラ イ ト結晶 粒度番号を 5 番以下と した材料でぁ リ 、 こ の合金は S i、 Mnが Nを固定 して転位の運動に対する 障害をな く し、 こ の運動が振動エネルギーを吸収する と している。
しか し、 上述 したよ う な従来の合金の制振特性は、 最 近の制振性に関する高度な要求特性に対し、 必ずし も満 足すべき も の ではない。
こ の よ う な問題に対 し、 本発明者は F eに特定の範囲で Al、 S iを添加、 特に これ ら を複合添加する こ と に よ リ 、 従来にない優れた制振性能が得られる こ と を見出 した。 発 明 の 開 示
こ の よ う な知見に基づく 本発明の制振合金は、 次の よ う な構成を有する。
(1) 第 1 図に示す点 A 4 ( A 1: 7.05 w t % , S i:0.95wt % ) 、 B 4 (A l : 6. 50wt %、 S i: 1.1 Owt % ) 、 C 4 ( A I: .7
Owt %、 S i: 2.75 w t % ) 、 D 4 ( A 1: 2.25 w t % , S i : 2.4 5wt % ) 、 E 4 ( A 1: 0 t % , Si :4.50wt % ) 、 A 0 ( Al: Owt %、 S i: Owt % ) 、 B 0 (Al : 8. OOwt %、 S i: O t % ) で囲まれる範囲内の Alおよび Si、 n : 0.〗wt %未満、 残部 Fe及び不可避的不純物か ら なる制振合金。
(2) 第 2 図に示す点 A 6 ( A 1: 7.40 w t % , Si:0.60wt % ) 、 B 6 ( A 1: .75 w t % , S i: 1. OOwt % ) 、 C 6 (Al:3.7 5 w t %、 S i ·· 1.90 w t % ) 、 D 6 ( A 1: 2.15 w t % , S i: 2.1 5wt % ) 、 E 6 ( A 1: 0 w t % , S i: 4. OOwt % ) 、 A 0 ( Al: Owt % , S i: Owt % ) 、 B o (Al: 8. OOwt % , S i: Ovt % ) で囲まれる範囲内の Alおよび Si、 Mn : 0.1wt %未満、 残部 Fe及び不可避的不純物か ら なる制振合金。
(3) 第 3 図に示す点 A 8 ( A 1: 6.30 w t % , S i: Owt % ) 、 B 8 ( A 1: 6.30 w t % , S i: 0.50wt % ) 、 C 8 ( A 1: 2.75 w t %、 S i: 1.20 w t % ) 、 D g (A】: 0wt %、 S i: 3.50 w t % ) 、 E 8 ( Al: Owt % , Si :0.6 Owt % ) 、 F 8 (Al: 0.70w t %、 S i: 0 w t % ) で囲まれる範囲内の A 1および S i、 Mn : 0.〗wt %未満、 残部 Fe及び不可避的不純物か ら な る制振合金。
(4) 第 4 図に示す点 A 10 (A1:4.80wt % , S i: Owt % ) 、 B io (Al :4.80wt % , S i: 0.70 t % ) 、 C i 0 ( A 1 : 2.9 Owt % , S i: 1.00 w t % ) 、 D i o (Al: 1.35 t % , S i: 2.
05 w t % ) 、 E i o (Al: 0.55wt % , S i: 2.00 w t % ) 、 F 10 ( A 1: 0 t % , S i: 2. 0w t % ) 、 G i 0 (A 1: Owt % , S
1: 0.80 w t % ) 、 H 10 (Α】:0· 55\Π %、 S i: 0.25 w t % ) 、 I 10 ( Al: 1.60 t % , S i: 0.35 w t % ) 、 J 10 ( AI: 2.2
5w t %、 S i: Off t % ) で囲まれる範囲内の A 1および S i、 Mn : 0.1wt %未満、 残部 Fe及ぴ不可避的不純物から なる制振合金。
(5) 第 5 図に示す点 A 12 (Al :4.55wt %、 S i: 0.10 w t % ) 、 B i 2 (Al :4.55wt % , S i: 0.60wt % ) 、 C 12 (Al: 2. 35 t % , Si : 1. OOwt % ) 、 D 12 ( A 1: 1.10 w t % , S i: 1. 95 t % ) 、 E i 2 (Al: 1. lOw t % , S i: 1.35 w t % ) 、 F 12 (Al: 2.40wt % , S i: 0. lOwt % ) で囲まれる範囲内 および点 G 2 ( A 1: 0 w t % . S i: 1.05wt % ) 、 H i 2 (A
1: 0.60 w t % , Si :0.35wt % ) 、 I i 2 ( A 1: 0.90 w t % . S i: 0. 0wt % ) 、 J i 2 ( A 1: 0.30 w t % , S i: 2.05wt % ) 、 K i 2 ( A 1 : 0 w t %、 S i: 2.30w t % ) で囲まれる範囲 内の Alお よび Si、 Mn : 0. 1wt %未満、 残部 Fe及び不 可避的不純物か ら なる制振合金。
(6) 第 6 図に示す点 A 14 (Al: 4.15wt % . S i: 0.20 w t % ) 、 B i 4 ( Al: .15wt % , S i: 0.60 w t % ) 、 C 14 ( Al: 2. 30 t % , Si:0.90wt % ) 、 D 14 ( A 1: 1.20 w t % , S i: 1. 75 t % ) 、 E i 4 (Al: 1.20wt % , S i: 1.35 w t % ) 、 F
14 (Al: 2.70 t % , S i: 0.20 w t % ) で囲まれる範囲内 お よ び点 G 14 (Al : 0wt % 、 S i: 1.15wt % ) 、 H 14 (A 1: 0.60 w t % , S i: 0. 0wt % ) 、 I 14 ( A 1: 0.80 w t % , S i : 0. 5wt % ) 、 J i 4 ( A 1 : 0 w t %、 S i: 2.20 t % ) で 囲まれる範囲内の Alおよ び Si 、 Mn : 0. 1wt %未満、 残部 Fe及び不可避的不純物か ら なる制振合金。 図面の簡単な説明
第 1 図か ら第 6 図ま では、 本発明の規定する A1および S iの範囲を示 した図面である。
第 7 図は、 Fe- Al-Si合金系の内部摩擦値を測定法①で 求め、 これを等高線表示 した図面である。
第 8 図は、 Fe- A卜 S i合金系の内部摩擦値を測定法②、 ③で求めた結果を示す図面であ る。 発明の詳細な説明
以下、 本発明における成分組成の限定理由 を説明する c Fe系制振合金の多 く は、 振動が加わっ た と き の磁壁の 非可逆的移動に よ る磁気一機械的 ヒ ス テ リ シス を振動ェ ネルギー吸収に利用する も のであ リ 、 これは磁気特性と 密接な関連を持っている。 一方、 Fe-A卜 Si三元合金は、 山本:電気学会論文集, vo l .5 (1944), 175.等に報告 され
ている よ う に、 透磁率等の磁気特性が成分比に よ っ て特 徴的に変化する こ と が知 られている。 そこ で、 こ の成分 系の制振性能を内部摩擦値 (Q—1) を測定する方法で調査 した と こ ろ、 第 7 図に示すよ う な結果が得られた。 これ によれば、 F eに対し A 1、 S iを所定の範囲で複合添加する こ と に よ リ 、 それぞれの単独添加では得られない優れた 制振性が得られる こ と が判る。
また、 第 8 図は他の方法に よ る 内部摩擦の測定結果を 示す。 これによれば、 S i添加の効果は歪振幅の小さ い領 域で特に大きい こ と が判る。
以上の結果から 、 本発明では制振特性 (内部摩擦値) と して Q _ 1〉 4 X 10— 3を得る場合には Al ' S iを第 1 図の 範囲に、 Q _ 1 > 6 X 10_ 3を得る場合には A1 · S iを第 2 図 の範囲に、 Q _ 1〉 8 X 10_3を得る場合には Al ' S iを第 3 図の範囲に、 Q _ 1〉 1 X 10- 2を得る場合には Al ' S iを第 4 図の範囲に、 Q— 〉 1. 2 X 10— 2を得る場合には A1 - S i を第 5 図の範囲に、 Q _ 1 > 1.4 X 1(T2を得る場合には A1 · S iを第 6 図の範囲に、 それぞれ規定する。
まだ、 第 8 図によれば、 低歪振幅領域での制振特性を 改善する ために、 S i添加量は 0.5w t %を超える こ と が望 ま しい こ と が判る。 また、 S i添加量が 0.5w t %以下では、 特性のパラ ツキ、 すなわち僅かの成分変動で性能が大き
く 変わる と い う 問題があ る ため、 こ の意味か ら も S i添加 量は 0 . 5 w t %を超え る こ と が望ま しい。
本発明の合金は、 上述 した特公昭 5 6 — 2 8 9 8 2 号 と は異な リ 、 転位の運動に よ リ 振動を吸収する も のでは な く 、 磁壁の移動の ヒ ステ リ シス に ょ リ 振動を吸収する も の でぁ リ 、 したがって、 M nに材料の制振特性を向上す る効果はない。 む しろ M n添加量が 0 . 】 w t %以上である と 、 材料の加工性が劣化 し、 また、 製鋼コ ス ト の上昇に もつ ながる ため、 M n添加量は 0 . 1 w t %未満 と する。
ま た、 その他の不純物については、 以下の よ う な観点 力 ら規制する こ と が望ま しい。
C は浸入型固溶元素でぁ リ 、 磁壁の易動度を減少 させ、 制振特性を劣化 させる ため、 0 . 0 1 w t %以下 と する こ と が 望ま しい。
N も C と 同様の理由 で制振性能を劣化 させる ため、 0 . 0 1 w t %以下 と する こ と が望ま しい。
0 も C 、 N と 同様の理由で制振性能を劣化 させる ため、 0 . 0 1 w t Q/o以下 と する こ と が望ま しい。
P は粒界に偏析 し、 加工性を劣化 させる ため、 0 . 0 1 w t %以下 と する こ と が望ま しい。
S は熱間加工性を劣化 させる ため、 0 . 0 1 w t %以下 とす る こ と が望ま しい„
本発明の合金は優れた制振性能を有 してぉ リ 、 振動、 騷音防止材料と して有用な も のである。 実 施 例
第 1 - a 表および第 1 - b 表に示す化学組成の本発明合 金及び比較合金 (いずれ も、 C : 10~30ppm, N: 2〜26ppm: Mn: 0.001 ~ 0.02 w t % )について、 制振特性を評価するた め内部摩擦値 Q— 1を測定 した。 各合金は溶製後、 錄型に て鋼塊 と し、 これを 1200〜 1250 °Cに加熱後、 厚さ 6 廳ま で熱間圧延 した。 こ の素材カゝ ら厚さ 0.8腿 X 幅 10 mm X長 さ 100雇 の板状を切 リ 出 し、 1050 °Cで真空焼鈍 して試験 片 と した。 上記内部摩擦の測定では、 試験片に真空中で 両端自 由端の横振動を加え、 そ の 自 由減衰曲線か ら 内部 摩擦を求める方法(測定法①) を用いた。 そ の結果を第 1 表に併せて示す。
第 7 図は第 1 表に示 した値を も と に Fe - A卜 Si三元合金 の内部摩擦値を等高線表示 した ものである。 図中の各曲 線は内部摩擦値が等しい点を結んだも のであ リ 、 各曲線 に付 したマ ス の 中の数字は、 内部摩擦値を X I 0 _ 3の単 位で表示 した ものである。
また第 8 図は、 本実施例の供試材のい く つかについて, 下記の測定法②ぉよび測定法③に よ リ 内部摩擦値を測定
した結果であ る。
測定法② : 厚 さ 2腿 X 幅 15誦 X長 さ 200腿 の板を 1050^ で真空焼鈍 し、 これに両端 自 由端の横振動 を加え、 その共振曲線から半値幅法に よ つ て内部摩擦値を求め る。
測定法③ : 測定法② と 同 じ試験片を片持ち梁に して、 その 自 由減衰曲線か ら 内部摩擦値を求め る これ ら の方法では、 材料の各歪振幅に対する 内部摩擦 値が測定でき る。 また、 測定法②は振幅の小 さ い領域、 測定法③は振幅の大き い領域の測定に適 している。 第 8 図には内部摩擦の歪振幅に対する ピー ク値 (測定法③に よ る) と 、 歪振幅が ί = 10_6の時に対応する 内部摩擦値 (測定法②に よ る) を示 してある。
同図か ら Fe-Al合金に S iを適量添加する こ と で、 特に 振幅の小 さ い領城において特性が安定する こ と が判る。
第 1— a
化学組成 (wt¾) 内部摩擦 GT1
No .
A 1 S i (x 10-3)
1 0.01 0.01 7.79
2 0.58 0.01 7.88
3 0.91 0.01 8.59
4 1.23 0.03 9.99
5 1.54 0.01 6.73
6 2.14 0.01 8.19
7 2.64 0.01 10.6
8 3.19 0.01 10.1
9 4.85 0.01 9.51
10 5.58 0.01 9.01
11 7.75 0.01 7.41
12 2.40 0.11 12.5
13 1.23 0.17 8.75
14 2.39 0.31 13.1
15 0.01 0.48 7.71 .
16 0.57 0.53 21.3
17 1.23 0.50 10.7
18 2.35 0.50 14.0
19 3.35 0.51 21.9
20 4.97 0.49 9.90
第 1一 b表 化学組成 (wt%) 内部摩擦 Q_1
No.
A 1 S i ( X 10"3)
21 0.01 0.96 11.2
22 0.55 0.98 12.7
23 1.22 0.98 11.1
24 2.34 1.00 11.5
25 3.33 1.01 6.57
26 4.77 0.97 5.96
27 7.05 0.97 3.88
28 0.01 1.52 15.1
29 0.50 1.53 11.0
30 1..25 1.54 15.3
31 2.64 1.49 6.15
Si 3.50 1.51 6.98
33 0.01 2.04 16.5
34 0.54 2.05 9.25
35 0.01 2.42 9.93
36 1.23 2.43 7.73
37 2.26 2.47 3.99
38 4.63 2.46 4.21
39 0.01 3.52 7.99
40 1.19 3.55 2.61
41 0.01 4.90 1.92
産業上の利用可能性
振動ゃ騷音の発生を防止する必要がある構造物や機械 等の構成要素の素材合金 と して利用でき る。