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JP7678375B1 - ステンレス鋼材 - Google Patents

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JP7678375B1
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Abstract

【課題】110ksi以上の高強度と、優れた耐SSC性と、極低温環境における優れた低温靭性とを有するステンレス鋼材を提供する。
【解決手段】本開示によるステンレス鋼材は、明細書に記載の化学組成を有し、降伏強度が758MPa以上であり、ミクロ組織が、体積率で0~20%のフェライト、0~15%の残留オーステナイト、及び、残部がマルテンサイトからなり、元素の含有量と、降伏強度とが、式(1)を満たし、元素の含有量が式(2)を満たす。
0.15≦(Sn+As+Sb)/{(Cu+Ni)/YS}≦1.00 (1)
(Ni+2Co)/Sn≧900 (2)
ここで、式(1)及び(2)中の元素記号には、対応する元素の含有量が単位:質量%で代入される。対応する元素が含有されていない場合、その元素記号には「0」が代入される。また、式(1)中のYSには、降伏強度が単位:MPaで代入される。
【選択図】なし

Description

本開示はステンレス鋼材に関する。
油井やガス井(以下、油井及びガス井を総称して「油井」という)の中には、腐食性物質を多く含有する環境がある。腐食性物質はたとえば、硫化水素(HS)ガス及び炭酸(CO)ガス等の腐食性ガスである。ここで、本明細書において、硫化水素及び炭酸ガスを含有する環境を「サワー環境」という。サワー環境で使用される油井用鋼材は、耐硫化物応力割れ性(耐Sulfide Stress Cracking性:以下、耐SSC性という)が要求される。
近年、油井の深井戸化により、油井用鋼材の高強度化が要求されている。具体的には、80ksi級(降伏強度が80~95ksi未満、つまり、552~655MPa未満)や、95ksi級(降伏強度が95~110ksi未満、つまり、655~758MPa未満)の油井用鋼材が広く利用されてきている。最近ではさらに、110ksi以上(降伏強度が758MPa以上)の油井用鋼材が求められ始めている。つまり、近年、110ksi以上の高強度と優れた耐SSC性とを両立する油井用鋼材が求められてきている。
これまでに、高強度と優れた耐SSC性とを有するステンレス鋼材が、特開2005-336599号公報(特許文献1)、及び、特開2015-110822号公報(特許文献2)に提案されている。
特許文献1に開示されるステンレス鋼材は、ラインパイプ用高強度ステンレス鋼管であって、質量%で、C:0.001~0.015%、Si:0.01~0.5%、Mn:0.1~1.8%、P:0.03%以下、S:0.005%以下、Cr:15~18%、Ni:0.5~5.5%未満、Mo:0.5~3.5%、V:0.02~0.2%、N:0.001~0.015%、O:0.006%以下、及び、残部がFe及び不純物であって、式(Cr+0.65Ni+0.6Mo+0.55Cu-20C≧18.5)、式(Cr+Mo+0.3Si-43.5C-0.4Mn-Ni-0.3Cu-9N≧11.5)、及び、式(C+N≦0.025)を満たす。このステンレス鋼材は、降伏強度が413MPa以上の高強度と、優れた耐硫化物応力腐食割れ性を有する、と特許文献1には開示されている。
特許文献2に開示されるステンレス鋼材は、油井用高強度ステンレス継目無鋼管であって、質量%で、C:0.05%以下、Si:0.5%以下、Mn:0.15~1.0%、P:0.030%以下、S:0.005%以下、Cr:15.5~17.5%、Ni:3.0~6.0%、Mo:1.5~5.0%、Cu:4.0%以下、W:0.1~2.5%、N:0.15%以下、及び、残部がFe及び不純物であって、式(-5.9×(7.82+27C-0.91Si+0.21Mn-0.9Cr+Ni-1.1Mo+0.2Cu+11N)≧13.0)、式(Cu+Mo+0.5W≧5.8)、及び、式(Cu+Mo+W+Cr+2Ni≦34.5)を満たす。このステンレス鋼材は、降伏強度が758MPa以上の高強度と、優れた耐硫化物応力腐食割れ性を有する、と特許文献2には開示されている。
特開2005-336599号公報 特開2015-110822号公報
ところで、近年、地上での二酸化炭素(CO)の濃度上昇が世界的に問題となっている。そのため、COの排出を抑制する取り組みが進められてきている。このようなCOの排出を抑制する取り組みの中で、特に、CCUSが注目されてきている。CCUSは、Carbon dioxide Capture,Utilization and Storageの略称である。すなわち、CCUSは、COの回収、利用、及び、貯留の3つの技術を含む。このうち、COを貯留する技術として、発電所や工場等の産業施設から排出されたCOを回収し、枯渇油井にCOを圧入して貯留する技術が注目されてきている。
ここで、COの貯留時には、鋼材に極低温環境での靭性が求められる場合がある。具体的に、貯留するCOガスの圧力変化が起こると、Joule-Thomson効果によって、貯留される気体の温度が低下する場合がある。この場合、鋼材には、通常の温度をはるかに下回る、-80℃という極低温環境での靭性が要求される場合がある。すなわち、油井管用途に加えて、CCUS用途への適用が想定されたステンレス鋼材には、高強度と優れた耐SSC性とだけでなく、-80℃以下という極低温環境における低温靱性も求められる。
上記特許文献1及び2は、鋼材の降伏強度を高め、耐SSC性を高める技術を提案する。しかしながら、上記特許文献1及び2に提案される技術以外の他の技術によって、降伏強度を高めつつ、優れた耐SSC性を有するステンレス鋼材が得られてもよい。また、特許文献1及び2では、-80℃以下という極低温環境における低温靱性に関する検討がされていない。
本開示の目的は、110ksi以上の高強度と、優れた耐SSC性と、極低温環境における優れた低温靭性とを有するステンレス鋼材を提供することである。
本開示によるステンレス鋼材は、
質量%で、
C:0.050%以下、
Si:1.00%以下、
Mn:1.00%以下、
P:0.050%以下、
S:0.0050%以下、
Cr:13.50~16.50%未満、
Mo:0.50~5.00%、
Ni:1.00~7.00%、
Cu:0.01~3.00%、
Co:0.10~1.50%、
Sn:0.0005~0.0100%、
sol.Al:0.005~0.050%、
N:0.150%以下、
O:0.0050%以下、
W:0~1.60%、
As:0~0.0100%、
Sb:0~0.0100%、
Ca:0~0.0050%、
Mg:0~0.0050%、
B:0~0.0050%、
希土類元素:0~0.100%
V:0~0.50%、
Ti:0~0.300%、
Nb:0~0.300%、
Zr:0~0.200%、
Zn:0~0.0100%、
Pb:0~0.0100%、及び、
残部:Fe及び不純物からなり、
降伏強度が、758MPa以上であり、
ミクロ組織が、体積率で0~20%のフェライト、0~15%の残留オーステナイト、及び、残部がマルテンサイトからなり、
前記元素の含有量と、前記降伏強度とが、式(1)を満たし、
前記元素の含有量が式(2)を満たす。
0.15≦(Sn+As+Sb)/{(Cu+Ni)/YS}≦1.00 (1)
(Ni+2Co)/Sn≧900 (2)
ここで、式(1)及び(2)中の元素記号には、対応する元素の含有量が単位:質量%で代入される。対応する元素が含有されていない場合、その元素記号には「0」が代入される。また、式(1)中のYSには、降伏強度が単位:MPaで代入される。
本開示によるステンレス鋼材は、110ksi以上の高強度と、優れた耐SSC性と、極低温環境における優れた低温靭性とを有する。
まず本発明者らは、110ksi以上の高強度と、優れた耐SSC性と、極低温環境における優れた低温靭性とを有するステンレス鋼材について、化学組成の観点から検討した。具体的に、これまで着目されてこなかったスズ(Sn)、ヒ素(As)及びアンチモン(Sb)が、耐SSC性を高める可能性があることを、本発明者らは見出した。本発明者らのさらなる詳細な検討の結果、特にSnが耐SSC性を顕著に高め、As及びSbは、Snが耐SSC性を高める効果を補助する可能性があることが明らかになった。
そこで本発明者らは、ステンレス鋼材の耐SSC性を十分に高められるSn、As及びSb含有量について、詳細に検討した。その結果、本発明者らは、質量%で、C:0.050%以下、Si:1.00%以下、Mn:1.00%以下、P:0.050%以下、S:0.0050%以下、Cr:13.50~16.50%未満、Mo:0.50~5.00%、Ni:1.00~7.00%、Cu:0.01~3.00%、Co:0.10~1.50%、Sn:0.0005~0.0100%、sol.Al:0.005~0.050%、N:0.150%以下、O:0.0050%以下、W:0~1.60%、As:0~0.0100%、Sb:0~0.0100%、Ca:0~0.0050%、Mg:0~0.0050%、B:0~0.0050%、希土類元素:0~0.100%、V:0~0.50%、Ti:0~0.300%、Nb:0~0.300%、Zr:0~0.200%、Zn:0~0.0100%、Pb:0~0.0100%、及び、残部:Fe及び不純物からなるステンレス鋼材であれば、110ksi以上の高強度と、優れた耐SSC性と、極低温環境における優れた低温靭性とを有する可能性があると考えた。
ここで、上述の化学組成を有するステンレス鋼材のミクロ組織は、フェライトと、残留オーステナイトと、残部がマルテンサイトとからなる。本発明者らは、上述の化学組成を有するステンレス鋼材では、体積率で0~20%のフェライト、0~15%の残留オーステナイト、及び、残部がマルテンサイトからなるミクロ組織であれば、110ksi以上の高強度と、優れた耐SSC性と、極低温環境における優れた低温靭性とを、安定して高められることを知見した。すなわち、本実施形態によるステンレス鋼材では、ミクロ組織が、体積率で0~20%のフェライト、0~15%の残留オーステナイト、及び、残部がマルテンサイトからなる。なお、本明細書において「フェライト、残留オーステナイト、及び、マルテンサイトからなる」とは、フェライト、残留オーステナイト、及び、マルテンサイト以外の相が、無視できるほど少ないことを意味する。
本発明者らはさらに、上述の化学組成及びミクロ組織を有し、降伏強度が758MPa以上のステンレス鋼材について、降伏強度を維持しつつ耐SSC性を高める手法を詳細に検討した。本発明者らによる詳細な検討の結果、上述の化学組成及びミクロ組織を有し、降伏強度が758MPa以上のステンレス鋼材では、元素の含有量と降伏強度とが式(1)を満たせば、鋼材の耐SSC性を顕著に高められることが明らかになった。
0.15≦(Sn+As+Sb)/{(Cu+Ni)/YS}≦1.00 (1)
ここで、式(1)中の元素記号には、対応する元素の含有量が単位:質量%で代入される。対応する元素が含有されていない場合、その元素記号には「0」が代入される。また、式(1)中のYSには、降伏強度が単位:MPaで代入される。
Fn1=(Sn+As+Sb)/{(Cu+Ni)/YS}と定義する。上述のとおり、As及びSbは、Snが鋼材の耐SSC性を高める効果を補助する。さらに、Sn、As及びSb含有量のCu及びNi含有量に対する比を、ある程度の範囲内にすることで、鋼材の耐SSC性が顕著に高まる。一方、鋼材の降伏強度が高いほど、鋼材の耐SSC性は低下しやすい。そこで、Fn1の分母をCu及びNi含有量の降伏強度に対する比とする。このように、降伏強度に応じて調整された、Sn、As及びSb含有量のCu及びNi含有量に対する比をFn1と定義する。すなわち、Fn1は、降伏強度に応じて調整された、Sn、As及びSbと、Cu及びNiとの相乗効果により、耐SSC性を高める指標である。
以上の知見に基づく本発明者らの詳細な検討の結果、上述の化学組成及びミクロ組織を有するステンレス鋼材では、Fn1が0.15~1.00であれば、758MPa以上の降伏強度と、優れた耐SSC性とを両立できることが明らかになった。つまり、本実施形態によるステンレス鋼材は、上述の化学組成と、758MPa以上の降伏強度を有することを前提として、元素の含有量と降伏強度とが式(1)を満たす。その結果、本実施形態によるステンレス鋼材は、高強度と優れた耐SSC性とを両立できる。
一方、上述の化学組成とミクロ組織と758MPa以上の降伏強度とを有し、Fn1が0.15~1.00を満たすステンレス鋼材では、極低温環境における低温靭性が十分に得られない場合があった。そこで本発明者らは、降伏強度と耐SSC性とを維持したまま、極低温環境における低温靭性を高める手法を検討した。その結果、上述の化学組成とミクロ組織と758MPa以上の降伏強度とを有し、Fn1が0.15~1.00を満たすステンレス鋼材では、元素の含有量が式(2)を満たせば、強度と耐SSC性とを維持したまま、極低温環境における低温靭性を高められることを見出した。
(Ni+2Co)/Sn≧900 (2)
ここで、式(2)中の元素記号には、対応する元素の含有量が単位:質量%で代入される。
Fn2=(Ni+2Co)/Snと定義する。Fn2は極低温環境における低温靭性の指標である。上述のとおり、Snは鋼材の耐SSC性を顕著に高める効果を有する。一方、本発明者らによる検討の結果、Snは鋼材の低温靭性を低下させる可能性があることが明らかになった。特に、-80℃という極低温環境では、Snが低温靭性に与える影響が顕在化しやすい。そこで、極低温環境における鋼材の低温靭性を高める効果を有するNi及びCoを、Sn含有量に応じて調整する。その結果、ステンレス鋼材の強度と耐SSC性とを維持したまま、極低温環境における低温靭性を高められる可能性がある。
具体的に、本実施形態によるステンレス鋼材では、上述の化学組成とミクロ組織と758MPa以上の降伏強度とを有し、Fn1が0.15~1.00を満たし、さらに、Fn2を900以上とする。その結果、本実施形態によるステンレス鋼材は、758MPa以上の降伏強度(110ksi以上の高強度)と、優れた耐SSC性と、極低温環境における優れた低温靭性と有する。
以上の知見に基づいて完成した本実施形態によるステンレス鋼材の要旨は、次のとおりである。
[1]
ステンレス鋼材であって、
質量%で、
C:0.050%以下、
Si:1.00%以下、
Mn:1.00%以下、
P:0.050%以下、
S:0.0050%以下、
Cr:13.50~16.50%未満、
Mo:0.50~5.00%、
Ni:1.00~7.00%、
Cu:0.01~3.00%、
Co:0.10~1.50%、
Sn:0.0005~0.0100%、
sol.Al:0.005~0.050%、
N:0.150%以下、
O:0.0050%以下、
W:0~1.60%、
As:0~0.0100%、
Sb:0~0.0100%、
Ca:0~0.0050%、
Mg:0~0.0050%、
B:0~0.0050%、
希土類元素:0~0.100%
V:0~0.50%、
Ti:0~0.300%、
Nb:0~0.300%、
Zr:0~0.200%、
Zn:0~0.0100%、
Pb:0~0.0100%、及び、
残部:Fe及び不純物からなり、
降伏強度が、758MPa以上であり、
ミクロ組織が、体積率で0~20%のフェライト、0~15%の残留オーステナイト、及び、残部がマルテンサイトからなり、
前記元素の含有量と、前記降伏強度とが、式(1)を満たし、
前記元素の含有量が式(2)を満たす、
ステンレス鋼材。
0.15≦(Sn+As+Sb)/{(Cu+Ni)/YS}≦1.00 (1)
(Ni+2Co)/Sn≧900 (2)
ここで、式(1)及び(2)中の元素記号には、対応する元素の含有量が単位:質量%で代入される。対応する元素が含有されていない場合、その元素記号には「0」が代入される。また、式(1)中のYSには、降伏強度が単位:MPaで代入される。
[2]
[1]に記載のステンレス鋼材であって、
W:0.01~1.60%、
As:0.0001~0.0100%、
Sb:0.0001~0.0100%、
Ca:0.0001~0.0050%、
Mg:0.0001~0.0050%、
B:0.0001~0.0050%、
希土類元素:0.001~0.100%
V:0.01~0.50%、
Ti:0.001~0.300%、
Nb:0.001~0.300%、
Zr:0.001~0.200%、
Zn:0.0001~0.0100%、及び、
Pb:0.0001~0.0100%、からなる群から選択される1元素以上を含有する、
ステンレス鋼材。
なお、本実施形態によるステンレス鋼材の形状は特に限定されない。本実施形態によるステンレス鋼材は、鋼管であってもよく、丸鋼(中実材)であってもよく、鋼板であってもよい。なお、丸鋼とは、軸方向に垂直な断面が円形状の棒鋼を意味する。また、鋼管は継目無鋼管であってもよく、溶接鋼管であってもよい。
以下、本実施形態によるステンレス鋼材について詳述する。なお、以下の説明では、ステンレス鋼材を、単に「鋼材」ともいう。
[化学組成]
本実施形態によるステンレス鋼材の化学組成は、次の元素を含有する。元素に関する「%」は、特に断りがない限り、質量%を意味する。
C:0.050%以下
炭素(C)は不可避に含有される。つまり、C含有量の下限は0%超である。Cは炭化物を形成して、腐食感受性を高める。そのため、C含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の耐SSC性が低下する。C含有量が高すぎればさらに、鋼材の低温靭性が低下する場合がある。したがって、C含有量は0.050%以下である。C含有量の好ましい上限は0.049%であり、さらに好ましくは0.047%であり、さらに好ましくは0.045%である。C含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、C含有量の極端な低減は、製造コストを高める。したがって、工業生産を考慮すれば、C含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.003%であり、さらに好ましくは0.005%である。
Si:1.00%以下
ケイ素(Si)は不可避に含有される。つまり、Si含有量の下限は0%超である。Siは、鋼を脱酸する。一方、Si含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の熱間加工性が低下する。したがって、Si含有量は1.00%以下である。上記効果を有効に得るためのSi含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.05%であり、さらに好ましくは0.10%であり、さらに好ましくは0.15%である。Si含有量の好ましい上限は0.80%であり、さらに好ましくは0.60%であり、さらに好ましくは0.50%であり、さらに好ましくは0.45%である。
Mn:1.00%以下
マンガン(Mn)は不可避に含有される。つまり、Mn含有量の下限は0%超である。Mnは、鋼材の焼入れ性を高めて、鋼材の強度を高める。一方、MnはP及びS等の不純物元素と共に粒界に偏析する場合がある。そのため、Mn含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の耐SSC性及び低温靭性が低下する。したがって、Mn含有量は1.00%以下である。上記効果を有効に得るためのMn含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.03%であり、さらに好ましくは0.05%であり、さらに好ましくは0.10%であり、さらに好ましくは0.15%である。Mn含有量の好ましい上限は0.80%であり、さらに好ましくは0.60%であり、さらに好ましくは0.50%であり、さらに好ましくは0.45%である。
P:0.050%以下
燐(P)は、不可避に含有される不純物である。つまり、P含有量の下限は0%超である。Pは、結晶粒界に偏析して、SSCを発生しやすくする。そのため、P含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の耐SSC性が顕著に低下する。したがって、P含有量は0.050%以下である。P含有量の好ましい上限は0.040%であり、さらに好ましくは0.030%であり、さらに好ましくは0.025%である。P含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、P含有量の極端な低減は、製造コストを高める。したがって、工業生産を考慮すれば、P含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.002%であり、さらに好ましくは0.003%である。
S:0.0050%以下
硫黄(S)は、不可避に含有される不純物である。つまり、S含有量の下限は0%超である。Sは、Pと同様に結晶粒界に偏析し、SSCを発生しやすくする。そのため、S含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の耐SSC性が顕著に低下する。したがって、S含有量は0.0050%以下である。S含有量の好ましい上限は0.0040%であり、さらに好ましくは0.0030%であり、さらに好ましくは0.0025%であり、さらに好ましくは0.0020%である。S含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、S含有量の極端な低減は、製造コストを高める。したがって、工業生産を考慮すれば、S含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0002%であり、さらに好ましくは0.0003%である。
Cr:13.50~16.50%未満
クロム(Cr)は、鋼材の表面に不働態皮膜を形成して、鋼材の耐SSC性を高める。Cr含有量が低すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Cr含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材中に金属間化合物やCr炭窒化物が生成しやすくなる。その結果、鋼材の耐SSC性及び低温靭性が低下する。したがって、Cr含有量は13.50~16.50%未満である。Cr含有量の好ましい下限は13.80%であり、さらに好ましくは14.00%超であり、さらに好ましくは14.05%であり、さらに好ましくは14.10%である。Cr含有量の好ましい上限は16.49%であり、さらに好ましくは16.45%であり、さらに好ましくは16.40%であり、さらに好ましくは16.25%である。
Mo:0.50~5.00%
モリブデン(Mo)は、Mo硫化物を形成して、鋼材の耐SSC性を高める。Moはさらに、鋼材中に固溶して、鋼材の強度を高める。Mo含有量が低すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Mo含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、オーステナイトが安定化しにくくなる。その結果、フェライトの体積率が高くなりすぎ、鋼材の耐SSC性及び低温靭性が低下する場合がある。したがって、Mo含有量は0.50~5.00%である。Mo含有量の好ましい下限は0.55%であり、さらに好ましくは0.60%であり、さらに好ましくは0.65%である。Mo含有量の好ましい上限は4.90%であり、さらに好ましくは4.80%であり、さらに好ましくは4.70%である。
Ni:1.00~7.00%
ニッケル(Ni)は、Sn、As及びSbとの相乗効果により、鋼材の耐SSC性を高める。Niはさらに、Snによって低下した鋼材の低温靭性を高める。Ni含有量が低すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Ni含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材中の水素拡散係数が低下して、鋼材の耐SSC性が低下する場合がある。したがって、Ni含有量は1.00~7.00%である。Ni含有量の好ましい下限は1.03%であり、さらに好ましくは1.05%であり、さらに好ましくは1.10%である。Ni含有量の好ましい上限は6.95%であり、さらに好ましくは6.90%である。
Cu:0.01~3.00%
銅(Cu)は、Sn、As及びSbとの相乗効果により、鋼材の耐SSC性を高める。Cu含有量が低すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Cu含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の低温靭性が低下する。したがって、Cu含有量は0.01~3.00%である。Cu含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.02%であり、さらに好ましくは0.03%である。Cu含有量の好ましい上限は2.95%であり、さらに好ましくは2.90%であり、さらに好ましくは2.85%である。
Co:0.10~1.50%
コバルト(Co)は、Snによって低下した鋼材の低温靭性を高める。Co含有量が低すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Co含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、かえって鋼材の低温靭性が低下する。したがって、Co含有量は0.10~1.50%である。Co含有量の好ましい下限は0.12%であり、さらに好ましくは0.15%である。Co含有量の好ましい上限は1.40%であり、さらに好ましくは1.30%であり、さらに好ましくは1.25%である。
Sn:0.0005~0.0100%
スズ(Sn)は、鋼材の耐SSC性を高める。Sn含有量が低すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Sn含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の低温靭性が低下する。したがって、Sn含有量は0.0005~0.0100%である。Sn含有量の好ましい下限は0.0006%であり、さらに好ましくは0.0008%であり、さらに好ましくは0.0010%である。Sn含有量の好ましい上限は0.0098%であり、さらに好ましくは0.0095%であり、さらに好ましくは0.0090%である。
sol.Al:0.005~0.050%
アルミニウム(Al)は、鋼を脱酸する。Al含有量が低すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Al含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、粗大な酸化物が生成して、鋼材の耐SSC性及び低温靭性が低下する。したがって、Al含有量は0.005~0.050%である。Al含有量の好ましい下限は0.007%であり、さらに好ましくは0.010%である。Al含有量の好ましい上限は0.048%であり、さらに好ましくは0.045%である。本明細書でいうAl含有量は、sol.Al(酸可溶Al)の含有量を意味する。
N:0.150%以下
窒素(N)は不可避に含有される。つまり、N含有量の下限は0%超である。NはTiとTi窒化物を形成し、結晶粒の粗大化を抑制する。その結果、鋼材の降伏強度を高める。一方、N含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、粗大な窒化物が生成して、鋼材の耐SSC性及び低温靭性が低下する。したがって、N含有量は0.150%以下である。上記効果を有効に得るためのN含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.003%であり、さらに好ましくは0.005%である。N含有量の好ましい上限は0.148%であり、さらに好ましくは0.145%であり、さらに好ましくは0.140%である。
O:0.0050%以下
酸素(O)は、不可避に含有される不純物である。つまり、O含有量の下限は0%超である。Oは、酸化物を形成して、鋼材の耐SSC性及び低温靭性を低下させる。そのため、O含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の耐SSC性及び低温靭性が低下する。したがって、O含有量は0.0050%以下である。O含有量の好ましい上限は0.0048%であり、さらに好ましくは0.0045%であり、さらに好ましくは0.0040%である。O含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、O含有量の極端な低減は、製造コストを高める。したがって、工業生産を考慮すれば、O含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0003%であり、さらに好ましくは0.0005%である。
本実施形態によるステンレス鋼材の化学組成の残部は、Fe及び不純物からなる。ここで、化学組成における不純物とは、ステンレス鋼材を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、又は製造環境などから混入されるものであって、本実施形態によるステンレス鋼材に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
[任意元素]
本実施形態によるステンレス鋼材の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Wを含有してもよい。
W:0~1.60%
タングステン(W)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、W含有量は0%であってもよい。含有される場合、Wは鋼材の耐SSC性を高める。Wが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、W含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、フェライトの体積率が高くなりすぎ、鋼材の耐SSC性及び低温靭性が低下する場合がある。したがって、W含有量は0~1.60%である。W含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.01%であり、さらに好ましくは0.02%であり、さらに好ましくは0.03%である。W含有量の好ましい上限は1.58%であり、さらに好ましくは1.55%であり、さらに好ましくは1.53%である。
本実施形態によるステンレス鋼材の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、As及びSbからなる群から選択される1元素以上を含有してもよい。これらの元素はいずれも、Snが鋼材の耐SSC性を高める効果を補助する。
As:0~0.0100%
ヒ素(As)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、As含有量は0%であってもよい。含有される場合、Asは、Snが鋼材の耐SSC性を高める効果を補助する。Asが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。一方、As含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、Asが粒界に偏析して、鋼材の耐SSC性が低下する。したがって、As含有量は0~0.0100%である。As含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.0001%であり、さらに好ましくは0.0003%であり、さらに好ましくは0.0005%である。As含有量の好ましい上限は0.0080%であり、さらに好ましくは0.0060%であり、さらに好ましくは0.0050%である。
Sb:0~0.0100%
アンチモン(Sb)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Sb含有量は0%であってもよい。含有される場合、Sbは、Snが鋼材の耐SSC性を高める効果を補助する。Sbが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。一方、Sb含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、Sbが粒界に偏析して、鋼材の耐SSC性が低下する。したがって、Sb含有量は0~0.0100%である。Sb含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0003%であり、さらに好ましくは0.0005%である。Sb含有量の好ましい上限は0.0080%であり、さらに好ましくは0.0060%であり、さらに好ましくは0.0050%である。
本実施形態によるステンレス鋼材の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Ca、Mg、B、及び、希土類元素からなる群から選択される1元素以上を含有してもよい。これらの元素はいずれも任意元素であり、鋼材の熱間加工性を高める。
Ca:0~0.0050%
カルシウム(Ca)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Ca含有量は0%であってもよい。含有される場合、Caは鋼材中のSを硫化物として固定することで無害化し、鋼材の熱間加工性を高める。Caが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Ca含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材中の酸化物が粗大化して、鋼材の耐SSC性及び低温靭性が低下する。したがって、Ca含有量は0~0.0050%である。Ca含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.0001%であり、さらに好ましくは0.0005%であり、さらに好ましくは0.0008%であり、さらに好ましくは0.0010%である。Ca含有量の好ましい上限は0.0048%であり、さらに好ましくは0.0045%である。
Mg:0~0.0050%
マグネシウム(Mg)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Mg含有量は0%であってもよい。含有される場合、Mgは鋼材中のSを硫化物として固定することで無害化し、鋼材の熱間加工性を高める。Mgが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Mg含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材中の酸化物が粗大化して、鋼材の耐SSC性及び低温靭性が低下する。したがって、Mg含有量は0~0.0050%である。Mg含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.0001%であり、さらに好ましくは0.0002%である。Mg含有量の好ましい上限は0.0048%であり、さらに好ましくは0.0045%である。
B:0~0.0050%
ホウ素(B)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、B含有量は0%であってもよい。含有される場合、Bは鋼材中のSを硫化物として固定することで無害化し、鋼材の熱間加工性を高める。Bが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、B含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、ボロン窒化物(BN)が形成され、鋼材の低温靭性が低下する。したがって、B含有量は0~0.0050%である。B含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.0001%であり、さらに好ましくは0.0003%である。B含有量の好ましい上限は0.0040%であり、さらに好ましくは0.0030%であり、さらに好ましくは0.0025%である。
希土類元素:0~0.100%
希土類元素(REM)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、REM含有量は0%であってもよい。含有される場合、REMは鋼材中のSを硫化物として固定することで無害化し、鋼材の熱間加工性を高める。REMが少しでも含有されれば上記効果がある程度得られる。しかしながら、REM含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材中の酸化物が粗大化して、鋼材の耐SSC性及び低温靭性が低下する。したがって、REM含有量は0~0.100%である。REM含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.002%である。REM含有量の好ましい上限は0.095%であり、さらに好ましくは0.090%であり、さらに好ましくは0.085%である。
なお、本明細書におけるREMとは、原子番号21番のスカンジウム(Sc)、原子番号39番のイットリウム(Y)、及び、ランタノイドである原子番号57番のランタン(La)~原子番号71番のルテチウム(Lu)からなる群から選択される1元素以上を意味する。また、本明細書におけるREM含有量とは、これらの元素の合計含有量を意味する。
本実施形態によるステンレス鋼材の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、V、Ti、Nb、及び、Zrからなる群から選択される1元素以上を含有してもよい。これらの元素はいずれも任意元素であり、鋼材の強度を高める。
V:0~0.50%
バナジウム(V)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、V含有量は0%であってもよい。含有される場合、Vは炭窒化物を形成し、鋼材の強度を高める。Vが少しでも含有されれば上記効果がある程度得られる。しかしながら、V含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の強度が高くなりすぎ、鋼材の低温靭性が低下する。したがって、V含有量は0~0.50%である。V含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.01%であり、さらに好ましくは0.03%であり、さらに好ましくは0.05%である。V含有量の好ましい上限は0.48%であり、さらに好ましくは0.45%であり、さらに好ましくは0.40%である。
Ti:0~0.300%
チタン(Ti)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Ti含有量は0%であってもよい。含有される場合、Tiは炭窒化物を形成し、鋼材の強度を高める。Tiが少しでも含有されれば上記効果がある程度得られる。しかしながら、Ti含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の強度が高くなりすぎ、鋼材の低温靭性が低下する。したがって、Ti含有量は0~0.300%である。Ti含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.002%であり、さらに好ましくは0.003%である。Ti含有量の好ましい上限は0.250%であり、さらに好ましくは0.200%であり、さらに好ましくは0.150%であり、さらに好ましくは0.100%であり、さらに好ましくは0.080%である。
Nb:0~0.300%
ニオブ(Nb)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Nb含有量は0%であってもよい。含有される場合、Nbは炭窒化物を形成し、鋼材の強度を高める。Nbが少しでも含有されれば上記効果がある程度得られる。しかしながら、Nb含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の強度が高くなりすぎ、鋼材の低温靭性が低下する。したがって、Nb含有量は0~0.300%である。Nb含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.002%であり、さらに好ましくは0.003%であり、さらに好ましくは0.005%であり、さらに好ましくは0.010%である。Nb含有量の好ましい上限は0.280%であり、さらに好ましくは0.240%であり、さらに好ましくは0.200%であり、さらに好ましくは0.180%である。
Zr:0~0.200%
ジルコニウム(Zr)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Zr含有量は0%であってもよい。含有される場合、Zrは炭窒化物を形成し、鋼材の強度を高める。Zrが少しでも含有されれば上記効果がある程度得られる。しかしながら、Zr含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の強度が高くなりすぎ、鋼材の低温靭性が低下する。したがって、Zr含有量は0~0.200%である。Zr含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.005%であり、さらに好ましくは0.010%であり、さらに好ましくは0.015%である。Zr含有量の好ましい上限は0.180%であり、さらに好ましくは0.150%であり、さらに好ましくは0.100%であり、さらに好ましくは0.050%である。
本実施形態によるステンレス鋼材の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Zn及びPbからなる群から選択される1元素以上を含有してもよい。これらの元素はいずれも任意元素であり、鋼材の耐SSC性を高める。
Zn:0~0.0100%
亜鉛(Zn)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Zn含有量は0%であってもよい。含有される場合、Znは、鋼材の耐SSC性を高める。Znが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Zn含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の耐SSC性がかえって低下する場合がある。したがって、Zn含有量は0~0.0100%である。Zn含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.0001%であり、さらに好ましくは0.0002%であり、さらに好ましくは0.0003%である。Zn含有量の好ましい上限は0.0090%であり、さらに好ましくは0.0080%であり、さらに好ましくは0.0060%であり、さらに好ましくは0.0055%である。
Pb:0~0.0100%
鉛(Pb)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Pb含有量は0%であってもよい。含有される場合、Pbは、鋼材の耐SSC性を高める。Pbが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Pb含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の熱間加工性が低下する。したがって、Pb含有量は0~0.0100%である。Pb含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.0001%であり、さらに好ましくは0.0002%であり、さらに好ましくは0.0003%である。Pb含有量の好ましい上限は0.0080%であり、さらに好ましくは0.0060%であり、さらに好ましくは0.0050%であり、さらに好ましくは0.0040%である。
[降伏強度]
本実施形態によるステンレス鋼材の降伏強度YSは758MPa以上(110ksi以上)である。本実施形態によるステンレス鋼材の降伏強度YSの上限は特に限定されないが、たとえば、1069MPa(155ksi)である。つまり、本実施形態によるステンレス鋼材の降伏強度YSは、758~1069MPaであってもよい。降伏強度YSの好ましい下限は760MPaであり、さらに好ましくは770MPaであり、さらに好ましくは780MPaである。降伏強度YSの上限は1034MPaであってもよく、1000MPaであってもよい。
本実施形態において、ステンレス鋼材の降伏強度は、次の方法で求める。具体的に、ASTM E8/E8M(2022)に準拠した方法で引張試験を行う。本実施形態による鋼材から、試験片を作製する。鋼材が鋼板の場合、板厚中央部から引張試験片を作製する。この場合、引張試験片の長手方向は、鋼板の圧延方向と平行とする。鋼材が鋼管の場合、肉厚中央部から引張試験片として丸棒試験片、又は、円弧状試験片を作製する。この場合、丸棒試験片、又は、円弧状試験片の長手方向は、鋼管の管軸方向と平行とする。鋼材が丸鋼の場合、R/2位置から引張試験片を作製する。本明細書において、丸鋼のR/2位置とは、丸鋼の軸方向に垂直な断面において、半径Rの中央位置を意味する。この場合、引張試験片の長手方向は、丸鋼の軸方向と平行とする。
引張試験片は、たとえば、平行部の直径8.9mm、標点距離35.6mmの丸棒試験片である。鋼管から丸棒試験片を作製できない場合、円弧状試験片を作製する。円弧状試験片の大きさは、たとえば、厚さは全肉厚であって、幅25.4mm、標点距離50.8mmである。作製された引張試験片を用いて、ASTM E8/E8M(2022)に準拠して、常温(24±3℃)で引張試験を実施する。引張試験により得られた0.2%オフセット耐力(MPa)を降伏強度(MPa)と定義する。本実施形態において、降伏強度(MPa)は、得られた数値の小数第一位を四捨五入して求める。
[ミクロ組織]
本実施形態によるステンレス鋼材のミクロ組織は、体積率で0~20%のフェライト、0~15%の残留オーステナイト、及び、残部がマルテンサイトからなる。本明細書において、ミクロ組織が「フェライト、残留オーステナイト、及び、マルテンサイトからなる」とは、ミクロ組織中のフェライト、残留オーステナイト及びマルテンサイト以外の相が無視できるほど少ないことを意味する。たとえば、本実施形態によるステンレス鋼材の化学組成においては、析出物や介在物の体積率は、フェライト、残留オーステナイト、及び、マルテンサイトの体積率と比較して、無視できるほど小さい。すなわち、本実施形態によるステンレス鋼材のミクロ組織には、フェライト、残留オーステナイト、及び、マルテンサイト以外に、析出物や介在物等を微小量含んでもよい。
上述のとおり、本実施形態によるステンレス鋼材のミクロ組織において、フェライトの体積率は0~20%である。つまり、フェライトはミクロ組織に含まれていなくてもよい。一方、フェライトの体積率が高すぎれば、鋼材の強度が低下する。したがって、本実施形態によるステンレス鋼材のミクロ組織において、フェライトの体積率は0~20%である。フェライトの体積率の好ましい上限は19%であり、さらに好ましくは18%である。フェライトの体積率の下限は0%超であってもよく、1%であってもよく、2%であってもよい。
上述のとおり、本実施形態によるステンレス鋼材のミクロ組織において、残留オーステナイトの体積率は0~15%である。つまり、残留オーステナイトはミクロ組織に含まれていなくてもよい。一方、残留オーステナイトの体積率が高すぎれば、鋼材の強度が低下する。したがって、本実施形態によるステンレス鋼材のミクロ組織において、残留オーステナイトの体積率は0~15%である。残留オーステナイトの体積率の好ましい上限は14%であり、さらに好ましくは13%であり、さらに好ましくは12%である。残留オーステナイトの体積率の下限は0%超であってもよく、1%であってもよく、2%であってもよい。
上述のとおり、本実施形態によるステンレス鋼材は、体積率で0~20%のフェライト、0~15%の残留オーステナイト、及び、残部がマルテンサイトからなるミクロ組織を有する。本明細書において「マルテンサイト」とは、フレッシュマルテンサイトだけでなく、焼戻しマルテンサイトも含む。また、マルテンサイトの体積率は、特に限定されないが、実質的に65~100%である。マルテンサイトの体積率の好ましい下限は70%であり、さらに好ましくは72%であり、さらに好ましくは75%である。マルテンサイトの体積率の好ましい上限は100%である。そのため、本実施形態によるステンレス鋼材は、マルテンサイトからなるミクロ組織を有していてもよい。つまり、本実施形態によるステンレス鋼材のミクロ組織は、マルテンサイト単相であってもよい。
本実施形態において、ミクロ組織の各相の体積率は、次の方法で求める。具体的に、鋼材のミクロ組織中の残留オーステナイトの体積率(%)と、フェライトの体積率(%)とを次の方法で求める。求めた残留オーステナイトの体積率とフェライトの体積率とを100%から差し引いて、マルテンサイトの体積率(%)を求める。
[残留オーステナイトの体積率の測定方法]
鋼材のミクロ組織中の残留オーステナイトの体積率を、X線回折法により求める。具体的には、本実施形態による鋼材から、残留オーステナイトの体積率測定用の試験片を作製する。鋼材が鋼板の場合、板厚中央部から試験片を採取する。鋼材が鋼管の場合、肉厚中央部から試験片を採取する。鋼材が丸鋼の場合、R/2位置から試験片を採取する。試験片の大きさは特に限定されない。試験片はたとえば、15mm×15mm×厚さ2mmである。鋼材が鋼板の場合、試験片の厚さ方向は、板厚方向である。鋼材が鋼管の場合、試験片の厚さ方向は、管径方向である。鋼材が丸鋼の場合、試験片の厚さ方向は、径方向である。作製した試験片を用いて、α相(マルテンサイト)の(110)面、α相の(200)面、α相の(211)面、γ相(残留オーステナイト)の(111)面、γ相の(200)面、及び、γ相の(220)面の各々のX線回折強度を測定し、各面の積分強度を算出する。
X線回折強度の測定において、X線回折装置のターゲットをCoとし(CoKα線)、出力を30kV-100mAとする。測定角度(2θ)を45~105°とする。算出後、α相の各面と、γ相の各面との組合せ(3×3=9組)ごとに式(I)を用いて残留オーステナイトの体積率Vγ(%)を算出する。そして、9組の残留オーステナイトの体積率Vγ(%)の平均値を、残留オーステナイトの体積率(%)と定義する。
Vγ=100/{1+(Iα×Rγ)/(Iγ×Rα)} (I)
ここで、Iαはα相の積分強度である。Rαはα相の結晶学的理論計算値である。Iγはγ相の積分強度である。Rγはγ相の結晶学的理論計算値である。各面でのRα及びRγの値は、株式会社リガク製、商品名RINT-TTRに付属の残留γ定量解析システムに組み込まれた値を使用することができる。なお、残留オーステナイトの体積率は、得られた数値の小数第一位を四捨五入して求める。
[フェライトの体積率の測定方法]
鋼材のミクロ組織中のフェライトの体積率を、点算法により求める。具体的には、本実施形態による鋼材から、フェライトの体積率測定用の試験片を作製する。鋼材が鋼板の場合、板厚中央部から試験片を採取する。鋼材が鋼管の場合、肉厚中央部から試験片を採取する。鋼材が丸鋼の場合、R/2位置から試験片を採取する。なお、試験片の大きさは特に限定されない。また、鋼材が鋼板の場合、試験片の観察面は、鋼板の圧延方向と平行な面とする。鋼材が鋼管の場合、試験片の観察面は、鋼管の管軸方向と平行な面とする。鋼材が丸鋼の場合、試験片の観察面は、丸鋼の軸方向と平行な面とする。観察面を機械研磨した後、観察面を電解エッチングして組織現出を行う。電解エッチングは、電解液:王水(塩酸:硝酸=3:1で混合した溶液)とグリセリンとの混合液、電流密度:1A/cm、電解時間:1分間として実施する。
電解エッチングされた観察面を、光学顕微鏡を用いて30視野観察する。観察視野は、250μm×250μmの長方形とする。なお、観察倍率は400倍である。各観察視野において、フェライトと、その他の相(残留オーステナイトやマルテンサイト)とは、当業者であればコントラストから区別することができる。そのため、各観察視野におけるフェライトを、コントラストに基づいて特定する。特定されたフェライトの面積率を、JIS G 0555(2020)に準拠した点算法によって求める。
具体的には、観察視野について、観察視野の上端から下端までの縦線を、等間隔に20本引く。すなわち、20本の縦線により、観察視野は左右方向に21個の領域に分割される。観察視野についてさらに、観察視野の左端から右端までの横線を、等間隔に20本引く。すなわち、20本の横線により、観察視野は上下方向に21個の領域に分割される。このとき、縦線と横線との交点を格子点という。すなわち、観察視野には400個の格子点が、等間隔に配置される。JIS G 0555(2020)に準拠して、観察視野において、フェライトと重なる格子点を計数する。30視野にて得られたフェライトと重なる格子点の数を、格子点の総数(400×30=12000)で除し、フェライト面積率と定義する。本実施形態では、以上の方法で求めたフェライトの面積率を、フェライトの体積率(%)とする。なお、フェライトの体積率は、得られた数値の小数第一位を四捨五入して求める。
上述のX線回折法で得られた残留オーステナイトの体積率(%)と、上述の点算法で得られたフェライトの体積率(%)とを用いて、鋼材のミクロ組織のマルテンサイトの体積率(%)を次の式により求める。
マルテンサイトの体積率(%)=100-{残留オーステナイトの体積率(%)+フェライトの体積率(%)}
[式(1)]
本実施形態によるステンレス鋼材は、上述の化学組成、及び、758MPa以上の降伏強度の範囲内において、元素の含有量と、降伏強度YSとが、式(1)を満たす。その結果、本実施形態によるステンレス鋼材は、本実施形態の他の構成を満たすことを条件に、758MPa以上の降伏強度と、優れた耐SSC性と、極低温環境における優れた低温靭性とを有する。
0.15≦(Sn+As+Sb)/{(Cu+Ni)/YS}≦1.00 (1)
ここで、式(1)中の元素記号には、対応する元素の含有量が単位:質量%で代入される。対応する元素が含有されていない場合、その元素記号には「0」が代入される。また、式(1)中のYSには、降伏強度が単位:MPaで代入される。
Fn1(=(Sn+As+Sb)/{(Cu+Ni)/YS})は、降伏強度に応じて調整された、Sn、As及びSbと、Cu及びNiとの相乗効果により、耐SSC性を高める指標である。上述の化学組成及びミクロ組織を有し、降伏強度YSが758MPa以上であることを前提に、Fn1が0.15~1.00であれば、鋼材は安定して優れた耐SSC性を有する。したがって、本実施形態において、Fn1は0.15~1.00とする。Fn1の好ましい下限は0.16であり、さらに好ましくは0.17である。Fn1の好ましい上限は0.99であり、さらに好ましくは0.98である。本実施形態において、Fn1は、得られた数値の小数第三位を四捨五入して求める。
[式(2)]
本実施形態によるステンレス鋼材は、上述の化学組成の範囲内において、元素の含有量が、式(2)を満たす。その結果、本実施形態によるステンレス鋼材は、本実施形態の他の構成を満たすことを条件に、758MPa以上の降伏強度と、優れた耐SSC性と、極低温環境における優れた低温靭性とを有する。
(Ni+2Co)/Sn≧900 (2)
ここで、式(2)中の元素記号には、対応する元素の含有量が単位:質量%で代入される。
Fn2(=(Ni+2Co)/Sn)は、極低温環境における低温靭性の指標である。上述の化学組成とミクロ組織と758MPa以上の降伏強度YSとを有し、Fn1が0.15~1.00を満たすことを前提に、Fn2が900以上であれば、極低温環境であっても、鋼材は安定して優れた低温靭性を有する。したがって、本実施形態において、Fn2は900以上とする。Fn2の好ましい下限は901であり、さらに好ましくは905であり、さらに好ましくは910である。Fn2の上限は特に限定されないが、実質的に22000である。Fn2の上限は20000であってもよく、19000であってもよく、17000であってもよく、15000であってもよい。本実施形態において、Fn2は、得られた数値の小数第一位を四捨五入して求める。
[耐SSC性]
本実施形態によるステンレス鋼材は、上述の化学組成とミクロ組織と758MPa以上の降伏強度とを有し、Fn1が0.15~1.00を満たし、Fn2が900以上を満たす。その結果、本実施形態によるステンレス鋼材は、高強度と優れた耐SSC性と極低温環境における優れた低温靭性とを有する。本実施形態において、優れた耐SSC性とは、次の方法で定義される。
具体的に、NACE TM0177-2016 Method Aに準拠した方法で、耐SSC性試験を実施する。本実施形態によるステンレス鋼材から、丸棒試験片を作製する。鋼材が鋼板の場合、板厚中央部から丸棒試験片を作製する。この場合、丸棒試験片の軸方向は、鋼板の圧延方向に平行な方向とする。鋼材が鋼管の場合、肉厚中央部から丸棒試験片を作製する。この場合、丸棒試験片の軸方向は、鋼管の管軸方向に平行な方向とする。鋼材が丸鋼である場合、R/2位置から丸棒試験片を作製する。この場合、丸棒試験片の軸方向は、丸鋼の軸方向に平行な方向とする。丸棒試験片の大きさは、たとえば、径6.35mm、平行部の長さ25.4mmである。
試験溶液は、酢酸でpH2.7に調整した、0.17質量%塩化ナトリウム水溶液を用いる。作製された丸棒試験片に対し、実降伏応力の90%に相当する応力を負荷する。試験容器に24℃の試験溶液を、応力を付加した丸棒試験片が浸漬するように注入し、試験浴とする。試験浴を脱気した後、0.03atmのHSガスと0.97atmのCOガスとの混合ガスを試験浴に吹き込み、試験浴に飽和させる。混合ガスを飽和させた試験浴を、24℃で720時間、保持する。本実施形態による鋼材は、上記条件で実施した耐SSC性試験において、720時間経過後に、割れが確認されない。なお、本明細書において、「割れが確認されない」とは、試験後の試験片を肉眼によって観察した場合、割れが確認されないことを意味する。
[低温靭性]
本実施形態によるステンレス鋼材は、上述の化学組成とミクロ組織と758MPa以上の降伏強度とを有し、Fn1が0.15~1.00を満たし、Fn2が900以上を満たす。その結果、本実施形態によるステンレス鋼材は、高強度と優れた耐SSC性と極低温環境における優れた低温靭性とを有する。本実施形態において、極低温環境における優れた低温靭性とは、次の方法で定義される。
具体的に、本実施形態によるステンレス鋼材から、API 5CT(2019)に準拠して、フルサイズ又はサブサイズのVノッチ試験片を作製する。ここで、鋼材が鋼板の場合、鋼板の圧延方向を「L方向」(Longitudinal)と定義し、鋼板の板幅方向を「T方向」(Transverse)と定義する。鋼材が鋼管の場合、鋼管の管径方向を「C方向」と定義し、鋼管の管軸方向を「L方向」と定義し、C方向とL方向とに垂直な方向を「T方向」と定義する。鋼材が丸鋼の場合、丸鋼の断面径方向を「C方向」と定義し、丸鋼の軸方向を「L方向」と定義し、C方向とL方向とに垂直な方向を「T方向」と定義する。
作製されたVノッチ試験片に対して、JIS Z 2242(2018)に準拠したシャルピー衝撃試験を実施して、-80℃での吸収エネルギー(J)を求める。なお、サブサイズのVノッチ試験片を用いた場合、得られた吸収エネルギーをAPI 5CT(2019)に記載された低減率(Reduction factor)で除して、フルサイズのVノッチ試験片での吸収エネルギーに換算する。本実施形態において、-80℃における吸収エネルギー(J)は、得られた数値の小数第一位を四捨五入して求める。
本実施形態において、上記条件によって求められた-80℃における吸収エネルギーが60J以上の場合、極低温環境における優れた低温靭性を有すると評価する。なお、本明細書では、-80℃における吸収エネルギーを、単に「吸収エネルギー」ともいう。
[ステンレス鋼材の形状]
上述のとおり、本実施形態によるステンレス鋼材の形状は、特に限定されない。好ましくは、本実施形態によるステンレス鋼材は、継目無鋼管である。本実施形態によるステンレス鋼材が継目無鋼管の場合、肉厚が5mm以上であっても、高強度と、優れた耐SSC性と、極低温環境における優れた低温靭性とを有する。
[製造方法]
上述の構成を有する本実施形態によるステンレス鋼材の製造方法の一例を説明する。なお、本実施形態によるステンレス鋼材の製造方法は、以下に説明する製造方法に限定されない。本実施形態のステンレス鋼材の製造方法の一例は、中間鋼材を準備する工程(準備工程)と、中間鋼材に対して焼入れを実施する工程(焼入れ工程)と、焼戻しを実施する工程(焼戻し工程)とを含む。以下、各工程について詳述する。
[準備工程]
準備工程では、上述の化学組成を有する中間鋼材を準備する。中間鋼材が上記化学組成を有していれば、中間鋼材の製造方法は特に限定されない。ここでいう中間鋼材は、最終製品が鋼板又は溶接鋼管の場合は、板状の鋼材であり、最終製品が継目無鋼管の場合は素管であり、最終製品が丸鋼の場合は軸方向に垂直な断面が円形の鋼材である。
準備工程は、素材を準備する工程(素材準備工程)と、素材を熱間加工して中間鋼材を製造する工程(熱間加工工程)とを含んでもよい。以下、素材準備工程と、熱間加工工程を含む場合について、詳述する。
[素材準備工程]
素材準備工程では、上述の化学組成を有する溶鋼を用いて素材を製造する。素材の製造方法は特に限定されず、周知の方法でよい。具体的には、溶鋼を用いて連続鋳造法により鋳片(スラブ、ブルーム、又は、ビレット)を製造してもよい。溶鋼を用いて造塊法によりインゴットを製造してもよい。必要に応じて、スラブ、ブルーム又はインゴットを分塊圧延して、ビレットを製造してもよい。以上の工程により素材(スラブ、ブルーム、又は、ビレット)を製造する。
[熱間加工工程]
熱間加工工程では、準備された素材を熱間加工して中間鋼材を製造する。上述のとおり、鋼材が継目無鋼管の場合、中間鋼材は素管に相当する。始めに、ビレットを加熱炉で加熱する。加熱温度は特に限定されないが、たとえば、1100~1300℃である。加熱炉から抽出されたビレットに対して熱間加工を実施して、素管(継目無鋼管)を製造する。熱間加工の方法は、特に限定されず、周知の方法でよい。
たとえば、熱間加工としてマンネスマン法を実施して、素管を製造してもよい。この場合、穿孔機により丸ビレットを穿孔圧延する。穿孔圧延する場合、穿孔比は特に限定されないが、たとえば、1.0~4.0である。穿孔圧延された丸ビレットをさらに、マンドレルミル、レデューサー、サイジングミル等により熱間圧延して素管にする。熱間加工工程での累積の減面率はたとえば、20~70%である。他の熱間加工方法を実施して、ビレットから素管を製造してもよい。たとえば、鋼材がカップリングのように短尺の厚肉鋼管の場合、エルハルト法等の鍛造により素管を製造してもよい。以上の工程により素管が製造される。素管の肉厚は特に限定されないが、たとえば、9~60mmである。
鋼材が丸鋼の場合、初めに、素材を加熱炉で加熱する。加熱温度は特に限定されないが、たとえば、1100~1300℃である。加熱炉から抽出された素材に対して熱間加工を実施して、軸方向に垂直な断面が円形の中間鋼材を製造する。熱間加工はたとえば、分塊圧延機による分塊圧延、又は、連続圧延機による熱間圧延である。連続圧延機は、上下方向に並んで配置された一対の孔型ロールを有する水平スタンドと、水平方向に並んで配置された一対の孔型ロールを有する垂直スタンドとが交互に配列されている。鋼材が鋼板の場合、初めに、素材を加熱炉で加熱する。加熱温度は特に限定されないが、たとえば、1100~1300℃である。加熱炉から抽出された素材に対して、分塊圧延機、及び、連続圧延機を用いて熱間圧延を実施して、鋼板形状の中間鋼材を製造する。
熱間加工により製造された中間鋼材は、空冷されてもよい(As-Rolled)。熱間加工により製造された中間鋼材は、常温まで冷却せずに、熱間加工後に直接焼入れを実施してもよく、熱間加工後に補熱(再加熱)した後、焼入れを実施してもよい。熱間加工後に直接焼入れ、又は、補熱した後焼入れを実施する場合、焼入れ途中に冷却の停止、又は、緩冷却を実施してもよい。この場合、素管に焼割れが発生するのを抑制できる。熱間加工後に直接焼入れ、又は、補熱した後焼入れを実施する場合さらに、焼入れ後であって次工程の熱処理前に、応力除去焼鈍(SR)を実施してもよい。この場合、素管の残留応力が除去される。
以上のとおり、準備工程では中間鋼材を準備する。中間鋼材は、上述の好ましい工程により製造されてもよく、第三者により製造された中間鋼材、又は、後述の焼入れ工程及び焼戻し工程が実施される工場以外の他の工場、他の事業所にて製造された中間鋼材を準備してもよい。以下、熱処理工程について詳述する。
[焼入れ工程]
焼入れ工程では、熱間加工工程で製造された中間鋼材に対して、焼入れを実施する。焼入れは周知の方法で実施する。具体的に、熱間加工工程後の中間鋼材を熱処理炉に装入し、焼入れ温度で保持した後、急冷(焼入れ)してもよい。この場合、焼入れ工程にて中間鋼材を加熱するための熱処理炉の温度(℃)を、焼入れ温度ともいう。
焼入れ温度が低すぎれば、中間鋼材の加熱が不足して、製造されたステンレス鋼材において、上述のミクロ組織とならない場合がある。一方、焼入れ温度が高すぎれば、フェライトの体積率が高くなりすぎ、優れた低温靭性が得られない場合がある。したがって、本実施形態では、好ましい焼入れ温度は850~1150℃である。焼入れ温度での保持時間は特に限定されないが、たとえば、5~80分である。
焼入れ工程における急冷方法は特に制限されないが、たとえば、水冷である。中間鋼材が素管の場合、たとえば、水槽又は油槽に浸漬して素管を急冷してもよく、シャワー冷却又はミスト冷却により、素管の外面及び/又は内面に対して冷却水を注いだり、噴射したりして、素管を急冷してもよい。
なお、熱間加工工程後、中間鋼材を常温まで冷却することなく、熱間加工直後に焼入れ(直接焼入れ)を実施してもよく、熱間加工後の素管の温度が低下する前に補熱炉に装入して焼入れ温度に保持した後、焼入れを実施してもよい。
[焼戻し工程]
焼入れ後の中間鋼材に対してさらに、焼戻し工程を実施する。焼戻し工程では、中間鋼材を熱処理炉に装入して、焼戻し温度で保持することで、鋼材の降伏強度を調整する。このとき、焼戻し工程にて中間鋼材を加熱するための熱処理炉の温度(℃)を、焼戻し温度ともいう。
焼戻し温度が低すぎれば、強度が高くなりすぎ、耐SSC性及び低温靭性が低下する場合がある。一方、焼戻し温度が高すぎれば、所望の降伏強度が得られない場合がある。したがって、本実施形態では、好ましい焼戻し温度は550~700℃である。焼戻し温度での保持時間は特に限定されないが、たとえば、10~180分である。化学組成に応じて焼戻し温度を適宜調整することにより、鋼材の降伏強度を調整可能であることは当業者に周知である。そこで、鋼材の降伏強度が758MPa以上となるように焼戻し条件を調整する。
以上の工程により、本実施形態によるステンレス鋼材を製造することができる。なお、上述のとおり、本実施形態によるステンレス鋼材は、上述の製造方法に限定されない。以下、実施例によって本実施形態によるステンレス鋼材を、さらに具体的に説明する。
表1A、表1B及び表1Cに示す化学組成を有する溶鋼を、50kgの真空溶解炉を用いて溶製し、造塊法により鋼塊(インゴット)を製造した。なお、表1B及び表1C中の「-」は、該当する元素の含有量が不純物レベルであったことを意味する。たとえば、試験番号1のW含有量及びV含有量は、小数第三位を四捨五入して、0%であったことを意味する。同様に、試験番号1のREM含有量、Ti含有量、Nb含有量、及び、Zr含有量は、小数第四位を四捨五入して、0%であったことを意味する。同様に、試験番号1のAs含有量、Sb含有量、Ca含有量、Mg含有量、B含有量、Zn含有量、及び、Pb含有量は、小数第五位を四捨五入して、0%であったことを意味する。
Figure 0007678375000001
Figure 0007678375000002
Figure 0007678375000003
各試験番号のインゴットを1200~1250℃で2時間加熱した後、熱間加工を実施して、肉厚25.4mm、外径177.8mmの中間鋼材(素管)を製造した。各試験番号の中間鋼材に対して、焼入れ工程と、焼戻し工程とを実施した。具体的に、各試験番号の中間鋼材を910℃で15分だけ保持した後、急冷する焼入れを実施した。その後、各試験番号の中間鋼材を580~680℃で30~60分保持する焼戻しを実施した。以上の製造工程により、各試験番号の継目無鋼管を製造した。
[評価試験]
得られた各試験番号の継目無鋼管に対して、引張試験と、ミクロ組織観察試験と、耐SSC性試験と、シャルピー衝撃試験とを実施した。
[引張試験]
各試験番号の継目無鋼管に対して、ASTM E8/E8M(2022)に準拠して、引張試験を実施した。具体的には、各試験番号の継目無鋼管の肉厚中央部から、平行部径が8.9mm、標点距離が35.6mmの丸棒引張試験片を作製した。丸棒引張試験片の長手方向は、鋼板の圧延方向と平行であった。各試験番号の丸棒引張試験片を用いて、常温(24±3℃)、大気中にて引張試験を実施して、0.2%オフセット耐力(MPa)を求めた。求めた0.2%オフセット耐力を降伏強度YS(MPa)と定義した。得られた各試験番号の降伏強度YSを、表2の「YS(MPa)」欄に示す。
Figure 0007678375000004
表1A~表1Cに記載の化学組成と、表2に記載の降伏強度YSと、上述の定義とから、各試験番号の継目無鋼管について、Fn1(=(Sn+As+Sb)/{(Cu+Ni)/YS})を求めた。得られた各試験番号のFn1を、表2に示す。さらに、表1A~表1Cに記載の化学組成と、上述の定義とから、各試験番号の継目無鋼管について、Fn2(=(Ni+2Co)/Sn)を求めた。得られた各試験番号のFn2を、表2に示す。
[ミクロ組織観察試験]
各試験番号の継目無鋼管に対して、上述の方法でミクロ組織観察試験を実施した。具体的に、上述の方法で実施したX線回折法により残留オーステナイトの体積率(%)を求めた。さらに、上述の方法で実施した、JIS G 0555(2020)に準拠した点算法によりフェライトの体積率(%)を求めた。得られた残留オーステナイトの体積率と、フェライトの体積率とから、マルテンサイトの体積率(%)を求めた。得られた各試験番号のフェライトの体積率を、表2の「フェライト(体積%)」欄に示す。得られた各試験番号の残留オーステナイトの体積率を、表2の「残留γ(体積%)」欄に示す。得られた各試験番号のマルテンサイトの体積率を、表2の「マルテンサイト(体積%)」欄に示す。
[耐SSC性試験]
各試験番号の継目無鋼管に対して、上述の方法で、耐SSC性試験を実施した。具体的に、上述の方法で作製された丸棒試験片3本に対して、NACE TM0177-2016 Method Aに準拠した方法で耐SSC性試験を実施した。なお、試験片の軸方向は、管軸方向に平行であった。各試験番号の丸棒試験片の軸方向に、実降伏応力の90%に相当する引張応力を負荷した。試験溶液は、酢酸でpH2.7に調整した、0.17質量%塩化ナトリウム水溶液を用いた。
3つの試験容器に24℃の試験溶液をそれぞれ注入し、試験浴とした。応力が付加された3本の丸棒試験片を、1本ずつ異なる試験容器の試験浴に浸漬した。各試験浴を脱気した後、0.03atmのHSガスと0.97atmのCOガスとの混合ガスを試験浴に吹き込み、飽和させた。混合ガスが飽和した試験浴を、24℃で720時間保持した。720時間保持後の各試験番号の丸棒試験片に対して、硫化物応力割れ(SSC)の発生の有無を観察した。具体的には、720時間保持後の丸棒試験片を、肉眼で観察した。観察の結果、3本全ての試験片に割れが確認されなかったものを、「E」(Excellent)と判断した。一方、少なくとも1本の試験片に割れが確認されたものを、「NA」(Not Acceptable)と判断した。各試験番号の評価結果を、表2の「耐SSC性」欄に示す。
[シャルピー衝撃試験]
各試験番号の継目無鋼管に対して、JIS Z 2242(2018)に準拠して、シャルピー衝撃試験を実施した。具体的には、上述の方法で、API 5CT(2019)に準拠して、フルサイズのVノッチ試験片を作製した。作製されたVノッチ試験片に対して、JIS Z 2242(2018)に準拠したシャルピー衝撃試験を実施して、-80℃での吸収エネルギー(J)を求めた。得られた各試験番号の-80℃における吸収エネルギーを、表2の「vE(-80℃)(J)」欄に示す。
[評価結果]
表1A、表1B、表1C、及び、表2を参照して、試験番号1~17の継目無鋼管は、化学組成が適切であり、降伏強度が758MPa以上であり、体積率で0~20%のフェライト、0~15%の残留オーステナイト、及び、残部がマルテンサイトからなるミクロ組織を有していた。これらの継目無鋼管はさらに、Fn1が0.15~1.00を満たし、Fn2が900以上を満たしていた。その結果、これらの継目無鋼管は、耐SSC性試験において、優れた耐SSC性を有すると判断された。これらの継目無鋼管はさらに、シャルピー衝撃試験において、-80℃における吸収エネルギーが60J以上となり、極低温環境であっても優れた低温靭性を有すると判断された。
一方、試験番号18は、Mo含有量が低すぎた。その結果、この継目無鋼管は、耐SSC性試験において、優れた耐SSC性を有さないと判断された。
試験番号19は、Ni含有量が低すぎ、Fn2が低すぎた。その結果、この継目無鋼管は、-80℃における吸収エネルギーが60J未満となり、極低温環境における優れた低温靭性を有さないと判断された。
試験番号20は、Ni含有量が低すぎ、Co含有量が低すぎた。さらに、Fn2が低すぎた。その結果、この継目無鋼管は、ミクロ組織中のフェライトの体積率が20%を超え、降伏強度が758MPa未満となった。その結果さらに、この継目無鋼管は、-80℃における吸収エネルギーが60J未満となり、極低温環境における優れた低温靭性を有さないと判断された。
試験番号21は、Sn含有量が高すぎ、Fn2が低すぎた。その結果、この継目無鋼管は、-80℃における吸収エネルギーが60J未満となり、極低温環境における優れた低温靭性を有さないと判断された。
試験番号22は、Sn含有量が低すぎ、Fn1が低すぎた。その結果、この継目無鋼管は、耐SSC性試験において、優れた耐SSC性を有さないと判断された。
試験番号23は、Sn含有量が低すぎた。その結果、この継目無鋼管は、耐SSC性試験において、優れた耐SSC性を有さないと判断された。
試験番号24~26は、Fn1が高すぎた。その結果、これらの継目無鋼管は、耐SSC性試験において、優れた耐SSC性を有さないと判断された。
試験番号27~29は、Fn1が低すぎた。その結果、これらの継目無鋼管は、耐SSC性試験において、優れた耐SSC性を有さないと判断された。
試験番号30~32は、Fn2が低すぎた。その結果、これらの継目無鋼管は、-80℃における吸収エネルギーが60J未満となり、極低温環境における優れた低温靭性を有さないと判断された。
以上、本開示の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本開示を実施するための例示に過ぎない。したがって、本開示は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。

Claims (2)

  1. ステンレス鋼材であって、
    質量%で、
    C:0.050%以下、
    Si:1.00%以下、
    Mn:1.00%以下、
    P:0.050%以下、
    S:0.0050%以下、
    Cr:13.50~16.50%未満、
    Mo:0.50~5.00%、
    Ni:1.00~7.00%、
    Cu:0.01~3.00%、
    Co:0.10~1.50%、
    Sn:0.0005~0.0100%、
    sol.Al:0.005~0.050%、
    N:0.150%以下、
    O:0.0050%以下、
    W:0~1.60%、
    As:0~0.0100%、
    Sb:0~0.0100%、
    Ca:0~0.0050%、
    Mg:0~0.0050%、
    B:0~0.0050%、
    希土類元素:0~0.100%
    V:0~0.50%、
    Ti:0~0.300%、
    Nb:0~0.300%、
    Zr:0~0.200%、
    Zn:0~0.0100%、
    Pb:0~0.0100%、及び、
    残部:Fe及び不純物からなり、
    降伏強度が、758MPa以上であり、
    ミクロ組織が、体積率で0~20%のフェライト、0~15%の残留オーステナイト、及び、残部がマルテンサイトからなり、
    前記元素の含有量と、前記降伏強度とが、式(1)を満たし、
    前記元素の含有量が式(2)を満たす、
    ステンレス鋼材。
    0.15≦(Sn+As+Sb)/{(Cu+Ni)/YS}≦1.00 (1)
    (Ni+2Co)/Sn≧900 (2)
    ここで、式(1)及び(2)中の元素記号には、対応する元素の含有量が単位:質量%で代入される。対応する元素が含有されていない場合、その元素記号には「0」が代入される。また、式(1)中のYSには、降伏強度が単位:MPaで代入される。
  2. 請求項1に記載のステンレス鋼材であって、
    W:0.01~1.60%、
    As:0.0001~0.0100%、
    Sb:0.0001~0.0100%、
    Ca:0.0001~0.0050%、
    Mg:0.0001~0.0050%、
    B:0.0001~0.0050%、
    希土類元素:0.001~0.100%
    V:0.01~0.50%、
    Ti:0.001~0.300%、
    Nb:0.001~0.300%、
    Zr:0.001~0.200%、
    Zn:0.0001~0.0100%、及び、
    Pb:0.0001~0.0100%、からなる群から選択される1元素以上を含有する、
    ステンレス鋼材。
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