以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
図1に本発明の第一実施形態に係る相対回転抑制構造30が適用されるねじ締結機構1を示す。ねじ締結機構1は、第一雌ねじ体100と、第二雌ねじ体101と、雄ねじ体10を備えており、これらによって被締結部材Hを締結する。本実施形態では、第一雌ねじ体100と、この軸方向外側に隣接する第二雌ねじ体101が、所謂ダブルナット構造となって、互いの緩みを防止する。第一雌ねじ体100と第二雌ねじ体101の間に、相対回転抑制構造30が設けられる。
ねじ締結機構1の基本構造について説明する。図5(A)に示すように、雄ねじ体10の雄ねじ部13には、対応した右ねじとして成る雌ねじ状の螺旋条を螺合可能に構成される右ねじと成る第一螺旋溝14と、対応した左ねじとして成る雌ねじ状の螺旋条を螺合可能に構成される左ねじと成る第二螺旋溝15との二種類の雄ねじ螺旋溝が、雄ねじ体10の軸方向における同一領域上に重複して形成される。なお、当該重複部分以外に、一方の向きの螺旋溝が形成されて成る片螺旋溝領域を設けてもよい。
第一螺旋溝14は、これに対応する第一雌ねじ体100の右ねじとして成る雌ねじ状の螺旋条と螺合可能であり、第二螺旋溝15は、これに対応する第二雌ねじ体101の左ねじとして成る雌ねじ状の螺旋条と螺合可能となる。
雄ねじ部13には、図5(C)及び図6(C)に示すように、軸心(ねじ軸)Cに垂直となる面方向において周方向に延びる略三日月状の条状を成すねじ山Gが、雄ねじ部13の直径方向における一方側(図の左側)及び他方側(図の右側)に交互に設けられる。即ち、このねじ山Gは、その稜線が軸に対して垂直に延びており、ねじ山Gの高さは、周方向中央が高くなり、周方向両端が次第に低くなるように変化する。ねじ山Gをこのように構成することで、右回りに旋回する仮想的な螺旋溝構造(図5(A)の矢印14参照)及び左回りに旋回する仮想的な螺旋溝構造(図5(A)の矢印15参照)の二種類の螺旋溝を、ねじ山Gの間に形成することが出来る。
本実施形態では、第一螺旋溝14及び第二螺旋溝15の二種類の雄ねじ螺旋溝を、雄ねじ部13に重畳形成している。従って、雄ねじ部13は、右ねじ及び左ねじの何れの雌ねじ体とも螺合することが可能となる。なお、二種類の雄ねじ螺旋溝が形成された雄ねじ部13の詳細については、本願の発明者に係る特許第4663813号公報を参照されたい。
図4(A)に示すように、第一雌ねじ体100(ここでは説明の便宜上、相対回転抑制構造の図示を省略)の貫通孔部106aには、右ねじとしての第一雌ねじ螺旋条114が形成される。即ち、第一雌ねじ体100の筒状部材106の第一雌ねじ螺旋条114は、雄ねじ体10の雄ねじ部13における第一螺旋溝14と螺合する。図4(B)に示すように、第二雌ねじ体101(ここでは説明の便宜上、相対回転抑制構造の図示を省略)の貫通孔部106aには、左ねじとしての第二雌ねじ螺旋条115が形成される。第二雌ねじ螺旋条115は、雄ねじ体10の雄ねじ部13における第二螺旋溝15と螺合する。
このように、リード角及び/又はリード方向が相異なる二種類の雌ねじ体100、101を、例えば、ダブルナットの如く、雄ねじ体10に螺合させて被締結体を締結すると、互いの雌ねじ体100、101が相対回転しない限り回転緩みし得ないが、その原理について説明する。
図7(A)に示すように、右ねじとなる第一雌ねじ体100を緩み方向(左回り方向)Saに回転させようとすると、第一雌ねじ体100は、被締結部材Hから離れる軸方向Jaに移動しようとする。この第一雌ねじ体100とSa方向に供回りする左ねじとなる第二雌ねじ体101は、被締結部材Hに近づく軸方向Jbに移動しようとする。従って、第一雌ねじ体100と第二雌ねじ体101が軸方向に干渉するので、緩むことができない。
一方、図7(B)に示すように、左ねじとなる第二雌ねじ体101を緩み方向(右回り方向)Sbに回転させようとすると、第二雌ねじ体101は、被締結部材Hから離れる軸方向Jaに移動しようとする。この第二雌ねじ体101とSb方向に供回りする右ねじとなる第一雌ねじ体100は、被締結部材Hに近づく軸方向Jbに移動しようとする。従って、第一雌ねじ体100が(既に締結済みの)被締結部材Hと干渉して、それ以上回転することができない。結果、第二雌ねじ体101が緩むことができない。
結局、図7(C)に示すように、第一雌ねじ体100を回転させずに、左ねじとなる第二雌ねじ体101を緩み方向(右回り方向)Sbで単独に回転させるか、または、第二雌ねじ体101を緩み方向(右回り方向)Sb回転させると同時に、右ねじとなる第一雌ねじ体100を、反対の緩み方向(左回り方向)Saに回転させない限り、このダブルナット構造は回転緩みできない。即ち、第一雌ねじ体100と第二雌ねじ体101を緩めるためには、相対回転することが必須要件となる。
次に、相対回転抑制構造30について説明する。
図1に戻って、相対回転抑制構造30は、第一雌ねじ体100の外側端面100Aに形成される環状突起150と、第二雌ねじ体101の内側端面101Aに形成される、環状突起150を収容する環状凹部160を備える。
第一雌ねじ体100の環状突起150の外周面は、軸方向Jに沿って径方向Kに拡径又は縮径するテーパ面となる。ここでは外周面が軸方向Jの外側(第二雌ねじ体101側)に向かって縮径している。
図8に示すように、第一雌ねじ体100の環状突起150の外周面には、周方向Sに移動するにつれて、軸方向J又は径方向Kに変位する第一(相手側)変位部40が形成される。
この第一変位部40は帯状の突起(又は溝)となっており、図8(A)に示すように、帯の長手方向Lが、周方向Sに移動するにつれて軸方向Jに変位する。同時に、図8(B)に示すように、第一変位部40は、帯の長手方向Lが周方向Sに移動するにつれて径方向Kに変位する。つまり、第一変位部40は軸方向Jと径方向Kの双方に変位する突起となる。
第一変位部40は、周方向に均等間隔で複数形成され、ここでは三十個の第一変位部40が周方向に12°の相対位相差をもって等間隔に形成される。
図9に示すように、第二雌ねじ体101の環状凹部160の内周面は、軸方向Jに沿って径方向Kに拡径又は縮径するテーパ面となる。ここでは、内周面が、軸方向Jの内側(第一雌ねじ体100側)に向かって拡径しており、環状凸部150の外周面と平行な面となる。
この内周面には、第二(ねじ体側)変形許容部50が形成される。この第二変形許容部50は帯状の突起(又は溝)となっており、図9(D)に示すように、突起の帯の長手方向Lが、軸方向Jと略一致する。同時に、第二変形許容部50は、図9(B)に示すように、突起の帯の長手方向Lが径方向Kに変位する。つまり、軸方向Jと径方向Kの双方に変位する突起となる。
この第二変形許容部50は、周方向に均等間隔で複数形成される。ここでは三十個の第二変形許容部50が周方向に12°の相対位相差をもって等間隔に形成される。
図10(B)に示すように、第二変形許容部50は、締結力を利用して、第一雌ねじ体100の第一変位部40に押圧される。結果、自らの一部が径方向外側に凹むように変形し、この変形によって、第二(ねじ体側)変位部60を作出する。なお、図9では、締結前の状態を図示しているので、第二変位部60は作出されていない。
第二雌ねじ体101の第二変形許容部50は、第一雌ねじ体100の第一変位部40と比較して、軟らかい材料で構成される。このようにすると、第二変形許容部50と干渉する第一変位部40が、第二変形許容部50を積極的に変形させることができる。また、第二変形許容部50は、第一変位部40と比較して低剛性に構成される。このようにすると、第一変位部40と当接する第二変形許容部50側が、積極的に弾性変形及び/又は塑性変形できる。なお、本実施形態では、第二雌ねじ体101と比較して、第一雌ねじ体100の全体を高強度材料としている。この際、第一雌ねじ体100では、鉄に対して添加物を付加したり熱処理を施したりして強度を高めた材料を採用することも可能である。また、本実施形態では、第一雌ねじ体100の環状突起150の径方向の肉厚を、第二雌ねじ体101の環状凹部160の径方向の肉厚よりも大きくしている。結果、環状突起150の剛性が、環状凹部160よりも高い。
第二変位部60の凹み形状を画定する対向状の作出面62A、62Bは、径方向Kに所定の幅を有する(変位する)ことは勿論であるが、この作出面62A、62Bは、周方向Sに移動するにつれて軸方向Jにも変位する。即ち、第二変位部60は、径方向K及び軸方向Jの双方に変位する空間となる。なお、ここでは第二変位部60が凹状に変形する場合を例示しているが、凸状に変形させても良い。
なお、図10(B)では、模式的に、帯状突起となる第二変形許容部50が、単一の第一変位部40と交差することで凹み(第二変位部60)を形成する場合を示しているが、実際には、複数の第一変位部40と交差する場合もある。従って、各第二変形許容部50には、複数の第二変位部60が形成される場合もある。
図10(A)に示すように、第二変形許容部50の表面において、複数の第二変位部60が、ねじ体の1ピッチ以上の軸方向範囲(領域)Wに広がって作出される。相対回転の抑制効果を発揮する第二変位部60が、軸方向に1ピッチ以上の広がりを有する範囲に形成されることで、第二雌ねじ体101が、緩み方向に1回転する際に、あらゆる位相において常に、相対回転抑制効果を発揮できる。なお、具体的には3ピッチ以上の軸方向範囲に広がって作出されることが好ましい。この軸方向範囲(領域)Wは、第二変形許容部50と第一変位部40の軸方向の干渉距離Wと定義することもできる。
また、環状凹部160を軸視すると、第二変位部60が周方向に複数、ここでは30個以上作出されることになる。特に、第二変位部60が均等間隔(又は所定周期毎)に形成されるようにすると、複数の第二変位部60の変形時の直径方向の反力が、互いに相殺されるので、第一雌ねじ体100と第二雌ねじ体101の間に、相対的な偏心力が作用することを抑制できる。結果、第一雌ねじ体100と第二雌ねじ体101が、雄ねじ体10に対して、所謂片当たりすることを抑制できる。なお、複数の第二変位部60の周方向の配置間隔がランダムであっても、その数が多ければ、結果として、直径方向の反力が互いに相殺される。
図10(C)に示すように、第二変位部60の相手側となる第一変位部40の帯状の突起は、一対の第一変形付与面42A、42Bを有する。これらの第一変形付与面42A、42Bは、径方向に広がり(幅)を有し、周方向Sと交わるように変位する(つまり、軸方向Jに変位する)
第二変形許容部50は、この第一変形付与面42A、42Bと当接することで、第二変位部60の作出面62A、62Bを作出する。つまり、一方の第一変形付与面42Aと一方の作出面62Aが互いに当接し、他方の第一変形付与面42Bと他方の作出面62Bが互いに当接する。
一方の第一変形付与面42Aは、左ねじとなる第二雌ねじ体101における緩み側(右回転側)の周方向Saに対向す。なお、他方の第一変形付与面42Bは、第二雌ねじ体101における締結側(左回転側)の周方向Sbに対向する。
これらの第一変形付与面42A、42Bは、軸方向Jに向かって、第二雌ねじ体101の1ピッチ以上の範囲で変位する。具体的には、3ピッチ以上の範囲で変位する。このようにすると、この第一変形付与面42A、42Bによって作出される第二変位部60を、軸方向に1ピッチ以上(望ましくは3ピッチ以上)の広がりを有する範囲に形成したり、移動させたりすることができる。
次に、図11を参照して、一方の第一変形付与面42Aの角度について説明する。なお、図11では、一方の第一変形付与面42Aを、径方向内側から外側に向かって視た状態を示す。
第二雌ねじ体101のリード角をβとし、第二雌ねじ体101の緩み側の周方向をSbと定義する。また、第二雌ねじ体101が、緩み側の周方向Saに回転する際に、第二雌ねじ体101が軸方向Jに移動する方向を緩み側軸方向Jaと定義する。そして、以下で説明する「角度」は、緩み側の周方向Saを基準(0°)として、緩み軸方向Ja側に向かう角度を正角と定義する。
第一変形付与面42Aの角度(この角度を変位角Aと定義する)は、第二雌ねじ体101における緩み側のリード角βと異なるようになっている。具体的に本実施形態では、変位角Aを約120°に設定している。
本実施形態において、一方の第一変形付与面42Aの変位角Aの好ましい範囲は、以下の条件を満たす範囲となる(図11の角度範囲P参照)。
β+135°≧A≧β+45°
このようにすると、第二雌ねじ体101が緩み方向(即ち、緩み側リード角βの方向)に回転しようとしても、第一変形付与面42Aが、作出面62Aに対して、周方向とリード方向の双方の移動を阻害する方向に係合するので、より一層、相対回転が抑制されやすい状態となる。
更に、相対回転抑制効果を高めるために、望ましくは、一方の第一変形付与面42Aの変位角Aを以下の範囲とする(図11の角度範囲Q参照)。
135°≧A≧90°
なお、この変位角Aが180°を超えると、第一変形付与面42Aが緩み側の周方向Sbと同方向を向いてしまうので、第二雌ねじ体101が緩み方向に回転することを抑制する効果を発揮しにくくなる。また、図11の角度Xや、角度Yのように、第一変形付与面42Aが、リード角βや、緩み側の周方向Sbに接近する(平行に近づく)と、第二雌ねじ体101の回転抑制効果を発揮しにくくなる。
次に図12を参照して、第二変位部60の移動効果について説明する。なお、図12では、第二変位部60を、径方向内側から外側に向かって視た状態を示す。図12(A)~(C)の遷移に示すように、第一雌ねじ体100に対して、第二雌ねじ体101が、緩み側周方向Sbに回転する場合を仮定すると、第二変形許容部50と第一変位部40の交わる箇所、即ち、第二変位部60が移動する。具体的には、第二雌ねじ体101自身を基準として、第二変位部60が軸方向Jに移動する。
換言すると、第二雌ねじ体101を緩み方向に回転させるためには、第二変位部60を移動させるように第二変形許容部50を変形させる必要があり、相応の外力(エネルギー)が要求される。従って、この変形時の抵抗によって、相対回転が抑制される。勿論、相応の外力(エネルギー)を加えれば、相対回転が可能なので、必要なときに緩めることも可能となる。
また、第二変形許容部50における、第二変位部60の軸方向Jの移動範囲(移動量)を、第二雌ねじ体101の1ピッチ以上、好ましくは複数ピッチ(更に望ましくは3ピッチ以上)に設定することが好ましく、長い距離の回転に対して、相対回転抑制機能を発揮し続けることが可能となる。
なお、第二変位部60が軸方向Jに移動するのは、既に述べたように、第一変形付与面42Aの変位角Aを、リード角βと異ならせているからである。仮に図13に示すように、第一変形付与面42Aの変位角Aが、リード角βと一致する場合、図13(A)~(C)の遷移に示すように、第二変形許容部50と第一変位部40の交わる箇所となる第二変位部60が、第二雌ねじ体101の回転と同時に、リード角βと同じ方向に移動する。結果、第二雌ねじ体101自身を基準にすると、第二変位部60が全く移動しないことになる。
なお、本第一実施形態では、図14(A)に示すように、第二変形許容部50に第二変形部60を形成すると同時に、第一変位部40の長手方向の一部(第二変形許容部50と交差する範囲)も径方向内側に凹んで、補助変位部70を作出している。つまり、第一雌ねじ体100の第一変位部40は、本願発明における「ねじ体側変形許容部」の役割を担っており、締結力を利用して、相手側部材となる第二変形許容部50に押圧することによって、自らの一部が径方向内側に凹むように変形し、この変形によって、補助変位部70を作出する。
従って、この補助変位部70の相手側となる第二変形許容部50は、一対の第二変形付与面52A、52Bを有する。第二変形付与面52A、52Bは径方向に広がり(幅)を有し、周方向Sと交わるように変位する(つまり、軸方向Jに変位する)。
第一変位部(第一変形許容部)40は、この第二変形付与面52A、52Bと当接することで、補助変位部70の作出面72A、72Bを作出する。つまり、一方の第二変形付与面52Aと一方の作出面72Aが互いに当接し、他方の第二変形付与面52Bと他方の作出面72Bが互いに当接する。
一方の第二変形付与面52Aは、右ねじとなる第一雌ねじ体100における締り側(右回転側)の周方向Saに対向する。なお、この締り側(右回転側)は、第二雌ねじ体101側を基準に考えれば、第二雌ねじ体101から離反する方向としての「緩み側」と定義することも可能である。
他方の第二変形付与面52Bは、第一雌ねじ体100における緩み側(左回転側)の周方向Sbに対向する。
これらの第二変形付与面52A、52Bは、軸方向Jに向かって、第一雌ねじ体100の1ピッチ以上の範囲で変位する。具体的には、3ピッチ以上の範囲で変位する。このようにすると、この第二変形付与面52A、52Bによって作出される補助変位部70を、軸方向に1ピッチ以上(望ましくは3ピッチ以上)の広がりを有する範囲に形成したり、移動させたりすることができる。
図14(B)~(D)の遷移に示すように、第二雌ねじ体101に対して第一雌ねじ体100を、締結側周方向Sbに回転する場合(即ち、第一雌ねじ体100を第二雌ねじ体101から軸方向Jbに離反させる場合)を仮定すると、第二変形許容部50と第一変位部40の交わる箇所、即ち、補助変位部70が移動する。具体的には、第一雌ねじ体100自身を基準として、補助変位部70が軸方向Jに移動する。同時に、ここでは第一変位部40が傾斜しているので、第一雌ねじ体100自身を基準として、補助変位部70が周方向Sbにも移動する。
換言すると、第一雌ねじ体100を締結方向に回転させて、第二雌ねじ体101から軸方向に離反させるためには、補助変位部70を移動させるように変形させる必要があり、相応の外力(エネルギー)が要求される。従って、この変形時の抵抗によって、相対回転が抑制される。
上記第一実施形態では、第一変位部40が軸方向Jに対して周方向Sに向かって傾斜しており、第二変形許容部50が軸方向Jと平行となる場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図15に示すように、第二変形許容部50も、軸方向Jに対して周方向Sに傾斜させても良い。第二雌ねじ体101を緩み側周方向Saに相対回転させると、第二雌ねじ体101を基準として、第二変位部60が、軸方向Jと周方向Sの双方向に移動しようとするので、より強い相対回転抑制構造を発揮し得る。
また、図16(A)に示すように、第一変位部40を軸方向Jに対して平行とし、第二変形許容部50側を、軸方向Jに対して周方向Sに傾斜させても良い。この際、周方向の一方に傾斜させる部分と、周方向の他方に傾斜させる部分の双方を有しても良い。更に、図16(A)の応用として、図16(B)に示すように、第一変位部40も、周方向の一方に傾斜させる部分と、周方向の他方に傾斜させる部分の双方を有しても良い。
次に、図17以降を参照して、本発明の第二実施形態に係るねじ締結機構で用いられる相対回転抑制構造30について説明する。なお、相対回転抑制構造30を除いた他の部位・部材は、第一実施形態と同様であるので、ここでの説明を省略する。
図17に示すように、相対回転抑制構造30は、第一雌ねじ体100に形成される環状突起150と、第二雌ねじ体101に形成される、環状突起150を収容する環状凹部160を備える。
図19に示すように、第一雌ねじ体100の環状突起150の外周面は、軸方向Jに沿って径方向Kに拡径又は縮径するテーパ面となる。ここでは外周面が軸方向Jの外側(第二雌ねじ体101側)に向かって縮径している。
図19(B)に示すように、環状突起150の外周面には、周方向Sに移動するにつれて、径方向Kに変位する第一(相手側)変位部40が形成される。この第一変位部40は、軸方向から視た場合、回転中心と同軸となる仮想正円M(仮想正円錐)の部分円弧M1に対して、径方向Kの外側に凸となる突起となる。従って、第一変位部40の突出部分の外周面の曲率は、仮想正円Mの曲率よりも小さくなる。また、環状突起150の外周面を軸方向から視た場合の曲率中心は、常に、外周面の内側(又は仮想正円Mの内側)に位置している。即ち、第一変位部40の外周面の曲率は、周方向に沿って正負が反転しないように設定される。このようにすると、図18に示すように、環状突起150の外周面は、径方向外側に凸状となるか、少なくとも仮想正円Mと外接する平坦面となるので、第二雌ねじ体101において弾塑性変形する第二変形許容部50に対して、全周に亘って密着することができる。結果、高い摩擦力が発揮されて、高い相対回転抑制効果を得ることができる。
なお、本実施形態では、第一変位部40の各突起が周方向に120°の位相範囲を占めており、三個の第一変位部40が、周方向に均等配置される。結果として、環状突起150を軸視すると、角丸の正三角形となっており、隣接する一対の第一変位部40の仮想的な境界40Xは、直線状の平面となっている。なお、本発明はこれに限定されず、角丸の正四角形、正五角形等、様々な形状を採用できる。
なお、第一変位部40は、軸方向Jに向かって延びている。第一変位部40の軸直角方向の断面形状は、環状突起150の突端側が小さくなり、基端側が大きくなる相似形となる。また、環状突起150の外周面の外周長は、基端側が最も大きいR1となり、突端側が最も小さいR3となり、その中間がR2となる(R1>R2>R3)。なお、この第一変位部40の部分円弧形状の外表面は、周方向Sに移動するにつれて径方向Kに変位することになる。
図20に示すように、第二雌ねじ体101の環状凹部160の円錐内周面(円筒面)は、正円形状であり、かつ、軸方向Jに沿って径方向Kに拡径又は縮径するテーパ面となる。ここでは内周面が、第一雌ねじ体100側に向かって拡径しており、環状突起150の外周面と平行になる。この内周面は平滑面となる。内周面の内周長は、突端側が最も大きいE1となり、基端が最も小さいE3となり、その中間がE2となる(E1>E2>E3)。これらの内周長E1、E2、E3を、環状突起150の外周面の外周長R1、R2、R3と比較すると、以下の条件を満たす。
R1≧E1>R2≧E2>R3≧E3(図17(E)参照)
つまり、後述する図17(E)(F)及び図18に示すように、環状突起150と環状凹部160が最終的に嵌合(フィット)した状態において、軸方向に一致する場所の環状突起150の外周長と、環状凹部160の内周長が、ほぼ等しくなる。つまり、この設定にすると、環状凹部160の第二変形許容部50は、弾性変形及び/又は塑性変形(弾塑性変形)しないと、環状突起150の第一変位部40を受け入れることができない。換言すると、図18(A)に示すように、第二変形許容部50は、変形前の内周面となる仮想正円Zに対して、径方向内側に変形する領域と、径方向外側に変形する領域の双方を同時に有することなる。この弾塑性変形によって、相対回転を効果的に抑止する構造となっている。
本第二実施形態では、図17に示すように、この環状凹部160全体が、第二(ねじ体側)変形許容部50となる。従って、第一雌ねじ体100と第二雌ねじ体101が互いに接近する際の締結力を利用して、この第二変形許容部50は、第一雌ねじ体100の第一変位部40に押圧することで、自らの一部が径方向外側に凹むように変形し、この変形によって、第二(ねじ体側)変位部60を作出する。なお、図20では、締結前の状態を図示しているので、第二変位部60は作出されていない。
第二雌ねじ体101の第二変形許容部50は、第一雌ねじ体100の第一変位部40と比較して、軟らかい材料で構成される。また、第二変形許容部50は、第一変位部40と比較して低剛性に構成される。このようにすると、第一変位部40が、第二変形許容部50を積極的に外側に押し広げるように変形する(図17(D)参照)。結果、第一変位部40の外周面の形状と、第二変形許容部50の内周面の形状がほとんど一致する(図17(E)参照)。この際、第一変位部40と当接する第二変形許容部50側が、積極的に弾性及び/又は塑性変形する。なお、ここでは第二変位部60が径方向外側に凹状に変形する場合を例示しているが、径方向内側に変形させても良い。
図18に示すように、変形後の第二変位部60の凹み形状を画定する一対の作出面62A、62Bは、径方向Kの幅を有する(変位する)。また、この作出面62A、62Bは、軸方向Jに延びる。結果、図17(E)に示すように、第二変形許容部50の表面において、第二変位部60が、ねじ体の1ピッチ以上の軸方向範囲(領域)Wに広がって作出される。結果、第二雌ねじ体101が、緩み方向に1回転する際に、あらゆる位相において常に、相対回転の抑制効果を発揮できる。なお、具体的には3ピッチ以上の軸方向範囲に広がって作出されることが好ましい。この軸方向範囲(領域)Wは、第二変形許容部50と第一変位部40の軸方向の干渉距離Wと定義することもできる。
また、環状凹部160を軸視すると、第二変位部60が周方向に均等間隔で三か所に作出される。このようにすると、第二変位部60の変形時の直径方向反力が、互いに相殺されるので、第一雌ねじ体100と第二雌ねじ体101の間に、互いに偏心力が作用することを抑制できる。
図18(A)に示すように、第二変位部60の相手側となる第一変位部40は、一対の第一変形付与面42A、42Bを有する。第一変形付与面42A、42Bは、径方向Kに
広がり(幅)を有すると同時に、軸方向Jと略平行に延びることで、周方向Sと交わる。
第二変形許容部50は、この第一変形付与面42A、42Bと当接することで、第二変位部60の作出面62A、62Bを作出する。つまり、一方の第一変形付与面42Aと一方の作出面62Aが互いに当接し、他方の第一変形付与面42Bと他方の作出面62Bが互いに当接する。
一方の第一変形付与面42Aは、左ねじとなる第二雌ねじ体101における緩み側(右回転側)の周方向Saに対向する。なお、他方の第一変形付与面42Bは、第二雌ねじ体101における締結側(左回転側)の周方向Sbに対向する。
これらの第一変形付与面42A、42Bは、軸方向Jに向かって、第二雌ねじ体101の1ピッチ以上の範囲で変位する。具体的には、3ピッチ以上の範囲で変位する。このようにすると、この第一変形付与面42A、42Bによって作出される第二変位部60を、軸方向に1ピッチ以上(望ましくは3ピッチ以上)の広がりを有する範囲に形成することができる。
図18(B)に示すように、第一雌ねじ体100に対して、第二雌ねじ体101が、緩み側周方向Sbに相対回転する場合を考えると、第二雌ねじ体101自身を基準として、第二変位部60が、締り側周方向Saに移動する。換言すると、第二雌ねじ体101を緩み方向に回転させるためには、第二変位部60を移動させるように第二変形許容部50を変形させる必要があり、相応の外力(エネルギー)が要求される。従って、この変形時の抵抗によって、相対回転が抑制される。
なお、本第二実施形態では、第一雌ねじ体100における第一変形付与面42A、42Bが、軸方向Jと略平行に延びる場合を例示しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、図21に示すように、第一変形付与面42A、42Bが、軸方向Jに沿って周方向に捩じれるような状態で形成しても良い。具体的には、環状突起150の基端側から突端側に向かって、第一変位部40の部分円弧(部分楕円弧)の位相が、第二雌ねじ体101の締結側(左回転側)の周方向Sbに次第に変位するように形成する。このようにすると、第一実施形態と同様に、一方の第一変形付与面42Aが、軸方向Jに対して傾斜することになり、第二雌ねじ体101が緩み方向に回転しようとしても、第一変形付与面42Aが、作出面62Aの移動を阻害する方向に係合するので、相対回転が一層抑制されやすい状態となる。勿論、第一変形付与面は、必ずしもねじ軸直角方向に対して傾斜していなければならないというものではなく、ねじ軸直角方向に対して平行な周上の条状を成すものであってもよい。
本第二実施形態の変形例として、図22A(A)に示すように、第一雌ねじ体100の環状突起150の外周近傍における基端側に、軸方向ストッパ部154を形成しても良い。この軸方向ストッパ部154は、第二雌ねじ体101の環状凹部160の突端と当接して、第一雌ねじ体100と第二雌ねじ体101の軸方向の接近距離を規定する。同様に、図22A(B)に示すように、第二雌ねじ体101の環状凹部160の内周近傍における基端側に、軸方向ストッパ部164を形成しても良い。この軸方向ストッパ部164は、第一雌ねじ体100の環状突起150の突端と当接して、第一雌ねじ体100と第二雌ねじ体101の軸方向の接近距離を規定する。
このようにすると、図22A(B)に示すように、締結時において、環状凹部160の第二変形許容部50が、環状突起150の第一変位部40を軸方向に受け入れる量(軸方向の干渉距離W)を、一定値に規定(制限)することが可能となり、相対回転抑制効果を安定させることができる。この際、環状凹部160の第二変形許容部50の最大の軸方向寸法をBとする場合、干渉距離Wは、最大の軸方向寸法Bよりも小さく設定することが望ましい。このようにすると、第二変形許容部50の基端側に、軸方向の余裕空間Nを確保することができる。余裕空間Hによって、第二変形許容部50の基端側が、余裕をもって径方向に弾塑性変形することができるので、環状突起150を内部に受け入れて互いに干渉する際に、第二変形許容部50の基端側が極度に塑性変形して損傷する事態を抑制できる。
なお、ここでは、第一雌ねじ体100又は第二雌ねじ体101に、一体的に軸方向ストッパ部154、164を形成する場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、軸方向ストッパ部を環状リング等の別部材として、第一雌ねじ体100と第二雌ねじ体101の間に介在させることで、両者の接近距離(最少接近距離)を一定に保つようにしても良い。
また、ここでは、環状突起150の外周と環状凹部160の内周に、連続的に軸方向ストッパ部154、164を形成する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図22B(A)に示すように、第一雌ねじ体100の環状突起150から離れた外周側に、環状の第一軸方向ストッパ部154を独立して形成し、図22B(B)に示すように、第二雌ねじ体101の環状凹部160から離れた外周側に、環状の第二軸方向ストッパ部164を独立して形成しても良い。
図22B(C)に示すように、第一軸方向ストッパ部154の座面と第二軸方向ストッパ部164座面を互いに当接させることで、第一雌ねじ体100と第二雌ねじ体101の軸方向の接近距離を規定する。
このようにすると、第一軸方向ストッパ部154と第二軸方向ストッパ部164の存在によって、環状突起150や環状凹部160の剛性が変化しない。結果、第一軸方向ストッパ部154と第二軸方向ストッパ部164の当接前後に亘って、第二変形許容部50の基端側を、余裕をもって径方向に弾塑性変形させることができる。また、第一軸方向ストッパ部154と第二軸方向ストッパ部164を環状にすることで、当接時の面圧に対する耐久性を高めることが出来る。なお、第一軸方向ストッパ部154と第二軸方向ストッパ部164のそれぞれの軸方向高さは特に限定されず適宜設定できる。また、第一軸方向ストッパ部154の高さを0(不存在)にして、第二軸方向ストッパ部164のみを形成しても良く、反対に、第二軸方向ストッパ部164の高さを0(不存在)にして、第一軸方向ストッパ部154のみを形成しても良い。
なお、第二実施形態では、第一雌ねじ体100の環状突起150の外周面の形状が、角丸正三角形となる場合を例示したが、例えば図23(A)に示すように、定幅図形形状としても良い。定幅図形の場合、図形両側から外接する二本の平行線の距離が、常に一定の距離(即ち直径が常に一定)となる図形であり、代表的なものとしてルーローの三角形等がある。この定幅図形の外周長と、第二変形許容部50の内周長をほぼ一致させておくことで、弾塑性変形後、全周に亘って互いを密着させることができる。
また例えば、図23(B)に示すように、隣接する一対の第一変位部40の境界において、径方向Kの内側に凹む谷部40Yを形成するようにして、環状突起150と環状凹部160の間に積極的に隙間を形成するようにしても良い。
なお、第二実施形態では、第一雌ねじ体100の環状突起150の外周面に、部分円弧形状の突起を形成する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図24に示す第一雌ねじ体100のように、環状突起150の外周面に、ドット状の微細突起を形成し、これを第一変位部40としても良い。
更に、第一及び第二実施形態では、環状突起150の外周に形成される環状のテーパ面に、第一変位部40を形成する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図25(A)に示すように、第一雌ねじ体100の軸方向Jに対して直行する平面、即ち、第一雌ねじ体100の軸方向端面において、第一変位部40を形成しても良い。ここでは、第一変位部40として、径方向に伸びる帯状の突起を、周方向に複数形成している。図25(B)に示すように、第二雌ねじ体101においても、軸方向Jに対して直行する平面、即ち、第二雌ねじ体101の軸方向端面において、第二変形許容部50を形成する。ここでは、第二変形許容部50として、周方向に伸びる帯状の突起を形成している。特にここでは、周方向に伸びる帯状の突起が、径方向に蛇行するように配置されている。
第一雌ねじ体100と第二雌ねじ体101の互いの軸方向端面を当接させると、図25(C)に示すように、第二変形許容部50において、第一変位部40と交差する部分に第二変位部60が形成される。第二雌ねじ体101を、緩み側周方向Saに相対回転させると、第二変位部60が、第二変形許容部50の長手方向に沿って周方向に移動すると同時に、径方向にも移動する。換言すると、第二雌ねじ体101を緩み方向に回転させるためには、第二変位部60を移動させるように第二変形許容部50を変形させる必要があり、相応の外力(エネルギー)が要求される。従って、この変形時の抵抗によって、相対回転が抑制される。
なお、図26に示すように、図25(A)の第一雌ねじ体と第二雌ねじ体を反転させて、第一雌ねじ体100の軸方向端面において、第一変位部40として、周方向に伸びて径方向に蛇行する帯状の突起を形成し、第二雌ねじ体101の軸方向端面において、第二変形許容部50として、径方向に伸びる帯状の突起を、周方向に複数形成しても良い。図26(B)に示すように、第一雌ねじ体100と第二雌ねじ体101の互いの軸方向端面を当接させると、第二変形許容部50において、第一変位部40と交差する部分に第二変位部60が形成される。第二雌ねじ体101を、緩み側周方向Saに相対回転させると、第二変位部60が、第二変形許容部50の径方向Kに沿って移動する。換言すると、第二雌ねじ体101を緩み方向に回転させるためには、第二変位部60を径方向Kに移動させるように第二変形許容部50を変形させる必要があり、相応の外力(エネルギー)が要求される。従って、この変形時の抵抗によって、相対回転が抑制される。
以上の実施形態群における、雄ねじ体10、第一雌ねじ体100及び第二雌ねじ体101では、第一螺旋溝14及び第一雌ねじ螺旋条114の対と、第二螺旋溝15及び第二雌ねじ螺旋条115の対とが、互いに逆ねじの関係(リード角が同じでリード方向が反対)となっている場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図27に示すように、リード方向(L1、L2)が同じで、リード角が異なる第一螺旋溝14及び第一雌ねじ螺旋条114と、第二螺旋溝15及び第二雌ねじ螺旋条115を採用することもできる。この場合、第一螺旋溝14に対して、更にリード角の異なる螺旋溝を重畳形成することにより、リードがL1(リード角α1)の第一螺旋溝14及びリードがL2(リード角がα2)の第二螺旋溝15が、ねじ方向を揃えて形成される。この場合は、第一螺旋溝14の第一ねじ山G1と、第二螺旋溝15の第二ねじ山G2は、共有されずに別々となる。
また、上記実施形態群では、共通の雄ねじ体10に対して、第一雌ねじ体100と第二雌ねじ体101を螺合させる、所謂ダブルナット構造の場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図28(A)に示すように、第二雌ねじ体101にとっての相手側部材が、被締結部材Hとなる場合も含む。この場合、第二雌ねじ体101と被締結部材Hの間に、相対回転抑制構造30を形成する。
具体的には、第一雌ねじ体の代わりとして、被締結部材Hの外側端面に環状突起150を形成し、この環状突起150に第一(相手側)変位部40を形成すればよい。また、第二雌ねじ体101にとっての相手側部材は、被締結部材Hに限定されず、ワッシャ等の座体や、雄ねじ体の頭部や軸部などであってもよい。
例えば、図28(B)に示すように、第二雌ねじ体101にとっての相手側部材が、ワッシャ等の座体200となる場合も含み、第二雌ねじ体101と座体200の間に、相対回転抑制構造30を形成する。この場合、特に図示しないが、座体200の外周の形状を、非正円(例えば六角形)や偏心円等に構成し、この座体200を、非締結部材Hに形成される凹部に収容することで、座体200と非締結部材Hの相対回転を機械的に防止しておくことも好ましい。
また上記実施形態群では、雌ねじ体に相対回転抑制構造30を形成する場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、図29(A)に示すように、雄ねじ体10の頭部20と相手部材(非締結部材H)との間に、相対回転抑制構造30を形成しても良い。なお、例えば、図29(B)に示すように、第一雌ねじ体100と座体200の間に、相対回転抑制構造30を形成しても良い。
更にまた、上記実施形態群では、ねじ体(雄ねじ体及び/又は雌ねじ体)側に、相手側変位部を受け入れて変形するねじ体側変形許容部を形成する場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、これらの関係を反転させることもできる。例えば、ねじ体(雄ねじ体及び/又は雌ねじ体)側に、軸方向又は径方向に変位するねじ体側変位部を形成しておき、一方、相手側部材(例えば、被締結部材Hや座体)に、ねじ体側変位部が押圧されることによって自らが変形し、軸方向又は径方向に変位する相手側変位部を作出する相手側変形許容部を形成しても良い。具体的には、図30に示すように、雄ねじ体10の頭部20に、被締結部材H側に凸となる環状突起250を形成し、被締結部材Hに環状凹部260を形成する。雄ねじ体10の環状突起250の外周面には、周方向に移動するにつれて、軸方向又は径方向に変位するねじ体側変位部40Pを形成する。このねじ体側変位部40Pの形状や構造は、上記実施形態群で説明した相手側変位部40と同等のものを適用できる。また、被締結部材Hに環状凹部260の内周面には、相手側変形許容部50Pが形成される。この相手側変形許容部50Pの構造は、上記実施形態群で説明したねじ体側変形許容部50と同等のものを適用できる。
上記第一及び第二実施形態の相対回転(移動)抑制構造は、ねじ体の相対回転を抑制する場合について例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ねじ体以外の第一部材と第二部材を係合させて、両者の相対移動(相対回転を含む)を抑制するようにしても良い。
図31に、第三実施形態の相対移動抑制構造230が適用される係合機構235を示す。この係合機構235は、第一部材200と第二部材201を備える。本実施形態では、第一部材200に第一面200Aが形成され、第二部材201に第二面201Aが形成され、両者を対向させて互いに当接乃至圧接させると、相対移動抑制構造230が作出されて、第一部材200と第二部材201の面方向の相対移動が抑制される。従って、所謂滑り止めやブレーキ、位置決め機構等で用いることができる。なお、本実施形態では、第一面200A及び第二面201Aが、平面となるが、本発明はこれに限定されず、曲面や折れ面、或いは凹凸面であっても良い。
相対移動抑制構造230は、第一部材200の第一面200Aに形成される第一条部となる第一列状突起250と、第二部材201の第二面201Aに形成される、第二条部となる第二列状突起260を備える。
第一列状突起250は、第一面200Aの特定の面方向となる第一基準面方向N1に移動するにつれて、面垂直方向L1に変位する。この第一列状突起250を、相手側となる第二列状突起260に押圧することで、第二列状突起260を変形させる。この第一列状突起250は、第一基準面方向N1に対して直角となる面方向(ここでは第一条延在方向M1と呼ぶ)に延びる峰状の突起となっている。第一列状突起250は、第一基準面方向N1に沿って均等間隔の並列状態で複数形成される。
第二列状突起260は、第二面201Aの特定の面方向となる第二基準面方向N2に移動するにつれて、面垂直方向L2に変位する。この第二列状突起260を、相手側となる第一列状突起250に押圧することで、第一列状突起250を変形させる。この第二列状突起260は、第二基準面方向N2に対して直角となる面方向(ここでは第二条延在方向M2と呼ぶ)に延びる峰状の突起となっている。第二列状突起260は、第二基準面方向N2に沿って、均等間隔に並列状態で複数形成される。
なお、第一部材200と第二部材201が当接状態となる際、第一列状突起250が延びる第一条延在方向M1と、第二列状突起260が延びる第二条延在方向M2は、互いに角度を有するようになっており、ここでは90°に設定される。従って、第一列状突起250と第二列状突起260は、平面視すると、互いの峰同士が接触する交差部分238が存在する。
第一列状突起250の全部又は一部は、第二列状突起260に押圧されることで、自らが凹むように変形する第一変形許容部80を兼ねる。具体的に、この第一変形許容部80は、第二列状突起260との交差部分238において、図32(A)に示すように、自らの一部が面垂直方向L1に凹むように変形し、この変形によって、第一変位部90を作出する。従って、第一変形許容部80は、第一列状突起250の少なくとも突端(稜面)の長手方向に沿って形成されることになる。
交差部分238は、第一列状突起250と第二列状突起260が、格子状に交差する部分となる。従って、複数の交差部分238は、規則性をもって面状に点在する。具体的に複数の交差部分238は、図31(C)に示すように、複数の第一列状突起250が並列する第一規則性と、複数の第二列状突起260が並列する第二規則性の双方を満たす配置となる。なお、図31(A)では、係合前の状態を図示しているので、第一変位部40は作出されていない。
第一変形許容部80は、例えば、第二部材201の第二列状突起260と比較して、軟らかい材料で構成されていてもよい。このようにすると、第二列状突起260と干渉する第一変形許容部80が、自ら積極的に凹むことで第一変位部90が作出される。また、第一変形許容部80は、第二列状突起260と比較して低剛性に構成されても良い。このようにすると、第二列状突起260と干渉する第一変形許容部80が、積極的に弾性変形及び/又は塑性変形できる。例えば、第一部材100と比較して、第二部材201の全体を高強度材料としてもよい。この際、第二部材201では、鉄に対して添加物を付加したり熱処理を施したりして強度を高めた材料を採用することも可能である。
また、特に図示しないが、第二列状突起260の突端面の幅(つまり、列状突起の幅)を、第一列状突起250の同幅よりも大きくしてもよい。このようにすると、第二列状突起260の剛性が、第一列状突起250よりも高くなるので、第一列状突起250側を積極的に凹ませることができる。
なお、図32は、単一の列状突起の部分拡大図であり、単一の列状(帯状)突起となる第一変形許容部80が、単一の第二列状突起260と交差することで、単一の凹み(第一
変位部90)が作出される場合を示している、しかし実際には、複数の第二列状突起260と交差するので、第一変形許容部80の長手方向に沿って、複数の第一変位部90が間隔を空けて作出される。
また、図31(C)に示すように、第一面200Aにおいて、複数の第一変位部90(交差部分238)が、面状に広がって点在する。従って、第一部材200と第二部材200Aの相対位置がずれたとしても、第一列状突起250が伸びる方向と、第二列状突起260が延びる方向が異なっている限り、常に、相対移動抑制効果を発揮できる。なお、複数の第一変位部90の点在間隔がランダムであっても、その数が多ければ、常に相対移動規制効果を安定して発揮できる。
図32(A)に示すように、第一変位部90の凹み形状を画定する対向状の第一作出面92A、92Bは、第一列状突起250の高さ方向及び幅方向に広がる(変位する)面となる。換言すると、第一作出面92A、92Bは、第二列状突起250の側面が延びる方向と一致又は平行する平面となる。
また、第一作出面92A、92Bは、第二列状突起250の側面と係合するので、この係合方向K1における第一部材200と第二部材201の面方向の相対移動が規制される。この係合方向K1(相対移動の規制方向)は、第一作出面92A、92Bに対して角度を有する方向となり、具体的には、第一作出面92A、92Bに対する面垂直方向となる。
一方、第一変位部90の相手側となる第二列状突起260は、両側面において、一対の第二変形付与面260A、260Bを有する。
第一変形許容部80は、この第二変形付与面260A、260Bに押しのけられるように凹むことで、第一作出面92A、92Bが作出される。つまり、一方の第二変形付与面260Aと一方の第一作出面92Aが互いに当接し、他方の第二変形付与面260Bと他方の第一作出面92Bが互いに当接する。
次に図33を参照して、第一変位部90の移動効果について説明する。なお、ここでは第一変位部90を平面視した状態を示す。図33(A)~(C)の遷移に示すように、第一変位部90と第二列状突起260の係合状態に抗して、強引に、第一部材200と第二部材201を、第二列状突起260が延びる第二条延在方向M2と異なる方向F1に相対移動する場合を仮定する。この際、第一列状突起250と第二列状突起260の交差部分に形成される第一変位部90が、第一部材200を基準として移動する。具体的には、第一列状突起250の突端の長手方向(第一条延在方向M1)に沿って、第一変位部90(凹み)が移動する。
より詳細には、第一列状突起250に形成される凹みが、弾性変形又は塑性変形を繰り返しながら、長手方向に移動する。この弾性変形又は塑性変形の変形抵抗が、第一部材200と第二部材201の相対移動の規制力となる。
換言すると、第一部材200と第二部材201を、F1方向に相対移動させるためには、第一変位部90を移動させるように第一変形許容部80を変形させる必要があり、相応の外力(エネルギー)が要求される。従って、この変形時の抵抗によって、相対移動が抑制される。勿論、相応の外力(エネルギー)を加えれば、第一変位部90の移動が可能なので、必要なときに、相対移動させることも可能となる。
因みに、第一部材200と第二部材201の相対移動方向F1が、第二条延在方向M2と一致する場合、第一変位部90は、その相対移動を規制することができない。従って、第二条延在方向M2に沿う相対移動については、後述する第二変位部60が規制する構造となる。
更に本実施形態では、図32(B)に示すように、第一変形許容部90に対して第一変形部90が作出されると同時に、第二列状突起260にも、共通の交差部分238において、突起の高さ方向に凹む第二変位部60が作出される。つまり、第二部材201の第二列状突起260は、その全部又は一部が、第二変形許容部50となっており、相手側部材となる第一列状突起250から押圧されることによって、自らの一部が径方向内側に凹むように変形し、この変形によって第二変位部60を作出する。
第二変位部60の相手側となる第一列状突起250は、両側面において、一対の第一変形付与面250A、250Bを有する。
一方、第二変形許容部50は、この第一変形付与面250A、250Bに押しのけられるように凹むことで、第二作出面72A、72Bを作出する。つまり、一方の第一変形付与面250Aと一方の第二作出面72Aが互いに当接し、他方の第二変形付与面250Bと他方の第二作出面72Bが互いに当接する。結果、係合方向K2における第一部材200と第二部材201の面方向の相対移動が規制される。
次に図34を参照して、第二変位部60の移動効果について説明する。なお、ここでは、第二変位部60を、平面視した状態を示す。図34(A)~(C)の遷移に示すように、第二変位部60と第一列状突起250の係合状態に抗して、強引に、第一部材200と第二部材201を、第一条延在方向M1と異なるF2方向に相対移動する場合を仮定する。この際、第一列状突起250と第二列状突起260の交差部分に形成される第二変位部60が、第二部材201を基準として移動する。具体的には、第二列状突起260の突端の長手方向に沿って、第二変位部60(凹み)が移動する。
より詳細には、第二列状突起260に形成される凹みが、弾性変形及び/又は塑性変形を繰り返しながら長手方向に移動する。この弾性変形及び/又は塑性変形の変形抵抗が、第一部材200と第二部材201の相対移動の規制力となる。
換言すると、第一部材200と第二部材201を、F2方向に相対移動させるためには、第二変位部60を移動させるように第二変形許容部50を変形させる必要があり、相応の外力(エネルギー)が要求される。従って、この変形時の抵抗によって、相対移動が抑制される。勿論、相応の外力(エネルギー)を加えれば、第二変位部60の移動が可能なので、必要なときに、相対移動させることも可能となる。
なお、第一部材200と第二部材201の相対移動方向F2が、仮に、第一条延在方向M1と一致する場合、第二変位部60は、その相対移動を規制することができない。従って、第一条延在方向M1に沿う相対移動については、先に述べた第一変位部90が規制することになる。
以上の通り、第一変位部90と第二列状突起260の係合によって、第一部材200と第二部材201のF1方向(図33参照)の相対移動が規制され、第二変位部70と第一列状突起250の係合によって、第一部材200と第二部材201のF2方向(図34参照)の相対移動が規制される。これらの相乗効果によって、第一部材200と第二部材201は、あらゆる面方向に対して、相対移動が抑制される。
なお、図32(A)に示すように、第一部材200と第二部材201が係合している状態において、第二列状突起260の突端縁と、第一部材200の第一面200A(これは、第一列状突起250の基底面と定義できる)の間には、余裕隙間X1が形成されることが好ましい。また、第一列状突起250に作出される第一変位部90の深さは、第一列状突起250の高さよりも小さくなる。このようにすると、第一列状突起250の交差部分238において、第一列状突起250の基端側に、周囲も開放される弾性変形領域を残すことが可能となり、第一部材200と第二部材201の互いの押圧状態を解除した際に、一旦、作出された第一変位部90の全部又は一部を、作出前の元の状態に復元させ易くなる。
同様に、図32(B)に示すように、第一部材200と第二部材201が係合している状態において、第一列状突起250の突端縁と、第二部材201の第二面201A(これは、第二列状突起260の基底面と定義できる)の間には、余裕隙間X2が形成されることが好ましい。また、第二列状突起260に作出される第二変位部60の深さは、第二列状突起260の高さよりも小さくなる。このようにすると、第二列状突起260の交差部分238において、第二列状突起260の基端側に、周囲も開放される弾性変形領域を残すことが可能となり、第一部材200と第二部材201の互いの押圧状態を解除した際に、一旦、作出された第二変位部60の全部又は一部を、作出前の元の状態に復元させ易くなる。
なお、上記実施形態では、図35(A)に示すように、第一及び第二列状突起250、260における、長手方向に直交する断面形状が方形となる場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば略台形形状の断面であっても良い。このように、突起の突端を比較的広めの平面にすることで、面圧を均等に分散させ得、これによって弾性変形量を増やして、塑性変形量を減らすようにすることができ、第一部材200及び第二部材201を繰り返し利用可能となる。他方、例えば、図35(B)に示すように、突端が円弧状となるような断面形状でもよく、図35(C)に示すように、先端が丸みを帯びた角となる三角形であっても良い。また、図35(D)に示すように、突起の突端を鋭利な角状・鋸刃状の断面形状にして、面圧を不均等に受け持たせることによって、突端の偏荷重量を増大させることで変形量を増幅させ、これによって先端を積極的に塑性変形させることも可能である。
また、上記実施形態では、複数の第一変位部90に形成される第一作出面92A、92Bは、全て、同一方向に延びる場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図36に示すように、第二条部となる第二列状突起260の側面が、互いに異なる複数の方向に延在することが好ましい。具体的に、図36(A)に示すように、複数の第二列状突起260の複数種類の延在方向M2-A,M2-Bを、互いに異ならせることができる。このようにすると、第二列状突起260の押圧力により、第一列状突起250に作出される複数の第一作出面92A、92Bが、互いに異なる方向に延びる構造となる。結果、第二列状突起260の一方の延在方向M2-Aに沿って、第一部材200と第二部材201を相対移動させようとすると、他方の延在方向M2-Bに延びる第一作出面92A、92Bが、第二列状突起260と係合して、相対移動を規制する。また、第二列状突起260の他方の延在方向M2-Bに沿って、第一部材200と第二部材201を相対移動させようとすると、一方の延在方向、M2-Aに延びる第一作出面92A、92Bが、第二列状突起260と係合して、相対移動を規制する。従って、仮に、第二列状突起260を積極的に変形させて第二変位部60を作出しなくても、第一部材200と第二部材201のあらゆる方向の相対移動を規制することが可能になる。
なお、この場合、図36(B)に示すように、単一又は複数の第二列状突起260を蛇行させても良いし、図36(C)に示すように、複数の第二列状突起260の互いの延在方向を異ならせても良いし、図36(D)に示すように、単一又は複数の第二列状突起260の帯幅を延在方向に沿って拡大・縮小させることで、その側面が互いに異なる方向に延びるようにしても良い。
次に、図37を参照して、上記第三実施形態の係合機構235の変形例について説明する。ここでは、説明の便宜上、第一部材200に形成される第一列状突起250の稜線(延在方向)と、第二部材201に形成される第二列状突起260の稜線(延在方向)のみを表示する。また、第一部材200は、第一面200A側から視た正面図を示し、第二部材201は、第二面201Aの反対側の面から視た背面図を示す。従って、第一部材200と第二部材201をそのまま重ねることで、係合機構235となる。
図37(A)に示す係合機構235の第一部材200は、複数の第一列状突起250が、長手方向に所望の間隔を空けて直列状態で配設される。また、複数の第一列状突起250は、幅方向にも並列状態で配設される。第二部材201も同様に、複数の第二列状突起260が、長手方向に所望の間隔を空けて直列状態で配設される。また、複数の第二列状突起260は、幅方向にも並列状態で配設される。
第一部材200の第一列状突起250の延在方向と、第二部材201の第二列状突起260の延在方向は90°の相対差を有する。なお、第一部材200を90°回転させると、第二部材201そのものとなるので、互いに同一母材を採用することができる。この係合機構235においても、第一列状突起250と第二列状突起260の交差部分において、第一変位部と第二変位部が形成されて、両者の相対移動が規制される。
図37(B)に示す係合機構235の第一部材200は、複数の第一列状突起250が、幅方向に所望の間隔を空けて並列状態で配設される。各第一列状突起250は直線状に延びる。第二部材201は、複数の第二列状突起260が、幅方向に所望の間隔を空けて並列状態で配設される。各第二列状突起260は、ジグザグ状(蛇行状)に延びる。
第一部材200の第一列状突起250の延在方向と、第二部材201の第二列状突起260の延在方向は所望の相対差を有する。この係合機構235では、第一列状突起250と第二列状突起260の交差部分において、第一変位部と第二変位部が形成されて、両者の相対移動が規制される。また、第二列状突起260がジグザグ状(蛇行状)に延びることから、第一変位部の形状が複数種類となる。
図37(C)に示す係合機構235の第一部材200は、複数の第一列状突起250が、幅方向に所望の間隔を空けて並列状態で配設される。各第一列状突起250は直線状に延びる。第二部材201は、正円の環状に延びる第二列状突起260を備える。複数の第二列状突起260は、互いに直径が異なるサイズとなっており、同心円状態で配設される。
第一部材200の第一列状突起250の延在方向と、第二部材201の第二列状突起260の延在方向は各種相対差を有する。この係合機構235では、第一列状突起250と第二列状突起260の交差部分において、第一変位部と第二変位部が形成されて、両者の相対移動が規制される。第二列状突起260が環状に延びることから、第一変位部の形状も複数種類となる。
次に、図38を参照して、上記第三実施形態の相対移動抑制構造230の更なる他の変形例について説明する。図38(A)に示すように、相対移動抑制構造230は、第一部材200の第一条部(第一列状突起250)と、第二部材201の第二条部(第二列状突起260)の干渉距離W(重なり量)を規制するストッパ部(第一及び第二ストッパ295、296)を有する。
図39(A)に示すように、第一ストッパ295は、第一部材200の第一面200Aと、第二部材201の第二面201Aの間に介在する部材であって、第一部材200と第二部材201を接近させる際に、第一ストッパ295が邪魔部材となって、第一面200Aと第二列状突起260の突端面の間、及び、第二面201Aと第一列状突起250の突端面の間に、それぞれ、余裕隙間X1を確保すると同時に、干渉距離Wを画定する。なお、第二ストッパ296も全く同様の構造となる。
より具体的に、第一ストッパ295は、第一部材200側に形成されるストッパ片295Aと、第二部材201側に形成されるストッパ片295Bを備えており、ここでは、円盤状又は円柱状の突起となる。従って、第一ストッパ295の一対のストッパ片295A、295Bを互いに当接させることで、干渉距離Wを規制する。
図38(A)に戻って、第二ストッパ296は、第一部材200側に形成されるストッパ片296Aと、第二部材201側に形成されるストッパ片296Bを備えており、ここでは、円盤状又は円柱状の突起となる。第二ストッパ296の一対のストッパ片296A、296Bを互いに当接させることで、干渉距離Wを画定する。
このように、第一及び第二ストッパ295、296を設けると、第一部材200と第二部材201の間に作用する押圧力の如何に関わらず、常に、干渉距離Wを一定に維持できる。従って、相対移動抑制構造230における相対移動の抑止力を安定させることが可能となる。また、第一列状突起250及び第二列状突起260の交差部分において、各突起の基端側に弾性変形領域(余裕隙間X1、X2)を残すことが可能となり、第一部材200と第二部材201の互いの押圧状態を解除した際に、一旦、作出された第一及び第二変位部の全部又は一部を、作出前の元の状態に復元させることができる。
図38(A)に戻って、第一ストッパ295は、仮想点Cから等しい距離で、且つ、仮想点Cを中心とした90°の位相差を有するように二か所に形成される。第二ストッパ296は、仮想点Cから等しい距離で、且つ、仮想点Cを中心とした90°の位相差を有するように二か所に形成される。更に、第二ストッパ296は、仮想点Cを基準として第一ストッパ295の回転対称となる場所に位置する。この回転対称の位相差は、ここでは180°に設定されている。
なお、ここでは、第一部材200と第二部材201の双方に、ストッパ片を形成する場合を例示しているが、図39(B)に示すように、第一部材200及び第二部材201の一方側のみにストッパ片を形成し、他方側は、平面状態(即ち、列状突起が存在しない第一及び第二面200A、201Aの状態)としても良い。更に、図40に示すように、第一部材200と第二部材201の双方に貫通孔202A、202Bを形成し、例えば、この貫通孔202A、202Bに同時に挿入される雄ねじ体297と、この雄ねじ体297と螺合する雌ねじ体298によって、第一部材200と第二部材201を締結することもできる。この構造によれば、相対回転抑制構造によって、第一部材200と第二部材201の面方向に相対移動が予め規制されるので、雄ねじ体297に剪断力が作用しないで済むという利点がある。また、この雄ねじ体297と雌ねじ体298は、第一部材200と第二部材201に対して、押圧力を付与する付勢機構として機能させることができる。
図38(A)では、仮想正方形の四隅のそれぞれにストッパ部を配置する場合を例示した。このようにすると、第一部材200と第二部材201が同一形状となるので、同じ母材から構成できる。従って、母材を対で用意して、列状突起が格子状に交差するように対向させれば、係合機構235を得ることができる。
なお、ストッパ部の配置は、正方形に限定されない。例えば図38(B)に示すように、仮想点Cから等距離であって、かつ、仮想点Cを中心として互いに45°の位相差で、合計八か所にストッパ部294を配置しても良い。共通の母材を対で用意することで、一方を第一部材200とし、第二部材201として、係合機構235を得ることができる。この際、第一部材200の第一列状突起250と、第二部材201の第二列状突起260が交差する角度は、互いのストッパ片が当接可能な45°間隔の三種類の位相差(45°、90°、135°)の中から、任意に選択すればよい。
更に、図41(A)に示す相対移動抑制構造230のように、例えば、第一部材200において、仮想点Cから等距離であって、かつ、仮想点Cを中心として互いに180°の位相差となる場所に、第一ストッパ295(ストッパ片295A)及び第二ストッパ296(ストッパ片296A)を配置することが好ましい。この際、第一ストッパ295(ストッパ片295A)及び第二ストッパ296(ストッパ片296A)の各位相は、それぞれ、第一列状突起250の延在方向M1に対して45°となるように設定する。
別の観点で説明すると、第一ストッパ295(ストッパ片295A)及び第二ストッパ296(ストッパ片296A)を結ぶ仮想線分T1と、第一列状突起250の延在方向M1との角度差が、45°となるように設定する。
同様に、第二部材201においても、仮想点Cから等距離であって、かつ、仮想点Cを中心として互いに180°の位相差となる場所に、第一ストッパ295(ストッパ片295B)及び第二ストッパ296(ストッパ片296B)を配置することが好ましい。この際、第一ストッパ295(ストッパ片295B)及び第二ストッパ296(ストッパ片296B)の位相は、それぞれ、第二列状突起260の延在方向M2に対して45°となるように設定する。
別の観点で説明すると、第一ストッパ295(ストッパ片295B)及び第二ストッパ296(ストッパ片296B)を結ぶ仮想線分T2と、第二列状突起260の延在方向M2との角度差が、45°となるように設定する。
このようにすると、第一ストッパ295及び第二ストッパ296が適切に存在するように位置決めしながら、第一部材200と第二部材201を対向させると、必ず、第一列状突起250の長手方向と第二列状突起260の長手方向が90°の角度を有する結果となり、格子状に交差する。結果、第一部材200と第二部材201の設置ミスを抑制できる。更に、第一部材200の母材と、第二部材201の母材を一致させることも可能となるので、一対の母材を用意するだけで、第一及び第二部材200、201を用意可能となり、相対移動抑制構造230を簡単に構築できる。
なお、図41(A)では、第一ストッパ295及び第二ストッパ296を結ぶ仮想線分T1、T2と、第一及び第二列状突起250、260の延在方向M1、M2との角度差が45°となるように設定する場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、好ましくは、角度差が20°以上且つ70°以下に設定し、より好ましくは角度差が30°以上且つ60°以下に設定する。例えば、図41(B)には、角度差を60°に設定する場合を示す。この場合、第一ストッパ295及び第二ストッパ296が適切に存在するように位置決めしながら、第一部材200と第二部材201を対向させると、必ず、第一列状突起250の長手方向と第二列状突起260の長手方向が60°の角度を有する結果となり、格子状に交差する。第一部材200と第二部材201を共通母材にすることもできる。
次に、図42乃至図44を参照して、第四実施形態に係るねじ締結機構301について説明する。このねじ締結機構301は、第一雌ねじ体400と、第二雌ねじ体401と、雄ねじ体310(図43参照)と、クランプ装置500を備える。また、第一雌ねじ体400とクランプ装置500の間には、第一相対移動抑制構造330Aが形成され、第二雌ねじ体401とクランプ装置500の間には、第二相対移動抑制構造330Bが形成される。なお、本実施形態では、第一雌ねじ体400と、この軸方向外側に隣接する第二雌ねじ体401が、所謂ダブルナット構造となって、互いの緩みを防止する。このねじ部分に関する基本構造は、第一実施形態と同一又は類似するので、ここでの説明を省略し、第一及び第二相対移動抑制構造330A、330Bを中心に説明する。
第一雌ねじ体400における、第二雌ねじ体側の端面には、第一環状部450が一体的に突設される。また、第二雌ねじ体401の第一雌ねじ体側の端面には、第二環状部460が一体的に形成される。
第一環状部450の外周面には、軸方向に延びる第一列状突起455が、周方向に等間隔で複数形成される。また、第一環状部450の外周面と、第一雌ねじ体400の境界には、周方向に延びる第一環状溝(第一くびれ溝)452が形成される。第二環状部460の外周面には、軸方向に延びる第二列状突起465が、周方向に等間隔で複数形成される。また、第二環状部460の外周面と、第二雌ねじ体401の境界には、周方向に延びる第二環状溝(第二くびれ溝)462が形成される。
クランプ装置500は、半円筒状の第一クランプ体510と、半円筒状の第二クランプ体520を備えており、第一クランプ体510の周方向の一方端と、第二クランプ体520の周方向の一方端が、ヒンジ530によって互いに開動自在に連結されている。また、第一クランプ体510の周方向の他端と、第二クランプ体520の周方向の他端には、係合機構540が設けられる。勿論、ヒンジ530は必須ではなく、第一及び第二環状部を半径方向内向きに押圧できればよく、特にヒンジ530に限定されるものではない。
具体的に係合機構540は、第一クランプ体510の他方端に開動自在に配設される棒状体542と、棒状体542の先端の雄ねじ部と螺合するナット544と、第二クランプ体520の他方端に形成されて棒状体542の一部を収容可能な凹溝546と、第二クランプ体520の他方端に形成されて、凹溝546に収容される棒状体542の先端のナット544と軸方向に係合可能な座部548を有する。従って、第一クランプ体510と第二クランプ体520を閉じて(対向させて)、全体を円筒形状にすると、この円筒の内部に第一及び第二環状部450、460を収容可能となる。係合機構540によって、第一クランプ体510と第二クランプ体520の他方端同士を連結して、ナット544を締め付ければ、第一及び第二環状部450、460に対して、クランプ装置500の装着が完了する。これにより、第一及び第二クランプ体510、520を、第一及び第二環状部450、460に対して押圧できる。つまり、係合機構540は、押圧力を発揮する付勢機構として機能させることができる。
一方、係合機構540を解除して、ヒンジ530を利用して第一クランプ体510と第二クランプ体520を開放すれば、クランプ装置500全体を、第一及び第二環状部450、460から離脱できる。つまり、クランプ装置500全体は、着脱自在となっている。
図43(B)に示すように、第一クランプ体510の内周面には、第一及び第二環状部450、460をまとめて収容可能な第一収容凹部511が、周方向に延びるように形成される。従って、この第一収容凹部511の軸方向の両側には、径方向内側に凸となる一対の側壁511A、511Bが形成される。一方の側壁511Aは、第一環状溝(第一くびれ溝)452に挿入され、他方の側壁511Bは、第二環状溝(第二くびれ溝)462に挿入される。
第一収容凹部511の内周面には、周方向に延びる第一クランプ側列状突起512が、軸方向に間隔を空けて六本形成される。この中の三本は、第一環状部450の第一列状突起455と交差し、残りの三本は、第二環状部460の第二列状突起465と交差する。
同様に、第二クランプ体520の内周面には、第一及び第二環状部450、460をまとめて収容可能な第二収容凹部521が、周方向に延びるように形成される。従って、この第二収容凹部521の軸方向の両側には、径方向内側に凸となる一対の側壁521A、521Bが形成される。一方の側壁521Aは、第一環状溝(第一くびれ溝)452に挿入され、他方の側壁521Bは、第二環状溝(第二くびれ溝)462に挿入される。
第二収容凹部521の内周面には、周方向に延びる第二クランプ側列状突起522が、軸方向に間隔を空けて六個形成される。この中の三本は、第一環状部450の第一列状突起455と交差し、残りの三本は、第二環状部460の第二列状突起465と交差する。
第一相対移動抑制構造330Aは、第一環状部450の第一列状突起455と、第一列状突起455と交差し得る各三本の第一及び第二クランプ側列状突起512、522によって構成される。即ち、第一列状突起455が、第一相対移動抑制構造330Aにおける第一条部に相当し、第一及び第二クランプ側列状突起512、522が、第一相対移動抑制構造330Aにおける第二条部に相当する。従って、図44(A)(B)に示すように、この交差部分では、クランプ装置500による押圧力によって、第一条部(第一列状突起455)が変形して第一変位部が作出され、第二条部(第一及び第二クランプ側列状突起512、522)が変形して第二変位部が作出される。結果、クランプ装置500と第一雌ねじ体400の相対回転が抑制される。なお、相対回転が抑制される仕組みは、既に、第三実施形態等において詳細に説明しているので、省略する。
第二相対移動抑制構造330Bは、第二環状部460の第二列状突起465と、第二列状突起465と交差し得る各三本の第一及び第二クランプ側列状突起512、522によって構成される。即ち、第二列状突起465が、第二相対移動抑制構造330Bにおける第一条部に相当し、第一及び第二クランプ側列状突起512、522が、第二相対移動抑制構造330Bにおける第二条部に相当する。従って、図44(A)(B)に示すように、この交差部分では、クランプ装置500による押圧力によって、第一条部(第二列状突起465)が変形して第一変位部が作出され、第二条部(第一及び第二クランプ側列状突起512、522)が変形して第二変位部が作出される。結果、クランプ装置500と第二雌ねじ体401の相対回転が抑制される。なお、相対回転が抑制される仕組みは、既に、第三実施形態等において詳細に説明しているので、省略する。
以上の通り、本第四実施形態では、クランプ装置500を介在させることで、第一雌ねじ体400と第二雌ねじ体401の相対回転が、実質的に抑制される構造となっている。この構造が適用される相対移動抑制体を、図44(C)に示すように概念化すると、相対移動を抑制したい規制対象部材A(第一雌ねじ体400)と規制対象部材B(第二雌ねじ体401)が存在する場合に、その間に介在部材K(クランプ装置500)を介在させれば良い。規制対象部材Aと介在部材Kの間、及び、規制対象部材Bと介在部材Kの間の双方に、それぞれ相対移動抑制構造Dを構築する。この際、クランプ装置500の係合機構540のように、介在部材Kと、規制対象部材Aと規制対象部材Bの間に押圧力を生じさせる付勢手段Pを設けることが好ましい。この概念は、第三実施形態にも適用可能である。
なお、本第四実施形態では、クランプ装置500のクランプ側列状突起が周方向に円弧状に延びており、第一及び第二環状部450、460に形成される第一及び第二列状突起
455、465が、軸方向に直線状に延びる場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、クランプ側列状突起が軸方向に直線状に延びて、第一及び/又は第二列状突起455、465が、周方向に円弧状に延びるようにしても良い。
次に、図45を参照して、第四実施形態の変形例となるねじ締結機構301について説明する。このねじ締結機構301は、雌ねじ体400と、雄ねじ体310と、クランプ装置500を備える。雌ねじ体400とクランプ装置500の間には、第一相対移動抑制構造330Aが形成され、雄ねじ体310とクランプ装置500の間には、第二相対移動抑制構造330Bが形成される。
雌ねじ体400の端面には、環状部450が一体的に突設される。環状部450の外周面には、軸方向に延びる列状突起455が、周方向に等間隔で複数形成される。また、環状部450の外周面と、雌ねじ体400の境界には、周方向に延びる環状溝(くびれ溝)452が形成される。勿論、環状溝452は必須ではない。
クランプ装置500は、半円筒状の第一クランプ体510と、半円筒状の第二クランプ体520を備えており、第一クランプ体510の周方向の一方端と、第二クランプ体520の周方向の一方端が、ヒンジ530によって互いに開動自在に連結されている。また、第一クランプ体510の周方向の他端と、第二クランプ体520の周方向の他端には係合機構540が設けられる。
図45(A)に示すように、第一クランプ体510の内周には、環状部450の外周と接近可能な第一雌ねじ側内周面510Aと、雄ねじ体310の外周と接近可能な第一雄ねじ側内周面510Bが形成される。第一雌ねじ側内周面510Aの内径と比較して、第一雄ねじ側内周面510Bの内径が小さくなる。
第一雌ねじ側内周面510Aには、周方向に延びる第一雌ねじ対応列状突起512が、軸方向に間隔を空けて三本形成される。この第一雌ねじ対応列状突起512は、環状部450の列状突起455と交差する。
一方、図45(B)に示すように、第一雄ねじ側内周面510Bには、軸方向に延びる第一雄ねじ対応列状突起513が、周方向に間隔を空けて複数形成される。この第一雄ねじ対応列状突起513は、雄ねじ体310のねじ山となる螺旋状314と交差する。
図45(A)に示すように、第二クランプ体520の内周には、環状部450の外周と接近可能な第二雌ねじ側内周面520Aと、雄ねじ体310の外周と接近可能な第二雄ねじ側内周面520Bが形成される。第二雌ねじ側内周面520Aの内径と比較して、第二雄ねじ側内周面520Bの内径が小さくなる。
第二雌ねじ側内周面520Aには、周方向に延びる第二雌ねじ対応列状突起522が、軸方向に間隔を空けて三本形成される。この第二雌ねじ対応列状突起522は、環状突起450の列状突起455と交差する。
一方、図45(B)に示すように、第二雄ねじ側内周面520Bには、軸方向に延びる第二雄ねじ対応列状突起523が、周方向に間隔を空けて複数形成される。この第二雄ねじ対応列状突起523は、雄ねじ体310のねじ山となる螺旋条314と交差する。
第一相対移動抑制構造330Aは、環状部450の列状突起455と、この列状突起455と交差し得る三本の雌ねじ対応列状突起512、522によって構成される。即ち、列状突起455が、第一相対移動抑制構造330Aにおける第一条部に相当し、第一及び第二雌ねじ対応側列状突起512、522が、第一相対移動抑制構造330Aにおける第二条部に相当する。従って、この交差部分では、クランプ装置500による押圧力によって、第一条部が変形して第一変位部が作出され、第二条部が変形して第二変位部が作出される。結果、クランプ装置500と雌ねじ体400の相対回転が抑制される。
第二相対移動抑制構造330Bは、雄ねじ体310の螺旋条(列状突起)314と、螺旋条314と交差し得る雄ねじ対応列状突起513、523によって構成される。即ち、螺旋条314が、第二相対移動抑制構造330Bにおける第一条部に相当し、第一及び第二雄ねじ対応列状突起513、523が、第二相対移動抑制構造330Bにおける第二条部に相当する。従って、この交差部分では、クランプ装置500による押圧力によって、第一条部が変形して第一変位部が作出され、第二条部が変形して第二変位部が作出される。結果、クランプ装置500と雄ねじ体310の相対回転が抑制される。
以上の通り、本変形例では、クランプ装置500を介在させることで、雌ねじ体400と雄ねじ体310の相対回転が、実質的に抑制される構造となっている。
上記変形例では、雄ねじ体310と、雌ねじ体400の相対回転を、クランプ装置500によって抑制する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図46(A)に示すように、雌ねじ体400に対して、直接、軸方向に延びる雄ねじ対応列状突起413を形成しても良い。この雄ねじ対応列状突起413は、雄ねじ体310の螺旋条(列状突起)314と交差して、相対移動抑制構造を創出する。なお、雄ねじ体310と雌ねじ体400を螺合させる際は、相対移動抑制構造の抑止力よりも強い力で、相対回転させることで、雄ねじ対応列状突起413と螺旋条(列状突起)314の交差部分を弾性変形させながら移動させれば良い。
また、雄ねじ体310の螺旋条314を用いずに、図46(B)に示すように、雄ねじ体310に対して、専用の雌ねじ対応列状突起315を形成し、雌ねじ体400の雄ねじ対応列状突起413と交差させてもよい。各列状突起の延在方向は適宜設定できるが、例えば、雄ねじ体310の雌ねじ対応列状突起315を軸方向に延在させて、雌ねじ体400の雄ねじ対応列状突起413を周方向に延在させても良い。
次に、図47至図52を参照して、第五実施形態に係る相対回転抑制構造730が適用されるねじ締結機構601について説明する。このねじ締結機構601は、第一実施形態で示したねじ締結機構(図22、図26、図28、図29等で示した変形例)と、一部が類似していることから、その類似部分・類似部材に関しては、説明及び図示中の符号下二桁を一致させることで、詳細説明を省略する場合がある。
図47に示すように、このねじ締結機構601は、雄ねじ体701と、この雄ねじ体701の頭部793の座面703Aに対向するワッシャとなる座体800を備えており、被締結部材Hに締結される。雄ねじ体701にとっての相手側部材が座体800となり、座体800にとっての相手側部材が、雄ねじ体701と被締結部材Hとなる。雄ねじ体701と座体800の間には、第一相対回転抑制構造730が形成される。また、座体800と被締結部材Hの間には、第二相対回転抑制構造930が形成される。
図49に示すように、第一相対回転抑制構造730は、座体800のねじ体側座面800Aに形成される座体側(相手側)変位部840と、雄ねじ体701の頭部703の座面703Aに形成されるねじ体側変形許容部750を備える。
図51(A)に示すように、第一相対回転抑制構造730は、座体800のねじ体側座面800Aに形成される座体側(相手側)変位部840を有する。ねじ体側座面800Aは、雄ねじ体701の軸方向に対して垂直な平面となるが、テーパ面としても良い。座体側変位部840は、帯状の突起(又は溝)となっており、帯の長手方向Lが、周方向Sに移動するにつれて径方向Kに変位する。特にここでは、周方向Sにおける、締結時に雄ねじ体701の頭部703と相対回転する際の締結時相対回転方向S1に移動するにつれて、径方向Kの内側に変位する。この座体側変位部840は、周方向に均等間隔で複数形成され、ここでは十二個が等間隔に形成される。
図50に示すように、雄ねじ体701の頭部703の座面703Aには、ねじ体側変形許容部750が形成される。このねじ体側変形許容部750は帯状の突起(又は溝)となっており、突起の帯の長手方向Lが、周方向Sに移動するにつれて径方向Kに変位する。特にここでは、周方向Sにおける、締結時に座体800と相対回転する際の締結時相対回転方向S1に移動するにつれて、径方向Kの内側に変位する。このねじ体側変形許容部750は、周方向に均等間隔で複数形成される。ここでは十二個の第二変形許容部750が周方向に等間隔に形成される。
図52(A)に透視して示すように、ねじ体側変形許容部750は、自らの締結力(軸力)を利用して、座体側変位部840に押圧される。結果、自らの一部が軸方向に凹むように変形し、この変形によって、ねじ体側変位部760が作出される。なお、ねじ体側変形許容部750と座体側変位部840は、正反対のスパイラル形状となることから、雄ねじ体701と座体800が相対回転しても、常に、何らかの当接状態を維持できるようになっている。
ねじ体側変形許容部750は、座体側変位部840と同等またはそれよりも軟らかい材料で構成される。このようにすると、座体側変位部840が、ねじ体側変形許容部750を積極的に変形させることができる。この変形は弾性変形及び/又は塑性変形となる。なお、この変形量は、被締結部材Hを締結する際に要求される軸力で、完全に押しつぶされずに、適度の弾性変形及び/又は塑性変形する程度に設定される(図48参照)。
図52(B)に示すように、ねじ体側変形許容部750は、締結力を利用して、相手側部材となる座体側変形許容部850に押圧することによって、座体側変形許容部850に補助変位部870を作出する。この補助変位部870は、座体側変位部840の長手方向の一部(ねじ体側変形許容部750と交差する範囲)が軸方向に凹む状態となる。
図51(B)に示すように、座体800と被締結部材Hの間に形成される第二相対回転抑制構造930は、座体800の被締結部材側座面800Bに形成される被締結部材用変位部880を有する。
被締結部材側座面800Bは、雄ねじ体701の軸方向に対して垂直な平面となっているが、テーパ面としても良い。この被締結部材用変位部880は、断面が山状又は鋸刃状の列状突起(又は列状溝)となっており、突起長手方向Lが径方向Kに延びる。
特に本実施形態では、被締結部材用変位部880の鋸刃形状は、座体800が、締結時に発生する締め付けトルクが作用した際には、被締結部材Hの座面を鋸刃形状に沿って圧縮し、弾性変形及び/又は塑性変形させてくい込みやすくなり、反対に、座体800が、雄ねじ体701に緩みトルクが作用した際には、被締結部材Hとの相対回転を規制しやすくする。つまり、回転方向に応じて、相対回転の規制力が異なる形状となる。
また、座体800の材料と比較して、被締結部材Hの材料が軟らかい(変形しやすい)ことが好ましい。例えば、座体800が鉄(ステンレス)等で、被締結部材Hがアルミニウム等である。このようにすると、雄ねじ体701による締結初期の軸力が、座体800と被締結部材Hの間に作用した段階で、素早く、被締結部材用変位部880が被締結部材Hに食い込んで、座体800と被締結部材Hの相対回転を殆ど無くすことができ、被締結部材Hの損傷を最小限にできる。
更に、座体800において、被締結部材用変位部880が被締結部材Hと当接する接触面積は、座体側変位部840がねじ体側変形許容部750と当接する接触面積よりも小さいことが好ましい。このようにすると、被締結部材用変位部880と被締結部材Hの間に作用する局所的な面圧が、座体側変位部840とねじ体側変形許容部750の間に作用する局所的な面圧よりも大きくなる。結果、第一相対回転抑制構造730による相対回転規制効果よりも、第二相対回転抑制構造930による相対回転規制効果が先んじて作用する。
なお、本実施形態では、被締結部材用変位部880が被締結部材Hと当接する接触面積を小さくするために、被締結部材用変位部880の鋸刃形状の突端縁の稜線幅を極めて小さくしており、略線状としている。一方で、座体側変位部840とねじ体側変形許容部750のそれぞれの幅は、0.5mm以上、望ましくは素材と軸力とに合わせて設定し、互いに接触するさいの面積が比較的に大きくなるようにしている。
このようにすると、締結時において、座体800は、被締結部材Hと雄ねじ体701の頭部703に双方に対して同時接触するが、初期~中期の締結段階では、第二相対回転抑制構造930によって座体800と被締結部材Hの相対回転が優先的に規制されると同時に、座体800と雄ねじ体701の相対回転は許容される。その後、中期~終期締結段階に至ると、第一相対回転抑制構造730によって、座体800と雄ねじ体701の相対回転が徐々に規制される。結果、第二相対回転抑制構造930と第一相対回転抑制構造730の双方によって、雄ねじ体701と被締結部材Hの相対回転が生じない。しかも、被締結部材Hの損傷を大幅に低減できる。
なお、この相対回転抑制構造630に関して、ワッシャとなる座体800のみに着目すると、ねじ体側座面800Aには、座体側変位部840が形成されて、雄ねじ体701の一部を変形させる。同時に、被締結部材側座面800Bには、被締結部材用変位部880が形成され、被締結部材Hの一部を好ましくは弾性的に変形、場合によっては塑性域を以って変形させる。この際、座体側変位部840による相対回転抑制効果よりも、被締結部材用変位部880による相対回転抑制効果を優位に発揮させることが好ましい。具体的には、雄ねじ体701よりも、被締結部材Hの材料を軟らかくするか、または、座体側変位部840に作用する面圧よりも、被締結部材用変位部880に作用する面圧を大きくする。このような座体800を用いれば、例えば、被締結部材Hがアルミニウム等の比較的軟らかい材料であって、あまり強い締結力(軸力)を印加することができないできない環境であっても、最小限の締結力で、完全なる緩み止め効果を発揮できる。
尚、本発明の相対回転抑制構造は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。