以下、図面を参照しながら本実施形態に係わるジョイスティック装置及び医療行為支援システムを説明する。
図1は、本実施形態に係る医療行為支援システム1の構成を示す図である。図1に示すように、医療行為支援システム1は、複数(n台)のジョイスティック装置3−n(nは整数)と医用装置5とを有する。ジョイスティック装置3−nは、医療従事者により携帯され、当該医療従事者により操作される。ジョイスティック装置の操作者は、術者や補助者、看護師等の如何なる医療従事者であっても良いが、以下、説明を具体的に行うため、特に言及しない場合、ジョイスティック装置の操作者は術者であるとする。一人の術者は、典型的には1台のジョイスティック装置3−nを使用するものとする。以下の説明においてジョイスティック装置3−nを特に区別しない場合には、単にジョイスティック装置3と称することにする。
医用装置5は、手術室やカテーテル室等に設けられている。医用装置5は、手術室やカテーテル室において使用される、医用画像診断装置や医用画像表示装置等の如何なる装置にも適用可能である。医用画像診断装置としては、X線診断装置、X線コンピュータ断層撮影装置、磁気共鳴診断装置、超音波診断装置、SPECT装置、PET装置、放射線治療装置等の如何なる装置にも適用可能である。以下の説明を具体的に行うため、本実施形態に係る医用装置5は、X線診断装置であるものとする。
図1に示すように、X線診断装置5は、寝台51、架台53、及びコンソール55を含む。寝台51は、患者を載置するための天板や、天板を載置面に対する水平方向や垂直方向に移動させるための移動機構などを備える。架台53は、高電圧を発生する高電圧発生装置、高電圧発生装置において発生された高電圧の印加を受けてX線を発生するX線管、X線管から発生されたX線を検出するX線検出器、X線管及びX線検出器を回動自在に支持するCアームなどを備える。
コンソール55は、制御部551を中枢として無線通信部553、記憶部555、表示部557、及び操作部559を備える。制御部551は、プロセッサやメモリを備える。制御部551は、ジョイスティック装置3からの種々の信号や操作部559からの操作信号に従い各種の処理を実行する。例えばX線透視において制御部551は、架台53のX線検出器から出力されるX線画像データに基づいてX線透視画像を発生する。また制御部551は、後述する操作権の決定処理や報知処理を施す。
無線通信部553は、ジョイスティック装置3との間で無線通信を行う。無線通信部553は、ジョイスティック装置3に送信する信号を変調する送信回路と、当該送信回路にて変調された送信信号に応じた電波をジョイスティック装置3に送信するとともに、ジョイスティック装置3から送信された信号を受信するアンテナと、このアンテナから出力された信号を復調する受信回路とを備える。無線通信部553は、復調した信号を制御部551に供給する。
記憶部555は、例えばHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置である。記憶部555は、オペレーティングシステムや各種のアプリケーションファイル、X線透視画像などを記憶する。表示部557は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)を有する。表示部557は、X線透視画像や種々のGUI(Graphical User Interface)などを表示する。操作部559は、X線診断装置5の操作者が各種コマンドや情報を入力するために用いる入力機器を備える。入力機器としては、例えば、マウスやキーボード、ボタン等が適用される。入力機器の操作に応じた操作信号は、制御部551に供給される。
次に、ジョイスティック装置3の外観について説明する。図2は、ジョイスティック装置3の側面図であり、図3は、ジョイスティック装置3の平面図であり、図4は、ジョイスティック装置3の背面図である。図2、図3、及び図4に示すように、ジョイスティック装置3は、台座11を有している。台座11には操作レバー13が設けられている。操作レバー13は、X線診断装置5に対して方向を指示するための機器である。操作レバー13は、支軸131と把持部133とを有している。支軸131は、台座11に対して中心軸13A回りの全周方向に傾動自在に支持されている。支軸131のニュートラルポジションは、中心軸13Aに対する傾きが全周方向において0度の状態に設定されている。支軸131の先端には把持部133が取り付けられている。把持部133は術者による操作レバー13の傾動を支援するために設けられている。図2及び図3においては、一例として、球形の把持部133が図示されているが、本実施形態に係る把持部133の形状としては、例えば、楕円形状等の如何なる形状であっても良い。
図2及び図3に示すように、台座11には複数のボタン15−n(nは整数)が押下可能に設けられている。以下、ボタン15−nの各々を区別しない場合、単にボタン15と称することにする。各ボタン15にはX線診断装置5の操作のための機能が割り当てられている。各ボタン15が押下されることにより、押下されたボタン15に割り当てられた機能がX線診断装置5により実行される。図2及び図3には、一例として、3つのボタン15が図示されているが、ボタン15の個数はこれに限定されない。ボタン15の個数は、3個より少なくても良いし、3個より多くても良い。なお操作レバー13はボタンとしても兼用可能である。すなわち、操作レバー13は押下可能に設けられている。操作レバー13の押下にもX線診断装置5の操作のための機能が割り当てられている。操作レバー13が押下された場合、当該操作レバー13に割り当てられた機能がX線診断装置5により実行される。
図2及び図3に示すように、台座11の表面には外衣固定機構17が設けられている。外衣固定機構17は、術者が着用する外衣を、台座11に対して取外し可能に固定するための固定機構である。外衣固定機構17は、外衣との固定の確実性を高めるため、台座11の表面の縁部のうちの互いに対向する位置関係にある二か所の各々に設けられると良い。なお、外衣固定機構17の個数は、二つに限定されない。ジョイスティック装置3と外衣とが強固に固定できるのであれば、1個でも良いし、3個以上でも良い。また、外衣固定機構17の設置個所は、台座11の表面の縁部に限定されない。ジョイスティック装置3と外衣とが強固に固定でき、操作レバー13を中心軸13A回りに全周方向に傾動可能であれば、外衣固定機構17を如何なる位置に設けても良い。図2及び図4に示すように、台座11の裏面には、内衣固定機構19が設けられている。内衣固定機構19は、術者が外衣よりも内側に着用する内衣を、台座11に対して取外し可能に固定するための固定機構である。内衣としては、術着またはX線防護衣が適当である。ジョイスティック装置3の装着については後述する。
次に、本実施形態に係るジョイスティック装置の内部構成について説明する。図5は、本実施形態に係るジョイスティック装置3の内部構成を示す図である。図5に示すように、ジョイスティック装置3は、操作レバー13、操作レバースイッチ21、ボタン15、ボタンスイッチ23、加速度センサ25、集音器27、ロック機構29、インターフェース回路31、無線通信部33、記憶部35、及び制御部37を有している。
操作レバースイッチ21は、操作レバー13の支軸に取り付けられている。操作レバースイッチ21は、操作レバー13の傾動を感知し傾動方向を示す操作信号を出力する。操作レバースイッチ21からの操作信号は、インターフェース回路31に供給される。操作レバー13の傾動方向と操作信号が指し示す方向とは、ジョイスティック装置3の標準的な使用形態をもとに予め対応付けられている。
ボタンスイッチ23は、ボタン15に取り付けられている。ボタン15の押下を感知し、押下されたボタン15の種類に応じた操作信号を出力する。ボタンスイッチ23からの操作信号は、インターフェース回路31に供給される。なお操作レバー13の支軸にボタンスイッチが設けられても良い。当該ボタンスイッチは、操作レバー13の押下を感知し、操作レバーの押下に応じた操作信号を出力する。当該操作信号もインターフェース回路31に供給される。ジョイスティック装置3は、典型的には、マウスの代わりに利用される。従ってボタン15や操作レバー13は、マウスのボタンに対応づけて機能が割り当てられると良い。例えば、ボタン15−1が左クリックの機能に割り当てられ、操作レバー13が右クリックに割り当てられると良い。そのボタン15−2とボタン15−3とは任意のショートカット機能が割り当てられると良い。例えば、X線撮影に関する撮影条件設定画面の表示機能やCアームの回動要求の送信機能等が割り当てられると良い。なお、Cアームの回動要求がX線診断装置5に送信することにより、操作レバー13の傾動操作によりCアームを傾動方向に応じた方向に回動させることができる。
加速度センサ25は、台座11の内部に設けられている。加速度センサ25は、ジョイスティック装置3の実空間における姿勢に応じた電気信号を出力する。以下、加速度センサ25から出力される電気信号を姿勢信号と呼ぶことにする。姿勢信号は、インターフェース回路31に供給される。
集音器27は、台座11に設けられている。集音器27は、音声を集音し、集音された音声をデジタルの音声信号に変換する。音声信号は、インターフェース回路31に供給される。
ロック機構29は、操作レバー13の支軸に取り付けられ、操作レバー13の可動範囲を機械的に制限する。また、ロック機構29は、ボタン15に取り付けられ、ボタン15の押下を機械的に制限する。ロック機構29は、インターフェース回路31を介した制御部37からのロック信号の供給を受けて操作レバー13やボタン15を機械的に固定する。ロック機構29は、インターフェース回路31を介した制御部37からの解除信号の供給を受けて、操作レバー13やボタン15の機械的な固定を解除する。
インターフェース回路31は、台座11に搭載された基板に装備されている。インターフェース回路31は、操作レバースイッチ21からの操作信号、ボタンスイッチ23からの操作信号、加速度センサ25からの姿勢信号、及び集音器27からの音声信号を制御部37に供給する。また、インターフェース回路31は、制御部37からのロック信号や解除信号をロック機構29に供給する。
無線通信部33は、台座11に搭載された基板に装備されている。無線通信部33は、X線診断装置5との間で無線通信を行う。無線通信部33は、X線診断装置5に送信する信号を変調する送信回路と、当該送信回路にて変調された送信信号に応じた電波をX線診断装置に送信するとともに、X線診断装置から送信された電波を受信して受信信号を出力するアンテナと、このアンテナから出力された受信信号を復調する受信回路とを備える。無線通信部33は、復調した受信信号を制御部37に供給する。具体的には、無線通信部33は、操作レバースイッチ21からの操作信号、ボタンスイッチ23からの操作信号、加速度センサ25からの姿勢信号、及び集音器27からの音声信号をX線診断装置5に無線で送信する。なお無線通信部33は、X線診断装置5に各種信号を送信する際、X線診断装置5に当該信号の送信元を識別させるため、ジョイスティック装置3の識別信号を付帯させる。X線診断装置5は当該識別信号を解析することにより、X線診断装置5が受信した信号の送信元を特定することができる。また、無線通信部33は、X線診断装置5からのロック信号や解除信号等を無線で受信する。
記憶部35は、例えばHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置である。記憶部35は、ジョイスティック装置3において発生される種々の信号やX線診断装置5から送信される種々の信号を記憶する。例えば、記憶部35は、集音器27により発生される音声信号を記憶する。
制御部37は、プロセッサやメモリを備える。制御部37は、主にX線診断装置5からの信号に従って各種処理を実行する。また、制御部37は、操作レバースイッチ21からの操作信号、ボタンスイッチ23からの操作信号に従って各種処理を実行しても良い。
また、図示はしないが、台座11の内部にはバッテリーが設けられている。バッテリーは、図示しない電力供給系統を介して台座11の内部に設けられた各種装置に電力を供給する。バッテリーの容量としては、特に制限は無いが、長期間の手術であっても充電不要な程度の蓄電容量を有するものが良い。具体的には、10時間以上の蓄電容量を有するバッテリーが搭載されると良い。
次に、術者によるジョイスティック装置3の装着について説明する。図6は、X線撮影を伴う手術を行う術者OPによるジョイスティック装置3の装着を説明するための図である。X線撮影を行う場合、術者OPは、まず、肌着の上に術着41を着用する。次に術者は、術着41の上にX線防護衣43を着用する。X線防護衣43としては、例えば、鉛エプロンが用いられる。以下、X線防護衣43は鉛エプロンであるとする。鉛エプロン43を着用すると着用術者OPは、当該鉛エプロン43の上に外衣45を着用する。外衣45としては、滅菌処理が施されたガウン、すなわち、滅菌ガウンが用いられる。その他、術者OPは、手に滅菌手袋をはめ、頭に滅菌帽子をかぶる。術者は、このような格好により手術を行う。ジョイスティック装置3は、鉛エプロン43と滅菌ガウン45との間に装着される。ジョイスティック装置3は、術者や補助者により装着される。
図7は、ジョイスティック装置3の鉛エプロン43と滅菌ガウン45とへの装着例を示す図である。図7に示すように、鉛エプロン43の表面には、内衣固定機構19に係合するエプロン側固定機構431が取り付けられている。エプロン側固定機構431及び内衣固定機構19としては、例えば、面ファスナーが用いられる。具体的には、エプロン側固定機構431として、鉤状に密集して起毛された鉤状布部が用いられ、内衣固定機構19として、環状に密集して起毛された環状布部が用いられると良い。鉤状布部と環状布部とは互いに係合し合う。鉤状布部と環状布部とを手動で押し付けることにより鉤状布部と環状布部とを貼りつけ、鉤状布部と環状布部とを手動で引き離すことにより鉤状布部と環状布部とを剥がすことができる。なお鉤状布部が内衣固定機構として用いられ、環状布部がエプロン側固定機構として用いられても良い。エプロン側固定機構431は、鉛エプロン43の胸部に設けられるとよい。この場合、ジョイスティック装置3は、胸部に取り付けられることとなる。なおエプロン側固定機構431の装着箇所は鉛エプロン43の胸部のみに限定されず、術者の好みに応じて、腕部や腹部等の如何なる箇所に設けられても良い。
図7に示すように、外衣固定機構17は滅菌ガウン45を挟持可能な機構である。外衣固定機構17としては、クリップ等の挟持具が用いられると良い。滅菌ガウン45は、術者等により挟持具17に挟持される。なお外衣固定機構17は、滅菌ガウン45を台座11に対して固定可能であれば、クリップ等の挟持具のみに限定されない。例えば、外衣固定機構17としては、安全ピン等の留め針、紐、面ファスナー、線ファスナー、ボタン、テープ等のあらゆる固定具が適用可能である。
このようにして内衣固定機構19によりジョイスティック装置3の裏側が鉛エプロン43に固定され、外衣固定機構17によりジョイスティック装置3の表側が滅菌ガウン45に固定される。このようにジョイスティック装置3を装着することにより術者は、ジョイスティック装置3を清潔に保ったまま、補助者を介すことなく直接的にジョイスティック装置3を操作することができる。従って、補助者を介してX線診断装置5を操作していた従来とは違い、術者がジョイスティック装置3を操作することによりX線診断装置5を操作することができるので、術者の思い通りにX線診断装置5を操作することができる。ひいては、手術の効率が向上する。
図8は、ジョイスティック装置3の使用例を示す図である。図8に示すように、ジョイスティック装置3は、外気に曝されないように鉛エプロン43と滅菌ガウン45とにより密封されている。術者は、滅菌ガウン45の外側からジョイスティック装置3を視認することはできない。術者は、滅菌ガウン45を介して手探りで操作レバー13を傾動させる。ここで、各外衣固定機構17により挟まれる滅菌ガウン45の一部分を挟点451と呼ぶことにする。挟点451と挟点451との間の滅菌ガウン部分453が強く張っていると、操作レバー13を滅菌ガウン45の外側から傾動させようとして力を加えても、滅菌ガウン45に遊びが無いため操作レバー13を傾けることができない。また操作レバー13を傾動するための空間を設けるため、挟点451と挟点451との間の滅菌ガウン部分453と、台座11との間に十分な空間が設けられると良い。そのため、滅菌ガウン45は、滅菌ガウン部分453が撓むように外衣固定機構17により挟持されると良い。滅菌ガウン45が張らずに撓むように挟持されることにより、滅菌ガウン45に遊びが生じ、容易に操作レバー13を傾けることができる。
また、滅菌ガウン45の裏面は比較的摩擦抵抗が低く、滅菌ガウン45の外側から操作レバー13を傾動しようとしても、滅菌ガウン45の裏面と操作レバー13の把持部133とが滑り、操作レバー13を上手く傾動できない事態が想定される。操作レバー13の操作性を更に向上させるため、把持部133の先端が滅菌ガウン45に対して固定されていると良い。このため把持部133の先端には外衣の裏面との滑りを防止するための滑り止め135が形成されると良い。滑り止め135は、例えば、滅菌ガウン45の裏面との滑りを防止可能な程度の粘度や摩擦抵抗を有するように形成される良い。これにより、把持部133の先端が滅菌ガウン45に対して固定され、滅菌ガウン45を介してでも操作レバー13を容易に傾動させることができる。
鉛エプロン43は、着衣としては比較的剛性を有する素材で形成されている。ジョイスティック装置3の裏面が鉛エプロン43に固定されることにより、柔軟性を有する術着や滅菌ガウンに比して、ジョイスティック装置3を胸部に対して強固に固定することが出来る。従って、術者等により操作レバー13を傾動したりしても、操作レバー13の傾動に伴う鉛エプロン43の撓みが軽減され、操作レバー13の傾動に伴うジョイスティック装置3の位置ずれを軽減することができる。
ジョイスティック装置3は、当該ジョイスティック装置3を操作する術者の好みに応じて任意の向きに装着可能である。具体的には、操作レバー13がボタン15よりも下に位置するような向きでジョイスティック装置3が装着されても良いし、操作レバー13がボタン15よりも上に位置するような向きでジョイスティック装置3が装着されても良いし、あるいは、操作レバー13とボタン15とが略同一の高さに位置するようにジョイスティック装置3が装着されても良い。
なお、操作レバー13と滅菌ガウン45との固定方法は、滑り止め135の形成のみに限定されない。操作レバー13と滅菌ガウン45とが固定可能であれば、如何なる方法であっても良い。例えば、図9に示すように、操作レバー13と滅菌ガウン45とを輪ゴム等のゴムバンド137により固定しても良い。具体的には、滅菌ガウン45で操作レバー13の把持部133を覆うように、把持部133の根本において滅菌ガウン45をゴムバンド137で縛ると良い。このように滅菌ガウン45をゴムバンド137で縛ることにより、操作レバー13と滅菌ガウン45を強固に固定することができる。これにより、滅菌ガウン45の裏面と操作レバー13の把持部133との滑りに起因する操作レバー13の操作性の劣化を軽減することができる。
上記の説明においては操作レバー13の可動範囲を確保するため、滅菌ガウン45とジョイスティック装置3との間に空間を設けるとした。しかしながら、図10に示すように、操作レバー13の可動範囲を確保するため、滅菌ガウン45とジョイスティック装置3との間をスポンジ等の柔軟性を有する素材61で充填しても良い。
上記においてはX線撮影を行う場合のジョイスティック装置3の装着例を説明した。次にX線撮影を行わない場合の装着例について説明する。図11は、X線撮影を伴わない手術を行う術者OPによるジョイスティック装置3の装着を説明するための図である。X線撮影を行わない場合、術者OPは、まず、肌着の上に術着41を着用し、その上に滅菌ガウン45を着用する。ジョイスティック装置3は、術着41と滅菌ガウン45との間に装着される。術者OPは、滅菌ガウン45を介してジョイスティック装置3の操作レバー13やボタン15等を操作する。
この場合、図12に示すように、鉛エプロンではなく術着41の表面に、内衣固定機構19に係合する固定機構(以下、術着側固定機構と呼ぶ)411が取り付けられている。術着側固定機構411を用いた、術着とジョイスティック装置との固定方法は、エプロン側固定機構431を用いた鉛エプロンとジョイスティック装置との固定方法と同様なので説明を省略する。X線撮影を行わない場合もX線撮影を行う場合と同様に、外衣固定機構17によりジョイスティック装置3と滅菌ガウン45とが固定される。
上記のように術着や鉛エプロン、滅菌ガウンを着用し、ジョイスティック装置3を装着すると術者は、手術室において手術を開始する。術者は、手術中においてジョイスティック装置3を介してX線診断装置5を操作する。手術によっては複数の術者が手術を行う場合がある。例えば、内科に属する術者と外科に属する術者とが共同で手術を行う場合がある。この場合、複数のジョイスティック装置3によりX線診断装置5が操作されることとなる。
本実施形態に係るX線診断装置5の制御部551は、複数のジョイスティック装置3からの操作信号の混同を防止すべく、複数のジョイスティック装置3のうちの何れか1つのジョイスティック装置3に操作権を与える。
具体的には、制御部551は、ジョイスティック装置3−1〜3−nの中から、X線診断装置5の操作権を有するジョイスティック装置3を決定する。例えば、制御部551は、図13に示す画面200を用いて操作権を有するジョイスティック装置を決定する。この画面200は、例えば表示部557に表示される。画面200は、ジョイスティック装置3−1〜3−nに対応して設けられた表示領域A−1,A−2,A−3,・・・A−nを含む。また画面200にはカーソル201が表示されている。各表示領域A−1〜A−nの右隣には、各表示領域A−1〜A−nに対応するジョイスティック装置3−1〜3−nの識別子(♯1,♯2,♯3,・・・♯n)が付されている。以下の説明において、特に表示領域A−1,A−2,A−3,・・・A−nを区別しないときには、単に表示領域Aと呼ぶことにする。
操作権を有するジョイスティック装置3の操作者は、画面200に表示されているカーソル201を移動させるため、操作レバー13を傾動させる。傾動方向に応じた操作レバースイッチ21からの操作信号は、ジョイスティック装置3からX線診断装置5に送信される。X線診断装置5の制御部551は、送信された操作信号に従ってカーソル201を移動させる。操作者は、各表示領域A−1〜A−nのうちの操作権を与えたいジョイスティック装置3に対応する表示領域Aにカーソル201を合わせ、ボタン15または操作レバー13を押下する。押下操作に応じたボタンスイッチ23からの操作信号は、ジョイスティック装置3からX線診断装置5に送信される。制御部551は、当該操作信号を受信すると、当該表示領域Aに対応するジョイスティック装置3を、操作権を有するジョイスティック装置3として決定する。これにより当該表示領域Aに対応するジョイスティック装置3に操作権が与えられる。
X線診断装置5の制御部551は、操作権を有するジョイスティック装置3に解除信号を送信し、操作権を有さないジョイスティック装置3にロック信号を送信する。解除信号が送信されたジョイスティック装置3の制御部37は、インターフェース回路31を介して解除信号をロック機構29に供給する。解除信号が供給されたロック機構29は、操作レバー13及びボタン15のロック状態を解除する。これにより、術者による操作レバー13及びボタン15の操作が有効化される。ロック信号が送信されたジョイスティック装置3の制御部37は、インターフェース回路31を介してロック信号をロック機構29に供給する。ロック信号が供給されたロック機構29は、操作レバー13及びボタン15にロックをかける。これにより、術者による操作レバー13及びボタン15の操作が機械的に無効化される。
なお、操作権を有さないジョイスティック装置3を用いて、操作権を変更可能としても良い。例えば、操作権を有さないジョイスティック装置3の操作レバー13やボタン15がロック機構29によりロックされているにも関わらず、無理やり動かした場合、当該ジョイスティック装置3に操作権が移行されると良い。すなわち、操作権を有しないジョイスティック装置3から操作信号が送信された場合、X線診断装置5の制御部551は、当該操作信号の送信元のジョイスティック装置3を、当該操作信号に付帯して送信される識別情報に基づいて特定し、特定されたジョイスティック装置3に操作権を与える。これにより操作権の移行をより簡便に行うことができる。
本実施形態に係る制御部551は、画面200を用いて操作権を有するジョイスティック装置3を報知する。具体的には、制御部551は、表示部557を制御して、操作権を有するジョイスティック装置3に対応する表示領域Aの彩色を、他の表示領域Aと異ならせる。図13は「♯1」に対応するジョイスティック装置3−1が操作権を有する場合を示しており、表示領域A−1に斜線を付して他の表示領域A−2〜A−nとの彩色の違いを表現している。
なお、操作権を有するジョイスティック装置3と操作権を有さないジョイスティック装置3との報知態様は、表示部557による表示のみに限定されない。例えば、ランプの点灯、あるいはスピーカからの音声の出力などにより、操作権を有するジョイスティック装置3あるいは操作権を有さないジョイスティック装置3を報知してもよい。
上記の説明において操作権を有さないジョイスティック装置3の操作の無効化は、ロック機構29による可動範囲の制限により行われるものとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、ロック機構29に依らずに、ジョイスティック装置3の操作の無効化が行われても良い。例えば、制御部37は、操作権を有する場合に限定して、無線通信部33により操作信号をX線診断装置5に送信させても良い。具体的には、制御部37は、操作権を有する場合、無線通信部33を制御し、操作レバー13やボタン15の操作に起因する操作信号をX線診断装置5に送信させ、操作権を有さない場合、無線通信部33を制御し、操作レバー13やボタン15の操作に起因する操作信号をX線診断装置5に送信させないとしても良い。
また、ジョイスティック装置3に何等の改変を施さず、X線診断装置5に操作信号の選別機能を設けることにより、操作権を有さないジョイスティック装置3の操作の無効化を行っても良い。具体的には、X線診断装置5の制御部551は、ジョイスティック装置3からの操作信号の送信元を識別信号により特定し、当該送信元が操作権を有するジョイスティック装置3であるか否かを判定する。操作権を有するか否かの判定は、ジョイスティック装置3の識別子と操作権の有無との対応表を参照することにより行われれば良い。操作権を有さないと判定した場合、制御部551は、当該操作信号を除却し、操作権を有すると判定した場合、制御部551は、当該操作信号に従って処理を実行する。このように操作信号の選別機能を設けることにより、ジョイスティック装置3に操作信号の無効化のための機構や機能を別途設けることなく、操作権を有するジョイスティック装置3に限定してX線診断装置5の操作を行わせることができる。
次に本実施形態の種々の応用例について説明する。なお以下の説明において、本実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
(応用例1)
上記の実施形態においては、ジョイスティック装置3の清潔を確保するため、ジョイスティック装置3の全体を滅菌ガウン45と鉛エプロン43(もしくは術着41)とで密閉するとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。清潔が確保できるのであれば、必ずしもジョイスティック装置3の全体が滅菌ガウン45と鉛エプロン43(もしくは術着41)とで密閉される必要は無い。
図14は、応用例1に係るジョイスティック装置3´の側面図を示す図である。図14に示すように、操作レバー13は、支軸131と把持部133とを有している。支軸131は、構造的に分離された基部131−1と支柱部131−2とにより構成される。基部131−1は、中心軸13A回りの全周方向に傾動可能に台座11に支持されている。支柱部131−2は、基部131−1に着脱可能に固定された、把持部133の支持部材である。基部131−1と支柱部131−2とは、磁力により互いに吸着可能に構成される。具体的には、基部131−1と支柱部131−2との一方には磁石が埋め込まれ、基部131−1と支柱部131−2との他方は磁性体により構成される。磁石としては、操作レバー13の傾動操作による基部131−1と支柱部131−2との分離を防止するため、例えば、ネオジウム磁石等の吸着力が高い磁石が用いられると良い。
図15は、応用例1に係るジョイスティック装置3´の装着例を示す図である。図15に示すように、ジョイスティック装置3´の裏面は、ジョイスティック装置3と同様、内衣固定機構19により鉛エプロン43(または術着41)に固定され、ジョイスティック装置3´の表面もジョイスティック装置3と同様、外衣固定機構17により滅菌ガウン45に固定される。この際、術者は、支柱部131−2と把持部133との結合体139とを基部131−1から取り外した状態で滅菌ガウン45を外衣固定機構17に固定する。そして術者は、滅菌ガウン45の外側から、結合体139を滅菌ガウン45を介して基部131−1に吸着させる。術者は、把持部133を直接的に触れることにより、操作レバー13を操作することができる。従って滅菌ガウン45を介して操作レバー13を操作する必要があるジョイスティック装置3に比して、操作レバー13の操作性が向上する。なお、結合体139には予め滅菌処理が施されているものとする。
(応用例2)
上記の実施形態の通り、ジョイスティック装置3には集音器27が搭載されている。ジョイスティック装置3は胸部に装着されるので集音器27により術者の心拍音を集音することができる。本実施形態に係るジョイスティック装置3は、術者の心拍音を利用して手術の円滑化を図る。
具体的には、集音器27は、術者の心拍音を繰り返し集音し、当該心拍音の音声信号を繰り返し発生する。音声信号は、記憶部555により術者の氏名やID等の識別情報に関連付けて記憶される。また音声信号は、手術中、無線通信部33により即時的にX線診断装置5に送信される。X線診断装置5の制御部551は、ジョイスティック装置3からの音声信号を即時的に解析し、術者の心拍音の時間変化波形を生成し、生成された時間変化波形を表示部557に即時的に表示させる。
心拍音の時間変化波形は、手術室に居る術者や補助者、看護師等の医療従事者により観察される。心拍音の時間変化波形が表示されることにより、当該術者以外の医療従事者は、術者の心理的状態を推し量ることができる。従って当該術者以外の医療従事者は、当該術者の心理的状態に応じた適切な行動をとることができる。従って、応用例2に係るジョイスティック装置3は、手術の円滑化を促進することができる。
(応用例3)
上記の実施形態においてジョイスティック装置3は任意の向きで装着可能であるとした。この場合、ジョイスティック装置3の装着向きに応じて、術者から見た上下左右方向とジョイスティック装置3の上下左右方向とが一致したり、一致しなかったりする。そのため、術者による誤操作の発生が危惧される。例えば、図16に示すように、操作レバー13が下側に位置する姿勢が標準的な使用であるとする。この場合、術者の感覚とジョイスティック装置3が指し示す方向とが一致するように、操作レバーの傾動方向と操作信号が指し示す方向とが対応付けられている。すなわち、術者が上方向を指示する意図で操作レバー13を実空間的に上方向に倒した場合、ジョイスティック装置3は上を示す操作信号を発生し、術者が下方向を指示する意図で操作レバー13を実空間的に下方向に倒した場合、ジョイスティック装置3は下を示す操作信号を発生し、術者が左方向を指示する意図で操作レバー13を実空間的に左方向に倒した場合、ジョイスティック装置3は左を示す操作信号を発生し、術者が右方向を指示する意図で操作レバー13を実空間的に右方向に倒した場合、ジョイスティック装置3は右を示す操作信号を発生する。
しかしながら、図17に示すように、操作レバー13が上側に位置する姿勢でジョイスティック装置3が装着される場合も考えられる。この場合、ジョイスティック装置3の上方向は術者から見て下向きであるので、上方向を指示する意図で操作レバー13を実空間において上向きに倒した場合、ジョイスティック装置3は下を示す操作信号を発生してしまう。同様に、術者が下方向を指示する意図で操作レバー13を下方向に倒した場合、ジョイスティック装置3は上を示す操作信号を発生してしまい、術者が左方向を指示する意図で操作レバー13を左方向に倒した場合、ジョイスティック装置3は右を示す操作信号を発生してしまい、術者が右方向を指示する意図で操作レバー13を右方向に倒した場合、ジョイスティック装置3は左を示す操作信号を発生してしまう。
応用例3に係るジョイスティック装置3は、ジョイスティック装置3の装着向きに依らず、操作レバー13の実空間における傾動方向を画面上の特定方向に関連付けることにより、術者による誤操作の発生を防止する。
具体的には、ジョイスティック装置3の台座11には加速度センサ25が搭載されている。加速度センサ25は、実空間におけるジョイスティック装置3の姿勢を繰り返し検出し、検出された姿勢を示す姿勢信号を繰り返し生成する。生成された姿勢信号は、無線通信部33により即時的にX線診断装置5に送信される。また、無線通信部33は、術者による操作レバー13の傾動操作に応じて発生される操作信号をX線診断装置5に即時的に送信する。
X線診断装置5の制御部551は、姿勢信号が示すジョイスティック装置3の実空間における姿勢に応じて、ジョイスティック装置3からの送信信号が示す方向を補正する。具体的には、制御部551は姿勢信号を解析してジョイスティック装置3が標準的な使用時の姿勢であるか否かを判定する。標準的な使用時の姿勢は、例えば、図16に示すように、操作レバー13が下側に位置する姿勢に設定される。ジョイスティック装置3が標準的な使用時の姿勢であると判定した場合、制御部551は、操作信号の補正を行わない。ジョイスティック装置3が標準的な使用時の姿勢でないと判定した場合、制御部551は、操作信号の補正を行う。例えば、制御部551は、操作レバー13の術者から見た傾動方向と操作信号が示す方向とが一致するように、ジョイスティック装置3からの操作信号が示す方向を補正する。
図18は、操作信号が示す方向の補正処理を説明するための図である。なお図18に示すジョイスティック装置3の姿勢は図17のジョイスティック装置3の姿勢と同様であるとする。この姿勢の場合、X線診断装置5の制御部551は、加速度センサ25からの姿勢信号に基づいて、ジョイスティック装置3の向きが標準使用時と比べて上下反転していると判定する。この場合、制御部551は、ジョイスティック装置3の上方向は術者から見て下向きであるので、下方向を示す操作信号を上方向を示す操作信号に修正する。同様に、制御部551は、上方向を示す操作信号を下方向を示す操作信号に修正し、左方向を示す操作信号を右方向を示す操作信号に修正し、右方向を示す操作信号を左方向を示す操作信号に修正する。この補正により、操作レバー13の術者から見た傾動方向と操作信号が示す方向とを一致させることができる。従って術者が意図しない方向にカーソルが移動してしまうことを防止でき、ジョイスティック装置3によるX線診断装置5の操作性が向上する。
かくして、本実施形態によれば、手術時における医用装置の操作性が向上する。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。