JP5669083B2 - 糖転流の促進方法 - Google Patents
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これまでに、植物による炭素固定活性を高め、生産性を向上させるための技術として、例えば、ショ糖リン酸合成酵素を強制発現させてショ糖合成能を強化させる方法(特許文献1及び特許文献2)、メチオニン、トリプトファンを利用してショ糖リン酸合成酵素活性を向上させ、糖転流を促進させる方法(特許文献3)などが報告されている。
そこで、本発明は、植物の糖転流経路を拡大又は新規構築することで糖転流を制御する方法の提供を目的とする。
さらに、本発明は、糖転流経路が拡大又は新規構築された植物の提供を目的とする。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(11)である。
(1)植物細胞中のRSX1遺伝子の発現を調節し、該植物の糖転流を制御する方法。
(2)前記RSX1遺伝子が外来性であることを特徴とする上記(1)に記載の方法。
(3)前記RSX1遺伝子の発現調節が、該遺伝子の発現を増大させることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の方法。
(4)前記糖転流の制御が、塊茎への糖転流の増大であることを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の方法。
(5)前記植物細胞が、篩部組織以外の細胞であることを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の方法。
(6)前記植物が、アブラナ科植物であることを特徴とする上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の方法。
(7)上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の方法により糖転流が制御された植物。
(8)外来性のRSX1遺伝子を発現可能に保持する形質転換植物細胞。
(9)内在性のRSX1遺伝子に変異を含まない上記(8)に記載の植物細胞。
(10)上記(8)又は(9)に記載の植物細胞を含む植物。
(11)植物細胞中でのRSX1遺伝子発現用ベクターを含む植物の糖転流促進用キット。
さらに、本発明により、糖転流経路の拡大、あるいは、新規構築が可能となるため、所望の植物組織(例えば、種子や塊茎などのシンク器官)への糖転流を増大させることができる。
RSX1(restricted sucrose export 1)は、発明者らによって同定された、ペクチン酸リアーゼをコードする遺伝子(シロイヌナズナのAt5g04310に対応する)のことである。この遺伝子の変異体であるrsx1は、耐凍性が向上した変異株として単離されたもので、矮性及び稔性低下を示し、葉肉細胞、維管束鞘細胞、篩部柔細胞の他、伴細胞においてもデンプンを貯留している。また、rsx1変異株では、伴細胞と篩要素間の二次原形質連絡の形成が不完全であり、この結果、ソースからシンク組織への糖転流が阻害されると考えられる。
RSX1のアミノ酸配列としては、例えば、シロイヌナズナ由来の配列番号2、アブラナ由来の配列番号4などを挙げることができる。また、RSX1のcDNA配列としては、例えば、シロイヌナズナ由来の配列番号1、アブラナ由来の配列番号3などを挙げることができる。なお、本明細書中で、「遺伝子」とは、細胞中に存在するゲノムDNAの他、そのcDNAをも含む意味で使用するものとし、両者を特に区別するばあいには、「ゲノムDNA(又は遺伝子)」又は「cDNA」などと記載する。そして、ゲノムDNAには、エクソン、イントロンのみならず、プロモーター、エンハンサーなどの転写調節領域も含まれる。
本発明において、外来性のRSX1遺伝子を用いる場合のRSX1遺伝子は、いずれの植物に由来してもよく、特に限定はされない。例えば、上記シロイヌナズナが属する、アブラナ科の植物の他、イネ科植物、マメ科植物、ナス科植物、ウリ科植物などに由来するRSX1も使用可能である。各種植物由来のRSX1遺伝子は、シロイヌナズナ由来RSX1などの既知の遺伝子のDNA配列又は遺伝子産物のアミノ酸配列との相同性検索などにより、同定することが可能である。
ここで、実質的に野生型RSX1遺伝子と同一な遺伝子とは、例えば、配列番号1、配列番号3に例示されるRSX1遺伝子の塩基配列からなるDNAのみならず、配列番号1、配列番号3で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、rsx1変異体の機能を相補し、もしくは、その翻訳産物であるタンパク質がペクチン酸リアーゼとして機能するものも含まれる。あるいは、実質的に野生型RSX1遺伝子と同一な遺伝子とは、例えば、配列番号1、配列番号3に例示されるRSX1遺伝子の塩基配列と好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%,81%,82%,83%,84%,85%,86%,87%,88%,89%,90%,91%,92%,93%,94%,95%,96%,97%,98%,最も好ましくは約99%のヌクレオチド配列相同性を有する塩基配列を含有するDNA(遺伝子)で、rsx1変異体の機能を相補し、もしくは、その翻訳産物であるタンパク質がペクチン酸リアーゼとして機能するDNA(遺伝子)のことである。
また、ストリンジェントな条件とは、当業者によって容易に決定されるハイブリダイゼーション条件のことで、一般的にプローブ長、洗浄温度、及び塩濃度に依存する経験的な評価される条件である。一般に、プローブが長くなると適切なアニーリングのための温度が高くなり、プローブが短くなると温度は低くなる。ハイブリッド形成は、一般的に、相補的鎖が、その融点に近いか、又は、それより低い環境において再アニールする能力に依存している。
具体的には、例えば、低ストリンジェントな条件として、ハイブリダイゼーション後のフィルターの洗浄段階において、37℃〜42℃の温度条件下、0.1×SSC、0.1%SDS溶液中で洗浄することなどが挙げられる。また、高ストリンジェントな条件として、例えば、洗浄段階において、65℃、5×SSCおよび0.1%SDS中で洗浄することなどが挙げられる。ストリンジェントな条件をより高くすることにより、相同性の高いポリヌクレオチドを得ることができる。
さらに、本発明におけるRSX1遺伝子には、後述の実質的に野生型RSX1タンパク質と同一なタンパク質をコードするDNAも含まれる。
外来性のRSX1遺伝子は、植物細胞内で発現を可能にする適当なプロモーターやエンハンサーなどが挿入された発現ベクターを用いて、所望の細胞内で発現させることができる。使用可能はプロモーターとしては、植物細胞で機能するものであれば、特に限定はされず、例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35S RNA遺伝子のプロモーター、アグロバクテリウムTiプラスミド由来ノパリン合成酵素遺伝子のプロモーター(Pnos)、トウモロコシ由来ユビキチン遺伝子のプロモーター、イネ由来アクチン遺伝子のプロモーター、REFプロモーター、伴細胞特異的SUC2プロモーター、葉肉細胞特異的FBPaseプロモーターなどを挙げることができる。また、発現制御可能なプロモーターを使用して、所望のタイミングでRSX1遺伝子を発現させてもよい。この場合、例えば、alcA/alcRスイッチプロモーターなどの誘導可能なプロモーターを使用することができる。あるいは、植物発生の特定の時期(例えば、胚性発生初期など)にのみ機能するようなプロモーターなども適宜使用可能である。
さらに、RSX1遺伝子を植物組織特異的に発現させることも可能で、そのようなプロモーターとしては、例えばイネを例にとると、葯又は花粉特異的プロモーターCatA(WO00/58454)、花粉特異的プロモーターRPS4(特開2005−168470)、花器特異的プロモーターRPC213(WO99/43818)、葉肉細胞特異的プロモーターrbcS(Plant Physiol. 102, 991-1000 :1993)、葉特異的プロモーターpsbO,#42(特開2005−168470)、胚乳特異的プロモーターG/LuB−1、G/LuA−2(Plant Mol. Biol. 30, 1207-1221:1996, Plant J. 4, 357-366:1993)、カルス特異的プロモーターPRO3(特開2003−265182)、カルスおよび種子胚特異的発現活性を有するプロモーター#15(特開2005−168470)などが報告されている。
その他、RSX1遺伝子発現にシスに作用するエレメント、例えば、転写ターミネーターなどの使用等については、使用対象植物及び目的に応じて、当業者であれば適宜選択することができる。
この糖転流の制御は、二次原形質連絡の形成が促進される結果として、既存の糖転流経路が増強され、又は、新規な糖転流経路が形成されることによって達成されてもよく、RSX1遺伝子の植物細胞中での発現調節に起因した糖転流の制御(主に、糖転流効率の上昇)であれば、本発明の効果に含まれる。
さらに、本発明には、植物細胞中でのRSX1遺伝子発現用ベクターを含む植物の糖転流促進用キットが含まれる。
糖転流促進用キットには、RSX1遺伝子を目的の植物組織細胞で発現させるためのベクターの(RSX1遺伝子が予め組み込まれていてもよく、又は、本キット中にRSX1遺伝子が別途収納されていてもよい)他、該ベクターの形質転換に必要な試薬類、使用説明書、場合によっては、該ベクターで形質転換される所望の植物細胞、植物組織又は植物株などが含まれていてもよい。
35Sプロモーターを含む発現ベクター(図1)を用いて、シロイヌナズナの野生株を形質転換し、RSX1(配列番号1、配列番号2)を恒常的に発現させた。具体的には、過剰発現体は、シロイヌナズナのコロンビア株に floral dip法(Clough and Bent, 1998, Plant J. 16, 735-743)でTiプラスミド(pPZP221)を含むアグロバクテリウムEHA101を感染させ、その種子(T1種子と呼ぶ)よりゲンタマイシン選抜により単離した。播種後、5〜6週間の抽薹したシロイヌナズナ(植物体:野生株及び35S−RSX1過剰発現株)の第5葉以外の植物体をアルミホイルで遮光し、アクリルチャンバー内で、1時間、14CO2暴露し、その後、5分間、脱14CO2した。その後、アルミホイルを外して、4時間チェースした後、植物体を各葉、根と茎に切り分け、BAS2000で14Cの定量を行った(図2)。その結果、35S−RSX1過剰発現株では、根への転流が野生株と比べて191.2%まで増えていることが分かった。
以上のように、植物体全体の細胞においてRSX1を過剰発現させると、根への転流が促進される。
Claims (4)
- アブラナ科植物の細胞中のRSX1遺伝子の発現を増大させ、該アブラナ科植物の根への糖転流を増大させる方法。
- 前記RSX1遺伝子が外来性であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 前記アブラナ科植物の細胞が、篩部組織以外の細胞であることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
- アブラナ科の植物の細胞中でのRSX1遺伝子発現用ベクターを含むアブラナ科の植物の根への糖転流促進用キット。
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