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JP5644095B2 - 延性及び耐遅れ破壊特性の良好な引張最大強度900MPa以上を有する高強度鋼板および高強度冷延鋼板の製造方法、高強度亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents

延性及び耐遅れ破壊特性の良好な引張最大強度900MPa以上を有する高強度鋼板および高強度冷延鋼板の製造方法、高強度亜鉛めっき鋼板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、延性及び耐遅れ破壊特性の良好な引張最大強度900MPa以上を有する高強度鋼板および高強度冷延鋼板の製造方法、高強度亜鉛めっき鋼板の製造方法に関するものである。
近年、自動車や建築などに用いられる鋼板の高強度化に対する要求が高まってきている。引張最大強度900MPa以上の高強度冷延鋼板は、バンパーやインパクトビーム等の補強材を中心にその適用が急速に進んできている。超高強度の鋼材を使用する上での課題として、遅れ破壊という現象が挙げられる。遅れ破壊は、鋼材にかかる応力や水素脆性に起因するものであり、構造体として使用されている鋼材の応力集中部に水素が拡散されることで、構造体の破壊が起こる現象である。具体的には、例えば、PC鋼線やボルトといった使用状況下にあって高い応力が作用する部材が、突然破壊する現象などが挙げられる。
遅れ破壊は、環境から侵入する水素と密接な関係があることが知られている。環境から鋼材に侵入する水素としては、大気中に含まれる水素、腐食環境下で発生する水素など様々な種類のものが存在する。何れであっても、水素が鋼材中へ侵入した場合、遅れ破壊をもたらす原因となりうる。このことから、鋼材の使用環境としては、水素の存在しない環境下での使用が望まれるものの、構造体あるいは自動車への適用を考えた場合、屋外で使用されることになることから、侵入を避けられない。
また、構造体として使用されている鋼材に働く応力としては、構造体に付与される応力や、構造体の成形時に生じた応力の一部が残留したものである残留応力がある。特に、自動車用の薄鋼板など成形後に部材として使用される構造体では、ボルトや厚板といった製品をそのまま使用する厚板や条鋼と比較して、残留応力が大きな問題となる。したがって、遅れ破壊が問題となる鋼板を成形するにあたっては、残留応力を残さない成形方法が望まれている。
例えば、特許文献1には、鋼板を一旦高温に加熱−加工した後、金型を用いて焼きを入れ高強度化する手法が記載されている。この手法では、鋼材は高温で加工されることから、残留応力の原因となる加工時に導入される転位は回復する、あるいは、加工後に変態が生じて残留応力が緩和されることから、残留応力はあまり残らないことが知られている。したがって、上記のように、熱間で加工を行い、その後の焼き入れを用いて鋼板を強化することにより、遅れ破壊特性を向上できる。
また、切断や打ち抜きと言った機械加工においては、切断面に残留応力が存在することから、遅れ破壊を引き起こす懸念がある。このため、980MPa以上の高強度鋼板の加工時においては、切断にレーザー等の機械加工を伴わない手法を用いることで、残留応力発生を回避している。しかしながら、シャー切断や打ち抜き加工に比較して、レーザー切断はコストが高いという課題がある。
これら課題に対し、鋼材の耐水素脆化特性を向上させることで、遅れ破壊を回避可能な鋼材が開発されてきた。例えば、非特許文献1には、鋼材を高温のオーステナイト単相より焼き入れ、マルテンサイト単相組織とした後、焼き戻し処理を行うことで、Cr、MoやVといった焼き戻し軟化抵抗性を示す添加元素の微細析出物をマルテンサイト中に整合に微細析出させ、鋼材の耐水素脆化特性を向上させた高強度ボルトが記載されている。この手法では、鋼材中に侵入した水素が、マルテンサイト中に整合に析出したVCなどの周りにトラップされることを利用して、一旦、鋼材中に侵入した水素が、応力の集中する遅れ破壊の起点となる部位へ拡散したり集中したりするのを抑制している。この手法を活用して、従来から、高強度で耐遅れ破壊特性に優れた鋼板の開発が進められている。
VC等の水素のトラップサイトを活用した耐遅れ破壊特性の向上は、マルテンサイト組織中へのこれら析出物の整合析出によってもたらされる。したがって、これら析出物を組織中に整合析出させることが必須である。しかしながら、これら析出物の析出には、数時間以上の析出熱処理が必要であり、製造性に問題がある。即ち、連続焼鈍設備や連続溶融亜鉛めっき設備等の一般的な薄鋼板の製造設備を用いて製造される鋼板では、高々数十分という短時間で組織制御が為されていることから、これら析出物による耐遅れ破壊特性向上効果が得難いという問題があった。
また、熱間圧延工程で析出される析出物を活用する場合、熱延工程でこれら析出物が析出していたとしても、その後の冷間圧延時に鋼板が加工され、連続焼鈍時に再結晶することで、析出物と母相であるフェライト、マルテンサイトとの方位関係を失ってしまう、即ち、整合析出物でなくなってしまう。この結果、得られた鋼板の耐遅れ破壊特性も大幅に減じてしまうことになる。
また、通常、遅れ破壊の発生が懸念される高強度鋼板の鋼板組織は、マルテンサイトを主体とする組織である。マルテンサイト組織の形成される温度は、低温であるため、マルテンサイト組織の形成される温度域でVCをはじめとする水素のトラップサイトとなる析出物を析出させることは出来ない。その結果、薄鋼板においてVC等の整合析出物による水素トラップによる耐遅れ破壊特性の向上を意図した場合、連続焼鈍設備や連続溶融亜鉛めっき設備で一旦鋼材の組織を造り込んだ後、付加的な熱処理を施し、これら析出物を析出させる必要があり、大幅な製造コスト増加をもたらす。加えて、マルテンサイトを主体とする組織に付加的な熱処理を施すと、軟化してしまうという問題を生じる。その結果、高強度薄鋼板への耐遅れ破壊特性向上のために、整合析出物を活用することは難しい。
また、非特許文献1に記載の鋼は、Cの含有量が0.4%以上であり、合金元素も多く含むものであることから、薄鋼板で要求される加工性や溶接性が劣悪である。
また、特許文献2には、Ti、Mgを主体とする酸化物によって水素性欠陥を防ぐ技術が記載されている。しかし、特許文献1に記載の技術は、対象が厚鋼板であり、大入熱の溶接後の水素脆性については考慮されているものの、薄鋼板に要求される高い成形性と耐水素脆性の両立に関しては一切考慮されていない。
従来、薄鋼板は(1)板厚が薄いため水素が侵入しても短時間で放出されること、(2)加工性の点で900MPa以上の鋼板の利用がほとんどなかったことなどから、水素脆性に対する問題が小さかった。しかしながら、急速に高強度鋼板の適用に関する要求が高まっていることから、耐水素脆性に優れた高強度鋼板を開発する必要がある。
しかし、耐水素脆性を向上させる技術は、ほとんどがボルトや条鋼、厚板といった製品のままでかつ耐力または降伏応力以下で使用されることの多い鋼材に対して開発されてきた。即ち、自動車部材のような切断、部材成形(プレス成形)といった加工性と同時に、耐水素脆性を求められる鋼材に配慮した技術ではなかった。特に、成形後の部材には、残留応力と呼ばれる応力が部材内部に残留する。残留応力は、局所的ではあるものの、素材の降伏応力を上回るような高い値になる場合がある。このため高い残留応力下で水素脆化が生じないことが求められている。
薄鋼板の水素脆性に関しては、例えば、非特許文献2に残留オーステナイト量の加工誘起変態に起因した水素脆性の助長について報告されている。これは、薄鋼板の成型加工を考慮したものであるが、耐水素脆性性を劣化させない残留オーステナイト量の規制について述べられている。すなわち、特定の組織を持つ高強度薄鋼板に関するものであり、根本的な耐水素脆性向上対策とは言えない。
一般的に、900MPa以上の高強度を確保する手法としては、マルテンサイトを活用した組織強化が知られている。マルテンサイトを高強度化する技術としては、例えば、非特許文献3〜非特許文献5に記載の技術がある。非特許文献3には、マルテンサイトの組織形状の一つであるラス(Lath)状組織(ラスマルテンサイト組織)の硬度(強度)が、マルテンサイト中の固溶C量、結晶粒径、炭化物による析出強化、転位強化に依存することが記載されている。また、非特許文献4および非特許文献5には、結晶粒径、とりわけマルテンサイトを構成する組織単位の一つであるブロックサイズの微細化により、マルテンサイトの強度を大きく増大できることが記載されている。
また、高強度鋼板に関する従来の技術としては、例えば、特許文献3〜特許文献9に記載の技術が挙げられる。また、溶融亜鉛めっき鋼板に関する従来の技術としては、例えば、特許文献10に記載の技術が挙げられる。
特開2002−18531号公報 特開平11―293383号公報 特開平11―100638号公報 特開平11−279691号公報 特開平9−13147号公報 特開2002−363695号公報 特開2003−105514号公報 特開2003−213369号公報 特開2003−213370号公報 特開2002−97560号公報
水素脆性解明の新展開、日本鉄鋼協会、1997年1月発行 CAMP-ISIJ、vol.5、No.6、1839〜1842頁、山崎ら、1992年10月、日本鉄鋼協会発行 F.B.Pickering:Hardenability Concepts with Applications to Steel AIME(1978),p179 M.Wang:IS3-2007,p203 T.Ohmura:IS3-2007,p35
成形後の部材の耐遅れ破壊特性を向上させる手法としては、成形後の部材の残留応力を低減する成形手法を用いることが考えられる。しかしながら、残留応力は、成形後の部材に残留することから、鋼材の特性に依存する部分が多く、かつ、部材形状も大きく変更できない。このことから、成形方法を用いて成形後の部材の残留応力を低減する手法には課題が多い。
また、成形後の残留応力と耐水素脆性を向上させるために、鋼材の特性を制御する手法を用いることが考えられる。すなわち、鋼板の降伏応力を下げると共に、鋼板の均一伸びを大きくすることで、同じ塑性変形を加えた際の耐力を低く抑え、かつ、成形後の部材の残留応力を低減した場合、成形後の部材は耐水素脆性に優れたものになると考えられる。このことから、高強度鋼板の成形後の耐水素脆性を高めるためには、降伏応力が低く、均一伸びが大きいことが望ましい。
しかしながら、マルテンサイト組織を活用して900MPa以上の高強度を確保した鋼板は、高強度であるものの均一伸びが極めて低く、加工性に乏しいともに、仮に成形できたとしても成形後の部材に大きな残留応力が存在する。残留応力は、成形時の応力の一部が鋼材中に残留したものであることから、成形時に高応力となる強度の高い鋼板であるほど残留応力も高くなる。このため、マルテンサイト組織を活用した高強度鋼板は、成形後の部材の耐水素脆性が不十分であり、遅れ破壊の危険が高いという問題を有していた。
この問題を解決する手法として、主相をフェライトとし、硬質組織をマルテンサイトとする複合組織鋼板を用いることが考えられる。このような複合組織鋼板では、軟質なフェライトで延性を確保し、硬質なマルテンサイトで強度の確保を行うが、主相を軟質なフェライトとしているので、降伏応力を大幅に低減できる。
しかしながら、フェライト及びマルテンサイトより成る複相組織鋼板において、鋼板の引張強度900MPa以上を確保するためには、マルテンサイトの体積率を十分に高くする必要があり、均一伸びの劣化や降伏応力上昇が避けられなかった。
この問題を解決するために、マルテンサイト組織の強度を向上させることで、少量のマルテンサイトであっても900MPa以上の強度を確保する手法が考えられる。マルテンサイト組織の強度は、鋼板成分(特に、C)に強く依存することから、鋼板成分の変更無しに強度を高めることは難しい。しかし、Cの添加量を増加させると、スポット溶接をはじめとする溶接性の劣化を招く。このため、成形した部材の締結手段としてスポットやレーザー溶接を用いる薄鋼板や、テーラードブランク材のように溶接後に成形を行う鋼板では、十分な溶接性を確保するために、C添加量を抑制しなければならなかった。したがって、引張最大強度900MPa級の高強度の鋼板を製造する場合には、十分な溶接性が得られる程度に抑えた添加量でCを添加するとともに、マルテンサイトの体積率を増加させて高強度を確保しなければならなかった。その結果、従来の引張最大強度900MPa級の高強度の鋼板では、均一伸びの劣化や降伏応力上昇が避けられなかった。
また、連続焼鈍や連続溶融亜鉛めっきラインのような工程を行う場合、焼鈍、冷却後の過時効帯での焼き戻しや、めっき浴浸漬後の合金化熱処理等の不可避的な熱処理が付加的に行われることによって、マルテンサイト組織が焼き戻しされて軟化するため、更に鋼板の強度が確保し難い。このことから、このような付加的な熱処理を受ける製造設備を用いて、例えば900MPaを超える高強度の鋼板を製造する場合、一般に、マルテンサイト組織が焼き戻しされることによって軟化が生じたとしても、十分な強度を確保できるように、更にマルテンサイト体積率を増加させている。この結果、更なる降伏応力の増加がもたらされる。
上述したように、従来の技術においては、マルテンサイトの体積率を増加させることによって強度を確保していた。しかし、マルテンサイトの体積率を増加させると、降伏応力(YS)が大きくなるため、引張最大強度(TS)と降伏応力(YS)との比からなる降伏比(YR)が大きくなり、耐遅れ破壊特性が劣化する。また、マルテンサイトの体積率を増加させると、延性確保に寄与していたフェライトの体積率が相対的に減少することになり、大幅に延性が劣化して加工性が低下することは避けられない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、硬質組織であるマルテンサイトの体積率を増加させずに、引張最大強度900MPa以上の高い強度を確保することにより、降伏比(YR)が小さく、十分な耐遅れ破壊特性が得られ、十分な延性と高い強度を有する高強度鋼板および高強度鋼板の製造方法を提供することを課題とするものである。
本発明者は、マルテンサイトの体積率を増加させることによって、延性劣化および降伏比(YR)の増大と引き換えに、高い強度を享受するという従来の常識に真っ向から立ち向かい、降伏比(YR)が小さく、十分な延性を有し、なおかつ高い強度が得られる高強度鋼板を実現するために鋭意検討を重ねた。その結果、硬質組織であるマルテンサイトの体積率を増加させずにマルテンサイト組織の強度を高めることにより、延性確保に寄与するフェライト体積の減少を最小限に抑えることができ、十分な延性と、十分な耐遅れ破壊特性を確保できるとともに、引張最大強度900MPa以上の高い強度を確保できる手法を見出し、本発明の高強度冷延鋼板および高強度亜鉛めっき鋼板を想到した。
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)質量%で、C:0.07〜0.25%、Si:0.3〜2.50%、Mn:1.5〜3.0%、Ti:0.005〜0.09%、B:0.0001〜0.01%、P:0.001〜0.03%、S:0.0001〜0.01%、Al:2.5%以下、N:0.0005〜0.0100%、O:0.0005〜0.007%、を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼であり、
鋼板組織がフェライトを主とし、マルテンサイトを含み、フェライトの体積率が50%以上であり、マルテンサイトのブロックサイズが1μm以下であり、マルテンサイト中のC濃度が0.3%〜0.9%であり、引張最大強度(TS)と降伏応力(YS)との比からなる降伏比(YR)が0.75以下であることを特徴とする延性及び耐遅れ破壊特性の良好な引張最大強度900MPa以上を有する高強度鋼板。
(2)さらに、質量%で、Nb:0.005〜0.09%を含有することを特徴とする(1)に記載の延性及び耐遅れ破壊特性の良好な引張最大強度900MPa以上を有する高強度鋼板。
(3)さらに、質量%で、Cr:0.01〜2.0%、Ni:0.01〜2.0%、Cu:0.01〜2.0%、Mo:0.01〜0.8%の1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の延性及び耐遅れ破壊特性の良好な引張最大強度900MPa以上を有する高強度鋼板。
(4)さらに、質量%で、V:0.005〜0.09%含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の延性及び耐遅れ破壊特性の良好な引張最大強度900MPa以上を有する高強度鋼板。
(5)さらに、質量%で、Ca、Ce、Mg、REMの1種または2種以上を合計で0.0001〜0.5%含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の延性及び耐遅れ破壊特性の良好な引張最大強度900MPa以上を有する高強度鋼板。
(6)表面に亜鉛めっき層を有することを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の延性及び耐遅れ破壊特性の良好な引張最大強度900MPa以上を有する高強度鋼板。
また、本発明者は、硬質組織であるマルテンサイトの体積率を増加させずにマルテンサイト組織の強度を高めることができる高強度鋼板の製造方法について鋭意検討を重ねた。その結果、冷延後の焼鈍工程においてTi、Nb、Vなどの微細析出物を析出させて、個々のブロックを形成するマルテンサイトのラスの成長を抑制するとともに、焼鈍を行った後の鋼板に核生成サイトとして転位を導入することにより、異なる複数の方位を有するラスを生成させることで、マルテンサイトのブロックサイズが1μm以下となる延性及び耐遅れ破壊特性の良好な引張最大強度900MPa以上を有する本発明の高強度冷延鋼板または高強度亜鉛めっき鋼板が得られることを見出し、本発明の製造方法を想到した。
(7)(1)〜()のいずれかに記載の高強度鋼板の製造方法であって、(1)〜(5)のいずれかに記載の化学成分を有するスラブを鋳造し、直接又は一旦冷却した後1050℃以上に加熱し、Ar変態点以上で熱間圧延を完了し、400℃〜670℃の温度域にて巻き取り、酸洗後、圧下率40〜70%の冷延を施し、連続焼鈍ラインを通板させるに際して、
加熱時に550℃〜760℃間を30秒以上滞留させ、最高加熱温度760℃〜Ac℃で焼鈍を行った後、最高加熱温度〜630℃間を平均冷却速度14℃/秒以下で冷却し、630℃〜570℃間を平均冷却速度3℃/秒以上で冷却し、700℃〜400℃の温度範囲にてロール径350mm以下のロールを用いて押し込み量1mm以上の曲げ−曲げ戻し変形を行うことを特徴とする延性及び耐遅れ破壊特性の良好な引張最大強度900MPa以上を有する高強度冷延鋼板の製造方法。
(8)前記630℃〜570℃間を平均冷却速度3℃/秒以上で冷却した後、450℃〜250℃の温度域で30秒以上保持することを特徴とする(7)に記載の延性及び耐遅れ破壊特性の良好な引張最大強度900MPa以上を有する高強度冷延鋼板の製造方法。
(9)前記連続焼鈍ラインの焼鈍炉内を、H2を1〜60体積%含有し、残部N、HO、Oおよび不可避的不純物からからなる雰囲気とし、前記雰囲気中の水分圧と水素分圧の対数log(PHO/PH)を−3≦log(PHO/PH)≦−0.5とすることを特徴とする(7)または(8)に記載の延性及び耐遅れ破壊特性の良好な引張最大強度900MPa以上を有する高強度冷延鋼板の製造方法。
(10)(7)〜(9)のいずれか1項に記載の高強度冷延鋼板の製造方法で高強度冷延鋼板を製造した後、亜鉛電気めっきを施すことを特徴とする延性及び耐遅れ破壊特性の良好な引張最大強度900MPa以上を有する高強度亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(11)(6)に記載の高強度鋼板の製造方法であって、(1)〜(5)のいずれかに記載の化学成分を有するスラブを鋳造し、直接又は一旦冷却した後1050℃以上に加熱し、Ar変態点以上で熱間圧延を完了し、400℃〜670℃の温度域にて巻き取り、酸洗後、圧下率40〜70%の冷延を施し、連続溶融亜鉛めっきラインを通板させるに際して、
加熱時に550℃〜760℃間を30秒以上滞留させ、最高加熱温度760℃〜Ac℃で焼鈍した後、最高加熱温度〜630℃間を平均冷却速度14℃/秒以下で冷却し、630℃〜〔(亜鉛めっき浴温度−40℃)〜(亜鉛めっき浴温度+50℃)〕℃間を平均冷却速度3℃/秒以上で冷却し、700℃〜400℃の温度範囲にてロール径350mm以下のロールを用いて押し込み量1mm以上の曲げ−曲げ戻し変形を行った後、亜鉛めっき浴に浸漬し、冷却を行うことを特徴とする延性及び耐遅れ破壊特性の良好な引張最大強度900MPa以上を有する高強度亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(12)前記亜鉛めっき浴に浸漬した後、460℃〜600℃の温度で合金化処理を施し、冷却を行うことを特徴とする(11)に記載の延性及び耐遅れ破壊特性の良好な引張最大強度900MPa以上を有する高強度亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(13)前記連続溶融亜鉛めっきラインの焼鈍炉内を、H2を1〜60体積%含有し、残部N、HO、Oおよび不可避的不純物からからなる雰囲気とし、前記雰囲気中の水分圧と水素分圧の対数log(PHO/PH)を−3≦log(PHO/PH)≦−0.5とすることを特徴とする(11)または(12)のいずれか1項に記載の延性及び耐遅れ破壊特性の良好な引張最大強度900MPa以上を有する高強度亜鉛めっき鋼板の製造方法。
本発明によれば、硬質組織であるマルテンサイトの体積率を増加させずに引張最大強度900MPa以上の高い強度を確保することができ、降伏比(YR)が小さく、十分な耐遅れ破壊特性が得られ、十分な延性と高い強度を有する高強度冷延鋼板および高強度亜鉛めっき鋼板とその製造方法を提供できる。
応力―歪曲線である。 図2は、フランジ成形された後の試験片の形状を説明するための図である。
本発明の高強度鋼板は、延性及び耐遅れ破壊特性が良好で引張最大強度900MPa以上を有するものである。
本発明の高強度鋼板の鋼板組織は、フェライトを主としマルテンサイトを含むものであり、ベイナイトを含んでいてもよい。本発明の高強度鋼板の鋼板組織では、フェライトの体積率は50%以上とされている。フェライトの体積率が50%未満であると、マルテンサイトの体積率が相対的に高いものとなり、降伏応力(YS)が大きくなって、降伏比(YR)が大きくなり、残留応力が大きくなるので、耐遅れ破壊特性が十分に得られない。
本発明の高強度鋼板の鋼板組織では、延性を確保する観点から、フェライトの体積率は出来るだけ高くする必要がある。ただし、マルテンサイトを硬質化したとしても、得られる強度には限りがあることから、引張最大強度に依存して、必要とするフェライトの体積率は変化する。
例えば、引張最大強度900〜1130MPaの範囲の高強度鋼板であれば、フェライトの体積率は60%〜85%の範囲であることが好ましく、65%〜80%の範囲であることがより好ましい。
引張最大強度1130〜1280MPaの範囲の高強度鋼板であれば、フェライトの体積率は55%〜80%の範囲であることが好ましく、60%〜75%の範囲であることがより好ましい。
引張最大強度1280〜1580MPaの範囲の高強度鋼板であれば、フェライトの体積率は50%〜75%の範囲であることが好ましく、55%〜70%の範囲であることがより好ましい。
フェライトの体積率を上記範囲に制御することで、引張最大強度900MPa以上の高強度と、引張最大強度(TS)と引張試験における全伸び(El.)の積である強度−延性バランス(TS×El.)を18000(MPa×%)以上とすることが出来、優れた延性を同時に具備することが出来る。
これに対し、例えば、従来鋼では、マルテンサイトの体積率を増加させることによって、強度を高めているので、引張最大強度590MPa程度の鋼では、フェライトの体積率は90%程度であるが、引張最大強度980MPa程度の鋼では、フェライトの体積率は50%程度であり、引張最大強1180MPa程度の鋼では、フェライトはほとんど含まれていなかった。
また、本発明においては、フェライトの平均結晶粒径(dF)を5μm以下とすることが好ましく、4.5μm以下とすることがより好ましく、4μm以下とすることが最も好ましい。
フェライトの平均結晶粒径(dF)を上記範囲としたのは、結晶粒径を細粒化することにより、延性をあまり劣化させずに引張最大強度を増加させるためである。フェライトの平均結晶粒径が上記範囲を超えると、細粒化による強度上昇の寄与が小さくなることから、マルテンサイトの体積率を増加させることにより強度を補わねばならなくなり、フェライトの体積率の低下やこれに伴う大幅な延性劣化を引き起こすことから好ましくない。また、フェライトの平均結晶粒径を5μm以下とすることで、変形の局在化や亀裂伝播が生じ難くなり、引張変形であれば局部延性の向上、曲げや穴拡げ成形であれば、曲げ性や穴拡げ率の向上がもたらされる。ただし、フェライトの粒径の低下は、降伏応力の増加を招くことから、フェライトの平均結晶粒径を極端に低下させることは好ましくなく、その下限値は、1μm以上とすることが望ましい。
また、マルテンサイトの平均結晶粒径(dM)は、フェライトの平均結晶粒径(dF)の1/3以下とすることが好ましく、具体的には、1.5μm以下とすることが好ましく、1.2μm以下とすることがより好ましく、0.9μm以下とすることが最も好ましい。
マルテンサイトの平均結晶粒径(dM)を上記範囲としたのは、変形の際のフェライトとマルテンサイトとの界面での変形の集中を抑制し、界面へのマイクロボイドや亀裂形成を抑制するためである。即ち、軟質なフェライトと硬質なマルテンサイトは、変形能が大きく異なるため、引張変形であればネッキング後の大変形下、曲げ成形であれば小Rでの曲げ加工中、あるいは、穴拡げ成形中に、フェライトとマルテンサイトとの界面に変形が集中し、破壊へと至ってしまう。そこで、マルテンサイトを細粒化し、個々の界面への変形の集中を抑制することで、これら特性の大幅な向上を図ることができる。加えて、シャー切断や打ち抜き加工のような機械加工を行う際に、切断部に粗大なマルテンサイトが存在すると、マルテンサイトを起点にした疵や微細な割れを生じることになり、引き続いて行われる加工の際の加工性を大幅に減じることになる。このことから、マルテンサイトの粒径は出来るだけ小さくすることが好ましい。
また、本発明の高強度鋼板は、マルテンサイト中のC濃度が0.3%〜0.9%であるものであり、0.35%〜0.8%であることが好ましく、0.4%〜0.7%であることがより好ましい。マルテンサイト中のC濃度が上記範囲未満であると、マルテンサイト中のCによるマルテンサイトを強化する効果が十分に得られず、高強度鋼板の強度が不足する。また、マルテンサイト中のC濃度が上記範囲を超えると、溶接性や加工性が不十分となる。
マルテンサイト中のC濃度は、例えば以下に示す方法により求められる。まず、圧延方向に平行な断面にて鋼板を埋め込み、研磨する。その後、SEMによる組織観察を行い、各組織の位置を特定し、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)にてマルテンサイト中のC濃度を測定する。マルテンサイト中のC濃度は、点分析によって測定できるが、面分析を行って組織内のC濃度分布を得ることにより測定することが好ましい。一般的に、フェライトはCをほとんど含まないが、マルテンサイトはCを多量に含む。このことから、予め鋼板組織がフェライト及びマルテンサイトより成る組織であることが光学顕微鏡によって確認されているのであれば、EPMAによる成分マッピングのみであっても、マルテンサイト中のC濃度の測定は可能である。ただし、本発明の高強度鋼板は、Ti炭化物の析出制御を行っていることから、フェライト及びマルテンサイトの結晶粒径が小さい。したがって、面分析を行う場合のステップサイズは出来るだけ小さいことが望ましく、1μm以下であることが望ましい。しかし、ステップサイズを過度に小さくすると、測定に長時間を要することから、0.05μm以上とすることが望ましい。
また、本発明の高強度鋼板の鋼板組織に含まれるマルテンサイトは、粒状であり、フェライト粒界、あるいは、粒内の何れにも存在することが可能である。マルテンサイト組織は、パケット、ブロック、ラスと言った階層構造により構成されている。
パケットは、母相オーステナイトの同一晶癖面を有し、結晶方位の異なる複数のブロックにより構成されている。一つのパケットは、K−S関係(Kurdjumov−Sachs関係)を有する最大6つのブロックから構成されている。なお、一般的な光学顕微鏡観察では、結晶方位差の小さいバリアント(結晶構造が同じで結晶方位が異なる兄弟晶)を有するブロックを区別できないため、結晶方位差11°以下の2つのバリアントのペアが一つのブロックとして定義される。この場合、一つのパケットは、3つのブロックから構成されることになる。
ブロックは、同一結晶方位を有するラスの集合体である。ブロックの内部には、個々のラスの境界が存在しているものの、個々のブロック内のラスは同一結晶方位を有することから、変形時にはあたかも一つの粒であるかのように働く。したがって、マルテンサイトの強度は、ブロックサイズに依存する。
ラスは、針状、観察方向によっては粒状のものである。また、ラスは、母相のオーステナイトとK−S関係を有しており、母相に対し24通りの方位関係を有するものが存在する。
マルテンサイト組織を構成するパケット、ブロック、ラスは、透過型電子顕微鏡(TEM)による組織観察や走査電子顕微鏡(SEM)−後方散乱電子回折(EBSP)法を用いた結晶方位解析、電界放射型走査電子顕微鏡(FE(Field Emission)−SEM)−EBSP法を用いた高分解能結晶方位解析などによって確認できる。
本発明者は、鋼板中に存在するマルテンサイトのブロックサイズと鋼板の強度との関係に着目して検討し、マルテンサイトのブロックサイズを微細化とすることにより、鋼板の強化組織として活用されるマルテンサイトをより高強度化できることを見出し、低い降伏応力を確保しうるフェライトの体積率を確保したまま、900MPaを超えるような高強度化を図ることが可能であることを見出した。具体的には、マルテンサイトのブロックサイズを1μm以下にすることで、マルテンサイトを強化組織としてこれまで以上に活用することができる。
本発明の高強度鋼板の鋼板組織を構成するマルテンサイトは、1μm以下のブロックサイズより構成されている。ブロックサイズが1μmを超えると、マルテンサイトを強化する効果が十分に得られず、高強度鋼板の強度が不足する。
例えば、従来鋼では、結晶方位を同じくするマルテンサイトのブロックサイズは、数μmから数十μmときわめて大きいものであった。このため、従来鋼では、例えば、鋼板組織を数μm以下に制御した場合、鋼板の強化組織として活用される個々のマルテンサイト粒のサイズが数μm以下となり、個々のマルテンサイト粒が単一のブロックより構成されることになる。その結果、従来鋼では、マルテンサイトを強化組織として十分に活用することができなかった。
マルテンサイトのブロックサイズは、TEMによる組織観察やSEM−EBSP法、FE−SEM−EBSP法などによって測定できる。SEM−EBSP法は、広範囲の面積を短時間で測定可能であるため好ましい。また、FE−SEM−EBSP法は、高精度で組織観察を行うことができ、望ましい。
FE−SEM−EBSP法を用いて組織観察を行う場合、測定点の間隔は、組織の方位解析が可能である範囲であればよいが、10nm〜200nmとすることが好ましい。測定点の間隔が200nmを超えると、精度が低下して、正確なブロックサイズの測定が出来ない場合がある。また、測定点の間隔が10nm未満であると、精度の点からは望ましいものの、測定時間が極めて長時間となる。
なお、本発明において、FE−SEM−EBSP法を用いてマルテンサイトのブロックサイズを測定する場合、予備実験にて、数個のマルテンサイト粒のブロックサイズを測定して、組織の方位解析が可能である測定点の間隔を決定してから行うことが好ましい。
また、本発明の高強度鋼板は、引張最大強度(TS)と降伏応力(YS)との比からなる降伏比(YR)が0.75以下、好ましくは0.5〜0.725の範囲であり、より好ましくは0.55〜0.7の範囲であるものである。
降伏比を0.75以下としたのは、成形時に各部位に働く応力を低下させるためである。即ち、残留応力は成形時に導入された転位の一部が、成形後の鋼板中に残留することで生じる。したがって、成形時に各部位に働く応力を下げることにより、残留応力を低下させることができる。降伏比(YR)が0.75を超えると、成形後の耐力が大きくなると共に、残留応力が大きくなるので、耐遅れ破壊特性が十分に得られない。
なお、成形時に部材各部位に生じる導入される歪量は、部材形状で決定される。したがって、部材形状が同一であれば、鋼板の強度に関係なく同様の歪が導入されることになる。また、高強度鋼板は、比較的単純な形状で用いられる場合が多いため、通常、成形後の部材にかかる歪量は小さい。このため、同一歪量で比較した場合の残留応力は、降伏比(YR)が低い鋼ほど低くなり、降伏比(YR)が低い鋼ほど遅れ破壊特性に優れたものとなる。
本発明の高強度鋼板は、降伏比を下げるためにフェライトを主とし、高い強度を確保するためにマルテンサイトを含むものであるので、高強度で、かつ、均一伸びが極めて高いものである。本発明においては、高強度鋼板の均一伸びは、以下に示すように、出来るだけ大きいことが望ましい。すなわち、均一伸びが小さく降伏比が低い鋼板は、大きな変形を伴う部位へ適用した場合に、少ない変形量で大幅に高強度化することになるため、成形時の応力は引張最大応力に近くなる。したがって、均一伸びが小さい鋼板では、降伏比を下げたとしても、残留応力の低下や、これによる遅れ破壊特性の向上効果は得られない。よって、高強度鋼板の耐遅れ破壊特性を向上させるためには、均一伸びは出来るだけ大きいことが望ましい。具体的には、高強度鋼板の自動車用構造部材への適用を考えた場合、均一伸びが5%を超えることが望ましく、7%以上とすることがより望ましい。
本発明の高強度鋼板において、遅れ破壊特性は、例えば、以下に示す方法によって、評価できる。
まず、高強度鋼板を圧延方向に直角方向に切り出した矩形状の試験片を用意し、試験片の端部を機械研削することで切断時に導入された残留応力を除去する。これは、切断時に導入される残留応力や切断によって生じるバリや端面の凹凸を除去し、加工によって導入される残留応力と鋼板の特性、並びに、遅れ破壊特性の関係を正確に評価するためである。機械研削を行わないと、遅れ破壊特性評価結果が、シャーの磨耗による不均一なバリや端面凹凸の影響によってばらつき、正確な評価が出来ない場合がある。このことから試験片の端部は、機械研削する必要がある。その後、試験片の長さ方向中心において曲げ加工を行い、幅方向の断面を略L字型とし、試験片の幅方向端部をフランジアップ加工することにより、長さ方向の断面を略コ字型とする。
その後、試験片を0.5mol/lの硫酸中に漬け、電流によって2時間電解して、試験片中に水素を侵入させる。その後、溶液より試験片を取り出し、目視にて試験片の割れの発生を評価する方法によって行うことができる。
なお、試験片中に水素を侵入させる前の試験片の形状は、成形後の遅れ破壊特性が評価できる形状であればよく、特に限定されるものではない。試験片中に水素を侵入させる前の試験片の形状は、例えば、円筒状の絞り部材の形状、曲げ試験後の部材の形状、張り出し試験後の部材の形状、あるいは、これらを組み合わせた形状の何れであっても構わない。
また、遅れ破壊特性は、シャー切断等の機械加工によって生じた残留応力や欠陥の影響を受けるため、試験片の割れの発生を評価する前に、試験片の板端部に対し機械研削などの機械加工を行うことが好ましいが、遅れ破壊特性を評価できるのであれば、試験片の板端部に対し機械加工を行わなくてもよい。
次に、本発明の高強度鋼板の化学成分(組成)について説明する。なお、以下の説明における[%]は[質量%]である。
「C:0.07〜0.25%」
Cは、マルテンサイトの強度を高めるものであり、高強度鋼板の強度を高めるために含有させる。しかし、Cの含有量が0.25%を超えると溶接性や加工性が不十分となる。また、Cの含有量が0.07%未満であると強度が不十分となる。Cの含有量は、0.08〜0.23%の範囲であることが好ましく、0.09〜0.21%の範囲であることがより好ましい。
「Si:0.3〜2.50%」「Al:2.5%以下」
SiおよびAlは、フェライト安定化元素であり、Ac変態点を増加させることから、広い焼鈍温度にて多量のフェライトを形成させることが可能であり、組織制御性向上の観点から含有させる。また、SiおよびAlは、固溶強化にも寄与することから、積極的に含有させることが望ましい。フェライトは、Cをほとんど含まないbcc相であるので、多量のフェライトを形成させることで、オーステナイト中にCを濃化させることができる。オーステナイト中にCを濃化させることで、マルテンサイトの高強度化にも寄与する。
Siの含有量が0.3%未満であると、フェライトの体積率が不十分になり、高強度鋼板の延性及び曲げ性、強度が不十分となる。なお、Alを含有する場合、Siを含有する場合と同様の効果が得られるが、Siのみを含有させることにより上記の効果が十分に得られる場合には、Alを含有していなくてもよい。また、Siの含有量が2.50%を超えたり、Alの含有量が2.5%を超えたりすると、溶接性や加工性が不十分となる。
Siの含有量は、0.45〜2.35%の範囲であることが好ましく、0.6〜2.2%の範囲であることがより好ましい。Alの含有量は、0.005〜1.6%の範囲であることが好ましく、0.01〜0.6%の範囲であることがより好ましい。また、Alは脱酸材としても活用可能であることから、鋼板の組織制御のみならず、脱酸のために含有させても良い。
また、本発明の高強度鋼板の製造方法において、連続焼鈍ラインや連続溶融亜鉛めっきラインを通板する際の加熱時に760℃〜Ac℃の低温で焼鈍を行う場合、焼鈍時のフェライトおよびオーステナイト体積率は焼鈍温度に依存して変化する。即ち、焼鈍温度が760℃未満と低い場合、セメンタイトの溶解に長時間を要することから、オーステナイト(冷却後は、マルテンサイト)が少なくなりすぎてしまい900MPa以上の引張最大強度を確保できない。一方、焼鈍温度がAc℃を超えると、オーステナイト単相域焼鈍となり、そのまま冷却した場合、マルテンサイト単相組織になり、本発明の組織を得ることが出来ない。このことから、材質バラツキの小さい鋼板を製造するためには、Ac変態点が十分高く、焼鈍温度が変化しても、鋼板組織があまり変化しないことが望ましい。SiやAlは、Ac変態点を増加させることから、上記の範囲内でSiおよびAlを多量に含有させてAc変態点を増加させることで、鋼板組織を焼鈍温度に依存させ難くすることが望ましい。
本発明において、Acとは、オーステナイト単相となる下限の温度を意味し、長さ変化の温度依存性の調査を行うことで測定可能である。即ち、鋼において室温で安定なフェライトと、高温で安定なオーステナイトは、密度や熱膨張係数が異なる。この結果、試験片の長さ変化の温度依存性を測定することで、Ac変態点を簡便に測定できる。
「Mn:1.5〜3.0%」
Mnは、高強度鋼板の強度を高めるために含有される。しかし、Mnの含有量が3.0%を超えるとマルテンサイトの体積率が多くなりすぎて、延性確保に寄与するフェライトの体積率が不十分となり、延性及び曲げ性が不十分となる。また、Mnの含有量が3.0%を超えると、Mnの偏析に起因した鋼板表層の硬度分布も大きくなる。一方、Mnの含有量が1.5%未満であると、冷却過程で生じるパーライト変態を抑制することが出来ず、鋼板組織がフェライト及びパーライト組織となってしまい、強度が不十分となる。Mnの含有量は、1.6〜2.8%の範囲であることが好ましく、1.7〜2.6%の範囲であることがより好ましい。
「Ti:0.005〜0.09%」
Tiは、強化元素であり、析出物強化、フェライト結晶粒の成長抑制による細粒強化および再結晶の抑制を通じた転位強化にて、鋼板の強度上昇に寄与する。また、Tiは、Bが窒化物となることを抑制するためにも含有される。Bは、熱延時の組織制御性や、連続焼鈍設備や連続溶融亜鉛めっき設備での組織制御と高強度化に寄与するものの、Bが窒化物になるとこの効果が得られない。しかし、Tiの含有量が0.09%を超えると、炭窒化物の析出が多くなり、成形性が劣化する。また、Tiの含有量が0.09%を超えると、連続焼鈍や連続溶融亜鉛めっき設備での製造の際に、フェライトの再結晶を大幅に遅延することから、焼鈍後に未再結晶フェライトが残り易く、大幅な降伏応力の増加をもたらす場合がある。また、Tiは0.015%以上含有されることが好ましい。この場合、マルテンサイトのラスの成長を十分に抑制することができる。
「B:0.0001〜0.01%」
Bは、オーステナイトからのフェライト変態を遅延することから、鋼板の高強度化に活用できる。加えて、Bは、熱延時において、オーステナイトからのフェライト変態を遅延させることから、熱延板をベイナイト単相組織とし、熱延板の均質性を高めて、曲げ性を向上させることができる。Bの含有量が0.0001%未満であると、十分な効果が得られない。Bの含有量が0.01%を超えると、その効果が飽和するばかりでなく、熱延時の製造性が低下する。Bの含有量は、0.0003〜0.007%の範囲であることが好ましく、0.0005〜0.005%の範囲であることがより好ましい。
「P:0.001〜0.03%」
P:Pは、鋼板の板厚中央部に偏析する傾向があり、溶接部を脆化させる。Pの含有量が0.03%を超えると、溶接部の脆化が顕著になるため、その適正範囲を0.03%以下に限定した。Pの含有量の下限値は特に定めないが、0.001%未満とすることは、経済的に不利であることからこの値を下限値とする。
「S:0.0001〜0.01%」
Sは、溶接性、鋳造時および熱延時の製造性に悪影響を及ぼす。このことから、Sの含有量の上限値を0.01%以下とした。Sの含有量の下限値は特に定めないが、0.0001%未満とすることは、経済的に不利であることからこの値を下限値とする。また、Sは、Mnと結びついて粗大なMnSを形成して、曲げ性を低下させる。このことから、曲げ性向上のために、出来るだけSの含有量を少なくする必要がある。
「N:0.0005〜0.0100%」
Nは、粗大な窒化物を形成し、曲げ性や穴拡げ性を劣化させることから、含有量を抑える必要がある。Nの含有量が0.0100%を超えると、この傾向が顕著となる。加えて、Nの含有量が0.0100%を超えると、溶接時のブローホール発生の原因になる。このことから、Nの含有量は少ない方が良い。Nの含有量の下限は、特に定めることなく本発明の効果は発揮されるが、Nの含有量を0.0005%未満とすることは、製造コストの大幅な増加を招くことから、これが実質的な下限である。
「O:0.0005〜0.007%」
Oは、酸化物を形成し、曲げ性や穴拡げ性を劣化させることから、含有量を抑える必要がある。特に、酸化物は介在物として存在する場合が多く、打抜き端面あるいは切断面に存在すると、端面に切り欠き状の傷や粗大なディンプルを形成して、曲げ時や強加工時に、応力集中を招き、亀裂形成の起点となって大幅な穴拡げ性あるいは曲げ性の劣化をもたらす。Oの含有量が0.007%を超えると、この傾向が顕著となる。Oの含有量を0.0005%と未満とすることは、過度のコスト高を招き経済的に好ましくない。ただし、Oの含有量を0.0005%未満としたとしても、本発明の効果である900MPa以上の引張最大強度と優れた延性と曲げ性を確保可能である。
本発明の高強度鋼板においては、更に、必要に応じて、以下に示す元素を含んでいてもよい。
「Nb:0.005〜0.09%」
Nbは、強化元素であり、Tiと同様に、析出物強化、フェライト結晶粒の成長抑制による細粒強化および再結晶の抑制を通じた転位強化にて、鋼板の強度上昇に寄与する。しかし、Nbの含有量が0.09%を超えると、炭窒化物の析出が多くなり、成形性が劣化する。また、Nbの含有量が多いと、連続焼鈍や連続溶融亜鉛めっき設備での製造の際に、フェライトの再結晶を大幅に遅延することから、焼鈍後に未再結晶フェライトが残り易く、大幅な降伏応力の増加をもたらす。このことから、Nbの含有量の上限を0.09%とすることが好ましい。また、Nbの含有量が0.005%未満であると、Nbを含有することによって得られる上記効果が不十分となる。Nbの含有量は、0.01〜0.08%の範囲であることが好ましく、0.015〜0.07%の範囲であることがより好ましい。
「Cr:0.01〜2.0%」「Ni:0.01〜2.0%」「Cu:0.01〜2.0%」「Mo:0.01〜0.8%」の1種または2種以上
Cr、Ni、Cu、Moは、強度の向上に寄与する元素であり、Mnの一部に代えて用いることができる。Cr、Ni、Cu、Moは、1種又は2種以上を、それぞれ、0.01%以上含有することが好ましい。一方、各元素の含有量が多すぎると、酸洗性や溶接性、熱間加工性などが劣化することがあるため、Cr、Ni、Cuの含有量は2.0%以下であることが好ましく、Moの含有量は0.8%以下であることが好ましい。
「V:0.005〜0.09%」
Vは、強化元素であり、TiやNbと同様に、析出物強化、フェライト結晶粒の成長抑制による細粒強化および再結晶の抑制を通じた転位強化にて、鋼板の強度上昇に寄与する。また、Vを含有させることで、遅れ破壊特性を向上させることができることから、本発明においては含有させることが望ましい。しかし、Vの含有量が0.09%を超えると、炭窒化物の析出が多くなり成形性が劣化する。また、Vの含有量が多いと、連続焼鈍や連続溶融亜鉛めっき設備での製造の際に、フェライトの再結晶を大幅に遅延することから、焼鈍後に未再結晶フェライトが残り易く、大幅な降伏応力の増加をもたらす。このことからVの含有量の上限を0.09%とすることが好ましい。また、Vの含有量が0.005%未満であると、Vを含有することによって得られる上記効果が不十分となる。Vの含有量は、0.01〜0.08%の範囲であることが好ましく、0.015〜0.07%の範囲であることがより好ましい。
「Ca、Ce、Mg、REMの1種または2種以上を合計で0.0001〜0.5%」
本発明の高強度鋼板においては、Ca、Ce、Mg、REMから選ばれる1種または2種以上を合計で0.0001〜0.5%含有できる。Ca、Ce、Mg、REMは、酸化物や硫化物の形態制御に用いられる元素であり、1種または2種以上を合計で0.0001%以上含有することで、脱酸後の酸化物サイズや、熱延板中に存在する硫化物のサイズを低下させることが可能であり、曲げ性の向上に寄与する。しかしながら、それらの含有量が合計で0.5%を超えると、成形加工性の悪化の原因となる。
なお、REMとは、Rare Earth Metalの略であり、ランタノイド系列に属する元素をさす。本発明において、REMやCeはミッシュメタルにて添加されることが多く、LaやCeの他にランタノイド系列の元素を複合で含有する場合がある。不可避不純物として、これらLaやCe以外のランタノイド系列の元素を含んだとしても本発明の効果は発揮される。また、金属LaやCeを添加したとしても本発明の効果は発揮される。
また、本発明の高強度鋼板は、表面に亜鉛めっき層や合金化した亜鉛メッキ層が形成されることにより、高強度亜鉛めっき鋼板とされていてもよい。高強度鋼板の表面に亜鉛めっき層が形成されていることにより、優れた耐食性を有するものとなる。また、高強度鋼板の表面に、合金化した亜鉛メッキ層が形成されていることにより、優れた耐食性を有し、塗料の密着性に優れたものとなる。
次に、本発明の高強度鋼板の製造方法について説明する。
本発明の高強度鋼板を製造するには、まず、上述した化学成分(組成)を有するスラブを鋳造する。
次に、鋳造されたスラブを直接又は一旦冷却した後1050℃以上に加熱し、Ar変態点以上で熱間圧延を完了し、400℃〜670℃の温度域にて巻き取り、酸洗後、圧下率40〜70%の冷延を施す。
本実施形態において、熱間圧延に供するスラブは、特に限定されるものではない。すなわち、熱間圧延に供するスラブは、連続鋳造スラブや薄スラブキャスターなどで製造したものであればよく、連続鋳造−直接圧延(CC−DR)のようなプロセスにも適合する。
熱間圧延のスラブ加熱温度は、1050℃以上にする必要がある。スラブ加熱温度が1050℃未満であると、仕上げ圧延温度がAr点を下回ってしまう場合があり、フェライト及びオーステナイトの二相域圧延となり、熱延板組織が不均質な混粒組織となり、冷延及び焼鈍工程を経たとしても不均質な組織が解消されず、延性や曲げ性に劣るものとなる。また、本発明においては、焼鈍後に900MPa以上の引張最大強度を確保するため、多量の合金元素を含有させていることから、仕上げ圧延時の強度も高くなりがちである。スラブ加熱温度が1050℃未満であると、仕上げ圧延温度の低下を招き、更なる圧延荷重の増加を招き、圧延が困難となったり、圧延後の鋼板の形状不良を招く懸念がある。また、スラブ加熱温度の上限は特に定めることなく、本発明の効果は発揮されるが、加熱温度を過度に高温にすることは、経済上好ましくない。このことから、スラブ加熱温度の上限は1300℃未満とすることが望ましい。
なお、本実施形態において、Ar変態点は次の式により計算する。
Ar変態点(℃)=901−325×C+33×Si−92×(Mn+Ni/2+Cr/2+Cu/2+Mo/2)
(式中のC、Si、Mn、Ni、Cr,Cu、Moは、鋼中の各成分の含有量[質量%]である。)
熱間圧延の仕上げ圧延温度(熱間圧延完了温度)は、Ar変態点以上であればよく、上限は特に定めることなく、本発明の効果は発揮される。圧延温度がAr変態点未満であると、圧延荷重が過度に高くなり製造が困難となると共に、フェライトとオーステナイトの二相域で熱間圧延を受けることから、熱間圧延後の鋼板のミクロ組織が不均一となってしまう。即ち、仕上げ圧延中に形成したフェライトは、圧延にて延ばされ、粗大となり、圧延後にオーステナイトから変態したフェライトは微細なものとなる。このような不均一なミクロ組織は、冷間圧延-焼鈍を行って組織制御を行ったとしても、材質がばらつくことから好ましくない。一方、熱間圧延の仕上げ圧延温度を過度に高温とした場合、その温度を確保するために、スラブの加熱温度を過度に高温にせねばならなくなり、好ましくない。このことから、熱間圧延の仕上げ圧延温度の上限温度を、1000℃以下とすることが望ましい。
次に、熱間圧延を完了した鋼板を400℃〜670℃の温度域にて巻き取る。巻き取り温度が670℃を超えると、熱延組織中に粗大なフェライトやパーライト組織が存在するものとなる。このため、焼鈍後の組織不均質性が大きくなり、ブロックサイズが1μmを超え、最終製品の曲げ性が劣化する。また、巻き取り温度が670℃を超えると、鋼板表面に形成される酸化物の厚さが過度に増大するため、後述する酸洗による効果が十分に得られなくなるので好ましくない。
また、巻き取り温度が630℃以下であると、焼鈍後の組織を微細にして強度延性バランスを向上させるとともに、焼鈍後の組織を均質分散させて曲げ性を向上させることができ、より好ましい。しかし、巻き取り温度が400℃未満になると、極端に熱延板強度が増加することから、冷間圧延の際に板破断や形状不良といったトラブルを誘発しやすくなる。したがって、巻き取り温度の下限は、400℃とする必要がある。
なお、仕上げ圧延は、熱延時に粗圧延板同士を接合して連続的に行っても良い。また、粗圧延板は、一旦巻き取っても構わない。
次に、熱間圧延を完了し、巻き取られた鋼板を酸洗する。酸洗を行うことにより、鋼板表面の酸化物を除去することができる。このため、酸洗は、最終製品の冷延高強度鋼板の化成性や、溶融亜鉛あるいは合金化溶融亜鉛めっき鋼板用の冷延鋼板の溶融めっき性を向上させるために、重要である。酸洗は、一回行っても良いし、複数回に分けて行っても良い。
次に、酸洗後の熱延鋼板に圧下率40〜70%の冷延を施す。ここでの圧下率が40%未満であると、冷延後に得られる冷延鋼板の形状を平坦に保つことが困難となるし、最終製品の延性が劣悪となる。一方、圧下率が70%を越えると、冷延荷重が大きくなりすぎて、冷延が困難となる。圧下率は45〜65%であることがより好ましい。なお、圧延パスの回数や各圧延パス毎の圧下率については、特に規定することなく本発明の効果が発揮される。
その後、得られた冷延鋼板を、連続焼鈍ラインを通板させて高強度冷延鋼板を製造する。この際、以下に示す第1条件または第2条件で行う。
「第1条件」
連続焼鈍ラインを通板させるに際して、加熱時に550℃〜760℃間を30秒以上滞留させ、最高加熱温度760℃〜Ac℃で焼鈍を行った後、最高加熱温度〜630℃間を平均冷却速度5℃/秒以下で冷却し、630℃〜570℃間を平均冷却速度3℃/秒以上で冷却し、700℃〜400℃の温度範囲にてロール径350mm以下のロールで曲げ−曲げ戻し変形を行った後、平均冷却速度3℃/秒以上で室温まで冷却する。
「第2条件」
連続焼鈍ラインを通板させるに際して、上述した第1条件と同様にして、焼鈍を行った後、最高加熱温度〜630℃間および630℃〜570℃間を第1条件と同様にして冷却し、第1条件と同様にして曲げ−曲げ戻し変形を行い、450℃〜250℃の温度域で30秒以上保持した後、平均冷却速度3℃/秒以上で室温まで冷却する。
さらに、本発明においては、第1条件または第2条件で連続焼鈍ラインを通板させることによって得られた高強度冷延鋼板に、亜鉛電気めっきを施すことにより、高強度亜鉛めっき鋼板としてもよい。
また、本発明においては、上記の方法によって得られた冷延鋼板を、連続溶融亜鉛めっきラインに通板させて、高強度亜鉛めっき鋼板を製造してもよい。この場合、以下に示す第3条件または第4条件で行う。
「第3条件」
連続溶融亜鉛めっきラインを通板させるに際して、上述した第1条件と同様にして、焼鈍を行った後、最高加熱温度〜630℃間を第1条件と同様にして冷却し、その後、630℃〜〔(亜鉛めっき浴温度−40℃)〜(亜鉛めっき浴温度+50℃)〕℃間を平均冷却速度3℃/秒以上で冷却し、第1条件と同様にして曲げ−曲げ戻し変形を行った後、亜鉛めっき浴に浸漬し、冷却を行う。
このように、630℃〜〔(亜鉛めっき浴温度−40℃)〜(亜鉛めっき浴温度+50℃)〕℃間を好適な温度で冷却して、亜鉛めっき浴に浸漬することで、表面に亜鉛めっき層の形成された高強度亜鉛めっき鋼板が得られる。
「第4条件」
連続溶融亜鉛めっきラインを通板させるに際して、上述した第3条件と同様にして、亜鉛めっき浴に浸漬するまでの工程を行った後、460℃〜600℃の温度で合金化処理を施し、冷却を行う。
このような合金化処理を行うこことで、表面に亜鉛メッキ層が合金化されてなるZn−Fe合金が形成され、表面に合金化した亜鉛メッキ層を有する高強度亜鉛めっき鋼板が得られる。
本発明の高強度冷延鋼板または高強度亜鉛めっき鋼板の製造方法においては、スラブとして、微細析出物を析出する元素であるTiを含み、必要に応じて微細析出物を析出する元素であるNb、Vなどを含む上述した化学成分(組成)を有するスラブを用いている。したがって、上記の方法によって冷延鋼板を製造し、第1条件〜第4条件のいずれかの条件で、高強度冷延鋼板または高強度亜鉛めっき鋼板を製造する場合、冷延後の焼鈍工程においてTiなどの微細析出物が析出される。より具体的には、冷延後に得られた冷延鋼板を、連続焼鈍ラインまたは連続溶融亜鉛めっきラインを通板させるに際して行われる加熱時あるいは最高加熱温度近傍での焼鈍時に、Tiなどの微細析出物が析出される。本発明においては、上記の加熱時に550℃〜760℃間を30秒以上滞留させ、最高加熱温度760℃〜Ac℃で焼鈍を行っているので、Tiなどの微細な微細析出物が析出される。
本発明においては、冷延後の焼鈍工程においてTi、Nb、Vなどの微細析出物が析出されるので、以下に示すように、マルテンサイトのラスの成長が抑制されて、マルテンサイトのブロックサイズが低減され、高強度冷延鋼板または高強度亜鉛めっき鋼板が得られる。
すなわち、マルテンサイトは、オーステナイトから変態するものであることから、マルテンサイトのラスの成長を抑制するには、Tiなどの微細析出物を焼鈍時のオーステナイト中に分散させることが好ましい。本発明においては、連続焼鈍ラインまたは連続溶融亜鉛めっきラインを通板させるに際し、加熱時に550℃〜760℃間を30秒以上滞留させ、最高加熱温度760℃〜Ac℃で焼鈍を行っているので、加熱時のフェライト中にTiなどの微細析出物が析出され、Ac変態点以上の温度で、セメンタイトとTiなどの微細析出物とを含むフェライトとがオーステナイトへと変態されることになり、焼鈍時のオーステナイト中にTiなどの微細析出物が分散される。
これに対し、例えば、熱間圧延段階や熱延完了後の巻き取り時に、Ti、Nb、Vなどの微細析出物を析出させた場合、転位をあまり含まないフェライト中に、NbやTiなどの炭窒化合物が微細析出物として析出することになり、冷延後の転位を多く含む鋼板中に微細析出物が析出される場合と比較して、微細析出物が粗大になる。また、熱間圧延段階や熱延完了後の巻き取り時にTi、Nb、Vなどの微細析出物を析出させた場合、冷延後の焼鈍工程においてTiなどの微細析出物が粗大化してしまうため、マルテンサイトのラスの成長を抑制する効果が大幅に減じてしまう。
しかし、スラブがTi、Nb、Vなどの微細析出物を析出する元素を多量に含む場合、熱間圧延段階や熱延完了後の巻き取り時に微細析出物を析出させたとしても、マルテンサイトのラスの成長を十分に抑制することができる。具体的には、例えば、Tiを0.015%以上含有する場合には、熱間圧延段階や熱延完了後の巻き取り時に微細析出物を析出させたとしても、マルテンサイトのラスの成長を十分に抑制することができる。
なお、本発明の製造方法において、微細な微細析出物を析出させる方法は、以下に示す従来のフェライト結晶粒細粒化の手法とは大きく異なる。すなわち、従来のフェライト結晶粒細粒化の手法では、フェライト再結晶の際に、転位をあまり回復させないまま高温加熱することで、再結晶フェライトの核を多く生じさせ、フェライトを細粒化させていた。このような手法では、フェライトの細粒化は可能なものの、逆変態によって生じるマルテンサイトの細粒化は難しいし、個々のマルテンサイトを構成するブロックサイズの制御も難しい。したがって、従来のフェライト結晶粒細粒化の手法では、フェライトの細粒化による高強度化の利点は享受できるものの、マルテンサイト組織の強度を高めることはできず、フェライトの細粒化に伴う降伏応力の増加は避けることが出来ない。したがって、従来のフェライト結晶粒細粒化の手法では、優れた耐水素脆性と高強度化の両立は難しかった。
さらに、本発明の高強度冷延鋼板または高強度亜鉛めっき鋼板の製造方法においては、第1条件〜第4条件のいずれの条件においても、700℃〜400℃の温度範囲にてロール径350mm以下のロールで曲げ−曲げ戻し変形を行なっているので、曲げ−曲げ戻し変形によって歪が付与されることによりオーステナイトが加工を受け、焼鈍を行った後の鋼板に核生成サイトとして転位が導入される。転位の導入は、異なる複数の方位を有するラスの形成を促進するものであるので、マルテンサイトのブロックサイズがより効果的に低減される。
なお、個々のブロックを形成するマルテンサイトのラスの成長を抑制しただけでは、以下に示すように、ラスの集合体であるブロックのサイズを1μm以下にすることは難しい。マルテンサイトのラスは、オーステナイト中の欠陥(転位)を核として形成される。このようにして形成されたラスは、周囲のオーステナイトに転位を導入し、導入された転位は、新たなマルテンサイトのラスの核として働く。その結果、同一方位を有するマルテンサイトのラスより成る巨大なブロックが形成される。したがって、個々のブロックを形成するマルテンサイトのラスの成長を抑制したとしても、ラスの集合体であるブロックのサイズを1μm以下にすることは難しい。
これに対し、本発明においては、ブロックサイズを低減するために、個々のブロックを形成するマルテンサイトのラスの成長を抑制するとともに、異なる複数の方位を有するラスを生成させているので、マルテンサイトのブロックサイズが1μm以下となる延性及び耐遅れ破壊特性の良好な引張最大強度900MPa以上を有する高強度冷延鋼板または高強度亜鉛めっき鋼板が得られる。
なお、連続焼鈍ラインや連続溶融亜鉛めっきラインを用いて高強度冷延鋼板または高強度亜鉛めっき鋼板を製造する場合、例えば、冷延時に多量の転位を導入したとしても、冷延後の焼鈍工程において再結晶する、あるいは逆変態することによって転位が消滅して新たなオーステナイトが形成されてしまう。したがって、異なる複数の方位を有するラスを形成させるための核生成サイトを焼鈍前に予め導入しておくことは好ましくない。
これに対し、本発明の高強度冷延鋼板または高強度亜鉛めっき鋼板の製造方法においては、第1条件〜第4条件のいずれかの条件における曲げ−曲げ戻し変形によって、焼鈍を行った後の鋼板に核生成サイトが導入されるので、核生成サイトによって、異なる複数の方位を有するラスの形成が効果的に促進される。
本発明においては、曲げ−曲げ戻し変形によって、焼鈍を行った後の鋼板に核生成サイトを導入しているので、板厚減少を伴い難く、好ましい。
これに対し、例えば、引張張力によって歪を導入した場合、板厚減少により板厚や幅が不均一となり、極端な場合にはネッキングにより炉内での板破断を招いてしまう恐れがある。したがって、曲げ-曲げ戻し変形を行うことが望ましい。
また、曲げ―曲げ戻し変形を行う際に、板に引張応力を付与することで、容易に塑性変形を導入させることが可能になる。このため、通板性を阻害しない範囲であれば、曲げ―曲げ戻し変形を行う際に、板に引張応力を付与しても良い。
また、本発明においては、700℃〜400℃の温度範囲にて曲げ−曲げ戻し変形を行なっているので、核生成サイトとしての転位の回復が抑制されるとともに、確実に核生成サイトを導入できる。上記温度が700℃を超える場合、曲げ−曲げ戻し変形により、オーステナイト中に歪を導入したとしても、導入された転位が回復して、転位が核生成サイトとして作用しない場合がある。また、上記温度が400℃未満である場合、鋼板の熱間での降伏強度が高すぎて、十分な塑性変形行うことが出来ず、ブロックサイズの微細化をもたらす核生成サイトとしての転位の導入が不可能となる場合がある。
また、本発明においては、ロール径350mm以下のロールで曲げ−曲げ戻し変形を行なう必要がある。ロール径が350mmを超えると、十分な塑性変形を行えず、ブロックサイズの微細化に必要なオーステナイト中への転位の導入が行えない。このことから、ロール径は、350mm以下とする必要がある。また、より多量の変形を加えるためには、ロール径は小さいほど好ましい。
ロールの押し込み量は1mm以上であり、望ましくは2mm以上である。ロールの押し込み量が大きくなるほど、材料は大変形を受け、オーステナイト中にマルテンサイトの核生成サイトとなる転位が導入される。しかし、極端な押し込み量の増加は、通板性の悪化や鋼板表面への疵形成の原因となる懸念がある。このことから、押し込み量は、オーステナイト中への歪導入が可能な最小限の値とすることが望ましく、例えば、700mm以下に留めることが好ましい。
また、本発明においては、焼鈍後、最高加熱温度〜630℃間を平均冷却速度14℃/秒以下で冷却しているので、フェライトの形成が促進され、延性確保に寄与するフェライトの体積率を50%以上とすることができ、降伏応力(YS)が小さく、降伏比(YR)0.75以下のものとなる。よって、残留応力が小さく、優れた耐遅れ破壊特性を有するものとなる。また、本発明においては、フェライトの体積率を50%以上とすることができるので、マルテンサイト中にCが濃化されて、マルテンサイト中のC濃度が0.3%〜0.9%となり、高強度のマルテンサイトが得られる。
これに対し、最高加熱温度〜630℃間を5℃/秒を超える平均冷却速度で冷却した場合、フェライトの体積率が50%未満となったり、降伏比が(YR)0.75を超えたりして、高強度冷延鋼板または高強度亜鉛めっき鋼板の延性及び耐遅れ破壊特性、強度の少なくともいずれかが不十分となる恐れがある。
また、本発明においては、630℃〜570℃間または630℃〜〔(亜鉛めっき浴温度−40℃)〜(亜鉛めっき浴温度+50℃)〕℃間の平均冷却速度を3℃/秒以上としているので、この温度域で起こり得るパーライトやベイナイト変態を抑制することができ、オーステナイトをマルテンサイトへと効率的に変態させることが可能である。
これに対し、上記温度範囲における平均冷却速度が3℃/秒未満である場合、オーステナイトがパーライトへと変態することで、マルテンサイトの体積率が不足して、高強度冷延鋼板または高強度亜鉛めっき鋼板の強度が不十分となる恐れがある。なお、上記温度範囲における平均冷却速度が3℃/秒未満であると、生産性の低下を招くことから好ましくない。
また、本発明においては、高強度冷延鋼板または高強度亜鉛めっき鋼板の製造時における連続焼鈍ラインまたは連続溶融亜鉛めっきラインの焼鈍炉内の雰囲気を、H2を1〜60体積%含有し、残部N、HO、Oおよび不可避的不純物からからなる雰囲気とし、その雰囲気中の水分圧と水素分圧の対数log(PHO/PH)を−3≦log(PHO/PH)≦−0.5とすることが好ましい。
焼鈍炉内の雰囲気を上述した雰囲気とした場合、鋼板に含まれるSi、Mn、Alが鋼板表面に拡散する前に、鋼板内部に拡散したOと鋼板内部に含まれるSi、Mn、Alとが反応され、鋼板内部に酸化物が形成されるとともに、鋼板表面へのこれら元素から成る酸化物の形成が抑制される。したがって、焼鈍炉内内の雰囲気を上述した雰囲気とすることで、鋼板表面に酸化物が形成されることに起因する不めっきを抑制できるとともに合金化反応の促進を図ることができ、鋼板表面に酸化物が形成されることによる化成処理性の劣化を防止できる。
なお、焼鈍炉内の雰囲気中における水分圧と水素分圧との比は、炉内に水蒸気を吹き込む方法によって調整することができる。このようにして焼鈍炉内の雰囲気中における水分圧と水素分圧との比を調整する方法は、簡便であり、好ましい。
また、焼鈍炉内の雰囲気において、H濃度が60体積%を超えると、コスト高を招くことから好ましくない。また、H濃度が1体積%未満になると、鋼板に含まれるFeが酸化することから、濡れ性やめっき密着性が不十分となる恐れがある。
また、炉内の雰囲気中の水分圧と水素分圧の対数log(PH2O/PH2)を−3≦log(PH2O/PH2)≦−0.5とすることで、Siを多量に含む鋼である場合であっても、十分なめっき性を確保できる。なお、水分圧と水素分圧の対数log(PH2O/PH2)の下限を−3以上としたのは、−3未満では、鋼板表面にSi酸化物(またはSi酸化物およびAl酸化物)が形成される割合が多くなり、濡れ性やめっき密着性が低下する恐れがあるからである。一方、水分圧と水素分圧の対数log(PH2O/PH2)の上限を−0.5としたのは、その効果が飽和するためである。
これに対し、従来の鋼板の製造方法を用いて本発明の高強度冷延鋼板または高強度亜鉛めっき鋼板を製造する場合、製造時における焼鈍炉内の雰囲気を、上記の焼鈍炉内の雰囲気としていないので、以下に示すような問題が生じる恐れがあった。
すなわち、本発明においては、スラブとして、フェライト体積率を向上させ、延性を確保するためにSi(またはSiおよびAl)を含み、高強度鋼板の強度を高めるMnを含む上述した化学成分(組成)を有するスラブを用いている。Si、Mn、Alは、Feと比較して極めて酸化しやすい元素であるため、Feの還元雰囲気であっても、Si(またはSiおよびAl)、Mnの含有された鋼板の表面には、Si酸化物(またはSi酸化物およびAl酸化物)、Mn酸化物が形成される。
鋼板の表面に形成されたSi、MnやAlを単独、あるいは、複合で含む酸化物は、高強度冷延鋼板における化成処理性を劣化させる原因となる。また、これらの酸化物は、亜鉛などの溶融金属との濡れ性が悪いため、Si(またはSiおよびAl)の含有された高強度鋼板の表面に亜鉛めっき層を形成する場合に不めっきの原因となる。また、SiやAlは、合金化処理を施した高強度亜鉛めっき鋼板を製造する際に、合金化を遅延するなどの問題を引き起こす場合がある。
ここで、鋼板表面における酸化物の形成を抑制する方法としては、焼鈍炉内の雰囲気をそれぞれの元素の還元雰囲気にする方法が考えられるが、本実施形態においては、焼鈍炉内内の雰囲気を上述した雰囲気とし、Feの還元雰囲気ではあるものの、Si、MnやAlといった元素が極めて酸化し易い雰囲気とした。
なお、本発明は、上記の例に限定されるものではない。
例えば、上述した高強度冷延鋼板または高強度亜鉛めっき鋼板の製造方法においては、水分圧と水素分圧とを制御して焼鈍炉内の雰囲気を制御したが、二酸化炭素と一酸化炭素の分圧を制御する方法や、二酸化窒素と一酸化窒素の分圧を制御する方法、あるいは、炉内に直接酸素を吹き込む方法を用いて、焼鈍炉内の雰囲気を制御してもよい。この場合であっても、水分圧と水素分圧とを制御して焼鈍炉内の雰囲気を制御した場合と同様に、表層近傍の鋼板内部にSi、MnやAlを単独、あるいは、複合で含む酸化物を析出させることができ、上記と同様の効果が得られる。
また、本発明の高強度亜鉛めっき鋼板の製造方法においては、めっき密着性を向上させるために、焼鈍前の鋼板にNi、Cu、Co、Feから選ばれる1種あるいは複数種よりなるめっきを施してもよい。
また、本発明の高強度亜鉛めっき鋼板を製造する場合には、焼鈍から亜鉛めっき浴に浸漬するまでの工程として「脱脂酸洗後、非酸化雰囲気にて加熱し、H及びNを含む還元雰囲気にて焼鈍した後、亜鉛めっき浴温度近傍まで冷却して、亜鉛めっき浴に侵漬する」ゼンジマー法や「焼鈍時の雰囲気を調節して、最初に鋼板表面を酸化させ、その後還元することにより、めっき前の鋼板表面の清浄化を行った後、亜鉛めっき浴に侵漬する」全還元炉方式、あるいは「鋼板を脱脂酸洗した後に、塩化アンモニウムなどを用いてフラックス処理を行い、その後亜鉛めっき浴に侵漬する」フラックス法などを用いてもよい。
「実施例1」
表1に示す化学成分(組成)を有する鋳造されたスラブを直接、表2〜表5に示す温度(スラブ加熱温度)に加熱し、表2〜表5に示す温度(熱間圧延完了温度)で熱間圧延を完了し、表2〜表5に示す温度域(巻き取り温度)にて巻き取り、酸洗後、表2〜表5に示す圧下率の冷延を施し、実験例1〜実験例99の鋼板を得た。
Figure 0005644095
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なお、表2〜表5において、製品板の種類を示すCRは連続焼鈍ラインにて製造した冷延鋼板であり、EGは冷延鋼板CRに亜鉛を電気めっきした電気めっき鋼板、GIは連続溶融亜鉛めっきラインにて製造した亜鉛めっき鋼板、GAは連続溶融亜鉛めっきラインにて製造した合金化亜鉛めっき鋼板である。
続いて、実験例1〜実験例99の鋼板のうちの一部の実験例を、連続焼鈍ラインを通板させて冷延鋼板CRを製造した。なお、連続焼鈍ラインの焼鈍炉内の雰囲気は、Hを1体積%含むN雰囲気とし、炉内の雰囲気中の水分圧と水素分圧の対数log(PH2O/PH2)を−2.8とした。
また、連続焼鈍ラインを通板させるに際して、加熱時に550℃〜760℃間を表6〜表9に示す滞留時間で滞留させ、表6〜表9に示す最高加熱温度で焼鈍を行った後、最高加熱温度〜630℃間を表6〜表9に示す平均冷却速度で冷却し、630℃〜570℃間を表6〜表9に示す平均冷却速度で冷却し、700℃〜400℃の温度範囲にて表6〜表9に示すロール径のロールで表6〜表9に示す押し込み量の曲げ−曲げ戻し変形を行った。その後、一部の実験例においては表6〜表9に示す保持温度、表6〜表9に示す保持時間で保持してから、表6〜表9に示す平均冷却速度で室温まで冷却し、その他の実験例においては室温まで冷却した。
Figure 0005644095
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その後、連続焼鈍ラインを通板させた実験例の一部について、以下に示す方法により、亜鉛系電気めっきを施し、電気めっき鋼板EGを得た。
まず、連連続焼鈍ラインを通板させた鋼板に対して、めっきの前処理として、アルカリ脱脂、水洗、酸洗、並びに水洗を順に実施した。その後、前処理後の鋼板に対し、液循環式の電気めっき装置を用い、めっき浴として硫酸亜鉛、硫酸ナトリウム、硫酸からなるものを用い、電流密度100A/dm2で所定のめっき厚みになるまで電解処理して、Znめっきを施した。
また、実験例1〜実験例99の鋼板のうち連続焼鈍ラインを通板させなかった冷延鋼板を、連続溶融亜鉛めっきラインを通板させて亜鉛めっき鋼板GIを製造した。なお、連続溶融亜鉛めっきラインの焼鈍炉内の雰囲気は、Hを1体積%含むN雰囲気とし、炉内の雰囲気中の水分圧と水素分圧の対数log(PH2O/PH2)を−1.2とした。
連続溶融亜鉛めっきラインを通板させるに際して、加熱時に550℃〜760℃間を表6〜表9に示す滞留時間で滞留させ、表6〜表9に示す最高加熱温度で焼鈍を行った後、最高加熱温度〜630℃間を表6〜表9に示す平均冷却速度で冷却し、630℃〜亜鉛めっき浴温度間を表6〜表9に示す平均冷却速度で冷却し、700℃〜400℃の温度範囲にて表6〜表9に示すロール径のロールで表6〜表9に示す押し込み量の曲げ−曲げ戻し変形を行った後、亜鉛めっき浴に浸漬し、冷却を行った。
また、一部の実験例においては、亜鉛めっき浴に浸漬するまでの工程を行った後、表6〜表9に示す温度で合金化処理を施し、表6〜表9に示す平均冷却速度で冷却を行った。
このようにして得られた実験例1〜実験例99の高強度冷延鋼板または高強度亜鉛めっき鋼板について、FE−SEM−EBSP法により鋼板組織を観察し、フェライト、マルテンサイト、残部組織の体積率と、フェライトおよびマルテンサイトの平均結晶粒径とを調べた。その結果を表10〜表13に示す。
Figure 0005644095
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なお、表10〜表13において、残部組織に記載のPはパーライトを意味し、Bはベイナイトを意味し、RAは残留オーステナイトを意味し、Cはセメンタイトを意味する。
また、実験例1〜実験例99の高強度冷延鋼板または高強度亜鉛めっき鋼板について、以下に示す方法により、マルテンサイトのブロックサイズを測定した。その結果を表10〜表13に示す。
マルテンサイトのブロックサイズの測定には、FE−SEM−EBSP法を用い、予備実験を行うことにより、数個のマルテンサイト粒のブロックサイズを測定し、組織の方位解析が可能である測定点の間隔を25nmに決定してから測定した。
また、実験例1〜実験例99の高強度冷延鋼板または高強度亜鉛めっき鋼板について、以下に示す方法により、マルテンサイト中のC濃度を求めた。
まず、圧延方向に平行な断面にて鋼板を埋め込み、研磨した。その後、SEMによる組織観察を行い、各組織の位置を特定した。その後、EPMAを用いて、鋼板の縦50μm、横50μmの範囲を10視野、ステップサイズ0.1μmにて面分析を行い、得られた各マルテンサイト粒中に含まれるC濃度の平均値を、マルテンサイト中のC濃度と定義した。
その結果を表10〜表13に示す。
また、実験例1〜実験例99の高強度冷延鋼板または高強度亜鉛めっき鋼板からJIS Z 2201に準拠した引張試験片を採取し、引張試験をJIS Z 2241に準拠して行い、引張最大強度(TS)と降伏応力(YS)と伸び(El)と均一伸び(u―El)と全伸び(El.)とを測定した。
また、測定した引張最大強度(TS)と降伏応力(YS)とを用いて降伏比(YR=(YS/TS))を算出し、測定した引張最大強度(TS)と全伸び(El.)とを用いて強度−延性バランス(TS×El.)を算出した。
また、実験例1〜実験例99の高強度冷延鋼板または高強度亜鉛めっき鋼板について、以下に示す方法により、遅れ破壊試験を行った。
まず、圧延方向に直角方向に切り出した縦150mm、横100mmの矩形状の試験片を切断し、端部を機械研削した。その後、横方向(圧延方向)の長さ中心において曲げ加工を行い、縦方向(圧延方向に直角方向)の断面を略L字型とした。その後、試験片の縦方向端部をフランジアップ加工することにより、横方向の断面を略コ字型とし、図2に示す形状の試験片を得た。
図2は、フランジ成形された後の試験片の形状を説明するための図であり、図2(a)は試験片の斜視図である。図2(b)は、試験片の一部を示した断面図であり、曲げ加工を行った部分を示した断面図である。また、図2(c)は、試験片の一部を示した断面図であり、フランジアップ加工を行った部分を示した断面図である。
図2(a)に示すように、フランジ成形された後の試験片は、互いに直交する方向に延在する1対の平板部1a、1bと、平板部1aと平板部1bとを繋ぐ曲面からなる曲げ加工部1cとを有する略L字型の主部1を有している。図2(a)および図2(b)に示すように、曲げ加工部1cは、曲げ半径(r)10mm、曲げ角度(θA)90°で曲げ加工されることにより形成されたものである。
また、図2(a)に示すように、主部1の平板部1aと平板部1bとが直交する線の延在方向の両縁部には、フランジ2が形成されている。図2(a)および図2(c)に示すように、フランジ2は、主部1から曲げ加工における中心側と反対側に、高さ(h)、曲げ角度(θB)90°で、フランジアップ加工されることにより形成されたものである。
なお、試験片のフランジアップ加工においては、下記式(1)および下記式(2)を用いて、フランジアップ加工によって試験片の板端に働く公称歪(ε)を0.04としたときのフランジの高さ(h)を算出(0.4mm)し、フランジを成形した。
ε=(2hθAsinθB)/πr ・・・(1)
なお、式(1)において、hはフランジの高さであり、θAは曲げ加工の曲げ角度であり、θBはフランジアップ加工の曲げ角度であり、rは曲げ加工の曲げ半径である。ここで、θA、θBをπ/2とすると、上記式(1)は、下記式(2)のように書き表される。
ε=h/r ・・・(2)
次に、図2に示すフランジ成形された後の試験片を0.5mol/lの硫酸中に漬け、鋼板側を陰極、白金電極を陽極とし、電流密度0.1mA/cmにて電流を流し、電流によって2時間電解し、水素発生と鋼板中への水素侵入を行った。その後、試験片を取り出し、伸びフランジ成形部を目視にて観察することで、試験片の端部での割れの有無を調査した。試験片の端部には、大きな残留応力があることから、亀裂が発生するとその進展が速い。このことから、本実施例では、亀裂がある場合、全て大きな開口亀裂となっており、目視であっても容易に亀裂の有無を判定可能であった。なお、本実施例では、ルーペや実態顕微鏡等を用いて、試験片端部を入念に観察し、亀裂の有無を再度確認し、開口亀裂がないものは微細な亀裂もないことを確認した。
なお、表10〜表13に示す遅れ破壊試験結果において、○は端部に亀裂が発生していなかったことを示し、×は端部に亀裂が発生していたことを示す。その結果を表10〜表13に示す。
表10〜表13に示すように、本発明の実施例である実験例では、鋼板組織のフェライトの体積率が50%以上であり、マルテンサイトを含んでいることが確認できた。
また、表10〜表13より、本発明の実施例である実験例では、ブロックサイズが1μm以下であり、マルテンサイト中のC濃度が0.3%〜0.9%の範囲であった。
また、表10〜表13より、本発明の実施例である実験例では、引張最大強度(TS)が900MPa以上、降伏比(YR)が0.75以下であり、引張最大強度および伸びが良好であった。
また、表10〜表13より、本発明の実施例である実験例では、遅れ破壊試験結果が全て○であった。
これに対し、本発明の比較例である実験例2では、最高加熱温度〜630℃間を5℃/秒を超える平均冷却速度で冷却しているので、フェライトの体積率が50%未満となり、マルテンサイト中におけるCの濃化が不十分となり、マルテンサイト中のC濃度が0.3%未満となり、降伏比(YR)が0.75を超え、伸びが不十分であった。また、実験例2では、遅れ破壊試験結果も×であった。
本発明の比較例である実験例8では、630℃〜亜鉛めっき浴温度間の平均冷却速度が、3℃/秒未満であるため、オーステナイトがパーライトへと変態することで、マルテンサイトの体積率が不足して、引張最大強度(TS)が900MPa未満となり、強度が不十分であった。
本発明の比較例である実験例54では、630℃〜亜鉛めっき浴温度間の平均冷却速度が、3℃/秒未満であるため、オーステナイトがパーライトへと変態することで、マルテンサイトの体積率0%となり、引張最大強度(TS)が900MPa未満となり、降伏比(YR)が0.75を超え、強度および伸びが不十分であった。
また、本発明の比較例である実験例3、実験例14、実験例19、実験例40、実験例50では、焼鈍加熱時の最高加熱温度が、760℃未満であるので、マルテンサイトの体積率が0%となり、引張最大強度(TS)が900MPa未満となり、強度が不十分であった。
また、本発明の比較例である実験例24、実験例29、実験例33、実験例46、実験例66、実験例75、実験例80では、焼鈍加熱時の最高加熱温度が、760℃未満であるので、マルテンサイトの体積率が0%となっている。
また、本発明の比較例である実験例62では、焼鈍加熱時の最高加熱温度が、760℃未満であるので、マルテンサイトの体積率が0%となっており、降伏比(YR)が0.75を超え、伸びが不十分であった。また、実験例62では、遅れ破壊試験結果も×であった。
本発明の比較例である実験例6、実験例10、実験例15では、曲げ−曲げ戻し変形の押し込み量が0mmであるので、ブロックサイズが1μmを超えており、引張最大強度(TS)が900MPa未満となり、強度が不十分であった。
本発明の比較例である実験例20では、曲げ−曲げ戻し変形の押し込み量が0mmであるので、ブロックサイズが1μmを超えており、引張最大強度(TS)が900MPa未満となり、強度が不十分であった。
本発明の比較例である実験例25、実験例30、実験例34、実験例36、実験例41、実験例45、実験例51、実験例61、実験例67、実験例76、実験例81では、曲げ−曲げ戻し変形の押し込み量が0mmであるので、ブロックサイズが1μmを超えていた。
本発明の比較例である実験例26、実験例35、実験例42、実験例49、実験例65、実験例77では、熱間圧延を完了した後の巻き取り温度が670℃を超えているので、ブロックサイズが1μmを超えていた。
また、本発明の比較例である実験例83、実験例84では、鋼のC濃度が0.07%未満であるので、マルテンサイト中のC濃度が0.3%未満となり、引張最大強度(TS)が900MPa未満となり、強度が不十分であった。
本発明の比較例である実験例85、実験例86では、鋼にTiおよびBが含まれていないので、マルテンサイト中のC濃度が0.9%を越えており、引張最大強度(TS)が900MPa未満となり、強度が不十分であった。
本発明の比較例である実験例87、実験例88では、鋼のSi濃度が0.3%未満であるので、ブロックサイズが1μmを超えていた。
本発明の比較例である実験例89では、鋼のMn濃度が1.5%未満であるので、パーライト変態を抑制することが出来ず、マルテンサイトの体積率が0%となり、引張最大強度(TS)が900MPa未満となり、強度が不十分であった。
本発明の比較例である実験例90では、鋼のMn濃度が1.5%未満であるので、パーライト変態を抑制することが出来ず、マルテンサイトの体積率が不足し、ブロックサイズが1μmを超えており、引張最大強度(TS)が900MPa未満となり、強度が不十分であった。
本発明の比較例である実験例91、実験例92では、鋼のMn濃度が3.0%を超えているので、マルテンサイトの体積率が多くなりすぎて、延性確保に寄与するフェライトの体積率が不十分となり、マルテンサイト中のC濃度が0.3%未満となり、ブロックサイズが1μmを超えており、降伏比(YR)が0.75を超え、伸びが不十分であった。また、実験例91、実験例92では、遅れ破壊試験結果も×であった。
本発明の比較例である実験例93、実験例94では、鋼にTiが含まれていないので、引張最大強度(TS)が900MPa未満となり、強度が不十分であった。
本発明の比較例である実験例95、実験例96では、鋼にBが含まれていないので、引張最大強度(TS)が900MPa未満となり、強度が不十分であった。
本発明の比較例である実験例97、実験例98では、鋼のC濃度が0.25%を超えているので、フェライトの体積率が50%未満となり、ブロックサイズが1μmを超えており、降伏比(YR)が0.75を超え、伸びが不十分であった。また、実験例97、実験例98では、遅れ破壊試験結果も×であった。
本発明の比較例である実験例99では、スラグ加熱温度が低すぎるので、ブロックサイズが1μmを超えており、引張最大強度(TS)が900MPa未満となり、強度が不十分であった。
「実施例2」
また、実験例2、実験例23、実験例91の高強度冷延鋼板について、JIS Z 2241に従い以下に示すようにして、降伏応力(YS)―歪曲線(ε)、引張最大強度(TS)を求めた。すなわち、降伏後0.8%歪までは、20N/(mm・S)で応力増加率一定で行い、その後は20mm/min.にてクロスヘッド速度一定にて応力−歪曲線を測定した。ただし、本発明の実施例である実験例23の応力−歪曲線には、明瞭な上降伏点が表れなかった。このことから、オフセット法にて、0.2%耐力を測定し、この値を降伏応力と定めた。
その結果を図1に示す。
実験例2、実験例23、実験例91の引張最大強度(TS)は表10、表13に示すように、いずれも1100MPa以上で同等であったが、図1に示すように、本発明の実施例である実験例23では、本発明の比較例である実験例2および実験例91と比較して、歪が図1に示すε1であるときの降伏応力(YS)が低く(YS1>YS3、YS2>YS3)、成形後の耐力も低い(σ1>σ3、σ2>σ3)。このことより、本発明の実施例である実験例23では、本発明の比較例である実験例2、実験例91と比較して、残留応力が小さいものとなり、耐遅れ破壊特性に優れていることが分かる。
1…主部、1a、1b…平板部、1c…加工部、2…フランジ。

Claims (13)

  1. 質量%で、
    C :0.07〜0.25%、
    Si:0.3〜2.50%、
    Mn:1.5〜3.0%、
    Ti:0.005〜0.09%、
    B:0.0001〜0.01%、
    P :0.001〜0.03%、
    S :0.0001〜0.01%、
    Al:2.5%以下、
    N :0.0005〜0.0100%、
    O:0.0005〜0.007%、
    を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼であり、
    鋼板組織がフェライトを主とし、マルテンサイトを含み、フェライトの体積率が50%以上であり、マルテンサイトのブロックサイズが1μm以下であり、マルテンサイト中のC濃度が0.3%〜0.9%であり、引張最大強度(TS)と降伏応力(YS)との比からなる降伏比(YR)が0.75以下であることを特徴とする延性及び耐遅れ破壊特性の良好な引張最大強度900MPa以上を有する高強度鋼板。
  2. さらに、質量%で、
    Nb:0.005〜0.09%
    を含有することを特徴とする請求項1に記載の延性及び耐遅れ破壊特性の良好な引張最大強度900MPa以上を有する高強度鋼板。
  3. さらに、質量%で、
    Cr:0.01〜2.0%、
    Ni:0.01〜2.0%、
    Cu:0.01〜2.0%、
    Mo:0.01〜0.8%
    の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の延性及び耐遅れ破壊特性の良好な引張最大強度900MPa以上を有する高強度鋼板。
  4. さらに、質量%で、
    V:0.005〜0.09%
    含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の延性及び耐遅れ破壊特性の良好な引張最大強度900MPa以上を有する高強度鋼板。
  5. さらに、質量%で、Ca、Ce、Mg、REMの1種または2種以上を合計で0.0001〜0.5%含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の延性及び耐遅れ破壊特性の良好な引張最大強度900MPa以上を有する高強度鋼板。
  6. 表面に亜鉛めっき層を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の延性及び耐遅れ破壊特性の良好な引張最大強度900MPa以上を有する高強度鋼板。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載の高強度鋼板の製造方法であって、
    請求項1〜5のいずれか1項に記載の化学成分を有するスラブを鋳造し、直接又は一旦冷却した後1050℃以上に加熱し、Ar変態点以上で熱間圧延を完了し、400℃〜670℃の温度域にて巻き取り、酸洗後、圧下率40〜70%の冷延を施し、連続焼鈍ラインを通板させるに際して、
    加熱時に550℃〜760℃間を30秒以上滞留させ、最高加熱温度760℃〜Ac℃で焼鈍を行った後、最高加熱温度〜630℃間を平均冷却速度14℃/秒以下で冷却し、630℃〜570℃間を平均冷却速度3℃/秒以上で冷却し、700℃〜400℃の温度範囲にてロール径350mm以下のロールを用いて押し込み量1mm以上の曲げ−曲げ戻し変形を行うことを特徴とする延性及び耐遅れ破壊特性の良好な引張最大強度900MPa以上を有する高強度冷延鋼板の製造方法。
  8. 前記630℃〜570℃間を平均冷却速度3℃/秒以上で冷却した後、450℃〜250℃の温度域で30秒以上保持することを特徴とする請求項7に記載の延性及び耐遅れ破壊特性の良好な引張最大強度900MPa以上を有する高強度冷延鋼板の製造方法。
  9. 前記連続焼鈍ラインの焼鈍炉内を、Hを1〜60体積%含有し、残部N、HO、Oおよび不可避的不純物からからなる雰囲気とし、前記雰囲気中の水分圧と水素分圧の対数log(PHO/PH)を−3≦log(PHO/PH)≦−0.5とすることを特徴とする請求項7または8に記載の延性及び耐遅れ破壊特性の良好な引張最大強度900MPa以上を有する高強度冷延鋼板の製造方法。
  10. 請求項7〜9のいずれか1項に記載の高強度冷延鋼板の製造方法で高強度冷延鋼板を製造した後、亜鉛電気めっきを施すことを特徴とする延性及び耐遅れ破壊特性の良好な引張最大強度900MPa以上を有する高強度亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  11. 請求項6に記載の高強度鋼板の製造方法であって、
    請求項1〜5のいずれか1項に記載の化学成分を有するスラブを鋳造し、直接又は一旦冷却した後1050℃以上に加熱し、Ar変態点以上で熱間圧延を完了し、400℃〜670℃の温度域にて巻き取り、酸洗後、圧下率40〜70%の冷延を施し、連続溶融亜鉛めっきラインを通板させるに際して、
    加熱時に550℃〜760℃間を30秒以上滞留させ、最高加熱温度760℃〜Ac℃で焼鈍した後、最高加熱温度〜630℃間を平均冷却速度14℃/秒以下で冷却し、630℃〜〔(亜鉛めっき浴温度−40℃)〜(亜鉛めっき浴温度+50℃)〕℃間を平均冷却速度3℃/秒以上で冷却し、700℃〜400℃の温度範囲にてロール径350mm以下のロールを用いて押し込み量1mm以上の曲げ−曲げ戻し変形を行った後、亜鉛めっき浴に浸漬し、冷却を行うことを特徴とする延性及び耐遅れ破壊特性の良好な引張最大強度900MPa以上を有する高強度亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  12. 前記亜鉛めっき浴に浸漬した後、460℃〜600℃の温度で合金化処理を施し、冷却を行うことを特徴とする請求項11に記載の延性及び耐遅れ破壊特性の良好な引張最大強度900MPa以上を有する高強度亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  13. 前記連続溶融亜鉛めっきラインの焼鈍炉内を、Hを1〜60体積%含有し、残部N、HO、Oおよび不可避的不純物からからなる雰囲気とし、前記雰囲気中の水分圧と水素分圧の対数log(PHO/PH)を−3≦log(PHO/PH)≦−0.5とすることを特徴とする請求項11または12に記載の延性及び耐遅れ破壊特性の良好な引張最大強度900MPa以上を有する高強度亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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