本発明の排ガス浄化用触媒は、基材と、基材の表面に形成された下触媒層と、下触媒層の表面であって上流側に形成された前段上触媒層と、下触媒層の表面であって下流側に形成された後段上触媒層とを有する。
基材は、ガス流路を有する構造をもち、例えば、ハニカム形状、フォーム形状、プレート形状などの形状を有するものを用いる。基材の材質は、特に限定されず、コーディエライト、SiCなどのセラミックス製のもの、あるいは金属製のものなど、公知のものを用いることができる。
下触媒層は、触媒貴金属と、触媒貴金属を担持する担体とを含んでなる。下触媒層の触媒貴金属は、Pt及びPdの少なくとも1種を含む。触媒貴金属は、Pt及びPdのほかに、PtやPdの性能を妨げないように、Rhなどの他の触媒貴金属を含んでいてもよい。本明細書において、「基材1リットル当たり」とは、「基材の純体積に、基材の内部に形成されている空隙の容積も含めた全体の嵩容積1リットル当たり」を意味する。基材の内部がセルに区画されている場合には、基材の純体積に、セルの容積も含めた全体の嵩容積1リットルを意味する。基材1リットル当たりの各成分の質量は、g/Lとして表記する場合がある。
下触媒層のコート量は、基材1リットル当たり、105〜155gであることが好ましく、更には、基材1リットル当たり、150〜155gであることが望ましい。「コート量」とは、「基材表面にコートされる下触媒層の質量を、基材1リットルにコートされる下触媒層の質量に換算した質量」をいう。基材1リットルとは、「基材の純体積に、基材の内部に形成されている空隙の容積も含めた全体の嵩容積1リットル当たり」を意味する。下触媒層のコート量が105g未満の場合には、下触媒層が薄すぎて、PdやPtの触媒活性が低下するおそれがある。155gを超える場合には、圧力損失が大きくなるおそれがある。
Pdの担持密度は4.5〜12質量%が好ましい。「Pdの担持密度」とは、前段上触媒層のコート質量に対するPdの担持質量の比率」をいう。下触媒層の表面には、前段上触媒層と後段上触媒層とが並存しており、Pdを含む前段上触媒層の長さは、下触媒層の長さよりも短い。ゆえに、Pdの反応し得る部分の容積が従来よりも狭い。狭い反応スペースで高い効率でHCを浄化するため、本発明では従来よりもPdの担持密度を高くしている。
さらに、Pdの担持密度は、6〜10質量%であることが好ましい。この場合には、さらに、PdによるHCの浄化性能が高くなり、またコストアップを抑えることができる。
下触媒層の長さに対する前段上触媒層の長さの比率は、20〜40%であることが好ましく、更には30〜35%であることが望ましい。この場合には、前段上触媒層よりも下流側に後段上触媒層を設けるスペースが確保される。ゆえに、後段上触媒層のRhによるNOx浄化性能を十分に発揮させつつ、前段上触媒層のHC浄化性能を高くすることができる。ここで、「長さ」とは、基材のガス流れ方向の長さをいう。基材がハニカム構造を持つ場合には、基材の長手方向の長さをいう。下触媒層の長さに対する前段上触媒層の長さの比率が20%未満の場合には、Pdの絶対量が少なくなり、HC浄化性能が低下するおそれがある。40%を超える場合には、後段上触媒層を形成するスペースが狭すぎて、Rhの担持量が低下し、Rhによる排ガス浄化性能が低下するおそれがある。下触媒層の長さに対する前段上触媒層の長さの比率が30〜35%である場合には、後段上触媒層のRhによるNOx浄化性能を更に十分に発揮させつつ、前段上触媒層のHC浄化性能を更に高くすることができる。
前段上触媒層のコート量は、基材1リットル当たり、40〜50gであることが好ましい。40g未満の場合には、前段上触媒層のコートの作業性が悪化するおそれがある、一方、前段上触媒層のコート量が、基材1リットル当たり、50gを超える場合には、前段上触媒層の熱容量が大きくなりすぎて早期の昇温が困難となり、エンジン冷間始動時にHCが浄化されにくくなるおそれがある。
前段上触媒層の厚みは10〜30μmであることが好ましい。この場合には、HC浄化に十分なPd絶対量を確保できるとともに、前段上触媒層の熱容量が低くなり、エンジン冷間始動時に素早く前段上触媒層の温度が上昇する。
後段上触媒層には、Rhの性能を損なわない程度に、Pdなどの他の触媒貴金属が含まれていても良い。後段上触媒層には、Ptが含まれていないことがよい。RhとPtとの合金化による触媒活性の低下を抑えるためである。
後段上触媒層の厚みは10〜30μmであることが好ましい。この場合には、後段上触媒層中のRhによるNOx浄化性能が高く、また下触媒層へのガス拡散性が良いため、下触媒層中のPtやPdによる浄化性能も高くすることができる。
下触媒層の長さに対する後段上触媒層の長さの比率は、70〜85%であることが好ましく、更には71〜81%であることが望ましい。この場合には、後段上触媒層よりも上流側に前段上触媒層を形成するに十分なスペースを確保しつつ、後段上触媒層でNOx浄化に十分なRh量を担持することができる。
後段上触媒層中のRh担持密度は0.1〜0.4質量%であることが好ましい。0.1質量%未満の場合には、RhによるNOx浄化性能が低下するおそれがある。0.4質量%を超える場合には、それに見合う浄化性能は期待できず、コストアップになる。
後段上触媒層のコート量は、基材1リットル当たり、50〜200gであることが好ましい。この場合には、圧力損失を抑えつつ、RhによるNOx浄化性能が高くなる。
本発明において、GSA(幾何学的表面積)とは、ハニカム基材に触媒をウォッシュコートした後の、ハニカム基材1セルの単位長さ(軸方向)当たりの触媒層の内壁の表面積であり、「Total−GSA」とは、GSAに、基材に含まれるセルの個数及び基材の長さをかけて導出した値である。
後段上触媒層の下流端部は、下触媒層の下流端部の真上に配置されている。また、前段上触媒層の上流端部は、下触媒層の上流端部の真上に配置されている。後段上触媒層の上流側部分は、前段上触媒層の下流側部分と離間していてもよい。また、後段上触媒層の上流側部分は、前段上触媒層の下流側部分と重なっていてもよい。この場合、前段上触媒層及び後段上触媒層のどちらの層が上側になってもよい。前段上触媒層を優先的に機能させたい場合は前段上触媒層の下流側部分を後段上触媒層上の上流側部分に被覆させ、後段上触媒層を優先的に機能させたい場合は後段上触媒層の上流側部分を前段上触媒層の下流側部分に被覆させるとよい。
基材表面に下触媒層を形成するに当たっては、担体粉末を含むスラリーを基材の表面にウォッシュコートし、それにPd又は/及びPtを含んでなる触媒貴金属を担持してもよいし、担体粉末に予め触媒貴金属を担持した触媒粉末をスラリーとなし、これを基材表面にウォッシュコートしてもよい。
下触媒層の表面に後段上触媒層を形成するに当たっては、担体粉末を含むスラリーを下触媒層の表面の下流側部分にウォッシュコートし、それにRhを担持してもよいし、担体粉末に予めRhを担持した触媒粉末をスラリーとなし、これを下触媒層の表面の下流側部分にウォッシュコートしてもよい。
本発明について、参考例、実施例、及び比較例を用いて具体的に説明する。
(参考例1)
本例の排ガス浄化用触媒は、図1に示すように、基材1と、基材1上に形成された触媒層10とを含んでなる。触媒層10は、基材1の表面に形成された下触媒層2と、下触媒層2の表面の上流側部分に形成された前段上触媒層3と、下触媒層2の表面の下流側部分に形成された後段上触媒層4とから構成されている。
図2に示すように基材1は、コーディエライト製ハニカム構造をもつモノリス基材である。基材1は、直径103mmの円形断面であり、長さは105mmであって、全体容量は875ccである。基材1の内部は、隔壁11によって多数のセルに区画されている。各セルには、ガス通路6が形成されている。図1に示すように、セルを区画する隔壁11の表面には下触媒層2が形成され、下触媒層2の表面の上流側及び下流側には、前段上触媒層3及び後段上触媒層4が形成されている。
下触媒層2は、PdとAl2O3と酸素吸放出材とを含んでなる。下触媒層2の中のPdの担持量は1.0g/Lであり、Al2O3のコート量は25g/Lであり、酸素吸放出材はZrO2−CeO2の複合酸化物であり、このコート量は85g/Lである。
前段上触媒層3は、PdとAl2O3と酸素吸放出材とを含んでなる。前段上触媒層3の中のPdの担持量は1.73g/Lであり、前段上触媒層3の中のPdの担持密度は5.8質量%である。前段上触媒層3のコート量は30gであり、基材1リットル当たりのコート量に換算すると、34.3g/Lとなる。前段上触媒層3の中のAl2O3のコート量は、基材1リットル当たり18.6g/Lであり、酸素吸放出材はZrO2−CeO2の複合酸化物であり、酸素吸放出材のコート量は5.0g/Lである。酸素吸放出材のコート量に対するAl2O3のコート量の比率は3.7である。
後段上触媒層4は、RhとAl2O3と酸素吸放出材とを含んでなる。後段上触媒層4の中のRhの担持量は0.2g/Lであり、Al2O3のコート量は75.2g/Lであり、酸素吸放出材はZrO2−CeO2の複合酸化物であり、酸素吸放出材のコート量は30.1g/Lである。酸素吸放出材のコート量に対するAl2O3のコート量の比率は2.5である。
下触媒層2の長さは105mmであり、基材1の長さと同じである。前段上触媒層3は、下触媒層2の上流端部から下流側に向かって31.5mmの位置まで形成されており、下触媒層2の長さに対して30%の長さである。後段上触媒層4は、下触媒層2の下流端部から上流側に向かって84mmの位置まで形成されており、下触媒層2の長さに対して80%の長さである。
下触媒層2の厚みは20μmであり、前段上触媒層3及び後段上触媒層4の厚みは20μmである。
本例の排ガス浄化用触媒を製造するに当たっては、Al2O3粉末とZrO2−CeO2複合酸化物の粉末とからなる担体粉末を、硝酸パラジウム水溶液に浸漬し、焼成して、担体にパラジウムを担持させた。パラジウムを担持させた担体に、Al2O3バインダーを混合してスラリーを作製し、基材1表面にウォッシュコートした。コートされたスラリーを乾燥、焼成して、下触媒層2を形成した。
次に、Al2O3粉末とZrO2−CeO2複合酸化物の粉末とからなる担体粉末を、硝酸パラジウム水溶液に浸漬し、焼成して、担体にパラジウムを担持させた。パラジウムを担持させた担体に、Al2O3バインダーを混合してスラリーを作製し、下触媒層2表面の上流側部分にウォッシュコートした。コートされたスラリーを乾燥、焼成して、前段上触媒層3を形成した。
次に、Al2O3粉末とZrO2−CeO2複合酸化物の粉末とからなる担体粉末を、硝酸ロジウム水溶液に浸漬し、焼成して、担体にロジウムを担持させた。ロジウムを担持させた担体に、Al2O3バインダーを混合してスラリーを作製し、下触媒層2表面の下流側部分にウォッシュコートした。コートされたスラリーを乾燥、焼成して、後段上触媒層4を形成した。
(参考例2)
本例の排ガス浄化用触媒においては、前段上触媒層中のPdの担持密度は8.8質量%であり、前段上触媒層のコート量は20gであり、前段上触媒層の長さは21mmである。すなわち、本例は、前段上触媒層中のPdの担持量を参考例1の場合と同量とし、前段上触媒層のコート量を参考例1の場合よりも減らすことで、前段上触媒層中のPd担持密度を増加させるとともに、前段上触媒層の長さを短くしている。その他は、参考例1と同様である。
(実施例1):ZrO2複合酸化物を前段上触媒層用担体とする触媒の調製
触媒は以下の方法により製造した。まず、下触媒層用のスラリー(A)を調製した。出発原料として硝酸セリウム、オキシ硝酸ジルコニウム、硝酸ランタン、硝酸イットリウムを純水に溶解し、0.3Mの前駆体溶液を得た。次に、純水で薄めたアンモニア水に前駆体溶液を滴下し、ホモジナイザーで攪拌し、遠心分離機で水分を除去して沈殿物のみを回収した。これらの沈殿物を、乾燥、仮焼成した後、700℃で焼成することにより結晶化させた。その後、ブレンダーで粉砕して粉末とした。これにより、粉末状のZrO2−CeO2−La2O3−Y2O3複合酸化物を得た。
0.5g/LのPdと、86g/LのZrO2−CeO2−La2O3−Y2O3複合酸化物と、40g/LのLa添加Al2O3と、10g/LのBaSO4と、3g/LのAl2O3バインダーとを混合して下触媒層用のスラリー(A)を調製した。
次に、後段上触媒層用のスラリー(B)を調製した。出発原料として硝酸アルミニウム、硝酸セリウム、オキシ硝酸ジルコニウム、硝酸ランタンを純水に溶解し、0.3Mの前駆体溶液を得た。次に、純水で薄めたアンモニア水に前駆体溶液を滴下し、ホモジナイザーで攪拌し、遠心分離機で水分を除去して沈殿物のみを回収した。これらの沈殿物を、乾燥、仮焼成した後、700℃で焼成することにより結晶化させた。その後、ブレンダーで粉砕して粉末とした。この粉末は、La添加CeO2−ZrO2からなる第1粒子とLa添加Al2O3からなる第2粒子が一次粒子レベルで混合された複合酸化物である。
硝酸ネオジウムを水溶化し、この粉末を混合、攪拌させた。攪拌後乾燥させ、900℃で焼成した。これにより、第1粒子及び第2粒子の表面層にNd2O3が偏析されて、粉末状の担体が得られた。
この担体を硝酸ロジウム水溶液に浸漬し、焼成して、担体に、0.15g/Lのロジウムを担持させた。ロジウムを担持させた担体46g/Lに、17g/LのLa添加Al2O3と、3g/LのAl2O3バインダーとを混合して後段上触媒層用のスラリー(B)を調製した。
次に、前段上触媒層用のスラリー(C)を調製した。出発原料として、オキシ硝酸ジルコニウム、硝酸イットリウム、硝酸ランタンを用いたこと以外は、下触媒層用のスラリーに混合されている複合酸化物と同様に、ZrO2−Y2O3−La2O3複合酸化物を調製した。0.35g/LのPdと、9.8g/LのLa添加Al2O3と、29.4g/LのZrO2複合酸化物と、3g/LのAl2O3バインダーとを混合して前段上触媒層用のスラリー(C)を調製した。ZrO2複合酸化物の全体の質量に対するY2O3の含有量は25質量%であった。
上記の3種類のスラリー(A)、(B)、(C)を基材にコートした。基材は、参考例1の基材と同様に、コーディエライト製のハニカム構造を有し、直径103mm、長さ105mmの円筒体である。図8に示すように、基材1の表面の全面に下触媒層用のスラリー(A)をコートし、乾燥、焼成して下触媒層2を形成した。下触媒層2の表面の前段部分に、前段上触媒層用のスラリー(C)をコートし、乾燥、焼成して、前段上触媒層3を形成した。下触媒層2の表面の後段部分に後段上触媒層用のスラリー(B)をコートし、乾燥、焼成した。後段上触媒層4の長さは85mmであり、下触媒層2の長さに対して81%の長さである。前段上触媒層3の長さは37mmであり、下触媒層2の長さに対して35%の長さである。後段上触媒層4の上流部分4aは、前段上触媒層3の表面の下流部分3aを被覆している。
前段上触媒層3の中のPdの担持密度は2.8質量%である。前段上触媒層3のコート量は30gであり、基材1リットル当たりのコート量に換算すると、34.3g/Lとなる。前段上触媒層3の中のZrO2複合酸化物のコート量は、基材1リットル当たり29.4g/Lである。
(実施例2):かさ密度の異なるZrO2複合酸化物を前段上触媒層用担体とする触媒の調製
下触媒層用のスラリー(A)及び後段上触媒層用のスラリー(B)を、実施例1と同様に調製した。前段上触媒層用のスラリー(C)については、ZrO2複合酸化物が、ZrO2/La2O3/Y2O3=68/7/25(質量%)の組成を有し、前段上触媒層のかさ密度が0.98、1.09、1.52(g/ml)となるようにプロセス条件を調整し、前段上触媒層中のPdの担持密度が0.5質量%となるように調製したこと以外は、実施例1と同様に調製した。
上記の3種類のスラリー(A)、(B)、(C)を、実施例1と同様に基材にコートし、それぞれ120℃で2時間乾燥し、500℃で2時間焼成して、触媒を形成した。
(比較例1)
本比較例の排ガス浄化用触媒においては、前段上触媒層中のPdの担持密度は1.8質量%であり、前段上触媒層のコート量は100gであり、前段上触媒層の長さは105mmである。すなわち、本例は、前段上触媒層中のPdの担持量を参考例1の場合と同量とし、前段上触媒層のコート量を参考例1の場合よりも増加させることで、前段上触媒層中のPd担持密度を参考例1の場合よりも減少させているとともに、前段上触媒層の長さを下触媒層と同じとしている。本例においては、図3に示すように、前段上触媒層3が、下触媒層2の表面全体を被覆しており、後段上触媒層は形成していない。その他は、参考例1と同様である。
(比較例2、3、4)
比較例2の排ガス浄化用触媒においては、前段上触媒層中のPdの担持密度は3.5質量%であり、前段上触媒層のコート量は50gであり、前段上触媒層の長さは52.5mmである。
比較例3の排ガス浄化用触媒においては、前段上触媒層中のPdの担持密度は4.4質量%であり、前段上触媒層のコート量は40gであり、前段上触媒層の長さは42mmである。
すなわち、比較例2、3では、前段上触媒層中のPdの担持量を参考例1の場合と同量とし、前段上触媒層のコート量を参考例1の場合よりも増加させることで、前段上触媒層の中のPd担持密度を減少させているとともに、前段上触媒層の長さを参考例1の場合よりも長くしている。
比較例4の排ガス浄化用触媒においては、前段上触媒層中のPdの担持密度は17.5質量%であり、前段上触媒層のコート量は10gであり、前段上触媒層の長さは10.5mmである。
すなわち、比較例4では、前段上触媒層中のPdの担持量を参考例1の場合と同量とし、前段上触媒層のコート量を参考例1の場合よりも減少させることで、前段上触媒層中のPd担持密度を増加させているとともに、前段上触媒層の長さを参考例1の場合よりも短くしている。
比較例2、3、4のその他の構成は、参考例1と同様である。
(比較例5)
比較例5の排ガス浄化用触媒においては、前段上触媒層3のスラリーを、0.35g/LのPdと、39.2g/LのLa添加Al2O3と、3g/LのAl2O3バインダーと混合して前段上触媒層3のスラリーを調製した。すなわち、前段上触媒層中のPdを担持する担体をLa添加Al2O3とした。比較例5のその他の構成は、実施例1と同様である。
(比較例6)
比較例6の排ガス浄化用触媒について、前段上触媒層のかさ密度が0.98及び1.76g/mlとなるように調製したこと以外は、実施例2と同様にして構成した。
<浄化量の測定>
上記参考例1〜2及び比較例1〜4の触媒について排ガス浄化量を測定した。
まず、各触媒を、V型8気筒エンジン(3UZ−FE)が排出する排ガス流通下に晒し、床温:1000℃×50時間の耐久試験を実施した。耐久試験を実施した各触媒を、直列4気筒の2.4Lエンジンを搭載した車両の床下にそれぞれ搭載し、理論空燃比で燃焼制御し、排ガスを入ガス温度450℃で流通させた。出ガス中のHC濃度を検出した。検出した出ガス中のHC濃度と入ガス中のHC濃度とを対照させて、1秒間あたりのHCの浄化量をもとめた。その結果を表1及び図4に示した。図4のX軸は、Pdの担持密度を示し、Y軸はHC浄化量を示す。図4中、参考例は「R」、比較例は「C」で表記した。次の図5も同様である。
<触媒の圧力損失の測定>
上記参考例1〜2及び比較例1〜4の触媒についてガス圧力損失を測定した。触媒の上流側からガス流量5m3/minのガスを触媒に流入させた。触媒下流端直後で出ガスのガス圧力を測定した。入ガスの圧力と出ガスの圧力との差をもとめ、これを圧力損失として表1及び図5に示した。図5のX軸は、Pdの担持密度を示し、Y軸は圧力損失を示す。
<評価>
上記測定結果より、参考例1〜2の触媒の浄化量は、比較例1〜4の触媒に比べて浄化量が高かった。比較例1では、Pdの担持密度が低く、HC浄化性能が低かった。7質量%程度までは、前段上触媒層のPd担持密度が高くなるほど、HC浄化性能が高くなった。
前段上触媒層のPd担持密度が4.5〜12質量%の場合には、HC浄化量が良好であった。前段上触媒層のPd担持密度が5.8〜8.8質量%のときにHC浄化量が最大になり、それ以上のPd担持密度になると、HC浄化量は次第に低下した。そして、また、前段上触媒層のPd担持密度が12質量%を超える場合(比較例4)には、Pdの担持密度が低い場合(比較例1)よりもHC浄化量が低下した。これは、Pd同士の焼結が進み、Pdの表面積が低下するためと考えられる。
また、前段上触媒層のPd担持密度が増加するほど前段上触媒層の長さが短くなっている。前段上触媒層のPd担持密度が4.5〜12質量%であって、触媒全体の長さに対する前段上触媒層の長さの比率が20〜40%、更には30〜35%である場合のように、前段上触媒層の長さを比較的短くし、この前段上触媒層に4.5〜12質量%という高い密度でPdを担持させることで、前段上触媒層での触媒活性が向上することが分かる。
触媒の圧力損失については、参考例1〜2及び比較例1〜4のいずれも、ほぼ同等の結果が得られた。これは、参考例1〜2及び比較例1〜4の触媒では、基材表面を被覆する触媒層の厚みをほぼ同じにしたため、各触媒のガス流路の開口断面積がほぼ一定となり、触媒の圧力損失がほぼ同等となったものである。
<前段上触媒層用担体による、触媒の暖機性向上効果の測定>
上記実施例1及び比較例5の触媒について、冷間始動時からの排ガス浄化量を測定した。
まず、各触媒を、V型8気筒エンジン(3UZ−FE)が排出する排ガス流通下に晒し、床温:1000℃×50時間の耐久試験を実施した。
耐久試験実施後に50℃まで温度を低下させた各触媒を、直列4気筒の2.4Lエンジンを搭載した車両の床下にそれぞれ搭載し、排ガスを入ガス温度450℃で流通させ、入ガス中のHC量及び出ガス中のHC量を測定し、HC浄化率を連続的に測定した。出ガス中のHC量が、入ガス中のHC量の半分となった時間を、HC浄化率が50%に到達した時間(THC50%浄化時間)として算出し、図6に示した。空燃比(A/F)がリッチ、ストイキ、リーンのいずれにおいても、担体としてAl2O3を用いた場合よりも本発明のZrO2複合酸化物を使用した方が、HC50%浄化時間を低減する効果が得られていることが分かる。
<Y2O3含有量によるZrO2複合酸化物の耐熱性の測定>
Y2O3含有量を変更したZrO2複合酸化物の粉末試料を、それぞれ1100℃で5時間、電気炉で熱処理した後の、各試料の比表面積の値を、図7に示す。比表面積の測定を、BET1点法により行った。各試料の熱処理前の比表面積は60m2/gであった。熱処理によりZrO2の焼結が起こり比表面積が減少するが、ZrO2複合酸化物の全体の質量に対するY2O3含有量が20〜30質量%のときに熱処理後の比表面積が大きく保たれており、この場合に耐熱性が優れていることが分かる。
本実施例1においては、前段上触媒層中のPd担持密度が2.8質量%であるが、4.5〜12質量%の場合にも、前記前段上触媒層のPdを担持する担体がZrO2複合酸化物であることがよく、ZrO2複合酸化物が、ZrO2複合酸化物の全体の質量に対して、20〜30質量%のY2O3を含むことが好ましいといえる。なぜならば、前段上触媒層のPd担持密度にかかわらず、前段上触媒層のPdを担持する担体材料の比熱が小さいほど触媒昇温性が向上し、前記担体の耐熱性が向上するからである。
<前段上触媒担体のかさ密度による暖機性向上効果の測定>
上記実施例2及び比較例6の触媒について、冷間始動時からの排ガス浄化量を測定した。耐久試験実施後に50℃まで温度を低下させた各触媒に対して、ガス組成:3000ppmのC3H6+3300ppmのNO+1500ppmのCO+14.1%のCO2+0〜1%のO2+N2バランスで、流量10L/minのガスを、入ガス温度500℃で流通させ、触媒床温を測定しながら、入ガス中のNOx量及び出ガス中のNOx量を測定し、NOx浄化率を連続的に測定した。
触媒床温の結果を図18に示した。また、出ガス中のNOx量が、入ガス中のNOx量の半分となった時間を、NOx浄化率が50%に到達した時間(TNOx50%浄化時間)として算出し、図19に示した。図18に示すように、かさ密度が高いほど昇温性が高くなる傾向がみられた。図19に示すように、前段上触媒層担体のZrO2複合酸化物のかさ密度が0.98〜1.52g/mlのとき、50%NOx浄化時間が短くなる傾向がみられた。
<ZrO2複合酸化物のかさ密度によるPdのシンタリング抑制効果の測定>
上記実施例2及び比較例6で使用したものと同様の5種類の前段上触媒用のPdを担持したZrO2複合酸化物のスラリーについて、それぞれ120℃で2時間乾燥し、500℃で2時間焼成して、触媒粉末を作成し、冷間静水等方圧プレス機(CIP成型機:100MPa、120秒、25℃)で、約1mm角の成形体を作製した。
各成形体を、リッチ組成の2%CO/N2バランス、及びリーン組成の5%O2/N2バランスのガス流通下に晒し、1100℃×5時間の耐久試験を実施した。ガス流量は20L/minであり、リッチ及びリーンガスは、5分毎に切り替えた。
各成形体の耐久試験後の試料について、CO吸着法により、Pd結晶子径を算出した。その結果を図20に示す。前段上触媒層担体のZrO2複合酸化物のかさ密度が低いほど、Pdのシンタリングが抑制される傾向がみられた。
図18〜図20から、前段上触媒担体のZrO2複合酸化物は、Pdのシンタリングを抑制し且つ昇温性が高いかさ密度範囲0.98〜1.52g/mlがより好ましく、この場合、さらに触媒暖機性能を向上することが可能となることが分かる。また、実施例2においては前段上触媒層中のPd担持密度は0.5質量%であるが、4.5〜12質量%の場合にも、前段上触媒層担体のZrO2複合酸化物のかさ密度は、0.98〜1.52g/mlであることが好ましい。なぜならば、前段上触媒層のPd担持密度にかかわらず、上記範囲のかさ密度のZrO2複合酸化物を前段上触媒層担体として用いると、Pdのシンタリングを抑制し且つ昇温性が高くなり、触媒暖機性能が向上するからである。
<検討1:前段上触媒層のコート量とHC50%浄化時間>
前段上触媒層のコート量を変化させたときの、触媒のHC50%浄化時間を測定した。
触媒は以下の方法により製造した。まず、下触媒層用のスラリー(A)を調製した。出発原料として硝酸セリウム、オキシ硝酸ジルコニウム、硝酸ランタン、硝酸イットリウムを純水に溶解し、0.3Mの前駆体溶液を得た。次に、純水で薄めたアンモニア水に前駆体溶液を滴下し、ホモジナイザーで攪拌し、遠心分離機で水分を除去して沈殿物のみを回収した。これらの沈殿物を、乾燥、仮焼成した後、700℃で焼成することにより結晶化させた。その後、ブレンダーで粉砕して粉末とした。これにより、粉末状のZrO2−CeO2−La2O3−Y2O3複合酸化物を得た。
0.5g/LのPdと、86g/LのZrO2−CeO2−La2O3−Y2O3複合酸化物と、40g/LのLa添加Al2O3と、10g/LのBaSO4と、3g/LのAl2O3バインダーとを混合して下触媒層用のスラリー(A)を調製した。
次に、後段上触媒層用のスラリー(B)を調製した。出発原料として硝酸アルミニウム、硝酸セリウム、オキシ硝酸ジルコニウム、硝酸ランタンを純水に溶解し、0.3Mの前駆体溶液を得た。次に、純水で薄めたアンモニア水に前駆体溶液を滴下し、ホモジナイザーで攪拌し、遠心分離機で水分を除去して沈殿物のみを回収した。これらの沈殿物を、乾燥、仮焼成した後、700℃で焼成することにより結晶化させた。その後、ブレンダーで粉砕して粉末とした。この粉末は、La添加CeO2−ZrO2からなる第1粒子とLa添加Al2O3からなる第2粒子が一次粒子レベルで混合された複合酸化物である。
硝酸ネオジウムを水溶化し、この粉末を混合、攪拌させた。攪拌後乾燥させ、900℃で焼成した。これにより、第1粒子及び第2粒子の表面層にNd2O3が偏析されて、粉末状の担体が得られた。
この担体を硝酸ロジウム水溶液に浸漬し、焼成して、担体に、0.15g/Lのロジウムを担持させた。ロジウムを担持させた担体46g/Lに、17g/LのLa添加Al2O3と、3g/LのAl2O3バインダーとを混合して後段上触媒層用のスラリー(B)を調製した。
次に、前段上触媒層用のスラリー(C)を調製した。出発原料として硝酸セリウム、オキシ硝酸ジルコニウム、硝酸ランタン、硝酸プラセオジウムを用いたこと以外は、下触媒層用のスラリーに混合されている複合酸化物と同様に、CeO2−ZrO2−La2O3−Pr6O11複合酸化物を調製した。1.0g/LのPdと、14〜50g/LのLa添加Al2O3と、5〜15g/LのCeO2−ZrO2−La2O3−Pr6O11複合酸化物(酸素吸放出材)と、7g/LのBaSO4と、3g/LのAl2O3バインダーとを混合して前段上触媒層用のスラリー(C)を調製した。
上記の3種類のスラリー(A)、(B)、(C)を基材にコートした。基材は、参考例1の基材と同様に、コーディエライト製のハニカム構造を有し、直径103mm、長さ105mmの円筒体である。図8に示すように、基材1の表面の全面に下触媒層用のスラリー(A)をコートし、乾燥、焼成して下触媒層2を形成した。次に、下触媒層2の表面の後段部分に後段上触媒層用のスラリー(B)をコートし、乾燥、焼成した。後段上触媒層4の長さは85mmであり、下触媒層2の長さに対して81%の長さである。次に、下触媒層2の表面の前段部分に、前段上触媒層用のスラリー(C)をコートし、乾燥、焼成して、前段上触媒層3を形成した。前段上触媒層3の長さは40mmであり、下触媒層2の長さに対して38%の長さである。前段上触媒層3の下流部分3aは、後段上触媒層4の表面の上流部分4aを被覆している。
以上より製造された触媒を、V型8気筒エンジン(3UZ−FE)の排出する排ガス流通下に晒し、床温:1000℃×50時間の耐久試験を実施した。
耐久試験実施後で室温まで温度を低下させた各触媒に対し、入ガス温度400℃のストイキ雰囲気の排ガスを流通させ、HC浄化率を連続的に測定した。そしてHC浄化率が50%に到達できる時間(THC50%浄化時間)を算出し、図9に示した。図9より知られるように、前段上触媒層のコート量が少ないほど、HC50%浄化時間が短くなった。これは、前段上触媒層の厚みが薄くなるため、前段上触媒層の熱容量が小さく、排ガスによる廃熱によって素早く暖まるからであると考えられる。
また、前段上触媒層のコート量が40〜50g/Lの場合には、HC50%浄化時間はほぼ変化しなかった。前段上触媒層のコート量が50g/Lを超えると、HC50%浄化時間はさらに長くなった。
一方、前段上触媒層のコート量が40g/L未満の場合には、製造工程で前段上触媒層を形成しにくかった。そのため、触媒性能と製造条件との双方を満たすためには、前段上触媒層のコート量は35〜44g/個であることがよいことがわかった。このコート量は基材1リットル当たり40〜50gに相当する。
本検討1においては、前段上触媒層中のPd担持密度が1.4〜3.6質量%であるが、4.5〜12質量%の場合にも、前段上触媒層のコート量が40〜50g/Lでよいといえる。なぜならば、前段上触媒層のPd担持密度にかかわらず、前段上触媒層のコート量が少ないほど、HC50%浄化時間が短くなり、またコートが困難になるからである。
<検討2:後段上触媒層の長さと触媒性能>
後段上触媒層の長さを変化させて、触媒のHC50%浄化時間及びNOx排出量を測定した。
下触媒層用のスラリー(A)は、0.5g/LのPdと、86g/LのZrO2−CeO2−La2O3−Y2O3複合酸化物と、30g/LのLa添加Al2O3と、10g/LのBaSO4と、3g/LのAl2O3バインダーとを混合して下触媒層用のスラリー(A)を調製した。
後段上触媒層用のスラリー(B)は、La添加CeO2−ZrO2からなる第1粒子とLa添加Al2O3からなる第2粒子が一次粒子レベルで混合された複合酸化物を、水溶化した硝酸ネオジウムに混合、攪拌させた。攪拌後乾燥させ、900℃で焼成した。これにより、第1粒子及び第2粒子の表面層にNd2O3が偏析されて、粉末状の担体が得られた。この担体を硝酸ロジウム水溶液に浸漬し、焼成して、57g/Lの担体に、0.15g/Lのロジウムを担持させた。ロジウムを担持させた担体に、17g/LのLa添加Al2O3と、3g/LのAl2O3バインダーとを混合して後段上触媒層用のスラリー(B)を調製した。
前段上触媒層用のスラリー(C)は、1.0g/LのPdと、25g/LのLa添加Al2O3と、11g/LのCeO2−ZrO2−La2O3−Pr6O11複合酸化物(酸素吸放出材)と、7g/LのBaSO4と、3g/LのAl2O3バインダーとを混合して前段上触媒層用のスラリー(C)を調製した。
上記の3種類のスラリー(A)、(B)、(C)を、検討1と同様に基材にコートした。下触媒層用のスラリー(A)のコート長さは105mmであり、基材表面の全面にコートした。後段上触媒層用のスラリー(B)のコート長さは65〜95mmであり、下触媒層のコート長さに対して62〜91%の長さである。前段上触媒層用のスラリー(C)のコート長さは35mmであり、下触媒層の長さに対して33%の長さである。
以上により製造された触媒に、検討1と同様に耐久試験を実施した。耐久試験後の各触媒について、検討1と同様にHC50%浄化時間を測定し、結果を図10に示した。また、耐久試験後の各触媒のNOx排出量を測定した。
図10より、後段上触媒層のコート長さが短いほどHC50%浄化時間が短くなることが分かる。
NOx排出量を測定するにあたっては、耐久試験後の各触媒を、エンジンが排出する排気系に装着した。入ガス温度550℃の定常還元雰囲気下で排ガスを各触媒に流通させ、出ガスのNOx排出量を検出した。各触媒のNOx排出量は、図11に示した。
図11より、後段上触媒層のコート長さが長くなるほど、NOx排出量が少なくなることが分かる。
以上の結果より、後段上触媒層のコート長さがちょうど中央付近、すなわち71〜81%程度の場合に、HC50%浄化時間が短く、且つNOx排出量も少なくなることが分かる。
<検討3:後段上触媒層のコート量>
後段上触媒層のコート量を変えた場合の、NOx排出量を測定した。
下触媒層用のスラリー(A)は、0.5g/LのPdと、86g/LのZrO2−CeO2−La2O3−Y2O3複合酸化物と、40g/LのLa添加Al2O3と、10g/LのBaSO4と、3g/LのAl2O3バインダーとを混合して下触媒層用のスラリー(A)を調製した。
後段上触媒層用のスラリー(B)は、La添加CeO2−ZrO2からなる第1粒子とLa添加Al2O3からなる第2粒子が一次粒子レベルで混合された複合酸化物を、水溶化した硝酸ネオジウムに混合、攪拌させた。攪拌後乾燥させ、900℃で焼成した。これにより、第1粒子及び第2粒子の表面層にNd2O3が偏析されて、粉末状の担体が得られた。この担体を硝酸ロジウム水溶液に浸漬し、焼成して、46〜80g/Lの担体に、0.15g/Lのロジウムを担持させた。ロジウムを担持させた担体に、6〜29g/LのLa添加Al2O3と、3g/LのAl2O3バインダーとを混合して後段上触媒層用のスラリー(B)を調製した。
前段上触媒層用のスラリー(C)は、1.0g/LのPdと、25g/LのLa添加Al2O3と、11g/LのCeO2−ZrO2−La2O3−Pr6O11複合酸化物(酸素吸放出材)と、7g/LのBaSO4と、3g/LのAl2O3バインダーとを混合して前段上触媒層用のスラリー(C)を調製した。
上記の3種類のスラリー(A)、(B)、(C)を、検討1と同様に基材にコートした。下触媒層用のスラリー(A)のコート長さは105mmであり、基材表面の全面にコートした。後段上触媒層用のスラリー(B)のコート長さは85mmであり、下触媒層のコート長さに対して81%の長さである。前段上触媒層用のスラリー(C)のコート長さは40mmであり、下触媒層の長さに対して38%の長さである。以上により製造された触媒の後段上触媒層のコート量は、担体のコート量を増減させることで、60〜115g/Lの間で変化させてある。
以上により製造された触媒に、検討1と同様に耐久試験を実施した。耐久試験後の各触媒について、検討2と同様に、NOx排出量を測定した。その結果を図12に示した。
図12より知られるように、後段上触媒層のコート量を多くするほど、NOx排出量が減少した。一方、後段上触媒層のコート量が60g/L未満の場合には、製造工程で後段上触媒層を形成しにくかった。そのため、触媒性能と製造条件の双方を満たすためには、後段上触媒層のコート量は57.8〜78.8g/個がよいことが分かる、これは基材1リットル当たり66〜90gに相当する。
<検討4:下触媒層のコート量>
下触媒層のコート量を変化させた各触媒について、OSC性能及び圧力損失を測定した。
下触媒層のスラリー(A)は、0.5g/LのPdと、69〜120g/LのZrO2−CeO2−La2O3−Y2O3複合酸化物(OSC材)と、29〜40g/LのLa添加Al2O3と、10g/LのBaSO4と、3g/LのAl2O3バインダーとを混合して下触媒層用のスラリー(A)を調製した。
後段上触媒層用のスラリー(B)は、La添加CeO2−ZrO2からなる第1粒子とLa添加Al2O3からなる第2粒子が一次粒子レベルで混合された複合酸化物を、水溶化した硝酸ネオジウムに混合、攪拌させた。攪拌後乾燥させ、900℃で焼成した。これにより、第1粒子及び第2粒子の表面層にNd2O3が偏析されて、粉末状の担体が得られた。この担体を硝酸ロジウム水溶液に浸漬し、焼成して、57g/Lの担体に、0.15g/Lのロジウムを担持させた。ロジウムを担持させた担体に、29g/LのLa添加Al2O3と、3g/LのAl2O3バインダーとを混合して後段上触媒層用のスラリー(B)を調製した。
前段上触媒層用のスラリー(C)は、1.0g/LのPdを、25g/LのLa添加Al2O3と、11g/LのCeO2−ZrO2−La2O3−Pr6O11複合酸化物(酸素吸放出材)と、7g/LのBaSO4と、3g/LのAl2O3バインダーとを混合して前段上触媒層用のスラリー(C)を調製した。
上記の3種類のスラリー(A)、(B)、(C)を、検討1と同様に基材にコートした。下触媒層用のスラリー(A)のコート長さは105mmであり、基材表面の全面にコートした。後段上触媒層用のスラリー(B)のコート長さは85mmであり、下触媒層のコート長さに対して81%の長さである。前段上触媒層用のスラリー(C)のコート長さは40mmであり、下触媒層の長さに対して38%の長さである。以上により製造された触媒の下触媒層のコート量は、担体のコート量を増減させることで、97〜171g/Lの間で変化させてある。
製造された各触媒について、検討1と同様の耐久試験を実施し、OSC性能及び圧力損失を測定した。OSC性能については、耐久試験後の各触媒を、2.4Lエンジンの排気系にそれぞれ配置し、触媒床温450℃にて、空燃比が14.1〜15.1の間における出ガス中の酸素濃度を連続的に測定した。空燃比が高いときから低いときの間に放出する酸素量を、酸素吸蔵量として、図13に示した。圧力損失は、検討2と同様に測定し、その結果を図14に示した。
図13より知られるように、下触媒層のコート量が増加するほど、OSC性能が向上した。これは、下触媒層の長さを一定として下触媒層のコート量を変化させたため、下触媒層の厚みが変化し、下触媒層の厚みが増加するほど、ZrO2−CeO2−La2O3−Y2O3複合酸化物の絶対量が増え、そのため、吸放出し得る酸素量、すなわちOSC性能が増えたものである。
図14より知られるように、下触媒層のコート量が増加するほど、圧力損失が増加した。これは、下触媒層のコート量が増加するのに伴って、下触媒層の厚みが増え、そのため、ガス流路の開口断面積が減少したためである。
OSC性能と圧力損失の結果から、下触媒層のコート量が、実施した量の中の中間付近、すなわち105〜155g/L付近、更には150〜155g/Lである場合に、下触媒層のOSC性能がよく、且つ圧力損失も低くできるといえる。
<検討5:下触媒層のコート量>
下触媒層のコート量を変化させた各触媒についてHC50%浄化温度及び圧力損失を測定した。
下触媒層のスラリー(A)は、1.5g/LのPdと、60〜100g/LのZrO2−CeO2−La2O3−Y2O3複合酸化物(OSC材)と、24〜40g/LのLa添加Al2O3と、6〜10g/LのBaSO4と、3〜5g/LのAl2O3バインダーとを混合して下触媒層用のスラリー(A)を調製した。
後段上触媒層用のスラリー(B)は、La2O3添加Al2O3からなる第1粒子とZrO2−CeO2−La2O3からなる第2粒子が一次粒子レベルで混合された複合酸化物を、水溶化した硝酸ネオジウムに混合、攪拌させた。攪拌後乾燥させ、900℃で焼成した。これにより、第1粒子及び第2粒子の表面層にNd2O3を濃化してなる粉末状の担体が得られた。この担体を硝酸ロジウム水溶液に浸漬し、焼成して、55g/Lの担体に、0.3g/Lのロジウムを担持させた。ロジウムを担持させた担体に、35g/LのLa添加Al2O3と、4g/LのAl2O3バインダーとを混合して後段上触媒層用のスラリー(B)を調製した。
前段上触媒層用のスラリー(C)は、6.0g/LのPdと、77g/LのLa添加Al2O3と、35g/LのCeO2−ZrO2−La2O3−Pr6O11複合酸化物(酸素吸放出材)と、20g/LのBaSO4と、10g/LのAl2O3バインダーとを混合して前段上触媒層用のスラリー(C)を調製した。
上記の3種類のスラリー(A)、(B)、(C)を、検討1と同様に基材にコートした。基材の容量は875ccである。下触媒層用のスラリー(A)は、基材表面の全面にコートした。後段上触媒層用のスラリー(B)のコート長さは、基材の全長に対して80%とした。前段上触媒層用のスラリー(C)のコート長さは、基材全長に対して35%とした。以上により製造された触媒の下触媒層のコート量は、担体のコート量を増減させることで、80〜160g/Lの間で変化させている。
製造された各触媒について、V型8気筒エンジン(3UZ−FE)排ガス下で、床温:1000℃×50時間の耐久試験を実施した。耐久試験後に、HC50%浄化時間及びOSC性能を測定した。HC50%浄化温度は、検討2と同様に測定し、その結果を図15に示した。OSC性能は、上記検討4と同様に測定し、その結果を図16に示した。
図15より知られるように、下触媒層のコート量が105〜155g/L以上でHC50%浄化温度が低く、優れた低温浄化性能を発揮した。90g/L以下の場合には、HC50%浄化温度が高くなり低温浄化性能が悪化した。図16より知られるように、下触媒層のコート量が減少するほど、OSC性能が低下する傾向があった。下触媒層のコート量が105〜155g/Lでは、OSC性能に問題がないことを別途車両評価で確認した。
これらの結果から、下触媒層のコート量が105g/L以上であれば、下触媒層の低温浄化特性及びOSC性能が優れることが分かる。上記検討4の結果とあわせると、下触媒層のコート量が155g/L以下であれば、圧力損失を低くすることができるため、下触媒層のコート量は、105〜155g/Lであることがよいといえる。
<検討6:触媒コート後のTotal−GSA(全幾何学的表面積)>
触媒コート後のTotal−GSAを変化させた各触媒について、OSC性能を測定した。
下触媒層のスラリー(A)は、0.5g/LのPdと、69〜120g/LのZrO2−CeO2−La2O3−Y2O3複合酸化物(OSC材)と、29〜40g/LのLa添加Al2O3と、10g/LのBaSO4と、3g/LのAl2O3バインダーとを混合して下触媒層用のスラリー(A)を調製した。
後段上触媒層用のスラリー(B)は、La添加CeO2−ZrO2からなる第1粒子とLa添加Al2O3からなる第2粒子が一次粒子レベルで混合された複合酸化物を、水溶化した硝酸ネオジウムに混合、攪拌させた。攪拌後乾燥させ、900℃で焼成した。これにより、第1粒子及び第2粒子の表面層にNd2O3が偏析されて、粉末状の担体が得られた。この担体を硝酸ロジウム水溶液に浸漬し、焼成して、57g/Lの担体に、0.15g/Lのロジウムを担持させた。ロジウムを担持させた担体に、29g/LのLa添加Al2O3と、3g/LのAl2O3バインダーとを混合して後段上触媒層用のスラリー(B)を調製した。
前段上触媒層用のスラリー(C)は、1.0g/LのPdと、25g/LのLa添加Al2O3と、11g/LのCeO2−ZrO2−La2O3−Pr6O11複合酸化物(酸素吸放出材)と、7g/LのBaSO4と、3g/LのAl2O3バインダーとを混合して前段上触媒層用のスラリー(C)を調製した。
(i)875cc、(ii)1100cc、(iii)1294ccの容量の基材を準備した。これらの基材は、いずれも直径103mmの円筒体でありそれぞれの断面積は同じであり、長手軸方向の長さがそれぞれ、105mm、130mm、150mmである。各基材はそれぞれ600個の正六角形のセルを有する。また、前記875ccの基材と直径及び長さが同じであり、正六角形のセルの数が750個の基材(iv)を用意した。
上記の3種類のスラリー(A)、(B)、(C)を、上記の(i)〜(iv)の基材にそれぞれコートした。下触媒層用のスラリー(A)を、各基材表面の全面にコートした。後段上触媒層用のスラリー(B)のコート長さは、各基材について(i)84mm、(ii)104mm、(iii)120mm、(iv)84mmであり、いずれも下触媒層のコート長さに対して80%の長さである。前段上触媒層用のスラリー(C)のコート長さは、各基材について(i)37mm、(ii)46mm、(iii)53mm、(iv)37mmであり、いずれも下触媒層の長さに対して35%の長さである。各基材に対するコート量は276gであり全て同じである。そして、基材の長手方向に垂直面となる断面におけるセルにコートされた触媒の表面積を、100個のセルについて顕微鏡を用いて測定し、その値の平均値であるGSAに、基材に含まれるセルの個数及び基材の長手方向の長さをかけて、Total−GSAを導出した。Total−GSAは、(i)22.4cm2/個、(ii)25.6cm2/個、(iii)29.7cm2/個、(iv)37.2cm2/個であった。
製造された各触媒について、各GaにおけるOSC性能を測定した。各触媒を、2.4Lエンジンの排気系にそれぞれ配置し、触媒床温450℃にて、空燃比が14.1〜15.1の間における出ガス中の酸素濃度を連続的に測定した。空燃比が高いときから低いときの間に放出する酸素量を、酸素吸蔵量として、図17に示した。
図17から分かるように、Gaが20g/s以下の低Ga域では、GSAによらず、OSC性能はほぼ同等であったが、Gaが30g/s以上の高Ga域においては、Total−GSAが大きくなるほどOSC性能が向上した。30g/s以上の高Ga域においても高いOSC性能を得るために、Total−GSAは25〜36cm2/個であることが好ましい。これは、低Ga域では、触媒のコート量や触媒貴金属量にOSC性能が律速するのに対し、高Ga域では触媒コート層へのガスの拡散性の影響が大きいと考えられる。