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JP5167539B2 - 遺伝子多型およびその用途 - Google Patents

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Description

本発明は、癌の予後診断マーカーとなり得る新規遺伝子多型および該多型を検出することによる癌の予後診断に関する。本発明はまた、該遺伝子の活性もしくは発現を阻害することによる癌の治療に関する。
トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)は、上皮細胞を含むほとんどの細胞種で強力な増殖インヒビターである。腫瘍細胞によるTGF-βの分泌はオートクライン的な増殖阻害による腫瘍抑制に寄与し得るが、一方で、腫瘍の侵襲および血管新生を刺激し、免疫応答を阻害することにより、腫瘍の進行を促進することもあり得る。TGF-βは、TGF-β、TGF-β前駆体のアミノ末端部分および潜在型TGF-β結合蛋白質(LTBP)からなる潜在型の高分子量複合体として合成される。LTBPは190kDaを超える分子量を有する糖蛋白質であり、16-18のEGF様ドメインと8つのシステイン残基を含むユニークなモチーフの数回のリピートを有する。LTBPには、4つのアイソフォーム(LTBP-1-LTBP-4)が哺乳動物種で見出されている。LTBP-1は8システインのモチーフの1つを介してTGF-β1に結合し、TGF-β1のアッセンブリおよび分泌(例えば、非特許文献1参照)および活性化(例えば、非特許文献2参照)を促進する。免疫電顕観察の結果から、LTBPが細胞外微小繊維成分の1つであり、TGF-β1を細胞外構造にターゲッティングし、おそらくは活性化が起こる細胞表面上に潜在型TGF-β1を集結させることによって、潜在型TGF-β1の活性化に関与していると示唆されている(例えば、非特許文献3参照)。
LTBP-1には、それぞれLTBP-1S(short)およびLTBP-1L(long)と呼ばれる2つの主要なアイソフォームが知られており、それらは別個のプロモーターおよびLTBP-1Sのコドン145と146の間のオルタナティブスプライシングから誘導される(非特許文献4)。LTBP-1Lは、LTBP-1Sには見られない346アミノ酸のN末端延長を有する(非特許文献5)。このN末端延長はマトリックス結合を促進するEGF様ドメインを含み、LTBP-1LはLTBP-1Sよりも細胞外マトリックスと効率よく結合することが確認されている。
本発明者らは以前、主としてLTBP-1S mRNAではなくLTBP-1L mRNAのアップレギュレーションのために、数例の卵巣癌患者でLTBP-1およびTGF-β1蛋白質が過剰発現していることを示した(非特許文献6)。この過剰発現は、卵巣癌の発癌に寄与しているかもしれない、TGF-β1の機能とそのシグナリングに影響を与えると考えられる。しかしながら、これらの遺伝子の転写制御に関してはほとんど情報が得られていない。
宮園(Miyazono K.)ら、「ジ・エンボ・ジャーナル(EMBO J.)」、英国、第10巻、pp. 1091-1101、1991年 フラウメンハフト(Fraumenhaft R.)ら、「ザ・ジャーナル・オヴ・セル・バイオロジー(J. Cell Biol.)」、米国、第120巻、pp. 995-1002、1993年 タイペイル(Taipale J.)ら、「ザ・ジャーナル・オヴ・セル・バイオロジー(J. Cell Biol.)」、米国、第124巻、pp. 171-181、1994年 コスキ(Koski C.)ら、「ザ・ジャーナル・オヴ・バイオロジカル・ケミストリー(J. Biol. Chem.)」、米国、第274巻、pp. 32619-32630、1999年 オロフソン(Olofsson A.)ら、「ザ・ジャーナル・オヴ・バイオロジカル・ケミストリー(J. Biol. Chem.)」、米国、第270巻、pp. 31294-31297、1995年 東(Higashi T.)ら、「ジャパニーズ・ジャーナル・オヴ・キャンサー・リサーチ(Jpn. J. Cancer Res)」、日本国、第92巻、pp. 506-515、2001年
したがって、本発明の目的は、卵巣癌におけるLTBP-1L過剰発現の分子メカニズムを明らかにし、該過剰発現の臨床的意義を解明することである。
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、LTBP-1L遺伝子の5’-調節領域中に存在する2つの新規SNPs(-202G/Cおよび+20A/C;数字は転写開始点+1を基準とした位置を示す)が、この遺伝子の過剰発現に寄与しており、それらが卵巣癌、子宮体癌、肺癌等の癌患者の予後に影響していることを見出した。
さらに、本発明者らは、これらのSNPsが子宮体癌、胃癌、肺癌等の癌に対する感受性と相関しており、意外にもこれらの癌で予後不良をもたらすアレルが感受性に関してはむしろ保護(難罹患性)アレルであり、逆に比較的予後が良好なアレルが疾患(易罹患性)アレルであることを見出した。
本発明者らは、これらの知見に基づいてさらに検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、
[1]癌患者より採取されたゲノムDNA含有試料において、配列番号:1で表されるヒトLTBP-1L遺伝子5’-調節領域の塩基配列中塩基番号2014および/または2235で示される塩基における多型を検定することを特徴とする、癌の予後診断のための検査方法、
[2]癌が、卵巣癌、子宮頚癌、子宮体癌、胃癌、大腸癌および肺癌からなる群より選択される、上記[1]記載の方法、
[3]癌が卵巣癌、子宮体癌または肺癌である、上記[2]記載の方法、
[4]ヒトLTBP-1L遺伝子の部分塩基配列であって、配列番号:1で表される塩基配列中塩基番号2014および/または2235で示される塩基を含む、約15〜約500塩基の連続した塩基配列を含有してなる核酸、
[5]配列番号:1で表されるヒトLTBP-1L遺伝子5’-調節領域の塩基配列中塩基番号2014および2235で示される塩基における多型の各々を検出し得る1組以上の核酸プローブおよび/またはプライマーを含んでなる、癌の予後診断のための検査用キット、
[6]核酸プローブが、配列番号:1で表されるヒトLTBP-1L遺伝子5’-調節領域の塩基配列中塩基番号2014および/または2235で示される多型部位の塩基を含む、約15〜約500塩基の連続した塩基配列を含有してなる核酸であり、核酸プライマーが、ヒトLTBP-1L遺伝子の部分塩基配列であって、配列番号:1で表される塩基配列中塩基番号2014および/または2235で示される多型部位の塩基を含む約50〜約1,000塩基の連続した塩基配列を増幅し得る一対の核酸である上記[5]記載のキット、
[7]癌が、卵巣癌、子宮頚癌、子宮体癌、胃癌、大腸癌および肺癌からなる群より選択される、上記[5]または[6]記載のキット、
[8]癌が卵巣癌、子宮体癌または肺癌である、上記[7]記載のキット、
[9]配列番号:2で表される塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸を含有してなる癌治療剤、
[10]配列番号:2で表される塩基配列中塩基番号1〜1038で示される部分塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸を含有してなる、上記[9]記載の剤、
[11]配列番号:3で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質またはその部分ペプチドに対する中和抗体を含有してなる癌治療剤、
[12]中和抗体が、配列番号:3で表されるアミノ酸配列中アミノ酸番号1〜346で示されるアミノ酸配列の一部を認識するものである、上記[11]記載の剤、
[13]上記[4]記載の核酸を含有してなる癌治療剤、
[14]癌が、卵巣癌、子宮頚癌、子宮体癌、胃癌、大腸癌および肺癌からなる群より選択される、上記[9]〜[13]のいずれかに記載の剤、
[15]癌が卵巣癌、子宮体癌または肺癌である、上記[14]記載の剤、
[16]被験者より採取されたゲノムDNA含有試料において、配列番号:1で表されるヒトLTBP-1L遺伝子5’-調節領域の塩基配列中塩基番号2014および/または2235で示される塩基における多型を検定することを特徴とする、子宮体癌、胃癌および肺癌からなる群より選択される癌に対する感受性の検査方法、
[17]配列番号:1で表されるヒトLTBP-1L遺伝子5’-調節領域の塩基配列中塩基番号2014および2235で示される塩基における多型の各々を検出し得る1組以上の核酸プローブおよび/またはプライマーを含んでなる、子宮体癌、胃癌または肺癌に対する感受性の検査用キット、および
[18]核酸プローブが、配列番号:1で表されるヒトLTBP-1L遺伝子5’-調節領域の塩基配列中塩基番号2014および/または2235で示される多型部位の塩基を含む、約15〜約500塩基の連続した塩基配列を含有してなる核酸であり、核酸プライマーが、ヒトLTBP-1L遺伝子の部分塩基配列であって、配列番号:1で表される塩基配列中塩基番号2014および/または2235で示される多型部位の塩基を含む約50〜約1,000塩基の連続した塩基配列を増幅し得る一対の核酸である上記[17]記載のキット、
などを提供する。
LTBP-1L遺伝子5’-調節領域における2つのSNPsは、該遺伝子の転写活性に影響を及ぼし、-202Gおよび+20Aのホモ接合型の遺伝子型を有する癌患者では、他の遺伝子型を有する患者よりもLTBP-1の発現が増加し、生命予後が不良であることから、癌患者における該SNPsを調べることにより、癌の予後診断が可能となる。また、LTBP-1L蛋白質の発現もしくは活性を阻害することにより、癌の治療・進行抑制効果を奏する。
一方で、これらのSNPsは子宮体癌、胃癌、肺癌等の癌に対する感受性と相関しており、-202Cおよび+20Cのアレルは-202Gおよび+20Aのアレルと比較して、これらの癌に対してより感受性(易罹患性)である。従って、被験者における該SNPsを調べることにより、これらの癌に対する感受性を予測することができる。
図1AはLTBP-1Lプロモーターにおける2つの新規SNPsを模式的に示す。図中、ATGは開始コドンを示す。図1BはPCR-RFLP法による多型分析の結果を示す。上段は各ハプロタイプにおける制限酵素切断部位および生成する各フラグメントの長さを示し、下段は各遺伝子型におけるEcoRIIおよびCspI消化物のバンドパターンを示す。図中、Mは分子量マーカー、Dはヘテロアレルのミスマッチを有するアニーリングにより生成するヘテロ二重鎖を示す。 図2AはSNP部位での異なるハプロタイプを有するLTBP-1Lプロモーター領域を含むルシフェラーゼレポーターコンストラクトを模式的に示す。図2Bは種々のハプロタイプを有するレポータープラスミドの相対ルシフェラーゼ活性を示す。各カラムは3回の独立した実験(それぞれ3連で実施)の平均値を示し、エラーバーは標準偏差を示す。図中、* はP<0.01(vs. C-Cコンストラクト)を示す。C:LTBP-1Lプロモーター活性に及ぼすSp1の効果を示す図である。blankは空のベクター、Sp1はSp1発現ベクター、DN-SP1はSp3のドミナントネガティブ体を発現するベクターをコトランスフェクトしたことを示す。各カラムは3回の独立した実験(それぞれ3連で実施)の平均値を示し、エラーバーは標準偏差を示す。図中、* はP<0.0001(vs. G-A blank)を、# はP<0.0001(vs. C-C blank)をそれぞれ示す。 図3はLTBP-1LプロモーターへのSp1の結合に関するEMSAの結果を示す。図中、Bはプローブ-Sp1複合体、Sはプローブ-Sp1-抗Sp1抗体複合体、Fは遊離のプローブにそれぞれ相当するバンドを示す。 図4は卵巣癌患者におけるLTBP-1Lプロモーターの遺伝子型ごとの生存曲線を示す。図中、○は死亡例の発生を示す。 図5は子宮体癌患者におけるLTBP-1Lプロモーターの遺伝子型ごとの生存曲線を示す。図中、○は死亡例の発生を示す。 図6は肺癌患者におけるLTBP-1Lプロモーターの遺伝子型ごとの生存曲線を示す。図中、○は死亡例の発生を示す。
本発明の癌の予後診断方法(以下、単に「本発明の診断方法」という場合がある。尚、本明細書において「予後診断のための検査方法」とは、医師による医療決定段階を構成に含まない点を除いて「予後診断方法」と同義である)および子宮体癌、胃癌、肺癌等の癌に対する感受性の予測方法(以下、単に「本発明の予測方法」という場合がある。尚、本明細書において「感受性の検査方法」とは、医師による医療決定段階を構成に含まない点を除いて「感受性の予測方法」と同義である)は、被験者のLTBP-1L遺伝子5’-調節領域における多型を検出することを特徴とする。本発明の診断および予測方法において利用することができる多型としては、本発明において見出された新規多型[「GenBankアクセッション番号AF171934 (AF171934.1 GI:6424997)」で表される塩基配列中、塩基番号2014で示されるCおよび2235で示されるCがそれぞれGおよびAである1塩基置換(SNP)多型(配列番号:1)]が挙げられる。以下、本明細書において、特にことわらない限り、上記多型部位のヌクレオチド(塩基)の位置は、推定の転写開始点(配列番号:1で表される塩基配列中塩基番号2216で示される塩基;+1)を基準として表記するものとする(即ち、配列番号:1で表される塩基配列中塩基番号2014における多型を-202G/C、塩基番号2235における多型を+20A/Cと表記する)。
本発明の診断および予測方法において利用することができる他の多型としては、-202G/Cまたは+20A/Cと連鎖不平衡係数D’が0.9以上の連鎖不平衡状態にある多型が挙げられる。ここで「連鎖不平衡係数D’」は、2つのSNPsについて第一のSNPの各アレルを(A, a)、第二のSNPの各アレルを(B, b)とし、4つのハプロタイプ(AB, Ab, aB, ab)の各頻度をPAB, PAb, PaB, Pabとすると、下記式により得られる。
D’=(PABPab−PAbPaB)/Min [(PAB+PaB)(PaB+Pab), (PAB+PAb)(PAb+Pab)]
[式中、Min [(PAB+PaB)(PaB+Pab), (PAB+PAb)(PAb+Pab)]は、(PAB+PaB)(PaB+Pab)と(PAB+PAb)(PAb+Pab)とのうち、値の小さい方をとることを意味する。]
好ましくは、D’が0.95以上、より好ましくは0.99以上、最も好ましくは1である多型が挙げられる。尚、-202G/Cと+20A/Cとは、日本人集団で調べた限りにおいては完全連鎖する(D’=1)、即ち、G-AもしくはC-Cハプロタイプのみが存在する。
本発明の診断および予測方法に利用される予後診断マーカー多型-202G/Cと+20A/Cは、後記実施例に示される通りLTBP-1L遺伝子の転写活性、転写因子Sp1との結合活性におけるアレル間の差異をもたらす(-202G/CはSp1結合モチーフであるGCボックスとオーバーラップし、+20A/CはGCボックスに隣接する)。即ち、-202Gおよび+20Aアレルでは、-202Cおよび+20Cアレルに比べて上記両活性が顕著に増大している(両活性に及ぼす影響は-202G/Cの方がより大きい)。また、G-Aアレルは、ある特定の癌(例えば、卵巣癌、大腸癌)患者集団および健常者集団においてメジャーアレルであり、これらの集団におけるアレル頻度に有意差はないことが示された。しかしながら、G-A/G-Aのホモ接合型の遺伝子型を有する癌患者は、C-C/G-Aのヘテロ接合型およびC-C/C-Cのホモ接合型の遺伝子型を有する患者と比較して、累積生存率が低い傾向を示す。以上の事実は、LTBP-1Lの発現が癌の進行において重要な役割を果たしており、G-A/G-A遺伝子型保有者では、LTBP-1LプロモーターへのSp1の結合活性、LTBP-1Lの転写活性が増大しているために癌が進行しやすい(予後不良である)ことが強く示唆される。従って、-202G/Cおよび+20A/Cの多型は、癌患者における生命予後の良否を規定する多型である。
他方、別のある特定の癌(例えば、子宮体癌、胃癌、肺癌)患者集団においては、健常者集団に比べてC-Cアレル頻度が有意に高い(p<0.1)。特に、後記実施例によれば、子宮体癌および胃癌におけるC-Cアレル保有者(C-C/G-Aのヘテロ接合型およびC-C/C-Cのホモ接合型)の非保有者(G-A/G-Aのホモ接合型)に対するオッズ比は2ないし3以上(p<0.05)であることから、C-Cアレルはこれらの癌に対する遺伝的な危険因子の1つであるといえる。逆に、G-A/G-A遺伝子型は、ステージの進行した癌に対して予後不良を示すにもかかわらず、子宮体癌および胃癌の発症リスクは顕著に低い。このことは、癌の発症前あるいは発症早期においては、LTBP-1Lの高発現はむしろ癌細胞の増殖抑制に寄与していることを示唆しているかもしれない。いずれにせよ、-202G/Cおよび+20A/Cの多型は、ヒトにおける子宮体癌、胃癌、肺癌等の癌の発症リスクを予測し得る多型である。
LTBP-1Lは潜在型TGF-β1と複合体を形成し、TGF-β1の活性化に重要な役割を果たしている。TGF-βは癌抑制因子としても、癌の進行の刺激因子としても作用し得る。発癌の早いステージでは、細胞のTGF-βに対する増殖阻害応答が維持されているため、TGF-βは直接的に腫瘍増殖を抑制するが、ステージが進むと癌細胞がTGF-βによる増殖阻害に耐性となり、TGF-βはむしろ腫瘍の浸潤および転移に寄与するようになると考えられている。したがって、本発明の診断方法により予後診断が可能な癌として、例えばステージの進んだ癌が挙げられるが、それらに限定されるものではない。好ましくは、本発明の診断方法は、卵巣癌、子宮頚癌、子宮体癌、胃癌、大腸癌、肺癌、その他の固形癌(例えば、肝臓癌、膵臓癌、胆嚢癌、腎臓癌等)、より好ましくは卵巣癌、子宮頚癌、子宮体癌、胃癌、大腸癌および肺癌、特に好ましくは卵巣癌、子宮体癌および肺癌の予後診断に有用である。
一方、本発明の予測方法により感受性の予測が可能な癌としては、子宮体癌、胃癌、肺癌等が挙げられる。
本発明の診断および予測方法において検出される多型は、上記した多型のうちのいずれか一方であってもよいし、両方であってもよい。
本発明の診断および予測方法において、多型の検出は公知のSNP検出方法のいずれも使用することができる。古典的な検出方法としては、例えば、被験者の細胞等から抽出したゲノムDNAを試料とし、配列番号:1で表されるヒトLTBP-1L遺伝子5’-調節領域の塩基配列中塩基番号2014および/または2235で示される多型部位の塩基を含む、約15〜約500塩基の連続した塩基配列を含有してなる核酸をプローブとして用い、例えばWallaceら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80, 278-282 (1983))の方法に従って、ストリンジェンシーを正確にコントロールしながらハイブリダイゼーションを行い、プローブと完全相補的な配列のみを検出する方法や、上記核酸と上記核酸において多型部位の塩基(-202Gおよび/または+20A)が他の塩基(-202Cおよび/または+20C)に置換された核酸のいずれか一方を標識し、他方を未標識としたミックスプローブを用い、変性温度から徐々に反応温度を低下させながらハイブリダイゼーションを行い、一方のプローブと完全相補的な配列を先にハイブリダイズさせ、ミスマッチを有するプローブとの交差反応を防ぐ方法などが挙げられる。ここで標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、〔125I〕、〔131I〕、〔3H〕、〔14C〕などが用いられる。上記酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。
好ましくは、多型の検出は、例えば、WO 03/023063に記載された種々の方法、例えば、RFLP法、PCR-SSCP法、ASOハイブリダイゼーション、ダイレクトシークエンス法、ARMS法、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法、RNaseA切断法、化学切断法、DOL法、TaqMan PCR法、インベーダー法、MALDI-TOF/MS法、TDI法、モレキュラー・ビーコン法、ダイナミック・アレルスペシフィック・ハイブリダイゼーション法、パドロック・プローブ法、UCAN法、DNAチップまたはDNAマイクロアレイを用いた核酸ハイブリダイゼーション法、およびECA法などにより実施することができる(WO 03/023063,第17頁第5行〜第28頁第20行を参照)。以下、代表的な方法として、TaqMan PCR法とインベーダー法について、より詳細に説明する。
(1)TaqMan PCR法
TaqMan PCR法は、蛍光標識したアレル特異的オリゴヌクレオチド(TaqManプローブ)とTaq DNAポリメラーゼによるPCRとを利用した方法である。TaqManプローブとしては、ヒトLTBP-1L遺伝子の部分塩基配列であって、上記したいずれかの多型部位の塩基を含む約15〜約30塩基の連続した塩基配列からなるオリゴヌクレオチドが用いられる。該プローブは、その5’末端がFAMやVICなどの蛍光色素で、3’末端がTAMRAなどのクエンチャー(消光物質)でそれぞれ標識されており、そのままの状態ではクエンチャーが蛍光エネルギーを吸収するため蛍光は検出されない。プローブは双方のアレルについて調製し、一括検出のために互いに蛍光波長の異なる蛍光色素(例えば、一方のアレルをFAM、他方をVIC)で標識することが好ましい。また、TaqManプローブからのPCR伸長反応が起こらないように3’末端はリン酸化されている。TaqManプローブとハイブリダイズする領域を含むゲノムDNAの部分配列を増幅するように設計されたプライマーおよびTaq DNAポリメラーゼとともにPCRを行うと、TaqManプローブが鋳型DNAとハイブリダイズし、同時にPCRプライマーからの伸長反応が起こるが、伸長反応が進むとTaq DNAポリメラーゼの5’ヌクレア−ゼ活性によりハイブリダイズしたTaqManプローブが切断され、蛍光色素が遊離してクエンチャーの影響を受けなくなり、蛍光が検出される。鋳型の増幅により蛍光強度は指数関数的に増大する。
例えば、-202G/C多型の検出において、当該塩基を含むアレル特異的オリゴヌクレオチド(約15〜約30塩基長;GアレルはFAMで、CアレルはVICでそれぞれ5’末端標識し、3’末端はいずれもTAMRAで標識)をTaqManプローブとして用いた場合、被験者の遺伝子型がGG、あるいはCCであれば、それぞれFAMあるいはVICの強い蛍光強度を認め、他方の蛍光はほとんど認められない。一方、被験者の遺伝子型がGCであれば、FAMおよびVIC両方の蛍光が検出される。
(2)インベーダー法
インベーダー法では、TaqMan PCR法と異なり、アレル特異的オリゴヌクレオチド(アレルプローブ)自体は標識されず、多型部位の塩基の5’側に鋳型DNAと相補性のない配列(フラップ)を有し、3’側には鋳型に特異的な相補配列を有する。インベーダー法では、さらに鋳型の多型部位の3’側に特異的な相補配列を有するオリゴヌクレオチド(インベーダープローブ;該プローブの5’末端である多型部位に相当する塩基は任意である)と、5’側がヘアピン構造をとり得る配列を有し、ヘアピン構造を形成した際に5’末端の塩基と対をなす塩基から3’側に連続する配列がアレルプローブのフラップと相補的な配列であることを特徴とするFRET(fluorescence resonance energy transfer)プローブとが用いられる。FRETプローブの5’末端は蛍光標識(例えば、FAMやVICなど)され、その近傍にはクエンチャー(例えば、TAMRAなど)が結合しており、そのままの状態(ヘアピン構造)では蛍光は検出されない。
鋳型であるゲノムDNAにアレルプローブおよびインベーダープローブを反応させると、三者が相補結合した際に多型部位にインベーダープローブの3’末端が侵入する。この多型部位の構造を認識する酵素(cleavase)を用いてアレルプローブの一本鎖部分(即ち、多型部位の塩基から5’側のフラップ部分)を切り出すと、フラップはFRETプローブと相補的に結合し、フラップの多型部位がFRETプローブのヘアピン構造に侵入する。この構造をcleavaseが認識して切断することにより、FRETプローブの末端標識された蛍光色素が遊離してクエンチャーの影響を受けなくなって蛍光が検出される。多型部位の塩基が鋳型とマッチしないアレルプローブはcleavaseによって切断されないが、切断されないアレルプローブもFRETプローブとハイブリダイズすることができるので、同様に蛍光が検出される。但し、反応効率が異なるため、多型部位の塩基がマッチするアレルプローブでは、マッチしないアレルプローブに比べて蛍光強度が顕著に強い。
通常、3種のプローブおよびcleavaseと反応させる前に、鋳型DNAはアレルプローブおよびインベーダープローブがハイブリダイズする部分を含む領域を増幅し得るプライマーを用いてPCRにより増幅しておくことが好ましい。
(3)RFLP法
LTBP-1L遺伝子は、-202G/Cおよび+20A/Cの多型により制限酵素断片長に差異を生じるので、これを利用して上記多型を簡便に検出することができる。即ち、-202GアレルはEcoRIIで切断されるが、-202Cアレルは切断されない。一方、+20AアレルはCspIで切断されないが、+20CアレルはCspIで切断される。したがって、後記実施例に示されるように、-202〜+20を含むLTBP-1L遺伝子の断片をPCRで増幅し、これをEcoRIIとCspIとで二重消化して制限酵素断片長を比較することにより、上記多型を検出することができる。
上記のようにして多型を調べた結果、-202Gおよび/または+20Aアレルを保有していると判定された場合、特に該アレルについてホモ接合体であると判定された場合には、被験者は癌の予後が不良である可能性が高いと診断することができる。また、-202Cおよび/または+20Cアレルを保有していると判定された場合、被験者は子宮体癌、胃癌、肺癌等の癌に易罹患性であると予測することができる。
尚、2つの多型を調べた際に、1つの結果が他の結果と相反する場合(即ち、G-Cアレル、C-Aアレルが検出された場合)には、-202G/C多型の結果が優先される(但し、後記実施例において調べられた限りにおいては、G-Cアレル、C-Aアレルは検出されていない)。
上述のように、-202G/Cおよび+20A/C多型は、本発明において初めて見出された新規多型であり、且つ癌の予後診断および特定の癌の感受性予測に利用できるマーカー多型である。より詳細には、GenBankアクセッション番号AF171934で表される塩基配列中、塩基番号2014で示される塩基および塩基番号2235で示される塩基はいずれもCであるが、本発明者らは前者がCからGに、後者がCからAにそれぞれ置換された新規SNPsを同定した。
従って、本発明はまた、ヒトLTBP-1L遺伝子の部分塩基配列であって、配列番号:1で表される塩基配列中塩基番号2014および/または2235で示される塩基を含む、約15〜約500塩基(好ましくは約15〜約200塩基、より好ましくは約15〜約50塩基)の連続した塩基配列を含有してなる核酸を提供する。かかるSNP部位を含む新規核酸は、上記した本発明の診断および予測方法において、当該塩基における多型を検出するのに好ましく用いることができる。
本発明はまた、上記本発明の診断および予測方法に用いるためのキットを提供する。即ち、本発明の診断および予測用キットは、配列番号:1で表されるヒトLTBP-1L遺伝子5’-調節領域の塩基配列中塩基番号2014および2235で示される塩基における多型の各々を検出し得る1組以上の核酸プローブおよび/またはプライマーを含むことを特徴とする。
具体的には、本発明の診断および予測用キットに用いられる核酸プローブは、配列番号:1で表されるヒトLTBP-1L遺伝子5’-調節領域の塩基配列中塩基番号2014および/または2235で示される多型部位の塩基を含む、約15以上、好ましくは約15〜約500塩基、より好ましくは約15〜約200塩基、いっそう好ましくは約15〜約50塩基の連続した塩基配列を含有してなる核酸である。ここで、塩基番号2014(即ち-202位)で示される塩基はGまたはC、塩基番号2235(即ち+20位)で示される塩基はAまたはCであり、使用する多型検出法に応じて、各多型部位についていずれか一方の塩基を有する核酸を用いることもできるし、各アレルに対応する塩基を有する2種類の核酸を用いることもできる。尚、上記インベーダー法に使用されるインベーダープローブについては、多型部位の塩基(即ち、3’末端の塩基)は任意の塩基でよい。
該プローブは、多型性の検出に適した付加的配列(ゲノムDNAと相補的でない配列)を含んでいてもよい。例えば、上記インベーダー法に用いられるアレルプローブは、多型部位の塩基の5’末端にフラップと呼ばれる付加的配列を有する。
また、該プローブは、適当な標識剤、例えば、放射性同位元素(例:125I、131I、3H、14C等)、酵素(例:β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素等)、蛍光物質(例:フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネート等)、発光物質(例:ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニン等)などで標識されていてもよい。あるいは、蛍光物質(例:FAM、VIC等)の近傍に該蛍光物質の発する蛍光エネルギーを吸収するクエンチャー(消光物質)がさらに結合されていてもよい。かかる実施態様においては、検出反応の際に蛍光物質とクエンチャーとが分離して蛍光が検出される。
本発明の診断および予測用キットに用いられる核酸プライマーは、上記本発明の診断および予測方法において検出すべき多型部位の塩基を含むゲノムDNAの領域を特異的に増幅し得るように設計されたものであればいかなるものであってもよい。例えば、該核酸プライマーは、ヒトLTBP-1L遺伝子の部分塩基配列であって、検出すべき多型部位、即ち配列番号:1で表される塩基配列中塩基番号2014または2235で示される多型部位より5’側の相補鎖配列の一部にハイブリダイズする、約15〜約50塩基、好ましくは約15〜約30塩基の塩基配列を含む核酸と、該多型部位の塩基より3’側の配列の一部にハイブリダイズする、約15〜約50塩基、好ましくは約15〜約30塩基の塩基配列を含む核酸との組み合わせであり、それらによって増幅される核酸の断片長が約50〜約1,000塩基、好ましくは約50〜約500塩基、より好ましくは約50〜約200塩基である、一対の核酸が挙げられる。
該プライマーは、多型性の検出に適した付加的配列(ゲノムDNAと相補的でない配列)、例えばリンカー配列を含んでいてもよい。
また、該プライマーは、適当な標識剤、例えば、放射性同位元素(例:125I、131I、3H、14C等)、酵素(例:β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素等)、蛍光物質(例:フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネート等)、発光物質(例:ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニン等)などで標識されていてもよい。
本発明の診断および予測用キットに用いられる核酸プローブまたはプライマーは、DNAであってもRNAであってもよく、また、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。二本鎖の場合は二本鎖DNA、二本鎖RNA、DNA/RNAハイブリッドのいずれであってもよい。従って、本明細書においてある塩基配列を有する核酸について記載する場合、特に断らない限り、該塩基配列を有する一本鎖核酸、該塩基配列と相補的な配列を有する一本鎖核酸、それらのハイブリッドである二本鎖核酸をすべて包含する意味で用いられていると理解されるべきである。
上記核酸プローブまたはプライマーは、例えば、配列番号:1および配列番号:2で表される塩基配列の情報に基づいて、DNA/RNA自動合成機を用いて常法に従って合成することができる。
上記核酸プローブおよび/またはプライマーは、各々別個に(あるいは可能であれば混合した状態で)水もしくは適当な緩衝液(例:TEバッファーなど)中に適当な濃度(例:2×〜20×濃度で1〜50μMなど)となるように溶解し、約-20℃で保存することができる。
本発明の診断および予測用キットは、多型検出法に応じて、当該方法の実施に必要な他の成分を構成としてさらに含んでいてもよい。例えば、該キットがTaqMan PCR法による多型検出用である場合には、該キットは、10×PCR反応緩衝液、10×MgCl2水溶液、10×dNTPs水溶液、Taq DNAポリメラーゼ(5U/μL)等をさらに含むことができる。また、該キットがRFLP法による多型検出用である場合には、該キットは、制限酵素EcoRIIおよびCspI、該制限酵素反応用緩衝液等をさらに含むことができる。
本発明はまた、LTBP-1Lの発現および/または活性を阻害することによる、癌、好ましくはステージの進行した癌、例えば、卵巣癌、子宮頚癌、子宮体癌、胃癌、大腸癌、肺癌、その他の固形癌(例えば、肝臓癌、膵臓癌、胆嚢癌、腎臓癌等)、より好ましくは卵巣癌、子宮頚癌、子宮体癌、胃癌、大腸癌および肺癌、特に好ましくは卵巣癌、子宮体癌および肺癌の治療に関する。
本発明で治療ターゲットとなるヒトLTBP-1L蛋白質は、配列番号:3で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有する蛋白質である。該蛋白質は、ヒトの細胞[例えば、肝細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、杯細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例:マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくは癌細胞など]またはそれらの細胞が存在するあらゆる組織もしくは器官[例えば、脳、脳の各部位(例:嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆嚢、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例:大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、椎間板、脂肪組織(例:褐色脂肪組織、白色脂肪組織)など]より単離された天然蛋白質であってもよく、また、化学的に、もしくは無細胞蛋白質合成系を用いて生化学的に合成された蛋白質であってもよい。あるいは、上記アミノ酸配列をコードする塩基配列を有する核酸を導入された形質転換体から産生される組換え蛋白質であってもよい。
配列番号:3で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列とは、配列番号:3で表されるアミノ酸配列と約80%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上、最も好ましくは約98%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、該アミノ酸配列を有する蛋白質が配列番号:3で表されるアミノ酸配列を含有する蛋白質と実質的に同質の活性を有するような配列をいう。ここで「相同性」とは、当該技術分野において公知の数学的アルゴリズムを用いて2つのアミノ酸配列をアラインさせた場合の、最適なアラインメント(好ましくは、該アルゴリズムは最適なアラインメントのために配列の一方もしくは両方へのギャップの導入を考慮し得るものである)における、オーバーラップする全アミノ酸残基に対する同一アミノ酸および類似アミノ酸残基の割合(%)を意味する。「類似アミノ酸」とは物理化学的性質において類似したアミノ酸を意味し、例えば、芳香族アミノ酸(Phe、Trp、Tyr)、脂肪族アミノ酸(Ala、Leu、Ile、Val)、極性アミノ酸(Gln、Asn)、塩基性アミノ酸(Lys、Arg、His)、酸性アミノ酸(Glu、Asp)、水酸基を有するアミノ酸(Ser、Thr)、側鎖の小さいアミノ酸(Gly、Ala、Ser、Thr、Met)などの同じグループに分類されるアミノ酸が挙げられる。このような類似アミノ酸による置換は蛋白質の表現型に変化をもたらさない(即ち、保存的アミノ酸置換である)ことが予測される。保存的アミノ酸置換の具体例は当該技術分野で周知であり、種々の文献に記載されている(例えば、Bowieら,Science, 247:1306-1310 (1990)を参照)。
本明細書におけるアミノ酸配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;マトリクス=BLOSUM62;フィルタリング=OFF)にて計算することができる。アミノ酸配列の相同性を決定するための他のアルゴリズムとしては、例えば、Karlinら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 5873-5877 (1993)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはNBLASTおよびXBLASTプログラム(version 2.0)に組み込まれている(Altschulら, Nucleic Acids Res., 25: 3389-3402 (1997))]、Needlemanら, J. Mol. Biol., 48: 444-453 (1970)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはGCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムに組み込まれている]、MyersおよびMiller, CABIOS, 4: 11-17 (1988)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはCGC配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(version 2.0)に組み込まれている]、Pearsonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85: 2444-2448 (1988)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはGCGソフトウェアパッケージ中のFASTAプログラムに組み込まれている]等が挙げられるが、それらに限定されない。
実質的に同質の活性としては、例えば、潜在型TGF-β1との結合活性、TGF-β1の活性化促進活性などが挙げられる。「実質的に同質」とは、それらの性質が定性的に(例:生理学的に、または薬理学的に)同等であることを意味する。したがって、上記の活性の程度といった量的要素については同等であることが好ましいが、異なっていてもよい(例えば、約0.01〜約100倍、好ましくは約0.1〜約10倍、より好ましくは約0.5〜約2倍)。
LTBP-1Lの活性の測定は自体公知の方法に準じて行うことができる。例えば、TGF-β1との結合試験などが挙げられるが、それらに限定されない。
また、本発明で用いられるLTBP-1Lとしては、例えば、(1)配列番号:3で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(2)配列番号:3で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、(3)配列番号:3で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(4)配列番号:3で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(5)それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有する蛋白質であって、配列番号:3で表されるアミノ酸配列を含有する蛋白質と実質的に同質の活性を有する蛋白質も含まれる。
上記のようにアミノ酸配列が挿入、欠失または置換されている場合、その挿入、欠失または置換の位置は、当該蛋白質の活性を損なわない限り、特に限定されない。
本明細書においてアミノ酸配列により特定される蛋白質は、ペプチド標記の慣例に従って、左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。配列番号:3で表されるアミノ酸配列を含有する蛋白質をはじめとする、本発明で用いられるLTBP-1Lは、C末端がカルボキシル基(-COOH)、カルボキシレート(-COO-)、アミド(-CONH2)またはエステル(-COOR)の何れであってもよい。
ここでエステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチルなどのC1-6アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3-8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α−ナフチルなどのC6-12アリール基、例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1-2アルキル基もしくはα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1-2アルキル基などのC7-14アラルキル基、ピバロイルオキシメチル基などが用いられる。
本発明で用いられる蛋白質がC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明で用いられる蛋白質に含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、本発明で用いられる蛋白質には、N末端のアミノ酸残基(例:メチオニン残基)のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1-6アルカノイルなどのC1-6アシル基など)で保護されているもの、生体内で切断されて生成するN末端のグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば-OH、-SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1-6アルカノイル基などのC1-6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖蛋白質などの複合蛋白質なども含まれる。
本発明で用いられる蛋白質の具体例としては、例えば、配列番号:3で表されるアミノ酸配列からなるヒトLTBP-1L(GenBankアクセッション登録番号:NP_996826.1)があげられる。
本発明で用いられるLTBP-1Lの部分ペプチドは、配列番号:3で表されるアミノ酸配列の部分アミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有し、LTBP-1Lに対して特異的親和性を有する抗体を作製するための抗原ペプチドとなり得るものであればいずれのものでもよい。
具体的には、該部分ペプチドとしては、本発明で用いられるLTBP-1Lの構成アミノ酸配列のうち少なくとも3個以上、好ましくは6個以上の連続するアミノ酸配列を含むペプチドなどが用いられる。
LTBP-1は別個のプロモーターから産生される2つのアイソフォームを有し、LTBP-1Lは、LTBP-1Sと比較して、N末端側に346アミノ酸の延長を含むことを特徴とする。したがって、LTBP-1Lを癌治療ターゲットとしてその発現および/または活性を阻害する場合、当該N末端側の346アミノ酸を標的にすることが好ましい。したがって、本発明で用いられるLTBP-1Lの部分ペプチドは、N末端側の346アミノ酸の全部もしくは一部のいずれかを含むものであることが好ましい。
本発明で用いられるLTBP-1Lの部分ペプチドは、C末端がカルボキシル基(-COOH)、カルボキシレート(-COO-)、アミド(-CONH2)またはエステル(-COOR)の何れであってもよい。ここでエステルにおけるRとしては、LTBP-1Lについて上記したと同様のものが挙げられる。また、該部分ペプチドがC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、該カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明で用いられるLTBP-1Lの部分ペプチドに含まれる。この場合のエステルとしては、C末端のエステルと同様のものが例示される。さらに、該部分ペプチドには、LTBP-1Lの場合と同様に、N末端のアミノ酸残基(例:メチオニン残基)のアミノ基が保護基で保護されているもの、N端側が生体内で切断され生成したグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基が適当な保護基で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖ペプチドなどの複合ペプチドなども含まれる。
本発明で用いられるLTBP-1Lまたはその部分ペプチドは塩の形態であってもよい。例えば、生理学的に許容される酸(例:無機酸、有機酸)や塩基(例:アルカリ金属塩)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
本発明で用いられるLTBP-1Lまたはその塩は、前述したヒトの細胞または組織から自体公知の蛋白質の精製方法によって調製することができる。具体的には、該動物の組織または細胞をホモジナイズした後、酸などで抽出を行い、該抽出液を逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを組み合わせることにより精製単離することができる。
本発明で用いられるLTBP-1Lもしくは部分ペプチドまたはその塩は、公知のペプチド合成法に従って製造することもできる。
ペプチド合成法は、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれであってもよい。本発明の蛋白質を構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合し、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的とする蛋白質を製造することができる。ここで、縮合や保護基の脱離は、自体公知の方法、例えば、以下の(1)〜(5)に記載された方法に従って行われる。
(1) M. BodanszkyおよびM.A. Ondetti, ペプチド・シンセシス (Peptide Synthesis), Interscience Publishers, New York (1966年)
(2) SchroederおよびLuebke, ザ・ペプチド (The Peptide), Academic Press, New York (1965年)
(3) 泉屋信夫他, ペプチド合成の基礎と実験, 丸善 (株) (1975年)
(4) 矢島治明および榊原俊平, 生化学実験講座 1, 蛋白質の化学IV, 205, (1977年)
(5) 矢島治明監修, 続医薬品の開発, 第14巻, ペプチド合成, 広川書店
本発明で用いられるLTBP-1Lの部分ペプチドまたはその塩は、上述もしくは後述のいずれかの方法により得られるLTBP-1Lまたはその塩を、適当なペプチダーゼで切断することによっても製造することができる。
このようにして得られたLTBP-1Lまたはその部分ペプチドは、公知の精製法により精製単離することができる。ここで、精製法としては、例えば、溶媒抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、再結晶、これらの組み合わせなどが挙げられる。上記方法で得られる蛋白質または部分ペプチドが遊離体である場合には、該遊離体を公知の方法あるいはそれに準じる方法によって適当な塩に変換することができるし、逆に蛋白質が塩として得られた場合には、該塩を公知の方法あるいはそれに準じる方法によって遊離体または他の塩に変換することができる。
ヒトLTBP-1L(またはその部分ペプチド;以下、単にLTBP-1Lという場合がある)は、それらをコードする核酸を含有する発現ベクターを導入した形質転換体を培養してLTBP-1Lを生成せしめ、得られる培養物からLTBP-1Lを分離・精製することによって製造することもできる。
ヒトLTBP-1Lまたはその部分ペプチドをコードする核酸としては、前述したLTBP-1Lのアミノ酸配列もしくはその部分アミノ酸配列をコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものでもよい。該核酸は、DNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよいが、好ましくはDNAが挙げられる。また、該核酸は二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドでもよい。
LTBP-1Lまたはその部分ペプチドをコードするDNAは、ゲノムDNA、ヒトの細胞[例えば、肝細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、杯細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例:マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくは癌細胞など]またはそれらの細胞が存在するあらゆる組織もしくは器官[例えば、脳、脳の各部位(例:嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆嚢、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例:大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、椎間板、脂肪組織(例:褐色脂肪組織、白色脂肪組織)など]由来のcDNA、合成DNAなどが挙げられる。LTBP-1Lまたはその部分ペプチドをコードするゲノムDNAおよびcDNAは、上記した細胞・組織より調製したゲノムDNA画分および全RNAもしくはmRNA画分をそれぞれ鋳型として用い、Polymerase Chain Reaction(以下、「PCR法」と略称する)およびReverse Transcriptase-PCR(以下、「RT-PCR法」と略称する)によって直接増幅することもできる。あるいは、LTBP-1Lまたはその部分ペプチドをコードするゲノムDNAおよびcDNAは、上記した細胞・組織より調製したゲノムDNAおよび全RNAもしくはmRNAの断片を適当なベクター中に挿入して調製されるゲノムDNAライブラリーおよびcDNAライブラリーから、コロニーもしくはプラークハイブリダイゼーション法またはPCR法などにより、それぞれクローニングすることもできる。ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。
ヒトLTBP-1LをコードするDNAとしては、例えば、配列番号:2で表される塩基配列中コード領域として示される塩基配列を含有するDNA、あるいは該塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、前記した配列番号:3で表されるアミノ酸配列を含有する蛋白質と実質的に同質の活性(例えば、TGF-β1との結合活性、TGF-β1活性化促進活性など)を有する蛋白質をコードするDNAなどが挙げられる。
配列番号:2で表される塩基配列中コード領域として示される塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号:2で表される塩基配列中コード領域として示される塩基配列と約80%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
本明細書における塩基配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=-3)にて計算することができる。塩基配列の相同性を決定するための他のアルゴリズムとしては、上記したアミノ酸配列の相同性計算アルゴリズムが同様に好ましく例示される。
ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)第2版(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、ハイブリダイゼーションは、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。ハイブリダイゼーションは、好ましくは、ストリンジェントな条件に従って行なうことができる。
ストリンジェントな条件としては、例えば、6×SSC(sodium chloride/sodium citrate)中45℃でのハイブリダイゼーション反応の後、0.2×SSC/0.1% SDS中65℃での一回以上の洗浄などが挙げられる。当業者は、ハイブリダイゼーション溶液の塩濃度、ハイブリダゼーション反応の温度、プローブ濃度、プローブの長さ、ミスマッチの数、ハイブリダイゼーション反応の時間、洗浄液の塩濃度、洗浄の温度等を適宜変更することにより、所望のストリンジェンシーに容易に調節することができる。
LTBP-1LをコードするDNAは、好ましくは配列番号:2で表される塩基配列中コード領域として示される塩基配列を含有するヒトLTBP-1L cDNA(GenBankアクセッション番号:NM_206943.1)もしくはそのアレル変異体などが挙げられる。
LTBP-1Lの部分ペプチドをコードするDNAは、配列番号:3で表されるアミノ酸配列の一部と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むものであればいかなるものであってもよい。また、ゲノムDNA、上記した細胞・組織由来のcDNA、合成DNAのいずれでもよい。
具体的には、該部分ペプチドをコードするDNAとしては、例えば、
(1)配列番号:2で表される塩基配列中コード領域として示される塩基配列を有するDNAの部分塩基配列、または
(2)配列番号:2で表される塩基配列中コード領域として示される塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有するペプチドをコードするDNAなどが用いられる。
LTBP-1Lまたはその部分ペプチドをコードするDNAは、該蛋白質またはペプチドをコードする塩基配列の一部分を有する合成DNAプライマーを用いてPCR法によって増幅するか、または適当な発現ベクターに組み込んだDNAを、LTBP-1Lの一部あるいは全領域をコードするDNA断片もしくは合成DNAを標識したものとハイブリダイゼーションさせることによってクローニングすることができる。ハイブリダイゼーションは、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)第2版(前述)に記載の方法などに従って行うことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、ハイブリダイゼーションは、該ライブラリーに添付された使用説明書に記載の方法に従って行うことができる。
DNAの塩基配列は、公知のキット、例えば、MutanTM-super Express Km(宝酒造(株))、MutanTM-K(宝酒造(株))等を用いて、ODA-LA PCR法、Gapped duplex法、Kunkel法等の自体公知の方法あるいはそれらに準じる方法に従って変換することができる。
クローン化されたDNAは、目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化するか、リンカーを付加した後に、使用することができる。該DNAはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することができる。
上記のLTBP-1Lまたはその部分ペプチドをコードするDNAを含む発現ベクターで宿主を形質転換し、得られる形質転換体を培養することによって、該蛋白質またはペプチドを製造することができる。
LTBP-1Lまたはその部分ペプチドをコードするDNAを含む発現ベクターは、例えば、LTBP-1LをコードするDNAから目的とするDNA断片を切り出し、該DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
プロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。
例えば、宿主が動物細胞である場合、サイトメガロウイルス(CMV)由来プロモーター(例:CMV前初期プロモーター)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)由来プロモーター(例:HIV LTR)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)由来プロモーター(例:RSV LTR)、マウス乳癌ウイルス(MMTV)由来プロモーター(例:MMTV LTR)、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)由来プロモーター(例:MMTV LTR)、単純ヘルペスウイルス(HSV)由来プロモーター(例:HSVチミジンキナーゼ(TK)プロモーター)、SV40由来プロモーター(例:SV40初期プロモーター)、エプスタインバーウイルス(EBV)由来プロモーター、アデノ随伴ウイルス(AAV)由来プロモーター(例:AAV p5プロモーター)、アデノウイルス(AdV)由来プロモーター(Ad2またはAd5主要後期プロモーター)などが用いられる。
宿主がエシェリヒア属菌である場合、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーター、T7プロモーターなどが好ましい。
宿主がバチルス属菌である場合、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなどが好ましい。
宿主が酵母である場合、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどが好ましい。
宿主が昆虫細胞である場合、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。
発現ベクターとしては、上記の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製起点などを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子[メソトレキセート(MTX)耐性]、アンピシリン耐性(Ampr)遺伝子、ネオマイシン耐性(Neor)遺伝子(G418耐性)等が挙げられる。特に、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター(CHO-dhfr-)細胞を用い、dhfr遺伝子を選択マーカーとして使用する場合、目的遺伝子をチミジンを含まない培地によって選択することもできる。
また、必要に応じて、宿主に合ったシグナル配列をコードする塩基配列(シグナルコドン)を、LTBP-1Lまたはその部分ペプチドをコードするDNAの5’末端側に付加してもよい。宿主がエシェリヒア属菌である場合、PhoAシグナル配列、OmpAシグナル配列などが、宿主がバチルス属菌である場合、α-アミラーゼシグナル配列、サブチリシンシグナル配列などが、宿主が酵母である場合、MFαシグナル配列、SUC2シグナル配列などが、宿主が動物細胞である場合、インシュリンシグナル配列、α-インターフェロンシグナル配列、抗体分子シグナル配列などがそれぞれ用いられる。
宿主としては、例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、酵母、昆虫細胞、昆虫、動物細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12、DH1、JM103、JA221、HB101、C600などが用いられる。
バチルス属菌としては、例えば、バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)MI114、207-21などが用いられる。
酵母としては、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AH22、AH22R-、NA87-11A、DKD-5D、20B-12、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)NCYC1913、NCYC2036、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)KM71などが用いられる。
昆虫細胞としては、例えば、ウイルスがAcNPVの場合、夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)、Trichoplusia niの中腸由来のMG1細胞、Trichoplusia niの卵由来のHigh FiveTM細胞、Mamestra brassicae由来の細胞、Estigmena acrea由来の細胞などが用いられる。ウイルスがBmNPVの場合、昆虫細胞としては、蚕由来株化細胞(Bombyx mori N 細胞;BmN細胞)などが用いられる。該Sf細胞としては、例えば、Sf9細胞(ATCC CRL1711)、Sf21細胞(以上、Vaughn, J.L.ら、イン・ヴィボ(In Vivo), 13, 213-217 (1977))などが用いられる。
昆虫としては、例えば、カイコの幼虫などが用いられる。
動物細胞としては、例えば、サル由来細胞(例:COS-1、COS-7、CV-1、Vero)、ハムスター由来細胞(例:BHK、CHO、CHO-K1、CHO-dhfr-)、マウス由来細胞(例:NIH3T3、L、L929、CTLL-2、AtT-20)、ラット由来細胞(例:H4IIE、PC-12、3Y1、NBT-II)、ヒト由来細胞(例:HEK293、A549、HeLa、HepG2、HL-60、Jurkat、U937)などが用いられる。
形質転換は、宿主の種類に応じ、公知の方法に従って実施することができる。
エシェリヒア属菌は、例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69, 2110 (1972)やGene, 17, 107 (1982)などに記載の方法に従って形質転換することができる。
バチルス属菌は、例えば、Molecular and General Genetics, 168, 111 (1979)などに記載の方法に従って形質転換することができる。
酵母は、例えば、Methods in Enzymology, 194, 182-187 (1991)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75, 1929 (1978)などに記載の方法に従って形質転換することができる。
昆虫細胞および昆虫は、例えば、Bio/Technology, 6, 47-55 (1988)などに記載の方法に従って形質転換することができる。
動物細胞は、例えば、細胞工学別冊8 新細胞工学実験プロトコール, 263-267 (1995)(秀潤社発行)、Virology, 52, 456 (1973)に記載の方法に従って形質転換することができる。
形質転換体の培養は、宿主の種類に応じ、公知の方法に従って実施することができる。
例えば、宿主がエシェリヒア属菌またはバチルス属菌である形質転換体を培養する場合、培養に使用される培地としては液体培地が好ましい。また、培地は、形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物などを含有することが好ましい。ここで、炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖などが;窒素源としては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質が;無機物としては、例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウムなどがそれぞれ挙げられる。また、培地には、酵母エキス、ビタミン類、生長促進因子などを添加してもよい。培地のpHは、好ましくは約5〜8である。
宿主がエシェリヒア属菌である形質転換体を培養する場合の培地としては、例えば、グルコース、カザミノ酸を含むM9培地が好ましい。必要により、プロモーターを効率よく働かせるために、例えば、3β-インドリルアクリル酸のような薬剤を培地に添加してもよい。培養は、通常約15〜43℃で、約3〜24時間行なわれる。必要により、通気や撹拌を行ってもよい。
宿主がバチルス属菌である形質転換体の培養は、通常約30〜40℃で、約6〜24時間行なわれる。必要により、通気や撹拌を行ってもよい。
宿主が酵母である形質転換体を培養する場合の培地としては、例えば、バークホールダー(Burkholder)最小培地や0.5% カザミノ酸を含有するSD培地などが挙げられる。培地のpHは、好ましくは約5〜8である。培養は、通常約20℃〜35℃で、約24〜72時間行なわれる。必要に応じて、通気や撹拌を行ってもよい。
宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換体を培養する場合の培地としては、例えばGrace's Insect Mediumに非働化した10% ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは、好ましくは約6.2〜6.4である。培養は、通常約27℃で、約3〜5日間行なわれる。必要に応じて通気や撹拌を行ってもよい。
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する場合の培地としては、例えば、約5〜20%の胎児牛血清を含む最小必須培地(MEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、RPMI1640培地、199培地などが用いられる。培地のpHは、好ましくは約6〜8である。培養は、通常約30℃〜40℃で、約15〜60時間行なわれる。必要に応じて通気や撹拌を行ってもよい。
以上のようにして、形質転換体の細胞内または細胞外にLTBP-1Lを生成させることができる。
前記形質転換体を培養して得られる培養物から、LTBP-1Lを自体公知の方法に従って分離精製することができる。
例えば、LTBP-1Lを培養菌体あるいは細胞から抽出する場合、培養物から公知の方法で集めた菌体あるいは細胞を適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊した後、遠心分離やろ過により可溶性蛋白質の粗抽出液を得る方法などが適宜用いられる。該緩衝液は、尿素や塩酸グアニジンなどの蛋白質変性剤や、トリトンX-100TMなどの界面活性剤を含んでいてもよい。一方、LTBP-1Lが細胞外に分泌される場合は、培養物から遠心分離または濾過等により培養上清を回収する。
このようにして得られた可溶性画分もしくは培養上清中に含まれるLTBP-1Lの単離精製は、自体公知の方法に従って行うことができる。このような方法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法;透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法;イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法;アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法;逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法;等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法;などが用いられる。これらの方法は、適宜組み合わせることもできる。
かくして得られるLTBP-1Lまたはその部分ペプチドが遊離体である場合には、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法によって該遊離体を塩に変換することができ、該蛋白質またはペプチドが塩として得られた場合には、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法により該塩を遊離体または他の塩に変換することができる。
なお、形質転換体が産生するLTBP-1Lを、精製前または精製後に適当な蛋白質修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり、ポリペプチドを部分的に除去することもできる。該蛋白質修飾酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、アルギニルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グリコシダーゼなどが用いられる。
かくして得られるLTBP-1Lの存在は、特異的な抗体を用いたエンザイムイムノアッセイやウエスタンブロッティングなどにより確認することができる。
さらに、LTBP-1Lまたはその部分ペプチドは、それをコードするDNAに対応するRNAを鋳型として、ウサギ網状赤血球ライセート、コムギ胚芽ライセート、大腸菌ライセートなどからなる無細胞蛋白質翻訳系を用いてインビトロ翻訳することによっても合成することができる。あるいは、さらにRNAポリメラーゼを含む無細胞転写/翻訳系を用いて、LTBP-1Lまたはその部分ペプチドをコードするDNAを鋳型としても合成することができる。無細胞蛋白質(転写/)翻訳系は市販のものを用いることもできるし、それ自体既知の方法、具体的には大腸菌抽出液はPratt J.M.ら, “Transcription and Tranlation”, Hames B.D.およびHiggins S.J.編, IRL Press, Oxford 179-209 (1984)に記載の方法等に準じて調製することもできる。市販の細胞ライセートとしては、大腸菌由来のものはE.coli S30 extract system (Promega社製) やRTS 500 Rapid Tranlation System (Roche社製)等が挙げられ、ウサギ網状赤血球由来のものはRabbit Reticulocyte Lysate System (Promega社製) 等、さらにコムギ胚芽由来のものはPROTEIOSTM (TOYOBO社製) 等が挙げられる。このうちコムギ胚芽ライセートを用いたものが好適である。コムギ胚芽ライセートの作製法としては、例えばJohnston F.B.ら, Nature, 179, 160-161 (1957) あるいはErickson A.H.ら, Meth. Enzymol., 96, 38-50 (1996) 等に記載の方法を用いることができる。
蛋白質合成のためのシステムまたは装置としては、バッチ法(Pratt,J.M.ら (1984) 前述)や、アミノ酸、エネルギー源等を連続的に反応系に供給する連続式無細胞蛋白質合成システム(Spirin A.S.ら, Science, 242, 1162-1164 (1988))、透析法(木川ら、第21回日本分子生物学会、WID6)、あるいは重層法(PROTEIOSTM Wheat germ cell-free protein synthesis core kit取扱説明書:TOYOBO社製)等が挙げられる。さらには、合成反応系に、鋳型のRNA、アミノ酸、エネルギー源等を必要時に供給し、合成物や分解物を必要時に排出する方法(特開2000-333673)等を用いることができる。
本発明で用いられる、LTBP-1L蛋白質またはその部分ペプチドに対する抗体(以下、本発明の抗体と略記することがある)は、LTBP-1L蛋白質またはその部分ペプチドを認識し得る抗体であれば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れであってもよい。抗体のアイソタイプは特に限定されないが、好ましくはIgG、IgMまたはIgA、特に好ましくはIgGが挙げられる。
また、本発明の抗体は、標的抗原を特異的に認識し結合するための相補性決定領域(CDR)を少なくとも有するものであれば特に制限はなく、完全抗体分子の他、例えばFab、Fab'、F(ab’)2等のフラグメント、scFv、scFv-Fc、ミニボディー、ダイアボディー等の遺伝子工学的に作製されたコンジュゲート分子、あるいはポリエチレングリコール(PEG)等の蛋白質安定化作用を有する分子等で修飾されたそれらの誘導体などであってもよい。
LTBP-1L蛋白質またはその部分ペプチド(以下、抗体の説明においては、これらを単にLTBP-1L蛋白質と略記する場合がある)に対する抗体は、自体公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。
以下に、本発明の抗体の免疫原調製法、および該抗体の製造法について説明する。
(1)抗原の調製
本発明の抗体を調製するために使用される抗原としては、上記したLTBP-1L蛋白質またはその部分ペプチド、あるいはそれと同一の抗原決定基を1種あるいは2種以上有する(合成)ペプチドなど、何れのものも使用することができる(以下、これらを単に本発明の抗原と称することもある)。
ヒトLTBP-1L蛋白質またはその部分ペプチドは、上記した通り、例えば、(a)ヒトの組織または細胞から公知の方法あるいはそれに準ずる方法を用いて調製、(b)ペプチド・シンセサイザー等を使用する公知のペプチド合成方法で化学的に合成、(c)ヒトLTBP-1L蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNAを含有する形質転換体を培養、あるいは(d)ヒトLTBP-1L蛋白質またはその部分ペプチドをコードする核酸を鋳型として無細胞転写/翻訳系を用いて生化学的に合成することによって製造される。
(a)ヒトの組織または細胞からLTBP-1L蛋白質を調製する場合、その組織または細胞をホモジナイズした後、粗分画物(例、膜画分、可溶性画分)をそのまま抗原として用いることもできる。あるいは酸、界面活性剤またはアルコールなどで抽出を行い、該抽出液を、塩析、透析、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを組み合わせることにより精製単離することもできる。得られたLTBP-1L蛋白質をそのまま免疫原とすることもできるし、ペプチダーゼ等を用いた限定分解により部分ペプチドを調製してそれを免疫原とすることもできる。
(b)化学的に本発明の抗原を調製する場合、該合成ペプチドとしては、例えば上述の(a)の方法を用いて天然材料より精製したLTBP-1L蛋白質と同一の構造を有するもの、具体的には、該蛋白質のアミノ酸配列において少なくとも3個以上、好ましくは6個以上のアミノ酸からなる任意の箇所のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を1種あるいは2種以上含有するペプチドなどが用いられる。
(c)DNAを含有する形質転換体を用いて本発明の抗原を製造する場合、該DNAは、公知のクローニング方法〔例えば、Molecular Cloning 2nd ed.(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法など〕に従って作製することができる。該クローニング方法とは、(1)ヒトLTBP-1L蛋白質をコードする遺伝子配列に基づきデザインしたDNAプローブを用い、ヒトcDNAライブラリーからハイブリダイゼーション法により該抗原をコードするDNAを単離するか、(2)ヒトLTBP-1L蛋白質をコードする遺伝子配列に基づきデザインしたDNAプライマーを用い、ヒトcDNAを鋳型としてPCR法により該抗原をコードするDNAを調製し、該DNAを宿主に適合する発現ベクターに挿入する方法などが挙げられる。該発現ベクターで宿主を形質転換して得られる形質転換体を適当な培地中で培養することにより、所望の抗原を得ることができる。
(d)無細胞転写/翻訳系を利用する場合、上記(c)と同様の方法により調製した抗原をコードするDNAを挿入した発現ベクター(例えば、該DNAがT7、SP6プロモーター等の制御下におかれた発現ベクターなど)を鋳型とし、該プロモーターに適合するRNAポリメラーゼおよび基質(NTPs)を含む転写反応液を用いてmRNAを合成した後、該mRNAを鋳型として公知の無細胞翻訳系(例:大腸菌、ウサギ網状赤血球、コムギ胚芽等の抽出液)を用いて翻訳反応を行わせる方法などが挙げられる。塩濃度等を適当に調整することにより、転写反応と翻訳反応を同一反応液中で一括して行うこともできる。
免疫原としては完全なヒトLTBP-1L蛋白質分子やその部分アミノ酸配列を有するペプチドを用いることができる。部分アミノ酸配列としては、例えば3個以上の連続するアミノ酸残基からなるもの、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上、いっそう好ましくは6個以上の連続するアミノ酸残基からなるものが挙げられる。あるいは、該アミノ酸配列としては、例えば20個以下の連続するアミノ酸残基からなるもの、好ましくは18個以下、より好ましくは15個以下、いっそう好ましくは12個以下の連続するアミノ酸残基からなるものが挙げられる。これらのアミノ酸残基の一部(例:1ないし数個)は置換可能な基(例:Cys、水酸基等)によって置換されていていもよい。免疫原として用いられるペプチドは、このような部分アミノ酸配列を1ないし数個含むアミノ酸配列を有する。
あるいは、LTBP-1L蛋白質を発現するヒト細胞自体を、本発明の抗原として直接用いることもできる。ヒト細胞としては、上記(a)項で述べたような天然の細胞、上記(c)項で述べたような方法で形質転換した細胞などを用いることができる。形質転換に用いる宿主としては、ヒト、サル、ラット、マウス、ハムスター、ニワトリなどから採取した細胞であれば何れのものでも良く、HEK293、COS7、CHO-K1、NIH3T3、Balb3T3、FM3A、L929、SP2/0、P3U1、B16、またはP388などが好ましく用いられる。ヒトLTBP-1L蛋白質を発現する天然のヒト細胞または形質転換した温血動物細胞は、組織培養に用いられる培地(例、RPMI1640)または緩衝液(例、Hanks’ Balanced Salt Solution)に懸濁された状態で免疫動物に注射することができる。免疫方法としては、抗体産生を促すことのできる方法であれば何れの方法でも良く、静脈内注射、腹腔内注射、筋肉内注射または皮下注射などが好ましく用いられる。
本発明の抗原は、免疫原性を有していれば不溶化したものを直接免疫することもできるが、分子内に1ないし数個の抗原決定基しか有しない低分子量(例えば、分子量約3,000以下)の抗原(即ち、LTBP-1Lの部分ペプチド)を用いる場合には、これらの抗原は通常免疫原性の低いハプテン分子なので、適当な担体(キャリアー)に結合または吸着させた複合体として免疫することができる。担体としては天然もしくは合成の高分子を用いることができる。天然高分子としては、例えばウシ、ウサギ、ヒトなどの哺乳動物の血清アルブミンや例えばウシ、ウサギなどの哺乳動物のサイログロブリン、例えばニワトリのオボアルブミン、例えばウシ、ウサギ、ヒト、ヒツジなどの哺乳動物のヘモグロビン、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)などが用いられる。合成高分子としては、例えばポリアミノ酸類、ポリスチレン類、ポリアクリル類、ポリビニル類、ポリプロピレン類などの重合物または共重合物などの各種ラテックスなどが挙げられる。
該キャリアーとハプテンとの混合比は、担体に結合あるいは吸着させた抗原に対する抗体が効率よく産生されれば、どのようなものをどのような比率で結合あるいは吸着させてもよく、通常ハプテンに対する抗体の作製にあたり常用されている上記の天然もしくは合成の高分子キャリアーを、重量比でハプテン1に対し0.1〜100の割合で結合あるいは吸着させたものを使用することができる。
また、ハプテンとキャリアーのカプリングには、種々の縮合剤を用いることができる。例えば、チロシン、ヒスチジン、トリプトファンを架橋するビスジアゾ化ベンジジンなどのジアゾニウム化合物、アミノ基同志を架橋するグルタルアルデビトなどのジアルデヒド化合物、トルエン−2,4−ジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物、チオール基同志を架橋するN,N’−o−フェニレンジマレイミドなどのジマレイミド化合物、アミノ基とチオール基を架橋するマレイミド活性エステル化合物、アミノ基とカルボキシル基とを架橋するカルボジイミド化合物などが好都合に用いられる。また、アミノ基同志を架橋する際にも、一方のアミノ基にジチオピリジル基を有する活性エステル試薬(例えば、3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸N-スクシンイミジル(SPDP)など)を反応させた後還元することによりチオール基を導入し、他方のアミノ基にマレイミド活性エステル試薬によりマレイミド基を導入後、両者を反応させることもできる。
(2)モノクローナル抗体の作製
(a)モノクローナル抗体産生細胞の作製
本発明の抗原は、温血動物に対して、例えば腹腔内注入、静脈注入,皮下注射、皮内注射などの投与方法によって、抗体産生が可能な部位にそれ自体単独で、あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は通常1〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行われる。用いられる温血動物としては、例えば、サル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ハムスター、ヒツジ、ヤギ、ロバ、ニワトリが挙げられる。抗Ig抗体産生の問題を回避するためには投与対象と同一種の哺乳動物を用いることが好ましいが、モノクローナル抗体作製には一般にマウスおよびラットが好ましく用いられる。
ヒトに対する人為的免疫感作は倫理的に困難であることから、本発明の抗体がヒトを投与対象とする場合には、(i)後述する方法に従って作製されるヒト抗体産生動物(例:マウス)を免疫してヒト抗体を得る、(ii)後述する方法に従ってキメラ抗体、ヒト化抗体もしくは完全ヒト抗体を作製する、あるいは(iii)体外免疫法とウイルスによる細胞不死化、ヒト−ヒト(もしくはマウス)ハイブリドーマ作製技術、ファージディスプレイ法等とを組み合わせてヒト抗体を得ることが好ましい。尚、体外免疫法は、通常の免疫では抗体産生が抑制される抗原に対する抗原を取得できる可能性があることの他、ng〜μgオーダーの抗原量で抗体を得ることが可能であること、免疫が数日間で終了することなどから、不安定で大量調製の困難な抗原に対する抗体を得る方法として、非ヒト動物由来の抗体を調製する場合にも好ましく用いられ得る。
体外免疫法に用いられる動物細胞としては、ヒトおよび上記した温血動物(好ましくはマウス、ラット)の末梢血、脾臓、リンパ節などから単離されるリンパ球、好ましくはBリンパ球等が挙げられる。例えば、マウスやラット細胞の場合、4〜12週齢程度の動物から脾臓を摘出・脾細胞を分離し、適当な培地(例:ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、RPMI1640培地、ハムF12培地等)で洗浄した後、抗原を含む胎仔ウシ血清(FCS;5〜20%程度)添加培地に浮遊させて4〜10日間程度CO2インキュベーターなどを用いて培養する。抗原濃度としては、例えば0.05〜5μgが挙げられるがこれに限定されない。同一系統の動物(1〜2週齢程度が好ましい)の胸腺細胞培養上清を常法に従って調製し、培地に添加することが好ましい。
ヒト細胞の体外免疫では、胸腺細胞培養上清を得ることは困難なので、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6等数種のサイトカインおよび必要に応じてアジュバント物質(例:ムラミルジペプチド等)を抗原とともに培地に添加して免疫感作を行うことが好ましい。
モノクローナル抗体の作製に際しては、抗原を免疫された温血動物(例:マウス、ラット)もしくは動物細胞(例:ヒト、マウス、ラット)から抗体価の上昇が認められた個体もしくは細胞集団を選択し、最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取もしくは体外免疫後4〜10日間培養した後に細胞を回収して抗体産生細胞を単離し、これと骨髄腫細胞とを融合させることにより抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。血清中の抗体価の測定は、例えば標識化抗原と抗血清とを反応させた後、抗体に結合した標識剤の活性を測定することにより行うことができる。
骨髄腫細胞は多量の抗体を分泌するハイブリドーマを産生し得るものであれば特に制限はないが、自身は抗体を産生もしくは分泌しないものが好ましく、また、細胞融合効率が高いものがより好ましい。また、ハイブリドーマの選択を容易にするために、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)感受性の株を用いることが好ましい。例えばマウス骨髄腫細胞としてはNS-1、P3U1、SP2/0、AP-1等が、ラット骨髄腫細胞としてはR210.RCY3、Y3-Ag 1.2.3等が、ヒト骨髄腫細胞としてはSKO-007、GM 1500-6TG-2、LICR-LON-HMy2、UC729-6等が挙げられる。
融合操作は既知の方法、例えばケーラーとミルスタインの方法[ネイチャー(Nature)、256巻、495頁(1975年)]に従って実施することができる。融合促進剤としては、ポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルスなどが挙げられるが、好ましくはPEGなどが用いられる。PEGの分子量は特に制限はないが、低毒性で且つ粘性が比較的低いPEG1000〜PEG6000が好ましい。PEG濃度としては例えば10〜80%程度、好ましくは30〜50%程度が例示される。PEGの希釈用溶液としては無血清培地(例:RPMI1640)、5〜20%程度の血清を含む完全培地、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、トリス緩衝液等の各種緩衝液を用いることができる。所望によりDMSO(例:10〜20%程度)を添加することもできる。融合液のpHとしては、例えば4〜10程度、好ましくは6〜8程度が挙げられる。
抗体産生細胞(脾細胞)数と骨髄細胞数との好ましい比率は、通常1:1〜20:1程度であり、通常20〜40℃、好ましくは30〜37℃で通常1〜10分間インキュベートすることにより効率よく細胞融合を実施できる。
抗体産生細胞株はまた、リンパ球をトランスフォームし得るウイルスに抗体産生細胞を感染させて該細胞を不死化することによっても得ることができる。そのようなウイルスとしては、例えばエプスタイン−バー(EB)ウイルス等が挙げられる。大多数の人は伝染性単核球症の無症状感染としてこのウイルスに感染した経験があるので免疫を有しているが、通常のEBウイルスを用いた場合にはウイルス粒子も産生されるので、適切な精製を行うべきである。ウイルス混入の可能性のないEBシステムとして、Bリンパ球を不死化する能力を保持するがウイルス粒子の複製能力を欠損した組換えEBウイルス(例えば、潜伏感染状態から溶解感染状態への移行のスイッチ遺伝子における欠損など)を用いることもまた好ましい。
マーモセット由来のB95-8細胞はEBウイルスを分泌しているので、その培養上清を用いれば容易にBリンパ球をトランスフォームすることができる。この細胞を例えば血清及びペニシリン/ストレプトマイシン(P/S)添加培地(例:RPMI1640)もしくは細胞増殖因子を添加した無血清培地で培養した後、濾過もしくは遠心分離等により培養上清を分離し、これに抗体産生Bリンパ球を適当な濃度(例:約107細胞/mL)で浮遊させて、通常20〜40℃、好ましくは30〜37℃で通常0.5〜2時間程度インキュベートすることにより抗体産生B細胞株を得ることができる。ヒトの抗体産生細胞が混合リンパ球として提供される場合、大部分の人はEBウイルス感染細胞に対して傷害性を示すTリンパ球を有しているので、トランスフォーメーション頻度を高めるためには、例えばヒツジ赤血球等とEロゼットを形成させることによってTリンパ球を予め除去しておくことが好ましい。また、可溶性抗原を結合したヒツジ赤血球を抗体産生Bリンパ球と混合し、パーコール等の密度勾配を用いてロゼットを分離することにより標的抗原に特異的なリンパ球を選別することができる。さらに、大過剰の抗原を添加することにより抗原特異的なBリンパ球はキャップされて表面にIgGを提示しなくなるので、抗IgG抗体を結合したヒツジ赤血球と混合すると抗原非特異的なBリンパ球のみがロゼットを形成する。従って、この混合物からパーコール等の密度勾配を用いてロゼット非形成層を採取することにより、抗原特異的Bリンパ球を選別することができる。
トランスフォーメーションによって無限増殖能を獲得したヒト抗体分泌細胞は、抗体分泌能を安定に持続させるためにマウスもしくはヒトの骨髄腫細胞と戻し融合させることができる。骨髄腫細胞としては上記と同様のものが用いられ得る。
ハイブリドーマのスクリーニング、育種は通常HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加して、5〜20% FCSを含む動物細胞用培地(例:RPMI1640)もしくは細胞増殖因子を添加した無血清培地で行われる。ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンの濃度としては、例えばそれぞれ約0.1mM、約0.4μMおよび約0.016mM等が挙げられる。ヒト−マウスハイブリドーマの選択にはウワバイン耐性を用いることができる。ヒト細胞株はマウス細胞株に比べてウワバインに対する感受性が高いので、10-7〜10-3M程度で培地に添加することにより未融合のヒト細胞を排除することができる。
ハイブリドーマの選択にはフィーダー細胞やある種の細胞培養上清を用いることが好ましい。フィーダー細胞としては、ハイブリドーマの出現を助けて自身は死滅するように生存期間が限られた異系の細胞種、ハイブリドーマの出現に有用な増殖因子を大量に産生し得る細胞を放射線照射等して増殖力を低減させたもの等が用いられる。例えば、マウスのフィーダー細胞としては、脾細胞、マクロファージ、血液、胸腺細胞等が、ヒトのフィーダー細胞としては、末梢血単核細胞等が挙げられる。細胞培養上清としては、例えば上記の各種細胞の初代培養上清や種々の株化細胞の培養上清が挙げられる。
また、ハイブリドーマは、抗原を蛍光標識して融合細胞と反応させた後、蛍光活性化セルソータ(FACS)を用いて抗原と結合する細胞を分離することによっても選択することができる。この場合、標的抗原に対する抗体を産生するハイブリドーマを直接選択することができるので、クローニングの労力を大いに軽減することが可能である。
標的抗原に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマのクローニングには種々の方法が使用できる。
アミノプテリンは多くの細胞機能を阻害するので、できるだけ早く培地から除去することが好ましい。マウスやラットの場合、ほとんどの骨髄腫細胞は10〜14日以内に死滅するので、融合2週間後からはアミノプテリンを除去することができる。但し、ヒトハイブリドーマについては通常融合後4〜6週間程度はアミノプテリン添加培地で維持される。ヒポキサンチン、チミジンはアミノプテリン除去後1週間以上後に除去するのが望ましい。即ち、マウス細胞の場合、例えば融合7〜10日後にヒポキサンチンおよびチミジン(HT)添加完全培地(例:10% FCS添加RPMI1640)の添加または交換を行う。融合後8〜14日程度で目視可能なクローンが出現する。クローンの直径が1mm程度になれば培養上清中の抗体量の測定が可能となる。
抗体量の測定は、例えば標的抗原またはその誘導体あるいはその部分ペプチド(抗原決定基として用いた部分アミノ酸配列を含む)を直接あるいは担体とともに吸着させた固相(例:マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質(例:125I,131I,3H,14C)、酵素(例:β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素)、蛍光物質(例:フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネート)、発光物質(例:ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニン)などで標識した抗免疫グロブリン(IgG)抗体(もとの抗体産生細胞が由来する動物と同一種の動物由来のIgGに対する抗体が用いられる)またはプロテインAを加え、固相に結合した標的抗原(抗原決定基)に対する抗体を検出する方法、抗IgG抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、上記と同様の標識剤で標識した標的抗原またはその誘導体あるいはその部分ペプチドを加え、固相に結合した標的抗原(抗原決定基)に対する抗体を検出する方法などによって行うことができる。
クローニング方法としては限界希釈法が通常用いられるが、軟寒天を用いたクローニングやFACSを用いたクローニング(上述)も可能である。限界希釈法によるクローニングは、例えば以下の手順で行うことができるがこれに限定されない。
上記のようにして抗体量を測定して陽性ウェルを選択する。適当なフィーダー細胞を選択して96ウェルプレートに添加しておく。抗体陽性ウェルから細胞を吸い出し、完全培地(例:10% FCSおよびP/S添加RMPI1640)中に30細胞/mLの密度となるように浮遊させ、フィーダー細胞を添加したウェルプレートに0.1mL(3細胞/ウェル)加え、残りの細胞懸濁液を10細胞/mLに希釈して別のウェルに同様にまき(1細胞/ウェル)、さらに残りの細胞懸濁液を3細胞/mLに希釈して別のウェルにまく(0.3細胞/ウェル)。目視可能なクローンが出現するまで2〜3週間程度培養し、抗体量を測定・陽性ウェルを選択し、再度クローニングする。ヒト細胞の場合はクローニングが比較的困難なので、10細胞/ウェルのプレートも調製しておく。通常2回のサブクローニングでモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを得ることができるが、その安定性を確認するためにさらに数ヶ月間定期的に再クローニングを行うことが望ましい。
ハイブリドーマはインビトロまたはインビボで培養することができる。
インビトロでの培養法としては、上記のようにして得られるモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを、細胞密度を例えば105〜106細胞/mL程度に保ちながら、また、FCS濃度を徐々に減らしながら、ウェルプレートから徐々にスケールアップしていく方法が挙げられる。
インビボでの培養法としては、例えば、腹腔内にミネラルオイルを注入して形質細胞腫(MOPC)を誘導したマウス(ハイブリドーマの親株と組織適合性のマウス)に、5〜10日後に106〜107細胞程度のハイブリドーマを腹腔内注射し、2〜5週間後に麻酔下に腹水を採取する方法が挙げられる。
(b)モノクローナル抗体の精製
モノクローナル抗体の分離精製は、自体公知の方法、例えば、免疫グロブリンの分離精製法[例:塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例:DEAE、QEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相あるいはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法など]に従って行うことができる。
以上のようにして、ハイブリドーマを温血動物の生体内又は生体外で培養し、その体液または培養物から抗体を採取することによって、モノクローナル抗体を製造することができる。
本発明の抗体を癌予防・治療に利用する場合、該抗体は抗腫瘍活性を持つものでなければならないので、得られたモノクローナル抗体の抗腫瘍活性の程度について調べる必要がある。抗腫瘍活性は、抗体の存在下および非存在下における癌細胞の増殖、アポトーシス誘導などを比較することにより測定することができる。
好ましい一実施態様において、本発明の抗体はヒトを投与対象とする医薬品として使用されることから、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)はヒトに投与した場合に抗原性を示す危険性が低減された抗体、具体的には、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、マウス−ヒトキメラ抗体などであり、特に好ましくは完全ヒト抗体である。ヒト化抗体およびキメラ抗体は、後述する方法に従って遺伝子工学的に作製することができる。また、完全ヒト抗体は、上記したヒト−ヒト(もしくはマウス)ハイブリドーマより製造することも可能ではあるが、大量の抗体を安定に且つ低コストで提供するためには、後述するヒト抗体産生動物(例:マウス)またはファージディスプレイ法を用いて製造することが望ましい。
(i)キメラ抗体の作製
本明細書において「キメラ抗体」とは、H鎖およびL鎖の可変領域(VHおよびVL)の配列がある哺乳動物種に由来し、定常領域(CHおよびCL)の配列が他の哺乳動物種に由来する抗体を意味する。可変領域の配列は、例えばマウス等の容易にハイブリドーマを作製することができる動物種由来であることが好ましく、定常領域の配列は投与対象となる哺乳動物種由来であることが好ましい。
キメラ抗体の作製法としては、例えば米国特許第6,331,415号に記載される方法あるいはそれを一部改変した方法などが挙げられる。具体的には、まず、上述のようにして得られるモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ(例えば、マウス−マウスハイブリドーマ)から、常法に従ってmRNAもしくは全RNAを調製し、cDNAを合成する。該cDNAを鋳型として、適当なプライマー(例えば、センスプライマーとしてVHおよびVLの各N末端配列をコードする塩基配列を含むオリゴDNA、アンチセンスプライマーとしてCHおよびCLのN末端配列をコードする塩基配列とハイブリダイズするオリゴDNA(例えばBio/Technology, 9: 88-89, 1991参照))を用い、常法に従ってPCRでVHおよびVLをコードするDNAを増幅・精製する。同様の方法により、他の哺乳動物(例:ヒト)のリンパ球等より調製したRNAからRT-PCRによりCHおよびCLをコードするDNAを増幅・精製する。常法を用いてVHとCH、VLとCLをそれぞれ連結し、得られたキメラH鎖DNAおよびキメラL鎖DNAを、それぞれ適当な発現ベクター(例えば、CHO細胞、COS細胞、マウス骨髄腫細胞等で転写活性を有するプロモーター(例:CMVプロモーター、SV40プロモーター等)を含むベクターなど)に挿入する。両鎖をコードするDNAは別個のベクターに挿入してもよいし、1個のベクターにタンデムに挿入してもよい。得られたキメラH鎖およびキメラL鎖発現ベクターで宿主細胞を形質転換する。宿主細胞としては、動物細胞、例えば上記したマウス骨髄腫細胞の他、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、サル由来のCOS-7細胞、Vero細胞、ラット由来のGHS細胞などが挙げられる。形質転換は動物細胞に適用可能ないかなる方法を用いてもよいが、好ましくはエレクトロポレーション法などが挙げられる。宿主細胞に適した培地中で一定期間培養後、培養上清を回収して上記と同様の方法で精製することにより、キメラモノクローナル抗体を単離することができる。あるいは、宿主細胞としてウシ、ヤギ、ニワトリ等のトランスジェニック技術が確立し、且つ家畜(家禽)として大量繁殖のノウハウが蓄積されている動物の生殖系列細胞を用い、常法によってトランスジェニック動物を作製することにより、得られる動物の乳汁もしくは卵から容易に且つ大量にキメラモノクローナル抗体を得ることもできる。さらに、トウモロコシ、イネ、コムギ、ダイズ、タバコなどのトランスジェニック技術が確立し、且つ主要作物として大量に栽培されている植物細胞を宿主細胞として、プロトプラストへのマイクロインジェクションやエレクトロポレーション、無傷細胞へのパーティクルガン法やTiベクター法などを用いてトランスジェニック植物を作製し、得られる種子や葉などから大量にキメラモノクローナル抗体を得ることも可能である。
得られたキメラモノクローナル抗体をパパインで分解すればFabが、ペプシンで分解すればF(ab’)2がそれぞれ得られる。
また、マウスVHおよびVLをコードするDNAを適当なリンカー、例えば1〜40アミノ酸、好ましくは3〜30アミノ酸、より好ましくは5〜20アミノ酸からなるペプチド(例:[Ser-(Gly)m]nもしくは[(Gly)m-Ser]n(mは0〜10の整数、nは1〜5の整数)等)をコードするDNAを介して連結することによりscFvとすることができ、さらにCH3をコードするDNAを適当なリンカーを介して連結することによりminidodyモノマーとしたり、CH全長をコードするDNAを適当なリンカーを介して連結することによりscFv-Fcとすることもできる。このような遺伝子工学的に修飾(共役)された抗体分子をコードするDNAは、適当なプロモーターの制御下におくことにより大腸菌や酵母などの微生物で発現させることができ、大量に抗体分子を生産することができる。
マウスVHおよびVLをコードするDNAを1つのプロモーターの下流にタンデムに挿入して大腸菌に導入すると、モノシストロニックな遺伝子発現によりFvと呼ばれる二量体を形成する。また、分子モデリングを用いてVHおよびVLのFR中の適当なアミノ酸をCysに置換すると、両鎖の分子間ジスルフィド結合によりdsFvと呼ばれる二量体が形成される。
(ii)ヒト化抗体
本明細書において「ヒト化抗体」とは、可変領域に存在する相補性決定領域(CDR)以外のすべての領域(即ち、定常領域および可変領域中のフレームワーク領域(FR))の配列がヒト由来であり、CDRの配列のみが他の哺乳動物種由来である抗体を意味する。他の哺乳動物種としては、例えばマウス等の容易にハイブリドーマを作製することができる動物種が好ましい。
ヒト化抗体の作製法としては、例えば米国特許第5,225,539号、第5,585,089号、第5,693,761号および第5,693,762号に記載される方法あるいはそれらを一部改変した方法などが挙げられる。具体的には、上記キメラ抗体の場合と同様にして、ヒト以外の哺乳動物種(例:マウス)由来のVHおよびVLをコードするDNAを単離した後、常法により自動DNAシークエンサー(例:Applied Biosystems社製等)を用いてシークエンスを行い、得られる塩基配列もしくはそこから推定されるアミノ酸配列を公知の抗体配列データベース[例えば、Kabat database (Kabatら,「Sequences of Proteins of Immunological Interest」,US Department of Health and Human Services, Public Health Service, NIH編, 第5版, 1991参照) 等]を用いて解析し、両鎖のCDRおよびFRを決定する。決定されたFR配列に類似したFR配列を有するヒト抗体のL鎖およびH鎖をコードする塩基配列[例:ヒトκ型L鎖サブグループIおよびヒトH鎖サブグループIIもしくはIII(Kabatら,1991(上述)を参照)]のCDRコード領域を、決定された異種CDRをコードする塩基配列で置換した塩基配列を設計し、該塩基配列を20〜40塩基程度のフラグメントに区分し、さらに該塩基配列に相補的な配列を、前記フラグメントと交互にオーバーラップするように20〜40塩基程度のフラグメントに区分する。各フラグメントをDNAシンセサイザーを用いて合成し、常法に従ってこれらをハイブリダイズおよびライゲートさせることにより、ヒト由来のFRと他の哺乳動物種由来のCDRを有するVHおよびVLをコードするDNAを構築することができる。より迅速かつ効率的に他の哺乳動物種由来CDRをヒト由来VHおよびVLに移植するには、PCRによる部位特異的変異誘発を用いることが好ましい。そのような方法としては、例えば特開平5-227970号公報に記載の逐次CDR移植法等が挙げられる。このようにして得られるVHおよびVLをコードするDNAを、上記キメラ抗体の場合と同様の方法でヒト由来のCHおよびCLをコードするDNAとそれぞれ連結して適当な宿主細胞に導入することにより、ヒト化抗体を産生する細胞あるいはトランスジェニック動植物を得ることができる。
ヒト化抗体もキメラ抗体と同様に遺伝子工学的手法を用いてscFv、scFv-Fc、minibody、dsFv、Fvなどに改変することができ、適当なプロモーターを用いることで大腸菌や酵母などの微生物でも生産させることができる。
ヒト化抗体作製技術は、例えばハイブリドーマの作製技術が確立していない他の動物種に好ましく投与し得るモノクローナル抗体を作製するのにも応用することができる。例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリなどの家畜(家禽)として広く繁殖されている動物やイヌやネコなどのペット動物などが対象として挙げられる。
(iii)ヒト抗体産生動物を用いた完全ヒト抗体の作製
内因性免疫グロブリン(Ig)遺伝子をノックアウト(KO)した非ヒト温血動物に機能的なヒトIg遺伝子を導入し、これを抗原で免疫すれば、該動物由来の抗体の代わりにヒト抗体が産生される。従って、マウス等のようにハイブリドーマ作製技術が確立している動物を用いれば、従来のマウスモノクローナル抗体の作製と同様の方法によって完全ヒトモノクローナル抗体を取得することが可能となる。まず、ヒトIgのH鎖およびL鎖のミニ遺伝子を通常のトランスジェニック(Tg)技術を用いて導入したマウスと、内因性マウスIg遺伝子を通常のKO技術を用いて不活性化したマウスとを交配して得られたヒト抗体産生マウス(Immunol. Today, 17: 391-397, 1996を参照)を用いて作製されたヒトモノクローナル抗体のいくつかは既に臨床段階にあり、現在までのところ抗ヒトIgヒト抗体(HAHA)の産生は報告されていない。
その後、Abgenix社[商品名:XenoMouose(Nat. Genet., 15: 146-156, 1997; 米国特許第5,939,598号等を参照)]やMedarex社[商品名:Hu-Mab Mouse(Nat. Biotechnol., 14: 845-851, 1996; 米国特許第5,545,806号等を参照)]が酵母人工染色体(YAC)ベクターを用いてより大きなヒトIg遺伝子を導入したTgマウスを作製し、よりレパートリーに富んだヒト抗体を産生し得るようになった。しかしながら、ヒトIg遺伝子は、例えばH鎖の場合、約80種のV断片、約30種のD断片および6種のJ断片が様々に組み合わされたVDJエクソンが抗原結合部位をコードすることによりその多様性を実現しているため、その全長はH鎖が約1.5Mb(14番染色体)、κL鎖が約2Mb(2番染色体)、λL鎖が約1Mb(22番染色体)に達する。ヒトにおけるのと同様の多様な抗体レパートリーを他の動物種で再現するためには、各Ig遺伝子の全長を導入することが望ましいが、従来の遺伝子導入ベクター(プラスミド、コスミド、BAC、YAC等)に挿入可能なDNAは通常数kb〜数百kbであり、クローニングしたDNAを受精卵に注入する従来のトランスジェニック動物作製技術では全長の導入は困難であった。
Tomizukaら(Nat. Genet., 16: 133-143, 1997)は、Ig遺伝子を担持するヒト染色体の自然断片(hCF)をマウスに導入して(染色体導入(TC)マウス)、完全長ヒトIg遺伝子を有するマウスを作製した。即ち、まず、H鎖遺伝子を含む14番染色体およびκL鎖遺伝子を含む2番染色体を例えば薬剤耐性マーカー等で標識したヒト染色体を有するヒト−マウスハイブリッド細胞を48時間程度紡錘糸形成阻害剤(例:コルセミド)で処理して、1〜数本の染色体もしくはその断片が核膜に被包されたミクロセルを調製し、微小核融合法によりマウスES細胞に染色体を導入する。薬剤を含む培地を用いてヒトIg遺伝子を有する染色体もしくはその断片を保持するハイブリッドES細胞を選択し、通常のKOマウス作製の場合と同様の方法によりマウス胚へ顕微注入する。得られるキメラマウスからコートカラーを指標にする等して生殖系列キメラを選択し、ヒト14番染色体断片を伝達するTCマウス系統(TC(hCF14))およびヒト2番染色体断片を伝達するTCマウス系統(TC(hCF2))を樹立する。常法により内因性H鎖遺伝子およびκL鎖遺伝子をKOされたマウス(KO(IgH)およ
びKO(Igκ))を作製し、これら4系統の交配を繰り返すことにより、4種の遺伝子改変をすべて有するマウス系統(ダブルTC/KO)を樹立することができる。
上記のようにして作製されるダブルTC/KOマウスに、通常のマウスモノクローナル抗体を作製する場合と同様の方法を適用すれば、抗原特異的ヒトモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを作製することができる。しかしながら、κL鎖遺伝子を含むhCF2がマウス細胞内で不安定なため、ハイブリドーマ取得効率は通常のマウスの場合に比べて低いという欠点がある。
一方、前記Hu-Mab MouseはκL鎖遺伝子の約50%を含むが、可変領域クラスターが倍加した構造を有するため完全長を含む場合と同等のκ鎖の多様性を示し(他方、H鎖遺伝子は約10%しか含まないのでH鎖の多様性は低く、抗原に対する応答性が不十分である)、且つYACベクター(Igκ-YAC)によりマウス染色体中に挿入されているので、マウス細胞内で安定に保持される。この利点を生かし、TC(hCF14)マウスとHu-Mab Mouseとを交配してhCF14とIgκ-YACとを安定に保持するマウス(商品名:KMマウス)を作製することにより、通常のマウスと同等のハイブリドーマ取得効率および抗体の抗原親和性を得ることができる。
さらに、より完全にヒトにおける多様な抗体レパートリーを再現するために、λL鎖遺伝子をさらに導入したヒト抗体産生動物を作製することもできる。かかる動物は、上記と同様の方法でλL鎖遺伝子を担持するヒト22番染色体もしくはその断片を導入したTCマウス(TC(hCF22))を作製し、これと上記ダブルTC/KOマウスやKMマウスとを交配することにより得ることもできるし、あるいは、例えばH鎖遺伝子座とλL鎖遺伝子座とを含むヒト人工染色体(HAC)を構築してマウス細胞に導入することにより得ることもできる(Nat. Biotechnol., 18: 1086-1090, 2000)。
本発明の抗体を医薬品として利用する場合はモノクローナル抗体であることが望ましいが、ポリクローナル抗体であってもよい。本発明の抗体がポリクローナル抗体である場合には、ハイブリドーマの利用を要しないので、ハイブリドーマ作製技術は確立されていないがトランスジェニック技術は確立されている動物種、好ましくはウシ等の有蹄動物を用いて、上記と同様の方法によりヒト抗体産生動物を作製すれば、より大量のヒト抗体を安価に製造することも可能である(例えば、Nat. Biotechnol., 20: 889-894, 2002参照)。得られるヒトポリクローナル抗体は、ヒト抗体産生動物の血液、腹水、乳汁、卵など、好ましくは乳汁、卵を採取し、上記と同様の精製技術を組み合わせることによって精製することができる。
(iv)ファージディスプレイヒト抗体ライブラリーを用いた完全ヒト抗体の作製
完全ヒト抗体を作製するもう1つのアプローチはファージディスプレイを用いる方法である。この方法はPCRによる変異がCDR以外に導入される場合があり、そのため臨床段階で少数のHAHA産生の報告例があるが、その一方で宿主動物に由来する異種間ウイルス感染の危険性がない点や抗体の特異性が無限である(禁止クローンや糖鎖などに対する抗体も容易に作製可能)等の利点を有している。
ファージディスプレイヒト抗体ライブラリーの作製方法としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これに限定されない。
用いられるファージは特に限定されないが、通常繊維状ファージ(Ffバクテリオファージ)が好ましく用いられる。ファージ表面に外来蛋白質を提示する方法としては、g3p、g6p〜g9pのコート蛋白質のいずれかとの融合蛋白質として該コート蛋白質上で発現・提示させる方法が挙げられるが、よく用いられるのはg3pもしくはg8pのN末端側に融合させる方法である。ファージディスプレイベクターとしては、1)ファージゲノムのコート蛋白質遺伝子に外来遺伝子を融合した形で導入して、ファージ表面上に提示されるコート蛋白質をすべて外来蛋白質との融合蛋白質として提示させるものの他、2)融合蛋白質をコードする遺伝子を野生型コート蛋白質遺伝子とは別に挿入して、融合蛋白質と野生型コート蛋白質とを同時に発現させるものや、3)融合蛋白質をコードする遺伝子を有するファージミドベクターを持つ大腸菌に野生型コート蛋白質遺伝子を有するヘルパーファージを感染させて融合蛋白質と野生型コート蛋白質とを同時に発現するファージ粒子を産生させるものなどが挙げられるが、1)の場合は大きな外来蛋白質を融合させると感染能力が失われるため、抗体ライブラリーの作製のためには2)または3)のタイプが用いられる。
具体的なベクターとしては、Holtら(Curr. Opin. Biotechnol., 11: 445-449, 2000)に記載されるものが例示される。例えば、pCES1(J. Biol. Chem., 274: 18218-18230, 1999参照)は、1つのラクトースプロモーターの制御下にg3pのシグナルペプチドの下流にκL鎖定常領域をコードするDNAとg3pシグナルペプチドの下流にCH3をコードするDNA、His-tag、c-myc tag、アンバー終止コドン(TAG)を介してg3pコード配列とが配置されたFab発現型ファージミドベクターである。アンバー変異を有する大腸菌に導入するとg3pコート蛋白質上にFabを提示するが、アンバー変異を持たないHB2151株などで発現させると可溶性Fab抗体を産生する。また、scFv発現型ファージミドベクターとしては、例えばpHEN1(J. Mol. Biol., 222:581-597, 1991)等が用いられる。
一方、ヘルパーファージとしては、例えばM13-KO7、VCSM13等が挙げられる。
また、別のファージディスプレイベクターとして、抗体遺伝子の3’末端とコート蛋白質遺伝子の5’末端にそれぞれシステインをコードするコドンを含む配列を連結し、両遺伝子を同時に別個に(融合蛋白質としてではなく)発現させて、導入されたシステイン残基同士によるS-S結合を介してファージ表面のコート蛋白質上に抗体を提示し得るようにデザインされたもの(Morphosys社のCysDisplayTM技術)等も挙げられる。
ヒト抗体ライブラリーの種類としては、ナイーブ/非免疫ライブラリー、合成ライブラリー、免疫ライブラリー等が挙げられる。
ナイーブ/非免疫(non-immunized)ライブラリーは、正常なヒトが保有するVHおよびVL遺伝子をRT-PCRにより取得し、それらをランダムに上記のファージディスプレイベクターにクローニングして得られるライブラリーである。通常、正常人の末梢血、骨髄、扁桃腺などのリンパ球由来のmRNA等が鋳型として用いられる。疾病履歴などのV遺伝子のバイアスをなくすため、抗原感作によるクラススイッチが起こっていないIgM由来のmRNAのみを増幅したものを特にナイーブライブラリーと呼んでいる。代表的なものとしては、CAT社のライブラリー(J. Mol. Biol., 222: 581-597, 1991; Nat. Biotechnol., 14: 309-314, 1996参照)、MRC社のライブラリー(Annu. Rev. Immunol., 12: 433-455, 1994参照)、Dyax社のライブラリー(J. Biol. Chem., 1999 (上述); Proc. Natl. Acad. Sci. USA,14: 7969-7974, 2000参照)等が挙げられる。
合成ライブラリーは、ヒトB細胞内の機能的な特定の抗体遺伝子を選び、V遺伝子断片の、例えばCDR3等の抗原結合領域の部分を適当な長さのランダムなアミノ酸配列をコードするDNAで置換し、ライブラリー化したものである。最初から機能的なscFvやFabを産生するVHおよびVL遺伝子の組み合わせでライブライリーを構築できるので、抗体の発現効率や安定性に優れているとされる。代表的なものとしては、Morphosys社のHuCALライブラリー(J.Mol. Biol., 296: 57-86, 2000参照)、BioInvent社のライブラリー(Nat. Biotechnol., 18: 852, 2000参照)、Crucell社のライブラリー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92: 3938, 1995; J. Immunol. Methods, 272: 219-233, 2003参照)等が挙げられる。
免疫(immunized)ライブラリーは、癌、自己免疫疾患、感染症等の患者やワクチン接種を受けた者など、標的抗原に対する血中抗体価が上昇したヒトから採取したリンパ球、あるいは上記体外免疫法により標的抗原を人為的に免疫したヒトリンパ球等から、上記ナイーブ/非免疫ライブラリーの場合と同様にしてmRNAを調製し、RT-PCR法によってVHおよびVL遺伝子を増幅し、ライブラリー化したものである。最初から目的の抗体遺伝子がライブラリー中に含まれるので、比較的小さなサイズのライブラリーからでも目的の抗体を得ることができる。
ライブラリーの多様性は大きいほどよいが、現実的には、以下のパンニング操作で取り扱えるファージ数(1011〜1013ファージ)と通常のパンニングでクローンの単離および増幅に必要なファージ数(100〜1,000ファージ/クローン)を考慮すれば、108〜1011クローン程度が適当であり、約108クローンのライブラリーで通常10-9オーダーのKd値を有する抗体をスクリーニングすることができる。
標的抗原に対する抗体をファージディスプレイ法で選別する工程をパンニングという。具体的には、例えば、抗原を固定化した担体とファージライブラリーとを接触させ、非結合ファージを洗浄除去した後、結合したファージを担体から溶出させ、大腸菌に感染させて該ファージを増殖させる、という一連の操作を3〜5回程度繰り返すことにより抗原特異的な抗体を提示するファージを濃縮する。抗原を固定化する担体としては、通常の抗原抗体反応やアフィニティークロマトグラフィーで用いられる各種担体、例えばアガロース、デキストラン、セルロースなどの不溶性多糖類、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコン等の合成樹脂、あるいはガラス、金属などからなるマイクロプレート、チューブ、メンブレン、カラム、ビーズなど、さらには表面プラズモン共鳴(SPR)のセンサーチップなどが挙げられる。抗原の固定化には物理的吸着を用いてもよく、また、通常蛋白質あるいは酵素等を不溶化、固定化するのに用いられる化学結合を用いる方法でもよい。例えばビオチン−(ストレプト)アビジン系等が好ましく用いられる。標的抗原である内因性リガンドがペプチドなどの小分子である場合には、抗原決定基として用いた部分が担体との結合により被覆されないように特に注意する必要がある。非結合ファージの洗浄には、BSA溶液などのブロッキング液(1-2回)、Tween等の界面活性剤を含むPBS(3-5回)などを順次用いることができる。クエン酸緩衝液(pH5)などの使用が好ましいとの報告もある。特異的ファージの溶出には、通常酸(例:0.1M塩酸など)が用いられるが、特異的プロテアーゼによる切断(例えば、抗体遺伝子とコート蛋白質遺伝子との連結部にトリプシン切断部位をコードする遺伝子配列を導入することができる。この場合、溶出するファージ表面には野生型コート蛋白質が提示されるので、コート蛋白質のすべてが融合蛋白質として発現しても大腸菌への感染・増殖が可能となる)や可溶性抗原による競合的溶出、あるいはS-S結合の還元(例えば、前記したCysDisplayTMでは、パンニングの後、適当な還元剤を用いて抗体とコート蛋白質とを解離させることにより抗原特異的ファージを回収することができる)による溶出も可能である。酸で溶出した場合は、トリスなどで中和した後で溶出ファージを大腸菌に感染させ、培養後、常法によりファージを回収する。
パンニングにより抗原特異的抗体を提示するファージが濃縮されると、これらを大腸菌に感染させた後プレート上に播種してクローニングを行う。再度ファージを回収し、上述の抗体価測定法(例:ELISA、RIA、FIA等)やFACSあるいはSPRを利用した測定により抗原結合活性を確認する。
選択された抗原特異的抗体を提示するファージクローンからの抗体の単離・精製は、例えば、ファージディスプレイベクターとして抗体遺伝子とコート蛋白質遺伝子の連結部にアンバー終止コドンが導入されたベクターを用いる場合には、該ファージをアンバー変異を持たない大腸菌(例:HB2151株)に感染させると、可溶性抗体分子が産生されペリプラズムもしくは培地中に分泌されるので、細胞壁をリゾチームなどで溶解して細胞外画分を回収し、上記と同様の精製技術を用いて行うことができる。His-tagやc-myc tagを導入しておけば、IMACや抗c-myc抗体カラムなどを用いて容易に精製することができる。また、
パンニングの際に特異的プロテアーゼによる切断を利用する場合には、該プロテアーゼを作用させると抗体分子がファージ表面から分離されるので、同様の精製操作を実施することにより目的の抗体を精製することができる。
ヒト抗体産生動物およびファージディスプレイヒト抗体ライブラリーを用いた完全ヒト抗体作製技術は、他の動物種のモノクローナル抗体を作製するのにも応用することができる。例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリなどの家畜(家禽)として広く繁殖されている動物やイヌやネコなどのペット動物などが対象として挙げられる。非ヒト動物においては標的抗原の人為的免疫に対する倫理的問題が少ないので、免疫ライブラリーの利用がより有効である。
(3)ポリクローナル抗体の作製
本発明のポリクローナル抗体は、それ自体公知あるいはそれに準じる方法に従って製造することができる。例えば、免疫抗原(蛋白質もしくはペプチド抗原)自体、あるいはそれとキャリアー蛋白質との複合体をつくり、上記のモノクローナル抗体の製造法と同様に温血動物に免疫を行い、該免疫動物からLTBP-1L蛋白質に対する抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行うことにより製造することができる。
温血動物を免疫するために用いられる免疫抗原とキャリアー蛋白質との複合体に関し、キャリアー蛋白質の種類およびキャリアー蛋白質とハプテンとの混合比は、キャリアー蛋白質に架橋させて免疫したハプテンに対して抗体が効率良くできれば、どのようなものをどのような比率で架橋させてもよいが、例えば、ウシ血清アルブミンやウシサイログロブリン、ヘモシアニン等を重量比でハプテン1に対し、約0.1〜約20、好ましくは約1〜約5の割合でカプルさせる方法が用いられる。
また、ハプテンとキャリアー蛋白質のカプリングには、種々の縮合剤を用いることができるが、グルタルアルデヒドやカルボジイミド、マレイミド活性エステル、チオール基、ジチオビリジル基を含有する活性エステル試薬等が用いられる。
縮合生成物は、温血動物に対して、抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常約1〜約6週毎に1回ずつ、計約2〜約10回程度行われる。
ポリクローナル抗体は、上記の方法で免疫された温血動物の血液、腹水など、好ましくは血液から採取することができる。
抗血清中のポリクローナル抗体価の測定は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。ポリクローナル抗体の分離精製は、上記のモノクローナル抗体の分離精製と同様の免疫グロブリンの分離精製法に従って行うことができる。
目的の核酸の標的領域と相補的な塩基配列を含む核酸、即ち、目的の核酸とハイブリダイズすることができる核酸は、該目的核酸に対して「アンチセンス」であるということができる。
ヒトLTBP-1L蛋白質をコードする核酸(例、DNA (以下、アンチセンス核酸の説明においては、ヒトLTBP-1LをコードするDNAを本発明のDNAと略記する場合がある))の塩基配列に、相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を有するアンチセンス核酸としては、ヒトLTBP-1Lをコードする核酸(例、DNA)の塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有し、該核酸の発現を抑制し得る作用を有するものであれば、いずれのアンチセンス核酸であってもよい。
本発明のDNAに実質的に相補的な塩基配列とは、例えば、本発明のDNAに相補的な塩基配列(すなわち、本発明のDNAの相補鎖)の塩基配列と、オーバーラップする領域に関して、約80%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列である。ここで「相同性」とは、前記した本発明のDNAの場合と同義である。特に、本発明のDNAの相補鎖の全塩基配列のうち、(a)翻訳阻害を指向したアンチセンス核酸の場合は、LTBP-1L蛋白質のN末端部位をコードする部分の塩基配列(例えば、開始コドン付近の塩基配列など)の相補鎖と約80%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上の相同性を有するアンチセンス核酸が、(b)RNaseHによるRNA分解を指向するアンチセンス核酸の場合は、イントロンを含む本発明のDNAの全塩基配列の相補鎖と約80%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上の相同性を有するアンチセンス核酸がそれぞれ好適である。
具体的には、配列番号:2で表わされる塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列、またはその一部を含むアンチセンス核酸、好ましくは、例えば、配列番号:2で表わされる塩基配列に相補的な塩基配列またはその一部を含むアンチセンス核酸などが挙げられる。
本発明のDNAの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を有するアンチセンス核酸(以下、本発明のアンチセンス核酸ともいう)は、クローン化した、あるいは決定されたLTBP-1LをコードするDNAの塩基配列情報に基づき設計し、合成しうる。かかるアンチセンス核酸は、LTBP-1L遺伝子の複製または発現を阻害することができる。即ち、本発明のアンチセンス核酸は、LTBP-1L遺伝子から転写されるRNA(mRNAまたは初期転写産物)とハイブリダイズすることができ、mRNAの合成(プロセッシング)または機能(蛋白質への翻訳)を阻害することができる。
本発明のアンチセンス核酸の標的領域は、アンチセンス核酸がハイブリダイズすることにより、結果としてLTBP-1L蛋白質への翻訳が阻害されるものであればその長さに特に制限はなく、該蛋白質をコードするmRNAの全配列であっても部分配列であってもよく、短いもので約10塩基程度、長いものでmRNAまたは初期転写産物の全配列が挙げられる。合成の容易さや抗原性の問題を考慮すれば、約10〜約40塩基、特に約15〜約30塩基からなるオリゴヌクレオチドが好ましいが、それに限定されない。具体的には、LTBP-1L遺伝子の5’端ヘアピンループ、5’端6-ベースペア・リピート、5’端非翻訳領域、翻訳開始コドン、蛋白質コード領域、ORF翻訳終止コドン、3’端非翻訳領域、3’端パリンドローム領域または3’端ヘアピンループなどが、アンチセンス核酸の好ましい標的領域として選択しうるが、LTBP-1L遺伝子内の如何なる領域も対象として選択しうる。例えば、該遺伝子のイントロン部分を標的領域とすることもできる。
さらに、本発明のアンチセンス核酸は、LTBP-1LのmRNAもしくは初期転写産物とハイブリダイズして蛋白質への翻訳を阻害するだけでなく、二本鎖DNAであるLTBP-1L遺伝子と結合して三重鎖(トリプレックス)を形成し、RNAの転写を阻害し得るものであってもよい。あるいはDNA:RNAハイブリッドを形成してRNaseHによる分解を誘導するものであってもよい。
ヌクレアーゼなどの加水分解酵素による分解を防ぐために、アンチセンス核酸を構成する各ヌクレオチドのリン酸残基(ホスフェート)は、例えば、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、ホスホロジチオネートなどの化学修飾リン酸残基に置換されていてもよい。また、各ヌクレオチドの糖(デオキシリボース)は、2’−O−メチル化などの化学修飾糖構造に置換されていてもよいし、塩基部分(ピリミジン、プリン)も化学修飾を受けたものであってもよく、配列番号:2で表わされる塩基配列を有するDNAにハイブリダイズするものであればいずれのものでもよい。
アンチセンス核酸は、2−デオキシ−D−リボースを含有しているポリヌクレオチド、D−リボースを含有しているポリヌクレオチド、プリンまたはピリミジン塩基のN−グリコシドであるその他のタイプのポリヌクレオチド、非ヌクレオチド骨格を有するその他のポリマー(例えば、市販の蛋白質核酸および合成配列特異的な核酸ポリマー)または特殊な結合を含有するその他のポリマー(但し、該ポリマーはDNAやRNA中に見出されるような塩基のペアリングや塩基の付着を許容する配置をもつヌクレオチドを含有する)などが挙げられる。それらは、2本鎖DNA、1本鎖DNA、2本鎖RNA、1本鎖RNA、DNA:RNAハイブリッドであってもよく、さらに非修飾ポリヌクレオチド(または非修飾オリゴヌクレオチド)、公知の修飾の付加されたもの、例えば当該分野で知られた標識のあるもの、キャップの付いたもの、メチル化されたもの、1個以上の天然のヌクレオチドを類縁物で置換したもの、分子内ヌクレオチド修飾のされたもの、例えば非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメートなど)を持つもの、電荷を有する結合または硫黄含有結合(例、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を持つもの、例えば蛋白質(例、ヌクレアーゼ、ヌクレアーゼ・インヒビター、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジンなど)や糖(例、モノサッカライドなど)などの側鎖基を有しているもの、インターカレント化合物(例、アクリジン、ソラレンなど)を持つもの、キレート化合物(例えば、金属、放射活性をもつ金属、ホウ素、酸化性の金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾された結合を持つもの(例えば、αアノマー型の核酸など)であってもよい。ここで「ヌクレオシド」、「ヌクレオチド」および「核酸」とは、プリンおよびピリミジン塩基を含有するのみでなく、修飾されたその他の複素環型塩基をもつようなものを含んでいて良い。このような修飾物は、メチル化されたプリンおよびピリミジン、アシル化されたプリンおよびピリミジン、あるいはその他の複素環を含むものであってよい。修飾されたヌクレオシドおよび修飾されたヌクレオチドはまた糖部分が修飾されていてよく、例えば、1個以上の水酸基がハロゲンとか、脂肪族基などで置換されていたり、またはエーテル、アミンなどの官能基に変換されていてよい。
本発明のアンチセンス核酸は、RNA、DNAまたは修飾された核酸(RNA、DNA)である。修飾された核酸の具体例としては、核酸の硫黄誘導体、チオホスフェート誘導体、ポリヌクレオシドアミドやオリゴヌクレオシドアミドの分解に抵抗性のものなどが挙げられる。本発明のアンチセンス核酸は、例えば、以下のように設計されうる。すなわち、細胞内でのアンチセンス核酸をより安定なものにする、アンチセンス核酸の細胞透過性をより高める、目標とするセンス鎖に対する親和性をより大きなものにする、また、もし毒性があるような場合はアンチセンス核酸の毒性をより小さなものにする。このような修飾は、例えばPharm Tech Japan, 8巻, 247頁または395頁, 1992年、Antisense Research and Applications, CRC Press, 1993年などで数多く報告されている。
本発明のアンチセンス核酸は、変化せしめられたり、修飾された糖、塩基、結合を含有していて良く、リポゾーム、ミクロスフェアのような特殊な形態で供与されたり、遺伝子治療により適用されたり、付加された形態で与えられることができうる。こうして付加形態で用いられるものとしては、リン酸基骨格の電荷を中和するように働くポリリジンのようなポリカチオン体、細胞膜との相互作用を高めたり、核酸の取込みを増大せしめるような脂質(例、ホスホリピド、コレステロールなど)などの疎水性のものが挙げられる。付加するに好ましい脂質としては、コレステロールやその誘導体(例、コレステリルクロロホルメート、コール酸など)が挙げられる。こうしたものは、核酸の3’端または5’端に付着させることができ、塩基、糖、分子内ヌクレオシド結合を介して付着させることができうる。その他の基としては、核酸の3’端または5’端に特異的に配置されたキャップ用の基で、エキソヌクレアーゼ、RNaseなどのヌクレアーゼによる分解を阻止するためのものが挙げられる。こうしたキャップ用の基としては、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのグリコールをはじめとした当該分野で知られた水酸基の保護基が挙げられるが、それに限定されるものではない。
LTBP-1LをコードするmRNAもしくは初期転写産物を、コード領域の内部(初期転写産物の場合はイントロン部分を含む)で特異的に切断し得るリボザイムもまた、本発明のアンチセンス核酸に包含され得る。「リボザイム」とは核酸を切断する酵素活性を有するRNAをいうが、最近では当該酵素活性部位の塩基配列を有するオリゴDNAも同様に核酸切断活性を有することが明らかになっているので、本明細書では配列特異的な核酸切断活性を有する限りDNAをも包含する概念として用いるものとする。リボザイムとして最も汎用性の高いものとしては、ウイロイドやウイルソイド等の感染性RNAに見られるセルフスプライシングRNAがあり、ハンマーヘッド型やヘアピン型等が知られている。ハンマーヘッド型は約40塩基程度で酵素活性を発揮し、ハンマーヘッド構造をとる部分に隣接する両端の数塩基ずつ(合わせて約10塩基程度)をmRNAの所望の切断部位と相補的な配列にすることにより、標的mRNAのみを特異的に切断することが可能である。このタイプのリボザイムは、RNAのみを基質とするので、ゲノムDNAを攻撃することがないというさらなる利点を有する。LTBP-1L mRNAが自身で二本鎖構造をとる場合には、RNAヘリカーゼと特異的に結合し得るウイルス核酸由来のRNAモチーフを連結したハイブリッドリボザイムを用いることにより、標的配列を一本鎖にすることができる[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98(10): 5572-5577 (2001)]。さらに、リボザイムを、それをコードするDNAを含む発現ベクターの形態で使用する場合には、転写産物の細胞質への移行を促進するために、tRNAを改変した配列をさらに連結したハイブリッドリボザイムとすることもできる[Nucleic Acids Res., 29(13): 2780-2788 (2001)]。
本明細書においては、LTBP-1LのmRNAもしくは初期転写産物のコード領域内の部分配列(初期転写産物の場合はイントロン部分を含む)に相補的なオリゴRNAとその相補鎖とからなる二本鎖RNA、いわゆるsiRNAもまた、本発明のアンチセンス核酸に包含されるものとして定義される。短い二本鎖RNAを細胞内に導入するとそのRNAに相補的なmRNAが分解される、いわゆるRNA干渉(RNAi)と呼ばれる現象は、以前から線虫、昆虫、植物等で知られていたが、この現象が動物細胞でも広く起こることが確認されて以来[Nature, 411(6836): 494-498 (2001)]、リボザイムの代替技術として汎用されている。siRNAは標的となるmRNAの塩基配列情報に基づいて、市販のソフトウェア(例:RNAi Designer; Invitrogen)を用いて適宜設計することができる。
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド及びリボザイムは、LTBP-1LのcDNA配列もしくはゲノミックDNA配列に基づいてmRNAもしくは初期転写産物の標的配列を決定し、市販のDNA/RNA自動合成機(アプライド・バイオシステムズ社、ベックマン社等)を用いて、これに相補的な配列を合成することにより調製することができる。siRNAは、センス鎖及びアンチセンス鎖をDNA/RNA自動合成機でそれぞれ合成し、適当なアニーリング緩衝液中、約90〜約95℃で約1分程度変性させた後、約30〜約70℃で約1〜約8時間アニーリングさせることにより調製することができる。また、相補的なオリゴヌクレオチド鎖を交互にオーバーラップするように合成して、これらをアニーリングさせた後リガーゼでライゲーションすることにより、より長い二本鎖ポリヌクレオチドを調製することもできる。あるいは、siRNAは、センス鎖およびアンチセンス鎖を適当な長さ(例えば約3〜約10塩基)のリンカーを介して連結したRNA(shRNA)として合成し、導入する動物細胞内の酵素ダイサー(dicer)などによってプロセシングされるように設計することもできる。さらには、センス鎖およびアンチセンス鎖をコードするDNAがそれぞれ別個のU6やH1などのPol III系プロモーターの制御下におかれた発現ベクター、あるいは上記センス鎖とアンチセンス鎖とをリンカーを介して連結したRNA鎖をコードするDNAがPol III系プロモーターの制御下におかれた発現ベクターとして調製し、動物細胞内で発現させ、siRNAを形成させてもよい。
本発明のアンチセンス核酸の阻害活性は、LTBP-1L遺伝子を導入した形質転換体、生体内や生体外のLTBP-1L遺伝子発現系、または生体内や生体外のLTBP-1L蛋白質翻訳系を用いて調べることができる。
以下に、上述の本発明の抗体、および本発明のアンチセンス核酸の用途を説明する。
(1)本発明の抗体を含有する医薬
LTBP-1L蛋白質は予後不良の癌患者組織で発現が増加しており、特にステージの進んだ癌における直接的もしくは間接的な増悪因子であると考えられる。本発明の抗体は、LTBP-1L蛋白質の活性を中和することができるため、癌(好ましくは、卵巣癌、子宮頚癌、子宮体癌、胃癌、大腸癌、肺癌、その他の固形癌(例えば、肝臓癌、膵臓癌、胆嚢癌、腎臓癌等)、より好ましくは卵巣癌、子宮頚癌、子宮体癌、胃癌、大腸癌および肺癌、特に好ましくは卵巣癌、子宮体癌および肺癌)の治療剤として使用することができる。
本発明の抗体を含有する癌治療剤は低毒性であり、そのまま液剤として、または適当な剤型の医薬組成物として、ヒトに対して経口的または非経口的(例、血管内投与、皮下投与など)に投与することができる。
本発明の抗体は、それ自体を投与しても良いし、または適当な医薬組成物として投与しても良い。投与に用いられる医薬組成物としては、本発明の抗体およびその塩と薬理学的に許容され得る担体、希釈剤もしくは賦形剤とを含むものであっても良い。このような医薬組成物は、経口または非経口投与に適する剤形として提供される。
非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、坐剤等が用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤等の剤形を包含しても良い。このような注射剤は、公知の方法に従って調製できる。注射剤の調製方法としては、例えば、上記本発明の抗体またはその塩を通常注射剤に用いられる無菌の水性液、または油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製できる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液等が用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン界面活性剤〔例、ポリソルベート80、HCO−50(polyoxyethylene(50mol)adduct of hydrogenated castor oil)〕等と併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油等が用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等を併用してもよい。調製された注射液は、適当なアンプルに充填されることが好ましい。直腸投与に用いられる坐剤は、上記抗体またはその塩を通常の坐薬用基剤に混合することによって調製されても良い。
経口投与のための組成物としては、固体または液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等が挙げられる。このような組成物は公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有していても良い。錠剤用の担体、賦形剤としては、例えば、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウムが用いられる。
上記の非経口用または経口用医薬組成物は、活性成分の投与量に適合するような投薬単位の剤形に調製されることが好都合である。このような投薬単位の剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤が挙げられる。抗体の含有量としては、投薬単位剤形当たり通常5〜500mg、とりわけ注射剤では5〜100mg、その他の剤形では10〜250mgの上記抗体が含有されていることが好ましい。
本発明の抗体を含有する上記製剤の投与量は、投与対象、対象とする癌種、症状、投与ルートなどによっても異なるが、例えば、成人の卵巣癌の治療のために使用する場合には、本発明の抗体を1回量として、通常0.01〜20mg/kg体重程度、好ましくは0.1〜10mg/kg体重程度、さらに好ましくは0.1〜5mg/kg体重程度を、1日1〜5回程度、好ましくは1日1〜3回程度、静脈注射により投与するのが好都合である。他の非経口投与および経口投与の場合もこれに準ずる量を投与することができる。症状が特に重い場合には、その症状に応じて増量してもよい。
本発明の抗体は、それ自体または適当な医薬組成物として投与することができる。上記投与に用いられる医薬組成物は、上記抗体またはその塩と薬理学的に許容され得る担体、希釈剤もしくは賦形剤とを含むものである。かかる組成物は、経口または非経口投与(例、血管内注射、皮下注射など)に適する剤形として提供される。
なお前記した各組成物は、上記抗体との配合により好ましくない相互作用を生じない限り他の活性成分を含有してもよい。
さらに、本発明の抗体は、他の薬剤、例えばアルキル化剤(例、サイクロフォスファミド、イフォスファミド等)、代謝拮抗剤(例、メソトレキセート、5−フルオロウラシル等)、抗癌性抗生物質(例、マイトマイシン、アドリアマイシン等)、植物由来抗癌剤(例、ビンクリスチン、ビンデシン、タキソール等)、シスプラチン、カルボプラチン、エトポキシド、イリノテカンなどと併用してもよい。本発明の抗体および上記薬剤は、同時または異なった時間に、患者に投与すればよい。
(2)アンチセンス核酸を含有する医薬
LTBP-1L遺伝子の転写産物に相補的に結合し、該遺伝子の発現を抑制することができる本発明のアンチセンス核酸は、低毒性であり、生体内におけるLTBP-1L蛋白質またはLTBP-1L遺伝子の機能や作用を抑制することができるので、癌(卵巣癌、子宮頚癌、子宮体癌、胃癌、大腸癌、肺癌、その他の固形癌(例えば、肝臓癌、膵臓癌、胆嚢癌、腎臓癌等)、より好ましくは卵巣癌、子宮頚癌、子宮体癌、胃癌、大腸癌および肺癌、特に好ましくは卵巣癌、子宮体癌および肺癌)の治療剤として使用することができる。
本発明のアンチセンス核酸を癌治療剤として使用する場合、自体公知の方法に従って製剤化し、投与することができる。
また、例えば、前記のアンチセンス核酸を単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、常套手段に従って、ヒトまたは哺乳動物(例、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して経口的または非経口的に投与することができる。該アンチセンス核酸は、そのままで、あるいは摂取促進のために補助剤などの生理学的に認められる担体とともに製剤化し、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与できる。あるいは、エアロゾル化して吸入剤として気管内に局所投与することもできる。
さらに、体内動態の改良、半減期の長期化、細胞内取り込み効率の改善を目的に、前記のアンチセンス核酸を単独またはリポゾームなどの担体とともに製剤(注射剤)化し、静脈、皮下等に投与してもよい。
該アンチセンス核酸の投与量は、対象とする癌種、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、卵巣癌の治療の目的で本発明のアンチセンス核酸を投与する場合、一般的に成人(体重60kg)においては、一日につき該アンチセンス核酸を約0.1〜約100mg投与する。
上記-202Gおよび/または+20A多型を含むヒトLTBP-1L遺伝子の短い断片(オリゴDNA)は、-202Gおよび/または+20Aアレルを有する癌患者において、LTBP-1LプロモーターへのSp1の結合を競合的に阻害することができるので、LTBP-1L遺伝子の過剰発現を抑制するデコイ核酸として使用することができる。したがって、本発明はまた、ヒトLTBP-1L遺伝子の部分塩基配列であって、配列番号:1で表される塩基配列中塩基番号2014および/または2235で示される塩基を含む、約15〜約500塩基の連続した塩基配列を含有してなる核酸を含有する、癌(卵巣癌、子宮頚癌、子宮体癌、胃癌、大腸癌、肺癌、その他の固形癌(例えば、肝臓癌、膵臓癌、胆嚢癌、腎臓癌等)、より好ましくは卵巣癌、子宮頚癌、子宮体癌、胃癌、大腸癌および肺癌、特に好ましくは卵巣癌、子宮体癌および肺癌)の治療剤を提供する。
該核酸は、上記本発明のアンチセンス核酸と同様に製剤化することができ、癌患者に投与することができる。
本明細書において、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによる略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
DNA :デオキシリボ核酸
cDNA :相補的デオキシリボ核酸
A :アデニン
T :チミン
G :グアニン
C :シトシン
RNA :リボ核酸
mRNA :メッセンジャーリボ核酸
dATP :デオキシアデノシン三リン酸
dTTP :デオキシチミジン三リン酸
dGTP :デオキシグアノシン三リン酸
dCTP :デオキシシチジン三リン酸
ATP :アデノシン三リン酸
EDTA :エチレンジアミン四酢酸
SDS :ドデシル硫酸ナトリウム
Gly :グリシン
Ala :アラニン
Val :バリン
Leu :ロイシン
Ile :イソロイシン
Ser :セリン
Thr :スレオニン
Cys :システイン
Met :メチオニン
Glu :グルタミン酸
Asp :アスパラギン酸
Lys :リジン
Arg :アルギニン
His :ヒスチジン
Phe :フェニルアラニン
Tyr :チロシン
Trp :トリプトファン
Pro :プロリン
Asn :アスパラギン
Gln :グルタミン
pGlu :ピログルタミン酸
Sec :セレノシステイン(selenocysteine)
また、本明細書中で繁用される置換基、保護基および試薬を下記の記号で表記する。
Me :メチル基
Et :エチル基
Bu :ブチル基
Ph :フェニル基
TC :チアゾリジン-4(R)-カルボキサミド基
Tos :p-トルエンスルフォニル
CHO :ホルミル
Bzl :ベンジル
Cl2-Bzl :2,6-ジクロロベンジル
Bom :ベンジルオキシメチル
Z :ベンジルオキシカルボニル
Cl-Z :2-クロロベンジルオキシカルボニル
Br-Z :2-ブロモベンジルオキシカルボニル
Boc :t-ブトキシカルボニル
DNP :ジニトロフェニル
Trt :トリチル
Bum :t-ブトキシメチル
Fmoc :N-9-フルオレニルメトキシカルボニル
HOBt :1-ヒドロキシベンズトリアゾール
HOOBt :3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン
HONB :1-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド
DCC :N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド
本願明細書の配列表の配列番号は、以下の配列を示す。
〔配列番号:1〕
ヒトLTBP-1L遺伝子の5’-調節領域の塩基配列を示す。
〔配列番号:2〕
ヒトLTBP-1L cDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:3〕
ヒトLTBP-1L蛋白質のアミノ酸配列を示す。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、これらは単なる例示であって本発明を何ら限定するものではない。
実施例1 LTBP-1L遺伝子5’-調節領域内の新規SNPsの同定
(1)試料およびDNA調製
組織標本は、金沢大学医学部附属病院の卵巣癌患者66人、子宮体癌患者66人、胃癌患者55人、大腸癌患者81人、肺癌患者90人の一連のシリーズから外科的に得て、DNA分析用に-80℃で保存するか、免疫組織化学分析用にホルムアルデヒドで固定した。本研究における患者組織の使用のために、患者から書面によるインフォームドコンセントを得た。患者はすべて、新たに診断され、以前に治療(化学療法もしくは放射線治療)を受けておらず、組織学的に確認された。健常対照DNAサンプルは、書面によるインフォームドコンセントの下に、金沢大学のスタッフおよび学生を含む日本人156個体の口腔上皮細胞から得た。口腔上皮細胞は以前報告した口腔洗浄法(Lancet 1988, 1: 1356-8;Cancer Epidemiol. Biomarkers Prev. 1998, 7: 719-24)を改変して集めた。簡単にいえば、歯磨きから少なくとも3時間後に、参加者に、口腔洗浄液モンダミン(登録商標;アース製薬)10 mLで10秒間激しく口をゆすいだ後、コニカルチューブに吐き出してもらい、それを3,000 gで10分間遠心することにより口腔細胞を集めた。WizardゲノムDNA精製キット(プロメガ社)を用いて、全ゲノムDNAを精製した。
(2)LTBP-1Lプロモーターのシーケンシング
-2164〜+130にわたるLTBP-1Lプロモーター領域を、ダイレクトシーケンシングによって解析した。使用したPCRプライマーの配列は以下の通りである。
F(フォーワード)-1: 5’-CGTCGACTCGATCTCAAAGTGTTGC-3’ (配列番号:4)および
R(リバース)-1: 5’-GAGGATTGAGGTGAGTCACAAGG-3’ (配列番号:5);
F-2: 5’-GTAGAACAAGGAATTGGATCCGT-3’ (配列番号:6)および
R-2: 5’-TTGATTTGGCAGGCAGGGCCTC-3’ (配列番号:7);
F-3: 5’-GTTCTCACAAGCAGCTAGTGCT-3’ (配列番号:8)および
R-3: 5’-GAAAGTCCACAGTCATAGCAGTC-3’ (配列番号:9);
F-4: 5’-CAAAGCCTTGGAAACACACCATC-3’ (配列番号:10)および
R-4: 5’-TTAGGGTAGGACTAGAGTTCA-3’ (配列番号:11);
F-5: 5’-GTCGGATTACGGTCCCGTGA-3’ (配列番号:12)および
R-5: 5’-TTACTGAACGATCCTGTCCTTTC-3’; (配列番号:13)並びに
F-6: 5’-AGTATCACAGCAAACACGGAT-3’ (配列番号:14)および
R-6: 5’-GGTGCACCACGTAGGTGATCCTCC-3’ (配列番号:15)
すべてのPCR産物を精製した後、両端からダイレクトにシーケンシングした。すべてのシーケンシング反応は、ABI 310 DNAアナライザー中で色素ターミネーター化学を用いて実施した。その結果、-202G/Cおよび+20A/Cの新規SNPsが同定された(図1A)。
(3)ハプロタイプ解析
-202G/Cおよび+20A/Cのハプロタイプを、PCRに基づく制限酵素断片長多型(RFLP)法により解析した。-392〜+154にわたるLTBP-1Lプロモーター領域を、F-7: 5’-TTGGCTGCTCAGGTCTGACA-3’(配列番号:16)およびR-6プライマーを用いて増幅した。PCRは、94℃、2分の後、94℃、1分;56℃、1分および72℃、1分を31サイクルの条件下で実施し、最後のステップで72℃、10分を行って、すべてのPCRフラグメントを完全に伸長させた。このサイクル数はPCR反応が指数関数的である範囲内であった。546 bpのPCR産物をEcoRIIとCspI(いずれも東洋紡製)とで二重消化し、得られるDNAフラグメントを3% アガロースゲル上で分離した。ハプロタイプは図1Bに示される長さのバンドを検出することにより判定した。
その結果、各種癌患者群、対照群のいずれからも、4つの可能性のあるハプロタイプのうち、2つのハプロタイプ(G-AおよびC-C)のみが同定された。したがって、3つの遺伝子型G-A/G-A、G-A/C-C、およびC-C/C-Cが検出された。C-CハプロタイプがGenBankに登録されているが(AF171934)、日本人集団においては、被験者全体、卵巣癌患者群、大腸癌患者群、対照群ではC-Cのアレル頻度はマイナーであり、本発明者らが新たに同定したG-Aアレルが日本人集団におけるメジャーアレルであった(表1)。卵巣癌患者群、大腸癌患者群と対照群との間でアレル頻度に有意差はなく、したがって、該SNPsはこれらの癌に対する感受性多型ではないことが示された。
他方、子宮体癌患者群、胃癌患者群、肺癌患者群ではC-Cハプロタイプの頻度が対照群におけるそれに比べて有意に高かった(表1)。
実施例2 LTBP-1Lプロモーター活性に及ぼすSNPsの影響
実施例1で同定された多型がLTBP-1Lプロモーターの活性に及ぼす影響を、ルシフェラーゼレポーターアッセイにより調べた。
LTBP-1Lプロモーター-ルシフェラーゼレポータープラスミドは、ヘルシンキ大学のJorma Keski-Oja博士より供与を受けた(J. Biol. Chem. 1999, 274: 32619-30)。このプラスミドは、LTBP-1L遺伝子5’-調節領域(-2211〜+54)をルシフェラーゼレポーターベクターpGL3-Basic(Promega社)中に挿入したものである。変異プラスミドは、GeneTailor Site-Directed Mutagenesis System(Invitrogen Life Technologies)を用いて構築した。-202Gを導入するためのプライマーには5’-TGCGCGGCCCGCTCCCCTGGCCCCTCCCCGCTCCC-3’(配列番号:17)および5’-AGGGGAGCGGGCCGCGCAAGGTGAGGGTCC-3’(配列番号:18)を用い、+20Aを導入するためのプライマーには5’-GGCCGGGGGAGGGGGCCGGACAGCGCGCGACC-3’(配列番号:19)および5’-GTCCGGCCCCCTCCCCCGGCCGTGCGGCTCGCCT-3’(配列番号:20)を用いた(図2A参照)。プラスミドpM、pM-Sp1(Sp1発現ベクター)、pCMV-DNsp3(Sp3のドミナントネガティブ体発現ベクター)は京都府立医科大学の曽和義広博士より供与を受けた。
卵巣癌由来のRMUG-S細胞株(JCRBより入手)は10% FBS含有Ham F12培地(Sigma-Aldrich)(100U/ml ペニシリンおよび100μg/ml ストレプトマイシンを含む)中で維持した後、トランスフェクション1日前に24ウェルプレートに5×104細胞の密度で播種した。細胞を各レポータープラスミド0.4μg単独で、もしくは同量のエフェクタープラスミドとともにFuGENE6トランスフェクション試薬(Roche Molecular Biochemicals)を用いてトランスフェクトした。トランスフェクション効率を校正するために、RenillaルシフェラーゼプラスミドphRL-tkをコトランスフェクトした。48時間後、Dual-lusiferase Reporter Assay System(Promega)を用いて細胞を溶解し、ホタルおよびRenillaルシフェラーゼ活性をLumat LB9507(Berthold Technologies)を用いて測定した。すべての実験は各レポータープラスミドにつき少なくとも3回行い、相対ルシフェラーゼ活性を計算した。結果は平均±SD(n=3)で示す(図2B)。転写活性はG-Aハプロタイプが最も高く、C-Cハプロタイプの3.6倍であった。G-CおよびC-Aハプロタイプは中間の活性を示した。
LTBP-1LプロモーターはSp1結合モチーフであるGCボックスを含み、そのうちの1つは-202位とオーバーラップし、他の1つは+20位に隣接する(図2A)。そこで、Sp1がLTBP-1Lプロモーターを制御しているか否かを調べた。G-Aハプロタイプを有するレポータープラスミドとSp1発現ベクターをコトランスフェクトすると、転写活性は顕著に増大した(図2C)。対照的に、Sp1機能を阻害することが知られているSp3ドミナントネガティブ体発現ベクターとコトランスフェクトすると、転写活性は顕著に阻害された。Sp1による同様の効果はC-Cハプロタイプにおいても観察されたが、その効率は低かった。これらの結果はSp1がLTBP-1L遺伝子の転写を活性化し、特にG-Aハプロタイプにおいてその程度が高いことを示唆する。
実施例3 電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)
EMSAは以前に記載されたようにして行った(Cancer Res. 1999, 59: 551-7)。-202Cおよび-202Gにそれぞれ対応する二本鎖オリゴヌクレオチド5’-GCGGCCCGCTCCCCTCGCCCCTCCCCGCT-3’(配列番号:21)および5’-GCGGCCCGCTCCCCTGGCCCCTCCCCGCT-3’(配列番号:22)をMEGALABEL Kit(TaKaRa)を用いて[γ-32P]ATPでラベルした。ヒトSp1蛋白質(Promega)1μgを、100倍モル過剰の非標識競合DNAの存在下および非存在下に、10% グリセロール、25mM HEPES(pH7.9)、50mM KCl、0.5mM PMSFおよび1mM DTTを含む反応液25μl中、poly(dI-dC)と氷上で20分間インキュベートした。スーパーシフトアッセイには、抗Sp1抗体(Santa Cruz Biotechnologies)を組換えSp1蛋白質と、氷上で60分間プレインキュベートした。インキュベーション後、標識したオリゴヌクレオチド(>30,000cpm)を加え、反応混合物を室温でさらに20分間インキュベートした。5% ポリアクリルアミドゲル電気泳動により、DNA-蛋白質複合体を遊離DNAから分離し、ゲルを乾燥してFuji BAS-IIIバイオイメージングアナライザー(富士写真フィルム)を用いたオートラジオグラフィーに付した。Sp1の特異的結合を確認するために、Sp1(5’-ATTCGATCGGGGCGGGGCGAGC-3’(配列番号:23))もしくはAP2(5’-GATCGAACTGACCGCCCGCGGCCCGT-3’(配列番号:24))に対するコンセンサスオリゴヌクレオチドを用いた。
その結果、-202Cを有するプローブとSp1蛋白質との結合を示すバンドは検出されないか、ごくかすかにしか検出されなかったのに対し、-202Gを有するプローブはSp1蛋白質と強く結合することが分かった(図3)。スーパーシフトアッセイの結果、-202Gを有するプローブとSp1蛋白質との複合体は抗Sp1抗体によりスーパーシフトしたが、エストロゲン受容体やc-mycに対する抗体によってはシフトしなかったことから、該プローブがSp1蛋白質と結合していることが確認された。これらのバンドは、ホモロガスな未標識競合DNAおよびSp1コンセンサスオリゴヌクレオチドの添加により消失したが、AP2コンセンサスオリゴヌクレオチドによっては消失しなかった。同様の結果は+20Aを有するプローブと+20Cを有するプローブとの間でも観察されたが、+20AのSp1との結合アフィニティーは-202Gのそれよりは弱かった。
実施例4 卵巣癌におけるLTBP-1L発現の免疫組織化学的解析
LTBP-1L蛋白質発現レベルに及ぼすSNPsの影響を、種々の遺伝子型を有する36人の卵巣癌患者から採取した外科標本を用いて免疫組織化学的に解析した。
アッセイは、VECTASTAIN ABC Elite kit(Vector Laboratories)を用いて、Am. J. Pathol. 2003, 163: 859-67に記載の方法に従って、ホルマリン固定・パラフィン包埋した卵巣組織上で行った。1×抗原回復溶液(Biogenex)中で10分間抗原回復を行い、3% H2O2含有メタノール中で内在パーオキシダーゼをクエンチングした。組織切片をマウス抗LTBP-1Lモノクローナル抗体(R&D Systems)(希釈度1:1000)もしくは非免疫マウス全血清と4℃で16時間インキュベートさせた。洗浄後、該切片をビオチン化二次抗体と反応させ、ストレプトアビジン−ビオチン−西洋ワサビパーオキシダーゼ複合体、ビオチン化チラミド、ストレプトアビジン標識パーオキシダーゼおよび3,3’-ジアミノベンジジン(Dako Cytomation)と順次反応させて検出した。切片をヘマトキシリンでカウンター染色した。染色度は、陰性0(無染色)、低1+(5〜25%の細胞が陽性もしくは染色強度がきわめて弱い)、中2+(25〜75%の細胞が陽性、強く陽性)、高3+(75%以上の細胞が陽性、染色強度がきわめて強い)で評価した。2人の病理学者が結果を判定し、結果が一致しなかった場合は解析から除外した。
その結果、調べたすべての組織サンプルで癌および間質細胞の両方でLTBP-1Lの免疫染色が検出された(表2)。G-Aホモ接合型の遺伝子型を有する13卵巣癌のうち、4検体で3+、6検体で2+の発現を示した。ヘテロ接合型の遺伝子型を有する14癌サンプルのうち、4検体で3+、2検体で2+の発現を示したが、8検体で1+の低発現であった。C-Cホモ接合型の遺伝子型を有する9検体のうち、1検体で3+、2検体で2+の発現を示したが、5検体で1+の低発現であり、1検体では発現が認められなかった。3+および2+の発現を示した患者を発現が
増大した群として括ると、G-Aホモ接合型は、ヘテロ接合型およびC-Cホモ接合型と比較して、有意にLTBP-1Lの発現増加と相関した(P<0.05)。
実施例5 各種癌患者の臨床的特徴と結果に及ぼすLTBP-1L SNPsの影響
LTBP-1Lの遺伝子型と卵巣癌、子宮体癌および肺癌の臨床病理学的特徴(年齢、組織学的タイプ、腫瘍のグレードおよびFIGO臨床ステージ)との関係を調べた。LTBP-1L遺伝子型とこれらのパラメータの間には有意な相関は認められなかった。次に、累積生存率を遺伝子型ごとに比較した。Kaplan-Meier法を用いて生存曲線をプロットし、log-rankテストを用いて比較した。結果を図4〜6に示す。ヘテロ接合型およびC-Cホモ接合型の遺伝子型を有する患者に比べて、G-Aホモ接合型の遺伝子型を有する患者の累積生存率は低かった。
本発明によれば、癌、特に卵巣癌、子宮体癌および肺癌などの癌における予後の良否を判定することができる。また、LTBP-1Lに対する抗体、LTBP-1Lのアンチセンス核酸などは、癌、特に卵巣癌などの癌の治療剤として有用である。
さらに、本発明によれば、子宮体癌、胃癌および肺癌などの癌に対する感受性を予測することができ、それらの癌の発症リスクの検査に有用である。
本発明を好ましい態様を強調して説明してきたが、好ましい態様が変更され得ることは当業者にとって自明であろう。本発明は、本発明が本明細書に詳細に記載された以外の方法で実施され得ることを意図する。したがって、本発明は添付の「請求の範囲」の精神および範囲に包含されるすべての変更を含むものである。
本出願は、日本国で出願された特願2006-019859を基礎としており、そこに開示される内容は本明細書にすべて包含されるものである。また、ここで述べられた特許および特許出願明細書を含む全ての刊行物に記載された内容は、ここに引用されたことによって、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。

Claims (9)

  1. 日本人の癌患者より採取されたゲノムDNA含有試料において、配列番号:1で表されるヒトLTBP-1L遺伝子5’-調節領域の塩基配列中塩基番号2014または2235で示される塩基における多型を検定することを特徴とする、癌の予後診断のための検査方法。
  2. 癌が、卵巣癌、子宮体癌および肺癌からなる群より選択される、請求項記載の方法。
  3. ヒトLTBP-1L遺伝子の部分塩基配列であって、配列番号:1で表される塩基配列中塩基番号2014または2235で示される塩基を含む、15〜500塩基の連続した塩基配列を有する核酸を含有してなる日本人の癌の予後診断剤
  4. 配列番号:1で表されるヒトLTBP-1L遺伝子5’-調節領域の塩基配列中塩基番号2014および2235で示される塩基における多型の各々を検出し得る1組以上の核酸プローブおよび/またはプライマーを含んでなる、日本人の癌の予後診断のための検査用キット。
  5. 核酸プローブが、配列番号:1で表されるヒトLTBP-1L遺伝子5’-調節領域の塩基配列中塩基番号2014または2235で示される多型部位の塩基を含む、15〜500塩基の連続した塩基配列を含有してなる核酸であり、核酸プライマーが、ヒトLTBP-1L遺伝子の部分塩基配列であって、配列番号:1で表される塩基配列中塩基番号2014または2235で示される多型部位の塩基を含む50〜1,000塩基の連続した塩基配列を増幅し得る一対の核酸である請求項記載のキット。
  6. 癌が卵巣癌、子宮体癌または肺癌である、請求項4または5記載のキット。
  7. 日本人の被験者より採取されたゲノムDNA含有試料において、配列番号:1で表されるヒトLTBP-1L遺伝子5’-調節領域の塩基配列中塩基番号2014または2235で示される塩基における多型を検定することを特徴とする、子宮体癌、胃癌および肺癌からなる群より選択される癌に対する感受性の検査方法。
  8. 配列番号:1で表されるヒトLTBP-1L遺伝子5’-調節領域の塩基配列中塩基番号2014および2235で示される塩基における多型の各々を検出し得る1組以上の核酸プローブおよび/またはプライマーを含んでなる、日本人の子宮体癌、胃癌または肺癌に対する感受性の検査用キット。
  9. 核酸プローブが、配列番号:1で表されるヒトLTBP-1L遺伝子5’-調節領域の塩基配列中塩基番号2014または2235で示される多型部位の塩基を含む、15〜500塩基の連続した塩基配列を含有してなる核酸であり、核酸プライマーが、ヒトLTBP-1L遺伝子の部分塩基配列であって、配列番号:1で表される塩基配列中塩基番号2014または2235で示される多型部位の塩基を含む50〜1,000塩基の連続した塩基配列を増幅し得る一対の核酸である請求項記載のキット。
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