本発明はNOx吸蔵還元型触媒に関し、詳しくは、酸素過剰の排ガス、すなわち排ガス中に含まれる一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)等の還元性成分を完全に酸化するのに必要な酸素量より過剰の酸素を含む排ガス中の、窒素酸化物(NOx)を効率良く浄化できるNOx吸蔵還元型触媒に関する。
従来、自動車の排ガス浄化触媒として、理論空燃比(ストイキ)の運転条件下において、排ガス中のCO及びHCの酸化とNOxの還元とを同時に行って浄化する三元触媒が用いられている。このような三元触媒としては、例えば、コーディエライト等からなる耐熱性基材にγ−アルミナ等からなる多孔質担体層を形成し、その多孔質担体層に白金(Pt)、ロジウム(Rh)等の触媒貴金属を担持させたものが広く知られている。
一方、近年、地球環境保護の観点から、自動車等の内燃機関から排出される排ガス中の二酸化炭素(CO2)が問題とされ、その解決策として酸素過剰雰囲気において希薄燃焼させるいわゆるリーンバーンが有望視されている。このリーンバーンにおいては、燃料の使用量を低減できるため、その燃焼排ガスであるCO2の発生を抑制することができる。
ところで、排ガス浄化触媒の性能は、エンジンの設定空燃比(A/F)によって大きく左右される。すなわち、空燃比の大きいリーン側では、燃焼後の排ガス中の酸素量が多くなるため、酸化作用が活発になり、還元作用が不活発になる。このため、理論空燃比(ストイキ)において排ガス中のCO、HC及びNOxを効率的に浄化しうる従来の三元触媒では、酸素過剰となるリーン雰囲気下においては、NOxの還元除去に対して充分な浄化性能を示さない。したがって、酸素過剰雰囲気下においてもNOxを効率的に浄化しうる、リーンバーンエンジン用の排ガス浄化触媒が望まれていた。
このようなリーンバーンエンジン用の排ガス浄化触媒として、バリウム(Ba)等のアルカリ土類金属等よりなるNOx吸蔵材とPt等の触媒貴金属とを多孔質担体上に担持したNOx吸蔵還元型触媒が実用化されている(例えば、特許文献1参照)。このリーンバーンエンジン用のNOx吸蔵還元型触媒は、三元触媒とは異なり、酸素過剰の排ガスであっても、NOxを効率良く吸蔵、還元して浄化する。すなわち、酸素過剰の燃料リーン条件で燃料を燃焼させる常時において、リーン雰囲気でNOx吸蔵材がNOxを吸蔵する一方、間欠的に燃料ストイキ〜リッチ条件とすることにより排ガスを還元雰囲気として、NOx吸蔵材からNOxを放出させ、それをHCやCO等の還元性成分と反応させて浄化する。なお、排ガス中のHCやCOは、貴金属触媒により酸化されるとともに、NOxの還元にも消費されるので、HC及びCOも効率良く浄化される。
ところが、排ガス中には、燃料中に含まれる硫黄(S)が燃焼することで生成したSO2が含まれる。このSO2は、高温の排ガス中で触媒貴金属により酸化されてSO3となる。そして、このSO3は、排ガス中に含まれる水蒸気により硫酸となる。こうして排ガス中にSO3や硫酸が生成すると、そのSO3や硫酸とNOx吸蔵材との反応により亜硫酸塩や硫酸塩が生成し、これによりNOx吸蔵材が被毒劣化する。このようにNOx吸蔵材が硫黄被毒(S被毒)により劣化すると、もはやNOxを吸蔵することができなくなり、耐久後のNOx浄化性能が低下してしまう。
ここに、NOx吸蔵材のS被毒に対しては、SO3や硫酸とNOx吸蔵材との反応により生成した亜硫酸塩や硫酸塩を、水素(H2)により還元して分解する手段が有効である。そのため、従来、HCと水蒸気との反応を高活性にすることができ、水素生成能の高いRhを利用することが検討されてきた。RhはZr系酸化物と相性がよく、例えばZrO2粉末に担持されたRhは高い水素生成能を発揮する。
しかしながら、Rhは、極めて希少で最も高価で貴金属である。このため、省資源対策やコスト削減の観点から、Rhの使用量は極力減少させたい。また、Rhはリーン雰囲気でアルミナ等の担体との反応により劣化を起こしやすいため、耐久後におけるRhの水素生成能が低下しやすい傾向にある。
なお、前述した特許文献1には、多孔質酸化物からなる担体として、アルミナ、ゼオライト、シリカ、ジルコニアやチタニアの他に、セリアやセリア−ジルコニア複合酸化物が例示されており、また、担体に担持させる貴金属として、Pt、Rh、IrやRuの他にPdが例示されている。ただし、Pdを担持させる担体として、セリア又はセリア−ジルコニア複合酸化物を採用すること、すなわち、セリア又はセリア−ジルコニア複合酸化物よりなる担体にPdを担持させること自体や、そのことによる顕著な効果については、特許文献1には何等記載されていない。
また、特許文献2には、セリア−ジルコニア複合酸化物よりなる担体と、この担体に担持されたAl、Ni及びFeから選ばれる少なくとも一種の金属の酸化物からなる酸化物粒子と、この担体に担持された貴金属と、からなる排ガス浄化用触媒が記載されている。そして、貴金属として、Pt、Pd、IrやRuが例示されている。ただし、この排ガス浄化用触媒は、三元触媒として用いられるものであり、NOx吸蔵材を含むものではない。また、セリア−ジルコニア複合酸化物よりなる担体にPdを担持させることによる顕著な効果については、特許文献2には何等記載されていない。
さらに、特許文献3には、コーディエライトからなるハニカム体と、このハニカム体上に形成された窒素酸化物貯蔵機能を有する第1機能層と、この第1機能層上に形成された炭化水素貯蔵機能を有する第2機能層と、からなるディーゼルエンジン用の排ガス浄化触媒が記載されている。そして、窒素酸化物貯蔵機能を有する第1機能層が、Pd等が担持された酸化ジルコニウム粉末と、酸化アルミニウム粉末と、セリウム・ジルコニウム混合酸化物粉末とからなるコート層と、このコート層上に担持された酸化バリウム、酸化マグネシウム及び白金とからなる。また、第2機能層が、ケイ酸アルミニウムとゼオライトYとからなる粉末混合物と、この粉末混合物に担持された白金とからなる。ただし、この触媒の第1機能層においては、Pdが酸化ジルコニウム粉末に担持されている。
特開2000−300995号公報
特開2003−126694号公報
特開2000−157870号公報
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、材料費の高騰を抑えつつ、耐久後においても高い水素生成能を維持してNOx吸蔵材のS被毒を有効に抑えることのできるNOx吸蔵還元型触媒を提供することを目的とする。
本発明者は、NOx吸蔵材のS被毒対策として、ロジウムに代えてパラジウムを利用することを創案した。そして、パラジウムを担持させる酸化物の種類が耐久後におけるパラジウムの水素生成能に与える影響や、ガス温度がその水素生成能に与える影響を調べた。その結果、特定の酸化物にパラジウムを担持させた場合のみ、広い温度範囲にわたって高い水素生成能を発揮することを発見して、本発明を完成した。
すなわち、上記課題を解決する本発明のNOx吸蔵還元型触媒は、酸化物よりなる担体と、該担体に担持された触媒貴金属と、該担体に担持されたS被毒していないNOx吸蔵材と、を備え、前記担体が、セリア及びセリア−ジルコニア複合酸化物のうちの少なくとも一方よりなる第1酸化物と、セリア及びセリア−ジルコニア複合酸化物以外の酸化物よりなると共に少なくともアルミナ及びジルコニアを含む第2酸化物と、からなり、前記触媒貴金属が、パラジウムよりなる第1貴金属と、パラジウム以外の貴金属よりなると共に少なくとも白金及びロジウムを含む第2貴金属と、からなり、前記第1貴金属が実質的に前記第1酸化物のみに担持されており、前記第2貴金属が前記第2酸化物に担持されていると共に、該第2貴金属に含まれている白金が該第2酸化物に含まれているアルミナに担持され、かつ該第2貴金属に含まれているロジウムが該第2酸化物に含まれているジルコニアに担持されていることを特徴とする。
本発明のNOx吸蔵還元型触媒では、担体が第1酸化物と第2酸化物とからなり、また触媒貴金属が第1貴金属と第2貴金属とからなる。そして、第1貴金属としてのパラジウムが、実質的にセリア及びセリア−ジルコニア複合酸化物のうちの少なくとも一方よりなる第1酸化物のみに担持されている。すなわち、本発明のNOx吸蔵還元型触媒では、パラジウムがセリア若しくはセリア−ジルコニア複合酸化物に担持されているか、又はパラジウムがセリア及びセリア−ジルコニア複合酸化物の双方に担持されている。いずれにせよ、実質的にパラジウムを担持するのはセリアかセリア−ジルコニア複合酸化物のどちらかのみである。
このようにセリア又はセリア−ジルコニア複合酸化物に担持されたパラジウムは、Zr系酸化物に担持されたロジウムと同様、還元雰囲気において、排ガス中のHCと水蒸気との反応を高活性化し、高い水素生成能を発揮する。このため、還元雰囲気において、多量に生成した水素によって、S被毒したNOx吸蔵材からSを効率的に脱離させることができる。すなわち、SO3や硫酸とNOx吸蔵材との反応により生成した亜硫酸塩や硫酸塩を、水素により還元、分解してNOx吸蔵材から脱離させることができる。また、このとき発生した水素は、NOx吸蔵材から放出されたNOxを還元させるので、NOxの還元反応が促進される。
さらに、セリア又はセリア−ジルコニア複合酸化物にパラジウムを担持させると、例えばジルコニアにパラジウムを担持させる場合と比較して、500℃以上の高温においても高い水素生成能を発揮する。また、セリア又はセリア−ジルコニア複合酸化物に担持されたパラジウムは、Zr系酸化物に担持されたロジウムとは異なり、酸素過剰となるリーン雰囲気でも安定性が高くて粒成長を起こしにくい。このため、例えば大気中、750℃での耐久後においても高い水素生成能を発揮する。
加えて、パラジウムはロジウムに比べて安価である。このため、NOx吸蔵材のS被毒対策のためにロジウムを利用する場合と比較して、材料費の高騰を抑えることができる。
本発明のNOx吸蔵還元型触媒は、下記(1)〜(3)の各項に示される構成のうちの少なくとも一つを有していることが好ましい。
(1)前記NOx吸蔵材は、アルカリ土類金属及びアルカリ金属のうちの少なくとも一方を含むことが好ましい。
(2)前記NOx吸蔵材は、バリウム及びカリウムを含むことが好ましい。
(3)本発明のNOx吸蔵還元型触媒は、基材をさらに備え、前記担体が該基材の表面に形成されていることが好ましい。
したがって、本発明のNOx吸蔵還元型触媒によると、材料費の高騰を抑えつつ、耐久後においても高い水素生成能を維持してNOx吸蔵材のS被毒を有効に抑えることができ、NOx吸蔵性能の低下を抑えることが可能となる。
以下、本発明のNOx吸蔵還元型触媒の実施形態について詳しく説明する。なお、説明する実施形態は実施形態の一例にすぎず、本発明のNOx吸蔵還元型触媒は、下記実施形態に限定されるものではない。本発明のNOx吸蔵還元型触媒は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
本実施形態のNOx吸蔵還元型触媒は、本発明のNOx吸蔵型還元触媒をいわゆるモノリス型触媒に適用したものである。
このNOx吸蔵還元型触媒は、図1にその構成が模式的に示されるように、基材1と、基材1の表面に形成された担体2と、担体2に担持された触媒貴金属3と、担体2に担持されたNOx吸蔵材4と、から構成されている。
基材1としては、コージェライト等のセラミックス又は耐熱合金等からなるハニカム体を用いることができる。
担体2は、多孔質の酸化物粉末を含むスラリーを基材1の表面にウォッシュコートすることすることで層状に形成したものであり、第1酸化物粉末21と、第2酸化物粉末22とからなる。
第1酸化物粉末21は、セリア(CeO2)及びセリア−ジルコニア複合酸化物(CeO2−ZrO2複合酸化物)の粉末のうちの少なくとも一方よりなる。すなわち、第1酸化物粉末21として、CeO2粉末及びCeO2−ZrO2複合酸化物粉末のうちの一方のみを用いてもよいし、あるいは両者を混合して用いてもよい。
第1酸化物粉末21として、CeO2−ZrO2複合酸化物の粉末を用いる場合、このCeO2−ZrO2複合酸化物におけるCeO2とZrO2との構成比は、酸化物換算のモル比基準で、CeO2/(ZrO2+CeO2)=1/100〜100/100とすることが好ましく、50/100〜100/100とすることがより好ましい。CeO2のモル比が少なすぎると、十分な水素生成能が得られなくなる。
CeO2−ZrO2複合酸化物の粉末は、例えば、セリウム原料とジルコニウム原料との原料混合物を、その融点以上の高温に加熱して溶融し、冷却後、粉砕し、必要により酸化焼成することにより得ることができる。
また、CeO2−ZrO2複合酸化物は、ZrO2の少なくとも一部がCeO2に固溶した固溶体で形成されていることが好ましい。CeとZrとが原子又は分子レベルで複合化されて、ZrO2の少なくとも一部がCeO2に固溶した固溶体となっていれば、耐熱性が向上し、初期から耐久後まで高い水素生成能が確保される。
CeO2−ZrO2複合酸化物の固溶体は、例えばアルコキシド法又は共沈法により製造することができる。アルコキシド法では、セリウムアルコキシドとジルコニウムアルコキシドとの混合物を加水分解後に焼成したり、あるいはCeO2粉末にジルコニウムアルコキシドを含浸させ、それを加水分解後に焼成したりすることで、CeO2−ZrO2複合酸化物の固溶体が得られる。共沈法では、水溶性セリウム塩と水溶性ジルコニウム塩との混合溶液にアルカリ物質を添加することで前駆体を共沈させ、その共沈物を焼成することで、CeO2−ZrO2複合酸化物の固溶体が得られる。
担体2における第1酸化物粉末21の配合割合は、担体2の全体を100質量%としたとき、5〜70質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましい。担体2における第1酸化物粉末21の配合割合が少なすぎると、Pdの分散性が低下し、多すぎるとOSC(酸化雰囲気下で酸素を貯蔵し、還元雰囲気下で酸素を放出する酸素ストレージ能)が増加して、吸蔵したNOxを還元する性能が低下する。
第2酸化物粉末22は、CeO2及びCeO2−ZrO2複合酸化物以外の酸化物の粉末よりなると共に少なくともアルミナ(Al 2 O 3 )及びジルコニア(ZrO 2 )を含む。第2酸化物粉末22に用いることのできる酸化物の種類としては、アルミナ(Al 2 O 3 )及びジルコニア(ZrO 2 )以外に、例えば、チタニア(TiO2)、シリカ(SiO2)、ゼオライト等や、チタニア−ジルコニア複合酸化物(TiO2−ZrO2複合酸化物)、チタニア−アルミナ複合酸化物(TiO2−Al2O3複合酸化物)、シリカ−アルミナ複合酸化物(SiO2−Al2O3複合酸化物)、ジルコニア−アルミナ複合酸化物(ZrO2−Al2O3複合酸化物)等を挙げることができる。
担体2に担持された触媒貴金属3は、第1貴金属31と、第2貴金属32とからなる。
第1貴金属31はパラジウム(Pd)よりなる。この第1貴金属31としてのPdは、実質的に担体2のうち第1酸化物粉末21上のみに担持されている。第1酸化物粉末21としてのCeO2粉末又はCeO2−ZrO2複合酸化物粉末に担持されたPdは、還元雰囲気において、排ガス中のHCと水蒸気との反応を高活性化して高い水素生成能を発揮する。
第1貴金属31としてのPdの担持量は、例えばモノリス型触媒の場合、モノリス(ハニカム体)の体積1リットル当たり、0.1〜5gとすることが好ましく、0.3〜2gとすることがより好ましい。Pdの担持量が少なすぎると、Pdによる水素生成能を有効に発揮させることが困難となり、多すぎると担持量に見合った効果が得られない。
第2貴金属32は、Pd以外の貴金属よりなると共に少なくとも白金(Pt)及びロジウム(Rh)を含む。第2貴金属32は、主に、排ガス中のCO、HCを酸化するとともに、排ガス中のNOxの主成分たるNOをNO2に酸化してNOx吸蔵材に吸蔵させ易くする役割を果たす。このような貴金属の種類としては、白金(Pt)及びロジウム(Rh)以外に、イリジウム(Ir)を挙げることができる。
第2貴金属32は、担体2のうち第2酸化物粉末22上に担持されている。第2貴金属32としてのPtは、第2酸化物粉末22としてのアルミナ粉末に担持させる。酸化物の中でも耐熱性の高いアルミナにPtを担持させることにより、Ptの酸化触媒性能等を特に有効に発揮させることができる。また、第2貴金属32としてのRhは、第2酸化物粉末22としてのジルコニア粉末に担持させる。Rhと相性の良いジルコニア粉末にRhを担持させることにより、Rhの水素生成能等を特に有効に発揮させることができる。
なお、第1酸化物粉末21に担持された第1貴金属31としてのPdの水素生成能に影響を及ぼさない(水素生成能を低下させない)範囲内なら、第2貴金属32の一部が第1酸化物粉末21に担持されていてもよい。ただし、貴金属の使用量を低減させる観点より、第2貴金属32は極力第1酸化物粉末21に担持されていない方が望ましい。すなわち、第2貴金属32の全部又は大部分は第2酸化物粉末22に担持されていることが好ましい。また、第1酸化物粉末21に担持された第1貴金属31としてのPdの水素生成能が有効に発揮される限りにおいて、製造過程で不可避的にPdの一部が第2酸化物粉末22に担持されていてもよい。ただし、第1貴金属31としてのPdの全部が第1酸化物粉末21上に担持されていれば、水素生成能を最も効率的に発揮させることができる。
第2貴金属32の担持量は、NOx吸蔵還元型触媒として要求される触媒の特性に応じて、適宜設定することができる。例えば、モノリス型触媒におけるモノリス(ハニカム体)の体積1リットル当たり、Ptの場合は0.1〜10gとすることが好ましく、0.3〜3gとすることがより好ましく、また、Rhの場合は0.01〜1gとすることが好ましく、0.05〜0.5gとすることがより好ましい。
第1酸化物粉末21に対する第1貴金属31の担持方法及び第2酸化物粉末22に対する第2貴金属32の担持方法は、特に限定されず、貴金属の種類に応じた公知の方法を採用することができる。
担体2に担持されたNOx吸蔵材4は、燃料リーン雰囲気下でNOxを吸蔵し、燃料ストイキ〜リッチ雰囲気下でNOxを放出する役割を果たす。このようなNOx吸蔵材としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類元素から選ばれる少なくとも1種以上を用いることができる。アルカリ金属としてはLi、Na、KやCsを、アルカリ土類金属としてはMg、Ca、SrやBaを、希土類元素としてはSc、Y、La、Ce、PrやNd等をそれぞれ例示できる。これらの中でも、アルカリ度が高くNOx吸蔵性能に優れるという点を考慮すれば、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の中から選択することが好ましい。
NOx吸蔵材4の担持量は、例えば、モノリス型触媒におけるモノリス(ハニカム体)の体積1リットル当たり、0.01〜2モルとすることが好ましく、0.1〜1モルとすることがより好ましい。NOx吸蔵材4の担持量が少なすぎるとNOx吸蔵能力が小さくNOx浄化性能が低下し、担持量が多すぎる場合は、効果が飽和することに加え、他成分量の低下による不具合が生じる可能性がある。
NOx吸蔵材4の担持方法は、特に限定されず、NOx吸蔵材4の種類に応じた公知の方法を採用することができる。例えばモノリス型触媒の場合、予め、第1貴金属31を第1酸化物粉末21に担持した担持粉末と、第2貴金属32を第2酸化物粉末22に担持した担持粉末とを含むスラリーを、ハニカム体よりなる基材1にウォッシュコートして乾燥、焼成することにより、基材1の表面にコート層を形成しておく。そして、このコート層が形成された基材1を、例えばアルカリ金属酢酸塩やアルカリ土類金属酢酸塩の溶液に浸漬し、余分な溶液を吹き払った後、乾燥、焼成することにより、NOx吸蔵材4を担体2上に担持させることができる。また、前記スラリー中に予め前記アルカリ金属酢酸塩やアルカリ土類金属酢酸塩を加えて、基材1にウォッシュコートしてもよい。
NOx吸蔵材4は、担体2のうち少なくとも第1酸化物粉末21に担持されていることが好ましい。NOx吸蔵材4が第1酸化物粉末21に担持されていれば、NOx吸蔵材4及び第1貴金属31としてのPdの双方が第1酸化物粉末21に担持されていることになり、NOx吸蔵材4と第1貴金属31としてのPdとが互いに近接することになる。そうすると、Pdが発生させた水素によって、S被毒したNOx吸蔵材4からSをより効率的に脱離させることができるとともに、NOx吸蔵材4から放出されたNOxをより効率的に還元させることができる。
以上のように構成される本実施形態のNOx吸蔵還元型触媒は、例えば触媒コンバータに組み込まれてリーンバーンエンジンからの排ガス流路に配置され、この排ガスを浄化する。燃料リーン雰囲気では、触媒貴金属3のうちの第2貴金属32の触媒機能によりHCやCOが酸化されて浄化されるとともに、排ガス中に含まれるNO等が第2貴金属32の機能により酸化されてNO2等のNOxとなり、それがNOx吸蔵材4に吸蔵される。そして、間欠的に燃料ストイキ〜リッチ雰囲気とされると、今度は吸蔵されたNOxが放出され、それが触媒上でHCやCOと反応して還元され、NOxが浄化される。
本実施形態のNOx吸蔵還元型触媒では、第1貴金属31としてのPdが、第1酸化物粉末21としてのセリア又はセリア−ジルコニア複合酸化物の粉末に担持されている。このセリア又はセリア−ジルコニア複合酸化物の粉末に担持されたPdは、燃料ストイキ〜リッチの還元雰囲気において、排ガス中のHCと水蒸気との反応を高活性化し、高い水素生成能を発揮する。このため、燃料ストイキ〜リッチ雰囲気において、多量に生成した水素によって、S被毒したNOx吸蔵材4からSを効率的に脱離させることができる。また、このとき発生した水素は、NOx吸蔵材4から放出されたNOxを還元させるので、NOxの還元反応が促進される。
ここに、仮にジルコニアにPdを担持させた場合、200〜500℃程度の温度範囲においては、セリア又はセリア−ジルコニア複合酸化物にPdを担持させた場合と同様、高い水素生成能を発揮する。しかし、ジルコニアにPdを担持させた場合は、500℃以上の(又は500℃を超える)高温になると、水素生成能が極端に低下する。これに対し、セリア又はセリア−ジルコニア複合酸化物にPdを担持させた場合は、500℃以上の(又は500℃を超える)高温域であっても、高い水素生成能を発揮する。このため、本実施形態のNOx吸蔵還元型触媒では、500℃以上の(又は500℃を超える)高温域であっても、S被毒したNOx吸蔵材4からSをより効率的に脱離させることができるとともに、NOx吸蔵材4から放出されたNOxをより効率的に還元させることができる。
また、セリア又はセリア−ジルコニア複合酸化物に担持されたPdは、Zr系酸化物に担持されたRhとは異なり、酸素過剰となるリーン雰囲気でも安定性が高くて粒成長を起こしにくい。このため、例えば大気中、750℃での耐久後においても高い水素生成能を発揮する。したがって、本実施形態のNOx吸蔵還元型触媒では、耐久後においても高い水素生成能を発揮して、S被毒したNOx吸蔵材4からSをより効率的に脱離させることができるとともに、NOx吸蔵材4から放出されたNOxをより効率的に還元させることができる。
加えて、PdはRhに比べて安価である。このため、本実施形態のNOx吸蔵型還元触媒によれば、NOx吸蔵材4のS被毒対策のためにRhを利用する場合と比較して、材料費の高騰を抑えることができる。
なお、この実施形態では、モノリス型触媒に本発明を適用する例について説明したが、ペレット型触媒に本発明を適用して触媒コンバータに組み込んでもよい。
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。
(実施例1)
前述した実施形態に準じて、実施例1のNOx吸蔵型還元触媒Aを製造した。
実施例1のNOx吸蔵型還元触媒Aでは、担体2が、第1酸化物粉末21としてのセリア−ジルコニア複合酸化物粉末と、第2酸化物粉末22としてのアルミナ粉末と、第2酸化物粉末22としてのジルコニア粉末と、第2酸化物粉末22としてのチタニア−ジルコニア複合酸化物粉末とから構成されている。担体2における第1酸化物粉末21の配合割合は、担体2の全体を100質量%としたとき、30質量%である。
また、第2貴金属32がPt及びRhから構成され、NOx吸蔵材4がバリウム(Ba)及びカリウム(K)から構成されている。
そして、第1貴金属31としてのPdが、第1酸化物粉末21としてのセリア−ジルコニア複合酸化物粉末に担持され、第2貴金属32としてのPtが、第2酸化物粉末22としてのアルミナ粉末に担持され、第2貴金属32としてのRhが、第2酸化物粉末22としてのジルコニア粉末に担持されている。また、NOx吸蔵材4としてのBa及びKが、第1酸化物粉末21及び第2酸化物粉末よりなる担体2、すなわち第1酸化物粉末21としてのセリア−ジルコニア複合酸化物粉末、並びに第2酸化物粉末22としてのアルミナ粉末、ジルコニア粉末及びチタニア−ジルコニア複合酸化物粉末に担持されている。
まず、セリウムアルコキシドとジルコニウムアルコキシドとの混合物を加水分解してから、700℃×5時間の条件で焼成することにより、セリア−ジルコニア複合酸化物の固溶体を作成した。そして、この固溶体を粉砕してセリア−ジルコニア複合酸化物粉末とした。このセリア−ジルコニア複合酸化物粉末におけるCeO2とZrO2との構成比は、酸化物換算のモル比基準で、CeO2/(ZrO2+CeO2)=70/100である。
得られたセリア−ジルコニア複合酸化物粉末を硝酸パラジウム水溶液に浸漬してから、乾燥、焼成することにより、セリア−ジルコニア複合酸化物粉末にPdを担持してなる、Pd担持セリア−ジルコニア粉末を得た。
また、ジニトロジアミン白金水溶液にアルミナ粉末を浸漬してから、乾燥、焼成することにより、アルミナ粉末にPtを担持してなる、Pt担持アルミナ粉末を得た。
また、硝酸ロジウム水溶液にジルコニア粉末を浸漬してから、乾燥、焼成することにより、ジルコニア粉末にRhを担持してなる、Rh担持ジルコニア粉末を得た。
そして、前記Pd担持セリア−ジルコニア粉末、前記Pt担持アルミナ粉末、前記Rh担持ジルコニア粉末及びチタニア−ジルコニア複合酸化物粉末を用いて所定のスラリーを調製した。そして、コージェライト製のハニカム体よりなる基材1の表面にスラリーをウォッシュコートし、乾燥、焼成して、基材1の表面に触媒コート層を形成した。
次に、触媒コート層が形成された基材1を、酢酸バリウムと酢酸カリウムの混合溶液に浸漬し、余分な溶液を吹き払った後、250℃で1時間乾燥してから、500℃で2時間焼成して、基材1の触媒コート層にBaとKを担持した。こうして、実施例1のNOx吸蔵還元型触媒Aを得た。
実施例1のNOx吸蔵還元型触媒Aにおける各金属の担持量は、ハニカム体の体積1リットル当たり、Pd:0.75g、Pt:2g、Rh:0.5g、Ba:0.3モル、K:0.1モルである。
(実施例2)
第1酸化物粉末21として、セリア−ジルコニア複合酸化物粉末の代わりに、セリア粉末を用いること以外は、実施例1のNOx吸蔵還元型触媒Aと同様にして、実施例2のNOx吸蔵還元型触媒Bを得た。
すなわち、実施例2のNOx吸蔵型還元触媒Bでは、第1貴金属31としてのPdが、第1酸化物粉末21としてのセリア粉末に担持されている。
(比較例1)
実施例1と同様にして得たセリア−ジルコニア複合酸化物粉末と、アルミナ粉末と、チタニア−ジルコニア複合酸化物粉末と、実施例1と同様にして得たRh担持ジルコニア粉末とを用いて所定のスラリーを調製した。そして、コージェライト製のハニカム体よりなる基材1の表面にスラリーをウォッシュコートし、乾燥、焼成して、基材1の表面に触媒コート層を形成した。
次に、触媒コート層が形成された基材1を、硝酸パラジウム水溶液とジニトロアンミン白金水溶液との混合液に1時間浸漬し、余分な溶液を吹き払い、乾燥して、基材1の触媒コート層にPdとPtを担持した。
その後、実施例1と同様にして、基材1の触媒コート層にBaとKを担持した。こうして、比較例1のNOx吸蔵還元型触媒Cを得た。
(比較例2)
Pdを担持させるPd担体として、セリア−ジルコニア複合酸化物粉末の代わりにアルミナ粉末を用いること以外は、実施例1のNOx吸蔵還元型触媒Aと同様にして、比較例2のNOx吸蔵還元型触媒Dを得た。
すなわち、比較例2のNOx吸蔵型還元触媒Bでは、Pdがアルミナ粉末に担持されている。
(比較例3)
Pdを担持させるPd担体として、セリア−ジルコニア複合酸化物粉末の代わりにジルコニア粉末を用いること以外は、実施例1のNOx吸蔵還元型触媒Aと同様にして、比較例3のNOx吸蔵還元型触媒Eを得た。
すなわち、比較例3のNOx吸蔵型還元触媒Eでは、Pdがジルコニア粉末に担持されている。
(触媒性能の評価)
実施例1〜2及び比較例1〜3のNOx吸蔵還元型触媒A〜Eに対して耐久試験を行った。この耐久試験では、NOx吸蔵還元型触媒が内蔵された触媒コンバータをリーンバーンエンジンの排気系に配設し、入りガス温度750℃で50時間、10分のリーン運転と50分のリッチ運転とを交互に繰り返した。
耐久試験後、高S(硫黄)濃度のガソリンを用いて、入りガス温度400℃で8時間のリーン運転を行い、NOx吸蔵還元型触媒をS被毒させた。
S被毒後に、耐久試験と同様のリーンバーンエンジンを用いて、入りガス温度650℃で10分のリッチ運転を行って、NOx吸蔵材4からSを脱離させるS脱離処理を行った。
このS脱離処理後に、入りガス温度400℃のリーン運転に切り替え、このリーン運転中の入りガス中のNOx濃度に対し、その出ガスのNOx濃度が10%になるまでの間におけるNOx吸蔵量を測定した。その結果を図2に示す。なお、図2の縦軸は、比較例1のNOx吸蔵還元型触媒CのNOx吸蔵量を1としたときの相対比である。
図2からわかるように、セリア−ジルコニア複合酸化物粉末のみにPdを担持させた実施例1のNOx吸蔵還元型触媒A、及びセリア粉末のみにPdを担持させた実施例2のNOx吸蔵還元型触媒Bでは、セリア−ジルコニア複合酸化物粉末及びセリア粉末以外の酸化物粉末にPdを担持させた比較例2及び3のNOx吸蔵還元型触媒D及びEと比べて、S脱離処理後のNOx吸蔵量が1.3倍以上となった。
したがって、セリア−ジルコニア複合酸化物粉末又はセリア粉末のみにPdを担持させることで、セリア−ジルコニア複合酸化物粉末及びセリア粉末以外の酸化物粉末にPdを担持させる場合と比較して、S被毒したNOx吸蔵材4からのS脱離効果が大きくなることが確認できた。
(Pd担体の種類と水素発生量との関係の評価)
Pdを担持させる担体の種類と水素発生量との関係について調べた。
セリア−ジルコニア複合酸化物粉末(実施例1に相当)、セリア粉末(実施例2相当)、アルミナ粉末(比較例2に相当)、ジルコニア粉末(比較例3に相当)、ジルコニア−チタニア複合酸化物粉末、及びチタニア粉末のそれぞれに、Pdを担持した6種類のペレット触媒に対して耐久試験を行った。
この耐久試験では、ペレット触媒を大気中において750℃で5時間放置した。その後、モデルガス評価装置にペレット触媒を装着し、入りガス温度と水素生成量との関係を調べた。この評価では、モデルガスとして、C3H6を1000ppmと、H2Oを3%とを含む窒素ガスを用い、出ガス中の水素量を水素分析計で測定した。その結果を図3に示す。
図3から明らかなように、セリア−ジルコニア複合酸化物粉末(実施例1に相当)又はセリア粉末(実施例2に相当)にPdを担持させた場合は、200〜600℃の温度範囲において、高い水素生成能を発揮した。
一方、アルミナ粉末(比較例2に相当)、ジルコニア−チタニア複合酸化物粉末又はチタニア粉末にPdを担持させた場合は、200〜600℃の温度範囲において、水素生成量が少なかった。また、ジルコニア粉末(比較例3に相当)にPdを担持させた場合は、200〜500℃の温度範囲では高い水素生成能を発揮したが、入りガス温度が500℃を超える(又は500℃以上になる)と、水素生成能が低下した。
本発明の実施形態に係るNOx吸蔵還元型触媒の構成を模式的に示す断面図である。
実施例1〜2及び比較例1〜3のNOx吸蔵還元型触媒について、耐久後のNOx吸蔵性能(S脱離特性)を調べた結果を示す図である。
Pd担体(パラジウムを担持させる担体)の種類と水素生成能との関係を調べた結果を示す図である。
符号の説明
1…基材 2…担体
3…触媒貴金属 4…NOx吸蔵材
21…第1酸化物粉末 22…第2酸化物粉末
31…第1貴金属 32…第2貴金属