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JP4492765B2 - L−アリシンアセタールの製造法 - Google Patents

L−アリシンアセタールの製造法 Download PDF

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  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、L-アリシンアセタールの製造法に関する。さらに詳しくは、D,L-アリシンアミドアセタールを生化学的に不斉加水分解して対応するL-アリシンアセタールを製造する方法に関する。L-アリシンアセタールは、医薬品の製造中間体として重要な物質である。
【0002】
【従来の技術】
従来、L-アリシンアセタールの製造法として、例えば特開平7-48259 号公報に記載されている方法が知られている。この方法は、アセトアミドマロン酸ジエチルから2段階の反応で誘導した N- アセチル-D,L- ヒドロキシノルロイシンを、ブタ肝臓のアシラーゼで立体選択的に加水分解してL-ヒドロキシノルロイシンとし、該L-ヒドロキシノルロイシンのアミノ基をフタルイミドとしカルボキシル基をメチルエステルとしてそれぞれ保護した後、水酸基をSwern 酸化によってアルデヒドに変換し、さらにアルデヒドをジメチルアセタールとした後にフタルイミドを脱保護してL-アリシンジメチルアセタールをメチルエステルとして得る方法であるが、工程数が多く、収率が低く、また高価な試薬を必要とするため、工業的に優れた方法とは言いがたい。
このほか、Bioorganic & Medicinal Chemistry, Vol.3, 1237-1240,(1995) には、3,4-ジヒドロ-2H- ピランから8 段階の反応からなるD,L-アリシンエチレンアセタールの製造法が記載されているが、この方法も工程数が多く、収率が低く、更に高価な試薬を必要とするため、工業的に優れた方法とは言いがたい。また、ここにはラセミ体の製造法だけが記載されており、光学活性体であるL-アリシンアセタールの製造法は記載されていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来技術における上記のような課題を解決し、少ない工程数で安価にL-アリシンアセタールを製造するための製造法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、少ない工程数で安価にL-アリシンアセタールを製造するための製造法に関して鋭意検討を行った結果、新規化合物であるD,L-アリシンアミドアセタールの合成に成功し、且つこのD,L-アリシンアミドアセタールが微生物の酵素作用により生化学的に加水分解してL-アリシンアセタールになることを見出し本発明に到達した。すなわち本発明は、
(1)一般式(I)で示されるD,L-アリシンアミドアセタールに、L-アリシンアミドアセタールを立体選択的に加水分解する活性を有する微生物の菌体又は菌体処理物を作用させて、一般式(II)で示されるL-アリシンアセタールを製造するL-アリシンアセタールの製造法であり、
【0005】
【化4】
Figure 0004492765
【0006】
【化5】
Figure 0004492765
(ただし、式中のR1、R2は互いに同一または相異する低級アルキル基、またはR1とR2を合わせて [CH2]n で表されるアルキレン基であり、nは2〜3である)
【0007】
(2)更に(1)において、D,L-アリシンアミドアセタールに微生物の菌体又は菌体処理物を作用させた後、未反応のD-アリシンアミドアセタールを強塩基性物質の存在下で加熱することによりラセミ化してD,L-アリシンアミドアセタールを得、再度原料として使用するL-アリシンアセタールの製造法であり、
(3)更に(1)の反応で反応原料に用いる新規化合物のD,L-アリシンアミドアセタール及びその製造方法に関するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の詳細について説明する。
公知化合物であるグルタルアルデヒドモノアセタール〔一般式 (III)〕を出発原料として新規化合物であるD,L-アリシンアミドアセタール〔一般式(I)〕を合成し、更にこのD,L-アリシンアミドアセタールを微生物菌体を用いて立体選択的に加水分解してL-アリシンアセタール〔一般式(II)〕を製造し、その際立体選択的加水分解を受けずに残留しているD-アリシンアミドアセタールはラセミ化して原料D,L-アリシンアミドアセタールに戻す本発明の工程図を以下に示す。
【0009】
【化6】
Figure 0004492765
以下工程図に沿って説明する。
【0010】
一般式 (III)で示されるグルタルアルデヒドモノアセタールは、例えばグルタルアルデヒドのモノアセタール化(特開昭48-39416号公報)によって合成されるほか、5,5-ジメトキシ-1- ペンタノールの酸化(J. Am. Chem. Soc., Vol.104, 1033-1041, (1982) )や4,4-ジエトキシ-1- ブテンのハイドロホルミル化(J. Am. Chem. Soc., Vol.115, 2066-2068, (1993) )等の公知の方法によって合成される。
【0011】
D,L-α- アミノニトリル(前記工程図ではアミノニトリルとして表示)は、グルタルアルデヒドモノアセタールと、青酸若しくは青酸塩及びアンモニア若しくはアンモニウム塩とを反応させるストレッカー(Strecker)反応によって合成される。この方法は、初めにグルタルアルデヒドモノアセタールと青酸を反応させてシアンヒドリンとした後、該シアンヒドリンをアンモニアと反応させてアミノニトリルとする2段階の反応で行う方法と、グルタルアルデヒドモノアセタールに青酸塩とアンモニウム塩を反応させて1段階でアミノニトリルとする方法がある。
グルタルアルデヒドモノアセタールと青酸との反応によりシアンヒドリンを製造する工程の反応条件は、特に限定されるものではないが、通常は塩基性触媒存在下、反応温度0〜20℃で行われる。シアンヒドリンとアンモニアとの反応でD,L-α- アミノニトリルを製造する工程の反応条件は、特に限定されるものではないが、通常はシアンヒドリンに対して5〜10倍モル量のアンモニアを用い、反応温度は低すぎると反応が遅くなり高すぎると分解物が生じるため、通常は20〜80℃で行われる。
グルタルアルデヒドモノアセタールと青酸塩及びアンモニウム塩を反応させて1段階でアミノニトリルを製造する工程の反応条件は、特に限定されるものではないが、通常は反応温度0〜50℃で行われる。青酸塩としてはシアン化アルカリが好ましく、シアン化アルカリの中ではシアン化カリ及びシアン化ナトリウムが特に好ましい。アンモニウム塩としては塩化アンモニウムが好ましい。
【0012】
D,L-α- アミノニトリルから一般式(I)で示されるD,L-アリシンアミドアセタールを製造するためには2つの方法がある。1つはD,L-α- アミノニトリルを部分加水分解する方法であり、他の方法はD,L-α- アミノニトリルと R3COR4 (但し R3 及び R4 は低級アルキル基)で示されるケトンとからオキサゾリジンを製造し、このオキサゾリジンを加水分解する方法である。
D,L-α- アミノニトリルを部分加水分解する場合の反応条件は、特に限定されるものではないが、通常は塩基性触媒及びケトン類の存在下、水溶液中、反応温度0〜30℃で行われる。
オキサゾリジンを経由してD,L-アリシンアミドアセタールを製造する場合の反応条件は、特に限定されるものではないが、通常は塩基性触媒存在下、アミノニトリルに対して1〜5倍モル程度のケトン類を用い、反応温度-10 〜50℃程度、好ましくは0〜30℃程度でオキサゾリジン合成を行い、次いで該オキサゾリジンを水溶液中で0〜50℃程度の反応温度で加水分解することによって行われる。
【0013】
このようにしてD,L-α- アミノニトリルを製造する方法は、工業原料として広く使用されているアルデヒド類、青酸およびアンモニアから容易に製造することができる点で有利である。
本発明の一般式(I)で示されるD,L-アリシンアミドアセタールの代表例は、D,L-アリシンアミドジメチルアセタール(D,L-2-アミノ-6,6- ジメトキシヘキサンアミド)、D,L-アリシンアミドジエチルアセタール(D,L-2-アミノ-6,6- ジエトキシヘキサンアミド)およびD,L-アリシンアミドエチレンアセタール(D,L-2-アミノ-6,6- エチレンジオキシヘキサンアミド)などがある。また一般式(I)で示されるD,L-アリシンアミドアセタールは、その製法および品質等に特に制限はない。
【0014】
本発明のD,L-アリシンアミドアセタールの生化学的加水分解に使用される微生物菌体は、目的とするL-アリシンアセタールに該当するL-アリシンアミドアセタールを立体選択的に加水分解する活性を有する微生物の菌体であれば良く、このような微生物として例えば、シュードモナス属、クリプトコッカス属、ロツデロマイセス属 、ロドスポリジウム属、ミコプラーナ属およびパチソレン属等に属する細菌が挙げられるが、これらに限定されるものではない。具体的な例としては、ミコプラーナ ブラタ(Mycoplana bullata )NCIB 9440 、シュードモナスロゼア(Pseudomonas rosea )NCIB 10605、クリプトコッカス ラウレンティ(Cryptococcus laurentii)ATCC 18803、ロツデロマイセス エロギスポラス(Lodderomyces elogisporus)IFO 1676、ロドスポリジウム トルロイドス(Rhodosporidium toruloides )IFO 0871、パチソレン タンノフィラス(Pachysolen tannophilus)IFO 1007 がある。
【0015】
これらの微生物の培養は、通常資化しうる炭素源、窒素源、各微生物に必須の無機塩、栄養等を含有させた培地を用いて行われるが、高い酵素活性を得るために、培地に予めD,L-α- アミノ酸アミドを添加することも効果的である。この際に添加されるD,L-α- アミノ酸アミドは、目的とするL-アリシンアセタールに対応するD,L-アリシンアミドアセタールを用いることが好ましいが、一般的なD,L-α- アミノ酸アミド、例えばD,L-アラニンアミド、D,L-バリンアミド等でもよく、特に制限はない。培養時のpHは、4 〜10の範囲であり、温度は20〜50℃である。培養は1 日〜1 週間程度好気的に行われる。このようにして培養した微生物は、培養液、分離菌体、菌体破砕物、さらには精製した酵素として反応に使用される。また、常法に従って、菌体または酵素を固定化して使用することもできる。菌体処理物とは菌体を処理した物、即ち前記の菌体破砕物、精製した酵素、菌体または酵素を固定化した物を意味する。
【0016】
D,L-アリシンアミドアセタールの生化学的加水分解反応の条件は以下の通りである。反応液中のD,L-アリシンアミドアセタール濃度は1 〜40wt% 、D,L-アリシンアミドアセタールに対する微生物の菌体及び/又は菌体処理物の使用量は乾燥菌体として重量比0.005 〜3 、反応温度20〜70℃、pH5 〜13の範囲である。
D,L-アリシンアミドアセタールの生化学的加水分解反応で生成したL-アリシンアセタールは、反応終了液から、例えば遠心分離あるいは濾過膜などの通常の固液分離手段により微生物の菌体及び/又は菌体処理物を除き、減圧濃縮後、有機溶媒を加えてL-アリシンアセタールを析出させ、析出したL-アリシンアセタールを濾取するといった方法、あるいは微生物の菌体及び/又は菌体処理物を除いた後、減圧下で水を除去し、残渣固体に有機溶媒を加えて未反応のD-アリシンアミドアセタールを溶解し、不溶のL-アリシンアセタールを濾取するといった方法により、容易に分離することができる。このときL-アリシンアセタールを析出させるため、あるいは未反応のD-アリシンアミドアセタールを溶解させるために加える有機溶媒は、L-アリシンアセタールの溶解度が低く、未反応のD-アリシンアミドアセタールの溶解度が高い溶媒であればよく、特に制限はないが、エタノール、2-プロパノール、2-メチル-1- プロパノール、1 - ブタノールおよび2-ブタノール等のアルコール類が好適に使用される。また、微生物の菌体及び/又は菌体処理物を分離した反応終了液から、未反応のD-アリシンアミドアセタールを溶媒抽出などの方法により除いた後、残液から晶出などの方法によってL-アリシンアセタールを分離することもできる。このときD-アリシンアミドアセタールを抽出する溶媒として、例えばヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の非極性溶媒が挙げられる。このほか、反応終了液から微生物の菌体及び/又は菌体処理物を除いた後、イオン交換電気透析によりL-アリシンアセタールだけを選択的に分離回収する方法も有効である。
【0017】
未反応のD-アリシンアミドアセタールは、前記のD,L-アリシンアミドアセタールの生化学的加水分解反応終了液からL-アリシンアセタールを分離した後の液の濃縮、あるいは微生物の菌体及び/又は菌体処理物分離後の反応終了液からの溶媒抽出などの方法により、容易に回収される。回収したD-アリシンアミドアセタールは、強塩基性物質の存在下で加熱することにより、容易にラセミ化し、D,L-アリシンアミドアセタールとすることができるため、再度これを生化学的加水分解反応の原料として使用することができる。D-アリシンアミドアセタールのラセミ化反応で使用されるD-アリシンアミドアセタールは、前記のD,L-アリシンアミドアセタールの生化学的加水分解反応終了液から回収されたD-アリシンアミドアセタールをそのまま、または必要に応じて再結晶等の操作によって精製を行った後に用いることができる。
【0018】
D-アリシンアミドアセタールのラセミ化反応に使用される強塩基性物質とは、有機または無機の強塩基性物質であれば良く、代表例として水酸化テトラメチルアンモニウムおよび水酸化テトラエチルアンモニウムなどの有機第四級アンモニウム化合物ならびに水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、ナトリウムアミドおよびナトリウムハイドライドなどのアルカリ金属化合物、ならびに水酸化バリウムなどのアルカリ土類金属化合物が挙げられる。なお、反応系内において上記の強塩基性物質に変化しうる物質、例えばナトリウムおよびカリウムなどのアルカリ金属単体、ならびにバリウムなどのアルカリ土類金属単体などをそれぞれ添加することも可能である。
【0019】
これら強塩基性物質の使用量は、D-アリシンアミドアセタール1 モルに対して0 .001〜0.5 モルの割合であり、好適には0.01〜0.1 モルの割合である。
D-アリシンアミドアセタールのラセミ化反応は、溶媒を使用しないで行うこともできるが、溶媒を使用した場合には反応温度を低くすることができ、そのため副生成物が生成する危険性を低くすることができ、より好適である。この際に使用される溶媒としては、D-アリシンアミドアセタールおよび強塩基性物質のそれぞれに対して不活性であれば良く、例えばヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の炭化水素類、2-プロパノール、2-メチル-1- プロパノール、2-ブタノール、1-ブタノールおよび1-ペンタノール等のアルコール類、ならびにイソブチロニトリルなどがある。溶媒の使用量に特に制限はないが、実用上、D-アリシンアミドアセタールの重量に対して100 倍より多くする必要はなく、1 〜20倍程度が好ましい。
【0020】
ラセミ化反応液中の水分は少ないほど好ましいが、1wt% 程度以下ならば殆ど支障はなく、0.1wt%以下であれば実質的に支障はない。ラセミ化反応の温度は、20〜200 ℃、好適には50〜150 ℃である。ラセミ化反応は、通常、常圧下で行われるが、減圧下または加圧下で行うことを妨げない。
ラセミ化反応終了後、生成したD,L-アリシンアミドアセタールを分離回収する方法は、例えば減圧下で溶媒を留去した後、冷却して結晶を析出させ、濾取または遠心分離などの通常の固液分離操作により分離回収する方法、あるいはラセミ化反応終了液へ水を添加して、D,L-アリシンアミドアセタールを水相へ溶出し、そのまま、あるいはpH調整後生化学的加水分解工程へ循環する方法があるが、後者の方が工業的には、より合理的である。
【0021】
このようにしてD-アリシンアミドアセタールをラセミ化しD,L-アリシンアミドアセタールとし、生化学的加水分解反応系へ循環することにより、D,L-アリシンアミドアセタールを全量L-アリシンアセタールに変換することができる。
本発明の方法によって、具体的には、例えばL-アリシンジメチルアセタール、L-アリシンジエチルアセタール、およびL-アリシンエチレンアセタール等のL-アリシンアセタールを製造することが可能である。
【0022】
【実施例】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1 グルタルアルデヒドモノアセタールから D,L- アリシンアミドアセタールの製造
(a)D,L-6,6-エチレンジオキシ-2- ヒドロキシヘキサンニトリルの製造
撹拌機、温度計、還流冷却器および滴下ロートを付した200ml 四ツ口フラスコに、メチル-t- ブチルエーテル35g を入れ、5℃に冷却し、青酸8.0g(0.30mol )を添加した。ここに撹拌下、トリエチルアミン0.6gを加えた後、5,5-エチレンジオキシペンタナール33.0g (0.23mol )を、反応液の温度が20℃を越えないように滴下ロートから約20分かけて徐々に滴下した。さらに20℃で2時間撹拌した後、粗D,L-6,6-エチレンジオキシ-2- ヒドロキシヘキサンニトリルを含む反応混合液を、そのまま次のアミノ化工程に供した。
(b)D,L-2-アミノ-6,6 -エチレンジオキシヘキサンニトリルの製造
200ml 耐圧容器に、前記(a)で得た粗D,L-6,6-エチレンジオキシ-2- ヒドロキシヘキサンニトリルを含む反応混合液76g を入れ、一旦−20℃に冷却し、液体アンモニア39.1g (2.3mol)を加え、その後40℃の水浴中で2時間振盪し、さらに室温で15時間静置した。反応系内をアンモニアのパージにより常圧に戻した後、反応混合物を200ml ナス型フラスコに移し、過剰のアンモニアをエバポレーターで除去し、粗D,L-2-アミノ-6,6 -エチレンジオキシヘキサンニトリル40.0g を褐色油状物として得た。
【0023】
(c)D,L-アリシンアミドエチレンアセタール(D,L-2-アミノ-6,6- エチレンジオキシヘキサンアミド)の製造
撹拌機、温度計およびpH電極を付した300ml 四ツ口フラスコに、蒸留水40g およびアセトン40gを入れ、5 ℃に冷却し、前記(b)で得た粗D,L-2-アミノ-6,6 -エチレンジオキシヘキサンニトリル39.0gを加え、さらに40%水酸化ナトリウム水溶液2.5g(水酸化ナトリウムとして1.0g、0.025mol)を、氷冷下、撹拌しながら添加した。40%水酸化ナトリウム水溶液添加後、反応液の温度は15℃に上昇した。反応混合物を10時間撹拌した後、18% 塩酸5.0g(塩酸として0.9g、0.025mol)を加え、エバポレーターで水およびアセトンを留去した。残渣45.7g に炭酸ジメチル100ml を加えて溶解し、不溶の固体を濾過して除いた。濾液の溶媒をエバポレーターで濃縮し、5℃に冷却して、析出したD,L-アリシンアミドエチレンアセタールの白色結晶を濾取した。得られた結晶の乾燥後の重量は35.0g (0.19mol )、5,5-エチレンジオキシペンタナールに対する収率は81モル% であった。
【0024】
次に、得られたD,L-アリシンアミドエチレンアセタールの融点、元素分析値、IRスペクトル、1H-NMRスペクトル、および13C-NMR スペクトルを示す。
1)融点:65-67 ℃
2)元素分析値:C8H16N2O3 (MW188.23)
理論値(%):C51.05 H8.57 N14.88
実測値(%):C50.82 H8.78 N14.91
3)IRスペクトル(νmax 値、cm-1):(KBr )
3352, 3296, 2953, 1674, 1606, 1416, 1142, 939
4)1H-NMRスペクトル(δ値、ppm ):(CDCl3 、内部標準:TMS )
1.63(m,6H), 1.84(m,2H), 3.34(m,1H), 3.89(m,4H), 4.86(m,1H), 6.29(b r,1H), 7.08(br,1H)
5)13C-NMR スペクトル(δ値、ppm ):(CDCl3 、内部標準:TMS )
20.3, 33.6, 35.0, 55.1, 64.8, 104.2, 178.4
【0025】
実施例2 D,L- アリシンアミドアセタールから L- アリシンアセタールの製造(1)
a)L-アリシンエチレンアセタールの製造
次の組成の培地を調製し、この培地200ml を1L三角フラスコに入れ、滅菌後、ミコプラーナ ブラタ (Mycoplana bullata) NCIB 9440を接種し、30℃で48時間振盪培養を行った。
培地組成 (pH7.0 )
グルコース 10 g
ポリペプトン 5 g
酵母エキス 5 g
KH2PO4 2 g
MgSO4 ・7H2O 0.4 g
FeSO4 ・7H2O 0.01 g
MnCl2 ・4H2O 0.01 g
D,L-バリンアミド 5 g
蒸留水 1 L
培養終了時、培養液の菌体濃度は5g/kg であった。この培養液100gから、遠心分離により、乾燥菌体0.5gに相当する生菌体を得た。この生菌体を100ml の蒸留水に懸濁し、1L三角フラスコに入れ、ここにD,L-2-アミノ-6,6- エチレンジオキシヘキサンアミド5.0g(27mmol)を加えて、40℃で5 時間振とうして加水分解反応を行った。反応液のpHは9.4 であった。
【0026】
反応後、反応液から遠心分離によって除菌し、エバポレーターで減圧にて水を除去した後、2-プロパノール100ml を加えて未反応のD-2-アミノ-6,6- エチレンジオキシヘキサンアミドを溶解し、不溶のL-アリシンエチレンアセタールを白色固体として濾取した。得られた固体の乾燥後の重量は2.4g(13mmol)、D,L-2-アミノ-6,6- エチレンジオキシヘキサンアミドに対する収率は48モル% 、L-2-アミノ-6,6- エチレンジオキシヘキサンアミドに対する収率は95モル% であった。また、生成したL-アリシンエチレンアセタールを光学分割用キラルカラム(CHIRALPAK WH、ダイセル化学工業製)を用いた液体クロマトグラフィーにより分析した結果、光学純度は99%e.e. 以上であった。
次に、得られたL-アリシンエチレンアセタールの融点、元素分析値、IRスペクトル、1H-NMRスペクトル、および13C-NMR スペクトルを示す。
1)融点:217-218 ℃
2)元素分析値:C8H15NO4(MW 189.21 )
理論値(%):C50.78 H7.99 N7.40
実測値(%):C50.65 H8.07 N7.22
3)IRスペクトル(νmax 値、cm-1):(KBr )
2950, 2873, 1581, 1514, 1444, 1408, 1145, 1061, 945
4)1H-NMRスペクトル(δ値、ppm ):(D2O 、内部標準:TMS-PS)
1.3-2.1(m,6H), 3.69(t,J=5.9Hz,1H), 3.92(m,4H), 4.90(t,J=4.5Hz,1H)
5)13C-NMR スペクトル(δ値、ppm ):(D2O 、内部標準:TMS-PS)
21.7, 32.9, 34.8, 57.3, 67.2, 106.3, 177.0
【0027】
(b)D-2-アミノ-6,6- エチレンジオキシヘキサンアミドの回収
L-アリシンエチレンアセタールの固体を濾取した後の濾液の溶媒を、エバポレーターで減圧下留去し、ジイソプロピルエーテル50mlを加えて不溶の固体を濾取し、未反応のD-2-アミノ-6,6- エチレンジオキシヘキサンアミドを白色固体として回収した。乾燥後の重量は2.2g(12mmol)、D,L-2-アミノ-6,6- エチレンジオキシヘキサンアミドに対する回収率は44モル% 、D-2-アミノ-6,6- エチレンジオキシヘキサンアミドに対する回収率は88モル% であった。また、回収したD-2-アミノ-6, 6-エチレンジオキシヘキサンアミドを光学分割用キラルカラム(CROWNPAK CR 、ダイセル化学工業製)を用いた液体クロマトグラフィーにより分析した結果、光学純度は99%e.e. 以上であった。
(c)D-2-アミノ-6,6- エチレンジオキシヘキサンアミドのラセミ化
D-2-アミノ-6,6- エチレンジオキシヘキサンアミド1.0g(5.3mmol )を10mlの2-メチル-1- プロパノールに溶解し、ここに水酸化ナトリウム0.02g (0.5mmol )を加えて110 ℃で30分間撹拌した。
反応終了後、反応液を冷却し、ジイソプロピルエーテルを加え、析出した固体を濾取し、D,L-2-アミノ-6,6- エチレンジオキシヘキサンアミドを得た。乾燥後の固体の重量は0.98g (5.2mmol )であり、回収率は98モル% であった。
この固体を光学分割用キラルカラム(CROWNPAK CR )を用いた液体クロマトグラフィーにより分析した結果、D-2-アミノ-6,6- エチレンジオキシヘキサンアミドのラセミ化率は98% であった。なお、ラセミ化率は次のようにして算出した。
ラセミ化率(%) = L- アミド/(L-アミド+D- アミド) ×2 ×100
ラセミ化率100%とは、L-アリシンアミドアセタールとD-アリシンアミドアセタールとが互いに等量であることを示す。
【0028】
実施例3 D,L- アリシンアミドアセタールから L- アリシンアセタールの製造(2)
実施例2の培養液20g から遠心分離によって得た乾燥菌体0.1gに相当する生菌体を20mlの蒸留水に懸濁し、100ml 三角フラスコに入れ、ここに実施例2でラセミ化回収したD,L-2-アミノ-6,6- エチレンジオキシヘキサンアミド0.5g(2.7mmol) および新たなD,L-2-アミノ-6,6- エチレンジオキシヘキサンアミド0.5g(2.7mmol) を加えて、40℃で5 時間振とうして加水分解反応を行った。反応液のpHは9.5 であった。
反応後、実施例2と同様に後処理を行い、L-アリシンエチレンアセタールを白色固体として得た。得られた固体の乾燥後の重量は0.47g(2.5mmol)、新たに加えたD,L-2-アミノ-6,6- エチレンジオキシヘキサンアミドに対する収率は93モル% であった。また、生成したL-アリシンエチレンアセタールを光学分割用キラルカラム(CHIRALPAK WH)を用いた液体クロマトグラフィーにより分析した結果、光学純度は99%e.e. 以上であった。
【0029】
【発明の効果】
医薬品原料として有用なL-アリシンアセタールを、少ない工程数で安価に製造することができる。

Claims (5)

  1. 一般式(I)で示されるD,L-アリシンアミドアセタールに、L-アリシンアミドアセタールを立体選択的に加水分解する活性を有するミコプラーナ ブラタの菌体及び/又は菌体処理物を作用させて、一般式(II)で示されるL-アリシンアセタールを製造することを特徴とするL-アリシンアセタールの製造法、
    Figure 0004492765
    Figure 0004492765
    ただし、式中のR1、R2は互いに同一または相異する低級アルキル基、またはR1とR2を合わせて [CH2]n で表されるアルキレン基であり、nは2〜3である。
  2. D,L-アリシンアミドアセタールに前記ミコプラーナ ブラタの菌体及び/又は菌体処理物を作用させた後、未反応のD-アリシンアミドアセタールを強塩基性物質の存在下で加熱することによりラセミ化してD,L-アリシンアミドアセタールを得、再度原料として使用する請求項1記載の方法。
  3. 一般式(I)で示されるD,L-アリシンアミドアセタールが、一般式 (III)で示されるグルタルアルデヒドモノアセタールと、青酸若しくは青酸塩及びアンモニア若しくはアンモニウム塩とから誘導されるアミノニトリルをアルカリで部分加水分解して得られたものである請求項1又は2記載の方法、
    Figure 0004492765
    ただし、式中のR1、R2は互いに同一または相異する低級アルキル基、またはR1とR2を合わせて [CH2]n で表されるアルキレン基であり、nは2〜3である。
  4. 一般式(I)で示される新規なD,L-アリシンアミドアセタール。
  5. 一般式 (III)で示されるグルタルアルデヒドモノアセタールと、
    青酸若しくは青酸塩及びアンモニア若しくはアンモニウム塩とから誘導されるアミノニトリルをアルカリで部分加水分解することを特徴とするD,L-アリシンアミドアセタールの製造法。
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