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JP4361254B2 - 眼鏡レンズの設計方法、眼鏡レンズの製造方法及び計算機プログラム - Google Patents

眼鏡レンズの設計方法、眼鏡レンズの製造方法及び計算機プログラム Download PDF

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JP4361254B2
JP4361254B2 JP2002294811A JP2002294811A JP4361254B2 JP 4361254 B2 JP4361254 B2 JP 4361254B2 JP 2002294811 A JP2002294811 A JP 2002294811A JP 2002294811 A JP2002294811 A JP 2002294811A JP 4361254 B2 JP4361254 B2 JP 4361254B2
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spectacle lens
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Nikon Essilor Co Ltd
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
眼鏡レンズの設計方法、眼鏡レンズの製造方法及び眼鏡レンズの設計に用いる計算機プログラムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、眼鏡レンズを透過した光線の非点収差が最小になるようなレンズの頂点曲率と、レンズの光軸上における頂点屈折力(以下度数と呼ぶ)の関係は、例えばチェルニングの楕円等から得ることができる。
【0003】
即ち、レンズの両屈折面の曲率を、このチェルニングの楕円によって得られる最適な組み合わせに合わせることによって、レンズの周辺部における非点収差の発生を押さえられることは良く知られており、このチェルニングの楕円から大きく外れた両屈折面の曲率の組み合わせを選択すると、光学性能が著しく低下する。
【0004】
ところが、このチェルニングの楕円によって得られる最適な両屈折面の曲率の組み合わせを用いた場合、レンズ面の屈折面の曲率が大きくなり、レンズの厚さも増大する傾向がある。
【0005】
従って近年の眼鏡レンズでは、レンズの薄肉化や外観上の問題、更には製造上の都合等から、殆どの場合、上記最適な曲率の組み合わせによって得られる曲率よりも小さい曲率が、物体側のレンズ面(以下外面と呼ぶ)の屈折面曲率(以下ベースカーブと呼ぶ)として選択される。
【0006】
即ち、光学性能上及び外観上などの問題を考慮した場合に、眼鏡レンズのベースカーブの実用的な範囲は眼鏡レンズの度数に応じて特定の範囲内に限定される。また、屈折面が球面だけで構成される場合では、光学性能を目的の範囲内に保つことと、外観をよくすることを同時に解決する事ができないため、現在では主にレンズのどちらか一方の屈折面を非球面化することによって、ベースカーブの曲率を小さくしてレンズを薄く保ったまま、レンズ周辺部における非点収差や度数誤差を補正したレンズが主流となっている。
【0007】
通常、装用者の視線に相当する眼鏡レンズ内を通る任意の主光線において、最大主屈折力をDmax、最小主屈折力をDminとすると、前記主光線の非点収差は、
|Dmax−Dmin|
で表され、前記主光線の平均屈折力は、
(Dmax+Dmin)/2
で表される。これらは、眼鏡レンズの設計時に重要なファクタとして扱われている。従って従来の眼鏡レンズでは、これら非点収差や平均屈折力、最大主屈折力及び最小主屈折力をパラメータとして用いて、収差補正が行われてきた。
【0008】
ところで、主光線と直交する平面上の任意の経線方向の屈折力は、最大及び最小を有し、これら最大値、最小値を与える経線の方向は、互いに直交することは良く知られている。そこで本明細書においては、前記任意の主光線における屈折力の最大値を最大主屈折力、屈折力の最小値を最小主屈折力とし、前記最大主屈折力及び最小主屈折力を総じて主屈折力と呼ぶ。
【0009】
更に前記最大主屈折力を含む主経線の方向を最大主経方向、前記最小主屈折力を含む主経線の方向を最小主経方向とし、最大主経方向及び最小主経方向を総じて主方向と呼ぶ。尚、本発明において屈折力を表す値の単位は、特に記載がない場合は全てディオプターによって表される。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従来の眼鏡レンズでは、製造上の簡略化とコストダウンの必要性から、予めレンズの一方の屈折面が加工された半製品レンズ(以下セミフィニッシュレンズと呼ぶ)が使用されている。予め加工されていない方の屈折面を処方面と呼ぶ。即ち、セミフィニッシュレンズの処方面を、眼鏡装用者の処方に合わせて球面又はトーリック面に加工することによって、一定の度数範囲で同じセミフィニッシュレンズを共用することができるため、加工コストや在庫の減少などのコストダウンに大きな役割を果たしている。
【0011】
通常はセミフィニッシュレンズの予め加工済みの屈折面形状は、球面、あるいは光軸に対して回転軸対称な非球面形状となっており、この球面又は非球面形状は、共用する度数範囲の中のある特定の度数に対して、収差が最小となるような球面又は非球面形状に設定される。この設定度数をこのセミフィニッシュレンズの基準度数とすると、基準度数付近の度数範囲におけるレンズの光学性能は良好であるが、基準度数から外れた度数範囲では特にレンズ周辺部の光学性能の劣化が避けられない。また例え基準度数であっても、乱視矯正が必要な場合にレンズ周辺部における光学性能が劣化することは避けられない欠点があった。
【0012】
ところが最近になって、非球面を自由に加工する技術の発達から、従来は球面或いはトーリック面であった処方面を、非球面化して収差補正を行う事も可能となり、装用者の使用状況を考慮して処方面を非球面化する眼鏡レンズが製品化されるようになった。
【0013】
しかしながら、特に乱視矯正を伴う眼鏡レンズの場合、処方による乱視度数がレンズの非点収差に含まれてしまううえ、視線の移動に伴い変化する眼の乱視軸の主方向を考慮しなければならない。
【0014】
装用者毎に異なる使用状況や仕様に応じて、各装用者に最適な眼鏡レンズを提供するためには、従来から眼鏡レンズの設計に使用していたメリジオナル像面やサジタル像面、非点収差及び平均屈折力による光学性能の評価だけでは不充分である。各装用者毎に最適な眼鏡レンズを提供するためには、従来の光学性能の評価に加えて、眼の乱視軸とレンズの主屈折力の主方向の捻れ等を考慮し、複数の光学性能が同時に改善される必要がある。しかし、複数の光学性能の中には所謂トレードオフ関係となるものがあるため、収差を全て最小値とすることは困難である。従って、複数の光学性能のバランスを取り、全体として最適な光学性能となるような屈折面の設計が必要とされる。
【0015】
複数の光学性能のバランスをとるためには、従来は設計者が各性能を考慮し判断していた。しかし、各装用者毎に光学性能の最適化を行い眼鏡レンズを設計するためには、このような判断もコンピュータにより自動化させる必要が生じている。
【0016】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、眼鏡装用者の処方などの個別情報に伴う様々な仕様において、処方面を良好な光学性能を得ることができるように設計する方法、及び、この設計方法を用いた眼鏡レンズの製造方法を提供することを課題とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための第1の手段は、装用状態における物体側の屈折面と眼側の屈折面の一組の屈折面のうち、少なくとも一面は予め形状が成形された球面又は非球面形状を有する屈折面であり、少なくとも一方の屈折面が非球面形状を有する眼鏡レンズを設計する方法であって、前記一組の屈折面のうち、予め形状が形成されていない屈折面の形状が、装用者の屈折矯正に必要な屈折力及び又は乱視矯正に必要な屈折力の少なくとも一方に合わせて、ドンデルス・リスティングの法則に従って、眼鏡レンズの収差を補正するような非球面形状となるように設計を行うことを特徴とする眼鏡レンズの設計方法である。
【0018】
ドンデルス・リスティングの法則とは眼の回転運動と眼位に関する法則で、視線の移動に伴う眼の回転運動が、回旋点を通り第1眼位における視線に垂直な回転軸を中心に行う回転運動の連続によって表され、この回転によって達する任意の眼位が、視線の移動経路に寄らず一義的に決定されることを示すものである。また、この時の眼球の回転軸は第1眼位における視線と直交する平面上に存在し、この平面をリスティング平面と呼ばれる。
【0019】
図1はドンデルス・リスティング回転によって生じる眼位の位置と、そのときの角膜の水平子午線及び垂直子午線の位置を、リスティング平面に投射したものを示す図である。図1において、1は眼球の旋回点、2は第1眼位、3は第2眼位、4は第3眼位を示し、各眼位において太線で示されるものが角膜の水平子午線及び垂直子午線(主経線)である。
【0020】
図1から分かるように、特に第3眼位4における眼の角膜の水平子午線及び垂直子午線の方向は、第1眼位1における水平子午線及び垂直子午線の方向と一致しない。従って、装用者の処方や使用状況に合った条件において、第1眼位や第2眼位だけでなく、第3眼位における眼鏡レンズの収差補正を行うためには、ドンデルス・リスティングの法則に従って、任意の眼位での眼の乱視軸を考慮しつつ処方面を非球面化することが必要である。尚、ドンデルス・リスティングの法則に関しての詳細は、医学書院刊「眼の生理学」(萩原朗氏編集)P302〜P304を参照。
【0021】
本手段においては、このようなドンデルス・リスティングの法則に従って、予め形状が形成されていない屈折面の形状が、装用者の屈折矯正に必要な屈折力及び又は乱視矯正に必要な屈折力の少なくとも一方に合わせて、眼鏡レンズの収差を補正するような非球面形状となるように設計を行っているので、特に第3眼位における眼鏡レンズの収差補正が適切に行われ、全体として良好な光学性能を有する眼鏡レンズを設計することができる。
【0022】
前記課題を解決するための第2の手段は、前記第1の手段であって、前記眼鏡レンズ面内を透過する任意の主光線において、装用者が屈折矯正に必要な屈折力の任意の経線を基準経線として、基準経線から任意の角度αの経線方向における、装用者の眼の屈折矯正に必要な経線方向屈折力をE(α)、レンズの経線方向屈折力をD(α)としたとき、下記の(1)式で表されるΔPallを最小又は所定値以下とするように、予め形状が形成されていない屈折面の形状を決定することを特徴とするものである。
【0023】
【数3】
Figure 0004361254
【0024】
ただし、前記ΔP(α)は、
ΔP(α)=D(α)-E(α)
で表される関数であり、前記a及びbは、nを自然数としたとき、b-a=nπを満足する値である。
【0025】
視線に直交する平面上にある任意の経線方向の屈折力を考えるために、視線に相当する光軸方向にx軸、眼の乱視軸に関して、最大主経方向にy軸、最小主経方向にz軸をとった、x−y−z座標系上で考察を行う。ここでEmaxを眼の屈折矯正に必要な最大屈折力とし、Eminを眼の屈折矯正に必要な最小屈折力とおく。 通常、前記Emax及びEminは屈折矯正及び乱視矯正に必要な屈折力を表す。例えば球面度数S=-2.00D、乱視度数C=-3.00Dである処方の眼の場合、上記Emax及びEminは、Emax=-2.00(ディオプタ−)、Emin=-5.00(ディオプタ−)と表される。
【0026】
以下、本発明の基準経線をz軸にとった場合について、図2を用いて説明を行う。z軸を基準としてx軸周りの角度αにおける経線方向の眼の屈折矯正に必要な屈折力(以下、屈折異常度数と言う)をE(α)とおくと、
E(α)=Emax・sin2α+Emin・cos2α
と表すことができる。
【0027】
眼に入射する光線の最大主経線と、前記眼の最小主経線のなす角度をθとおき、z軸を基準として、x軸周りの角度αにおける経線方向のレンズの屈折力をD(α)とおくと、
D(α)=Dmax・cos2(α−θ)+Dmin・sin2(α―θ)
と表すことができる。ただし、このときのα及びθは、x軸の正方向に向かって反時計回りを正とする。
【0028】
ここで本手段においては、z軸を基準としてx軸周りの角度αの経線方向における眼の屈折異常度数E(α)とレンズの屈折力D(α)の差の絶対値をΔP(α)としたとき、a≦α≦bの範囲での前記ΔP(α)の総和を総残存屈折力誤差と呼び、光学性能の最適化に用いる収差として扱う。
【0029】
すなわち前記総残存屈折力誤差をΔPallとすると前記ΔPallは、下記の条件式で表される。
【0030】
【数4】
Figure 0004361254
【0031】
ただし、前記ΔP(α)は、
【0032】
【数5】
Figure 0004361254
【0033】
で表される関数であり、前記a及びbは、nを自然数としたとき、b-a=nπを満足する値である。
【0034】
例えば、ΔP(α)が区間[a,c]でD(α)≧E(α)、区間[c,d]でD(α)<E(α)、区間[d,b]でD(α)≧E(α)で有るとすると、前記ΔPallは、
【0035】
【数6】
Figure 0004361254
【0036】
と表すことができる。
【0037】
前記総残存屈折力誤差ΔPallとは装用者が眼鏡レンズを装用した際の、所定の主光線における眼の任意の経線方向の前記ΔP(α)の総和であり、装用者の眼が感じる残存非点収差や残存平均屈折力誤差を含んだ、新しい収差量である。
【0038】
従って手段においては、前記総残存屈折力誤差ΔPallを光学性能の最適化の際に用いる、新しい収差の評価方法として導入し、この値をゼロあるいは小さく抑えることによって、ドンデルス・リスティングの法則を考慮しつつ、バランスの取れた光学性能の最適化が可能となる。すなわち、眼の屈折矯正及び乱視矯正に必要な屈折力と、更にそれぞれの主方向の捻れの改善を同時に行うことができる。本手段においては、更には光学性能の最適化計算の自動化が容易となる。
【0039】
このことは、従来の非点収差や平均屈折力による収差の自動最適化計算を行う方法では困難であった。眼の乱視度数を考慮した評価を行うために、残存非点収差や残存平均屈折力誤差を用いることは望ましい。しかしながら、前記残存非点収差や残存平均屈折力誤差を同時に良好に補正することが不可能な条件も多く、この場合には、どちらかの収差を補正するともう一方の収差が悪くなる場合が生じる。
【0040】
このような場合に最適な光学性能を得るためには、設計者が双方の収差の許容値を考慮して収差のバランスを取る必要がある。しかしながら条件によって様々な値を取りうる残存非点収差と残存平均屈折力誤差を、光学性能全体のバランスを考慮して補正することは難しい。特に最適化計算の途中に設計者等の人の判断を必要とせずに、受注毎に光学性能の最適化計算を自動的に行うようなシステムにおいては、常に安定した結果が出るように自動的な判断を行うことが困難であった。しかし、本発明における前記総残存屈折力誤差を判定値として用いることによって、人の判断を必要としない自動最適計算システムにおいても、より容易にバランスの取れた良好な光学性能を得ることが可能となる。
【0041】
なお、ΔPallを最小にする手段としては、一般的なDLS法のようなシミュレーション手段の他、他の適当な最適化方法を使用することができる。このことは、後記第2の手段、第3の手段において、所定の値を最小化又は所定値以下とする場合においても同じである。
【0042】
なお、本手段においては、前記ΔPallは積分の形で表記したが、計算の簡略化を考慮して前記ΔPallを下記のように離散的な値の和として扱うことも可能であり、この方法が本手段の均等の範囲に入ることは言うまでもない。
【0043】
即ちb-a=nπの区間を分割してその分割数をiとし、β=(b-a)/iと置くとΔPallは
【0044】
【数7】
Figure 0004361254
【0045】
と表すことができる。
このとき、分割数iをうまく選択することによって、得られる値の計算誤差を実用範囲内に納め積分形式と同等の結果を得つつ、計算の簡略化を行うことができる。このような方法を初め、実質的に積分を行うのと等価な数値計算を行う方法が本手段の均等の範囲に含まれることは言うまでもない。
【0046】
前記課題を解決するための第3の手段は、前記第1の手段であって、前記眼鏡レンズ面内を透過する任意の主光線において、装用者が屈折矯正に必要な屈折力の任意の経線を基準経線として、基準経線から任意の角度αの経線方向における、装用者の眼の屈折矯正に必要な経線方向屈折力をE(α)、レンズの経線方向屈折力をD(α)としたとき、
下記の(2)式で表されるΔPavを最小又は所定値以下とするように、予め形状が形成されていない屈折面の形状を決定することを特徴とする眼鏡レンズの設計方法である。
【0047】
【数8】
Figure 0004361254
【0048】
ただし、前記ΔP(α)は、総残存屈折力誤差をΔPallを|b−a|で割った値を平均残存屈折率誤差と呼ぶことにし、これをΔPavで表している。
ΔP(α)=D(α)-E(α)
で表される関数であり、前記a及びbは、nを自然数としたとき、b-a=nπを満足する値である。
【0049】
本手段においては、前記第2の手段における総残存屈折力誤差をΔPallを|b−a|で割った値を平均残存屈折率誤差と呼ぶことにし、これをΔPavで表している。そして、このΔPavを最小にするように、予め形状が形成されていない屈折面の形状を決定するようにしている。
【0050】
aとbは計算に先立って決められた値であるので、|b−a|は定数である。よって、本手段は、基本的に前記第2の手段と等価なものであり、全く同じ作用効果を奏する。
【0051】
なお、本手段においては、前記ΔPavは積分の形で表記したが、計算の簡略化を考慮して前記ΔPavを下記のように離散的な値の和として扱うことも可能であり、この方法が本手段の均等の範囲に入ることは言うまでもない。
【0052】
即ちb-a=nπの区間を分割してその分割数をiとし、β=(b-a)/iと置くとΔPavは
【0053】
【数9】
Figure 0004361254
【0054】
と表すことができる。
【0055】
このとき、分割数iをうまく選択することによって、得られる値の計算誤差を実用範囲内に納め積分形式と同等の結果を得つつ、計算の簡略化を行うことができる。このような方法を初め、実質的に積分を行うのと等価な数値計算を行う方法が本手段の均等の範囲に含まれることは言うまでもない。
【0056】
前記課題を解決するための第4の手段は、前記第1の手段であって、前記眼鏡レンズ面内を透過する任意の主光線において、装用者が屈折矯正に必要な屈折力の任意の経線を基準経線として、基準経線から任意の角度αの経線方向における、装用者の眼の屈折矯正に必要な経線方向屈折力をE(α)、レンズの経線方向屈折力をD(α)としたとき、a≦α≦bまたはb≦α≦aの範囲における、
ΔP’(α)=D(α)−E(α)
の最大値をΔPmax、最小値をΔPminとしたときに、下記の条件式を満足するΔAS及びΔMPのうち少なくとも一方を最小又は所定値以下とするように、予め形状が形成されていない屈折面の形状を決定することを特徴とするものである。
ただし、ΔAS=|ΔPmax−ΔPmin| …(3)
ΔMP=(ΔPmax+ΔPmin)/2 …(4)
であり、前記a及びbは、nをゼロを除く任意の整数としたとき、b−a=nπを満足する値である。
【0057】
本手段においては、図2におけるz軸を基準としてx軸周りの角度αの経線方向における眼の屈折異常度数とレンズの屈折力の差を残存屈折力誤差ΔP’(α)とする。ここで前記ΔP’(α)はΔP’(α)=D(α)-E(α)と表され、前記a≦α≦b又はb≦α≦aの範囲におけるΔP’(α)の最大値をΔPmax、最小値をΔPminとおき、このΔPmaxとΔPminが、装用者がこの眼鏡レンズを装用したときに感じる屈折力誤差の最大値及び最小値と考える。
【0058】
従って、前記ΔPmaxを最大残存屈折力誤差、ΔPminを最小残存屈折力誤差とし、前記ΔPmax及びΔPminから下記の条件式を得る。
前記眼鏡レンズの残存非点収差ΔASとすると、前記ΔASは
ΔAS=|ΔPmax−ΔPmin| …(3)
と表され、前記眼鏡レンズの残存平均屈折力誤差ΔMPをとすると、前記ΔMPは
ΔMP=(ΔPmax+ΔPmin)/2 …(4)
と表される。
【0059】
本手段では、前記残存非点収差ΔAS及び及び残存平均屈折力誤差ΔMPのうちの少なくともどちらか一方を、光学性能の最適化に用いることによって、従来の収差評価では困難であったドンデルス・リスティングの法則を考慮し、眼の乱視成分を除いた非点収差及び平均屈折力の評価を行うことが可能となる。
【0060】
理想的には、前記(3)式と(4)式の値を共に最小にすることが望ましいが、レンズの条件によっては、これが実現できないことがある。その場合には、どちらかを最小にするように予め形状が形成されていない屈折面の形状を決定する。勿論、どちらかの範囲が許容範囲に入るという条件下で、他の一方を最小にするようにしてもよい。
【0061】
前記課題を解決するための第5の手段は、装用状態における物体側の屈折面と眼側の屈折面の一組の屈折面のうち、少なくとも一面は予め形状が成形された球面又は非球面形状を有する屈折面であるレンズにおいて、前記第1の手段から第4の手段のいずれかに記載の眼鏡レンズの設計方法に従って、予め形状が形成されていない屈折面の形状を設計し、この設計データに従って、予め形状が形成されていない屈折面を加工する工程を有することを特徴とする眼鏡レンズの製造方法である。
【0062】
本手段によれば、眼鏡装用者の処方などの個別情報に伴う様々な仕様において、良好な光学性能の眼鏡レンズを製造方法することができる。
【0063】
前記課題を解決するための第6の手段は、眼鏡レンズの屈折面の非球面形状を決定する計算機プログラムであって、前記眼鏡レンズ内を通過する任意の主光線毎に、装用者が屈折矯正に必要な屈折力の任意の経線を基準経線としたときの、基準経線から任意の角度αの経線方向における装用者の眼の屈折矯正に必要な経線方向屈折力E(α)の計算を実行し、前記眼鏡レンズ内を通過する任意の主光線毎に、レンズの経線方向屈折力D(α)の計算を実行し、前記E(α)及び前記D(α)をもとに、ドンデルス・リスティングの法則に従って眼鏡レンズの収差が最小値となるように、屈折面の非球面形状を決定することを特徴とする計算機プログラムである。
【0064】
本手段によれば、いろいろな眼位における収差補正を適切に行った眼鏡レンズを、計算機により設計することが可能になる。
【0065】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図と表を用いて説明する。
表1は、レンズの外径が70mm、球面屈折力が-2.00D、乱視方向屈折力が=-4.00Dであり乱視度数-2.00Dで、外面である第1面が球面、内面である第2面がトーリック面である従来の乱視矯正を目的とした眼鏡レンズのレンズデータである。
【0066】
【表1】
Figure 0004361254
【0067】
図3は表1における従来例の乱視レンズにおける平均残存屈折力誤差ΔPavの分布図である。図における小円の中心部が、主光線がレンズ面内の各点を通る位置を示し、小円の大きさが、それぞれの主光線における平均残存屈折力誤差ΔPavの大きさを表している。図3から分かるように、レンズの中央から周辺部に掛けて、平均残存屈折力誤差ΔPavの値が大きくなっている。
【0068】
図4は表1における従来例の乱視レンズにおける残存平均屈折力誤差ΔMPの分布図である。図における小円の中心部が、主光線がレンズ面内の各点を通る位置を示し、小円の大きさが、それぞれの主光線における残存平均屈折力誤差ΔMPの大きさを表している。また小円が実線の場合、ΔMPは正の値を意味し、小円が点線の場合はΔMPは負の値を意味する。図4から分かるように、レンズの中央から周辺部に掛けて、残存平均屈折力誤差ΔMPの値が大きくなっている。
【0069】
図5は表1における従来例の乱視レンズにおける残存非点収差ΔASの分布図である。図における小円の中心部が、主光線がレンズ面内の各点を通る位置を示し、小円の大きさが、それぞれの主光線における残存非点収差ΔASの大きさを表している。また小円内の直線は、眼の最小主経方向に対する、最大残存屈折力誤差ΔPmaxの経線方向を示している。図5から分かるように、レンズの中央から周辺部に掛けて、残存非点収差ΔASの値が著しく大きくなっている。
【0070】
表2は、レンズの外径が70mm、球面屈折力が-2.00D、乱視方向屈折力が=-4.00Dであり乱視度数-2.00Dで、外面である第1面が球面、内面である第2面が非球面トーリック面である本発明の実施例のレンズデータである。
【0071】
本発明の実施例は、平均残存屈折力誤差ΔPavを重視してこれが最小となるようにし、さらに残存非点収差ΔAS、残存平均屈折力誤差ΔMPがなるべく小さくなるように、これらを最適化のパラメータに用いて、自動最適化計算を行った結果である。
【0072】
すなわち、平均残存屈折力誤差ΔPavを最小化し、そのとき、残存非点収差ΔAS、残存平均屈折力誤差ΔMPが許容範囲に入っていればそれで解が得られたとし、残存非点収差ΔAS、残存平均屈折力誤差ΔMPが許容範囲に入っていなければ、平均残存屈折力誤差ΔPavを最小値より少し大きくなるようにして、最終的に残存非点収差ΔAS、残存平均屈折力誤差ΔMPが許容範囲に入るようにした。また、計算に際し、a=0、b=πとした。
また、本実施例で第2面に用いた非球面部分の表記式は下記の通りである。
【0073】
【数10】
Figure 0004361254
【0074】
従って本発明の実施例における第2面は、上記非球面表記式に表2に記載の非球面係数の値を用いた非球面形状を、基礎となるトーリック面に対して付加した形状となる。
【0075】
【表2】
Figure 0004361254
【0076】
図6は表2における本発明の実施例の乱視レンズの平均残存屈折力誤差ΔPavの分布図である。表記方法は図3と同じである。図から分かるように、レンズ全面に渡って、平均残存屈折力誤差ΔPavの値が小さく抑えられている。
【0077】
図7は表2における本発明の実施例の乱視レンズにおける残存平均屈折力誤差ΔMPの分布図である。表記方法は図4と同じである。図から分かるように、レンズ全面に渡って、残存平均屈折力誤差ΔMPの値が小さく抑えられている。
【0078】
図8は表2における本発明の実施例の乱視レンズにおける残存非点収差ΔASの分布図である。表記方法は図5と同じである。図から分かるように、レンズ全面に亘って、残存非点収差ΔASの値が小さく抑えられている。
【0079】
なお、本来ならば乱視度数軸は装用者の処方によって様々な値を取りうるが、以上の説明においては、表記の簡単化のためレンズ垂直方向に球面度数の主経線方向を、レンズ水平方向に乱視度数の主経線方向をとっている。しかし、本発明による効果はこれら乱視度数軸の向きに関わらず有効であることは明らかである。
【0080】
上記の実施例では、第1面に球面を、第2面には上記非球面式を用いた形状となっているが、本発明はこのような実施例に限定されず、第1面及び又は第2面の形状は、例えば一般的な回転対称非球面やスプライン等、様々な形状に対して有効であることは明らかである。
【0081】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、眼鏡装用者の処方などの個別情報に伴う様々な仕様において、処方面を良好な光学性能を得ることができるように設計する方法、及び、この設計方法を用いた眼鏡レンズの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ドンデルス・リスティング回転によって生じる眼位の位置と、そのときの角膜の水平子午線及び垂直子午線の位置を、リスティング平面に投射したものを示す図である。
【図2】視線に直交する平面上にある任意の経線方向の屈折力を説明するための図である。
【図3】従来例の乱視レンズにおける平均残存屈折力誤差ΔPavの分布図である。
【図4】従来例の乱視レンズにおける残存平均屈折力誤差ΔMPの分布図である。
【図5】従来例の乱視レンズにおける残存非点収差ΔASの分布図である。
【図6】本発明の実施例の乱視レンズの平均残存屈折力誤差ΔPavの分布図である。
【図7】本発明の実施例の乱視レンズにおける残存平均屈折力誤差ΔMPの分布図である。
【図8】本発明の実施例の乱視レンズにおける残存非点収差ΔASの分布図である。
【符号の説明】
1:眼球の旋回点
2:第1眼位
3:第2眼位
4:第3眼位

Claims (7)

  1. 装用状態における物体側の屈折面と眼側の屈折面の一組の屈折面のうち、一方の屈折面は、予め形状が成形された球面又は非球面形状を有し、他方の屈折面は、収差を補正するような非球面形状を有する眼鏡レンズを設計する方法であって、
    前記眼鏡レンズ面内を透過する任意の主光線において、
    装用者が屈折矯正に必要な屈折力の任意の経線を基準経線として、基準経線から任意の角度αの経線方向における、装用者の眼の屈折矯正に必要な経線方向屈折力をE(α)、レンズの経線方向屈折力をD(α)としたとき、
    下記の(1)式で表されるΔPallを最小又は所定値以下とするように、予め形状が形成されていない前記他方の屈折面の前記非球面形状を決定することを特徴とする眼鏡レンズの設計方法。
    Figure 0004361254
    ただし、前記ΔP(α)は、
    ΔP(α)=D(α)−E(α)
    で表される関数であり、前記a及びbは、nを自然数としたとき、b−a=nπを満足する値である。
  2. 装用状態における物体側の屈折面と眼側の屈折面の一組の屈折面のうち、一方の屈折面は、予め形状が成形された球面又は非球面形状を有し、他方の屈折面は、収差を補正するような非球面形状を有する眼鏡レンズを設計する方法であって、
    前記眼鏡レンズ面内を透過する任意の主光線において、装用者が屈折矯正に必要な屈折力の任意の経線を基準経線として、基準経線から任意の角度αの経線方向における、装用者の眼の屈折矯正に必要な経線方向屈折力をE(α)、レンズの経線方向屈折力をD(α)としたとき、
    下記の(2)式で表されるΔPavを最小又は所定値以下とするように、予め形状が形成されていない前記他方の屈折面の前記非球面形状を決定することを特徴とする眼鏡レンズの設計方法。
    Figure 0004361254
    ただし、前記ΔP(α)は、
    ΔP(α)=D(α)−E(α)
    で表される関数であり、前記a及びbは、nを自然数としたとき、b−a=nπを満足する値である。
  3. 装用状態における物体側の屈折面と眼側の屈折面の一組の屈折面のうち、一方の屈折面は、予め形状が成形された球面又は非球面形状を有し、他方の屈折面は、収差を補正するような非球面形状を有する眼鏡レンズを設計する方法であって、
    前記眼鏡レンズ面内を透過する任意の主光線において、装用者が屈折矯正に必要な屈折力の任意の経線を基準経線として、基準経線から任意の角度αの経線方向における、装用者の眼の屈折矯正に必要な経線方向屈折力をE(α)、レンズの経線方向屈折力をD(α)としたとき、a≦α≦bまたはb≦α≦aの範囲における、
    ΔP’(α)=D(α)−E(α)
    の最大値をΔPmax、最小値をΔPminとしたときに、下記の条件式を満足するΔAS及びΔMPのうち少なくとも一方を最小又は所定値以下とするように、予め形状が形成されていない前記他方の屈折面の前記非球面形状を決定することを特徴とする眼鏡レンズの設計方法。
    ただし、ΔAS=|ΔPmax−ΔPmin| …(3)
    ΔMP=(ΔPmax+ΔPmin)/2 …(4)
    であり、前記a及びbは、nをゼロを除く任意の整数としたとき、b−a=nπを満足する値である。
  4. 装用状態における物体側の屈折面と眼側の屈折面の一組の屈折面のうち、一方の屈折面は、予め形状が成形された球面又は非球面形状を有するレンズにおいて、請求項1から請求項のうちいずれかに記載の眼鏡レンズの設計方法に従って、予め形状が形成されていない他方の屈折面の形状を設計し、この設計データに従って、予め形状が形成されていない他方の屈折面を加工する工程を有することを特徴とする眼鏡レンズの製造方法。
  5. 眼鏡レンズの屈折面の非球面形状を決定する計算機プログラムであって、前記眼鏡レンズ内を通過する任意の主光線毎に、装用者が屈折矯正に必要な屈折力の任意の経線を基準経線としたときの、基準経線から任意の角度αの経線方向における装用者の眼の屈折矯正に必要な経線方向屈折力E(α)の計算を実行し、前記眼鏡レンズ内を通過する任意の主光線毎に、レンズの経線方向屈折力D(α)の計算を実行し、前記E(α)及び前記D(α)を用いて下記の(1)式の計算を実行し、ΔPallを最小又は所定値以下とするように、前記屈折面の非球面形状を決定することを特徴とする計算機プログラム。
    Figure 0004361254
    ただし、前記ΔP(α)は、
    ΔP(α)=D(α)−E(α)
    で表される関数であり、前記a及びbは、nを自然数としたとき、b−a=nπを満足する値である。
  6. 眼鏡レンズの屈折面の非球面形状を決定する計算機プログラムであって、前記眼鏡レンズ内を通過する任意の主光線毎に、装用者が屈折矯正に必要な屈折力の任意の経線を基準経線としたときの、基準経線から任意の角度αの経線方向における装用者の眼の屈折矯正に必要な経線方向屈折力E(α)の計算を実行し、前記眼鏡レンズ内を通過する任意の主光線毎に、レンズの経線方向屈折力D(α)の計算を実行し、前記E(α)及び前記D(α)を用いて下記の(2)式の計算を実行し、ΔPavを最小又は所定値以下とするように、前記屈折面の非球面形状を決定することを特徴とする計算機プログラム。
    Figure 0004361254
    ただし、前記ΔP(α)は、
    ΔP(α)=D(α)−E(α)
    で表される関数であり、前記a及びbは、nを自然数としたとき、b−a=nπを満足する値である。
  7. 眼鏡レンズの屈折面の非球面形状を決定する計算機プログラムであって、前記眼鏡レンズ内を通過する任意の主光線毎に、装用者が屈折矯正に必要な屈折力の任意の経線を基準経線としたときの、基準経線から任意の角度αの経線方向における装用者の眼の屈折矯正に必要な経線方向屈折力E(α)の計算を実行し、前記眼鏡レンズ内を通過する任意の主光線毎に、レンズの経線方向屈折力D(α)の計算を実行し、a≦α≦bまたはb≦α≦aの範囲における、
    ΔP’(α)=D(α)−E(α)
    の最大値をΔPmax、最小値をΔPminとしたときに、下記の条件式(3)及び(4)を計算し、ΔAS及びΔMPのうち少なくとも一方を最小又は所定値以下とするように、予め形状が形成されていない前記屈折面の非球面形状を決定することを特徴とする計算機プログラム。
    ただし、ΔAS=|ΔPmax−ΔPmin| …(3)
    ΔMP=(ΔPmax+ΔPmin)/2 …(4)
    であり、前記a及びbは、nをゼロを除く任意の整数としたとき、b−a=nπを満足する値である。
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