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JP2022076342A - 抗菌・抗ウイルス剤組成物、物品、及び物品の製造方法 - Google Patents

抗菌・抗ウイルス剤組成物、物品、及び物品の製造方法 Download PDF

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JP2022076342A
JP2022076342A JP2020186709A JP2020186709A JP2022076342A JP 2022076342 A JP2022076342 A JP 2022076342A JP 2020186709 A JP2020186709 A JP 2020186709A JP 2020186709 A JP2020186709 A JP 2020186709A JP 2022076342 A JP2022076342 A JP 2022076342A
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antibacterial
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mass
antiviral agent
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JP2020186709A
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英司 寺西
Eiji Teranishi
泰士郎 堀口
Taishiro Horiguchi
好揮 柘植
Yoshiki Tsuge
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Nicca Chemical Co Ltd
Original Assignee
Nicca Chemical Co Ltd
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Abstract

【課題】物品に対して耐久抗菌性及び耐久抗ウイルス性と撥水性とを付与可能な組成物を開示する。【解決手段】抗菌・抗ウイルス剤組成物であって、撥水剤と抗菌・抗ウイルス剤とを含有し、前記抗菌・抗ウイルス剤が、第4級アンモニウムカチオン基を有する、抗菌・抗ウイルス剤組成物。【選択図】なし

Description

本願は抗菌・抗ウイルス剤組成物、物品、及び物品の製造方法を開示する。
特許文献1、2には、第4級アンモニウムカチオン基を有する抗菌防臭剤を繊維に付与した後、高温でキュアリングを行う方法が開示されている。特許文献3には、合成繊維に対して、第4級アンモニウム塩とメラミン樹脂とを含む処理剤を付与して抗菌防臭性繊維を製造する方法が開示されている。特許文献4には、硫酸塩界面活性剤の存在下において第4級アンモニウム塩によって合成繊維を処理することで、合成繊維に抗菌性を付与する方法が開示されている。特許文献5には、メトキシシラン系第4級アンモニウム塩を含む抗ウイルス剤と、アクリル酸/アクリル酸エステル共重合ポリマーと、低級アルコールと、水とを含む組成物によって布帛を処理することで、抗菌・抗ウイルス性布帛を製造する方法が開示されている。特許文献6には、少なくとも表面にカルボキシル基を有する樹脂成分を含む物品に対して、エトキシシラン系第4級アンモニウム塩を含む抗菌剤を付与することで、当該物品に抗菌性を付与する方法が開示されている。
特開平1-085367号公報 特開平4-034075号公報 特開平4-241171号公報 特開昭62-177284号公報 特開2019-077638号公報 国際公開第2013/047642号
従来技術においては抗菌・抗ウイルス性物品を水等で洗浄した場合に当該物品から抗菌・抗ウイルス剤が脱落し易い。すなわち、物品の耐久抗菌性及び耐久抗ウイルス性について改善の余地がある。特に、耐久抗ウイルス性については十分な検討がなされていない。また、従来技術においては抗菌・抗ウイルス性物品の撥水性について十分な検討がなされていない。物品に対して耐久抗菌性と耐久抗ウイルス性と撥水性とを付与可能な新たな組成物が必要である。
本願は上記課題を解決するための手段の一つとして、
抗菌・抗ウイルス剤組成物であって、撥水剤と抗菌・抗ウイルス剤とを含有し、
前記抗菌・抗ウイルス剤が、第4級アンモニウムカチオン基を有する、
抗菌・抗ウイルス剤組成物
を開示する。
本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物において、
前記抗菌・抗ウイルス剤が、下記一般式(1)で示される化合物、下記一般式(2)で示される化合物及び下記一般式(3)で示される化合物のうちの少なくとも一つの化合物であってもよい。
Figure 2022076342000001
式(1)において、
は炭素数10~22のアルキル基であり、
はメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基であり、
はメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基であり、
は炭素数2~4のアルキレン基であり、
はメチル基又はエチル基であり、
はメチル基又はエチル基であり、
はメチル基又はエチル基であり、
はハロゲンである。
Figure 2022076342000002
式(2)において、
は炭素数10~20のアルキル基又はアリール基であり、
はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又は(AO)Hで表される基であり、AOは炭素数2~4のアルキレンオキサイドであり、pは1~10の整数であり、
10はメチル基、エチル基、ベンジル基又は炭素数2~4のヒドロキシアルキル基であり、
nは1又は2であり、
mは1又は2であり、
n+mは3であり、
lは1又は2であり、
はモノアルキルリン酸、ジアルキルリン酸、ハロゲン、メチル硫酸、エチル硫酸又は芳香族アニオンである。
Figure 2022076342000003
式(3)において、
21は炭素数1~4のアルキレン基であり、
22はメチル基又はエチル基であり、
23はメチル基又はエチル基であり、
24は炭素数1~4のアルキレン基であり、
25はメチル基又はエチル基であり、
26はメチル基又はエチル基であり、
27は炭素数1~4のアルキレン基であり、
はハロゲンであり、
kは任意の自然数である。
本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物において、
前記撥水剤が、アルキル基の炭素数が12~24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を含む重合体、シリコーンレジン、シリコーンオイル及びフッ素化合物から選ばれる少なくとも1種であってもよい。
本願は上記課題を解決するための手段の一つとして、
上記本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物が付着している、物品
を開示する。
本願は上記課題を解決するための手段の一つとして、
抗菌・抗ウイルス性を付与する対象物に、上記本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物を付着させて、抗菌・抗ウイルス性を有する物品を得ること、
を含む、物品の製造方法
を開示する。
本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物は、物品に対して優れた耐久抗菌性及び耐久抗ウイルス性と撥水性とを付与可能である。
1.抗菌・抗ウイルス剤組成物
本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物は、撥水剤と抗菌・抗ウイルス剤とを含有する。ここで、前記抗菌・抗ウイルス剤は、第4級アンモニウムカチオン基を有する。
1.1 撥水剤
撥水剤としては、抗菌・抗ウイルス剤組成物において、所定の抗菌・抗ウイルス剤とともに共存して撥水性を発現可能なものであればよく、非フッ素化合物及びフッ素化合物のいずれを採用してもよい。撥水剤は、アクリル系撥水剤であってもよいし、シリコーン系撥水剤であってもよいし、フッ素化合物系撥水剤であってもよく、例えば、アルキル基の炭素数が12~24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を含む重合体、シリコーンレジン、シリコーンオイル及びフッ素化合物から選ばれる少なくとも1種であってもよい。撥水剤は、1種のみが単独で用いられてもよく、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。以下、撥水剤の一例について説明する。
1.1.1 アクリル系撥水剤
アクリル系撥水剤は、下記一般式(A-1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)(以下、「(A)成分」ともいう。)に由来する構成単位を含有するポリマー(以下、「非フッ素系アクリル系ポリマー」という場合がある。)を含むものであってもよい。
Figure 2022076342000004
式(A-1)において、R11は水素又はメチル基であってよく、R12は置換基を有していてもよい炭素数12以上の1価の炭化水素基であってよい。
ここで、「(メタ)アクリル酸エステル」とは「アクリル酸エステル」又はそれに対応する「メタクリル酸エステル」を意味し、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリルアミド」等においても同義である。
上記一般式(A-1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)は、置換基を有していてもよい炭素数が12以上の1価の炭化水素基を有してもよい。この炭化水素基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、飽和炭化水素基であっても不飽和炭化水素基であってもよく、脂環式又は芳香族の環状を有していてもよい。これらの中でも、アクリル系撥水剤が、アルキル基の炭素数が12~24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を含む重合体である場合、より優れた撥水性を発揮する。或いは、炭化水素が直鎖状であるもの、特に直鎖状のアルキル基であるものも、より優れた撥水性を発揮する。炭化水素基が置換基を有する場合、その置換基としては、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基、ブロックドイソシアネート基及び(メタ)アクリロイルオキシ基等のうちの1種以上が挙げられる。上記一般式(A-1)において、R12は無置換の炭化水素基であってもよい。
上記炭化水素基の炭素数が12~24である場合、以下の効果も期待できる。すなわち、非フッ素系アクリル系ポリマーを繊維製品等に付着させた場合、優れた撥水性が得られ易くなる。また、非フッ素系アクリル系ポリマーを繊維製品等に付着させた場合、繊維製品の風合が柔らかく良好になる傾向にある。上記炭化水素基の炭素数は12~22であってもよい。炭素数がこの範囲である場合は、撥水性と風合が特に優れる。炭化水素基として特に好ましいのは、炭素数が12~24のアルキル基、特に炭素数が12~22のアルキル基、中でも、炭素数が12~18の直鎖状のアルキル基である。
上記(A)成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ヘンエイコシル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸セリル、(メタ)アクリル酸メリシルが挙げられる。
上記(A)成分は、架橋剤と反応可能なヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基及びイソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有していてもよい。この場合、得られる繊維製品の耐久撥水性を更に向上させることができる。イソシアネート基は、ブロック化剤で保護されたブロックドイソシアネート基を形成していてもよい。また、上記(A)成分がアミノ基を有する場合、得られる繊維製品の風合を更に向上させることができる。
上記(A)成分は、1分子内に重合性不飽和基を1つ有する単官能の(メタ)アクリル酸エステル単量体であってもよい。
上記(A)成分は、1種が単独で用いられてよく、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
上記(A)成分は、耐久撥水性の点で、アクリル酸エステル単量体(a1)とメタアクリル酸エステル単量体(a2)とを併用することが好ましい。配合する(a1)成分の質量と(a2)成分の質量との比(a1)/(a2)は、30/70~90/10であってもよく、40/60~85/15であってもよく、50/50~80/20であってもよい。(a1)/(a2)が上記範囲内である場合は、より優れた耐久撥水性が発揮される。
非フッ素系アクリル系ポリマーは、上記(A)成分に由来する構成単位と、塩化ビニル及び塩化ビニリデンのうち少なくともいずれか1種の単量体(E)(以下、「(E)成分」ともいう。)に由来する構成単位とを有していてもよい。例えば、(E)成分が塩化ビニルである場合、撥水性と剥離強度に一層優れる。
非フッ素系アクリル系ポリマーにおける(A)成分に由来する構成単位と(E)成分に由来する構成単位との割合は、特に限定されるものではない。非フッ素系ポリマーの乳化安定性等の観点からは、(A)成分の質量と(E)成分の質量との比(A)/(E)が、40/60~90/10であってもよく、50/50~85/15であってもよく、60/40~80/20であってもよい。(A)/(E)が大き過ぎると剥離強度が低下する傾向にある。(A)/(E)が小さ過ぎると乳化安定性が低下する傾向にある。
また、(A)成分の質量と(E)成分の質量との合計質量は、非フッ素系アクリル系ポリマーを構成する単量体成分の全量に対して、80~100質量%であってもよく、85~99質量%であってもよく、90~98質量%であってもよい。
非フッ素系アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、例えば、10万以上であってもよく、50万以上であってもよい。この場合、一層優れた撥水性が発揮される。非フッ素系アクリル系ポリマーの重量平均分子量の上限は、特に限定されるものではなく、例えば、500万以下であってもよい。
非フッ素系アクリル系ポリマーの105℃における溶融粘度は1000Pa・s以下であってもよいし、500Pa・s以下であってもよい。非フッ素系アクリル系ポリマーの溶融粘度が高すぎると、非フッ素系アクリル系ポリマーを乳化又は分散して組成物とした場合、非フッ素系アクリル系ポリマーが析出したり沈降したりすることがあり、組成物の貯蔵安定性が低下する傾向にある。
「105℃における溶融粘度」とは、高架式フローテスター(例えば、島津製作所製CFT-500)を用い、ダイ(長さ10mm、直径1mm)を取り付けたシリンダー内に非フッ素系ポリマーを1g入れ、105℃で6分間保持し、プランジャーにより100kg・f/cmの荷重を加えて測定したときの粘度をいう。
非フッ素系アクリル系ポリマーの重量平均分子量が等しい場合、非フッ素系(メタ)アクリル酸エステル単量体の配合割合が高い程、付着させた物品の撥水性がより高くなる傾向にある。また、共重合可能な非フッ素系単量体を共重合させることにより、付着させた物品の耐久撥水性や風合等を向上させることができる。
非フッ素系アクリル系ポリマーは、(A)成分に加えて、又は、(A)成分と(E)成分とに加えて、(B1)HLBが7~18である下記一般式(I-1)で表される化合物、(B2)HLBが7~18である下記一般式(II-1)で表される化合物、及び(B3)HLBが7~18である、ヒドロキシル基及び重合性不飽和基を有する油脂に炭素数2~4のアルキレンオキサイドを付加した化合物のうちから選ばれる少なくとも1種の反応性乳化剤(B)(以下、「(B)成分」ともいう。)を単量体成分として含んでいてもよい。
Figure 2022076342000005

式(I-1)において、R13は水素又はメチル基であってよく、Xは炭素数1~6の直鎖もしくは分岐のアルキレン基であってよく、Y1は炭素数2~4のアルキレンオキシ基を含む2価の基であってよい。
Figure 2022076342000006
式(II-1)において、R14は重合性不飽和基を有する炭素数13~17の1価の不飽和炭化水素基であってよく、Yは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を含む2価の基であってよい。
「反応性乳化剤」とは、ラジカル反応性を有する乳化分散剤、すなわち、分子内に1つ以上の重合性不飽和基を有する界面活性剤のことであり、(メタ)アクリル酸エステルのような単量体と共重合させることができるものである。
「HLB」とは、エチレンオキシ基を親水基、それ以外を全て親油基とみなし、グリフィン法により算出したHLB値のことである。
上記(B1)~(B3)の化合物のHLBは、7~18であってもよく、非フッ素系アクリル系ポリマーの乳化重合又は分散重合時及び重合後の組成物中での乳化安定性(以降、単に乳化安定性という)の点で、9~15であってもよい。さらには、組成物の貯蔵安定性の点で上記範囲内の異なるHLBを有する2種以上の反応性乳化剤(B)を併用してもよい。
上記一般式(I-1)で表される反応性乳化剤(B1)において、R13がメチル基である場合、(A)成分との共重合性がより良好なものとなる。Xは炭素数1~6の直鎖もしくは分岐のアルキレン基であってよく、乳化安定性の点で炭素数2~3の直鎖アルキレン基であってよい。Yは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を含む2価の基であってよい。Yにおけるアルキレンオキシ基の種類、組み合わせ及び付加数については、上記HLBの範囲内になるように適宜選択してもよい。また、アルキレンオキシ基が2種以上の場合、それらはブロック付加構造又はランダム付加構造を有してもよい。
上記一般式(I-1)で表される化合物としては、下記一般式(I-2)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2022076342000007
式(I-2)において、R13は水素又はメチル基であってよく、Xは炭素数1~6の直鎖もしくは分岐のアルキレン基であってよく、AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基であってよく、mは上記HLBの範囲内になるように適宜選択されてよく、具体的には、1~80の整数であってよく、mが2以上のときm個のAOは互いに同一であっても異なっていてもよい。
上記一般式(I-2)で表される化合物において、AOの種類及び組み合わせ、並びにmの数については、上記HLBの範囲内になるように適宜選択してもよい。非フッ素系アクリル系ポリマーの乳化安定性の観点からは、mは1~80の整数であってもよく、1~60の整数であってもよい。AOが2種以上の場合、それらはブロック付加構造を有していてもよいし、ランダム付加構造を有していてもよい。
上記一般式(I-2)で表される反応性乳化剤(B1)は、従来公知の方法で得ることができる。また、市販品より入手することもでき、例えば、花王株式会社製の「ラテムルPD-420」、「ラテムルPD-430」、「ラテムルPD-450」等が挙げられる。
上記一般式(II-1)で表される反応性乳化剤(B2)において、R14は重合性不飽和基を有する炭素数13~17の1価の不飽和炭化水素基であってよく、具体的には、トリデセニル基、トリデカジエニル基、テトラデセニル基、テトラジエニル基、ペンタデセニル基、ペンタデカジエニル基、ペンタデカトリエニル基、ヘプタデセニル基、ヘプタデカジエニル基、ヘプタデカトリエニル基等が挙げられる。非フッ素系アクリル系ポリマーの乳化安定性の観点からは、R14は炭素数14~16の1価の不飽和炭化水素基であってもよい。Yは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を含む2価の基であってよい。Yにおけるアルキレンオキシ基の種類、組み合わせ及び付加数については、上記HLBの範囲内になるように適宜選択してもよい。また、アルキレンオキシ基が2種以上の場合、それらはブロック付加構造を有していてもよく、ランダム付加構造を有していてもよい。非フッ素系アクリル系ポリマーの乳化安定性の観点からは、アルキレンオキシ基はエチレンオキシ基であってもよい。
上記一般式(II-1)で表される化合物としては、下記一般式(II-2)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2022076342000008
式(II-2)において、R14は重合性不飽和基を有する炭素数13~17の1価の不飽和炭化水素基であってよく、AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基であってよく、nは上記HLBの範囲内になるように適宜選択されてもよく、具体的には、1~50の整数であってもよく、nが2以上のときn個のAOは互いに同一であっても異なっていてもよい。
上記一般式(II-2)において、AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基であってよい。非フッ素系アクリル系ポリマーの乳化安定性の観点からは、AOの種類及び組み合わせ、並びにnの数については、上記HLBの範囲内になるように適宜選択されてよい。また、非フッ素系アクリル系ポリマーの乳化安定性の観点からは、AOはエチレンオキシ基であってもよく、nは1~50の整数であってもよく、5~20の整数であってもよく、8~14の整数であってもよい。AOが2種以上の場合、それらはブロック付加構造を有していてもよく、ランダム付加構造を有していてもよい。
上記一般式(II-2)で表される反応性乳化剤(B2)は、不飽和炭化水素基を有するフェノールにアルキレンオキサイドを付加することにより合成することができる。例えば、苛性ソーダ、苛性カリウム等のアルカリ触媒を用い、加圧下、120~170℃にて、所定量のアルキレンオキサイドを付加することにより合成することができる。
不飽和炭化水素基を有するフェノールには、工業的に製造された純品または混合物のほか、植物等から抽出・精製された純品又は混合物として存在するものも含まれる。例えば、カシューナッツの殻等から抽出され、カルダノールと総称される、3-[8(Z),11(Z),14-ペンタデカトリエニル]フェノール、3-[8(Z),11(Z)-ペンタデカジエニル]フェノール、3-[8(Z)-ペンタデセニル]フェノール、3-[11(Z)-ペンタデセニル]フェノール等が挙げられる。
反応性乳化剤(B3)は、HLBが7~18である、ヒドロキシル基及び重合性不飽和基を有する油脂に炭素数2~4のアルキレンオキサイドを付加した化合物であってよい。ヒドロキシル基及び重合性不飽和基を有する油脂としては、ヒドロキシ不飽和脂肪酸(パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸等)を含んでいてもよい脂肪酸のモノ又はジグリセライド、少なくとも1種のヒドロキシ不飽和脂肪酸(リシノール酸、リシノエライジン酸、2-ヒドロキシテトラコセン酸等)を含む脂肪酸のトリグリセライドを挙げることができる。非フッ素系アクリル系ポリマーの乳化安定性の観点からは、少なくとも1種のヒドロキシ不飽和脂肪酸を含む脂肪酸のトリグリセライドのアルキレンオキサイド付加物であってもよく、ヒマシ油(リシノール酸を含む脂肪酸のトリグリセライド)の炭素数2~4のアルキレンオキサイド付加物であってもよく、ヒマシ油のエチレンオキサイド付加物であってもよい。さらに、アルキレンオキサイドの付加モル数は、上記HLBの範囲内になるように適宜選択することができ、非フッ素系アクリル系ポリマーの乳化安定性の観点からは、20~50モルであってもよく、25~45モルであってもよい。また、アルキレンオキサイドが2種以上の場合、それらはブロック付加構造を有していてもよく、ランダム付加構造を有していてもよい。
反応性乳化剤(B3)は、ヒドロキシル基及び重合性不飽和基を有する油脂にアルキレンオキサイドを付加することにより合成することができる。例えば、リシノール酸を含む脂肪酸のトリグリセライド、すなわちヒマシ油に苛性ソーダ、苛性カリウム等のアルカリ触媒を用い、加圧下、120~170℃にて、所定量のアルキレンオキサイドを付加することにより合成することができる。
非フッ素系アクリル系ポリマーにおける上記(B)成分の単量体の構成割合は、撥水性や乳化安定性を向上できる観点から、非フッ素系アクリル系ポリマーを構成する単量体成分の全量に対して、0.5~20質量%であってもよく、1~15質量%であってもよく、3~10質量%であってもよい。
非フッ素系アクリル系ポリマーは、物品の耐久撥水性を向上できる観点から、(A)成分及び(E)成分に加えて、下記(C-1)、(C-2)、(C-3)及び(C-4)からなる群より選ばれる少なくとも1種の第2の(メタ)アクリル酸エステル単量体(C)(以下、「C成分」ともいう。)を単量体成分として含有していてもよい。
Figure 2022076342000009
式(C-1)において、R15は水素又はメチル基であってよく、R16はヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基及び(メタ)アクリロイルオキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する炭素数1~11の1価の鎖状炭化水素基であってよい。ただし、分子内における(メタ)アクリロイルオキシ基の数は2以下である。
Figure 2022076342000010
式(C-2)において、R17は水素又はメチル基であってよく、R18は置換基を有していてもよい炭素数1~11の1価の環状炭化水素基であってよい。
Figure 2022076342000011
式(C-3)において、R19は無置換の炭素数1~4の1価の鎖状炭化水素基であってよい。
Figure 2022076342000012
式(C-4)において、R20は水素又はメチル基であってよく、pは2以上の整数であってよく、Sは(p+1)価の有機基であってよく、Tは重合性不飽和基を有する1価の有機基であってよい
上記(C-1)の単量体は、エステル部分にヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基及び(メタ)アクリロイルオキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する炭素数1~11の1価の鎖状炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体であってよい。架橋剤と反応可能な点から、上記炭素数1~11の1価の鎖状炭化水素基は、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基及びイソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有していてもよい。これらの架橋剤と反応可能な基を有する(C-1)の単量体を含有する非フッ素系アクリル系ポリマーを、架橋剤とともに物品に処理した場合に、得られる物品の風合を維持したまま、耐久撥水性を向上することができる。イソシアネート基は、ブロック化剤で保護されたブロックドイソシアネート基であってもよい。
上記鎖状炭化水素基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、飽和炭化水素基であっても不飽和炭化水素基であってもよい。また、鎖状炭化水素基は、上記官能基の他に置換基を更に有していてもよい。中でも、直鎖状である場合、及び/又は、飽和炭化水素基である場合、耐久撥水性が一層向上する。
(C-1)の単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、1,1-ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等が挙げられる。これら単量体は、1種が単独で用いられてもよく、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。中でも(C-1)の単量体が(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、1,1-ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートである場合に、耐久撥水性が一層向上する。さらに得られる物品の風合を向上させる観点から、(C-1)の単量体は(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルであってもよい。
非フッ素系アクリル系ポリマーにおける上記(C-1)の単量体の構成割合は、撥水性及び風合の観点から、非フッ素系アクリル系ポリマーを構成する単量体成分の全量に対して、1~30質量%であってもよく、3~25質量%であってもよく、5~20質量%であってもよい。
上記(C-2)の単量体は、エステル部分に炭素数1~11の1価の環状炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体であってよい。環状炭化水素基としては、イソボルニル基、シクロヘキシル基、ジシクロペンタニル基等が挙げられる。これら環状炭化水素基はアルキル基等の置換基を有していてもよい。ただし、置換基が炭化水素基の場合、置換基及び環状炭化水素基の炭素数の合計が11以下となる炭化水素基が選ばれる。また、耐久撥水性を向上させる観点から、これら環状炭化水素基は、エステル結合に直接結合していてもよい。環状炭化水素基は、脂環式であっても芳香族であってもよく、脂環式の場合、飽和炭化水素基であっても不飽和炭化水素基であってもよい。具体的な単量体としては、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等が挙げられる。これら単量体は、1種が単独で用いられてもよく、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。(C-2)の単量体が(メタ)アクリル酸イソボルニル又はメタクリル酸シクロヘキシルである場合、特にメタクリル酸イソボルニルである場合に、耐久撥水性がさらに向上する。
非フッ素系アクリル系ポリマーにおける上記(C-2)の単量体の構成割合は、得られる繊維製品の撥水性及び風合の観点で、非フッ素系ポリマーを構成する単量体成分の全量に対して、1~30質量%であってもよく、3~25質量%であってもよく、5~20質量%であってもよい。
上記(C-3)の単量体は、エステル部分のエステル結合に、無置換の炭素数1~4の1価の鎖状炭化水素基が直接結合したメタクリル酸エステル単量体であってよい。炭素数1~4の鎖状炭化水素基としては、炭素数1~2の直鎖炭化水素基、及び、炭素数3~4の分岐炭化水素基が挙げられる。炭素数1~4の鎖状炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。(C-3)の単量体の具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチルが挙げられる。これら単量体は、1種が単独で用いられてもよく、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。(C-3)の単量体がメタクリル酸メチル、メタクリル酸イソプロピル又はメタクリル酸t-ブチルである場合、特にメタクリル酸メチルである場合に、耐久撥水性がさらに向上する。
非フッ素系アクリル系ポリマーにおける上記(C-3)の単量体の構成割合は、撥水性及び風合の観点から、非フッ素系アクリル系ポリマーを構成する単量体成分の全量に対して、1~30質量%であってもよく、3~25質量%であってもよく、5~20質量%であってもよい。
上記(C-4)の単量体は、1分子内に3以上の重合性不飽和基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体であってよい。当該単量体は、上記一般式(C-4)におけるTが(メタ)アクリロイルオキシ基である、1分子内に3以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能の(メタ)アクリル酸エステル単量体であってもよい。式(C-4)において、p個のTは同一であっても異なっていてもよい。(C-4)の単量体の具体例としては、例えば、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート等が挙げられる。これら単量体は、1種が単独で用いられてもよく、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。(C-4)の単量体が、テトラメチロールメタンテトラアクリレート又はエトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレートである場合に、耐久撥水性がさらに向上する。
非フッ素系アクリル系ポリマーにおける上記(C-4)の単量体の構成割合は、撥水性及び風合の観点から、非フッ素系アクリル系ポリマーを構成する単量体成分の全量に対して、1~30質量%であってもよく、3~25質量%であってもよく、5~20質量%であってもよい。
非フッ素系アクリル系ポリマーにおける上記の(C)成分の単量体の合計構成割合は、撥水性及び風合の観点から、非フッ素系アクリル系ポリマーを構成する単量体成分の全量に対して、1~30質量%であってもよく、3~25質量%であってもよく、5~20質量%であってもよい。
非フッ素系アクリル系ポリマーは、(A)成分、(E)成分、(B)成分及び(C)成分の他に、これらと共重合可能な単官能の単量体(D)に由来する構成単位を有していてもよい。
上記(D)の単量体としては、例えば、(メタ)アクリロイルモルホリン、(A)成分及び(C)成分以外の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、フマル酸エステル、マレイン酸エステル、フマル酸、マレイン酸、(メタ)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、エチレン、スチレン等のフッ素を含まない(E) 成分以外のビニル系単量体等が挙げられる。(A)成分及び(C) 成分以外の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、炭化水素基に、ビニル基、ヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基及びイソシアネート基、ブロックドイソシアネート基等の置換基を有していてもよく、第4級アンモニウム基等の架橋剤と反応可能な基以外の置換基を有していてもよく、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、又はウレタン結合等を有していてもよい。(A)成分及び(C)成分以外の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
非フッ素系アクリル系ポリマーにおける上記(D)の単量体の構成割合は、撥水性及び風合の観点から、非フッ素系アクリル系ポリマーを構成する単量体成分の全量に対して、10質量%以下であってもよい。
非フッ素系アクリル系ポリマーは、耐久撥水性の観点から、架橋剤と反応可能なヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基及びイソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有していてもよい。イソシアネート基は、ブロック化剤で保護されたブロックドイソシアネート基を形成していてもよい。また、非フッ素系アクリル系ポリマーがアミノ基を有する場合、物品の風合が向上し易い。
非フッ素系アクリル系ポリマーは、ラジカル重合法により製造することができる。得られる撥水剤の性能及び環境の面から乳化重合法又は分散重合法で重合されてもよい。
例えば、媒体中で、上記(E)成分の存在下、上記一般式(A-1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)を乳化重合又は分散重合させることにより非フッ素系アクリル系ポリマーを得ることができる。より具体的には、例えば、媒体中に(A)成分、(E)成分、及び必要に応じて上記(B)成分、上記(C)成分及び上記(D) 成分、並びに乳化補助剤又は分散補助剤を加え、この混合液を乳化又は分散させて、乳化物又は分散物を得てもよい。得られた乳化物又は分散物に、重合開始剤を加えることにより、重合反応が開始され、単量体及び反応性乳化剤を重合させることができる。なお、上述した混合液を乳化又は分散させる手段としては、ホモミキサー、高圧乳化機又は超音波等が挙げられる。
上記乳化補助剤又は分散補助剤等(以下、「乳化補助剤等」ともいう)としては、上記反応性乳化剤(B)以外のノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、及び両性界面活性剤から選ばれる1種以上を使用することができる。乳化補助剤等の含有量は、全単量体100質量部に対して、0.5~30質量部であってもよく、1~20質量部であってもよく、1~10質量部であってもよい。上記乳化補助剤等の含有量が少な過ぎると混合液の分散安定性が低下する傾向にあり、乳化補助剤等の含有量が多過ぎると、非フッ素系アクリル系ポリマーの撥水性が低下する傾向にある。
乳化重合又は分散重合の媒体としては、水が好ましく、必要に応じて水と有機溶剤とを混合してもよい。このときの有機溶剤としては、特に制限はないが、例えば、メタノールやエタノールなどのアルコール類、酢酸エチルなどのエステル類、アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテルなどのエーテル類等、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類が挙げられる。水と有機溶剤の比率は特に限定されるものではない。
上記重合開始剤としては、アゾ系、過酸化物系、又はレドックス系等の公知の重合開始剤を適宜使用できる。重合開始剤の含有量は、全単量体100質量部に対して、0.01~2質量部であってもよい。重合開始剤の含有量が上記範囲であると、重量平均分子量が10万以上である非フッ素系アクリル系ポリマーを効率よく製造することができる。
また、重合反応において、分子量調整を目的として、ドデシルメルカプタン、t-ブチルアルコール等の連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤の含有量は、全単量体100質量部に対して0.3質量部以下であってもよく、0.1質量部以下であってもよい。連鎖移動剤の含有量が多過ぎると、非フッ素系アクリル系ポリマーの分子量の低下を招く。
なお、分子量調整のためには重合禁止剤を使用してもよい。重合禁止剤の添加により所望の重量平均分子量を有する非フッ素系アクリル系ポリマーを容易に得ることができる。
重合反応の温度は、例えば、20℃~150℃であってもよい。温度が低過ぎると、重合が不十分になる傾向にあり、温度が高過ぎる、反応熱の制御が困難になる場合がある。
重合反応後に得られる非フッ素系アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、上述した重合開始剤、連鎖移動剤、重合禁止剤の含有量の増減により調整することができ、105℃における溶融粘度は、多官能単量体の含有量、及び、重合開始剤の含有量の増減により調整することができる。例えば、105℃における溶融粘度を低下させる場合は、重合可能な官能基を2つ以上有する単量体の含有量を減らしたり、重合開始剤の含有量を増加させたりすればよい。
乳化重合又は分散重合により得られるポリマー乳化液又は分散液における非フッ素系アクリル系ポリマーの含有量は、組成物の貯蔵安定性及びハンドリング性の観点から、乳化液又は分散液の全量に対して10~50質量%であってもよく、20~40質量%であってもよい。
1.1.2 シリコーン系撥水剤
シリコーン系撥水剤としては、シリコーンレジン、シリコーンオイル等が採用され得る。シリコーンレジンとは、構成成分としてMQ、MDQ、MT、MTQ、MDT又はMDTQを含み、25℃にて固形状であり、三次元構造を有するオルガノポリシロキサンである。ここで、M、D、T及びQは、それぞれ(R’’)3SiO0.5単位、(R’’)2SiO単位、R’’SiO1.5単位及びSiO2単位を表す。R’’は、炭素数1~10の1価の脂肪族炭化水素基、又は、炭素数6~15の1価の芳香族炭化水素基であってよい。
シリコーンレジンは、一般に、MQレジン、MTレジン又はMDTレジンとして知られており、MDQ、MTQ又はMDTQと示される部分を有することもある。
シリコーンレジンは、これを適当な溶媒に溶解させた溶液としても入手することができる。溶媒としては、例えば、比較的低分子量のメチルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、n-ヘキサン、イソプロピルアルコール、塩化メチレン、1,1,1-トリクロロエタン及びこれらの溶媒の混合物等が挙げられる。
シリコーンレジンの溶液としては、例えば、信越化学工業(株)より市販されているKF7312J(トリメチルシリル基含有ポリシロキサン:デカメチルシクロペンタシロキサン=50:50混合物)、KF7312F(トリメチルシリル基含有ポリシロキサン:オクタメチルシクロテトラシロキサン)、KF9021L(トリメチルシリル基含有ポリシロキサン:低粘度メチルポリシロキサン=50:50混合物)、KF7312L(トリメチルシリル基含有ポリシロキサン:低粘度メチルポリシロキサン=50:50混合物)等が挙げられる。
シリコーンレジン単独としては、例えば、東レダウコーニング(株)より市販されているMQ-1600 solid Resin(トリメチルシリル基含有ポリシロキサン)、MQ-1640 Flake Resin(トリメチルシリル基含有ポリシロキサン、ポリプロピルシルセスキオキサン)などが挙げられる。上記市販品は、トリメチルシリル基含有ポリシロキサンを含み、MQ、MDQ、MT、MTQ、MDT又はMDTQを含むものである。
シリコーンオイルとは、直鎖状のオルガノポリシロキサンであり、オルガノポリシロキサンの側鎖及び末端の少なくともいずれかに有機基を有するものであってもよい。このようなシリコーンオイルとしては、疎水化シリコーンオイル、官能基化シリコーンオイル等を使用することができ、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルなどのストレートシリコーンオイル;アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アラルキル変性シリコーンオイル、アルキルアラルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、高級脂肪族アミド変性シリコーンオイルなどの変性シリコーンオイルなどを挙げることができる。
このようなシリコーン系撥水剤の中でも撥水性と組成物の水性媒体への分散性の観点から、シリコーンオイルが好ましく、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーン、アルキルアラルキル変性シリコーンオイルがより好ましい。
アミノ変性シリコーンオイルとしては、オルガノポリシロキサンの側鎖及び末端の少なくともいずれかにアミノ基及び/又はイミノ基を含む有機基を有する化合物が挙げられる。このような有機基としては、-R-NH2で表される有機基、-R-NH-R’-NH2で表される有機基が挙げられる。R及びR’としては、エチレン基、プロピレン基等の2価の基が挙げられる。アミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部が、封鎖されたアミノ基及び/又はイミノ基であってもよい。封鎖されたアミノ基及び/又はイミノ基は、例えば、アミノ基及び/又はイミノ基を封鎖剤で処理することにより得られる。封鎖剤としては、例えば、炭素数2~22の脂肪酸、炭素数2~22の脂肪酸の酸無水物、炭素数2~22の脂肪酸の酸ハライド、炭素数1~22の脂肪族モノイソシアネートなどが挙げられる。
アミノ変性シリコーンオイルの官能基当量は、撥水性の観点から、100~20000g/molが好ましく、150~12000g/molがより好ましく、200~4000g/molがより好ましい。
アミノ変性シリコーンオイルは25℃で液状であることが好ましい。アミノ変性シリコーンオイルの25℃における動粘度は、10~100,000mm/sであることが好ましく、10~30,000mm/sであることがより好ましく、10~5,000mm/sであることがさらに好ましい。25℃における動粘度が100,000mm/sより大きい場合、粘度が高すぎて作業性が悪くなる傾向にある。25℃における動粘度とは、JIS K 2283:2000(ウベローデ粘度計)に記載の方法で測定した値を意味する。
アミノ変性シリコーンオイルとしては、市販品としても容易に入手することが可能である。市販品としては、例えば、KF8005、KF-868、KF-864、KF-393、KF-8021(いずれも、信越化学工業(株)製、商品名)、TSF-4709、XF42-B1989(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン(合)製、商品名)、BY16-872、SF-8417、BY16-853U、BY16-892(いずれも、東レ・ダウコーニング(株)製、商品名)などが挙げられる。
また、アミノ変性シリコーンオイル以外のシリコーンオイルも同様に市販品として容易に入手することが可能である。市販品としては、例えば、KF-101(信越化学工業(株)製、商品名、エポキシ変性シリコーンオイル)、X-22-3701E(信越化学工業(株)製、商品名、カルボキシル変性シリコーンオイル)、SF8428(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名、カルビノール変性シリコーンオイル)、KF-9901(信越化学工業(株)製、商品名、メチルハイドロジェンシリコーンオイル)、X-22-715(信越化学工業(株)製、商品名、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル)、KF-96-3000cp(信越化学工業(株)製、商品名、ジメチルシリコーンオイル)、SF8416(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名、アルキル変性シリコーンオイル)、SH203(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名、アルキルアラルキル変性シリコーンオイル)、SF8410(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名、ポリエーテル変性シリコーンオイル)などが挙げられる。
シリコーン樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
1.1.3 フッ素化合物系撥水剤
撥水剤としてのフッ素化合物の種類に特に限定はない。例えば、炭素数が6以下のペルフルオロアルキル基を有する撥水剤が挙げられる。そのような撥水剤の具体例としては、以下の(i)~(vi)に示されるものが挙げられる。
(i)炭素数が6以下のペルフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレートと、これらと共重合可能な他の単量体との共重合体。
上記の共重合体を構成するアクリレート及び/又はメタクリレートが有するペルフルオロアルキル基の炭素数は、3~6であってもよい。このようなペルフルオロアルキル基を有するアクリレート及びメタクリレートとしては、例えば、下記のような化合物を挙げることができる。
CF(CFCHOCOC(CH)=CH
CF(CFCHCHOCOC(CH)=CH
CF(CFCHCHOCOC(CH)=CH
CF(CFCHCHOCOC(CH)=CH
CF(CFCHCHOCOC(CH)=CH
CF(CFCHCHOCOCH=CH
CF(CFCHCHOCOCH=CH
CF(CFCHCHOCOCH=CH
CF(CFCHCHOCOCH=CH
CF(CF(CHO(CHOCOCH=CH
CFCFCHCH(OH)CHOCHCHOCOCH=CH
(CF)2CF(CFCHCHOCOCH=CH
CF(CFSON(C)CHCHOCOCH=CH
CF(CF(CHOCOCH=CH
CF(CFSON(CH)CHCHOCOC(CH)=CH
CF(CFSON(C)CHCHOCOCH=CH
CF(CFCONHCHCHOCOCH=CH
(CFCF(CFCHCHCHOCOCH=CH
(CFCF(CFCHCH(OCOCH)CHOCOC(CH)=CH
(CFCF(CFCHCH(OH)CHOCOCH=CH
CF(CFCONHCHCHOCOC(CH)=CH
CFCF(CFCl)(CFCONHCHCHOCOCH=CH
CFCF(CFCl)(CFCONHCHCHOCOC(CH)=CH
H(CFCHOCOCH=CH
CFCl(CFCHOCOC(CH)=CH
13CH=CH
ペルフルオロアルキル基を有するアクリレート及び/又はメタクリレートと共重合可能な他の単量体としては、例えば、
ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アジリジニルアクリレート、アジリジニルメタクリレート、ヒドロキシアルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、アルキレンジオールアクリレート、アルキレンジオールジメタクリレート、シクロへキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル、
アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチルロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、メチロール化ジアセトンアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド、
マレイン酸ジブチルなどのマレイン酸アルキルエステル、フタル酸アルキルエステル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、エチレン、酢酸ビニル、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、アルキルビニルエーテル、ハロゲン化アルキルビニルエーテル、アルキルビニルケトン、無水マレイン酸、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどが挙げられる。
ペルフルオロアルキル基を有するアクリレート及び/又はメタクリレートと、これらと共重合可能な他の単量体との構成割合は、共重合に用いる全単量体の中で、ペルフルオロアルキル基を有するアクリレート及びメタクリレートの合計が40質量%以上であってもよく、50~80質量%であってもよい。
これらの共重合体は、ビニル重合の公知の方法によって製造でき、乳化重合により製造されたものであってもよい。
乳化重合させる際の媒体に特に制限はなく、例えば、水に水溶性有機溶媒を添加した水性溶媒が用いられてもよい。水に水溶性有機溶媒を添加した水性溶媒が用いられた場合、単量体や共重合体が凝集しにくく、安定した乳化物を得ることができる。乳化重合に用いる乳化剤に特に制限はなく、非イオン性、アニオン性、カチオン性、両性の各乳化剤の殆ど全てを用いることができる。乳化重合に際しては、水性溶媒中にペルフルオロアルキル基を有するアクリレート及び/又はメタクリレート、これらと共重合可能な他の単量体、乳化剤などを添加し、撹拌しつつ、場合により、超音波を伝達することにより単量体混合物を乳化分散させたのち、水溶性の重合開始剤を添加し、加熱して重合してもよい。使用する水溶性の重合開始剤に特に制限はなく、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物、過硫酸塩などの各種の重合開始剤が挙げられ、さらにγ線などの電離性放射線などが重合開始剤に代えて用いられてもよい。
(ii)炭素数6以下のペルフルオロアルキル基含有の一価もしくは多価アルコールとフッ素化されていてもよい一価もしくは多価カルボン酸との(ポリ)エステル、及び、フッ素化されていてもよい一価もしくは多価アルコールと炭素数6以下のペルフルオロアルキル基を有する一価もしくは多価カルボン酸との(ポリ)エステル。
(iii)特開昭58-103550号に示されるような、含フッ素ポリエステル共重合体。
(iv)炭素数6以下のペルフルオロアルキル基を有する一価または多価アルコール(場合によってはフッ素を含まない一価または多価アルコールを混ぜてもよい)と一価または多価イソシアネートとの(ポリ)ウレタン。
上記(ポリ)ウレタンは、分子量が700以上のものであってもよい。
(v)イソシアネートと反応し得る反応基(水酸基、アミノ基、カルボキシル基など)と、炭素数6以下のペルフルオロアルキル基とを有する化合物。
このような化合物としては、例えば、C13CHCHOH 、C13SON(CH)CHCHOH、C13SON(CHCH)CHCHOH、C13COOH、C13CONHCNHCH、C13SONHCH等が挙げられる。
(vi)炭素数6以下のペルフルオロアルキル基を有する含フッ素脂肪族ポリカーボネート。
(ii)~(vi)に示される化合物は、乳化剤を用いて乳化分散された形態で用いられてもよい。
1.2 抗菌・抗ウイルス剤
本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物は、上記の撥水剤と抗菌・抗ウイルス剤とを含む。抗菌・抗ウイルス剤は第4級アンモニウムカチオン基を有する。
第4級アンモニウムカチオン基を有する化合物は物品の表面において抗菌及び抗ウイルス性を発現し得る。抗菌及び抗ウイルス性を有する第4級アンモニウムカチオン基としては、シラン系のアンモニウムカチオン基や、ポリオキシアルキレンアルキルアンモニウムカチオン基や、アルキルアンモニウムカチオン基等が挙げられる。抗菌・抗ウイルス剤は、第4級アンモニウムカチオン基を少なくとも一つ有していればよく、低分子化合物であってもよいし、高分子化合物であってもよい。第4級アンモニウムカチオン基を有する化合物の具体例については後述する。
第4級アンモニウムカチオン基の対イオンであるアニオンの種類は特に限定されるものではない。例えば、モノアルキルリン酸、ジアルキルリン酸、ハロゲン、メチル硫酸、エチル硫酸又は芳香族アニオンであってよい。芳香族アニオンとしては、例えば、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、安息香酸又はアルキルベンゼンスルホン酸等が挙げられる。
抗菌・抗ウイルス剤は、下記一般式(1)で示される化合物、下記一般式(2)で示される化合物及び下記一般式(3)で示される化合物のうちの少なくとも一つの化合物であってよい。より高い性能を確保する観点からは、抗菌・抗ウイルス剤は、下記一般式(1)で示される化合物及び下記一般式(2)で示される化合物のうちの少なくとも一つの化合物であってよい。
Figure 2022076342000013
Figure 2022076342000014
Figure 2022076342000015
式(1)において、Rは炭素数10~22のアルキル基であり、Rはメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基であり、Rはメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基であり、Rは炭素数2~4のアルキレン基であり、Rはメチル基又はエチル基であり、Rはメチル基又はエチル基であり、Rはメチル基又はエチル基であり、Zはハロゲンである。
の具体例としては、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ウンエイコシル基、ドエイコシル基、トリエイコシル基、テトラエイコシル基等が挙げられる。RとRとは、互いに同じ基であってもよい。また、R~Rは、互いに同じ基であってもよい。Zは塩素であっても、臭素であっても、これ以外のハロゲンであってもよいが、特に塩素である場合に高い性能が期待できる。式(2)におけるハロゲン、式(3)におけるハロゲンについても同様である。
式(1)で表されるシラン系第4級アンモニウム塩のうち、メトキシシラン系第4級アンモニウム塩の具体例としては、オクタデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ドデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ドデシルジイソプロピル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、テトラデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、テトラデシルジエチル(3-トリメトキシシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、テトラデシルジ-n-プロピル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ペンタデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ペンタデシルジエチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ペンタデシルジ-n-プロピル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ヘキサデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ヘキサデシルジエチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ヘキサデシルジ-n-プロピル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、オクタデシルジエチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、オクタデシルジ-n-プロピル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド等が挙げられる。中でも、テトラデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドは、抗菌・抗ウイルス性が良好となる。
式(1)で表されるシラン系第4級アンモニウム塩のうち、エトキシシラン系第4級アンモニウム塩の具体例としては、上記メトキシシラン系第4級アンモニウム塩として例示したものにおいて、トリメトキシシリル基をトリエトキシシリル基に置換したものが挙げられる。
式(2)において、Rは炭素数10~20のアルキル基又はアリール基であり、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又は(AO)Hで表される基であり、AOは炭素数2~4のアルキレンオキサイドであり、pは1~10の整数であり、R10はメチル基、エチル基、ベンジル基又は炭素数2~4のヒドロキシアルキル基であり、nは1又は2であり、mは1又は2であり、n+mは3であり、lは1又は2であり、Zはモノアルキルリン酸、ジアルキルリン酸、ハロゲン、メチル硫酸、エチル硫酸又は芳香族アニオンである。
式(2)において、Rの炭素数が小さ過ぎても、大き過ぎても、抗菌・抗ウイルス性が低下し易い。Rの炭素数は10以上又は12以上であってもよく、20以下又は18以下であってもよい。
式(2)において、Rがメチル基である場合、抗菌・抗ウイルス性に一層優れる。
式(2)において、R10が炭素数2~4のヒドロキシアルキル基、特にヒドロキシエチル基である場合、抗菌・抗ウイルス性に一層優れる。
式(2)において、Zがモノアルキルリン酸又はジアルキルリン酸である場合、抗菌・抗ウイルス性に一層優れる。モノアルキルリン酸、ジアルキルリン酸のアルキル基としては炭素数1~12のアルキル基を挙げることができる。その中でも炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数2~4のアルキル基がより好ましい。
式(2)において、Zとなり得る芳香族アニオンの具体例としては、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、安息香酸又はアルキルベンゼンスルホン酸等が挙げられる。
式(2)で表される化合物の具体例としては、ドデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム-ブチルリン酸エステル塩、テトラデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム-ブチルリン酸エステル塩、ドデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム-エチルリン酸エステル塩、テトラデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム-エチルリン酸エステル塩等が挙げられる。中でも、ドデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム-ブチルリン酸エステル塩を採用した場合、抗菌・抗ウイルス性等が一層向上する。
抗菌・抗ウイルス剤は、第4級アンモニウムカチオンを複数有する高分子化合物であってもよい。例えば、抗菌・抗ウイルス剤として上記式(3)で示されるような高分子化合物が採用され得る。
式(3)において、R21は炭素数1~4のアルキレン基であってよく、R22はメチル基又はエチル基であってよく、R23はメチル基又はエチル基であってよく、R24は炭素数1~4のアルキレン基であってよく、R25はメチル基又はエチル基であってよく、R26はメチル基又はエチル基であってよく、R27は炭素数1~4のアルキレン基であってよく、Zはハロゲンであってよく、kは任意の自然数であってよい。式(3)で示される高分子化合物の重量平均分子量は、例えば、2,000以上又は6,000以上であってよく、200,000以下又は80,000以下であってよい。
1.3 組成比
本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物において、撥水剤と抗菌・抗ウイルス剤との割合は特に限定されるものではない。例えば、撥水剤と抗菌・抗ウイルス剤との合計を100質量%として、撥水剤の含有量が10質量%以上又は20質量%以上であってもよく、95質量%以下又は80質量%以下であってもよい。
1.4 付着量
本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物において、物品と、物品に付着した撥水剤及び抗菌・抗ウイルス剤の合計と、の割合は特に限定されるものではない。例えば、物品100質量部に対して、撥水剤と抗菌・抗ウイルス剤との合計が0.1質量部以上付着していてもよく、5質量部以下付着していてもよい。
1.5 任意成分
本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物は、上記の撥水剤と抗菌・抗ウイルス剤とに加えて、その他の成分を含んでいてもよい。例えば、本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物は、界面活性剤及び水を含んでいてもよく、界面活性剤、有機溶媒及び水を含んでいてもよい。また、本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物は、酸成分、アルカリ成分、界面活性剤、シリコーン成分、有機溶剤、キレート剤、柔軟剤、帯電防止剤、浸透剤、消泡剤、架橋剤、防腐剤等を含んでいてもよい。
2.物品
上記本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物が付着した物品は、耐久抗菌性及び耐久抗ウイルス性に優れるとともに、撥水性にも優れる。
物品の種類は特に限定されるものではなく、耐久抗菌性及び耐久抗ウイルス性、撥水性が必要とされるものであればよい。物品の具体例としては、例えば、繊維製品が挙げられる。或いは、本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物は、繊維製品以外の物品に付与されてもよい。
物品が繊維製品である場合、当該繊維製品を構成する繊維の種類は特に限定されるものではなく、天然繊維であってもよいし化学繊維であってもよい。繊維の具体例としては、綿、麻、絹、羊毛等の天然繊維、レーヨン、アセテート等の半合成繊維、ポリアミド(ナイロン等)、ポリエステル、ポリウレタン、ポリプロピレン等の合成繊維、及びこれらの複合繊維、混紡繊維が挙げられる。ポリアミドとしてはナイロン6、ナイロン6,6等が挙げられる。ポリエステルとしてはポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリ乳酸等が挙げられる。繊維は、糸、編物(交編を含む)、織物(交織を含む)、不織布、紙、木材などの形態を採るものであってもよい。繊維は染色されたものであってもよい。繊維は、その表面に何らかの修飾処理が施されたものであってもよい。
3.物品の製造方法
本開示の技術は、抗菌性及び抗ウイルス性を有する物品を製造する方法としての側面も有する。すなわち、本開示の物品の製造方法は、抗菌・抗ウイルス性を付与する対象物に、上記本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物を付着させて、抗菌・抗ウイルス性を有する物品を得ること、を含む。上述したように、対象物は繊維であってもよく、物品は繊維製品であってもよい。
物品に上記の抗菌・抗ウイルス剤組成物を付着させる方法としては、特に限定されるものではない。例えば、本開示の方法は、抗菌・抗ウイルス剤組成物を含む処理液(溶液であってもよいし、分散液であってもよい)に対象物を接触させることで、当該対象物に当該抗菌・抗ウイルス剤組成物を付着させてもよい。処理液による処理を行うタイミングは特に限定されるものではない。
処理液は、例えば、上記の撥水剤と上記の抗菌・抗ウイルス剤とを含むものであればよい。また、処理液は、酸成分、アルカリ成分、界面活性剤、有機溶剤、キレート剤、柔軟剤、帯電防止剤、浸透剤、消泡剤等のその他の成分を含んでいてもよい。処理液のpHは、特に限定されないが、例えば、2以上7以下であってもよい。耐久性を向上させたい場合には、抗菌・抗ウイルス剤組成物が含まれる処理液で対象物を処理する上述の工程において、メラミン樹脂、グリオキザール樹脂、イソシアネート基又はブロックドイソシアネート基を1個以上有する化合物に代表される架橋剤を併用し、処理液を対象物に付着させてこれを加熱する工程を含む方法によって、対象物を処理することが好ましい。
処理液で対象物を処理する方法の具体例としては、パディング処理、浸漬処理、スプレー処理、コーティング処理等が挙げられる。このときの処理液の濃度や付与後の熱処理等の処理条件は、その目的や性能等の諸条件を考慮して、適宜調整すればよい。処理液で対象物を処理した後は、余分な抗菌・抗ウイルス剤を除去するために、水洗等の洗浄処理を行ってもよい。また、処理液が水を含有する場合は、対象物に処理液を付着させた後に水を除去するために、乾燥処理を行ってもよい。乾燥方法としては、特に制限はなく、乾熱法、湿熱法のいずれであってもよい。乾燥温度や乾燥時間も特に制限されず、例えば、室温~200℃で10秒~数日間乾燥させればよい。40~130℃で20秒~10分がさらに好ましい。必要に応じて、乾燥後に100~190℃の温度で10秒~5分間程度加熱処理してもよい。130~190℃で30秒~5分がさらに好ましい。
4.効果
以上の通り、本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物は、所定の抗菌・抗ウイルス剤とともに撥水剤を含有することで、物品に対して優れた耐久抗菌性と耐久抗ウイルス性と撥水性とを付与可能である。
以下、実施例を示しつつ本開示の技術による効果等について、より詳細に説明するが、本開示の技術は以下の実施例に限定されるものではない。
1.撥水剤の準備
1.1 アクリル系撥水剤
下記表1に示される質量比にて単量体を重合させてアクリル系撥水剤を得た。具体的には以下の通りである。
1.1.1 合成例1
反応容器にアクリル酸ステアリル270質量部、ノイゲンXL-100(第一工業製薬株式会社製、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、HLB=14.7)5質量部、ノイゲンXL-60(第一工業製薬株式会社製、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、HLB=12.5)10質量部、ノイゲンXL-40(第一工業製薬株式会社製、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、HLB=10.5)5質量部、ステアリルトリメチルアンモニウム硫酸塩13質量部、トリプロピレングリコール150質量部及び水545.5質量部を入れ,45℃にて混合攪拌し混合液とした。この混合液に超音波を照射して全単量体を乳化分散させた。次いで、アゾビス(イソブチルアミジン)二塩酸塩1.5質量部を混合液に添加し、温度を61℃に保ち6時間反応させ、アクリル樹脂を27質量%含むアクリル樹脂分散液を得た。
1.1.2 合成例2
反応容器にアクリル酸ステアリル200質量部、ノイゲンXL-100(第一工業製薬株式会社製、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、HLB=14.7)5質量部、ノイゲンXL-60(第一工業製薬株式会社製、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、HLB=12.5)10質量部、ノイゲンXL-40(第一工業製薬株式会社製、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、HLB=10.5)5質量部、ステアリルトリメチルアンモニウム硫酸塩13質量部、トリプロピレングリコール150質量部及び水545.5質量部を入れ,45℃にて混合攪拌し混合液とした。この混合液に超音波を照射して全単量体を乳化分散させた。次いで、アゾビス(イソブチルアミジン)二塩酸塩1.5質量部を混合液に添加し、窒素雰囲気下でオートクレーブの内圧が0.3MPaを保つように塩化ビニル70質量部を継続的に圧入しながら、温度を61℃に保ち6時間反応させ、アクリル樹脂を27質量%含むアクリル樹脂分散液を得た。
1.1.3 合成例3~7
単量体の配合比を下記表1の通りに変更したこと以外は合成例2と同様にして、合成例3~7に係るアクリル樹脂分散液を得た。
なお、下記表1において、「C6フルオロ基含有メタクリレート」は、C2n+1CHCHOCOC(CH)=CHで表され、nの平均値が6となる混合物である。また、「ノイゲンXL-100」は第一工業製薬株式会社製のポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル(HLB=14.7)であり、「ノイゲンXL-60」は第一工業製薬株式会社製のポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル(HLB=12.5)であり、「ノイゲンXL-40」は第一工業製薬株式会社製のポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル(HLB=10.5)である。
Figure 2022076342000016
1.2 シリコーン系撥水剤
以下の手順で、調製例1~4に係るシリコーン系撥水剤を得た。
1.2.1 調製例1(ジメチルシリコーン分散物)
KF-96-3000cs(ジメチルシリコーン、信越化学工業(株)製、商品名)20質量部と、グリコール酸0.3質量部と、炭素数12~14の分岐アルコールのエチレンオキサイド5モル付加物4質量部と、ブチルジグリコール5質量部とを混合した。次いで、得られた混合物に、水70.7質量部を少量ずつ混合しながら添加し、ジメチルシリコーンを20質量%含む分散液を得た。
1.2.2 調製例2(シリコーンレジン分散物)
MQ-1600シリコーンレジン(トリメチルシリル基含有ポリシロキサン、東レ・ダウコーニング(株)製、商品名)15質量部に、ジメチルシリコーン(6cs、東レ・ダウコーニング(株)製、商品名)15質量部を添加し、シリコーンレジンが溶解するまで混合して、混合物を得た。得られた混合物18.5質量部と、炭素数12~14の分岐アルコールのエチレンオキサイド5モル付加物0.5質量部とを混合した。次いで、水81質量部を少量ずつ混合しながら添加し、シリコーンレジンとジメチルシリコーンとを合計で18.5質量%含む分散液を得た。
1.2.3 調製例3(アミノ変性シリコーン分散物)
TSF-4709(アミノ変性シリコーンオイル、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名)20質量部と、グリコール酸0.3質量部と、炭素数12~14の分岐アルコールのエチレンオキサイド5モル付加物4質量部と、ブチルジグリコール5質量部とを混合した。次いで、得られた混合物に、水70.7質量部を少量ずつ混合しながら添加し、アミノ変性シリコーンオイルを20質量%含む分散液を得た。
1.2.4 調製例4(アルキル変性シリコーン)
SF 8416(アルキル変性シリコーン、東レ・ダウコーニング(株)製、商品名)20質量部と、グリコール酸0.3質量部と、炭素数12~14の分岐アルコールのエチレンオキサイド5モル付加物4質量部と、ブチルジグリコール5質量部とを混合した。次いで、得られた混合物に、水70.7質量部を少量ずつ混合しながら添加し、アルキル変性シリコーンを20質量%含む分散液を得た。
2.抗菌・抗ウイルス剤の準備
本実施例で用いた抗菌・抗ウイルス剤は以下の通りである。
化合物A:下記一般式(2)において、Rが炭素数12のアルキル基であり、Rがメチル基であり、R10がヒドロキシエチル基であり、nが1であり、mが2であり、lが1であり、Zがジブチルリン酸である化合物A1と、下記一般式(2)において、Rが炭素数12のアルキル基であり、Rがメチル基であり、R10がヒドロキシエチル基であり、nが1であり、mが2であり、lが2であり、Zがブチルリン酸である化合物A2との混合物(化合物A1と化合物A2とのモル比は1:1)。
化合物B:下記一般式(2)において、Rが炭素数16のアルキル基であり、Rがメチル基であり、R10がメチル基であり、nが1であり、mが2であり、lが1であり、Zがメチル硫酸である化合物。
化合物C:下記一般式(2)において、Rが炭素数10のアルキル基であり、Rがメチル基であり、R10がメチル基であり、nが1であり、mが2であり、lが1であり、Zが塩素である化合物。
化合物D:下記一般式(1)において、Rが炭素数14のアルキル基であり、Rがメチル基であり、Rがメチル基であり、Rがプロピレン基であり、Rがメチル基であり、Rがメチル基であり、Rがメチル基であり、Zが塩素である化合物。
化合物E:下記一般式(1)において、Rが炭素数18のアルキル基であり、Rがメチル基であり、Rがメチル基であり、Rがプロピレン基であり、Rがエチル基であり、Rがエチル基であり、Rがエチル基であり、Zが塩素である化合物。
化合物F:下記一般式(1)において、Rが炭素数18のアルキル基であり、Rがメチル基であり、Rがメチル基であり、Rがプロピレン基であり、Rがメチル基であり、Rがメチル基であり、Rがメチル基であり、Zが塩素である化合物。
Figure 2022076342000017
Figure 2022076342000018
化合物A~Fの合成条件は以下の通りとした。尚、化合物A~Cについては、当該化合物を15重量%含む溶液として使用し、化合物D~Fについては、当該化合物を40重量%含む溶液として使用した。
2.1 化合物Aの合成条件
n-ブタノール3モルと無水リン酸1モルとから調整したモノ体/ジ体の混合比が約1/1のアルキルリン酸エステル143質量部と水500質量部を反応容器に仕込み、ドデシルジメチルアミン260質量部を加えて中和した。この中和物のなかにエチレンオキサイド100質量部を仕込み、100℃で3時間反応させ、ドデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム-ブチルリン酸エステル塩を50.0質量%含む組成物1000質量部を得た。これをドデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム-ブチルリン酸エステル塩が15重量%となるように調整した。
2.2 化合物Bの合成条件
反応容器にヘキサデシルジメチルアミン216質量部を仕込んだ。反応容器を50℃に冷却しながら、ジメチル硫酸100質量部を滴下しながら徐々に添加した。滴下終了後に1時間50℃にて反応させた後、水684質量部を加えて、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム-メチル硫酸塩を31.6質量%含む組成物1000質量部を得た。これをヘキサデシルトリメチルアンモニウム-メチル硫酸塩が15重量%となるように調整した。
2.3 化合物Cの合成条件
反応容器にジデシルメチルアミン311質量部を仕込んだ。塩化メチル50.5質量部を仕込み、80℃で2時間反応させた後、水638質量部を加えて、ジデシルジメチルアンモニウムクロライドを36.2質量%含む組成物1000質量部を得た。これをジデシルジメチルアンモニウムクロライドが15重量%となるように調整した。
2.4 化合物Dの合成条件
反応容器にトリメトキシシリルプロピルクロライド199質量部、ジメチルテトラデシルアミン240質量部、トリエチレングリコールモノメチルエーテル539質量部を入れ、窒素雰囲気下、150℃で20時間反応させ、テトラデシル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]ジメチルアンモニウムクロライドが40重量%の溶液1100質量部を得た。
2.5 化合物Eの合成条件
反応容器にトリエトキシシリルプロピルクロライド240質量部、ジメチルオクタデシルアミン298質量部、エタノール606質量部を入れ、窒素雰囲気下、150℃で20時間反応させ、オクタデシル[3-(トリエトキシシリル)プロピル]ジメチルアンモニウムクロライドが40重量%の溶液1342質量部を得た。
2.6 化合物Fの合成条件
反応容器にトリメトキシシリルプロピルクロライド199質量部、ジメチルオクタデシルアミン298質量部、エタノール744質量部を入れ、窒素雰囲気下、150℃で20時間反応させ、オクタデシル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]ジメチルアンモニウムクロライドが40重量%の溶液1204質量部を得た。
3.イソシアネート化合物(架橋剤)の準備
反応容器に、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体(旭化成ケミカルズ社製、デュラネート24A-100、イソシアネート基数3、含有量100%)239質量部と、メチルイソブチルケトン5質量部とを添加し、60~70℃まで加熱した。次いで、3,5-ジメチルピラゾール144質量部をゆっくりと仕込み、60~70℃で赤外分光光度計にて確認されるイソシアネート含量がゼロになるまで反応させることにより、ピラゾールブロックドポリイソシアネートを98.7質量%含む無色透明粘稠液状組成物を得た。得られた組成物を180質量部、有機溶剤としてジブチルジグリコールを140質量部、上記の非イオン界面活性剤を20質量部混合し、均一化した。撹拌しながら徐々に水を仕込んだ後、30MPaにてホモジナイザー処理を行い、不揮発分20質量%のピラゾールブロックドポリイソシアネート水分散液を得た。この水分散液中の粒子の平均粒径は0.35μmであった。
4.処理液(抗菌・抗ウイルス剤組成物)の調製
上記の撥水剤を含む分散液と、上記の抗菌・抗ウイルス剤の溶液と、浸透剤と、上記の架橋剤とを、下記表2、3に示される所定の比率にて混合して処理液を得た。
5.物品に対する抗菌・抗ウイルス性の付与
5.1 実施例1~15
ポリエステルニット(目付120g/m、株式会社色染社製)を上記の処理液に浸漬させ、絞り率110%にて処理し、次いで、130℃で2分間熱処理することで、抗菌・抗ウイルス性を有する繊維製品を得た。
5.2 比較例1
処理液の調製において撥水剤を混合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして処理を行い、抗菌・抗ウイルス性を有する繊維製品を得た。
5.3 比較例2
処理液の調製において抗菌・抗ウイルス剤を混合しなかったこと以外は、実施例3と同様にして処理を行い、抗菌・抗ウイルス性を有する繊維製品を得た。
5.4 比較例3
特許文献3(特開平4-241171号公報)に記載された方法にしたがって、抗菌性を有する繊維製品を得た。具体的には、化合物Aが30g/L、ユニカレジン380-K(メラミン樹脂:ユニオン化学製)1.5g/L、ユニカカタリストP-3(触媒)0.5g/Lとなるように処理液を調整し、処理浴を準備した。ポリエステルニットを処理浴に浸漬させ、絞り率110%にて処理し、次いで、130℃で2分間熱処理することで、抗菌・抗ウイルス性繊維を得た。
5.5 比較例4
特許文献4(特開昭62-177284号公報)に記載された方法にしたがって、抗菌性を有する繊維製品を得た。具体的には、化合物Dが30g/L、ラウリルアルコールエチレンオキサイド3モル付加物の硫酸エステルNa塩5g/Lとなるように処理液を調整し、処理浴を準備した。ポリエステルニットを処理浴に浸漬させ、絞り率110%にて処理し、次いで、130℃で2分間熱処理することで、抗菌・抗ウイルス性繊維を得た。
5.6 比較例5
特許文献5(特開2019-077638号公報)に記載された方法にしたがって、抗菌性を有する繊維製品を得た。具体的には、化合物Dが30g/L、アクリル酸/アクリル酸エステル共重合物30g/Lとなるように処理液を調整し、処理浴を準備した。前処理が施されていないポリエステルニットを処理浴に浸漬させ、絞り率110%にて処理し、次いで、130℃で2分間熱処理することで、抗菌・抗ウイルス性繊維を得た。
6.洗濯
JIS L1930(2014)C4G法に準じて、繊維製品を洗濯した。洗剤はJAFET標準配合洗剤(繊維評価技術評議会製)を使用し、洗濯液の洗剤濃度を1.33g/Lとして使用した。前記条件により、繰り返し洗濯を10回行った。
7.耐久抗菌性の評価
JIS L1902(2015)定量試験(8.2菌液吸収法)により抗菌活性値を測定し、洗濯前後における繊維製品の抗菌性能を評価した。使用菌として黄色ぶどう球菌Staphylococcus aureus NBRC12732および、肺炎桿菌Klebsiella pneumoniae NBRC13277を用いた。結果を下記表2、3に示す。表2、3に示される活性値が高いもの程、抗菌性に優れる。
8.耐久抗ウイルス性の評価
JIS L1922(2016)により抗ウイルス活性値を測定し、繊維製品の抗ウイルス性能を評価した。使用ウイルスとして、A型インフルエンザウイルス(H3N2) ATCC VR-1679を使用した。抗ウイルス活性値=log(Va)-log(Vc)として評価した。結果を下記表2、3に示す。抗菌性と同様に、表2、3に示される活性値が高いものほど抗ウイルス性に優れる。尚、JISにおいては、抗ウイルス性の活性値が2.0以上の場合を効果ありとしているが、活性値2.0以下でもウイルスは減少する。本実施例では活性値が1.5でも抗ウイルス効果があるものと判定する。
9.撥水性の評価
JIS L1092(2009)のスプレー法と同様の方法でシャワー水温を20℃として試験をした。
撥水性:状態
5:表面に付着湿潤のないもの
4:表面にわずかに付着湿潤を示すもの
3:表面に部分的湿潤を示すもの
2:表面に湿潤を示すもの
1:表面全体に湿潤を示すもの
0:表裏両面が完全に湿潤を示すもの
Figure 2022076342000019
Figure 2022076342000020
表2、3に示される結果から明らかなように、撥水剤と所定の抗菌・抗ウイルス剤とを含む組成物によって繊維製品を処理した場合、当該繊維製品は、洗濯前後において抗菌性及び抗ウイルス性のいずれについても高い活性値を維持でき、高い耐久抗菌性及び耐久抗ウイルス性を有するとともに、高い撥水性を有する(実施例1~16)。実施例1~16においては、抗菌・抗ウイルス剤による抗菌・抗ウイルス効果のみならず、撥水剤によって物品の吸水性・吸湿性が低下することで、菌やウイルスの増殖を押さえることが可能となったことにより、より優れた抗菌・抗ウイルス効果が発揮されたものと考えられる。
一方で、抗菌・抗ウイルス剤組成物が撥水剤を含まない場合、洗濯前と洗濯後とで、繊維製品の抗ウイルス性が大きく低下するほか、撥水性を確保できない(比較例1)。
また、抗菌・抗ウイルス剤組成物が抗菌・抗ウイルス剤を含まない場合、繊維製品において抗菌性及び抗ウイルス性が発現しない(比較例2)。
さらに、撥水剤に替えて、メラミン樹脂や硫酸塩界面活性剤やポリアクリル酸/アクリルエチル共重合体を採用した場合、耐久抗ウイルス性に劣り、撥水性も確保されない(比較例3~5)。
以上のことから、以下の要件を満たす抗菌・抗ウイルス剤組成物によって、物品に対して優れた耐久抗菌性及び耐久抗ウイルス性と撥水性とを付与することが可能であるといえる。
(1)抗菌・抗ウイルス剤組成物が、撥水剤を含有すること。
(2)抗菌・抗ウイルス剤組成物が、第4級アンモニウムカチオン基を有する抗菌・抗ウイルス剤を含有すること。

Claims (5)

  1. 抗菌・抗ウイルス剤組成物であって、撥水剤と抗菌・抗ウイルス剤とを含有し、
    前記抗菌・抗ウイルス剤が、第4級アンモニウムカチオン基を有する、
    抗菌・抗ウイルス剤組成物。
  2. 前記抗菌・抗ウイルス剤が、下記一般式(1)で示される化合物、下記一般式(2)で示される化合物及び下記一般式(3)で示される化合物のうちの少なくとも一つの化合物である、
    請求項1に記載の抗菌・抗ウイルス剤組成物。
    Figure 2022076342000021
    式(1)において、
    は炭素数10~22のアルキル基であり、
    はメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基であり、
    はメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基であり、
    は炭素数2~4のアルキレン基であり、
    はメチル基又はエチル基であり、
    はメチル基又はエチル基であり、
    はメチル基又はエチル基であり、
    はハロゲンである。
    Figure 2022076342000022
    式(2)において、
    は炭素数10~20のアルキル基又はアリール基であり、
    はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又は(AO)Hで表される基であり、AOは炭素数2~4のアルキレンオキサイドであり、pは1~10の整数であり、
    10はメチル基、エチル基、ベンジル基又は炭素数2~4のヒドロキシアルキル基であり、
    nは1又は2であり、
    mは1又は2であり、
    n+mは3であり、
    lは1又は2であり、
    はモノアルキルリン酸、ジアルキルリン酸、ハロゲン、メチル硫酸、エチル硫酸又は芳香族アニオンである。
    Figure 2022076342000023
    式(3)において、
    21は炭素数1~4のアルキレン基であり、
    22はメチル基又はエチル基であり、
    23はメチル基又はエチル基であり、
    24は炭素数1~4のアルキレン基であり、
    25はメチル基又はエチル基であり、
    26はメチル基又はエチル基であり、
    27は炭素数1~4のアルキレン基であり、
    はハロゲンであり、
    kは任意の自然数である。
  3. 前記撥水剤が、アルキル基の炭素数が12~24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む重合体、シリコーンレジン、シリコーンオイル及びフッ素化合物から選ばれる少なくとも1種である、
    請求項1又は2に記載の抗菌・抗ウイルス剤組成物。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載の抗菌・抗ウイルス剤組成物が付着している、
    物品。
  5. 抗菌・抗ウイルス性を付与する対象物に、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗菌・抗ウイルス剤組成物を付着させて、抗菌・抗ウイルス性を有する物品を得ること、
    を含む、物品の製造方法。
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