最近、製鋼スラグは、比重差によって分離されたものが本質的に鉄より軽く、重金属をほとんど含有しておらず、環境有害性が低いので、建設産業用材料として使用しようとする研究が比較的活発であった。しかし、製鋼スラグは、内部にガラス石灰(free−CaO)を含有しており、水との接触時に化学反応を起こすことによって体積が膨張するので、道路用またはコンクリート用に使用される場合に亀裂が発生し、その使用が非常に制限的であった。
このような製鋼スラグを商用するために高速の空気を用いて溶融状態の製鋼スラグを急冷させる方法として、ガラス石灰(free−CaO)の生成量を制御する方法が開発されて商用されているが、前記の方法によって生産された製鋼スラグは、球形化されたことからアトマイジング製鋼スラグ(ASS、Atomizing Steel Slag)とも称し、急冷工程によって製造されたことから急冷製鋼スラグ(RCSS、Rapidly Cooled Steel Slag)とも称し、PS Ball(Precious Slag Ball)という名称で商用化されている。
このようなPS Ballは、ガラス石灰(free−CaO)がないため膨張崩壊の危険がなく、粒形が球形に近い細骨材の形態を有するので、コンクリート用建設材料として活用する場合、ボールベアリング効果(Ball Bearing Effect)によって流動性が増加するという長所を有し、コンクリートを構成する他の材料に比べて密度が高いため、道路鋪装、重量材などの多様な用途で活用が試みられている。
一方、一般に、セメント及びセメント活用製品は、約1日程度で硬化された後、28日材齢で目標強度を獲得することを目標とし、このときから諸般の特性を発現するので、道路、橋梁、港湾、下水管路などの緊急工事には速硬性セメント及びこれを活用した製品が使用されている。
通常の速硬性セメントは、CaO・Al2O3、12CaO・7Al2O3、11CaO・7Al2O3・CaX(X:ハロゲン元素)などの速硬性鉱物を含有するクリンカーを石膏と混合して粉砕したり、これら速硬性鉱物の粉砕物を普通ポルトランドセメント、石膏及びその他の添加材と混合することによって製造する方法が知られている。(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5)
しかし、前記速硬性セメントは、高温の焼成炉でクリンカーを製造するため製造費用が高く、揮発成分や溶融成分の制御が難しいため、製造時期によってセメントの物性が変わるなどの問題を有する。特に、前記速硬性セメントは、Al2O3成分の比率が高いため、セメントが水と反応して生成される水和物のうち速硬性を発現する主水和物であるエトリンガイト(3CaO・Al2O3・3CaSO4・32H2O)の結晶転移によって体積変化を起こしたり、Al(OH)3ゲル水和物の水分に対する安定性が低下し、硫酸塩の存在時にSO3イオンとの反応による体積膨張を起こすことがあり、長期的には構造物の安定性を低下させることが問題として認識されてきた。
このような速硬性セメントの性能問題を改善し、硬化後の構造体の安定性を向上させるための改良された製造方法として、カルシウムスルホアルミネートを含有した亜鉛系クリンカーを主体とし、その粉砕物に普通ポルトランドセメント、石膏、焼石灰などを混合して製造する方法も知られている。(特許文献6、特許文献7、特許文献8)
その他に、特許文献9では、基本的な速硬性シメントの製造方法を提示しており、特許文献10では、速硬性シメントを活用したモルタルの製造方法を提示しており、特許文献11では、速硬性シメントの製造方法及びラテックスコンクリートに対して提示している。
しかし、前記各速硬性セメントは、一般にモルタル或いはコンクリートの製造時に水と反応することによって数分〜数十分以内に硬化し、3時間〜6時間に20MPa以上の強度を発現し、初期にセメント構造体を形成することによって、長期的な水の蒸発などによる変形を最小化することができ、亀裂がほとんど発生しない安定した構造体を作ることができるので、道路、橋梁などの構造物の緊急補修に主に使用されている。ところが、現在開発されたモルタルは、ほとんど速硬シメントを使用できない状態であり、ほとんどのモルタル開発企業が速硬シメントに対する技術の限界によりモルタルに機能性原料を添加する方法で製品を特化させている実情にあるので、前記機能性原料を含有しないと共に速硬性を有する水硬性結合材の開発が必要であった。
そこで、本発明者等は、PS Ballの粉末に石膏を混合することによって超速硬性水硬結合材を開発したことがあるが、急冷製鋼還元スラグ粉末(PS Ball)の初期の高い水和熱反応及び初期凝結による作業性低下と長期強度低下の問題があったので、速硬性能を発揮すると共にOPCセメントの代替用として使用するには多くの問題があった。
本発明は、製鉄所で鉄の製錬中に発生する副産物のうち電気炉溶融還元スラグに高圧、高速ガスを噴射・飛散させ、急冷処理して粉砕した急冷製鋼還元スラグ粉末(RC−LFS Powder)と、前記急冷製鋼還元スラグ粉末が水と反応するときに凝結の遅延のために使用する遅延剤と、前記急冷製鋼還元スラグ粉末が水と反応するときに凝結の遅延及び初期・長期強度の増進、収縮低減のために使用する石膏とを含んで構成される急冷製鋼還元スラグ粉末を用いた水硬性結合材組成物を技術構成の特徴とする。
また、前記急冷製鋼還元スラグ粉末としては、前記溶融還元スラグに高圧、高速ガスを5秒〜10秒間噴射・飛散させ、1,300℃〜1,400℃の前記溶融還元スラグを400℃〜600℃に急冷して粉砕したものを使用することを特徴とする、急冷製鋼還元スラグ粉末を用いた水硬性結合材組成物を技術構成の特徴とする。
また、前記急冷製鋼還元スラグ粉末は、3,000cm3/g以上の粉末度を有することを特徴とする、急冷製鋼還元スラグ粉末を用いた水硬性結合材組成物を技術構成の特徴とする。
また、前記石膏としては、無水石膏、半水石膏及び二水石膏から選ばれる1種以上を使用することを特徴とする、急冷製鋼還元スラグ粉末を用いた水硬性結合材組成物を技術構成の特徴とする。
また、前記石膏は、急冷製鋼還元スラグ粉末:石膏の重量に対して60:40〜90:10の重量比で使用することを特徴とする、急冷製鋼還元スラグ粉末を用いた水硬性結合材組成物を技術構成の特徴とする。
また、前記遅延剤は、クエン酸粉末及び酒石酸粉末から選ばれる1種以上であることを特徴とする、急冷製鋼還元スラグ粉末を用いた水硬性結合材組成物を技術構成の特徴とする。
また、前記遅延剤は、急冷製鋼還元スラグ粉末:遅延剤に対して100:0.1〜100:2の重量比で使用することを特徴とする、急冷製鋼還元スラグ粉末を用いた水硬性結合材組成物を技術構成の特徴とする。
また、本発明は、製鉄所で鉄の製錬中に発生する副産物のうち電気炉溶融還元スラグに高圧、高速ガスを噴射・飛散させ、前記溶融還元スラグを急冷するステップ;前記急冷製鋼還元スラグを粉砕することによって急冷製鋼還元スラグ粉末を製造するステップ;前記急冷製鋼還元スラグ粉末に石膏を投入するステップ;前記急冷製鋼還元スラグ粉末及び石膏混合物に凝結の遅延のための遅延剤を投入するステップ;を含んで構成される、急冷製鋼還元スラグ粉末を用いた水硬性結合材組成物の製造方法を技術構成の特徴とする。
また、前記急冷製鋼還元スラグの急冷ステップは、前記溶融還元スラグに高圧、高速ガスを5秒〜10秒間噴射・飛散させ、1,300℃〜1,400℃の前記溶融還元スラグを400℃〜600℃に急冷することを特徴とする、急冷製鋼還元スラグ粉末を用いた水硬性結合材組成物の製造方法を技術構成の特徴とする。
また、前記急冷製鋼還元スラグ粉末の製造ステップは、3,000cm3/g以上の粉末度を有するように粉砕することを特徴とする、急冷製鋼還元スラグ粉末を用いた水硬性結合材組成物の製造方法を技術構成の特徴とする。
また、前記石膏としては、無水石膏、半水石膏及び二水石膏から選ばれる1種以上を使用することを特徴とする、急冷製鋼還元スラグ粉末を用いた水硬性結合材組成物の製造方法を技術構成の特徴とする。
また、前記石膏は、急冷製鋼還元スラグ粉末:石膏の重量に対して60:40〜90:10の重量比で使用することを特徴とする、急冷製鋼還元スラグ粉末を用いた水硬性結合材組成物の製造方法を技術構成の特徴とする。
また、前記遅延剤は、クエン酸粉末及び酒石酸粉末から選ばれる1種以上であることを特徴とする、急冷製鋼還元スラグ粉末を用いた水硬性結合材組成物の製造方法を技術構成の特徴とする。
また、前記遅延剤は、急冷製鋼還元スラグ粉末:遅延剤に対して100:0.1〜100:2の重量比で使用することを特徴とする、急冷製鋼還元スラグ粉末を用いた水硬性結合材組成物の製造方法を技術構成の特徴とする。
以下では、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明を好ましい実施例及び図面を通じて詳細に説明する。しかし、本発明は、多様な異なる形態に具現することができ、ここで説明する実施例に限定されることはない。
まず、鉄生産工程で発生した副産物である電気炉溶融還元スラグに高圧、高速ガスを5秒〜10秒間噴射・飛散させ、1,350℃から500℃に急冷処理し、ボールミル粉砕によって4,000cm3/gの粉末度を有する急冷製鋼還元スラグ粉末を製造し、酸化物の分析、鉱物組成のXRDグラフ、光学顕微鏡及びSEM粒度写真、水和熱特性、モルタル強度特性及び長さ変化特性を測定した。
図1は、本発明の急冷製鋼還元スラグ微粉末酸化物の分析表で、図2は、本発明の急冷製鋼還元スラグ微粉末の鉱物組成のXRDグラフで、図3は、本発明の急冷製鋼還元スラグ骨材の粒度別写真で、図4は、本発明の急冷製鋼還元スラグ骨材の粒度別光学顕微鏡写真で、図5は、本発明の急冷製鋼還元スラグ骨材の粒度別SEM写真で、図6は、本発明の急冷製鋼還元スラグ微粉末の写真で、図7は、本発明の急冷製鋼還元スラグ微粉末のSEM写真(×500)で、図8は、本発明の急冷製鋼還元スラグ微粉末の水和熱を示すグラフで、図9は、本発明の急冷製鋼還元スラグ微粉末硬化体の強度特性を示すグラフで、図10は、本発明の急冷製鋼還元スラグ微粉末硬化体の長さ変化を示すグラフで、図11は、本発明の遅延剤を使用した急冷製鋼還元スラグの微粉末の凝結特性を示すグラフで、図12は、本発明の水硬結合材組成物の凝結特性を示すグラフで、図13は、本発明の水硬結合材組成物の水和熱を示すグラフで、図14は、本発明の水硬結合材組成物の48時間累積水和熱を示すグラフで、図15は、本発明の水硬結合材組成物の強度特性を示すグラフで、図16は、本発明の水硬結合材組成物の長さ変化を示すグラフで、図17は、本発明の水硬結合材組成物硬化体の鉱物組成を示すXRDグラフで、図18は、本発明の水硬結合材組成物硬化体を示すSEM写真である。
まず、図1に示したように、急冷製鋼還元スラグ粉末(LFS)の酸化物の分析結果を見ると、急冷製鋼還元スラグ粉末(LFS)は、CaO40wt%〜60wt%、SiO25wt%〜20wt%、Al2O310wt%〜35wt%を含んで構成されているが、硬化を速くし、早強性、耐食性、耐火性を向上させる成分であるアルミナ(Al2O3)の含量が普通ポルトランドセメントまたは超速硬セメントの含量より重量%を基準にして2倍〜7倍多く、また、硬化を速くし、強度を向上させ、亀裂を防止する成分であるマグネシア(MgO、Periclase)の含量が普通ポルトランドセメントまたは超速硬セメントの含量より重量%を基準にして2倍〜3倍多いので、成分上、OPC(普通ポルトランドセメント;Ordinary Portland Cement)及びRSC(超速硬セメント;Regulated Set Cement)より遥かに有利である。
図2に示したように、急冷製鋼還元スラグの鉱物分析(XRD Diagram)の測定結果、急冷製鋼還元スラグ粉末は、速硬性水和物であるマイエナイト(Mayenite)(C12A7、12CaO・7Al2O3またはC11A7・CaF2、11CaO・7Al2O3・CaF2)を多量含有しているが、C12A7は水と反応する場合に急結が起こる鉱物であるので、超速硬性効果を有することが分かり、セメントの主要構成化合物であると共に水硬性に大きく寄与するβ−C2S(Belite、β−2CaO・SiO2)及びマグネシア(MgO、Periclase)も多量含有していることが分かる。
図3〜図5の粒度別写真、粒度別光学顕微鏡写真及び粒度別SEM写真に示したように、急冷製鋼還元スラグ骨材の粒形を見ると、粒形が球形に近い細骨材の形態を有するので、コンクリート用建設材料として活用する場合、ボールベアリング効果によって流動性が増加するという長所があり、実績率に優れ、骨材としての活用度が非常に高いことが分かる。
図6〜図7は、本発明の急冷製鋼還元スラグ微粉末の写真とSEMを用いて500倍率で拡大した写真である。これは、図4に示した急冷製鋼還元スラグ骨材を微粉砕し、普通ポルトランドセメントまたはそれ以上の粉末度で粉砕して使用することができる。
図8に示したように、24時間発熱特性によって初期水和熱を測定した結果、OPC及びRSCに比べて遥かに高い水和熱を示しており、その結果、急冷製鋼還元スラグ粉末の初期水和反応が急激に起こることが分かり、これによって急結が起こる。還元スラグ微粉末は、初期の急激な反応性により、凝結が不可能な程度の初期の速い急結を示した。このような高い水和熱と急結は、急冷製鋼還元スラグ粉末のマイエナイト(C12A7、12CaO・Al2O3)によるものであって、これは、作業性の低下をもたらし、急激な反応による初期の高い水和発熱と水和熱の減少は、膨張及び収縮を誘発し、強度低下の原因となる。
また、初期水和反応を主導する主要化合物であるC12A7は、水(H2O)と反応し、反応熱と共にC3AH6を生成するが、C3AH6は、結合力が強く、生成されると初期の数分〜数時間内に結合し、未水和物粒子の周辺に水和物被膜を形成するので、この水和物被膜が長期的な水和を妨害し、長期強度及び耐久性を低下させる。
図9に示したように、本発明の急冷製鋼還元スラグ微粉末硬化体の強度特性を測定するためのモルタル強度試験結果において、急冷製鋼還元スラグ粉末硬化体は、初期1日までは高い強度を示すが、3日強度及び長期材齢圧縮及び曲げ強度がOPC及びRSCに比べて劣ることが分かり、図10に示したように、本発明の急冷製鋼還元スラグ微粉末硬化体は、長さ変化時にOPC及びRSCより収縮量が高いため、体積安定性が大きく低下することが分かる。
以上説明したように、急冷製鋼還元スラグ粉末は、それ自体では超速硬性水硬結合材として使用される可能性があるが、初期の高い水和熱反応及び初期凝結によって作業が不可能であり、初期及び長期強度が低下するので、速硬性特性を示すと共に初期及び長期強度が発現され、OPCセメントの代替用として使用するためには、初期の高い水和熱反応及び初期凝結を遅延させるための遅延剤を使用することが不可避である。
これによって、本発明者等は、急冷製鋼還元スラグ粉末の初期の高い水和熱反応及び初期凝結を遅延させることによって作業性を確保し、初期及び長期強度を示すように針状型のエトリンガイト生成を活性化させ、初期及び長期強度の発現を可能にする急冷製鋼還元スラグ粉末の遅延剤を開発し、本発明を完成するに至った。
本発明の急冷製鋼還元スラグ粉末を用いた水硬結合材組成物は、製鉄所で鉄の製錬中に発生する副産物のうち電気炉溶融還元スラグに高圧、高速ガスを噴射・飛散させ、急冷処理して粉砕した急冷製鋼還元スラグ粉末(RC−LFS Powder)と、前記急冷製鋼還元スラグ粉末が水と反応するときに凝結の遅延のために使用する遅延剤と、前記急冷製鋼還元スラグ粉末が水と反応するときに凝結の遅延及び初期・長期強度の増進のために使用する石膏とを含んで構成される。
本発明において、前記遅延剤としては、クエン酸粉末及び酒石酸粉末から選ばれる多塩基酸を1種以上使用することができ、これらは、凝結速度を相当遅延させることによって急結現象を防止する。
クエン酸は、植物、動物に広く分布されている有機酸であって、その示性式は、HOOCCH2−C(OH)COOH−CH2COOHと表示され、無色、半透明結晶体または粉末となっており、強い酸味を示し、比重は1.542で、水に極めて溶けやすい性質を有している。クエン酸が動・植物に分布されている分布状態を見ると、特に、果物のうちレモンに4.0%〜8.0%、ブドウに1.2%〜2.1%、オレンジに0.6%〜1.0%程度含有されている。また、クエン酸は、人体の血液、骨、乳などにppm単位で含有され、人体全体に1mg/kg程度が含有されており、各種飲料水に0.1%〜0.25%、味・香味調節剤に0.25%〜4.0%程度が使用され、その他に、ジェリー、ジャム、キャンディー、化粧品などにも広く使用されている。文献によると、クエン酸は、分散剤、抗酸化剤、抗微生物としての作用もするものとして知られており、極めて環境にやさしい物質である。
また、クエン酸粉末と共にまたは単独で添加できる有機酸として、本発明では、酒石酸(Tartaric acid、dihydroxy succinic acid)を使用できるが、酒石酸は、無色透明結晶または白色粉末であって、無臭の酸味を示し、空気中で安定している。そして、酒石酸は、密度が1.76で、m.p.が170℃で、水に溶けやすい。また、酒石酸は、分子内にOH基を2つ以上有する2塩基酸であって、HOOC(CH2O)4COOHと表示される。また、酒石酸は、L、D、meso形態などの異性体を有し、天然的に遊離状態またはCa−塩、K−塩の形態で果物、植物界に広く分布されており、クエン酸と共に、菓子類及び食品などに広く使用されている環境にやさしい有機酸である。
前記クエン酸または酒石酸の凝結速度遅延メカニズムを見ると、クエン酸または酒石酸は、水に溶解し、陰イオンのクエン酸基または酒石酸基と陽イオンに解離されるが、陰イオンに帯電されたクエン酸基または酒石酸基は、水溶性Ca、Na、K化合物などの弱アルカリ物質と反応してこれらの塩を形成し、クエン酸カルシウム塩、クエン酸カリウム塩、クエン酸ナトリウム塩、クエン酸アルミニウム塩、酒石酸カルシウム塩、酒石酸カリウム塩、酒石酸ナトリウム塩、酒石酸アルミニウム塩を形成し、この過程で急冷製鋼還元スラグ粉末のマイエナイト(C12A7、12CaO・Al2O3)のCa及びAlと塩を形成することによって、水との接触直後、マイエナイト(C12A7、12CaO・Al2O3)から溶出されるCa2+イオンとAl3+イオンが反応し、カルシウムアルミネート水和物(CaO・Al2O3・nH2O)が生成されることを遅延させる。
このようなクエン酸または酒石酸は、本発明の急冷製鋼還元スラグ粉末に添加されて水和凝結を遅延させ、分散性及び流動性を良好にすることによって施工性を向上させ、硬化後に硬化体に存在する強アルカリを減少させることによって環境にやさしい硬化体を得ることができ、強度向上を補助するという効果も有する。
本発明において、前記遅延剤は、急冷製鋼還元スラグ粉末:遅延剤の重量に対して100:0.1〜100:2の重量比で使用することが好ましいが、遅延剤が0.1重量比未満であると、遅延効果を期待することができなく、遅延剤が2重量比を超えると、速硬性能が低下するという問題があり、強度発現及び耐久性に対して悪影響を及ぼし得る。
一方、本発明において、カルシウムアルミネートの急激な水和反応の遅延と同時に、安定的なエトリンガイトの生成反応と維持のためには、持続的に水溶液中にSO3 2−が供給されなければならないが、これが石膏を使用する理由である。
すなわち、石膏は、急冷製鋼還元スラグ粉末の速硬性水和物であるマイエナイト(C12A7、12CaO・Al2O3)のカルシウムアルミネート成分が水と接触するときに急激な発熱反応を起こしながら、ハイドロガーネット(hydrogarnet)というC3AnH2O(n=6〜12)水和物を生成し、直ぐ石膏と反応してエトリンガイト(3CaO・Al2O3・3CaSO4・32H2O)を形成する。
ところが、石膏の初期凝結遅延作用と初期・長期強度発現メカニズムを見ると、急冷製鋼還元スラグ粉末が水と接触する初期には、急速に水和反応をするカルシウムアルミネートに、まず、半水石膏から溶出されたSO3 2−イオンが反応し、カルシウムアルミネート水和物の表面に結晶性の小さいエトリンガイトを生成し、水との接触を防止することによって急速な水和反応を防止し、その結果、反応速度を遅延させ、可使時間を確保できるようになる。その後、継続的にSO3 2−イオンが供給され、エトリンガイトの結晶形態が角柱型針状に成長しながらカルシウムアルミネートを取り囲んでいる水和物被膜を破壊し、水との接触を再び起こすことによって、活発なエトリンガイト生成反応が起こるようになり、初期及び長期強度が発現される。
石膏の相互関係は、以下のように示すことができ、本発明では、二水石膏、α−半水石膏、β−半水石膏、及び無水石膏のうちいずれを使用しても構わない。
本発明において、石膏は、急冷製鋼還元スラグ粉末:石膏の重量に対して60:40〜90:10の重量比で使用することが好ましいが、石膏が10重量部未満であると、反応に必要なSO3 2−イオンが不足し、エトリンガイトの生成量が少ないため強度発現が低下し、石膏が40重量比を超えると、過度な石膏の含量により、急冷製鋼還元スラグ粉末の固有の物性発現が弱化されるという問題がある。
電気炉溶融還元スラグに高圧、高速ガスを5秒〜10秒間噴射・飛散させ、1,350℃から500℃に急冷処理し、ボールミル粉砕によって4,000cm3/gの粉末度を有する急冷製鋼還元スラグ粉末を製造し、これに遅延剤を0.0重量%、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%で投入したそれぞれの場合と、遅延剤0.5重量%を基準にしてα型半水石膏20重量%、30重量%、40重量%、無水石膏30重量%を混入した場合の凝結試験、水和熱特性、材齢別強度特性、長さ変化、水和物XRD分析及びSEM分析を実施した。
図11は、本発明の遅延剤を使用した急冷製鋼還元スラグ微粉末の凝結特性を示すグラフで、図12は、本発明の水硬結合材組成物の凝結特性を示すグラフで、図13は、本発明の水硬結合材組成物の水和熱を示すグラフで、図14は、本発明の水硬結合材組成物の48時間累積水和熱を示すグラフで、図15は、本発明の水硬結合材組成物の強度特性を示すグラフで、図16は、本発明の水硬結合材組成物の長さ変化を示すグラフで、図17は、本発明の水硬結合材組成物硬化体の鉱物組成を示すXRDグラフで、図18は、本発明の水硬結合材組成物硬化体のSEM写真である。
図11に示したように、遅延剤を添加していない急冷製鋼還元スラグの場合、作業が不可能であり、遅延剤を0.2重量%〜0.6重量%添加した場合は流動性が良好になる。そのため、本発明では、遅延剤を0.5重量%添加すると、30分程度の作業時間が確保されるため作業性が良好になり、必要作業時間に応じて遅延剤の量は変更可能である。しかし、2%以上の遅延剤を使用する場合、硬化体の物性に影響を与え得るので好ましくない。
図11に示したように、急冷製鋼還元スラグに遅延剤を0重量%〜0.6重量%添加した場合のそれぞれの凝結特性を見ると、遅延剤を添加していない場合は超速硬で初結及び終結時間がほとんど区分されなく、遅延剤の添加量が増加するにつれて凝結遅延が増加することが分かり、図12に示したように、石膏を混入した理由の一つである初期遅延効果は、約2分程度の遅延効果のみを示すことが分かる。しかし、結合材量に対して0.5%の遅延剤を使用した場合、既存の石膏を使用していない試験では初結及び終結が30分以内に行われたが、遅延剤と石膏を並行して使用した試験では約1時間30分程度の作業時間の確保が可能であることが分かった。
図13に示したように、石膏を混入していない急冷製鋼還元スラグ微粉末を単独で使用した場合、初期2時間以内の急激な反応により、水和熱が最大100まで上昇することが分かるが、石膏を20%〜30%混入した場合、水和熱を30以上低下させ、約70程度の水和熱ピークを示した。石膏の混入比率による水和熱特性を見ると、石膏混入率が40%に増加するにつれて水和熱がさらに減少し、初期水和熱の最大ピーク曲線がさらに緩くなることが確認された。これによって、初期の高い水和熱による亀裂及び強度低減の危険性は低下することが確認された。
図14は、急冷製鋼還元スラグ微粉末の初期48時間の累積温度を示したグラフである。図13に示したように、石膏を混入する場合、単独使用の高い初期水和熱を大きく減少できることが確認された。しかし、図14に示したように、石膏を混入した場合、初期の水和熱ピークは低下したが、材齢48時間にわたって発生する最終熱は、石膏を30%混入した場合にさらに高いことが確認された。そのため、初期の高い水和熱ピークを緩く減少させることによって、収縮及び膨張危険は減少させ、初期の反応性は高め、強度発現に寄与できることを確認することができる。
図15に示したように、石膏の混入比率による強度特性は、石膏を30%混入した場合、石膏を混入していない場合の初期3時間の強度が4.2MPaであることに比べて19.2MPaであって、初期強度の増進効果があることを確認した。そして、材齢28日にはOPCに対して129%の水和活性度を示すことによって、石膏を混入していない場合の66%より非常に高い水和活性度を示す。また、材齢28日では、RSCより高い強度を示している。
図16に示したように、石膏の混入比率による長さ変化を見ると、石膏を混入していない場合に長さ変化が最も激しく、石膏の混入に比例して長さ変化が安定していることが分かる。これは、石膏の混入によって膨張性エトリンガイトが生成して表れる収縮補償効果によるものであって、体積安定性を確保することができる。
図17に示したように、水和物のXRD分析結果を見ると、石膏が混入されていない場合の初期10分には超速硬物質であるマイエナイト(C12A7、12CaO・Al2O3)とCAH水和物が確認されたが、半水石膏を30重量%混入した場合、初期10分からエトリンガイトが多く検出され、強度向上に寄与することを確認することができる。
図18に示したように、水和物のSEM分析結果を見ると、急冷製鋼還元スラグ微粉末を単独で使用した場合、水和初期10分以内にCAH水和物粒子を確認することができ、これらが未水和粒子の表面に結合して長期的な水和反応を阻害することを確認することができた。しかし、半水石膏30重量%を混入した場合は、反応初期10分以内に明らかなエトリンガイトを確認することができ、材齢が増加するほどエトリンガイトが成長し、結合体組織が非常に緻密になったことを確認することができる。
以上説明したように、本発明の急冷製鋼還元スラグ粉末に遅延剤及び石膏を混入すると、遅延剤及び石膏の使用によって凝結遅延及び水和熱減少効果が表れることを確認することができ、初期数分内に多量のエトリンガイトが生成され、早期及び長期材齢での強度発現効果がOPCに比べて優れることが分かるので、本発明に係る急冷製鋼還元スラグ粉末を用いた水硬結合材組成物は、OPCの代替用として効率的に使用することができる。