WO2013018757A1 - リン酸鉄リチウムの製造方法、電極活物質、及び二次電池 - Google Patents
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Abstract
H3PO4等のP源、FeSO4・7H2O等の2価のFe化合物、及びH2O2等の酸化剤を所定割合で混合させた混合水溶液を作製する。そして、この混合水溶液をpHが1.5~9の緩衝溶液に滴下し、FePO4・nH2Oの共沈粉を生成する。LiOH・nH2Oを純水に溶解させてpH12~13の強アルカリ性の水溶液とし、FePO4・nH2Oを前記強アルカリ性水溶液下、FePO4・nH2OとLiOH・nH2Oとを反応させてLiFePO4の共沈粉を作製し、焼成処理を行なってLiFePO4の焼成粉を得る。これにより簡素な製造工程で二次電池用電極活物質に適した微粒で高純度のリン酸鉄リチウムを容易に製造できるようにする。
Description
本発明は、リン酸鉄リチウムの製造方法、電極活物質、及び二次電池に関し、より詳しくは二次電池用電極活物質に適したリン酸鉄リチウムの製造方法、このリン酸鉄リチウムを使用した電極活物質、及び該電極活物質を正極に含む二次電池に関する。
携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラ等の携帯用電子機器の市場拡大に伴い、これら電子機器のコードレス電源としてエネルギー密度が大きく長寿命の二次電池が待望されている。
そして、このような要求に応えるべく、リチウムイオン等のアルカリ金属イオンを荷電担体とし、その電荷授受に伴う電気化学反応を利用した二次電池が開発されている。特に、エネルギー密度の大きなリチウムイオン二次電池は、現在では広く普及している。
二次電池の構成要素のうち電極活物質は、充電反応、放電反応という電池電極反応に直接寄与する物質であり、二次電池の中心的役割を有する。すなわち、電池電極反応は、電解質中に配された電極と電気的に接続された電極活物質に対し電圧を印加することにより、電子の授受を伴って生じる反応であり、電池の充放電時に進行する。したがって、上述したように電極活物質は、システム的には、二次電池の中心的役割を有する。
そして、上記リチウムイオン二次電池では、正極活物質としてリチウム含有遷移金属酸化物を使用し、負極活物質として炭素材料を使用し、これらの電極活物質に対するリチウムイオンの挿入反応、及び脱離反応を利用して充放電を行っている。
正極活物質に使用されるリチウム含有遷移金属酸化物としては、従来より、LiCoO2(リチウム酸コバルト)、LiNiO2(ニッケル酸リチウム)、LiMn2O4(マンガン酸リチウム)等が知られている。この中でも、LiCoO2は、LiMn2O4等に比べ、充放電特性やエネルギー密度が良好であることから広く採用されている。
しかしながら、LiCoO2は、資源的制約が大きく高価な上に毒性の強いCoを含んでいるという問題がある。また、LiCoO2は、180℃程度の温度で大量の酸素を放出するため、可燃性の有機電解質を使用するリチウムイオン電池では、安全性の面でも問題がある。このため、LiCoO2を電極活物質に使用した場合は、小容量二次電池には適しているが、高出力・大容量の二次電池に使用するには多くの解決すべき課題がある。
そこで、近年では、リチウムイオン二次電池用の電極活物質として、オリビン型結晶構造を有するLiFePO4(リン酸鉄リチウム)が注目されている。このLiFePO4は、リン(P)を構成元素に含み、全ての酸素がリンと強固に共有結合している。このため、高温になっても酸素を放出することがなく、熱安定性に優れており、高出力・大容量の二次電池用電極活物質への応用に適していると考えられている。
このLiFePO4の合成法としては、従来より、固相法、水熱合成法、共沈法、ゾルーゲル法等が知られており、特に、共沈法は0.1μm程度の微粒子を工業的に合成することが可能である。
そして、特許文献1には、2価の鉄塩と2価のマンガン塩及びリン酸を溶解した水溶液にアルカリを添加し、鉄、マンガン及びリンを含む共沈体を得る第1工程、前記共沈体、リン酸リチウム及び導電性炭素材料を混合する第2工程、得られた混合物を乾式で粉砕処理して比容積が1.5mL/g以下の反応前駆体を得る第3工程、該反応前駆体を500~700℃で焼成する第4工程を含むMn原子を含有するリチウム鉄リン系複合酸化物炭素複合体の製造方法が提案されている。
この特許文献1では、FeSO4・7H2O等の2価のFe塩、MnSO4・H2O等の2価のMn塩、及H3PO4を溶解させた水溶液に水酸化ナトリウム等のアルカリを添加して(Fe,Mn)3(PO4)2・nH2Oの共沈粉を合成し、この共沈体にLi3PO4及びカーボンブラック等の導電性炭素材料を混合し、1.5mL/g以下に粉砕した後、500~700℃の温度で焼成し、これによりLi-Fe-P系複合酸化物炭素複合体を得ている。
また、非特許文献1には、共沈法で作製された高タップ密度を有するLiFePO4-炭素複合体の電気化学的挙動における形態特性の効果が報告されている。
この非特許文献1では、3価のFe塩であるFe(NO)3・9H2OとH3PO4とを出発原料とし、共沈法を使用してFePO4・nH2Oを合成し、これをアルゴン雰囲気下、550℃の温度で10時間熱処理し、水和水を脱離させてFePO4無水物を作製し、この後、このFePO4無水物をLi源となるLi2CO3及びC塗布源となるスクロースと混合し、Ar-H2雰囲気中、650~850℃の焼成温度で15時間焼成し、これによりLiFePO4-炭素複合体を得ている。
すなわち、この非特許文献1では、FePO4・nH2OをLi2CO3と直接混合して焼成した場合、焼成中に水和水がFePO4を酸化させるおそれがあるとし、焼成前にFePO4・nH2Oを熱処理し、水和水を脱離させている。
Sung Woo Oh et al.著"The effect of Morphological Properties on the Electrochemical Behavior of High Tap Density C-LiFePO4 Prepared via Coprecipitation", Journal of the Electrochemical Society, Vol.155, No.6,2008, pp.A414-420
しかしながら、特許文献1は、共沈粉である(Fe,Mn)3(PO4)2・nH2O中のFeが2価であることから、大気中で不安定であり、3価のFeに酸化されやすいという問題点があった。
また、非特許文献1については、本発明者の実験結果でも、FePO4・nH2Oを熱処理せずに直接Li2CO3と混合し、焼成した場合は、LiFePO4を単一相として得ることはできなかった。
そして、FePO4・nH2OとLi2CO3とを混合する前に、FePO4・nH2Oを熱処理することにより、単一相のLiFePO4を合成できることも確認した。
ただし、前記熱処理が必要である理由としては、非特許文献1に記載されているようなFePO4・nH2O共沈粉の水和水の酸化作用だけが原因ではなく、Li2CO3にも原因があると思われる。すなわち、焼成前に前記共沈粉を熱処理しない場合は、FePO4・nH2Oの水和水が焼成中に酸化剤として作用するが、Li2CO3から発生するCO2も酸化剤として作用する。そしてその結果、Feの3価から2価への還元が抑制されることから、3価のFe化合物が異相として残存し、単一相の高純度なLiFePO4を得ることができなかったものと思われる。
つまり、非特許文献1のようにFePO4・nH2OとLi2CO3とを混合させる場合、焼成前に熱処理を行なってFePO4・nH2Oの水和水を脱離させ、これにより酸化源を減少させた後、焼成処理を行なうことにより、単一相のLiFePO4を合成することができると考えられる。
いずれにしても非特許文献1のようにFePO4・nH2OとLi2CO3とを反応させてLiFePO4を作製するためには、FePO4・nH2Oの共沈粉を熱処理した後、Li2CO3と混合し、その後、焼成処理を行なう必要がある。
すなわち、非特許文献1の方法では、少なくとも2回の熱処理を行なわなければならず、製造工程が煩雑化し、しかも焼成粉中に異相が混在するため、高純度のLiFePO4を得るのは困難であるという問題点があった。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、簡素な製造工程で二次電池用電極活物質に適した微粒で高純度のリン酸鉄リチウムを容易に製造することができるリン酸鉄リチウムの製造方法、及びこの製造方法を使用して得られたリン酸鉄リチウムを主体とする電極活物質、及び該電極活物質を正極に含む二次電池を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究を行ったところ、3価の鉄を含有したリン酸鉄(III)とリチウム水酸化物を湿式で混合することで前記リン酸鉄(III)の粒子が微細化して、より微粒のリン酸鉄リチウムを得ることができるという知見を得た。
本発明はこのような知見に基づきなされたものであって、本発明に係るリン酸鉄リチウムの製造方法は、リン酸鉄(III)とリチウム水酸化物とを湿式で混合した後、焼成処理を行ってリン酸鉄リチウムの粉末を合成することを特徴としている。
また、本発明のリン酸鉄リチウムの製造方法は、前記リチウム水酸化物が強アルカリ性となるような水溶液下で、前記リチウム水酸化物と前記リン酸鉄(III)と混合するのが好ましい。
これによりリン酸鉄は強アルカリ下、分解してリチウムと反応することから、リン酸鉄が微細化し、焼成後には比表面積の大きな電極活物質材料に適した微粒のリン酸鉄リチウムを製造することができる。
さらに、本発明者が鋭意研究を重ねたところ、リン酸鉄(III)が水和水を含有した非晶質のものであっても、リチウム塩にリチウム水酸化物を用いることにより、二次電池の電極活物質に適した微粒で高純度のリン酸鉄リチウム(LiFePO4)を容易に製造することができるということが分かった。
すなわち、本発明のリン酸鉄リチウムの製造方法は、前記リン酸鉄(III)は、水和水を含有しているのが好ましい。
また、リン酸鉄(III)は、リン源と3価の鉄を含有した鉄化合物とを反応させて合成することができ、より好ましくはリン源と前記鉄化合物を溶解させた水溶液を、pHが1.5~9に調製された緩衝溶液に滴下して接触させることにより、鉄とリンの元素分布に分散ムラが生じることもなく、鉄とリンが均一乃至略均一に分散した高純度のリン酸鉄を高効率で製造することができる。
すなわち、本発明のリン酸鉄リチウムの製造方法は、前記リン酸鉄(III)はリン源と3価の鉄を含有した鉄化合物とを反応させて合成するのが好ましい。
また、本発明のリン酸鉄リチウムの製造方法は、前記リン酸鉄(III)は、リン源と前記鉄化合物とを溶解させた混合水溶液をpHが1.5~9の緩衝溶液に接触させて生成するのがより好ましい。
これによりFe(OH)3のような副生物が生成されることもなく、FeとPの元素分布が均一乃至略均一に分散した高純度のリン酸鉄を高効率で得ることができる。しかも、緩衝溶液の緩衝作用により粉末生成時のpHの変動も小さく、微粒で粒径の揃ったリン酸鉄の粉末を得ることができる。
また、本発明に係る電極活物質は、電池電極反応によって充放電を繰り返す二次電池の活物質として使用される電極活物質であって、上記いずれかに記載の方法で製造されたリン酸鉄リチウムを主体としていることを特徴としている。
また、本発明に係る二次電池は、正極、負極、及び電解質を有し、前記正極が、上記電極活物質を含むことを特徴としている。
上記リン酸鉄リチウムの製造方法によれば、リン酸鉄(III)又は水和水を含有したリン酸鉄(III)とリチウム水酸化物とを湿式で混合した後、焼成処理を行ってリン酸鉄リチウムの粉末を合成するので、安定した3価の鉄を含有したリン酸鉄から1回の熱処理で容易に高純度のリン酸鉄リチウムを製造することが可能となる。
また、本発明の電極活物質によれば、電池電極反応によって充放電を繰り返す二次電池の活物質として使用される電極活物質が、上記リン酸鉄リチウムを主体としているので、安全で高エネルギー密度を有する電極活物質を得ることができる。
また、本発明の二次電池によれば、正極、負極、及び電解質を有し、前記正極が、上記電極活物質を含むので、安全面に優れた大容量・高出力の二次電池を得ることができる。
次に、本発明を実施するための形態を詳説する。
本発明に係るリン酸鉄リチウムの製造方法は、P源と3価のFeを含有したFe化合物とを反応させてFePO4・nH2O(リン酸鉄(III))の粉末(共沈粉)を生成し、この共沈粉とLiOH・H2O(水酸化リチウム)とを湿式で混合し、焼成処理を行なってLiFePO4(リン酸鉄リチウム)の粉末(焼成粉)を生成している。
そしてこれにより、製造工程の煩雑化を招くこともなく、1回の焼成処理でFePO4・nH2OからLiFePO4を容易に製造することができる。しかも、FePO4・nH2Oは3価のFeを含有していることから、大気中でも安定しており、合成反応が安定的に進行し、異相を形成することもなく高純度のLiFePO4を得ることができる。特に、FePO4・nH2Oを強アルカリ性に調製されたLiOH・nH2Oと湿式混合させることにより、FePO4・nH2Oは分解しながらLiと反応する。したがって、湿式混合で得られた反応物は微細となり、焼成処理により比表面積が大きく、微粒のLiFePO4粉末を得ることができる。
以下、上記LiFePO4の製造方法を具体的に説明する。
まず、P源と3価のFeを含有したFe化合物とを反応させてFePO4・nH2Oの粉末を生成する。
このFePO4・nH2Oを生成するための具体的な方法は、特に限定されるものではないが、P源とFe化合物とを溶解させた混合水溶液をpHが1.5~9の緩衝溶液に接触させて反応させ、FePO4・nH2Oを生成するのが好ましい。
すなわち、P源と3価のFe化合物とを溶解させた混合水溶液を、pHが9以下に調製された緩衝溶液に滴下して接触させると、Fe(OH)3等の副生物が生成されることもなく、FePO4・nH2Oを生成することができる。そして、これによりFeとPの元素分布が均一乃至略均一で、微粒かつ高純度のFePO4・nH2Oを高効率で生成することが可能となる。しかも、緩衝溶液の緩衝作用により、pHの変動が抑制されるので、FePO4・nH2Oの粉末生成時のpHの変動も小さく、粒径の揃った球形状のFePO4・nH2O粉末を得ることができる。
尚、緩衝溶液のpHが1.5未満になると、沈殿せずに溶出してしまうFeとPの量が増加し、粉末生成の収率が低下するおそれがあることから好ましくない。
次に、この緩衝溶液を使用したFePO4・nH2Oの作製方法を詳述する。
まず、FeSO4・7H2OやFeCl2・4H2O等の2価のFeを含有したFe化合物、H3PO4、(NH4)H2PO4、(NH4)2HPO4等のP源、及びH2O2等の酸化剤を用意し、これらが所定割合となるように混合し、混合水溶液を作製する。ここで、2価のFe化合物とP源とは、モル比率で等量乃至略等量となるように混合し、酸化剤は、2価のFeが3価にFeに完全に酸化されるように2価のFe化合物に対し過剰(例えば、モル比で1.5倍程度)に添加する。
次いで、pHが9以下、好ましくは1.5~9に調製された緩衝溶液を作製する。
ここで、緩衝溶液の作製方法は特に限定されるものではなく、例えば、酢酸-酢酸アンモニウム、乳酸-乳酸ナトリウム、グリコール酸-グリコール酸ナトリウム、マレイン酸-マレイン酸二ナトリウム等の弱酸-共役塩基を混合させて緩衝溶液を作製する方法が広く知られており、これら弱酸-共役塩基の混合割合を適宜調整して作製することができる。また、緩衝溶液の構成物質の組み合わせも弱酸-共役塩基に限定されるものではなく、その他の組み合わせ、例えば弱酸-強塩基等であってもよい。
次いで、この緩衝溶液を常温で撹拌し、緩衝溶液のpHを監視しながら前記混合水溶液を緩衝溶液に滴下して接触させ、これにより褐色のFePO4・nH2Oの共沈粉が得られる。
尚、混合水溶液の滴下量が増加するに伴い、緩衝溶液のpHは低下するが、混合水溶液の滴下はpHが1.5に到達する前に終了するのが好ましい。pHが1.5以下になった後も混合水溶液の滴下を継続すると、上述したように沈殿したFePO4・nH2Oが溶解し始めて、FeやPが溶出し、このため沈殿粉末の収率低下を招くおそれがある。
また、上記緩衝溶液を使用せずにアンモニア水やNaOH等のアルカリ溶液を混合水溶液に滴下した場合は、滴下周辺のpHが一時的に大きくなってFe(OH)3が優先的に生成されることから好ましくない。すなわち、この場合、混合水溶液を撹拌することにより、滴下周辺のpHは低下し、FePO4が生成されていくが、一旦生成されたFe(OH)3は、FePO4に変化しにくい。このため、得られた共沈粉はFePO4とFe(OH)3との混合物となり、FeとPが均一に分散せずに分散ムラが生じ、粒度分布もバラツキが大きく、形状も不揃いになり、好ましくない。
次いで、このFePO4・nH2OをLiOH・H2Oと湿式混合して反応させ、これによりLiFePO4を生成する。
すなわち、LiOH・H2Oは白色固体であるが水溶性を有しており、例えば、溶媒としての純水に溶解させると、スラリーはpHが12~13の強アルカリ性になる。そして、このような強アルカリ性の下、FePO4・nH2OとLiOH・H2Oとを湿式混合させると、FePO4・nH2Oが分解してLiと反応し、微細化する。したがって、このスラリーを乾燥、造粒することにより、微粒で比表面積の大きなLiFePO4の粉末を得ることができる。
具体的には、上記FePO4・nH2OとLiOH・H2Oとが、モル比率で1:1となるように、これらFePO4・nH2O及びLiOH・H2Oを秤量し、この秤量物を純水及びポリカルボン酸等の高分子分散剤と共にボールミルに投入し、混合粉砕し、LiFePO4の粉末を得ることができる。
尚、電子伝導性を確保する観点からは、FePO4・nH2Oにスクロース等のカーボン源を添加し、LiFePO4の表面をカーボンで被覆するのが好ましい。また、LiFePO4を微細化して比表面積を増大させるためにもカーボンを添加するのが好ましい。すなわち、LiFePO4の表面をカーボンで被覆することにより、焼成時にLiFePO4の粒成長が阻害され、大きな比表面積を確保することができる。
次いで、この混合粉末を乾燥し、造粒した後、所定の還元雰囲気下、所定温度(例えば、500~700℃)で5時間程度熱処理を行う。そしてこれにより3価のFeが2価に還元され、微粒で比表面積の大きなLiFePO4の焼成粉が得られる。
このようにして得られたLiFePO4は、異相が形成されることもなく、高純度であり、二次電池用の電極活物質に好適に使用することができる。
また、上記LiFePO4は、微粒で比表面積が大きいことから、反応表面積が増大し、電子導電性が向上し、このLiFePO4を電極活物質に使用することにより、より一層良好な電池特性を得ることが可能となる。
しかも、本発明のLiFePO4を主体とした電極活物質は、原材料がCoのような資源的制約もなく、安価で入手容易であり、しかも安全性にも優れた大容量・高出力の二次電池を低コストで実現することが可能となる。
次に、前記電極活物質を使用した二次電池について詳述する。
図1は、本発明に係る二次電池の一実施の形態としてのコイン型二次電池を示す断面図であって、本実施の形態では、LiFePO4を主体とした電極活物質を正極活物質に使用している。
電池缶1は、正極ケース2と負極ケース3とを有し、該正極ケース2及び負極ケース3は、いずれも円盤状の薄板形状に形成されている。また、正極集電体を構成する正極ケース2の底部中央には、電極活物質をシート状に形成した正極4が配されている。また、正極4上にはポリプロピレン等の多孔質フィルムで形成されたセパレータ5が積層され、さらにセパレータ5には負極6が積層されている。負極6としては、例えば、Cuにリチウムの金属箔を重ね合わせたものや、黒鉛やハードカーボン等のリチウム吸蔵材料を前記金属箔に塗布したものを使用することができる。そして、負極6にはCu等で形成された負極集電体7が積層されると共に、該負極集電体7には金属製ばね8が載置されている。また、電解質9が内部空間に充填されると共に、負極ケース3は金属製ばね8の付勢力に抗して正極ケース2に固着され、ガスケット10を介して封止されている。
次に、上記二次電池の製造方法の一例を詳述する。
まず、電極活物質の主体となるLiFePO4を電極形状に形成する。例えば、LiFePO4を導電補助剤、及び結着剤と共に混合し、溶媒を加えてスラリーとし、該スラリーを正極集電体上に任意の塗工方法で塗工し、乾燥することにより正極4を形成する。
ここで、導電補助剤としては、特に限定されるものでなく、例えば、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック等の炭素質微粒子、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン等の炭素繊維、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアセン等の導電性高分子などを使用することができる。また、導電補助剤を2種類以上混合して用いることもできる。尚、導電補助剤の正極4中の含有率は10~80重量%が好ましい。
また、結着剤も特に限定されるものではなく、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンオキサイド、カルボキシメチルセルロース等の各種樹脂を使用することができる。
さらに、溶媒についても、特に限定されるものではなく、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、γ-ブチロラクトン等の塩基性溶媒、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ニトロベンゼン、アセトン等の非水溶媒、メタノール、エタノール等のプロトン性溶媒等を使用することができる。
また、溶媒の種類、有機化合物と溶媒との配合比、添加剤の種類とその添加量等は、二次電池の要求特性や生産性等を考慮し、任意に設定することができる。
次いで、この正極4を電解質9に含浸させて該正極4に前記電解質9を染み込ませ、その後、正極ケース2の底部中央の正極集電体上に正極4を載置する。次いで、前記電解質9を含浸させたセパレータ5を正極4上に積層し、さらに負極6及び負極集電体7を順次積層し、その後内部空間に電解質9を注入する。そして、負極集電体7上に金属製ばね8を載置すると共に、ガスケット10を周縁に配し、かしめ機等で負極ケース3を正極ケース2に固着して外装封止し、これによりコイン型二次電池が作製される。
尚、上記電解質9は、正極4と対向電極である負極6との間に介在して両電極間の荷電担体輸送を行うが、このような電解質9としては、室温で10-5~10-1S/cmの電気伝導度を有するものを使用することができ、例えば、電解質塩を有機溶剤に溶解させた電解液を使用することができる。
ここで、電解質塩としては、例えば、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2、Li(C2F5SO2)2N、Li(CF3SO2)3C、Li(C2F5SO2)3C等を使用することができる。
また、有機溶剤としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ-ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等を使用することができる。
このように本実施の形態によれば、上述した微粒で高純度のLiFePO4を正極活物質の主体として使用しているので、大容量・高出力で安全性にも優れた二次電池を低コストで実現することが可能となる。
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上記実施の形態では、リチウム水酸化物は、LiOH・H2Oで表される水和物を例示して説明したが、無水物であってもよい。
また、上記実施の形態では、LiOH・H2Oを純水に溶解させて強アルカリ性にしているが、強アルカリ性の水溶液に調製できるのであれば、純水以外の溶媒を使用してもよい。
また、上記実施の形態では、FePO4の製造過程において、2価のFe化合物と酸化剤とを混合させることにより、2価のFeを3価のFeも酸化させて3価のFe化合物を得ているが、当初から3価のFe化合物を使用し、緩衝溶液に滴下して接触させてもよく、この場合のFe化合物としては、例えばFeCl3・6H2O等を使用することができる。
また、上記実施の形態では、コイン型二次電池について説明したが、電池形状は特に限定されるものでないのはいうまでもなく、円筒型、角型、シート型等にも適用できる。また、外装方法も特に限定されず、金属ケースや、モールド樹脂、アルミラミネートフイルム等を使用してもよい。
次に、本発明の実施例を具体的に説明する。
〔試料の作製〕
FeSO4・7H2Oを純水に溶解させ、これにP源としてのH3PO4(85%水溶液)と酸化剤としてのH2O2(30%水溶液)を加えた混合水溶液を作製した。ここで、FeSO4・7H2O、H3PO4、及びH2O2はモル比率で1:1:1.5となるように調合した。
FeSO4・7H2Oを純水に溶解させ、これにP源としてのH3PO4(85%水溶液)と酸化剤としてのH2O2(30%水溶液)を加えた混合水溶液を作製した。ここで、FeSO4・7H2O、H3PO4、及びH2O2はモル比率で1:1:1.5となるように調合した。
次に、酢酸に純水を加え、これに酢酸アンモニウムを溶かすことで緩衝溶液を作製した。尚、酢酸と酢酸アンモニウムのモル比は1:1であり、酢酸及び酢酸アンモニウムの濃度は、いずれも0.5mol/Lとした。この緩衝溶液のpHを測定したところ、4.6であった。
次いで、この緩衝溶液を常温で撹拌しながら、前記混合水溶液を緩衝溶液に滴下し、沈殿粉末を作製した。尚、混合水溶液の滴下量が増加するに伴い、緩衝溶液のpHは低下し、pHが2.0になった時点で混合水溶液の緩衝溶液への滴下を終了した。
次いで、得られた沈殿粉末をろ過し、大量の純水で洗浄した後、120℃の温度に加熱し、乾燥させ、褐色のFePO4・2H2Oの粉末を作製した。
次に、このFePO4・2H2Oの粉末とLiOH・H2O(水酸化リチウム・一水和物)とをモル比で1:1となるように調合し、さらに焼成後のLiFePO4:100重量部に対して7重量部となるように、カーボン源としてのスクロースを秤量し、これらに純水とポリカルボン酸系高分子分散剤とを添加し、ボールミルを使用して混合粉砕し、スラリーを得た。次いで得られたスラリーをスプレードライヤで乾燥した後、造粒し、H2-H2Oの混合ガスを使用して酸素分圧が10-20MPaの還元雰囲気に調整し、600℃の温度で5時間、熱処理し、実施例試料を作製した。
また、Li源として、LiOH・H2Oの代わりにLi2CO3を使用した以外は、実施例試料と同様の方法・手順で比較例試料を作製した。
〔試料の評価〕
実施例及び比較例の各試料について、X線回折装置を使用してX線回折スペクトルを測定し、構成相を同定した。
実施例及び比較例の各試料について、X線回折装置を使用してX線回折スペクトルを測定し、構成相を同定した。
図2はその測定結果を示す。横軸が回折角2θ(°)、縦軸はX線強度(a.u.)である。図中、○印がLiFePO4の発生点を示し、△印はFe2O3の発生点を示し、×印はLi3PO4の発生点を示している。
この図2から明らかなように、比較例試料は、LiFePO4の他、Fe2O3やLi3PO4のような異相が形成されているのに対し、実施例試料は、これらの異相が形成されず、LiFePO4の単相粉末となっており、高純度のLiFePO4が得られることが分かった。
次いで、実施例試料について、CS計でカーボン量を測定し、さらにBET法で比表面積を求めた。
表1は、実施例及び比較例の各試料のLi源、構成相、カーボン量、及び比表面積を示している。
この表1から明らかなように、実施例試料の比表面積は32.15m2/gと大きく、微細なLiFePO4が得られることが分かった。
図3は原料に使用したFePO4・2H2OのSEM像、図4は実施例試料の乾燥後のSEM像、図5は実施例試料の焼成後のSEM像であり、いずれも同一倍率で撮像している。
図3及び図4の対比から明らかなように、原料段階に比べ、乾燥後には粒子が極めて微粒化していることが分かる。
そして、図4及び図5から明らかなように、実施例試料は、焼成前の乾燥時点で既に粒径が50nm程度の微細な粒子が形成され、焼成後も微粒状態を維持することが分かった。
〔二次電池の作製〕
実施例試料を使用して二次電池を作製した。
実施例試料を使用して二次電池を作製した。
まず、LiFePO4、導電補助剤としてのアセチレンブラック、結着剤としてのポリフッ化ビニリデンを用意し、これらLiFePO4、アセチレンブラック、及びポリフッ化ビニリデンが、重量比で88:6:6となるように秤量して混合し、これを溶媒としてのN-メチル-2-ピロリドン中に分散させてスラリーを作製し、これを厚さ20μmのアルミ箔上に6mg/cm2となるように塗布し、140℃の温度で乾燥した後、98MPaの圧力でプレスし、これにより電極シートを作製し、さらに直径12mmに打ち抜き、LiFePO4を主体とする正極活物質を有する正極を作製した。
次に、この正極を電解液に含浸し、該正極中の空隙に電解液を染み込ませた。電解液としては、モル濃度が1.0mol/LのLiPF6(電解質塩)を含有した有機溶剤であるエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート混合溶液を使用した。尚、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合比率は体積%でエチレンカーボネート:ジエチルカーボネート=3:7とした。
次に、この正極を正極集電体上に載置し、さらに前記電解液を含浸させたポリプロピレン多孔質フイルムからなる厚さ20μmのセパレータを前記正極上に積層し、さらに銅箔の両面にリチウムを貼布した負極をセパレータ上に積層した。そして、負極上にCu製の負極集電体を積層した後、内部空間に電解液を注入し、その後負極集電体上に金属製ばねを載置すると共に、周縁にガスケットを配置した状態で負極ケースを正極ケースに接合し、かしめ機によって外装封止し、これにより、正極活物質としてLiFPO4、負極活物質として金属リチウムを有する直径20mm、厚さ3.2mmの二次電池を作製した。
〔二次電池の動作確認〕
この二次電池を、25℃の恒温槽内で、電圧範囲を2.0~4.2Vとし、充放電レートを0.2C(1Cは1時間で充電又は放電が終了するまでの電流量)として充放電させた。すなわち、充電レート0.2Cで電圧が4.2Vになるまで充電し、その後、放電レート0.2Cで2.0Vまで放電した。
この二次電池を、25℃の恒温槽内で、電圧範囲を2.0~4.2Vとし、充放電レートを0.2C(1Cは1時間で充電又は放電が終了するまでの電流量)として充放電させた。すなわち、充電レート0.2Cで電圧が4.2Vになるまで充電し、その後、放電レート0.2Cで2.0Vまで放電した。
図6はその測定結果を示し、横軸が容量密度(mAh/g)、縦軸は電圧(V)である。
この図6に示すように、充放電電圧が約3.4Vで電圧平坦部を有する二次電池であることが確認された。
そして、放電容量から電極活物質当たりの容量密度を算出したところ、154mAh/gの高容量が得られることが分かった。
簡素な製造工程で二次電池用電極活物質に適した微粒で高純度のリン酸鉄リチウムを容易に製造できる。
4 正極
6 負極
9 電解質
6 負極
9 電解質
Claims (7)
- リン酸鉄(III)とリチウム水酸化物とを湿式で混合した後、焼成処理を行ってリン酸鉄リチウムの粉末を合成することを特徴とするリン酸鉄リチウムの製造方法。
- 前記リチウム水酸化物が強アルカリ性を有するような水溶液下で、前記リチウム水酸化物と前記リン酸鉄(III)とを混合させることを特徴とする請求項1記載のリン酸鉄リチウムの製造方法。
- 前記リン酸鉄(III)は水和水を含有していることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のリン酸鉄リチウムの製造方法。
- 前記リン酸鉄(III)は、リン源と3価の鉄を含有した鉄化合物とを反応させて合成することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のリン酸鉄リチウムの製造方法。
- 前記リン酸鉄は、リン源と前記鉄化合物とを溶解させた混合水溶液をpHが1.5~9の緩衝溶液に接触させて生成することを特徴とする請求項4記載のリン酸鉄リチウムの製造方法。
- 電池電極反応によって充放電を繰り返す二次電池の活物質として使用される電極活物質であって、
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の方法で製造されたリン酸鉄リチウムを主体としていることを特徴とする電極活物質。 - 正極、負極、及び電解質を有し、前記正極が、請求項6記載の電極活物質を含むことを特徴とする二次電池。
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