サリューシンをターゲットとする動脈硬化性疾患の治療剤及び検出薬 技術分野
本発明は、 サリューシン- a又はサリューシン- /3をターゲットとして、 動脈硬 化性疾患を予防又は治療する薬剤に関し、 さらに、サリューシン- aをターゲット として、 動脈硬化性疾患を検出する方法及び検出薬に関する。 背景技術
平成 17年 (2005年) の厚生労働省人口動態統計によると、 本邦のがんによる 死亡者数は 32万 6千人で死因の第一位を占める。がんに続き、死因の第二位を心 臓病 (17万 3千人)、 第三位を脳卒中 (13万 3千人) が占める。 心臓病と脳卒中 による死亡者数を合計するとほぼがんによる死亡者数に匹敵する。その中で特に、 心臓病の代表である虚血性心疾患や、 脳卒中の代表的病型である脳梗塞は動脈硬 化を基礎病態として発症する。 従って動脈硬化の発症 ·進展を予防することは、 国民の健康維持、 増進に重要な意味をもつ。
動脈硬化の初期病変に特徴的な病理所見に、 細胞内にコレステロールエステル を蓄積したマクロファージ由来泡沫細胞の集積がある。 マクロファージは種々の スカベンジャー受容体を介して酸化低密度リポタンパク質 (酸化 LDL) などの変 性 LDLを細胞内に取込む。 酸化' LDLの主要コレステロールであるコレステロール エステルはリソソームで遊離コレステロールと脂肪酸に分解される。 細胞内の遊 離コレステロールが過剰になると、 2つの機構により調節を受ける。 第 1 は ATP - binding cassette transporter Al (ABCA- 1) による細胞外へのコレステロ一 ル の 排 出 (cholesterol efflux) で 、 第 2 は acyl-CoA : cholesterol acyltransferase-1 (ACAT- 1) によるコレステロ一ノレエステノレへの変換である。 コ レステロールエステルが細胞質に蓄積するとマクロファージは泡沫細胞に変化し, 動脈硬化の初期病変が形成される。
動脈硬化の初期病変に特徴的な病理所見に、 細胞内にコレステロールエステル
を蓄積したマクロファージ由来泡沫細胞の集積がある。 マクロファージ由来泡 ¾ 細胞は種々のサイ トカインを分泌し、 血管平滑筋細胞の動脈中膜から内膜への遊 走や内膜における増殖を誘導す^る。 内膜に遊走した血管平滑筋細胞は細胞外マト リ ックスを合成分泌し、 その結果内膜が肥厚する。 内膜の肥厚によって血管内腔 は狭窄し血流が減少する。 動脈硬化の中期以降には血管平滑筋細胞に由来する泡 沫細胞も認められる。
サリ ユーシン(salus in)はバイオインフォマティ ックス解析によって最近同定 された循環調節性物質であり、 サリユーシン- αとサリユーシン- の 2種類の関 連ペプチドがある (非特許文献 1を参照)。東京医科歯科大学の七里らは、 ヒ トの cDNAデータベースを検索し、明らかなシグナル配列を有する分泌性タンパク質を コードする遺伝子をスクリ一ユングした。 これらの遺伝子を培養血管内皮細胞に トランスフ クシヨンし、 その培養上清を培養血管平滑筋細胞に添加して細胞内
Ca2+濃度の上昇を誘導する遺伝子としてサリューシンを同定した (非特許文献 2 を参照)。 サリューシン- は 28 個のアミノ酸からなり、 サリューシン- /3は 20 個のアミ ノ酸からなる。 これらは前駆体であるプレブロサリ ユ ーシン (Preprosalus in) のプロセッシングにより生成する。 プレプロサリューシンは 242個のアミノ酸から構成され、 早期発症型捻転ジストニア Tors i on dystoniaの 原因遺伝子として報告された TORIA (DYTI)の関連遺伝子である T0R2A遺伝子が選 択的スプライシングを受けて frame shift が生じることにより生合成される。 N 末端にアミノ酸 26個のシグナル配列を有し、 216ァミノ酸の Prosalus inの C末 端側から 2 つのサリューシンが生合成されると推測されている。 サリューシン- α及ぴサリューシン- はともにヒ ト血管壁細胞、内分泌 ·中枢神経系等に発現の 分布が認められている。最近では、 ヒト血清中及び尿中のサリューシン - aの濃度 はラジオィムノアッセィにて測定可能であり、 健常人ではそれぞれ 23. 3 土 8. 1 ρΜ、 156. 8 士 95. 8 ρΜ であった (非特許文献 3を参照)。 その主な作用として、 強力な血圧降下作用及ぴ心拍数減少作用 ( β > α )、下垂体からのバソプレツシン 分泌促進作用 ( のみ) とともに血管平滑筋細胞及び線維芽細胞に対する増殖促 進作用 ( β > a ) がラットにおいて確認されている。
非特許文献 1 Shichiri M et al. , Nat Med. 2003 ; 9 : 1166-1172.
非特許文献 2 七里眞義、 医学のあゆみ Vol. 210, No. 4 2004. 7. 24, p. 267-270 非特許文献 3 Sato K et al. , Peptides. 2006 ; 27 : 2561 - 2566. 発明の開示
本発明は、 動脈硬化性疾患の予防及び治療薬の提供を目的とし、 さらに動脈硬 化性疾患を検出するための方法及び試薬の提供を目的とする。
本発明者らは、 血圧や心拍数などを制御する新規血管作動性物質サリューシン は、既知の血管作動性物質であるゥロテンシン IIゃセロトニンと同様にマクロフ ァージに作用してマクロファージの泡沫化に影響を与え、 動脈硬化病変の形成に 何らかの役割を担っているのではないかと推測した。 そこで、 本発明者等は、 マ クロファージ泡沬化の制御並びにそれに必要不可欠な酵素である ACAT - 1 の発現 調節に焦点をあて、 サリユーシン - α並びにサリユーシン - ]3の効果を検討するこ とにより、 動脈硬化病変形成においてサリューシンが病態生理学的に一定の役割 を ¾つていることを見出した。 具体的には、本発明者等は、 サリューシン _ αがマ クロファージの泡沫化を抑制することにより、 動脈硬化の病変形成を抑制し、 さ らにサリューシン- 0がマクロファージの泡沫化を促進することにより、動脈硬化 の病変形成を促進することを見出し、サリユーシン _ ]3の作用を抑制し得る化合物 又はサリューシン -ひが動脈硬化性疾患の予防又は治療に用いることができるこ とを見出した。また、動脈硬化病変と生体試料中のサリューシン の濃度に逆相 関関係があり、サリューシン _ αを動脈硬化性疾患の検出のマーカーとして用いる ことができることを見出し、 本発明を完成させるに至った。
すなわち、 本発明は以下のとおりである。
[ 1 ] サリユーシン - α又はサリユーシン - αのァゴニストを有効成分として含む 動脈硬化性疾患治療剤。
C 2 ] サリューシン のアンタゴニストを有効成分として含む動脈硬化性疾患 治療剤。
[ 3 ] サリユーシン- βのアンタゴニストが抗サリユーシン - β抗体である [ 2 ]の 動脈硬化性疾患治療剤。
[ 4 ] 動脈硬化性疾患が急性冠症候群、 心筋梗塞若しくは狭心症である虚血性心 疾患、 脳梗塞、 脳出血、 大動脈瘤、 大動脈解離、 腎硬化症及び閉塞性動脈硬化症 からなる群から選択される [ 1 ]〜 [ 3 ]のいずれかの動脈硬化性疾患治療剤。
[ 5 ] サリユーシン -ひ若しくはサリユーシン- αのァゴュストとサリユーシン- のアンタゴニストとを含有する動脈硬化性疾患治療用組成物。
[6 ] サリユーシン- βのアンタゴニストが抗サリユーシン- /3抗体である [ 5 ]の 動脈硬化性疾患治療用組成物。
[ 7] 動脈硬化性疾患が急性冠症候群、 心筋梗塞若しくは狭心症である虚血性心 疾患、 脳梗塞、 脳出血、 大動脈瘤、 大動脈解離、 腎硬化症及び閉塞性動脈硬化症 からなる群から選択される [ 5 ]又は [ 6 ]の動脈硬化性疾患治療用組成物。
[ 8 ] 生体試料中のサリユーシン- aを測定することを含む、動脈硬化性疾患を検 出する方法。
[9 ] 動脈硬化性疾患が急性冠症候群、 心筋梗塞若しくは狭心症である虚血性心 疾患、 脳梗塞、 脳出血、 大動脈瘤、 大動脈解離、 腎硬化症及び閉塞性動脈硬化症 からなる群から選択される [ 8 ]の動脈硬化性疾患を検出する方法。
[ 1 0] 生体試料が、 血清、 血漿及ぴ尿からなる群から選択される [8 ]又は [9 ] の動脈硬化性疾患を検出する方法。
[ 1 1 ] 生体試料中のサリューシン- αを測定することを含む、動脈硬化性疾患の 重症度を判定する方法。 .
[ 1 2] 動脈硬化性疾患が急性冠症候群、 心筋梗塞若しくは狭心症である虚血性 心疾患、 脳梗塞、 脳出血、 大動脈瘤、 大動脈解離、 腎硬化症及び閉塞性動脈硬化 症からなる群から選択される [ 1 1 ]の動脈硬化性疾患の重症度を判定する方法。
[ 1 3 ] 生体試料が、血清、血漿及び尿からなる群から選択される [ 1 1 ]又は[ 1 2 ]の動脈硬化性疾患の重症度を判定する方法。
[ 1 4] サリューシン- からなる、動脈硬化性疾患を検出するための診断用マー カー。
[ 1 5 ] 動脈硬化性疾患が急性冠症候群、 心筋梗塞若しくは狭心症である虚血性 心疾患、 脳梗塞、 脳出血、 大動脈瘤、 大動脈解離、 腎硬化症及び閉塞性動脈硬化 症からなる群から選択される [ 1 4]の動脈硬化性疾患を検出するための診断用マ
一力一。
[ 1 6 ] 抗サリューシン-ひ抗体を含む、 サリューシン- αを動脈硬化性疾患を検 出するための診断用マーカーとして用いる、 動脈硬化性疾患の検出用試薬。
[ 1 7 ] 動脈硬化性疾患が急性冠症候群、 心筋梗塞若しくは狭心症である虚血性 心疾患、 脳梗塞、 脳出血、 大動脈瘤、 大動脈解離、 腎硬化症及び閉塞性動脈硬化 症からなる群から選択される [ 1 6 ]の動脈硬化性疾患の検出用試薬。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願 2007- 127131号の明細書 およぴノまたは図面に記載される内容を包含する。 図面の簡単な説明
図 1は、 サリユーシン- αとサリユーシン - の関係とアミノ酸配列を示す図で める。
図 2 Aは、 ヒ ト単球由来マクロファージにおける acyl-CoA : cholesterol acyltransferase-1 (ACAT- 1) タンパク質発現に対するサリユーシンひ及ぴサリュ 一シン の用量依存的効臬を示す図であり、 サリューシン 0〜0· 6 nMの用量依存 的効果を示す図である。
図 2 Bは、ヒ ト単球由来マクロファージにおける ACAT- 1タンパク質発現に対す るサリユーシン 及ぴサリユーシン の用量依存的効果を示す図であり、 サリュ 一シン 0〜10 nMの用量依存的効果を示す図である。
図 3は、ヒ ト単球由来マクロファージの分化段階における ACAT-1タンパク質発 現に対するサリユーシン-ひ及びサリユーシン _ i3の時間依存的効果を示す図であ る。
図 4は、 ACAT活性の測定の原理を示す図である。
図 5は、 ヒ ト単球由来マクロファージの ACAT活性に対するサリューシン- 及 びサリユーシン - |3の効果を示す図である。
図 6は、 ヒ ト単球由来マクロファージの ACAT- 1 mRNA発現に対するサリューシ ン- α及びサリューシン - jSの効果を示す図である。
図 7は、 Cholesterol esterification assayの原理を示す図である。 図中、 CE は cholesterol ester ¾r示す。
図 8は、 ヒト単球由来マクロファージの泡沫化 (コレステロールエステル [CE] 蓄積) に対するサリユーシン- α及ぴサリユ シン- |3の効果を示す図である。 図 9は、 スカベンジャー受容体クラス A (SR-A) 活性の測定の原理を示す図で あ 。
図 1 0は、 ヒ ト単球由来マク口ファージのス力ベンジャー受容体クラス A (SR-A)活性に対するサリユーシン- 及ぴサリユーシン- の効果を示す図であ る。 図 1 O Aは Association assayの結果を、 図 1 0 Bは Degradation assayの結 果を示す。
図 1 1は、 ヒ ト単球由来マクロファージにおける ATP- binding cassette transporter Al (ABCA- 1) タンパク質発現に対するサリューシン - α及ぴサリュー シン- |3の効果を示す図である。 図 1 1 A はサリューシン-ひの結果を、 図 1 1 B はサリユーシン- の結果を示す。
図 1 2は、分化した培養ヒ ト単球由来マクロファージの ACAT-1タンパク質発現 に対するサリユーシン- a及びサリユーシン- 3の効果を示す図である。 図 1 2 A はサリユーシン-ひの結果を、 図 1 2 Bはサリユーシン- j3の結果を示す。
図 1 3は、ヒ ト冠動脈の動脈硬化病変におけるサリューシン- の発現を示す写 真である。 写真 Bは Aの、 Dは Cの強拡大像である。 図 1 3 A〜D中のバーは、 そ れぞれ 1. 0mm、 ΙΟΟ μ ιικ 200 m及ぴ 200 μ mである。 急性冠症候群(ACS)で死亡し た患者 (72歳、 男性) の左冠動脈前下行枝において粥腫 (plaque)部の平滑筋細胞 (図 1 3 B中の 1 )およぴ線維芽細胞 (図 1 3 B中の 2 ) に加え、右冠動脈の脂肪斑 (fatty streak)内のマクロファージ由来泡沫細胞 (図 1 3 D 中の 3 ) およぴ中膜 内の線維芽細胞 (図 1 3 D中の 4 ) にもサリューシン- 3の強発現を認めた。 図 1 4は、中高年齢層男性における血清サリューシン- α濃度と頸動脈硬化の指 標である内膜中膜複合体厚の最大値 (最大 ΙΜΤ) との関係を示す図である。
図 1 5は、 虚血性心疾患 (安定労作性狭心症、 急性冠症候群 [ACS]、 陳旧性心筋 梗塞) 患者、 高血圧患者、健常者の血清サリューシン- 濃度の比較を示す図であ る。 安定労作性狭心症は ACSの既往が無く、 ACSは発症 6時間以内で、 陳旧性心 筋梗塞は ACS発症後 6ヶ月以上経過している症例を選んだ。
図 1 6は、急性冠症候群(ACS)患者において、冠動脈硬化を示す 1枝病変(1- VD)
群、 2枝病変(2- VD)群、 3枝病変(3- VD)群の血清サリューシン- α濃度を示す図で ある。
図 1 7 - 1は、アポ Ε欠損マウスの大動脈での動脈硬化病変に対するサリューシ ン- ]3の効果を示す写真である。 Α-Εは、 オイルレツド 0で染色された大動脈弓の 動脈硬化病変を示す。 F-Jは大動脈近位部横断切片のオイルレッ ド 0染色を示す。 図 1 7 - 2は、アポ Ε欠損マウスの大動脈での動脈硬化病変に対するサリューシ ン- ]3の効果を示す図であり、.オイルレツド 0で染色された大動脈弓の動脈硬化病 変の面積を各群 6匹で測定した平均値 土 SEMを示す。
図 1 7 - 3は、アポ E欠損マウスの各群 11匹で測定した血液データの平均値 土 SEMを示す。
図 1 8 - 1は、アポ E欠損マウスの大動脈での動脈硬化病変に対するサリューシ ン- の効果を示す図である。 A - Cは、 オイルレツド 0で染色された胸部大動脈の 動脈硬化病変を示す。 D-Fは大動脈近位部横断切片のオイルレッ ド 0染色を示す。 図 1 8 - 2は、アポ E欠損マウスの大動脈での動脈硬化病変に対するサリユーシ ン- αの効果を示す図であり、オイルレッ ド 0で染色された胸部大動脈の動脈硬化 病変の面積を各群 5匹で測定した平均値 士 SEを示す。
図 1 8 - 3は、 アポ Ε欠損マウスの各群 8匹で測定した血液データの平均値 士 SEMを示す。
図 1 9 Α は、 アポ Ε欠損マウスのマクロファージの泡沫化を示す図である。 デ 一タは各群 6匹で測定した平均値 土 SEMを示す。
図 1 9 Βは、 アポ Ε欠損マウスのマク口ファージでの cholesterol efflu に対 するサリユーシン - αおよび - の作用を示す図である。 データは各群 6匹で測定 した平均値 士 SEMを示す。
図 2 O Aは、アポ E欠損マウスのマクロファージの CD36の発現に対するサリュ 一シン - α;および - i3の作用を示す図である。 データは各群 6匹で測定した平均値 土 SEMを示す。
図 2 0 Bは、アポ E欠損マウスのマクロファージの SR-Aの発現に対するサリュ 一シン - αおよび- j3の作用を示す図である。 データは各群 6匹で測定した平均値 士 SEMを示す。
図 2 O Cは、 アポ E欠損マウスのマクロファージの ACAT1の発現に対するサリ ユーシン - αおよび - の作用を示す図である。 データは各群 6匹で測定した平均 値 土 SEMを示す。 '
図 2 0 Dは、 アポ Ε欠損マウスのマクロファージの ABCA1の発現に対するサリ ユーシン-ひおよび- /3の作用を示す図である。 データは各群 6匹で測定した平均 値 土 SEMを示す。
図 2 0 Ε fま、 アポ E欠損マウスのマクロファージの ABCG1 の発現に対するサリ ユーシン - αおよび- の作用を示す図である。 データは各群 6匹で測定した平均 値 士 SEMを示す。
図 2 O Fは、 アポ E欠損マウスのマク口ファージの SR-BIの発現に対するサリ ユーシン - αおよび- ] 3の作用を示す図である。 データは各群 6匹で測定した平均 値 土 SEMを示す。 発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明を詳細に説明する。
サリユーシン-ひは、 2 8残基のアミノ酸からなるぺプチドであり(配列番号 1 )、 又は該 2 8残基のアミノ酸からなるぺプチドの C末端側にアミ ド化されたグリシ ンを有する 2 9残基のアミノ酸からなるペプチド (配列番号 2 ) である。 また、 サリユーシン- ;3は、 2 0残基のァミノ酸からなるぺプチドである(配列番号 3 )。 サリユーシン -ひ及びサリユーシン- βは、 2 4 2ァミノ酸からなるプレブロサリ ユーシン (配列番号 4 ) からプロセシングにより生じる。 該プレプロサリューシ ンの Ν末端の 2 6アミノ酸からなるシグナル配列が削除されて 2 1 6アミノ酸か らなるプロサリューシンが生じ、 さらにプロサリューシンの C末端側からサリュ 一シン- 及びサリユーシン- /3が生じる。図 1にサリユーシン- αとサリユーシン - ]3の関係 (図 1 A) とアミノ酸配列 (図 1 B) を示す。
サリユーシン-ひは、 マクロファージの泡沫化を抑制し、 サリューシン— は、 マクロファージの泡沫化を促進する。 マクロファージの泡沫化とは、 マクロファ ージが酸化 LDLを取り込むことにより起こり、 血管内皮において脂質の沈着をも たらす現象である。 マクロファージの泡沫化は、 細胞内でのコレステロールエス
テルの生成 ·蓄積に起因する。 酸化 LDLがマクロファージの種々のス力べンジャ 一受容体を介して取り込まれ、 酸化 LDL由来のコレステロールから産生されたコ レステロールエステルが細胞内に蓄積する結果、 マクロファージの泡沫化が生じ る。 マクロファージが泡沫細胞に変化すると、 粥腫の形成等動脈硬化性疾患の初 期病変が形成される。
サリユーシン - αは、マクロファージの泡沫化を抑制することにより、動脈硬化 性疾患の病変形成を抑えるので、サリューシン- αは動脈硬化性疾患の予防又は治 療に用いることができる。 また、 サリューシン - CKのァゴニストもサリューシン- と同様に動脈硬化性疾患の予防又は治療に用いることができる。 ここで、 サリ ユーシン -ひのァゴニストとは、 サリユーシン- αの作用を促進するあらゆる化合 物が含まれる。 例えば、 サリューシン- αの受容体に結合し、 サ!)ユーシン- αと 同様の作用を示す化合物ゃァゴニスティックな活性を有する抗サリユーシン -ひ 受容体抗体等が挙げられる。 .
一方、サリューシン- は、 マクロファージの泡沫化を促進するので、動脈硬化 病変形成に促進的に働く。従って、サリユーシン - i3に結合しサリユーシン ]3の作 用を抑制するサリユーシン - βのアンタゴニストはサリユーシン- βのマクロファ ージ泡沫化作用を抑制し、 動脈硬化性疾患の病変形成を抑制し得るので、 サリュ 一シン- βのアンタゴニストを動脈硬化性疾患の予防又は治療に用いることがで きる。本発明において、サリユーシン- のアンタゴニストとは中和抗体や受容体 拮抗剤の如くサリユーシン- ;3又はサリユーシン - /3の受容体に結合し、 生体にお いてサリユーシン- iSの作用を抑制するあらゆる化合物を含む。
動脈が、 動脈硬化の危険因子のため内膜中膜複合体厚 (IMT ; Intima Media
Thicheness) が厚くなり弾力性が失われて硬くなつたり、 内部にコレステロール エステルが沈着して (粥腫の形成)、 血管の通り道が狭くなつたり (狭窄)、 詰つ たり (閉塞)、 あるいは動脈壁が部分的に拡張したり (動脈瘤)、 動脈全体が拡張 したり (拡張症)、 内膜に亀裂が入り中膜が裂けたり (解離)、 破裂する (出血) ことにより、 組織や臓器全体に血行障害を起こす病気を総称して動脈硬化性疾患 といい。 本発明においては、 これらの動脈硬化性疾患のみならずこれらに起因す る急性冠症候群 (ACS ; acute coronary syndrome:)、 心筋梗塞若しくは狭心症であ
る虚血性心疾患、 脳梗塞、 脳出血、 大動脈瘤、 大動脈解離、 腎硬化症、 閉塞性動 脈硬化症等の予防又は治療を動脈硬化性疾患の予防又は治療という。 ここで、 急 性冠症候群とは、 動脈硬化性の粥腫 (プラーク) の破裂により血栓が形成され、 冠動脈の血流が極端に減少又は途絶して生じる病態をいい、 臨床的には不安定狭 心症、 急性心筋梗塞、 心臓突然死等が含まれる。 また、 動脈硬化は大動脈や脳動 脈、 冠動脈などの比較的太い動脈に起こり、 動脈の内膜にコレステロールエステ ル (融点: 40°C) が粥状に蓄積してァテロームプラーク (粥状硬化斑) ができ、 次第に肥厚することで動脈の内腔を狭めるァテローム硬化、高血圧による変化で、 脳や腎臓の中の細い動脈に起き易く、詰まったり (梗塞)、血管の壁全体が破裂し て出血する細動脈硬化、 動脈の中膜にカルシウムがたまって硬くなり、 中膜が脆 くなりメンケルベルグ型硬化を含む。 また、 本発明は主に動脈壁の肥厚ゃプラー クの形成の予防又は治療に用いることもできる。
サリユーシン- βのアンタゴニストとしては、 サリユーシン - βの作用を抑制す るあらゆる化合物が含まれるが、 例えば、 アンタゴユスティックな活性を有する 抗サリューシン- i3抗体が挙げられる。
サリューシン-ひは、アミノ酸配列情報に従って、化学合成により作製すること ができ、 あるいは遺伝子工学的に作製することができる。 また、 配列番号 1に表 わされるアミノ酸配列において、 1個又は数個のアミノ酸が欠失、 置換又は付加 されたアミノ酸配列からなるぺプチドであって、サリユーシン-ひの活性を有する ぺプチドを本発明の動脈硬化性疾患の予防又は治療薬として用いることができる。 ここで、 1個又は数個とは、 1 〜 3個、 好ましくは 1又は 2個、 さらに好ましく は 1個である。
抗サリユーシン- 抗体は、公知の方法により、ポリクローナル抗体又はモノク ローナル抗体として得ることができ、 モノクローナル抗体が好ましい。 モノクロ ーナル抗体は、 ハイプリ ドーマに産生されるもの、 及び遺伝子工学的手法により 抗体遺伝子を含む発現べクターで形質転換した宿主に産生されるものを.含む。 モ ノクローナル抗体産生ハイブリ ドーマは、 公知の手法により、 以下のようにして 作製できる。すなわち、サリューシン - ]3又はその断片べプチドを感作抗原として 用いて、 公知の免疫方法により免疫し、 得られる免疫細胞を通常の細胞融合法に
よって公知の親細胞と融合させ、 公知のスクリーニング法により、 モノクローナ ル抗体を産生する細胞をスクリ一二ングすることによって作製することができる。 サリューシン ;3を免疫する際、 ゥシ血清アルブミン (BSA)、 キーホールリンぺッ トへモシァニン等のキヤリアタンパク質と結合させて用いてもよい。 モノクロ一 ナル抗体としては、 抗体遺伝子をハイプリ ドーマからクローユングし、 適当なベ クタ一に組み込んで、 これを宿主に導入し、 遺伝子組換え技術を用いて産生させ た組換え型のものを用いることができる (例えば、 Vandamme, A. M. et al. , Eur.
J. Biochem. 1990 ; 192 : 767-775.参照)。 この際、 抗体重鎖 (H 鎖) 又は軽鎖 (L 鎖) をコードする DNAを別々に発現ベクターに組み込んで宿主細胞を同時形質転 換させてもよいし、 あるいは H鎖及び L鎖をコードする DNAを単一の発現べクタ 一に組み込んで宿主細胞を形質転換させてもよい (W0 94/11523 号公報参照)。 ま た、 トランスジエニック動物を使用することにより、 組換え型抗体を産生するこ ともできる。 例えば、 抗体遺伝子を、 乳汁中に固有に産生されるタンパク質 (ャ ギ i3カゼィンなど) をコードする遺伝子の途中に揷入して融合遺伝子として調製 する。 抗体遺伝子が揷入された融合遺伝子を含む DNA断片をャギの胚へ注入し、 この胚を雌のャギへ導入する。 胚を受容したャギから生まれるトランスジェニッ クャギ又はその子孫が産生する乳汁から所望の抗体を得る。 (Ebert, K. M. et al. ,
Bio/Technology 1994 ; 12 : 699- 702)。
本発明の抗サリューシン - j3抗体は、ヒ トに対する異種抗原性を低下させること 等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、 例えば、 キメラ抗体、 ヒ ト型化 (Humanized) 抗体をも含む。 このような抗体としてはキメラ抗体、 ヒ ト化 抗体、ヒ ト抗体が挙げられ、いずれも公知の方法を用いて製造することができる。 キメラ抗体は、 得た抗体 V領域をコードする DNAを得て、 ヒ ト抗体 C領域をコー ドする DNAと連結し、 これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させる ことにより得られる。 ヒ ト型化抗体は、 再構成 (reshaped) ヒ ト抗体ともいう。 ヒ ト型化抗体は、ヒ ト以外の哺乳動物、例えばマウス抗体の相補性決定領域(CDR ; complementarity determining region) をヒ ト抗体の相補性決定領域へ移植した ものであり、 公知の方法により作製することができる (欧州特許出願公開番号 EP
125023号公報、 W0 96/02576号公報参照)。 キメラ抗体及ぴヒ ト型化抗体の C領域
には、 ヒ ト抗体のものが使用され、 例えば H鎖では、 C y l 、 C 2 C 3 , C y 4を、 L鎖では C K 、 C λを使用することができる。 また、 抗体又はその産 生の安定性を改善するために、 ヒ ト抗体 C領域を修飾してもよい。
ヒ ト抗体は、 例えばヒ ト抗体遺伝子座を導入し、 ヒ ト由来抗体を産生する能力 を有するトランスジエニック動物に抗原を投与することにより得ることができる。 該トランスジエニック動物としてマウスが挙げられ、 ヒ ト抗体を産生し得るマウ スの作出方法は、例えば、国際公開第 W002/43478号パンフレツトに記載されてい る。
本発明の抗サリユーシン - |3抗体は、完全抗体だけでなく、その機能的断片も含 む。 抗体の機能的断片とは、 抗体の一部分 (部分断片) であって、 抗体の抗原 の作用を 1つ以上保持するものを意味し、具体的には F (ab' ) 2、 Fab' , Fab、 Fv、 ジスルフィ ド結合 Fv、 一本鎖 Fv (scFv)、 及ぴこれらの重合体等が挙げられる [D. J. King. , Applications and Engineering of Monoclonal Antibodies. , 1998 T. J. international し td] 0
得られた抗体が、サリユーシン- j3に対してアンタゴニス 1、活性を有するか否か は、 例えば、 抗体をサリューシン- に結合させ、 サリューシン- の活性が抑制 されるか否かを検定することにより、 決定することができる。
サリユーシン- a又はサリユーシン - βに対するアンタゴユスティック活性を有 する化合物は、 動脈硬化性疾患の予防又は治療剤として用いることができる。 投与量は、 症状、 年齢、 体重などによって異なるが、 通常、 経口投与では、 成 人に対して、 1 日約 0. 01 mg〜1000 mgであり、 これらを 1回、 又は数回に分けて 投与することができる。 また、 非経口投与では、 1回約 0. 01 mg〜1000 mgを皮下 注射、 筋肉注射又は静脈注射によって投与することができる。 また、 投与時期と しては、 動脈硬化性疾患の臨床症状が生ずる前後いずれでもよい。
本発明の予防又は治療剤は、 種々の形態で投与することができ、 それらの投与 形態としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、 シロップ剤等による経口投与、 又は、 注射剤、 点滴剤、 坐薬等による非経口投与を挙げることができる。
本発明のサリユーシン- α又はサリユーシン- に対するアンタゴニスティック 活性を有する化合物を含む動脈硬化性疾患の予防又は治療剤は、 常法にしたがつ
て製斉 1H匕することカでさ (Remington s Pharmaceutical Science, latest edition, Mark Publishing Company, Easton,米国)、 医薬的に許容される担体や添加物を共 に含むものであってもよい。 このような担体及ぴ医薬添加物の例として、 水、 医 薬的に許容される有機溶剤、 コラーゲン、 ポリビニルアルコール、 ポリビュルピ 口リ ドン、力 レポキシビ二/レポリマー、力/レポキシメチ レセ/レロースナトリ ウム、 ポリアクリル酸ナトリ ウム、 アルギン酸ナトリ ウム、 水溶性デキス トラン、 カル ボキシメチノレスターチナトリ ウム、 ぺクチン、 メチノレセルロース、 ェチノレセノレ口 ース、 キサンタンガム、 アラビアゴム、 カゼイン、 寒天、 ポリエチレングリ コー ノレ、 ジグリセリン、 グリセリン、 プロピレングリ コール、 ワセリン、 パラフィン、 ステアリルアルコール、 ステアリン酸、 ヒ ト血清アルブミン (HSA)、 マン-トー ル、 ソルビトール、 ラクトース、 医薬添加物として許容される界面活性剤等が挙 げられる。 実際の添加物は、 本発明の予防又は治療剤の剤型に応じて上記の中か ら単独で又は適宜組み合わせて選ばれるが、 もちろんこれらに限定するものでは なレ、。
さらに、本発明の動脈硬化性疾患の予防又は治療剤は、サリユーシン-ひに加え サリユーシン- βに対するアンタゴユスティック活性を有する化合物を組合せて 含んでいてもよい。
本発明は、 さらに生体試料中のサリューシン - aを測定することにより、生体試 料を採取した被験体が動脈硬化性疾患に罹患しているか否かを検出する方法、 動 脈硬化性疾患の重症度を判定する方法、 及び動脈硬化性疾患に罹患するリスクを 評価する方法を包含する。 特に、 急性冠症候群の検出に好適に用いることができ る。
生体試料としては、 全血、 血清、 血漿、 尿等が挙げられる。 これらの生体試料 中のサリユーシン - αを定量又は定性により測定すればよい。
生体試料をそのまま用いて該試料中のサリューシン- を測定することもでき るが、生体試料中のサリユーシン- αの含有量は低いので、好ましくは生体試料か らサリューシン - αを濃縮又は単離し測定する。 単離濃縮は、 例えば、 血清、 血漿 又は尿から固相抽出により行うことができる。 ここで固相抽出とは、 化学結合型 シリカゲル、 ポーラスポリマー、 アルミナ、 活性炭等の固定相 (固相、 吸着剤)
を用いながら複雑な組成を有する試料中から特定の目的成分のみを選択的に抽出 し、 分離 '精製を行っていく手法のことをいい、 これにより試料中の夾雑物を除 去することができる。 固相抽出には、 逆相分配クロマトグラフィー用固定相、 ィ オン交換クロマトグラフィー用固定相等を広く用いることができる。 逆相クロマ トグラフィー用固定相として、 ォクダデシルシリル基 (C18)、 ォクチル基 (C8)、 ブチル基 (C4)、 トリメチル基 (C3)、 フエニル基 (Ph)、 ブチル基、 トリアコンチ ル基(C30) 等の基を有する充填剤を用いることができ、 この中でもォクタデシル シリル基 (C18) またはォクチル基 (C8) を有する充填剤が好ましい。 固相抽出に 使用するカートリッジは、 市販品である、 シリンジ型固相カートリッジや、 ディ スク型固相カートリッジを使用することができる。 市販のカートリッジタイプの ものとして、 Sep-Pak (登録商標、 Waters社)、 Autoprep (登録商標、昭和電工社)、 Discovery DSC-18 (SUPELC0社)、 Discovery DSC-8 (SUPELC0社) 等が挙げられる。 サリユーシン - αを溶出させる際に用いる溶媒としては、ァセトニトリル、メタノ ール、 テトラヒ ドロフランが挙げられる。 生体試料は、 固相抽出処理の前に、 ト リフルォロ酢酸 (TFA)で酸性処理し、 次いで遠心分離を行い、 上清を用いればよ レ、。
また、前処理した生体サンプルを逆相クロマトグラフィーカラムを用いた HPLC により単離精製してもよい。
サリュ一シンの測定は、 ラジオィムノアッセィ (RIA)、 ェンザィムィムノアツ セィ (EIA)、 ELISA、 蛍光測定法等の免疫学的測定法により行うことができる。 こ の際、 1251 等の放射性同位元素、 アルカリホスファターゼ、 西洋ヮサビペルォキ シダーゼ、 β -ガラタトシダーゼ等の酵素、 Fluorescein Isothiocyanate (FITC) 等の蛍光物質で標識した抗サリューシン-ひ抗体を用いればよい。これらの免疫学 的測定は公知の方法で行うことができる。 例えば、 プラスチック製のマイクロタ イタ一プレートのゥエル等の固相担体に抗サリユーシン - α抗体等のサリユーシ ン- aに結合性を有する第 1のリガンドを固相化し、固相に結合された抗サリュー シン-ひ抗体等のサリユーシン - aに結合性を有する第 1のリガンドと、 生体試料 を反応させ、 試料中のサリューシン- aを、 抗原抗体反応等のリガンド-レセプタ 一結合反応により前記固相に結合された第 1のリガンドを介して固相に結合させ
る。 次いで、 洗浄後、 サリュ一シン-ひに結合性を有する第 2のリガンドを、 前記 固相に結合された検体中のサリューシン- αと反応させる。すなわち、固相に結合 された抗サリューシン -ひ抗体等のサリューシン に結合性を有する第 1のリガ ンド-サリユーシン-ひ-第 2のリガンドの複合体を形成させる。 サリユーシン- α に結合性を有する第 2のリガンドとしては抗サリューシン-ひ抗体等を用いるこ とができる。次いで、洗浄後、 固相に結合された第 2の抗サリューシン-ひ抗体等 のサリユーシン - αに結合性を有する第 2のリガンドを測定する。 これは、免疫分 析の分野において定用されている種々の方法により行うことができる。 例えば、 サリューシン - に結合性を有する第 2のリガンドを、'酵素、 蛍光、 ビォチン、 放 射標識等で標識して酵素標識体を作製しておき、 これらの標識を測定することに より固相に結合したサリューシン - αに結合性を有する第 2のリガンドを測定す ることができる。
サリユーシン-ひの測定において、インタク 1、なサリユーシン-ひだけではなく、 サリユーシン- の断片を測定してもよい。
以下、 生体試料からのサリユーシン- αの単離精製法の一例を挙げる。
( 1 ) 血清又は血漿 2 mLにトリフルォロ酢酸を 0. 1% (v/v)添加し、 3000 rpmで 10分間遠心分離を行う。
( 2 ) 上清を Sep-Pak (登録商標) C18カートリッジに添加する。 該カートリッジ は、 あらかじめ 5 mLの 99. 8%メタノール、 5 mL純水、 5 mL 0. 1%TFAを用いて処 理しておく。
( 3 ) 1 の 0. 1 %了?八、 50%メタノールで抽出し、溶出液を遠心濃縮器を用いて 2000 rpmで約 100 μ Lまで濃縮する。
( 4 ) アツセィ用緩衝液を 250 μ ί添加し、 サンプル中のサリューシン - αを測定 する。
サリューシン - αの測定のための単離精製方法、 RIA による測定方法は例えば、 Sato K et al. , Peptides. 2006; 27: 2561-2566.の記載に従って行うことができる。
ヒ ト血清中及ぴ尿中のサリューシン- αの濃度は、健常人ではそれぞれ 23. 3 土
8. 1 ρΜ、 156. 8 土 95. 8 ρΜ であった (値は、 Mean土 SD)。 従って、 被験体の血清 中又は尿中のサリューシン濃度がこれらの健常人の値より有意に低い場合に、 該
被験体は、 動脈硬化性疾患に罹患しているか、 または動脈硬化性疾患に罹患する リスクが有意に高いと判定することができる。 有意に低い場合とは、 例えば上記 の健常人の Meanと SDに対して、 Mean- 1 X SDより低い場合、 好ましくは Mean- 2 X SDより低い場合、さらに好ましくは Mean- 3 X SDより低い場合をいう。また、 動脈硬化性疾患の重篤度が大きいほど、サリューシン- α濃度は低下する。例えば、 急性冠症候群(ACS)において、冠動脈の 1枝病変群、 2枝病変群、 3枝病変群と、 病変が進行した被験体ほど、生体試料中のサリューシン- 濃度が低くなる。また、 生体試料中のサリューシン- α濃度と動脈硬化の指標となる内膜中膜複合体厚
(IMT ; Intima Media Thicheness)の厚さには、 負の相関があり、 IMTが厚くなる ほどサリューシン- α濃度は低下する。 サリューシン- αは ΙΜΤに代わって、 動脈 硬化性疾患の進展の指標となり得る。 さらに、 急性の動脈硬化性疾患の検出に有 効である。
さらに、 被験体から採取した生体試料中のサリューシン- αを定期的に測定し、 サリューシン -《濃度をモニターすることにより、動脈硬化性疾患の進展の管理を することができる。
サリユーシン- は、動脈硬化性疾患の検出'診断のためのマーカーとして用い ることができる。 本発明は、 サリューシン- αの、動脈硬化性疾患を検出するため の検出用マーカーとしての使用を包含し、 さらにサリューシン- αからなる、動脈 硬化性疾患を検出 ·診断するための疾患検出 ·診断用マーカーを包含する。
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、 本発明はこれらの実施例 によって限定されるものではない。
以下の実施例において、 ヒ ト末梢血液から単球を調製し、 7日間培養してマク 口ファージに分化させた。 このとき同時にサリューシン-ひ (0〜: 10 ηΜ)、 サリュ 一シン- ; 8 (0〜10ηΜ) を添加し、 サリューシンの効果を検討した。
ヒ ド末梢血液からの単球の培養は公知の方法で行った。 単球の培養は、
RPMI-1640を 15 mL加えて単離した単球を浮遊化し、 血球計算板を使って細胞数 を数えた。 6 cm dishに 4 X 106 cells/2 mLとなるように細胞を播種した。 単球を
5% C02、 37°Cで 1時間保温して dishに付着させた後、 培地を 10% ヒ ト血清含有
RPMI-1640に置換して Ί日間培養した。 培地交換は 3日毎に行った。
実施例 1 ヒ ト単球'マクロファージにおける ACAT - 1タンパク質発現に対するサ リユーシン- α及びサリユーシン - ]3の効果
ACAT-1 は細胞内の遊離コレステロールをコレステロールエステルに変換する 小胞体酵素であり、 マクロファージの泡沫化に重要な遺伝子である。 この ACAT-1 発現に対するサリューシン- 及ぴサリューシン - iSの効果を検討するため、 ゥェ スタンプ口ットで ACAT- 1タンパク質発現を検討した。
7日間培養した単球由来マク口ファージを PBSで 3回洗浄後、各 dishに 10%SDS (sodium dodecyl sulfate) 100 /z L を加えて可溶化した。 セルスクレーパーで細 胞抽出液をかき集め l mLテルモシリンジ、 23Gの注射針で破碎、断片化(shearing) した後、 15, 000 rpm (日立 himac CF15D2微量高速冷却遠心機)で 3分間遠心した。 上清のタンパク質濃度を Bicinchoninic Acid (BCA) 法(Pierce)で測定し、 細胞 抽出液としてウェスタンプロットに使用した。
本発明の実施例におけるウェスタンプロットによる培養上清中の ACAT-1 又は ABCA- 1の測定は以下の方法で行つた。
ACAT - 1タンパク質の検出
ACAT-1 タンパク質検出のため、 ゥサギを免疫して作成した抗ヒ ト ACAT-1ポリ クローナル抗体(匪0, Dartmouth Medical School, Dr. Chang より供与) [Chang CCY et al. , J Biol Chem. 1995 : 270 : 29532 - 29540. ]を 1次抗体として使用し (最 終濃度 0. 5 μ §/ηι 、 室温で transfer membrane と 1時間反応させた。 PBS- 0. 1% Tween 20で transfer membraneの洗浄を行レヽ、 2次抗体 (抗ラビット IgG抗体、 anti-raboit IgG donkey antibody conjugated with horseradish peroxidase (HRP) (GE Healthcare Bio-Science) ) と室温で 1時間反応させた。 二次抗体は、 原液 0. 5 Lを 5 mLの PBS- 0. 1% Tween 20で 10, 000倍に希釈して用いた。 PBS-0, 1% Tween 20 で洗浄を行い、 Lumi- Light Plus (PerkinElmer Life Sciences)を用いて ACAT- 1 タンパク質を検出した。
ABCA - 1タンパク質の検出 .
ABCA-1タンパク質検出のため、 transfer membraneを抗ヒ ト ABCA - 1抗体と室温 で 1時間反応させた。 一次抗体 (ant i-human ABCA-1 rabbit polyclonal antibody
(フナコシ)) は、 原液 5 を 5 mLの PBS-0.1% Tween 20で 1, 000倍に希釈して 用いた。 PBS-0.1% Tween 20で transfer membraneの洗浄を行い、 2次抗体 (抗ラ ビッ卜 IgG f几体、 anti-rabbit IgG donkey antibody conjugated with horseradish peroxidase (HRP) (GE Healthcare Bio - Science)) と室温で 1時間反応させた。 2次抗体は原液 0.5 Lを 5 mLの PBS- 0.1% Tween 20で 10, 000倍に希釈して用い た。 PBS- 0.1% Tween20 で洗浄を行い、 Lumi-Light Plus (PerkinElmer Life Sciences) を用いて ABCA-lタンパク質を検出した。
ヒト末梢血単球 (4X106 cells/6 cm dish) を 10%ヒ ト血清含有 RPMI- 1640培 地 2 mLで 7日間培養してマクロファージに分化させた。 ACAT - 1タンパク質発現 に対するサリユーシンの用量依存的効果を検討するため、 0、 0.2、 0.4、 0.6、 0.8、 1.0 nM のサリューシン -α又はサリューシン -i3を培養当初から培地に添加した。 単球からマクロファージに分化した 7日目の細胞を PBSで洗浄後、 100 Lの 10% SDSで可溶化し、 ACAT- 1に対する特異抗体を用いてウェスタンブロットを行った。 その結果、 サリユーシン -αは濃度依存的に ACAT-1タンパク質発現を約 40%抑制 した (図 2Α)。 一方、 サリューシン -j3は 0から 0.6 nMまで濃度依存的に ACAT - 1 タンパク質発現を促進した。 サリューシン - の効果は 0.6 nMでピークに達し、 ACAT - 1タンパク質はコントロールの 2.1倍に増加した。サリユーシン- βの ACAT-1 タンパク質発現増強効果は 0.6 nM以上の濃度では次第に減弱した(図 2 Β)。
次に、単球 'マクロファージの分化段階におけるサリユーシン- α又はサリユー シン- βの ACAT- 1タンパク質発現に対する時間依存的効果を検討した。 ヒ ト末梢 血単球 (4 X106 cells/6 cm dish) を 7 日間培養してマクロファージに分化させ た。このとき同時に 0.6 nM のサリユーシン -α又はサリユーシン - βを添加して、 播種後 1 日目、 3 日目、 5 日目、 7 日目にそれぞれの dishを PBSで洗浄した。 1 日目、 3日目、 5 日目に反応を止めた dishは一旦一 80°Cで冷凍して 7日目に解凍 し、 7日目の細胞とともに 100/iLの 10%SDSで可溶化した。 ウェスタンプロット 法を用いて検討した結果、 サリユーシン-ひで処理した細胞の ACAT- 1タンパク質 発現は培養 5 日目まではコントロールと有意差がなかったが、 7 曰目で有意に抑 制された。 サリューシン -|3で処理した細胞の ACAT- 1タンパク質発現は、 5 日目 からコントロールに比べ有意な増加がみられた(図 3)。
実施例 2 ヒ ト単球由来マクロファージにおける ACAT活性に対するサリューシ ン- α及ぴサリユーシン - βの効果
ACAT活性測定にはリボソーム再構成法を用いた。 この方法は小胞体に存在する ACAT-1タンノ ク質を cholesterol/phosphatidylcholine力 りなる mixed micelle によってリボソームに再構成し、 ACAT- 1が基質として利用できるコレステロール の濃度を飽和レベルまで高くするシステムである [Cheng D et al. , J Biol Chem. 1995 ; 270 : 685-695. ]。 従来用いられてきたミクロソーム法は、 小胞体に内因性に 存在するコレステロールを基質として利用していたが、 一般に小胞体膜はコレス テロールに乏しく、 ACATの基質であるコレステロールが飽和状態に達していなか つたため、 ACAT 活性を過小評価してきたと思われる。 もう一つの基質である [14C] oleoyl-CoA を反応系に加え、 ACAT 反応によって生じた cholesterol [14C] oleateを測定することにより ACATの活性を測定する(図 4 )。
本実施例で用いる細胞抽出液は以下のように調製した。
末梢血ヒ ト単球(4 X 106 cells/2 mL)をそれぞれ 4〜6枚の 6cm dishに播種し、 7 日間培養してマクロファージに分化させた。このとき同時にサリユーシン- α又は サリューシン- ^を添加して ACAT活性に対する効果を検討した。 7日間の培養後、 細胞を 4°Cに冷却した PBSで 2回洗い、 hypotonic buffer (1 mM Tris-HCl, 1 mM
EDTA, pH 7. 4)を 2 mL/dish加え 5分間静置した。'この操作の目的は、 浸透圧によ つて細胞膜を破碎し、流出した細胞質タンパク質を洗浄して ACAT-1を含む膜タン パク質を濃縮することにある。 Dishを逆さにして bufferをよく切り、 使用直前 に protease inhibitor cocktail (SIGMA)を 1/1000 Volumeカロえた buffer A (50 mM
Tris-HCl, 1 mM EDTA, pH 7. 4)を 100 μ L加え、 セルスクレーパーで細胞を回収し た。 この 100 μ ΐ^を同じ条件で培養した次の dishに移して同様の操作を行い、 4
〜6枚の dishを合体して膜タンパク質を濃縮した。 回収した細胞抽出液を 1 mL テフ口ンホモジナイザーに入れホモジナイズした。 20 strokeを 1 setとして 3 set 行った。 すべて氷上で行い Set間は 1分ほどおいた。 ホモジナイズした細胞抽出 液のタンパク質濃度を BCA 法 (Pierce)を用いて定量した。 細胞抽出液に 1/3 volume の 4 M KC1並びに 1/9 volumeの20% CHAPSを加えた(最終濃度は KC1 1M、
CHAPS 2%)。 1 M KC1、 2 % CHAPSを含む buffer Aでタンパク質濃度をそろえ、 10 分間室温で静置した。
mixed micelleは以下のように調製した。
100 mg/mL L- -phosphatidylcholine from egg yolk (SIGMA) in chloroform Π2Λ μ Ιと 20 mg/mL cholesterol (SIGMA) in benzene 62 をシンチレーショ ンバイアルに入れ、 vortex後窒素ガスで乾固させた。ここに 10% taurocholic acid (SIGMA) 100 ^ L, 10 X buffer A 100 / L, 滅菌精製水800 μ Lを加え vortexした。 バイアル内の空気を窒素ガスに置換して遮光の上 10分間ソニケーションし、 5分 間氷上で冷却した。 この操作を 10回ほど繰り返し、透明に近づけた。 ソニケーシ ョン後、 滅菌精製水 1 mLを加えよく混和した。
0. 25 mM [14C] oleoyl-CoA mixture は 1 mM [14C] oleoyl CoA (GE Healthcare Bio-Science, CFA634, 1. 85 MBq) 16 L、 34 mM cold oleoyl-CoA (SIGMA) 10 /z L、 30 mg/mL BSA in 0. 25 M Tris-HCl (pH 7. 8) 834 μ L、 及ぴ滅菌精製水 996 Lを 混合し、 2, 000 μ Lの溶液を作製することにより調製した。
薄層クロマトグラフィー(Thin layer chromatography ; TLC)は以下のように行 つた。
TLC standard として、 isopropanol 4 mLに cholesterol oleate (SIGMA) 20 mg を添加して温浴中で 60°Cに加温して溶解し、さらに 0. 91 g/mL glyceryl trioleate (SIGMA) 20 Lをカロえた。 TLC aluminum sheets 20 X 20 cm, silica gel 60 F
(Merck)にキヤビラリ一で TLC standardを 60 μ Lスポットした。 展開溶媒として hexane/di ethyl ether/acetic acid (90 : 10 : 1, v/vノを調製した。
氷上で一定のタンパク質量の細胞抽出液(80〜 100 ^ g)と 140 z L の mixed micelleを加え、ゆつく り混和した。 10分間氷上で静置後、20 Lの [14C] oleoyl- CoA mixtureをカロえ、 泡立てないように混和した。 37°Cで 30分間保温して反応させた 後、 chloroform/methanol (2 : 1, v/v) 3 raL と滅菌精製水 1 mLをカロえ vortex して反応を停止した。 2, 500 rpm (T0MY LC- 120低速遠心機, ローター 7015-06) で 10分間遠心した後、上層(水層) を除き、下層(油層) を窒素ガスで乾固した。 抽出した脂質を isopropanolで溶解し、 standard spotの間にブロードに スポットした。 ガラスチャンバ一内で展開溶媒が TLCプレートの上端に達するま
で脂質を展開した。 ョードを少量散布した別のガラスチャンバ一内に TLCプレー トを移し、 TLC standardの脂質を発色させた。 cholesterol oleateに相当する位 置をはさみで切りとり、 バイアルに入れた。 シンチレーシヨンカクテル(Perkin Elmer)を 3 mL加え測定した。 比活性測定のため [14C] oleoyl- CoA mixture 10 μ ΐ の放射活性を測定した。 ACAT反応で生じた cholesterol [14C] oleateの放射活性 (cpm)を反応系に用いた細胞タンパク質量 (mg)、 [14C] oleoyl- CoA の比活性 (cpm/pmol)並びに反応時間 (10 分間)で除して ACAT 活性値 (pmol/mg cell protein/min) を算出し 7こ。
サリューシン - α又はサリューシン- j3によって ACAT - 1 タンパク質発現に変化 が見られたため、 ACAT酵素活性に対する効果を検討した。 ヒ ト末梢血単球 (4 X 106 cells/dish) を 10%ヒ ト血清含有 RPMI- 1640培地 2 mLで 7日間培養してマク 口ファージに分化させた。 このとき同時に 0. 6 nMのサリユーシン- 又はサリュ 一シン- βを培地に添加した。
細胞抽出液に mix micelle (cholesterol/phosphatidylcholin)を加えて ACAT- 1 タンパク質をリポソームに再構成した。このサンプルに [14C] oleoyl - CoAを加えて 37°Cで 10分間反応させ、 ACAT反応によって生じた cholesterol [14C] oleateの放 射活性を測定し、 ACAT活性を算出した。 その結果、 サリューシン-ひ処理した細 胞の ACAT活性はコントロールの 50%に抑制されていた。 一方、 サリューシン- β で処理した細胞の ACAT活性はコントロールの 1. 8倍に増加していた(図 5 )。 実施例 3 ヒ ト単球由来マクロファージにおける ACAT-1 mRNA発現に対するサリ ユーシン 及びサリユーシン - βの効果
TRIzol Reagent (LIFE TECHNOLOGIES)を用いて RNAを抽出した。
7 日間培養した細胞の培地をぬき、 PBSで 3回洗った。 PBS を良くきつた後、
TRIzol 1 mLを加え、 細胞を溶かした。 その細胞抽出液を 5回出し入れしてから 新しいエツペンチューブに移した後、 室温で 5分間放置した。 これに chloroform
200 を加えて 15秒間強く振り混ぜた。 2〜3分間放置した後、 12, 000 rpm (日 立 himac CF15D2微量高速冷却遠心機) で 15分間遠心した。 上層を新しいエツぺ ンチューブにとり、 iSOpropanol 500 i Lを加え転倒混和し 10分間放置してから
12, 000 rpmで 10分間遠心し上清を取り除いた。 残った沈殿に 75% ethanol 180 lを加え、 15, 000 rpmで 5分間遠心し、 上清を取り除き風乾した。 90 μ ίの滅 菌精製水に溶解させ、 65°Cで 10分間保温した。 DNase I solution を力 Pえ、
37。Cで 15分間保温した。 3M sodium acetate 10 μ L、 phenol/chloroform (1 : 1, vA lOO ^i Lを加え振り混ぜ 15, 000 rpmで 3分間遠心し、 上清を新しいエツペン チューブに取った。 そこに chloroform/isoamyl alcohol (24 : 1, v/v) ¾r 100 μ L 入れ、 更に 15, 000 rpmで 3分間遠心した、 この上清を取り、 ethanol 200 しを 加え- 80°Cに 30分間以上置いた。 これを 15, 000 rpmで 10分間遠心し上清を除去 し、 70% ethanolで洗浄後に乾燥させ、 滅菌蒸留水 15 μ Lに溶解させた。 この RNA 溶液の濃度を 260 nmで吸光度を測定することで求め、各濃度が同一になるように 滅菌精製水を加えた。
次いで、 ACAT- 1 mRNAについて real time RT- PCR法を用いて RNA発現を解析し た。
下記のそれぞれの human mRNA配列を用いて Primer Express Versionl. 0 (PE Biosystems) により primer配列を決定した。
β -actin
Forward Primer: 5' -CCTGGCACCCAGCACAAT (配列番号 5 )
Reverse Primer: 5' -GGGCCGGACTCGTCATAC (配列番号 6 )
AC AT - 1
Forward Primer: 5' - TTCGGAATATCATCAAACAGGAGCC (配列番号 7 )
Reverse Primer: 5 ' -CACACCTGGCAAGATGGAGTT (配列番号 8 )
サリューシン - α又はサリユーシン- βを処理した末梢血ヒ ト単球 (4 X 106 cel ls/6 cm dish) を 10% ヒ ト血清含有 RPMI-1640培地 2 mLで 7日間培養してマ クロファージに分化させた。 サリユーシン - α又はサリユーシン - βを処理した細 胞と、 無処理の細胞から total RNAを抽出し、 この total RNA Ι μ gに逆転写反 応を行い cDNAを合成した。
この cDNA力 ら qPCR MasterMix SYBR Green I (Eurogentec)を用レヽて]: eal time PCR を GeneAmp 5700 Sequence Detection System (Applied Biosystems Japan) にて行い定量した。
次いで、 以下の方法により逆転写反応を行った。
total RNA、溶液 { 1 μ g/ L) 1 μ L random primer (TaKaRa, 80 nM) 0. 5 μし、 滅菌精製水 10. 5 Lを加え、 70°Cで 10分間加熱した。これに RNase inhibitor 0. 75 μ L, 5 X First Strand Buffer (Invitrogen) 4 μ L, 0. 1 M dithiothreitol 2 L、 2. 5 mM dNTP (TaKaRa) 4 μ L、 Superscript I I (200 U/ L : Invitrogen) Ι μ Ι を加え 37°Cで 1時間反応させた。 95°Cで 5分間変性後、 氷上で冷却し滅菌精製水 を 40 L加えた。
Real time RT- PCRは以下の方法により行った。
逆転写反応で得られた cDNA溶液 2 i Lに qPCR MasterMix SYBR Greenl 12. 5 μ L、 primer溶液 (Forward + Reverse 5 z M each) 2. 5 μし、 滅菌精製水 8 しをカロえ反 j¾、を行った。
PCR cycleは 95°Cで 10分間、 次いで (94°C、 20秒; 55°C、 20秒; 72°C、 30秒) のサイクノレを 40 cyclesで行つた。
サリューシン - α及ぴサリューシン- ]3によって ACAT- 1 タンパク質発現並びに ACAT活性に変化が見られたため、 さらに ACAT - l mRNA発現に対する効果を検討し た。 ヒ ト末梢血単球(4 X 106 cells/di sh)を 10%ヒ ト血清含有 RPMI - 1640培地 2 mL で 7日間培養してマクロファージに分化させた。 このとき同時に 0. 6 nMのサリュ 一シン- α又はサリユーシン- βを培地に添加し ACAT-1 mRNA発現に対する効果を 検討した。 7日目の細胞から total RNAを抽出し、 リアルタイム RT-PCRを用いて ACAT - 1 mRNA に対するサリューシン - 及ぴサリューシン- /3の効果を検討したと ころ、 サリューシン-ひは ACAT- 1 mRNA発現をコントロールの 80%に抑制し、 サリ ユーシン- /3は 1. 6倍に促進した(図 6 )。 実施例 4 ヒ ト単球由来マクロファージの泡沫化(コレステロールエステル蓄積) に対するサリユーシン- α及ぴサリユーシン- i3の効果
マクロファージの泡沫化を測定する方法として Cholesterol esterif ication assay を用いた [Goldstein JL et al. , Methods Enzymol. 1983 ; 98 : 241-260. ] マクロファージはス力ベンジャー受容体を介してァセチル化 LDL (AcLDL)を細胞 に取込みリソソーム分解に導く。 リソソームで生じた遊離コレステロールが ACAT
に運搬され、 ACAT反応によりコレステロールエステルに変換される。 培地中に [3H] oleateを添加しておくと [¾] oleateは細胞内に取り込まれァシル CoAシンタ ーゼにより [3H] oleoyl - CoAに変換される。 ACATは AcLDL由来の遊離コレステロ一 ルとこの [ ] oleoyl - CoAを基質として cholesterol [3H] oleateを産生する。 細胞 内に蓄積した cholesterol [¾] oleateの放射活性がコレステロールエステル蓄積 の鋭敏な指標となる(図 7 )。
ヒ ト血漿 LDLは以下の方法で精製した。
ヒ 卜血紫力 り Sequential flotation ultracentrifugation により LDL (d = 1. 019-1. 063) を 精 製 し た [Schumaker VN et al. , Methds Enzymol. 1986 ; 128 : 155-170· ]。 ヒト血漿 350 mLを 6本の遠心管に分注し RP- 42 Rotorを 用いて、 100, 000 X g (36, 000 rpm)、 4°Cで 20時間超遠心した。 カイロミクロン と超低密度リポタンパク質 (very low-density l ipoportein; VLDL)を含む白濁し た上層を除き、 ァスピレーターを用いて下層の黄色層を回収した。 このカイロミ クロン、 VLDL を除いた血漿画分の容積をメスフラスコで、 比重を浮沈式比重計 (Hydrometer)で測定し、 d = 1. 063になるまで solid KBrを加えた。 カイロミタ ロン、 VLDLを除いた血漿画分の容積を V、 比重を Dとすると、 比重 1. 063g/mLを 得るために加えるべき KBrの量は次の式で近似できる。
KBr (g) = V (1. 063-D) / 0. 68323
d = 1. 063 に調整した LDL を含む血漿画分の半量を 6 本の遠心管に分注し、
Density solution (d = 1· 063)を遠心管の肩まで入れた。 RP- 42 Rotor を用いて
100, 000 X g (36, 000 rpm)、 4°Cで 20時間超遠心し、 上層の黄色層 (粗 LDL) を パスツールピペットで回収した。 残りの半量も同様に分注して超遠心し、 上層の 黄色層 (粗 LDL) を回収した。 2回の操作で得られた粗 LDLを合体し、 再び 6本 の遠心管に分注した。 Density solution (d = 1. 063)を遠心管の肩まで入れ、 RP - 42
Rotorを用いて 100, 000 x g (36, 000 rpm) s 4°Cで 20時間超遠心し、 上層の黄色 層 (精製 LDL)を回収した。 LDLを透析膜に入れ、低温室内において EDTA- Saline 4
Lを用いて透析を行った。 12時間の透析を 3回繰り返した。 ULTRAFILTRATION CELL
MODEL 8200 (AMIC0N) でタンパク質濃度 2 mg/mL程度まで濃縮し、 フィルターで ろ過滅菌した。 BCA法 (Pierce)でタンパク質濃度を測定し、 以下の AcLDLの調製
に用いた。
AcLDLは以下の方法で調製した。
LDL 30 mg protein (2.0 mg protein/mLであれば 15 mL) に同じ容積の飽和酢 酸ナトリウムを加えた。 氷上で冷却、 スターラーバーで撹拌しながら、 無水酢酸 150 ΐ (5μ L/LDL mg protein)を 5 Lずつ滴下した [Miyazaki A et al., J Biol Chem. 1994;269:5264-5269. ]0 この時 pHメータで pHをモニターし、 pHが 6· 5以 下にならないよう、 5 N NaOHを滴下して中和した。 氷上で 1時間静置した後、 低 温室内において EDTA- Saline 4 Lを用いて透析を行った。 12時間の透析を 3回繰 り返した。 ULTRAFILTRATION CELL MODEL 8200 で濃縮し、 フィルターでろ過滅菌 した。 BCA法 (Pierce) を用いてタンパク質濃度を測定し、 実験に用いた。
以下の操作において、 用いた試薬は以下のとおりである。
[9, 10 (n; - H] oleic acid (185 MBq in 1 mL toluene, Gn Healthcare Bio— t>cience), oleic acidのモノレ濃度は 0.625 mM
3 mM Oleic Acid-Albumin from bovine serum (SIGMA) ; Albuminの 度は 100 mg/mL (1.5 mM)で、 1 molあたり 2 molの oleic acidが結合している。
3mM [¾] oleic acid mixtureの調製
[9, 10 (n)- 3H] oleic acid 50 ^ L (9.25 MBq)をガラス製ビーカーに入れ、 窒 素で乾固した。 ガラス製ビーカーに 3 mM Oleic Acid-Albumin from bovine serum (SIGMA) 5 mLを注ぎ、 スターラーバーで 5時間撹拌した後、 0.2μπιのフィルター でろ過滅菌した。
ヒ ト末梢血単球 (4X10V6 cm dish) を 10%ヒ ト血清含有 RPMI- 1640培地 2 mL で 7日間培養してマクロファージに分化させた。 このとき同時に 0.6nMのサリュ 一シン- α又はサリユーシン- βを添加しておき、 細胞内コレステロールエステル 蓄積(cholesterol esterif ication)に対する効果を検討した。 7 日目に培地を交 換し、 5 g/mL AcLDL, 3mM [3H] oleic acid mixture 67 /z L (最終濃度は 0.1 mM)、
0.6 nM サリユーシン-ひ又はサリユーシン - βを添加し、 適量の培地を加えて total 2 mL と し、 さ らに 18 時間培養した。 PBS で 3 回細胞を洗い、 hexane/isopropanol (3 : 2, v/v) 1 mLを dishに加え、 室温で 1時間静置した。 hexane/isopropanolを脂質抽出管に回収し、さらに 1 mLを dishに加え細胞と dish
壁を洗いこんで同じ脂質抽出管に回収した。脂質抽出後の dishにはタンパク質抽 出のため 1 N NaOH 1 mLを加えた。 脂質抽出管を vortexし、 室温で 30分間静置 した後、窒素で乾固した。抽出した細胞脂質を 60 L isopropanolを加えて vortex しながら溶解した。 全量を standard spotの間にブロードにスポットし、 展開溶 媒 hexane /diethylether /acetic acid (90 : 10 : 1, v/v)力 S TL プレー卜の上 端に達するまで TLCで展開した。 ガラスチャンバ一内に TLCプレートを置いてョ ードで脂質を発色させ、 cholesterol oleateに相当する位置をはさみで切りとり、 シンチレーションバイアルに入れた。 シンチレーションカクテル(Perkin Elmer) を 3 mL加え測定した。 先ほど dishに加えておいた IN NaOHを回収し、 BCA法 (Pierce)を用いて細胞タンパク質を定量した。 3 mM [3H] oleic acid mixture の 比活性(dpm/nmol)を測定し、 細胞内で産生された cholesterol [3H] oleateの放射 活性 (dpm)を [¾] oleic acidの比活性(dpm/nmol)と細胞タンパク質量(mg)で除し . cholesterol esterif ication (nmol/mg cell proteinノを算出し 7こ。
ACAT-1はマクロファージの泡沫化を促進する重要な因子である。上記の実験に よりサリユーシン- α及びサリユーシン- βが ACAT- 1発現、 ACAT活性に対して相 反する影響を与えることが判明したため、 マクロファージの泡沫化に対する効果 を検討した。
ヒ ト末梢血単球 (4 X 106 cells/6 cm dish) を 7 日間培養してマクロファージ に分化させた。 このとき同時添加した 0. 6 nM のサリューシン - α及びサリューシ ン- jSのマクロファージ泡沫化に対する効果を検討した。 7日目の細胞に 5 /i g/mL AcLDL, 0. 1 mM [3H] oleic acid mixture, 0. 6 nM サリューシン-ひ又はサリュー シン - βを添加してさらに 24 時間培養し、 細胞内に蓄積した cholesterol [¾] oleateを測定した。 コントロールの細胞に AcLDLを負荷すると、 5. 6 nmol/mg cell proteinの cholesterol [3H] oleateの蓄積がみられ、 AcLDLを負荷しない細 胞(non- loaded control)の 6. 3倍に増加した。サリユーシン - αで処理した細胞で は AcLDLによる cholesterol [3H] oleateの蓄積はコントローノレ(loaded control) の 50%に減少し、 サリユーシン- ]3で処理した細胞ではコントロールの 1. 6倍に 増加した(図 8 )。
実施例 5 ァセチル化 LDL (AcLDL)の細胞取込み能の検討 -スカベンジャー受容 体クラス A (SR-A)活性の測定- スカベンジャー受容体は、マクロファージに発現するリポタンパク質受容体で、 酸化 LDLや AcLDLなどの変性 LDLを認識してエンドサイ トーシスに導く。 細胞内 に取込まれたこれらのリガンドはリソソームで分解される。 スカベンジャー受容 体はマクロファージの泡沫細胞化には極めて重要な役割を果たしている。 ス力べ ンジャー受容体には、 スカベンジャー受容体クラス A (SR-A) , CD36、 Lectin-like oxidized LDL receptor - 1 (LOX - 1)、 CD68など力 S知られる [Greaves DR et al. , J Lipid Res. 2005 ; 46 : 11-20. ]。 酸化 LDLはこれら 4種のスカベンジャー受容体す ベてに結合するが、 AcLDLが結合するスカベンジャー受容体は SR- Aのみである。 本実験では変性 LDLの代表として AcLDLをリガンドとして用い、 AcLDLを認識す る唯一のス力べンジャ一受容体である SR-Aの活性を測定した(図 9 )。
末梢血ヒ ト単球 (4 X 106cells/6 cm dish) を 10% ヒ ト血清含有 RPMI- 1640培 地 2 mLで 7日間培養してマク口ファージに分化させた。このとき同時に 0. 6 nM の サリューシン- α又はサリューシン- /3を添加し、 [125I] AcLDLのェンドサイ トーン ス活性(SR- A活性) に対する効果を検討した。 7日目に培地を交換し、 [125I] AcLDL (5〜10 μ g/mL)と 0. 6 nM サリユーシン - a又はサリユーシン _ βを適量の培地を加 えて全量を 2 mLとし、 18時間培養した。
細胞を 3% BSA含有 PBSで一度洗い、 PBSで二度洗った。 0. 1 N NaOH lmLを加え て室温で 30 分間静置した。 細胞をポリスチレンチューブ (12 X 75 mm, Fisher Scientific Company)に回収し、さらに 1 mLの 0. IN NaOHで洗いこんで回収した。 細胞抽出液の全量を γカウンターで測定し、 その一部を用いて BCA 法 (Pierce) を用いてタンパク質濃度を測定した。 細胞抽出液の放射活性(cpm)を [125I]AcLDL の比活性 (cpra/ g)、 dishあたりの細胞タンパク質量(mg)で除して、 [125I]AcLDL の Cell-association μ g/mg cell proteinノを算出した [Miyazaki A et al. , J Biol Chem. 1994 ; 269 : 5264 - 5269. ] 0
Degradation assayは以下の方法で行った。
スカベンジャー受容体を介してマクロファージに取り込まれた [125I] AcLDL は、 リソソームで分解される。 [125I]AcLDL のタンパク質部分である [1251]アポ B - 100
はタンパク質分解酵素により断片化されべプチドとして細胞外に排出され、 トリ クロ口酢酸可溶性分画にみいだされる。 一方マクロファージに取り込まれなかつ た培地中の [125I] AcLDLはトリクロ口酢酸不溶性で、遠心により沈殿として分離す ることができる。
培養上清から 750 Lをポリスチレンチューブ (12 x 75 mm, Fisher Scientific Company) に分取し、 40% トリクロ口酢酸を 250 L、 0. 7 M AgN03を 200 ^ L加え、 vortexしてから 2, 500 rpm (T0MY, LC-120低速遠心機, ローター 7015-06) で 10 分間遠心した。 AcLDL のョードラベルの段階でタンパク質と反応しなかったフリ 一の 1251はゲルろ過により大半が除去されているが、 一部残存がみられる。 この 段階で AgN03を加えることにより残存した 1251を Ag [125I]として沈殿させることが できる。 従って培養上清のトリクロロ酢酸不溶性分画には、 細胞に取込まれなか つた [125I] AcLDL並びにフリ一の 1251に由来する Ag [125I]が含まれ、 トリクロ口酢 酸可溶性分画には細胞によってプロセスされた [125I]AcLDL 由来のぺプチドのみ が検出される。遠心後上清 600 しを別のチューブに取り、 γカウンターで測定し た。測定結果から dishあたりの培養上清中のトリクロロ酢酸可溶性の総放射活性 (cpm)を計算し、 [125I] AcLDLの比活性(cpm/ Ai g AcLDL protein)、 dishあたりの細 胞タンパク質量(mg)で除し、 これを [125I]AcLDL の degradation ( μ g/mg cell protein とした。
上記の実験によりサリユーシン - α並びにサリユーシン- がマクロファージの 泡沫化を制御していることが判明したので、 この現象にサリユーシンによる SR - A 活性制御が関与しているかを検討した。 細胞内に取り込まれた AcLDLのタンパク 質部分 (アポ B- 100) はリソソームのタンパク質分解酵素によってペプチドまで 分解され、 細胞外に排出される。 Association assay では細胞表面又は細胞内に 存在する 1251の放射活性を測定し、 Degradation assayではリソソームでぺプチ ドに断片化され細胞外に排出された [125I] AcLDL (アポ B - 100の断片ペプチド) の 放射活性を測定する。 この 2つの assayにより SR-A活性を測定した。
ヒ ト末梢血単球 (4 X 106 cells/6 cm dish) を 7 日間培養してマクロファージ に分化させた。 このとき同時添加した 0. 6 nMサリユーシン- α又はサリユーシン
- ]3の [125I]AcLDLの取込み、 分解に対する効果を検討した。 7 日 目の細胞に 5〜: 10
i g/mL [125I]AcLDL、 0. 6 nM サリューシン- 又はサリューシン- ]3を添加してさ らに 18時間培養し、 Association assay、 Degradation assayを行った。 その結 果、どちらの assayにおいてもコントロール細胞に比しサリユーシン-ひ及びサリ ユーシン - ]3による有意な変化は認められなかった(図 1 O A及ぴ B、 図 1 O A は Association assayの結果を、 図 1 0 Bは Degradation assayの結果を示す。 )。 よってサリ.ユーシン- α及ぴサリユーシン- /3は SR-A活性に影響を与えず、 AcLDL の細胞取り込み以降のコレステロールの代謝に影響していることが明らかになつ た。 実施例 6 ヒ ト単球由来マクロファージにおける ATP—binding cassette transporter Al (ABCA-1 ) タンパク質発現に対するサリューシン-ひ及びサリュー シン - i3の効果
マクロファージの泡沫化現象を制御する 1つの機構として ABCA - 1 を介する遊 離コレステロールの細胞外排出機構(cholesterol efflux)がある。 この ABCA-1 タンパク質発現に対するサリューシンの効果を検討した。末梢血ヒ ト単球(4 X 106 cells /6 cm dish) を 7日間培養してマクロファージに分化させた。 このとき同 時に 0、 0. 2、 0. 4、 0. 6、 0. 8、 1. 0 nM のサリューシン - α又はサリューシン - ;3を 添加して ABCA-1タンパク質発現に対する効果を検討した。 前記の ABCA- 1特異抗 体を用いたウェスタンブロットでは、 サリユーシン- α又はサリユーシン- βによ る ABCA- 1タンパク質発現の有意な変化はみられなかった(図 1 1八及ぴ8、図1 1 Aはサリユーシン - αの結果を、 図 1 1 Bはサリユーシン- /3の結果を示す)。 実施例 7 分化した後の培養ヒト単球由来マクロファージの ACAT - 1 タンパク質 発現に対するサリユーシン- α及びサリユーシン - ]3の効果
実施例 1 〜 6の実験はすべて培養ヒ ト単球 'マクロファージの分化の段階でサ リユーシン- α及ぴサリユーシン - βを添加して培養 7日目の細胞を用いてその効 果を検討したが、分化後のマクロファージにもサリユーシン- α及びサリユーシン
- j8が ACAT- 1タンパク質発現に対して同様の効果があるかを検討した。 末梢血ヒ ト単球 (4 X 106 cells /6 cm dish) を 7日間培養してマクロファージに分化させ
た。 7 日目に 0 0. 4 0. 6 1. 0 nM のサリユ^ ~シン- α及ぴサリュ一シン - βを添 加してさらに 3日間培養した。 ACAT-1ウェスタンプロットで検討すると、 ACAT- 1 タンパク質発現は 1. Ο ηΜ のサリ シン- αによりコントロールの 60%に減少し、 0. 6 ηΜのサリューシン- /3により 2· 2倍に増加した(図 1 2 及ぴ8、図 1 2 Αはサ リ シン- αの結果を、 図 1 2 Βはサリ シン - の結果を示す)。.この結果か ら単球からマクロファージへの分化後もサリ シン- 及びサリユーシン- βに 対する ACAT - 1発現調節は保たれていることが明らかになった。
上記実施例における培養ヒ ト単球由来マクロファージの泡沫化 (細胞内コレス テロールエステル蓄積) 並びに泡沫化に関与する遺伝子発現に対する新規血管作 動性物質サリ シン - α並びにサリ シン- の効果の検討により得られた主 な結果は以下の通りである。
(1) AcLDLによるマクロファージの泡沫化はサリ シン- αに抑制され、 サリュ —シン - βにより促進した。
(2) 細胞内コレステロールエステル化酵素 ACAT- 1の発現はサリ シン - によ り抑制され、 サリューシン - により促進された。
(3) AcLDLを認識して細胞内に取込む SR- A の活性はサリューシン _ α及びサリュ シン- /3による影響を受けなかった。
(4) 細胞コレステロールの搬出に重要な ABCA-1の発現はサリ シン- 及ぴサ リ シン- ]3による影響を受けなかった。
以上より培養ヒ ト単球由来マクロファージ泡沫化はサリ シン - α及びサリ シン - j3により相反する制御を受けること、その泡沫化の制御機構の一つとし てサリューシン- α及びサリューシン _ /3による相反する ACAT- 1 の発現制御があ ることが明らかになった。
血管平滑筋細胞や線維芽細胞に対するサリ シン- の増殖促進作用はサリ シン - αの前処理により抑制されず、サリ シン- とサリユーシン- βの効 果は相力 Ρ的であ る と の報告 も あ り [Shichiri M et al. Nat Med.
2003 : 9 : 1166 - 1172. ]、 サリ シン - αとサリ シン- は異なる受容体を介し てこれらの細胞に作用している可能性が示唆される。 また、 Wang らは、 mouse mas-like G protein-coupled receptor Al (mMrgAl) を発現させた HEK293T細胞
において、 サリユーシン - j3をリガンドとして認識することを報告した [Wang Z et al. , Eur J Pharmacol. 2006 ; 539 : 145— 150. ] 0 —方サリューシン- は mMrgAlの リガンドとして挙動しないことからも、 サリユーシン - αとサリュ一シン - ]3は異 なる受容体に認識されていることが示唆される [Wang Z et al. , Eur J Pharmacol. 2006 ; 539 : 145-150. ]。 本研究では、 サリユーシン- αとサリユーシン - βはマクロ ファージの泡沫化並びに ACAT- 1発現に対して相反する結果が得られた。従ってサ リユーシン - αとサリユーシン _ ]3は、 マクロファージに発現する異なる受容体を 介して作用したことが推測される。 実施例 8 ヒ ト冠動脈の動脈硬化病変におけるサリューシン _ α、 - 0の発現 急性冠症候群 (ACS)で死亡した患者 (72 歳、 男性) から冠動脈の病理切片を作 製し、 免疫化学的組織染色用に精製した抗サリューシン-ひ、 - 3抗体を用いて染 色した。冠動脈のプラーク部の平滑筋細胞及ぴ線維芽細胞に加え、脂肪斑内(fatty streak)のマクロファージ由来泡沫細胞にもサリユーシン- j8の強発現が認められ た (図 1 3 A〜図 1 3 D)。 サリューシン- αとサリューシン - j8は共通の前駆体 (Preprosalusin)から同部位で生成されると想定されているが、 サリューシン- が強発現していた冠動脈硬化病変部にはサリューシン - αの発現はほとんど認め られなかった。 他の 3患者 (40歳男性、 76歳女性、 86歳女性) においても同様 な所見が確認された。よって本検討によりサリューシン- の強発現及ぴサリュー シン の発現低下はヒ トの冠動脈硬化の進展に深く関わっていることが実証さ れた。 実施例 9 サリユーシン- をマーカーとして用いた動脈硬化の検出
中高年齢層 (40〜86歳) の男性 64例における血清サリューシン- α濃度と動脈 硬化との関係を検討した。 動脈硬化の評価には、 簡便かつ非侵襲的に行える頸動 脈エコー (Βモード) を用い、 両側の頸動脈のうち内膜中膜複合体厚 (ΙΜΤ) の最 大値 (最大 ΙΜΤ) を測定した。 最大 ΙΜΤは健常者では、 1 mm以下であるが、 1 mm を超えると急性冠症候群 (ACS)や脳卒中の危険因子として関与していることがす でに証明されている。 血清サリューシン.- α濃度は、 Sato K et al. , Peptides.
2006;27:2561-2566 に記載のラジオィムノアッセィにて測定した。 血清サリュー シン - α濃度は頸動脈の最大 IMTと有意な負の相関を示した(r=0.29, Pく 0.02; 図 14)。 このことから血清サリューシン-ひ濃度が低いほど、 動脈硬化が進展して いることが読み取れる。 実施例 1 0 サリユーシン- αをマーカーとして用いての急性冠症候群、虚血性心 疾患及び動脈硬化の検出
安定労作性狭心症患者 37例 (男性 26例、 女性 11例)、 発症 6時間以内の急性 冠症候群患者 60例 (男性 41例、 女性 19例)、 (急性冠症候群) 発症後 6ヶ月以上 経過した陳旧性心筋梗塞患者 76例 (男性 61例、 女性 15例) の計 173例の虚血性 心疾患、 その対照として、 本態性高血圧患者 40例 (男性 28例、 女性 12例) およ ぴ健常者 55例(男性 35例、女性 20例)より、血清を採取し、 Sato Ket al. , Peptides. 2006;27 :2561-2566.の記載に従い、 ラジオィムノアッセィによりサリユーシン- ひ濃度を測定した。 急性冠症候群患者全例に対し緊急冠動脈造影を施行し、 冠動 脈病変の重症度を動脈硬化病変が認められた冠動脈の罹患枝数 (右冠動脈 +左冠 動脈前下行枝 +左回旋枝 =計 3枝) で評価した。 また、 高血圧患者全例および健 常者 23例に頸動脈エコーを施行し、 IMTが 1.1 mm以上で辺縁が明瞭なものをプ ラークと認定し、 左右の全てのプラークの厚さの総和をプラークスコアとした。 プラークスコアが 1.1以上かつ 5以下を軽度動脈硬化、 5〜: 10を中等度動脈硬化、 10以上を高度動脈硬化と定義した。
血清サリユーシン -α濃度は、健常者での 21.7±1.5 pM(Mean士 SEM、以下同じ)、 高血圧患者での 15.4±1.1 pMに比べ、 虚血性心疾患患者では 4.9±0.6 pMと有意 に低下していた(p<0.0001)。虚血性心疾患の中では、安定労作性狭心症患者で 6.4 ±0.9 pM、 急性冠症候群患者で 3.6±0.6 pM、 陳旧性心筋梗塞患者で 5.2± 1.2 PM であった (図 1 5)。 急性冠症候群患者 60例の緊急冠動脈造影の結果、 23例に 1 枝病変、 17例に 2枝病変、 20例に 3枝病変を認めた。 サリューシン -a濃度は、 1枝病変患者では 5.2±1.0pM、 2枝病変患者では 3.1±1.4PM、 3枝病変患者で は 2.3±0.9 pMであり、 3枝病変患者では 1枝病変患者に比べ有意に低値を示し ていた(pく 0.05、 図 1 6)。
高血圧患者 40例および健常者 23例でのサ V ユーシン -ひ濃度は、頸動脈の最大 IMT と負の相関を持ち、 かつプラークスコアが重症化に連れ斬減していたことか ら、 サリューシン - α濃度の低下は動脈硬化の進展に関与していると考えられる。 以上より、 サリユーシン- αの血清濃度の低下は、動脈硬化、特に虚血性心疾患 の存在を反映しているものと推測される。サリューシン - α濃度は虚血性心疾患の 中では急性冠症候群で最も低値を示しており、 冠動脈病変が重症なほど更に低下 していることが分かり、抗動脈硬化作用を有するサリューシン - aが急性冠症候群 の発症やその重症度を推定するマーカーとしての有用性が高いことが判明した。 実施例 1 1 サリューシン _ α及ぴサリューシン- /3の持続投与による動脈硬化に 対する作用 ·
動脈硬化モデル動物であるアポ Ε欠損マウスにおいて、サリユーシン _ c¾及ぴサ リユーシン- ;8の持続投与による動脈硬化に対する作用を検討した。同時に抗サリ ユーシン- 又は抗サリユーシン- の抗血清の作用も検討した。 動脈硬化病変の 検討に加え、動脈硬化初期病変の形成に重要なマクロファージの泡沫化に着眼し、 酸化 LDLによるコレステロールエステルの蓄積を測定した。 酸化 LDLを認識する スカベンジャー受容体(CD36, SR- A)、 細胞内コレステロールエステル化酵素であ ¾ acyl-CoA : cholesterol acyltransferase 1 (ACAT1)、 細胞内の過乗 Uな遊離 レ ステロールを細胞外への搬出機構(cholesterol efflux)に関与する ATP- binding cassette transporter Al (ABCA1)、 ABCG1、 SR- BIの発現を解析した。
本動物実験は、 日本国昭和大学動物実験実施指針に基づいて施行された。 本研 究に使用したアポ E欠損マウスは全て Jackson Laboratory (Bar Harbor, ME, USA) から購入した。
13週齢の雄性アポ E欠損マウス 72匹を 6群に分け、 (i) 生食液 (コントロー ル)、 ( i i ) サリ ューシン- ひ (0. 6 nmol/kg/h) 、 ( i ii ) サリ ューシン— ]3 (0. 6 nmol/kg/h)、 (iv) サリューシン- α (0. 6 nmol/kg/h) +抗サリューシン- α血清(1. 4 μ g/kg/h) , (ν)サリューシン - ]3 (0. 6 nmol/kg/h) +抗サリユーシン - |3血清(1. 4 μ g/kg/h)、 (vi)抗サリューシン - |3血清(1. 4 μ g/kg/h)をォスモミ二ポンプを用い て 4〜8週間持続皮下投与した。ォスモミ-ポンプおよび内容液は 1週間毎に交換
した。
実験はマゥスに普通食の摂取状況下で実施され、 下記のパラメータ ^"を測定し た。
1 . 大動脈の動脈硬化病変の解析
採取した大動脈を長軸方向に切開し、 オイルレツド 0染色にて脂質沈着を伴う 粥状硬ィ匕病変面積を検討した。 Adobe Photoshop (Adobe System Inc. , San Jose, CA, USA) を用いて動脈硬化病変を同定し、 NIH Scion Image (Scion Corp. , Frederick, MD, USA) を用いて解析し、 病変面積を定量した。 また大動脈近位部 (大動脈弁直下部) での横断切片を作成し、 オイルレッ ド 0染色にて動脈硬化病 変の詳しい解析を行った。
2 . マクロファージの角军析
(1) 細胞内コレステロールエステル蓄積の検討:
チォダリコレート腹腔投与 4日後に浸出性マクロファージを採取し、 ゥシ胎仔 血清 10%含有の RPMI1640液にて培養した。 培養液に酸化 LDL (10 μ g/mL)ととも に [¾]ォレイン酸(0. 1 mM)を添加し、 13時間後に細胞内に蓄積したコレステロ一 ル [ ]ォレイン酸の放射活性を測定し、 マクロファージの泡沫化を評価した。
(2) Cholesterol effluxの検討:
同様に採取したマクロファージを [¾]コレステロール(74 kBq/mL)で標識した 酸化 LDL (10 μ g/ml)含有の同培養液で 24時間保温した。 PBSで 2回洗った後、 HDL (15 IX g/mL)を入れた 0. 1% BSA含有の RPMI1640液で 16時間保温した。 培養液を 15, OOOrpmで 10分間遠心して残渣物を除去し、細胞は PBSで 2回洗浄後に 1 N NaOH 0. 3 mLで溶解した。 培養液おょぴ細胞抽出液中の [ ]コレステロールの放射活性 を測定した。 Cholesterol efflux (%) =培養液中の [ ]コレステロールの放射活 性/培養液および細胞抽出液中の [ ]コレステロールの放射活性 X100
(3) 泡沫化関連遺伝子発現の検討:
( 1 ) と同様の実験により同マクロファージを採取し、 マクロファージ泡沫化 関連遺伝子すなわち、 酸化 LDLを認識するスカベンジャー受容体 CD36と SR-A、 細胞内コレステロールエステル化酵素 ACAT1、 cholesterol efflux に関与する
ABCA1、 ABCG1、 SR-BI のタンパク質発現をウェスタンブロットで解析した。 マク
口ファージ機能の内部標準として ]3- actin発現も合わせて検討した。バンドの濃 度の定量には CS Analyzer (アト一株式会社、 東京)を用いた。
上記検討において、 以下の結果が得られた。
1. 大動脈の動脈硬化病変
投与開始 4週間後、 大動脈弓のオイルレツド 0で赤く染色された動脈硬化病変 は、 生食投与のコントロールに比べ (図 1 7- 1A)、 サリューシン- 13を投与した アポ E欠損マウスでは大動脈起始部から腕頭動脈分岐部にかけて広範囲に認めら れた (図 1 7- 1C、 矢印)。 各群 6匹で測定された動脈硬化病変面積の平均値は、 サリューシン- i3投与群ではコントロール群に比べ約 2.5 倍に增えていた(P < 0.005、 図 1 7-2)。 大動脈近位部の横断切片では、 コントロールに比べ (図 1 7 - 1F)、 サリユーシン- 3投与ではオイルレツド 0で赤く染色された粥種の形成お よび血管壁肥厚を認めた (図 1 7- 1H、 矢印)。 サリユーシン - βに加え抗サリュ —シン - β血清を併用投与したマウスでは、 サリューシン - ]3単独投与マウスに比 ベ、 大動脈動脈硬化病変 (図 1 7-lD)、 粥腫および血管壁肥厚 (図 1 7- II) は 改善されていた。抗サリユーシン - ]3血清の単独投与ではコントロールと同等の動 脈硬化病変であった (図 1 7- 1E及び J)。
投与開始 8週間後、 生食を投与したコントロールでは、 大動脈弓部の動脈硬化 病変は著明に増大していたが (図 1 8- 1A、 矢印)、 サリューシン-ひの投与によ り動脈硬化病変面積は半分以下に減少していた (図 1 8- 1B及び 1 8-2)。 また サリユーシン 投与により著明なプラーク形成も認められなかった(図 1 8- IB 及ぴ E)。抗サリューシン -α血清によりサリューシン- の動脈硬化病変に対する 抑制効果は解除されていた(図 1 8- 1C及ぴ F並びに 1 8-2)。
2. マクロファージの角军析
投与開始 4週間後に腹腔から,採取した浸出性マクロファージでは、 酸化 LDLに よる泡沫化 (コレステロールエステルの細胞内蓄積) は、 サリューシン- ではコ ントロールに比べ、 約 4分の 1に減少していた(Ρく 0.05、 図 1 9Α)。 サリューシ ン -j8は、 マクロファージの泡沫化を約 2倍に増加し(P く 0.01、 図 1 9A)、 抗サ リユーシン- |3血清により コントロールレベルまで抑制されていた(P く 0.01、 図
1 9 A)。 HDLによる cholesterol e;ffluxは、 サリューシン - aによりコントロー ルの約 2倍に増加していた(P く 0. 01、 図 1 9 B)。
同時期のマクロファージ泡沫化関連遺伝子のタンパク質発現を図 2 0に示す。 サリューシン -《は、酸化 LDLを認識するスカベンジャー受容体(CD36、 SR- A)の発 現には影響を及ぼさなかったが (図 2 0 及び8)、 ACAT1発現を約半分に減少し (P く 0. 05, 図 2 0 C)、 cholesterol effluxに関わる ABCA1、 ABCG1、 SR-BIの発 現を 1. 5〜2倍に促進させた(P く 0. 05、 図 2 0 D、 E及ぴ F)。 一方サリューシン - は、 CD36、 SR- A、 ACAT1の発現をコントロールの約 1. 5〜2. 8倍に増加させた(P 〈0. 05、 図 2 0 A、 B及び C)。 上記のサリューシン - |3の効果は抗サリューシン iS 血清により全て解除された (図 2 0 A、 B及ぴ C)。 産業上の利用可能性
実施例に記載のように、サリユーシン - aは、マクロファージの泡沫化を抑制す ることにより、 動脈硬化病変形成を抑制するので、 動脈硬化性疾患の予防又は治 療剤として用いることができる。 一方、 サリユーシン- 3は、 マクロファージの泡 沬化を促進することにより、 動脈硬化病変形成を促進するので、 サリューシン- の作用を抑制することにより動脈硬化性疾患を予防又は治療することができる。 抗サリューシン- β抗体は、 サリューシン- の作用を抑制することにより、 動脈 硬化性疾患の予防又は治療剤として用いることができる。 さらに、 血清、 尿等の 生体試料中のサリューシン- の濃度は、動脈硬化の病変形成と関連しているので、 生体試料中のサリユーシン _ αを動脈硬化性疾患の検出やリスク評価のためのマ 一力一として用いることができる。
サリユーシン α又はサリユーシン /3の作用を抑制するアンタゴユスティック化 合物は、 動脈硬化性疾患の予防 '治療に用いることができる。 また、 サリューシ ン - aをマーカーとして動脈硬化性疾患の検出を行うことができる。 このように、 本発明は医療の分野に利用することができる。
本明細書で引用した全ての刊行物、 特許および特許出願をそのまま参考として 本明細書にとり入れるものとする。