凝集体形成性タンパク質分解用の発現コンストラクト、及び凝集体形成性 タンパク質が凝集体を形成することを抑制する方法
技術分野
[0001] 本発明は古細菌プロテアノームの新規な用途に関する。具体的には本発明は、古 細菌プロテアソームを利用した凝集体形成性タンパク質分解用の発現コンストラクト、 及び凝集体形成性タンパク質が凝集体を形成することを抑制する方法に関する。 背景技術
[0002] 20Sプロテアソームは大部分の細胞内タンパク質を分解する普遍性の高 、"たる型" の蛋白分解酵素複合体であり(非特許文献 1) 7個のサブユニットタンパク質によって 形成されたリング力 つ積み重なって構成されて 、る(非特許文献 2)。 ocサブュ-ッ トは外側のリングを (非特許文献 3)、またタンパク質分解能をもつ βサブユニット (非 特許文献 4)は内側のリングを構成して!/ヽる(非特許文献 5)。
真核細胞のュビキチン プロテアソームシステムは蓄積し易い異常なタンパク質や 上手く折り畳まれな力つたタンパク質を分解する(非特許文献 6)。これらの細胞内異 常凝集体は、プロテアノームの機能低下が病態に関係していると考えられている神 経変性疾患であるパーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症 (ALS)、ポリグルタミン病 ( ハンチントン病や数種の脊髄小脳変性症、球脊髄性筋萎縮症 (SBMA) )やアルッハ イマ一病の発病に関わっていると考えられている(非特許文献 7〜11)。しかし、異常 タンパク質の蓄積の原因ははつきりしていない。この共通問題を解決出来れば素晴ら しい治療法の確立に繋がると思われる。
[0003] 非特許文献 1 : Hershko, A. Ciechanover, A. (1998) Annu. Rev. Biochem. 67, 425-47 9
非特許文献 2 : Puhler, G., Weinkauf, S., Bachmann, L., Muller, S., Engel, A. , Hegerl , R., Baumeister, W. (1992) EMBO J. 11 , 1607—1616
非特許文献 3 : Zwickl, P. , Kleinz, J" Baumeister, W. (1994) Nature Struct. Biol. 1 , 7 65-770
非特許文献 4 : Seemuller, E., Lupas, A., Stock, D., Lowe, J., Huber, R., Baumeister, W. (1995) Science 268, 579-582
非特許文献 5 : Grziwa, A., Baumeister, W., Dahlmann, B., Kopp, F. (1991) FEBS Le tt. 290, 186-190
非特許文献 6 : Ciechanover A, Orian A, Schwartz Aし(2000) J. Cell Biochem. 77, 4 0-51
非特許文献 7 : Kabashi, E., Agar, J.N., Taylor, D.M., Minotti, S" Durham, H.D. (20 04) J. Neurochem. 89, 1325—35
非特許文献 8 : Bailey, C.K., Andriola, I.F., Kampinga, H.H. and Merry, D.E. (2002) Hum. Mol. Genet. 11, 515-523
非特許文献 9 : Chen, Q., Thorpe, J., Keller, J.N" (2005) J. Biol. Chem. 26, 30009-3 0017
非特許文献 10 : Keck, S., Nitsch, R., Grune, T., Ullrich, O. (2003) J. Neurochem. 85 , 115-122
非特許文献 l l : Bence, N.F., Sampat, R.M. and Kopito, R.R. (2001) Science 292, 15 52-1555
非特許文献 12 : Baumeister, W., Walz, J" Zuhl, F., Seemuller, E. (1998) Cell 92, 36 7-380
非特許文献 13 : Zwickl, P., Goldberg, A丄., Baumeister, W. (2000) Proteasomes: Th e World of Regulatory Proteolysis, Landes Bioscience, Georgetown, TX
非特許文献 14 : Zwickl, P., Ng, D" Woo, K.M., Klenk, H.P., Goldberg, A丄. (1999) J. Biol. Chem. 274, 26008-26014
非特許文献 15 :Venkatraman, P., Wetzel, R., Tanaka, M., Nukina, N., Goldberg, A. し (2004) Mol. Cell 14, 95-104
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
古細菌の 20Sプロテアソームは α、 j8各サブユニット共にそれぞれ一種類のみであ り、真核細胞のプロテアソームの祖先と考えられている(非特許文献 12)。一方、真核
細胞のプロテアソームは oc、 βサブユニット共に全て異なる 7種のサブユニットから構 成されている(非特許文献 12)。古細菌はタンパク質分解に働くュビキチン認識シス テムを持っておらず、他の未知のタグが存在すると考えられている(非特許文献 13) 。また、古細菌にも真核細胞の 19Sの祖先にあたる proteasome- activating nucleotidas e (PAN)と呼ばれる 20Sプロテアソームを調製する複合体が存在すると考えられて 、る 。 PANはその 19Sの下部に相当する複合体を形成し、 20Sによる効率的なタンパク質 分解には必要と考えられている(非特許文献 14)。しかし、 in vitroにおいては PAN無 しで古細菌のプロテアノームがポリグルタミン凝集体を急速に分解出来ることが示さ れている (非特許文献 15)。
以上の背景の下、本発明は、変異スーパーォキシド 'ジスムターゼ 1や異常に伸長 したポリグルタミン鎖を持つアンドロゲン受容体など、真核細胞内で凝集体を形成す るタンパク質を分解するために有効な手段を提供すること目的とする。
課題を解決するための手段
本発明者らは、古細菌のプロテアソームによる、 PANに依存しない分解が真核細胞 内で再現出来な 、かと考え、培養細胞の実験に適した 37°Cで生育するメタノサルシ ナ ·マゼィ (Methanosarcina mazei: Mm)の 20Sプロテアソームを用いて実験を進めた。 その結果、この古細菌の 20Sプロテアソームを真核細胞内において機能を持った状 態で生成させることによって、家族性 ALSの原因タンパク質であるスーパーォキシド' ジスムターゼ 1 (superoxide dysmutase- 1 : S0D1)や SBMAの原因タンパク質である伸 長したポリグルタミン鎖を持ったアンドロゲン受容体 (AR)を変異体特異的に分解し、 その細胞毒性も軽減させることに成功した。さらに、この古細菌のプロテアソームは他 の神経変性疾患に関係するタンパク質である α -シヌクレイン( α— synuclein)やタウ (tau)も分解することが明ら力となった。このように、古細菌のプロテアソームは、真核 細胞内における凝集体形成性タンパク質の分解に有用であることが判明し、細胞内 に蓄積する異常タンパク質による毒性が原因となっている疾患に対する新たな治療 法の確立への途が拓かれた。
本発明は主として以上の知見ないし成果に基づき、以下に示す凝集体形成性タン パク質分解用の発現コンストラクト、及び凝集体形成性タンパク質が凝集体を形成す
ることを抑制する方法などを提供する。
[ 1]真核細胞用プロモーターに作動可能に連結された、古細菌のプロテアソームを コードする核酸配列を含有する、凝集体形成性タンパク質分解用の発現コンストラタ ト。
[2]前記核酸配列が古細菌のプロテアソーム aサブユニット及び Z又は βサブュ ニットをコードする、 [ 1]に記載の発現コンストラクト。
[3]前記 aサブユニットが、配列番号 1に示すアミノ酸配列又は該アミノ酸配列と比 較してプロテアソーム aサブユニットの機能に実質的に影響しない部分でのみ相違 するアミノ酸配列からなり、
前記 βサブユニットが、配列番号 3に示すアミノ酸配列又は該アミノ酸配列と比較し てプロテアソーム /3サブユニットの機能に実質的に影響しない部分でのみ相違する アミノ酸配列からなる、 [2]に記載の発現コンストラクト。
[4]前記核酸配列が配列番号 2に示す DNA配列及び Ζ又は配列番号 4に示す DN Α配列を含む、 [ 1]に記載の発現コンストラクト。
[5]前記古細菌カ^タノサルシナ属に属する古細菌である、 [ 1]又は [2]に記載の 発現コンストラクト。
[6]前記古細菌力^タノサルシナ'マゼィである、 [ 1 ]又は [2]に記載の発現コンスト ラタ卜。
[7]前記真核細胞用プロモーターが哺乳動物用プロモーターである、 [ 1]〜[6]の V、ずれかに記載の発現コンストラクト。
[8]前記凝集体形成性タンパク質が、変異スーパーォキシド 'ジスムターゼ 1、異常 に伸長したポリグルタミン鎖を持つアンドロゲン受容体、 α—シヌクレイン、及びタウか らなる群より選択されるタンパク質である、 [ 1]〜 [7]の ヽずれかに記載の発現コンス トラク卜。
[9] [ 1]〜[8]のいずれかに記載の前記発現コンストラクトを標的真核細胞に導入 するステップを含む、標的真核細胞内で凝集体形成性タンパク質が凝集体を形成す ることを抑制する方法。
[ 10]古細菌のプロテアソーム αサブユニット及び βサブユニットを標的真核細胞
内で強制発現させるステップを含む、標的真核細胞内で凝集体形成性タンパク質が 凝集体を形成することを抑制する方法。
[ 11]前記古細菌カ^タノサルシナ属に属する古細菌である、 [ 10]に記載の方法。
[ 12]前記古細菌力^タノサルシナ*マゼィである、 [ 10]に記載の方法。
[ 13]前記標的真核細胞がヒト細胞である、 [9]〜 [ 12]のいずれかに記載の方法。
[ 14]前記標的真核細胞が、単離されたヒト細胞である、 [9]〜[ 12]のいずれかに 記載の方法。
[ 15]前記標的真核細胞が非ヒト哺乳動物細胞である、 [9]〜 [ 12]のいずれかに 記載の方法。
[ 16]凝集体形成性タンパク質分解用の発現コンストラクト作製のための、又は標的 真核細胞内で凝集体形成性タンパク質が凝集体を形成することを抑制するための、 古細菌のプロテアノームの使用。
図面の簡単な説明
[図 l]Mmプロテアノームの真核細胞内での発現を示す図。(A)本実験で用いた発現 ベクターの構成図。 Δ αサブユニットにおける欠損部位を図示した。 ThrlCys iSサブ ユニット (m β 1)は 3塩基を置換して作製した。(Β)抗 ocサブユニット抗体、抗 βサブュ ニット抗体、抗 His- tag抗体を用いたウェスタンブロット解析。(C) Ni- NTA pull down解 析:抗 αサブユニット抗体にて免疫沈降した。(D) Ni-NTA pull downサンプルのキモ トリプシン様活性を示す。エラーバーは s.d. (n=3)を示す。(E)グリセオール濃度勾配 超遠心: Mmプロテアソーム α、 βサブユニットは内在性ヒト 20Sプロテアソームサブュ ニット α 1、 α 5とほぼ同じ分画に位置している。
[図 2]Mmプロテアソーム α β存在下で変異 SOD1の発現量が低下することを示す図。
6cm培養皿で培養した Neuro2aに 1 μ gの SOD1- MycHisベクターと Mmプロテアソーム サブユニットをトランスフエクシヨンし、 48時間後に解析した。 Mmプロテアソーム α β 量の増加に伴い変異 SOD1の発現量が徐々に減少する事が分かる。 Mmプロテアソ ーム a m j8 1ではそのような効果は見られない。 WT:野生型 S0D1、 G93A:S0D1G93A、 G85R: S0D1G85R、 G37R:S0D1G37R、 H46R:S0D1H46R。
[図 3A]Mmプロテアソーム a j8が変異 SOD1の分解を促進することを示す図。サイクロ
へキシミド追跡解析 (方法参照)の結果。 Mmプロテアソーム α β存在下で様々な変 異 SOD1の分解が促進されて 、ることが示されて 、る。グラフは S0D1G93Aと S0D1G85Rの データを連続 3回分集計したものである。エラーバーは s.d.を示す。
[図 3B]Pulse chase解析(方法参照)の結果。 Mmプロテアソーム α β存在下にて SOD 1G93Aの分解が促進されている事が示されている。円: mock、三角: a |8、四角: a m iS 1。エラーバーは s.d.を示す(n=3)。
[図 4]Mmプロテアソーム a βが変異 SOD1による細胞毒性を軽減することを示す図。 用量依存的に見た Mmプロテアソーム α βの SOD1の毒性に対する効果が示される。 (A)野生型 S0D1、(B)変異 S0D1 93A、(C)変異 S0D1 85Rによる HEK293細胞毒性を 3 - (4,5- dimethylthiazoト 2- yl)- 5- (3- carboxymethoxypnenyl)- 2- (4- sulfophenyl)- 2H- tet razolium (MTS)にて解析した。箱の中の横線は平均を、箱の上線、下線はそれぞれ 7 5, 25パーセンタイルを、上下の T棒はそれぞれ 90, 10パーセンタイルを示す。(n=3 X 6wells)。数値はトランスフエクシヨンした DNAの量を示す(例: a j8 0.1= α 0.05 ^ g+ β 0.05 /^)。 (D)蛍光基質 Ζ- DEVD- R110を用いたカスパーゼ 3/7活性の相対比較 を示す。 Mmプロテアソーム α βはカスパーゼ 3/7の活性化を抑制している。 Positive controlは 3.2 ± 0.2(スタウロスポリン 1 μ Μで 24時間 incubateした細胞を使用)。
[図 5]変異 SOD1と Mmプロテアソーム α βが細胞内において共存することを示す図。 ΗΕΚ293細胞に対して、 GFPタグの付!、た野生型 SOD1ある!/、は変異 S0D1G93Aと Mm プロテアソーム α βをトランスフエクシヨンし、 48時間後に固定した。抗 His抗体を一次 抗体、 Alexa- 546抗マウス抗体を二次抗体に用いた。 WT:野生型 S0D1、 G93A:S0D1
G93A
[図 6]Mmプロテアソーム α β力 伸長したポリグルタミン鎖を持つ変異アンドロゲンレ セプター (AR)の分解を促進し、その細胞毒性を軽減することを示す図。(A) 6cm培 養皿で培養した Neuro2aに 1 μ gの pCR3.1- AR24Qベクターまたは pCR3.1- AR97Qベ クタ一と Mmプロテアソームサブユニットをトランスフエクシヨンし、 48時間後に解析した 。 Mmプロテアソーム α β量の増加に伴い変異 AR97Qの発現量が徐々に減少するが 、 AR24Qには影響しない。 Mmプロテアソーム a m j8 1ではそのような効果は見られな い。(B)サイクロへキシミド追跡解析 (方法参照)の結果。 Mmプロテアソーム α 存在
下で変異 AR-97Qの分解が促進されて!、る。 (C) AR-97Qによる細胞毒性を Mmプロ テアソームひ βは軽減している。箱の中の横線は平均を、箱の上線、下線はそれぞ れ 75, 25パーセンタイルを、上下の Τ棒はそれぞれ 90, 10パーセンタイルを示す。(η=3 X 6wells)。
[図 7]Mmプロテアソーム α βは凝集体を形成し易いタンパク質を分解するが、凝集 体を形成し難 、タンパク質は分解しな 、ことを示す図。 6cm培養皿で培養した Neuro2 aに Mmプロテアソームサブユニットと、 (A) 1 gの α -シヌクレインベクター(野生型、 A 53T、 A30P)、(B) tauベクター(6ァイソフォーム: tubulin binding domainを 3回繰り返 すもの(3L, 3M, 3S)、 4回繰り返すもの(4L, 4M, 4S)、 29個のアミノ酸を N末に 2つ含 む(3L, 4L)、 1つ含む(3M, 4M)、含まない(3S, 4S) )、 (C) mock, GFPベクター、 LacZ -V5ベクターをトランスフエクシヨンして解析した。(A) (B) α -シヌクレインと tauの発現 量は Mmプロテアソーム α j8と共に発現させると減少する。(C)内在性 GAPDHや外 来性の GFP、 LacZの発現量は Mmプロテアソーム α j8の発現に影響されない。
発明を実施するための最良の形態
(用語)
説明の便宜上、本明細書に使用される用語の一部についてその定義を以下にまと める。
古細菌 (Aarchaea)とは、真核生物、真正細菌と並び生物界を三分する生物群の一 つであり、細胞膜の構成成分がエーテル型脂質であること、脂質骨格のグリセロール に対する炭化水素の結合位置力 n-2,3位であること、通常は細胞壁にペプチドダリ カン層が見られないこと、抗生物質に対して特有の感受性を示すこと、ジフテリア毒 素に感受性があること等で特徴付けられる。古細菌には Euryarchaeota (ユリアーキォ ータ門 (界) )、 Crenarchaeota (クレンァーキォータ門 (界);)、 Korarchaeota (コルアーキォ ータ門 (界》、及び Nanoarchaeota (ナノァーキォータ門 (界》があり、代表的な古細菌と し飞メタン糸田菌 (Methanothermus fervidus、 Methanococcus voltae、 Methanobacterum formicicum、 Methanococcus jannaschii、 Methanosarucina mazeiなど)、高度好; ¾菌( Halobacterium salinarumなど)、好熱菌 (Thermoplasma acidophilum)、硫黄糸田菌など が知られている。尚、古細菌の分類、同定方法などについての以下の成書、(l) Arc
haea, A laboratory manual, edited by F. T. Robb, A. R. Place, K. R. Sowers, H. J. S chreier, S. DasSarma and E. M. Fleischmann, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (1995)、 (2) Superbugs, Microorganisms in Extreme Environments edited by K. Horikoshi and W. D. Grant, Springer- Verlag, Tokyo (1991)、 (3) Extremophile s, Microbial Life in Extreme Environments edited by K. Horikoshi and W. D. Grant, Wiley-Liss, Inc., New York (1991)等が参考になる。
[0008] 本明細書において用語「〜を含む」又は「〜を含んでなる」は、「〜からなる」の意味 をも含む表現として使用される。したがって例えば、「複数の要素 (部材)を含んで構 成される物(又は方法)」と記載した場合には、それが意味するものとして「当該複数 の要素 (部材)から構成される物 (又は方法)」も当然に考慮される。
[0009] 本明細書において用語「疾患」は、疾病、病気、又は病態など、正常でない状態を 表す言葉と交換可能に用いられる。
[0010] 本明細書における用語「核酸」は、それを含むことが意図されていないことが明らか な場合を除いて、 DNA (cDNA及びゲノム DNAを含む)、 RNA (mRNAを含む)、 DNA類 似体、及び RNA類似体を含む。本発明の核酸の形態は限定されず、即ち 1本鎖及び 2本鎖のいずれであってもよい。好ましくは 2本鎖 DNAである。またコドンの縮重も考慮 される。即ちタンパク質をコードする核酸の場合には、その発現産物として当該タン パク質が得られる限り任意の塩基配列を有して 、てよ 、。
[0011] 本明細書において用語「単離された核酸」とは、もともと天然に存在している核酸( 例えばヒト生体内の核酸)の場合、典型的には、天然状態において共存するその他 の核酸から分離された状態の核酸をいう。但し、天然状態において隣接する核酸配 列など一部の他の核酸成分を含んで 、てもよ 、。例えばゲノム DNAの場合の「単離 された核酸」の好ま ヽ形態では、天然状態にお!ヽて共存する他の DNA成分 (天然 状態にお 、て隣接する DNA配列を含む)を実質的に含まな!/、。
[0012] 例えば cDNA分子など遺伝子組み換え技術によって生産される核酸の場合の「単 離された核酸」は好ましくは、細胞成分や培養液などを実質的に含まない状態の核 酸をいう。同様に、化学合成によって生産される核酸の場合の「単離された核酸」は 好ましくは、 dNTPなどの前駆体 (原材料)や合成過程で使用される化学物質等を実
質的に含まな!/、状態の核酸を!、う。
[0013] 核酸がベクターや組成物の一部として存在して 、ても又は外来性分子として細胞 内に存在していても、人為的操作の結果として存在している限り「単離された核酸」で ある。
尚、特に言及しない限り、本明細書において単に「核酸」と記載した場合には、単離 された状態の核酸を意味する。
[0014] (凝集体形成性タンパク質分解用の発現コンストラクト)
本発明の第 1の局面は凝集体形成性タンパク質分解用の発現コンストラクトに関す る。本発明において「凝集体形成性タンパク質」とは、正常な状態では単独で存在し て!ヽるが何らかの原因で凝集体を形成する性質を獲得し、又は凝集体を形成するよ うに方向付けられたタンパク質であって、その凝集体が細胞毒性を発揮するものをい う。尚、ここでの「単独で存在」とは、凝集体を形成していないという意味であり、通常 の状態で他の分子と複合体を形成するタンパク質の場合はこのような複合体を形成 した状態であっても「単独で存在」に該当する。また、「細胞毒性」とは、細胞が正常な 状態を維持することに対する負の性質ないし作用をいい、典型的には細胞機能の低 下又は細胞死を惹起する性質ないし作用が該当する。
[0015] 凝集体形成性タンパク質の例として、変異スーパーォキシド 'ジスムターゼ 1 (SOD1 )、異常に伸長したポリグルタミン鎖を持つアンドロゲン受容体 (AR)、 aーシヌクレイ ン、タウ (tau)、アミロイド形成蛋白質、プリオン蛋白質等を挙げることができる。変異 S OD1は家族性筋萎縮性側索硬化症 (家族性 ALS)の原因タンパク質である。一方、異 常に伸長したポリグルタミン鎖を持つ ARは球脊髄性筋萎縮症 (SBMA)の原因タンパ ク質である。また、 α—シヌクレイン及びタウはそれぞれパーキンソン病及びアルッノヽ イマ一病の発症及び進行に関与し、患者の神経細胞内ではその異常な蓄積が認め られる。本発明の発現コンストラクトは、典型的には、このような神経疾患に関与する タンパク質の分解を目的として使用されるものであり、当該神経疾患の治療、予防、 発症機構の研究などに有用である。
[0016] 本発明の「発現コンストラクト」は、古細菌のプロテアソームをコードする核酸配列( 以下、「プロテアソーム核酸配列」ともいう)を含有する。換言すれば、本発明の発現
コンストラクトが含有するプロテアソーム核酸配列は、(1)古細菌のプロテアソーム αサ ブユニットをコードする核酸配列、(2)古細菌のプロテアソーム βサブユニットをコード する核酸配列、又は (3)古細菌のプロテアソーム aサブユニット及び βサブユニットを コードする核酸配列(この場合、プロテアソームひサブユニットをコードする部分とプロ テアソーム /3サブユニットをコードする部分の間に IRES (internal ribosomal entry site )等、プロテアソーム /3サブユニットの発現を可能にする介在配列が配置される)であ る。
[0017] 本発明の好まし ヽー態様ではメタノサルシナ属(Methanosarcina)に属する古細菌 のプロテアノームが利用される。メタノサルシナ属の古細菌は比較的穏やかな温度条 件で生育可能なものが多ぐ一部はメタンの生産に利用されている。後述の実施例で 使用されたメタノサルシナ'マゼィ(Methanosarcina mazei)においては、哺乳動物細 胞の生存に最適な約 37°Cの温度条件下で良好な生育が認められ、本発明で使用す るプロテアノームの由来として好ましい。即ち、本発明の更に好ましい一態様では、メ タノサノレシナ'マゼィのプロテアソーム αサブユニット及び Ζ又は βサブユニットをコ ードする核酸配列が組み込まれた発現コンストラクトが構築される。
尚、古細菌は例えば、独立行政法人理ィ匕学研究所バイオリソースセンター、独立 行政法人製品評価技術基盤機構、 ATCC (American Type Culture Collection), DS MZ (German Collection of Microorganisms and Cell Cultures)などより入手 會であ る。
[0018] 本発明の発現コンストラクトに組み込まれるプロテアソーム核酸配列の具体例として 、 (1)配列番号 1に示すアミノ酸配列 (メタノサルシナ ·マゼィのプロテアソーム αサブ ユニットの配列)をコードする配列、(2)配列番号 3に示すアミノ酸配列 (メタノサルシ ナ 'マゼィのプロテアソーム 13サブユニットの配列)をコードする配列を挙げることがで きる。また、上記(1)の核酸配列及び上記(2)の核酸配列を併用してもよぐこの場合 にはメタノサルシナ ·マゼィのプロテアソーム αサブユニット及び βサブユニットを標 的細胞内で強制発現させる発現コンストラクトが得られることになる。尚、上記(1)の 核酸配列の具体例(DNA配列)を配列番号 2に、上記(2)の核酸配列の具体例(DN Α配列)を配列番号 4にそれぞれ示す。
[0019] プロテアソーム核酸配列は本明細書又は添付の配列表が開示する配列情報を参 考にし、標準的な遺伝子工学的手法、分子生物学的手法、生化学的手法などを用 いることによって、単離された状態に調製することができる。例えば、配列番号 2の塩 基配列を有するプロテアソーム核酸配列(プロテアソーム aサブユニットをコードする 核酸配列)は、当該塩基配列又はその相補配列の全体又は一部をプローブとしたノヽ イブリダィゼーシヨン法を利用してメタノサルシナ ·マゼィ (ATCC BAA-159D)のゲノ ム DNAを铸型とした核酸増幅反応 (例えば PCR)を利用して増幅及び単離することが できる。配列番号 3の塩基配列を有するプロテアソーム核酸配列(プロテアソーム β サブユニットをコードする核酸配列)についても同様の方法で単離した状態に調製可 能である。尚、オリゴヌクレオチドプライマーは一般に、市販の自動化 DNA合成装置 などを用いて容易に合成することができる。
[0020] 本発明の他の態様では、配列番号 1に示すアミノ酸配列からなるタンパク質( aサ ブユニット)と比較した場合にその機能は同等であるものの一部においてアミノ酸配 列が相違するタンパク質 (以下、「相同的 αサブユニット」ともいう)をコードする核酸 配列及び Ζ又は配列番号 3に示すアミノ酸配列からなるタンパク質( αサブユニット) と比較した場合にその機能は同等であるものの一部においてアミノ酸配列が相違す るタンパク質 (以下、「相同的 βサブユニット」ともいう)をコードする核酸配列を用いて 発現コンストラクトが構築される。このように本発明では、配列番号 1のアミノ酸配列を 有するタンパク質と機能面力 実質的に同一と見なされる (換言すれば該アミノ酸配 列と比較してプロテアソーム aサブユニットの機能に実質的に影響しない部分での み相違する)タンパク質をコードする核酸配列、及び Z又は配列番号 3のアミノ酸配 列を有するタンパク質と機能面力も実質的に同一と見なされる (換言すれば該ァミノ 酸配列と比較してプロテアソーム j8サブユニットの機能に実質的に影響しない部分 でのみ相違する)タンパク質をコードする核酸配列を用いて発現コンストラクトを構築 してもよい。このような核酸コンストラクトによれば、配列番号 1のアミノ酸配列をコード する核酸配列、及び Z又は配列番号 3のアミノ酸配列をコードする核酸配列が組み 込まれた発現コンストラクトと同様に、標的細胞内でプロテアソーム αサブユニットとし て機能するタンパク質、及び Ζ又はプロテアソーム βサブユニットとして機能するタン
パク質を強制発現させることができる。
[0021] ここで、「一部においてアミノ酸配列が相違する」とは、典型的には、アミノ酸配列を 構成する 1〜数個のアミノ酸の欠失、置換、若しくは 1〜数個のアミノ酸の付加、挿入 、又はこれらの糸且合せによりアミノ酸配列に変異 (変化)が生じていることをいう。ここ でのアミノ酸配列の相違は、プロテアノームの αサブユニット(配列番号 1のアミノ酸 に対する改変の場合)又は βサブユニット (配列番号 3のアミノ酸に対する改変の場 合)の機能が保持される限り許容される。この条件を満たす限りアミノ酸配列が相違 する位置は特に限定されず、また複数の位置で相違が生じていてもよい。ここでの複 数とは例えば全アミノ酸の約 30%未満に相当する数であり、好ましくは約 20%未満に 相当する数であり、さらに好ましくは約 10%未満に相当する数であり、より一層好まし くは約 5%未満に相当する数であり、最も好ましくは約 1 %未満に相当する数である。 即ち相同的 αサブユニットは配列番号 1のアミノ酸配列と例えば約 70%以上、好ましく は約 80%以上、さらに好ましくは約 90%以上、より一層好ましくは約 95%以上、最も好ま しくは約 99%以上の同一性を有する。同様に、相同的 j8サブユニットは配列番号 3の アミノ酸配列と例えば約 70%以上、好ましくは約 80%以上、さらに好ましくは約 90%以 上、より一層好ましくは約 95%以上、最も好ましくは約 99%以上の同一性を有する。
[0022] 好ましくは、保存的アミノ酸置換を非必須アミノ酸残基( exサブユニット又は βサブ ユニットの機能に関与しないアミノ酸残基)に生じさせることによって相同タンパク質を 得る。ここでの「保存的アミノ酸置換」とは、あるアミノ酸残基を、同様の性質の側鎖を 有するアミノ酸残基に置換することを 、う。アミノ酸残基はその側鎖によって塩基性側 鎖(例えばリシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えばァスパルギン酸、ダル タミン酸)、非荷電極性側鎖 (例えばァスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チ 口シン、システィン)、非極性側鎖 (例えばグリシン、了ラニン、パリン、ロイシン、イソ口 イシン、プロリン、フエ-ルァラニン、メチォニン、トリプトファン)、 β分岐側鎖(例えば スレオニン、パリン、イソロイシン)、芳香族側鎖(例えばチロシン、フエ-ルァラニン、ト リプトフアン)のように、いくつかのファミリーに分類されている。保存的アミノ酸置換は 好ましくは、同一のファミリー内のアミノ酸残基間の置換である。
[0023] 一方、古細菌のプロテアソーム βサブユニットではスレオニン 1領域、グルタミン酸 1
7領域、リジン 33領域、ァスパラギン酸 105領域及びァスパラギン酸 166領域の活性 への関与が報告されており、相同的 βサブユニットをコードする核酸配列を調製する にあたっては、これらの領域の改変を避けることが好まし!/、。
ここで、二つのアミノ酸配列の同一性(%)は例えば以下の手順で決定することがで きる。まず、最適な比較ができるよう二つの配列を並べる(例えば、第一の配列にギヤ ップを導入して第二の配列とのァライメントを最適化してもよ 、)。第一の配列の特定 位置の分子 (アミノ酸残基)が、第二の配列における対応する位置の分子と同じであ るとき、その位置の分子が同一であるという。二つの配列の同一性は、その二つの配 列に共通する同一位置の数の関数であり(すなわち、同一性(%) =同一位置の数 Ζ位置の総数 X 100)、好ましくは、ァライメントの最適化に要したギャップの数およ びサイズも考慮に入れる。
二つの配列の比較及び同一性の決定は数学的アルゴリズムを用いて実現可能で ある。配列の比較に利用可能な数学的アルゴリズムの具体例としては、 Karlinおよび Altschul (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264- 68に記載され、 Karlinおよび Alt schul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873- 77において改変されたァルゴリズ ムがあるが、これに限定されることはない。このようなアルゴリズムは、 Altschulら(1990 ) J. Mol. Biol. 215:403- 10に記載の NBLASTプログラムおよび XBLASTプログラム(バ 一ジョン 2.0)に組み込まれている。あるアミノ酸配列に相同的なアミノ酸配列を得るに は例えば、 XBLASTプログラムで score = 50、 wordlength = 3として BLASTポリべプチ ド検索を行えばよい。比較のためのギャップァライメントを得るためには、 Altschulら(1 997) Amino Acids Research 25(17):3389- 3402に記載の Gapped BLASTが利用可能 である。 BLASTおよび Gapped BLASTを利用する場合は、対応するプログラム(例え ば XBLASTおよび NBLAST)のデフォルトパラメータを使用することができる。詳しくは http:〃 www. ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。配列の比較に利用可能な他の数学的 ァノレゴリズムの例としては、 Myersおよび Miller (1988) Comput Appl Biosci. 4:11-17 に記載のアルゴリズムがある。このようなアルゴリズムは、例えば GENESTREAMネット ワークサーバー(IGH Montpellier,フランス)または ISRECサーバーで利用可能な ALI GNプログラムに組み込まれて 、る。アミノ酸配列の比較に ALIGNプログラムを利用す
る場合は例えば、 PAM120残基質量表を使用し、ギャップ長ペナルティ = 12、ギヤッ プペナルティ =4とすることができる。
二つのアミノ酸配列の同一性を、 GCGソフトウェアパッケージの GAPプログラムを用 いて、 Blossom 62マトリックスまたは PAM250マトリックスを使用し、ギャップカ卩重 = 12、 10、 8、 6、又は 4、ギャップ長加重 =2、 3、又は 4として決定することができる。
[0025] 本発明の発現コンストラクトには真核細胞用プロモーターが組み込まれており、プロ テアソーム核酸配列は当該プロモーターに作動可能に連結されて!、る。当該構成の 発現コンストラクトでは真核細胞用プロモーターの作用によって、プロテアソーム核酸 配列を真核細胞内で強制発現させることが可能となる。ここでの「プロモーターに作 動可能に連結された」とは「プロモーターの制御下に配置された」と同義であり、通常 、プロモーターの 3'末端側に直接又は他の配列を介して、古細菌のプロテアソームを コードする核酸配列が連結されることになる。
[0026] 真核細胞用プロモーターの中でも、好ましくは哺乳動物細胞用プロモーターが使 用される。哺乳動物細胞用プロモーターとして CMV-IE (サイトメガロウィルス初期遺 伝子由来プロモーター)、 SV40ori、レトロウイルス LTP、 SR a、 EF1 α、 βァクチンプロ モーター等を例示できる。ァセチノレコリンレセプタープロモーター、エノラーゼプロモ 一ター、 L7プロモーター、ネスチンプロモーター、ァノレブミンプロモーター、ァノレファ フエトプロテインプロモーター、ケラチンプロモーター、インスリンプロモーター等、哺 乳動物組織特異的プロモーターを使用してもよ 、。
[0027] 本発明の核酸コンストラクト内にェンノヽンサ一配列や選択マーカー配列を配置する こともできる。ェンノヽンサ一配列の使用によってプロテアソーム核酸配列の発現効率 の向上が図られる。また、選択マーカー配列を含有する発現コンストラクトを使用すれ ば、選択マーカーを利用して発現コンストラクトの導入の有無 (及びその程度)を確認 することができる。
[0028] 尚、プロモーター、プロテアソーム核酸配列、ェンハンサー配列(必要な場合)、及 び選択マーカー配列 (必要な場合)の挿入操作等は標準的な組換え DNA技術 (例え 【 、 Molecular Cloning, Third Edition,丄.84,し old Spring Harbor Laboratory Press, New Yorkを参照することができる、制限酵素及び DNAリガーゼを用いた周知の方法)
を用いて行うことができる。
[0029] 本発明の発現コンストラクトはプロテアソーム核酸配列を標的細胞内へ導入するた めに使用される。このような目的に使用可能な限り発現コンストラクトの形態は特に限 定されないが、好ましくは発現ベクターの形態をとる。ここでの「発現ベクター」とは、 それに挿入された核酸を目的の細胞 (宿主細胞)内に導入することができ、且つ当該 細胞内にぉ 、て発現させることが可能な核酸性分子を 、 、、ウィルスベクター及び 非ウィルスベクターを含む。ウィルスベクターを用いた遺伝子導入法は、ウィルスが 細胞へと感染する現象を巧みに利用するものであり、高い遺伝子導入効率が得られ る。ウィルスベクターとしてアデノウイルスベクター、アデノ随伴ウィルスベクター、レト ロウイノレスベクター、レンチウイノレスベクター、へノレぺスゥイノレスベクター、センダイゥ ィルスべクタ一等が開発されている。この中でアデノ随伴ウィルスベクター、レトロウイ ルスベクター、レンチウィルスベクターではベクターに組み込んだ外来遺伝子が宿主 染色体へと組み込まれ、安定かつ長期的な発現が期待できる。レトロウイルスベクタ 一の場合はウィルスゲノムの宿主染色体への組み込みには細胞の分裂が必要であ ることから非分裂細胞への遺伝子導入には適さない。一方、レンチウィルスベクター やアデノ随伴ウィルスベクターは非分裂細胞においても感染後に外来遺伝子の宿主 染色体への組み込みが生ずる。従って、これらのベクターは神経細胞や肝細胞など の非分裂細胞において安定かつ長期的に外来遺伝子を発現させるために有効であ る。
[0030] 各ウィルスベクターは既報の方法に従い又は市販される専用のキットを用いて作製 することができる。例えば、アデノウイルスベクターの作製は COS-TPC法や完全長 D NA導入法などで行うことができる。 COS-TPC法は、 目的の cDNA又は発現カセットを 組み込んだ組換えコスミドと、親ウィルス DNA-末端タンパク質複合体 (DNA- TPC)を 293細胞に同時トランスフエクシヨンし、 293細胞内でおこる相同組換えを利用して組 換えアデノウイルスを作製する方法である(Miyake,S., Makimura.M., Kanegae.Y., Ha raaa.b., Takamon.K., Tokuda,し., and baito.I. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. UbA, 93 , 1320.)。一方、完全長 DNA導入法は、 目的の遺伝子を挿入した組換えコスミドを制 限消化処理した後、 293細胞にトランスフエクシヨンすることによって糸且換えアデノウィ
ルスを作製する方法である (寺島美保、近藤小貴、鐘ケ江裕美、斎藤泉 (2003)実験 医学 21 (7) 931.)。 COS- TPC法は Adenovirus Expression Vector Kit (Dual Version) ( タカラバイオ株式会社)、 Adenovirus genome DNA- TPC (タカラバイオ株式会社)を 利用して行うことができる。また、完全長 DNA導入法は、 Adenovirus Expression Vect or Kit (Dual Version) (タカラバイオ株式会社)を利用して行うことができる。
[0031] 一方、レトロウイルスベクターは以下の手順で作製することができる。まず、ウィルス ゲノムの両端に存在する LTR (Long Terminal Repeat)の間のパッケージングシグナ ル配列以外のウィルスゲノム(gag、 pol、 env遺伝子)を取り除き、そこへ目的の遺伝子 を挿入する。このようにして構築したウィルス DNAを、 gag、 pol、 env遺伝子を構成的に 発現するパッケージング細胞に導入する。これによつて、ノ ッケージングシグナル配 列をもつベクター RNAのみがウィルス粒子に組み込まれ、レトロウイルスベクターが産 生される。
[0032] アデノベクターを応用ないし改良したベクターとして、ファイバータンパク質の改変 により特異性を向上させたもの (特異的感染ベクター)や目的遺伝子の発現効率向 上が期待できる guttedベクター(ヘルパー依存性型ベクター)などが開発されて!ヽる。 本発明の発現ベクターをこのようなウィルスベクターとして構築してもよい。
[0033] 非ウィルスベクターとしてリボソーム、正電荷型リボソーム(Feigner, PI., Gadek, T.
R., Holm, M. et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 84:7413-7417, 1987)、 HVJ(Hemagglutin ating virus of Japan)—リポソ ~~ム (Dzau, V.J., Mann, M., Morishita, R. et al., Proc. N atl. Acad. Sci., 93:11421-11425, 1996、 Kaneda, Y., Saeki, Y. & Morishita, R., Mole cular Med. Today, 5:298-303, 1999)等が開発されている。本発明の発現ベクターを このような非ウィルス性ベクターとして構築してもよ 、。
[0034] (凝集体の形成を抑制する方法)
本発明の第 2の局面は、古細菌のプロテアソームを利用して標的細胞内で凝集体 形成性タンパク質が凝集体を形成することを抑制する方法 (以下、「本発明の抑制法 」ともいう)に関する。尚、本発明において用語「抑制」は用語「阻止」と互換的に使用 される。
[0035] 本発明の一態様では上記本発明の発現コンストラクトが使用される。即ち、本発明
の発現コンストラタトを標的細胞に導入するステップが実施される。使用する発現コン ストラタトが古細菌のプロテアソーム αサブユニットのみをコードする核酸配列を含有 する場合は、当該発現コンストラクトを標的細胞に導入する際、古細菌のプロテアソ ーム βサブユニットをコードする核酸配列を含有する発現コンストラクトも標的細胞に 導入する。これによつて標的細胞内では、異なる発現コンストラクトに由来するプロテ ァソーム aサブユニット及び /3サブユニットが発現し、古細菌のプロテアノームが構 築される。一方、使用する発現コンストラクトが古細菌のプロテアソーム αサブユニット 及び j8サブユニットをコードする核酸配列を含有するものであれば、それを標的細胞 内に導入することによって標的細胞内で αサブユニット及び βサブユニットが発現し 、古細菌のプロテアノームが構築される。
[0036] ここでの「標的細胞」は真核細胞であり、具体的には例えばヒト細胞、サル、マウス、 ラット等の非ヒト哺乳類細胞 (COS細胞、 CHO細胞など)、大腸菌などの細菌細胞、酵 母細胞、昆虫細胞等である。好ましい標的細胞は哺乳動物細胞であり、特に好まし Vヽ標的細胞は神経系細胞 (神経細胞及びグリア細胞)である。
[0037] 単離された標的細胞、又は生物個体を構成した状態の標的細胞に対して本発明 の抑制法が適用される。ここでの「単離された」とは、その本来の環境 (例えば生体を 構成した状態)から取り出された状態にあることをいう。従って通常は、単離された標 的細胞は培養容器内又は保存容器内に存在し、それへの in vitroでの人為的操作 が可能である。具体的には、生体から分離され、生体外で培養状態にある細胞 (株 化された細胞を含む)は、単離された標的細胞としての適格を有する。尚、上記の意 味において単離された状態にある限り、組織体を形成した状態であっても単離された 細胞である。
単離された標的細胞は生物個体より調製することができる。一方、独立行政法人理 化学研究所バイオリソースセンター、独立行政法人製品評価技術基盤機構、 ATCC
(American Type cultureし ollection)、 Db Z (uerman Collection of Microorganisms and Cell Cultures)などより入手した細胞を、単離された標的細胞として使用すること ちでさる。
[0038] 標的細胞への発現コンストラクトの導入は、標的細胞の種類、発現コンストラクトの
形態などを考慮して、リン酸カルシウム共沈殿法、リボフヱクシヨン (Feigner, P.L. et al ., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84,7413—7417(1984》、 HVJリボソーム法、 DEAEデキ ストラン法、エレクト口ポーレーシヨン (Potter,H. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 8 1, 7161-7165(1984))、マイクロインジェクション (Graessmann,M. & Graessmann,A., Pr oc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 73,366-370(1976))、遺伝子銃法、超音波遺伝子導入法 等によって実施することができる。発現コンストラクトとしてウィルスベクターを使用す る場合には感染によって標的細胞への導入が行われる。
[0039] 本発明の抑制法は、特定の凝集体の形成による標的細胞の機能低下や細胞死を 抑制すること (換言すれば機能保全や機能回復)に利用される。従って本発明の抑 制法は、特定のタンパク質の凝集体の形成が発症又は病態の進行の原因となる疾 患の予防又は治療のため(即ち医療目的)の有効な手段といえる。このように本発明 の抑制法は、特定の疾患に対する遺伝子治療 (又はその一部)として利用され得る。 尚、ここでの「特定のタンパク質の凝集体の形成が発症又は病態の進行の原因とな る疾患」の代表的なものとして家族性 ALS、 SBMA、パーキンソン病及びアルッハイマ 一病などの神経変性疾患を挙げることができる。
[0040] ここで、遺伝子治療法には、遺伝子導入用の発現コンストラクトを直接患者体内へ 投与する治療法 (in vivo遺伝子治療法)と、治療対象から採取した細胞に対して体外 で遺伝子導入した後、細胞を患者に投与する治療法 (ex vivo治療法)がある。本発 明の抑制法はいずれの治療法に対しても適用可能である。 in vivo遺伝子治療法の 場合における発現コンストラクトの投与経路は特に限定されず例えば局所接種、静 脈内、皮内、皮下、筋肉内及び腹腔内などへの注入によって投与が実施される。こ れらの投与経路は互いに排他的なものではなぐ任意に選択される二つ以上を併用 することもできる(例えば、経口投与と同時に又は所定時間経過後に静脈注射等を 行う等)。ここでの「治療対象」は特に限定されず、ヒト、及びヒト以外の哺乳動物 (ぺッ ト動物、家畜、実験動物を含む。具体的には例えばマウス、ラット、モルモット、ハムス ター、サル、ゥシ、ブタ、ャギ、ヒッジ、ィヌ、ネコ、 -ヮトリ、ゥズラ等である)を含む。好 適には、本発明の抑制方法を利用した治療法における治療対象はヒトである。
[0041] (本発明の発現コンストラクト又は抑制法の他の用途)
本発明の発現コンストラクト又は本発明の抑制法は、特定の真核細胞内において 古細菌のプロテアソームを強制発現させた場合の挙動を調べる目的でも使用され得 る。また、トランスジヱニック非ヒト哺乳動物を作製する目的で本発明の発現コンストラ タトなどを使用することもできる。例えば、本発明の発現コンストラクト又は本発明の抑 制法によって古細菌のプロテアソームをコードする核酸が導入された受精卵母細胞 又は胚性幹細胞を作製し、これからトランスジエニック非ヒト哺乳動物を発生させること ができる。本発明の非トランスジエニック動物は、古細菌のプロテアノームが哺乳動物 に与える影響ないし効果を個体レベルで検討することを可能にする点で有用である。 トランスジェニック非ヒト哺乳動物は、受精卵の前核に直接 DNAの注入を行うマイクロ インジヱクシヨン法、レトロウイルスベクターを利用する方法、 ES細胞を利用する方法 などを用いて作製することができる。以下、トランスジェニック非ヒト哺乳動物の作製方 法の一例として、マイクロインジェクション法を利用した方法を説明する。
マイクロインジェクション法では、まず交尾が確認された雌マウスの卵管より受精卵 を採取し、そして培養した後にその前核に発現コンストラクトの注入を行う。注入操作 を終了した受精卵を偽妊娠マウスの卵管に移植し、移植後のマウスを所定期間飼育 して仔マウス (F0)を得る。仔マウスの染色体に導入遺伝子が適切に組込まれて!/、る ことを確認するために、仔マウスの尾などカゝら DNAを抽出し、導入遺伝子に特異的な プライマーを用いた PCR法や導入遺伝子に特異的なプローブを用いたドットハイプリ ダイゼーシヨン法等を行う。本明細書における「トランスジエニック非ヒト哺乳動物」の 種は特に限定されないが、好ましくはマウス、ラットなどの齧歯類である。
[0042] 本明細書で特に言及しな!、事項 (条件、操作方法など)につ!/、ては常法に従えば よ \、 f列? J Molecular Cloning (Third Edition, Cola Spring Harbor Laboratory Press,
New York)、 Current protocols in molecular biology (edited by Frederick M. Ausubel et al, 1987)等を参考にすることができる。
実施例
[0043] 1.実験材料及び方法
(1)発現ベクターの作成: Methanosarcina mazei (Mm)フロア f ムサフユニットひ 、 β Δ (2- 13)ひ、変異 jS (ThrlCys)
ATCCにて購入した Mm (ATCC BAA-159D)のゲノムを铸型として PCR法にてプロ テアソームサブユニット e (Gene Bank GenelD: 1480962、 Gene Bank Accession No.N P— 634644 (アミノ酸配列、配列番号 1)、 Gene Bank Accession No. NC— 003901 (塩基 配列、配列番号 2)を、 a F: 5, - GCGGGTACCCCACCATGCAGATGGCACCACA GATG (配列番号 5;)と、 a R : 5, - CGCCTCGAGTTATTCTTTGTTCTCATTTCCTT TGTG (配列番号 6)のプライマーを用いて増幅し、 Δ (2-13) α ( Δ α )は Δ a F; 5 ' - GCGGGTACCCCACCATGACGGTTTTCAGCCCTGACGG (配列番号 と先述の a Rを用いて増幅した。 PCR産物は pcDNA3.1(+) (Invitrogen)ベクターの Kpnlと Xhol サイトに挿入した。サブユニット j8 (Gene Bank GenelD: 1479036、 Gene Bank Accessi on No.NP— 632718 (アミノ酸配列、配列番号 3)、 Gene Bank Accession No. NC— 00390 1 (塩基配列、配列番号 4)は j8 F : 5,- GCCTCTAGACCACCATGGATAATGACAA ATATTTAAAG (配列番号 8)と j8 R: 5, - GCGACCGGTGTTTCCTAAAGCTCTTCT G (配列番号 9)を用いて増幅し、 pcDNA3.1(+)MycHisベクター (Invitrogen)の Xbalと A gelサイトに挿入し、 C末に 6 Xヒスチジンタグが連結されるようにした。変異 j8サブュ ニット: m j8 1 (ThrlCys)は Site— directed Mutagenesis Kit (Stratagene)を用い付属マ- ュアルに沿って作製した。 pcDNA3.1/MycHis- SOD1と pCMV- Tag4- SOD1ベクター( 野生型と G93A、 G85R、 H46R、 G37R)(参考文献 16)及び pEGFP-Nl-SODl (野生型と G93A)ベクター、 pCR3.1— AR24Qと pCR3.1— AR97Qベクター、 pcDNA3.1(+)/MycHis— α -synuclein (野生型と A53T、 A30P)は以前作製したものを使用した (参考文献 16、 1 7、 18)。 6種類のァイソフォームの tauタンパク質については、 Dr. Michel Goedertより 供与された PRK172ベクターから PCR法を用いて増幅し、 pcDNA 3.1(+) (Invitrogen)ベ クタ一の Kpnlと Xholサイトに挿入したものを使用した。
(2)細胞培養、トランスフエクシヨン、抗体
Neuro2a細胞と Human embryonic kidney 293 (HEK293)細胞は、 10%の牛胎仔血清 含有の Dulbecco ' s modified Eagle' s medium (DMEM)を用いて培養した。 MTS assay におけるトランスフエクシヨンには Lipofectamine 2000(Invitrogen)を用い、その他の実 験におけるトランスフエクシヨンには Effectene Transfection Reagent (Qiagen)を用いた 。使用した抗体を以下に列挙する。
抗 SOD1抗体 (SOD100、 Stressgen bioreagents)、抗 His抗体 (Penta— His、 Qiagen)、 抗 a -チューブリン抗体 (clone B- 5- 1- 1、 Sigma),抗 20Sプロテアソーム j8サブユニット 抗体 (Methanosarcina thermophila由来、 Calbiochem)、抗 20Sプロテアソーム αサブュ ニット饥.体 (Methanosarcina thermophila由来、 Calbiochem)、 I^AR饥体 (N— 20、 Santa Cruz Biotechnology)、饥 —シヌクレイン 体 (LB509、 Zymed)、抗 taujn.体 (Mouse Ta u- 1、 Chemicon International)^
[0045] (3)グリセオール濃度勾配超遠心
直径 10cmの培養皿で培養した細胞を lmlの 0.01M Tris- EDTA, pH 7.5で回収し、 2 回の解凍 溶解サイクルで細胞を破壊し、 4°C、 15分間、 15000gで遠心後の上清を 1 0?40%の直線的濃度勾配を持つ 36mlのグリセオールの最上部に注入し、 Beckman S W28ローターにて 80000gで 22時間遠心分離した。遠心後 lmlずつ Liquid layer injecto r fractionator (LLIF) (Advantech, model number CHD255AA)を用いて最上部から 37 分画に分離した。各分画より 200 1ずつをアセトンにて沈殿させ、沈殿物をそれぞれ 50 μ 1のサンプルバッファ一にて溶解し、 SDS-PAGE及びウェスタンブロットに使用し た。免疫染色によるバンドに関し、 ImageGauge software (フジフィルム)を用いて定量 解析を行った。
[0046] (4) Ni-NTA pull downアツセィ
10cmの培養皿で培養した HEK293細胞に Mmプロテアソームサブユニット α、 a j8、 Δ a j8、 a m j8 1をトランスフエクシヨンし、 lmlの PBSバッファーで回収した後に 2回の 凍結 融解サイクルにて細胞を破壊し、 3000gで遠心し上清を回収した。上清と 200 μ 1の Ni- ΝΤΑァガロースを混ぜ、 4mlの 10mMイミダゾール /PBSバッファーで 4回洗浄 した。その後、 2mlの 250mMイミダゾール /PBSバッファ一にて溶出した。
[0047] (5)プロテアソーム活¾の測定
Nト NTA法にて生成したサンプル 500 μ 1に 10mMの LLVY-AMC (Sigma)をカ卩えて 37 °Cで 12時間インキュベートし、マルチプレートリーダー(PowerscanHT,大日本製薬) にてキモトリブシン様活性を測定した。測定は 3回行い one-way ANOVAを用いて解 祈した。
[0048] (6)免疫細胞化学
ガラスカバースリップ上で培養した HEK293細胞に pEGFP- Nl- SOD1と Mmプロテア ソーム a、 j8サブユニットをトランスフエクシヨンした。 48時間後細胞を固定し、ブロッ キングの後に抗 His抗体と 4°Cにて一晩インキュベートした。洗浄後、二次抗体 (Alexa -546-抗マウス抗体、 Molecular Probes, Inc.)と反応させ、ォリンパス BX51を用いて撮 した。
[0049] (7)サイクロへキシミド追跡解析
6cmの培養皿で培養した Neuro2a細胞に 1 μ gの pcDNA3.1/MycHis- SOD1と mock(0 .6 μ g)あるいは Mmプロテアソーム a m /3 1(各 0.3 μ g)、 Mmプロテアソーム α β (各 0.3 μ g)をトランスフエクシヨンした。 24時間後に 50 g/mlになる様にサイクロへキシミドを 加え、指定時間に細胞をそれぞれ回収し SDS-PAGE及びウェスタンブロットに使用し た。
[0050] (8) Pulse chase解析
6cmの培養皿で培養した Neuro2a細胞に 1 μ gの pCMV- Tag4- S0D1G93Aと mock(0.6 μ g)あるいは Mmプロテアソーム a m j8 1(各 0.3 μ g)、 Mmプロテアソーム α β (各 0.3 μ g)をトランスフエクシヨンした。 24時間後に (35S)Cysで 60分間ラベルし、指定時間に回 収した。抗 FLAG抗体 (M2, Sigma)にて免疫沈降を行った後、 SDS-PAGEを行い、 Ty phoon 9410 (Genaral Electric Company)にて放射能を測定した。
[0051] (9)細胞生存能力測定 (Cell viability analysis)
コラーゲンコート 96ゥエルプレートで HEK293細胞を培養し、 pcDNA3.1/MycHis- SO D1 (野生型や G93A, G85r)と mockあるいは Mmプロテアソーム a m j8 1、 Mmプロテア ソーム α βをそれぞれ 12ゥエルずつトランスフエクシヨンした。 3- (4,5- dimethylthiazo卜 2— yl)— 5— (3— carboxymethoxyphenyl)— 2— (4— sulfophenyl)— 2H— tetrazolium(MT¾ノによる 細胞の生存能力測定はトランスフ クシヨンの 48時間後に行った。 490nmの吸光度は マルチプレートリーダー(PowerscanHT,大日本製薬)にて 37°Cを維持しながら測定し た。測定は 3回行い one-way ANOVAを用いて解析した。
[0052] ( 10)カスパーゼ 3/7解析
96ゥエルプレートで HEK293細胞を培養し、 pcDNA3.1/MycHis- SOD1 (野生型や G9 3A, G85r)と mockあるいは Mmプロテアソーム a m j8 1、 Mmプロテアソーム α βをトラ
ンスフヱクシヨンした。 24時間後に血清を含まない培養液に交換し、更に 24時間後に Apo— ONE Homogeneousし aspase— 3/7 Assay (Promega) 用いて付 J禹マ -ュフノレに 沿って解析した。
2.結果
( 1) Mmプロテアノームのクローユングと発現
Mmプロテアソーム ex (Gene Bank GenelD: 1480962)と j8 (Gene Bank GeneID: 1479 036)サブユニットを Mmのゲノムからクローユングし、さらに図 1Aに示す通り N末ァミノ 酸 2?13を欠損させた Δ (2-13) αサブユニット(Δ α )ベクターを作製した。この 2?13ァ ミノ酸は 20Sプロテアノームで基質の出入りを調節する gate (門)として働く事が知られ ている(参考文献 19)。一方、変異 |8サブユニット (ThrlCys)も作製した。古細菌プロ テアソーム 13サブユニットの Thrlはプロテアノームの活性中心である(参考文献 20)。 また、以後の実験は Neuro2aと HEK293細胞を用いて行われた力 どちらもほぼ同様 の結果を得ている。
まず、 Mmプロテアソームサブユニットの発現を確認するために HEK293細胞に mock , α、 Δ α、 β、ιη β 1サブユニットをトランスフエクシヨンし、ウェスタンブロットにて解 祈した。図 1Bは抗 αサブユニット抗体及び抗 βサブユニット抗体は、 Mmプロテアソ ーム α、 Δひ、 j8サブユニットをそれぞれ認識していることを示す。また、内在'性のプ 口テアソームサブユニットもごく僅かに認識されていることがわかる。 Ni-NTA pull dow n解析の結果、 j8又は m |8 1サブユニットと共に α、 Δ αサブニットが共沈されることが 示される(図 1C)。また、沈殿サンプルのプロテアソーム活性を測定した結果、 Mmプ 口テアソーム α βにてキモトリブシン様活性が有意に高くなつていた(図 ID)。
グリセオール濃度勾配超遠心によって、 Mmプロテアソーム α j8、 Δ α j8、 a m jS 1 はヒト(human)プロテアソーム α 1、 α 5サブユニットと同じ分画 (20-25/37)に分けられ ており、ヒト 20Sプロテアノームと同等の分子量を有すると推測された。また、 20-25分 画の His抗体にて検出されるバンド濃度の合計は全てのフラクションにおける Hisバン ド濃度の合計の 80?90%を占めていた。以上の結果より、 Mmプロテアソームサブュ- ット a;、 Δ α、 |8、 m |8 1は真核細胞内において共同で適切に機能的な複合体を形成 することが示された。尚、 Mmプロテアソーム Δ α βは毒性を示したため、以後の実験
は主に Mmプロテアソーム a j8と a m j8 1を用いて行った。
[0054] (2) Mmプロテアソームは変異体特異的に SOD1を分解する
次に我々は Mmプロテアノームと変異 SOD1タンパク質(S0D1G85R、 S0D1G37R、 SODl G93A及び S0D1H46R)を共に発現させてその影響を調べた。培養細胞系にお ヽては SO D1G85Rや S0D1G37R、 S0D1G93Aは S0D1H46Rより毒性が強ぐまた家族性 ALS例において も S0D1G85Rや S0D1G37R、 S0D1G93Aは S0D1H46Rよりも病勢が強い。ウェスタンブロット解 祈により、変異 SOD1発現量は Mmプロテアソーム α の発現量が多くなるにつれて 減少することが示された(図 2)。し力し野生型 SOD 1は Mmプロテアソーム α の発現 により影響を受けず、さらに変異 SOD1発現は Mmプロテアソーム a m |8 1の発現により 影響されなかった。これは変異 SOD1発現量の変化には Mmプロテアソーム活性が重 要であることを示して 、る。 S0D1H46R発現量の減少の程度が少な 、のは他の変異 SO D1種に比べて毒性が小さ 、為である力もしれな 、。
変異 SOD1の発現量低下が分解の促進によるものか生成量の低下によるものかを 調べる為に我々は Neuro2a細胞を用いて変異 SOD1タンパク質の分解速度を検討し た(図 3A、 B)。タンパク質合成を停止するサイクロへキシミドを用いた追跡解析にお いて、変異体特異的に SOD1タンパク質の分解が促進されていることが示された(図 3 A)。また、 a、 j8サブユニットの発現量の変化は無い(図 3A)。野生型 SODlの分解 は Mmプロテアソーム a j8の発現には影響されていない。パルスチェイス解析では35 S でラベルされた SODle93Aの分解が Mmプロテアソーム (X βと共に発現させた細胞で 有意に促進されて 、ることが示された(図 3Β)。これらの事実は Mmプロテアノームの 活性中心が変異 SOD1の分解に極めて重要な働きを担っていることを示唆している。
[0055] (3) Mmプロテアソームは変異 SOD1による細胞毒性を軽減する
次に我々は HEK293細胞にお!、て Mmプロテアソーム α β、 a m /3 1及び mockと SO D1 (野生型、 S0D1G85R、 S0D1G93A)を共発現させた際の細胞毒性の変化を MTS解析 によって調べた(図 4)。野生型 SOD 1と Mmプロテアソーム a j8の発現量を増加させて もその細胞毒性に変化は無力つた(図 4)。しかし、変異 SOD 1と Mmプロテアソーム a βを発現させた細胞は変異 SODlの発現量依存的に細胞毒性が増し、 Mmプロテア ソーム α βの発現量依存的に細胞毒性が軽減された(図 4B、 C)。また、この軽減効
果は Mmプロテアソーム a m j8 1では確認できなかった。変異 SOD1の細胞毒性はカス パーゼ 'ファミリー(caspase family)タンパク質の活性化、特にカスパーゼ 3の活性ィ匕 が関与して 、るとされて 、る(参考文献 21)。カスパーゼ 3Z7の蛍光基質を用いて M mプロテアソーム α β、 α τη β 1及び mockと SOD1 (野生型、 S0D1G85R、 S0D1°93A)を共 発現させた際のカスパーゼ 3/7の活性を調べたところ、 Mmプロテアソーム (X βは力 スパーゼ 3Ζ7の活性ィ匕を抑制して 、ることが示された(図 4D)。以上の結果より Mm プロテアソーム α βは変異 SOD1による細胞毒性を軽減させる効果を持つことが示さ れた。
[0056] (4) Mmプロテアソームは変異 SOD1によって形成される細胞内凝集体と共存する 古細菌プロテアノームの複合体形成の過程において αリングの形成は βサブュ- ットの集合に必要であり(参考文献 20)、また図 1Eに示した実験結果から大部分の β サブユニットはプロテアソーム複合体形成に使われることが判明したため、 /3サブュ ニットの局在はほぼ Mmプロテアノームの局在と一致する。そこで我々は His抗体を用 V、て Mmプロテアノームの局在状態を調べた。 GFPタグを付けた野生型 SOD 1及び変 異 S0D1G93Aベクターを Mmプロテアソーム (X βと共に発現させ、固定後抗 His抗体で 染色した。その結果、 GFP陽性 S0D1G93A凝集体は His抗体陽性であり、また野生型 S OD1は抗 His抗体と細胞質内に均一に存在することが示された(図 5)。 GFP陰性の抗 His抗体陽性凝集体は無ぐ変異 SOD1と共に凝集体を形成していることが示唆され た。同様の結果は Neuro2a細胞でも確認された。
[0057] (5) Mmプロテアソームは、異常に伸長したポリグルタミン鎖を持つアンドロゲンレセプ ター (AR)の分解を促進し、その細胞毒性を軽減する
Mmプロテアノームが凝集体を形成し易いタンパク質を分解できるかどうかを調べる 為、次に我々は SBMAの原因タンパク質である、異常に伸長した 97回の繰り返しポリ グルタミン鎖を持つアンドロゲンレセプター(97Q-AR)について検討した。 SOD1タン パク質で得られた結果と同様に、 97Q-ARの発現量は Mmプロテアソーム α の発現 量が多くなるにつれて減少した力 Mmプロテアソーム a m jS 1を発現させても 97Q-A Rの発現は影響を受けな力つた(図 6A)。また、野生型 AR (24回の繰り返しポリグルタ ミン鎖を持つ AR)は Mmプロテアソーム α βの発現量が多くなつてもその発現量に変
ィ匕は見られなかった。サイクロへキシミド追跡解析では 97Q-ARの分解は Mmプロテア ソーム α βの存在下で促進されていた力 Mmプロテアソーム a m j8 1の存在下では 9 7Q- QARの発現量に変化は無かった(図 6B)。 MTS解析では 24Q-ARと異なり、 97Q- ARにより毒性を認めたがその毒性は Mmプロテアソーム α βを発現させることにより 軽減された (図 6C)。これらの結果は、 Mmプロテアソーム α βは、凝集体を形成し易 Vヽ異常に伸長したポリグルタミン鎖を持つ ARの細胞内分解を促進させ、またその細 胞毒性を軽減することを示して 、る。
[0058] (6) Mmプロテアソーム α βは、凝集体を形成し易 ヽ他のタンパク質の分解を促進す るが、凝集体を形成し難いタンパク質は分解しない
凝集体を形成し易い他のタンパク質の分解が促進されるかどうかを検討するため、 a -シヌクレイン(野生型、 A53T、 A30P)と 6種のアイソフォームの tau (C末における mi crotuble binding domainの繰り返し数が 3力 4かによつて 2種に分けられ、さらに N末に おける 29個のアミノ酸の挿入の数が 2、 1、又は 0かによつて 3種に分けられ、合計 6種 となる)を用いて解析した。変異 SOD1と 97Q-ARの結果と同様に Mmプロテアソーム α βの存在下にて野生型、 Α53Τ、 Α30Ρと全ての α -シヌクレインの発現量は減少し、ま た全てのァイソフォームの tauも減少した(図 7Α、 Β)。野生型 SOD1と ARの発現は Mm プロテアソーム α j8の存在下においても減少しなかったが、 α -シヌクレインや tauは 野生型でも減少した。
次に我々は凝集体を形成し難い LacZや、 GFPを単独で発現させてその発現量の 変化を調べたが、 Mmプロテアソーム α βの存在下でもこれらのタンパク質の発現量 に全く変化はな力つた(図 7C)。
[0059] 3.考察
今回我々は真核細胞内において古細菌の Mmプロテアソーム a、 βサブユニットが タンパク質分解能を持った機能的なプロテアソーム複合体を形成し、凝集体を形成し 易い、神経変性疾患に関連したタンパク質の分解を促進することを示した。古細菌の プロテアソームは、当初はキモトリブシン様活性を有するものと考えられていた力 後 の研究によって実は力なり多様な分解能を持つことが示され、 14個 (7 X 2)の活性中 心を持っていることがわかっている(参考文献 21)。また、古細菌のプロテアソームは、
各 1種類の α、 j8サブユニットから構成され (参考文献 6)、古細菌のプロテアノームの 機能と真核細胞のプロテアノームの機能を in vitroで比較した実験によると、古細菌 のプロテアソームはポリグルタミン鎖を分解する能力が真核細胞のプロテアノームに 比べて遥かに高 、ことが示されて 、る(参考文献 9)。我々は古細菌のプロテアソーム が有するこの潜在的な能力とその扱い易さを利用して、真核細胞のプロテアソーム系 で分解できな力 たものを分解しようと試みた。以上の実験結果は、真核細胞内にお V、て古細菌のプロテアノームが、凝集体を形成し易 ヽタンパク質の分解を促進したこ とを示した初めての報告である。
Mmプロテアソーム α βは変異 SOD1と 97Q-AR、野生型と変異 α -シヌクレイン、 6 種のァイソフォームの tauの分解を促進した。前二者 (変異 SOD1と 97Q-AR)は培養細 胞系で毒性を来たし、さらにそれらのタンパク質を過剰発現させたトランスジヱニック マウスではその神経細胞内に凝集体が形成され、神経細胞の脱落を来たし運動機 能が低下するため、これまでそれぞれ家族性 ALSと SBMAの疾患モデルとして使用さ れてきた(参考文献 22、 23)。サイクロへキシミド、 pulse chase解析の結果、 Mmプロテ ァソーム α βは、 SOD 1と ARを変異体特異的に分解促進することが示された。
しかし、 α -シヌクレインと tauは野生型でも Mmプロテアソーム α j8によって発現量 の低下を来した(図 7)。ここで、 α -シヌクレインと tauについては、 SOD1や ARの場合 と異なり、パーキンソン病、アルッノヽイマ一病においてそれぞれの野生型タンパク質 が蓄積していることが重要である。 Presynapticタンパク質である α -シヌクレインの凝 集体は synucleopathyと 、つた弧発性や家族性のパーキンソン病、瀰漫性レビー小体 病、多系統萎縮症等で認める(参考文献 24)。弧発性パーキンソン病患者において 野生型の α -シヌクレインが蓄積し、さらに発現量も増加していることが示されている( 参考文献 25)。プロテアノームの機能低下は α -シヌクレインの分解を妨げ、結果とし てさらに α -シヌクレインの異常凝集が形成されることとなる(参考文献 26)。 tauタンパ ク質はアルツハイマー病において神経細胞内に neurufibrillary tangleとして認められ る(参考文献 27)。プロテアノームの機能低下はアルッノ、イマ一病患者の脳において も報告されて ヽる(参考文献 28)。 a -シヌクレインも tauタンパク質も比較的容易に異 常な立体構造をとるため、それが凝集体形成に繋がる(参考文献 29、 30)。おそらく M
mプロテアソーム α βはこれらのタンパク質の分解を促進したと考えられる。 Mmプロ テアソーム α βは、凝集体を形成し易い広範なタンパク質の分解を促進すると期待さ れる。反面、 Mmプロテアソーム α βは、細胞内に豊富にある GAPDHや、外来性で凝 集体を比較的形成し難い GFPや LacZの分解を促進しな力つた。
[0061] ここで問題になるのは、何故このような変異体特異的、且つ凝集体を形成し易 、タ ンパク質特異的な分解がおこるの力、どういう認識システムが存在するのかという点で ある。古細菌の 20Sプロテアソームは PANの働きによって基質の分解を効率的に行う 事が出来るとされている(参考文献 8)。 PANは真核細胞の 19Sの底部の祖先と考えら れており(参考文献 8)、分子シャペロン様の働きがあり、異常に折り畳まれたタンパク 質をほどく作用を持っている(参考文献 31)。古細菌での分解認識タグ (真核細胞に おけるュビキチンタグの様に)はまだ明らかにされていない。し力し、 in vitroにおいて 古細菌の 20Sプロテアソームは PANの助け無しでポリグルタミン鎖を非常に速く分解 出来ている(参考文献 9)。ここで我々は真核細胞内においても PANの助け無しで Mm プロテアソーム α βが異常凝集体を形成し易いタンパク質の分解を促進出来る事を 示した。プロテアノームの内径は異常タンパク質凝集体より遥かに小さく(参考文献 3 2)、どのようにして凝集体力Mmプロテアソームひ βに侵入する事が出来るのだろうか 。 1つの仮説は OCリング自体がシャペロン様の働きをし、凝集体を認識するだけでなく 、その凝集体をほどく事が出来るのではないかという事である。 αリングの門 (gate)は 基質の出入りを調節するものであり、自然の状態にぉ 、て開 、た状態であるのか (参 考文献 33)、閉まった状態であるの力 (参考文献 2、 32)意見が分かれている。我々の 実験では αリングの門 (gate)を欠損させた Mmプロテアソーム Δ a j8は細胞毒性を来 した力Mmプロテアソーム α βは毒性を来していない。更に有効に基質の分解を行つ たと考えられる。これは常に aリングの門 (gate)が閉まっている状態では到底説明出 来ない。 Mmプロテアソーム α βは凝集体の近くに来ると aリングが凝集体をほどい て、更にその門が開かれるのではないかと考えられる。
[0062] Hsp90や 70、 27等の分子シャペロンは変異 SOD1や ARの分解に関与しているという 報告がある(参考文献 34、 17)。しかし、我々は今回の実験においてそれらの分子シ ャペロンの発現量に変化は無ぐ SOD1や AR等のュビキチンィ匕量の変ィヒも認めなか
つた (データ示さず)。このような内在性のタンパク質分解に関わる機構によって今回 の結果が得られたものではな 、と示唆される。
[0063] 今回の実験によって我々は、 Mmプロテアソーム α β力 神経変性疾患に関係する 凝集体を形成し易いタンパク質質特異的にその分解を促進することを in vivoで示し た。この特徴的な作用は、凝集体が関係する疾患に広く応用できると期待される。
[0064] 参考文献
1. Hershko, A. Ciechanover, A. (1998) Annu. Rev. Biochem. 67, 425—479
2. Puhler, G., Weinkauf, S., Bachmann, L., Muller, S., Engel, A., Hegerl, R., Bau meister, W. (1992) EMBO J. 11, 1607—1616
3. Zwickl, P., Kleinz, J" Baumeister, W. (1994) Nature Struct. Biol. 1, 765—770
4. Seemuller, E., Lupas, A., Stock, D., Lowe, J., Huber, R., Baumeister, W. (1995 ) Science 268, 579 - 582
5. Grziwa, A" Baumeister, W" Dahlmann, B" Kopp, F. (1991) FEBS Lett. 290, 18 6-190
6. Baumeister, W., Walz, J., Zuhl, F., Seemüller, E. (1998) Cell 92, 367—380
7. Zwickl, P., Goldberg, A.L., Baumeister, W. (2000) Proteasomes: The World of Regulatory Proteolysis, Landes Bioscience, Georgetown, TX
8. Zwickl, P., Ng, D., Woo, K.M., Klenk, H.P., Goldberg, A丄. (1999) J. Biol. Che m. 274, 26008-26014
9. Venkatraman, P., Wetzel, R., Tanaka, M., Nukina, N., Goldberg, A丄. (2004) M ol. Cell 14, 95-104
10. Ciechanover A, Orian A, Schwartz AL. (2000) J. Cell Biochem. 77, 40—51
11. Kabashi, E" Agar, J.N., Taylor, D.M., Minotti, S" Durham, H.D. (2004) J. Ne urochem. 89, 1325-35
12. Bailey, C.K., Andriola, I.F., Kampinga, H.H. and Merry, D.E. (2002) Hum. Mo 1. Genet. 11, 515—523
13. Chen, Q., Thorpe, J" Keller, J.N., (2005) J. Biol. Chem. 26, 30009—30017
14. Keck, S" Nitsch, R" Grune, T., Ullrich, O. (2003) J. Neurochem. 85, 115—122
15. Bence, N.F., Sampat, R.M. and Kopito, R.R. (2001) Science 292, 1552-1555
16. Niwa, J., Ishigaki, S., Hishikawa, N., Yamamoto, M., Doyu, M., Murata, S., Ta naka, K., Taniguchi, N., Sobue, G. (2002) J. Biol. Chem. 277, 36793-36798
17. Waza, M., Adachi, H., Katsuno, M., Minamiyama, M., Sang, C, Tanaka, F., I nukai, A., Doyu, M., Sobue, G. (2005) Nature Med. 11, 1088—1095
18. Ito, T., Niwa, J., Hishikawa, N., Ishigaki, S., Doyu, M., Sobue, G. (2003) J. Bi ol. Chem. 278, 29106-29114
19. Benaroudj, N., Zwick, P., Seemüller, E., Baumeister, W., Goldberg, A.L. (2003) Mol. Cell 11, 69-78
20. Seemüller, E., Lupas, A., Baumeister, W. (1996) Nature 382, 468—471.
21. Dahlmann, B., Kopp, F., Kuehn, L., Hegerl, R., Pfeifer, G., Baumeister, W. (1 991) Biomed. Biochim. Acta 50, 465—469
22. Gurney, M.E., Pu, H., Chiu, A.Y., Dal Canto, M.C., Polchow, C.Y., Alexande r, D.D., Caliendo, J., Hentati, A., Kwon, Y.W., Deng, H.X., Chen, W., Zhai, F., Su fit, R.L., Siddique, T. (1994) Science 264, 1772-1775
23. Adachi, H., Kume, A.,し i, M., Nakagomi, Y., Niwa, H., Do, J., Sang, C, Koba yashi, Y., Doyu, M., Sobue, G. (2001) Hum. Mol. Genet. 10, 1039-1048
24. Trojanowski, J.Q., Lee, V.M. (2003) Ann. N. Y. Acad. Sci. 991, 107-110
25. Miller, D.W., Hague, S.M., Clarimon, J., Baptista, M., Gwinn— Hardy, K., cook son, M.R., Singleton, A.B. (2004) Neurology 62, 1835-1838
26. Liu, C.W., Corboy, M.J., DeMartino, G.N., and Thomas, P.J. (2003) Science 2 99, 408-411
27. Selkoe, D. J. (1991) Neuron 6, 487-498
28. Keller, J.N., Hanni, K.B., Markesbery, W. R. (2000) J. Neurochem. 75, 436—4 39
29. Hashimoto, M., Hsu, L.J., Sisk, A., Xia, Y., Takeda, A., Sundsmo, M., Maslia h, E. (1998) Brain Res. 799, 301—306
30. Khlistunova, I., Biernat, J., Wang, Y., Pickhardt, M., von Bergen, M., Gazova,
Z" Mandelkow, E" Mandelkow, E.M. (2005) J. Biol. Chem. 24, in press
31. Benaroudj, N" Goldberg, A丄. (2000) Nat. Cell. Biol. 2, 833-839
32. Groll, M., Bajorek, M., Kohler, A" Moroder, L" Rubin, D.M., Huber, R., Glic kman, M.H., Finley, D. (2000) Nature Struct. Biol. 7, 1062—1067
33. Lowe, J" Stock, D" Jap, B., Zwickl, P., Baumeister, W., Huber, R. (1995) Sci ence 268, 533-539
34. Patel, Y.J., Payne Smith, M.D., de Belleroche, J" Latchman, D.S. (2005) Brain Res. Mol. Brain Res. 134, 256—274
産業上の利用可能性
[0065] 本発明の発現コンストラクトを使用することによって、真核細胞内において凝集体形 成性タンパク質が凝集体を形成することを抑制できる。従って、本発明の発現コンスト ラクトは、凝集体形成性タンパク質が発症や進行などに関与する疾病の治療や予防
、研究 (原因究明や治療法などの確立を目的とした研究など)に利用され得る。
[0066] この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものでは ない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々 の変形態様もこの発明に含まれる。
本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その 全ての内容を援用によって引用することとする。