明 細 書
メソカーボンマイクロビーズの製造方法
技術分野
[0001] 本発明は、リチウム二次電池負極材料、特殊炭素材などの種々の炭素材料に有用 なメソカーボンマイクロビーズ (未焼成および焼成メソカーボンマイクロビーズ)の製造 方法およびメソカーボンマイクロビーズ、ならびリチウム二次電池用負極に関する。 背景技術
[0002] メソカーボンマイクロビーズ (MCMB)などの炭素前駆体を炭素化 (炭素化処理、焼 成処理)した炭素材料 (又は炭素粉末材料)は、種々の用途、例えば、負極活物質( 例えば、リチウムイオン二次電池の負極活物質など)、導電性充填剤などの種々の用 途に用いられている。特に、リチウム二次電池は、携帯機器端末の電源として、小型 で軽量の高エネルギー密度型リチウムイオン二次電池が注目されており、今後も自 動車搭載電源、電力貯蔵などの用途への応用など需要の伸びが期待されている。 すなわち、焼成処理 (黒鉛化処理)された MCMBは、黒鉛類似の構造を有するため 、インターカレーシヨン反応によりリチウムイオンの吸蔵放出が可能となり、リチウム二 次電池の高容量負極材料として用いられている(J. Power Sources 43-44(1993)233- 239 (非特許文献 1)、 The Electrochemical Society Extended Abstracts, Vol.93- 1 (1 993) 8 (非特許文献 2)、炭素 Νο.165(1994)261-267 (非特許文献 3)など)。焼成(黒 鉛化)処理された MCMB (焼成 MCMB)は、放電容量、効率、レート特性、カゝさ密度 、電解液との低反応性など性能のバランスがよいものの、天然黒鉛あるいは人造黒 鉛と比較してやや結晶性が低ぐリチウム 2次電池用負極材として用いる場合、放電 容量が劣る傾向にある。このような焼成 MCMBの放電容量は、焼成温度を上昇させ るほど、結晶化度の向上にともなってある程度向上する力 焼成温度の上昇には、設 備上およびコスト上の制約があり、実用上限界がある。
[0003] このような炭素材料としての特性 (放充電容量、可逆容量、サイクル特性及び熱安 定性など)は、使用される炭素材料の結晶化度、表面形態、粒子サイズ、内部粒子 構造、組成などに依存するため、このような炭素材料としての特性を向上又は付与で
きるメソカーボンマイクロビーズへの関心が高まっている。
[0004] 従来から、メソカーボンマイクロビーズは、ピッチ類を 300〜500°C程度に加熱し、 生成するメソカーボンマイクロビーズを溶剤分別などの手段により分離回収すること により製造されている。し力しながら、この方法は生産効率が低ぐ分離して得られる MCMBの収率は、原料タール重量のせいぜい 10%程度にとどまつている。また、得 られる MCMBの粒度が不均一で、表面の平滑性にも欠ける。
[0005] 例えば、特公平 1— 27968号公報 (特許文献 1)には、(i)コールタールを温度 300 〜500°C、圧力常圧〜 20kgZcm2'Gの条件下に 0. 5〜50時間熱処理する工程、 (ii)得られる熱処理反応生成物を 150〜450°Cで遠心分離することにより固形分と 清澄液とを分離する工程、及び (iii)得られる固形分を洗浄する工程を備えたカーボ ン微粒子の製造方法が記載されている。また、特開平 1— 242691号公報 (特許文 献 2)には、石炭系重質油を熱処理し、生成した粗メソカーボンマイクロビーズを分離 し、洗浄精製し、乾燥してメソカーボンマイクロビーズを製造するに際し、乾燥後のメ ソカーボンマイクロビーズを、破壊を生じさせない程度の力で分散させた後、分級しメ ソカーボンマイクロビーズを製造する方法が記載されている。しかし、これらの方法で は、前記のように、粒子表面が滑らかなメソカーボンマイクロビーズを得ることができ ず、また、収率も低い。
[0006] また、特公平 6— 35581号公報 (特許文献 3)では、ピッチを加熱処理することによ りピッチ中に生成する光学的異方性小球体が成長 *合体して形成されるバルタメソフ エーズを前記バルクメソフェーズの粘度が 200ボイズを示す温度より 60°Cないし 160 °C高い温度範囲のシリコンオイル浴中に微分散させた後、冷却することによって微分 散したメソフェーズを固化させてバルクメソフェーズからメソカーボンマイクロビーズを 製造している。しかし、この方法でも、前記のように、表面が滑らかなメソフェーズビー ズは得ることができない。また、一度生成した光学的異方性小球体 (すなわち、メソカ 一ボンマイクロビーズ)をさらなる加熱処理により合体させ、バルクメソフェーズとして 沈降凝集させて、得られるノ レクメソフェーズを単離して粉砕すると ヽぅ粉砕工程が 必要であり、工程数が増加し製造手順が煩雑になる。さら〖こ、粉砕したバルクメソフエ ーズをシリコンオイル浴中で加熱処理し、その後シリコンオイルをアルコールなどで洗
浄する必要があるため、使用済みのシリコンオイルや洗浄に使用したアルコール等 の廃液が発生してコスト面、環境面にぉ 、て不利である。
[0007] さらに、特公昭 63— 1241号公報 (特許文献 4)では、ピッチ類を 350°C〜500°Cに て熱処理してピッチ中にメソカーボン小球体を生成させ、生成したメソカーボン小球 体を分離するメソカーボン小球体の製造方法において、ピッチを熱処理し、メソカー ボン小球体を生成させ、次 、で沸点 300°C乃至前記熱処理温度の炭化水素油を熱 処理物に対して 1Z4倍量以上添カ卩し、再び熱処理してメソカーボン小球体を生成さ せることを繰り返し行 ヽ、得られた多量にメソカーボン小球体を含有するピッチ類から メソカーボン小球体を分離するメソカーボン小球体の製法が記載されている。また、こ の文献の実施例には、ピッチ収率 38%でピッチ中のメソフェーズ量が 31 %のピッチ が得られ、得られたメソカーボンは、 20〜 150 の径の球であったことが記載されて いる。しかし、この文献の方法でも表面が平滑なメソカーボンマイクロビーズを得ること ができない。また、ピッチ類を熱処理してピッチ中にメソカーボン小球体を生成させて から、炭化水素油を添加して再度加熱処理しているので、工程が煩雑である。
[0008] また、メソカーボンマイクロビーズの凝集又は合体を抑制する方法として、特許第 3 674623号公報 (特許文献 5)には、石油系重質油を熱処理し、生成した粗メソカー ボンマイクロビーズの表面を、厚み 0. 1〜1 μ mのピッチ成分で被覆する方法が開示 されている。し力し、この文献の方法でも、 MCMB表面を平滑にできないだけでなく 、リチウム二次電池の負極材料として用いた場合、放電容量や初期効率を低下させ る一次 QI分が MCMB表面に付着している。なお、 MCMB表面のフリーカーボン量 (一次 QI分)を低減する方法として、 MCMBの a成分、 β成分、 γ成分を調整し、揮 発分を減少させ、焼成雰囲気を少し酸化雰囲気にすることにより、フリーカーボンを 選択的に燃焼させる方法が知られている力 この方法では、酸ィ匕により MCMBの結 晶性が低下し、し力も、粘着成分が増大して、凝集状態の MCMBが得られるため、 球状の MCMBを得ることが出来ない。
[0009] なお、石炭系ピッチなどの炭素化可能な材料と、他の材料とを組み合わせてメソフ エーズを生成させる種々の方法が知られている。例えば、特許第 2697482号公報( 特許文献 6)には、ピッチを水素化し、熱処理してその軟ィ匕点を 250〜380°Cの範囲
にし、このピッチに対し、さらに微細化処理および酸化処理を施すピッチ系素材の製 造方法が開示されている。この文献には、前記水素化処理を予め移行可能な水素を 保持した溶媒をピッチに混合して水素化処理してもよいことが記載されている。具体 的には、例えば、実施例 1において、軟ィ匕点が 120°Cの石炭系ピッチ 100重量部に 石油系 FCC残油を 170重量部混合して、 420°Cで水素化処理した後、 420°Cで熱 処理し、熱処理したピッチを平均粒子径 10 μ mまで微粒子化し、酸化処理して、ピッ チ系素材を得たことが記載されている。しかし、この文献の方法では、生成物がバル クメソフェーズとなり、球状の粒子を得ることができない。このため、炭素材としての密 度を高めることが困難であり、組織が不均一化する。また、粉砕するため表面が滑ら かな粒子を得ることは困難である。さらに、粉粒状とするために、粉砕処理および酸 化処理を必要とし、プロセスが煩雑ィ匕し、コストアップにもつながる。
また、 J. Anal. Appl. Prosis, Vol.68/69, (2003) (非特許文献 4)には、軟化点 SPが 9 5°Cの含浸用コールタールピッチと、 SPが 127°Cの石油ピッチ A— 240 (「Energy & F uels 1993, 7」の第 421頁には芳香族炭素分率 =0. 89の石油系ピッチと記載)とを 固体状態で混合し、窒素吹き込み下での熱処理により SPが 176°C以上のピッチを 合成し、初期段階でのメソフェーズの生成と固形分 (一次キノリン不溶分 QI)の影響 を調べ、石油ピッチの混合によりメソフェーズの生成促進ならびに一次キノリン不溶 分によるメソフェーズの合体抑制効果を報告している。そして、この文献には、生成し たピッチは水素リッチなため、熱ろ過によりメソフェーズ相とアイソトロピック相とを容易 に分離できる可能性があること、分離後のメソフェーズピッチは、これまでと異なる可 塑性が期待でき、含浸性改良への可能性があることを報告している。しかし、生成ピ ツチの軟化点が 176°C以上であり、この文献の方法では、メソフェーズ相を工業的に 効率よく分離することは実用上困難であり、ほとんど熱可塑性のない MCMBを製造 することを目的とはしていない。たとえ、この文献の方法で得られた生成物力もメソフ エーズ相を分離したとしても、球状の粒子を得ることはできない。また、粒子表面に一 次キノリン不溶分が付着し、表面に平滑性を付与できない。そのため、このような方法 により得られた粒子を負極用途に使用すると、放電容量などの特性が低下する。な お、この文献には、結晶性に関する報告もない。
さらに、特開昭 61— 271392号公報 (特許文献 7)および特開昭 61— 215692号 公報 (特許文献 8)には、石炭系ピッチに石油系ピッチを混合し熱処理することによる 水素化処理後、減圧あるいは不活性ガスを吹き込むことにより、大部分カ ソフエー ズ組織であり、比較的高軟ィヒ点の炭素繊維用メソフェーズピッチを製造する方法が 開示されている。また、特公昭 62— 23084号公報 (特許文献 9)にも、ほぼ同様の方 法により、大部分が等方性のプリメソフェーズピッチを製造し、紡糸性、不融化性など を改善できることが開示されている。これらのいずれの方法も、大部分をメソフェーズ あるいはプリメソフェーズ組織で占める高軟ィ匕点ピッチを製造し、高 、軟化点の石炭 ピッチを原料とし、高い軟ィ匕点の石油ピッチを水素化剤として使用している。そして、 水素化後は真空あるいは不活性ガスを吹き込むことにより水素化剤を除去し、同時 に軟ィ匕点を向上させるものである。しかし、メソフェーズ組織を分離することを想定し ておらず、ピッチが高 ヽ軟ィ匕点であるためメソフェーズ組織を分離することは困難で ある。すなわち、これらの文献の方法では、メソフェーズを球状ィ匕 (メソフェーズの凝 集又は合体抑制)するための固形分 (一次 QI分)が、紡糸時の糸切れ原因になるた め、予めあるいは製造の途中で除去されており、球状粒子を形成し得ない。さらに、 上記とほぼ同様な方法により、コールタール成分にエチレンタール成分が反応した 軟ィ匕点 280〜308°Cのメソフェーズピッチを製造し、不融化性を改善できる技術も報 告されている (非特許文献 5、炭素材料学会年会要旨集、 17回、 (1990)) oこの文献の 方法でも、同様の理由で、球状で、高結晶性のメソカーボンマイクロビーズを収率よく 得ることはできない。
特許文献 1:特公平 1― 27968号公報 (特許請求の範囲)
特許文献 2:特開平 1 242691号公報 (特許請求の範囲)
特許文献 3:特公平 6— 35581号公報 (特許請求の範囲)
特許文献 4:特公昭 63— 1241号公報 (特許請求の範囲、実施例)
特許文献 5:特許第 3674623号公報 (特許請求の範囲)
特許文献 6:特許第 2697482号公報 (特許請求の範囲、実施例)
特許文献 7:特開昭 61— 271392号公報 (特許請求の範囲)
特許文献 8:特開昭 61— 215692号公報 (特許請求の範囲)
特許文献 9:特公昭 62— 23084号公報 (特許請求の範囲)
非特許文献 1 : Power Sources 43-44(1993)、第 233〜239頁
非特許文献 2 : The Electrochemical Society Extended Abstracts, Vol.93— 1 (1993), 第 8頁
非特許文献 3 :炭素 Νο.165(1994),第 261〜267頁
非特許文献 4 : J. Anal. Appl. Prosis, Vol.68/69, (2003) 第 409〜424頁
非特許文献 5 :炭素材料学会年会要旨集、 17回、(1990)、第30〜33頁
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0012] 従って、本発明の目的は、表面が滑らかなメソカーボンマイクロビーズを製造する方 法を提供することにある。
[0013] 本発明の他の目的は、表面が滑らかなメソカーボンマイクロビーズを収率よく工業 的に製造できる方法を提供することにある。
[0014] 本発明のさらに他の目的は、粒度分布がシャープで、表面が滑らかなメソカーボン マイクロビーズを収率よく製造する方法を提供することにある。
[0015] 本発明の別の目的は、リチウムイオン二次電池の負極活物質などとして有用な結 晶性の高 ヽ炭素材料 (焼成メソカーボンマイクロビーズ)を提供することにある。
課題を解決するための手段
[0016] 本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、メソカーボンマイクロ ビーズ (以下、 MCMBなどということがある)を生成可能な炭素質成分(1)を、この炭 素質成分(1)より芳香族性の低い炭素質成分 (2)の存在下で熱処理することにより、 表面が滑らかな球状 (特に真球状)のメソカーボンマイクロビーズを製造できることを 見いだし、本発明を完成した。
[0017] すなわち、本発明は、メソカーボンマイクロビーズを生成可能な炭素質成分(1)と、 この炭素質成分(1)より芳香族性の低 ヽ炭素質成分 (2)との混合物を熱処理するェ 程を少なくとも含むメソカーボンマイクロビーズの製造方法である。この方法にお!、て 、前記炭素質成分 (1)の芳香族炭素分率 f に対する炭素質成分 (2)の芳香族炭素
al
分率 f の比 f /ί は 0. 95以下 (例えば、 0. 9以下)である。前記炭素質成分(1)は
、コールタール及びコールタールピッチ力 選択された少なくとも一種で構成してもよ い。また、前記炭素質成分(1)は、 f =0. 9〜0. 99程度の炭素質成分であってもよ
al
ぐ一次キノリン不溶分の含有割合が 1〜7重量%程度の炭素質成分であってもよい
[0018] 前記炭素質成分 (2)は、炭素質成分 (1)より芳香族性が低ければよぐ例えば、水 素化されて 、てもよ 、ピッチ及び水素化されて 、てもよ ヽ重質油から選択された少な くとも一種で構成してもよい。特に、炭素質成分(2)は、エチレンボトム油、デカントォ ィル、ァスフアルテンおよびこれらを原料とするピッチ力 選択された少なくとも 1種で 構成してもよい。また、前記炭素質成分 (2)は、 f =0. 55〜0. 85程度の炭素質成
a2
分であってもよぐヘプタンとジメチルホルムアミドとを、前者 Z後者 (重量比) = iZi の割合で含む混合溶媒に対してヘプタンに溶解する成分 (ヘプタン可溶分)の含有 割合が 1〜40重量%程度の炭素質成分であってもよい。前記前記炭素質成分 (1) および前記炭素質成分 (2)は、それぞれ 60°C以下の軟ィ匕点を有していてもよい。
[0019] 本発明の方法において、本発明の方法において、炭素質成分(1)と炭素質成分 (2
)との割合は、前者 Z後者 (重量比) =99Zl〜30Z70程度であってもよい。
[0020] 代表的には、前記方法において、(i)炭素質成分(1)力 室温 (例えば、 15〜25°C 程度)で液状であって、 f =0. 93〜0. 97および一次キノリン不溶分の含有割合が
al
1〜7重量%の炭素質成分であり、(ii)炭素質成分 (2)が、室温で液状であって、 f
a2
=0. 6〜0. 8、前記ヘプタン可溶分の含有割合が 2〜30重量%の炭素質成分であ り、 (iii)f /ί が 0. 9以下であり、かつ (iv)炭素質成分(1)と炭素質成分 (2)との割 a2 al
合が、前者 Z後者 (重量比) =90Z10〜45Z55であってもよい。なお、前記混合物 は、炭素質成分 (1)と炭素質成分 (2)との相溶性を向上させるため、さらに相溶化剤 を含んでいてもよい。
[0021] 前記方法は、少なくとも熱処理する工程を含んでいればよぐさらに焼成処理する 工程を含んでいてもよい。このような焼成処理により、焼成メソカーボンマイクロビーズ を得ることができる。例えば、前記方法において、熱処理後、生成したメソカーボンマ イク口ビーズを熱処理生成物(又は反応生成物、単に生成物などと 、うことがある)か ら分離し、この分離したメソカーボンマイクロビーズを焼成処理して、焼成メソカーボン
マイクロビーズを得てもよ 、。
[0022] 本発明の方法により得られるメソカーボンマイクロビーズ (未焼成および焼成メソカ 一ボンマイクロビーズ)は、表面が滑らかな球状の粒子である。このような本発明のメ ソカーボンマイクロビーズ (未焼成メソカーボンマイクロビーズ)は、赤外線吸収スぺク トルにおいて、芳香族炭素の C—H伸縮振動に対応する波数 (例えば、 3050cm_ 1) の吸収強度を Πとし、脂肪族炭素の C—H伸縮振動に対応する波数 (例えば、 2920 cm—1)の吸収強度を 12とするとき、 IlZ (II +12)の値が 0. 5〜0. 8程度であっても よい。また、前記メソカーボンマイクロビーズは、真球状であるとみなして粒径力 算 出したみかけの比表面積を S1とし、 BET比表面積を S2とするとき、 S2ZS1で表さ れる凹凸度が、 1〜5程度であってもよい。
[0023] 本発明には、前記メソカーボンマイクロビーズを焼成処理 (黒鉛化)した球状の焼成 メソカーボンマイクロビーズも含まれる。このような焼成メソカーボンマイクロビーズは、 球状であるとともに、結晶性が高ぐ例えば、面間隔 d (002)の値力 0. 3354-0. 3 357nm程度であってもよい。このような焼成メソカーボンマイクロビーズ (炭素材料) は、結晶性が高ぐリチウムイオン二次電池の負極活物質などの種々の材料に有用 である。そのため、本発明には、前記焼成メソカーボンマイクロビーズで形成されたリ チウムニ次電池用負極 (およびこの負極を備えたリチウム二次電池)も含まれる。 発明の効果
[0024] 本発明では、メソカーボンマイクロビーズを生成可能な炭素質成分と、この炭素質 成分よりも芳香族性の低い炭素質成分との混合物を熱処理するので、表面が滑らか なメソカーボンマイクロビーズを製造できる。また、本発明では、粒度分布がシャープ で、表面が滑らかなメソカーボンマイクロビーズを収率よく製造できる。このようなメソ カーボンマイクロビーズを炭素化処理した炭素材料 (焼成メソカーボンマイクロビーズ
)は、結晶性が高ぐ種々の炭素材料、例えば、リチウムイオン二次電池の負極活物 質や放電加工用電極等の特殊炭素材料の一元原料として、あるいはプラスチックの 導電用充填材として好適に使用できる。
図面の簡単な説明
[0025] [図 1]図 1は実施例 3で得られた未焼成 MCMBの電子顕微鏡写真である。
[図 2]図 2は実施例 4で得られた未焼成 MCMBの電子顕微鏡写真である。
[図 3]図 3は比較例 2で得られた未焼成 MCMBの電子顕微鏡写真である。
発明の詳細な説明
[0026] [メソカーボンマイクロビーズの製造方法]
本発明の方法は、メソカーボンマイクロビーズ (MCMB)を生成可能な炭素質成分 ( 1)を、この炭素質成分 (1)より芳香族性の低!ヽ炭素質成分 (2)の存在下で熱処理 してメソカーボンマイクロビーズを製造する。
[0027] (メソカーボンマイクロビーズを生成可能な炭素質成分(1) )
炭素質成分(1)としては、メソカーボンマイクロビーズを生成可能で、炭素化 (又は 黒鉛化)可能な材料であればよぐ例えば、芳香族化合物けフタレン、ァズレン、ィ ンダセン、フルオレン、フエナントレン、アントラセン、トリフエ二レン、ピレン、タリセン、 ナフタセン、ピセン、ペリレン、ペンタフェン、ペンタセンなどの 2環以上の縮合多環式 炭化水素;インドール、イソインドール、キノリン、イソキノリン、キノキサン、カルバゾー ル、アタリジン、フエナジン、フエナントロジンなどの 3員環以上の複素環と芳香族炭化 水素環とが縮合した縮合複素環式ィ匕合物;アントラセン油、脱晶アントラセン油、ナフ タレン油、メチルナフタレン油、タール(又はコールタール)、クレオソート油、カルボル 油、ソルベントナフサなどの芳香族系油など)、榭脂(例えば、フエノール榭脂、ポリア クリロ-トリル榭脂、ポリ塩ィ匕ビュルなど)、ピッチ類 (例えば、石炭系ピッチ (コールタ ールピッチ)、石油系ピッチなど)、コータスなどが例示できる。なお、前記ピッチとは、 石油蒸留残查、石炭液化油、コールタールなどの石油系又は石炭系重質油を蒸留 操作に付すことにより沸点 200°C未満の低沸点成分を除去した成分を! ヽ、具体的 には、コールタールピッチなどを代表として挙げることができる。なお、これらの炭素 質成分(1)は、置換基、例えば、アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボ キシル基などを有していてもよい。また、炭素質成分(1)は、水素化されていてもよい 力 芳香族性が高い成分を用いるという観点から、通常、炭素質成分(1)として、水 素化されて 、な 、炭素質成分を使用する場合が多 、。環集合化合物 (ビフエニル、 ビナフタレンなどの環集合炭化水素など)なども使用してもよぐこの環集合化合物と 炭素質成分 (1)とを併用することもできる。炭素質成分 (1)は、単独で又は二種以上
組み合わせて使用できる。
[0028] 上記炭素質成分 (1)のうち、低沸点および低分子量の非芳香族性の炭化水素成 分 (例えば、脂肪族性や脂環族性の炭化水素成分など)が少ない炭素質成分が好ま しい。例えば、このような炭素質成分(1)としては、コスト面や入手容易性の点から、 重質油(特に、コールタールなどの水素化されていない石炭系重質油)、ピッチ類( 特に、コールタールピッチなどの水素化されていないピッチ類)などが例示できる。な お、炭素質成分(1)は、予め熱処理 (例えば、 300〜500°C程度で熱処理)された成 分であってもよいが、通常、熱処理されていない炭素質成分(1)である場合が多い。
[0029] なお、炭素質成分(1)には、一次 QI分 (キノリン不溶分)が含まれていてもよぐこの ような一次キノリン不溶分の含有割合 (一次 QIという場合がある)は、例えば、炭素質 成分(1)全体の 0. 1〜7重量%(例えば、 0. 3〜6. 5重量%程度)、好ましくは 0. 8 〜4. 5重量%、さらに好ましくは 1〜4重量%程度であってもよぐ通常 1〜7重量%( 例えば、 1. 5〜6. 5重量%、好ましくは 1. 8〜6重量%程度)であってもよい。なお、 後述するように、一次キノリン不溶分は、生成する MCMBの球状ィ匕に寄与する一方 、 MCMBの結晶化を防げるとともに、 MCMBの凝集 (又は合体)を抑制する効果が あるため、混合物中に適度に含まれて 、るのが好ま 、。
[0030] また、前記のように炭素質成分 (1)は、非芳香族性成分の含有量が少ない成分で あるのが好ましい。特に、脂肪族成分 (例えば、脂肪族又は脂環族炭化水素成分な ど)の含有量は、ヘプタンに可溶な成分 (ヘプタン可溶分又はヘプタン可溶分量、へ ブタンに溶解可能な成分)を目安とすることができる、例えば、炭素質成分(1)全体 に対するヘプタン可溶分の含有割合 (HS)は、例えば、 5重量%以下 (例えば、 0又 は検出限界〜 4重量%程度)、好ましくは 3重量%以下 (例えば、 0〜2. 5重量%程 度)、さらに好ましくは 2重量%以下 (例えば、 0〜1. 8重量%程度)であってもよい。 なお、前記ヘプタン可溶分は、ヘプタンとジメチルホルムアミドとを、前者 Z後者 (重 量比) = 1Z1の割合で含む混合溶媒に対してヘプタンに溶解する成分とすることが できる。
[0031] 炭素質成分(1)の軟ィ匕点(SP)は、 80°C以下(-80°C〜75°C程度)の範囲力も選 択でき、例えば、 70°C以下 (例えば、— 50〜65°C程度)、好ましくは 60°C以下 (例え
ば、 30°C〜55°C程度)、さらに好ましくは 50°C以下(例えば、 10°C〜45°C程度 )、特に 40°C以下 (例えば、 0〜35°C程度)であってもよぐ通常 30°C以下 (例えば、 20°C〜20°C程度)であってもよ!/、。
[0032] また、炭素質成分(1)は、室温 (例えば、 15〜25°C程度)において、固体状又は液 体状 (液状)であってもよいが、通常、少なくとも反応生成物力 の MCMBの分離回 収時の温度 (例えば、濾過温度)において液状であるのが好ましいため、炭素質成分 (1)は、特に、常温又は室温 (例えば、 15〜25°C程度)において液状であるのが好 ましい。なお、液状の炭素質成分(1)は、室温において流動性を有していれば、粘稠 状 (粘稠物)であってもよい。
[0033] このような低軟化点又は液状の炭素質成分(1)を使用すると、反応生成物からの M CMBの分離を容易にできるとともに、粒径、表面状態などにおいて均一な MCMB を効率よく得ることができる。すなわち、熱処理により反応系(又は炭素質成分(1)と 炭素質成分 (2)との反応生成物)の軟ィ匕点が、各成分の軟ィ匕点よりも上昇し、このよ うな軟化点の上昇は反応生成物からの MCMBの分離又は回収効率を低下させるだ けでなく、 MCMB粒子表面の平滑性を低下させる。しかし、上記のような低軟ィ匕点の 炭素質成分 (1) (さらには、低軟ィ匕点の炭素質成分 (2) )を使用することにより、反応 生成物の軟ィ匕点を極端に高くする(例えば、 95°C以上、特に 130°C以上とする)こと なく MCMBを生成できるため、分離又は回収効率を向上できる。なお、熱処理にお ける圧力を高めることにより、反応中の揮発分や分解物を反応系にとじこめ、反応生 成物の軟ィ匕点の上昇をある程度抑制することができるが、高圧での反応は効率的で なぐコストアップにつながるばかりか、得られる MCMBの表面状態などを改善でき ない。
[0034] 炭素質成分 (1)の芳香族炭素分率 (芳香族性炭素原子の割合) f は、通常、 0. 6
al
5〜0. 99 (例えば、 0. 7〜0. 98)、好ましくは 0. 75〜0. 98、さらに好ましくは 0. 78 〜0. 98 (f列え ίま、、 0. 8〜0. 97)であってもよ!/、。通常、 f ίま、 0. 85以上(f列え ίま、、 0
al
. 88〜0. 995程度)の範囲力も選択でき、例えば、 0. 9以上(例えば、 0. 91〜0. 9 9程度)、好ましくは 0. 92以上(例えば、 0. 93〜0. 98程度)、さらに好ましくは 0. 9 3〜0. 97、通常 0. 9〜0. 99程度であってもよい。
[0035] なお、芳香族炭素分率は、炭素原子 [芳香族炭素と非芳香族炭素 (例えば、脂肪 族炭素 (特に脂環族炭素、アルキル基などの直鎖状又は分岐鎖状脂肪族炭素など) など)]の合計に対する芳香族炭素の存在比として表される。詳細には、例えば、使 用される炭素質成分を試料として NMR ^ベクトル (例えば、 13C NMR ^ベクトル)測 定し、得られたスペクトルにおける芳香族炭素の面積強度 (p )と非芳香族炭素の面
a
積強度 (p )との比から求めてもよい。すなわち、 NMR測定により求める場合、芳香族
f
炭素分率 (f )は、次式で表される。
a
[0036] f =p / (p +p )
a a a f
(式中、 f は芳香族炭素分率、 pは芳香族炭素の面積強度、 pは非芳香族炭素の a a f 面積強度を表す)。
[0037] (芳香族性の低!、炭素質成分 (2) )
炭素質成分 (2)は、全体として炭素質成分 (1)よりも芳香族性が低ければよく(詳細 には、芳香族炭素分率が低ければよく)、例えば、(i)比較的芳香族性の低い炭素質 成分を単独で又は 2種以上組み合わせた混合物であってもよぐ (ii)比較的芳香族 性の低!ヽ炭素質成分と芳香族性の高!ヽ炭素質成分とを組み合わせた混合物であり 、その混合物としての芳香族性を全体として低い炭素質成分であってもよい。なお、 本発明では、芳香族性を低くするという観点から、炭素質成分 (2)として、水素化 (又 は水素化処理又は水素添加)された炭素質成分を好適に用いることができる。
[0038] 具体的な炭素質成分 (2)としては、例えば、比較的低分子量の成分 [例えば、アン トラセンなどの前記例示の炭素化可能な成分又はその水素化物など]、水素化され て!、てもよ ヽ重質油 [石油系重質油(ァスフアルテンなどの石油蒸留残渣、分解重油 (エチレンボトム油、デカントオイル)など)、石炭系重質油(石炭液化油、コールター ルなど)およびこれらの水素化物など]、水素化されていてもよいピッチ類 [石油系ピ ツチ、エチレンボトム油ピッチ、石炭系ピッチ(コールタールピッチなど)、およびこれら の水素化物など]が挙げられる。これらの成分は、単独で又は 2種以上組み合わせて もよい。例えば、重質油と重質油の水素化物とを組み合わせてもよぐ水素化されて V、てもよ ヽ重質油と水素化されて 、てもよ 、ピッチとを組み合わせてもよ!/、。
[0039] 好ましい炭素質成分 (2)には、水素化されていてもよい重質油 [例えば、水素化さ
れたコールタール(コールタールの水素化物)、石油系重質油(特に、エチレンボトム 油)など]、水素化されていてもよいピッチ(特に、コールタールピッチの水素化物)な どが挙げられる。特に好ましい炭素質成分(2)には、エチレンボトム油、デカントオイ ル、ァスフアルテン、およびこれらを原料とするピッチ、なかでもエチレンボトム油など が挙げられる。
[0040] なお、炭素質成分 (2)は、一次 QI分 (一次キノリン不溶分)を含んで!/、てもよ 、が、 芳香族性の低さの観点力も一次 QI分を実質的に含んで!/、な 、炭素質成分 (2)が好 ましい。一次 QI分 (一次キノリン不溶分)の含有割合 (一次 QI)は、例えば、炭素質成 分(2)全体の 0. 2重量%以下 (例えば、 0又は検出限界〜 0. 2重量%)、好ましくは 0. 1重量%以下 (例えば、 0〜0. 1重量%)、特に 0. 05重量%以下 (例えば、 0〜0 . 05重量%)であってもよい。一次 QI分は、熱処理に先立って、濾過などの手段によ り、炭素質成分 (2)から除去してもよい。
[0041] 炭素質成分 (2)は、通常、脂肪族成分 (例えば、脂肪族又は脂環族炭化水素成分 など)を含有している。このような脂肪族成分の含有量は、前記と同様に、ヘプタン可 溶分と相関関係があり、このヘプタン可溶分の含有割合 HSを脂肪族成分の含有量 の目安とすることができる。例えば、炭素質成分 (2)全体のヘプタン可溶分の含有割 合 (HS)は、 0. 5〜50重量%程度の範囲から選択でき、 1〜40重量% (例えば、 2〜 35重量%)、好ましくは 3〜30重量%、さらに好ましくは 4〜25重量%程度であって もよぐ通常 2〜30重量%程度であってもよい。なお、前記のようにヘプタン可溶分は 、ヘプタンとジメチルホルムアミドとを、前者 Z後者 (重量比) = 1Z1の割合で含む混 合溶媒に対してヘプタンに溶解する成分とすることができる。炭素質成分 (2) (又は 混合物)中に適度な脂肪族成分を含んでいると、混合物中の一次キノリン不溶分 (特 に、炭素質成分(1)中の一次キノリン不溶分)とともに (又は相俟って)、 MCMBの凝 集 (又は合体)を効率よく抑制できる。このため、通常、 MCMBは粒径が大きくなるほ ど球形を保持できなくなり、バルタ状あるいはバルタ状が粉砕された粉砕状 (又は破 砕状)になる傾向があるが、脂肪族成分を適度に含んでいると、粒子表面に対する一 次 QI分の付着を防止しつつ、粒子表面を平滑化できるとともに、粒径が大きくなつた 場合であっても、球状の MCMBを効率よく得ることができる。なお、 HSは、芳香族炭
素分率 faとある程度相関関係があり、おおよそ faが 0. 8を越えると、炭素質成分中に ほとんど脂肪族成分が存在しない場合が多い。例えば、 FCCデカントオイルは、芳 香族炭素分率 0. 8程度のァロマテイクス (芳香族)分子と芳香族炭素分率が 0のサチ ュレート (脂肪族)分子とで構成されており、芳香族炭素分率が 0. 8以上ではほとん ど脂肪族成分が存在しないと記載されている (カーボン用語辞典、炭素材料学会、了 グネ承風社、第 30頁)。
[0042] また、脂肪族成分は、反応生成物の粘度又は軟化点を低減し、し力も、反応生成 物において、一次 QI分の分散性を向上させる効果があるとともに、一次 QI分および 反応により生じたキノリン不溶分 (又は二次 QI分、すなわち、一次 QI分よりも一層巨 大な芳香族性分子)の析出を促進する効果がある。そのため、反応生成物において 、生成した MCMB表面に対する一次 QI分の付着を抑制できるとともに、反応生成物 力 の一次 QI分および MCMBの分離性を高めて、 MCMB中に内包される一次 QI 分 (小粒径の粒子)の含有量を低減でき、配列しやすくなるため、焼成 MCMBの結 晶化度を向上できる。
[0043] 炭素質成分 (2)の芳香族炭素分率 f は、 0. 5〜0. 9の範囲から選択でき、例えば
a2
、 0. 55〜0. 85、好ましく ίま 0. 6〜0. 82、さら【こ好ましく ίま 0. 65〜0. 8、特【こ 0. 68 〜0. 78 (例えば、 0. 7〜0. 77)程度であってもよぐ通常 0. 6〜0. 8程度であって もよい。 f
a2が大きすぎると、後述するように、炭素質成分 (1)の水素化能力が十分で ない場合があり、 f
a2が小さすぎると脂肪族成分の割合が多くなりすぎて炭素質成分(
1)に対する相溶性が低下して結果として十分に炭素質成分(1)を水素化できなくな る虞がある。
[0044] 炭素質成分 (1)の芳香族炭素分率に対する炭素質成分 (2)の芳香族炭素分率の 比 (f /ί )は、例えば、 0. 95以下 (例えば、 0. 4〜0. 95程度)であればよく、例え a2 al
ば、 0. 5〜0. 9 (例えば、 0. 55〜0. 88)、好ましくは 0. 6〜0. 85、さらに好ましくは 0. 63〜0. 82、特に 0. 65〜0. 81程度であってもよく、通常 0. 61〜0. 86であって もよい。 f /ί が大きすぎると、炭素質成分 (1)の水素化能力が低下し、また、前記 a2 al
のように脂肪族成分による二次 QIの析出効果も低下する。また、 f /ί が小さすぎ
a2 al
ると、炭素質成分(1)と炭素質成分 (2)との相溶性が低下し、スラッジが発生して MC
MBにスラッジが混入したり、また、比重差が大きすぎることに起因して相分離し、均 一混合および均一反応が困難になったり、熱処理中における脂肪族成分の分解や ガム化、さらにはその後の焼成において MCMBの融着が生じやすくなり好ましくない 。スラッジ発生の有無は、炭素質成分(1)および炭素質成分 (2)の混合物を用いて 確認することができる。なお、炭素質成分 (2)から炭素質成分 (1)に十分に水素が移 行したか否かは、炭素質成分 (1)のみの場合と、炭素質成分 (1)および炭素質成分 (2)を使用した場合とにおいて、生成した MCMBにおける芳香族炭素分率を比べる ことによりおおよそ評価できる。炭素質成分(1)のみを使用した場合の MCMBの芳 香族炭素分率に対して、炭素質成分 (1)および (2)を使用した場合の MCMBの芳 香族炭素分率が十分に小さくなつて 、れば、水素の移行が十分に行われたことを示 し、あまり変化がなければ水素が十分に移行しなかったことを示す。なお、 MCMBは 固体であるため、炭素質成分(1)の場合とは異なり、 IRなどの固体を利用する測定 方法により芳香族炭素分率 f
aを求めてもよい。
[0045] 炭素質成分 (2)の軟ィ匕点 (SP)は、前記炭素質成分 (1)と同様に比較的低いのが 好ましぐ例えば、 80°C以下 [例えば、 100°C〜75°C程度、好ましくは 70°C以下( 例えば、 70〜65°C程度)]、好ましくは 60°C以下 (例えば、 50°C〜55°C程度)、 さらに好ましくは 50°C以下 (例えば、 30°C〜45°C程度)、特に 40°C以下 (例えば、 — 20°C〜35°C程度)であってもよぐ通常 30°C以下(例えば、 40°C〜20°C程度) であってもよい。
[0046] また、炭素質成分(2)は、室温にぉ 、て、固体状又は液体状 (液状)であってもよ!/、 力 通常、常温又は室温 (例えば、 15〜25°C程度)において液状であるのが好まし い。なお、液状の炭素質成分(2)は、室温において流動性を有していれば、粘稠状( 粘稠物)であってもよい。炭素質成分 (2) (および炭素質成分 (1)の双方)を液状とす ると、炭素質成分 (1)と炭素質成分 (2)との相溶性をより一層向上できる。
[0047] また、炭素質成分 (1)の芳香族炭素分率 f &丄と炭素質成分 (2)の芳香族炭素分率 f &
との差 (f f )は、例えば、 0. 05-0. 4、好ましくは 0. 1〜0. 35、さらに好ましく
2 al a2
ίま 0. 15〜0. 33、特に 0. 18〜0. 3程度であってもよ!/、。
[0048] 本発明では、メソカーボンマイクロビーズを生成可能な炭素質成分(1)と、この炭素
質成分 ( 1)より芳香族性の低 ヽ炭素質成分 (2)との混合物を熱処理することで、表面 が滑らかなメソカーボンマイクロビーズが得られる。本発明の方法により、表面が滑ら かなメソカーボンマイクロビーズが生成される理由(原理)は定かではないが、芳香族 性の低 ヽ炭素質成分 (2)から炭素質成分 (1)に水素 (活性水素)の移行が生じること で、熱処理による反応系内の粘度上昇を有効に抑制し、その結果として表面が滑ら かな高結晶性のメソカーボンマイクロビーズの発達や生成が促進されるものと考えら れる。なお、一次 QIも水素化されているものと考えられる。また、反応系内の粘度が 有効に低減されるとともに炭素質成分 (2)が炭素質成分 (1)を被覆しつつ熱処理さ れるため力 球状(ほぼ真球状)であり、粒度分布の狭いメソカーボンマイクロビーズ を効率よく得ることができる。すなわち、炭素質成分 (1)に、この炭素質成分 (1)よりも 芳香族性の低い炭素質成分 (2) (例えば、重質油、ピッチなど)を混合することにより 、系内を低粘度状に変化させることができ、生成した MCMB粒子間に炭素質成分( 2)が介在して、 MCMB粒子の凝集を効率よく抑制又は防止できる。
[0049] 前記混合物において、炭素質成分 (1)と炭素質成分 (2)との割合は、例えば、前者 Z後者 (重量比) =99Zl〜30Z70、好ましくは 95Ζ5〜35Ζ65、さらに好ましくは 90/10〜40/60、特【こ 90/10〜45/55程度であってもよ!/ヽ。なお、炭素質成分 (1)の割合が少ないほど、メソカーボンマイクロビーズの収率が上がり、逆に炭素質 成分(1)の割合が多いほど収率が下がる傾向がある。そのため、炭素質成分(1)と炭 素質成分(2)との重量割合を変化させることで、メソカーボンマイクロビーズの収率を 制御することもできる。炭素質成分 (2)の割合が小さすぎると、混合の効果が小さくな り、大きすぎると生成する MCMBが大きくなりすぎる虞がある。
[0050] なお、前記混合物は、炭素質成分 (1)と炭素質成分 (2)との相溶性を改善するた め、必要に応じて、相溶化剤を含んでいてもよい。相溶化剤としては、例えば、脂肪 族炭化水素基を有する芳香族化合物(例えば、メチルナフタレンなどのアルキルァレ ーン類)、窒素原子,硫黄原子,酸素原子などのへテロ原子を含む芳香族化合物( 例えば、キノリン、 N—メチルー 2—ピロリドンなど)などが挙げられる。これらの相溶ィ匕 剤は単独で又は 2種以上組み合わせてもよい。相溶化剤の割合は、例えば、混合物 全体に対して、 1〜: LO重量%程度であってもよい。なお、相溶化剤による相溶性向
上効果は、炭素質成分(1)および炭素質成分 (2)の軟ィ匕点を低くするほど高めること ができる。
[0051] また、前記混合物において、一次キノリン不溶分の含有割合 (一次 QI、 QAというこ とがある)は、例えば、前記混合物全体の 0. 05〜6重量% (例えば、 0. 1〜5重量% 程度)、好ましくは 0. 2〜4重量%、さらに好ましくは 0. 3〜3重量%程度であってもよ ぐ通常 0. 4〜3. 5重量%(例えば、 0. 5〜3重量%程度)であってもよい。なお、一 次 QI分は、生成した MCMBの凝集又は合体を抑制する効果があり、通常、炭素質 成分 (1)に少なくとも含有されている場合が多ぐ特に炭素質成分 (1)のみに含有さ れていてもよい。また、熱処理条件が同じであれば、一次 QI分の量が多いと、生成す る MCMBの粒子径が小さくなる傾向がある。
[0052] なお、炭素質成分 (1)と炭素質成分 (2)と (必要に応じてさらに相溶化剤と)の混合 は、慣用の方法で行うことができ、特に、両成分をより一層確実に相溶ィ匕するため、 両成分は、固体状で混合するよりも液状で混合するのが好ましい。すなわち、前記混 合物は、液状の炭素質成分 (1)と液状の炭素質成分 (2)とを混合して調製するのが 好ましい。混合は、加温下 (例えば、 70°C程度)で行ってもよぐ炭素質成分(1)と炭 素質成分 (2)とをより均一に混合するためには、攪拌 (攪拌機を用いた攪拌など)、循 環 (ポンプを用いた循環など)、振動 (超音波を利用した振動など)を利用して混合し てもよい。
[0053] 炭素質成分 ( 1)と、この炭素質成分 ( 1)より芳香性の低 、炭素質成分 (2)との混合 物の熱処理は、通常、温度 300〜500°Cの条件下で行われる場合が多ぐ好ましく ίま 320〜480oC、さら【こ好ましく ίま 340〜460oC、特【こ 350〜450oC程度の範囲で 行われてもよい。熱処理温度が、 300°C未満の場合には、メソカーボンマイクロビー ズの形成が十分に達成されず、一方熱処理温度が 500°Cを超える場合には、反応 容器やプラントなどの耐熱性、長期安定性などを維持することが困難となり工業的な 実用性に欠ける場合がある。
[0054] 熱処理時の反応系内は、減圧してもよぐ常圧でもよぐあるいは加圧してもよい。
通常、反応系内は加圧されている場合が多ぐ例えば、加圧下での系内の圧力は、 0 . 15〜: LOMPa程度、好ましくは 0. 2〜8MPa、さらに好ましくは 0. 25〜6MPa、特
に 0. 3〜5MPa程度であってもよい。加圧下で熱処理すると、混合物中の揮発性成 分が反応系外に留出するのを抑制し、反応生成物の軟化点の上昇を抑制できる。
[0055] また、熱処理時間は、使用する原料の種類、熱処理温度等を考慮して適宜選択で き、メソカーボンマイクロビーズが生成されるのに十分な時間、例えば、 1〜: LOO時間 、好ましくは 2〜50時間、さらに好ましくは 3〜30時間、特に好ましくは 5〜20時間程 度であってもよい。
[0056] 熱処理時は、目的とするメソカーボンマイクロビーズが生成される限り不活性ガスに よる反応系内の置換等を行わなくてもよいが、副反応を抑制し、生成されたメソカー ボンマイクロビーズの炭素含有量を高めるために、不活性ガス(窒素、ヘリウム、アル ゴンガス等)雰囲気下であるのが好まし 、。
[0057] なお、反応は、バッチ式、セミバッチ式、連続式の!/、ずれであってもよ!/、。
[0058] 熱処理後の混合物 (熱処理生成物、反応混合物、反応生成物)には、反応により生 成したキノリン不溶分が含まれて 、る。このような反応により生成するキノリン不溶分 は、原料に含まれるキノリン不溶分 (一次キノリン不溶分、一次 QI分)に対して、二次 キノリン不溶分(二次 QI分)と呼ばれ、生成したメソカーボンマイクロビーズで構成さ れて 、る。このような熱処理により生成するキノリン不溶分(二次キノリン分)の含有割 合、すなわち、二次キノリン不溶分の含有割合(二次 QI又は A QI)は、熱処理の進 行とともに大きくなり、二次 QIの増大は、粒子の凝集又は合体が繰り返され、粒径が 大きくなることを示す。このような二次キノリン不溶分の含有割合(二次 QI、 A QI)は、 例えば、反応生成物全体に対して、 3〜30重量%、好ましくは 5〜25重量%、さらに 好ましくは 8〜20重量% (例えば、 10〜15重量%)程度であってもよい。
[0059] なお、 Δ QIは、(反応生成物の QI X反応収率) (一次 QI)で求めることができる。
[0060] Δ QI (熱処理により生成するキノリン不溶分の含有割合)と一次 QI (熱処理前の混 合物全体の QI)との比(すなわち、 A QIZ—次 QI)は、例えば、 0. 5〜20、好ましく は 1〜18、さらに好ましくは 2〜15 (例えば、 2. 5〜14)、特に 3〜12程度であっても よい。上記比は、 MCMBの平均粒径と相関があり、おおよそ比例関係にある場合が 多い。一次 QIは原料段階で、 A QIは熱処理条件で調整可能であるが、これらが変 わっても、 A QI/—次 QIと平均粒径との関係はほぼ同様の関係にある。そのため、上
記比が小さすぎると、 MCMBの粒径が小さくなり、また生産性が低下する場合がある 。また、上記比が大きすぎると、 MCMBの粒径が大きくなりすぎる場合がある。
[0061] また、反応生成物においては、反応により混合物の軟化点(又は粘度)に上昇が見 られる。このような軟ィ匕点又は粘度の上昇は、生成した MCMBの分離性を高めると いう観点から、できるだけ低くなるように調整することが好ましい。例えば、反応生成 物の軟ィ匕点(SP)は、 150°C以下の範囲力も選択でき、例えば、 130°C以下 (例えば 、 30〜120°C程度)、好ましくは 110°C以下(例えば、 50〜100°C程度)、さらに好ま しくは 95°C以下(例えば、 60〜90°C程度)、通常 65〜85°C程度であってもよい。こ のような反応生成物の軟ィ匕点は、炭素質成分(1)および (2)の軟ィ匕点や、熱処理条 件 (例えば、加圧下での熱処理など)により調整できるが、少なくとも軟ィ匕点が低い炭 素質成分(1)および (2)を用いることにより、反応生成物の軟ィ匕点を低減するのが好 ましい。
[0062] 熱処理後の反応生成物は、生成したメソカーボンマイクロビーズ (未焼成又は生の メソカーボンマイクロビーズ、焼成前のメソカーボンマイクロビーズ)を含む成分 (液状 成分)である。本発明では、炭素質成分 (1)と炭素質成分 (2)との組み合わせ (特に 、一次 QI分を含む液状の炭素質成分 (1)と、液状の炭素質成分 (2)との組み合わせ )により、粒子として分離できないバルクメソフェーズではなぐ表面が滑らかな球状の MCMBが得られる。
[0063] 熱処理後の液状成分 (反応混合物又は反応生成物)力 のメソカーボンマイクロビ ーズの回収又は分離は、沈降、濾過、遠心分離、溶媒分別等の当該分野で公知の 方法で行われる。炭素質成分 (1)と、この炭素質成分 (1)よりも芳香族性の低い炭素 質成分 (2)との混合により、炭素質成分(1)のみの場合よりも低粘度となった熱処理 後の液状成分が、生成したメソカーボンマイクロビーズ間に介在し、メソカーボンマイ クロビーズの合体や凝集を防止又は抑制していると考えられる。そのためか、本発明 では、熱処理後の液状成分力ものメソカーボンマイクロビーズの回収又は分離が容 易となっている。
[0064] 回収又は分離されたメソカーボンマイクロビーズは、適切な溶媒 [例えば、タール中 質油、タール軽質油、有機溶媒 (例えば、キシレン、トルエン、ベンゼン、キノリン、テト
ラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、へキサンなど)など]で洗 浄され乾燥 (例えば、真空乾燥)される。
[0065] なお、メソカーボンマイクロビーズを分離した残余の液状成分は、必要に応じて、再 利用してもよい。例えば、本発明の製造方法における炭素質成分 (1)及び炭素質成 分(2)の少なくとも一種の全部又は一部に代えて残余の液状成分を使用してもよい。
[0066] 本発明の方法により得られるメソカーボンマイクロビーズの収率は高ぐ例えば、脱 水原料基準で 12. 5重量%以上 (例えば、 12. 5〜50重量%)、好ましくは 12. 8重 量%以上 (例えば、 12. 8〜40重量%)、さらに好ましくは 13重量%以上 (例えば、 1 3〜35重量%)、特に 13. 5重量%以上(例えば、 13. 5〜30重量%)程度であって もよい。なお、通常、芳香族平面ユニットが大きぐ反応活性点である脂肪族炭素を 多く有しているほど、 MCMBが生成するための反応性が高くなるものの、このような 原料は従来存在しなカゝつた。本発明では、炭素質成分 (1)と炭素質成分 (2)とを組 み合わせることにより、芳香族平面ユニットを大きくするとともに、脂肪族炭素を多く有 するという互いにトレードオフの関係にある構造を有する原料系を作ることができ、こ のため MCMBを収率よく得ることができる。
[0067] なお、本発明の方法は、前記炭素質成分(1)と炭素質成分 (2)とを熱処理するェ 程を少なくとも含んでいればよぐ熱処理後、生成した MCMB (生 MCMB)をさらに 焼成処理してもよい。このような焼成処理 (黒鉛化処理)により、焼成 MCMB (黒鉛化 された MCMB)を得ることがでさる。
[0068] 本発明には、表面に付着した付着物 (又は表面凹凸)が著しく少ない球状 (特に真 球状)のメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)も含まれる。なお、このような MCMB は、特に制限されないが、例えば、前記方法 (炭素質成分 (1)と炭素質成分 (2)とを 用いる方法)により得ることができる。
[0069] 例えば、本発明の MCMBを真球状であるとみなして、粒径から算出した MCMBの みかけの比表面積を S1とし、 MCMBの BET比表面積を S2とするとき、 S2ZS1で 表される MCMBの凹凸度は、例えば、 6以下 (例えば、 1〜5. 5程度)、好ましくは 5 以下 (例えば、 1. 1〜4. 9程度)、さらに好ましくは 1. 2〜4. 8 (例えば、 1. 3〜4. 5 程度)、通常 1〜5であり、 4以下 [例えば、 1〜3. 7、好ましくは 1. 2〜3. 6、さらに好
ましくは 1. 3〜3. 3、特に 3以下 (例えば、 1. 5〜2. 5程度)]にすることもできる。上 記凹凸度は、 MCMB表面の付着物の付着の程度の目安となる指標であり、凹凸度 = 1のとき MCMBが真球状であることを示し、大きいほど表面の凹凸(又は一次 QI 分などの付着物)が多いことを示す。なお、みかけの比表面積 S 1は、 MCMB全体の 表面積を MCMBの質量で除することにより得ることができ、 MCMBの表面積は MC MBの粒径を 2rとするとき、真球の表面積、すなわち、 S l =4 7u r2で表すことができる
[0070] なお、本発明のメソカーボンマイクロビーズの形状は、球状 (特に真球状)であり、し 力も、前記のように、その表面には、付着物がなく(又は付着物が少なく)、大きな凹 凸などがなく滑らかである。
[0071] また、本発明のメソカーボンマイクロビーズはシャープな粒度分布を示し、粒度が均 一である)。
[0072] メソカーボンマイクロビーズの粒度分布は、レーザー光回折法によって容易に測定 できる。累積度数分布において、累積度 50%の粒径 (D
50 )は平均的な粒子径の指 標となり、粒度分布の広がりは、累積度 10%の粒径 (D )に対する累積度 90%の粒
10
径 (D )の比で表すことができ、前記比 (D ZD )を均斉度 (D ZD )と称する。
90 90 10 90 10 この均斉度の数値が大きいと、ブロードな粒度分布であることを示し、この数値が小さ いと、粒径が揃った粒度分布であることを示す。メソカーボンマイクロビーズの D は、
50 体積基準で、 f列免 ίま、、 5〜200 μ mであり、代表的【こ ίま 6〜150 μ m、通常 8〜120 /z m、好ましくは 10〜100 /ζ πι程度であってもよい。特に、 D は、 5〜50 /ζ πι、好ま
50
しくは5〜40 111、さらに好ましくは 15〜30 /ζ πι程度であってもよい。また、本発明の メソカーボンマイクロビーズの粒度分布は狭ぐ例えば、前記均斉度 (D /Ό )は 2
90 10
0以下 (例えば、 2〜15)、好ましくは 8以下 (例えば、 2. 5〜8)、さらに好ましくは 7以 下 (例えば、 3〜7)、特に好ましくは 6以下 (例えば、 3. 5〜6)程度であってもよい。 なお、粒径は、分級などによりコントロールすることもできる。
[0073] なお、本発明の MCMBは、前記のように、バルタ状ではなぐ比較的小さい粒径を 有する球状の粒子である。そのため、本発明の MCMBは、適度な芳香族炭素分率 を有しており、例えば、本発明の MCMBを IR (赤外線吸収スペクトル)において、芳
香族炭素の C—H伸縮振動に対応する波数 (例えば、 3050cm_1)の吸収強度を II とし、脂肪族炭素の C—H伸縮振動に対応する波数 (例えば、 2920cm_1)の吸収強 度を 12とするとき、 11/ (II +12)の値は、 0. 5〜0. 8、好ましくは 0. 55〜0. 75、さら 【こ好ましく ίま 0. 57〜0. 7、通常 0. 5〜0. 7程度であってもよ!/ヽ。
[0074] また、通常、 MCMBには、二次 QI分以外にも、小粒径の成分 (一次 QI分)が含ま れている。このような一次 QI分は、前記のように MCMBの生成や粒径制御において は重要な役割を果たすが、リチウム二次電池の負極材料用途を考慮した場合、一次 QI分は結晶性が低ぐ放電容量や初期効率を低下させるため、 MCMBにはできる だけ含まれないのが好ましい。し力し、従来の方法では、 MCMB中の一次 QI分の含 有量を効率よく除去できな力つた。これに対して、本発明では、前記のように、脂肪族 成分による一次 QIの反応生成物中に対する分散性を向上させる効果などにより、 M CMBに含まれる一次 QI量が極めて低減されており、例えば、 MCMB全体に対する 平均粒径 1. 85 m以下の粒子(すなわち、 MCMBではない小さい粒子)の含有割 合は、例えば、 7体積%以下 (例えば、 0〜6. 5体積%程度)、好ましくは 6体積%以 下 (例えば、 0. 3〜5. 5体積%程度)、さらに好ましくは 5体積%以下 (例えば、 0. 5 〜4. 5体積%程度)、通常 0. 8〜5体積%(例えば、 1〜4. 7体積%程度)であって ちょい。
[0075] (焼成メソカーボンマイクロビーズ)
本発明には、表面が滑らかな焼成メソカーボンマイクロビーズ (黒鉛化されたメソカ 一ボンマイクロビーズ)も含まれる。このような焼成メソカーボンマイクロビーズは、例え ば、前記メソカーボンマイクロビーズ(生のメソカーボンマイクロビーズ)を焼成処理す ることにより得ることができる。すなわち、前記 MCMBは、表面の凹凸が著しく少ない 球状 (特に真球状)の粒子であるため、焼成後においても、前記形状が反映されてお り、焼成 MCMBの形状は表面が滑らかな球状である。そして、このような焼成 MCM Bは、 MCMBを焼成成分とした球状の炭素材料であり、し力も、極めて高い結晶性を 有している。例えば、焼成 MCMBの結晶性は、炭素質成分(2)を組み合わせること なぐ炭素質成分(1)のみを焼成した場合よりも高くなる。特に、前記 MCMBは、表 面が滑らかで球状であるとともに、一次 QI分が少なぐ適度に水素化されていること
により、芳香族環の欠陥やひずみが少なぐ分子運動性が良好なため、焼成により結 晶性のよい MCMBを生成しやすい。例えば、前記黒鉛ィ匕されたメソカーボンマイクロ ビーズの結晶構造は、面間隔 (結晶子面間隔) d (002)の値力 例えば、 0. 335〜0 . 340應、好ましくは 0. 335〜0. 338nm (例えば、 0. 335〜0. 336nm)程度であ つてもよく、通常 0. 3354〜0. 3357nm程度であってもよい。これまで、このような球 状と高い結晶性とを備えた炭素材料は知られてない。なお、種々の先行文献には、 前記 d (002)の値について、一般的に黒鉛に対応する理論値 (0. 3354nm)を含む 数値が記載されて ヽる場合があるが、理論値に極めて近 ヽ d (002)を有する焼成 M CMBおよびその製造方法について、具体的には記載されていない。なお、球状の 焼成 MCMBは、比表面積が小さいため、電極用途に用いたとき、初期効率、充填密 度、安全性などを向上できる。例えば、リチウム二次電池用途では、リチウムの出入 口としてのエッジ部分を多くすることができ、初期効率およびレート特性を向上できる
[0076] 本発明の焼成 MCMBは、前記のように、前記メソカーボンマイクロビーズ(生の M CMB)を焼成処理 (黒鉛化又は黒鉛化処理)した炭素材料である。なお、前記方法 を利用して焼成する場合には、前記熱処理後、生成したメソカーボンマイクロビーズ( 生のメソカーボンマイクロビーズ)を熱処理生成物から分離し、この分離したメソカー ボンマイクロビーズを焼成処理して、焼成メソカーボンマイクロビーズを得ることができ る。
[0077] このような炭素材料(焼成メソカーボンマイクロビーズ)は、メソカーボンマイクロビー ズをそのまま焼成処理 (又は黒鉛化)することにより得てもよく、炭化 (又は炭化処理 又は炭素化)したのち、焼成処理することにより得てもよい。炭化処理する場合、炭化 温度(又は最終到達温度)は、例えば、 450〜1500°C、好ましくは 500〜1200°C、 さらに好ましくは 500〜1100°C程度であってもよい。炭化は、通常、非酸化性雰囲 気中(特に、窒素、ヘリウム、アルゴンガスなどの不活性雰囲気中)、真空中などで行 うことができる。なお、炭化処理は、慣用の固定床または流動床方式の炭素化炉 (リ ードハンマー炉、トンネル炉、単独炉など)で行うことができ、所定の温度まで昇温で きる炉であれば、炭化炉加熱方式や種類は特に限定されな!ヽ。
[0078] 焼成処理温度(又は最終到達温度)は、例えば、 1700〜3200°C、好ましくは 180 0〜3100。C、さらに好まし <は 1900〜3000。C (例えば、 1950〜2900。C)程度であ り、 2000〜2800。C程度であってもよく、通常 2500〜3200。C程度であってもよい。
[0079] 焼成処理 (黒鉛化処理)は、必要に応じて、還元剤(例えば、コータス、黒鉛、炭な ど)の存在下で行ってもよい。また、焼成処理は、通常、非酸化性雰囲気 (特に、ヘリ ゥム、アルゴン、ネオンガスなどの不活性雰囲気)中、又は真空中で行うことができ、 通常、不活性雰囲気中で行うことができる。なお、焼成処理は、通常、黒鉛化炉で行 うことができ、前記黒鉛化炉としては、所定の温度に到達し得る炉であれば加熱方式 や種類は特に限定されず、例えば、アチソン炉、直接通電黒鉛化炉、真空炉などが 例示できる。なお、焼成処理は、ホウ素化合物の存在下で行ってもよい。このような技 術については、特開平 11— 283625号公報を参照できる。ホウ素化合物の存在下 で焼成すると、黒鉛ィ匕度の高い焼成 MCMBを得ることができるものの、黒鉛化炉 (ァ チソン炉など)を損傷したり、リチウム電池の負極材料に適用したとき、過電圧が大き くなるため、本発明では、ホウ素化合物の非存在下で焼成するのが好ましい。
[0080] なお、メソカーボンマイクロビーズの最終焼成物は、粉砕機(ボールミル、ハンマーミ ルなど)などにより粉砕して、最終生成物としての炭素材料としてもょ 、。
[0081] 本発明の炭素材料 (焼成メソカーボンマイクロビーズ)は結晶性が高く、種々の材料 、例えば、電極材料 (例えば、リチウム二次電池負極材料や放電加工用電極等)など の特殊炭素材料の一元材料、あるいは充填剤 (プラスチックの導電用充填材等)など に有効に使用できる。
[0082] 特に、本発明の炭素材料は、リチウム二次電池用負極 (さらにはリチウム二次電池) の構成材料として好適に使用できる。本発明の焼成 MCMBをリチウム二次電池負 極又は負極材料に用いると、結晶性向上に伴って容量を向上でき、し力も、初期効 率、サイクル特性、安全性、レート特性、環境負荷低減などの特性を向上できる。す なわち、結晶性向上により、(i)導電性向上により、サイクル特性が向上し、(ii)水素 化による MCMB表面の官能基量の低減、粒子表面の平滑性、一次 QIの低減、さら には小さい表面積により、効率および安全性が向上する。また、炭素質成分 (2)の使 用などにより、 MCMB中の金属成分やベンツピレン成分を低減でき、環境負荷を低
減できる。そのため、本発明には、前記焼成メソカーボンマイクロビーズで形成された リチウム二次電池用負極 (又は負極材料)も含まれる。例えば、炭素材料、バインダ 一などを含む混合物を成形する方法;炭素材料、有機溶媒、バインダーなどを含む ペーストを炭素材料に塗布手段 (ドクターブレードなど)を用いて塗布する方法などに より、任意の形状のリチウム二次電池用負極 (又は負極材料)とすることができる。負 極の形成にお 、ては、必要に応じて端子と組み合わせてもよ 、。
[0083] 負極集電体は、特に制限されず、公知の集電体、例えば、銅などの導電体を使用 することができる。有機溶媒としては、通常、ノ^ンダ一を溶解又は分散可能な溶媒 が使用され、例えば、 N—メチルピロリドン、 N, N—ジメチルホルムアミドなどの有機 溶媒を例示することができる。有機溶媒は単独で又は 2種以上組み合わせてもよ 、。 有機溶媒の使用量は、ペースト状となる限り特に制限されず、例えば、負極炭素材 1 00重量部に対して、通常、 60〜150重量部、好ましくは 60〜: LOO重量部程度である
[0084] ノインダ一としては、例えば、フッ素含有榭脂(ポリフッ化ビ-リデン、ポリテトラフル ォロエチレンなど)などが例示できる。ノインダ一の使用量 (分散液の場合には、固形 分換算の使用量)は、特に限定されず、例えば、炭素材料 (焼成物) 100重量部に対 して、 3〜20重量部、好ましくは 5〜15重量部(例えば、 5〜10重量部)程度であって もよい。ペーストの調製方法は、特に制限されず、例えば、バインダーと有機溶媒との 混合液 (又は分散液)と、炭素材料とを混合する方法などを例示することができる。
[0085] なお、本発明の方法で得られた炭素材料と導電材 (炭素質材料又は導電性炭素材 )とを併用して、負極を製造してもよい。導電材の使用割合は特に制限されないが、 本発明の方法により得られた炭素材料と炭素質材料の総量に対して、通常、 1〜10 重量%程度、好ましくは 1〜5重量%程度である。導電材 [例えば、カーボンブラック( 例えば、アセチレンブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック)などの炭素質材 料]を併用することにより、電極としての導電性を向上させてもよい。導電材は、単独 で又は 2種以上組み合わせて使用できる。なお、導電材は、例えば、炭素材料と溶 媒とを含むペーストに混合し、このペーストを負極集電体に塗布する方法などにより、 炭素材料とともに有効に利用できる。
[0086] 前記ペーストの負極集電体への塗布量は特に制限されず、通常、 5〜15mgZcm 2程度、好ましくは 7〜13mgZcm2程度である。また、負極集電体に塗布した膜の厚 さ(前記ペーストの膜厚)は、例えば、 50〜300 m、好ましくは 80〜200 m、さら に好ましくは 100〜 150 m程度である。なお、塗布後、負極集電体には、乾燥処理 (例えば、真空乾燥など)を施してもよい。
[0087] そして、本発明の炭素材料 (焼成 MCMB)は、上記のように負極構成材料としてリ チウムニ次電池を構成できる。特に、本発明の炭素材料は、繰り返し充放電を可能と するためのリチウム二次電池を構成できる。リチウム二次電池は、前記負極 (前記炭 素材料を含む負極)と、リチウムを吸蔵 ·放出可能な正極および電解液とを組み合わ せ、さらに、セパレータ (通常使用される多孔質ポリプロピレン製不織布などのポリオ レフイン系多孔質膜のセパレータなど)、集電体、ガスケット、封口板、ケースなどの電 池構成要素を用い、常法により、組み立ておよび製造できる。なお、リチウム二次電 池の組立て方法の詳細は、例えば、特開平 7— 249411号公報に記載の方法などを 参照することができる。
[0088] 正極は、特に制限されず、公知の正極が使用でき、正極は、例えば、正極集電体、 正極活物質、導電剤などで構成できる。正極集電体として、例えば、アルミニウムなど を例示することができる。正極活物質としては、例えば、 TiS、 MoS、 NbSe、 FeS
2 3 3
、 VS、 VSeなどの層状構造を有する金属カルコゲン化物; CoO、 Cr O、 TiO、
2 2 2 3 5 2
CuO、 V O、 Mo 0、 V O ( ·Ρ O )、 Mn 0 ( -Li 0)、 LiCoO、 LiNiO、 LiMn
3 6 3 2 5 2 5 2 2 2 2 2 oなどの金属酸化物;ポリアセチレン、ポリア-リン、ポリパラフエ-レン、ポリチオフヱ
4
ン、ポリピロールなどの導電性を有する共役系高分子物質などを用いることができる。 好ましくは、金属酸化物(特に、 V O、 Mn 0、 LiCoO )を用いる。
2 5 2 2
[0089] また、電解液としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、 γ
ブチロラタトン、テトラヒドロフラン、 2—メチルテトラヒドロフラン、ジォキソラン、 4ーメ チルジォキソラン、スルホラン、 1, 2—ジメトキシェタン、ジメチルスルホキシド、ァセト -トリル、 Ν, Ν ジメチルホルムアミド、ジエチレングリコール、ジメチルエーテルなど の非プロトン性溶媒などが例示できる。また、電解液は、これらの非プロトン性溶媒に 、 LiPF、 LiClO、 LiBF、 LiAsF、 LiSbF、 LiAlO、 LiAlCl、 LiCl、 Lilなどの溶
媒和しにくいァ-オンを生成する塩を溶解させたものも含まれる。電解液は、単独で 又は 2種以上組み合わせてもよい。好ましい電解液には、強い還元雰囲気でも安定 な溶媒としてのテトラヒドロフラン、 2—メチルテトラヒドロフラン、ジォキソラン、 4—メチ ルジォキソランのような強!、還元雰囲気でも安定なエーテル系溶媒や、前記非プロト ン性溶媒 (好ましくは 2種以上の混合溶媒)に、前記例示の塩を溶解させた溶液など が含まれる。
[0090] なお、リチウム二次電池は、円筒型、角型、ボタン型など任意の形状又は形態とす ることがでさる。
産業上の利用可能性
[0091] 本発明の方法では、粒度分布が狭ぐ球状で表面の滑らかなメソカーボンマイクロ ビーズが収率よく得られる。また、本発明のメソカーボンマイクロビーズ (焼成 MCMB )又は炭素材料は、結晶性が高ぐリチウム二次電池負極材料、放電加工用電極、キ ャパシタ用電極材料、高密度高強度の炭素材料などの特殊炭素材料の一元材料、 あるいはプラスチックの導電用充填材などの用途に好適に利用できる。
実施例
[0092] 以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実 施例によって限定されるものではない。
[0093] [芳香族炭素分率 fの測定]
a
試料を、炭素質成分 (1)又は炭素質成分 (2)に緩和剤としてァセチルアセトンクロ ム塩を混合物全体に対して約 0. 5mol%添加して調製した。測定は、日本電子社製 400MHz FT—NMR装置(ECX—400)を用ぃ、温度 150°Cでゲート付プロトンデ カップリング法によって行った。得られたスペクトルの芳香族炭素の面積強度と非芳 香族炭素の面積強度との比から芳香族炭素分率 f
aを算出した。
[0094] [軟化点]
軟ィ匕点 SPは、熱測定装置 (メトラートレド (株)製、 FP83)を用い測定した。
[0095] [溶剤分析]
JIS K— 2425に従い、トルエン不溶分 (TI)および一次キノリン不溶分 (QI)を測定 した。なお、反応により生成した QI ( A QI)は、熱処理後の反応生成物のキノリン不溶
分 Qおよび反応生成物の収率 YX 100 (%)と、原料 (炭素質成分)全体の一次キノ
Β
リン不溶分 Qから、値 (Q XY) -Qとして算出した。また、 A QIと Qとの比(A QI
A B A A
/Q )も同様に算出した。
A
[0096] また、ヘプタン可溶分(HS)の測定は、 lOOmgの試料に、 30mlのジメチルホルム アミドおよび 30mlのヘプタンを混合し、 10分間超音波洗浄器にかけ、遠心分離(25 00rpm、 3分間)し、 2層に分かれた上層を 30ml採取し、エバポレータにて溶剤を除 去後、重量を測定し、試料中の重量%を算出した。
[0097] [電子顕微鏡観察]
電子顕微鏡は、日立(HITACHI)社製 S— 3000 Scaning Electron Microsc opeを用い、印加電圧を 20kVとして観察を行った。そして、実施例 3〜9および比較 例 2〜15では、得られた電子顕微鏡写真から、粒子の形状を以下の基準で評価した
[0098] A:粒子表面に付着物がなぐ粒子表面が滑らかである
B:粒子表面に付着物があり、粒子表面に凹凸が見られる
C :粒子が球状にならず、破砕物となっている
D:粒子が凝集している。
[0099] [偏光顕微鏡観察]
メソカーボンマイクロビーズとアクリル榭脂(リファインテック (株)製 透明榭脂)とを 重量割合(1Z2)で混合し、成型、研磨して観察用試料とした。光源にハロゲン白熱 灯を用いたォリンパス(Olympus)社製 BX60Mにより直交-コル下で石膏検板を介 して観察用試料の組織を観察した。
[0100] [X線回折測定]
X線回折測定は (株)リガク社製 RINT2000を用い管電圧 40kV、管電流 200mA にて行った。
[0101] [粒度分布測定]
粒径 (粒度)は、パーティクルアナライザ (JEOL HELOS SYSTEM)を用いて、 D 、D 、D ならびに粒径 1. 85 /z m以下の量を測定し、 D /Ό を計算した。ま
10 50 90 90 10
た、パーティクルアナライザにより測定した粒径から、粒子を真球状とみなしたときの
比表面積 (みかけの比表面積) SIも測定した。
[0102] [BET比表面積および凹凸度の測定]
窒素吸着 BET比表面積測定装置(Quantachrome社製、 NOVA2000)を用い て、粒子の BET比表面積 S2を測定した。そして、 BET比表面積 S2を、前記粒度分 布測定により求めたみかけの比表面積 S1で除することにより、凹凸度(S2ZS1)を 求めた。凹凸度が 1であるとき、粒子は真球状粒子であり、凹凸度が大きくなるにつ れて粒子表面の凹凸が多い (すなわち、粒子表面の滑らかさが低い)ことを意味する
[0103] [スラッジ生成有無の確認]
ろ過した炭素質成分(1)と炭素質成分 (2)とを 100°Cで混合した混合物について、 キノリン不溶分の分析法 CFIS K— 2425)に従い、ろ紙上の汚れを確認した。
[0104] [IR強度比の測定]
生成したメソカーボンマイクロビーズ(焼成前のメソカーボンマイクロビーズ)と KBrと を前者 Z後者 (重量比) = 1Z100の割合で混合し、成形器にて成形サンプルを作 製した。そして、分光器(サーモニコレ社、 AVATAR370FT— IR)を用い、室温で 透過法により成形サンプルの IR ^ベクトル(赤外線吸収スペクトル)を測定し、この IR スペクトルと、 KBrのみで測定した IR ^ベクトルとから、メソカーボンマイクロビーズの I Rスペクトルを得た。そして、相対的な芳香族分率として、得られたスペクトルの芳香 族 C - H伸縮ピーク(3050cm— 強度 11と脂肪族 C - H伸縮ピーク( 2920cm_ 強 度 12の値から、 IlZ (II +12)の値を算出した。なお、メソカーボンマイクロビーズは 溶剤に不溶であり、軟ィ匕しないため、 NMR測定による芳香族分率の代わりに、 IRに よる相対的な芳香族分率を適用した。前記 IlZ (Π +12)の値が大きいほど、 NMR 測定の場合と同様に、相対的な芳香族分率が大きい。
[0105] [電極特性評価方法]
正極体には、 LiCoOを使用した。負極体としては、 N, N—ジメチルホルムアミドを
2
溶媒として、黒鉛ィ匕後のメソカーボンマイクロビーズとポリフッ化ビ-リデンとを混合し
、スラリー状にした後、負極成型機を用いて銅版ロールに得られたスラリーを 100〜1 40 /z mの厚みで塗布し、 200°Cで真空乾燥を行い負極体とした。電解液としては、
エチレンカーボネートとジェチルカーボネートとの混合溶媒 (重量比 1: 1)に過塩素 酸リチウムを ImolZLの割合で溶解して電解液とした。セパレータとしてポリプロピレ ン不織布を用いてリチウム二次電池を作製した。この得られたリチウム二次電池の放 電特性を測定した。
[0106] 充電は、 ImAZcm2での定電流充電の後、 ImVで定電位充電を行い、総充電時 間を 12時間として行った。また、放電は、 ImAZcm2の定電流とした。電極特性の測 定は、放電容量が 1. 3Vに低下するまで行った。
[0107] なお、実施例で得られたメソカーボンマイクロビーズの黒鉛ィ匕 (焼成)は、メソカーボ ンマイクロビーズを窒素雰囲気中、圧力 0. IMPaおよび温度 1000°Cの条件下で、 保持時間 2時間で炭化処理し、その後、アルゴン雰囲気中、圧力 0. IMPaおよび温 度 2800°C (実施例 1、実施例 2および比較例 1)又は 3000°C (実施例 3〜9、比較例 2〜12)の条件下で焼成処理することにより行った。
[0108] (実施例 1)
コールタール(f =0. 941、 QI2. 58重量0 /0)と芳香族性の低いエチレンボトム油( al
f =0. 730、 QIO. 0重量%)とを重量割合を前者 Z後者 =80Z20として混合 (コ a2
ールタールの芳香族炭素分率に対するエチレンボトム油の芳香族炭素分率の比 =0 . 776)し、オートクレーブ中、窒素による加圧下(0. 5MPa) 430°Cで 8時間熱処理 することにより、反応生成物を収率 63. 6重量%で得た。この反応生成物をタール中 質油とタール軽質油とでそれぞれ洗浄することにより、メソカーボンマイクロビーズを 脱水原料基準で収率 14. 5重量%で得た。
[0109] 得られたメソカーボンマイクロビーズの粒度分布はシャープ(D = 7. 1 m、D
10 50
= 27. 6 ^ πι, D = 37. 、均斉度(D /Ό ) = 5. 25)であり、電子顕微鏡観
90 90 10
察により表面が滑らかであることが示された。 2800°Cで黒鉛ィ匕したメソカーボンマイ クロビーズの X線回折測定では、 d (002)は、 0. 3356nmであり、結晶構造が発達し ていた。電極特性評価では、放電容量が 337. 3mAhZgであり、初期効率は 92. 4 %と高い値を示した。
[0110] (実施例 2)
実施例 1において、コールタール (f =0. 941、 QI2. 58重量0 /0)と芳香族性の低
いエチレンボトム油(f =0. 730、 QI0. 0重量0 /0)との重量割合を前者 Z後者 = 50 a2
Z50とした (コールタールの芳香族炭素分率に対するエチレンボトム油の芳香族炭 素分率の比 =0. 776)以外は、実施例 1と同様にメソカーボンマイクロビーズを調製 した。コールタールとエチレンボトム油との反応生成物の収率は、 51. 4%であり、メソ カーボンマイクロビーズの収率は、脱水原料基準で、 15. 6重量%であった。
[0111] 得られたメソカーボンマイクロビーズの粒度分布はシャープ(D = 13. 7 m、D
10 50
=41. θ ^ πι, ϋ = 55. 、均斉度(D /Ό ) =4. 06)であり、電子顕微鏡観
90 90 10
察により表面が滑らかであることが示された。 2800°Cで黒鉛ィ匕したメソカーボンマイ クロビーズの X線回折測定では、 d (002)は、 0. 3354nmであり、結晶構造が発達し ていた。電極特性評価では、放電容量は 347. 3mAhZgであり、初期効率は 92. 0 %と高い値を示した。
[0112] (比較例 1)
実施例 1において、コールタールのみを使用した以外は、条件は実施例 1と同様で あった。コールタールの反応生成物の収率は、 69. 9%であり、メソカーボンマイクロ ビーズの収率は、脱水原料基準で、 12. 2重量%であった。
[0113] 得られたメソカーボンマイクロビーズの粒度分布はブロード(D = 1. 1 m、D =
10 50
16. = 23. 、均斉度 (D /Ό ) = 21. 6)であり、電子顕微鏡観察
90 90 10
では、表面に付着物のある凹凸のある形状を示した。 2800°Cで黒鉛ィ匕したメソカー ボンマイクロビーズの X線回折測定では、 d (002)は、 0. 3358nmであった。電極特 性評価では、放電容量が 327. 3mAhZgであり、初期効率は 92. 4%であった。
[0114] (実施例 3)
液状のコールタール (f =0. 941、 QI2. 58重量0 /0、HS1. 5重量0 /0)と芳香族性 al
の低い液状のエチレンボトム油(f 0· 730、 QI0. 0重量%、HS 10重量%)とを、 a2
前者 Z後者 =80Z20の重量割合で、 70°C、 1時間攪拌混合し、オートクレープ中、 窒素による加圧下(0. 5MPa)、回転数 600rpm、 430°Cで 8時間熱処理することに より、反応生成物を収率 63. 6重量%で得た。この反応生成物とタール中質油とを、 前者 Z後者 = 1Z1. 5の重量割合で、 130°Cで 30分間攪拌混合した後、遠心分離 (5000rpmで 30分間)し沈殿物を得た。同様の操作をもう 1回繰り返した後、沈殿物
とトルエンとを前者 Z後者 = 1Z2の重量割合で、 80°Cで 30分間攪拌混合した後、 8 0°Cで加圧ろ過して洗浄し、沈殿物を得た。さらに同様の操作をもう 1回繰り返した後 、沈殿物を真空乾燥(120°Cで 60分間)処理することにより、メソカーボンマイクロビ ーズを脱水原料 (脱水タール)基準で収率 14. 5重量%で得た。
[0115] 得られたメソカーボンマイクロビーズの粒度分布はシャープ(D = 7. 1 m、D
10 50
= 27. 6 ^ πι, D = 37. 、均斉度(D /Ό ) = 5. 25)であり、電子顕微鏡観
90 90 10
察により表面が滑らかであることが示された。 3000°Cで黒鉛ィ匕したメソカーボンマイ クロビーズの X線回折測定では、 d (002)は、 0. 3356nmであり、結晶構造が発達し ていた。電極特性評価では、放電容量が 350. 4mAhZgであり、初期効率は 93. 8 %と高い値を示した。
[0116] (実施例 4)
実施例 3において、コールタールと芳香族性の低いエチレンボトム油との重量割合 を前者 Z後者 =50Z50としたこと以外は、実施例 3と同様にメソカーボンマイクロビ ーズを調製した。コールタールとエチレンボトム油との反応生成物の収率は、 51. 4 %であり、メソカーボンマイクロビーズの収率は、脱水原料 (脱水タール)基準で、 15 . 6重量%であった。
[0117] 得られたメソカーボンマイクロビーズの粒度分布はシャープ(D = 13. 7 m、D
10 50
=41. θ ^ πι, ϋ = 55. 、均斉度(D /Ό ) =4. 06)であり、電子顕微鏡観
90 90 10
察により表面が滑らかであることが示された。 3000°Cで黒鉛ィ匕したメソカーボンマイ クロビーズの X線回折測定では、 d (002)は、 0. 3354nmであり、結晶構造が発達し ていた。電極特性評価では、放電容量は 358. 8mAhZgであり、初期効率は 93. 4 %と高い値を示した。
[0118] (比較例 2)
実施例 3において、コールタールのみを使用した以外は、実施例 3と同様にしてメソ カーボンマイクロビーズを調製した。コールタールの反応生成物の収率は、 69. 9% であり、メソカーボンマイクロビーズの収率は、脱水原料 (脱水タール)基準で、 12. 2 重量%であった。
[0119] 得られたメソカーボンマイクロビーズの粒度分布はブロード(D = 1. 1 m、D =
16. = 23. 、均斉度 (D /Ό ) = 21. 6)であり、電子顕微鏡観察
90 90 10
では、表面に付着物のある凹凸のある形状を示した。 3000°Cで黒鉛ィ匕したメソカー ボンマイクロビーズの X線回折測定では、 d (002)は、 0. 3358nmであった。電極特 性評価では、放電容量が 338. ImAhZgであり、初期効率は 92. 4%であった。
[0120] (比較例 3)
実施例 3で使用したコールタールを、加圧ろ過(160°Cおよび 0. 3MPa)し、固形 分(一次 QI)を除去した液状のコールタール(f =0. 941、 QI0. 0重量0 /0、HS1. 5 al
重量%)を得た。そして、実施例 3において、得られた固形分を除去したコールター ルのみを使用した以外は、実施例 3と同様にしてメソカーボンマイクロビーズを調製し た。 QIが存在しな力つたため、生成物は球状物ではなく破砕物であったため、 3000 °Cで黒鉛ィ匕したメソカーボンマイクロビーズの結晶化度も低ぐ放電容量、充放電容 量も低かった。
[0121] (比較例 4)
実施例 3において、コールタールのみを使用し、 450°Cで 4時間熱処理した以外は 、実施例 3と同様にしてメソカーボンマイクロビーズを調製した。熱処理温度を高くし た結果、粒径が大きくなりすぎ、メソカーボンマイクロビーズは球状を保てなくなり、粉 砕状であった。実施例(例えば、実施例 4)で得られたメソカーボンマイクロビーズは、 粒子径 (D50)がより大きくなつても、球状であったことから、一次 QI以外にもエチレン ボトム油中の脂肪族成分が球状化に寄与して ヽるものと考えられる。
[0122] (比較例 5)
実施例 3にお 、て、比較例 3でコールタールから除去された固形分をキノリンで洗 浄後、アセトン洗浄した固形分(f =0. 99、 QI100重量%、 HS0. 0重量%、固体 al
状)を得た。この固形分のみを使用した以外は、実施例 3と同様にメソカーボンマイク 口ビーズを調製した。 3000°Cで黒鉛ィ匕した黒鉛ィ匕物は、一次 QI分そのものの黒鉛 化物であり、粒径が小さぐ結晶化度が低ぐ放電容量、充放電収率も低力つた。
[0123] (比較例 6)
実施例 3において、エチレンボトム油のみを使用し、 400°Cで熱処理した以外は、 実施例 3と同様にしてメソカーボンマイクロビーズを調製した。一次 QI分が存在しな
かったため、生成物は球状物ではなく破砕物であった。また、原料中の芳香族炭素 分率が低!、ため、 3000°Cで黒鉛ィ匕したメソカーボンマイクロビーズの結晶化度は低 ぐ放電容量、初期効率も低かった。なお、熱処理温度 410°C以上では反応系がコ 一キングして攪拌できなくなり熱処理できな力つた。
[0124] (比較例 7)
実施例 3で使用したコールタールを真空蒸留し、軟ィ匕点 96. 6°Cのピッチ(f =0.
al
940、 QI4. 1重量%、 HSO. 1重量%)を得た。実施例 3において、この高軟化点の ピッチのみを使用した以外は、実施例 3と同様にしてメソカーボンマイクロビーズを調 製した。反応生成物 (反応油)の軟化点が 171. 0°Cと高力つたため、メソカーボンマ イク口ビーズの分離、洗浄が難しぐ分離および洗浄後においても、ビーズの周りに 一次 QIおよびピッチ成分が多く点在して 、た。
[0125] (比較例 8)
実施例 3において、コールタールのみを使用し、圧力 1. IMPaで熱処理した以外 は、実施例 3と同様にしてメソカーボンマイクロビーズを調製した。反応圧力を高くし ても、粒径分布、表面状態などは比較例 2とほとんど変わりはな力つた。
[0126] (実施例 5)
実施 f列 3【こお!ヽて、液状のコーノレターノレ(f =0. 951, QI3. 80重量0 /0、HS1. 4
al
重量%)と芳香族性の低い液状のエチレンボトム油(f 0· 755
a2 、 QIO. 0重量%、
HS6. 5重量%)とを混合したこと以外は、実施例 3と同様にしてメソカーボンマイクロ ビーズを調製した。
[0127] (実施例 6)
実施例 5において、コールタールとエチレンボトム油との重量割合を前者 Z後者 = 50Z50としたこと以外は、実施例 4と同様にしてメソカーボンマイクロビーズを調製し た。
[0128] (実施例 7)
実施例 5において、エチレンボトム油に代えて、液状のエチレンボトム油(f =0. 6
a2
53、 QIO. 0重量%、 HS21. 7重量%)を使用したこと以外は、実施例 5と同様にして 、比較的良好なメソカーボンマイクロビーズを調製した。なお、熱処理前の混合物に
は、スラッジは生成していなかった。また、コールタールとエチレンボトム油と前者 z 後者 =50Z50の重量割合で混合した混合物でもスラッジの生成は確認できなかつ た。さらに、前者 Ζ後者 =30Ζ70の重量割合で混合した混合物では、スラッジの生 成を確認した力 この混合物にキノリンを 5重量%添カ卩したものについてはスラッジの 生成は確認できな力つた。
[0129] (比較例 9)
実施例 5において、コールタールのみを使用した以外は、実施例 5と同様にしてメソ カーボンマイクロビーズを調製した。
[0130] (実施例 8)
実施例 5において、コールタールに代えて、液状のコールタール(f =0. 964、 QI
al
1. 00重量%、HS1. 3重量%)を用いたこと以外は、実施例 5と同様にして比較的良 好なメソカーボンマイクロビーズを調製した。
[0131] (比較例 10)
実施例 8において、コールタールのみを使用した以外は、実施例 8と同様にしてメソ カーボンマイクロビーズを調製した。
[0132] (実施例 9)
実施例 5において、コールタールに代えて、液状のコールタール(f =0. 959、 QI
al
5. 30重量%、HS1. 3重量%)を用いたこと以外は、実施例 5と同様にして比較的良 好なメソカーボンマイクロビーズを調製した。
[0133] (比較例 11)
実施例 9において、コールタールのみを使用した以外は、実施例 9と同様にしてメソ カーボンマイクロビーズを調製した。
[0134] (比較例 12)
実施例 3において、コールタールおよびエチレンボトム油に代えて、液状の減圧蒸 留残渣(アスファルト、 f =0. 286、 QIO. 0重量0 /0、HS76. 1重量0 /0)のみを使用し
a2
、 400°Cで熱処理した以外は、実施例 3と同様にしてメソカーボンマイクロビーズを調 製した。 QIが存在しな力つたため、生成物は球状物ではなく破砕物であった。また、 原料中の芳香族炭素分率が低 、ため、 3000°Cで黒鉛ィ匕したメソカーボンマイクロビ
ーズの結晶化度は低ぐ放電容量、初期効率も低かった。なお、熱処理温度 410°C 以上では反応系がコーキングして攪拌できなくなり熱処理できな力つた。
[0135] 結果を表 1および表 2に示す。
[0136] [表 1]
^
表 2
[0138] また、図 1に、実施例 3で得られた未焼成 MCMBの電子顕微鏡写真(285倍)を、 図 2に実施例 4で得られた未焼成 MCMBの電子顕微鏡写真(160倍)を、図 3に比 較例 2で得られた未焼成 MCMBの電子顕微鏡写真 (660倍)をそれぞれ示す。
[0139] 表からも明らかなように、比較例に対して、実施例では、粒度分布が狭ぐ球状で表 面が滑らかなメソカーボンマイクロビーズが収率よく得られることがわ力つた。