明 細 書 アルカリ蓄電池用正極、 及ぴアルカリ蓄電池 技術分野
本発明は、 アルカリ蓄電池用正極、 及びアルカリ蓄電池に関する。 背景技術
近年、アルカリ蓄電池は、ポータブル機器や携帯機器などの電源として、また、 電気自動車やハイブリッド自動車などの電源として注目されている。 このようなァ ルカリ蓄電池としては、 様々のものが提案されているが、 このうち、 水酸化エッケ ルを主体とした活物質からなる正極と、 水素吸蔵合金を主成分とした負極と、 水酸 化カリウムなどを含むアル力リ電角军液とを備える-ッケル水素二次電池は、 ェネル ギー密度が高く、 信頼性に優れた二次電池として急速に普及している。
ところで、 ニッケル水素二次電池の正極は、 電極の製法の違いによって、 焼結 式ニッケル電極とペースト式 (非焼結式) ニッケル電極との 2種類に大別される。 このうち、 焼結式ニッケル電極は、 穿孔鋼板 (パンチングメタル) の両面にニッケ ル微粉末を焼結した多孔性焼結基板の微細孔内に、 溶液含浸法などによって、 水酸 化ニッケルを析出させて製作される。 一方、 ペースト式ニッケル電極は、 高多孔度 の発泡ニッケル多孔体基板 (発泡ニッケル基板) の細孔内に、 水酸化ニッケルを含 む活物質を直接に充填して作製される。 このペースト式ニッケル電極は、 水酸化二 ッケルの充填密度が高く、 高エネルギー密度化が容易であるために、 現在では、 二 ッケル水素蓄電池用正極の主流となっている (例えば、 特許文献 1参照)。
特許文献 1 :特開昭 6 2 - 1 5 7 6 9号公報
特許文献 2 :特開 2 0 0 1— 3 1 3 0 3 8号公報
特許文献 3 :特開平 8— 3 2 1 3 0 3号公報
ペースト式ニッケル電極に用いられる発泡ニッケル基板は、 発泡ポリウレタン シートの樹脂骨格にニッケルめっきを施した後、 樹脂骨格を焼失させることにより
作製する。 このような手法により、 空隙率の高いニッケル基板を得ることができ、 水酸ィ匕ニッケルの充填密度を高めることが可能となるが、 樹脂骨格を焼失させるェ 程が必要なため、 製造コストが高いという課題があった。 また、 発泡ニッケル基板 の強度が弱いために、 充放電の繰り返しによって、 ニッケル電極 (正極) が大きく 膨張し、 変形してしまう虞がある。 具体的には、 活物質に含まれる水酸化ニッケル は、充放電に伴い、結晶構造が変化し、大きく膨張してしまう傾向にある。従って、 充放電に伴い、 水酸化ニッケル粒子が大きく膨張すると、 これにより、 発泡エッケ ル基板が大きく押し広げられるため、 ニッケル電極が大きく膨張してしまう。 そし て、 ニッケル電極が大きく膨張し、 変形してしまうと、 セパレータが圧縮され、 こ れに伴い、 セパレータ内の電解液が減少し、 内部抵抗の上昇ゃ充放電効率の低下を 弓 Iき起こす虞があった。 発明の開示
発明が解決しようとする課題
このような問題を解決するべく、 近年、 不織布などの樹脂骨格にニッケルめつ きを施し、 樹脂骨格を焼失させることなく作製したアルカリ蓄電池用正極基板 (集 電材)、 及ぴこれを用いた正極が提案されている (特許文献 2、 特許文献 3参照)。
特許文献 2では、 不織布を親水化処理した後、 これにニッケルめっきを施すこ とにより、ニッケルめっきの密着性が良好になることが開示されている。さらには、 ニッケルめっきは、 無電解めつき法により無電解ニッケルめっき膜を形成した後、 さらに、 その表面に、 電解めつき法により電解ニッケルめっき膜を形成したものが 好ましいと記載されている。 これにより、 集電性の高い正極基板を得ることができ るとされている。 しかしながら、 本発明者が検討した結果、 長期間にわたり正極基 板の集電性を良好とするためには、 ニッケルめっき量などの各種値を、 適切な範囲 に調整する必要があることが判明した。 また、 従来の発泡ニッケル基板を用いたァ ルカリ蓄電池と比較して、 高率放電特性が大きく低下していた。
特許文献 3では、 不織布に交絡処理や熱処理を施した後、 これにニッケルめつ きを施して集電体 (正極基板) を形成し、 この正極基板に活物質を充填し乾燥させ
3 た後、 口ール圧延を施して正極を作製することにより、 強度特性に優れた正極を得 ることができると記載されている。 さらに、 正極基板 (集電材) における不織布の 割合を、 3〜1 0重量。 /0と小さくする (換言すれば、 ニッケルめっきの割合を 9 0 〜9 7重量。 /0と大きくする) ことにより、 正極基板の空隙率を大きく確保し、 これ により、 活物質の充填密度を高め、 高容量の電池を得ることができることが開示さ れている。
しかしながら、 本発明者が調査したところ、 特許文献 3のアルカリ蓄電池 (正 極基板における不織布の割合を 3〜 1 0重量%とした) では、 充放電を繰り返すう ちに、 正極基板の集電性が大きく低下し、 これにより電池の充放電効率が大きく低 下してしまった。 電池内部を調査したところ、 集電体 (正極基板) のニッケルめつ き層の一部が剥離していた電池があった。 また、 集電体 (正極基板) のニッケルめ つき層に亀裂が生じていたものがあった。 これが原因で、 充放電効率が大きく低下 してしまったと考えられる。
本発明は、 かかる現状に鑑みてなされたものであって、 安価で、 且つ、 長期間 にわたり集電性が良好なアルカリ蓄電池用正極、 及び安価で、 且つ、 長期間にわた り充放電効率が良好なアルカリ蓄電池を提供することを目的とする。 さらには、 安 価で、 且つ、 電池の高率放電特性及びサイクル寿命特性を良好にすることが可能な アルカリ蓄電池用正極、 及び安価で、 且 ό、 高率放電特性が良好で、 しかも、 サイ クル寿命特性が良好なアル力リ蓄電池を提供することを目的とする。 課題を解決するための手段
その解決手段は、 樹脂からなり三次元網状構造を有する樹脂骨格と、 ニッケル からなり上記樹脂骨格を被覆するニッケル被覆層とを備え、 複数の孔が三次元に連 結した空隙部を有する正極基板と、水酸化二ッケル粒子を含む正極活物質であって、 上記正極基板の上記空隙部内に充填された正極活物質と、 を備え、.上記ニッケル被 覆層の平均厚みが、 0 . 5 /z m以上 5 /z m以下であり、 上記正極基板に占める上記 ニッケル被覆層の割合が、 3 0重量%以上 8 0重量%以下であって、 上記正極活物 質の充填量が、 上記正極基板の重量の 3倍以上 1 0倍以下であるアル力リ蓄電池用
正極である。
本発明のアルカリ蓄電池用正極では、 樹脂骨格と、 これを被覆するニッケル被 覆層とを有する正極基板を用いている。 すなわち、 本発明のアルカリ蓄電池用正極 では、 従来焼失させていた樹脂骨格を、 基板中に残存させるようにしている。 これ により、 樹脂骨格を焼失させる手間を省くことができるので、 安価となる。
さらには、 樹脂骨格を残存させることにより、 正極基板を強固にすることがで きる。 従来、 発泡ニッケルを正極基板として用いる場合には、 発泡ニッケル骨格の 強度が低いため、 充放電の繰り返しに伴い、 膨張変形してしまうことがあった。 こ れに対し、 本発明のアルカリ蓄電池用正極は、 樹脂骨格を残存させているため強固 となり、 充放電の繰り返しに伴う膨張変形を抑制することができる。 これにより、 アル力リ蓄電池用正極の寿命を長くすることができる。
ところで、 従来は、 発泡ポリウレタンなどの樹脂骨格を残存させておくと、 充 放電特性等の電池特性が低下してしまうため、 発泡ポリウレタンなどの樹脂骨格を 焼失させていた。 これに対し、 本発明では、 以下のように調整することで、 基板中 に樹脂骨格を残存させても、 アルカリ蓄電池用正極として適切な特性を得ることが できる。
具体的には、 樹脂骨格を有する正極基板では、 骨格をなす樹脂と、 これを被覆 するニッケル被覆層との物性 (伸び率、 強度など) が大きく異なるため、 充放電の 繰り返しにより、 ニッケル被覆層が剥離してしまう虞があった。 これに対し、 本発 明のアルカリ蓄電池用正極では、 ニッケル被覆層の平均厚みを、 5 i m以下として いる。 本発明者が検討したところ、 ニッケル被覆層の平均厚みを 5 πι以下とする ことにより、 両者の密着性が良好となり、 長期間にわたり、 ニッケル被覆層の剥離 を抑制できることがわかった。 従って、 ニッケル被覆層の平均厚みを 5 m以下と することで、 長期間にわたり、 正極基板の集電性を良好とすることが可能となる。
ところで、 従来の発泡ニッケル基板を用いた正極では、 集電基板として使用可 能な強度を確保するために、 少なくとも、 ニッケノレ骨格の平均厚みを 5 μ πιより大 きくしていた。 これに対し、 本発明のアルカリ蓄電池用正極では、'正極基板の-ッ ケル被覆層の平均厚みを 5 z m以下にできるため、 発泡ニッケル基板を用いた正極
00
5 と比較して、 ニッケル量を低減することができるので、 安価となる。
また、 ニッケル被覆層の厚みは、 薄くするほどコストを削減できるので好まし いが、 薄くし過ぎると、 正極基板の集電性が大きく低下してしまう。 これに対し、 本発明のアル力リ蓄電池用正極では、 二ッケル被覆層の平均厚みを 0 . 5 m以上 としている。これにより、正極基板に必要な集電性を確保することができ、適切に、 充放電を行うことができる。
ところで、 本発明のアルカリ蓄電池用正極では、 正極基板が樹脂骨格を有して いるため、 上述のように、 ニッケル被覆層の平均厚みを 0 . 5 μ πι以上 5 μ πι以下 としても、 正極基板に占める樹脂骨格の割合を大きくし過ぎると、 正極基板自身の 電気抵抗が大きくなつてしまう。 このため、 正極基板の集電性が大きく低下し、 ひ いては電池の充放電効率が低下してしまう虞がある。 そこで、 本発明のアルカリ蓄 電池用正極では、 正極基板に占めるニッケル被覆層の割合を、 3 0重量%以上 8 0 重量%以下とした (換言すれば、 樹脂骨格の割合を 2 0重量%以上 7 0重量%以下 とした)。正極基板に占めるニッケル被覆層の割合を 3 0重量%以上とすることによ り、 正極基板の電気抵抗を小さくすることができ、 集電 14を良好にすることができ る。
また、 正極基板に占める二ッケル被覆層の割合を多くするほど、 電気抵抗を小 さくできるめで好ましレ、が、ニッケルの割合を多くするということは、換言すれば、 樹脂骨格の割合を少なくする (樹脂骨格を細くする) ことになる。 従って、 正極基 板に占めるニッケル被覆層の割合を多くし過ぎる (具体的には、 8 0重量%を上回 る) と、 正極基板自身の強度が大きく低下してしまい、 ニッケル被覆層に亀裂が発 生するなどの不具合が生じ、 これにより集電性が大きく低下してしまう虞がある。 これに対し、 本発明のアルカリ蓄電池用正極では、 正極基板に占めるニッケル被覆 層の割合を 8 0重量%以下に制限しているため、 ニッケル被覆層に亀裂が発生する などの不具合が生じる虞がなく、 集電性を良好とすることができる。
以上に説明したように、 ニッケル被覆層の平均厚みを 0 . 5 i m以上 5 m以 下し、 且つ、 正極基板に占めるニッケル被覆層の割合を 3 0重量%以上 8 0重量% 以下とすることにより、 長期間にわたり、 正極基板の集電性を良好とすることがで
きる。 さらには、 この正極基板 (正極) を用いることで、 電池の充放電効率を良好 とすることが可能となる。
その上、 本発明のアルカリ蓄電池用正極では、 正極活物質の充填量を、 正極基 板の重量の 3倍以上 1 0倍以下としている。 活物質の充填量を正極基板の重量の 3 倍以上とすることで、 エネルギー密度を高くすることができる。 従って、 本発明の アル力リ蓄電池用正極を用いることで、 高容量のアル力リ蓄電池を得ることが可能 となる。 しかも、 正極基板重量を活物質重量の 1 / 3以下に低減することになるの で、 正極ひいては電池を軽量ィ匕できる点でも好ましい。
また、 活物質の充填量を多くするほど、 エネルギー密度が高ぐなり、 電池容量 を大きくすることが可能となる点で好ましレ、。ところが、本発明者が検討した結果、 活物質の充填量を正極基板重量の 1 0倍より多くすると、 活物質に対するニッケル
(樹脂骨格を被覆するニッケルめっき) の割合が少なくなり過ぎて、 集電性が大き く低下してしまい、 このために、 電池の充放電効率 (活物質の利用率) も大きく低 下してしまうことがわかった。 これに対し、 本発明のアルカリ蓄電池用正極では、 活物質の充填量を正極基板重量の 1 0倍以下としているため、 集電性を良好とする ことができ、 ひいては、 電池の充放電効率 (活物質の利用率) も良好とすることが できる。
さらに、 上記のアルカリ蓄電池用正極であって、 前記樹脂骨格は、 発泡樹脂、 不織布、 及ぴ織布のいずれかであるアルカリ蓄電池用正極であると良い。
発泡樹脂、 不織布、 及び織布は、 いずれも、 三次元網状構造をなし、 複数の孔 が三次元に連結した空隙部を有している。 しかも、 空隙部の大きさ (孔径) を所定 の大きさに調整することが比較的容易である。 従って、 発泡榭脂、 不織布、 及び織 布のいずれかを樹脂骨格として用いることにより、 所定量の正極活物質を適切に充 填することが可能となる。 このうち、 不織布及び織布は、 その繊維の太さや本数を 調整することにより空隙部の大きさ (孔径) を自由に調整できるため、 特に、 空隙 部の大きさ (孔径) の調整が容易となるので好ましい。
さらに、 上記いずれかのアルカリ蓄電池用正極であって、 前記樹脂骨格は、 ポ リプロピレン、 ポリエチレン、 ポリビニノレアノレコーノレ、 ポリエステル、 ナイロン、
ポリメチルペンテン、 ポリスチレン、 及びポリテトラフルォロエチレンから選択し た少なくとも 1種類の樹月旨からなるアルカリ蓄電池用正極であると良い。
本発明のアルカリ蓄電池用正極では、 前述のように、 樹脂骨格をニッケル被覆 層によって被覆するため、 樹脂骨格が露出する可能性は低いが、 大きな基板を切断 して複数の正極基板を製造する場合には、 切断面から樹脂骨格が露出する可能性が ある。 樹脂骨格が露出した正極 (正極基板) をアルカリ蓄電池に用いる場合には、 電解液が樹脂骨格に触れるため、 樹脂骨格の耐アルカリ性が要求される。
これに対し、 本発明のアルカリ蓄電池用正極では、 ポリプロピレン、 ポリェチ レン、 ポリビニルアルコール、 ポリエステル、 ナイロン、 ポリメチルペンテン、 ポ リスチレン、 及びポリテトラフルォロエチレンから選択した少なくとも 1種類の樹 脂により、 正極基板の樹脂骨格を形成している。 これらの樹脂は耐アルカリ性に優 れているため、 仮に、 樹脂骨格が露出していたとしても、 アルカリ電解液の影響を 受けることがない。 従って、 本発明のアルカリ蓄電池用正極は、 アルカリ電解液の 影響で、 強度が低下する等の不具合が生じる虞がない。
なお、 樹脂骨格は、 上記の樹脂のうち 1種のみによって形成しても良いし、 2 種以上の榭脂を混合 (例えば、 2種以上の異なる繊維によって不織布を作製) して 形成しても良い。
さらに、 上記いずれかのアルカリ蓄電池用正極であって、 前記正極基板の前記 空隙部をなす前記複数の孔の平均孔径は、 1 5 // m以上 4 5 0 ^ m以下であるアル カリ蓄電池用正極であると良い。
アル力リ蓄電池では、正極活物質とニッケル被覆層との接触面積が大きいほど、 集電十生が良好となるため、 充放電効率 (活物質の利用率) が良好となる。 従って、 正極基板の空隙部をなす孔の孔径が小さいほど、 正極活物質とニッケル被覆層とが 接近するので、 両者の接触面積が大きくなる。 これにより、 集電性が良好となるた め、電池の充放電効率(活物質の利用率)が良好となると考えられる。逆に言うと、 正極基板の空隙部をなす孔の孔径を大きくするほど、 集電性が低下して、 電池の充 放電効率 (活物質の利用率) が低下すると考えられる。 そこで、 本努明者が検討し た結果、 平均孔径を 4 5 0 i mより大きくすると、 集電性が低下して、 電池の充放
電効率 (活物質の利用率) が大きく低下してしまうことが判明した。
そこで、 本発明のアルカリ蓄電池用正極では、 正極基板の空隙部をなす複数の 孔の平均孔径を、 1 5 μ m以上 4 5 0 μ m以下とした。 平均孔径を 4 5 0 μ m以下 とすることで、 集電性が良好となり、 ひいては、 電池の充放電効率 (活物質の利用 率) を良好とすることができる。 また、 一般に用いられる正極活物質の平均粒径は 1 0 μ m程度であるため、 正極基板の空隙部の平均孔径を 1 5 μ m以上とすること で、 正極活物質を、 空隙部内に適切に配置させることができる。
なお、 空隙部をなす複数の孔の平均孔径は、 例えば、 水銀ポロシメータを用い て測定した孔径分布に基づいて算出することができる。
さらに、 上記いずれかのアルカリ蓄電池用正極であって、 前記正極活物質は、 亜鉛及びマグネシウムの少なくともいずれかを、 前記水酸化ニッケル粒子内に固溶 状態で含むアル力リ蓄電池用正極であると良い。
本発明のアルカリ蓄電池用正極では、 正極基板が樹脂骨格を有している。 この ような正極基板では、 骨格をなす樹脂と、 これを被覆する二ッケル被覆層との物性 (膨張率、 強度など) が大きく異なるため、 正極基板の膨張 '収縮により、 ニッケ ル被覆層に亀裂が生じたり、 ニッケル被覆層が剥離してしまう虡がある。 従って、 このような不具合を避けるためには、 正極基板の膨張 ·収縮をできる限り抑制する ことが好ましい。
ところで、 水酸化ニッケルの結晶は、 充放電に伴い、 結晶構造が変化し、 大き く膨張してしまう傾向にある。 従って、 正極基板の空隙部内に充填されている正極 活物質に含まれる水酸化ニッケル粒子が、 充放電に伴い大きく膨張すると、 これに より、 正極基板が押し広げられて大きく膨張してしまう。 このために、 上述のよう に、 正極基板のエッケノレ被覆層に亀裂が生じたり、 ニッケル被覆層が剥離してしま うことがある。
これに対し、 本発明のアルカリ蓄電池用正極では、 正極活物質が、 亜鉛及びマ グネシゥムの少なくともいずれかを、 水酸化ニッケル粒子内に固溶状態で含んでい る。 亜鉛及びマグネシゥムを水酸化-ッケル結晶内に固溶状態で含有させることに より、 充放電に伴う結晶構造の変化を抑制することができ、 ひいては、 充放電に伴
う結晶の膨張を抑制することができる。 これにより、 充放電に伴う正極基板の膨張 を抑制することができるので、 二ッケル被覆層に亀裂 ·剥離が生じてしまう虞を小 さくできる。
さらに、 上記いずれかのアルカリ蓄電池用正極であって、 前記ニッケル被覆層 は、 電気めつき法、 無電解めつき法、 及び気相蒸着法のいずれかの手法により、 前 記樹脂骨格の表面に形成されてなるアル力リ蓄電池用正極であると良い。
本発明のアルカリ蓄電池用正極では、 ニッケル被覆層を、 電気めつき法、 無電 解めつき法、 及び気相蒸着法のいずれかの手法により、 樹脂骨格の表面に形成して いる。 上記いずれかの手法により形成したニッケル被覆層は、 樹脂骨格の表面を均 一に被覆することができるので、 集電性を良好にすることができ、 ひいては、 電池 の充放電効率 (活物質の利用率) も良好にすることができる。
他の解決手段は、 上記いずれかのアル力リ蓄電池用正極を有するアル力リ蓄電 池である。
本発明のアルカリ蓄電池では、 上述したいずれかの正極を有している。 すなわ ち、 本発明のアルカリ蓄電池では、 樹脂骨格を有する正極基板を用いているため、 正極基板ひいては正極が強固となる。 従って、 正極 (正極基板) の耐久性が向上す るので、 アルカリ蓄電池の寿命を向上させることができる。 また、 樹脂骨格を焼失 させる手間を省くことができるので、 安価となる。
さらに、 この正極基板では、 ニッケル被覆層の平均厚みを 0 . 5 μ m以上 5 μ m以下にすると共に、 正極基板に占めるニッケル被覆層の割合を 3 0重量%以上 8 0重量%以下としている。 これにより、 長期間にわたり、 正極の集電性を良好とす ることができ、 電池の充放電効率を良好とすることができる。
他の解決手段は、 樹脂からなり三次元網状構造を有する樹脂骨格と、 ニッケル からなり上記樹脂骨格を被覆するニッケル被覆層とを備え、 複数の孔が三次元に連 結した空隙部を有する正極基板と、水酸化二ッケル粒子を含む正極活物質であって、 上記正極基板の上記空隙部内に充填された正極活物質と、 を備え、 上記ニッケル被 覆層の平均厚みは、 0 . 5 μ πι以上 5 m以下であり、 上記正極基板の上記空隙部 内には、 上記正極活物質に加えて、 金属コバルト、 及ぴ y型の結晶構造を有するォ
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10 キシ水酸化コバルトの少なくともいずれかを含むアル力リ蓄電池用正極である。
本発明のアルカリ蓄電池用正極では、 樹脂骨格と、 これを被覆するニッケル被 覆層とを有する正極基板を用いている。 すなわち、 本発明のアルカリ蓄電池用正極 では、 従来焼失させていた樹脂骨格を、 基板中に残存させるようにしている。 これ により、 榭脂骨格を焼失させる手間を省くことができるので、 安価となる。
さらには、 樹脂骨格を残存させることにより、 正極基板を強固にすることがで きる。 このため、 充放電の繰り返しに伴う、 正極基板の膨張変形を抑制することが できる。 これにより、 アルカリ蓄電池用正極の寿命を長くすることができる。
ところで、 前述のように、 従来は、 発砲ポリウレタンなどの樹脂骨格を残存さ せておくと、 充放電特性等の電池特性が低下してしまうため、 発砲ポリウレタンな どの樹脂骨格を焼失させていた。 これに対し、 本発明では、 以下のように調整する ことで、 基板中に樹脂骨格を残存させても、 アルカリ蓄電池用正極として適切な特 性を得ることができる。
具体的には、 樹脂骨格を有する正極基板では、 骨格をなす樹脂と、 これを被覆 するニッケル被覆層との物性 (伸び率、 強度など) が大きく異なるため、 充放電の 繰り返しにより、 ニッケル被覆層が剥離してしまう虞があった。 これに対し、 本発 明のアル力リ蓄電池用正極では、 ニッケル被覆層の平均厚みを、 5 μ m以下として いる。 本発明者が検討したところ、 ニッケル被覆層の平均厚みを 5 μ πι以下とする ことにより、 両者の密着性が良好となり、 長期間にわたり、 ニッケル被覆層の剥離 を抑制できることがわかった。 従って、 ニッケル被覆層の平均厚みを 5 / m以下と することで、 長期間にわたり、 正極基板の集電性を良好とすることが可能となる。
ところで、 従来の発泡ニッケル基板を用いた正極では、 集電基板として使用可 能な強度を確保するために、 少なくとも、 二ッケル骨格の平均厚みを 5 mより大 きくしていた。 これに対し、 本発明のアルカリ蓄電池用正極では、 正極基板の-ッ ケル被覆層の平均厚みを 5 μ πι以下にできるため、 発泡ニッケル基板を用いた正極 と比較して、 ニッケル量を低減することができるので、 安価となる。
また、 ニッケル被覆層の厚みは、 薄くするほどコストを削減できるので好まし いが、 薄くし過ぎると、 正極基板の集電性が大きく低下してしまう。 これに対し、
本発明のアル力リ蓄電池用正極では、 二ッケル被覆層の平均厚みを 0 . 5 μ m以上 としている。これにより、正極基板に必要な集電性を確保することができ、適切に、 充放電を行うことができる。
従って、 ニッケル被覆層の平均厚みを、 0 . 5 μ πι以上 5 ^u m以下とすること により、 電池のサイクル寿命特性を良好にすることが可能となる。
ところで、 本発明のアルカリ蓄電池用正極のように、 正極基板に樹脂骨格を残 存させ、 しかも、 正極基板のニッケル被覆層の平均厚みを 5 /z m以下に薄くした場 合には、 正極基板自身の電気抵抗は、 従来の発泡ニッケル基板に比べて大きくなる 傾向にある。 このため、 従来の発泡ニッケル基板を用いた場合と比較して、 特に、 電池の高率放電特性が低下してしまう虞がある。
これに対し、 本発明のアルカリ蓄電池用正極では、 正極活物質に加えて、 金属 コバルト、 及ぴ 型の結晶構造を有するォキシ水酸化コバルトの少なくともいずれ かを含有させている。 金属コバルト、 及ぴ y型の結晶構造を有するォキシ水酸化コ パルトは、 いずれも導電性が高いため、 これらを含有させることにより、 良好な導 電性ネットワークを形成することができ、 高率放電特性を良好とすることが可能と なる。
さらに、 上記のアルカリ蓄電池用正極であって、 前記正極基板に占める前記二 ッケル被覆層の割合は、 3 0重量%以上 8 0重量%以下であるアル力リ蓄電池用正 極であると良い。
樹脂骨格を有する正極基板では、 前述のように、 ュッケル被覆層の平均厚みを
0 . 5 μ ηι以上 5 μ πι以下としても、 正極基板に占める樹脂骨格の割合を大きくし 過ぎた場合には、 正極基板自身の電気抵抗が大きくなつてしまう。 このため、 正極 基板の集電性が低下し、 ひいては電池の充放電効率が低下してしまう虞がある。 そ こで、 本発明のアルカリ蓄電池用正極では、 正極基板に占めるニッケル被覆層の割 合を、 3 0重量%以上 8 0重量%以下とした (換言すれば、 樹脂骨格の割合を 2 0 重量%以上 7 0重量%以下とした)。正極基板に占めるニッケル被覆層の割合を 3 0 重量%以上とすることにより、 正極基板の電気抵抗を小さくすることができ、 集電 性を良好にすることができる。
また、 正極基板に占めるニッケル被覆層の割合を多くするほど、 電気抵抗を小 さくできるので好ましいが、ニッケルの割合を多くするということは、換言すれば、 樹月旨骨格の割合を少なくする (樹脂骨格を細くする) ことになる。 従って、 正極基 板に占めるニッケル被覆層の割合を多くし過ぎる (具体的には、 8 0重量%を上回 る) と、 正極基板自身の強度が大きく低下してしまい、 ニッケル被覆層に亀裂が発 生するなどの不具合が生じ、 これにより集電性が大きく低下してしまう虞がある。 これに対し、 本発明のアルカリ蓄電池用正極では、 正極基板に占めるニッケル被覆 層の割合を 8 0重量%以下に制限しているため、 ニッケル被覆層に亀裂が発生する などの不具合が生じる虞がなく、 集電性を良好とすることができる。
さらに、 上記いずれかのアルカリ蓄電池用正極であって、 前記樹脂骨格は、 発 泡樹脂、 不織布、 及ぴ織布のいずれかであるアルカリ蓄電池用正極であると良い。
発泡樹脂、 不織布、 及び織布は、 いずれも、 三次元網状構造をなし、 複数の孔 が三次元に連結した空隙部を有している。 しかも、 空隙部の大きさ (孔径) を所定 の大きさに調整することが比較的容易である。 従って、 発泡樹脂、 不織布、 及び織 布のいずれかを樹脂骨格として用いることにより、 所定量の正極活物質を適切に充 填することが可能となる。 このうち、 不織布及び織布は、 その繊維の太さや本数を 調整することにより空隙部の大きさ (孔径) を自由に調整できるため、 特に、 空隙 部の大きさ (孔径) の調整が容易となるので好ましい。
さらに、 上記いずれかのアルカリ蓄電池用正極であって、 前記樹脂骨格は、 ポ リプロピレン、 ポリエチレン、 ポリビュルアルコール、 ポリエステル、 ナイロン、 ポリメチルペンテン、 ポリスチレン、 及びポリテトラフルォロエチレンから選択し た少なくとも 1種類の樹脂からなるアルカリ蓄電池用正極であると良い。
本発明のアルカリ蓄電池用正極では、 前述のように、 樹脂骨格をニッケル被覆 層によって被覆するため、 樹脂骨格が露出する可能性は低いが、 大きな基板を切断 して複数の正極基板を製造する場合には、 切断面から樹脂骨格が露出する可能性が ある。 樹脂骨格が露出した正極 (正極基板) をアルカリ蓄電池に用いる場合には、 電解液が樹脂骨格に触れるため、 樹脂骨格の耐アルカリ性が要求される。
これに対し、 本発明のアルカリ蓄電池用正極では、 ポリプロピレン、 ポリェチ
レン、 ポリビニルアルコール、 ポリエステル、 ナイロン、 ポリメチルペンテン、 ポ リスチレン、 及びポリテトラフルォロエチレンから選択した少なくとも 1種類の樹 脂により、 正極基板の樹脂骨格を形成している。 これらの樹脂は耐アルカリ性に優 れているため、 仮に、 樹脂骨格が露出していたとしても、 アルカリ電解液の影響を 受けることがない。 従って、 本発明のアルカリ蓄電池用正極は、 アルカリ電解液の 影響で、 強度が低下する等の不具合が生じる虞がなレ、。
なお、 樹脂骨格は、 上記の樹脂のうち 1種のみによって形成しても良いし、 2 種以上の樹脂を混合 (例えば、 2種以上の異なる繊維によって不織布を作製) して 形成しても良い。
さらに、 上記いずれかのアルカリ蓄電池用正極であって、 前記金属コバルト、 及び前記 γ型の結晶構造を有するォキシ水酸化コバルトの少なくともいずれかを、 前記正極活物質の 1 0 0重量部に対し、 2〜 1 0重量部の割合で含むアル力リ蓄電 池用正極であると良い。
本発明のアルカリ蓄電池用正極では、 金属コバルト、 及ぴ γ型の結晶構造を有 するォキシ水酸ィ匕コバルトの少なくともいずれかを、 正極活物質の 1 0 0重量部に 対し、 2〜1 0重量部の割合で含有させている。正極活物質の 1 0 0重量部に対し、 金属コバルト、 及び γ型の結晶構造を有するォキシ水酸化コバルトの少なくともい ずれかを、 2重量部以上含有させることにより、 優れた集電性を得ることができる ので、 高率放電における正極活物質の利用率も、 良好とすることができる。 また、 1 0重量部以下に制限することにより、 正極活物質 (水酸化二ッケル) の充填量の 低下を抑制し、 正極のエネルギー密度の低下を抑制することができる。
さらに、 上記いずれかのアル力リ蓄電池用正極であって、 前記 γ型の結晶構造 を有するォキシ水酸化コバルトは、 前記正極活物質の表面を被覆してなるアル力リ 蓄電池用正極であると良い。
本発明のアルカリ蓄電池用正極では、 γ型の結晶構造を有するォキシ水酸化コ バルトを、 正極活物質の表面に被覆させている。 これにより、 γ型の結晶構造を有 するォキシ水酸ィヒコバルトを、 正極内で均一に分散させることができるので、 集電 性がさらに良好となり、 電池の高率放電特性をより一層良好とすることが可能とな
る。
さらに、 上記いずれかのアルカリ蓄電池用正極であって、 前記正極活物質は、 亜鉛及びマグネシゥムの少なくともレ、ずれかを、 前記水酸化-ッケル粒子の結晶内 に固溶状態で含むアル力リ蓄電池用正極であると良い。
本発明のアルカリ蓄電池用正極では、 正極基板が樹脂骨格を有している。 この ような正極基板では、 骨格をなす樹脂と、 これを被覆するニッケル被覆層との物性 (伸び率、 強度など) が大きく異なるため、 正極基板の膨張 ·収縮により、 ニッケ ル被覆層に亀裂が生じたり、 ニッケル被覆層が剥離してしまう虞がある。 従って、 このような不具合を避けるためには、 正極基板の膨張 ·収縮をできる限り抑制する ことが好ましい。
ところで、 水酸化ニッケルの結晶は、 充放電に伴い、 結晶構造が変化し、 大き く膨張してしまう傾向にある。 従って、 正極基板の空隙部内に充填されている正極 活物質に含まれる水酸化ニッケル粒子が、 充放電に伴い大きく膨張すると、 これに より、 正極基板が押し広げられて大きく膨張してしまう。 このために、 上述のよう に、 正極基板のニッケル被覆層に亀裂が生じたり、 ニッケル被覆層が剥離してしま つこと力める。
これに対し、 本発明のアルカリ蓄電池用正極では、 正極活物質が、 亜鈴及びマ グネシゥムの少なくともいずれかを、 水酸化ニッケル粒子内に固溶状態で含んでい る。 亜鉛及びマグネシゥムを水酸化二ッケル結晶内に固溶状態で含有させることに より、 充放電に伴う結晶構造の変化を抑制することができ、 ひいては、 充放電に伴 う結晶の膨張を抑制することができる。 これにより、 充放電に伴う正極基板の膨張 を抑制することができるので、 ニッケル被覆層に亀裂 ·剥離が生じてしまう虡を小 さくできる。
さらに、 上記いずれかのァ カリ蓄電池用正極であって、 前記正極基板の前記 空隙部内には、 前記正極活物質に加えて、 酸化ィットリゥム及び酸化亜鉛の少なく ともいずれかを含むアル力リ蓄電池用正極であると良い。
アルカリ蓄電池用正極では、 充電時の末期に、 副反応として、 ·酸素発生反応が 進行する。 特に、 高温状態においては、 酸素発生反応が進行し易くなるので、 これ
により、 主反応である水酸ィヒニッケルの反応が阻害され、 その結果、 活物質の利用 率が低下することにより、 充電効率が低下してしまうことが知られている。 本発明 者が調査したところ、 樹脂骨格を有する正極基板を用いる場合には、 発泡ニッケル 基板を用いる場合と比較して、 高温状態における電池の充電効率が、 若干低下して しまうことが判明した。
そこで、 本発明のアルカリ蓄電池用正極では、 正極活物質の他に、 酸化イット リゥム及び酸化亜鉛の少なくともいずれかを含有させることにした。 これにより、 酸素発生過電圧を高めることができるので、 高温状態においても、 充電末期の酸素 発生反応を抑制し、 充電効率を良好とすることが可能となる。
なお、 酸ィヒイットリウム及び酸ィヒ亜鉛の両者を含有させれば、 より一層、 酸素 発生過電圧を高めることができ、優れた充電効率を得ることができるので好ましレ、。
さらに、 上記いずれかのアルカリ蓄電池用正極であって、 前記ニッケル被覆層 は、 電気めつき法、 無電解めつき法、 及び気相蒸着法のいずれかの手法により、 前 記樹脂骨格の表面に形成されてなるアル力リ蓄電池用正極であると良い。
本発明のアルカリ蓄電池用正極では、 ニッケル被覆層を、 電気めつき法、 無電 解めつき法、 及び気相蒸着法のいずれかの手法により、 榭脂骨格の表面に形成して いる。 上記いずれかの手法により形成したニッケル被覆層は、 樹脂骨格の表面を均 一に被覆することができる'ので、 集電 ι·生を良好にすることができ、 ひいては、 電池 の高率放電特'11生を良好にすることができる。
他の解決手段は、 上記いずれかのアル力リ蓄電池用正極を有するアル力リ蓄電 池である。
本発明のアルカリ蓄電池では、 上述したいずれかの正極を有している。 すなわ ち、 本発明のアルカリ蓄電池では、 樹脂骨格を有する正極基板を用いているため、 正極基板ひいては正極が強固となる。 従って、 正極 (正極基板) の耐久性が向上す るので、 アルカリ蓄電池の寿命を向上させることができる。 また、 樹脂骨格を焼失 させる手間を省くことができるので、 安価となる。
さらに、 この正極基板では、 ニッケル被覆層の平均厚みを 0 .· 5 i m以上 5 μ m以下としている。 これにより、 長期間にわたり、 ニッケル被覆層の剥離を抑制す
ることができるので、 長期間にわたり、 充放電を適切に行うことができる。 すなわ ち、 電池のサイクル寿命特性を良好にすることができる。 その上、 正極に、 正極活 物質に加えて、 金属コバルト、 及ぴ T型の結晶構造を有するォキシ水酸化コバルト の少なくともいずれかを含有させている。 これらを含有させることにより、 良好な 導電性ネットワークを形成することができ、 高率放電特性を良好とすることが可能 となる。
他の解決手段は、 樹脂からなり三次元網状構造を有する樹脂骨格と、 ニッケル からなり上記樹脂骨格を被覆する二ッケル被覆層とを備え、 複数の孔が三次元に連 結した空隙部を有する正極基板と、水酸化二ッケル粒子を含む正極活物質であって、 上記正極基板の上記空隙部内に充填された正極活物質と、 を備え、 上記ニッケル被 覆層の平均厚みは、 0 . 5 μ m以上 5 μ m以下であり、 上記正極基板の上記空隙部 内には、 上記正極活物質に加えて、 金属コバルト、 及び ]3型の結晶構造を有するォ キシ水酸化コバルトを含むアル力リ蓄電池用正極である。
本発明のアル力リ蓄電池用正極では、 樹脂骨格と、 これを被覆する二ッケル被 覆層とを有する正極基板を用いている。 すなわち、 本発明のアルカリ蓄電池用正極 では、 従来焼失させていた樹脂骨格を、 基板中に残存させるようにしている。 これ により、 樹脂骨格を焼失させる手間を省くことができるので、 安価となる。
さらには、 樹脂骨格を残存させることにより、 正極基板を強固にすることがで きる。 従来、 発泡ニッケルを正極基板として用いる場合には、 発泡ニッケル骨格の 強度が低いため、 充放電の繰り返しに伴い、 膨張し変形してしまうことがあった。 これに対し、 本発明のアルカリ蓄電池用正極は、 樹脂骨格を残存させているため強 固となり、充放電の繰り返しに伴う膨張変形を抑制することができる。これにより、 アル力リ蓄電池用正極の寿命を長くすることができる。
ところで、 従来は、 発砲ポリウレタンなどの樹脂骨格を残存させておくと、 充 放電特性等の電池特性が低下してしまうため、 発砲ポリウレタンなどの樹脂骨格を 焼失させていた。 これに対し、 本発明では、 以下のように調整することで、 基板中 に樹脂骨格を残存させても、 アルカリ蓄電池用正極として適切な特性を得ることが できる。
具体的には、 樹脂骨格を有する正極基板では、 骨格をなす樹脂と、 これを被覆 するニッケル被覆層との物性 (伸び率、 強度など) が大きく異なるため、 充放電の 繰り返しにより、 ニッケル被覆層が剥離してしまう虞があった。 これに対し、 本発 明のアル力リ蓄電池用正極では、 ニッケル被覆層の平均厚みを、 5 μ m以下として いる。 本発明者が検討したところ、 ニッケル被覆層の平均厚みを 5 / m以下とする ことにより、 両者の密着性が良好となり、 長期間にわたり、 ニッケル被覆層の剥離 を抑制できることがわかった。 従って、 ニッケル被覆層の平均厚みを 5 以下と することで、 長期間にわたり、 正極基板の集電性を良好とすることが可能となる。
ところで、 従来の発泡ニッケル基板を用いた正極では、 集電基板として使用可 能な強度を確保するために、 少なくとも、 ニッケル骨格の平均厚みを 5 より大 きくしていた。 これに対し、 本発明のアルカリ蓄電池用正極では、 正極基板のニッ ケル被覆層の平均厚みを 5 μ m以下にできるため、 発泡ニッケル基板を用いた正極 と比較して、 ニッケル量を低減することができるので、 安価となる。
また、 ニッケル被覆層の厚みは、 薄くするほどコストを削減できるので好まし いが、 薄くし過ぎると、 正極基板の集電性が大きく低下してしまう。 これに対し、 本発明のアル力リ蓄電池用正極では、 ニッケル被覆層の平均厚みを 0 . 5 μ m以上 とすることで、 正極基板に必要な集電性を確保することができ、 適切に、 充放電を 行うことができる。
従って、 -ッケル被覆層の平均厚みを、 0 . 5 以上 5 / m以下とすること により、 電池のサイクル寿命特性を良好にすることが可能となる。
ところで、 本発明のアルカリ蓄電池用正極のように、 正極基板に樹脂骨格を残 存させ、 しかも、 正極基板のニッケル被覆層の平均厚みを 5 μ πι以下に薄くした場 合には、 正極基板自身の電気抵抗は、 従来の発泡ニッケル基板に比べて大きくなる 傾向にある。 このため、 従来の発泡ニッケル基板を用いた場合と比較して、 特に、 電池の高率放電特性が低下してしまう虞がある。 これに対し、 本発明のアルカリ蓄 電池用正極では、 正極活物質に加えて、 金属コバルトを含有させている。 金属コバ ルトは導電 1~生が高いため、 これを含有させることにより、 良好な導電性ネットヮ クを形成することができ、 高率放電特性を良好とすることが可能となる。
また、 本発明のアル力リ蓄電池用正極のように、 正極基板に樹脂骨格を残存さ せる場合には、正極基板の製造過程において、ニッケルめっきを施した樹脂基板を、 高温で焼鈍すことが困難となる。 このため、 ニッケルの結晶を十分に成長させるこ とができず、 ニッケルの結晶サイズが小さくなつてしまう。 ニッケルの結晶サイズ が小さい場合には、 充電時の末期に副反応として生じる酸素の影響で、 ニッケルの 腐食 (酸化による不働態化) が進行しやすくなる傾向がある。 このため、 充放電を 繰り返すと、 ニッケルの腐食が進行してゆき、 正極基板の集電性の低下や、 電解液 の減少 ·枯渴などの不具合が生じ、 サイクル寿命特性が著しく低下してしまう虞が あった。
これに対し、 本発明のアルカリ蓄電池用正極では、 金属コバルトに加え、 さら に、 J3型の結晶構造を有するォキシ水酸化コバルトを含有させている。 本発明者が 調査したところ、 金属コバルトと j8型の結晶構造を有するォキシ水酸化コパルトと を含有させることにより、 充電時の酸素発生過電圧を高めることができることが判 明した。 これにより、 充電時における酸素発生反応を抑制し、 ニッケルの腐食 (酸 化による不働態化) を抑制することができる。 従って、 本発明のアルカリ蓄電池用 正極を用いることにより、電池のサイクル寿命特性を良好とすることが可能となる。
以上より、 本発明のアルカリ蓄電池用正極では、 金属コバルト、 及び ]3型の結 晶構造を有するォキシ水酸化コパルトを含有させることにより、 電池の高率放電特 性及びサイクル寿命特性を、 共に良好とすることが可能となる。
なお、 本発明者が調査した結果、 金属コバルト、 及び i3型の結晶構造を有する ォキシ水酸化コバルトを、 それぞれ単独で含有させた場合は、 充電時の酸素発生過 電圧を高めることができないことがわかっている。
さらに、 上記のアルカリ蓄電池用正極であって、 前記正極基板に占める前記二 ッケル被覆層の割合は、 3 0重量%以上 8 0重量。/。以下であるアル力リ蓄電池用正 極であると良い。
樹月旨骨格を有する正極基板では、 前述のように、 ニッケル被覆層の平均厚みを 0 . 5 μ ιη以上 5 / m以下としても、 正極基板に占める樹脂骨格の割合を大きくし 過ぎた場合には、 正極基板自身の電気抵抗が大きくなつてしまう。 このため、 正極
基板の集電性が低下し、 ひいては電池の充放電効率が低下してしまう虞がある。 そ こで、 本発明のアル力リ蓄電池用正極では、 正極基板に占める二ッケル被覆層の割 合を、 3 0重量%以上 8 0重量%以下とした (換言すれば、 樹脂骨格の割合を 2 0 重量%以上 7 0重量%以下とした)。正極基板に占めるニッケル被覆層の割合を 3 0 重量%以上とすることにより、 正極基板の電気抵抗を小さくすることができ、 集電 性を良好にすることができる。
また、 正極基板に占める二ッケル被覆層の割合を多くするほど、 電気抵抗を小 さくできるので好ましいが、二ッケルの割合を多くするということは、換言すれば、 樹脂骨格の割合を少なくする (榭脂骨格を細くする) ことになる。 従って、 正極基 板に占めるニッケル被覆層の割合を多くし過ぎる (具体的には、 8 0重量%を上回 る) と、 正極基板自身の強度が大きく低下してしまい、 ニッケル被覆層に亀裂が発 生するなどの不具合が生じ、 これにより集電性が大きく低下してしまう虞がある。 これに対し、 本発明のアルカリ蓄電池用正極では、 正極基板に占めるニッケル被覆 層の割合を 8 0重量%以下に制限しているため、 ニッケル被覆層に亀裂が発生する などの不具合が生じる虞がなく、 集電性を良好とすることができる。
さらに、 上記いずれかのアルカリ蓄電池用正極であって、 前記樹脂骨格は、 発 泡樹脂、 不織布、 及び織布のいずれかであるアルカリ蓄電池用正極であると良い。
発泡樹脂、 不織布、 及び織布は、 いずれも、 三次元網状構造をなし、 複数の孔 が三次元に連結した空隙部を有している。 しかも、 空隙部の大きさ (孔径) を所定 の大きさに調整することが比較的容易である。 従って、 発泡樹脂、 不織布、 及び織 布のレ、ずれかを樹脂骨格として用いることにより、 所定量の正極活物質を適切に充 填することが可能となる。 このうち、 不織布及び織布は、 その繊維の太さや本数を 調整することにより空隙部の大きさ (孔径) を自由に調整できるため、 特に、 空隙 部の大きさ (孔径) の調整が容易となるので好ましい。
さらに、 上記のアルカリ蓄電池用正極であって、 前記樹脂骨格は、 不織布であ るアル力リ蓄電池用正極であると良レ、。
不織布は、その繊維の太さや本数を調整することにより空隙部の大きさ (孔径) を自由に調整できるため、 特に、 空隙部の大きさ (孔径) の調整が容易となるので
好ましい。 また、接着繊維(低軟化温度の繊維) の割合を調整することで、容易に、 繊維同士の接着強度を調整することができる点においても好ましい。 また、 太い繊 維と細い繊維とを組み合わせることで、 様々な用途に適合するアル力リ蓄電池用正 極を得ることが可能となる。 具体的には、 太い繊維の割合を多くすることで樹脂骨 格の強度を高めることができ、 一方、 細い繊維の割合を多くすることで、 活物質な どの電極材料の保持性を高める (脱落を防止する) ことができ、 さらには、 電極中 の樹脂骨格と電極材料との密着性を高めることができる。 従って、 太い繊維と細い 繊維との割合を調整することで、 用途に適合する所望の電極を得ることが可能とな る。
さらに、 上記いずれかのアルカリ蓄電池用正極であって、 前記樹脂骨格は、 ポ リプロピレン、 ポリエチレン、 ポリビニノレアノレコーノレ、 ポリエステノレ、 ナイロン、 ポリメチルペンテン、 ポリスチレン、 及びポリテトラフルォロエチレンから選択し た少なくとも 1種類の樹脂からなるアルカリ蓄電池用正極であると良い。
本発明のアルカリ蓄電池用正極では、 前述のように、 榭脂骨格をニッケル被覆 層によって被覆するため、 樹脂骨格が露出する可能性は低いが、 大きな基板を切断 して複数の正極基板を製造する場合には、 切断面から樹脂骨格が露出する可能性が ある。 樹脂骨格が露出した正極 (正極基板) をアルカリ蓄電池に用いる場合には、 電解液が樹脂骨格に触れるため、 樹脂骨格の耐アルカリ性が要求される。
これに対し、 本発明のアルカリ蓄電池用正極では、 ポリプロピレン、 ポリェチ レン、 ポリビニルアルコール、 ポリエステル、 ナイ口ン、 ポリメチルペンテン、 ポ リスチレン、 及ぴポリテトラフルォロエチレンから選択した少なくとも 1種類の樹 脂により、 正極基板の樹脂骨格を形成している。 これらの樹脂は耐アルカリ性に優 れているため、 仮に、 樹脂骨格が露出していたとしても、 アルカリ電解液の影響を 受けることがない。 従って、 本発明のアルカリ蓄電池用正極は、 アルカリ電解液の 影響で、 強度が低下する等の不具合が生じる虞がない。
なお、 樹脂骨格は、 上記の樹脂のうち 1種のみによって形成しても良いし、 2 種以上の樹脂を混合(例えば、 2種以上の材質の異なる繊維によって不織布を作製) して形成しても良い。
さらに、上記いずれかのアル力リ蓄電池用正極であって、前記金属コパルトを、 前記正極活物質の 1 0 0重量部に対し、 2〜1 0重量部の割合で含むアルカリ蓄電 池用正極であると良い。
本発明のアルカリ蓄電池用正極では、 金属コバルトを、 正極活物質の 1 0 0重 量部に対し、 2重量部以上含有させているため、優れた集電性を得ることができる。 従って、 本発明のアルカリ蓄電池用正極を用いることにより、 高率放電特性に優れ たアルカリ蓄電池を得ることが可能となる。 また、 正極活物質の 1 0 0重量部に対 し、 1 0重量部以下に制限することにより、 正極活物質 (水酸化ニッケル) の充填 量の低下を抑制し、 正極のエネルギー密度の低下を抑制することができる。
さらに、 上記いずれかのアルカリ蓄電池用正極であって、 前記 型の結晶構造 を有するォキシ水酸化コバルトを、 前記正極活物質の 1 0 0重量部に対し、 2 ~ 1 0重量部の割合で含むアル力リ蓄電池用正極であると良い。
本発明のアル力リ蓄電池用正極では、 β型の結晶構造を有するォキシ水酸ィ匕コ バルトを、 正極活物質の 1 0 0重量部に対し、 2重量部以上含有させているため、 充電時の酸素発生過電圧を、 大きく上昇させることができる。 従って、 本発明のァ ルカリ蓄電池用正極を用いることにより、 サイクル寿命特性に優れたアル力リ蓄電 池を得ることが可能となる。 また、 正極活物質の 1 0 0重量部に対し、 1 0重量部 以下に制限することにより、 正極活物質 (水酸化ニッケル) の充填量の低下を抑制 し、 正極のエネルギー密度の低下を抑制することができる。
さらに、 上記いずれかのアルカリ蓄電池用正極であって、 前記 型の結晶構造 を有するォキシ水酸化コバルトは、 前記正極活物質の表面を被覆してなるアル力リ 蓄電池用正極であると良い。
本発明のアル力リ蓄電池用正極では、 ]3型の結晶構造を有するォキシ水酸化コ バルトを、 正極活物質の表面に被覆させている。 これにより、 /3型の結晶構造を有 するォキシ水酸化コバルトを、 正極内で均一に分散させることができるので、 充電 時の酸素発生過電圧がより一層高まり、 ニッケルの腐食をより一層抑制することが 可能となる。 従って、 電池のサイクル寿命特性を、 より一層良好と'することが可能 となる。
さらに、 上記いずれかのアルカリ蓄電池用正極であって、 前記 j3型の結晶構造 を有するォキシ水酸化コバルトに含まれるコバルトの平均価数は、 2 . 6価以上 3 . 0価以下であるアルカリ蓄電池用正極であると良い。
β型の結晶構造を有するォキシ水酸化コバルトに含まれるコバルトの平均価数 を 2 . 6価以上とすることにより、 より一層、 充電時の酸素発生過電圧を高めるこ とができる。 これにより、 ニッケルの腐食を抑制し、 電池のサイクル寿命特性を、 さらに良好とすることができる。
ところで、 コバルトの平均価数が 3 . 0価よりも大きい場合には、 ォキシ水酸 化コパルト結晶中の電荷のバランスが崩れ、 β型の結晶構造から γ型の結晶構造に 転移しやすくなる。 γ型の結晶構造を有するォキシ水酸ィ匕コバルトは、 酸化力が強 いため(自身は還元されやすく)、正極に含有させた金属コバルトを酸ィヒしてしまう。 これにより、 正極内部の導電性ネットワークの形成が妨げられ、 活物質利用率が大 きく低下してしまう虞がある。 これに対し、 本発明のアルカリ蓄電池用正極では、 コバルトの平均価数を 3 . 0価以下としているため、 ォキシ水酸化コバルトの結晶 構造を ]3型に保つことができ、 上記のような不具合が生じる虞がない。
さらに、 上記いずれかのアルカリ蓄電池用正極であって、 前記正極活物質は、 亜鉛及びマグネシゥムの少なくともレ、ずれかを、 前記水酸化二ッケル粒子の結晶内 に固溶状態で含むアル力リ蓄電池用正極であると良い。
本発明のアルカリ蓄電池用正極では、 正極基板が樹脂骨格を有している。 この ような正極基板では、 骨格をなす樹脂と、 これを被覆するニッケル被覆層との物性 (伸び率、 強度など) が大きく異なるため、 正極基板の膨張 ·収縮により、 -ッケ ル被覆層に亀裂が生じたり、 ニッケル被覆層が剥離してしまう虞がある。 従って、 このような不具合を避けるためには、 正極基板の膨張 ·収縮をできる限り抑制する ことが好ましい。
ところで、 水酸化ニッケルの結晶は、 充放電に伴い、 結晶構造が変化し、 大き く膨張してしまう傾向にある。 従って、 正極基板の空隙部内に充填されている正極 活物質に含まれる水酸化ニッケル粒子が、 充放電に伴い大きく膨張すると、 これに より、 正極基板が押し広げられて大きく膨張してしまう。 このために、 上述のよう
に、 正極基板のニッケル被覆層に亀裂が生じたり、 ニッケル被覆層が剥離してしま つこと力ある。
これに対し、 本発明のアルカリ蓄電池用正極では、 正極活物質が、 亜鉛及ぴマ グネシゥムの少なくともいずれかを、 水酸化ニッケル粒子内に固溶状態で含んでい る。 亜鉛及びマグネシゥムを水酸化二ッケル結晶内に固溶状態で含有させることに より、 充放電に伴う結晶構造の変化を抑制することができ、 ひいては、 充放電に伴 う結晶の膨張を抑制することができる。 これにより、 充放電に伴う正極基板の膨張 を抑制することができるので、 ニッケル被覆層に亀裂 ·剥離が生じてしまう虞を小 さくできる。
さらに、 上記いずれかのアルカリ蓄電池用正極であって、 前記正極基板の前記 空隙部内には、 前記正極活物質に加えて、 酸ィヒィットリゥム及ぴ酸ィヒ亜鉛の少なく ともいずれかを含むアルカリ蓄電池用正極であると良い。
アルカリ蓄電池用正極では、 充電時の末期に、 副反応として、 酸素発生反応が 進行する。 特に、 高温状態においては、 酸素発生反応が進行し易くなるので、 これ により、 主反応である水酸化ニッケルの反応が阻害され、 その結果、 活物質の利用 率が低下することにより、 充電効率が低下してしまうことが知られている。 本発明 者が調査したところ、 榭脂骨格を有する正極基板を用いる場合には、 発泡ニッケル 基板を用いる場合と比較して、 高温状態における電池の充電効率が、 若干低下して しまうことが判明した。
そこで、 本発明のアルカリ蓄電池用正極では、 正極活物質の他に、 酸化イット リゥム及び酸化亜鉛の少なくともいずれかを含有させることにした。 これにより、 酸素発生過電圧を高めることができるので、 高温状態においても、 充電末期の酸素 発生反応を抑制し、 充電効率を良好とすることが可能となる。
なお、 酸ィ匕ィットリゥム及ぴ酸化亜鉛の両者を含有させれば、 より一層、 酸素 発生過電圧を高めることができ、優れた充電効率を得ることができるので好ましい。
さらに、 上記いずれかのアルカリ蓄電池用正極であって、 前記ュッケル被覆層 は、 電気めつき法、 無電 めっき法、 及ぴ気相蒸着法のいずれかの手法により、 前 記樹脂骨格の表面に形成されてなるアル力リ蓄電池用正極であると良い。
本発明のアルカリ蓄電池用正極では、 ニッケル被覆層を、 電気めつき法、 無電 解めつき法、 及び気相蒸着法のいずれかの手法により、 樹脂骨格の表面に形成して いる。 上記いずれかの手法により形成したニッケル被覆層は、 樹脂骨格の表面を均 一に被覆することができるので、 集電性を良好にすることができ、 ひいては、 電池 の高率放電特1生を良好にすることができる。
他の解決手段は、 上記いずれかのアル力リ蓄電池用正極を有するアル力リ蓄電 池である。
本発明のアルカリ蓄電池では、 上述したいずれかの正極を有している。 すなわ ち、 本発明のアルカリ蓄電池では、 樹脂骨格を有する正極基板を用いているため、 正極基板ひいては正極が強固となる。 従って、 正極 (正極基板) の耐久性が向上す るので、 アルカリ蓄電池の寿命を向上させることができる。 また、 樹脂骨格を焼失 させる手間を省くことができるので、 安価となる。
さらに、 この正極基板では、 ニッケル被覆層の平均厚みを 0 . 5 m以上 5 μ m以下としている。これにより、長期間にわたり、ニッケル被覆層の剥離を抑制し、 充放電を適切に行うことができる。 すなわち、 電池のサイクル寿命特性を良好にす ることができる。 その上、 正極活物質に加えて、 金属コバルト、 及ぴ /3型の結晶構 造を有するォキシ水酸化コバルトを、 正極に含有させている。 これらを含有させた 正極を用いることにより、 高率放電特性及ぴサイクル寿命特性を、 共に良好とする ことが可能となる。 図面の簡単な説明
第 1図は、 正極基板のニッケル被覆層の平均厚み (; u m) と活物質利用率 (%) との関係を示す特性図である。
第 2図は、 正極基板に占めるニッケル被覆層の割合 (重量%) と活物質利用率 (%) との関係を示す特性図である。
第 3図は、 正極活物質の充填量 (正極基板重量に対する倍率) と活物質利用率 (%) との関係を示す特性図である。 - 第 4図は、 正極基板のニッケル被覆層の平均厚み m) と活物質利用率 (%)
との関係を示す特性図である。
第 5図は、正極に占める金属コバルトの含有量(重量部)と活物質利用率 B (%) との関係を示す特 ι·生図である。
第 6図は、正極基板のニッケル被覆層の平均厚み m)と活物質利用率 A (%) との関係を示す特性図である。
第 7図は、正極基板のニッケル被覆層の平均厚み( z m)と活物質利用率 D (%) との関係を示す特性図である。
第 8図は、 正極に占める金属コバルトの含有量 (重量部) と利用率比率 (B Z A) X I 0 0 (%) との関係を示す特性図である。
第 9図は、 正極に占める /3— C o O O Hの含有量 (重量部) と利用率比率 (D
/A) X I 0 0 (%) との関係を示す特性図である。 発明を実施するための最良の形態
次に、 本発明の実施形態について説明する。
実施例 1
(ステップ 1 :ニッケル被覆樹脂基板の作製)
まず、 平均孔径 3 5 0 z mの孔が三次元に連結した空隙部を有し、 自身の厚み が 1 . 4 mmの発泡ポリプロピレンを用意する。 次いで、 この発泡ポリプロピレン に、 塩ィヒ錫を含む水溶液と、 塩化パラジウムを含む水溶液とを循環させて、 触媒化 を行った。 その後、 触媒化を行った発泡ポリプロピレンを、 硫酸ニッケル、 クェン 酸ナトリウム、 還元剤として水和ヒドラジンを含み、 p H調整剤としてアンモニア を含むニッケルめっき液に浸漬させた状態で、 ニッケルめっき液を 8 0 °Cに加熱し つつ、 循環させた。 このようにして、 発泡ポリプロピレンにニッケル無電解めつき を行った。 なお、 ニッケルめっき液の各組成濃度及び浸漬時間は、 めっき後の基板 に占めるニッケルめっき重量の割合が 6 3重量%となるように調整している。
次いで、 めっき液がほぼ透明となった後、 ニッケル被覆層を施した基板を水洗 し、その後乾燥させた。このようにして、発泡ポリプロピレンからなる樹脂骨格と、 これを被覆するニッケル被覆層とを備え、 複数の孔が三次元に連結した空隙部を有
するニッケル被覆樹脂基板を得ることができた。 このとき、 実際に得られたニッケ ル被覆樹脂基板の重量変化から計算した、 二ッケル被覆樹脂基板全体に占める二ッ ケル被覆層の割合は、 6 0重量%であった。 また、 S EM (走査型電子顕微鏡) に より、 ニッケル被覆樹脂基板の破断面の拡大像を観察して、 ニッケル被覆層の厚み を調査したところ、 平均厚さが 1 . 5 つであった。
(ステップ 2 :正極活物質の製作)
次に、 正極活物質を製作した。 具体的には、 まず、 硫酸ニッケルと硫酸マグネ シゥムを含む混合液、 水酸化ナトリウム水溶液、 アンモニア水溶液を用意し、 それ ぞれを、 5 0 °Cに保持された反応装置内に、 一定流量で連続的に供給した。 なお、 硫酸二ッケルと硫酸マグネシゥムを含む混合液は、 硫酸二ッケルと硫酸マグネシゥ ムの混合比が、 ニッケルとマグネシゥムの総モル数に対するマグネシゥムのモル数 が 5モル%となるように調整している。
次いで、 反応槽内の p Hが 1 2 . 5で一定となり、 金属塩濃度と金属水酸化物 粒子濃度とのバランスが一定となって、 定常状態に達した後、 反応槽内からオーバ 一フローした懸濁液を採取し、デカンテーションにより沈殿物を分離した。その後、 この沈殿物を水洗し、 乾燥することにより、 平均粒径 1 0 μ πιの水酸化ニッケル粉 末を得ることができた。
得られた水酸化ニッケル粉末について組成分析を行ったところ、 水酸化ニッケ ル粒子に含まれる全ての金属元素 (ニッケルとマグネシウム) に対するマグネシゥ ムの割合は、 合成に用いた混合液と同様に、 5モル。/。であった。 また、 C u K a線 を用いた X線回折パターンを記録したところ、 この粒子は、 j8— N i (O H) 2型の 単相結晶からなることが確認された。 すなわち、 マグネシウムが水酸化二ッケル結 晶に固溶していることが確認できた。
(ステップ 3 :ニッケル正極の製作)
次に、 ニッケル正極を作製した。 具体的には、 まず、 ステップ 2で得られた正 極活物質粉末と、 水酸化コバルト粒子とを混合し、 これに水を加え、 混練すること により、 ペースト状にした。 このペーストを、 ステップ 1で得られたニッケル被覆 樹脂基板に充填し、 乾燥した後、'加圧成形することにより、 ニッケル正極板を製作
した。 なお、 ペーストを充填する前に、 ニッケル被覆樹脂基板のうち後に電極リー ドを溶接する部分を圧延することで、 空隙部の無いリード溶接部を形成している。 このリード溶接部には、 空隙部が存在しないため、 ペーストが充填されることがな レ、。
次いで、このニッケル正極板を所定の大きさに切断した後、超音波溶接により、 リ一ド溶接部に電極リ一ドを接合した。 このようにして、 理論容量 1 3 0 0 m A h のニッケル正極を得ることができた。 なお、 ニッケル正極の理論容量は、 活物質中 のニッケルが一電子反応をするものとして計算している。 また、 本実施例 1では、 リード溶接部 (正極活物質が充填されていない部分) は、 ニッケル正極には含めな いものとする。 また、 ニッケル正極に含まれるニッケル被覆樹脂基板を、 正極基板 とする。
その後、 本実施例 1の二ッケル正極に含まれる正極活物質の重量を計測したと ころ、 4 . 6 5 gであった。 また、 正極基板の重量は、 0 . 6 3 gであった。 従つ て、 本実施例 1では、 正極活物質の充填量が、 正極基板の重量の 7 . 3 8倍となつ た。また、二ッケル正極'から、正極活物質粉末及び水酸化コバルト粉末を取り除き、 水銀ポロシメータ (島津製作所社製、 オートポア III 9 4 1 0 ) により正極基板の 孔径分布を測定した。 この孔径分布に基づいて、 本実施例 1の正極基板の平均孔径 を算出したところ、 1 6 0 / mであった。
(ステップ 4 :アルカリ蓄電池の製作)
次に、 公知の手法により、 水素吸蔵合金を含む負極を製作した。 具体的には、 粒径約 3 0 z mの水素吸蔵合金 Mm N i 3.55 C o 0.75 Mn 0.4 A 1 0.3粉末を用意し、 これに水と結合剤としてカルボキシメチルセルロースを加え、 混練してペースト状 にした。このペーストを電極支持体に加圧充填し、水素吸蔵合金負極板を製作した。 この水素吸蔵合金負極板を所定の大きさに切断し、 容量 2 0 0 O mA hの負極を得 た。
次いで、 この負極と上記のニッケル正極とを、 厚さ 0 . 1 5 mmのスルホン化 ポリプロピレン不織布からなるセパレータを間に介して捲回し、 渦卷状の電極群を 形成した。 次いで、 別途用意した金属からなる有底円筒形状の電槽内に、 この電極
群を挿入し、 さらに、 7モル / 1の水酸化カリウム水溶液を 2. 2ml注液した。 その後、 作動圧 2· OMP aの安全弁を備える封口板により、 電槽の開口部を密閉 し、 AAサイズの円筒密閉型ニッケル水素蓄電池を作製した。
比較例 1
次に、 上述した実施例 1と比較して、 正極基板が異なるアルカリ蓄電池を作製 した。 具体的には、 ステップ 1において、 発泡ポリウレタンシートの樹脂骨格に二 ッケルめっきを施した後、 樹脂骨格を焼失させることにより、 発泡ニッケル基板を 作製した。 なお、 この発泡ニッケル基板のニッケル骨格の平均厚みは、 5. 5 μπι であった。 その後、 実施例 1のステップ 2〜4と同様にして、 ΑΑサイズの円筒密 閉型ニッケル水素蓄電池を作製した。 本比較例 1でも、 実施例 1と同様に、 正極の 理論容量を 1 300 mAhとした。 また、 本比較例 1の正極に含まれる正極活物質 の重量を計測したところ、 実施例 1と同様に、 4. 65 gであった。 正極基板の重 量は、 実施例 1 (0. 63 g) の約 3倍の、 1. 9 gであった。 従って、 本比較例 1では、 正極活物質の充填量が、 正極基板の重量の 2. 45倍となった。
(電池特性の評価)
次に、 実施例 1及ぴ比較例 1のアル力リ蓄電池について、 特性評価を行った。 まず、 初期充放電サイクル後の充放電効率を評価した。 具体的には、 それぞれ
' の電池について、 20°Cにおいて 0. 1 Cの電流で 15時間充電し、 その後、 0, 2 Cの電流で電池電圧が 1. 0Vになるまで放電する充放電サイクルを、 放電容量 が安定するまで繰り返し行った。次いで、放電容量が安定した後、 20°Cにおいて、 1 Cの電流で 1. 2時間充電し、 その後 1 Cの電流で電池電圧が 0. 8Vになるま で放電した。 なお、 実施例 1及ぴ比較例 1のアルカリ蓄電池では、 理論容量が 1 3 O OmAhであるため、 1 C=1. 3Aとなる。
このときの放電容量に基づき、 それぞれの電池について、 活物質利用率 (初期 充放電後の活物質利用率) を算出した。 なお、 活物質利用率は、 活物質中の-ッケ ルがー電子反応したときの理論電気量に対して算出している。 具体的には、 正極の 理論容量 130 Om Ahに対する放電容量の割合を示している。 ·
算出した実施例 1及び比較例 1の活物質利用率は、 いずれも、 97%と高い値
を示した。 この結果より、 実施例 1及び比較例 1のアルカリ蓄電池は、 いずれも、 優れた充放電効率が得られることを確認できた。
次に、 長期充放電サイクル後の充放電効率を評価した。 具体的には、 それぞれ の電池について、 2 0 °Cにおいて 0 . 1 Cの電流で 1 5時間充電し、 その後、 0 . 2 Cの電流で電池電圧が 1 . 0 Vになるまで放電する充放電サイクルを、 放電容量 が安定するまで繰り返し行った。次いで、放電容量が安定した後、 2 0 °Cにおいて、 1 Cの電流で 1 . 2時間充電し、 その後 1 Cの電流で電池電圧が 0 . 8 Vになるま で放電する充放電サイクルを、 5 0 0サイクル行った。 そして、 5 0 0サイクル目 の放電容量に基づき、 それぞれの電池について、 活物質利用率 (5 0 0サイクル後 の活物質利用率) を算出した。
算出した結果、 比較例 1のアル力リ蓄電池では、 活物質利用率が 8 0 %にまで 低下したのに対し、 実施例 1のアル力リ蓄電池では、 活物質利用率が 9 0 %と高い 値を示した。 この結果より、 本実施例 1のアルカリ蓄電池は、 長期間にわたり、 充 放電効率が良好であると言える。 また、 本実施例 1のアル力リ蓄電池に用いた正極 基板 (正極) は、 長期間にわたり、 集電性が良好であると言える。
長期充放電サイクル試験後、 それぞれの電池を分解調査したところ、 比較例 1 のアル力リ蓄電池では、充放電サイクル試験前と比較して、正極が膨張して約 1 0 % 程度厚くなつていた。 これにより、 セパレータが圧縮されたため、 セパレータ内の 電解液が著しく減少し、 内部抵抗が著しく上昇していた。 このために、 活物質利用 率が低下してしまったと考えられる。
これに対し、 実施例 1のアルカリ蓄電池では、 正極の膨張が抑制され、 セパレ ータ内の電解液の減少もほとんどなく、 内部抵抗もほとんど上昇していなかった。 これは、実施例 1では、比較例 1と異なり、正極基板が樹脂骨格を有しているため、 正極基板が強固となり、 充放電に伴う正極活物質 (水酸化ニッケル) の膨張に伴う 変形を抑制することができたためと考えられる。
ところで、 実施例 1の正極基板は、 骨格をなす樹脂と、 これを被覆するエッケ ル被覆層との物性 (膨張率、 強度など) が大きく異なるため、 正極基板の膨張 *収 縮が大きい場合には、 ニッケル被覆層に亀裂が生じたり、 ニッケル被覆層が剥離し
てしまう虞がある。従って、このような不具合を避けるためには、正極基板の膨張' 収縮をできる限り抑制することが好ましい。 ところが、 正極活物質をなす水酸化二 ッケルの結晶は、 充放電に伴い、 結晶構造が変化し、 大きく膨張してしまう傾向に める。
しかしながら、 実施例 1の正極では、 ニッケル被覆層の亀裂や剥離は生じてい なかった。 これは、 正極活物質をなす水酸化ニッケルの結晶内に、 マグネシウムを 固溶状態で含有させたためと考えられる。 これにより、 充放電に伴う結晶構造の変 化を抑制することができ、 ひいては、 充放電に伴う結晶の膨張を抑制することがで きたと考えられる。 これにより、 充放電に伴う正極基板の膨張を抑制することがで き、 ニッケル被覆層に亀裂 '剥離が生じなかったと考えられる。
実施例 2
本実施例 2では、 ステップ 1において、 発泡ポリプロピレンに対し、 -ッケノレ めっき液の各組成濃度及ぴ浸漬時間を異ならせることで、 ニッケル被覆層の平均厚 みの異なる 5種類のニッケル被覆樹脂基板を作製した。 この 5種類のニッケル被覆 樹脂基板について、 ニッケル被覆層の平均厚みを調査したところ、 それぞれ、 0 . 3 5 i m、 0 . 5 m, 2 μ m、 5 / m、 7 ^ mであった。伹し、本実施例 2では、 発泡ポリプロピレンの骨格の太さ (本数) を調整することにより、 いずれのニッケ ル被覆樹脂基板についても、 基板全体に占めるニッケル被覆層の割合を 3 0重量% 以上 8 0重量%以下の範囲に調整している。
その後、 実施例 1のステップ 2 , 3と同様にして、 5種類のニッケル正極を作 製した。 なお、 本実施例 2でも、 実施例 1と同様に、 正極の理論容量を 1 3 0 0 m A hとした。 また、 本実施例 2の 5種類のニッケル正極では、 いずれも、 正極活物 質の充填量を、 正極基板重量の' 3倍以上 1 0倍以下の範囲で調整した。 その後、 実 施例 1のステップ 4と同様にして、 A Aサイズの円筒密閉型ニッケル水素蓄電池を 5種類作製した。
(電池特性の評価)
次に、 本実施例 2の 5種類のアル力リ蓄電池について、 特性評価を行った。 まず、 5種類のアルカリ蓄電池について、 それぞれ、 実施例 1と同様にして初
期充放電サイクル試験を行った。 その後、 5種類のアルカリ蓄電池について、 それ ぞれ、 活物質利用率 (初期充放電後の活物質利用率) を算出した。 この結果を、 第
1図に〇印で示す。第 1図に示すように、ニッケル被覆層の平均厚みを 0 · 5 m、
2 μΐΐι, 5 /z mとした電池では、 活物質利用率が 9 5%以上 (具体的には、 順に、 9 6. 1 %、 9 7. 3%、 9 7. 5%) となり、 優れた充放電効率を得ることがで きた。 これに対し、 ニッケル被覆層の平均厚みを 0. 3 5 / mとした電池では、 活 物質利用率が 9 1. 2%となり、 充放電効率がやや劣る結果となった。 さらに、 ェ ッケル被覆層の平均厚みを 7 mとした電池では、活物質利用率が最も低く、 8 8.
8%となった。
初期充放電サイクル試験後、 それぞれの電池を分解し、 正極の断面の S EM像 を観察したところ、 ニッケル被覆層の平均厚みを 7 μ mとした電池では、 正極基板 力 らニッケル被覆層の一部が剥離していた。 これにより、 活物質利用率が低くなつ たと考えられる。また、ニッケル被覆層の平均厚みを 0. 3 5 /xmとした電池では、 ニッケル被覆層を薄くし過ぎたため、 十分な集電性を得ることができず、 充放電効 率がやや劣る結果となったと考えられる。
次に、 5種類のアルカリ蓄電池について、 それぞれ、 実施例 1と同様にして長 期充放電サイクル試験 (5 0 0サイクル) を行った。 その後、 5種類のアルカリ蓄 電池について、 それぞれ、 活物質利用率 (5 0 0サイクル後の活物質利用率) を算 出した。 この結果を、 第 1図に X印で示す。 第 1図に示すように、 ニッケル被覆層 の平均厚みを 0. 3 5 μ mとした電池では、 5 ◦ 0サイクル後の活物質利用率が、 8 2. 4%にまで低下した。 さらに、 ニッケル被覆層の平均厚みを 7 μπιとした電 池では、 5 00サイクル後の活物質利用率が、 8 1. 1 %にまで低下した。
これに対し、 ニッケル被覆層の平均厚みを 0. 5 ^ m、 2 ^ m, 5 111とした 電池では、 5 0 0サイクル後の活物質利用率が、 初期充放電後の活物質利用率と比 較して低下したものの、 いずれも 9 0%程度の高い値 (具体的には、 順に、 8 9. 2%、 8 9. 8%、 9 0. 3%) を示した。 この結果より、 長期間にわたり、 充放 電効率を良好とするためには、 正極基板のニッケル被覆層の平均厚みを 0. 5 μπι 以上 5 μπι以下とする必要があると言える。また、長期間にわたり活物質利用率(充
放電効率)が良好であったということは、その電池の正極(正極基板)の集電性が、 長期間にわたり良好であったと言える。 従って、 長期間にわたり、 正極基板の集電 十生を良好とするためには、 正極基板のニッケル被覆層の平均厚みを 0 . 5 ^ m以上 5 以下とする必要があると言える。
実施例 3
実施例 2では、 ニッケル被覆樹脂基板 (正極基板) を作製するにあたり、 樹脂 骨格 (発泡ポリプロピレン) の骨格の太さ (本数) と、 ニッケルめっき液の各組成 濃度及ぴ浸漬時間を調整することで、 基板全体に占めるニッケル被覆層の割合を 3 0重量%以上 8 0重量%以下の範囲に保ちつつ、 ニッケル被覆層の平均厚みを 0 . 3 5 At m〜7 μ πιの範囲で調整した。 これに対し、 本実施例 3では、 榭脂骨格 (発 泡ポリプロピレン) はいずれも同等のものを用い、 ニッケルめっき液の各組成濃度 及ぴ浸漬時間のみを調整することで、 二ッケル被覆層の平均厚みを 0 , 5 μ m〜 5 μ ηιの範囲に保ちつつ、 基板全体に占めるニッケル被覆層の割合を 2 7重量%以上 8 4重量%以下の範囲で異ならせた。
具体的には、 ステップ 1において、 実施例 1と同等の発泡ポリプロピレンに対 し、 二ッケルめっき液の各組成濃度及び浸漬時間を異ならせることで、 基板全体に 占めるニッケル被覆層の割合が異なる 5種類の二ッケル被覆樹脂基板を作製した。 この 5種類のニッケル被覆樹脂基板について、 基板全体に占める二ッケル被覆層の 割合を調査したところ、 それぞれ、 2 7重量%、 3 0重量%、 6 0重量%、 8 0重 量%、 8 4重量0 /。であった。 その後、 実施例 1のステップ 2 , 3と同様にして、 5 種類のニッケル正極を作製した。 なお、 本実施例 3でも、 実施例 1と同様に、 正極 の理論容量を 1 3 0 0 mA hとした。 また、 本実施例 3の 5種類のニッケル正極で は、 いずれも、 正極活物質の充填量を、 正極基板重量の 3倍以上 1 0倍以下の範囲 で調整した。 その後、 実施例 1のステップ 4と同様にして、 AAサイズの円筒密閉 型ニッケル水素蓄電池を 5種類作製した。
(電池特性の評価)
次に、 本実施例 3の 5種類のアル力リ蓄電池について、 特性評価を行つた。 まず、 5種類のアルカリ蓄電池について、 それぞれ、 実施例 1と同様にして初
期充放電サイクル試験を行った。 その後、 5種類のアルカリ蓄電池について、 それ ぞれ、 活物質利用率 (初期充放電後の活物質利用率) を算出した。 この結果を、 第 2図に〇印で示す。 第 2図に示すように、 正極基板に占めるニッケル被覆層の割合 を 3 0重量%、 6 0重量%、 8 0重量%とした電池では、 活物質利用率が 9 5 %以 上 (具体的には、 順に、 9 7 . 3 %、 9 7 . 8 %、 9 6 . 1 %) となり、 優れた充 放電効率を得ることができた。 これに対し、 正極基板に占める二ッケル被覆層の割 合を 2 7重量%とした電池では、 活物質利用率が 9 2 . 3 %となり、 充放電効率が やや劣る結果となった。 さらに、 正極基板に占めるニッケル被覆層の割合を 8 4重 量%とした電池では、 活物質利用率が最も低く、 8 8 . 2 %となった。
初期充放電サイクル試験後、 それぞれの電池を分解し、 正極の断面の S EM像 を観察したところ、 正極基板に占める-ッケル被覆層の割合を 8 4重量%とした電 池において、 正極基板のニッケル被覆層に亀裂が生じていた。 これは、.正極基板に 占めるニッケル被覆層の割合を多くし過ぎたために、 正極基板自身の強度が大きく 低下してしまったためと考えられる。 そして、 この亀裂が原因で、 正極基板の集電 性が大きく低下し、 活物質利用率が低くなつてしまったと考えられる。
また、 正極基板に占めるニッケル被覆層の割合を 2 7重量%とした電池では、 二ッケル被覆層の割合を少なくし過ぎたために、 (逆に言えば、発泡ポリプロピレン の割合を多くし過ぎたため) 正極基板の電気抵抗が大きくなり、 十分な集電性を得 ることができず、 充放電効率がやや劣る結果となったと考えられる。
次に、 5種類のアルカリ蓄電池について、 それぞれ、 実施例 1と同様にして長 期充放電サイクル試験 (5 0 0サイクル) を行った。 その後、 5種類のアルカリ蓄 電池について、 それぞれ、 活物質利用率 (5 0 0サイクル後の活物質利用率) を算 出した。 この結果を、 第 2図に X印で示す。 第 2図に示すように、 正極基板に占め るニッケル被覆層の割合を 2 重量%とした電池では、 5 0 0サイクル後の活物質 利用率が、 8 3 . 1 %にまで低下した。 さらに、 正極基板に占めるニッケル被覆層 の割合を 8 4重量%とした電池では、 5 0 0サイクル後の活物質利用率が、 8 0 . 7 %にまで低下した。 ·
これに対し、正極基板に占めるニッケル被覆層の割合を 3 0重量%、 6 0重量%、
8 0重量%とした電池では、 50 0サイクル後の活物質利用率が、 初期充放電後の 活物質利用率と比較して低下したものの、 9 0%程度の高い値(具体的には、順に、
9 0. 2 %、 9 0. 5 %、 9 0. 1 %) を示した。
以上の結果より、 正極基板のニッケル被覆層の平均厚みを 0. 5 μ m以上 5 μ m以下としても、 正極基板に占めるニッケル被覆層の割合を 3 0重量%以上 8 0重 量%以下としなければ、 長期間にわたり、 正極基板の集電性及ぴ電池の充放電効率 を良好にできないことがわかった。 従って、 正極基板のニッケル被覆層の平均厚み を 0. 5 μ m以上 5 μ m以下とした上で、 さらに、 正極基板に占める二ッケル被覆 層の割合を 3 0重量%以上 8 0重量%以下とすることで、 長期間にわたり、 正極基 板の集電性を良好とし、 電池の充放電効率を良好とすることができると言える。
実施例 4
本実施例 4では、 ステップ 1において、 実施例 1と同等の発泡ポリプロピレン に対し、 ニッケルめっき液の各組成濃度及び浸漬時間を異ならせることで、 基板全 体に占めるニッケル被覆層の割合が異なる (すなわち、 ニッケル被覆層の厚みが異 なる) 5種類のニッケル被覆樹脂基板を作製した。 この 5種類のニッケル被覆樹脂 基板について、 実施例 1と同様にして、 基板全体に占めるニッケル被覆層の割合を 調査したところ、いずれも 3 0重量%以上 8 0重量%以下の範囲内であった。また、 実施例 1と同様にして、 ニッケル被覆層の平均厚みを調査したところ、 いずれも、 0. 5 im以上 5 μπι以下の範囲内であった。
その後、 実施例 1のステップ 2, 3と同様にして、 5種類のニッケル正極を作 製した。 但し、 本実施例 4では、 実施例 1と異なり、 正極活物質の充填量を、 正極 基板重量の 2倍以上 1 1倍以下の範囲で調整することで、 正極の理論容量を 1 1 0 OmAh〜 1 4 0 OmAhの範囲で異ならせた。 具体的には、 正極活物質の充填量 を、それぞれ、正極基板の熏量の 2倍、 3倍、 7倍、 1 0倍、 1 1倍とすることで、 正極の理論容量を 1 1 0 OmAh、 1 2 0 OmAh, 1 3 0 OmAh, 1 3 5 0m Ah、 1 4 0 0mA hとした。 その後、 実施例 1のステップ 4と同様にして、 A A サイズの円筒密閉型二ッケル水素蓄電池を 5種類作製した。 ·
(電池特性の評価)
次に、 本実施例 4の 5種類のアル力リ蓄電池について、 特性評価を行った。 まず、 5種類のアルカリ蓄電池について、 それぞれ、 実施例 1と同様にして初 期充放電サイクル試験を行つた。 なお、 本実施例 4の 5種類のアル力リ蓄電池は、 それぞれ、理論容量が異なるため、 1 Cの電流値がそれぞれ異なっている。その後、 5種類のアルカリ蓄電池について、 それぞれ、 活物質利用率 (初期充放電後の活物 質利用率) を算出した。 この結果を、 第 3図に〇印で示す。 第 3図に示すように、 正極活物質の充填量を正極基板の重量の 2倍、 3倍、 7倍、 1 0倍とした電池では、 活物質利用率が 9 5 %以上 (具体的には、 順に、 9 6 . 5 %、 9 6 . 5 %、 9 6 . 1 %、 9 5 . 2 %) となり、 優れた充放電効率を得ることができた。
これに対し、 正極活物質の充填量を正極基板の重量の 1 1倍とした電池では、 活物質利用率が 8 4 . 7 %となり、 他の電池に比べて 1 0 %以上も低くなった。 こ れは、 正極活物質の充填量を多くし過ぎたために、 正極活物質に対するニッケル被 覆層の割合が少なくなり過ぎて、 集電性が大きく低下してしまつたためと考えられ る。
次に、 5種類のアルカリ蓄電池について、 それぞれ、 実施例 1と同様にして長 期充放電サイクル試験 (5 0 0サイクル) を行った。 その後、 5種類のアルカリ蓄 電池について、 それぞれ、 活物質利用率 (5 0 0サイクル後の活物質利用率) を算 出した。 この結果を、 第 3図に X印で示す。 第 3図に示すように、 正極活物質の充 填量を正極基板の重量の 1 1倍とした電池では、 5 0 0サイクル後の活物質利用率 力 7 6 . 8 %にまで低下した。
これに対し、 正極活物質の充填量を正極基板の重量の 2倍、 3倍、 7倍、 1 0 倍とした電池では、 5 0 0サイクル後の活物質利用率が、 初期充放電後の活物質利 用率と比較して低下したものの、 9 0 %程度の高い値 (具体的には、 順に、 9 0 . 1 %、 9 0 %、 8 9 . 7 %、. 8 9 . 4 %) を示した。 従って、 正極活物質の充填量 を正極基板の重量の 2倍〜 1 0倍とした電池は、 長期間にわたり、 充放電効率が良 好であったと言える。
ところで、 長期間にわたり充放電効率が良好であった電池のうち、 正極活物質 の充填量を正極基板の重量の 2倍とした電池では、 電池容量 (正極理論容量) が 1
1 0 O mA hと小さくなつた。 これに対し、 正極活物質の充填量を正極基板の重量 の 3倍、 7倍、 1 0倍とした電池では、 電池容量 (正極理論容量) を 1 2 0 0 mA h、 1 3 0 O mA h , 1 3 5 O mA hと比較的大きくすることができた。
以上の結果より、 正極基板の二ッケル被覆層の平均厚みを 0 . 5 μ m以上 5 μ m以下とし、 且つ、 正極基板に占める-ッケノレ被覆層の割合を 3 0重量以上 8 0重 量%以下とした正極華板を用いる場合において、 電池容量を比較的大きくしつつ、 長期間にわたり充放電効率を良好とするためには、 正極活物質の充填量を、 正極基 板の重量の 3倍以上 1 0倍以下としなければならないと言える。 換言すれば、 正極 基板のニッケル被覆層の平均厚みを 0 . 5 / m以上 5 以下とし、 且つ、 正極基 板に占めるニッケル被覆層の割合を 3 0重量以上 8 0重量%以下とした正極基板に 対し、 正極活物質を、 正極基板重量の 3倍以上 1 0倍以下の範囲で充填することに より、 電池容量を比較的大きくしつつ、 長期間にわたり充放電効率を良好とするこ とができると言える。
実施例 5
(ステップ 1 :ニッケル被覆樹脂基板の作製)
まず、 実施例 1のステップ 1と同様の手法により、 発泡ポリプロピレンからな る榭脂骨格と、 これを被覆するニッケル被覆層とを備え、 複数の孔が三次元に連結 した空隙部を有するニッケル被覆樹脂基板を得た。 このとき、 実際に得られたニッ ケル被覆樹脂基板の重量変化から計算した、 二ッケル被覆樹脂基板全体に占める二 ッケル被覆層の割合は、 6 0重量%であった。 また、 S E M (走查型電子顕微鏡) により、 ニッケル被覆樹脂基板の破断面の拡大像を観察して、 ニッケル被覆層の平 均厚みを調査したところ、 1 . 5 mであった。
(ステップ 2 :正極活物質の製作)
次に、 実施例 1のステ プ 2と同様の手法により、 正極活物質として、 平均粒 径 1 0 μ ηιの水酸化エッケル粉末を得た。 得られた水酸化ニッケル粉末について組 成分析を行ったところ、 水酸化ニッケル粒子に含まれる全ての金属元素 (ニッケル とマグネシウム) に対するマグネシウムの割合は、 合成に用いた混合液と同様に、 5モル%であった。また、 C u Κ α線を用いた X線回折パターンを記録したところ、
この粒子は、 ]3— N i (O H) 2型の単相結晶からなることが確認された。すなわち、 マグネシゥムが水酸化二ッケル結晶に固溶していることが確認できた。
(ステップ 3 :ニッケル正極の製作)
次に、 ニッケル正極を作製した。 具体的には、 まず、 ステップ 2で得られた正 極活物質粉末と、 金属コパルト粉末と、 酸化ィットリゥム粉末と、 酸化亜鉛粉末と を混合し、 これに水を加え、 混練することにより、 ペースト状にした。 なお、 金属 コバルト粉末は、正極活物質の 1 0 0重量部に対し 5重量部の割合で添加している。
このペーストを、 ステップ 1で得られたニッケル被覆樹脂基板に充填し、 乾燥 した後、 加圧成形することにより、 ニッケル正極板を製作した。 なお、 ペーストを 充填する前に、 ニッケル被覆樹脂基板のうち後に電極リードを溶接する部分を圧延 することで、 空隙部の無いリード溶接部を形成している。 このリード溶接部には、 空隙部が存在しないため、 ペーストが充填されることがない。
次いで、このニッケル正極板を所定の大きさに切断した後、超音波溶接により、 リ一ド溶接部に電極リ一ドを接合した。 このようにして、 理論容量 1 3 0 0 m A h のニッケル正極を得ることができた。 なお、 ニッケル正極の理論容量は、 活物質中 のニッケルがー電子反応をするものとして計算している。 また、 本実施例 5では、 リード溶接部 (正極活物質が充填されていない部分) は、 ニッケル正極には含めな いものとする。 また、 ニッケル正極に含まれるニッケル被覆樹脂基板を、 正極基板 とする。 従って、 正極基板に占めるニッケル被覆層の割合は、 ニッケル被覆樹脂基 板に占める割合と同様に、 6 0重量%となる。 また、 ニッケル正極から、 正極活物 質粉末、金属コバルト粉末、酸ィヒィットリゥム粉末、及び酸化亜鉛粉末を取り除き、 水銀ポロシメータ (島津製作所社製、 オートポア III 9 4 1 0 ) により正極基板の 孔径分布を測定した。 この孔径分布に基づいて、 本実施例 5の正極基板の平均孔径 を算出したところ、 1 6 0 ;α πιであった。
(ステップ 4 :アルカリ蓄電池の製作)
次に、 実施例 1のステップ 4と同様の手法により、 容量 2 0 0 O mA hの負極 を得た。 次いで、 この負極と、 上記のステップ 3で作製したニッケル正極とを、 厚 さ 0 . 1 5 mmのスルホン化ポリプロピレン不織布からなるセパレータを間に介し
て捲回し、 渦卷状の電極群を形成した。 次いで、 別途用意した金属からなる有底円 筒形状の電槽内に、 この電極群を挿入し、 さらに、 7モル /1の水酸ィヒカリウム水 溶液を 2. 2ml注液した。 その後、 作動圧 2. OMP aの安全弁を備える封口板 により、 電槽の開口部を密閉し、 AAサイズの円筒密閉型エッケル水素蓄電池を作 製した。
実施例 6
本実施例 6のアル力リ蓄電池は、 実施例 5のアル力リ蓄電池と比較して、 ニッ ケル正極が異なり、 その他については同様である。
具体的には、 ステップ 3において、 実施例 5で加えた金属コバルト粉末に代え て、 γ型の結晶構造を有するォキシ水酸ィヒコバルト (以下、 γ— C oOOHとも表 記する) 粉末を加えた。 なお、 γ— C o OOH粉末の添カ卩量は、 実施例5の金属コ パルト粉末と同様に、 正極活物質の 100重量部に対し 5重量部の割合とした。
上記の他は、 実施例 5と同様にして、 A Αサイズの円筒密閉型ニッケル水素蓄 電池を作製した。 なお、 本実施例 6でも、 実施例 5と同様に、 正極の理論容量を 1 300mAhとしている。 また、 正極基板に占めるニッケル被覆層の割合は、 実施 例 5と同様に、 60重量%としている。
実施例 7
本実施例 7のアル力リ蓄電池は、 実施例 6のアル力リ蓄電池と比較して、 二ッ ケル正極が異なり、 その他については同様である。 詳細には、 両者とも、 ステップ 3において、ニッケル正極に 一 C o OOHを含有させている点では同じである力 T/一 C o OOHを含有させる形態が異なる。 以下に、 本実施例 7のステップ 3につ いて、 詳細に説明する。
まず、 ステップ 2で得られた正極活物質 (水酸化ニッケル粒子) の水溶液 (懸 濁液) を作製する。 次いで、. この水溶液 (懸濁液) 中に、 pH12. 5を維持する ように調整しつつ、 硫酸コバルト水溶液と水酸化ナトリゥム水溶液を供給した。 こ のようにして、 水酸化ニッケル粒子の表面に、 水酸化コバルトを析出させ、 水酸化 コバルト被覆正極活物質(水酸化コバルト被覆水酸ィヒニッケル粒子)を得た。なお、 本実施例 7では、 水酸化コバルトの被覆量が、 正極活物質 (水酸化ニッケル粒子)
の 1 0 0重量部に対し、 5重量部の割合となるように調整した.。
次いで、 コバルト化合物被覆正極活物質を、 p H 1 3〜 1 4の水酸化ナトリウ ム水溶液でアルカリ処理することにより、硫酸イオン等の不純物を除去し、その後、 水洗し、 乾燥させた。 このようにして、 平均粒径 1 0 πιの水酸化コバルト被覆正 極活物質を得ることができた。なお、アル力リ処理や水洗の条件を調整することで、 水酸化コバルト被覆正極活物質に含まれる硫酸イオン (硫酸根) やナトリウムィォ ンの量を調整した。
次いで、 水酸ィヒコバルト被覆正極活物質について、 以下のようにして改質処理 を行った。 まず、 酸化補助剤として、 この粉末に対し、 4 0重量%の水酸化ナトリ ゥム水溶液を含浸させた。 その後、 これを、 マイクロ波加熱機能を備えた乾燥装置 内に投入し、装置内に酸素を供給しながら加熱して、完全乾燥させた。これにより、 正極活物質 (水酸ィヒニッケル粒子) 表面の水酸ィヒコバルト被覆層は酸化し、 藍色に 変色していた。 次いで、 得られた粉末を水洗した後、 真空乾燥させた。
得られた粉末について、 ョードメトリー法により全金属の総価数を求め、 この 値に基づいてコバルトの平均価数を算出したところ、 3 . 1価であった。 また、 得 られた粉末について組成分析を行ったところ、 被覆層中にナトリゥムが含まれてい ることが判明した。 さらに、 この粉末を 3 9 . 2 MP a ( 4 0 0 k g f / c m 2) で加圧した状態で、 導電率を測定したところ、 4 . 5 x 1 0— 2 S Z c mと高い導電 性を示した。
次いで、 C u K a線を使用する X線回折測定を行い、 被覆層をなすコバルト化 合物の結晶構造を調査した。 しかしながら、 被覆層の厚みがサブミクロンオーダー と非常に薄いこと、 さらに、 被覆層をなすコバルト化合物の結晶性が低いことなど から、 コバルト化合物の結晶構造を示すピークを検出することができなかった (具 体的には、 水酸化ニッケル 結晶構造を示すピークに隠れてしまった)。 このため、 コノ ルト化合物層の結晶構造を特定することができなかった。
そこで、 別途、'水酸化コバルト粉末を用意し、 上記手法と同様にして、 水酸ィ匕 コノくルト粉末の改質処理を行った。 このようにして、 正極活物質の表面に形成した コバルト化合物層と同等のコバルト化合物粉末を得た。 その後、 このコバルト化合
物粉末について、 C u Κ α線を使用する X線回折測定を行い、 その結晶構造を調查 した。 その結果、 このコバルト化合物粉末は、 Τ/型の結晶構造を有するォキシ水酸 化コバルト (γ— C o O O H) であることが判明した。 従って、 正極活物質 (水酸 化ニッケル粒子) の表面に形成したコバルト化合物層は、 γ型の結晶構造を有する ォキシ水酸化コバルト (γ— C o O O H) であることがわかった。
上記の他は、 実施例 6と同様にして、 A Aサイズの円筒密閉型ニッケル水素蓄 電池を作製した。 なお、 本実施例 7でも、 実施例 5, 6と同様に、 正極の理論容量 を 1 3 0 O mA hとしている。 また、 正極基板に占めるニッケル被覆層の割合は、 実施例 5, 6と同様に、 6 0重量%としている。
比較例 2
次に、 前述した実施例 5と比較して、 正極基板が異なるアルカリ蓄電池 (比較 例 2 ) を作製した。 具体的には、 ステップ 1において、 発砲ポリウレタンシートの 樹脂骨格にニッケルめっきを施した後、 榭脂骨格を焼失させることにより、 発泡二 ッケル基板を作製した。なお、この発泡二ッケル基板の二ッケル骨格の平均厚みは、 5 . 5 ί mであった。 その後、 実施例 5のステップ 2〜4と同様にして、 A Aサイ ズの円筒密閉型ニッケル水素蓄電池を作製した。 なお、 本比較例 2でも、 実施例 5 と同様に、 正極の理論容量を 1 3 0 0 mA hとした。
比較例 3
次に、前述した実施例 5と比較して、二ッケル正極が異なるアル力リ蓄電池(比 較例 3 ) を作製した。 具体的には、 ステップ 3において、 実施例 5で加えた金属コ バルト粉末に代えて、 一酸化コバルト粉末を加えた。 なお、 一酸化コバルト粉末の 添加量は、 実施例 5の金属コバルト粉末と同様に、 正極活物質の 1 0 0重量部に対 し 5重量部の割合とした。 上記の他は、 実施例 5と同様にして、 A Aサイズの円筒 密閉型ニッケル水素蓄電池を作製した。なお、本比較例 3でも、実施例 5と同様に、 正極の理論容量を 1 3 0 0 m A hとした。
(電池特性の評価) '
次に、 実施例 5〜 7及び比較例 2, 3のアルカリ蓄電池について、 特性評価を 行った。
まず、 初期充放電サイクル後の充放電効率を評価した。 具体的には、 それぞれ の電池について、 20°Cにおいて 0. 1 Cの電流で 15時間充電し、 その後、 0. 2 Cの電流で電池電圧が 1. 0Vになるまで放電する充放電サイクルを、 放電容量 が安定するまで繰り返し行った。次いで、放電容量が安定した後、 20°Cにおいて、 1 Cの電流で 1. 2時間充電し、 その後 1 Cの電流で電池電圧が 0. 8Vになるま で放電した。 このときの放電容量に基づき、 それぞれの電池について、 活物質利用 率 A (1 C放電時利用率) を算出した。 なお、 実施例 5〜 7及び比較例 2, 3のァ ルカリ蓄電池では、理論容量が 1300mA hであるため、 1 C=1. 3Aとなる。
続いて、 20°Cにおいて、 1〇の電流で1. 2時間充電した後、 今度は、 5C の電流で電池電圧が 0. 6 Vになるまで放電した。 このときの放電容量に基づき、 それぞれの電池について、 活物質利用率 B ( 5 C放電時利用率) を算出した。 ここ で、 活物質利用率 A, Bは、 活物質中のニッケルがー電子反応したときの理論電気 量に対して算出している。 具体的には、 正極の理論容量 1 30 OmAhに対する放 電容量の割合を示している。 さらに、 それぞれの電池の高率放電特性を示す指標と して、 活物質利用率 Aに対する活物質利用率 Bの比率 (B/A) X I 00 (%) を 算出した (以下、 この値を高率放電特性値とも言う)。
次いで、 長期充放電サイクル後の充放電効率を評価した。 具体的には、 それぞ れの電池について、 20°Cにおいで 1 Cの電流で 1. 2時間充電し、 その後、 1 C の電流で電池電圧が 0. 8 Vになるまで放電する充放電サイクルを、 500サイク ル行った。 そして、 500サイクル目の放電容量に基づき、 それぞれの電池につい て、 活物質利用率 C (500サイクル後利用率) を算出した。 この算出結果に基づ き、 それぞれの電池のサイクル寿命特性を示す指標として、 活物質利用率 Aに対す る活物質利用率 Cの比率 (C/A) XI 00 (%) を算出した (以下、 この値をサ イタル寿命特性値とも言う) 9 なお、活物質利用率 Cも、活物質中のニッケルが一電 子反応したときの理論電気量に対して算出している。 これらの特性評価の結果を表 1に示す。
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42
[表 1 ]
ここで、 それぞれの電池について、 特性評価の結果を比較検討する。
まず、 高率放電特性値 ( B /A) X I 0 0 (%) について比較する。 実施例 5 〜 7及び比較例 2のアル力リ蓄電池では、 高率放電特性値が 9 4 . 8〜 9 6 · 4 % と高い値を示し、 いずれも、 高率放電特性に優れていた。 これに対し、 比較例 3の アルカリ蓄電池では、 高率放電特性値が 9 0 . 7 %となり、 他の電池に比して、 高 率放電特性が劣つていた。 これは、 実施例 5〜 7及ぴ比較例 2のアル力リ蓄電池で は、 ニッケル正極に、 導電性の高い金属コバルトまたは 0 /— C o O O Hを含有させ ているのに対し、 比較例 3のアルカリ蓄電池では、 導電性の低い一酸化コバルトを 含有させたことに関連していると考えられる。 詳細には、 以下のような理由による ものと考えられる。
従来より、 発泡ニッケル基板を用いたニッケル正極に、 導電性の低い一酸化コ バルトを含有させたアルカリ蓄電池が知られている。しかしながら、この電池では、 導電性の高い金属コバルトまたは γ— C o〇O Hを含有させたものと、 同程度の高 率放電特性を得ることができた。 これは、 発泡ニッケル基板を用いた電池では、 二 ッケル正極に、 導電性の低い一酸ィヒコバルトを含有させた場合でも、 初回の充電過 程で生じる酸化反応により、 一酸化コバルトを、 導電性の高いォキシ水酸化コバル トに変化させることができたためである。
ところが、同様に一酸化コパルトを含有させた比較例 3のアル力リ蓄電池では、 金属コバルトまたは γ— C o O O Hを含有させた他の電池に比して、 高率放電特性 が低くなつた。 これは、 比較例 3のアルカリ蓄電池では、 正極基板に、 樹脂骨格を 有するニッケル被覆樹脂基板 (樹脂骨格と、 これを被覆するニッケル被覆層とを有
する正極基板) を用いているためであると考えられる。 具体的には、 エッケル被覆 樹脂基板は、 発泡ニッケル基板と比較すると、 樹脂骨格を有している分、 基板自身 の導電性が低くなるので、 充電過程における一酸ィヒコバルトの酸ィ匕反応が進行し難 くなり、 導電性の高いォキシ水酸化コバルトが生成し難くなると考えられる。 この ため、 比較例 3のアルカリ蓄電池では、 他の電池と比較して、 ニッケル正極の集電 性が低くなり、 高率放電特性が劣ったと考えられる。
次いで、 高率放電特性に優れていた実施例 5〜 7及ぴ比較例 2のアル力リ蓄電 池について、 比較検討する。 実施例 5〜 7のアルカリ蓄電池では、 いずれも、 高率 放電特性値が、 比較例 2のアル力リ蓄電池と同等あるいはそれ以上の値となった。 この結果より、正極基板に、樹脂骨格を有 るニッケル被覆樹脂基板(樹脂骨格と、 これを被覆するニッケル被覆層とを有する正極基板) を用いた場合でも、 発泡ニッ ケル基板を用いた場合と同様、 あるいはそれ以上に優れた高率放電特性を得ること ができると言える。 これは、 ニッケル正極に、 金属コバルト及ぴ γ _ C o O O Hの 少なくともいずれかを含有させることで、 良好な導電性ネットワークを形成するこ とができたためと考えられる。
さらに、 実施例 5〜 7のアルカリ蓄電池について、 比較検討する。
まず、 実施例 5と実施例 6のアルカリ蓄電池を比較する。 両者は、 金属コパル ト及ぴ γ— C ο Ο Ο Ηのうち、 いずれをニッケル正極に含有させたかという点のみ が異なり、 その他については同様である。 そこで、 実施例 5及び実施例 6のアル力 リ蓄電池について、 高率放電特性値を比較すると、 9 4 . 9 %で同一であった。 こ の結果より、 ニッケル正極に、 金属コバルト及び γ _ C ο Ο ΟΗのいずれを含有さ せても、 同等の、 優れた高率放電特性を得ることができると言える。
次に、 実施例 6と実施例 7のアルカリ蓄電池を比較する。 両者は、 共に、 ニッ ケル正極に γ— C ο Ο Ο Ηを含有させている点では同じであるが、 含有させる形態 が異なっており、 その他については同様としている。 具体的には、 実施例 6では、 単に、 γ— C ο Ο Ο Ηの粉末を正極活物質 (水酸化ニッケル粒子) と混合させて、 ニッケル正極に含有させているのに対し、 実施例 7では、 正極活物質 (水酸化ニッ ケル粒子) の表面に、 Τ/ _ C ο Ο Ο Ηを被覆させている。
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44 そこで、 実施例 6及び実施例 7のアル力リ蓄電池について.、 高率放電特性値を 比較すると、 実施例 7では、 実施例 6 ( 9 4 . 9 %) よりも高い 9 6 . 4 %を示し た。すなわち、実施例 7のアル力リ蓄電池では、実施例 6のアル力リ蓄電池よりも、 優れた高率放電特性を得ることができた。 これは、 正極活物質 (水酸化ニッケル粒 子) の表面に γ— C o O O Hを被覆させることにより、 γ — C o O O Hをニッケル 正極内で均一に分散させることができ、 ニッケル正極の集電性をより一層優れたも のにできたためと考えられる。
次に、 実施例 5〜 7及び比較例 2, 3のアルカリ蓄電池について、 サイクル寿 命特性値 ( C/A) X I 0 0 (%) を比較する。 実施例 5〜 7及び比較例 3のアル カリ蓄電池では、 サイクル寿命特性値が 9 2 . 8〜 9 4 . 9 %と高!/ヽ値を示し、 い ずれも、 サイクル寿命特性に優れていた。 これに対し、 比較例 2のアルカリ蓄電池 では、 サイクル寿命特性値が 8 2 . 5 %と低い値を示し、 他の電池に比して、 サイ クル寿命特性がかなり劣っていた。
サイクル充放電試験後、 それぞれの電池を分解し調査したところ、 比較例 2の アルカリ蓄電池では、 ニッケル正極が、 充放電前の状態と比較して、 1 0 %程度厚 くなつていた。 これは、 充放電に伴う正極活物質 (水酸化ニッケル粒子) の膨張に より、 発泡ニッケル基板が大きく押し広げられ、 エッケル正極が膨張したと考えら れる。 これにより、 セパレータが圧縮されたため、 セパレータ内の電解液が著しく 減少し、 内部抵抗が著しく上昇していた。 これが原因で、 サイクル寿命特性が低下 してしまったと考えられる。
これに対し、 実施例 5〜 7及び比較例 3のアルカリ蓄電池では、 正極がほとん ど膨張しておらず、 セパレータ内の電解液の減少もほとんどなく、 内部抵抗もほと んど上昇していなかつた。 これは、 実施例 5〜 7及び比較例 3では、 比較例 2と異 なり、 正極基板が樹脂骨格を有しているため、 正極基板が強固となり、 充放電に伴 う正極活物質 (水酸化ニッケル粒子) の膨張に起因する変形を抑制することができ たためと考えられる。
ところで、 実施例 5〜 7の正極基板は、 骨格をなす樹脂と、 これを被覆する二 ッケル被覆層との物性(伸び率、強度など)が大きく異なるため、正極基板の膨張'
収縮が大きい場合には、 エッケル被覆層に亀裂が生じたり、 ニッケル被覆層が剥離 してしまう虞がある。 従って、 このような不具合を避けるためには、 正極基板の膨 張-収縮をできる限り抑制することが好ましい。 ところが、 正極活物質をなす水酸 化ニッケルの結晶は、 充放電に伴い、 結晶構造が変化し、 大きく膨張してしまう傾 向にある。
しかしながら、 実施例 5〜 7の-ッケル正極では、 二ッケル被覆層の亀裂や剥 離は生じていなかった。 これは、 正極活物質をなす水酸化ュッケルの結晶内に、 マ グネシゥムを固溶状態で含有させたためと考えられる。 これにより、 充放電に伴う 結晶構造の変化を抑制することができ、 ひいては、 充放電に伴う結晶の膨張を抑制 することができたと考えられる。 これにより、 充放電に伴う正極基板の膨張を抑制 することができ、 ニッケル被覆層に亀裂 ·剥離が生じなかったと考えられる。
以上より、 実施例 5〜7のアルカリ蓄電池は、 高率放電特性が良好で、 且つ、 サイクル寿命特性が良好であると言える。 しかも、 実施例 5〜 7のアルカリ蓄電池 では、 発泡ポリプロピレンの樹脂骨格を焼失させる手間を省くことができ、 正極基 板のニッケル被覆層の平均厚みも 1 . 5 i mと薄くできたため、 安価となった。
実施例 8
本実施例 8では、 ステップ 1において、 発泡ポリプロピレンに対し、 ニッケル めっき液の各組成濃度及ぴ浸漬時間を異ならせることで、 ニッケル被覆層の平均厚 みの異なる 5種類の-ッケル被覆樹脂基板を作製した。 この 5種類の二ッケル被覆 樹脂基板について、 エッケル被覆層の平均厚みを調査したところ、 それぞれ、 0 . 3 5 u rn, 0 . 5 ^ mN 2 // m、 5 μ m、 7 /i mであった。但し、本実施例 8では、 発泡ポリプロピレンの骨格の太さ (本数) を調整することにより、 いずれのニッケ ル被覆樹脂基板についても、 基板全体に占めるニッケル被覆層の割合を 3 0重量% 以上 8 0重量%以下の範囲に調整している。
次いで、 実施例 5のステップ 2 , 3と同様にして、 5種類のニッケル正極を作 製した。 なお、 本実施例 8でも、 実施例 5と同様に、 正極の理論容量を 1 3 0 0 m A hとした。 その後、 実施例 5のステップ 4と同様にして、 AAサイズの円筒密閉 型二ッケル水素蓄電池を 5種類作製した。
(電池特性の評価)
本実施例 8の 5種類のアル力リ蓄電池について、 特性評価を行つた。
まず、 5種類のアルカリ蓄電池について、 それぞれ、 実施例 5と同様にして初 期充放電サイクル試験を行った。 その後、 5種類のアルカリ蓄電池について、 それ ぞれ、 活物質利用率 A (1 C放電時利用率) を算出した。 この結果を、 第 4図に♦ 印で示す。第 4図に示すように、ニッケル被覆層の平均厚みを 0. 5^πι、 2/ m、 5 imとした電池では、 活物質利用率 Aが 95%以上 (具体的には、 順に、 97. 2 %、 98. 1 %、 98. 2%) となり、 優れた充放電効率を得ることができた。 これに対し、 ニッケル被覆層の平均厚みを 0. 35 / mとした電池では、 活物質利 用率 Aが 92. 4%となり、 充放電効率がやや劣る結果となった。 さらに、 ニッケ ル被覆層の平均厚みを 7 μ mとした電池では、活物質利用率が最も低く、 90. 3% となった。 '
初期充放電サイクル試験後、 それぞれの電池を分解し、 ニッケル正極の断面の SEM像を観察したところ、 ニッケル被覆層の平均厚みを 7 /zmとした電池では、 正極基板からニッケル被覆層の一部が剥離していた。 これにより、 活物質利用率 A が低くなつたと考えられる。 また、 ニッケル被覆層の平均厚みを 0. 35 μπιとし た電池では、 ニッケル被覆層を薄くし過ぎたため、 十分な集電性を得ることができ ず、 充放電効率がやや劣る結果となったと考えられる。
次に、 5種類のアルカリ蓄電池について、 それぞれ、 実施例 5と同様にして、 500サイクルの長期充放電サイクル試験を行った。 その後、 5種類のアル力リ蓄 電池について、それぞれ、活物質利用率 C (500サイクル後利用率)を算出した。 この結果を、 第 4図に X印で示す。 第 4図に示すように、 ニッケル被覆層の平均厚 みを 0. 35 mとした電池では、 500サイクル後の活物質利用率が、 84. 9% にまで低下した。 さらに、 エッケル被覆層の平均厚みを 7 とした電池では、 5 00サイクル後の活物質利用率が、 82. 9%にまで低下した。
これに対し、 ニッケル被覆層の平均厚みを 0. 5 j m、 2 μ m, 5 μπιとした 電池では、 500サイクル後の活物質利用率が、 初期充放電後の活物質利用率と比 較して低下したものの、いずれも 90%を上回る高い値(具体的には、順に、 91.
5%、 92. 3%、 92. 5%) を示した。 この結果より、 正極基板のニッケル被 覆層の平均厚みを 0. 5 以上 5 μπι以下とすることで、 長期間にわたり、 充放 電効率を良好とすることができると言える。 また、 長期間にわたり充放電効率が良 好であったということは、 その電池の正極 (正極基板) の集電性が、 長期間にわた り良好であったと言える。 従って、 正極基板のニッケル被覆層の平均厚みを 0. 5 以上 5 μπι以下とすることで、 長期間にわたり、 正極基板の集電性を良好とす ることができると言える。
実施例 9
本実施例 9では、 ステップ 3において、 金属コバルトの添力卩量を異ならせるこ とで、 金属コバルトの含有量のみが異なる 7種類のニッケル正極を作製した。 具体 的には、 金属コバルト粉末を、 正極活物質の 100重量部に対し、 それぞれ、 1重 量部、 1. 5重量部、 2重量部、 4重量部、 6重量部、 9重量部、 1 1重量部の割 合で含有させている (以下、 正極活物質の 100重量部に対する金属コバルトの重 量部を、 単に重量部と表記することもある)。 その他については、実施例 5と同様に して、 A Αサイズの円筒密閉型ニッケル水素蓄電池を 7種類作製した。
(電池特性の評価)
本実施例 9の 7種類のアル力リ蓄電池について、 それぞれ、 実施例 5と同様に して、 初期充放電サイクル試験を行った。 その後、 7種類のアルカリ蓄電池につい て、 それぞれ、 活物質利用率 B ( 5 C放電時利用率) を算出した。 この結果を、 第 5図に♦印で示す。 第 5図に示すように、 金属コバルト粉末を 2重量部以上とした 5種類の電池では、 活物質利用率 Bが 90%程度の値 (具体的には、 順に、 88. 3%、 89. 2%、 90. 9%、 91. 1 %、 90. 3%) となり、 高率放電にお ける正極活物質の利用率を良好とすることができた。
これに対し、 金属コバルト粉末を 2重量部未満 (具体的には、 1重量部、 1. 5重量部) とした 2種類の電池では、 活物質利用率 Bが、 75. 5 %と 82. 8% と、 低い値になった。 第 5図に示すように、 金属コバルト粉末が 2重量部を下回る と、 活物質利用率 Bが大きく低下することがわかる。 この結果より、 金属コバルト 粉末を 2重量部以上とすることで、 高率放電における正極活物質の利用率を良好と
することができると言える。 これは、 ニッケル正極において、 正極活物質 100重 量部に対し、 金属コバルトを 2重量部以上含有させることより、 優れた集電性を得 ることができるためと考えられる。
ところで、 高率放電における正極活物質の利用率が良好であった 5種類の電池 のうち、金属コパルト粉末を 10重量部以下とした 4種類の電池では、電池容量(正 極理論容量)を 130 OmA h程度と比較的大きくすることができた。これに対し、 金属コバルト粉末を 1 1重量部とした電池では、 電池容量 (正極理論容量) が 1 1 0 OmAhと小さくなつた。 これは、 金属コバルトの含有量を増大させるにしたが つて、 正極活物質の充填量が低下し、 正極の容量密度が低下するためである。 この 結果より、 正極活物質 100重量部に対し、 金属コバルトを 10重量部以下とする ことで、電池容量(正極理論容量)を比較的大きく確保することができると言える。
以上の結果より、 ニッケル正極に含有させる金属コバルトの割合は、 正極活物 質の 100重量部に対し、 2〜10重量部とするのが好ましいと言える。
なお、 本実施例 9では、 ニッケル正極に、 金属コバルト粉末を含有させたが、 これに代えて、 γ— C o OOHを含有させるようにしても良い。 γ—CoOOHを 含有させた場合でも、 ニッケル正極に含有させる y— Co ΟΟΗの割合を、 正極活 物質の 100重量部に対し 2重量部以上とすることで、 高率放電における正極活物 質の利用率を良好とすることができた。 また、 正極活物質 100重量部に対し、 Ί _C οΟΟΗを 10重量部以下とすることで、 電池容量 (正極理論容量) を比較的 大きく (1 30 OmAh程度) 確保することができた。 従って、 ニッケル正極に含 有させる γ— CoOOHの割合は、 正極活物質の 100重量部に対し、 2〜10重 量部とするのが好ましいと言える。
但し、 この場合、 γ— C ο·〇ΟΗを含有させる形態は、 単に、 γ— CoOOH の粉末を正極活物質 (水酸化ニッケル粒子) と混合させて、 ニッケル正極に含有さ せるよりも、 正極活物質 (水酸化ニッケル粒子) の表面に γ— C o OOHを被覆さ せたほうが、 より一層高率放電特性が良好となるので好ましい。 これは、 正極活物 質 (水酸化ニッケル粒子) の表面に γ— C ο ΟΟΗを被覆させることにより、 Ί一 C ο ΟΟΗをニッケル正極内で均一に分散させることができ、 ニッケル正極の集電
性を、 より一層優れたものにできるためである。
実施例 1 0
(ステップ 1 :ニッケル被覆樹脂基板の作製)
まず、 ポリプロピレン繊維と、 芯鞘型複合繊維 がポリプロピレンで、 鞘がポ リエチレンからなる繊維) との混合繊維からなる不織布を用意する。 次いで、 この 不織布について、 公知の発煙硫酸によるスルホン化親水処理を施し、 スルホン化不 織布を得た。 なお、 本実施例 1 0で用いた不織布は、 一般的な湿式製法により製作 されたもので、 目付が 1 0 0 g Zm 2、 厚みが l mmである。
次いで、 スルホン化不織布に、 塩化錫を含む水溶液と、 塩化パラジウムを含む 水溶液とを循環させて、 触媒ィヒを行った。 その後、 触媒化を行ったスルホン化不織 布を、 硫酸ニッケル、 クェン酸ナトリウム、 還元剤として水和ヒドラジン、 及び P H調整剤としてアンモニアを含むニッケルめっき液に浸漬させた状態で、 ニッケル めっき液を 8 0 °Cに加熱しつつ、 循環させた。 このようにして、 スルホン化不織布 にニッケル無電解めつきを行った。 なお、 ニッケルめっき液の各組成濃度及び浸漬 時間は、 めっき後の基板に占めるニッケルめっき重量の割合が 5 7重量%となるよ うに調整している。
次いで、 めっき液がほぼ透明となった後、 ニッケル被覆層を施した基板を水洗 し、 その後乾燥させた。 このようにして、 スルホン化不織布からなる樹脂骨格と、 これを被覆するニッケル被覆層とを備え、 複数の孔が三次元に連結した空隙部を有 するニッケル被覆榭脂基板を得ることができた。 このとき、 実際に得られたニッケ ル被覆樹脂基板の重量変化から計算した、 二ッケル被覆樹脂基板全体に占めるニッ ケル被覆層の割合は、 5 5重量%であった。 また、 S EM (走査型電子顕微鏡) に より、 ニッケル被覆樹脂基板の被断面の拡大像を観察して、 ニッケル被覆層の平均 厚みを調査したところ、 2 つであった。
(ステップ 2 :正極活物質の製作)
次に、 実施例 1のステップ 2と同様の手法により、 正極活物質として、 平均粒 径 1 0 / mの水酸化ニッケル粉末を得た。 得られた水酸化ニッケル粉末について、 I C P発光分析により組成分析を行ったところ、 水酸化ニッケル粒子に含まれる全
ての金属元素 (ニッケルとマグネシウム) に対するマグネシウムの割合は、 合成に 用いた混合液と同様に、 5モル%であった。 また、 〇 11:ひ線を用ぃた 線回折パ ターンを記録したところ、 この粒子は、 ^型の N i (OH) 2であることが確認され た。 また、 不純物の存在を示すピークが観察されなかったことから、 マグネシウム が水酸ィ匕ニッケルの結晶に固溶していることが確認できた。
(ステップ 3 : ]3型の結晶構造を有するォキシ水酸化コバルトの製作) 次に、 ]3型の結晶構造を有するォキシ水酸化コバルト (以下、 — CoOOH とも表記する)を製作した。まず、硫酸コバルト水溶液、水酸化ナトリゥム水溶液、 及びアンモニア水溶液を、 それぞれ、 反応槽内に、 一定流量で連続的に供給した。 次いで、 反応槽内の水溶液中に、 一定流量で空気を供給すると共に、 連続的に水溶 液を攪拌することで、 水溶液に含まれるコバルトの酸化を促した。 次いで、 反応槽 内からオーバーフローにより懸濁液を採取し、 デカンテーシヨンにより沈殿物を分 離した。 その後、 この沈殿物を水洗し、 乾燥することにより、 平均粒径 3 μπιの粉 末を得ることができた。
次いで、 得られた粉末について、 CuKa線を使用する X線回折測定を行い、 その結晶構造を調査した。 X線回折パターンを調査したところ、 J3型のォキシ水酸 化コバルトに帰属するピークを確認することができた。 この結果より、 得られた粉 末は、 型の結晶構造を有するォキシ水酸化コバルト (]3— C o00H) であるこ とがわかった。
また、 この — C oOOH粉末について、 I CP発光分析、 及ぴ酸化還元滴定 を行い、 これらの結果に基づいて、 ]3— C oOOHに含まれるコバルトの平均価数 を算出したところ、 2. 95価であった。
(ステップ 4 :ニッケル正極の製作)
次に、 ニッケル正極を作製した。 具体的には、 まず、 ステップ 2で得られた正 極活物質粉末と、 ステップ 3で得られた — C o O O Η粉末と、 金属コパルト粉末 と、 酸ィヒイットリウム粉末と、 酸化亜鈴粉末とを混合し、 これに水を加え、 混練す ることにより、 ペースト状にした。 なお、 金属コバルト粉末及ぴ /3— C οΟΟΗ粉 末は、それぞれ、正極活物質の 100重量部に対し 4重量部の割合で添カ卩している。
また、 酸化ィットリゥム粉末及び酸化亜鉛粉末は、 それぞれ、 IE極活物質の 1 0 0 重量部に対し 1重量部の割合で添カ卩している。
このペーストを、 ステップ 1で得られたニッケル被覆樹脂基板に充填し、 乾燥 した後、 加圧成形することにより、 ニッケル正極板を製作した。 なお、 ペーストを 充填する前に、 ニッケル被覆樹脂基板のうち後に電極リードを溶接する部分を圧延 することで、 空隙部の無いリード溶接部を形成している。 このリード溶接部には、 空隙部が存在しないため、 ペーストが充填されることがない。
次いで、このニッケル正極板を所定の大きさに切断した後、超音波溶接により、 リ一ド溶接部に電極リ一ドを接合した。 このようにして、 理論容量 1 3 0 0 m A h のニッケル正極を得ることができた。 なお、 ニッケル正極の理論容量は、 活物質中 のニッケルがー電子反応をするものとして計算している。また、本実施例 1 0では、 リード溶接部 (正極活物質が充填されていない部分) は、 ニッケル正極には含めな いものとする。 また、 ニッケル正極に含まれるニッケル被覆樹脂基板を、 正極基板 とする。 従って、 正極基板に占めるニッケル被覆層の割合は、 ニッケル被覆樹脂基 板に占める割合と同様に、 5 5重量%となる。
また、 ニッケル正極から、 正極活物質粉末、 金属コバルト粉末、 i3— C o O O H粉末、 酸化イットリウム粉末、 及び酸化亜鉛粉末を取り除き、 水銀ポロシメータ (島津製作所社製、 オートポア III 9 4 1 0 ) により正極基板の孔径分布を測定し た。 この孔径分布に基づいて、 本実施例 1 0の正極基板の平均孔径を算出したとこ ろ、 3 0 μ πιであった。
(ステップ 5 : アル力リ蓄電池の製作)
次に、 実施例 1のステップ 4と同様の手法により、 容量 2 0 0 0 mA hの負極 を得た。 次いで、 この負極と、 上記のステップ 4で作製したニッケル正極とを、 厚 さ 0 . 1 5 mmのスルホン化ポリプロピレン不織布からなるセパレータを間に介し て捲回し、 渦巻状の電極群を形成した。 次いで、 別途用意した金属からなる有底円 筒形状の電槽内に、 この電極群を挿入し、 さらに、 7モル 1の水酸化カリウム水 溶液を 2 . 2 m l注液した。 その後、 作動圧 2 . O M P aの安全弁を備える封口板 により、 電槽の開口部を密閉し、 AAサイズの円筒密閉型ニッケル水素蓄電池を作
製した。
実施例 1 1
本実施例 1 1のアル力リ蓄電池は、 実施例 1 0のアル力リ蓄電池と比較して、 ニッケル正極が異なり、 その他については同様である。 詳細には、 両者とも、 ニッ ケル正極に ]3— C o O O Hを含有させている点では同じであるが、 ]3— C o O O H を含有させる形態が異なる。 以下、 実施例 1 0と異なる点を中心に、 詳細に説明す る。
まず、 ステップ 1及びステップ 2において、 実施例 1 0と同様に、 ニッケル被 覆樹脂基板、 及び正極活物質 (水酸化ニッケル粒子) を作製する。
次に、 ステップ 3において、 実施例 1 0とは異なり、 正極活物質 (水酸化ニッ ケル粒子) の表面に ]3 _ C o O O Hを被覆させた、 ]3— C o O O H被覆正極活物質 を作製した。
具体的には、 まず、 ステップ 2で得られた正極活物質 (水酸ィ匕ニッケル粒子) の水溶液 (懸濁液) を作製する。 次いで、 この水溶液 (懸濁液) 中に、 硫酸コバル ト水溶液、 水酸化ナトリウム水溶液、 及びアンモニア水溶液を供給すると共に、 空 気を供給した。 このようにして、 水酸化ニッケル粒子の表面に、 ォキシ水酸化コパ ルトを析出させ、 ォキシ水酸化コパルト被覆正極活物質 (ォキシ水酸化コパルト被 覆水酸化ニッケル粒子) を得た。 なお、 本実施例 1 1では、 ォキシ水酸化コバルト の被覆量が、 正極活物質 (水酸化ニッケル粒子) の 1 0 0重量部に対し、 4重量部 の割合となるように調整した。 その後、 得られたォキシ水酸化コバルト被覆正極活 物質を水洗し、 乾燥させた。 このようにして、 平均粒径 1 0 μ πιのォキシ水酸化コ パルト被覆正極活物質を得ることができた。
次いで、 得られたォキシ水酸ィ匕コバルト被覆正極活物質について、 I C P発光 分析、 及び酸化還元滴定を^ 1い、 これらの結果に基づいて、 ォキシ水酸化コバルト の被覆層に含まれるコバルトの平均価数を算出したところ、 2 . 9 2価であった。
また、 C u Kひ線を使用する X線回折測定を行い、 被覆層をなすォキシ水酸化 コバルトの結晶構造を調査した。 ォキシ水酸化コパルト被覆正極活物質について、 X線回折パターンを調査したところ、 β型の水酸化二ッケルに帰属するピークと、
]3型のォキシ水酸化コバルトに帰属するピークとを確認するこ.とができた。 この結 果より、 被覆層をなすォキシ水酸ィ匕コバルトは、 型の結晶構造を有するォキシ水 酸ィ匕コバルト ( — C o OOH) であることがわかった。
次に、 ステップ 4において、 実施例 1 0と異なり、 |3— C o OOH粉末を別途 添加することなく、 上記のように、 ]3— C o OOHを正極活物質 (水酸ィ匕ニッケル 粒子) に被覆させた形態 (すなわち、 —C o OOH被覆正極活物質) で加えた。
上記の他は、 実施例 1 0と同様にして、 AAサイズの円筒密閉型ニッケル水素 蓄電池を作製した。 なお、 本実施例 1 1でも、 実施例 1 0と同様に、 正極の理論容 量を 1 3 0 OmAhとしている。また、正極基板に占めるニッケル被覆層の割合は、 実施例 1 0と同様に、 5 5重量%としている。
比較例 4
次に、 前述した実施例 1 0と比較して、 正極基板が異なるアルカリ蓄電池 (比 較例 4) を作製した。 具体的には、 ステップ 1において、 発砲ポリウレタンシート の樹脂骨格にュッケルめっきを施した後、 樹脂骨格を焼失させることにより、 発泡 ニッケル基板を作製した。 なお、 この発泡ニッケル基板のニッケル骨格の平均厚み は、 5. であった。 その後、 実施例 1 0のステップ 2〜4と同様にして、 A
Aサイズの円筒密閉型ニッケル水素蓄電池を作製した。 なお、 本比較例 4でも、 実 施例 1 0と同様に、 '正極の理論容量を 1 3 0 0 m A hとした。
比較例 5
次に、 前述した実施例 1 0と比較して、 二ッケル正極が異なるアル力リ蓄電池
(比較例 5) を作製した。 具体的には、 ステップ 4において、 実施例 1 0で加えた 金属コパルト粉末及ぴ _C o OOH粉末に代えて、一酸化コバルト粉末を加えた。 なお、 一酸化コバルト粉末の添加量は、 実施例 1 0の金属コパルト粉末及び β—C o OOH粉末の添加量と等しくなるように、 正極活物質の 1 0 0重量部に対し 8重 量部の割合とした。 その他は、 実施例 1 0と同様にして、 AAサイズの円筒密閉型 ニッケル水素蓄電池を作製した。 なお、 本比較例 5でも、 実施例 1 0と同様に、 正 極の理論容量を 1 3 0 0 mAhとした。
比較例 6
さらに、 実施例 10と比較して、 ニッケル正極が異なるァ カリ蓄電池 (比較 例 6) を作製した。 具体的には、 ステップ 4において、 金属コバルト粉末を加える ことなく、 ]3— Co O OH粉末を、 正極活物質の 100重量部に対し 8重量部の割 合で添加した。 その他は、 実施例 10と同様にして、 AAサイズの円筒密閉型-ッ ケル水素蓄電池を作製した。 なお、 本比較例 6でも、 実施例 10と同様に、 正極の 理論容量を 130 OmAhとしている。
比較例 7
さらに、 実施例 10と比較して、 -ッケル正極が異なるアル力リ蓄電池 (比較 例 7) を作製した。 具体的には、 ステップ 4において、 ;3— CoOOH粉末を加え ることなく、 金属コバルト粉末を、 正極活物質の 100重量部に対し 8重量部の割 合で添加した。 その他は、 実施例 10と同様にして、 AAサイズの円筒密閉型-ッ ケル水素蓄電池を作製した。 なお、 本比較例 7でも、 実施例 10と同様に、 正極の 理論容量を 1300 mA hとしている。
(電池特性の評価)
次に、 実施例 10, 1 1及び比較例 4〜 7のアル力リ蓄電池について、 特性評 価を行った。
まず、 初期充放電サイクル後の充放電効率を評価した。 具体的には、 実施例 5 と同檫にして、 それぞれの電池について、 活物質利用率 A、 及ぴ活物質利用率 Bを 算出した。 さらに、 それぞれの電池の高率放電特性を示す指標として、 活物質利用 率 Aに対する活物質利用率 Bの比率 (BZA) XI 00 (%) (高率放電特性値) を 算出した。
次いで、 60°Cの高温において、 1 Cの電流で 1. 2時間充電し、 その後、 2 0°Cにおいて、 1 Cの電流で電池電圧が 0. 8 Vになるまで放電した。 このときの 放電容量に基づき、それぞ lの電池について、活物質利用率 Eを算出した。さらに、 それぞれの電池の高温充電特性を示す指標として、 活物質利用率 Aに対する活物質 利用率 Eの比率 (E/A) XI 00 (%) を算出した (以下、 この値を高温充電特 性値とも言う)。 ·
次に、 長期充放電サイクル後の充放電効率を評価した。 具体的には、 それぞれ
の電池について、 20°Cにおいて 1 Cの電流で 1. 2時間充電し、. その後、 1 Cの 電流で電池電圧が 0. 8 Vになるまで放電する充放電サイクルを、 1 000サイク ル行った。 そして、 1 000サイクル目の放電容量に基づき、 それぞれの電池につ いて、 活物質利用率 Dを算出した。 この算出結果に基づき、 それぞれの電池のサイ クル寿命特性を示す指標として、活物質利用率 Aに対する活物質利用率 Dの比率(D /A) XI 00 (%) を算出した (以下、 この値をサイクル寿命特性値とも言う)。
なお、 活物質利用率 A, B, D, Eは、 いずれも、 活物質中のニッケルがー電 子反応したときの理論電気量に対して算出している。また、先の実施例 1〜 8では、 サイクル寿命特性を評価するにあたり、 電池に施す充放電サイクルを 500サイク ルとしたが、 ここでは、 さらに 500サイクル追加した 1 000サイクルもの充放 電サイクルを施していることに注目すべきである。 これらの特性評価の結果を表 2 に示す。
[表 2]
ここで、 それぞれの電池について、 特性評価の結果を比較検討する。
まず、 高率放電特性値 (B/A) XI 00 (%) について比較する。 実施例 1 0, 1 1及び比較例 4, 7のアルカリ蓄電池では、 高率放電特性値が 94%程度の 高い値を示し、 いずれも、 高率放電特性に優れていた。 これに対し、 比較例 5のァ ルカリ蓄電池では、 高率放 ¾特性値が 9 1. 2 %となり、 他の電池に比して、 高率 放電特性が劣っていた。 さらに、 比較例 6のアルカリ蓄電池では、 高率放電特性値 が 8 7. 3%となり、 他の電池に比して、 高率放電特性がかなり劣っていた。 これ は、 実施例 1 0, 1 1及ぴ比較例 4, 7のアル力リ蓄電池では、 -ッケル正極に、 導電性の高い金属コバルトを含有させているのに対し、 比較例 5, 6のアルカリ蓄
電池では、 金属コバルトを含有させることなく、 導電性の低い一酸化コバルト, J3 — C o O O Hを含有させたためと考えられる。
ところで、 従来より、 発泡ニッケル基板を用いたニッケル正極に、 導電性の低 レ、一酸化コパルトを含有させたアル力リ蓄電池が知られているが、 この従来の電池 では、 導電性の高い金属コバルトを含有させたものと、 同程度の高率放電特性を得 ることができた。 これは、 発泡ニッケル基板を用いた電池では、 ニッケル正極に、 導電性の低い一酸ィ匕コバルトを含有させた場合でも、 初回の充電過程で生じる酸化 反応により、 一酸化コバルトを、 導電性の高いォキシ水酸化コバルトに変化させる ことができたためである。
ところ力 同様に一酸ィ匕コバルトを含有させた比較例 5のアルカリ蓄電池では、 金属コバルトを含有させた他の電池に比して、高率放電特性が低くなった。これは、 比較例 5のアルカリ蓄電池では、 正極基板に、 榭脂骨格を有するニッケル被覆樹脂 基板 (樹脂骨格と、 これを被覆するニッケル被覆層とを有する正極基板) を用いて いるためであると考えられる。 具体的には、 ニッケル被覆樹脂基板は、 発泡-ッケ ル基板と比較すると、樹脂骨格を有している分、基板自身の導電性が低くなるので、 充電過程における一酸化コバルトの酸ィヒ反応が進行し難くなり、 導電性の高いォキ シ水酸化コバルトが生成し難くなると考えられる。 このため、 比較例 5のアルカリ 蓄電池では、 他の電池と比較して、 ニッケル正極の集電性が低くなり、 高率放電特 性が劣ったと考えられる。
次いで、 高率放電特性に優れていた実施例 1 0, 1 1及ぴ比較例 4, 7のアル カリ蓄電池について、 比較検討する。 これらの電池では、 正極基板が大きく異なつ ている。 具体的には、 比較例 4のアルカリ蓄電池では、 正極基板として、 樹脂骨格 を有していない発泡ニッケル基板を用いているのに対し、 実施例 1 0, 1 1及ぴ比 較例 7のアルカリ蓄電池で.は、 いずれも、 樹脂骨格を有するニッケル被覆樹脂基板 を用いている。
前述のように、 従来のアルカリ蓄電池では、 正極基板に、 樹脂骨格を有する二 ッケル被覆樹脂基板を用いた場合、 発泡-ッケル基板を用いた場合と比較して、 高 率放電特性が大きく低下する問題があった。 ところが、 実施例 1 0, 1 1及び比較
例 7のアルカリ蓄電池 (ニッケル被覆樹脂基板) では、 高率放電特性値が、 比較例 4のアル力リ蓄電池(発泡ニッケル基板) と同等以上の値となった。この結果より、 正極基板に、 樹脂骨格を有するニッケル被覆樹脂基板 (樹脂骨格と、 これを被覆す るエッケル被覆層とを有する正極基板) を用いた場合でも、 発泡ニッケル基板を用 いた場合と同等以上の優れた高率放電特性を得ることができると言える。 これは、 ニッケル正極に、 金属コバルトを含有させることで、 良好な導電性ネットワークを 形成することができたためと考えられる。
次に、 実施例 1 0, 1 1及び比較例 4〜 7のアルカリ蓄電池について、 高温充 電特性値 (EZA) X I 0 0 (%) を比較する。 これらのアルカリ蓄電池は、 いず れも、 高温充電特性値が 6 2 %以上の値を示し、 高温充電特性が比較的良好であつ た。 これは、 ニッケル正極に、 酸化イットリウム及び酸化亜鉛を含有させたことに より、 酸素発生過電圧を高めることができ、 高温状態 (6 0 °C) においても、 充電 末期の酸素発生反応を抑制できたためと考えられる。
このうち、 実施例 1 0 , 1 1及び比較例 4のアル力リ蓄電池では、 、ずれも、 高温充電特性値が 7 4 %以上の値を示し、 比較例 5〜 7のアル力リ蓄電池 (いずれ も、 高温充電特'生値が 7 0 %以下) と比較して、 高温充電特 1"生が優れていた。 これ は、 ニッケル正極に、 金属コバルトと ] 3— C o O OHとを含有させることにより、 充電時の酸素発生過電圧を、 さらに高めることができたためと考えられる。 これに より、 高温状態 (6 0 °C) において、 充電末期の酸素発生反応を、 より一層抑制す ることができたと考えられる。
次に、 実施例 1 0, 1 1及ぴ比較例 4〜 7のアルカリ蓄電池について、 サイク ル寿命特性値 (DZA) X I 0 0 (%) を比較する。 実施例 1 0 , 1 1のアルカリ 蓄電池では、 1 0 0 0サイクル後のサイクル寿命特性値が 8 5 °/0程度の高い値を示 し、 いずれも、 サイクル寿命特性に優れていた。 これに対し、 比較例 4〜 7のアル カリ蓄電池では、 サイクル寿命特性値が、 順に、 6 2 . 4 %、 6 7 . 7 %、 7 2 . 8 %、 6 9 . 1 %となり、 実施例 1 0 , 1 1のアル力リ蓄電池に比して、 サイクル 寿命特性がかなり劣っていた。 ·
サイクル充放電試験後、 それぞれの電池を分解し調査したところ、 比較例 4の
アルカリ蓄電池では、 ニッケル正極が、 充放電前の状態と比較して、 約 1 2 %程度 厚くなつていた。 これは、 充放電に伴う正極活物質 (水酸化ニッケル粒子) の膨張 により、 発泡ニッケル基板が大きく押し広げられ、 ニッケル正極が膨張したと考え られる。 これにより、 セパレータが圧縮されたため、 セパレータ内の電解液が著し く減少し、 内部抵抗が著しく上昇していた。 これが原因で、 サイクル寿命特性が低 下してしまったと考えられる。
これに対し、 実施例 1 0, 1 1及び比較例 5〜 7のアル力リ蓄電池では、 比較 例 4と比べて正極の膨張の程度が小さかつた。 これは、 実施例 1 0 , 1 1及ぴ比較 例 5〜7では、 比較例 4と異なり、 正極基板が樹脂骨格を有しているため、 正極基 板が強固となり、 充放電に伴う正極活物質 (水酸化ニッケル粒子) の膨張に起因す る変形を抑制することができたためと考えられる。
しかしながら、 このうち、 比較例 5〜 7のアルカリ蓄電池では、 いずれも、 二 ッケル正極をなすニッケルの腐食 (酸化による不働態化) が進行しており、 電解液 も著しく減少していた。 これが原因で、 サイクル寿命特性が低下してしまったと考 えられる。 これは、 次のような理由によるものと考えられる。
比較例 5〜 7のアル力リ蓄電池では、 正極基板に樹脂骨格を残存させているた め、 ステップ 1において、 正極基板 (ニッケル被覆樹脂基板) を、 高温で焼鈍する ことができなかった。このため、 -ッケルの結晶を十分に成長させることができず、 ニッケルの結晶サイズが小さくなってしまったと考えられる。 ニッケルの結晶サイ ズが小さい場合には、 充電時の末期に副反応として生じる酸素の影響で、 ニッケル の腐食 (酸化による不働態化) が進行しやすくなる傾向がある。 このため、 比較例 5〜 7のアル力リ蓄電池では、 充放電を繰り返すにしたがって、 二ッケルの腐食が 進行してゆき、 正極基板の集電性が低下すると共に、 電解液も著しく減少したと考 えられる。
ところが、 実施例 1 0 , 1 1のアル力リ蓄電池では、 比較例 5〜 7のアル力リ 蓄電池と同等の正極基板 (ニッケル被覆榭脂基板) を用いているにも拘わらず、 上 記のような不具合が生じなかった。 これは、 実施例 1 0 , 1 1では、 比較例 5〜 7 と異なり、 ニッケル正極に、 金属コバルトと共に、 ]3型の結晶構造を有するォキシ
水酸化コバルトを含有させたためと考えられる。 すなわち、 ニッケル正極に、 金属 コパルトと 型の結晶構造を有するォキシ水酸化コバルトとを含有させることによ り、 充電時の酸素発生過電圧を高めることができたと考えられる。 これにより、 充 電時における酸素発生反応を抑制し、 ニッケルの腐食 (酸ィヒによる不働態化) を抑 制することができ、 サイクル寿命特性を良好とすることができたと考えられる。 ' ところで、 実施例 1 0 , 1 1のアルカリ蓄電池で用レ、た正極基板 (二ッケル被 覆榭脂基板) は、 骨格をなす樹脂と、 これを被覆するニッケル被覆層との物性 (伸 ぴ率、 強度など) が大きく異なるため、 正極基板の膨張'収縮が大きい場合には、 ニッケル被覆層に亀裂が生じたり、 ニッケル被覆層が剥離してしまう虞がある。 従 つて、 このような不具合を避けるためには、 正極基板の膨張 ·収縮をできる限り抑 制することが好ましい。 ところが、 正極活物質をなす水酸化ニッケルの結晶は、 充 放電に伴い、 結晶構造が変化し、 大きく膨張してしまう傾向にある。
しかしながら、 実施例 1 0, 1 1のアルカリ蓄電池では、 ニッケル被覆層の亀 裂や剥離は生じていなかった。 これは、 正極活物質をなす水酸化ニッケルの結晶内 に、 マグネシウムを固溶状態で含有させたためと考えられる。 これにより、 充放電 に伴う結晶構造の変化を抑制することができ、 ひいては、 充放電に伴う結晶の膨張 を抑制することができたと考えられる。 これにより、 充放電に伴う正極基板の膨張 を抑制することができ、ニッケル被覆層に亀裂'剥離が生じなかったと考えられる。
以上より、 実施例 1 0, 1 1のアルカリ蓄電池は、 高率放電特性が良好で、 且 つ、 サイクル寿命特性が良好であると言える。 しかも、 実施例 1 0, 1 1のアル力 リ蓄電池では、 樹脂骨格 (不織布) を焼失させる手間を省くことができ、 正極基板 のニッケル被覆層の平均厚みも 2 μ ιηと薄くできたため、 安価となった。
さらに、実施例 1 0と実施例 1 1のアル力リ蓄電池を比較する。両者は、共に、 ニッケル正極に) 3— C ο Ο Ο Ηを含有させている点では同じであるが、 含有させる 形態が異なっており、 その他については同様としている。 具体的には、 実施例 1 0 では、 単に、 j8— C ο Ο Ο Ηの粉末を正極活物質 (水酸化ニッケル粒子) と混合さ せて、 ニッケル正極に含有させているのに対し、 実施例 1 1では、 '正極活物質 (水 酸化ニッケル粒子) の表面に、 j8— C ο Ο Ο Ηを被覆させている。
そこで、 実施例 1 0及び実施例 1 1のアル力リ蓄電池について、 サイクル寿命 特性値を比較すると、 実施例 1 1のほう力 S、 実施例 1 0 (84. 4%) よりも高い 値 (8 5. 8%) を示した。 すなわち、 実施例 1 1のアルカリ蓄電池では、 実施例 1 0のアル力リ蓄電池よりも、 優れたサイクル寿命特性を得ることができた。 これ は、 正極活物質 (水酸化ニッケル粒子) の表面に ]3— C o OOHを被覆させること により、 /3— C o OOHをニッケル正極内で均一に分散させることができ、 ニッケ ル正極の集電性をより一層優れたものにできたためと考えられる。
実施例 1 2
本実施例 1 2では、 ステップ 1において、 スルホン化不織布に対し、 ニッケル めっき液の各組成濃度及ぴ浸漬時間を異ならせることで、 ニッケル被覆層の平均厚 みの異なる 5種類のニッケル被覆榭脂基板を作製した。 この 5種類のニッケル被覆 榭脂基板について、 ニッケル被覆層の平均厚みを調査したところ、 それぞれ、 0. 4 5 m 0. 5 0 μηι、 2. 0 0 μ m, 5. 0 0 m、 5. 5 0 jumであった。 なお、 本実施例 1 2でも、 いずれのニッケル被覆樹脂基板についても、 基板全体に 占めるニッケル被覆層の割合を 3 0重量%以上 8 0重量%以下の範囲に調整してい る。
次いで、 実施例 1 0のステップ 2〜4と同様にして、 5種類のニッケル正極を 作製し'た。 なお、 本実施例 1 2でも、 実施例 1 0と同様に、 正極の理論容量を 1 3 0 0 mA hとした。 その後、 実施例 1 0のステップ 5と同様にして、 A Aサイズの 円筒密閉型-ッケル水素蓄電池を 5種類作製した。
(電池特性の評価)
本実施例 1 2の 5種類のアル力リ蓄電池について、 特性評価を行った。
まず、 5種類のアルカリ蓄電池について、 それぞれ、 実施例 1 0と同様にして 初期充放電サイクル試験を行った。 その後、 5種類のアルカリ蓄電池について、 そ れぞれ、 活物質利用率 A (1 C放電時利用率) を算出した。 この結果を、 第 6図に ♦印で示す。第 6図に示すように、ニッケル被覆層の平均厚みを 0. 5 0 m、 2. 0 0 μΐχι, 5. Ο Ο μηιとした電池では、 活物質利用率 Αが 9 7 %以上 (具体的に は、 順に、 9 7. 5 %、 9 8. 5%、 9 8. 5%) となり、 優れた充放電効率を得
ることができた。 これに対し、 ニッケル被覆層の平均厚みを 0. 45 /zmとした電 池では、活物質利用率 Aが 94. 1 %となり、充放電効率がやや劣る結果となった。 さらに、 ニッケル被覆層の平均厚みを 5. 50 /i mとした電池では、 活物質利用率 が最も低く、 91. 0%となった。
初期充放電サイクル試験後、 それぞれの電池を分解し、 ニッケル正極の断面の
SEM像を観察したところ、 ニッケル被覆層の平均厚みを 5. 50 μπιとした電池 では、 正極基板のニッケル被覆層に亀裂が生じていた。 これにより、 ニッケル正極 の集電性が低下し、 活物質利用率 Αが低くなつたと考えられる。 また、 ニッケル被 覆層の平均厚みを 0. 45 /imとした電池では、 ニッケル被覆層を薄くし過ぎたた め、 十分な集電性を得ることができず、 充放電効率がやや劣る結果となったと考え られる。
次に、 5種類のアルカリ蓄電池について、それぞれ、実施例 10と同様にして、 1000サイクルの長期充放電サイクノレ試験を行った。 その後、 5種類のアルカリ 蓄電池について、 それぞれ、活物質利用率 D (1000サイクル後の活物質利用率) を算出した。 この結果を、 第 7図に♦印で示す。 第 7図に示すように、 ニッケル被 覆層の平均厚みを 0. 45 mとした電池では、 活物質利用率 Dが、 75. 4%に まで低下した。 さらに、ニッケル被覆層の平均厚みを 5. 50 μ mとした電池では、 活物質利用率 Dが、 75. 3%にまで低下した。
これに対し、 エッケル被覆層の平均厚みを 0. 50 /im、 2. 00/ m、 5. 00 μ mとした電池では、 1000サイクル後の活物質利用率 Dが、 初期充放電後 の活物質利用率 Aと比較して低下したものの、 いずれも 81%を上回る高い値 (具 体的には、順に、 81. 7%、 83. 1%、 83. 2%) を示した。 この結果より、 正極基板のニッケル被覆層の平均厚みを 0. 5 μπι以上 5 m以下とすることで、 長期間にわたり、 充放電効率を良好とすることができると言える。 また、 長期間に わたり充放電効率が良好であったということは、 その電池の正極 (正極基板) の集 電性が、 長期間にわたり良好であったと言える。 従って、 正極基板のニッケル被覆 層の平均厚みを 0. 5 m以上 5 m以下とすることで、 長期間にわたり、 正極基 板の集電性を良好とすることができると言える。
実施例 13
本実施例 13では、 実施例 10と比較して、 ステップ 4において、 金属コバル トの添加量を異ならせることで、 金属コバルトの含有量のみが異なる 7種類の-ッ ケル正極を作製した。 具体的には、 金属コバルト粉末を、 正極活物質の 100重量 部に対し、 それぞれ、 1重量部、 1. 5重量部、 2重量部、 4重量部、 7重量部、 10重量部、 1 1重量部の割合で含有させている (以下、 正極活物質の 100重量 部に対する金属コバルトの重量部を、単に重量部と表記することもある)。その他に ついては、 実施例 10と同様にして、 A A ィズの円筒密閉型ニッケル水素蓄電池 (理論容量 1300 mAh) を 7種類作製した。
(電池特性の評価)
本実施例 13の 7種類のアル力リ蓄電池について、 それぞれ、 実施例 10と同 様にして、 充放電サイクル試験を行った。 その後、 7種類のアルカリ蓄電池につい て、 それぞれ、 活物質利用率 A, Bを算出した。 次いで、 それぞれの電池の高率放 電特性を示す指標として、活物質利用率 Aに対する活物質利用率 Bの比率(BZA) XI 00 (%) を算出した。 この結果を、 第 8図に♦印で示す。
第 8図に示すように、 7種類のアルカリ蓄電池では、 利用率比率 (BZA) X 100 (%) の値 (高率放電特性値) 、 いずれも、 90%より高い値を示し、 高 率放電特性が良好であった。 さらに、 金属コバル 粉末の含有量と利用率比率 (B /A) XI 00 (%) の値との関係について、 詳細に検討すると、 2重量部を境界 として、 高率放電特性値が大きく異なることがわかった。
具体的には、 第 8図に示すように、 金属コバルト粉末を 2重量部未満 (具体的 には、 1重量部、 1. 5重量部) とした 2種類の電池では、 利用率比率 (B/A) XI 00 (%) の値が、 92%程度 (具体的には、 9 1. 7%と 92. 3%) であ つた。 これに対し、 金属コバルト粉末を 2重量部以上とした 5種類の電池では、 利 用率比率 (BZA) XI 00 (%) の値が、 94%程度 (具体的には、 順に、 93. 8 %、 94. 1 %、 94. 2 %、 94. 2 %、 93. 6 %) で、 2重量部未満とし た電池よりも、 2%程度も高くなつた。 ·
以上より、 金属コバルト粉末を 2重量部以上とすることで、 優れた高率放電特
性を得ることができると言える。 これは、 ニッケル正極において、 正極活物質 1 0 0重量部に対し、 金属コバルトを 2重量部以上含有させることより、 優れた集電性 を得ることができるためと考えられる。
ところで、 高率放電特性が良好であった 5種類の電池のうち、 金属コバルト粉 末を 1 0重量部以下とした 4種類の電池では、 電池容量 (正極理論容量) を 1 30 OmAh程度と比較的大きくすることができた。 これに対し、 金属コバルト粉末を 1 1重量部とした電池では、 電池容量 (正極理論容量) が 1 1 00mA hと小さく なった。 これは、 金属コバルトの含有量を増大させるにしたがって、 正極活物質の 充填量が低下し、 正極の容量密度が低下するためである。 この結果より、 正極活物 質 1 00重量部に対し、金属コバルトを 1 0重量部以下とすることで、電池容量(正 極理論容量) を比較的大きく確保することができると言える。
以上の結果より、 ニッケル正極に含有させる金属コバルトの割合は、 正極活物 質の 1 00重量部に対し、 2〜1 0重量部とするのが好ましいと言える。
実施例 14
本実施例 14では、 実施例 1 0と比較して、 ステップ 4において、 jS— C oO
OHの添加量を異ならせることで、 j3_C o OOHの含有量のみが異なる 7種類の ニッケル正極を作製した。 具体的には、 i3— C o OOH粉末を、 正極活物質の 1 0 0重量部に対し、 それぞれ、 1重量部、 1. 5重量部、 2重量部、 4重量部、 7重 量部、 1 0重量部、 1 1重量部の割合で含有させている (以下、 正極活物質の 1 0 0重量部に対する — C oOOHの重量部を、 単に重量部と表記することもある)。 その他については、 実施例 1 0と同様にして、 AAサイズの円筒密閉型ニッケル水 素蓄電池を 7種類作製した。
(電池特性の評価)
本実施例 14の 7種類 アル力リ蓄電池について、 それぞれ、 実施例 1 0と同 様にして、 充放電サイクル試験を行った。 その後、 7種類のアルカリ蓄電池につい て、 それぞれ、 活物質利用率 A, Dを算出した。 次いで、 それぞれの電池のサイク ル寿命特性を示す指標として、 活物質利用率 Aに対する活物質利用率 Dの比率 (D /A) XI 00 (%) を算出した。 この結果を、 第 9図に♦印で示す。 第 9図に示
すように、 i3— C o OOHを 2重量部以上とした 5種類の電池では、利用率比率(D /A) XI 00 (%) の値が、 順に、 84. 5%、 84. 4%、 84. 5%、 84.
7 %、 85. 2 %となり、 優れたサイクル寿命特性を示した。
これに対し、 ]3 _C o OOHを 2重量部未満 (具体的には、 1重量部、 1. 5 重量部) とした 2種類の電池では、 利用率比率 (DZA) xl 00 (%) の値が、
84%以下となり、 2重量部以上とした 5種類の電池に比して、 低い値になった。 さらに、 第 9図より、 — C oOOHが 2重量部を下回ると、利用率比率 (DZA) xl 00 (%) が急激に低下する傾向がわかる。 この結果より、 /8— CoOOHを 2重量部以上とすることで、サイクル寿命特性を良好とすることができると言える。 これは、 ニッケル正極において、 金属コバルトに加え、 正極活物質 100重量部に 対し i3 _C o OOHを 2重量部以上含有させたことより、 充電時の酸素発生過電圧 を、 好適に高めることができたためと考えられる。 これにより、 充電時における酸 素発生反応を好適に抑制し、 ニッケルの腐食 (酸化による不働態化) を好適に抑制 することができたと考えられる。
ところで、 サイクル寿命特性が良好であった 5種類の電池のうち、 /3— CoO
OH粉末を 10重量部以下とした 4種類の電池では、 電池容量 (正極理論容量) を 1 30 OmAh程度と比較的大きくすることができた。 これに対し、 j3— CoOO H粉末を 1 1重量部とした電池では、 電池容量 (正極理論容量) が 110 OmAh と小さくなつた。 これは、 — C oO〇Hの含有量を増大させるにしたがって、 正 極活物質の充填量が低下し、正極の容量密度が低下するためである。この結果より、 正極活物質 100重量部に対し、 j3— CoOOHを 10重量部以下とすることで、 電池容量 (正極理論容量) を比較的大きく確保することができると言える。
以上の結果より、 ニッケル正極に含有させる ]3— CoOOHの割合は、 正極活 物質の 100重量部に対し、. 2〜10重量部とするのが好ましいと言える。
実施例 1 5
本実施例 15では、 ステップ 3において、 反応槽内の水溶液中への空気供給量 を調整する (すなわち、 反応槽内の水溶液中の酸素濃度を調整する) ことにより、 ]3— C o OOHに含まれるコバルトの平均価数を異ならせた。 具体的には、 コパル
トの平均価数が、 2. 5価、 2. 6価、 2. 8価、 3. 0価、 3. 1価と異なる、 5種類の i3—CoOOHを作製した。 その他については、 全て実施例 10と同様に して、 /3— C o OOHに含まれるコバルトの平均価数のみが異なるアルカリ蓄電池 を、 5種類作製した。
(電池特性の評価)
本実施例 15の 5種類のアル力リ蓄電池について、 それぞれ、 実施例 10と同 様にして、 充放電サイクル試験を行った。 その後、 5種類のアルカリ蓄電池につい て、 それぞれ、 活物質利用率 A, B, Dを算出した。 この結果を表 3に示す。
[表 3]
さらに、 活物質利用率 A, B, Dの値に基づいて、 高率放電特性を示す指標と して利用率比率 (B/A) XI 00 (%) を算出し、 サイクル寿命特性を示す指標 として利用率比率 (DZA) XI 00 (%) を算出した。 この結果を表 4に示す。
[表 4]
まず、 活物質利用率 Aについて検討すると、 表 3に示すように、 いずれの電池 においても高い値 (96. 5以上) を示したが、 j3— C o OOHに含まれるコバル トの平均価数が大きくなるにしたがって、 活物質利用率 Aの値が低下する傾向があ ることがわかった。
さらに、 活物質利用率 Bの値を比較すると、 ]3— C oOOHに含まれるコバル トの平均価数の値を 3. 0以下 (具体的には、 2. 5, 2. 6, 2. 8, 3. 0) とした 4種類の電池では、 いずれも、 90%以上の値を示し、 高率放電時において も優れた活物質利用率を得ることができた。 これに対し、 コバルト平均価数を 3. 0価より大きく (具体的には、 3. 1価) した電池では、 活物質利用率 Bが 88. 4%と良好な値ではあったが、 他の 4種類の電池と比べて、 高率放電時での充放電 効率がやや劣る結果となつた。
また、 利用率比率 (BZA) xl 00 (%) の値を比較すると、 表 4に示すよ うに、 コバルト平均価数を 3. 0以下とした 4種類の電池では、 いずれも、 93% 以上の値を示し、高率放電特性が優れていた。 これに対し、 3. 0価より大きく (具 体的には、 3. 1価) した電池では、 91. 6%となり、 高率放電特性が良好では あつたが、 他の 4種類の電池と比べて、 やや劣る結果となった。
これは、 コバルトの平均価数が 3. 0価よりも大きい場合には、 ォキシ水酸化 コバルト結晶中の電荷のバランスが崩れ、 )8型の結晶構造から γ型の結晶構造に転 移しやすくなるためと考えられる。 γ型の結晶構造を有するォキシ水酸ィヒコバルト は、酸化力が強いため (自身は還元されやすく)、正極に含有させた金属コバルトを 酸化してしまう。 このため、 正極内部の導電性ネットワークの形成が妨げられ、 特 に、 高率放電時における活物質利用率が低下したと考えられる。
次に、 活物質利用率 Dの値を検討すると、 表 3に示すように、 いずれの電池に おいても、 80%より高い値を示し、 1000サイクルもの長期充放電サイクル試 験後においても、 活物質利用率が良好であった。 さらに、 詳細に検討すると、 コバ ルト平均価数を 2. 6価未満 (具体的には、 2. 5価) とした電池では、 活物質利 用率 Dが 80. 9%であったのに対し、 コバルトの平均価数の値を 2. 6以上 (具 体的には、 2. 6, 2. 8, .3. 0, 3. 1) とした 4種類の電池では、 いずれも、 82%以上であった。 すなわち、 コバルトの平均価数の値を 2. 6以上とした電池 では、 2. 6価未満とした電池よりも、 活物質利用率 Dが優れていた。
また、 利用率比率 (DZA) XI 00 (%) の値 (サイクル寿命特性値) は、 表 4に示すように、 いずれの電池においても、 80%より高い値を示し、 サイクル
寿命特性が良好であった。 さらに、 詳細に検討すると、 コバルト平均価数を 2 . 6 価未満とした電池では、 サイクル寿命特性値が 8 3 . 1 %であったのに対し、 コバ ルトの平均価数の値を 2 . 6以上とした 4種類の電池では、 いずれも、 8 4 %以上 であった。 すなわち、 コバルトの平均価数の値を 2 . 6以上とした電池では、 2 . 6価未満とした電池よりも、 サイクル寿命特·生が優れていた。
これは、 ]3— C o O O Hに含まれるコバルトの平均価数の値を 2 . 6以上とす ることにより、 充電時の酸素発生過電圧を大きく上昇させることができるためと考 えられる。 これにより、 長期間にわたり、 正極に含まれるニッケルの腐食 (酸化に よる不働態化) を抑制することができ、 ひいては、 電池のサイクル寿命特性を良好 とすることができたと考えられる。
以上の結果より、 ニッケル正極において、 jS— C o O O Hに含まれるコバルト の平均価数は、 2 . 6価以上 3 . 0価以下とするのが好ましいと言える。
以上において、 本発明を実施例 1〜1 5に即して説明したが、 本発明は上記実 施例等に限定されるものではなく、 その要旨を逸脱しない範囲で、 適宜変更して適 用できることはいうまでもない。
例えば、 実施例 1〜1 5では、 無電解めつき法により、 樹脂骨格 (発泡ポリプ ロピレン、 不織布) にニッケル被覆層を形成したが、 電気めつき法や気相蒸着法に よって、 あるいは、 無電解めつき法、 電気めつき法、 及ぴ気相蒸着法の手法を 2種 以上組合わせて、 樹脂骨格 (発泡ポリプロピレン、 不織布) にニッケル被覆層を形 成するようにしても良い。 いずれの手法を用いた場合でも、 実施例 1〜1 5と同等 の結果を得ることができた。 また、 無電解めつき法、 電気めつき法、 及ぴ気相蒸着 法の 3種類の手法に限らず、 適宜、 適切な手法を用いるようにしても良い。
また、 実施例 1〜9では、 樹脂骨格として、 発泡樹脂 (具体的には、 発泡ポリ プロピレン) を用いたが、 不織布や織布などを用いるようにしても良い。 具体的に は、 平均孔径が 2 0 m以上 1 0 0 /z m以下の不織布及び織布を用い、 無電解めつ き法により、 ニッケルめっきを施してニッケル被覆樹脂基板 (正極基板) を作製し た。 なお、 不織布及び織布には、 繊維径が 1 0〜3 0 i mのポリプロピレン繊維か らなるものを用いた。 このような榭脂骨格を有する正極基板を用いた場合でも、 実
施例 1〜9と同等の結果を得ることができた。 また、 発泡樹脂、 不織布、 及び織布 に限らず、 三次元網状構造をなし、 複数の孔が三次元に連結した空隙部を有してい る樹脂であれば、 適宜、 正極基板の樹脂骨格として用いることが可能である。
また、 実施例 1 0〜1 5では、 樹脂骨格として、 不織布を用いたが、 織布や発 泡樹脂などを用いるようにしても良い。 実際に、 平均孔径が 2 0 μ ιη以上 1 0 0 m以下の発泡樹脂及び織布を用い、 無電解めつき法により、 ニッケルめっきを施し てニッケル被覆樹脂基板 (正極基板) を作製した。 このような樹脂骨格を有する正 極基板を用いた場合でも、 実施例 1 0〜1 5と同様な結果を得ることができた。 ま た、 発泡樹脂、 不織布、 及び織布に限らず、 三次元網状構造をなし、 複数の孔が三 次元に連結した空隙部を有している樹脂であれば、 適宜、 正極基板の樹脂骨格とし て用いることが可能である。
また、 実施例 1〜9では、 樹脂骨格をなす樹脂として、 ポリプロピレンを用い た。 また、 実施例 1 0〜1 5では、 樹脂骨格をなす樹脂として、 ポリプロピレン及 ぴポリエチレンを用いた。 しかしながら、 樹脂骨格をなす樹脂として、 ポリプロピ レン、 ポリエチレン、 ポリビニルアルコール、 ポリエステル、 ナイロン、 ポリメチ ルペンテン、 ポリスチレン、 及ぴポリテトラフルォロエチレンから選択した少なく とも 1種類の樹脂を用いることにより、 実施例 1〜 1 5と同等の結果を得ることが できた。 これらの樹脂は、 耐アルカリ性に優れているため、 仮に、 樹脂骨格が露出 していたとしても、 アルカリ電解液の影響を受けることがないため、 好適に用いる ことができる。 従って、 樹月旨骨格を露出させないように正極基板を作製すれば、 耐 アルカリ性に優れていない樹脂であっても、 樹脂骨格として用いることが可能であ る。
なお、 樹脂骨格は、 1種の樹脂のみによって形成しても良いし、 2種以上の榭 脂を混合して形成 (例えば、 2種以上の異なる繊維によって不織布を作製) しても 良い。
また、 実施例 1〜 9では、 平均孔径が 3 5 0 μ mの樹脂骨格を用いてニッケル 被覆樹脂基板を作製し、 圧延後、 正極基板の平均孔径を 1 6 Ο μ πιとしたが、 正極 基板は、 平均孔径 1 6 0 / mのものに限定されるものではない。 また、 実施例 1 0
〜1 5では、 平均孔径が 6 0 μ πιの樹脂骨格を用いてニッケル被覆樹脂基板を作製 し、 圧延後、 正極基板の平均孔径を 3 0 ;z mとしたが、 正極基板は、 平均孔径 3 0 mのものに限定されるものではない。 実際に、 平均孔径の異なる正極基板を複数 種類用意して、 これらを用いた電池について、 実施例 1と同様にして、 初期充放電 サイクル試験後の活物質利用率を算出した。 この結果、 正極基板の平均孔径が小さ い電池ほど、 活物質利用率 (活物質利用率 A、 充放電効率) が高くなつた。
これは、 正極基板の空隙部をなす孔の孔径が小さいほど、 正極活物質とニッケ ル被覆層とが接近するので、 両者の接触面積が大きくなり、 これにより、 集電性が 良好となるため、電池の充放電効率(活物質の利用率)が良好となると考えられる。 逆に言うと、 正極基板の空隙部をなす孔の孔径を大きくするほど、 集電性が低下し て、 電池の充放電効率 (活物質の利用率) が低下すると考えられる。 実際に、 平均 孔径が 4 5 0 /z m以下の電池では、 活物質利用率 (活物質利用率 A) が 9 0 %以上 の値を示し、 比較的充放電効率が良好であつたが、 平均孔径を 4 5 0 mより大き くした (具体的には、 平均孔径が 4 7 0 m) 電池では、 活物質利用率 (活物質利 用率 A) が 8 0 %と低く、 充放電効率が好ましくなかった。
また、 電池の充放電効率を向上させるためには、 正極基板の平均孔径をできる 限り小さくするのが好ましいが、 正極活物質 (水酸化ニッケル粒子) の平均粒径が 1 0 β m程度であったため、 正極基板の平均孔径を 1 5 μ m以下とすることは困難 であった。
以上より、 正極基板の空隙部をなす複数の孔の平均孔径は、 1 5 μ m以上 4 5
0 以下とするのが好ましいと言える。
また、 実施例 1〜1 5では、 マグネシウムを固溶状態で含む水酸化ニッケル粒 子を用いて正極活物質を作製した。 しかしながら、 水酸化ニッケル粒子に含有させ る元素は、 マグネシウムのみに限定されるものではなく、 例えば、 亜鉛を固溶状態 で含ませた場合でも、 同様な効果を得ることができた。 さらに、 マグネシウムと亜 鉛の両者を、水酸化ニッケルの結晶内に固溶状態で含ませることにより、より一層、 正極活物質の膨張を抑制でき、 正極基板の膨張を抑制することができた。 また、 水 酸化ニッケルの結晶内には、マグネシウム及び亜鉛以外の元素(例えば、 コバルト)
を固溶状態で含ませるようにしても良い。
また、 実施例 1〜1 5では、 負極に水素吸蔵合金を用いたニッケル水素蓄電池 を作製した。 しかしながら、 本発明は、 ニッケル亜鉛蓄電池やニッケルカドミウム 蓄電池など、 いずれのアル力リ蓄電池についても同様な効果を得ることができる。
また、 実施例 1〜1 5では、 アルカリ蓄電池を円筒型としたが、 このような形 状に限定されるものではない。 ケース内に極板を積層した角形電池など、 いずれの 形態のアル力リ蓄電池についても適用することができる。
また、 実施例 5〜 9のアル力リ蓄電池では、 二ッケル正極に、 酸ィヒィットリウ ム及び酸化亜鉛を含有させたことにより、 高温状態においても、 充電効率を良好と することができた。 具体的には、 電池の放電容量が安定した後、 6 0 °Cにおいて、 1 Cの電流で 1 . 2時間充電し、 その後 1 Cの電流で電池電圧が 0 . 8 Vになるま で放電させたときの活物質利用率に基づいて、高温時の充電特性を評価したところ、 良好な結果となった。 これは、 ニッケル正極に酸化ィットリゥム及び酸化亜鉛を含 有させたことにより、 酸素発生過電圧を高めることができ、 高温状態 (6 0 °C) に おいても、 充電末期の酸素発生反応を抑制できたためと考えられる。
また、 実施例 5〜 1 5のアル力リ蓄電池では、 ュッケル正極に、 酸化ィットリ ゥム及び酸化亜鉛を含有させているが、 1/、ずれか一方のみを含有させるようにして も良い。 酸ィ匕ィットリゥム及び酸化亜鉛の少なくともいずれかを含有させることに より、 酸素発生過電圧を高めることができるので、 高温状態においても充電末期の 酸素発生反応を抑制し、 高温充電効率を良好にできることが確認できた。 ただし、 酸化ィットリゥム及び酸化亜鉛のいずれか一方のみを含有させるよりも、 両者を含 有させたほうが、 優れた高温充電効率を得ることができた。
また、 実施例 5〜 9のアル'力リ蓄電池では、 正極基板に占める二ッケル被覆層 の割合を 6 0重量%としたが、 二ッケル被覆層の割合は、 このような値に限定され るものではない。 同様に、 実施例 1 0〜1 5のアルカリ蓄電池では、 正極基板に占 めるニッケル被覆層の割合を 5 5重量%としたが、 二ッケル被覆層の割合は、 この ような値に限定されるものではない。 実施例 5〜1 5のアルカリ蓄電池について、 実際に、 正極基板に占めるニッケル被覆層の割合を、 2 7〜8 4重量%の範囲で調
整し、 活物質利用率 A, Cを調査したところ、 3 0〜8 0重量%の範囲で、 良好な 結果を得ることができた。 この結果より、 正極基板に占めるュッケル被覆層の割合 を、 3 0重量%以上 8 0重量%以下とすることで、 長期間にわたり、 正極の集電性 を良好とすることができると言える。