明 細 書
アミロイドペプチドの凝集を抑制する蛋白質とその作用
技術分野
[0001] この発明は、アルッノ、イマ一病の症状を抑制 '改善させる薬剤に関する。さらに詳 しくは、この発明はアミロイドペプチドの凝集を抑制し、且つ、脳細胞膜表面に存在 する糖脂質成分と相互作用することにより、アルツハイマー病の症状を抑制 ·改善さ せる薬剤に関するものである。
背景技術
[0002] 高齢ィ匕社会の到来とともに痴呆患者も増カロしており、 65歳以上の約 5%が痴呆患 者と言われて 、るが、神経変性疾患であるアルッノヽイマ一病は老年期の痴呆のほと んどを占める重要な疾患である。その病態発生の第 1段階は脳実質に A ペプチド がシート構造をとり凝集'沈着することにあり、脳細胞表面に存在する脂質成分との結 合により惹起されると考えられており、ひきつづき老人斑の形成と-ユーロンの神経 原性変化を引き起こす。近年、この A j8ペプチドの凝集 ·沈着を阻害するために、 A j8ワクチン ·¾Α |8抗体、 j8シートブレイカーの投与が考えられている(Hock C et al. Antibodies against beta— amyloid slow cognitive decline in Alzneimer s disease. Neur on. 2003 38:547—54., Janus C et al. A beta peptide immunization reduces behaviour al impairment and plaques in a model of Alzheimer's disease. Nature. 2000 408:979- 82., Soto C et al. Beta-sheet breaker peptides inhibit nbnllogenesis in a rat brain m odel of amyloidosis: implications for Alzheimer's therapy. Nat Med. 1998 4:822-6.) 。しかし、いずれも非生理的物質であり副作用を合併する恐れがある。
非特許文献 1 : Neuron. 2003 38:547-554
非特許文献 2 : Nature. 2000 408:979-982
非特許文献 3 : Nat Med. 1998 4:822-826
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0003] この発明はアミロイドペプチドの凝集を抑制し、且つ、脳細胞膜表面に存在する糖
脂質成分と相互作用することにより、アルツハイマー病の症状を抑制 '改善させる方 法を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0004] 上記目的を達成する本発明者は鋭意研究を行 、、次のような知見を得たことに基 づ!、て本発明を完成させた。
1)アルツハイマー病患者剖検脳およびアルツハイマー病モデルマウスにお!、てアミ ロイド ·プラークにし - PGDSが沈着して!/、る。
2)ヒトアミロイド蛋白質に対し、リポカリン型プロスタグランジン D合成酵素 (L - PGD S)が強い親和性を示し、さらにチオフラビン T(ThT)アツセィによる凝集試験におい て強い凝集抑制作用を示す。
3)脳細胞膜表面に存在する糖脂質成分であるスフインゴ糖脂質群に対し、リポカリン 型プロスタグランジン D合成酵素 (L— PGDS)が強い親和性を示し、さらにスフインゴ 糖脂質とヒトアミロイド蛋白質との結合抑制作用を極めて低濃度において示す。
4)上記 2)および 3)の効果はリポカリン型プロスタグランジン D合成酵素のみならずそ の変異体によっても生ずる。その変異体にはプラスタグランジン D合成酵素の活性部 位のシスティン残基を置換したものも含まれる。
[0005] 即ち、本発明は、アルッノ、イマ一病の症状の抑制.改善に用いる薬剤であって、
1)リポカリン型プロスタグランジン D合成酵素(L— PGDS);
2) L— PGDSの少なくとも 1つのシスティン残基を他のアミノ酸残基、例えばァラニン またはセリンによって置換した L— PGDSの変異体;
3) β ラクトグロブリン
4)生体内、特に脳内での L PGDS蛋白質の発現を増強する物質
よりなる群から選択される化合物を有効成分として含む薬剤を要旨とする。
生体内、特に脳内での L PGDS蛋白質の発現を増強する物質としては、エストロ ジェン、ダルココルチコイド、インターロイキン— 1 j8、サイロイドホルモンを含む。 発明の効果
[0006] 本発明の薬剤によれば、アミロイドペプチドの凝集を抑制し、かつ脳細胞膜表面に 存在する糖脂質成分と相互作用することによりアルツハイマー病の症状の抑制、改
善をすることができる。
図面の簡単な説明
[図 1]アルッノヽイマ一病患者剖検脳の老人斑への L PGDSの結合を免疫組織染色 法によって検出した顕微鏡写真の模写図である。 *はアミロイド'プラーク、矢印はォ リゴデンドロサイトに発現する L PGDSを、それぞれ示す。
[図 2]アルツハイマー病モデルマウス Tg2576のアミロイド'プラークに局在している L
— PGDSを免疫組織染色法によって検出した顕微鏡写真の模写図である。
[図 3]ヒトアミロイド'ベータ 1—40ペプチドに対するヒト L— PGDS (Ala2. 3. 4)の濃 度依存的な結合を表面プラズモン共鳴法によって調べた結果を示すグラフである。
[図 4]Α |8 1—40ペプチドのシード依存的な凝集に対する Ala2. 3. 4の抑制効果を レーザー蛍光顕微鏡)で観察した結果を示す写真の模写図である。
[図 5]A j8 1—40ペプチドあるいは A j8 1—42ペプチドの自然凝集に対する Ala2, 3
, 4の用量依存的な抑制効果を ThTアツセィによって調べたした結果を示すグラフで ある。
[図 6]Α |8 1—40ペプチドのシード依存的な凝集に対する Ala2. 3. 4の抑制効果を 原子間力顕微鏡 (AFM)で観察した結果を示す写真の模写図である。
[図 7]ガンダリオシド GM— 1とリボゾーム存在下に凝集が促進される A β 1—40ぺプ チドに対する Ala2. 3. 4の抑制効果を ThTアツセィによって調べた結果を示すダラ フである。
[図 8]Α |8 1—40ペプチドおよび A |8 1—42ペプチドのシード依存的凝集に対する traceの用量依存的な抑制効果を ThTアツセィによって調べた結果を示すグラフ である。
[図 9]Α |8 (1— 40)ペプチドのシード依存的凝集に対する Ala2. 3. 4ペプチドの抑制 効果に対する 2種類のマウス抗ヒト L PGDSモノクローナル抗体の拮抗作用を ThT アツセィによって調べた結果を示すグラフである。
[図 10] A |8 ( 1— 40)ペプチドに対する数種のマウス L PGDS変異体の結合能を表 面プラズモン共鳴法によって調べた結果を示すグラフである。
[図 11]ヒト A j8 1— 42ペプチドを脳室内に投与した野生型マウスあるいは L PGDS
ノックアウトマウスの脳内に残存するヒト A 1—42ペプチドを糸且織ィ匕学的に検出した 結果を示す写真の模写図である。検出にはピオチンで標識したヒト Α |8 1—42ぺプ チドを使用した。
発明を実施するための最良の形態
[0008] 本発明のアルッノヽイマ一病の症状の抑制 '改善に用いる薬剤の第一の態様は L
PGDSを有効成分とする。 L PGDSは哺乳動物由来のものであり、ヒト由来(配 列番号 1、その 1から 21番目のアミノ酸はシグナルペプチドである)およびマウス由来 (配列番号 2、その 1から 24番目のアミノ酸はシグナルペプチドである)のものが好ま しぐヒト由来のものが特に好ましい。
[0009] 本発明のアルッノヽイマ一病の症状の抑制'改善に用いる薬剤の第二の態様は L— PGDS変異体を有効成分とする。本発明における L PGDS変異体は、 L PGDS の置換変異体であって、 3つのシスティン残基の少なくとも 1つを他のアミノ酸残基、 好ましくはグリシン、ァラニン、セリン、ノ リン、ヒスチジン、トレ才ニン、ァスパラギン、ァ スパラギン酸等の比較的サイズの小さ 、アミノ酸で置換した置換体を含む L - PGDS の変異体であり、その具体的な例は、
1)ヒト L— PGDS (配列番号 1)の 65と 167番目のシスティンをァラニンあるいはセリン に置換した蛋白質 (以下、「Alal. 3」および「Serl. 3」とそれぞれ略すことがある);
2)ヒト L— PGDS (配列番号 1)の 89、 167と 186番目のシスティンをァラニンあるい はセリンに置換した蛋白質(以下、「Ala2. 3. 4」および「Ser2. 3. 4」とそれぞれ略 すことがある);
3)マウス L PGDS (配列番号 2)の 65番目のシスティンをァラニンあるいはセリンに 置換した蛋白質 (以下、「Alal」および「Serl」とそれぞれ略すことがある);
4)マウス L— PGDS (配列番号 2)の 89と 186番目のシスティンをァラニンあるいはセ リンに置換した蛋白質 (以下、「Ala2. 3」、「Ser2. 3」とそれぞれ略すことがある) である。
これらの置換変異体において、さらに 1ないし数個のアミノ酸残基を他のアミノ酸残 基で置換したものも本発明の目的を達成することができる。
[0010] 哺乳動物由来 L PGDSは哺乳動物の組織力 得ることも可能である力 遺伝子
組み換え技術により製造するのが便利である。ヒトまたはマウス由来リポカリン型プロ スタグランジン D合成酵素(L— PGDS)のアミノ酸配列は公知である。ヒト由来 L— P GDSのアミノ酸配列を配列番号 1に示す(Hoffinann A et al. , J. Neurochem. 1993 A ug 61(2) 45-46) (配列番号 1の 1から 21番目のアミノ酸残基はシグナルペプチドであ る)。マウス由来の L PGDSのアミノ酸配列を配列番号 2に示す(Hoffinann A et al. ,
Dev Dyn.1996 Nov. 207(3) 332—43; Irikura D et al" J. Biochem. (Tokyo) 2003, Jan.
133(1) 29-32) (配列番号 1の 1から 24番目のアミノ酸残基はシグナルペプチドである )。 L— PGDSをコードする cDNAのヌクレオチド配列も知られている。ヒト由来 L— P GDSをコードする cDNAのヌクレオチド配列を配列番号 3に示す(配列番号 3の 1か ら 63番目のヌクレオチド残基はシグナルペプチドをコードする)。マウス由来 L PG DSをコードする cDNAのヌクレオチド配列を配列番号 4に示す(配列番号 4の 1から 72番目のヌクレオチド残基はシグナルペプチドをコードでする)。従って、適当な宿 主系内で組換え L— PGDSを発現する発現ベクターを構築することができる。得られ た発現ベクターで宿主細胞を形質転換し、この形質転換体を L PGDSをコードす る DNAの発現に適した条件下で培養することにより、組換え L PGDSを製造する ことができる。
[0011] 本発明の L— PGDSをコードする DNAを含有する発現ベクターは当業者既知の方 法で構築することができる。 L— PGDSの発現に適したベクターは、該 DNAの挿入 部位の直ぐ上流に転写開始のためのプロモーターを有するものであろう。適当なプロ モーターも当該技術分野で既知であり、宿主細胞内での機能特性に応じて選択する ことができる。例えば、 SV40ウィルス初期遺伝子のプロモーター、ペプチド鎖延長因 子 EF— 1 aのプロモーター、メタ口チォネイン遺伝子のプロモーター、 13 了クチン のプロモーター、 CMVウイノレスのプロモーター等を動物細胞系での発現で、 T7ポリ メラーゼのプロモーターやベータ一ガラクトシダーゼ遺伝子のプロモーター等を細菌 、大腸菌での発現に用いることができる。ヒト造血器型 PGD合成酵素 DNAの挿入部 位下流には転写終結シグナルがあることが望ましい。
[0012] ベクター中にはたとえば薬物耐性マーカーのような選択可能マーカーが存在する ことが望ましい。あるいは、 L— PGDSをコードするポリヌクレオチドを含有する発現べ
クタ一と別個の抗生物質等の薬物耐性をコードするプラスミドを用いて同時に形質転 換してちよい。
[0013] 発現ベクターを構築するには L—PGDSをコードする DNAを適当なベクターに揷 入する。適当なベクターは、プロモーター、転写終結シグナル、選択マーカーその他 の条件を考慮し、当該技術分野で既知のものから選択する。 L PGDScDNAを挿 入し、培養細胞に導入してこの cDN Aを発現する目的に用いることができる DNAベ クタ一として、例えば動物細胞での発現においては pKCR、 pEF— BOS、 CDM8、 pCEV4ゥシパピローマウィルス DNAなど、大腸菌においては pGEMEX、 pUC等を 挙げることができる。
[0014] L PGDSの発現に用い得る細胞は複製可能で L PGDSをコードする DNAを 発現し得るものであればよい。例えば、大腸菌のような原核性微生物、 S.セレビジェ のような真核性微生物、さらには哺乳類細胞が用いられる。組織培養細胞にはトリ、 または哺乳類細胞、例えばネズミ、ラットおよびサル細胞が含まれる。適当な宿主細 胞ーベクターシステムの選択および使用方法等は、当業者に既知であり、それらの 内力 L— PGDSをコードする cDNAの発現に適した系を任意に選択することができ る。
形質転換した細胞を常法に従い培養することにより所望の蛋白質が得られる。培養 に用いる培地は宿主の性質に応じて適宜選択することができるが、例えば宿主が大 腸菌である場合には LB培地や TB培地力 宿主が哺乳動物細胞である場合には RP MI 1640培地等を適宜用いることができる。
この培養により得られる培養物力ゝらの本発明に用いる蛋白質の単離および精製は 常法により行うことが可能であり、例えば培養物を蛋白質の物理的およびィ匕学的性 質を利用した各種の処理操作を用いて行うことが可能である。具体的には蛋白質沈 殿剤による処理、限外濾過、高速液体クロマトグラフィー、遠心分離、電気泳動、ァフ ィ-ティクロマトグラフィーなどを単独で、または組み合わせて用いることができる。得 られる蛋白質溶液は必要によりこれを凍結乾燥により粉末とすることができる。凍結乾 燥に際しては、ソルビトール,マン-トール,デキストロース,マルトース,グリセロール などの安定剤を加えることができる。
[0015] L PGDSの変異体を製造するには好ましくは位置指定突然変異導入法を用いる 。この方法は周知であり、実施するためのキット(例えば、 STRATAGENE社製、 Quick Change (登録商標) Site- Directed Mutagenesis Kit )が市販されている。
位置指定突然変異導入法により変異を入れるためには、目的の部位にミスマツチコ ドンを含む約 30〜40塩基のプライマ——対を合成し、これらのプライマーを用いて、 野生型のプラスミドを铸型として Pfuポリメラーゼでプラスミド全体を PCR増幅する。 P CR終了後、反応液中には铸型プラスミドと合成された変異体プラスミドが混在するの で、 Dpnlエンドヌクレアーゼ酵素処理を行い、铸型プラスミドを分解除去して変異体 プラスミドを精製する。
[0016] 本発明のアルッノヽイマ一病の症状の抑制'改善に用いる薬剤の第三の態様では j8 ラクトグロブリンを有効成分とする。 ラクトグロブリンは、牛乳中に含まれ、リポカリン ファミリーに属する蛋白質である。 |8ラクトグロブリンは、市販されているものを (例え ば Sigma社)用いることができる。
[0017] 本発明のアルッノヽイマ一病の症状の抑制 '改善に用いる薬剤の第四の態様では L
PGDSの発現を増強させる物質を有効成分とする。 L PGDSの発現を増強させ る物質としては、ェストロジェン(Otsuki M et al. Specific regulation of lipocalin— type prostaglandin D synthase in mouse heart by estrogen receptor beta. Mol Endocrinol. 2003 Sep;17 (9) :1844-55. Epub 2003 Jun 26.)、ダルココルチコイド(Garcia- Fernand ez LF et al. Dexamethasone induces lipocalin— type prostaglandin D synthase gene e xpression in mouse neuronal cells. J Neurochem. 2000 Aug;75 (2) :460-70.)、インタ ~~ロイキン一 1 β (Fujimori K et al. Regulation of lipocalin— type prostaglandin D synt hase gene expression by Hes— 1 through E— box and interleukin— 1 beta via two NF— k appa B elements in rat leptomeningeal cells. J Biol し hem. 2003 Feb 21;278 (8) :6018 -26. Epub 2002 Dec 17.)、サイロイドホルモン(Leone MG et al. Lipocalin type prost aglandin D— synthase: which role in male fertility Contraception. 2002 Apr; 65 (4) :29 3-5.)がある。これらの物質は生体内、特に脳内で L PGDSの発現を増強させるこ とが知られている。
[0018] 本発明の薬剤の有効成分が蛋白質の場合、当該蛋白質を自体公知の担体と混合
希釈して、たとえば液剤などとして製剤化することができる。液剤を調製するには、例 えば精製水、生理食塩水、エタノール 'プロピレングリコール 'グリセリン 'ポリエチレン グリコール等のアルコール類、トリァセチン等の溶媒を用いて行うことができる。このよ うに調整した液剤は、たとえば乳酸リンゲル液、輸液用電解質液よりなる維持液、術 後回復液、脱水補給液、点滴用生理食塩液等に希釈して用いることができる。通常 液剤に適宜選択して用いられる添加剤、例えば、 pH調整用の緩衝剤(例えば、リン 酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、クェン酸緩衝液、酒石酸緩衝液、酢酸緩衝液等)、等張 化剤(例えば、ソルビトール、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコー ル,グルコース、塩ィ匕ナトリウム等)このような製剤にはさらに薬学上許容しうる塩ィ匕べ ンザルコ-ゥム、パラォキシ安息香酸エステル類、ベンジルアルコール、ノ《ラクロルメ タキシノール、クロルクレゾール、フエネチルアルコール、ソルビン酸またはその塩、 チメロサール、クロロブタノール等の適当な防腐殺菌剤、タルク等の湿潤剤、モノォレ イン酸ポリエチレングリコール等の乳化剤、分散剤、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、メタ 重亜硫酸塩等の安定剤のような補助剤を加えても良い。またアラビアゴム、カオリン、 メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等を懸濁化剤として用いた 懸濁剤として投与することも好ま ヽ剤型の 1つと!/、える。
[0019] 投与経路としては非径口的投与が好ましぐ例えば経静脈的投与、経脳脊髄液投 与、カテーテルによる経動脈的な局所投与、もしくは外科的な局所投与を含む。本 発明の有効成分の投与量は、 0. 01〜20.0mgZkgZ日、好ましくは 0. 5〜5mgZ kgZ日である。
[0020] 本発明の薬剤の有効成分がエストロジェン、ダルココルチコイド等の低分子化合物 である場合にも医薬的に受容しうる担体と混合して薬剤を製造できる。この担体は投 与に対して望ましい製剤の形態に応じて広い範囲の形態をとることができる。投与経 路としては非経口的投与、および経口的投与の!/、ずれも使用できる。経口的投与の ための散剤、丸薬、カプセルおよび錠剤は、ラタトース、グルコース、シユークロース、 マ-トール等の賦形剤、澱粉、アルギン酸ソーダ等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシ ゥム、タルク等の滑沢剤、ポリビュルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラ チン等の結合剤、脂肪酸エステルなどの表面活性剤、グリセリン等の可塑剤を用い
て製造できる。本発明の有効成分の投与量は、 0. 001〜10mgZkgZ日、好ましく は 0. 01〜: LmgZkgZ日である。
[0021] さらに、本発明は L PGDSまたはその変異体の遺伝子を遺伝子治療に用い、脳 内で局所的に L PGDS、または変異体を発現させることで、 Α |8蛋白質の凝集'沈 着を抑制し、且つ、脳細胞膜表面に存在する糖脂質成分と相互作用することにより、 アルツハイマー病の症状予防 ·抑制 ·改善に用いる方法を提供する。
本発明のし PGDSまたはその変異体の遺伝子をベクターに組み込み脳内に導 入する。遺伝子治療法に用いるベクターとしてはレトロウイルスベクター、アデノウィル スベクターを含むあらゆるウィルスベクター、リボソームベクターを含む。さらに詳しく は、ウィルスベクターとはウィルスの殻と遺伝子の一部を用い病原性を司る遺伝子を 切り取り、代わりに脳膜もしくはオリゴデンドロサイトで発現するように修飾した L PG DS遺伝子をはめ込んだものである。リボソームベクターとは、主に人工的な脂質二 重膜でできたミクロの球体に、脳膜もしくはオリゴデンドロサイトで発現するように修飾 した L—PGDS遺伝子を組み込んだものである(リポフエクシヨン法)。通常ホスファチ ジルセリンカ なるリボソームが用いられる。この陰電荷を有するリン脂質の代わりに、 より安定したリボソームを作り易い DOTMA(N— [1一(2, 3 ジォレイルォキシ)プ 口ピル]— N, N, N トリメチルアンモ -ゥムクロライド)と呼ばれる陽イオン脂質が巿 販されるようになった。正に荷電して 、るリボソームが負に荷電して 、る細胞を表面に 吸着し、細胞膜と融合することで DNAを細胞内に導入する。このベクターを、静脈注 射、動脈注射、筋肉注射、髄腔内投与、局所投与にて投与する。
以下に本発明を実施例により更に説明するが、本発明が実施例により限定されるも のでないことは明らかである。
実施例
[0022] ¾細
ヒト由 リポカリン型プロスタグランジン D合成酵素の觀告
Ala21から C末端までのヒト L— PGDS遺伝子を cDNAライブラリーから PCR増幅 により得、シグナルペプチドを欠損させて配列番号 3の DNA配列の 67番目から 3'末 端までを発現ベクター pGEX— 2T (アマシャム ·フアルマシア ·バイオテック社)に揷
入して、その発現ベクターで大腸菌(Escherichia coli) DH5 aを形質転換した。 pG EX— 2Tは目的遺伝子をダルタチオン— S トタンスフエラーゼ(GST)遺伝子の下 流に挿入し、 目的蛋白質を GST融合蛋白質として発現するための発現ベクターであ る。続いて、該ベクターを Escherichia coliBL21株に形質転換させた。発現プラスミド で形質転換された該大腸菌株を LB培地(50 μ gZmLアンピシリン含有)にて 37°C で培養した後、 IPTG (イソプロピル一 1—チォ一 13—D—ガラクトシド)を終濃度が 0 . 4力ら 0. 6mMになるように添カ卩して GSTと L—PGDSの融合蛋白質の発現を誘導 し、さらに 4— 6時間培養した。
培養終了後、培養液カゝら大腸菌を回収して、これから超音波破砕処理によって菌 体から蛋白質を抽出した。遠心分離によって、不用物を除去した後、ダルタチオンセ ファロース 4Bカラムに保持させた。カラムに保持された融合蛋白質をトロンビンで消 化し、 L— PGDSフラクションを溶出させた。続いて、ゲル濾過カラムクロマトグラフィ 一にて精製しヒト由来リポカリン型プロスタグランジン D合成酵素を得た。
[0023] 実飾 12
マウス由 リポカリン型プロスタグランジン D合成酵素の製造
実施例 1にお 、てヒト由来し PGDSをコードする cDNAを、マウス由来 L PGDS をコードする cDNA (配列番号 4の DNA配列の 70番目力 3 '末端まで)に変えた外 は実施例 1と同様にしてマウス由来リポカリン型プロスタグランジン D合成酵素を得た
[0024] 実施例 3
ヒト L— PGDSの 65と 167番目のシスティンをァラニンに置換した変異体 (Ala l . 3) の製造
ヒト L— PGDSの Cys65をァラニンに置換した変異体を作成するために、実施例 1 で得られた発現ベクターを铸型として目的部位 (Cys65)にミスマツチコドンを含む一 対の合成オリゴマー:
0 — gcgttgtccatgGCCaagtctgtggtggcc— 3, (目 ti歹 U番号 5)
5 -ggccaccacagactt GL,catggacaacgc-j (酉己列 号 b)
を作成し、 STRATAGENE社製の QuickChange Site-Directed Mutagenesis Kitを用
いて、 Cys65Ala発現ベクターを作成した。
さらに、得られた発現ベクターを铸型として、 目的部位 (Cysl67)にミスマツチコドン を含む一対の合成オリゴマー:
5 - attcaccgccttc Cし aaggcccagggct- 3 (酉己列 号
5 -agccctgggccttGGCgaaggcggtgaat-3 (酉己歹 号 8)
を作成し、 QuickChange Site-Directed Mutagenesis Kitを用いて、 Cys65、 167Ala 発現ベクターを作成した。
[0025] Cys65および 167をァラニンに置換した発現ベクターを Escherichia coliBL21株に 形質転換させた。発現プラスミドで形質転換された該大腸菌株を LB培地(50 gZ mLアンピシリン含有)にて 37°Cで培養した後、 IPTG (イソプロピル— 1—チォ— 13 —D—ガラクトシド)を終濃度が 0. 4力ら 0. 6mMになるように添カ卩して GSTと L— PG DSの融合蛋白質の発現を誘導し、さらに 4— 6時間培養した。
培養終了後、培養液カゝら大腸菌を回収して、これから超音波破砕処理によって菌 体から蛋白質を抽出した。遠心分離によって、不用物を除去した後、ダルタチオンセ ファロース 4Bカラムに保持させた。カラムに保持された融合蛋白質をトロンビンで消 化し、 L— PGDSフラクションを溶出させた。続いて、ゲル濾過カラムクロマトグラフィ 一にて精製しヒト L— PGDSの 65と 167のシスティンをァラニンに置換したヒト PGDS 変異体 (Alal. 3)を得た。
[0026] 実施例 4
ヒト L— PGDSの 65と 167番目のシスティンをセリンに置換した変異体(Serl. 3)の 製诰
Cys65をセリンに置換した変異体を作成するために、実施例 1で得られた発現べク ターを铸型として目的部位 (Cys65)にミスマツチコドンを含む一対の合成オリゴマー
(Cys- 65- Ser用合成オリゴマー):
5 — gcgttgtccatgTCCaagtctgtggtggcc— 3, (目 ti歹 U番号 9)
5 -ggccaccacagacttGLrAcatggacaacgc-3 (酉列 ¾·号 10J
を作成し、 STRATAGENE社製の QuickChange Site-Directed Mutagenesis Kitを用 いて、 Cys65Ser発現ベクターを作成した。
さらに、得られた発現ベクターを铸型として、 目的部位にミスマツチコドンを含む一 対の合成オリゴマー:
5 - attcaccgccttc fCし aaggcccagggct- 3 (目己列 ¾·号 11)
0 -agccctgggccttGGAgaaggcggtgaat-3' (酉己歹 U番号上 2)
作成し、 Quickし hange; te— Directed Mutagenesis Kitを用 ヽて、 Cyso5、 16 / ¾ΘΓ 発現ベクターを作成した。
[0027] Cys65および 167をセリンに置換した発現ベクターを Escherichia coliBL21株に形 質転換させた。発現プラスミドで形質転換された該大腸菌株を LB培地(50 gZmL アンピシリン含有)にて 37。Cで培養した後、 IPTG (イソプロピル一 1—チォ一 β— D —ガラタトシド)を終濃度が 0. 4力ら 0. 6mMになるように添カ卩して GSTと L— PGDS の融合蛋白質の発現を誘導し、さらに 4— 6時間培養した。
培養終了後、培養液カゝら大腸菌を回収して、これから超音波破砕処理によって菌 体から蛋白質を抽出した。遠心分離によって、不用物を除去した後、ダルタチオンセ ファロース 4Bカラムに保持させた。カラムに保持された融合蛋白質をトロンビンで消 化し、 L— PGDSフラクションを溶出させた。続いて、ゲル濾過カラムクロマトグラフィ 一にて精製し、ヒト L— PGDSの 65と 167番目をセリンに置換した変異体(Serl. 3) を得た。
[0028] 実飾 15
ヒト L— PGDSの 89. 167 186番目のシスティンをァラニンに置椽した栾異体 (Ala 2. 3. 4)の製造
実施例 4において、合成オリゴマーの設計を変更した以外は実施例 3と同様にして ヒト L— PGDSの 89, 167と 186番目のシスティンをァラニンに置換した変異体 (Ala 2. 3. 4)を製造した。
[0029] 実施例 6
マウス L— PGDSの 65番目のシスティンをァラニンに置換した変異体 (Alal)の製造
STRATAGENE社製の QuickChange Site-Directed Mutagenesis Kitを用いて、実 施例 2で得られたマウス由来 L PGDS発現プラスミドを铸型としてマウス L PGDS の 65番目のシスティンをァラニンに置換した変異体 (Alal)を次のように製造した。
Cys65を Alaに置換されるようにミスマツチコドンを含む一対の合成オリゴマー
5 ' - gctgtattgtatatgGCAaagacagtggta-3 ' (酉己列番号 13)
5 - taccactgtcttT Ccatatacaatacagc-3 (目 G列 ¾·号 14)
を合成し、これを用いて L— PGDS発現プラスミドを铸型として Cys65Ala変異体ブラ スミドを PCR増幅して得た。得られた変異体発現プラスミドを Escherichia coliBL21株 に形質転換させ、実施例 2と同様の方法でマウス L PGDSの 65番目のシスティン をァラニンに置換した変異体 (Alal)を製造した。
[0030] 実施例 7
マウス L— PGDSの 89と 186番目のシスティンをァラニンに置換した変異体 (Ala2. 3)の ¾¾告
実施例 6において、合成オリゴマーの設計を変更した以外は実施例 6と同様にして マウス L— PGDSの 89と 186番目のシスティンをァラニンに置換した変異体 (Ala2. 3)を製造した。
[0031] ms
マウス L— PGDSの 89 186番目のシスティンおよび 54番目のトリプトファンをァラニ ンに 橼した 謝木の観告
実施例 6において、合成オリゴマーとして
5 ― gcctccaactcaagc CAttccgggagaag—3 ( 歹 ϋ¾·号 l oノ
5 - cttctcccggaa TGCgcttgagttggaggc -3 (目 ΰ列 ¾·号上り)
を設計をし、以下は実施例 6と同様にしてマウス L— PGDSの 89と 186番目のシステ インおよび 54番目のトリブトファンをァラニンに置換した変異体に置換した変異体 (A1 a2. 3)を製造した。
[0032] 実施例 9
マウス L— PGDSの 89と 186番目のシスティンをァラニンに 54番目のトリプトファンを フエ二ルァラニンに置換した変異体の製造
実施例 6において、合成オリゴマーとして
5 - gcctccaactcaagcTTL,ttccgggagaag S ' (酉己列番号 1
ΰ - cttctcccggaaGAAgcttgagttggaggc -3 ' (酉己列番 18)
を設計をし、以下は実施例 6と同様にしてマウス L—PGDSの 89と 186番目のシステ インをァラニンに 54番目のトリブトファンをフエ二ルァラニンに置換した変異体を製造 した。
[0033] 実施例 10
マウス L— PGDSの 89と 186番目のシスティンおよび 111番目のヒスチジンをァラニ ンに置椽した栾異体の製诰
実施例 6において、合成オリゴマーとして
5 - acctacagcagccccGし Ctcgggcagcatc -3 (目己列 ¾·号 19)
0 - gatgctgcccgagGCGgggctgctgtaggt -3 ' (酉己歹 U番号 20)
を設計をし、以下は実施例 6と同様にしてマウス L—PGDSの 89と 186番目のシステ インおよび 111番目のトリブトファンをァラニンに置換した変異体を製造した。
[0034] 実施例 11
マウス L— PGDSの 89 186番目のシスティンをァラニンに 43番目のトリプトファンを フエ二ルァラニンに置橼した栾虽体の観告
実施例 6において、合成オリゴマーの設計を変更した以外は実施例 6と同様にし てマウス L— PGDSの 89と 186番目のシスティンをァラニンに 43番目のトリプトファン をフエ二ルァラニンに置換した変異体を製造した。
[0035] 実施例 12
アルツハイマー病モデルマウスにおけるアミロイド'プラークへのリポカリン型プロスタ グランジン D合成酵素の結合
アルツハイマー病患者剖検脳およびアルツハイマー病モデルマウス Tg2576 (Hsia 0 K et al., し orrelative memory deficits, Abeta elevation, ana amyloid plaques in tran sgenic mice. Science. 274:99-102.1996; Hsiao KK et al. Age-related CNS disorder and early death in transgenic FVB/N mice overexpressing Alzheimer amyloid precur sor proteins. Neuron.l5:1203— 18. 1995)を用いて、アミロイド'プラークと L— PGDS の関連性を免疫組織染色法により解析した(図 1および図 2参照) L— PGDSが、ァ ルツハイマー病患者剖検脳およびアルッノヽイマ一病モデルマウスともにアミロイド'プ ラーク部位に結合して 、ることを同定した。
[0036] 実施例 13
ヒトアミロイド ·ベータペプチドに対する L PGDSの結合能
表面プラズモン共鳴法(Biacore)を用いて、ヒトアミロイド'ベータ 1 40ペプチドに 対する L PGDSのリコンビナント蛋白質 (Ala2. 3. 4)の結合能を解析した(図 3参 照)。 Ala2. 3. 4ίまヒトアミロイド'ベータ 1—40、 1 42ペプチド、更に ίま、 1— 28、 2 5— 35ペプチド断片にも強固な結合を示したが、 1— 16断片には結合を認めなかつ た。また、線維化したヒトアミロイド'ベータ 1—40、 1—42ペプチドにも強固な結合能 を示した。表 1は、表面プラズモン共鳴法による、種々の Α |8ペプチドに対する Ala2 . 3. 4の解離定数を示す。
[0037] [表 1]
A βぺプチド 解離定数 (η Μ)
Α β ( 1-40) 2 0
Α β ( 1-42) 2 7
A β ( 1-16) N D
A β ( 1-28) 1 9
A β ( 25-35) 1 8
A β ( 1-40) 線維 3 1
A β ( 1-42) 線維 2_6
N D : 検出限界以下 (〉 1 μ Μ )
[0038] 実施例 14
ヒトアミロイド 'ベータべプチ に針する L PGDSおよび β -traceの凝暴 ¾制作用
ThT/'ッセィ (Ban T et al., Direct ooservation of amyloid fibril growth monitored b y thioflavin T fluorescence.J Biol Chem. 278:16462—5. 2003)を用い、 A j8 1—40ぺ プチドの凝集に対するヒト髄液より精製した L— PGDS ( β TRACE)およびヒト L— P GDSの変異体 (Ala2. 3. 4)の影響を解析した(図 4〜8参照)。
ThTはクロス'ベータシート構造を特異的に認識する蛍光物質であり、 in vitroで アミロイド線維の伸長とともに ThTの蛍光強度が増加することが知られて 、る。そこで リン酸緩衝液(50mM、 pH7. 5)、 NaCl (lOOmM)ゝ A j8 1—40 (50 M)の混合液 を調製し 37度で保温した。なおその際に L— PGDSの類似物質をそれぞれ濃度調 節し混合させる群も設定した。その各 5 μ 1を lmlの ThT (5 μ Μ)とグリシン緩衝液(5 OmM、 pH8. 5)に混ぜ、蛍光光度計 (励起波長 446nm、蛍光波長 490nm)にて蛍
光強度を経時的に測定した。 ThTアツセィを用い、 Α |8 1— 40および 1 42ペプチド の自然凝集に対するヒト L— PGDSの変異体 (Ala2. 3. 4)の影響を解析したところ、 用量依存的に強 ヽ凝集抑制作用を示した (図 5参照)。
ヒトアミロイド .ベータの凝集反応は線維化ヒトアミロイド ·ベータをシードとして添加す ることで促進される。レーザー蛍光顕微鏡および原子間力顕微鏡により、 A |8 1 -40 ペプチドのシード依存性凝集に対するヒト L— PGDSの変異体 (Ala2. 3. 4)の影響 を解析したところ、強い凝集抑制作用を示した (図 4、 6参照)。
ヒトアミロイド ·ベータの凝集反応はガンダリオシド GM1リボソームをシードとして添 加することでも促進される。 ThTアツセィにより、 A j8 1—40ペプチドの GM1リポソ一 ム依存性凝集に対してもヒト L— PGDSの変異体 (Ala2. 3. 4)は強い凝集抑制作用 を示した (図 7参照)。
上に述べた ThTアツセィを用い、 A j8 1—40および 1—42ペプチドのシード依存性 凝集に対するヒト髄液より精製した i8—traceの影響を解析したところ、用量依存性に 強い凝集抑制作用を示した。(図 8参照)
[0039] 実施例 15
マウス由 ¾杭 PGDSモノクローナル杭体による L PGDSのヒトアミロイド ·ベータ ί 40凝暴 ¾制効 の阳. ,験
上に述べた ThTアツセィを用いて、マウスモノクローナル抗体(1B7および 9A6)と前 処置したヒト Ala2. 3. 4の A j8 1—40ペプチドのシード依存性凝集に対しての影響 を解析したところ、 L— PGDSの Tyr116Thr123付近を認識する 1B7抗体(Oda et.al D evelopment and evaluation of a practical JJ¾A for human urinary lipocalin— type pro staglandin D synthase. Clin Chem. 2002 Sep; 48 (9) :1445- 53.)が抑制効果の阻害を 示した(図 9参照)。
[0040] 実施例 16
ヒトアミロイド .ベータペプチドに対する変異型 L PGDSの結合能
リコンビナント技術により調製した変異型マウス L— PGDS (実施例 3— 11)につい て、上に述べた表面プラズモン共鳴法(Biacore)を用いて、ヒトアミロイド'ベータ 1 40ペプチドに対する変異型 L— PGDSの結合能を解析した(図 10参照)。解離定数
は、 Cys89'185Ala, HismAlaについては 13. 2nM, Cys89,185Ala, Trp54Alaについては 4. OnM Cys89'185Alaについては 3. 5nMと極めて強固な結合能を示した。変異型 L— P GDSの酵素活性とヒトアミロイド'ベータ 1—40ペプチドに対する親和性に正の関連 性を認めた (表 2)。
[表 2]
[0041] 実施例 17
野生型マウスおよび L— PGDSノックアウトマウス(Eguchi N. et al. Proc. Natl. Aca d. Sci., USA, 1999 Jan 19, 96 (2) 726-730)に対するピオチン標識ヒトアミロイドべ タ 1—42脳室内投与実験を行った。図 11は、野生型マウスおよび L— PGDSノックァ ゥトマウスに対し、それぞれ 100 μ Μピオチン標識ヒトアミロイドベータ 1—42を 50 μ 1 脳室内投与した 1時間後に摘出した脳切片の顕微鏡写真である。野生型マウス (左) にくらべ L PGDSノックアウトマウス (右)では、脳室内(上 '中央)にアミロイドベータ の凝集を認め、さらに脳実質 (下)においても沈着を強く認めた。その発色強度は野 生型マウスにくらべ L— PGDSノックアウトマウスでは有意に 4. 82倍強ぐアミロイド ベータのクリアランスが減弱して 、ることを示して 、る。
産業上の利用可能性
[0042] アルツハイマー病の症状の抑制 ·改善に用いる薬剤の製造に用いることができる。