明 細 書
新規ポリフエニルアセチレン誘導体
技術分野
[0001] 本発明は、新規ポリフエ-ルアセチレン誘導体に関するものであり、特にフエニル基 上に水酸基、アミノ基、 2つのエステル、 2つのカルボン酸またはイミドを有するポリフ ェ-ルアセチレン誘導体に関するものである。
背景技術
[0002] 置換アセチレンは適当な遷移金属触媒よつて重合し、高分子量のポリマーを与える ことができる。生成ポリマーは主鎖に共役二重結合を有しており、主鎖の共役に基づ く深い着色、光導電性や非線形光学特性、あるいは物質透過性などの諸性質は、通 常のビュルポリマーには期待できないものである。
[0003] 置換ポリアセチレンは主鎖に交互二重結合を有する共役ポリマーであるので、主鎖 の共役に基づく特性は側鎖の置換基のみならず、主鎖の共役の程度にも大きく依存 する。最も広い共役を有するポリマーは、置換基を持たないポリアセチレンであり、適 当なドーピングによって金属並みの高い導電性を示す。し力しながら、ポリアセチレン は不溶不融であり、成形性は乏しぐまた空気中で不安定なため機能性材料としての 応用は非常に困難である。
[0004] これに対し、適当な置換基を有する置換ポリアセチレンは高い溶解性と安定性を示 し、丈夫な自立膜を与えることから、機能性材料としての応用の可能性は非常に大き い。
[0005] 一方、膜分離は、省資源'省エネルギー的な環境調和型のェコテクノロジーであり、 多くの分野での利用が期待されている。 MF、 UF、 ROなど主に水精製に用いられる 膜分離は、技術的にかなり進歩しており、海水淡水化などは実際に広く利用されてい る。これに対して、気体分離や浸透気化分離は、現状ではまだ限られた分野でしか 実用化されていない。したがって、その条件を満たすための高性能分離膜の開発が 必要である。
[0006] 置換ポリアセチレンは、高い物質透過性を有することを特徴としており、上記高性能
分離膜に利用できる可能性がある。
[0007] その置換基として極性基を有するポリアセチレンは興味深 ヽ透過選択性を示すこと が期待されるが、重合触媒の活性、高分子量ィ匕などの問題カゝら合成は困難であり、こ れらの報告例は非常に少な 、。
[0008] 極性基を有するポリアセチレンとしては、フエニルアセチレンのパラ位にエステルを 有するポリフエ-ルアセチレンモノエステル(非特許文献 1〜4参照)や、フエ-ルァセ チレンのパラ位にアミドを有するポリフエ-ルアセチレンモノアミド (非特許文献 5、 6参 照)が報告されている。
[0009] また、アミノ基を有するポリフエニルアセチレン誘導体の重合については以下の報 告がある。
[0010] Tabataらは、ロジウム触媒を用いて 4- (N,N- dimethylamino)phenylacetyleneの重合 について最初に報告している(非特許文献 7参照)。しかし、高分子量のポリマーを高 収量で得ることは困難であり、得られたポリマーのほとんどはオリゴマーであった。
[0011] また、 Yashimaらは、ロジウム触媒を用いて 3—ェチュルァ-リンおよび 4—ェチュル ァ-リンの重合を報告している(非特許文献 8参照)。しかし、これらのモノマーを高収 量で重合することは困難であり、形成されたポリマーは通常の有機溶媒に不溶であつ た。
[0012] 水酸基を有するポリフエ-ルアセチレン誘導体の重合については、現在までに成功 例は報告されていない。
[0013] 〔非特許文献 1〕Y. Kishimoto, M. Ito, T. Miyatake, T. Ikariya, and R. Noyori, Mac romolecules, 28, 6662 (1995)
〔非特許文献 2〕 B. Z. Tang, X. Kong, X. Wan, and X. D. Feng, Macromolecules, 3
0, 5620 (1998)
〔非特許文献 3〕 X. Kong, J. W. Y. Lam, and B. Z. Tang, Macromolecules, 32, 172 2 (1999)
〔非特許文献 4〕 T. Aoki, M. Kokai, K. Shinohara, and E. Oikawa, Chem. Lett., 20 09 (1993)
〔 特 §午文献 5〕 E. Yashima, S. Huang, and Y. Okamoto, J. Am. Chem. Soc, し hem
. Commun" 1811 (1994)
〔非特許文献 6〕 E. Yashima, S. Hung, T. Matsushima, and Y. Okamoto, Macromole cules, 28, 4184 (1995)
〔非特許文献 7〕Tabata, M., Lindgren, M., Lee, H., Yokota, K., Yang, W. Polymer , 32 (8), 1531-1534, 1991.
〔非特許文献 8〕 Yashima, E., Maeda, Y., Matsushima, T., Okamoto, Y. Chirality, 9 , 593-600, 1997.
上述のように、フエ-ル基上にモノエステルまたはモノアミドを有するポリフエ-ルァ セチレン誘導体は既に報告されている力 フエ-ル基上にジエステル、ジカルボン酸 またはイミドを有するポリフエ-ルアセチレン誘導体は過去に報告されて 、な 、。また 、水酸基を有するポリフエ-ルアセチレン誘導体にっ 、ても過去に報告されて ヽな ヽ
[0014] 一方、アミノ基を有するポリフエ-ルアセチレン誘導体にっ 、ては報告があるが、非 特許文献 7に記載の 4-(N,N-dimethylamino)phenylacetyleneの重合により得られたポ リマーは本発明のポリフエ-ルアセチレン誘導体とは異なるものである。また、非特許 文献 8に記載のポリマーは、得られたポリマーが不溶性であるため、ポリマーの同定、 分子量測定等が実施されておらず、本発明のポリフエニルアセチレン誘導体と同一 のポリマーか否かについては不明である。
[0015] 本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来報告や 確認がされていないフエ-ル基上に水酸基、アミノ基、 2つのエステル、 2つのカルボ ン酸またはイミドを有するポリフエニルアセチレン誘導体を提供することにある。
発明の開示
[0016] 本発明者らは、上記課題を解決するために、フエ-ル基上にジエステル、ジカルボ ン酸またはイミドを有するフエ-ルアセチレン化合物を合成し、これらのモノマーを重 合することにより、ジエステル、ジカルボン酸またはイミドを有するポリフエニルァセチ レン誘導体の合成に成功した。さら〖こ、本発明者らは、水酸基またはアミノ基を置換 基で保護した構造を有するフエニルアセチレンモノマーを重合し、得られたポリマー を脱保護することにより、水酸基またはアミノ基を有するポリフエ-ルアセチレン誘導
体の合成に成功し、本発明を完成させるに至った。
[0017] すなわち、本発明に係るポリフエニルアセチレン誘導体は、次の一般式 (I)、(Π)ま たは (ΠΙ)で表される構造を有することを特徴として!/、る。
[0018] [化 1]
(式中、 R1は水素またはアルキル基であり、 R2はアルキル基であり、 R3は水酸基また はァミノ基であり、 nは 10以上の整数である。 )
上記式 (I)における R1は炭素数 10以下の直鎖アルキル基であることが好ましぐよ り好ましくは、メチル基、ェチル基、 n—ブチル基または n—へキシル基である。
[0019] 上記式 (Π)における R2は炭素数 15以下の直鎖アルキル基であることが好ましぐよ り好ましくは n -ドデシル基である。
[0020] 上記式 (III)における R3はパラ位またはメタ位にあることが好まし 、。
[0021] また、本発明に係るポリフエ-ルアセチレン誘導体は、次の一般式 (IV)で表される 構造を有することを特徴として 、る。
(式中、 R4は
[0023] [化 3]
[0024] [化 4]
であり、 nは 10以上の整数である。 )
上記 R4はパラ位またはメタ位にあることが好ましい。
[0025] 上記本発明に係るポリフエニルアセチレン誘導体の重量平均分子量は 1万以上で あることが好ましい。
[0026] 上記構成により、過去に報告または確認されていない新規かつ極性の高いポリフエ
-ルアセチレン誘導体を実現することができる。
[0027] 本発明に係る導電性榭脂組成物は、上記本発明に係るポリフエ-ルアセチレン誘 導体を含有しており、さらに、電子のドナーまたはァクセプターとなる化合物をドーパ ントとして添加してなることを特徴として 、る。
[0028] 上記構成により、より導電性の高い榭脂組成物を実現することができる。
[0029] 本発明に係るフエ-ルアセチレン化合物は、アセチレンの一方の水素がベンゼン
環を含む置換基で置換されたフエニルアセチレンィ匕合物であって、次の式 (V)また は (VI)で表される構造を有することを特徴として!/、る。
[化 5]
[0031] [ィ匕 6]
上記各フ ニルアセチレン化合物は、従来報告されていない新規物質であり、これ らをそれぞれ原料として重合させることにより、上記本発明に係るポリフエ-ルァセチ レン誘導体を得ることができる。
[0032] 本発明に係るポリフエニルアセチレン誘導体の製造方法は、フエニル基に結合した 水酸基またはアミノ基を置換基で保護した構造を有するポリフエニルアセチレン誘導 体を脱保護することで、次の一般式 (III)
[0033] [化 7]
(式中、 R
3は水酸基またはアミノ基であり、 nは 10以上の整数である。 ) で表されるポリフエ-ルアセチレン誘導体を製造する工程を含むことを特徴としている
[0034] また、本発明に係るポリフエ-ルアセチレン誘導体の製造方法は、次の一般式 (IV )
[0035] [化 8]
(式中、 R4は
[0036] [化 9]
[0037] [化 10]
で表される構造を有するポリフエ-ルアセチレン誘導体を、脱保護することで、次の 一般式 (III)
(式中、 R3は水酸基またはアミノ基であり、 nは 10以上の整数である。 )
で表されるポリフエ-ルアセチレン誘導体を製造する工程を含むものであってもよい
[0039] さらに、本発明に係るポリフエ-ルアセチレン誘導体の製造方法は、上記一般式 (I V)で表される構造を有するポリフエニルアセチレン誘導体を製造する工程を含むこと が好ましぐ上記一般式 (IV)で表される構造を有するポリフエニルアセチレン誘導体 を製膜する工程を含むことが好まし ヽ。
[0040] 本発明に係るポリフエニルアセチレン誘導体の製造方法にぉ 、て、上記一般式 (II )で表される構造を有するポリフエ-ルアセチレン誘導体を製造する際には、ロジウム 触媒を用いることが好ましぐ特に、主触媒として [Rh(nbd)Cl]を用い、共触媒として K
2
N(SiMe )を用いることが好ましい。
3 2
[0041] 上記製造方法により、上記本発明に係る高分子量のポリフエ-ルアセチレン誘導体 を高収量で製造することが可能となる。
[0042] 本発明のさらに他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十 分わ力るであろう。また、本発明の利益は、次の説明で明白になるだろう。
発明を実施するための最良の形態
[0043] <実施の形態 1 >
本発明の一実施形態について説明すれば、以下のとおりである。なお、本発明はこ れに限定されるものではな 、。
[0044] 〔フエ-ル基上に 2つのエステル、 2つのカルボン酸またはイミドを有するポリフエ- ルアセチレン誘導体〕
本発明に係るポリフエニルアセチレン誘導体は、上記式 (I)に示される構造を有す るものであって、 R1が水素またはアルキル基であればよい。 R1のアルキル基は特に
限定されるものではないが、炭素数が 10以下の直鎖アルキル基が好ましい。より好ま しくは、炭素数 1〜6の直鎖アルキル基である。炭素数が 10以下の直鎖アルキル基 は充分な溶解性をポリマーに付与し、その原料は容易に入手可能である。上記炭素 数が 10以下の直鎖アルキル基としては、例えばメチル基、ェチル基、 n—ブチル基、 n—へキシル基を挙げることができる。
[0045] また、本発明に係るポリフエ-ルアセチレン誘導体は上記式 (Π)に示される構造を 有するものであって、 R2がアルキル基であればよい。 R2のアルキル基は特に限定さ れるものではないが、炭素数が 15以下の直鎖アルキル基が好ましい。より好ましくは 、炭素数 1〜12の直鎖アルキル基である。炭素数が 15以下の直鎖アルキル基は充 分な溶解性をポリマーに付与し、その原料は容易に入手可能である。上記炭素数が 15以下の直鎖アルキル基としては、 n—ドデシル基を挙げることができる。
[0046] 本発明に係るポリフエニルアセチレン誘導体は、重合度 nが 10以上であればよい。
好ましくは 100〜107の範囲内で選択される。
[0047] また、本発明に係るポリフエ-ルアセチレン誘導体の分子量は特に限定されるもの ではないが、重量平均分子量は 1万以上であることが好ましぐ 5万以上であることが より好ましぐ 10万以上であることが特に好ましぐ 50万以上であることが最も好まし V、。重量平均分子量が 1万未満であると十分な力学強度を確保できて!/、な 、ため好 ましくない。
[0048] 上記式 (I)または式 (II)に示される構造を有するポリフエニルアセチレン誘導体は、 例えば以下のようにして製造することができる。すなわち、乾燥不活性気体雰囲気下 において、その繰り返し単位であるフエ-ルアセチレンィ匕合物(原料モノマー)を適当 な溶媒中で触媒の存在下に重合させることにより製造することができる。溶液中の原 料モノマーの濃度は 0.1 M〜2 M、好ましくは 0.5 M〜l Mの範囲に調製する。反応 温度は 0 °C〜80。C、好ましくは 30 °C〜60 °Cの範囲で選択され、反応時間 60分〜 48 時間の範囲で選択される。
[0049] 上記不活性気体としては、例えば窒素、アルゴン等を挙げることができる。
[0050] 上記溶媒としては、モノマーおよび触媒の種類により種々のものを用いることができ 、例えば炭化水素 (脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素等)、ハロゲン化炭化水素、
アルコール、窒素化合物、エーテル、ケトン、脂肪酸、エステル等を挙げることができ る。中でも、触媒および生成ポリマーをよく溶解させるテトラヒドロフラン (THF)、トルェ ン、クロ口ホルム等が好ましい。溶媒は 2種類以上を混合した混合溶媒でもよい。
[0051] 上記触媒としては、遷移金属触媒が好ましぐ例えば、 [Rh+(nbd)( r? 6-C H ) B"Ph ]
6 5 3
、 [(norbornadiene)RhCl] /アミン系等を挙げることができる。
2
[0052] 原料モノマーのフエ-ルアセチレン化合物は下記の一般式 (VII)または(VIII)で 表される構造を有するものであればよい。また、新規ィ匕合物に限定されるものではな ぐ既知化合物でもよい。
[0053] [化 12]
(式中、 R1は水素またはアルキル基、 R2はアルキル基である。 )
原料モノマーとして利用可能なフエニルアセチレンィ匕合物としては、例えば、 4-ェ チュルフタル酸ジメチル、 4-ェチュルフタル酸ジェチル、 4-ェチュルフタル酸ジプロ ピル、 4-ェチュルフタル酸ジイソプロピル、 4-ェチュルフタル酸ジブチル、 4-ェチ- ルフタル酸ジイソブチル、 4-ェチュルフタル酸ジ -S-ブチル、 4-ェチュルフタル酸ジ ペンチル、 4-ェチュルフタル酸ジへキシル、 N-ォクチル- 4-ェチュル-フタルイミド、 N -ノ -ル- 4-ェチュル-フタルイミド、 N-デシル- 4-ェチュル-フタルイミド、 N-ゥンデシ ル- 4-ェチュル-フタルイミド、 N-ドデシル- 4-ェチュル-フタルイミド等を挙げることが できる。これらの原料モノマーは、例えば市販品の 4-ェチュル無水フタル酸を原料と して合成することができる(後述の実施例参照。;)。
[0054] 上記式 (I)または式 (II)に示される構造を有するポリフエニルアセチレン誘導体は、 ガス分離膜や液体分離膜に好適に利用できる。ガス分離膜としては、例えば酸素富 化膜を挙げることができる。液体分離膜としては、例えばバイオマスを利用して合成し たエタノールの分離膜を挙げることができる。また、繰り返し単位中にジエステル、ジ
カルボン酸またはイミドを有しているため非常に極性が高ぐ従来の置換ポリアセチレ ンより広い範囲での応用が期待できる。
[0055] また、本発明に係るポリフエ-ルアセチレン誘導体は、当該ポリフエニルアセチレン 誘導体を含有し、さらに電子のドナーまたはァクセプターとなる化合物をドーパントと して添加した導電性榭脂ィ匕合物として利用することができる。当該導電性榭脂化合 物は、少なくとも本発明に係るプライマーフエニルアセチレン誘導体と上記ドーパント を含んでなるものであればよぐこれら以外のもの、例えば他のポリマー等が含まれて V、てもよ 、ことは 、うまでもな 、。
[0056] ドーパントとしては、例えば、 HC1、 HBr、 HI、過塩素酸、硫酸等のプロトン酸、塩素 、臭素、ヨウ素等のハロゲン、五フッ化アンチモン、五フッ化リン、五フッ化ヒ素、三フッ 化ホウ素、塩ィ匕第二鉄等のルイス酸、テトラシァノエチレン等の電子のァクセプター などが挙げられる。
[0057] 〔フエ-ル基上に 2つのエステルまたはイミドを有するフエ-ルアセチレン化合物〕 本発明に係るフエ-ルアセチレンィ匕合物は、上記式 (V)および (VI)に示される構 造を有するものである。これら (V)および (VI)に示されるフエ-ルアセチレン化合物 は、従来報告されていない新規な化合物である。
[0058] (V)は 4-ェチニルフタル酸ジ n-ブチルであり、これを重合することにより本発明に係 るポリ(4-ェチュルフタル酸ジ n-ブチル)(上記式 (I)において R1が n—ブチル基であ るポリフエ-ルアセチレン誘導体)を得ることができる。また、(VI)は N-ドデシル- 4-ェ チニル-フタルイミドであり、これを重合することにより本発明に係るポリ(N-ドデシル -4 -ェチュル-フタルイミド)(上記式 (Π)において R2が n—ドデシル基であるポリフエ-ル アセチレン誘導体)を得ることができる。
[0059] 上記 (V)および (VI)に示されるフエ-ルアセチレンィ匕合物の製造方法は特に限定 されるものではない。上記 (V)の 4-ェチュルフタル酸ジ n-ブチルは、例えば、市販品 の 4-ェチュル無水フタル酸と n-ブタノールとを混合し、硫酸を加えて加熱攪拌するこ とにより製造することができる。
[0060] また、上記 (VI)の N-ドデシル- 4-ェチュル-フタルイミドは、例えば、市販品の 4-ェ チュル無水フタル酸と n-ドデシルァミンとをトルエンに溶解し、 Dean-Starkトラップで
加熱還流することにより製造することができる。
[0061] <実施の形態 2 >
本発明の他の実施形態について説明すれば、以下のとおりである。なお、本発明 はこれに限定されるものではな!/、。
[0062] 〔水酸基またはアミノ基を有するポリフ ニルアセチレン誘導体〕
本発明に係るポリフエニルアセチレン誘導体は、上記式 (III)に示される構造を有 するものであって、 R3が水酸基またはアミノ基であればよい。また、 R3はパラ位または メタ位にあることが好ましい。具体的には下記式 (IX)がパラ位に水酸基を有するポリ フエニルアセチレン誘導体であり、下記式 (X)がメタ位に水酸基を有するポリフエニル アセチレン誘導体であり、下記式 (XI)がパラ位にアミノ基を有するポリフエ二ルァセ チレン誘導体であり、下記式 (XII)がメタ位にアミノ基を有するポリフエ二ルァセチレ ン誘導体である。
[0063] [化 13]
また、本発明に係るポリフエ-ルアセチレン誘導体は、上記式 (IV)に示される構造 を有するものであって、 R
4が
(以下「OSiMe t— Bu」と称する。 )
または
(以下「NHCO t— Bu」と称する。 )
2
であればよい。また、 R4はパラ位またはメタ位にあることが好ましい。具体的には下記 式 (ΧΠΙ)がパラ位に OSiMe t— Buを有するポリフエ-ルアセチレン誘導体であり、
2
下記式 (XIV)力メタ位に OSiMe t— Buを有するポリフエ-ルアセチレン誘導体であ
2
り、下記式 (XV)がパラ位に NHCO t— Buを有するポリフエ-ルアセチレン誘導体
2
であり、下記式 (XVI)カ^タ位に NHCO t— Buを有するポリフエ-ルアセチレン誘導 体である。
[0066] [化 16]
( X V) 本発明に係るポリフエニルアセチレン誘導体は、重合度 nが 10以上であればよい。 好ましくは 100〜107の範囲内で選択される。
[0067] また、本発明に係るポリフエ-ルアセチレン誘導体の分子量は特に限定されるもの ではないが、重量平均分子量は 1万以上であることが好ましぐ 5万以上であることが より好ましぐ 10万以上であることが特に好ましぐ 50万以上であることが最も好まし V、。重量平均分子量が 1万未満であると十分な力学強度を確保できて!/、な 、ため好 ましくない。
[0068] 上記式 (III)に示される構造を有するポリフエニルアセチレン誘導体は、ガス分離膜 や液体分離膜などの高性能分離膜に好適に利用できる。ガス分離膜としては、例え ば酸素富化膜を挙げることができる。酸素富化膜は、例えば酸素富化機能を持った エアコンなどに応用することができる。また、液体分離膜としては、例えばバイオマス を利用して合成したエタノールの分離膜を挙げることができる。
[0069] 〔水酸基またはアミノ基を有するポリフエニルアセチレン誘導体の製造方法〕 本発明に係るポリフエニルアセチレンの製造方法は、フエニル基に結合した水酸基 またはアミノ基を置換基で保護した構造を有するポリフエニルアセチレン誘導体を脱 保護することで、上記一般式 (III)で表されるポリフエニルアセチレン誘導体を製造す る工程を含むものであればよい。
[0070] 上記水酸基またはアミノ基を保護する置換基 (以下、「保護基」とも称する。 )は特に 限定されるものではな ヽが、かさ高 ヽもので極性基を十分に保護し重合触媒と反応 しな!/ヽと ヽぅ特徴を有する置換基が好ま ヽ。具体的には例えば t—プチルジメチル シリル基、 t—ブトキシカルボニル基、トリチル基等を挙げることができる。
[0071] したがって、上記フエニル基に結合した水酸基またはアミノ基を置換基で保護した 構造を有するポリフエニルアセチレン誘導体も特に限定されるものではなぐ上記例 示した保護基を有するポリフ -ルアセチレン誘導体誘導体であればよ!、。より具体 的には、上記式 (XIII)〜(XVI)に示される構造を有するポリフエ-ルアセチレン誘導 体を挙げることができる。
[0072] また、上記水酸基またはアミノ基を保護する置換基を脱保護する方法は特に限定さ れるものではなぐ公知の方法を適宜選択して用いればよい。例えば、保護基として t —プチルジメチルシリル基を用いた場合 (例えば上記式 (XIII)および (XIV) )や t— ブトキシカルボ二ル基を用いた場合 (例えば上記式 (XV)および (XVI) )には、トリフ ルォロ酢酸と水あるいはへキサンなどの有機溶媒との混合溶液に浸漬することにより 、脱保護することができる。
[0073] また、本発明に係るポリフエ-ルアセチレン誘導体の製造方法にぉ 、ては、上記一 般式 (IV)で表される構造を有するポリフ ニルアセチレン誘導体 (例えば、上記式( XIII)〜 (XVI)に示される構造を有するポリフ -ルアセチレン誘導体)を製造する 工程を含むことが好ましい。
[0074] 上記一般式 (IV)で表される構造を有するポリフエ-ルアセチレン誘導体は、下記 一般式 (XVII)で表される構造を有するフエニルアセチレンィ匕合物(モノマー)を重合 すること〖こより製造することができる。
( X V I I )
(式中、 R5は、 OSiMe t— Buまたは NHCO t— Bu)
2 2
ここで、上記一般式 (XVII)で表されるモノマーの製造方法は特に限定されるもの ではなぐ公知の方法を適宜選択して製造すればよい。例えば、後述の実施例に記 載の方法で製造することができる。
[0076] 上記モノマーを重合する方法も特に限定されるものではなぐ公知の重合方法を適 宜選択して製造すればょ 、。例えば以下のようにして製造することができる。
[0077] すなわち、乾燥不活性気体雰囲気下において、上記モノマーを適当な溶媒中で触 媒の存在下に重合させることにより製造することができる。溶液中のモノマーの濃度 は 0.1 Μ〜2 Μ、好ましくは 0.5 M〜l Μの範囲に調製する。反応温度は 0 °C〜80 °C、好ましくは 30 °C〜60 °Cの範囲で選択され、反応時間 60分〜 48時間の範囲で選 択される。
[0078] 上記不活性気体としては、例えば窒素、アルゴン等を挙げることができる。
[0079] 上記溶媒としては、モノマーおよび触媒の種類により種々のものを用いることができ 、例えば炭化水素 (脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素等)、ハロゲン化炭化水素、 アルコール、窒素化合物、エーテル、ケトン、脂肪酸、エステル等を挙げることができ る。中でも、触媒および生成ポリマーをよく溶解させるテトラヒドロフラン (THF)、トルェ ン、クロ口ホルム等が好ましい。溶媒は 2種類以上を混合した混合溶媒でもよい。
[0080] 上記触媒としては、遷移金属触媒が好ましぐ中でもロジウム触媒が特に好ましい。
ロジウム触媒としては、例えば [Rh(nbd)Cl]、 Rh+(nbd)[h6-C H B"(C H ) ]などを挙げる
2 6 5 6 5 3
ことができるが、これに限定されるものではない。本製造方法においては、主触媒に [ Rh(nbd)Cl]、共触媒に KN(SiMe )を用いることが最も好ましい。
2 3 2
[0081] さらに、本発明に係るポリフエ-ルアセチレン誘導体の製造方法においては、上記 一般式 (IV)で表される構造を有するポリフエニルアセチレン誘導体 (例えば、上記式
(XIII)〜 (XVI)に示される構造を有するポリフ -ルアセチレン誘導体)を製膜する 工程を含むことが好ましい。製膜後に上記保護基を脱保護することで、従来合成が 不可能なポリマーの膜や有機溶媒に不溶なポリマーの膜を製造できるという利点が ある。
[0082] 製膜の方法は特に限定されるものではなぐ公知の方法を適宜選択して用いれば よい。例えば、ポリマー溶液を用いたキャスト法等を好適に用いることができる。
[0083] 以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定される ものではない。
[0084] く実施例 1.フエ-ル基上に 2つのエステル、 2つのカルボン酸またはイミドを有す るポリフエ-ルアセチレン誘導体 >
1.モノマー(フエニルアセチレン化合物)の合成
〔原料〕
モノマー合成の原料として、市販品の 4-ェチュル無水フタル酸(次式 (XVIII)、富 士写真フィルム社製、商品名 KK-1)を用いた。
[0085] [化 18]
〔4-ェチニルフタル酸ジメチル (化合物 2)の合成〕
200 mLナスフラスコに 4-ェチュル無水フタル酸(ィ匕合物 1) 4.0 g (23 mmol)、メタノ ール 186 mL (4.6 mol)を入れ、攪拌しながら H SO 2.0 mLを加え加熱し、 50 °Cで 24
2 4
時間加熱攪拌した (下記スキーム (1)参照)。反応終了後、溶媒を減圧留去し、酢酸ェ チルで抽出した。炭酸水素ナトリウム水溶液および水で洗浄し、有機層の溶媒に無 水硫酸ナトリウムを加え脱水した。無水硫酸ナトリウムをろ別し、ろ液を減圧留去し、 黄色固体の粗生成物 4.1 gを得た。得られた粗生成物をフラッシュカラムクロマトダラ フィー (固定相—シリカゲル、移動層—酢酸ェチル)により精製して化合物 2の 4-ェチ
-ルフタル酸ジメチル(黄色固体)を得た (収量 3.3 g、収率 65%)。
[0086] [化 19]
1 化合物 2 (4-ェチュルフタル酸ジメチル)の1 H— NMRスペクトルおよび13 C— NMR スペクトルを以下に示す。
JH NMR (DMSO-d ): 7.86 (m, 3H, Ar), 4.62 (s, 1H, sp- CH), 3.93 (s, 6H, OCH ).
6 3
13CfH} NMR (DMSO-d ): 166.46 (C=0), 134.40 (Ar), 132.10 (Ar), 131.49 (Ar), 130.
6
89 (Ar), 129.24 (Ar), 125.01 (Ar), 84.21(sp- CH), 81.49 (sp— C), 52.78 (OCH ), 52.7
3
5 (OCH ).
3
〔4-ェチニルフタル酸ジェチル(化合物 2)の合成〕
500 mLナスフラスコに 4-ェチュル無水フタル酸(ィ匕合物 1) 3.0 g (17 mmol)、ェタノ ール 203 mL (3.5 mol)を入れ、攪拌しながら H SO 1.1 mLを加え加熱し、 50 °Cで 24
2 4
時間加熱攪拌した (下記スキーム (2)参照)。反応終了後、溶媒を減圧留去し、酢酸ェ チルで抽出した。炭酸水素ナトリウム水溶液および水で洗浄し、有機層の溶媒に無 水硫酸ナトリウムを加え脱水した。無水硫酸ナトリウムをろ別し、ろ液を減圧留去し、 黄色液体の粗生成物を得た。得られた粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー ( 固定相—シリカゲル、移動層—酢酸ェチル /へキサン 1/3 v/v)により精製して化合 物 3の 4-ェチュルフタル酸ジェチル (黄色液体)を得た (収量 2.3 g、収率 53%)。
[0087] [化 20]
化合物 3 (4-ェチュルフタル酸ジェチル)の
1 H— NMR ^ベクトルおよび
13 C— NM
Rスペクトルを以下に示す。
1H NMR (DMSO-d ): 7.72 (m, 3H, Ar), 4.47 (s, 1H, sp-CH), 4.26 (q, 4H, OCH ), 1
6 2
.26 (t, 6H, CH ).
3
13CfH} NMR (DMSO-d ): 165.99 (C=0), 165.94 (C=0), 134.21 (Ar), 132.32 (Ar), 1
6
31.44 (Ar), 131.22 (Ar), 129.14 (Ar), 124.86 (Ar), 83.97 (sp-CH), 81.48 (sp— C), 61. 54 (OCH ), 61.49 (OCH ), 13.76 (CH ), 13.74 (CH ).
2 2 3 3
〔4-ェチニルフタル酸ジ n-ブチル(化合物 4)の合成〕
1 Lナスフラスコに 4-ェチュル無水フタル酸(ィ匕合物 1) 4.0 g (23 mmol)、 n-ブタノー ル 425 mL (4.6 mol)を入れ、攪拌しながら H SO 1.8 mLを加え加熱し、 50 °Cで 24時
2 4
間加熱攪拌した (下記スキーム (3)参照)。反応終了後、溶媒を減圧留去し、酢酸ェチ ルで抽出した。炭酸水素ナトリウム水溶液および水で洗浄し、有機層の溶媒に無水 硫酸ナトリウムを加え脱水した。無水硫酸ナトリウムをろ別し、ろ液を減圧留去し、黄 色液体の粗生成物を得た。得られた粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー (固 定相—シリカゲル、移動層—酢酸ェチル /へキサン 1/9 v/v)により精製して化合物 4 の 4-ェチュルフタル酸ジ n-ブチル (黄色液体)を得た (収量 3.1 g、収率 45%)。
[化 21]
化合物 4 (4-ェチュルフタル酸ジ n-ブチル)の1 H—NMR ^ベクトルおよび13 C—N MRスペクトルを以下に示す。
JH NMR (DMSO-d ): 7.72 (m, 3H, Ar), 4.48 (s, 1H, sp-CH), 4.20 (vq, 4H, OCH ),
6 2
1.61 (vt, 4H, CH ) 1.34 (m, 4H, CH ) 0.88 (t, 6H, CH ).
2 2 3
13CfH} NMR (DMSO-d ): 166.01 (C=0), 165.98 (C=0), 134.23 (Ar), 132.34 (Ar), 1
6
31.40 (Ar), 131.22 (Ar), 129.15 (Ar), 124.88 (Ar), 84.01 (sp-CH), 81.45 (sp— C), 65. 22 (OCH ), 65.16 (OCH ), 29.95 (CH ), 29.92 (CH ), 18.62 (CH ), 13.45 (CH ).
〔4-ェチニルフタル酸ジ n-へキシル(化合物 5)の合成〕
200 mLナスフラスコに 4-ェチュル無水フタル酸(ィ匕合物 1) 0.93 g (5.4 mmol), n-へ キサノール 101 mL (809 mmol)を入れ、攪拌しながら H SO 0.5 mLを加え加熱し、 50
2 4
°Cで 20時間加熱攪拌した (下記スキーム (4)参照)。反応終了後、溶媒を減圧留去し、 酢酸ェチルで抽出した。炭酸水素ナトリウム水溶液および水で洗浄し、有機層の溶 媒に無水硫酸ナトリウムを加え半日放置し脱水させた。無水硫酸ナトリウムをろ別し、 有機層の溶媒を減圧留去し、黄色液体の粗生成物を得た。得られた粗生成物をフラ ッシユカラムクロマトグラフィー (固定相一シリカゲル、移動層一酢酸ェチル /へキサン 1/1 v/v)により精製して化合物 5の 4-ェチュルフタル酸ジ n-へキシル (黄色液体)を得 た (収量 1.39 g、収率 72%)。
[化 22]
化合物 5 (4-ェチュルフタル酸ジ n-へキシル)の1 H—NMR ^ベクトルおよび13 C— NMRスペクトルを以下に示す。
JH NMR (DMSO-d ): 7.72 (m, 3H, Ar), 4.47 (s, 1H, sp-CH), 4.18 (t, 4H, OCH ), 1.
6 2
61 (m, 4H, CH ) 1.25 (m, 12H, CH ), 0.83 (t, 6H, CH ).
2 2 3
^Ci'H} NMR (DMSO-d ): 166.59 (C=0), 166.53 (C=0), 134.81 (Ar), 132.89 (Ar), 1
6
31.98 (Ar), 131.80 (Ar), 129.73 (Ar), 125.46 (Ar), 84.62 (sp-CH), 82.02 (sp— C), 66. 10 (OCH ), 66.03 (OCH ), 28.45 (CH ), 25.63 (CH ), 22.55 (CH ), 14.34 (CH ).
2 2 2 2 2 3
〔N -ドデシル- 4-ェチュル-フタルイミド(化合物 6)の合成〕
50 mLナスフラスコに 4-ェチュル無水フタル酸(ィ匕合物 1) 0.50 g (2.9 mmol), n-ドデ シルァミン 0.53 g (2.9 mmol)を入れ、溶媒としてトルエン 30 mLを加え、 Dean- Starkトラ ップを組み 140 °Cで 12時間加熱還流した (下記スキーム (5)参照)。反応終了後、溶媒 を減圧留去し、黄色固体の粗生成物を得た。得られた粗生成物をフラッシュカラムク
口マトグラフィー (固定相—シリカゲル、移動層—酢酸ェチル /へキサン 1/3 v/v)によ り精製して化合物 6の N-ドデシル- 4-ェチュル-フタルイミド (黄色固体)を得た (収量 0. 95 g、収率 97%)。
[0090] [化 23]
化合物 6 (N-ドデシル- 4-ェチュル-フタルイミド)の
1 H— NMRスペクトルおよび
13 C NMRスペクトルを以下に示す。
1H NMR (CDC1 ): 7.91 (s, 1H, Ar), 7.78 (s, 2H, Ar), 3.67 (vt, 2H, NCH ), 3.32 (s, 1
3 2
H, sp-CH), 1.66 (m, 2H, CH ), 1.24 (m, 18H, CH ) 0.88 (t, 3H, CH ).
2 2 3
13CfH} NMR (CDC1 ): 167.64 (C=0), 167.53 (C=0), 137.36 (Ar), 132.30 (Ar), 131.5
3
7 (Ar), 128.08 (Ar), 126.56 (Ar), 123.06 (Ar), 81.84 (sp-CH), 81.42 (sp— C), 38.28 ( NCH ), 31.92 (CH ), 29.63 (CH ), 29.57 (CH ), 29.50 (CH ), 29.36 (CH ), 29.18 (C
2 2 2 2 2 2
H ), 28.57 (CH ), 26.87 (CH ), 22.71 (CH ), 14.15 (CH ).
2 2 2 2 3
2.重合
上記各モノマー(フエニルアセチレンィ匕合物、化合物 1〜5)をそれぞれ重合し、以 下に示すポリフエ-ルアセチレン誘導体 (poly(l)〜(5))を得た。
[0091] [化 24]
表 1に、各モノマー(フエニルアセチレン化合物、化合物 1〜5)の重合により得られ た各ポリマー(poly(l)〜poly(5))の収率、重量平均分子量(Mw)および重量平均分 子量と数平均分子量との比(MwZMn)を示した。ポリマーの分子量は GPC (PSt換 算)により測定した。
[表 1]
重合反応の典型例としてポリ(4-ェチュルフタル酸ジメチル)(poly(l))の重合方法 について説明する。
乾燥窒素雰囲気下で、蒸留した THF 1 mLに 4-ェチュルフタル酸ジメチル 218.14
mg (1 mmol)を溶解させた混合物を、蒸留した THF 1 mLに [Rh+(nbd)( r? 6- C H ) B"Ph
6 5 3
]触媒 2.0 mg(2.5 /z mol)を溶解させた混合物に添加し、恒温槽にて 1時間 30°Cに保つ た。生成ポリマーは多量のメタノールに再沈澱することにより精製した。同様の手法に より、ポリ(4-ェチュルフタル酸ジェチル)(poly(2))、ポリ(4-ェチュルフタル酸ジ n-ブ チル)(poly(3))およびポリ(4-ェチュルフタル酸ジ n-へキシル)(poly(4))を得ることが 可能である。
[0094] なお、ポリ(N-ドデシル- 4-ェチュル-フタルイミド) (poly(5))につ!/、ては重合時間を 15分間とし、クロ口ホルム可溶部 (可溶部/不溶部 9/1)を多量のアセトンに再沈澱する ことにより精製した。
[0095] ポリ(4-ェチュルフタル酸ジメチル)(poly(l))は、 IR、 Η— NMRおよび13 C— NMR により同定した。結果を以下に示す。
IR (KBr, cm"1): 2940, 1730, 1436, 1295, 1130, 1069, 1069.
JH NMR (CDCL ): 7.32, 7.14, 6.80, 5.70, 3.75, 3.73.
3
^Ci'H} NMR (CDCL ): 167.64, 166.84, 144.26, 138.88, 132.49, 132.14, 129.90, 12
3
9.20, 127.37, 52.57, 52.47.
ポリ(4-ェチュルフタル酸ジェチル)(poly(2))は、
より同定した。結果を以下に示す。
JH NMR (CDCL ): 7.33, 7.19, 6.73, 5.68, 4.17, 1.22, 1.15.
3
^Ci'H} NMR (CDCL ): 167.27, 166.38, 144.32, 138.96, 132.81, 132.01, 130.02, 12
3
9.09, 127.61, 61.48, 61.34, 14.03, 13.93.
ポリ(4-ェチュルフタル酸ジ n-ブチル)(poly(3))は、 H— NMRおよび13 C— NMR により同定した。結果を以下に示す。
1H NMR (CDCL ): 7.33, 7.19, 6.76, 5.69, 4.10, 1.58, 1.48, 1.33, 1.23, 0.88, 0.79.
3
13CfH} NMR (CDCL ): 167.36, 166.29, 144.48, 144.42, 139.05, 132.97, 132.00, 12
3
9.86, 129.18, 127.89, 65.29, 65.31, 30.51, 30.32, 19.08, 18.98, 13.70, 13.62.
ポリ(4-ェチュルフタル酸ジ n-へキシル) (poly(4))は、 H— NMRおよび13 C— NM Rにより同定した。結果を以下に示す。
JH NMR (CDCL ): 7.36, 7.20, 6.81, 5.70, 4.13, 1.63, 1.53, 1.29, 1.21, 0.87.
C{ H} NMR (CDCL ): 167.40, 166.21, 139.03, 132.99, 132.05, 129.73, 129.20, 12
3
7.84, 65.58, 65.40, 31.51, 31.46, 28.49, 28.31, 25.54, 25.48, 22.56, 14.00.
ポリ(N-ドデシル- 4-ェチュル-フタルイミド) (poly(5))は、 1H— NMRぉょび13C— N MRにより同定した。結果を以下に示す。
1H NMR (CDC1 ): 7.29, 7.06, 6.84, 5.76, 3.52, 1.58, 1.26, 0.88.
3
13CfH} NMR (CDC1 ): 167.01, 166.90, 139.12, 132.85, 132.61, 132.30, 131.44, 122
3
.85, 120.91, 77.31, 31.95, 30.93, 29.75, 29.71, 29.40, 29.31, 28.53, 27.07, 22.71, 1 4.13.
3.ポリ(4-ェチニルフタル酸)の合成
重量平均分子量 66万のポリ (4-ェチュルフタル酸ジメチル )500 mgを THF30 mLに 溶解させ、 ION NaOHaqを 30 mLカ卩ぇ 20時間室温攪拌した (下記スキーム (8)参照)。上 澄みを除去し、赤褐色の析出物を少量の蒸留水で一度洗浄したのち、蒸留水 25 mL に溶解させた。この赤色均一溶液を、 IN HClaq 50 mLに滴下し再沈殿させ、ろ過し て得られた固体を 24時間減圧乾燥し、ポリ (4-ェチュルフタル酸) (poly (6)) (赤褐色固 体)を得た (収量 481 mg、収率 96%)。ポリ (4-ェチュルフタル酸)(poly (6))は、 IRおよ び1 H— NMRにより同定した。結果を以下に示す。
IR (KBr, cm"1): 3500, 1720, 1560, 1540, 1295, 1143.
JH NMR (CD OD): 7.42, 7.03, 6.80, 5.90, 3.74.
3
[化 25]
po l y (6)
<実施例 2.水酸基を有するポリフエ-ルアセチレン誘導体 >
1.モノマーの合成
モノマ ~~は、 Yashimaらの論文 (Yashima, E .; Huang, S .; Matsusita, T .; Okamoto, Y
. Macromolecules 1995, 28, 4184.)にしたがって合成した。上記論文には、パラ体モ ノマーの合成方法のみが記されている力 S、メタ体モノマーも同様の方法で合成した。
[0097] 下記スキーム (9)にパラ体の合成手順および収量を示した。
[0098] [化 26]
-OH /PdCI2(Ph3P)2/Ph3P/Cul
Et3N, 12h
-O— 一 ί-Bu colorless liquid
reflux, 8h
yield 94% yield 59%
スキーム (9) また、下記スキーム (10)にメタ体の合成手順および収量を示した
[0099] [化 27]
-OH /PdCI2(Ph3P)2/Ph3P/Cul
CISiMe2i-Bu
Imidazole Et3N, 12h
yield 94% colorless liquid
yield 88% yield 56% スキーム (10)
2.重合
重合は乾燥窒素雰囲気下でロジウム (Rh)触媒を用いて行った。ロジウム触媒として は、 [Rh(nbd)Cl]と Rh+(nbd)[h6- C H B— (C H ) ]との 2種類を用いた。 [Rh(nbd)Cl]を用
2 6 5 6 5 3 2 いた場合は、共触媒として Et Nまたは KN(SiMe )をカ卩えて次のような条件下で行った
3 3 2
。蒸留したトルエン中で、 30°C、 24時間、 [M] = 0.5 M、 [Rh] = 5.0 mMまたは 10 mM o
、 [Cocat]/[Cat] = 10という条件である。すなわち、触媒と共触媒のトルエン溶液に、 モノマーのトルエン溶液をカ卩えて行う重合方法である。
[0100] また、主触媒として Rh+(nbd)[h6-C H B"(C H ) ]を用いた場合は、共触媒は用いずに
6 5 6 5 3
ロジウム触媒単独で、次のような条件下で行った。蒸留したトルエン中で、 30°C、 24時 間、 [M] = 0.5 M、 [Cat] = 5.0 mMまたは 10 mMという条件である。
0
[0101] 重合溶媒は蒸留により精製したものを使用した。ポリマーは多量のメタノールに滴 下し、メタノール不溶部をガラスフィルターで回収した。
[0102] パラ体の結果を表 2に示した。 run5の主触媒 [Rh(nbd)Cl]と共触媒 KN(SiMe )との
2 3 2 組み合わせにおいて、分子量が runl〜4の 2倍以上に増加した。
[0103] [表 2] polymer'
run com plex add itive0 yield Mw/1 04 e Mw 1 M,
(%)
1 a [Rh(nbd)CI]2 Et3N 65 88 8.0
2b [Rh(nbd)CI]2 Et3N 73 80 8.0
3a Rh+(nbd )[ ^6-C6H6B-(C6H5)3] - 53 48 6.2
4b Rh+(nbd )[ 776-C6H5B— (C6H5)3] - 86 28 4.5
5b [Rh(nbd)CI]2 KN(Si Me3)2 61 21 0 10.0
a) In toluene, at 30, for 24 h ; [M]0 = 0.5 , [Rh] = 5.0 m M ,
b) In toluene, at 30, for 24 h ; [M]0 = 0.5 M, [Rh] = 10 mM. c) [Et3N]/[Rh] = 10 d) Toluene-soluble and methano卜 insoluble product, e) Measured by GPC. パラ体は1 H— NMRおよび IRにより同定した。結果を以下に示す。
JH NMR (CDC1 ): 7.92, 6.83, 6.60, 0.95, 0.20.
3
IR (KBr, cm"1): 2957, 1604, 1505, 1265, 1165, 912, 841, 783, 683.
メタ体の結果を表 3に示した。上記パラ体の結果と同様に、 run5の主触媒 [Rh(nbd) C1]と共触媒 KN(SiMe )との組み合わせにおいて、分子量が非常に増加した。
2 3 2
[表 3]
polymerd run complex additive0 yield Mw/104 e Mw 1 Mn e
(%)
1a [Rh(nbd)CI]2 Et3N 45 78 2.2
2b [ h(nbd)CI]2 Et3N 60 130 4.5
3a Rh+(nbd)[?76-C6H5B-(C6H5)3] - 55 52 6.0
4b Rh+(nbd)[776-C6H5B-(C6H5)3] - 91 95 4.2
5b [Rh(nbd)CI]2 KN(SiMe3)2 69 570 8.0
a) In toluene, at 30, for 24 h; [M]0 = 0.5 M, [Rh] = 5.0 mM.
b) In toluene, at 30, for 24 h; [M]0 = 0.5 , [Rh] = 10 mM. =) [Et3N]/[Rh] = 10 d) Toluene-soluble and methano卜 insoluble product, e) Measured by GPC. メタ体は1 H— NMRおよび IRにより同定した。結果を以下に示す。
'Η NMR (CDC1 ): 6.70, 6.37, 6.25, 5.64, 0.82,—0.06.
3
IR (KBr, cm"1): 2957, 1595, 1570, 1494, 1482, 1258, 1148, 968, 783, 689.
3.製膜
ポリマーのトルエン溶液をシャーレ上にキャストすることによって自立膜を調製した。 得られたメタ体ポリマー膜 (表 3の run2の条件で合成したポリマーを製膜したもの)は 透明な均一な膜であった。
[0105] 当該膜の気体透過性を測定した。結果を表 4に示した。いずれの気体についても、 ジフエニルアセチレン膜の気体透過性よりも低い結果となった。これは、フエニル基が 1つ少なくなつたことにより、ポリマー膜がかなり密になったためであると考えられる。
[0106] [表 4]
Gas permeability coefTicients (P) of polymers
P (barrer )
He H2 02 N2 C02 CH4
Polymer0 48 64 17 7.6 58 12 2.2
a) P values measured at 25°C .
b) 1 barrer = 1 x 10"10 cm3 (STP) cm cm"2 s"1 cmHg-1.
c) Methano卜 conditioned.
4.ポリマー膜の脱保護 (脱シリル化)
ポリマー膜をトリフルォロ酢酸と水あるいは有機溶媒との混合溶液に 24時間浸漬す ることにより、脱シリル化反応を行った。
[0107] く実施例 3.アミノ基を有するポリフエ-ルアセチレン誘導体 >
1.モノマーの合成
モノマーは、 3—ェチュルァ-リン (メタ体)または 4 -ェチュルァ-リン (パラ体)と te rt-butyl pyrocarbonateとをテトラヒドロフラン(THF)中で還流することにより合成した。
[0108] 下記スキーム (11)にモノマー合成のスキームおよび収量を示した。
[0109] [化 28]
1a: mefa (yield = 89%)
スチーム (11 ) 1b: para (yield = 82%)
また、各モノマーは1 H— NMRおよび IRにより同定した。メタ体の1 H— NMRおよび IRの結果を以下に示す。
JH NMR (CDC1 ): 7.52, 7.35, 7.23, 7.16, 6.45, 3.04, 1.53.
3
IR (KBr, cm"1): 3340, 3310, 2952, 1698, 1605, 1530, 1479, 1454, 1367, 1242, 1154, 888, 870, 787, 685, 658.
パラ体の1 H— NMRおよび IRの結果を以下に示す。
JH NMR (CDC1 ): 7.41, 7.32, 6.53, 3.02, 1.54.
3
IR (KBr, cm"1): 3390, 3295, 2957, 1705, 1609, 1584, 1559, 1512, 1408, 1316, 1231, 1156, 1056, 902, 837, 774, 761.
2.重合
重合は、三方活栓付シュレンク管内においてアルゴン雰囲気下でロジウム (Rh)触 媒を用いて行った。モノマー 1.0 mmolを含む THF溶液 1.0 mL、 [Rh(nbd)Cl] 20.0 μ
2 molを含む THF溶液 1.0 mLおよび KN(SiMe ) (15%溶液、 10.0 mol)を含むトルェ
3 2
ン溶液 27 μ Lを混合し、攪拌しながら 30°Cで 24時間反応させた。
[0110] 主触媒に [Rh(nbd)Cl]、共触媒に Et Nを用いる場合は、 Et Nを 100.0 μ molの濃度
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で用いる以外は上記と同様の方法で重合した。また、主触媒として [Rh(nbd)BPh ] (20
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.0 mol)を用いた場合は、共触媒は用いずにロジウム触媒単独とした。
[0111] ポリマーは多量のへキサンに滴下し、へキサン不溶部をガラスフィルターで回収し た後、へキサンで洗浄し、真空下で乾燥させた。
[0112] メタ体の結果を表 5に示した。また、パラ体の結果を表 6に示した。いずれのロジウム 触媒を用いた場合にも高分子量のポリマーが高収量 (80%〜95%)で得られた。中 でも表 5の run5の主触媒 [Rh(nbd)Cl]と共触媒 KN(SiMe )との組み合わせにおいて、
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非常に高分子量 (310,000)のポリマーが得られた。メタ体のポリマーおよびパラ体の ポリマーともに黄色であり、クロ口ホルム、 THF、アセトン、メタノールなどの有機溶媒 に溶けやすぐへキサンおよびトルエンに不溶であった。
[0113] [表 5]
Polymerization 01 Monomer ( meta V
Polymer
Run Solvent Catalyst Co-Catalyst Yield
M MD
(%)
1 Toluene^ [Rh(nbd)Cl]2 Et3N 88 131000 1 .8
2 [Rh(nbd)Cl], N(SiMe3)2 e 91 253000 1 .9
3 Rh(nbd)BPh4 - 85 28000 2.4
4 THF [Rh(nbd)Cl]2 Et3N, 83 131000 1 .8
5 [Rh(nbd)Cl]2 KN(SiMe3)2 e 89 310000 1 .7
6 Rh(nbd)BPh4 - 82 96000 2.2 a 30 °C, 4 h; [M]0 = 0.50 M, [Rh] 二 2.0 mM.
b Hexane- insoluble product. c Measured by GPC .
d Insoluble polymers were obtained in toluene but dissolved in THF. e [N]/[Rh] 1
f [N]/[Rh] - 10
各ポリマーは1 H— NMRおよび IRにより同定した。メタ体の1 H— NMRおよび IRの 結果を以下に示す。
JH NMR (CDC1 ): 7.26, 6.70, 6.37, 5.71, 1.43.
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IR (KBr, cm"1): 3324, 2952, 1685, 1635, 1559, 1507, 1457, 1362, 1234, 1154, 1056, 856, 785, 697.
パラ体の1 H— NMRおよび IRの結果を以下に示す。
JH NMR (CDC1 ): 6.83, 6.57, 5.72, 1.48.
3
IR (KBr, cm"1): 3370, 2980, 1685, 1559, 1540, 1457, 1368, 1313, 1231, 1160, 1052, 836, 768.
3.製膜
表 5の run5の条件で合成したポリマーの THF溶液をシャーレ上にキャストすること によって自立膜を調製した。
[0115] 4.ポリマー膜の脱保護
ポリマー膜をトリフルォロ酢酸とへキサンなどの有機溶媒との混合溶液に 24時間浸 漬することにより、脱保護を行った。
[0116] なお、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施態様ま たは実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのよう な具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなぐ本発明の精神と次に 記載する請求の範囲内で、いろいろと変更して実施することができるものである。 産業上の利用の可能性
[0117] 本発明に係るポリフエニルアセチレン誘導体は、その繰り返し単位中に水酸基、ァ ミノ基、ジエステル、ジカルボン酸またはイミドを有しているため非常に極性の高い高 分子である。したがって、当該ポリフエ-ルアセチレン誘導体を用いて膜を形成すれ ば、従来にない機能を有する高性能分離膜を実現することができ、利用可能な範囲 が広いという効果を奏する。
[0118] 本発明に係るポリフエニルアセチレン誘導体は、酸素富化膜などのガス分離膜や 水精製膜などの液体分離膜として利用可能である。酸素富化膜は酸素富化機能を 持ったエアコン等に応用することができる。また、電池への応用も期待できる。