明 細 書
多色同時測定用ルシフェラーゼ発光方法および発光試薬
技術分野
[0001] 本発明は、発光色に特徴を持つルシフェラーゼの発光反応を安定化させる方法、 その利用法、および発光試薬に関する。本発明の発光試薬は、発光色の異なるルシ フェラーゼ酵素をレポーターおよびシグナルとしたあらゆるルシフェラーゼアツセィ系 、さらには多色同時発光測定系によるルシフェラーゼアツセィ系に適用できる。
背景技術
[0002] 従来、 in vitroで甲虫ルシフェリン Zルシフェラーゼによる発光反応を行わせる際、 その発光パターンはフラッシュ状に観察されるため、試薬注入の特別な機構を持つ 装置を用いなければ発光反応を正確に測定することができな力つた。
[0003] これを改善すベぐルシフェラーゼの検出方法 (ルシフェラーゼアツセィ系)として Co Aなどのチオール類を用いる方法により発光の半減期をおよそ 5分間と延長し、かつ 発光量を増大させ得る手法が発明された (特許文献 1参照)。この方法により、ルシフ エラーゼによる発光量の正確な測定が試薬の自動注入装置を持たな!、ルミノメータ 一や液体シンチレーシヨンカウンターによっても可能となり、培養細胞の中でレポータ 一として発現されたルシフェラーゼを高感度で測定するレポーターアツセィ法に広く 用いられるようになった。
[0004] 一方で上述のルシフ ラーゼアツセィ法では、発光甲虫ホタルによる発光反応は実 際の実験系ではさまざまな外的要因により得られる発光量が大きく影響を受け、厳密 な意味での転写活性の比較データの評価が困難とされている (非特許文献 1)。この ため、基質特異性の異なる別種のルシフェラーゼ遺伝子 (例えばゥミシィタケルシフ エラーゼなど)を内部標準レポーターとして併せて細胞に導入し、二種類のルシフエ ラーゼ活性を個々に測定することから内部標準レポーターに対する対象レポーター( ホタルルシフェラーゼ)の転写活性効率を決定する、いわゆる、デュアルルシフェラー ゼアツセィ法も研究分野では一般的に用いられている (非特許文献 2)。し力しながら、 本法ではホタルルシフェリンに比べて極めて高価なセランテラジン(ゥミシィタケルシ
フェリン)を使用し、かつ一方の発光反応 (ホタル)を消光させてからもう一方の発光 反応 (ゥミシィタケ)を測定するなど複数の測定ステップを必要とすることから、 HTS (H igh- Throughput Screening)法など産業用途への適用が進んで!/、なかった。
[0005] これに対し、発光甲虫由来で発光色の異なるルシフ ラーゼは共通の発光基質で 発光反応を行う。そこでゥミシィタケルシフェラーゼの代わりに、例えば鉄道虫由来の 赤色発光ルシフェラーゼ (非特許文献 3)を用い、従来用いられてきた黄緑色の北米 産ホタルルシフ ラーゼを同時に発光させ、それぞれの色調の差異と発光量を示す 発光スペクトルをフィルターで分離できれば、それぞれの発光量を一回の測定ステツ プで定量できる。この発光甲虫の多様性のひとつである発光色の違いを活用するこ とにより、従来の 1反応 1シグナルから、ひとつの反応で複数のシグナルが同時に得 られ、発光反応によって得られる情報量が格段に向上する。 Nakajimaらは、鉄道虫由 来の赤色および緑色ルシフェラーゼを用い、二つの転写活性を同時かつ簡便に評 価できることを示した (非特許文献 4)。 1回の反応で複数の遺伝子情報が同時に測定 できるアツセィ系が今後産業用途において実用化された場合、現在創薬メーカーで 盛んに進められている単色光(単一シグナル)ルシフェラーゼによるゲノム創薬開発 にむけた HTS法の効率を格段に向上させることが期待されている。
[0006] 発光甲虫による発光反応の産業用途への応用展開において、新たに見出されてき たホタル科以外の発光甲虫由来のルシフ ラーゼ発光反応が可能とする異なる色調 、さらには pHに色調が影響されない特徴を活かすことにより、多色同時発光系などさ らに高機能化された生物発光反応の用途開発が検討され始めている。しかしながら 、これらホタル科以外の発光甲虫由来ルシフ ラーゼによる発光反応は、それぞれ が個々の生態に合わせた異なる発光のパターンを持ち、進化の過程でそれぞれの ルシフェラーゼの構造にぉ 、ても顕著な多様性を持つ。このため同一の発光基質ル シフェリンと ATP、 Mg2+イオンを用いて発光反応を行うにもかかわらず、個々の発光 反応について、従来試みられてきたホタル科北米産ホタル由来のルシフヱラーゼと は異なったそれぞれの最適化、換言すれば最終目的である in vitroで計測を可能と なる「発光反応開始から一定時間内にお 、て一定な発光強度を示す安定な発光 Kin eticsを持つ発光反応系」および「3色の発光強度の比率を制御可能な発光反応系」
の構築が必要とされる。
[0007] 特許文献 1 :特許第 3171595号公報
非特許文献 1 :細胞工学「脱アイソトープ実戦プロトコール 2キット簡単編」、野村慎太 郎、渡邊俊榭監修,秀潤社(1998), p.334-346.
特干文献 2: Grentzmann, u., Ingraman, J.J.A., Kelly, P.J., uesteland, R.F., and Atkins, J.F. (1998) RNA 4, 479-486.
非特許文献 3 :Viviani, V.R., Bechara, E.J.H, and Ohmiya, Y. Biochemistry (1999) 3 8, 8271-827.
非特許文献 4 : Nakajima, Y., Ikeda, M., Kimura, T., Honma, S., Ohmiya, Y., and Ho nma, K., (2004) FEBS Lett. 565, 122-126.
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0008] 本発明は、発光色に特徴を持つ発光甲虫由来のルシフヱリン Zルシフェラーゼの 発光反応の Kineticsの改良ならび相互の発光強度を制御することにより、多色発光 同時測定用ルシフェラーゼ発光方法を供給することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0009] そこで、本発明者らは、ホタル科以外の新規の発光甲虫による発光反応について も実用化を目指すべく検討を行った。検討した発光甲虫として、ホタルモドキ科由来 のルシフェラーゼとして鉄道虫 Phrixothrix hirtus由来の赤色ルシフェラーゼ (Viviani, V.R., Bechara, E.J.H, and Ohmiya, Y. Biochemistry (1999) 38, 8271- 827.)を中心に 、さらにはィリオモテボタル由来のルシフェラーゼとして Rhagophthalmidae Ohbai由 来の緑色ルシフェラーゼ (Sumiya, M., Viviani, V.R., Ohba.N., and Ohmiya.Y. (1998) In Bioluminescence and Chmiluminescence. Proceeding of 10th International Sympo sium on Bioluminescence and Chemiluminescence (Roda, A., Pazzagli, M., Kricka, L ., and Stanley, P.E., Erd.), pp.433- 436, Bolona, Italy.)ならびにその部位特異的変 異体の橙色ルシフェラーゼ (Viviani, V.R., Uchida, A., Suenaga, N., Ryufoku, M., an d Ohmiya, Y. (2001) Biochem. Biophys. Res. Com. 280, 1286- 1291.)を用い、それぞ れの発光反応を測定可能な発光経時変化 (Kinetics)への改良ならびに最適化を行
つた。また 3発光色の発光強度の比率が大き 、場合には測定機の制約から正確な発 光量測定が困難となることより、安定な発光 Kineticsを維持した条件下でそれぞれの 発光強度を制御させ発光量比を近接させることから、多色同時発光測定が可能とな る発光反応系を開発した。
[0010] 本発明者らは、ルシフェリン Zルシフェラーゼの発光反応に CoAとピロリン酸あるい はピロリン酸塩を介在させ、その他のさまざまな成分を最適化することにより、発光反 応開始からある一定の期間において発光強度が一定となる安定な発光反応 Kinetics を示し、かつ各々の発光強度を制御可能な発光反応系を構築させることに成功し、 本発明を完成させるに至った。
[0011] 本発明の要旨は以下の通りである。
[0012] (1) 緑色発光ルシフヱラーゼ、橙色ルシフヱラーゼ及び赤色ルシフヱラーゼからな る群より選択される少なくとも 2種のルシフェラーゼによる発光反応において、ルシフ エラーゼをルシフェリンと反応させることにより、発光測定期間内の 90秒間における発 光強度の変動が 10%以下である発光を生ぜしめることを特徴とする、ルシフェリン Zル シフェラーゼの発光方法。
[0013] (2) 緑色ルシフェラーゼ、橙色ルシフェラーゼ及び赤色ルシフェラーゼカ なる群よ り選択される少なくとも 2種のルシフ ラーゼの各々による発光反応の発光強度を比 較したときに、どの 2つの組み合わせについても、発光強度比が1 : 1〜1 : 200の範囲 内にある、(1)記載のルシフェリン Zルシフェラーゼの発光方法。
(3) 緑色発光ルシフェラーゼ、橙色ルシフェラーゼ及び赤色ルシフェラーゼカ な る群より選択される少なくとも 1種のルシフヱラーゼによる発光反応における発光半減 期が 2時間以上である、 (1)又は(2)記載のルシフェリン Zルシフェラーゼの発光方 法。
[0014] (4) 0.0001mM〜100mMのピロリン酸および Zまたはピロリン酸塩の存在下で、ルシ フェラーゼをルシフェリンと反応させる、 (1)〜(3)のいずれかに記載のルシフェリン Zルシフェラーゼの発光方法。
[0015] (5) 0.001mM〜100mMの CoAの存在下で、ルシフェラーゼをルシフェリンと反応さ せる、(1)〜(3)のいずれかに記載のルシフェリン Zルシフェラーゼの発光方法。
[0016] (6) 0.001mM〜100mMのルシフェリンをルシフェリンと反応させる、(1)〜(5)のいず れかに記載のルシフェリン Zルシフェラーゼの発光方法。
[0017] (7) 0.001 mM〜 100 mMのアデノシン三リン酸の存在下で、ルシフェラーゼをルシ フェリンと反応させる、 (1)〜(6)のいずれかに記載のルシフェリン Zルシフェラーゼ の発光方法。
[0018] (8) 0.001〜200mMのマグネシウムイオンの存在下で、ルシフェラーゼをルシフェリ ンと反応させる、 (1)〜(7)のいずれかに記載のルシフェリン Zルシフェラーゼの発光 方法。
[0019] (9) 0.001W/V%〜15W/V%の α—シクロデキストリンの存在下で、ルシフェラーゼを ルシフェリンと反応させる、 (1)〜(8)のいずれかに記載のルシフェリン Ζルシフェラ ーゼの発光方法。
[0020] (10) 0.1mM〜500mMのフッ化ナトリウムの存在下で、ルシフェラーゼをルシフェリン と反応させる、 (1)〜(9)のいずれかに記載のルシフェリン Zルシフェラーゼの発光 方法。
[0021] (11) 0.001〜10W/V%のサポニンの存在下で、ルシフェラーゼをルシフェリンと反応 させる、(1)〜(10)のいずれかに記載のルシフェリン Zルシフェラーゼの発光方法。
[0022] (12) lmM〜500mMの HEPES及びトリスの存在下で、ルシフェラーゼをルシフェリン と反応させる、 (1)〜(11)のいずれかに記載のルシフェリン Zルシフェラーゼの発光 方法。
[0023] (13) 還元剤の存在下で、ルシフェラーゼをルシフェリンと反応させる、(1)〜(12) のいずれかに記載のルシフェリン Zルシフェラーゼの発光方法。
[0024] (14) 還元剤が lOOmM以下の濃度で存在する、(13)記載のルシフェリン Zルシフエ ラーゼの発光方法。
[0025] (15) (1)〜(14)のいずれかに記載の方法を利用して、試料中のルシフ ラーゼ量 を測定する方法。
[0026] (16) 2種のルシフェラーゼ量を色識別により測定する、(15)記載の方法。
[0027] (17) 3種のルシフェラーゼ量を色識別により測定する、(15)記載の方法。
[0028] (18) (1)〜(14)のいずれかに記載の方法で発光を生ぜしめるための発光試薬で
あって、以下の成分:
(a)ピロリン酸、ピロリン酸塩及び CoAからなる群より選択される少なくとも 1種の化合物
(b)ノレシフェリン、
(c)アデノシン三リン酸、及び
(d)マグネシウムイオン
を含む、前記発光試薬。
(19) さらに、培養細胞の溶解に必要な成分を含む、(18)記載の発光試薬。
[0029] (20) 試料中のルシフェラーゼ量を測定するためのルシフェラーゼアツセィ試薬とし て用いられる、(18)又は(19)記載の発光試薬。
[0030] (21) (18)〜(20)のいずれかに記載の発光試薬を含む発光試薬キット。
[0031] 本明細書において、「発光強度」とは、単位時間当たりの発光の強さをいう。
[0032] 「発光測定期間内の 90秒間における発光強度の変動が 10%以下である発光」とは、 発光測定期間内のある時点で測定した発光強度とそれから 90秒後に測定した発光 強度との差の絶対値を、ある時点で測定した発光強度(100%)に対する百分率で 示したときに、 10%以内であることをいう。
[0033] 「緑色発光ルシフヱラーゼ」とは、最大発光波長が 534ηπ!〜 565nm、半値幅が 53〜9 lnmの発光色を示すルシフェラーゼを!、う。
[0034] 「橙色発光ルシフヱラーゼ」とは、最大発光波長が 580ηπ!〜 595nm、半値幅が 66〜8
3nmの発光色を示すルシフェラーゼを!、う。
「赤色発光ルシフェラーゼ」とは、最大発光波長が 610nm〜630nm、半値幅が 53〜70 nmの発光色を示すルシフェラーゼを!、う。
発明の効果
[0035] 本発明により、多色発光ルシフェラーゼとして選択された緑色発光ルシフェラーゼ、 橙色ルシフヱラーゼ及び赤色ルシフヱラーゼによる発光反応を、定量的かつ同時に 計測するために必要とされる、単位時間あたりの発光強度が一定な発光 Kinetics、な らびに測定レンジ内に少なくとも 2種、好ましくは 3種の発光強度を制御させ近接させ ることが可能となり、多色発光同時測定用のルシフ ラーゼ発光反応系の構築が可
能となる。
本明細書は、本願の優先権の基礎である日本国特許出願、特願 2004-353964号の 明細書および Zまたは図面に記載される内容を包含する。
図面の簡単な説明
[図 1]イリォモテボタル由来緑色発光ルシフェラーゼによる発光反応において、従来 のルシフェラーゼ発光試薬と多色発光用のルシフェラーゼ発光試薬による発光反応 の発光強度の時間経過を示す。
[図 2]イリォモテボタル由来橙色発光ルシフェラーゼによる発光反応において、従来 のルシフェラーゼ発光試薬と多色発光用のルシフェラーゼ発光試薬による発光反応 の発光強度の時間経過を示す。
[図 3]鉄道虫由来赤色発光ルシフ ラーゼによる発光反応において、従来のルシフ ラーゼ発光試薬と多色発光用のルシフェラーゼ発光試薬による発光反応の発光強 度の時間経過を示す。
[図 4]緑色、橙色、赤色の各ルシフェラーゼによる発光強度比を変化させる 2種類の 発光試薬組成による、各色の発光ルシフ ラーゼによる発光反応の発光強度と時間 経過を示す。
[図 5]イリォモテボタル由来緑色発光ルシフェラーゼのカイコ産生酵素標品を段階希 釈した際の、希釈倍率と発光量との相関を示す。
[図 6]イリォモテボタル由来橙色発光ルシフェラーゼのカイコ産生酵素標品を段階希 釈した際の、希釈倍率と発光量との相関を示す。
[図 7]鉄道虫由来発光ルシフェラーゼのカイコ産生酵素標品を段階希釈した際の、希 釈倍率と発光量との相関を示す。
[図 8]多色発光同時測定用ルミノメーターを用いた 3色同時発光時において、緑色発 光ルシフェラーゼをコントロールとした場合の、赤色発光ルシフェラーゼならびに橙 色発光ルシフヱラーゼの希釈系列における発光反応の定量性を示す。
[図 9]多色発光同時測定用ルミノメーターを用いた 3色同時発光時において、橙色発 光ルシフェラーゼをコントロールとした場合の、赤色発光ルシフェラーゼならびに緑 色発光ルシフヱラーゼの希釈系列における発光反応の定量性を示す。
[図 10]多色発光同時測定用ルミノメーターを用いた 3色同時発光時において、赤色 発光ルシフェラーゼをコントロールとした場合の、橙色発光ルシフェラーゼならびに 緑色発光ルシフェラーゼの希釈系列における発光反応の定量性を示す。
[図 11]1液系で発光半減期 2時間以上の多色発光用の発光試薬を用いた場合の、 緑色、橙色、赤色の各ルシフェラーゼによる発光強度と時間経過を示す。
発明を実施するための最良の形態
[0037] 本発明のルシフェリン Zルシフェラーゼの発光方法は、緑色発光ルシフェラーゼ、 橙色ルシフェラーゼ及び赤色ルシフェラーゼカ なる群より選択される少なくとも 2種 の甲虫ルシフェラーゼによる発光反応において、ルシフェラーゼをルシフェリンと反 応させることにより、発光測定期間内の 90秒間における発光強度の変動が 10%以下 である発光を生ぜしめることを特徴とする。
[0038] 発光測定期間内の 90秒間における発光強度は、発光測定期間内であれば、発光 反応開始後のいかなる時点力 始まる 90秒間の発光強度でもよぐ使用する酵素の 種類に応じて適宜選択するとよい。例えば、イリォモテボタル由来の緑色発光ルシフ エラーゼ及びイリォモテボタル由来の緑色発光ルシフェラーゼの変異体である橙色 ルシフェラーゼを使用する場合には、発光開始の時点力 始まる 90秒間の発光強度 であることが好ましぐ鉄道虫由来の赤色ルシフェラーゼを使用する場合には、発光 開始の 20秒後から始まる 90秒の発光強度であることが好ましい。発光強度は、アト一 (株)社製の「ルミネッセンサー MCA AB-2250型」で測定することができる。
[0039] 本発明のルシフヱリン Zルシフヱラーゼの発光方法においては、緑色ルシフヱラー ゼ、橙色ルシフェラーゼ及び赤色ルシフェラーゼカ なる群より選択される少なくとも 2種のルシフェラーゼの各々による発光反応の発光強度を比較したときに、どの 2つ の組み合わせについても、発光強度比が 1 : 1〜1: 200の範囲内にあるとよぐ好まし くは、発光強度比が 1 : 1〜1: 10の範囲内にあるとよい。
[0040] 本発明で使用される 2種以上のルシフェラーゼは、特に限定されるわけではないが 、基質が共通するものであるとよい。好ましくは、甲虫由来のホタル 'ルシフェリン、即 ち多複素式有機酸 D (ー)ー2—(6 'ヒドロキシ 2,一べンゾチアゾリル) - Δ2- チアゾリンー4一力ルボン酸 (以降は特に記載のない限り「ルシフェリン」と表記する)
を発光基質とし、これを酸化触媒して光子を発する酵素で、ホタル科、ヒカリコメツキ 科、ホタルモドキ科、イリォモテボタル科など発光甲虫由来で発光反応に与る酵素全 てを含む。この中には組換え DNA技術や変異技術などにより、酵素タンパク自体の 安定性や発光特性などが人為的に改変された酵素も含まれる。
[0041] 緑色発光ルシフェラーゼとしては、例えば、 Rhagophthalmidae Ohbai由来の緑色ル シフェラーゼ (Sumiya, M., Viviani, V.R., Ohba.N., and Ohmiya.Y. (1998) In Biolumin escence and Chmiluminescence. Proceeding of 10th International Symposium on Biol uminescence and Chemiluminescence (Roda, A., Pazzagli, M., Kricka, L., and Stanle y, P.E., Erd.), pp.433- 436, Bolona, Italy.),鉄道虫 Phrixothrix viviani由来の緑色ノレ シフェラーゼ (Viviani, V.R., Bechara, E.J.H, and Ohmiya, Y. Biochemistry (1999) 38, 8271-827.)、ヒカリコメツキ Pyrophorus. Plagiophthalamus由来の緑色ルシフェラーゼ( Wood, K.V., Lam, Y. A., Seliger, H.H., and McElroy.W.D. (1989) Science 244, 700 -702.)、北米産ホタル Photinus pyralis.由来のルシフェラーゼ (de Wet, J.R., Wood, K •V., Deluca, M., Helinski, D.R., and Subramani, S. (1987) Mol. Cell. Biol. 7, 725.) やゲンジボタノレ Luciola cruciata由来のノレシフェラーゼ (Tatsumi, H., Masuda, T., Kaji yama, N., and Nakano, E. (1989) J. Biolum. Chemilum. 3, 75— 78.)などを挙げることが できる。
[0042] 橙色ルシフェラーゼとしては、例えば、 Rhagophthalmidae Ohbai由来の緑色ルシフ エラーゼ (Sumiya, M., Viviani, V.R., Ohba.N., and Ohmiya, Y. (1998) In Bioluminesce nce and Chmiluminescence . Proceeding of 10th International Symposium on Biolumi nescence and Chemiluminescence (Roda, A., Pazzagli, M., Kricka, L., and Stanley, P.E., Erd.), pp.433- 436, Bolona, Italy.)の部位特異的変異体の橙色ルシフ ラーゼ( Viviani, V.R., Uchida, A., Suenaga, N., Ryufoku, M., and Ohmiya, Y. (2001) Bioche m. Biophys. Res. Com. 280, 1286—1291.)、ヒカリコメツキ Pyrophorus. Plagiophthalam us由来の橙色ルシフェラーゼ (Wood, K.V., Lam, Y. A., Seliger, H.H., and McElroy, W.D. (1989) Science 244, 700-702.)、などを挙げることができる。
[0043] 赤色ルシフェラーゼとしては、例えば、鉄道虫 Phrixothrix hirtus由来の赤色ルシフ エラーゼ (Viviani, V.R., Bechara, E.J.H, and Ohmiya, Y. Biochemistry (1999) 38, 82
71-827.)、ヒカリコメツキ Pyrophorus. Plagiophthalamus由来 (Wood, K.V., Lam, Y. A., Seliger, H.H., and McElroy.W.D. (1989) Science 244, 700- 702.)の部位特異的変異 体の赤色ルシフェラーゼ(特公平 08-510387)、などを挙げることができる。
[0044] ルシフェリン Zルシフェラーゼの発光反応系におけるルシフェラーゼの濃度は、 100 femto g/mL〜100 μ g/mLが適当であり、好ましくは 1 ng/mL〜200 ng/mLである。
[0045] 本発明で使用するルシフ リンは、ルシフ ラーゼの作用により発光するものであれ ば特に限定されないが、好ましくは、上記の甲虫ルシフヱリンであり、甲虫より直接抽 出および精製されたものや、化学合成されたものを含む。さらには甲虫ルシフェリン の誘導体で、ある酵素の消化を受けた後に発光活性を持つ発光基質も含まれる。こ のような甲虫ルシフェリンの誘導体としては、 4-メチル -D-ルシフェリン、 D-ルシフエ- ル- L-メチォニン、 6-0-ガラクトピラノシル -ルシフェリン、 DEVD—ルシフェリン、ル シフェリン- 6,メチルエステル、ルシフェリン 6,-クロ口ェチルエステル、 6,-デォキシル シフェリン、ルシフェリン 6,ベンジルエステルなどを挙げることができる。ルシフェリン およびその誘導体は塩の形態であってもよい。塩としては、カリウム塩、ナトリウム塩な どを挙げることができる。
[0046] ルシフェリン Zルシフェラーゼの発光反応系におけるルシフェリンの濃度は、 0.001 mM〜100 mMが適当であり、好ましくは 0.01 mM〜10 mMである。
[0047] 本発明で使用する場合、ピロリン酸および Zまたはピロリン酸塩は、水溶性のもの が好ましぐ溶液のピロリン酸を初め、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ピロリ ン酸アンモ-ゥム、ピロリン酸水素ナトリムなどを用いることができる。ピロリン酸および Zまたはピロリン酸塩の使用濃度は、 0.0001 mM〜100 mMが適当であり、好ましくは 0.001 mM〜10 mMである。
[0048] 本発明で使用する場合、 CoAは、酵母より抽出'精製されたものであり、リチウム塩 やナトリウム塩の形態のものを用いることができる。 CoAの使用濃度は、 0.001 mM〜l 00 mMが適当であり、好ましくは 0.01 mM〜10 mMである。
[0049] 本発明で使用する場合、 —シクロデキストリンの濃度は、 0.001W/V%〜15W/V% が適当であり、好ましくは 0.01W/V%〜12.5W/V%である。
[0050] 本発明で使用する場合、フッ化ナトリウムの濃度は、 0.1mM〜500mMが適当であり、
好ましくは lmM〜100mMである。
本発明で使用する場合、サポニンは、セッケンボク榭皮由来、大豆由来、茶の実由 来で抽出'精製されたものを用いることができる。サポニンの使用濃度は、 0.001W/V %から 10W/V%が適当であり、好ましくは 0.05W/V%から 1.0W/V%である。サポニンは、 細胞を溶解する作用を有するので、培養細胞の溶解に必要な成分としても使用する ことができる。
[0051] 本発明で緩衝成分として使用する場合、 HEPESゃトリスは市販の生化学グレードの ものであれば使用することができる。 HEPES及びトリスの使用濃度は充分な緩衝能を 持っため、通常 lmM〜lMの濃度が適当であり、好ましくは 5mM〜200mMである。ま たこれら緩衝成分で使用する pHは 7.0〜9.0が適当である力 好ましい pH範囲は 7.5 〜8.5である。
[0052] 本発明のルシフヱリン Zルシフヱラーゼの発光反応においては、さらに、還元剤、ァ デノシン三リン酸、マグネシウムイオンを添カ卩してもょ 、。
[0053] 還元剤は、ルシフェラーゼ酵素を保護する作用があると考えられる。還元剤として は、ジチォ力ルバミン酸塩類、キサントゲン酸塩類、チォりん酸塩、チアゾール類など を挙げることができる。
[0054] ジチォカルノ ミン酸塩類としては、ペンタメチレンジチォカルノ ミン酸ピペリジン、メ チルペンタメチルジチォカルノミン酸ピペコリン、ジメチルジチォカルバミン酸亜鉛、 ジェチルジチォカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチォカルバミン酸亜鉛、ェチルフエ- ルジチォカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチォカルバミン酸ソーダ、ジェチルジチォカ ルバミン酸ソーダ、ジブチルジチォカルバミン酸ソーダ、ジメチルジチォカルバミン酸 カリ、ジメチルジチォカルノミン酸銅、ジメチルジチヨ力ルバミン酸鉄、ェチルフエ-ル ジチカルバミン酸鉛、ジェチルジチカルバミン酸セレン、ジェチルジチォカルバミン 酸テルルなどを挙げることができるが、金属塩はこれに限定されることは無く目的に 応じて周期律表に記載の金属塩であれば使用可能である。
[0055] キサントゲン酸塩類としては、キサントゲン酸カリウム、ブチルキサントゲン酸亜鉛、 イソプロピルキサントゲン酸ソーダなどを挙げることができる力 これに限定されること はなぐ周期律表に記載の金属と塩が形成可能であれば使用可能である。
[0056] チォりん酸塩としては、ピぺリジン一ビス一(o, o ジステアリルジチォフォスフエ一 ト)などを挙げることができる。
[0057] チアゾール類としては 2 メルカプトべンゾチアゾール、 2 メルカプトべンゾチアゾ ール亜鉛塩、 2—メルカプトべンゾチアゾールナトリウム塩、 2—メルカプトべンゾチア ゾールシクロへキシルァミン塩、 2—メルカプトべンゾチアゾール銅塩などを挙げるこ とができるが、これに限定されることは無ぐ周期律表に記載の金属と塩あるいは錯体 を形成可能なら使用可能である。
[0058] この他にも、ジチオスレィトール、ジチォエリトルトール、 j8メルカプトエタノール、 2 メルカプトプロパノール、 3 メルカプトプロパノール、 2, 3 ジチォプロパノール、 グルタチオン、コェンザィム Aなどのスルフヒドリル化合物を使用してもよ!/、。
[0059] 還元剤は単独で使用することもできるが、混合して使用することも可能である。
[0060] 還元剤の使用濃度は、 0.01 mM〜100 mMが適当であり、好ましくは 0.1 mM〜50 m Mであるが、 2 mM以下の濃度で使用することが可能である。場合によっては、還元剤 を添カ卩しなくてもよい。
[0061] アデノシン三リン酸は、ルシフェラーゼとの反応により、ルシフェリンからルシフェリル -AMP (アデ-レート)を生成し、発光反応に寄与する。アデノシン三リン酸は塩の形 態であってもよい。塩としては、 2ナトリウム塩、 2カリウム塩、マグネシウム塩などを挙 げることができる。
[0062] アデノシン三リン酸の使用濃度は、 0.001 mM〜 100 mMが適当であり、好ましくは 0
.01 mM〜 10 mMである。
[0063] マグネシウムイオンは、発光反応の補因子として考えられて!/ヽる。マグネシウムィォ ンを含む化合物としては、塩化マグネシウム、炭酸水酸ィ匕マグネシウム、硫酸マグネ シゥム、酢酸マグネシウム、リン酸水素マグネシムなどを挙げることができる。
[0064] マグネシウムイオンの使用濃度は、 0.001 mM〜200 mMが適当であり、好ましくは 0.
1 mM〜100 mMである。
[0065] 発光反応の制御に寄与するのは、上記成分がメインである力 その他、培養細胞の 溶解に必要な成分 (例えば、界面活性剤やグリセリン、 BSA (牛血清アルブミン)、キレ ート剤)など、発光反応の利用法に応じてさまざまな組成を添加することができる。
[0066] ルシフェリン Zルシフェラーゼの発光反応は、 20°C〜25°Cの温度、 pH6.0〜9.0の条 件下で行うとよい。
[0067] 本発明により、多色発光ルシフェラーゼとして選択された緑色発光ルシフェラーゼ、 橙色ルシフヱラーゼ及び赤色ルシフヱラーゼによる発光反応を、定量的かつ同時に 計測するために必要な、単位時間あたりの発光強度が一定な発光 Kineticsに優れた 発光反応系が構築できる。
[0068] 本発明の方法によるルシフェリン Zルシフェラーゼの発光反応は、多色発光を行わ せた甲虫ルシフェラーゼ量の測定 (ルシフェラーゼアツセィ)に利用することができる
[0069] ルシフェラーゼアツセィは、レポータージーンにルシフェラーゼ遺伝子を用いてその 発光活性を測定することにより、遺伝子の転写活性を調べる方法である。例えば、解 析対象のプロモーター下流にルシフェラーゼ遺伝子を結合させたベクターを培養細 胞にトランスフエクシヨンし、培養を行う。細胞の増殖過程で、プロモーターの転写活 性が強ければ細胞内に多くのルシフ ラーゼ酵素が産生され、また、活性が弱けれ ばルシフェラーゼ酵素の産生量が低下する。本発明の方法によるルシフェリン Zルシ フェラーゼの発光反応により、ルシフェラーゼ酵素の量を高感度かつ簡便に定量す ることができる。ルシフェラーゼアツセィは、遺伝子発現の解析 (プロモーター、ェンノヽ ンサ一の転写活性解析)、細胞中の mRNAの作用機序の解析、レセプターなど遺伝 子調節機能を持つ蛋白質の構造と作用機序の解明、トランスジエニック植物における 器官特異的な発現様式の解析などに利用することができる。
[0070] このルシフヱラーゼアツセィを更に高機能化させるべく考案されたのが多色発光同 時測定による多色ルシフェラーゼ測定システムである。従来の単一シグナルによるル シフェラーゼアツセィ法では、発光反応自体のバラツキにより、アツセィデータの評価 が困難とされてきた。このため、ホタルとは全く異なり互いに相互作用しない別種の発 光反応系を導入し、 2種類のルシフェラーゼ活性を個々に測定することから内部標準 レポーターに対する対象レポーターの転写活性効率を決定する、いわゆる、デュア ルルシフェラーゼアツセィ法が導入された。し力しこの方法では、高価な発光基質な らびに 2ステップの反応を行う必要性などから、コスト及び操作性において、 HTS (Hig
h-Throughput Screening)法など産業用途への適用が進んで!/ヽなかった。
[0071] これに対し、発光甲虫由来で発光色の異なるルシフ ラーゼは共通の発光基質で 発光反応を行う。そこで発光色の異なるルシフ ラーゼをそれぞれ同時に発光させ、 それぞれの色調の差異と発光量を示す発光スペクトルをフィルターで分離できれば、 それぞれの発光量を一回の測定ステップで定量できる。多色ルシフェラーゼ発光同 時測定システムにより、 1回の反応(1ステップ)力 複数のシグナルが測定可能となる 。このシステムにより、 2種類の転写活性を 2色の発光量力 それぞれ同時に測定す る一方で、残る 1色による発光量を内部標準とすることから、測定した 2種類の転写活 性を補正し、より精度の高い複数の転写活性の評価が可能となる。また 3種類の転写 活性を同時に測定し、それぞれを評価することもできる。
[0072] 多色発光同時測定用ルシフェラーゼ発光方法によるルシフェリン Zルシフェラーゼ の発光反応の発光量は、専用の巿販ルミノメーターで測定することができる。現在、 フィルター分割により、 3種の発光反応を測定できる装置にはアト一 (株)社製の「ルミ ネッセンサー MCA AB-2250型」がある。本装置では、透過率、発光量から 3発光色を 分離定量する機能を内蔵しており、通常の発光量測定と同様に発光反応を行わせる サンプルをキュベットに入れて装置内にセットするだけで、 3色の発光量が自動的に 算出される。同様の機能を持つルミノメーターが普及することにより、本手法はさらな る展開を迎えると期待できる。
[0073] 発光量の測定は、所望の期間にわたり、所望の時間間隔で行えばよい。但し、多色 発光ルシフェラーゼアツセィにおいては、発光反応の開始 20秒後から、 10〜100秒間 の積算発光の測定が必要とされる。または薬剤の開発に向けた多検体のサンプルに 対する High-through Putスクリーニング (HTS)では、発光反応開始力 8時間までの 0.1秒から 10秒間あたりのそれぞれの検体からの発光量が測定される。
[0074] 本発明は、本発明の方法で発光を生ぜしめるための発光試薬であって、少なくとも 2種、好ましくは 3種類のルシフヱラーゼによる発光反応 Kineticsを改良させ、少なくと も 2種、好ましくは 3種ルシフェラーゼによる発光強度を測定レンジ内に納め、多色発 光同時ルシフェラーゼ発光反応測定を可能とするために必要な組成を含む前記発 光試薬も提供する。本発明の発光試薬は、試料中の少なくとも 2種、好ましくは 3種(
例えば、イリォモテボタル由来の緑色発光ルシフェラーゼ、イリォモテボタル由来の 橙色ルシフヱラーゼ、鉄道虫由来の赤色ルシフヱラーゼ)のルシフヱラーゼ量を測定 するためのルシフェラーゼアツセィ、さらには複数のルシフェラーゼアツセィの同時測 定に使用することができる。本発明の発光試薬は、ピロリン酸および Zまたはピロリン 酸塩あるいは CoA、ルシフェリン、アデノシン三リン酸及びマグネシウムイオンの他、 a—シクロデキストリン、フッ化ナトリウム、還元剤、緩衝成分 (HEPES、トリス)、サボ- ンの他、その他の成分 (例えば、培養細胞の溶解に必要な界面活性剤、グリセリン、 BSA、キレート剤など)を含んでもよい。本発明の発光試薬に含まれるこれらの成分は 上記の通りである。本発明の発光試薬は、各成分を溶解した水溶液状態であっても よいし、凍結乾燥した状態であってもよい。水溶液状態の発光試薬は凍結品として供 給し、解凍後十分に室温に戻した後に使用するとよい。また、発光試薬を凍結乾燥 する場合には、試薬成分の内、溶液中では比較的不安定な成分 (ルシフェリン、アデ ノシン三リン酸、 CoAなど)のみを凍結乾燥し (これを試薬 Aとする)、ピロリン酸および /またはピロリン酸塩の他、 α—シクロデキストリン、フッ化ナトリウム、還元剤、マグネ シゥムイオン、サポニン、緩衝成分、その他の成分 (例えば、培養細胞の溶解に必要 な界面活性剤、グリセリン、 BSA、キレート剤など)それぞれを使用時の溶液と同じ濃 度となるように水に溶解した水溶液 (これを試薬 Bとする)とに分けて、凍結乾燥品 (試 薬 A)を冷凍保存、また水溶液 (試薬 B)を冷蔵または冷凍保存するとよい。この場合 、試薬 Bを十分に室温に戻した後、試薬 Aに加えて溶解し、溶液状態にしてから、使 用するとよい。また、上記成分を 2種類の培養細胞溶解試薬と発光試薬とに分割し、 検体で発光反応を行わせる際に、全ての成分が混合されるような形態を取ることもで きる。例えば、フッ化ナトリウムとサポニンを培養細胞溶解試薬の成分とし、且つピロリ ン酸および Zまたはピロリン酸塩あるいは CoA、ルシフェリン、アデノシン三リン酸及 びマグネシウムイオンの他、 OCーシクロデキストリン、還元剤、緩衝成分を発光試薬の 成分とした形態を取ることができる。あるいは、ピロリン酸および Zまたはピロリン酸塩 あるいは CoA、ルシフェリン、アデノシン三リン酸及びマグネシウムイオンの他、 at シクロデキストリン、フッ化ナトリウム、サポニン、還元剤、緩衝成分、などの成分を発 光試薬に含んだ形態とすることもできる。本発明の発光試薬は、培養細胞の溶解に
必要な成分と発光に必要な成分とを一つの溶液中に含有させる形態 (一液系)であ つてもよいし、培養細胞の溶解に必要な成分を含有する溶液と発光に必要な成分を 含有する溶液とを別々に備えた形態(二液系)であってもよ 、。
[0075] 本発明の発光試薬における組成の例を以下の表にまとめる。
[0076] [表 1] 表 1 . 多色ルシフェラーゼアツセィに用いられる発光試薬 (ピロリン酸使用) の組成
溶媒:水 (Milli-Q水)
[0077] [表 2] 表 2 . 多色ルシフェラーゼアツセィに用いられる発光試薬 (CoA使用〉 の組成
溶媒:水 (MiUi-Q水)
[0078] 以上の組成を持つ発光試薬をキットィ匕する場合は、上記組成の溶液を凍結させた
1液系の凍結品として供給するとよい。これは- 70°C以下で保存し、解凍後十分に室 温に戻した後に使用する。また上記成分の内、溶液中では比較的不安定な成分で あるルシフェリン、アデノシン三リン酸などを凍結乾燥した試薬 Aと、使用直前にその 他の成分から成る試薬 Bを加え溶解させて使用する 2液系の試薬キットとしても供給 できる。この場合、凍結乾燥品の試薬 Aは- 20°Cで、また試薬 Bは冷蔵 (4°C)または冷 凍 (-20°C)で保存される。
[0079] 本発明は、本発明の発光試薬を含む発光試薬キットも提供する。本発明のキットは 、本発明の発光試薬の他、取扱説明書、大ま力な使用法を示した操作法のフローチ ヤートなどを含むとよい。
[0080] 取扱説明書には、発光反応の概要や測定原理、製品の特徴、保存条件、試薬の 調製法ならびに操作法、関連製品、トラブルシューティングなどが記載されているとよ い。本発明のキットは、さらに、用途に応じて、標準品となるルシフェラーゼ酵素 (ルシ フェラーゼアツセィに用いる場合)などを含んでもよい。
[0081] 以下、本発明を実施例により具体的に説明する力 これらの実施例は本発明の範 囲を限定するものではな 、。
実施例 1
[0082] ホタルモドキ科の鉄道虫 Phrixothrix hirtus由来の赤色ルシフェラーゼ遺伝子 (RED) を発現する pEX-Red、イリォモテボタル科の Rhagophthalmidae Ohbai由来の緑色ル シフェラーゼ(ROL)遺伝子を発現する pEX-ROL、イリォモテボタル科の Rhagophthal midae Ohbai由来の緑色ルシフェラーゼ (ROL)遺伝子の部位特異的変異体の橙色 ルシフェラーゼ (ROLO)遺伝子を発現する pEX- ROLO、の 3種類の各ルシフェラーゼ 発現ベクターのプラスミドを用意した。それぞれの発現ベクターは、市販のピツカジー ンコントロールベクター 2(製造番号: PGV- C2:東洋インキ製造 (株)製)を用い、ベクタ 一上の luc+遺伝子をそれぞれ RED、 ROL、 ROLO遺伝子と置換して調製した。
[0083] 37°C、 5%の COの条件下でダルベッコ改変イーグル培地 (DMEM, SIGMA社製) Zl
2
0%ゥシ胎児血清 (FBS, 日本製薬社製)培地により培養した COS7細胞を用いた。 6well プレート(NUNC社製 No.140675)に COS7細胞が 3 X 105 cellsZwellZ2mLとなるよう 培養し、リポフエクトァミンプラス試薬 (Invitrogen社製)を用いて 1 μ gの各プラスミドを
COS7内に導入(トランスフエクシヨン)した。 48時間トランスフエクシヨン後培養した後 5 00 μ Lの細胞溶解剤(0.005%CHAPSZ10%グリセロール Z2mM CDTA/5mg/mL BS A/20mM HEPES (pH 7.9)を各 wellに加え細胞を溶解させルシフェラーゼ酵素を抽 出した。室温で 5分間静置後、異なるプラスミド 3種を発現させた細胞力も得られたラ イセート 20 μ Lをルミノメーター (Berthold社製 LB9506)用のキュベットの底部に採った
[0084] 多色発光用のルシフェラーゼ発光試薬として、 530 μ Μ ΑΤΡ/470 μ Μルシフェリ ン Z2mM AED (ジェチルジチォカルバミン酸アンモ-ゥム塩) Z5mM MgSO /0.1 %
4 a—シクロデキストリン ZO. lmMピロリン酸カリウム Ζθ.01 %サポニン Z20mM NaF/ lOOmMトリス—リン酸 (pH 8.0)を調製した。 3種のプラスミド pEX- Red、 pEX- ROL、 pE X-ROLOを細胞導入した哺乳細胞のそれぞれの抽出物(ライセート) 20 μ Lに対して 、多色発光用のルシフェラーゼ発光測定試薬を各々 100 L添加し、ルミノメーター (Β erthold社製 LB9506)によって得られる発光反応開始から 200秒間における発光強度 の経時変化を比較した。さらに対照として、従来広く用いられている「ピツカジーン発 光キット (東洋インキ製造株式会社製:製品番号 PGL100)」を用いて調製したルシフ エラーゼ発光試薬による発光反応も同様に測定し、それぞれの測定値を比較した。
[0085] pEX-ROLを発現させて得られたイリォモテボタル由来緑色発光ルシフェラーゼによ る発光反応の結果を図 1に示すが、「ピツカジーン発光キット」により調製した従来の ルシフェラーゼ発光試薬では、発光開始直後に一端減衰し、 20秒後から徐々に増加 した。発光開始力 20秒間で約 13%の発光の変動、また 30秒後から 130秒後の 100秒 間で 6.2%の発光量の変動が確認され、定量的な発光量の測定を可能とする一定な 発光強度を示す発光 Kineticsが得られな力つた。これに対し、多色発光用のルシフエ ラーゼ発光試薬による発光反応では、発光反応開始から 200秒間においてやや発光 強度の増加の傾向もほぼ一定の発光強度が得られ、平均するとその発光量の変動 は 100秒間で 2%であった。
[0086] pEX-ROLOを発現させて得られたイリォモテボタル由来橙色発光ルシフェラーゼに よる発光反応の結果を図 2に示すが、「ピツカジーン発光キット」により調製した従来 のルシフェラーゼ発光試薬では、発光開始直後から 200秒間まで発光強度が上昇し
続ける発光 Kineticsが確認され、発光開始から 100秒間で約 19%の発光強度の変動 、さらにそれ以降の 100秒間でも 7%の発光強度の変動を示し、定量的な発光量の測 定を可能とする一定な発光強度を示す発光 Kineticsが得られな力つた。これに対し、 多色発光用のルシフ ラーゼ発光試薬による発光反応では、発光反応開始から 200 秒間においてほぼ一定の発光強度が得られ、その発光量の変動は平均すると 100秒 間で 1.3%であった。
pEX-Redを発現させて得られた鉄道虫由来赤色発光ルシフェラーゼによる発光反 応の結果を図 3に示す力 「ピツカジーン発光キット」により調製した従来のルシフェラ ーゼ発光試薬では、発光開始直後に一端急速に減衰し、その後 20秒後から徐々に 増加した。発光開始力も 20秒間で約 60%の発光の変動、また 30秒後から 130秒後の 1 00秒間で約 16%の発光量の変動が確認され、定量的な発光量の測定を可能とする一 定な発光強度を示す発光 Kineticsが得られな力つた。これに対し、多色発光用のル シフェラーゼ発光試薬による発光反応では、発光反応開始から 20秒後に急速に減 衰するも、その後一定の発光強度が得られ、発光開始 30秒後から 130秒後までの発 光量の変動は 100秒間で 1.2%であった。
なお、本実施例の実験において、 0.01%サポニン及び 20mM NaFを多色発光用の ルシフェラーゼ発光試薬に添加しな 、で、その代わりに細胞溶解剤に添加した場合 (この際には、 CHAPSを細胞溶解剤に添加しなくてもよい)にも、同様の結果が得ら れる。
実施例 2
[0087] 実施例 1と同様にして、ホタルモドキ科の鉄道虫 Phrixothrix hirtus由来の赤色ルシ フェラーゼ遺伝子 (RED)を発現する pEX- Red、イリォモテボタル科の Rhagophthalmida e Ohbai由来の緑色ルシフェラーゼ(ROL)遺伝子を発現する pEX- ROL、イリォモテ ボタル科の Rhagophthalmidae Ohbai由来の緑色ルシフェラーゼ(ROL)遺伝子の部 位特異的変異体の橙色ルシフ ラーゼ (ROLO)遺伝子を発現する pEX-ROLO、の 3 種類の各ルシフェラーゼ発現べクタ一のプラスミドを用意した。
[0088] 37°C、 5%の COの条件下でダルベッコ改変イーグル培地 (DMEM, SIGMA社製)
2 Zl
0%ゥシ胎児血清 (FBS, 日本製薬社製)培地により培養した COS7細胞を用いた。 6well
プレート(NUNC社製 No.140675)に COS7細胞が 3 X 105 cells/well/2mLとなるよう 培養し、リポフエクトァミンプラス試薬 (Invitrogen社製)を用いて 1 μ gの各プラスミドを COS7内に導入(トランスフエクシヨン)した。 48時間培養した後 500 Lの細胞溶解剤( 0.005%CHAPSZ10%グリセロール Z2mM CDTA/5mg/mL BSA/20mM HEPES (pH 7.9)を各 wellに加え細胞を溶解させルシフェラーゼ酵素を抽出した。室温で 5分間静 置後、異なるプラスミド 3種を発現させた細胞力 得られたライセート 20 Lをルミノメ 一ター (Berthold社製 LB9506)用のキュベットの底部に採った。
[0089] 多色発光用のルシフヱラーゼ発光試薬 (1)として、 530 μ Μ ΑΤΡ/470 μ Μルシフエ リン /2mM AED/5mM MgSO /0.1 % a—シクロデキストリン /O. lmMピロリン酸力
4
リウム Ζθ.01 %サポニン Z20mM NaF/100mMトリス—リン酸 (pH 8.0)と、多色発光ル シフェラーゼ発光試薬 (2)として、 530 μ M ATP/lmMルシフェリン Z2mM AED/15 mM MgSO
4 Ζθ.5% α—シクロデキストリン ZO. lmMピロリン酸カリウム Ζθ.01 %サポ ニン Z20mM NaF/100mM HEPES(pH 8.0)を調製した。 3種のプラスミド pEX- Red、 p EX- ROL、 pEX- ROLOを細胞導入した哺乳細胞のそれぞれの抽出物(ライセート) 20 μ Lに対して、多色発光用のルシフェラーゼ発光測定試薬を各々 100 L添加し、ル ミノメーター (Berthold社製 LB9506)によって得られる発光反応開始から 200秒間にお ける発光強度の経時変化を比較した (図 4)。
[0090] 発光試薬 (1)と発光試薬 (2)とでは、同様の発光反応 Kineticsが確認されたが、 3種の ルシフェラーゼによる発光強度が異なる結果を得た。すなわち、発光試薬 (1)による発 光反応における発光強度比は、およそ緑色:橙色:赤色 = 1: 8: 17であったのに対し、 発光試薬 (2)による発光反応における発光強度比は、およそ緑色:橙色:赤色 = 1 : 12 : 50と大きな幅を持つことが確認され、安定な発光 Kineticsを維持させながら、それぞ れの発光強度比を制御することができた。
なお、本実施例の実験において、 0.01 %サポニン及び 20mM NaFを多色発光用の ルシフェラーゼ発光試薬に添加しな 、で、その代わりに細胞溶解剤に添加した場合 (この際には、 CHAPSを細胞溶解剤に添加しなくてもよい)にも、同様の結果が得ら れる。
実施例 3
[0091] ホタルモドキ科の鉄道虫 Phrixothrix hirtus由来の赤色ルシフェラーゼ遺伝子 (RED) 、イリォモテボタル科の Rhagophthalmidae Ohbai由来の緑色ルシフェラーゼ(ROL) 遺伝子、イリォモテボタル科の Rhagophthalmidae Ohbai由来の緑色ルシフェラーゼ( ROL)遺伝子の部位特異的変異体の橙色ルシフ ラーゼ (ROLO)遺伝子を、それぞ れバキュロウィルス/カイコによるタンパク発現システム (片倉工業株式会社の Super worm System)を利用し、それぞれ 3種類のカイコ産生ルシフェラーゼ粗酵素標品を 得た。
[0092] 3種類のカイコ産生ルシフェラーゼ粗酵素標品を、細胞溶解剤 (0.005% CHAPS/ 1 0%グリセロール Z2mM CDTA/5mg/mL BSA/20mM HEPES (pH 7.9)を用い、 10倍 、 100倍、 1 ,000倍、 10,000倍に段階希釈した酵素溶液を調製し、それぞれ 20 Lをル ミノメーター (Berthold社製 LB9506)用のキュベットの底部に採った。
[0093] 多色発光用のルシフェラーゼ発光試薬として、 530 μ Μ ΑΤΡ/470 μ Μルシフェリ ン Z2mM AED/5mM MgSO /0.1 % a—シクロデキストリン ZO. lmMピロリン酸カリ
4
ゥム Ζθ.01 %サポニン Z20mM NaF/100mMトリス—リン酸 (pH 8.0)を調製した。 3種 類のカイコ産生ルシフェラーゼ粗酵素標品を 10倍、 100倍、 1 ,000倍、 10,000倍に段 階希釈した 20 Lに対して、多色発光用のルシフェラーゼ発光測定試薬を各々 100 μ L添加し、ルミノメーター (Berthold社製 LB9506)によって得られる発光反応開始か ら 20秒後の 20秒間における積算発光量を計測した。続、て、得られた 20秒間におけ る積算発光量とカイコ産生酵素標品の希釈倍率とをそれぞれプロットし、個々の発光 反応における定量性を確認した。
[0094] 段階希釈した ROLカイコ産生酵素標品による発光量をプロットした結果を図 5に示 す。緑色ルシフェラーゼの酵素標品では、 10倍 (0.1)から 10,000倍 (0.0001)における希 釈倍率と発光量は高い相関を示した。
[0095] また段階希釈した ROLOカイコ産生酵素標品による発光量をプロットした結果を図 6 に示す。橙色ルシフ ラーゼの酵素標品では、 10倍 (0.1)から 10,000倍 (0.0001)にお ける希釈倍率と発光量は高い相関を示した。
[0096] さらに段階希釈した REDカイコ産生酵素標品による発光量をプロットした結果を図 7 に示す。赤色ルシフェラーゼの酵素標品では、 10倍 (0.1)から 1 ,000倍 (0.001)における
希釈倍率と発光量は高い相関を示した。
実施例 4
[0097] 実施例 1と同様にして、ホタルモドキ科の鉄道虫 Phrixothrix hirtus由来の赤色ルシ フェラーゼ遺伝子 (RED)を発現する pEX- Red、イリォモテボタル科の Rhagophthalmida e Ohbai由来の緑色ルシフェラーゼ(ROL)遺伝子を発現する pEX- ROL、イリォモテ ボタル科の Rhagophthalmidae Ohbai由来の緑色ルシフェラーゼ(ROL)遺伝子の部 位特異的変異体の橙色ルシフ ラーゼ (ROLO)遺伝子を発現する pEX-ROLO、の 3 種類の各ルシフェラーゼ発現べクタ一のプラスミドを用意した。
[0098] 37°C、 5%の COの条件下でダルベッコ改変イーグル培地 (DMEM, SIGMA社製)
2 Zl
0%ゥシ胎児血清 (FBS, 日本製薬社製)培地により培養した NIH3T3細胞を用いた。 24 wellプレート(NUNC社製 No.140675)に NIH3T3細胞が 2 X 104 cells/well/500 μ L となるよう培養し、リポフエクトァミンプラス試薬(Invitrogen社製)を用いて 400ngの各プ ラスミドを NIH3T3内に導入(トランスフエクシヨン)した。 48時間培養した後 300 μ Lの細 胞溶解剤(0.005%CHAPSZ10%グリセロール Z2mM CDTA/5mg/mL BSA/20mM HEPES (pH 7.9)を各 wellにカ卩ぇ細胞を溶解させルシフェラーゼ酵素を抽出した。室 温で 5分間静置後、異なるプラスミド 3種を発現させた細胞力 得られたライセートを 以下のとおり混合させた。
[0099] (1)緑色ルシフェラーゼをコントロールとした系
緑色:赤色:橙色 = 100 : 1 : 100
緑色:赤色:橙色 = 100 : 10 : 10
緑色:赤色:橙色 = 100 : 100 : 1
(2)橙色ルシフェラーゼをコントロールとした系
緑色:赤色:橙色 = 1 : 100 : 100
緑色:赤色:橙色 = 10 : 10 : 100
緑色:赤色:橙色 = 100 : 1 : 100
(3)赤色ルシフェラーゼをコントロールとした系
緑色:赤色:橙色 = 1 : 100 : 100
緑色:赤色:橙色 = 10 : 100 : 10
緑色:赤色:橙色 = 100 : 100 : 1
混合したライゼート 20 μ Lをルミノメーター (アト一社製ルミネッセンサー MCA ΑΒ-225 0型)用のキュベットの底部に採った。
[0100] 多色発光用のルシフェラーゼ発光試薬として、 530 μ Μ ΑΤΡ/470 μ Μルシフェリ ン Z2mM AED/5mM MgSO /0.1 % a—シクロデキストリン ZO. lmMピロリン酸カリ
4
ゥム Ζθ.01 %サポニン Z20mM NaF/100mMトリス—リン酸 (pH 8.0)を調製した。 3種 のプラスミド pEX- Red、 pEX- ROL、 pEX- ROLOを細胞導入した哺乳細胞のそれぞれ の抽出物(ライセート ) 20 Lに対して、多色発光用のルシフェラーゼ発光測定試薬を 各々 100 μ L添加し、ルミノメーター (アト一社製ルミネッセンサー MCA ΑΒ- 2250型)に よって得られる色分割された 30秒間における発光量を計測し、それぞれ希釈したライ セートが定量性を持って測定可能力どうかを確認した。その際、緑色をコントロールと して赤色及び橙色の定量性測定した結果を図 8に、また橙色をコントロールとして緑 色及び赤色の定量性を測定した結果を図 9に、さらに赤色をコントロールとして緑色 及ぶ橙色の定量性を測定した結果を図 10に、それぞれ示した。
[0101] 緑、橙、赤の各色のルシフェラーゼをコントロールとした場合でも、同時に発光させ た反応系で他の 2色による発光量を、 3桁にわたり色識別かつ定量できることが確認 された。
なお、本実施例の実験において、 0.01 %サポニン及び 20mM NaFを多色発光用の ルシフェラーゼ発光試薬に添加しな 、で、その代わりに細胞溶解剤に添加した場合 (この際には、 CHAPSを細胞溶解剤に添加しなくてもよい)にも、同様の結果が得ら れる。
実施例 5
[0102] 37°C、 5%の COの条件下で Ham ' s F-12培地 (GIBCO社製) Zl0%ゥシ胎児血清 (FB
2
S, 日本製薬社製)培地により培養した CHO細胞 (チャイニーズノヽムスター卵巣細胞) を用いた。 96wellプレート(Corning社製 No.3610)に CHO細胞が 2 X 104 cells/well/ 100 Lとなるよう培養し、リポフエクトァミンプラス試薬(Invitrogen社製)を用いて 200 n gの 3種のプラスミド pEX- Red、 pEX- ROL、 pEX- ROLO各プラスミドを CHO細胞に導 入(トランスフエクシヨン)した。トランスフエクシヨン後 24時間培養した CHO細胞培養液
に対して、 100 μ Lの 1液系多色発光用のルシフェラーゼ発光試薬〔1.06 mM ATP/1 .88 mMルシフェリン Z540 μ M CoA/4.9 mM DTT (ジチオスレィトール) Z5.34 mM MgSO /7.5% a—シクロデキストリン Z0.01% Triton Χ-100/lOOmMトリス—塩酸 (p
4
H 7.8)〕を添カ卩した。次に、 96wellプレートをプレート振とう器(TAITEC社製 TAIYO M ICRO MIXER S-5)を用いて 5分間 96wellプレートの撹拌操作を行った後、ルミノメー ター (Berthold社製 LB96V)によって得られる発光反応開始から 130分間における 3色 (緑色、橙色、赤色)の発光強度の経時変化を比較した結果を図 1 1に示した。発光 半減期は、緑色、橙色、赤色でそれぞれ 4. 5時間、 2. 25時間、 2. 5時間となる結果 を得た。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本 明細書にとり入れるものとする。
産業上の利用可能性
本発明の多色発光同時測定用ルシフ ラーゼ発光方法は、発光反応を 1回行うだ けで発光色の異なる複数のシフ ラーゼによる発光量が同時に測定でき、従来の 2 倍から 3倍のシグナルを得る高機能化されたルシフェラーゼアツセィなどに利用でき る。従って、本発明の多色発光同時測定用ルシフェラーゼ発光方法を利用すること により、マルチ遺伝子の転写活性の同時測定を簡便に行うことができる。