WO2006051652A1

WO2006051652A1 - 伝動ベルト

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Publication number: WO2006051652A1
Application number: PCT/JP2005/017635
Authority: WO
Inventors: Yasuhiko Yoshida; Hiroyuki Tachibana; Hiroyuki Shiriike
Original assignee: Bando Chemical Industries Ltd
Current assignee: Bando Chemical Industries Ltd
Priority date: 2004-11-10
Filing date: 2005-09-26
Publication date: 2006-05-18
Anticipated expiration: 2007-05-10
Also published as: US20090048049A1; EP1830101A4; CN101057089B; EP1830101B1; CN101057089A; EP1830101A1; KR101199284B1; JP2006138355A; KR20070073846A; JP4837274B2

Abstract

くり返し屈曲やエンジン周りの加熱条件での走行に対する動的接着性、耐熱接着性に優れ、かつ耐熱性、耐摩耗性、異音防止性にも優れる伝動ベルトを提供する。ベルト長手方向に沿って心線が埋設された接着ゴム層と、上記接着ゴム層の内側に積層された圧縮ゴム層とが加硫接着された伝動ベルトであって、上記接着ゴム層及び上記圧縮ゴム層は、エチレン－α－オレフィン－ジエンゴム配合物を用いて形成されるものであり、上記接着ゴム層のエチレン－α－オレフィン－ジエンゴム中のジエン含有量は、上記圧縮ゴム層のエチレン－α－オレフィン－ジエンゴム中のジエン含有量以上であり、上記接着ゴム層のエチレン－α－オレフィン－ジエンゴム中のジエン含有量は３．５～１０質量％であり、かつ、上記圧縮ゴム層のエチレン－α－オレフィン－ジエンゴム中のジエン含有量は０～６質量％である伝動ベルト。

Description

明細書

伝動べノレト

技術分野

[0001] 本発明は、伝動ベルトに関する。

背景技術

[0002] —般的に、伝動ベルトは、圧縮ゴム層と接着ゴム層を有し、この接着ゴム層内に繊維心線が接着されて坦設されており、ベルトの上面、下面又は側面を含む全周面は、必要に応じて、ゴム引き帆布が接着されているものである。従来から、このような伝動ベルトにおいて、圧縮ゴム層にはクロロプレンゴムや、水素化二トリルゴムとクロロスルホンィ匕ポリエチレンゴムとの混合物が通常用いられている力 S、近年環境保護の観点から、伝動ベルトの素材のゴムにも脱塩素化の要請があり、圧縮ゴム層と共に、接着ゴム層にも、エチレン一プロピレン一ジェン系ゴム（EPDM)等のエチレン一ひ一ォレフィン一ジェンゴムを用いることが試みられてレ、る。

[0003] 特許文献 1には、接着ゴム層としてエチレン一ひ一ォレフインエラストマ一を用いた硫黄架橋可能なゴム組成物の加硫物を使用し、また圧縮ゴム層としてエチレン一ひ - ォレフィンエラストマ一を用いた有機過酸化物架橋可能なゴム組成物の架橋物を使用することにより、耐熱性や耐久性が改善された動力伝動用ベルトが開示されている特許文献 2には、エチレン一ひ一ォレフインエラストマ一に共架橋剤として N， N， - m_フエ二レンジマレイミドを特定量添加することにより、耐熱性ゃ耐粘着摩耗性等を改善し、耐久性を向上したゴム組成物及びこれを用いた伝動ベルトが開示されている。

[0004] しかし、これらの伝動ベルトは、動的接着性及び耐熱接着性や、耐熱性、耐摩耗性、異音防止性の点で不充分であるという問題がある。また、接着ゴム層と圧縮ゴム層とがそれぞれ異種の架橋系で架橋されている場合、接着ゴム層と圧縮ゴム層との界面接着性が弱く不安定で、耐久性等が劣るといった問題もある。

[0005] 特許文献 3には、クロロスルホン化ポリエチレン又はアルキル化クロロスルホン化ポリエチレンのゴムラテックスをラテックス成分として含むレゾルシン一ホルマリン一ラテツタス接着剤組成物にて心線を接着処理することによって、心線と接着ゴム層の間に優れた動的接着力を付与した圧縮ゴム層と接着ゴム層とが共にエチレン一ひ一ォレフィン一ジェンゴムからなる伝動ベルトが開示されている。

[0006] し力し、エチレン一プロピレン一ジェン系ゴム（EPDM)は、主鎖が 2重結合を有さないため、極性が低また反応性が小さ通常の配合においては難接着性である。このため、レゾルシン一ホルマリン一ラテックス接着剤とゴム層の界面で接着力の低下が起こりやすいといった問題がある。また、耐熱性、耐摩耗性、異音防止性が不充分な場合もある。

[0007] 特許文献 1 :特開平 11 193849号公報

特許文献 2：特開平 11 349752号公報

特許文献 3 :特開 2001— 003991号公報

発明の開示

発明が解決しょうとする課題

[0008] 本発明は、上記現状を鑑みて、伝動ベルトのくり返し屈曲やエンジン周りの加熱条件での走行に対する動的接着性、耐熱接着性に優れ、かつ耐熱性、耐摩耗性、異音防止性にも優れる伝動ベルトを提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0009] 本発明は、ベルト長手方向に沿って心線が坦設された接着ゴム層と、上記接着ゴム層の内側に積層された圧縮ゴム層とが加硫接着された伝動ベルトであって、上記接着ゴム層及び上記圧縮ゴム層は、エチレン一ひ一ォレフイン一ジェンゴム配合物を用いて形成されるものであり、上記接着ゴム層のエチレン一ひ一ォレフイン一ジェンゴム中のジェン含有量は、上記圧縮ゴム層のエチレン一ひ一ォレフイン一ジェンゴム中のジェン含有量以上であり、上記接着ゴム層のエチレン一ひ一ォレフイン一ジェンゴム中のジェン含有量は 3. 5〜： 10質量％であり、かつ、上記圧縮ゴム層のエチレン - α—ォレフイン一ジェンゴム中のジェン含有量は 0〜6質量⁰ /₀であることを特徴とする伝動ベルトである。

[0010] 上記接着ゴム層及び上記圧縮ゴム層は、共に過酸化物又は硫黄により架橋されていることが好ましい。

上記接着ゴム層は、共架橋剤を含有し、過酸化物により架橋されていることが好ましレヽ

以下、本発明を詳細に説明する。

[0011] 本発明の伝動ベルトは、接着ゴム層のエチレン一ひ一ォレフイン一ジェンゴム中のジェン含有量が、圧縮ゴム層のエチレン一ひ一ォレフイン一ジェンゴム中のジェン含有量以上であり、接着ゴム層及び圧縮ゴム層がそれぞれ特定量の上記ジェンを含有することを特徴とするものである。このため、本発明の伝動ベルトは、接着ゴム層と心線との接着性や接着ゴム層と圧縮ゴム層との接着性に優れる。また、本発明の伝動べルトは、圧縮ゴム層のジェン含有量が比較的少ないため、優れた耐熱性、耐摩耗性、異音防止性を有する。

[0012] 本発明は、ベルト長手方向に沿って心線が坦設された接着ゴム層と、上記接着ゴム層の内側に積層された圧縮ゴム層とが加硫接着された伝動ベルトであって、上記接着ゴム層及び上記圧縮ゴム層は、エチレン α—ォレフインジェンゴム配合物（ェチレン α—ォレフインジェンゴムと、必要に応じてその他の成分とからなる配合物）を用いて形成されるものである。

[0013] 上記エチレン一 α—ォレフイン一ジェンゴムとしては、エチレンを除く α—ォレフインとエチレンとジェン（非共役ジェン）との共重合体からなるゴム、それらの一部ハロゲン置換物、又はこれらの 2種以上の混合物が用いられ、上記エチレンを除くひ一ォレフィンとしては、好ましくは、プロピレン、ブテン、へキセン及びオタテンカ選ばれる少なくとも 1種が用いられる。なかでも、好ましいエチレン一ひ一ォレフイン一ジェンゴムとしては、エチレン一プロピレン一ジェン系ゴム（以下、 EPDMともいう）であるが、これらのハロゲン置換物や、他のゴムをブレンドしたものでも良い。

[0014] 上記エチレン一プロピレン一ジェンゴム（EPDM)の市販品としては、例えば、 Χ- 3 012Ρ、 3085 (商品名、三井ィ匕学社製）、 ΕΡ21、 ΕΡ65 (商品名、 JSR社製）、 5754 、 582F (商品名、住友化学社製)等を挙げることができる。

[0015] 上記接着ゴム層のエチレン一ひ一ォレフイン一ジェンゴム中のジェン含有量は、上記圧縮ゴム層のエチレン α—ォレフインジェンゴム中のジェン含有量以上である。

本発明では、エチレン一ひ一ォレフイン一ジェンゴム中のジェン含有量を多くすることにより、架橋時の反応性を高め、心線と接着ゴム層との接着力や接着ゴム層と圧縮ゴム層との接着力を向上させることができることを見出すとともに、ジェン含有量を多くすると、耐熱性の低下が生じ、長時間の伝動ベルトの走行中において、圧縮ゴム層の発熱による劣化が生じること、プーリとの接触時に異音が発生しやすいこと、等の不具合が発生することを見出した。このため、本発明の伝動ベルトでは、エチレン一 a一才レフインジェンゴムを接着ゴム層及び圧縮ゴム層中の成分として使用し、かつ、圧縮ゴム層ではジェン含有量が比較的少ない量のものを使用している。そして、この結果、本発明では、心線と接着ゴム層との間や、接着ゴム層と圧縮ゴム層との間に優れた接着力を付与することができ、更に、優れた耐熱性、耐異音性、低表面ェネルギー性も付与することができる。上記接着ゴム層のエチレン α—才レフインジェンゴム中のジェン含有量は、上記圧縮ゴム層のエチレン _α—ォレフインージェンゴム中のジェン含有量より多い量であることが好ましい。

[0016] 上記接着ゴム層に含まれるエチレン α—ォレフインジェンゴムにおいて、上記ジェンの含有量は、上記エチレン α—ォレフインジェンゴムを構成するエチレン、 α—ォレフイン及びジェンの合計量 100質量％中に、 3. 5〜： 10質量％である。 3. 5 質量％未満であると、充分な接着性が得られないおそれがある。 10質量％を超えると、耐熱性が低下し、ベルト走行時に破壊がおこりやすくなる。上記ジェンの含有量は、 3. 5〜9. 5質量⁰ /₀であることが好ましい。

[0017] 上記圧縮ゴム層に含まれるエチレン一ひ一ォレフイン一ジェンゴムにおいて、上記ジェンの含有量は、上記エチレン一ひ一ォレフイン一ジェンゴムを構成するエチレン、 α—ォレフイン及びジェンの合計量 100質量⁰ /₀中に、 0〜6質量⁰ /₀である。 6質量⁰ /₀ を超えると、耐熱性の低下が起こり、ベルト走行時に異音が発生したりするおそれがあり、特に圧縮ゴム層においては長時間の走行に対して発熱による劣化が激しくなるおそれがある。なお、 0質量⁰ /。の場合のエチレン一ひ一ォレフイン一ジェンゴムは、ジェンが含まれないエチレン一ひ一ォレフインゴムである。

[0018] 上記接着ゴム層、圧縮ゴム層に含まれるエチレン α—ォレフインジェンゴムにおいて、上記エチレンの含有量は、上記エチレン一ひ一ォレフイン一ジェンゴムを構成するエチレン、ひ一ォレフィン及びジェンの合計量 100質量⁰ /₀中に、 50〜80質量⁰ /₀ であることが好ましぐ上記ひ一ォレフィンの含有量は、 20〜50質量％であることが好ましい。

上記エチレン一ひ一ォレフイン一ジェンゴムは、ムーニー占度！^ （100。C)が 20

1 + 4

〜120のものが好ましく用いられる。

[0019] 上記ジェン成分としては、通常、 1， 4 _へキサジェン、ジシクロペンタジェン又はェチリデンノルボルネン等の非共役ジェンが適宜に用いられる。これらは、単独で用いてもよく、 2種以上を併用してもよい。また圧縮ゴム層についてはジェン成分が含まれていないエチレンプロピレン系ゴム（EPR)も選択可能である。

[0020] 上記接着ゴム層における心線としては、ポリエステル心線、ナイロン心線、ビニロン心線、ァラミド心線等が好適に用いられる力なかでも、上記ポリエステル心線としてはポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等力上記ナイロン心線としては 6 , 6—ナイロン（ポリへキサメチレンアジパミド）、 6ナイロンが好適に用いられる。上記ァラミド心線としてはコポリパラフエ二レン · 3, A' ォキシジフエ二レン'テレフタルァミドゃポリパラフエ二レンテレフタルアミドゃポリメタフエ二レンイソフタルアミド等が好適に用いられる。これらの心線は、レゾノレシンホルマリンラテックス接着剤組成物（以下、 RFL接着剤ということがある。）等で接着処理されて、上記接着ゴム層内に埋設されていることが好ましい。 RFL処理を行うことにより、心線と接着ゴム層との接着性が良好になる。これらは、単独で用いてもよぐ 2種以上を併用してもよい。

[0021] 上記 RFL処理で用いる RFL接着剤は、通常、レゾルシンとホルマリンとをレゾルシン Zホルマリンのモル比 1/3〜3/1にて塩基性触媒の存在下に縮合させて、レゾルシン—ホルマリン樹脂（レゾルシン—ホルマリン初期縮合物、以下、 RFともいう。）の 5 〜80質量⁰ /₀濃度の水溶液を調製し、これとゴムラテックスを混合することによって調製することができる。上記 RFL接着剤の固形分濃度は、通常、 10〜50質量％の範囲である。ラテックスのゴム成分としてはクロロスルホン化ポリエチレンあるいはアルキル化クロロスルホン化ポリエチレン等が用いられる。

[0022] 上記 RFL処理としては、上述の RFL接着剤に上記心線を含浸し、乾燥させた後更にピリジル基又はカルボキシル基を含むカルボキシル変性ビュルピリジンラテックス等を含む RFL接着剤に通して 2層の RFL層を形成したり、 2種類以上のラテックスを混合した RFL接着剤を用いたりすることもできる。また、これらの方法に限ることなくェポキシ又はイソシァネー H匕合物で前処理を行った後に、上記の RFL接着剤で処理する方法等もある。上記前処理とは、イソシァネー H匕合物又はエポキシ化合物を含む溶液にポリエステル心線を浸漬した後、必要に応じて、加熱乾燥させる方法等が挙げられる。

[0023] 本発明の伝動ベルトにおいて、上記接着ゴム層及び圧縮ゴム層は、共に過酸化物又は硫黄により架橋されているものであることが好ましい。

上記接着ゴム層や圧縮ゴム層の架橋には、硫黄架橋又は過酸化物架橋のどちらでもよいが、接着ゴム層及び圧縮ゴム層共に同種の架橋系を用いることが好ましい。同種の架橋系を用いることで接着ゴム層と圧縮ゴム層との界面接着性が向上し、安定性がよくなる。異種の架橋系を用いると、親和性、架橋形態、架橋速度の差等により走行時の局部的な荷重等を受け、層の界面での破壊等が生じたりするおそれがあるので避けることが望ましい。

[0024] 過酸化物架橋剤としては、特に限定されるものではないが、通常の有機過酸化物が使用され、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジー t ブチルパーオキサイド、 tーブチルクミルパーオキサイド、ベンゾィルパーオキサイド、 1， 3 _ビス（t_ブチルパーォキシイソプロピル）ベンゼン、 2， 5 ジメチノレー 2, 5—ジ（t_ブチルパーォキシ）へキシン一 3， 2, 5 ジメチノレー 2, 5 _ (ベンゾィルパーォキシ）へキサン、 2, 5—ジメチル - 2, 5 _モノ（t_ブチルパーォキシ)へキサン等を挙げることができる。上記有機過酸化物は、単独もしくは混合物として、通常エチレン一ひ一ォレフイン一ジェンゴム 1 00g (固形分）に対して 0. 005-0. 02gの範囲で使用される。

[0025] 上記過酸化物架橋の場合はまた、架橋助剤（共架橋剤）を配合してもよレ、。架橋助剤を配合することによって、架橋度を上げて接着力を更に安定させ、粘着摩耗性等の問題を防止することができる。上記架橋助剤としては、 TAIC、 TAC、 1， 2ポリブタジェン、不飽和カルボン酸の金属塩、ォキシム類、グァニジン、トリメチロールプロパントリメタタリレート、エチレングリコールジメタタリレート、 N, N' —m—フエ二レンビスマレイミド、硫黄等通常パーオキサイド架橋に用いるものを挙げることができる。なかでも、 N, N^r _m_フエ二レンビスマレイミド及び不飽和カルボン酸の金属塩を用いることが好ましい。これらは、単独で用いてもよ 2種以上を併用してもよい。

[0026] 硫黄加硫の場合、硫黄の添加量は、エチレン一ひ一ォレフイン一ジェンゴム 100質量部に対して 0. 5〜3. 0質量部であることが好ましい。

硫黄加硫の場合はまた、加硫促進剤を配合してもよい。加硫促進剤を配合することによって、加硫度を上げて粘着摩耗等の問題を防止することができる。上記加硫促進剤としては、一般的に加硫促進剤として使用されるものであればよぐ例えば、トリメチルチオ尿素（TMU)、 N ォキシジエチレンベンゾチアゾール 2—スルフェンァミド（OBS)、テトラメチルチウラムジスルフイド（TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフイド（TETD)、ジメチルジチォカルバミン酸亜鉛（ZnMDC)、ジェチルジチォカルノくミン酸亜鉛（ZnEDC)、 N シクロへキシルベンゾチアゾール 2—スルフェンアミド、 2—メルカプトべンゾチアゾール、ジベンゾチアゾリルジスルフイド等を挙げることができる。

[0027] 本発明の伝動ベルトにおいて、上記圧縮ゴム層には、ナイロン 6、ナイロン 66、ポリエステル、綿、ァラミド等からなる短繊維を混入させてもよい。上記短繊維を含有すると、上記圧縮ゴム層の耐側圧性が向上するとともに、プーリと接する面になる圧縮ゴム層の表面に短繊維を突出させ、圧縮ゴム層の摩擦係数を低下させて、ベルト走行時の騒音を軽減することができる。また、短繊維表面には通常接着処理が施される。

[0028] 本発明において、圧縮ゴム層や接着ゴム層を形成するためのエチレン一ひ一ォレフイン—ジェンゴム配合物は、上述した成分と共に、必要に応じて、カーボンブラック、シリカ、ガラス繊維、セラミックス繊維等の増強剤、炭酸カルシウム、タルク等の充填剤、可塑剤、安定剤、加工助剤、着色剤等の通常のゴム工業で用いられる種々の薬剤を含有していてもよい。

[0029] 上記圧縮ゴム層や接着ゴム層を形成するためのエチレン一ひ一ォレフイン一ジェンゴム配合物は、エチレン一ひ一ォレフイン一ジェンゴムを、必要に応じて、上述したような薬剤と共に、ロール、バンバリ一等、通常の混合手段を用いて均一に混合することによって得ることができる。上記接着ゴム層と、上記圧縮ゴム層とは、加硫接着されたものである。上記加硫接着の方法は、特に限定されず、従来公知の方法によって行うことができる。

[0030] 本発明の伝動ベルトは、ベルト長手方向に沿って心線が坦設された接着ゴム層とその内側に積層された圧縮ゴム層を接着一体化したもので、例えば、 Vリブドベルト、口一エッジ Vベルト及び平ベルトが挙げられる。

本発明の伝動ベルトの例を、図 1〜図 3を用いて説明する。

[0031] 図 1は、 Vリブドベルトの一例の横断面図（ベルト長手方向に直角な面）を示し、ベルトの上面は、単層又は複数層のゴム引き帆布層 1が形成されており、この内側に隣接して、接着ゴム層 3が積層されている。この接着ゴム層には、繊維コードからなる複数の低伸度の心線 2が間隔を置いてベルト長手方向に延びるように埋設されている。更に、この接着ゴム層の内側に隣接して、圧縮ゴム層 5が積層されている。この圧縮ゴム層は、ベルト長手方向に延びるように相互に間隔を有するリブ 4に形成されている。多くの場合、圧縮ゴム層 5には、その耐側圧性を高めるために、ベルトの幅方向に配向して短繊維 6が分散されている。

[0032] 図 2は、ローエッジタイプ Vベルトの一例の横断面図を示し、ベルトの上面は、上記と同様に、単層又は複数層のゴム引き帆布層 1が形成されており、必要に応じて、上ゴム層 7が積層され、この内側に隣接して、上記と同様に心線 2が坦設された接着ゴム層 3が積層され、更に、この内側に隣接して、圧縮ゴム層 5が積層されている。多くの場合、圧縮ゴム層 5には、その耐側圧性を高めるために、ベルトの幅方向に配向して短繊維 6が分散されている。圧縮ゴム層の内側に隣接して通常、単層又は複数層のゴム引き帆布層 1が積層されている。

図 3は、平ベルトの一例の横断面図を示し、上記と同様、ゴム引き帆布層 1、接着ゴム層 3及び圧縮ゴム層 5が積層されてレ、る。

[0033] 本発明による伝動ベルトは、従来より知られている通常の方法によって製造することができる。例えば、 Vリブドベルトに例をとれば、表面が平滑な円筒状の成形ドラムの周面に:!枚又は複数枚のゴムコ一ト帆布と接着ゴム層のための未加硫シートを巻き付けた後、この上にポリエステル心線を螺旋状にスピユングし、更に、その上に接着ゴム層のための未加硫シートを巻き付けた後、圧縮ゴム層のための未加硫シートを卷き付けて積層体とし、これを加硫缶中にて加熱加圧し、加硫して、環状物を得る。次に、この環状物を駆動ロールと従動ロールとの間に掛け渡して、所定の張力の下で走行させながら、これに研削ホイールにて表面に複数のリブを形成する。この後、この環状物を更に別の駆動ロールと従動ロールとの間に掛け渡して走行させながら、所定の幅に裁断すれば、製品としての Vリブドベルトを得ることができる。

[0034] 本発明は、ベルト長手方向に沿って心線が坦設された接着ゴム層と、上記接着ゴム層の内側に積層された圧縮ゴム層とが加硫接着された伝動ベルトであって、上記接着ゴム層及び上記圧縮ゴム層は、エチレン α—ォレフインジェンゴム配合物を用いて形成されるものであり、上記接着ゴム層のエチレンひーォレフインジェンゴム中のジェン含有量は、上記圧縮ゴム層のエチレン α—ォレフインジェンゴム中のジェン含有量以上であり、接着ゴム層及び圧縮ゴム層がそれぞれ特定量の上記ジェンを含有するものである。このため、上記伝動ベルトは、接着ゴム層と心線との接着性や接着ゴム層と圧縮ゴム層との接着性 (動的接着性、耐熱接着性)に優れ、かつ耐熱性、耐摩耗性、異音防止性にも優れる。

発明の効果

[0035] 本発明の伝動ベルトは、上述した構成よりなるので、接着ゴム層と心線又は圧縮ゴム層との動的接着性、耐熱接着性に優れ、かつ耐熱性、耐摩耗性、異音防止性にも優れる。従って、自動車用補機 (ダイナモ、ェヤコン、パワステ等）の駆動用等の伝動用ベルトとして好適に適用することができる。

図面の簡単な説明

[0036] [図 1]Vリブドベルトの一例の横断面図（ベルト長手方向に直角な面）である。

[図 2]ローエッジタイプ Vベルトの一例の横断面図である。

[図 3]平ベルトの一例の横断面図である。

[図 4]伝動ベルトの走行試験の様子を示した図である。

符号の説明

[0037] 1 ゴム引き帆布層

2 心線

3 接着ゴム層 4 リブ

5 圧縮ゴム層

6 短繊維

7 上ゴム層

11 駆動プーリ

12 従動プーリ

13 アイドラープーリ

14 テンションプーリ

発明を実施するための最良の形態

[0038] 以下に本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また実施例中、「部」、「％」は特に断りのない限り「質量部」、「質量％」を意味する。

[0039] (実施例:!〜 12、比較例:!〜 4)

接着ゴム層と圧縮ゴム層の製造

接着ゴム層を表 1に示すゴム配合物から調製し、バンバリ一ミキサーで混練後、カレンダーロールで圧延し、接着ゴム層用ゴム配合物未加硫シートを作成した。圧縮ゴム層は、表 2に示すゴム配合物から調製し、同様に圧縮ゴム層用ゴム配合物未加硫シートを作成した。なお、用いた市販品は、以下のとおりである。

エチレン一プロピレン一ジェンゴム（EPDM)：

「X— 3012P」（ジェン含量 3. 5質量⁰ /。、エチレン含量 72質量⁰ /₀、プロピレン含量 24 . 5質量％、ムーニー粘度 ML (100°C) 15、三井化学社製）、

1 + 4

「3085」（ジェン含量 4. 5質量％、エチレン含量 62質量％、プロピレン含量 33. 5質量％、ムーニー粘度 ML (100°C) 62、三井化学社製）、

1 +4

「582F」（ジェン含量 6. 0質量％、エチレン含量 71質量％、プロピレン含量 22質量 %、ムーニー粘度 ML (125°C) 67、住友化学社製）、

1 +4

「EP21」（ジェン含量 6. 0質量％、エチレン含量 61質量％、プロピレン含量 33質量 %、ムーニー粘度 ML (100°C) 38

1 +4 、 JSR社製）、

「EP65」（ジェン含量 9. 0質量％、エチレン含量 54質量％、プロピレン含量 37質量 o/₀、ムーニー粘度 ML (100°C) 74、 JSR社製）、

1 +4

「5754」（ジェン含量 7. 0質量⁰ /₀、エチレン含量 63質量⁰/。、プロピレン含量 30質量 %、ムーニー粘度 ML (100°C) 30、住友化学社製）

1 +4

「301」（ジェン含量 3. 0質量⁰ /₀、エチレン含量 62質量⁰/。、プロピレン含量 35質量⁰ /₀ 、ムーニー粘度 ML (100°C) 55、住友化学社製）

1 +4

エチレン一ひ一ォレフイン種：

「エンゲージ 8180」（エチレン—オタテン、ジェン含量 0質量⁰ /。、エチレン含量 83質量％、オタテン含量 17質量％、ムーニー粘度 ML (121°C) 35、デュポンダウエラ

1 +4

ストマー社製）

1 ) HAFカーボン（三菱化学社製）

2)シリカ：「トクシール Gu」、トクャマ社製

3)パラフィンオイル：「サンフレックス 2280」、日本サン化学社製

4)加硫剤：オイル硫黄、細井化学社製

5)加硫助剤:ステアリン酸、花王社製

6)加硫助剤：酸化亜鉛、堺化学工業社製

7)粘着付与剤：「石油樹脂クイントン A— 100」、日本ゼオン社製

8)短繊維：綿粉

9)短繊維： 66ナイロン繊維、 6de X lmm

[表 1]

PO架橋硫黄架橋配合 A 配合 B 配合 C 配合 D 配合 E 配合 F

X-3012P

100

(EPDM、シ' Iン含量 3.5wttt 一 ― ― ― ―

3085

100 ― ― ― ― 100

(EPDM、シ'1ン含量 4.5wt¾)

Iチレン

582F

α才レフィ 10

(EPDM、シ'1ン含量 6.0wt%) ― 0 ― ― - ― ン種

5754

(EPDM、シ' Iン含量 7.0wt%) ― ― 100 ― ― ― エンゲージ 81 80 - 10

(Iチレン一才クテン、シ Iン含量 Owt%) ― ― ― 0 -

HAF力一ボン¹ ) 50 50 50 50 50 50 パラフィンオイル ³⁾ 20 20 20 20 20 20 加硫剤 (オイル硫黄) ⁴⁾ 1.2 1.2 1.2 1.2 1.2 1.2 ゴム

薬品等

加硫助剤 (ステアリン酸) ⁵⁾ 1 1 1 1 1 1 加硫助剤（酸化亜鉛) ⁶ > 5 5 5 5 5 5 ナイロン繊維 (長さ 3mm)⁹⁾ 22 22 22 22 22 22 硫黄 (オイルサルファ一) ― ― ― ― ― 1 亍トラェチルチウラムジスルフイド

(TETD) ― ― ― ― ― 1 ジベンゾチアジルジスルフイド

1 (MBTS) ― 一 ― ― - ジクミルパーオキサイド 3 3 3 3 3 ― 合計量 (質量部〉 202.2 202.2 202.2 202.2 202.2 202.2

RFL接着吝 II組成物の製诰

レゾルシン 7. 31質量部とホルマリン（37質量％濃度） 10. 77質量部とを混合、攪拌し、これに水酸化ナトリウム水溶液（固形分 0. 33質量部）をカ卩えて、攪拌し、この後、水 160. 91質量部を加え、 5時間熟成して、レゾルシン.ホルマリン樹脂（レゾルシン —ホルマリン初期縮合物）（これを RFという） RZF比（レゾルシン/ホルマリンモル比 ) =0. 5の水溶液を調製した。この RF水溶液にクロロスルホン化ポリエチレンゴム（C SM)ラテックス（固形分 40%)を RFZL比（RF/ラテックスモル比）が 0. 25になるよう（ラテックス固形分量あわせて 45. 2質量部)加え、更に水を加え、固形分が 20%になるように調整した。その後、攪拌し 12時間熟成して、 RFL接着剤組成物を調製した [0043] 心線及びその接着処理

ポリエステル心線（ポリエステルコード、 1000デニーノレ、 Z2 X 3、上撚り 9. 5T/10 cm (Z)、下撚り 2. 19T/I0cm、帝人社製）をイソシァネートのトルエン溶液（イソシァネー卜固形分 20質量％)に浸漬した後、 240°Cで 40秒間加熱乾燥して、前処理を施した。

次に、このように前処理したポリエステル心線を、上述の RFL接着剤組成物に浸漬し、 200°Cで 80秒間加熱乾燥させ、次いで、このように処理したポリエステル心線を接着ゴムと同じエチレンプロピレンジェンゴムをトルエンに溶解してなる接着溶液に浸漬した後、 60°Cで 40秒間加熱乾操して、ポリエステル心線に接着処理を施した

[0044] ポリエステル心線と接着ゴム層との接着力の測定

上述のように処理したポリエステル心線を上記接着ゴム層用ゴム配合物未加硫シートの間に挟み、これらを面圧 3920kPa、温度 160°Cで 35分間、加圧加熱し、プレス加硫した。このようにして得られた接着物におけるポリエステル心線の接着力を測定した。

[0045] 伝動ベルトの作製

帆布と上記接着ゴム層用ゴム配合物未加硫シートを、表面が平滑な円筒状の成形ドラムの周辺に巻き付けた後、この上に上述の接着処理済みのポリエステル心線を螺旋状にスピユングした。更に、その上に上記接着ゴム層用ゴム配合物未加硫シートを巻き付けた後、圧縮ゴム層用ゴム配合物未加硫シートを巻き付けて積層体とし、これを内庄 6kgf/cm²、外圧 9kgf/cm²、温度 165°C、時間 35分間、加硫缶中にて加熱加圧し、蒸気加硫して、環状物を得た。次いで、この環状物を駆動ロールと従動口ールとからなる第 1の駆動システムに取り付けて、所定の張力の下で走行させながら、これに研削ホイールにて表面に複数のリブを形成し、この後、この環状物を更に別の駆動ロールと従動ロールとからなる第 2の駆動システムに取り付けて、走行させながら、所定の幅に裁断して、リブ数 3、周長さ 1000mmの製品としての Vリブドベルトを得た。なお、各 Vリブドベルトの製造に用いた接着ゴム層用ゴム配合物未加硫シートと圧縮ゴム層用ゴム配合物未加硫シートについては、表 3に示す通りである。

[0046] 伝動ベルトの走行試験

上述のようにして得られた Vリブドベルトを、図 4に示すように駆動プーリ 11 (直径 120 mm)と従動プーリ 12 (直径 120mm)とこれらのプーリの間に配置したアイドラープ一リ 13 (直径 70mm)とテンションプーリ 14 (直径 55mm)とからなるベルト駆動システムに取り付けた。但し、アイドラープーリにはベルト背面を係合させた。

[0047] 温度 130°Cの雰囲気温度の下で、従動プーリの負荷を 16馬力とし、テンションプーリの初張力を 85kgfとし、駆動プーリを回転数 4900rpmで駆動して、ベルトを走行させ、ベルトから心線が露出する力、又はゴム層に割れを生じるまでの走行時間をベルトの動的寿命として、上記ベルトの耐久性等を評価した。またベルト走行時に異音が発生するか否力を評価した。結果を表 3に示す。

[0048] [表 3]

接着ゴム層圧縮ゴム層接着評価ベルトの走行試験

ジェン含ジェン含心線のベルト判定配合 m 配合接着力寿命破壊の有無と形態異音

(質量 W (質量 %) (kgf/3本） (時間)

実施例 1 配合 3 6. 0 配合 A 4. 5 14. 8 80 なしなし〇実施例 2 配合 3 6. 0 配合 B 6. 0 14. 6 80 なしなし〇実施例 3 配合 4 9. 0 配合 A 4. 5 1 5. 8 80 なしなし O 実施例 4 配合 8 6. 0 配合 A 4. 5 1 5. 6 80 なしなし〇実施例 5 配合 5 4. 5 配合 A 4. 5 1 6. 8 80 なしなし〇実施例 6 配合 6 4. 5 配合 A 4. 5 1 6. 2 80 なしなし〇実施例 7 配合 2 4. 5 配合 A 4. 5 1 2 80 なしなし〇実施例 8 配合 3 6. 0 配合 F 4. 5 1 5. 4 80 なしなし〇実施例 9 配合 7 4. 5 配合 F 4. 5 1 3 80 なしなし〇実施例 10 配合 1 3. 5 配合 D 3. 5 1 1 . 6 80 なしなし〇実施例 11 配合 1 3. 5 配合 E 0 1 1 . 8 80 なしなし〇実施例 12 配合 2 4. 5 配合 F 4. 5 1 1 . 0 80 なしなし〇比較例 1 配合 1 3. 5 配合 A 4. 5 9. 8 60 心線の露出なし X 比較例 2 配合 3 6. 0 配合 C 7. 0 1 4. 4 70 ゴム層の割れ音あり X

接着ゴム/圧縮ゴ

比較例 3 配合 2 4. 5 配合 B 6. 0 1 2 60 なし X

ム層の亀裂

比較例 4 配合 9 3. 0 配合 E 0 9. 0 50 心線の露出なし X

[0049] 表 3より、実施例の伝動ベルトは、心線の接着力が良好で、長時間の走行においてもベルトの破壊等が起こることなぐ耐久性に優れ、かつベルト走行時に異音が生じなかったが、比較例の伝動ベルトは、心線の接着力が良好でな力つたり、ベルト寿命が短く破壊が見られたり、またベルト走行時に異音が生じた。

産業上の利用可能性

[0050] 本発明の伝動ベルトは、自動車用補機 (ダイナモ、ェヤコン、パワステ等）の駆動用等の伝動用ベルトに好適に適用することができる。

Claims

請求の範囲

[1] ベルト長手方向に沿って心線が埋設された接着ゴム層と、前記接着ゴム層の内側に積層された圧縮ゴム層とが加硫接着された伝動ベルトであって、

前記接着ゴム層及び前記圧縮ゴム層は、エチレン α—ォレフインジェンゴム配合物を用いて形成されるものであり、

前記接着ゴム層のエチレン α—ォレフインジェンゴム中のジェン含有量は、前記圧縮ゴム層のエチレン α—ォレフインジェンゴム中のジェン含有量以上であり、

前記接着ゴム層のエチレンひーォレフインジェンゴム中のジェン含有量は 3. 5 〜： 10質量％であり、かつ、

前記圧縮ゴム層のエチレン一ひ一ォレフイン一ジェンゴム中のジェン含有量は 0〜6 質量％である

ことを特徴とする伝動ベルト。

[2] 接着ゴム層及び圧縮ゴム層は、共に過酸化物又は硫黄により架橋されている請求項 1記載の伝動ベルト。

[3] 接着ゴム層は、共架橋剤を含有し、過酸化物により架橋されている請求項 1記載の伝動べノレト。