明細書 マクロファージ泡沫化阻害物質 FK 1 - 1840およびその製造法 技術分野
本発明は、 マクロファージの泡沫化を特異的に阻害して動脈硬化症やそれに 起因する各種疾病の予防や治療に有用なマクロファージ泡沫化阻害物質 FK I - 1 840 (又は FK 1 - 1 840物質と呼称することもある) およびその製造法 に関する。 背景技術
近年、 食生活の向上に伴い、 成人の高脂血症や肥満などの生活習慣病が、 粥 状動脈硬化症、 さらには心筋梗塞、 脳溢血や脳卒中など死と直結した病態へと進 展することが知られている (Ma t s u z awa Y. Ni ppon R i n s ho, 59巻, 1 89— 1 94, 2001年) 。 現在、 動脈硬化の予防、 治療薬 としてス夕チン系薬剤、 例えばプラバス夕チン (三共社、 日本国) 、 シンバス夕 チン (万有製薬社、 日本国) やアト口バス夕チン (山之内製薬社、 日本国) など が用いられているが、 これら薬剤は、 すべて体内でのコレステロール生合成の律 速酵素の 1つである HMG— C 0 A還元酵素を阻害することにより、 血中のコレ ステロール値を低下させる効果に起因する。 しかし、 動脈硬化症は、 複雑でかつ 複合的な成因によることからも、 作用機構の異なる薬剤の開発が強く望まれてい る ο
粥状動脈硬化症の初期病変では、 動脈内皮に浸潤したマクロファージが、 血 中を流れる低密度リポタンパク質 (Low Den s i t y L i p o p r o t e i n;以下 LDLと呼称することもある) が酸化や糖化などのごとき何らかの 変性を受けて生じる変性 LDLを認識し、 際限なく取り込み、 加水分解して生成 する遊離のコレステロ一ルゃ脂肪酸をコレステリルエステルやトリァシルグリセ
ロールに変換して脂肪滴として細胞質に蓄積し、 泡沫化する過程を経て、 動脈硬 化を進展させることが知られている (G 01 d s t e i n, J. L. ら, Pr o c. Na t l. Ac a d. S c i, U. S. A. , 76巻, 333— 337, 1 979年; Ge r r i t y, R. G. , Am. J. Pa t ho l. , 1 03巻, 1 8 1 - 1 90, 1 98 1年) 。
従って、 このマクロファージ泡沫化の過程を阻害する物質は、 直接動脈硬化 巣の進展を抑止することが期待されるが、 スタチン系薬剤を含めてそのような効 果を有する医薬品は知られていなかった。 発明の開示
かかる実情において、 マクロファージ泡沫化を阻害する物質を提供すること は、 動脈硬化症の病巣に直接働き、 その進展を抑止する新しい医薬品として人類 の健康への福音をもたらすことが期待される。
本発明の目的は、 このような期待を満足し得る新規マクロファージ泡沫化阻 害物質 FK 1 - 1 840およびその製造法を提供するものである。
本発明の他の目的はマクロファージ泡沫化阻害物質 FK 1 - 1 840を有効 成分とする動脈硬化症状、 心筋梗塞、 脳溢血および脳卒中などの予防、 治療薬と して有用なマクロファージ泡沫化阻害物質 FK 1— 1 840およびその製造法を 提供するものである。
本発明の更に他の目的はホーマ属に属し、 FK I— 1 840物質を生産する 能力を有する微生物が、 ホーマ エスピー FK I— 1 840 (Ph oma s p. FK I— 1 840、 FERM ABP- 1 0 1 50) またはその変異株であ るマクロファージ泡沫化阻害物質 FK 1 - 1 840の製造法を提供するものであ る
本発明の更に他の目的はマクロファージ泡沫化阻害物質 FK I— 1 840を 生産するためのホーマ エスピー FK 1— 1 840 (Ph oma s p. FK I— 1 840、 FERM ABP— 1 0 1 50) を提供するものである。
本発明の目的を実現するために本発明者らは、 微生物の生産する代謝産物を 対象にマクロファージ泡沫化阻害物質の検索を行った結果、 新たに土壌から分離 した F K I— 1 8 4 0菌株の培養物中にマクロファージ泡沫化を阻害する活性を 有する物質が産生されていることを見出した。 -次いで、 該培養物からマクロファ ージ泡沫化阻害活性物質を分離、 精製した結果、 後記の式で示される化学構造を 有する物質を見出した。 このような化学構造を有する物質は従来まつたく知られ ていないことから、 本物質を F K 1 - 1 8 4 0と称することにした。
本発明は、 かかる知見に基づいて完成されたものであって、 下記式
で表されるマクロファージ泡沫化阻害物質 F K 1 - 1 8 4 0に関する。
本発明は更に前記式で示されるマクロファージ泡沫化阻害物質 F K 1 - 1 8 4 0を有効成分とする粥状動脈硬化症状、 心筋梗塞、 脳溢血および脳卒中などの 予防、 治療薬として有用なマクロファージ泡沫化阻害物質 F K I— 1 8 4 0に関 する。
本発明は、 更にホーマ属に属し、 前記式で示される F K 1 - 1 8 4 0物質を 生産する能力を有する微生物を培地に培養し、 培養物中に F K I— 1 8 4 0物質 を蓄積せしめ、 該培養物から F K 1 - 1 8 4 0物質を採取するマクロファージ泡 沫化阻害物質 F K 1 - 1 8 4 0の製造法に関する。
本発明は、 更にホーマ属に属し、 前記式で示される FK 1 - 1 840物質を 生産する能力を有する微生物が、 ホーマ エスピー FK I— 1 840 (Pho ma s p. FK I— 1 840、 FERM ABP— 1 0 1 50) またはその変 異株であるマクロファージ泡沫化阻害物質 FK I - 1 840の製造法に関する。
本発明は、 更にまたホーマ属に属する微生物が、 ホーマ エスピー FK I
- 1 840 (Phoma s p. FK I— 1 840、 FERM AB P - 1 0 1 50) に関する。 前記式で表される本発明の FK I - 1 840物質を生産する能力を有する微 生物 (以下 「FK 1 - 1 840物質生産菌」 と称する) は、 ホーマ (Phoma ) 属に属するが、 例えば本発明者らが沖繙県の落ち葉より新たに分離した P ho ma s p. FK I— 1 840株は本発明において最も有効に使用される菌株の 一例である。
本発明のホーマ エスピー FK I— 1 840 (Phoma s p. FK I
- 1 840 ) 株の菌学的性状を示すと、 以下のとおりである。
1. 形態的特徴
本菌株は、 オートミール寒天培地、 麦芽汁寒天培地などで良好に生育し、 分 生子果の形成も良好であつた。
分生子果は黒褐色、 薄い網目状菌糸組織からなり、 球形から亜球形で、 大き さ 1 50〜300 ^m、 培地中に半埋生から埋生して形成される。 分生子果は、 1から 4個の孔ロを有していた。
分生子果の最も内側の細胞からフィァロ型に分生子が形成される。 分生子は 、 粘性があり、 楕円形から長楕円形あるいは卵形で、 大きさ 4. 0〜6. 5 X 2 . 3〜3. 0 mであった。 分生子果の成熟に伴い、 分生子は孔口より分泌され 、 分生子塊は、 薄いピンク色を呈する。
2. 各種培地上での培養性状
各種寒天培地上で、 20°C、 2週間培養した場合における肉眼的観察の結果
は下記のとおりである。 培地 培地上の生育状態 コロニー表面 コロニー裏面 可溶性 (コロニーの直径) の色調 の色調 色素 オートミール寒天培地
良好 (8 5— 9 0國) 灰白色〜黒色 灰白色〜 薄い茶褐色 無- B状 薄い茶褐色
周辺平滑 麦芽汁寒天培地
良好 ( 8 5 - 9 0 mm) 灰白色〜 茶褐色 茶褐色 羊毛状 一部薄橙色
周辺平滑
3. 生理学的諸性質
1 ) 最適生育条件
本菌株の最適生育条件は、 pH 3. 0〜1 0、 温度 6. 0〜34. 0 °Cで あ 。
2) 生育の範囲
本菌株の生育範囲は、 pH5. 0〜6. 0、 温度 1 4. 0〜3 2. 0 °Cで あ 。
3) 好気性、 嫌気性の区別
好気性
4. 微生物の国際寄託
上記 FK I - 1 84 0株の形態的特徴、 培養性状および生理学的性状を示す 本菌株を既知菌種との比較を試みた結果、 本菌株は、 ホーマ (Ph oma) 属に
属するー菌株と同定し、 ホーマ エスピー FK I— 1 840と命名した。 本菌 株はホ一マ エスピー FK I— 1 840 (Phoma s p. FK I - 1 84 0) として、 特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約に 基づき、 日本国茨城県つくば巿東 1丁目 1番地 1 中央第 6 (郵便番号 305 - 856 6 ) [A I ST Ts ukub a C en t r a l 6, 1— 1, H i g a s h i 1— Chome Ts ukub a-s h i, I b a r ak i -k en 305- 8566 Japan] に所在する独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託セン夕一 (I n t e r na t i ona l Pa t en t Or g an i sm Dep o s i t a r y Na t i ona l I n s t i t u t e o f Advan c e d I ndu s t r i a l S c i en c e an d T e chno l ogy) に平成 1 6年 (04) 1 0月 2 1日に寄託され、 受領番号 FERM ABP- 1 0 1 50が付与された。 本発明で使用される FK 1 - 1 840物質生産菌としては、 前述のホーマ エスピー (Phoma s p. ) FK I - 1 840菌株が好ましい例として挙げ られるが、 菌は一般的性状として菌学上の性状は極めて変異し易く、 一定したも のではなく、 自然的にあるいは通常行われる紫外線照射または変異誘導体、 例え ば N—メチルー N' —ニトロ— N—二トロソグァ二ジン、 ェチルメタンスルホネ 一ト等を用レ、る人工的変異手段により変異することは周知の事実であり、 このよ うな人工変異株は勿論、 自然変異株も含め、 ホーマ属に属し、 前記式で表される FK I - 1 840物質を生産する能力を有する菌株はすべて本発明に使用するこ とができる。
本発明の FK 1 - 1 840物質を製造するにあたっては、 先ずホーマ属に属 する FK I— 1 840物質生産菌を培地に培養することにより行われる。 本発明 の FK 1 - 1 840物質生産に適した栄養源としては、 微生物が同化し得る炭素 源、 消化し得る窒素源、 さらに必要に応じて無機塩、 ビタミン等を含有させた栄 養培地が使用される。 炭素源としては、 グルコース、 フラクト一ス、 マルト一ス
、 ラクトース、 ガラクトース、 デキストリン、 澱粉などの糖類、 大豆油等の植物 性油脂類が単独または組み合わせて用いられる。
窒素源としては、 ペプトン、 酵母エキス、 肉エキス、 大豆粉、 綿実粉、 コー ン ·スチープ · リカ一、 麦芽エキス、 カゼィン、 ァミノ酸、 尿素、 アンモニゥム 塩類、 硝酸塩類などが単独または組み合わせて用いられる。 その他必要に応じて リン酸塩、 マグネシウム塩、 カルシウム塩、 ナトリウム塩、 カリウム塩などの塩 類、 鉄塩、 マンガン塩、 銅塩、 コバルト塩、 亜鉛塩などの重金属塩類やビタミン 類、 その他 F K 1 - 1 8 4 0物質の生産に好適なものが添加される。
培養するに当たり、 発泡の激しいときには、 必要に応じて液体パラフィ ン、 動物油、 植物油、 シリコン油、 界面活性剤などの消泡剤を添加してもよい。 上記 の培養は、 上記の栄養源を含有すれば、 培地は液体でも固体でもよいが、 通常は 液体培地を用い、 培養するのがよい、 少量生産の場合にはフラスコを用いる培養 が好適である。
培養を大きなタンクで行う場合は、 生産工程において、 菌の生育遅延を防止 するため、 はじめに比較的少量の培地に生産菌を接種培養した後、 次に培養物を 大きなタンクに移して、 そこで生産培養するのが好ましい。 この場合、 前培養に 使用する培地および生産培養に使用する培地の組成は、 両者ともに同一であつて もよいし、 必要があれば両者を変えてもよい。
培養を通気攪拌条件で行う場合は、 例えばプロペラやその他機械による攪拌 、 ファメ一ターの回転または振とう、 ポンプ処理、 空気の吹き込みなど既知の方 法が適宜使用される。 通気用の空気は、 滅菌したものを使用する。 培養温度は、 本 F K I— 1 8 4 0物質生産菌が本 F K 1 - 1 8 4 0物質を生産する範囲内で適 宜変更し得るが、 通常は 2 0〜3 0 °C、 好ましくは 2 7 °C前後で培養するのがよ い。 培養 p Hは、 通常は 5〜了、 好ましくは 6前後で培養するのがよい。 培養時 間は、 培養条件によっても異なるが、 通常は 4〜6日程度である。
このようにして得られた培養物に蓄積される F K 1 - 1 8 4 0物質は、 通常 は培養菌体中に存在する。 培養菌体から目的とする F K 1 - 1 8 4 0物質を採取
するには、 全培養物をアセトンなどの水混和性有機溶媒で抽出し、 抽出液を減圧 下有機溶媒で留去後、 続いて残渣を酢酸ェチル等の水不混和性有機溶媒で抽出す ることによって行われる。
上記の抽出法に加え、 脂溶性物質の採取に用いられる公知の方法、 例えば吸 着クロマトグラフィー、 ゲル濾過クロマトグラフィー、 薄層クロマトグラフィー 、 遠心向流分配クロマトグラフィー、 高速液体クロマトグラフィー等を適宜組み 合わせ、 あるいは繰り返すことにより、 FK I— 1 840物質を分離、 精製する ことができる。
次に、 本発明の FK 1 - 1 840物質の理化学的性状について述べる。
( 1 ) 性状 :無色油状、
(2) 分子式 : C26H39N04 、
HRFAB-MS (m/z) [M + H] + 計算値 430. 29 57、 実測値 430. 2964
( 3 ) 分子量 : 429
FAB-MS (m/z) [M + H] + 430、 . [M + Na] + 452を観測
(4) 紫外部吸収スぺクトル:
水溶液中で測定した紫外部吸収スペクトルは、 imax (Me OH, ε) : 203 nm (ε= 1 7296 ) の末端吸収を示す、
(5) 赤外部吸収スぺクトル:
臭化力リゥム錠剤法で測定した赤外部吸収スぺクトルは、 m a X 1 767 , 1 71 8、 1 685、 1 460、 1 3 92、 1 240 cm— 1に特徴的な吸収極大を有する、
(6) 比旋光度: [ ] 。 26 = +5. 6° (c = 0. 1、 メタノール) 、
(7) 溶剤に対する溶解性:
メタノール、 クロ口ホルムや酢酸ェチルに可溶、 水に不溶、
(8) プロトン及びカーボン核磁気共鳴スペクトル:
重クロ口ホルム中で、 バリアン社製 4 0 0 MHz核磁気共鳴ス ぺクトロメータを用いて測定した水素の化学シフト (p pm) 及び炭素の化学シフ ト (P Pm) は下記に示すとおりである。 δη : 0. 73 (3Η) 0, • 77 ( 1 H) 、 0. 8 6 (3H) 0. 8 9 ( 3
Η)、 0. 9 2 (3Η) 、 0, • 9 6 (3H) 、 0. 9 7 ( 1 H) 、 1. 34 ( 1
Η)、 1. 4 1 (3Η) 、 1 . 44 (1 H) 、 1. 5 0-1. 6 2 (2H)、 1
• 6 5 ( 1 Η) 、 1. 8 1 ( 1 H) 、 1. 9 2 ( 1 H)、 2. 1 2 ( 1 H) , 2
. 25 ( 1 Η) 、 2. 4 3 ( 1 H) 、 2. 9 7 ( 1 H) , 3. 0 1 (3H)、 3
. 34 ( 1 Η) 、 3. 4 9 ( 1 H) 、 3. 7 1 ( 1 H)、 5. 5 7 ( 1 H)、 6
. 1 0 ( 1 Η) P P m、
δ c : 1 1 . 1 、 1 2. 3 、 1 4. 2、 2 1 • 8、 22. 2、 2 3 . 2、 25.
8. 27. 5、 3 3. 1ヽ 3 3. 3 、 3 5. 6 、 3 6. 6、 3 7 . 7. 3 8. 6
、 3 9 . 6 3 9. 9、 4 6 . 9、 4 7. 8 72. 2、 72 • 5 、 74. 5、
1 1 9 • 5 、 1 3 8. 0 、 1 6 9. 7. 20 0 . 5、 20 6. 5 P pm0
以上のように、 FK I— 1 84 0物質の各種理化学的性状やスぺクトルデ一 タを詳細に検討した結果、 FK I— 1 84 0物質は下記式で表される化学構造で あることが決定された。
第 1図は本発明による FK 1 - 1 84 0物質の紫外部吸収スぺクトル (メタ ノール溶液中) を示したものである。
第 2図は本発明による FK 1 - 1 84 0物質の赤外部吸収スぺクトル (臭化 カリウム法) を示したものである。
第 3図は本発明による FK 1 - 1 84 0物質のプロトン核磁気共鳴スぺクト ル (重クロ口ホルム中) を示したものである。
第 4図は本発明による FK 1 - 1 84 0物質のカーボン核磁気共鳴スぺクト ル (重クロ口ホルム中) を示したものである。 発明を実施するための最良の形態
次に、 実施例を挙げて本発明を説明するが、 本発明はこれのみに限定される ものではない。
実施例
寒天斜面培地 (グリセロール 0. 1 % (関東化学社、 日本国) 、 KH2 P〇 4 0. 0 8 % (関東化学社、 日本国) 、 K2 HP 04 0. 0 2 % (関東化学社、 日本国) 、 MgS04 ' 7H2 0 0. 0 2 % (和光純薬社、 日本国) 、 KC 1 0. 0 2% (関東化学社、 日本国) 、 NaN03 0. 2 % (和光純薬社、 日本 国) 、 酵母エキス 0. 0 2% (オリエンタル酵母社、 日本国) 、 寒天 1. 5 ( 清水食品社、 日本国) 、 pH6. 0に調整) で培養したホーマ エスピー FK 1— 1 84 0菌株 (Ph oma s p. FK I— 1 8 4 0、 FERM ABP - 1 0 1 5 0) を種培地 (グルコース 2% (和光純薬社、 日本国) 、 ポリペプトン 0. (和光純薬社、 日本国) 、 MgS04 ■ 7H2 00. 0 % (和光純薬 社、 日本国) 、 酵母エキス 0. 2% (オリエンタル酵母社、 日本国) 、 KH2 P 04 0. 1 % (関東化学社、 日本国) 、 寒天 1 % (清水食品社、 日本国) 、 pH 6. 0に調製) 1 OmLを分注した大試験管に一白金耳ずつ接種し、 2 7 °C で 2日間口一夕リシェイカ一 (3 00 r pm) で培養した。
培養後、 生産培地 (グリセロール 3. 0% (関東化学社、 日本国) 、 オート ミール 2. 0 % (日本食品製造合資社、 日本国) 、 乾燥酵母 1. 0% (旭化成社 、 日本国) 、 KH2 PO4 1. % (関東化学社、 日本国) 、 Na2 HPO4 1 . 0 % (関東化学社、 日本国) 、 MgC l 2 · 6H2 ◦ 0. 5% (関東化学社 、 日本国) 、 pH未調製) 1 0 OmLを分注した 5 0 OmL容三角フラスコ ( 1 0 0本) に 1 %植菌し、 27°Cで 7日間培養した。
培養終了後、 この培養液 1 0 Lを遠心分離し、 上清と菌体を得た。 菌体にァ セトン 5 Lを加え、 1時間攪拌後、 菌体を濾別して菌体抽出液を得た。 菌体抽出 液は、 減圧下でアセトンを留去して 1 Lの濃縮液とした。 この濃縮液より酢酸ェ チル 1 0 Lで活性成分を抽出し、 酢酸ェチル層を濃縮乾固し赤褐色油状の活性粗 物質 5. 9 gを得た。 この粗物質をシリカゲルカラム (シリカゲル 6 0、 メルク 社、 米国、 5 9 g) にて粗精製を行った。 クロ口ホルム—メタノール ( 1 0 0 :
0、 1 0 0 : 1、 5 0 : 1、 1 0 : 1、 1 : 1 ) の各混合溶媒を展開溶媒とする クロマトグラフィーを行い、 溶出液を各条件で 4 5mLずつ 4本に分画した。
FK I - 1 84 0物質を含む画分 ( 1 0 0 : 1で溶出するフラクション番号 2 から 1 0 : 1で溶出するフラクション番号 2) を濃縮することで、 赤褐色油状物 質 4. 4 gを得た。 再度、 この粗物質をシリカゲルカラム (シリカゲル 6 0、 メ ルク社製、 4 4 g) にて精製を行った。 へキサンで洗浄した後、 へキサン—酢酸 ェチル (3 : 1、 2 : 1、 1 : 1) に続いてクロ口ホルム一メタノール (5 0 :
1、 1 0 : 1、 1 : 1 ) の各混合溶媒を展開溶媒とするクロマトグラフィーを行 い、 溶出液を各条件で 3 OmLずつ 5本に分画した。 FK I _ 1 84 0物質を含 む画分 (へキサン—酢酸ェチル 2 : 1で溶出するフラクション番号 5からクロ口 ホルム—メタノール 1 : 1で溶出するフラクション番号 4) を濃縮することで、 赤褐色油状部質 4 5 4 mgを得た。
さらに、 この粗物質を ODSゲル (ぺガシル、 センシュ一科学社、 日本国、 2 0 g) のカラムにチャージし、 60%、 70%、 8 0%、 9 0%ァセトニトリ ル 0. 0 5%、 トリフルォロ酢酸水溶液で段階溶出するカラムクロマトグラフィ
一を行った。 溶出液を各条件で 1 OmLずつ 6本に分画し、 FK I— 1 840物 質を含む画分 ( 80 %ァセトニトリル 0. 05%、 トリフルォロ酢酸水溶フラク シヨン番号 4から 6) を濃縮することで、 無色油状物質 67. 7mgを得た。 こ れを少量のメタノールに溶解し、 分取 HPLC (カラム: PEGAS I L OD S、 4. 6 X 2 5 Omm, センシユー科学社、 日本国) により最終精製を行つ た。 60%ァセトニトリル水溶液を移動相とし、 1 mL/分の流速において、 U V 2 1 0 nmの吸収をモニタ一した。 保持時間 32分に活性を示すピークを観察 し、 このピークを分取して分取液を減圧下濃縮し、 残渣水溶液を凍結乾燥するこ とにより無色油状の FK 1 - 1 840成分を収量 23. 8 mgで単離した。
次に本発明の FK 1 - 1 840物質のマウス腹腔マクロファージ内でのコレ ステリルエステルに対する阻害作用について説明する。
マウス腹腔マクロファージ内でのコレステリルエステル形成は生田目らの方 法 (J. B i o c h em. 1 25巻、 3 1 7— 327頁、 1 999年) に従って 行った。
マウス腹腔より単離したマクロファージを 6. 8 %リポ蛋白質欠乏血清を含 むダルベッコ改変イーグル培地 ( 6. 8%LPDS— DMEM培地) に 2. 0 x 1 05 e e l 1 s/m 1で懸濁して、 48穴マイクロプレート (Co r n i ng 社、 米国) に 0. 25m lずつまく。
次に、 5 %炭酸ガスインキュベーター内で 37 °Cで 2時間培養を行った後、 付着しない細胞をハンクス液 (Ha n k' s s o 1 u t i o n ) で洗浄するこ とにより除去する。 洗浄後、 6. 8%LPDS— DMEM培地で一時間培養した 後、 FK I— 1 840物質 (2. 5 n 1メタノール溶液) 、 リボソーム ( 1 0〃 1の 0. 3Mグルコース中にホスファチジルコリンノホスファチジルセリン ジ セチルホスフヱ ート /コレステロール = 1 0 : 1 0 : 2 : 1 5 (nm 01) の組 成から構成されている) 及び [ 1— 14C] ォレイン酸 (5 / 1、 1. 85 kBq 、 1 nmo 1) を添加し、 さらに 1 4時間培養した。
培養上清を除去し、 細胞内中性脂質をへキサン 0. 6mlとイソプロパノ一
ル 0. 4m 1を加えて 2回抽出した。 これを濃縮後、 TLC (シリカゲルプレー ト、 メルク社、 米国、 厚さ 0. 5mm) にスポッ トし、 へキサン/ジェチルエー テル 酢酸 ( 70 : 30 : 1、 v/v) の溶媒で展開し、 分離した [14C] コレ ステリルォレートと [14C] トリァシルグリセロールの量を BAS 2000 (富 士写真フィルム社、 日本国) で定量した。 その結果、 FK I - 1 840物質は [ 14C] コレステリルォレートの形成を選択的に阻害し、 その I C50値は 42 /M と測定された。 産業上の利用分野
本発明の FK 1 - 1 840物質を生産する能力を有するホーマ属に属する微 生物を培地に培養し、 培養物中に FK 1 - 1 840物質を蓄積せしめ、 該培養物 から採取した FK 1— 1 840物質は、 マクロファージの泡沫化阻害活性を有す ることから、 動脈硬化症やそれに起因する疾病の予防および治療薬として有用で あると期待される。