明 細 書 モナティンの製造方法 技術分野
本発明は、不純物を含有するモナティンの水性溶液からモナティンを分離し て製造する方法に関し、 詳しくは、 酵素反応によって、 モナティン前駆体であ る 4一 (インドールー 3—ィルメチル) 一 4ーヒ ドロキシー 2—ォキソグルタ ノレ酸 (4 -(Indol- 3- ylmethyl)- 4- hydroxy- 2- oxoglutaral^;以下、 I H〇G) からモナティンを生成させる場合に好適に利用できるモナティンの製造方法 に関する。 背景技術
下記の構造を有するモナティンは、 南アフリカの灌木の根から単離 ·抽出さ れた天然の甘味ァミノ酸であり、ショ糖の数十倍〜数千倍に相当する強い甘味 を有し、 甘味剤として利用が期待されている。 モナティンは、 (2 S, 4 S)体 の他に、 (2 S, 4R)体、 (2R, 4 S)体、 ( 2 R, 4 R)体の 3種の光学異性体 が存在しており、何れもショ糖の数百倍から数千倍の甘味強度を有することが 確かめられている。
上記モナティンの製造方法については、過去に下記の 5例の報告が為されて いる。
(1) 米国特許第 5 9 94 55 9号明細書
(2) テトラへドロン レターズ (Tetrahedron Letters) 、 200 1年、 4 2卷、 3 9号、 6 79 3〜 6 796頁
(3) オーガニック レターズ (Organic Letters) 、 2000年、 2卷、 1
9号、 2967〜 2970頁
(4) シンセティック コミュニケーション (Synthetic Communication) 1 994年、 24卷、 22号、 31 97〜3211頁
(•5) シンセテイツク コミュニケーション (Synthetic Communication) 1 993年、 23卷、 18号、 251 1〜 2526頁 発明の開示
モナティンの製造方法および分離方法については何例か報告されているも のの、 モナティンの有用性に関しては発見されたばかりであり、 工業的生産レ ベルでモナティンを製造し、得られたモナティンを効率よく分離する方法に関 してはまだ確立されていない。
かかる状況下、本発明者らは、工業的規模で容易に入手可能であるインドー ル一 3—ピルビン酸とピルビン酸とを用いて、 下記の反応 (1) および (2) の 工程からなる新たなモナティンの合成方法を開発した。 '
(1) インドール— 3—ピルビン酸とピルビン酸 (ないしォキサ口酢酸) の アルドール縮合により前駆体ケト酸 (IHOG) を合成する反応工程
(2) I HOGの 2位をァミノ化する反応工程
ピルビン酸
イ
ォキサ口酢 ® 上記モナティンの合成方法において、 (2) のァミノ化反応を触媒する酵素 としては、例えば I H O Gに対してアミノ基転移反応を触媒するアミノトラン スフエラーゼ、 また、 IHOGの還元的ァミノ化反応を触媒するデヒ ド口ゲナ 一ゼ等を用いることができる。
このような酵素反応液は、モナティンだけでなく未反応の I H O Gや、 I H OGから生成する数種の副生物を含んでいる。 また、 その他にも反応に用いた
酵素、補酵素、 アミノ基供与体等の有機成分などの不純物を含んでいる。 従つ て、 酵素法で製造されるモナティンを酵素反応液から純粋な形で得る為には、 これらの多くの未反応物、副生物等の不純物を効率良く除去することが大きな 課題となる。 このようなモナティンを含有する酵素反応液は、 後述のように、 本発明で処理されるべき被処理液の典型的な一例である。
モナティンの分離方法として、 Z A— 8 7 4 2 8 8は、植物の根に含まれる 天然モナティンを強酸性樹脂にて吸着後、アンモニア等のアル力リ液にて溶出 させ精製する方法を開示している。
また、特開 2 0 0 2— 6 0 3 8 2号公報は、化学合成された立体異性体モナ ティン混合物をォクタデシル基等の脂肪族アルキル鎖で修飾されたシリカゲ ルにて分離し、 さらに強酸性樹脂にて吸着後、 アンモニア等のアルカリ液にて 溶出させ精製する方法を開示している。 ' また、モナティンを直接分離する方法ではないが、 Z A—8 7 4 2 8 '8では、 モナティン前駆体混合物をオタタデシル基等の脂肪族アルキル鎖で修飾され たシリカゲルにて分離し、 アルカリ加水分解しモナティンを製造している。 レカ しながら、今までに報告されたモナティンの分離方法では、モナティン を分離する際、 酵素反応液中に含まれるモナティン前駆体 (I HO G) を回収 することが困難であった。製造コスト面カ らは、酵素反応液からモナティンを 分離する際、未反応の I HO Gをも回収し、 回収した I H O Gをモナティンの 生成反応に再利用することが好ましい。
従来の方法で I HO Gを回収できなかった理由として、 I HO Gが極端な p Hに対して不安定な化合物であることが考えられる。従来のモナティンの分離 法では、モナティンを強酸性樹脂にて吸着後、 アンモニア等のアルカリ液にて 溶出させていたため、分離処理の段階で I HO Gの分解反応などが生じ、 I H O Gを効率よく回収することが困難であった (参考例 3参照) 。
従って、 モナティンを分離する際、 I HO Gを分解することなく同時に回収 できるよう、温和な p H条件下で効率よくモナティンを分離する方法の開発が 求められる。
本発明が解決しようとする課題は、モナティンを工業的規模で効率よく分離 ' することができ、 かつ、その前駆体の I HO Gをも回収することが可能なモナ ティンの製造方法を提供することにある。 '
本発明者等は前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、モナティンを含有す る酵素反応液を、芳香族環を含有する非極性樹脂で処理することにより、温和 な H条件下で効率よくモナティンを分離することができることを見出し、こ の知見に基づいて本発明を完成するに到った。
また、酵素反応液を、芳香族環を含有する非極性樹脂でクロマトグラフ処理 する際、酵素反応液に残存する未反応の I H O Gを同時に回収できることを見 出した。
即ち、 本発明は以下の通りである。
〔1〕 モナティンと不純物とを含有する被処理液を、芳香族環を含有する非 極性樹脂で処理することにより、前記被処理液からモナティンを分離する工程 を含むことを特徴とするモナティンの製造方法。
〔2〕 前記芳香族環を含有する非極性樹脂は、 芳香族環にハロゲン原子、 炭 素数 1〜4のアルキル基からなる群より選ばれる少なくとも一種の置換基を 有していてもよいスチレンおよぴジビュルべンゼンの共重合体であることを 特徴とする 〔1〕 に記載のモナティンの製造方法。
〔 3〕 前記被処理液の処理を、 p H 7〜 1 1の範囲内で行うことを特徴とす る 〔1〕 または 〔2〕 に記載のモナティンの製造方法。
〔4〕 前記被処理液を、 前記芳香族環を含有する非極性樹脂で処理する際、 水とアルコールとの混合溶剤を溶出液として用いることを特徴とする 〔1〕 〜
〔 3〕 のいずれか 1項に記載のモナティンの製造方法。
' [ 5 ] 前記被処理液が、 p H 7未満おょぴ p H 1 1超のレヽずれかの p H領域 で不安定な化合物を不純物として含有することを特徴とする 〔1〕 〜 〔4〕 の いずれか 1項に記載のモナティンの製造方法。
〔 6〕 前記被処理液は、 4一 (インドール一 3—ィルメチル) 一 4—ヒドロ キシー 2—ォキソグルタル酸からモナティンを生成する反応を触媒する酵素
の存在下で、 4一 (インドールー 3—ィルメチル) 一 4ーヒドロキシー 2—ォ キソダルタル酸を反応させることによって得られる酵素反応液であることを 特徴とする 〔1〕 〜 〔5〕 のいずれか 1項に記載のモナティンの製造方法。
〔 7〕 前記酵素反応液は、 4一 (インドール一 3—イノレメチル) 一 4ーヒド 口キシー 2—ォキソダルタル酸をァミノ化してモナティンを生成する反応を 触媒するアミノトランスフェラーゼ、 および、 アミノ基供与体の存在下で、 4 一 (インドールー 3—ィルメチル) 一4—ヒドロキシー 2—ォキソグルタル酸 をァミノ化反応させることによって得られる酵素反応液であることを特徴と する 〔6〕 に記載のモナティンの製造方法。
〔8〕 前記アミノ基供与体は、 ァラニン、 グルタミン酸、 ァスパラギン酸か ら選ばれる少なくとも一種のアミノ酸であることを特徴とする 〔7〕 に記載の モナティンの製造方法。
〔9〕 前記被処理液を、 前記芳香族環を含有する非極性樹脂で処理する際、 前 記被処理液に含まれる 4 _ (インドール一 3—ィルメチル) 一 4—ヒドロキシ —2—ォキソグルタノレ酸を回収することを特徴とする 〔6〕 〜 〔8〕 のいずれ か 1項に記載のモナティンの製造方法。
図面の簡単な説明
第 1図は、 '酵素反応液の分離パターンを示す図である。 発明を実施するための最良の形態
本発明に係るモナティンの製造方法は、モナティンおよび不純物を含有する 被処理液を、芳香族環を含有する非極性樹脂で処理することにより、前記被処 理液中に含まれるモナティンを分離することを特徴とする。
芳香族環を含有する非極性樹脂で被処理液を処理すると、被処理液に含まれ るモナティンおよび不純物はそれぞれ芳香族環を含有する非極性樹脂と相互 作用する。相互作用の大きさは各成分によって異なるので、相互作用の弱い成
分から順に非極性樹脂から遊離する。例えば、被処理液中にモナティンおよび I HOGが含まれている場合、 まず I HOGが溶出し、ついでモナティンが溶 出する。この相互作用の差を利用して不純物が混在する被処理液からモナティ ンを分離することができる。
モナティンの分離方法としては、強酸性樹脂で処理する方法が知られていた is 本発明は、芳香族環を含有する非極性樹脂を用いてモナティンを分離する という従来にはない新規な方法である。
芳香族環を含有する非極性樹脂で被処理液を処理することによって、温和な pH条件下でモナティンを分離することが可能となる。従って、例えばモナテ ィンを分離する際に、酸性およびアル力リ性に対して不安定な化合物(例えば、 I HOG) を同時に回収することが可能となる。
従来法では、強酸性樹脂にモナティンを吸着した後、 アンモニア等のアル力 リ液にて溶出させていたため、アル力リ性に対して不安定な I HOGの分解反 応が起こり、酵素反応液中に含まれる I HOGを効率よく回収して再利用する ことが困難であった。本発明によれば、芳香族環を含有する非極性樹脂にモナ ティンを吸着した後、 I HOGを安定に保持できる pH領域の溶出液を用いて モナティンを溶出できる。 したがって、本発明は、 モナティンを分離すると同 時に I HOGをも回収しようとする場合に特にその効果を発揮する。
以下、 本発明のモナティンの製造方法について下記の順に詳細に説明する。 〔A〕 被処理液の調製
(A- 1) IHOGの調製
(A-2) モナティンを含有する酵素反応液
〔B〕 モナティンの分離方法
(B— 1 ) 芳香族環を含有する非極性樹脂
(B-2) 被処理液の処理
〔A〕 被処理液の調製
被処理液は、 本発明においてモナティンの分離源であり、 モナティン (塩の 形態を含む) とモナティン以外の少なくとも 1種の不純物とが溶解した水性溶
液である。被処理液は水性溶液である 、後のモナティンの分離工程で支障と ならなレ、範囲内.であれば水以外の他の溶媒を含有していても良い。
被処理液中でのモナティンの存在形態は、遊離体のほ力 \塩の形態でもよい。 本発明において、 モナティンと記載する場合は、 特にことわらない限り、遊離 体および塩のいずれの形態をも含む。塩の形態としては、塩基との塩を挙げる ことができる。 例えば、 水酸化ナトリゥム、 水酸ィ匕カリウム、 水酸ィ匕カルシゥ ム等の無機塩基、ァンモニァ、各種ァミン等の有機塩基を挙げることができる。 このような.被処理液としては、酵素反応法または化学合成法によってモナテ ィンの生成反応を行うことにより得られた反応液を用いることができる。当該 反応液中には、反応によって生成したモナティンのほか、未反応のモナティン 原料、 反応副生物、 反応触媒、 酵素等の不純物が含まれている。
本発明においては、 I H O Gからモナティンを生成する反応を触媒する酵素 の存在下で、 I HO Gを反応させることによって得られる酵素反応液を用いる ことが好ましい。 酵素反応液中には、 モナティンのほか、未反応の状態で残存 する I H O Gが含まれる。 I H O Gは、 p Hに対して不安定な化合物である力 本発明のモナティンの製造方法によれば I H O Gを分解することなく回収す ることが可能となる。回収した I H O Gはモナティンの生成反応に再利用可能 である。 以下、 当該酵素反応液の調製法について説明する。
(A- 1 ) I HO Gの調製
モナティン前駆体である I H O Gは、インドール一 3 -ピルビン酸とピルビ ン酸 (ないしォキサ口酢酸) とをアルドール縮合することによって得られる。
I H O Gを取得する方法は特に限定されず、化学合成法および酵素法のどち らを用いてもよい。 I H O Gの調製方法について、化学合成法および酵素法に 分けて説明する。
( i ) 化学合成法による I H O Gの調製
化学合成法を用いた I H O Gの調製は、以下に示す方法や後述の参考例 2を 利用して容易に実施することができるが、当然この方法に限定されるものでは なレ、。
例えば、ィンドール一 3―ピルビン酸とォキサ口酢酸とを、交差アルドール 反応及び脱炭酸反応に付して、 I H O Gを製造することができる。前記アルド ール反応に付して得られる化合 力 反応系内で形成され重要な中間体となる 力 敢えてこの化合物を単離することなく次の工程である脱炭酸反応に進むこ とができる。
当該アルドール反応の条件には特に困難は無く、無機塩基又は有機塩基存在 下において適当な溶媒中にて置換ピルビン酸及びォキサ口酢酸を作用させる だけで容易に進行する。 .
用いる溶媒の種類としては、 反応に不活性なものであれば特に制限は無レ、。 当業者であれば、 本発明の実施を妨げない範囲で反応温度、 塩基の使用量、 反応時間、 出発物質の添加方法を適宜選択することができる。
溶媒として好ましくは、 水、 メタノール、 ァセトュトリル、 ジメチルホルム ァミド等の極性溶媒等を挙げることができる。
使用する場合の塩基として好ましくは、 無機塩基、 例えば水酸ィ匕リチウム、 水酸化ナトリゥム、 水酸化力リゥム、 炭酸ナトリゥム、 炭酸力リゥム、 炭酸力 ルシゥム等のアルカリ金属若しくはアル力リ土類金属に対応する水酸化物、若 しくは炭酸化物や、有機塩基、例えばトリェチルァミン等を挙げることができ る。 , .
反応温度としては、好ましくは一 2 0〜 1 0 0 °C程度、 より好ましくは 0〜 6 0 °C程度を採用することができる。
アルドール反応縮合物を脱炭酸させる反応においては、自発的な脱炭酸反応 によっても達成される力 反応液に酸又は金属イオン又はその両方を添加する ことで脱炭酸反応をより効果的に行うことができる。その場合に使用する酸と しては、 塩酸、 硫酸、 燐酸、 酢酸、 パラ トルエンスルホン酸、 イオン交換樹脂 等の固体酸等を、 金属イオンとしては、 ニッケルイオン、銅イオン、 鉄イオン 等の遷移金属イオン等を、それぞれ挙げることができる。反応温度として好ま しくは一 1 0〜1 0 0 °C程度、より好ましくは 0〜6 0 °C程度を選択すること ができる。 '
(ii) 酵素法による I HOGの調製
酵素法を用いた I HOGの調製は、ィンドール一 3 -ピルビン酸とピルビン 酸(ないしォキサ口酢酸) とから I HOGを生成するアルドール反応を触媒す る酵素 (以下、 ァ ドラーゼ) を用いて行う。
このようなァノレドラーゼとしては、 Pseudomonas 属、 Erwinia 属、 Flavobacterium属、 Xanthomonas属にその存在が確認されている。 このうち、 Pseudomonas taetrolens ATCC4683、 Pseudomonas coronafaciens A J 2791、 Pseudomonas desmolytica A J 1582、 Erwinia sp. A J 2 91 7、 Xanthomonas citri A J 2797 s Flavobacterium rhenanum A J 2 468が好ましい。 なかでも、 特に Pseudomonas taetrolens ATCC468 3、 Pseudomonas coronafaciens A J 2791が好ましい。 これらの微生物の 寄託先を下記に示す。
(1) Pseudomonas coronafaciens A J 2 91株
(i)受託番号 FERM BP— 8246 (FERM P— 1 8881より 移管)
(ii)受託日 2002年 6月 10日
(iii)寄託先 ' 独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター (日本国茨城県つくば市東 1丁目 1番地 1中央第 6 )
( 2) Pseudomonas desmolytica A J 1582株
(i)受託番号 FERM BP— 8247 (FERM P— 18882より 移管)
(ii)受託日 2002年 6月 10日
(iii)寄託先 独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター (日本国茨城県つくば市東 1丁目 1番地 1中央第 6 )
(3) Erwinia sp. A J 2917株
(i)受託番号 FERM BP— 8245 (FERM P— 18880より 移管)
(ii)受託日 2002年 6月 10日
(iii)寄託先 独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター
( 0本国茨城県つくば巿東 1丁目 1番地 1中央第 6 )
( 4 ) Flavobacterium r enanum A J 2468株
(i)受託番号 FERM BP— 1862
(ii)受託日 1985年 9月 30日
(iii)寄託先 独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター (日本国茨城県つくば市東 1丁目 1番地 1中央第 6)
(5) Xanthomonas citri A J 2797株
(i)受託番号 FERM BP-8250 (FERM P— 8462より移 管)
(ii)受託日 1985年 9月 30日
(iii)寄託先 独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター (日本国茨城県つくば巿東 1丁目 1番地 1中央第 6 )
上記齒株には、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するプタぺスト 条約に基づき上記受託番号が付与されている。この株の公衆利用可能性につい ての制限は、 特許の付与により確定的に解除される。
I HOGの生成反応に用いるアルドラーゼとしては、 微生物由来の酵素や、 遺伝子組換え技術により得られた酵素を用いることができる。
上記微生物のうち、 Pseudomonas taetrolens ATCC4683由来のァノレ ドラーゼ (以下、 P t ALDと略す場合がある) 、 および、 Pseudomonas coronafaciens A J 2791由来のァノレドラーゼ (以下、 P c ALDを略す場 合がある) については、 そのアミノ酸配列および DNA配列が特定されている ので、 これらの DNA配列を利用して、遺伝子組換え技術によりアルドラーゼ を大量生産することも好ましい。
P t ALDをコードする DNAを配列表の配列番号 1に示す。 また、配列表 の配列番号 2および 3に、配列番号 1の塩基配列がコードする P t A L Dのァ ミノ酸配列を示す。 配列番号 2は、配列番号 1記載の塩基配列のうち、 456 〜1 1 18位の塩基配列がコードする P t ALDのアミノ酸配列である。また、
配列番号 3は、配列番号 1記載の塩基配列のうち、 444〜 1 1 18位の塩基 配列がコードする P t ALDのアミノ酸配列である。
. P cALDをコードする DNAを配列表の配列番号 4に示す。 また、配列表 の配列番号 5に、配列番号 4の塩基配列がコードする P c A LDのァミノ酸配 列を示す。 配列番号 5は、 配列番号 4記載の塩基配列のうち、 398〜 1 14 1位の塩基配列がコードする P c ALDのァ.ミノ酸配列である。
アルドラーゼを取得するには、上記アルドラーゼ産生菌を微生物培養するこ とによりアルドラーゼを生成蓄積させてもよいし、組み換え DN A技術により ァノレドラーゼを生成する形質転換体を作成し、当該形質転換体を培養すること によりアルドラーゼを生成蓄積させてもよい。
アルドラーゼの存在下、反応を進行させるには、 アルドラーゼ、 インドール 一 3—ピルビン酸、および、 ォキサ口酢酸またはピルビン酸のうち少なくとも —種を含む反応液を 20〜 50 °Cの適当な温度に調整し、 p H 6〜 12に保ち つつ、 30分〜 5日静 '置、 振とう、 または攪拌すればよい。
当該反応液に Mg2+、 Mn2+、 N i2+、 C o 2+などの 2価のカチオンを添加す ることによって反応速度を向上させることもできる。 コスト等の面から、好ま しくは Mg2+を用いる。
これら 2価カチオンを反応液に添加する際は、反応を阻害しない限りにおい てはいずれの塩を用いてもよいが、 好ましくは MgC l2、 Mg S〇4、 MnS 04等を用いることがある。 これら 2価カチオンの添加濃度は当該業者であれ ば簡単な予備検討によつて決定することができるが、 0. 0 1 mM〜 10 mM、 好ましくは 0. lmM〜5mM、 さらに好ましくは 0. 5mM〜2mMの範囲 ' ·で添加することができる。
反応を実施する際の好ましい反応条件の一例を挙げれば、 10 OmMバッ ファー、 50 mMィンドール一 3―ピノレビン酸、 250 mM ピノレビン酸、 1 mM MgC l2、 1% (v/v) トルエンからなる反応液に、 酵素源としてァ ノレドラーゼ発現 E. coliの洗净菌体を 10 % (w/ V )となるように添カロし、 33°Cで 4時間振とう反応させることにより、 I HOGが得られる。
(A— 2 ) モナティンを含有する酵素反応液
(A— 1 ) ,の方法によって得られた I H O Gを、 下記反応式に示すようにァ ミノ化することによってモナティンを生成する。当該反応を触媒する酵素とし ては、例えば I H O Gに対してアミノ基転移反応を触媒するァミノ トランスフ エラーゼ、 また、 I H O Gの還元的ァミノ化反応を触媒するデヒドロゲナーゼ 等を用いることができる。
本発明においては、このような酵素又はこのような目的とする酵素活性を有 する微生物を I H O Gに作用させることにより、モナティンを生成することが できる。
以下、酵素としてアミノ トランスフェラーゼを使用する場合を中心に説明す る。
ァミノ トランスフェラーゼとしては、モナティンの前駆体である I H O Gと ァミノ基供与体からモナティンを生成する反応を触媒する酵素を用いる。 この際、ァミノ基供与体には、ァミノ基を む化合物が用いられる。例えば、 天然及び非天然の Lーァミノ酸や D—アミ.ノ酸等のァミノ化合物が挙げられ る。 即ち、 グルタミン酸、 ァスパラギン酸、 ァラニン、 トリプトフアン、 フエ ニノレアラニン、 イソロイシン、 ロイシン、 チロシン、 バリン、 ァノレギニン、 ァ スパラギン、 グルタミン、 メチォニン、 オル二チン、 セリン、 システィン、 ヒ スチジン、 リジン等がアミノ酸の例として挙げられる。 反応に添加するァミノ 基供与体は 1種類でもよいし、 複数の供与体の混合物でもよい。
アミノ基供与体としては、 反応性の観点からは、 ァラニン、 グルタミン酸、 ァスパラギン酸が好ましく、 また D-ァラニン、 D-グルタミン酸、 D-ァスパ ラギン酸がさらに好ましい。 また、反応性ならびにコストの観点から特に好ま しくは D L-ァラニンを用いることがある。
ァミノ トランスフェラーゼとしては L—ァミノ トランスフェラーゼおよび D—ァミノ トランスフェラーゼのいずれも使用することが可能である。 Lーァ ミノ トランスフェラーゼを用いた場合は、 I H O Gの 2位に L—アミノ酸のァ ミノ基を転移することによって 2 S—モナティンを選択的に生成する。 また、
D—ァミノ トランスフェラーゼを用いた場合は、 I HOGの 2位に D—ァミノ 酸のアミノ基を転移することによって 2 R—モナティンを選択的に生成させ ることができる。
本発明の課題とするモナティンは、 (2 S, 4 S)体の他に、 (2 S, 4R)体、 ( 2 R, 4 S )体、 ( 2 R, 4 R)体の 3種の光学異性体が存在しており、 何れもシ ョ糖の数百倍から数千倍の甘味強度を有することが確かめられている。本発明 における一つの好ましい態様として、 D—ァミノ トランスフェラーゼを用いる ことにより、 高甘味度異性体である 2 R—モナティン、 特に、 (2R, 4R)— モナティンを生成させることが好ましい。
ここで、 D—アミノ酸をァミノ基供与体とするとき、 対応する L一アミノ酸 を反応液中に添加し、該アミノ酸をラセミ化する反応を触媒する酵素を共存さ せることにより、 D—アミノ酸供与体として供与体を供給することもできる。 ァミノ トランスフェラーゼは、当該アミノ トランスフェラーゼを生産する微 生物を培養することによっても調製することができる。
Lーァミノ トランスフェラーゼを生産する微生物としては、例えばァエロモ 一ナス(Aeromonas)属、 ァグロパクテリゥム (Agrobacterium) 属、 アルカリゲ ネス (Alcaligenes) 属、 、 ベイジエリンキア (Beijerinckia) 属、 ェシエリ ヒア (Escherichia) 属、 プロテウス (Proteus) 属、 モノレガネラ (Morganella) 属に属する微生物を挙げることができる。これらの微生物として、具体的には、 次のものが例として挙げられる。
( 1 ) ァェ口モーナス ヒドロフイラ Aeromonas hydrophila I F O 382 0
(2) ァグロノ クテリウム ッメファシエンス Agrobacterium tumefaciens I FO 3058
(3) アルカリゲネス フエカリス Alcaligenes faecalis ATCC 8750
(4) 'ベイジエリンキア インディ力 Beijerinckia indica ATCC 903 7
(5) ェシエリヒア コリ Escherichia coli ATCC 1 2814
(6) プロテウス レットゲリ Proteus rettgeri I FO1 3501
(7) モルガネラ モルガニイ Morganella morganii I FO 3848 また、 D—ァミノトランスフェラーゼを生産する微生物としては、例えばバ チルス(Bacillus)属及びパェニバチルス(Paenibacillus)属に属する微生物を 挙げることができる。 これらの微生物として、 具体的には、 次のものが例とし て挙げられる。
( 1 ) バチノレス スフエリカス Bacillus sphaericus ATCC 10208
(2) パチノレス プノレビファシエンス Bacillus pu dfaciens A J 1327
(3) ノ ェニノ チノレス ラバエ サブスピシーズ プノレビファシエンス Paenibacillus larvae subsp. pulvifaciens ATCC 13537
(4) ノ チノレス マセランス Bacillus macerans A J 16 17
(5) ノ ェニノ チノレス マセランス Paenibacillus macerans ATCC 82 44
(6) バチノレス レンタス Bacillus lentus A J 12699
(7) バチルス レンタス Bacillus lentus ATCC 10840 尚、 バチノレス マセランス Bacillus macerans A J 1617については下 記の通り寄託されている。 .
(i)受託番号 FERM BP-8243 (FERM P— 18653より、 2002年 1 1月 22日に国際寄託へ移管)
(ii)受託日' 2001年 12月 13日
(iii)寄託先 独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター (日本国茨城県つくば市東 1丁目 1番地 1中央第 6 )
上記菌株には、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタぺスト 条約に基づき上記受託番号が付与されている。この株の公衆利用可能性につい ての制限は、 特許の付与により確定的に解除される。
上記救生物のうち、 パチノレス マセランス Bacillus macerans A J 161 7 (以下、 BMD ATと略す場合がある) 、 および、 バチルス スフエリカス Bacillus sphaericus ATCC 10208 (以下、 B S DATと略す場合があ
'る) については、 そのアミノ酸配列および DNA配列が特定されているので、 ― これらの DNA配列を利用して、遺伝子組換え技術により D—ァミノトランス フェラーゼを大量生産することも好ましい。
BMDATをコードする DNAを配列表の配列番号 6に示す。 また、配列表 の配列番号 7に、配列番号 6の塩基配列がコードする BMD ATのァミノ酸配 列を示す。
また、 B SDATをコードする DNAを配列表の配列番号 8に示す。 また、 配列表の配列番号 9に、配列番号 8の塩基配列がコードする B SDATのアミ ノ酸配列を示す。
本発明においては、モナティンの 4種の光学異性体のうち最も甘味度の高い 異性体である (2R, 4R) —モナティンの含有率が高いモナティンを効率よ く生成させることが好ましい。 D—ァミノトランスフェラーゼの一部のァミノ 酸残基を置換することにより、 I HOGから (2R, 4R) 一モナティンを効 率的に生成するように人為的に変異を起こさせることも好ましい。
本発明者らの研究により、 配列番号 7の BMDATにおいて、 1 00位、 1 80〜1 83位、 24 3位、 244位の少なくとも一箇所のアミノ酸残基に置 換を導入すると、 (2R, 4R) —モナティンを効率的に生成するよう改変し うることが分かっている。また、配列番号 9の B SDATにおいて、 243位、 244位の少なくとも一箇所のアミノ酸残基に置換を導入すると(2R, 4R) —モナティンを効率的に生成することが確認されている。
I HOGの 2位をァミノ化してモナティンを生成する反応を触媒する酵素 又は当該酵素活性を有する微生物の存在下で、 I HOGおよびアミノ基供与体 を反応させることによりモナティンを生成できる。反応系に反応促進物質、例 えば補酵素、界面活性剤、 有機溶剤等を添加、含有せしめることにより反応の 効率をより高めることができる。
反応温度については、 通常、利用する酵素が活性を有する範囲内、 即ち好ま しくは 1 0〜50°Cで行われるが、 より好ましくは 20〜40°C、更に好まし くは 25〜3 7°Cの範囲で行われる。 酵素反応液の pH値については、 通常、
2〜1 2、 好ましくは 7〜1 1、 より好ましくは 8〜9の範囲で調節される。 が高いと、モナティンの原料となる I H O Gが自発的にインドールー 3— ピルビン酸とピルビン酸に分解され易く、 また、 p Hが低 、と、 I H O Gが環 ィ匕し易くアミノ化できなくなるので好ましくない。モナティンの原料となる I H O Gの分解反応および環化反応を効果的に抑制するためには、酵素反応液をp H 7〜l l、 より好ましくは p H 8〜9の範囲に保つことが好ましい。反応 時間については、 通常 1〜 1 2 0時間程度、 好ましくは 1〜 7 2時間程度、 更 に好ましくは 1〜 2 4時間程度が選択される。
尚、酵素反応液中のモナティン又は I H O Gを定量する場合、周知の方法を 用いて速やかに測定することができる。即ち、簡便には Merck社製「Silicagel 60F254J等を利用した薄層クロマトグラフィーを利用することができ、 より分 析精度を高めるには、 ジーエルサイエンス社製 「Inertsil ODS- 80A」 、 資生堂 製「力プセルパック MG」等の逆相力ラムゃダイセル化学工業(株)製「CR0WKPAK CR ( + ) 」 等の光学分割カラムを利用した高速液体クロマトグラフィー(H P L C)を用いればよい。
酵素反応終了後、 酵素反応液中には、 モナティン、 I H O G、 アミノ基供与 体等の可溶成分以外に、酵素源として用いた菌体、菌体破砕物等の不溶成分が 含まれる場合がある。本発明においては、芳香族環を含有する非極性樹脂で処 理する前に、予め酵素反応液中に含まれる不溶成分を除去しておくことが好ま しい。 不溶成分の除去は、遠心分離法、濾過法等の通常の手法によって行うこ とができる。
〔B〕 モナティンの分離方法
本発明においては、モナティンおよび不純物を含有する被処理液を、芳香族 環を含有する非極性樹脂で処理することにより、 モナティンを分離する。 ここで、 「芳香族環を含有する非極性樹'脂で被処理液を処理する」 とは、 芳 香族環を含有する非極性樹脂の表面に被処理液を接触させながら通過させる ことを意味する。
芳香族環を含有する非極性樹脂は、イオン交換基のような官能基を有しない
力 van der Waals力により有機成分を吸着する。 芳香族環を含有する非極性 樹脂で被処理液を処理すると、被処理液中に含まれるモナティンおよび不純物 はそれぞれ芳香族環を含有する非極性樹脂と相互作用し非極性樹脂の表面に 吸着する。相互作用の強さは各成分によって異なるので、非極性樹脂の表面に 溶出液を流すと、相互作用の弱い成分から順に非極性樹脂から遊離する。 この 相互作用の差を利用して不純物が含まれる被処理液からモナティンのみを分 離することができる。
(B— 1 ) 芳香族環を含有する非極性樹月旨
本発明においては、分子内に芳香族環を含有する非極性樹脂を用いて被処理 液を処理する。 このような非極性樹脂は、側鎖に芳香族環を有することが好ま しい。 また、 非極性樹脂は、 分子内に高密度に芳香族環を有することが好まし く、具体的には非極性樹脂の分子内に含まれる炭素のうち 2 0 %以上、好まし くは 5 0 %以上が芳香族環に由来する炭素であることが好ましい。
非極性樹脂の分子内に含まれる芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン 環、 アントラセン環などを例示することができる。 このうち、 ベンゼン環が最 も好ましい。非極性樹脂の分子内に含まれる芳香族環は、モナティンの分離効 率に影響を与えない範囲で置換基を有していてもよく、具体的には、ハロゲン 原子、 炭素数 4以下のアルキル基等の置換基を有していても良い。 このうち、 好ましい置換基としてはハロゲン原子を挙げることができ、中でも臭素が特に 好ましい。
.非極性樹脂の分子内に含まれる芳香族環に'ハロゲン原子を導入すると、球水 吸着力が高まり、非極性樹脂から有機成分を溶出する際、溶出液を多く必要と する。 このため、 各成分の溶出時間の差が大きくなり、 得られるモナティン画 分は他成分の混入の少ない精製度の高いものとなる。
本発明において特に好ましく用いることのできる芳香族環を含有する非極 性樹脂としては、スチレンとジビュルベンゼンを重合して得られる三次元架橋 構造ポリマーを挙げることができる。 ここで、 スチレン、 ジビニルベンゼンは ベンゼン環にハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。芳香族環を含有す
る非極性樹脂は、 スチレン、 ジビュルベンゼンから導出される構成単位を主体 とする重合体であれば、 芳香族環を含有しないモノマー (例えばエチレン等) 力 ら導出される構成単位を一部に含んでいても良い。
本発明の好ましい実施の形態としては、芳香族環を含有する非極性樹脂を粒 子状にしてカラム中に充填し、 このカラム中に被処理液を通液する、 いわゆる クロマトグラフィ一の手法を用いて処理する方法が挙げられる。
芳香族環を含有する非極性樹脂からなる粒子の平均粒径は、 膨潤状態で 0 . 1 mm〜 1 mmが好ましく、 0 . 2 mm〜 0 . 4 mmがより好ましい。 ここで いう平均粒径は有効径算出法によるものである。 有効径算出法とは、篩にかけ た場合、 9 0 v t %の粒子が通過する篩目の径の大きさ (有効径) を算出する 方法である。 具体的には、粒子を篩目の径の異なる複数の篩にかけ、 各篩ごと に残留した粒子の容積を求め、 片軸に各篩の残留分累計 (%) 、 他の軸に篩目 の径 (mm) をとり、 対-数確率紙上にプロットする。 粒子の残留分の多い順に 3点をとり、 この 3点をできるだけ満足するような線を引き、 この線から残留 分累計が 9 0 %に相当する篩目の径 (mm) を求め、 これ'を有効怪とするもの である。 ,
粒子の粒度分布は特に限定されないが、均一係数算出法により算出した値で 2 . 0以下であることが好ましい。 均一係数は、 有効径算出法と同一要領によ り、 残留分累計 4 0 %に対応する篩の目の径 (mm) を求め、 次式によって均 一係数を算出する方法である。
均一係数 =残留分累計 4 0 %に対応する篩の目の径' (mm) /有効径(mm) 芳香族環を含有する非極性樹脂からなる粒子の比表面積は 2 0 0〜2 0 0 0 c m2/g、 より好ましくは 5 0 0〜1 5 0 0 c m2/gであることが好ましレヽ。 芳香族環を含有する非極性樹脂からなる粒子は、多数の細孔を有する多孔粒 子であることが好ましい。 多孔 $立子の細孔半径は、 1 0 A〜 5 0 0 A、 好まし くは 3 0 A〜 3 0 0 A、 より好ましくは 5 0 A〜 1 5 0 Aである。 多孔粒子の 細孔容積は、 樹脂 1 g当たり 1 m 1以上であることが好ましい。
( B— 2 ) 被処理液の処理
被処理液の処理温度は 0 °C〜 8 0 °C、より好ましくは 1ひ。 C〜 5 0 °Cである。 温度が低すぎると被処理液から結晶が析出し収率が低下する。 また、温度が高 すぎると分解や着色等が起こりモナティンの品質が低下する。
芳香族環を含有する非極性樹脂の表面に被処理液を接触させると、被処理液 中に含まれるモナティンおよぴ不純物はそれぞれ非極性樹脂と相互作用し非 極性樹脂の表面に吸着する。相互作用の強さは各成分によって異なるので、相 互作用の弱い成分から順に非極性樹脂から遊離する。この相互作用の差を利用 して不純物が含まれる被処理液からモナティンを分離することができる。
本発明においては、芳香族環を含有する非極性樹脂の表面に被処理液を接触 させた後、 溶出液を用いて各成分を溶離展開することが好ましい。
溶出液として使用する溶剤は水と混和する有機溶剤であればよレヽ。有機溶剤 としてはメタノール、エタノー Λ\ プロパノール等のアルコール溶剤が望まし V、。 水との混合比率は好ましくは 0 . 1 %〜 1 0 0 %、 より好ましくは 1 %〜 5 0 %、 更に好ましくは 5 %〜 2 5 °/0がよレ、。水のみではモナティンの溶出に 長時間を要するため、水のみで一旦水溶性不純物を溶出し、後に有機溶剤と水 との混和物を用いてモナティンを溶出することもできる。 また、 アルコ一ノ^ 量が高すぎると他の成分との分離性が低下する。
被処理液の ρ Ηは 2〜1 2、 より好ましくは?〜 1 1、特に好ましくは 8〜 9である。強酸性領域ではモナティンが一部ラクタム体ゃラクトン体に分解す る。
また、被処理液が I H O Gを含む場合、強酸性及ぴ強アルカリ性では I H O Gが分解し回収できない。 具体的には強酸性では、 I H O Gが環化し易い。 こ の環化反応は不可逆反応であるため、一度環化した I H O Gを再生してモナテ インの生成反応に再利用することは困難である。 また強アルカリ性では、モナ ティンの原料となる I H O Gが自発的にインドールー 3—ピルビン酸とピル ビン酸に分解され易くなるので好ましくない。 I H O Gの分解反応おょぴ環化 反応を効果的に抑制するためには、被処理液を p H 7〜 1 1、 より好ましくは p H 8 ~ 9の範囲に保つことが好ましレ、。
芳香族環を含有する非極性榻 '脂の使用量は、被処理液に含まれるモナティン に対して、 20〜200 L/mo 1、 より好ましくは 50〜: L 00 L/mo 1 がよい。 使用量が少なすぎるとモナティンと他の成分との分離性が低下する。 また多すぎると使用する溶出液が増加し経済的ではない。
溶出液を所定時間ごとにサンプリングし、各成分の溶出挙動を HP L Cにて 測定することにより、 モナティンが溶出される溶出容量(溶出液量 Z樹脂容量 (L/L- ) ) の経験値を確認できる。 溶出容量は、 処理条件によって異な る力 モナティンおよび I HOGを含有する被処理液を処理する場合、 まず I HOGが溶出し、 ついでモナティンが溶出する。予め I HOGが溶出される溶 出容量、 および、 モナティンが溶出される溶出容量をそれぞれ把握しておき、 各溶出容量において溶出液を回収することにより、 I HOG画分、モナティン 画分をそれぞれ採取することができる。 実施例
以下に実施例を示し本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施 例に限定されるものではなレ、。
本実施例において、モナティンの定量は、ジーエルサイェンス社製 rinertsil 0DS- 80A 」 (5μηι, 6X150膽)又は資生堂製 「カプセルパック MG」 (5 m, 4.6Χ250ΐΒΐη)を利用した高速液体ク口マトグラフィ一により行った。分析条件は、 以下に示す通りである。
ジーエルサイエンス社製 「Inertsil 0DS - 80Α」 (5μΗΐ, 6X150腿)の場合 移動相: 12% (ν/ν) ァセトニトリル /0.05% (ν/ν) トリフルォロ酢酸水溶液 流速: 1.5 ml/min '
カラム温度: 30°C
検出: UV210nm
本分析条件により、 (2 S, 4 S) —モナティン及び (2R, 4R) 一モナテ インは 12. 1分に、 (2 S, 4R) —モナティン及び (2 R, 4 S) 一モナ ティンは 9. 7分のリテンションタイムにて分別定量ができる。
資生堂製 「カプセルパック MG」 (5μ 4.6X250mm)の場合 移動相 A液: (20mM燐酸 1力リウム + 20mM燐酸 2カリウム)水溶液
移動相 B液: (20mM燐酸 1力リゥム +20mM燐酸 2カリゥム)水溶液/ ァセト 二トリ 50/50 (v/v) 水溶液
タイムプログラム : 0→15min A液 100% 15min→45min B液 75%まで直線グ ラジェント 45→60min A液 100%
分析サイクル: 60min
流速: 1 ml/min
カラム温度: 40°C
検出: UV210皿
本分析条件により、 (2 S, 4 S) —モナティン及び (2R, 4R) —モナテ インは 16. 3分に、 (2 S, 4 R) 一モナティン及び (2 R, 4 S) 一モナ ティンは 12分に、 1ト100は1 1分のリテンションタイムにて分別定量がで さる。
また、必要に応じて、ダイセルィ匕学工業製光学分割カラム 「CR0匿 AKCR(+)」 (4.6X150皿 n)を利用した高速液体ク口マトグラフィ一による分析も行つた。 分 析条件は以下に示す通りである。
移動相:過塩素酸水溶液 (PHI.5) /10°/o(v/v)メタノール
流速: 0.5 ml/min
カラム温度: 30°C
検出: UV210nm
本条件によりモナティン光学異性体は (2R, 4 S) 、 (2R, 4R) 、 (2 S, 4R) 、 及び (2 S, 4 S) の順に 42分、 57分、 64分、 及び 125分 のリテンションタイムにて分別定量ができる。
実施例 1
参考例 1の方法にて I H O Gからモナティン生成させることにより取得し た酵素反応液 121. 84 g ( (2R、 4R) —モナティン(以下(RR) monatin と表記する場合がある) 2. 72 w t %) を合成吸着剤(三菱化学製 DIAI0N
-SP207)が 600 m 1充填された樹脂塔 (直径 4 c m) に通し、 流速 7. 5 m 1 Z分で純水を 3時間通液し、更に流速 7. 5m l Z分で 15 °/。 2—プロパノ ール水溶液を 3時間通液し、 2. 6〜3. 5 (溶出液量/樹脂容量 (L/L— R) ) を収集することにより、 (2R、 4R) —モナティンをほぼ定量的に分 取した。
図 1に酵素反応液の分離パターンを示す。 図 1において、 P Aは I HOGの 分解反応及び D—ァラニンのァミノ基転移反応によって生じたピルビン酸を 表している。 I HO G— aは I H O Gの環化反応によって生じた 1, 3-Dihydroxy-2, 3, 4, 9- tetrahydro- 1H - carbazole- 1, 3-dicarboxylic aci (下記化学式参照) を表している。 また、 I HOG— bは、 インドール一 3一 ピルビン酸とピルビン酸のァルドール縮合反応により I H O Gを合成する際 に副生物として生じた 2_Hydroxy- 3 -(1H- indol- 3- yl) - 2- methyl- 4- 0X0 - pentanedioic acid (下記化学式参照) をそれぞれ表している。
得られたモナティン画分を 13. 3 gまで濃縮し、 2 _プロパノール 64m 1を添加して 10°Cで 16 h r撹拌した。 結晶をろ過した後、得られた湿結晶 3. 0 gを水 10 m 1に溶解し、 2—プロパノール 30 m 1を 35°Cで添加し、 更に 35 °Cで 2—プロパノール 30 m 1を 2時閒かけて滴下した。溶液を室温 に冷却し、 結晶をろ過した後、減圧乾燥にて (2R、 4R) —モナティンの K 塩 2. 59 gを得た。 (area純度 97. 4 %)
実施例 2〜9、 比較例 1
表 1に示す合成吸着剤 (三菱化学製) が 40ml充填された樹脂塔 (直径 4
cm) に酵素反応モデル液 2mlを注入した。使用した酵素反応モデル液中の各 組成含量は、モナティン 0. 24mmo 1、ァラニン 1 mm o 1、 I HOG 0. 24mmo l、 I P A (インドールピルビン酸) 0. 17mmo lである。 表 2記載の移動層にて通液し、所定時間ごとに溶出液をサンプリングし各成分 の溶出挙動を HP L Cにて測定した。
表 1に各成分の平均溶出容量 (L/L-R) を示す。 ここでの平均溶出容量 (L/L- ) は加重平均法にて算出した値である。
また、表 1に記載の合成吸着剤の化学構造および性質について、表 2に示す。 なお、 表 2に記載の見掛密度、水分、 有効径および均一係数は下記の方法によ り算出した値である。
見掛密度 =樹脂重量 (w e t— g ) Z樹脂容量 (L一 R)
樹—脂容量は、 基準形 (膨潤状態) で計測した値であり、 榻—脂重量は、 基準形 にした樹脂を遠心分離して付着水分を除いた後に計測した値である。
水分 .(%) =乾燥減量 (g) X 100Z樹脂重量 (w e t— g)
榻—脂重量は、基準形にした樹脂を遠心分撃して付着水分を除いた後に計測し た値であり、乾燥減量は樹脂重量を計測後 105°C土 2°Cの恒温乾燥機中で 4 時間乾燥し、 デシケータ中に 30分放冷した後に計測した値である。
有効径
有効径算出法により算出した樹脂の粒度
均一係数
均一係数算出法により算出した榻 '脂の粒度分布 第 1表
均溶出容量 (L/L-R) 実施例 樹脂 移動層 モナティ ァラニン IH0G IPA
2 SP207 H20 5.20 0, 95 2.11 7.28
3 SP207 1% i-ProOH 2.07 0.73 1.08 2.99
4 SP207 5% i-ProOH 1.18 0.66 0.76 1.57
5 SP207 10% i-ProOH 0.84 0.60 0.74 1.09
6 SP825 H20 3.38 0.65 1.10 8.83
7 SP850 H20 4.61 0.69 1.58 12.44
8 HP21 H20 2.14 0.86 1.25 2.81
9 HP20 H20 1.68 0.71 1.01 2.72
比較例 1 HP2MG H20 0.96 0.74 0.80 1.56
IPA; インド一ルピルビン酸
IH0G; 4一 (インド一ル一 3—ィルメチル) 一 4—ヒドロキシ一 2-ォキソグルタル酸
強酸性樹脂 (三菱化学製 DIAI0N-PK208 Na型) 50 m 1に、 モナティン 3 O Omgとァラニン 484mgを含む水溶液 10mlを注入し、 流速 1ml/ 分で純水を通液したがモナテインはァラニンと分離されずに溶出した。
比較例 3
塩基性樹脂 (三菱化学製 DIAI0N-WA30) 25mlにモナティン 250 m g
とァラユン 534mgを含む水溶液 10mlを注入し流速 1 m 1 /分で純水を 通液した。 ァラニンは溶出分離された力 モナティンは溶出されず樹脂に吸着 されたままであった。
ぐ参考例 1 > 酵素反応液の調製
[I] Bacillus macerans A J 1617株由来 d a t遺伝子(以下、 b m d a t)のクローニングと発現プラスミドの採取
(1)染色体 DNAの調製
Bacillus macerans A J 1617株を 50 mlのブイョン培地を用いて 3 0°Cでー晚培養した (前培養) 。 この培養液 5m 1を種菌として、 50 ml のブイョン培地を用いて本培養を行った。対数増殖後期まで培養した後、培養 液 50 mlを遠心分離操作 (12000xg、 4°C、 15分間) に供し、集菌した。 この菌体を用いて定法に従って染色体 D N Aを調製した。
(2)遺伝子ライブラリからの bm d a ΐ遺伝子の単離
まず、 Bacillus macerans A J 161 7株の染色体 DNA 30 μ gに制限酵 素 EcoRIを 1 U添加し、 37 °Cにて 3時間反応させて部分消化した。 次にこの DN Aからァガロースゲル電気泳動にて 3〜6 k b pの断片を回収した。これ をプラスミド PUC118の EcoRI切断物 (BAP処理済み ·宝酒造製) 1 gにラ ィゲーシヨンし、 E. coli JM109を形質転換して遺伝子ライプラリを作製した。 これをアンピシリン 0. 1 mgZmlを含む LB培地 (トリプトン 1%、 酵 母エキス 0. 5 %、 塩ィ匕ナトリウム 1%、 寒天 2%、 pH7. 0) にプレー ティングして、コロニーを形成させた。出現したコロニーをアンピシリン 0. 1 mg/mlとイソプチルー 1一チォー /3— D—ガラクトピラノシド (I P TG) を 0. 1 mM含む L B液体培地 1 m 1に接種し、 37 °Cでー晚培養し た。 培養液 200〜400 μ 1を遠心分離により集菌 ·洗浄し菌体を得た。 得 られた菌体を、 100 mM T r i s -HC 1 ( H 8. 0)、 5 OmM ピル ビン酸ナトリウム、 10 OmM D—グルタミン酸、 1 mM ピリ ドキサール —5'—リン酸、 1% (v/v) トルエンからなる反応液 200 に接種し、 30°Cで 30分間反応させた。 反応終了後、 反応液を遠心分離した上清 5 1
を 200 μ 1のピルビン酸定量反応液(100 mM Tr i s— HC 1 ( H 7. 6)、 1. 5 mM NADH、 5 mM MgC l2、 16 U/m 1 Lactate dehydrogenase (オリエンタル酵母製) ) を含む 96ゥエルプレートに加え、 30 °Cで 1 0分間反応させた後に 340 n mの吸光度をプレートリーダー (SPECTRA MAX190, Molecular Device 社製) を用いて測定した。 同様の反応 •を終濃度 0. 2 mM 〜 1 mMのピルビン酸ナトリウムを添加して実施し、 これをスタンダードとしてピノレビン酸の減少量を定量し、 D—ァミノ トランス フェラーゼ (以下、 DAT) 活' I生を;!食出した。
上記の DAT活性クローンのスクリーニングにより、 DAT活性を示すクロ ーンを採取した。この形質転換体より D—ァミノ トランスフェラーゼ遺伝子を 含むプラスミドを調製し、 pUCBMDATと命名した。プラスミド pUCBMMTを EcoRI 処理してァガロースゲル電気泳動に供したところ、挿入断片の長さは約 3.3kbp と見積もられた。 '
(3)挿入断片の塩基配列
プラスミド pUCBMDATの挿入断片の塩基配列をジデォキシ法によつて決定し たところ、配列表 1に示す配列のうち、 630番から 1481番に対応する約 850 pからなる OR Fを見出した。本 OR Fについて既知配列との相同性 検索を行ったところ、 Bacillus sphaericus ATCC 10208株由来の D_ アミノトランスフエラーゼ遺伝子とアミノ酸配列において 91 %の相同性を、 Bacillus sp. YM - 1株由来の D—アミノ トランスフェラーゼ遺伝子とアミノ酸 配列において 66%の相同性を、 Bacillus licheniformis ATCC 1071 6株由来の D—アミノトランスフェラーゼ遺伝子とアミノ酸配列において 4 2%の相同性を示した。 なお、 ここでの相同性は、遺伝子解析ソフト 「genetyx 6J (GENETYX社) を用い、 各種パラメータは初期設定の通りとして算出した 値である。 この結果より、本 ORFは D—アミノトランスフェラーゼ遺伝子を コードしていることが明らかとなった。
[II] 変異型 BMDAT発現プラスミ ドの作製
部位特異的変異 (Site- Directed mutagenesis)による変異型 BMD AT発現
プラス ミ ドの作製には、 STMTAGENE 社製 QuikChange Site-Directed Mutagenesis Kitを使用した。 まず、 目的とする塩基置換を導入し、 かつ 2本 鎮 D N Aのそれぞれ鎖に相補的になるように設計した合成オリゴ D NAプラ イマ一をそれぞれ (2本1組) 合成した。 作製した変異型酵素と変異導入に使 用した合成オリゴ D N Aプライマーの配列を表 3に示す。変異型酵素の名称に ついてであるが、 「野生型酵素でのァミノ酸残基→残基番号→置換したァミノ 酸残基」 の順に表記する。例えば S243N変異型酵素は野生型酵素の 2 4 3番目 の Ser (S)残基を Asn (N)残基に置換した変異型酵素であることを意味する。 表 3
該キットの方法に従い、 [I] にて採取した野生型 B MD AT発現プラスミ ド pUCBMADT を錶型として変異型プラスミ ド pS243N/A182S を作製した。 PS243N/A182S の作製方法を説明する。 まず、 pS243Nの作製にあたっては、 pUCBMDATを鏡型としてプライマー S243N- S, S243N - ASを用いて、 以下の条件で 変異型 B MD AT発現プラスミドを増幅することによって、 PS243N を作成し た。
95°C 30秒
55°C 1分
68°C 8分 X 18サイクル
メチル化 D N Aを認識して切断する制限酵素 Dpnl 処理によって铸型 pUCBMDATを切断した後に、 得られた反応液で E. coli JM109 を形質転換した。 形質転換体よりプラスミドを回収して塩基配列を決定し、 目的とする塩基置換 が導入されていることを確認した。
次いで、 pS243Nを铸型としてプライマー A182S-S、 A182S-ASを用いて同様の
操作を行うことにより pS243N/A182Sを作製した。
[III] S243N/A182S変異型 BMDATを用いた(土)一 I HOGの 2 R-モナ ティンへの変換:
(1) 菌体の調製
pS243N/A182Sを持つ E. coli形質転換体を 0. ■ 1 m g /m 1 ァンピシリン を含む 3m 1の LB培地 (バク トペプトン l gZd l、酵母エキス 0. 5 g /d l、 Na C l 1 g/d 1 ) に接種し、 3 7°C、 1 6時間シード培養した。 この培養液 2. 5m lを、 0. lmgZml アンピシリン、 0. 1 mM I P TGを含むカザミノ酸培地 (0. 5 g/d l 硫酸アンモユウム、 0. 1 4 g /d 1 KH2P04、 0. 23 g/d 1 クェン酸 · 2Na · 3H20、 0. 1 g / ά 1 Mg S04 ' 7H20、 2m g/d 1 F e S 04、 2m g/d 1 Mn S 04、 2mg/d 1 塩酸ピリ ドキシン、 0. lmg/d l thiamine, 1 g/ d 1 カザミノ酸、 0. 3 g/d l グリセロール、 pH7. 5) 50 m 1を張 り込んだ 5 00m l容坂口フラスコに添加し、 3 7。C、 1 8時間振とう培養し た。 得られた培養液より集菌、洗浄し、 S243N/A182S変異型 BMDAT発現 E. coliを調製した。
(2) I HOGアミノ化反応
上記 (1) にて、 240m l培養液より集菌 '洗浄して調製した菌体を、 1 00 mMリン酸カリゥム緩衝液 ( H 8. 3 ) 、 244 mM (土) 一 I HO G、 6 0 OmM DL-A 1 aN 1 mM ピリ ドキサール一 5 ' ―リン酸からな る反応液 1 20m lに懸濁し、 3 7 °Cで 24時間攪拌し、反応を実施した。 な お、 ここで使用した (土) 一 I HO Gは後述する参考例 2の方法により取得さ れたものである。
反応中の pHの低下を防ぐため、 IN KOHにて pHを] Η8. 4± 0. 1に制御した。 その結果、 24時間で 7 9. 2 mMの (2R, 4 R) —モナ ティンが反応液中に蓄積した (対 4R— I HOGモル収率 6 5%) 。 得られた 反応液を 5 000 r pmで 1 0分間遠心分離して上清を取得した。この上清を 実施例 1の酵素反応液として用いた。
<参考例 2〉 I HOGの合成
水酸ィヒカリウム 18. 9 lg (286. 5mmo 1、 含量 85重量0 /0) を溶 角 した ΤΚ 64. 45 m 1に、 インドーノレ一 3 -ピノレビン酸 7. 50 g (35. 8 mm o 1 N 含量 97. 0重量0 /0) とォキサ口酸 14. 18 g (107. 4 mm o 1 )を加えて溶解させた。この混合溶液を 35 °Cにて 24時間攪拌した。 更に、 3 N—塩酸 40. 0mlを加えて中和 (pH=7. 0) し、 153. 5 gの反応中和液を得た。 この反応中和液には、 I HOGが 5. 55 g含まれ ており、 収率 53. 3% (対ィンドール一 3 -ピノレビン酸) であった。
この反応中和液に水を加え、 168mlとし、 合成吸着剤 (三菱化学製 D IAI ON-SP 207) 840 m lにて充填された樹脂塔(直径 4. 8 c m) に通液した。 更に、 流速 23. 5 m 1毎分にて純水を通液し、 1. 73〜 2. 55 (L / L— R)を収集することにより、高純度の I HOGを 3. 04 g含 む水溶液を、 収率 54. 7% (樹脂への投入量に対して) にて得た。
(NMR測定)
¾-NMR (400MHz, D20): 3.03 (d, 1H, J = 14.6 Hz), 3.11 (d, 1H, J = 1
4.6 Hz), 3.21 (d, 1H, J= 18.1 Hz), 3.40 (d, Hi, J = 18.1 Hz) , 7.06-7.15 (m, 3H), 7.39 (d, 1H, J二 7.8 Hz), 7.66 (d, 1H, J' = 7.8 Hz).
13C- NMR(10画 z, D20): 35.43, 47.91, 77.28, 109.49, 112.05, 119.44, 119.67, 121.91, 125. 2, 128. 1, 136.21, 169.78, 181.43, 203.58
<参考例 3〉 I H O Gの p H安定性の評価
[I] I H O Gァミノ化反応液中における p I-I安定性
I HOGアミノ化反応液中での I HOGの安定性を試験するために、 I HO Gアミノ化反応溶液の菌体無添加区での I HOGの経時変化を測定した。 10 OmMリン酸カリウム緩衝液 (pH8. 3) 、 300 mM (土) I HOG、 600 mM D L— A 1 a、 1 mM ピリ ドキサ一ノレ一 5 ,—リン酸からなる反 応液 1 m 1を含む試験管を、 37°Cで 40時間振とうし、 反応を実施した。 そ の結果、 (土) I I- IOGの'残存率は 16時間後に 81 °ん 24時間後に 70 %、 40時間後には 57 %にそれぞれ減少しており、 I H O Gが経時的に分解して
いることが明らかとなった。これは反応液中で I H O Gがィンドール一 3—ピ ルビン酸とピルビン酸に分解する分解反応や、 I HO Gの環化反応が生じるこ とが原因であると推察される。
[II] 緩衝液中における p H安定性
p Hの異なる 4 0 mMリン酸カリゥム緩衝液中での I H O G ( 0 . 5 4 mM) の残存率を測定した。 保存温度 3 5 とした。
表 4 I HOGの残存率
本発明により、甘味料等として期特できるモナティンのなかでも最も甘味度 の高い (2 R, 4 R) 一モナティンを酵素反応を利用して効率良く製造するこ とができるので、本発明は工業上、特に食品の分野において極めて有用である。