明 細 書
神経突起伸長誘導剤
技術分野
[0001] 本発明は、神経突起伸長作用を有する糖鎖、複合糖質、該糖鎖若しくは該複合糖 質の誘導体、該糖鎖若しくは該複合糖質の薬理学的に許容されうる塩又は該糖鎖 の合成に係る酵素及び該酵素をコードする核酸を有効成分とする医薬組成物、試薬 、食品又は飲料に関する。
背景技術
[0002] 神経細胞は、通常、 1本の軸索と複数の榭状突起とを伸長させて、他の細胞との間 でシグナルをやり取りすることによって複雑なネットワークを構築して 、る。神経細胞 の生存や幼若神経芽細胞から成熟した神経細胞への分化、神経突起の伸長等、神 経細胞の機能維持には、神経栄養因子とよばれる一連の物質が重要な役割を果た していると考えられている。
[0003] 神経損傷や神経変性を伴う疾患、例えば、神経切断、脊髄損傷、糖尿病性神経障 害、筋萎縮性側索硬化症 (amyotrophic lateralsclerosis, ALS)、多発性硬化症 (multiple sclerosis, MS)、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏 病等の末梢神経系、中枢神経系の疾患等の治療方法は、損傷を受けた神経細胞の 生存と機能修復とを促す方法 (温存再生)と、神経細胞に分化しうる細胞 (例えば、神 経幹細胞)を損傷部位に補充して機能の回復を図る方法 (補充再生)とに大別される 。このうち、前記補充再生は、補充される細胞の入手の困難性や倫理的問題の存在 のため、普及するには至っていないのが現状である。一方、前記温存再生は、より具 体的には、残存する神経細胞から軸索を再生させ、新たなシナプスを形成させること で機能回復を図る方法である。
[0004] 近年、神経変性疾患の予防、治療の目的に神経栄養因子が着目されている。例え ば、神経成長因子(nerve growth factor, NGF)や脳由来神経栄養因子(brain — derived neurotrophic factor, BDNF)、ニューロトロフィン (Neurotrophin) 3、ニューロトロフィン—4Z5等が見出されている。これらの神経成長因子は各種
神経細胞障害による神経機能障害の治療薬や痴呆症等の予防薬として有望である( 例えば、非特許文献 1参照)。
[0005] また、例えば、特許文献 1には、ァストロサイトーマ、グリア細胞又はシュワン細胞培 養培地から得られる分子量 60000士 5000の神経栄養因子及び分子量 120000士 5000の神経栄養因子が報告されて 、る。力かる特許文献 1に記載の神経栄養因子 は、神経芽細胞腫増殖抑制活性を示すとともに、神経細胞に対し生存活性又は神経 突起伸長作用を有する。さらに、特許文献 2には、抗血液凝固活性が低ぐ神経突起 伸長作用を示すグリコサミノダリカン誘導体が報告されている。
[0006] し力しながら、これらのタンパク質性神経栄養因子や多糖誘導体等は、高分子量の 化合物であるため、血液脳関門等の障壁を超えて脳内患部へ栄養因子を到達させ ることが極めて困難であり、投与方法により、前記タンパク質性神経栄養因子や多糖 誘導体等の効果が大きく影響されることが問題となっている。
[0007] 一方、低分子量の神経栄養因子としては、例えば、ミカン科植物力 抽出されるポ リアルコキシフラボノイドを含有する神経突起伸長剤 (特許文献 3)、神経細胞増殖作 用並びに神経突起伸展作用等の神経細胞成長促進作用を示すシクロへキセノール 誘導体 (特許文献 4)及びピロリジン誘導体又はピぺリジン誘導体を含有する神経突 起伸長剤 (特許文献 5)が報告されている。しかしながら、これらの物質は、いずれも 効果が十分でな 、のが現状である。
特許文献 1 :特開平 07— 101990号
特許文献 2:特開平 11— 310602号
特許文献 3 :特開 2002— 060340号
特許文献 4:特開 2001— 089404号
特許文献 5:特開 2001— 247569号
非特許文献 1 :「ネイチヤー (Nature)」、第 344卷、第 339頁〜第 341頁(1990年) 発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0008] 本発明は、高 、神経突起伸長効果を発揮する、新規な神経突起伸長剤、神経変 性疾患治療剤又は予防剤、当該疾患の治療用又は予防用の食品又は飲料、神経
突起伸長の誘導方法、神経疾患の治療又は予防方法、学習及び Z又は記憶能力 の向上又は改善方法、神経疾患の治療又は予防のための医薬の製造のための前 記糖鎖の使用並びに学習及び Z又は記憶能力の向上剤又は改善剤の製造のため の前記糖鎖の使用を提供することに関する。 1つの側面では、本発明は、神経突起 の伸長に基づ 、て新たな神経ネットワークの形成を促すこと等を可能にする、神経突 起伸長誘導剤を提供することに関する。他の側面では、本発明は、神経変性を伴う 疾患の症状を改善すること、前記疾患の発症又は進行を抑制すること等を可能にす る、神経疾患治療剤又は予防剤を提供することに関する。さらに他の側面では、本発 明は、動物個体の学習及び Z又は記憶能力を伸ばすこと、種々の要因で低下した 個体の学習及び Z又は記憶能力の回復を行なうこと等を可能にする、学習及び Z又 は記憶能力の向上剤又は改善剤を提供することに関する。別の側面では、本発明は 、摂取することにより神経疾患の治療又は予防効果、学習及び Z又は記憶能力の向 上又は改善効果等を得ることができる、食品又は飲料を提供することに関する。さら に別の側面では、本発明は、軸索又は榭状突起に分化する神経突起の生成及び Z 又は伸長を誘導すること等を可能にする、神経突起伸長の誘導方法を提供すること に関する。また、他の側面では、本発明は、神経変性を伴う疾患の症状を改善するこ と、前記疾患の発症又は進行を抑制すること等を可能にする、神経疾患治療又は予 防方法並びに、前記神経疾患治療又は予防方法を行なうに適した医薬の供給、神 経疾患の治療又は予防等を可能にする、神経疾患の治療又は予防のための医薬の 製造のための規定された糖鎖の使用を提供することに関する。さらに、別の側面では
、本発明は、動物個体の学習及び Z又は記憶能力を伸ばすこと、種々の要因で低 下した個体の学習及び z又は記憶能力の回復を行なうこと等を可能にする、学習及 び Z又は記憶能力の向上又は改善方法、並びに前記学習及び Z又は記憶能力の 向上又は改善方法を行なうに適した学習及び Z又は記憶能力の向上剤又は改善剤 の供給、個体における学習及び Z又は記憶能力の向上又は改善等を可能にする、 学習及び Z又は記憶能力の向上剤又は改善剤の製造のための規定された糖鎖の 使用を提供することに関する。なお、本発明の他の課題は、本明細書の記載により導 さ出される。
課題を解決するための手段
[0009] すなわち、本発明の第 1の発明は、バイセクティング GlcNAcを有する糖鎖、該糖 鎖を構造中に有する複合糖質、該糖鎖若しくは該複合糖質の誘導体、該糖鎖若しく は該複合糖質の薬理学的に許容されうる塩、該糖鎖の合成に係る酵素及び該酵素 をコードする核酸力 なる群より選ばれた少なくとも 1種を有効成分として含有する、 神経突起伸長誘導剤に関する。
[0010] 本発明の第 2の発明は、バイセクティング GlcNAcを有する糖鎖、該糖鎖を構造中 に有する複合糖質、該糖鎖若しくは該複合糖質の誘導体、該糖鎖若しくは該複合糖 質の薬理学的に許容されうる塩、該糖鎖の合成に係る酵素及び該酵素をコードする 核酸からなる群より選ばれた少なくとも 1種を有効成分として含有する、神経疾患の 治療剤又は予防剤に関する。前記神経疾患としては、神経変性疾患、痴呆症、脳腫 瘍等が例示される。
[0011] 本発明の第 3の発明は、バイセクティング GlcNAcを有する糖鎖、該糖鎖を構造中 に有する複合糖質、該糖鎖若しくは該複合糖質の誘導体、該糖鎖若しくは該複合糖 質の薬理学的に許容されうる塩、該糖鎖の合成に係る酵素及び該酵素をコードする 核酸からなる群より選ばれた少なくとも 1種を有効成分として含有する、学習及び Z 又は記憶能力の向上剤又は改善剤に関する。
[0012] 本発明の第 4の発明は、バイセクティング GlcNAcを有する糖鎖、該糖鎖を構造中 に有する複合糖質、該糖鎖若しくは該複合糖質の誘導体、該糖鎖若しくは該複合糖 質の薬理学的に許容されうる塩、該糖鎖の合成に係る酵素及び該酵素をコードする 核酸力 なる群より選ばれた少なくとも 1種を含有する、食品又は飲料に関する。本 発明の第 4の発明において、食品又は飲料としては、神経変性疾患、痴呆症又は脳 腫瘍の治療用若しくは予防用に用いられる食品又は飲料、前記神経変性疾患、痴 呆症又は脳腫瘍の治療若しくは予防を補助するための食品又は飲料、学習及び Z 又は記憶能力の向上用若しくは改善用に用いられる食品又は飲料、学習及び Z又 は記憶能力の向上若しくは改善を補助するための食品又は飲料等が例示される。
[0013] 本発明の第 5の発明は、バイセクティング GlcNAcを有する糖鎖、該糖鎖を構造中 に有する複合糖質、該糖鎖若しくは該複合糖質の誘導体、該糖鎖若しくは該複合糖
質の薬理学的に許容されうる塩、該糖鎖の合成に係る酵素及び該酵素をコードする 核酸力 なる群より選ばれた少なくとも 1種を検体に投与することを特徴とする神経突 起伸長の誘導方法に関する。
[0014] 本発明の第 1〜5の発明において、バイセクティング GlcNAcを有する糖鎖としては
、下記式(1) :
[0015] [化 1] 士 GlcNAcpl-2Manal\
0
GlcNAc l-4Man l-R1 (1)
3
土 GlcNAcpi-2Mantxl'
[0016] (式中、 R1は、糖残基を示し、士は、 GlcNAc残基の有無を意味する)
で表される糖鎖が例示される。
[0017] すなわち、本発明の要旨は、
〔1〕 バイセクティング GlcNAcを有する糖鎖、該糖鎖を構造中に有する複合糖質、 該糖鎖の誘導体、該複合糖質の誘導体、該糖鎖の薬理学的に許容されうる塩、該複 合糖質の薬理学的に許容されうる塩、該糖鎖の合成に係る酵素及び該酵素をコード する核酸力 なる群より選ばれた少なくとも 1種を有効成分として含有してなる、神経 突起伸長誘導剤、
〔2〕 バイセクティング GlcNAcを有する糖鎖力 下記式(1):
[0018] [化 2] 土 GlcNAcpl-2Manak
GlcNAcpi- 4Manpl-Ri (1)
3
土 GlcNAceijManal7
[0019] (式中、 R1は、糖残基を示し、士は、 GlcNAc残基の有無を意味する)
で表される糖鎖である、前記〔1〕記載の神経突起伸長誘導剤、
〔3〕 バイセクティング GlcNAcを有する糖鎖力 下記式(2):
[0020] [化 3]
R2-Manal\
6
GlcNAcpi-4Man l-R1 (2)
3
R3- Manod,
[0021] 〔式中、 R1は、糖残基を示し、 R2及び R3は、 β 1—2結合、 β 1—4結合又は 1—6 結合を介して、マンノースに結合していてもよい GlcNAc残基を示す (但し、 R2及び R 3が GlcNAc残基を有する場合、 1又は 2個の R2及び R3が直接マンノースに結合して いてもよい)〕
で表される糖鎖である、前記〔1〕記載の神経突起伸長誘導剤、
〔4〕 バイセクティング GlcNAcを有する糖鎖、該糖鎖を構造中に有する複合糖質、 該糖鎖の誘導体、該複合糖質の誘導体、該糖鎖の薬理学的に許容されうる塩、該複 合糖質の薬理学的に許容されうる塩、該糖鎖の合成に係る酵素及び該酵素をコード する核酸力 なる群より選ばれた少なくとも 1種を有効成分として含有してなる、神経 疾患治療剤又は予防剤、
〔5〕 バイセクティング GlcNAcを有する糖鎖力 下記式(1)
[0023] (式中、 R1は、糖残基を示し、士は、 GlcNAc残基の有無を意味する)
で表される糖鎖である、前記〔4〕記載の神経疾患治療剤又は予防剤、
〔6〕 バイセクティング GlcNAcを有する糖鎖力 下記式(2)
[0024] [化 5]
R2-Manal\
6
GlcNAcpl^Manpl-R1 (2)
3
R3-Manotl,
[0025] 〔式中、 R1は、糖残基を示し、 R2及び R3は、 β 1—2結合、 β 1—4結合又は 1—6 結合を介して、マンノースに結合していてもよい GlcNAc残基を示す (但し、 R2及び R 3が GlcNAc残基を有する場合、 1又は 2個の R2及び R3が直接マンノースに結合して いてもよい)〕
で表される糖鎖である、前記〔4〕記載の神経疾患治療剤又は予防剤、
〔7〕 神経変性疾患、痴呆症又は脳腫瘍の治療又は予防に使用される、前記〔4〕
〔6〕いずれか 1項に記載の神経疾患治療剤又は予防剤、
〔8〕 バイセクティング GlcNAcを有する糖鎖、該糖鎖を構造中に有する複合糖質、 該糖鎖の誘導体、該複合糖質の誘導体、該糖鎖の薬理学的に許容されうる塩、該複 合糖質の薬理学的に許容されうる塩、該糖鎖の合成に係る酵素及び該酵素をコード する核酸力もなる群より選ばれた少なくとも 1種を有効成分として含有してなる、学習 及び Z又は記憶能力の向上剤又は改善剤、
〔9〕 バイセクティング GlcNAcを有する糖鎖力 下記式(1)
[0026] [化 6]
土 GlcNAcpl-2M
GlcNAcpl- AManpl-R1 fl)
3
土 GlcNAcei-SMana 7
[0027] (式中、 R1は、糖残基を示し、士は、 GlcNAc残基の有無を意味する)
で表される糖鎖である、前記〔8〕記載の学習及び Z又は記憶能力の向上剤又は改 善剤、
〔10〕 バイセクティング GlcNAcを有する糖鎖力 下記式(2)
[0028] [化 7]
R2-Mana
6
GlcNAcpi^Manpi-R1 (2)
3
R^Manal
[0029] 〔式中、 R1は、糖残基を示し、 R2及び R3は、 β 1—2結合、 β 1—4結合又は 1—6 結合を介して、マンノースに結合していてもよい GlcNAc残基を示す (但し、 R2及び R 3が GlcNAc残基を有する場合、 1又は 2個の R2及び R3が直接マンノースに結合して いてもよい)〕
で表される糖鎖である、前記〔8〕記載の学習及び Z又は記憶能力の向上剤又は改 善剤、
〔11〕 バイセクティング GlcNAcを有する糖鎖、該糖鎖を構造中に有する複合糖質 、該糖鎖の誘導体、該複合糖質の誘導体、該糖鎖の薬理学的に許容されうる塩及び 該複合糖質の薬理学的に許容されうる塩カゝらなる群より選ばれた少なくとも 1種を含 有してなる、食品又は飲料、
〔12〕 バイセクティング GlcNAcを有する糖鎖力 下記式(1):
[0030] [化 8]
± GlcNAc l-2Man l\
6
GlcNAc i^Man i-R1 (1)
3
士 GlcNAcpUMancdZ
[0031] (式中、 R1は、糖残基を示し、士は、 GlcNAc残基の有無を意味する)
で表される糖鎖である、前記〔11〕記載の食品又は飲料、
〔13〕 バイセクティング GlcNAcを有する糖鎖力 下記式(2):
[0032] [化 9]
[0033] 〔式中、 R1は、糖残基を示し、 R2及び R3は、 β 1—2結合、 β 1—4結合又は 1—6
結合を介して、マンノースに結合していてもよい GlcNAc残基を示す (但し、 R2及び R 3が GlcNAc残基を有する場合、 1又は 2個の R2及び R3が直接マンノースに結合して いてもよい)〕
で表される糖鎖である、前記〔11〕記載の食品又は飲料、
〔14〕 神経変性疾患、痴呆症又は脳腫瘍の治療又は予防に使用される、前記〔11〕 〔13〕いずれか 1項に記載の食品又は飲料、
[ 15] 学習及び Z又は記憶能力の改善又は予防に使用される、前記〔11〕〜〔13〕 いずれか 1項に記載の食品又は飲料、
〔16〕 バイセクティング GlcNAcを有する糖鎖、該糖鎖を構造中に有する複合糖質 、該糖鎖の誘導体、該複合糖質の誘導体、該糖鎖の薬理学的に許容されうる塩、該 複合糖質の薬理学的に許容されうる塩、該糖鎖の合成に係る酵素及び該酵素をコ ードする核酸力 なる群より選ばれた少なくとも 1種を検体に投与することを特徴とす る、神経突起伸長の誘導方法、
〔17〕 バイセクティング GlcNAcを有する糖鎖力 バイセクティング GlcNAcを有する 糖鎖が、下記式(1) :
[0034] [化 10] 土 GlcNAcp l-2M 1\
o
GlcNAcpl-4Manpl-R1 (1)
3
士 GlcNAcpl-SManal7
[0035] (式中、 R1は、糖残基を示し、士は、 GlcNAc残基の有無を意味する)
で表される糖鎖である、前記〔16〕記載の神経突起伸長の誘導方法、
〔18〕 バイセクティング GlcNAcを有する糖鎖力 下記式(2)
GlcNAcpl-4Man i-R1 (2)
3
R3-Manal'
[0037] 〔式中、 R1は、糖残基を示し、 R2及び R3は、 β 1—2結合、 β 1—4結合又は 1—6
結合を介して、マンノースに結合していてもよい GlcNAc残基を示す (但し、 R2及び R 3が GlcNAc残基を有する場合、 1又は 2個の R2及び R3が直接マンノースに結合して いてもよい)〕
で表される糖鎖である、前記〔16〕記載の神経突起伸長の誘導方法、
〔19〕 神経疾患を罹患した個体又は該神経疾患に罹患するおそれのある個体に、 下記式(2) :
[0038] [化 12]
R2-Manalv
6
GlcNAc l- AManpl-R1 (2)
3
R3-Manal
[0039] 〔式中、 R1は、糖残基を示し、 R2及び R3は、 β 1—2結合、 β 1—4結合又は 1—6 結合を介して、マンノースに結合していてもよい GlcNAc残基を示す (但し、 R2及び R 3が GlcNAc残基を有する場合、 1又は 2個の R2及び R3が直接マンノースに結合して いてもよい)〕
で表されるバイセクティング GlcNAcを有する糖鎖、該糖鎖を構造中に有する複合糖 質、該糖鎖の誘導体、該複合糖質の誘導体、該糖鎖の薬理学的に許容されうる塩、 該複合糖質の薬理学的に許容されうる塩、該糖鎖の合成に係る酵素及び該酵素を コードする核酸力もなる群より選ばれた少なくとも 1種を投与することを特徴とする、神 経疾患治療又は予防方法、
〔20〕 学習能力の向上又は改善を必要とする個体に、下記式(2):
[0040] [化 13]
R2-Man l\
6
GlcNAcpi- AManpi-R1 (2)
3
R3-Manal7
[0041] 〔式中、 R1は、糖残基を示し、 R2及び R3は、 β 1—2結合、 β 1—4結合又は 1—6 結合を介して、マンノースに結合して 、てもよ 、GlcNAc残基を示す〕
で表されるバイセクティング GlcNAcを有する糖鎖、該糖鎖を構造中に有する複合糖
質、該糖鎖の誘導体、該複合糖質の誘導体、該糖鎖の薬理学的に許容されうる塩、 該複合糖質の薬理学的に許容されうる塩、該糖鎖の合成に係る酵素及び該酵素を コードする核酸力もなる群より選ばれた少なくとも 1種を供給することを特徴とする、学 習及び Z又は記憶能力の向上又は改善方法、
〔21〕 神経疾患の治療又は予防のための医薬の製造のための、下記式(2):
[0042] [化 14]
R2-Man l\
6
GlcNAc i^Manpi-R1 (2)
3
R3-ManodZ
[0043] 〔式中、 R1は、糖残基を示し、 R2及び R3は、 β 1—2結合、 β 1—4結合又は 1—6 結合を介して、マンノースに結合していてもよい GlcNAc残基を示す (但し、 R2及び R 3が GlcNAc残基を有する場合、 1又は 2個の R2及び R3が直接マンノースに結合して いてもよい)〕
で表されるバイセクティング GlcNAcを有する糖鎖、該糖鎖を構造中に有する複合糖 質、該糖鎖の誘導体、該複合糖質の誘導体、該糖鎖の薬理学的に許容されうる塩、 該複合糖質の薬理学的に許容されうる塩、該糖鎖の合成に係る酵素及び該酵素を コードする核酸力 なる群より選ばれた少なくとも 1種の使用、並びに
〔22〕 学習及び Z又は記憶能力の向上剤又は改善剤の製造のための、下記式 (2)
[0044] [化 15]
[0045] 〔式中、 R1は、糖残基を示し、 R2及び R3は、 β 1—2結合、 β 1—4結合又は 1—6 結合を介して、マンノースに結合していてもよい GlcNAc残基を示す (但し、 R2及び R 3が GlcNAc残基を有する場合、 1又は 2個の R2及び R3が直接マンノースに結合して いてもよい)〕
で表されるバイセクティング GlcNAcを有する糖鎖、該糖鎖を構造中に有する複合糖 質、該糖鎖の誘導体、該複合糖質の誘導体、該糖鎖の薬理学的に許容されうる塩、 該複合糖質の薬理学的に許容されうる塩、該糖鎖の合成に係る酵素及び該酵素を コードする核酸力 なる群より選ばれた少なくとも 1種の使用、
に関する。
発明の効果
本発明によりバイセクティング GlcNAcを有する糖鎖、複合糖質、それらの誘導体 及び Z又はそれらの塩を含有する医薬、試薬、食品又は飲料が提供される。すなわ ち、本発明の神経突起伸長誘導剤によれば、神経突起の伸長に基づいて新たな神 経ネットワークの形成を促すことができるという優れた効果を奏する。また、本発明の 神経疾患治療剤又は予防剤によれば、神経変性を伴う疾患の症状を改善することが でき、また、前記疾患の発症又は進行を抑制することができるという優れた効果を奏 する。さらに、本発明の学習及び Z又は記憶能力の向上剤又は改善剤によれば、動 物個体の学習及び Z又は記憶能力を伸ばすことができ、また、種々の要因で低下し た個体の学習及び Z又は記憶能力の回復を行なうことができるという優れた効果を 奏する。本発明の食品又は飲料によれば、該食品又は飲料の摂取により神経疾患 の治療又は予防効果、学習及び Z又は記憶能力の向上又は改善効果が得られると いう優れた効果を奏する。さらに本発明の神経突起伸長の誘導方法によれば、軸索 又は榭状突起に分化する神経突起の生成及び Z又は伸長を誘導することができると いう優れた効果を奏する。本発明の神経疾患治療又は予防方法によれば、神経変 性を伴う疾患の症状を改善することができ、また、前記疾患の発症又は進行を抑制 することができるという優れた効果を奏する。さらに、本発明の学習及び Z又は記憶 能力の向上又は改善方法によれば、動物個体の学習及び Z又は記憶能力を伸ば すことができ、また、種々の要因で低下した個体の学習及び z又は記憶能力の回復 を行なうことができるという優れた効果を奏する。また、本発明の神経疾患の治療又 は予防のための医薬の製造のための規定された糖鎖の使用によれば、前記神経疾 患治療又は予防方法を行なうに適した医薬の供給、神経疾患の治療又は予防を可 能にするという優れた効果を奏する。さらに、本発明の学習及び Z又は記憶能力の
向上剤又は改善剤の製造のための規定された糖鎖の使用によれば、前記学習及び
Z又は記憶能力の向上又は改善方法を行なうに適した学習及び Z又は記憶能力の 向上剤又は改善剤の供給、個体における学習及び Z又は記憶能力の向上又は改 善を可能にするという優れた効果を奏する。
図面の簡単な説明
[0047] [図 1]図 1は、 Gn(Gn)Gn-W-GPによる神経突起伸長誘導作用を示す図である。図中
、白バーは、神経伸長を示し、黒バーは、細胞伸展を示す。
[0048] [図 2]図 2は、 GnT-III遺伝子導入細胞における神経突起伸長を示す図である。
発明を実施するための最良の形態
[0049] 本発明は、バイセクティング GlcNAc (bisecting GlcNAc)構造を持つ糖鎖、該 糖鎖構造を有する複合糖質及び該糖鎖の合成に係る酵素が優れた神経突起伸長 作用を示すという本発明者らの驚くべき知見に基づく。
[0050] 本発明は、 1つの側面では、神経突起伸長誘導剤に関する。
[0051] 本発明の神経突起伸長誘導剤は、前記バイセクティング GlcNAcを有する糖鎖、 該糖鎖を構造中に有する複合糖質、該糖鎖若しくは該複合糖質の誘導体、該糖鎖 若しくは該複合糖質の薬理学的に許容されうる塩、該糖鎖の合成に係る酵素及び該 酵素をコードする核酸からなる群より選ばれる少なくとも 1種を有効成分として含有す ることを 1つの大きな特徴とする。したがって、本発明の神経突起伸長誘導剤によれ ば、神経突起伸長が望まれる部位等、例えば、神経損傷部位、神経変性が認められ る部位等において、高い神経突起伸長誘導効果を得ることができ、神経突起を効率 よく伸長させることができるという優れた効果を発揮する。
[0052] なお、未分化の神経細胞の分化では、まず、神経突起の伸長が起こり、次いで、該 神経突起のうちの 1本が急速に伸長して、軸索の性質を示すようになり、さらに残りの 神経突起が榭状突起としての性質を獲得する。こうして生成した細胞の軸索と榭状 突起とが他の細胞との間でシナプスを形成して神経回路が構築される。本発明の神 経突起伸長誘導剤によれば、誘導された神経突起力 軸索又は榭状突起が生成し 、新たな神経ネットワークの形成が促されるという優れた効果を発揮する。さら〖こは、 本発明の神経突起伸長誘導剤によれば、神経突起を伸長させることにより、神経細
胞の再生、神経変性疾患等の神経疾患の治療、予防等が可能になる。
[0053] 一般に、糖タンパク質の糖鎖は、タンパク質のァスパラギン残基に結合して 、る N —グリコシド結合型糖鎖 (本明細書では、「N—ダリカン」ともいう)と、タンパク質のセリ ン残基又はスレオニン残基の水酸基を介して結合している O—グリコシド結合型糖鎖 (「0—ダリカン」ともいう)とに分類される。前記 N—ダリカンは、その還元末端糖残基 である N—ァセチルダルコサミン(GlcNAc)がペプチド鎖上のァスパラギンのァミノ 基と結合しており、還元末端 N—ァセチルダルコサミンのァノメリック水酸基はとれて、 〔糖鎖— NH— CO— CH— CH (NH ) COOH〕という形の結合状態を形成している
2 2
[0054] N—グリカンは、さらに、シアル酸、ガラクトース、マンノース、フコース、 N—ァセチ ルダルコサミン等の糖残基カゝらなる複合型糖鎖 (「N—ァセチルラクトサミン型糖鎖」と もいう)、マンノース(Man)と N—ァセチルダルコサミンとからなるオリゴマンノース型 糖鎖、該 N—ァセチルラクトサミン型糖鎖とオリゴマンノース型糖鎖とが合わさつたよう な構造をもつ混成型糖鎖 (「ハイブリッド型糖鎖」とも 、う)の 3つに分類されて 、る。
[0055] 本発明におけるバイセクティング GlcNAcを有する糖鎖としては、上記の複合型糖 鎖又は混成型糖鎖に分類される糖鎖であって、該糖鎖の βマンノース残基の 4位の 水酸基に結合した Ν—ァセチルダルコサミンを有する糖鎖等が挙げられる。
[0056] 本発明に使用できる複合型のバイセクティング GlcNAcを有する糖鎖としては、例 えば、下記式(1) :
[0057] [化 16] 土 GlcNAcpl-2Manal\
6
GlcNAcpl-AManpl-R1 (1)
3
土 GlcNAcpl-2Manal'
[0058] (式中、 Rは、糖残基を示し、士は、 GlcNAc残基の有無を意味する)
に示される糖鎖等が挙げられる。
[0059] なお、前記式(1)の糖鎖は、言い換えれば、下記式(2):
[0060] [化 17]
[0061] 〔式中、 R1は、糖残基を示し、 R2及び R3は、 β 1—2結合、 β 1—4結合又は 1—6 結合を介して、マンノース(Man)に結合していてもよい GlcNAc残基を示す (但し、 R 2及び R3が GlcNAc残基を有する場合、 1〜3個の R2及び R3が直接マンノース(Man )に結合していてもよい)〕
で表される糖鎖に包含される糖鎖である。
[0062] 具体的には、例えば、下記式(3):
GlcNAcpl-4Man i-R3 f3)
3
GlcNAc i-2ManaT R3
[0064] 〔式中、 R1は、任意の糖残基を示し、 R2は、マンノース(Man)と β 1— 6結合又は β 1 —4結合を介して結合していてもよい GlcNAc残基を示し、 R3は、マンノース(Man) と j8 1—4結合又は |8 1—6結合を介して結合していてもよい GlcNAc残基を示す〕 で表される糖鎖が挙げられる。
[0065] 前記糖鎖として、より具体的には、例えば、下記式 (4):
[0066] [化 19]
GlcNAcpl-2Man l\
6
GlcNAc i-4Man l-R1 (4)
3
GlcNAc i-2Man l
[0067] (式中、 R1は、糖残基を示す)
で表されるような 2本鎖構造を持つ糖鎖、下記式 (5)若しくは(6)
[0068] [化 20]
GlcNAcp l-2M 1\
6
GlcNAc i-4Manpi-R1 (5)
3
GlcNAceUManctl
4
GlcNAcpi,
[0069] (式中、 R1は、糖残基を示す)
若しくは
[0070] [化 21]
GlcNAcP K
6
GlcNAcpi-2Manal
GlcNAc i-4Man i-R1 (6)
3
GlcNAcpUManctlZ
[0071] (式中、 R1は、糖残基を示す)
で表されるような 3本鎖構造を持つ糖鎖、下記式 (7)
[0072] [化 22]
GlcNAcpl-4Man i-R1 (Ί)
3
GlcNAc l-ZManal7
4
GlcNAcpl,
[0073] (式中、 R1は、糖残基を示す)
で表されるような 4本鎖構造を持つ糖鎖が例示される。なお、本発明においては、酵 素的に糖鎖の合成を行なう場合には、製造の容易性の観点から、好適には、 2本鎖 構造を持つ糖鎖を使用することができる。
[0074] 本発明に用いられる糖鎖としては、上記の複合型糖鎖の他、バイセクティング GlcN
Acを有する混成型糖鎖も例示される。本発明に用いられるノイセクティング GlcNAc を有する混成型糖鎖としては、 2本鎖構造を有する糖鎖、 3本鎖構造を有する糖鎖、 4本鎖構造を有する糖鎖等が挙げられる。
[0075] 前記式(1)〜(7)で表される糖鎖中の R1として表される糖残基としては、例えば、 G1 cNAc残基、グルコース残基、フコース残基、シアル酸残基、 N—ァセチルガラタトサ ミン残基、ガラクトース残基、マンノース残基、 N—ァセチルマンノサミン残基、キシロ ース残基等が挙げられる。
[0076] 前記式(2)で表される糖鎖中の R2及び R3は、 GlcNAc残基を示す。前記 R2及び R3 は、マンノース残基と、 j8 1— 2結合、 |8 1— 4結合又は |8 1— 6結合を介して、結合し ていてもよぐ前記式(2)で表される糖鎖中に存在しなくてもよい。また、前記式(2) で表される糖鎖中に R2が存在する場合、 1つのマンノース残基に対して、 1又は 2個 の R2が、結合しうる。 2個の R2が、 1つのマンノース残基に対して結合している場合、 該 2個の R2は、互いに異なる結合様式でマンノース残基に結合する。一方、前記式( 2)で表される糖鎖中に R3が存在する場合、該 R3も、前記 R2と同様に、 1つのマンノー ス残基に対して、 1又は 2個の R3力 結合しうる。また、 2個の R3が、 1つのマンノース 残基に対して結合している場合、前記 R2と同様に、該 2個の R3は、互いに異なる結合 様式でマンノース残基に結合する。
[0077] また、本発明に用いられるノイセクティング GlcNAcを有する糖鎖としては、上記式
(4)〜(6)で表されるような非還元末端が N—ァセチルダルコサミンである糖鎖が挙 げられる力 本発明における所望の効果を発現するものであれば、これらに限定され るものではない。すなわち、本発明に用いられるバイセクティング GlcNAcを有する 糖鎖は、該糖鎖の非還元末端側が、ガラクトース、シアル酸、フコース、グルクロン酸 、 GlcNAc,マンノース等でさらに修飾されている糖鎖であってもよい。
[0078] 本発明にお 、て、前記バイセクティング GlcNAcを有する糖鎖を構造中に有する複 合糖質とは、バイセクティング GlcNAcを有する糖鎖が任意のタンパク質やペプチド や脂質等に付加されている化合物を示す。すなわち、本発明に用いられるノイセク ティング GlcNAcを有する糖鎖を構造中に有する複合糖質としては、糖ペプチド、糖 タンパク質、糖脂質等が例示される。
[0079] 本発明に用いられるバイセクティング GlcNAcを有する糖鎖又は該糖鎖を構造中 に有する複合糖質 (以下、「バイセクティング GlcNAcを有する糖鎖又は複合糖質」と 称する)の製造方法としては、所望の効果を発現する糖鎖又は複合糖質が得られれ ばよぐ特に限定されないが、例えば、天然物力 得られたバイセクティング GlcNAc を有さない糖鎖や複合糖質に人工的にノイセクティング GlcNAcを導入する方法等 が挙げられる。バイセクティング GlcNAcの導入は、特に限定されないが、 N—ァセ チルダルコサミ-ルトランスフェラーゼ ΠΙ (本明細書では、「GnT— III」ともいう)を使 用して酵素的に行われうる。
[0080] 以下、 GnT— IIIによる酵素的なバイセクティング GlcNAcの導入について詳細に 述べる。まず、 GnT— IIIの基質となる糖鎖又は複合糖質を取得する。
[0081] 前記基質として用いられる複合糖質として、糖タンパク質を取得する場合は、公知 の糖タンパク質の製造方法を用いることができる。例えば、公知の方法により、仔牛 血清フェツイン、トランスフェリン、 γ—グロブリン等を製造することができる。
[0082] また、前記基質として用いられる複合糖質として、糖ペプチドを取得する場合は、上 述した糖タンパク質をトリプシン、リジルエンドべプチダーゼ、キモトリブシン等のプロ テアーゼ等の酵素を用いてタンパク質限定加水分解により分解することによって、糖 ペプチドを得ることができる。糖タンパク質をプロテアーゼでタンパク質限定加水分解 により分解する際に、透析膜や限外ろ過膜の中で酵素反応を行うことによって、酵素 と分解して生じた糖ペプチドを容易に分離することができる。さら〖こ、分解後のぺプチ ド、糖ペプチド混合物から、遠心分離、ゲルろ過法、イオン交換クロマトグラフィー、疎 水クロマトグラフィー、レクチンァフィユティークロマトグラフィー等の精製手段によって 目的の糖ペプチドを精製することができる。
[0083] また、前記基質として、ほ乳類の卵子、鳥類、魚類等の卵に存在する遊離の糖ぺプ チドを使用することもできる。この場合は、卵黄部分から、溶媒抽出、遠心分離、ゲル ろ過法、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、レクチンァフィ-ティ 一クロマトグラフィー等の精製手段によって目的の糖ペプチドを精製することができる
。卵からの糖ペプチドを取得する場合の例を以下に述べる。 -ヮトリ卵黄に等量の水 をカロえた後、フエノール Ζ水(9 : 1)混合液を 1Ζ10量添加して良く撹拌する。ついで
、得られた混合物を、遠心分離に供して上清を回収する。得られた上清を濃縮後、セ フアデックス G— 50を用いたゲルろ過クロマトグラフィーを行って、フエノール硫酸法 による中性糖の呈色反応で陽性となった画分^^める。これにより、 2本鎖型の複合 型糖鎖を持つ糖ペプチドを得ることができる。このようにして得られる糖ペプチド (配 列番号: 1)の構造を、下記式 (8)に示す。
[0084] [化 23]
Lys (NH2)
Neu Ac 2-6Gaip 1 -4GlcNAcP 1 -2Manal\ Val
6 Ala
Manpi-4GlcNAcpi-4 GlcNAc i-Asn
3 Lys
ΝεϋΑεα2-6θ3ΐ 1-401οΝΑςβ1-2Μ3ηα1 Thr (COOH)
(8)
[0085] また、基質として用いられる糖鎖を取得する場合は、前述の仔牛血清フ ツイン、ト ランスフェリン、 Ί—グロブリン等の糖タンパク質力もヒドラジン分解等の化学的方法 ゃグリコべプチダーゼ Α (アーモンド由来、例えば、生化学工業株式会社製)、グリコ ぺプチダーゼ F (フラボバタテリゥム由来、「PNGase」ともいう。例えば、タカラバイオ 株式会社製)等を用いる酵素的手法を用いて、複合型糖鎖を遊離することができる( 糖蛋白質糖鎖研究法、生物化学実験法 23、学会出版センター発行、 1989年)。
[0086] 上記のようにして得られた糖鎖又は複合糖質に GnT— IIIを作用させる場合には、 通常、これらの非還元末端から、シアル酸、ガラクトース残基又はフコース残基を除 去する。非還元末端の糖残基の除去方法には公知の方法を使用すればよぐ例え ば、シアル酸の除去は、例えば、希塩酸、希硫酸等の無機酸の希薄溶液中で、 50 °Cから 100°C、 10分から 2時間程度、好ましくは、 0. 025-0. 1Nの塩酸溶液又は 0 . 025-0. 1Nの硫酸溶液中で 80°C、 1時間加熱することによってシアル酸を遊離さ せることにより行なわれうる。酵素的な方法で糖残基を除去する場合には、シァリダ一 ゼ、ガラクトシダーゼ、フコシダーゼ等の酵素処理によって、シアル酸残基、ガラタト ース残基、フコース残基等を除去する。これにより、 GnT— IIIの好適な基質となる非 還元末端が GlcNAcである糖鎖や複合糖質を得ることができる。
[0087] ここで用いられるシァリダーゼとして、例えば、アリスロバクタ一 ウレァファシエンス( Arthrobacter ureafaciens)由来のシァリダーゼ、クロストリジゥム ノ ーフリンジェ
ンス(Clostridium perfringens)由来のシァリダーゼ等の基質特異性の広 、酵素 が好適に用いられる。また、ガラクトシダーゼとして、例えば、ナタ豆由来の j8—ガラ クトシダーゼ、ァスペルギルス ナイジャー(Aspergillus niger)由来の j8—ガラタト シダーゼ等の基質特異性の広い酵素が好適に用いられる。フコシダーゼとして、例 えば、ストレプトマイセス スピーシーズ 142 (Streptomyces sp. 142)株由来の aーフコシダーゼ、ゥシ腎臓由来の α—フコシダーゼ等を用いることができる。
[0088] このようにして得られた非還元末端が GlcNAcである糖鎖や複合糖質に、 GnT— II Iを UDP— GlcNAcとともに作用させて、バイセクティング GlcNAcを酵素的に導入 する。この際、所望により、 N—ァセチルダルコサミニルトランスフェラーゼ IV (本明細 書では、「GnT— IV」ともいう)、 N—ァセチルダルコサミ-ルトランスフェラーゼ V (本 明細書では、「GnT—V」ともいう)を UDP— GlcNAcとともに作用させることにより、 3 本鎖構造又は 4本鎖構造を有する様々な糖鎖又は複合糖質を取得することができる
[0089] 前記 GnT— III、 GnT— IV及び GnT— Vとして、特許第 2789283号、特開平 6— 197756号、国際公開第 98Z26053号パンフレット等に記載の精製酵素が用いら れる。
[0090] また、前記 GnT— III、 GnT— IV及び GnT— Vとして、 GnT— IIIをコードする核酸
(遺伝子)、 GnT— IVをコードする核酸 (遺伝子)、 GnT— Vをコードする核酸 (遺伝 子)でそれぞれ形質転換した動物細胞等から調製された細胞溶解液、粗酵素液又は 精製酵素を用いることもできる。例えば、ァクチンプロモーター下流に、 GnT— ΠΙ遺 伝子、 GnT— IV遺伝子又は GnT— V遺伝子を連結したコンストラクトを含有し、ネオ マイシン耐性遺伝子を持つ動物細胞用発現ベクターを、 B16メラノーマ細胞、ラット 副腎褐色細胞腫由来 PC 12細胞等にエレクト口ポレーシヨン法、リポフエクトァミン等 によってトランスフエタトし、得られた細胞について、 G418耐性を指標として、形質転 換細胞をスクリーニングすることによって、 GnT— III、 GnT— IV又は GnT— Vを発現 する細胞が得られる。得られた細胞を超音波処理して、不溶物を遠心分離によって 除去した上清を粗酵素液として使用することができる。前記粗酵素液、又は精製酵素 を用いた酵素反応により、本発明に用いられる糖鎖化合物やその誘導体を合成した
後、得られた酵素反応溶液から、例えば、商品名:セフアデックス G15 (アマシャム' バイオサイエンス社製)を用いたゲルろ過クロマトグラフィー、商品名:セルロースカー トリッジ (タカラバイオ社製)を用いた分離により、糖鎖化合物又はその誘導体を、酵 素、糖ヌクレオチド、塩類等力も分離精製することができる。
[0091] 本発明にお 、ては、ノイセクティング GlcNAcを有する糖鎖又は複合糖質としては 、例えば、非還元末端力 SGlcNAcである糖鎖又は複合糖質等が挙げられる。また、 本発明においては、バイセクティング GlcNAcを有する糖鎖又は複合糖質は、前記 適宜、非還元末端側がフコース、ガラクトース、シアル酸、グルクロン酸、 GlcNAc、 マンノース等で修飾された糖鎖又は複合糖質であってもよい。
[0092] また、本発明に用いられるノイセクティング GlcNAcを有する糖鎖や複合糖質には 、上記の酵素反応物のほかに、天然物より取得されたバイセクティング GlcNAcを有 する糖鎖又は複合糖質等も含まれる。ノイセクティング GlcNAcを有する糖鎖又は複 合糖質の選択的な取得方法としては、バイセクティング GlcNAcを有する糖鎖に特 異的に結合するレクチン、例えば、インゲンマメレクチン (E4PHA)等を使用する方 法が例示される。また、本発明においては、公知の方法により得られたバイセクティン グ GlcNAcを有する糖タンパク質、例えば、 γ—ダルタミルトランスぺプチダーゼ、 γ グロブリン等を、そのまま用いてもよぐ適宜処理を施して得られた糖ペプチド又は 糖鎖として用いてもよい。このようにして得られた糖鎖や複合糖質において、その非 還元末端側の糖残基は、特に限定されないが、例えば、 GlcNAc残基、ガラクトース 残基、シアル酸残基、フコース残基、マンノース残基等のいずれの糖残基であっても よい。
[0093] また、本発明に用いられるノイセクティング GlcNAcを有する糖鎖又は複合糖質は 、合成により製造された糖鎖又は複合糖質であってもよい。
[0094] 本発明にお 、ては、神経突起伸長作用を発揮するものであれば、前記バイセクティ ング GlcNAcを有する糖鎖又は複合糖質の誘導体を用いることもできる。本発明に おいて、前記誘導体としては、所望の活性、すなわち、神経突起伸長作用が失われ ない範囲で、前記糖鎖又は複合糖質を修飾して得られたィ匕合物が例示される。前記 修飾としては、特に本発明を限定するものではないが、非天然型糖残基の導入、標
識ィ匕合物又はリガンド類 (ピオチン、ヒスチジン—タグ等)の付加、担体への固定化等 が例示される。
[0095] 糖鎖の誘導体の場合には、例えば、還元アミノ化反応によってその還元末端とアミ ノ基を有する化合物とを結合させることによって誘導体を得ることができる。本発明に おいては、例えば、糖鎖に疎水的な性質を付与するために、脂肪族ァミン、スフイン ゴシン、フォスファチジルエタノールアミン等を、前記糖鎖の還元末端を介して結合さ せてもよい。また、複合糖質 (糖ペプチド)の誘導体の場合には、例えば、ペプチド部 分のリジン残基のアミノ基又は N末端アミノ基を利用して、脂肪酸、ピオチン等を結合 させること〖こよって、誘導体を得ることができる。
[0096] 本発明に用いられる糖鎖、複合糖質、それらの誘導体等の純度及び構造を確認す るためには、糖鎖の場合は還元末端を 2—アミノビリジンゃピレンヒドラジン等の蛍光 物質で標識し、得られた標識物を、 HPLC等で分析すること、複合糖質、例えば、糖 ペプチドの場合は、ペプチド部分に、ダンシルク口リド、 FITC等の蛍光物質で標識し 、得られた標識物を、 HPLC等で分析することによって、収量及び純度の確認を行う ことができる。なお、このような標識物についても本発明に用いられる誘導体に包含さ れる。また、 LC— MS分析又は TOF— MS分析を行って分子量を求めることによつ て、本発明に用いられる糖鎖、複合糖質、それらの誘導体の構造を確認することがで きる。
[0097] 本発明に用いられるバイセクティング GlcNAcを有する糖鎖、複合糖質及びそれら の誘導体は、安定性及び水への溶解性を向上させるために塩の形態にすることもで き、特に限定されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニ ゥム塩、塩化物、炭酸塩等の塩の形態で提供される。前記糖鎖の塩、複合糖質の塩 又はそれらの誘導体の塩は、例えば、商品名:ダウエックス 50W、商品名:ダウエック ス MR3 (ともにダウ ·ケミカル社製)等の一般的な脱塩用イオン交換榭脂を用いて、遊 離状態の糖鎖、複合糖質又はそれらの誘導体として得ることができ、また、他の塩に 交換することちでさる。
[0098] 本発明の神経突起伸長誘導剤による神経突起伸長の誘導効果は、例えば、神経 系細胞、好ましくは、例えば、神経芽細胞腫細胞、クロム親和性細胞腫細胞、グリア
細胞腫細胞等を、被験対象となる試料の存在下に培養し、得られた細胞を観察する ことにより評価され、ここで、神経突起を持つ細胞が存在する場合、該試料が、神経 突起伸長誘導効果を有することの指標となる。また、同様の手法により、細胞伸展に おける作用を評価することもできる。
[0099] 前記神経系細胞としては、具体的には、例えば、マウス神経芽細胞腫細胞株であ る Neuro— 2a細胞(ATCC CCL—131)等、ヒト神経芽細胞腫細胞株である SK— N— SH細胞 (ATCC HTB 11)、 SH— SY5Y細胞、ラットクロム親和性細胞腫細 胞株である 1^12細胞(八1^じ CRL1721)等、ラットァストログリア細胞腫細胞株で ある C6細胞(ATCC CCL- 107)等が挙げられる。
[0100] 前記神経細胞の培養条件としては、特に限定されないが、 10重量% ゥマ血清と 5 重量% FCSとを含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、 0. 01重量% ポリ— L リジンコート培養ディッシュに 1 X 105個 Zディッシュとなるように接種し、 5 容積% CO存在下、 37°Cで培養する条件等が挙げられる。
2
[0101] また、培地中における被験対象の試料の濃度は、適宜設定されうる。
[0102] 細胞における神経突起の形成は、例えば、位相差顕微鏡等により観察されうる。な お、本発明においては、好ましくは、例えば、 3 m以上の神経突起を 2本以上持つ 細胞を「神経突起を持つ細胞」、位相差顕微鏡で観察したときに輝度が低 ヽ細胞を「 伸展した細胞」として評価される。
[0103] また、本発明の神経突起伸長誘導剤について、細胞に対する分化誘導能を評価し てもよい。前記分化誘導能は、前記神経系細胞を、被験対象の試料の存在下に培 養し、得られた細胞について、細胞の分ィ匕の指標となる各種マーカー、例えば、ニュ 一口フィラメント H等の発現の有無を測定することにより評価されうる。
[0104] 本発明に用いられるバイセクティング GlcNAcを有する糖鎖、複合糖質、それらの 誘導体及び Z又はそれらの塩 (以下、本発明の有効成分と称することがある)は、神 経突起伸長活性を有するため、神経突起伸長剤 (すなわち、神経突起伸長誘導剤) 、ひいては、神経疾患の治療に有効な治療剤又は予防剤並びに学習及び Z又は記 憶能力の向上剤又は改善剤として使用することができる。前記神経疾患は、神経変 性を伴う疾患を意味し、例えば、脳腫瘍 (例えば、神経損傷、神経機能の低下を伴う
脳腫瘍);アルッノヽイマ一病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、クロイツフェルト ヤコブ病、筋萎縮性側索硬化症等の神経変性疾患;痴呆症;脳虚血障害等の疾患 等が例示される。
[0105] さらに、本発明においては、前記バイセクティング GlcNAcを有する糖鎖の合成に 係る酵素及び当該酵素をコードする核酸を、前記有効成分として使用することもでき る。前記酵素としては、特に限定されないが、 GnT—ΠΙ等が例示される。前記 GnT —ΙΠをコードする核酸としては、ラット由来の GnT— IIIをコードする核酸 [Journal of Biological Chemistry,第 267卷、第 18199頁〜第 18204頁、 1992年〕、ヒト由来の GnT IIIをコードする核酸 [Journal of Biochemistry,第 113卷、第 692頁〜第 698頁、 1992 年〕等が挙げられる。
[0106] 前記 GnT— IIIによれば、 GnT— IIIが投与された細胞において、バイセクティング GlcNAcを有する糖鎖が合成され、それにより、神経突起伸長作用を発現するという 優れた効果を発揮する。また、前記 GnT— IIIをコードする核酸によれば、 GnT— III をコードする核酸が投与された細胞において、前記核酸力 GnT— IIIに翻訳され、 該 GnT— IIIにより、バイセクティング GlcNAcを有する糖鎖が合成され、それにより、 神経突起伸長作用を発現するという優れた効果を発揮する。
[0107] したがって、本発明は、他の側面では、神経疾患治療剤又は予防剤、痴呆症治療 剤又は予防剤、学習及び Z又は記憶能力の向上剤又は改善剤に関する。
[0108] また、本発明は、さらに他の側面では、神経疾患治療剤又は予防剤、痴呆症治療 剤又は予防剤、学習及び Z又は記憶能力の向上剤又は改善剤等の製造のための、 前記バイセクティング GlcNAcを有する糖鎖、特に、前記式(2)で表される糖鎖、該 糖鎖を構造中に有する複合糖質、該糖鎖の誘導体、該複合糖質の誘導体、該糖鎖 の薬理学的に許容されうる塩、該複合糖質の薬理学的に許容されうる塩、該糖鎖の 合成に係る酵素及び該酵素をコードする核酸からなる群より選ばれた少なくとも 1種 の使用に関する。
[0109] 前記ノイセクティング GlcNAcを有する糖鎖、複合糖質、それらの誘導体及び Z又 はそれらの塩により、神経突起を伸長させることができるため、個体、例えば、ヒト、非 ヒト動物等における神経疾患の治療又は予防、学習及び z又は記憶能力の向上又
は改善等が可能になる。
[oiio] 本発明の神経疾患治療剤又は予防剤、痴呆症治療剤又は予防剤、学習及び Z又 は記憶能力の向上剤又は改善剤は、注射剤、経口剤、軟膏剤等の通常用いられて
Vヽる製剤形態が!、ずれも使用できるが、好ましくは注射剤として患部へ直接投与され る。注射剤として調剤する場合は、本発明の糖鎖誘導体に PBS等の緩衝液、 pH調 製剤、生理食塩水、安定化剤等を添加して、常法により静脈内、皮内、皮下、筋肉内 、静脈内投与用注射剤を調製することができる。
[0111] 本発明の神経突起伸長誘導剤、神経疾患の治療剤又は予防剤、学習及び Z又は 記憶能力の向上剤又は改善剤が、バイセクティング GlcNAcを有する糖鎖、該糖鎖 を構造中に有する複合糖質、該糖鎖若しくは該複合糖質の誘導体及び該糖鎖若し くは該複合糖質の薬理学的に許容されうる塩力 なる群より選ばれた少なくとも 1種を 有効成分として含有するものである場合、患者 (例えば、体重、年齢、既往歴等)や 適応症例によって投与量は異なる力 例えば、注射剤として 1回あたり 0. 001〜: LOO mg程度の有効成分量となるように、投与することが好ま 、。
[0112] 本発明の神経突起伸長誘導剤、神経疾患の治療剤又は予防剤、学習及び Z又は 記憶能力の向上剤又は改善剤力 GnT— IIIを有効成分として含有するものである 場合、細胞への投与は、公知のタンパク質医薬に用いられる方法、例えば、注射剤と して、目的の細胞又はその周辺の組織に投与することにより行なわれうる。
[0113] 本発明の神経突起伸長誘導剤、神経疾患の治療剤又は予防剤、学習及び Z又は 記憶能力の向上剤又は改善剤が、 GnT— IIIをコードする核酸を有効成分として含 有するものである場合、細胞への投与は、公知の遺伝子導入方法により行なわれうる
[0114] 前記遺伝子導入方法としては、例えば、リン酸カルシウム法、マイクロインジェクショ ン法;エレクト口ポレーシヨン法、リポフエクシヨン法、リボソーム法のような物理化学的 方法;アデノウイルス、 SV40ウィルス、単純へルぺスウィルス、アデノ随伴ウィルス、 レトロウイルス、レンチウィルス等のウィルスベクターを使用する方法が挙げられる。物 理ィ匕学的方法においては、前記核酸を含む DNA断片、あるいは前記核酸が挿入さ れたベクター、例えば、プラスミドベクター力 細胞に導入される。継続的な効果が望
まれる場合には、アデノ随伴ウィルス、レトロウイルス、レンチウィルスのような目的遺 伝子を染色体に組み込む性質を有するウィルスベクターを使用することが好適であ る。
[0115] なお、生体への本発明の神経突起伸長剤、脳腫瘍'神経変性疾患'痴呆症、がん · 悪性腫瘍の治療剤又は予防剤、学習及び Z又は記憶能力の向上剤又は改善剤は 、有効成分である核酸を含む DNA断片又は適切なベクターに組み込んだ核酸とし て、投与が望まれる部位に投与してもよぐまた、前記核酸が導入された細胞を投与 が望まれる部位に移植してもよ 、。
[0116] GnT— III又は GnT— IIIをコードする核酸は、神経突起の伸長が望まれる細胞 (標 的細胞)の周辺の細胞に投与されれば、標的細胞に投与されな力つた場合であって もその周辺の細胞で生成されたノイセクティング GlcNAcを有する糖鎖力 標的細胞 に対しても神経突起伸長作用を発揮することから、本発明の目的を達成することがで きる。
[0117] 本発明の神経疾患治療剤又は予防剤は、バイセクティング GlcNAcを有する糖鎖 、該糖鎖を構造中に有する複合糖質、該糖鎖若しくは該複合糖質の誘導体、該糖鎖 若しくは該複合糖質の薬理学的に許容されうる塩、該糖鎖の合成に係る酵素及び該 酵素をコードする核酸からなる群より選ばれた少なくとも 1種を有効成分として含有す ることに 1つの大きな特徴がある。したがって、本発明の神経疾患治療剤又は予防剤 によれば、神経疾患に罹患した個体において、神経突起伸長を誘導し、それにより、 神経疾患を治療又は予防することができるという優れた効果を発揮する。
[0118] 本発明の神経疾患治療剤又は予防剤の薬理評価は、例えば、前記神経突起伸長 の誘導効果の評価と同様の手法によるインビト口での評価法;神経疾患モデル動物 を用いた評価法;神経疾患を罹患した個体におけるポジトロンェミッショントモグラフィ 一による解析;神経疾患を罹患した個体における脳磁場計測による脳機能計測;神 経疾患を罹患した個体における磁気共鳴機能描画による機能解析等により行なわれ うる。神経疾患モデル動物を用いた評価法は、例えば、マウス、ラット、ゥサギ、ィヌ、 サル等のモデル動物に、評価対象の薬剤を投与し、モデル動物における疾患に基 づく生理学的指標の変化及び Z又は生化学的指標の変化を診断すること、解剖学
的な検査による疾患部位を観察すること等により行なわれる。ここで、モデル動物に おいて、生理学的指標及び Z又は生化学的指標が、神経疾患モデル動物の供給 源となる正常動物 (すなわち、実質的に神経疾患を罹患していない個体)における生 理学的指標及び Z又は生化学的指標と同様の状態を示した場合、疾患部位におけ る疾患状態が、前記正常動物における対応部位と同様の状態である場合等が、評価 対象の薬剤が、神経疾患の治療又は予防効果を有することの指標となる。また、ポジ トロンェミッショントモグラフィーによる解析は、疾患部位において、例えば、神経伝達 物質、例えば、ドーノ《ミン、セロトニン、ヒスタミン、ノルアドレナリン、アセチルコリン、 オビエート、 γァミノ酪酸 (GABA)、グルタミン酸等の代謝回転、再取り込み部位等 を解析することにより行なわれうる。ここで、前記代謝回転等が、正常個体における対 応部位と同様の状態を示した場合、評価対象の薬剤が、神経疾患の治療又は予防 効果を有することの指標となる。
[0119] 本発明の学習及び Ζ又は記憶能力の向上剤又は改善剤は、バイセクティング Glc NAcを有する糖鎖、該糖鎖を構造中に有する複合糖質、該糖鎖若しくは該複合糖 質の誘導体、該糖鎖若しくは該複合糖質の薬理学的に許容されうる塩、該糖鎖の合 成に係る酵素及び該酵素をコードする核酸からなる群より選ばれた少なくとも 1種を 有効成分として含有することに 1つの大きな特徴がある。したがって、本発明の学習 及び Z又は記憶能力の向上剤又は改善剤によれば、学習及び Z又は記憶能力の 向上又は改善を必要とする個体において、神経突起伸長を誘導し、それにより、学 習及び Z又は記憶能力を向上又は改善させることができる。
[0120] なお、本明細書において、「学習及び Z又は記憶能力の向上」とは、正常個体、例 えば、ヒト、非ヒト動物等により日常的に発揮される学習及び Z又は記憶能力のレべ ルを、実質的に増加させることを意味する。また、「学習及び Z又は記憶能力の改善 」とは、神経疾患、脳虚血障害、外傷等により、学習及び Z又は記憶能力を実質的 に喪失した個体又は学習及び Z又は記憶能力が低下した個体において、学習及び Z又は記憶能力のレベルを、実質的に増加させることを意味する。
[0121] 本発明の学習及び Z又は記憶能力の向上剤又は改善剤の薬理評価は、例えば、 正常動物、学習及び Z又は記憶能力の低いモデル動物等を用いた評価法、学習能
力試験、記憶能力試験等により行なわれうる。前記正常動物、モデル動物等を用い た評価法は、例えば、マウス、ラット、ゥサギ、ィヌ、サル等の動物に、被験対象の薬 剤を投与し、ゴール地点にエサを置いた迷路を抜け出す時間を数回測定すること等 により行なわれうる。ここで、被験対象の薬剤を投与しない正常動物に比べ、該被験 対象の薬剤を投与した正常動物において、スタート地点力もエサを置いたゴール地 点までに要する時間の短縮がより大きい場合等が、該被験対象の薬剤が、学習及び
Z又は記憶能力の向上を示すことの指標となる。また、被験対象の薬剤を投与する 前のモデル動物に比べ、被験対象の薬剤を投与したモデル動物において、スタート 地点からエサを置いたゴール地点までに要する時間が、より短縮された場合等が、 該被験対象の薬剤が、学習及び Z又は記憶能力の向上を示すことの指標となる。
[0122] 本発明は、他の側面では、神経突起伸長の誘導方法に関する。
[0123] 本発明の神経突起伸長の誘導方法は、バイセクティング GlcNAcを有する糖鎖、 該糖鎖を構造中に有する複合糖質、該糖鎖の誘導体、該複合糖質の誘導体、該糖 鎖の薬理学的に許容されうる塩、該複合糖質の薬理学的に許容されうる塩、該糖鎖 の合成に係る酵素及び該酵素をコードする核酸からなる群より選ばれた少なくとも 1 種を検体に投与することを 1つの特徴とする。
[0124] 前記検体としては、例えば、培養細胞、神経組織、動物個体等が挙げられる。前記 動物個体としては、ヒト、非ヒト動物等が挙げられる。
[0125] 本発明の誘導方法による神経突起伸長の誘導効果は、前記神経突起伸長誘導剤 による神経突起伸長誘導効果の評価と同様の手法により評価されうる。
[0126] 本発明の誘導方法において、投与は、前記神経疾患治療剤又は予防剤等の場合 と同様の手法により行われうる。なお、本発明の誘導方法においては、本発明の神経 突起伸長誘導剤を用いてもょ ヽ。
[0127] 本発明の誘導方法により神経突起の伸長が起こった培養細胞 (例えば、神経系の 細胞、神経前駆細胞)や神経組織は、神経疾患の治療を目的とした移植に使用され うる。
[0128] 本発明は、別の側面では、神経疾患治療又は予防方法に関する。
[0129] 本発明の神経疾患治療又は予防方法は、神経疾患を罹患した個体又は該神経疾
患に罹患するおそれのある個体に、前記バイセクティング GlcNAcを有する糖鎖、特 に、前記式(2)で表されるバイセクティング GlcNAcを有する糖鎖該糖鎖を構造中に 有する複合糖質、該糖鎖の誘導体、該複合糖質の誘導体、該糖鎖の薬理学的に許 容されうる塩、該複合糖質の薬理学的に許容されうる塩、該糖鎖の合成に係る酵素 及び該酵素をコードする核酸からなる群より選ばれた少なくとも 1種を投与することを 1つの特徴とする。
[0130] 前記個体としては、ヒト、非ヒト動物等が挙げられる。
[0131] 本発明の神経疾患治療又は予防方法による治療又は予防効果は、本発明の神経 疾患治療剤又は予防剤の薬理評価と同様の手法により評価されうる。
[0132] また、本発明の神経疾患治療又は予防方法において、投与は、本発明の神経疾 患治療剤又は予防剤等の場合と同様の手法により行われうる。なお、本発明の神経 疾患治療又は予防方法にぉ 、ては、本発明の神経疾患治療剤又は予防剤を用い てもよい。
[0133] 本発明は、さらに他の側面では、学習及び Z又は記憶能力の向上又は改善方法 に関する。
[0134] 本発明の学習及び Z又は記憶能力の向上又は改善方法は、学習能力の向上又 は改善を必要とする個体に、前記バイセクティング GlcNAcを有する糖鎖、特に、前 記式(2)で表されるバイセクティング GlcNAcを有する糖鎖、該糖鎖を構造中に有す る複合糖質、該糖鎖の誘導体、該複合糖質の誘導体、該糖鎖の薬理学的に許容さ れうる塩、該複合糖質の薬理学的に許容されうる塩、該糖鎖の合成に係る酵素及び 該酵素をコードする核酸力 なる群より選ばれた少なくとも 1種を供給することを 1つ の大きな特徴とする。
[0135] 前記学習能力の向上又は改善を必要とする個体としては、正常個体、例えば、ヒト 、非ヒト動物等;神経疾患、脳虚血障害、外傷等により、学習及び Z又は記憶能力を 実質的に喪失した個体;神経疾患、脳虚血障害、外傷等により、学習及び Z又は記 憶能力が低下した個体等が挙げられる。
[0136] 本発明の学習及び Z又は記憶能力の向上又は改善方法による学習及び Z又は 記憶能力の向上又は改善効果は、前記学習及び Z又は記憶能力の向上剤又は改
善剤の薬理評価と同様の手法により評価されうる。
[0137] また、本発明の学習及び Z又は記憶能力の向上又は改善方法において、投与は 、本発明の神経疾患治療剤又は予防剤等の場合と同様の手法により行われうる。な お、本発明の学習及び Z又は記憶能力の向上又は改善方法においては、本発明の 学習及び Z又は記憶能力の向上剤又は改善剤が用いられうる。
[0138] また、本発明は、別の側面では、食品又は飲料に関する。
[0139] 本発明の食品又は飲料は、バイセクティング GlcNAcを有する糖鎖、該糖鎖を構造 中に有する複合糖質、該糖鎖の誘導体、該複合糖質の誘導体、該糖鎖の薬理学的 に許容されうる塩及び該複合糖質の薬理学的に許容されうる塩カゝらなる群より選ばれ た少なくとも 1種 (前記有効成分)を含有することに 1つの大きな特徴がある。したがつ て、本発明の食品又は飲料は、その神経突起伸長作用により、上記の疾患の症状改 善、予防に極めて有用である。さらに、前記の食品又は飲料は、上記の疾患の症状 改善、予防を目的であることを表示した機能性食品又は機能性飲料 (例えば、特定 保健用食品)とすることもできる。
[0140] 本発明の食品又は飲料は、前記有効成分を含有して!/、るため、神経変性疾患、痴 呆症又は脳腫瘍の治療又は予防に使用することができる。さらに、本発明の食品又 は飲料は、前記有効成分を含有しているため、学習及び Z又は記憶能力の改善又 は予防に使用することができる。なお、本発明の食品又は飲料には、神経変性疾患 、痴呆症又は脳腫瘍の治療若しくは予防を補助するための食品又は飲料並びに、 学習及び Z又は記憶能力の改善若しくは予防を補助するための食品又は飲料も含 まれる。
[0141] ここで、本発明の食品又は飲料について用いられる「含有」の語は、「添加」及び/ 又は「希釈」の意味を包含する。
[0142] なお、本明細書において、本発明の食品又は飲料について用いられる前記「含有」 とは、食品又は飲料中に本発明で用いられる前記有効成分が含まれるという態様を 、前記「添加」とは、食品又は飲料の原料に、本発明で用いられる前記有効成分を添 加するという態様を、前記「希釈」とは、本発明で用いられる前記有効成分に、食品 又は飲料の原料を添加すると 、う態様を 、う。
[0143] 本発明の食品又は飲料の製造法には、特に限定されるものではない。例えば、配 合、調理、加工等は一般の食品又は飲料の製造法に従えばよぐそれらの製造法に より製造することができ、得られた食品又は飲料に前記有効成分が含有されていれ ばよい。
[0144] 本発明の食品又は飲料としては、前記有効成分を含有しているものであればよぐ 特に限定されないが、例えば、穀物加工品(小麦粉加工品、デンプン類加工品、プ レミックスカ卩ェ品、麵類、マカロニ類、パン類、あん類、そば類、麩、ビーフン、はるさ め、包装餅等)、油脂加工品(可塑性油脂、てんぷら油、サラダ油、マヨネーズ類、ド レッシング等)、大豆加工品(豆腐類、味噌、納豆等)、食肉加工品(ハム、ベーコン、 プレスハム、ソーセージ等)、水産製品(冷凍すり身、力まぼこ、ちくわ、はんぺん、さ つま揚げ、つみれ、すじ、魚肉ハム、ソーセージ、かつお節、魚卵加工品、水産缶詰 、つくだ煮等)、乳製品 (原料乳、クリーム、ヨーグルト、バター、チーズ、練乳、粉乳、 アイスクリーム等)、野菜'果実加工品 (ペースト類、ジャム類、漬け物類、果実飲料、 野菜飲料、ミックス飲料等)、菓子類 (ガム、飴、チョコレート、ビスケット類、菓子パン 類、ケーキ、餅菓子、米菓類等)、アルコール飲料(日本酒、中国酒、ワイン、ウイスキ 一、焼酎、ウォッカ、ブランデー、ジン、ラム酒、ビール、清涼アルコール飲料、果実 酒、リキュール等)、嗜好飲料 (緑茶、紅茶、ウーロン茶、コーヒー、清涼飲料、乳酸飲 料等)、調味料 (しょうゆ、ソース、酢、みりん等)、缶詰 '瓶詰め'袋詰め食品 (牛飯、 釜飯、赤飯、カレー、その他の各種調理済み食品)、半乾燥又は濃縮食品(レバー ペースト、その他のスプレッド、そば'うどんの汁、濃縮スープ類)、乾燥食品(即席麵 類、即席カレー、インスタントコーヒー、粉末ジュース、粉末スープ、即席味噌汁、調 理済み食品、調理済み飲料、調理済みスープ等)、冷凍食品 (すき焼き、茶碗蒸し、 うなぎかば焼き、ハンバーグステーキ、シユウマイ、餃子、各種スティック、フルーツ力 クテル等)、固形食品、液体食品 (スープ等)、香辛料類等の農産'林産加工品、畜 産加工品、水産加工品等が挙げられる。
[0145] 本発明の食品又は飲料は、前記有効成分を、単独又は複数種を混合して、含有、 添加及び Z又は希釈されており、神経突起伸長作用を発現するための必要量が含 まれていればよぐタブレット状、顆粒状、カプセル状等の形状の経口的に摂取可能
な形状物も包含する。
[0146] 本発明の食品又は飲料中の前記有効成分の含有量は、その機能及び神経突起 伸長活性の観点力も適宜選択できるが、例えば、本発明の食品又は飲料中、 0. 01 重量%以上、好ましくは、 0. 1重量%以上、より好ましくは、 1重量%以上であり、 10 重量%以下、より好ましくは、 5重量%以下であることが望ましい。なお、前記含有量 は、前記範囲で任意に選択できる。また、本発明の食品又は飲料は、好ましくはそれ らに含有される有効成分が、ヒト(例えば、成人) 1日当り 0. OOOOlmg〜: LOOOmgZ kg体重、好まし <は 0. OOOlmg〜: LOOmgZkg体重、より好まし <は 0. OOlmg〜: LO mgZkg体重の摂取量となるように摂取されればよい。かかる摂取量は、種々の条件 によって変動する場合があり、上記摂取量より少ない量で十分な場合もあるし、ある いは範囲を超えて必要な場合もある。
[0147] 本発明の食品又は飲料の評価は、例えば、本発明の神経疾患治療剤又は予防剤 の薬理評価に用いられる神経疾患モデル動物を用 ヽた評価法等により実施すること ができる。
[0148] ところで、 GnT— Vの作用により生成されるものであり、 GlcNAc残基を非還元末端 に持つ 3本鎖構造又は 4本鎖構造を有する糖鎖や前記糖鎖を有する複合糖質は、 下記実施例に記載された創傷閉鎖の抑制から明らかなように細胞の移動、運動の阻 害活性を有することから、ガン細胞の浸潤や転移を阻害することによる悪性腫瘍の治 療に有効な治療剤又は転移阻害剤として使用することができる。前記の悪性腫瘍の 治療剤又は転移阻害剤は、本発明の神経疾患治療剤又は予防剤に準じて製造する ことができる。
[0149] 以下の実施例等により本発明をさらに具体的に説明する力 本発明は、かかる実 施例のみに限定されるものではない。
実施例 1
[0150] Gn(Gn)Gn- bi-糖ペプチドの製造
(1) -ヮトリ卵黄力 のシァリル糖ペプチド (SGP)の調製
1L (50個分)の白色レグホン新鮮卵黄に等量の水を加えた。得られた卵黄希釈液 に、 1Z10量のフエノール Z水(9 : 1、重量比)を加え、 2時間激しく攪拌した。 7000
X g (6000rpm)、 30分間遠心分離を行い、上清を得た。ロータリーエバポレーター で、前記上清を 6mLまで濃縮し、不要物を除去した。得られた産物を、商品名: Sep hadex G— 50 (アマシャムバイオサイエンス社製)カラム(2. 5cm X 100cm)を用い たゲルろ過に供した。このとき、 0. 1M NaClを溶離液として用いた。溶出されてきた 画分に含まれる糖を、フエノール硫酸法(日本生化学会編、新生化学実験講座第 3 卷、糖質 I、糖タンパク質 (上)、第 143頁、 1990年、東京化学同人発行)により測定 し、 2番目に溶出されてくる主要な糖陽性画分を集めた。ロータリーエバポレーターを 用いて、前記糖陽性画分を 5mLまで濃縮した。得られた産物を、 Sephadex G— 2 5 (アマシャムバイオサイエンス社製)カラム(2. 5cm X 52cm)を用いて、脱塩した。 このとき、 5容積% エタノールを溶離液として用いた。フエノール硫酸法により、各画 分の糖含量を測定して糖陽性画分を集めた。得られた産物を、ロータリーエバポレー ターで 5mLまで濃縮し、濃縮液を得た。 5mM Tris—HCl(pH8. 0)で平衡化した 商品名: TOYOPEARL DEAE— 650M (東ソ一株式会社製、商品番号: 07473) カラム(3. Ocm X 24cm)に前記濃縮液を負荷し、素通り画分を集めた。ロータリーェ バポレーターを用いて、前記素通り画分を 5mLまで濃縮した。得られた産物を、商品 名: Sephadex G— 25カラムを用いて脱塩し、凍結乾燥させ、 SGPを得た。
(2)酵素処理による、 SGPからのシアル酸とガラクトースの除去
実施例 1— (1)で得られた SGPを、 170 /z molZl . 5mLとなるように水に溶解させ た。得られた溶液に、 45 mgの粉末 EZ—Link Sulfo— NHS— Biotin (商品名、 PIERCE社製、商品番号 : 21217)を添加し、速やかに激しく攪拌し、その後、室温 で 1時間振盪した。得られた混合物を、遠心濃縮機を用いて 0. 5mLまで濃縮した。 得られた濃縮物に、 2. 4mLの lOOmMクェン酸ナトリウム緩衝液 (pH5. 0)と 3UZ3 00 Lのノイラミニダーゼ(ナカライテスタ社製、商品番号: 24229— 74)を加えて 37 °Cで 24時間反応させた。得られた産物に、 3UZ70/Z Lの |8—ガラクトシダーゼ(生 化学工業株式会社製、商品番号: 100570)を添加し、さらに 24時間反応させた。反 応後、得られた反応物を 98°Cで 5分間加熱し、酵素を失活させ、 13000 X g (14000 rpm)、 10分間遠心分離した。得られた上清を、遠心濃縮機を用いて 400 Lまで濃 縮した。得られた産物を、商品名: PD— 10脱塩カラム(アマシャムバイオサイエンス
社製、商品番号: 17— 0851— 01)に供して、脱塩し、さらに、セルロースカートリッジ カラム (タカラバイオ株式会社製、商品番号 :4404)に負荷して、精製し、粗精製ピオ チン化 Gn.Gn-bi-糖ペプチド(以下、「粗精製 Gn.Gn-bi-GP」)を得た。 Gn.Gn-bi-GP (配列番号: 1)の構造を、下記式 (9)に示す。
[0152] [化 24]
Lys (NH2)
GlcNAc i-2Manal\ Val
6 Ala
Manpi-4GlcNAcpi-4 GlcNAcpl-Asn
3 Lys
GlcNAcpi-2Manar Thr (COOH)
(9)
[0153] (3) GnT— IIIによるバイセクティング GlcNAc残基の導入
ラット GnT— III cDNA〔-シカヮ(Nishikawa, A.)ら、 Journal of Biological C hemistry,第 267卷、第 18199頁〜第 18204頁、 1992年〕を pCXNII〔-ヮ(Niwa )ら、 Gene、第 15卷、第 193頁〜第 199頁、 1991年〕の EcoRI部位にサブクロー- ングしてプラスミド pCXNIl/GnT— IIIを構築した。
[0154] 商品名:リポフエクトァミン 2000 (インビトロジェン社製、商品番号: 11668— 019)を 用いて、ラット副腎褐色細胞腫細胞株 PC 12 (ATCC CRL- 1721)に、前記 pCX NIlZGnT—mをトランスフエタトし、 10重量% ゥマ血清と 5重量% ゥシ胎仔血清( FCS)と lmgZmL G418とを含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、 5容積% CO
2、 37°Cで培養した。培養 2週間後にコロニーを単離し、限界希釈法に より再クロー-ングを行って、 PC12 (GnT— III)細胞を得た。同様の方法で、 PC12 細胞に前記 pCXNIIをトランスフエタトし、クローン化して、 PC 12 (mock)細胞を得た 。得られた PC12 (GnT— III)細胞を、 3枚のコラーゲンコート 10cmディッシュ(旭テク ノグラス社製、商品番号: 4020— 010)上、 10重量% ゥマ血清と 5重量% FCSと を含有する DMEM中で 5容積% CO存在下、 37°Cでコンフルェントになるまで培
2
し 7こ。
[0155] 培養終了後、培地を捨ててリン酸緩衝食塩水〔PBS (—)〕で洗浄した。セルスクレ 一パーを用いて細胞をディッシュから剥離させ、 1500 X g (5000rpm)で 5分間遠心
分離して、細胞を回収した。上清を捨て、得られた細胞に、 10 μ g mL· ロイべプチ ンと 10 /z g/mL ァプロチュンと ImM フッ化フエ-ルメチルスルホ-ルとを含む P BS ( - ) 200 μ Lを添カ卩し、ピペッティングにより細胞を懸濁した。この細胞懸濁液を 超音波処理に供し、得られた産物を、 700 X g、 10分間遠心分離して、約 200 Lの 上清を得た。得られた上清を、 GnT— III粗酵素液として用いた。
[0156] 100 μ Lの GnT— ΙΠ粗酵素液と、 200 μ Lの 2 X緩衝液〔組成: 250mM MES - NaOH (pH6. 25)、 20mM MnCl、 400mM N—ァセチルダルコサミン(GlcNA
2
c) , 1. 0% (V/V) Triton™ X— 100〕と、 40 Lの 500mM UDP— GlcNAcと 、 50 μ Lの実施例 1— (2)で調製した 0. 825 μ mol/50 μ L 粗精製 Gn.Gn- bi- GP 水溶液と、 10 /z Lの水とを混合し、 37°Cで 24時間反応させた。反応後、 98°Cで 5分 間加熱して酵素を失活させ、 13000 X g ( 14000rpm)、 10分間遠心分離して上清 を得た。商品名: PD— 10カラムを用いて上清を脱塩し、セルロースカートリッジカラム を用いて精製し、減圧下濃縮、乾固した。得られた産物を、 200 /z Lの水に溶解して 、粗精製 Gn(Gn)Gn-bi-糖ペプチドを含む試料 Aを得た。試料 A中の糖ペプチド濃度 をフエノール硫酸法で測定したところ、 4. ImMであった。 Gn(Gn)Gn-bi-糖ペプチド( 配列番号: 1)の構造を下記式(10)に示す。
[0157] [化 25]
Lys (NH2)
GlcNAc l-2Man l\ Val
6 Ala
GlcNAc i-4 Man i-4GlcNAcpl-4 GlcNAcpi-Asn
Lys
GlcNAcpl-2Manar Thr (COOH)
(10)
[0158] (4)試料 Aの糖鎖構造解析
以下の方法で試料 Aの糖鎖構造を解析した。試料 Aを水で 100倍希釈したもの 1 に、0. 5 の0. 5M リン酸ナトリウム緩衝液 (pH7. 5)と、 0. 5 /z Lの 10容積 % Nonidet (商品名) PZ40 (NP— 40、メルク社製、商品番号: BDH560092L) と、 0. 5 Lの 500UZ μ Lペプチド: Ν—グリコシダーゼF〔PNGase F、ニューイン グランドバイオラボ(New England BioLabs)社製、商品番号: P0704S〕と、 2. 5
/z Lの水とを加え、 37°Cで 24時間反応させた。得られた反応液を 5分間煮沸し、 130 00 X g (14000rpm)、 5分間の遠心分離によって上清を得た。
[0159] 前記上清の全量のピリジルァミノ(PAM匕を、商品名: GlycoTAG Reagent Kit ( タカラバイオ株式会社製、商品番号: GT500)を用いて行った。 PA化された糖鎖を、 45 μ Lの水に溶解し、そのうち 20 μ Lを HPLCにより分析した。前記 HPLCにおいて 、カラムとして、商品名: TSKgel ODS-80T (4. 6 X 150mm,東ソー株式会社
M
製、商品番号: 08148)、溶離液として、 0. 2容積% 1—ブタノール含有 20mM酢 酸アンモ-ゥム緩衝液 (pH4. 0)を用い、カラム温度は、 50°C、流速は 1. 0ml/分 に設定した。検出には蛍光検出器を用い、励起波長を 320nm、検出波長を 400nm に設定した。この条件で PA-Gn.Gn-bi-糖鎖は、 7. 1分に、 PA-Gn(Gn)Gn-bi-糖鎖は 、 13. 0分に溶出された。
[0160] この結果、粗精製 Gn.Gn-bi-GPからは PA-Gn(Gn)Gn-bi-糖鎖が検出されなかった のに対して、試料 Aからは 15%の PA- Gn(Gn)Gn-W-糖鎖が検出された。
実施例 2
[0161] Gn.Gn.Gn- tri'-糖ペプチドの製造
(1)ピオチン化 Gn.Gn- bi-糖ペプチドへの j8 1, 6— GlcNAc残基の導入
グらの方法〔グ(Gu, J. )ら、 Journal of Biochemistry、第 113卷、第 614頁〜 第 619頁、 1993年〕に従い、ヒト肺小細胞癌細胞株 QG力も GnT— Vを精製した。得 られた GnT— Vを用いて、粗精製 Gn.Gn-W-GPに対して実施例 1— (3)と同様の反 応を行い、試料 Bを得た。なお、 GnT— Vを用いた反応の際、緩衝液として、 2 X緩 衝液〔組成: 250mM MES -NaOH (pH6. 25) , 400mM GlcNAc、 20mM E DTA' 3Na、 1. 0容積0 /0 Triton™X— 100〕を用いた。
[0162] 生成物である Gn.Gn.Gn-tri'-糖ペプチド(配列番号: 1)の構造を下記式(11)に示 す。
[0163] [化 26]
Manpl-4GlcNAcpi-4 GlcNAcpi-Asn
' Lys
GlcNAcpi-2Manal' Thr(COOH)
[0164] (2)試料 Bの糖鎖構造解析
実施例 1 (3)と同じ条件下で、試料 Bの PNGase F処理、 PAィ匕及び HPLCによ る分析を行った。この条件で PA-Gn.Gn-bi-糖鎖は 7.1分に、 PA-Gn.Gn.Gn-tri '-糖 鎖は 5.2分に溶出された。
[0165] この結果、粗精製 Gn.Gn-bi-GPからは PA-Gn.Gn.Gn-tri'-糖鎖が検出されなかつ たのに対して、試料 Bからは 63%の PA-Gn.Gn.Gn-tri'-糖鎖が検出された。
実施例 3
[0166] Gn(Gn)Gn-bi-糖ペプチド及び Gn.Gn.Gn-tri'-糖ペプチドによる神経突起形成と細胞 伸展
(1) Gn(Gn)Gn- bi-糖ペプチド及び Gn.Gn.Gn- tri '-糖ペプチドによる Neuro— 2a細 胞の神経突起形成と細胞伸展
実施例 1— (3)の方法で調製した 200 μ Lの GnT— ΠΙ粗酵素液を 98°Cで 5分間の 熱処理し、 13000 X g (14000rpm)で 10分間遠心分離して上清を得た。得られた 上清を、セルロースカートリッジカラム (タカラバイオ株式会社製、商品番号: 4404) に負荷して、溶出画分を得た。この画分を遠心濃縮乾固し、 200 ;z Lの水に溶解して 試料 Cを得た。
[0167] PC 12 (mock)細胞から同様の方法により試料 Dを得た。
[0168] マウス神経芽細胞腫細胞株 Neuro— 2a (ATCC CCL— 131)を、 10重量% ゥ マ血清と 5重量% FCSとを含有する DMEMに懸濁し、 0. 01% ポリ—L—リジン〔 シグマ(SIGMA)社製、商品番号: P4832〕でコートした 35mmガラス底培養ディッ シュ〔マットテック(MatTek)社製、商品番号: P35G— 0— 10— C〕に 1 X 105個 Zデ イツシュとなるように接種し、 5容積0 /0 CO存在下、 37°Cで 1晚培養した。
[0169] 培地を吸引除去した後、試料 A、試料 C又は試料 Dを lOmM HEPES含有 PBS ( ―)で 100倍希釈して得られた希釈試料 100 Lをディッシュのくぼみ部分に添カロ し、 37°Cで 90分インキュベートした。その後、細胞を、 3. 7容積% ホルマリン含有 P BS ( -)で固定した。固定された細胞を、位相差顕微鏡 (カールツァイス社製、商品 名: Axiovert 200M)で観察し、神経突起を持つ細胞の比率と伸展した細胞の比 率とを計算した。なお、ここでは 3 m以上の神経突起を 2本以上持つ細胞を「神経 突起を持つ細胞」、位相差顕微鏡で観察したときに輝度が低い細胞を「伸展した細 胞」とした。
[0170] 結果を図 1に示す。図 1は、神経突起を持つ細胞数及び伸展した細胞数それぞれ の、全細胞数に対する比率を示す図であり、 3視野の平均と標準偏差を表す。試料 A 添カロ区では、ほとんどの細胞が神経突起の伸長及び細胞伸展を示した。これに対し て、試料 C添加区では、若干の神経突起形成は認められたが、細胞伸展は見られず 、試料 D添カ卩区では、神経突起の形成及び細胞伸展は、ほとんど見られな力つた。
[0171] 被検試料として、粗精製 Gn.Gn-W-GP、試料 A及び試料 Bを用い、上記と同様に、 細胞をインキュベートし、被検試料添加後 90分にホルマリン固定を行った。ホルマリ ン固定後、 PBS (―)で洗浄した。ついで、 Alexa 546—ファロィジンによりァクチン を染色し、共焦点レーザー顕微鏡 (カールツァイス社製、商品番号: LSM 5 Pasca 1)による観察も行った。
[0172] この結果、粗精製 Gn.Gn-bi-GP添カ卩区では大部分の細胞が球状で神経突起がほ とんど見られなかったのに対して、 Gn(Gn)Gn-bi-GPを含む試料 A添カ卩区では大部分 の細胞が数多くの神経突起を形成し、細胞伸展を示した。また、 Gn.Gn.Gn-tri'-GP を含む試料 B添加区では大部分の細胞が球形で神経突起の形成はほとんど見られ な力つたが、葉状仮足様のァクチン細胞骨格再編が見られた。
[0173] (2) Gn(Gn)Gn-bi-糖ぺプチドにょるNeuro— 2a細胞の分化誘導
Neuro— 2a細胞を、実施例 3— (1)と同様に培養した後、培地を除去し、 DMEM で 100倍希釈した試料 A、 DMEM又は 10重量% FCS含有 DMEM 2mLを添カロ して 5容積% CO存在下、 37°Cで 36時間培養した。培地を除去し、 4重量% パラ
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ホルムアルデヒド含有 PBSで 1. 5分間細胞を固定した。ついで、 1重量% Triton™
X— 100含有 50mM Tris— HCl (pH6. 8)中、室温で 15分間緩やかに振盪した。 4重量% パラホルムアルデヒドにより、 4°Cで 30分間、細胞を再度固定した。細胞を PBSで洗浄し、 50mM NH C1中 30分間インキュベートした。次に、前記細胞を、 2
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重量0 /0 ゥシ血清アルブミンと 0. 1重量0 /0 Triton™X—100とを含む PBSで 2000 倍希釈した抗リン酸化-ユーロフィラメント H (NF-H)マウスモノクローナル抗体 SM 1- 31〔シュテルンべルガ一モノクローナルズ(Sternberger Monoclonals)社製、商品 番号: SMI— 31〕中、 4°Cで 1晚インキュベートした。さらに、得られた細胞を、 10重量 % ャギ血清含有 PBS中、室温で 30分間インキュベートし、 PBSで 300倍希釈した Alexa 546標識ャギ抗マウス IgG中、室温で 2時間インキュベートした。なお、インキ ュベーシヨン毎に PBSで 2〜3回洗浄した。インキュベーション後の細胞を共焦点レ 一ザ一顕微鏡で観察した。
[0174] この結果、 10重量% FCS含有 DMEM添カ卩区では神経突起の形成は、ほとんど 観察されず、 DMEM添カ卩区では NF— H陽性神経突起が一部の細胞で観察された 。試料 A添加区では DMEM添加区に比べてより多くの NF— H陽性神経突起が観 察された。
[0175] (3) Gn(Gn)Gn-bi-糖ペプチドによる T98G細胞の伸展
ヒトグリオ一マ細胞 T98G (ATCC CRL— 1690)を用いて、実施例 3— (1)と同様 の実験を行った。但し、被検試料として粗精製 Gn.Gn-bト GP、試料 A及び試料 Bを使 用し、 10mM HEPES含有 PBS (―)による希釈は、 50倍とした。試料添加からホ ルマリン固定までの時間は 90分とし、位相差顕微鏡による観察と Alexa 546—ファ ロイジン (インビトロジェン社製)染色によるァクチンの観察を行った。
[0176] この結果、粗精製 Gn.Gn-bi-GP添カ卩区と試料 B添カ卩区では細胞伸展が阻害されて 球形であつたのに対して、試料 A添カ卩区では大部分の細胞が伸展し、ストレスフアイ バーを顕著に形成した。
実施例 4
[0177] Gn.Gn.Gn-tri'-糖ペプチドによる T98Gの運動能の抑制
1ゥエルあたり 0. 5 X 106個の T98G細胞を 24穴プレートに播種し、 10重量0 /0 FC S含有 RPMI1640培地中、 5容積% CO存在下、 37°Cで 1晚培養した。ブルーチ
ップを用いてゥエルの中央部に線を引いて細胞層に約 120 m幅の傷をつけ、注意 深く培地を除去した。 1% FCS含有 DMEMで洗浄したあと、 250 Lの上記培地、 上記培地で 500倍希釈した粗精製 Gn. Gn— bi— GP又は上記培地で 500倍希釈し た試料 Bを添加した。 24時間培養後、 4. 0容積0 /0 パラホルムアルデヒド含有 PBS ( -)で固定し、位相差顕微鏡で観察した。
[0178] この結果、培地のみを添カ卩した場合には、創傷閉鎖 (wound closure)が亢進されて V、た (細胞層の傷が細胞でほぼ埋めつくされて 、た)のに対し、粗精製 Gn.Gn-W-GP 添カ卩区では創傷閉鎖が抑制されており、 Gn.Gn.Gn-tri'-糖ペプチドを含む試料 B添 加区ではさらに抑制されていた。
実施例 5
[0179] GnT— III遺伝子の導入による神経突起伸長の亢進
ラット GnT— III cDNA〔-シカヮ(Nishikawa, A.)ら、 Journal of Biological C hemistry,第 267卷、第 18199頁〜第 18204頁、 1992年〕をプラスミド pcDNA3. 1 (インビトロジヱン社製)に連結した。得られたプラスミドを、リボフヱクトァミン 2000 ( インビトロジェン社製)を用いて Neuro— 2A細胞に導入した。その後、 G418耐性を 指標として形質転換細胞を選択し、 GnT— IIIを安定的に過剰発現する複数の細胞 株を榭立した。
[0180] 対照として、 GnT— ΠΙ cDNAを含まないプラスミドプラスミド pcDNA3. 1を導入し た細胞株 (Mockと呼ぶ)を同様の操作で榭立した。
[0181] 低密度になるように、同数の GnT— III遺伝子導入細胞株と Mock細胞株とを、そ れぞれ 35mmガラス底培養ディッシュに播種し、 10重量% FCSを含む high— glue ose tvpe DMEM培地(SIGMA製)で、 5容積0 /0 COで 12時間培養した。
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[0182] その後、培地を、 FCSを含まない DMEM培地に交換することにより、血清飢餓によ る分化誘導を行った。対照として、 FCSを含有する培地で両細胞株の培養を継続す る群も試験した。 24時間培養後、 4容積% ホルムアルデヒドを含む PBSで細胞を 1 0分間固定した。固定後の細胞を、ァクチン細胞骨格について、 Alexa 546—ファ ロイジン、神経分化マーカーである NF— Hについて、抗リン酸化 NF— Hマウスモノ クローナル抗体 SMI - 31と Alexa 546標識ャギ抗マウス IgG抗体とを用 、て一般
的な間接蛍光抗体染色法で二重染色し、共焦点レーザー顕微鏡で撮像した。
[0183] レーザー顕微鏡視野(73. 1 X 73.: L m)内の全細胞数と NF— H陽性細胞数と を計数し、 NF— H陽性 (伸長した突起部分が抗 NF— H抗体で染色されているもの) の全細胞数に占める割合を百分率で評価した。 GnT— III遺伝子導入細胞株及び Mockそれぞれ、異なる 3クローンずつを実験に用い、それらの平均をグラフとして図 2に示す。図中、 +、一はそれぞれ FCSの有無を示す。
[0184] その結果、図 2に示されるように、血清飢餓による分ィ匕誘導を伴う Neuro— 2a細胞 力 の神経突起伸長は、 GnT— III遺伝子の過剰発現により亢進されることが明らか となった。
[0185] 上記の結果は、神経分化の中でも、特に、神経突起伸長プロセスにおいて、 GnT —III遺伝子産物が深く関与することを強く示唆している。
実施例 6
[0186] 前記実施例 2で得られた糖ペプチド (神経突起伸長誘導剤)を、滅菌条件下に、滅 菌生理的食塩水と注射剤用助剤とを含む溶液に混合し、注射剤形の神経疾患治療 又は予防剤を得る。
[0187] 前記神経疾患治療又は予防剤を、個体の神経損傷部に投与する。経時的に、当 該神経損傷に伴い損なわれた運動能力、言語能力、及び Z又は外部力 の刺激に 対する反応の回復度を評価する。
[0188] これにより、神経損傷に伴い損なわれた運動能力、言語能力、及び Z又は外部か らの刺激に対する反応が回復した場合、神経疾患治療又は予防剤による薬理効果 が得られたことの指標として評価される。
実施例 7
[0189] 前記実施例 2で得られた糖ペプチド (神経突起伸長誘導剤)を、飲料及び食品の 製造の際に原料と共に混合する。
[0190] 得られた飲料又は食品を、正常個体及び神経損傷により学習能力及び Z又は記 憶能力が低下した個体に供給する。その後、飲料又は食品の供給前後における学 習能力及び記憶能力を試験し、その成績を評価する。
[0191] これにより、飲料又は食品の供給前に比べ、飲料又は食品の供給後、正常個体の
成績が向上した場合、飲料又は食品により学習能力及び記憶能力の向上効果が見 られることの指標となる。また、飲料又は食品の供給前に比べ、飲料又は食品の供給 後、神経損傷により学習能力及び Z又は記憶能力が低下した個体の成績が通常レ ベルに近づいている場合、飲料又は食品により学習能力及び記憶能力の改善効果 が見られることの指標となる。
産業上の利用可能性
[0192] 本発明により、ノイセクティング GlcNAcを有する糖鎖、複合糖質、それらの誘導体 、それらの塩、前記糖鎖の合成に係る酵素、及び前記酵素をコードする核酸を含有 する医薬、試薬、食品又は飲料が提供される。当該医薬、食品又は飲料はバイセク ティング GlcNAcを有する糖鎖、複合糖質、それらの誘導体及び Z又はそれらの塩 の神経突起伸長誘導作用により、神経疾患の治療又は予防、学習記憶能力の向上 又は改善に有用である。また、本発明により、当該有効成分を含有する神経突起伸 長誘導作用を有する試薬が提供される。
配列表フリーテキスト
[0193] 配列番号: 1は、糖ペプチドのペプチド部分のアミノ酸配列を示す。