明 細 書
皮膚トランスポーターを介した経皮薬剤の皮膚透過性の検定方法 技術分野
[0001] 本発明は、経皮薬剤又は経皮候補薬剤の皮膚透過性の検定方法、詳しくは皮膚 切片で皮下組織側と表皮側とに区画されたチャンバ一を用いて、経皮薬剤又は経皮 候補薬剤の皮膚トランスポーター (皮膚組織に備わるトランスポーター)を介しての皮 膚透過性の程度を測定'評価する経皮薬剤又は経皮候補薬剤の皮膚透過性の検 定方法に関する。
背景技術
[0002] 経皮ドラッグデリバリーは、効力ある低分子量の治療薬の投与経路としてしばしば 用いられ、錠剤や注射などの従来からの投与形態と比べて、初回通過代謝の回避、 痛みの減少、薬の徐放性の可能性などを含む、優れた効果を発揮している。例えば 、非ステロイド性抗炎症薬 (NSAID)の経皮ルートでの投与は、胃腸の炎症や潰瘍 化などの経口ルートの欠点を避けるために導入された (例えば、 J. Pharm. Sci.
86:503-508, 1997参照)。しかし、経皮デリバリーは、皮膚の浸透率が低いために、適 用が制限されている。
[0003] 皮膚は、物理的及び生化学的、両面におけるバリアーである。皮膚の最外側層で ある角質層(SC)が、物理的構造により、さまざまな物質が浸透するときの、最大のバ リア一であるとされている。さらに、皮膚内の異物代謝酵素が、 2番目の生化学的な ノリア一となつている。例えば、ダルタチオン Sトランスフェラーゼ(GST) Pl— 1の発 現及び活性力 ヒトの表皮細胞において検出されている(例えば、 J. Dermatol. Sci. 30: 205-214, 2002参照)。異物代謝酵素の発現が、ヒト正常ケラチノサイトでも検出さ れ、恒常的な活性が観察されている(例えば、 J. Invest. Dermatol. 102:970-975, 1994、 J. Biol. Chem. 273:32071-32079, 1998、 J. Invest. Dermatol. 112: 337-342, 1994参照)。
[0004] 近年、皮膚におけるいくつかのトランスポーターの発現が報告された。神経細胞グ ルタミン酸トランスポーター EAAC1及びグリアグルタミン酸トランスポーター(GLT— 1
)がケラチノサイトで検出され(例えば、 J. Invest. Dermatol. 112: 337-342, 1994参照 )、ナトリウム依存性マルチビタミントランスポーター(SMVT)が皮膚において発現す ることが見い出されている(例えば、 J. Invest. Dermatol. 120: 428-433, 2003参照)。 グルタミン酸及びピオチンは、正常な細胞機能に必須であるので、かかるトランスポ 一ターの存在が、皮膚内の基質に対する役割を支持することを明らかにした。他方、 異物トランスポーター(xenobiotics transporter)の発現も、近年報告された。これらは 、数多くの有機イオン薬剤を輸送し、ヒトの正常なケラチノサイト内に存在する、多剤 而性関連タンパク質(MRP) (例えば、 J. Invest. Dermatol. 116: 541-548, 2001参照 )及び有機ァ-オン輸送ポリペプチド (OATP)ファミリーメンバー(例えば、 J. Invest. Dermatol. 120: 285-291, 2003参照)を含む。かかるトランスポーターの皮膚内での発 現は、薬剤が経皮浸透するときの、能動的なノ リア一となる力もしれない。しかし、現 在のところ、薬剤の経皮浸透においてトランスポーターの関与は明らかになつていな い。
[0005] 他方、 NSAIDであるインドメタシンは、経皮投与され、経皮デリバリーにおける新規 ェンノヽンサ一を調べるための疎水性のモデルィ匕合物として用いられている(例えば、 J. Pharm. Sci. 84:482-488, 1995、 J. Control Release 90: 335—343, 2003、 J. Control Release 88: 243-252, 2003参照)。実際に、その効率的な経皮浸透を促進するため に、いくつかのアプローチが行われている(J. Control Release 75: 155-166, 2001、 Biol. Pharm. Bull. 25: 779-782, 2002) 0また、マン-トールも、傍細胞マーカーとして 用いられていた。
[0006] 本発明の課題は、治療薬の経皮浸透に担体輸送(carrier-mediated transport)が 関与することを明らかにした上で、経皮薬剤又は経皮候補薬剤の皮膚トランスポータ 一を介しての皮膚透過性の程度を測定'評価する経皮薬剤又は経皮候補薬剤の皮 膚透過性の検定方法を提供することにある。
[0007] 本発明者らは、経皮輸送のメカニズムの特徴を調べるために、経皮輸送されて!、る NSAIDであるインドメタシンを、疎水性のモデル薬剤として用いた。 [14C]インドメタ シン及び [ ]マン-トールの経皮浸透性を、吸収及び分泌の両方向力も測定したと ころ、 [14C]インドメタシンの経皮輸送は、傍細胞マーカーである [ ]マン-トールよ
り、力なり高いことを見い出し、 [14c]インドメタシンの経皮輸送力、傍細胞輸送ではな ぐ経細胞輸送であることを見い出した。また、 [14c]インドメタシン及び [¾]マン-ト ールの浸透性に対する非標識のインドメタシンの効果を比較し、 [14c]インドメタシン の経皮浸透が飽和性であるかどうか調べた。非標識インドメタシン(500 M)を添カロ すると、 [14c]インドメタシンの分泌方向の浸透性が増加する力 [¾]マン-トールの 浸透性には影響しないことが明らかになり、非標識インドメタシンの効果が、 [14c]ィ ンドメタシンに特異的であること、 [14c]インドメタシンの経皮浸透性には、飽和性過 程の関与することを見い出した。さらに、 [14C]インドメタシンの飽和性の浸透力 エネ ルギー依存性であるかどうかを調べるために、 NaN及び NaFによる効果を観察した
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。その結果、 [14C]インドメタシンの浸透は、 NaN及び NaFによっても増加し、吸収
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方向の浸透段階が ATP依存性であることを見い出した。 [14C]インドメタシンの、一 方向性、 ATP依存性及び飽和性の浸透に関するこれらの結果は、インドメタシンの 経皮浸透に、トランスポーター(1又は複数の)が関与している可能性を示した。本発 明者らは、また、ヘアレスマウス皮膚と正常ヒト皮膚とにおける、さまざまな異物トラン スポーターの発現を比較した。本発明は以上の知見に基づき完成するに至ったもの である。
発明の開示
[0008] すなわち本発明は、(1)経皮薬剤又は経皮候補薬剤を溶解した溶液を、皮膚切片 で皮下組織側と表皮側とに区画されたチャンバ一内のいずれか一方に注入し、他方 に所定の溶液を注入して、前記皮膚切片の生存条件下、所定時間後に前記経皮薬 剤又は経皮候補薬剤の皮膚トランスポーターを介しての皮膚透過性の程度を測定' 評価することを特徴とする経皮薬剤又は経皮候補薬剤の皮膚透過性の検定方法や 、(2)皮下組織側の溶液を体温に、表皮側の溶液を室温に維持し、所定時間後に経 皮薬剤又は経皮候補薬剤の皮膚トランスポーターを介しての皮膚透過性の程度を測 定 '評価することを特徴とする上記(1)記載の経皮薬剤又は経皮候補薬剤の皮膚透 過性の検定方法に関する。
[0009] また本発明は、(3)皮膚透過性の程度の測定'評価が、皮膚透過の飽和性、阻害 効果、方向指向性及びエネルギー依存性の 1又は 2以上の測定'評価であることを特
徴とする上記(1)又は(2)記載の経皮薬剤又は経皮候補薬剤の皮膚透過性の検定 方法や、(4)経皮薬剤又は経皮候補薬剤として、放射性同位体又は蛍光物質で標 識した経皮薬剤又は経皮候補薬剤を用いることを特徴とする上記(1)一 (3)の 、ず れか記載の経皮薬剤又は経皮候補薬剤の皮膚透過性の検定方法や、 (5)経皮薬 剤又は経皮候補薬剤を溶解した溶液として、皮下組織側が経皮薬剤又は経皮候補 薬剤を溶解したエネルギー源を含有する溶液を、表皮側が経皮薬剤又は経皮候補 薬剤を溶解した多価アルコール含有溶液を、それぞれ用いることを特徴とする上記( 1)一(4)の 、ずれか記載の経皮薬剤又は経皮候補薬剤の皮膚透過性の検定方法 や、(6)多価アルコール力 プロピレングリコールであることを特徴とする上記(5)記 載の経皮薬剤又は経皮候補薬剤の皮膚透過性の検定方法や、 (7)経皮薬剤又は 経皮候補薬剤を溶解した溶液が、皮下組織側及び表皮側ともに経皮薬剤又は経皮 候補薬剤を溶解したエネルギー源を含有する溶液であることを特徴とする上記(1) 一(4)の 、ずれか記載の経皮薬剤又は経皮候補薬剤の皮膚透過性の検定方法や、 (8)エネルギー源を含有する溶液力 ハンクス液であることを特徴とする上記(5)— ( 7)のいずれか記載の経皮薬剤又は経皮候補薬剤の皮膚透過性の検定方法や、 (9 )非標識の経皮薬剤又は経皮候補薬剤を皮下組織側と表皮側とに共に用いて、放 射性同位体又は蛍光物質で標識した経皮薬剤又は経皮候補薬剤の飽和性経皮浸 透を調べることを特徴とする上記(1)一 (8)の ヽずれか記載の経皮薬剤又は経皮候 補薬剤の皮膚透過性の検定方法や、 (10)表皮側の溶液の pHを変化させることを特 徴とする上記(1)一 (8) 、ずれか記載の経皮薬剤又は経皮候補薬剤の皮膚透過 性の検定方法や、 (H) NaN及び NaFを皮下組織側と表皮側とに共に用いて、経
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皮薬剤又は経皮候補薬剤の浸透が、エネルギー依存性であるかどうかを調べること を特徴とする上記(1)一 (8)の 、ずれか記載の経皮薬剤又は経皮候補薬剤の皮膚 透過性の検定方法に関する。
さらに本発明は、(12)経皮薬剤又は経皮候補薬剤を溶解した溶液、及び、経皮薬 剤又は経皮候補薬剤と被検物質とを溶解した溶液を、皮膚切片で皮下組織側と表 皮側とに区画されたチャンバ一内の皮下組織側に注入し、他方に所定の溶液を注 入して、前記皮膚切片の生存条件下、所定時間後に前記経皮薬剤又は経皮候補薬
剤の皮膚トランスポーターを介しての皮膚透過性の程度をそれぞれ測定し、皮膚透 過性の程度を比較評価することを特徴とする経皮薬剤又は経皮候補薬剤の皮膚透 過性促進又は抑制物質のスクリーニング方法や、(13)皮下組織側の溶液を体温に 、表皮側の溶液を室温に維持し、所定時間後に前記経皮薬剤又は経皮候補薬剤の 皮膚トランスポーターを介しての皮膚透過性の程度をそれぞれ測定することを特徴と する上記(12)記載の経皮薬剤又は経皮候補薬剤の皮膚透過性促進又は抑制物質 のスクリーニング方法に関する。
本発明はまた、(14)皮膚透過性の程度の測定'評価が、皮膚透過の飽和性、阻害 効果、方向指向性及びエネルギー依存性の 1又は 2以上の測定'評価であることを特 徴とする上記(12)又は(13)記載の経皮薬剤又は経皮候補薬剤の皮膚透過性促進 又は抑制物質のスクリーニング方法や、(15)経皮薬剤又は経皮候補薬剤として、放 射性同位体又は蛍光物質で標識した経皮薬剤又は経皮候補薬剤を用いることを特 徴とする上記(12)—(14)の 、ずれか記載の経皮薬剤又は経皮候補薬剤の皮膚透 過性促進又は抑制物質のスクリーニング方法や、 (16)経皮薬剤又は経皮候補薬剤 を溶解した溶液として、皮下組織側が経皮薬剤又は経皮候補薬剤を溶解したェネル ギ一源を含有する溶液を、表皮側が経皮薬剤又は経皮候補薬剤を溶解した多価ァ ルコール含有溶液を、それぞれ用 ヽることを特徴とする上記( 12)—( 15)の 、ずれ か記載の経皮薬剤又は経皮候補薬剤の皮膚透過性促進又は抑制物質のスクリー- ング方法や、(17)多価アルコール力 プロピレングリコールであることを特徴とする上 記(16)記載の経皮薬剤又は経皮候補薬剤の皮膚透過性の検定方法や、 (18)経 皮薬剤又は経皮候補薬剤を溶解した溶液が、皮下組織側及び表皮側ともに経皮薬 剤又は経皮候補薬剤を溶解したエネルギー源を含有する溶液であることを特徴とす る上記(12)—(15)の 、ずれか記載の経皮薬剤又は経皮候補薬剤の皮膚透過性 促進又は抑制物質のスクリーニング方法や、(19)エネルギー源を含有する溶液が、 ハンクス液であることを特徴とする上記(16)—(18)のいずれか記載の経皮薬剤又 は経皮候補薬剤の皮膚透過性促進又は抑制物質のスクリーニング方法や、 (20)非 標識の経皮薬剤又は経皮候補薬剤を皮下組織側と表皮側とに共に用いて、放射性 同位体又は蛍光物質で標識した経皮薬剤又は経皮候補薬剤の飽和性経皮浸透を
測定'評価することを特徴とする上記(12)—(19)のいずれか記載の経皮薬剤又は 経皮候補薬剤の皮膚透過性促進又は抑制物質のスクリーニング方法や、(21)表皮 側の溶液の pHを変化させることを特徴とする上記( 12)—( 19)の 、ずれか記載の経 皮薬剤又は経皮候補薬剤の皮膚透過性促進又は抑制物質のスクリーニング方法や 、 (22) NaN及び NaFを皮下組織側と表皮側とに共に用いて、経皮薬剤又は経皮
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候補薬剤の浸透が、エネルギー依存性であるかどうかを測定'評価することを特徴と する上記(12)—(19)の ヽずれか記載の経皮薬剤又は経皮候補薬剤の皮膚透過 性促進又は抑制物質のスクリーニング方法に関する。
図面の簡単な説明
[0012] [図 1]第 1図は、ヘアレスマウス皮膚を用いた Ussing- type Chamber法によるインドメタ シンの経皮透過実験の概要を示す図である。
[図 2]第 2図は、ヘアレスマウス皮膚における [14C]インドメタシン (A)及び [ ]マン- トール (B)の経皮浸透の結果を示す図である。
[図 3]第 3図は、 [14C]インドメタシン (A)及び [¾]マン-トール (B)の経皮浸透に対 する非標識インドメタシンの影響を示す図である。
[図 4]第 4図は、 [14C]インドメタシン (A)及び [¾]マン-トール (B)の分泌方向の経 皮浸透に対する、 NaN及び NaFの影響を示す図である。
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[図5]第5図は、 [14C]インドメタシン(白)及び [3H]マン-トール (黒)に対する、 pH値 の影響を示す図である。
[図 6]第 6図は、 [14C]インドメタシンの、吸収方向の非直線的な経皮浸透性を示す図 である。
[図 7]第 7図はへアレスマウス皮膚における Fluo— 3の経皮浸透の結果を示す図であ る。
[図 8]第 8図は、ヘアレスマウス皮膚及び正常ヒト皮膚内のトランスポーターの mRNA 発現結果を示す図である。
発明を実施するための最良の形態
[0013] 本発明の経皮薬剤又は経皮候補薬剤の皮膚透過性の検定方法としては、経皮薬 剤又は経皮候補薬剤を溶解した溶液を、皮膚切片で皮下組織側と表皮側とに区画
されたチャンバ一内のいずれか一方に注入し、他方に所定の溶液を注入して、前記 皮膚切片の生存条件下、所定時間後に前記経皮薬剤又は経皮候補薬剤の皮膚トラ ンスポーターを介しての皮膚透過性の程度を測定'評価する方法であれば、特に制 限されるものではなぐまた、皮下組織側や表皮側の溶液の温度 (液温)についても 特に制限されず、例えば、皮下組織側の溶液を体温に、表皮側の溶液を室温に維 持したり、あるいは皮下組織側及び表皮側の溶液の温度を共に体温に維持して、所 定時間後に経皮薬剤又は経皮候補薬剤の皮膚トランスポーターを介しての皮膚透 過性の程度を測定することができるが、皮下組織側の溶液を体温に、表皮側の溶液 を室温に維持することが好ましい。さらに、上記の皮膚透過性の程度の測定'評価と しては、皮膚透過の飽和性、阻害効果、方向指向性及びエネルギー依存性の 1又は 2以上の測定'評価を好適に挙げることができるが、他の高感度検出器を用いて低濃 度で経皮薬剤又は経皮候補薬剤を測定'評価する方法も本発明に含まれる。
[0014] 上記経皮薬剤又は経皮候補薬剤としては、既存の経皮薬剤に限らず経口剤とし て用いられるものや、今後経皮薬剤として開発される候補物質を挙げることができ、こ れら経皮薬剤又は経皮候補薬剤は、化学物質であっても、動植物や微生物の抽出 物等の組成物であってもよい。例えば、中枢作用薬 (鎮静薬 '抗癲癇薬 ·脳代謝改善 薬、抗不安薬、など)、鎮痛、鎮痒、収斂、抗炎症薬 (NSAID、ステロイドなど)、ォータ コイド類、尿失禁治療薬、気管支拡張薬、抗生物質及び副腎皮質ホルモン混合製剤 、抗真菌剤、抗ウィルス剤、循環器系薬、寄生性皮膚疾患用薬、抗悪性腫瘍薬、局 所麻酔薬、点眼,点鼻薬、末梢血管拡張薬 (ひえ性など)、外皮用殺菌消毒薬、創傷 皮膚科用薬、ホルモン薬、抗ヒスタミン薬、化膿性皮膚疾患用薬、外用酵素薬、皮膚 潰瘍薬、化粧品、育毛剤、養毛剤、動植物力もの抽出物、生薬、核酸、ポリペプチド などを挙げることができる。以下、これら経皮薬剤又は経皮候補薬剤の一例を示す。
[0015] 鎮痛、鎮痒、収斂、抗炎症薬 (NSAID、ステロイドなど)としては、アムシノ -ド、吉草 酸酢酸プレドニゾロン、吉草酸ジフルコルトロン、吉草酸デキサメタゾン、吉草酸ベタ メタゾン、酢酸ジフロラゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、ジフルプレドナート、ジプロピオン 酸ベタメタゾン、デキサメタゾン、トリアムシノロンァセトニド、ハルシノ -ド、ピバル酸フ ルメタゾン、フランカルボン酸モメタゾン、フルオシノ-ド、フルオシノロンァセトニド、フ
ルドロキシコルチド、プレドニゾロン、プロピオン酸アルクロメタゾン、プロピオン酸クロ ベタゾール、プロピオン酸デキサメタゾン、プロピオン酸デプロドン、プロピオン酸べク 口メタゾン、酪酸クロベタゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾ ン、酪酸プロピオン酸ベタメタゾン、酢酸プレドニゾロン、亜鉛華デンプン、亜鉛華、ィ ブプロフェンピコノール、インドメタシン、ゥフエナマート、ケトプロフェン、グリチルレチ ン酸、酸化亜鈴、ジクロフェナクナトリウム、スプロフェン、ピロキシカム、フエルビナク、 ブフエキサマク、フルルビプロフェン、ベンダザック、へパリン類似物質ゲノレ、ヒドロコ ルチゾン'クロタミトンなどを挙げることができる。
[0016] 抗生物質及び副腎皮質ホルモン混合製剤としては、塩酸ォキシテトラサイクリン'ヒ ドロコルチゾン、塩酸テトラサイクリン.酢酸ヒドロコルチゾン、吉草酸ベタメタゾン.ゲン タマイシン、吉草酸ベタメタゾン.フラジオマイシン、トリアムシノロン.フラジオマイシン 配合剤、フラジオマイシン'フルオシノロンァセトニド、硫酸フラジオマイシン'プレドニ ゾロン、エリスロマイシン、ピマリシン、ァシクロビル、硫酸ブレオマイシン、ヒドロコルチ ゾン 'フラジオマイシン配合剤、塩酸ォキシテトラサイクリン '硫酸ポリミキシン B、クロラ ムフエ-コール .フラジオマイシン配合剤、などを挙げることができる。
[0017] 寄生性皮膚疾患用薬 '抗真菌剤 *抗ウィルス剤としては、サリチル酸、塩酸クロコナ ゾール、塩酸ネチコナゾール、クロトリマゾール、ケトコナゾール、硝酸イソコナゾール 、硝酸ェコナゾール、硝酸ォキシコナゾール、硝酸スルコナゾール、硝酸ミコナゾー ル、ビホナゾール、ラノコナゾール、シッカニン、オフロキサシン、塩酸ミノサクリン、塩 酸テルビナフイン、塩酸ブテナフィン、トルナフタート、ナジフロキサシン、ァシクロビル 、ビダラビンなどを挙げることができる。
[0018] また、局所麻酔剤 ·眼科用剤としては、リドカイン、ァミノ安息香酸ェチル、硫酸アト 口ピン、硫酸ナファゾリンを、血管拡張剤としては、硝酸イソソルビド、ニトログリセリン を、気管支拡張剤としては、ッロブテロールを、ィ匕膿性皮膚疾患用剤としては、スルフ アジアジン、硫酸カナマイシン、エリスロマイシン、塩酸テトラサイクリン、クロラムフエ二 コール、硫酸ゲンタマイシン、硫酸フラジオマシン、コリスチン'フラジオマイシン、ノ シトラシン'硫酸フラジオマイシンを、それぞれ挙げることができる。
[0019] さらに、抗ヒスタミン薬としては、ジフェンヒドラミン、ラウリル硫酸ジフェンヒドラミン、ク
ロタミトンを、ホルモン薬としては、エストラジオールを、外皮用殺菌消毒薬としては、 ポピドンョード、ヨウ素を、外用酵素薬としては、塩化リゾチーム、ブロメラインを、抗悪 性腫瘍薬としては、フルォロウラシルを、皮膚潰瘍薬としては、白糖 'ポビドンョード配 合剤、アルプロスタジルアルファデクスを、その他の経皮薬剤又は経皮候補薬剤とし ては、塩酸クロルへキシジン'ジフェンヒドラミン配合剤、吉草酸ジフルコルトロン'リド 力イン、シコンエキス配合剤、トリべノシド 'リド力イン、尿素、タク口リムス水和物、ゼラ チン、酢酸ヒドロコルチゾン'ヒノキチオール配合剤、エトレチナート、カルシポトリオ一 ル、タカルシトールをそれぞれ挙げることができる。
[0020] 上記経皮薬剤又は経皮候補薬剤の剤型としては、ハツプ剤、テープ剤、プラスター 剤、軟膏剤、クリーム剤、液剤、ローション剤、散布剤、ムースタイプ、エアロゾルタイ プ等を挙げることができる。
[0021] 使用する皮膚切片としては、ヘアレス皮膚の切片が好ましぐその由来は特に制限 されないが、マウス、ラット、ィヌ、ゥシ、ヒト等の哺乳動物の皮膚切片、中でも調製の 簡便なヘアレスマウスの皮膚切片が好ましい。皮膚切片は、切除した皮膚の皮下脂 肪を軽く分離するなど常法により調製することができる。また、皮膚切片として、特定 の皮膚トランスポーターの発現が抑制された皮膚切片や、特定の皮膚トランスポータ 一の発現が増幅された皮膚切片を用いることもできる。
[0022] 皮膚切片で皮下組織側と表皮側とに区画されたチャンバ一としては、垂直方向に 皮膚切片を装着できる Ussing-type Chamberを好適に例示することができる。これら 区画されたチャンバ一の皮下組織側か表皮側の 、ずれか一方には、経皮薬剤又は 経皮候補薬剤を溶解した溶液が、他方には所定の溶液が収容されるが、皮下組織 側の溶液は体温 (約 36— 37°C)に、表皮側の溶液は室温に維持される。また、チヤ ンバーの両側の溶液に、 95%0 /5%COのガスを供給するなど、皮膚切片の生
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存条件下で皮膚透過性の程度が測定 '評価される。
[0023] 皮膚透過性の測定を容易ならしめるために、放射性同位体又は蛍光物質等で標 識した経皮薬剤又は経皮候補薬剤を有利に用いることができ、例えば、経皮薬剤又 は経皮候補薬剤として、 3H、 "C、 1251若しくは1311等の放射性同位体で標識した経 皮薬剤化学物質又は経皮候補薬剤化学物質を有利に用いることができる。その他、
皮膚透過性の測定を共焦点顕微鏡法により実施するために、細胞膜マーカーとして
FM4 - 64等の蛍光色素を共存させることもできる。
[0024] 経皮薬剤又は経皮候補薬剤を溶解した皮下組織側の溶液としては、エネルギー源 を含有する溶液、すなわちグルコースその他のエネルギー源となる栄養素を含有し た液が好ましぐ中でも体液にその組成が類似しているものが好ましぐハンクス液、リ ンゲル液、クレプス ·ヘンゼライト液を具体的に例示することができ、また、経皮薬剤 又は経皮候補薬剤を溶解した表皮側の溶液としては、経皮薬剤又は経皮候補薬剤 を溶解しうる液であれば特に制限されな ヽが、上記エネルギー源を含有する溶液の 他、プロピレングリコール、グリセロール、エチレングリコール、ソルビトール等の多価 アルコール含有液や、エタノール含有液を具体的に例示することができ、中でもプロ ピレンダリコール含有液やノヽンタス液を有利に用いることができる。したがって、好ま しい態様として、経皮薬剤又は経皮候補薬剤を溶解した溶液として、皮下組織側が 経皮薬剤又は経皮候補薬剤を溶解したエネルギー源を含有する溶液を、表皮側が 経皮薬剤又は経皮候補薬剤を溶解した多価アルコール含有溶液を、それぞれ用い る経皮薬剤又は経皮候補薬剤の皮膚透過性の検定方法や、経皮薬剤又は経皮候 補薬剤を溶解した溶液が、皮下組織側及び表皮側ともに経皮薬剤又は経皮候補薬 剤を溶解したエネルギー源を含有する溶液である経皮薬剤又は経皮候補薬剤の皮 膚透過性の検定方法を挙げることができる。
[0025] 経皮薬剤又は経皮候補薬剤の皮膚透過性の検定に際しては、後述の実施例に記 載されて!ヽるように、非標識の経皮薬剤又は経皮候補薬剤を皮下組織側と表皮側と に共に用いて、放射性同位体又は蛍光物質等で標識した経皮薬剤又は経皮候補 薬剤の飽和性経皮浸透を調べることや、表皮側の溶液の pHを変化させ、 pHの相違 による皮膚透過性の影響を調べることや、 NaN及び NaFを皮下組織側と表皮側と
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に共に用いて、経皮薬剤又は経皮候補薬剤の浸透が、エネルギー依存性であるか どうかを調べることが好まし 、。
[0026] 次に、本発明の経皮薬剤又は経皮候補薬剤の皮膚透過性促進又は抑制物質のス クリーニング方法としては、経皮薬剤又は経皮候補薬剤を溶解した溶液、及び、経皮 薬剤又は経皮候補薬剤と被検物質とを溶解した溶液を、皮膚切片で皮下組織側と
表皮側とに区画されたチャンバ一内の皮下組織側に注入し、他方に所定の溶液を 注入して、前記皮膚切片の生存条件下、所定時間後に前記経皮薬剤又は経皮候補 薬剤の皮膚トランスポーターを介しての皮膚透過性の程度をそれぞれ測定し、皮膚 透過性の程度を比較評価する方法であれば特に制限されるものではなく、上記被検 物質としては、化学物質であっても、動植物や微生物の抽出物等の組成物であって もよぐ例えば、上皮細胞基底側に存在する有機酸 (ァ-オン)輸送担体阻害剤であ るプロべネシド(probenecid)、ミトコンドリアの酸化的リン酸化を脱共役させる FCCP ( カルボ二ルシアニド p—トリフルォロメトキシフエニルヒドラゾン)、アドレナリン及びコリン 作動神経の遮断薬 TEA (テトラェチルアンモ-ゥム)などを挙げることができる。また、 皮下組織側や表皮側の溶液の温度 (液温)は特に制限されず、例えば、皮下組織側 の溶液を体温に、表皮側の溶液を室温に維持したり、あるいは皮下組織側及び表皮 側の溶液の温度を共に体温に維持して、所定時間後に経皮薬剤又は経皮候補薬剤 の皮膚トランスポーターを介しての皮膚透過性の程度を測定することができるが、皮 下組織側の溶液を体温に、表皮側の溶液を室温に維持することが好ましい。さらに、 上記の皮膚透過性の程度の測定'評価としては、皮膚透過の飽和性、阻害効果、方 向指向性及びエネルギー依存性の 1又は 2以上の測定'評価を好適に挙げることが できるが、他の高感度検出器を用いて低濃度で経皮薬剤又は経皮候補薬剤を測定 •評価する方法も本発明に含まれ、評価に際しては、被検物質不存在下における対 照と比較評価することが好まし ヽ。
本発明の経皮薬剤又は経皮候補薬剤の皮膚透過性促進又は抑制物質のスクリー ユング方法においても、経皮薬剤又は経皮候補薬剤として、放射性同位体又は蛍光 物質等で標識した経皮薬剤又は経皮候補薬剤を用いることが好ましい。また、経皮 薬剤又は経皮候補薬剤を溶解した溶液として、上記本発明の検定方法におけると同 様に、皮下組織側が経皮薬剤又は経皮候補薬剤を溶解したノ、ンクス液等のエネル ギ一源を含有する溶液を有利に用いることができ、表皮側が経皮薬剤又は経皮候補 薬剤を溶解したプロピレングリコール等の多価アルコール含有液やノヽンタス液等のェ ネルギ一源を含有する溶液を有利に用いることができる。さらに、スクリーニングに際 して、上記本発明の検定方法におけると同様に、非標識の経皮薬剤又は経皮候補
薬剤を皮下組織側と表皮側とに共に用いて、放射性同位体又は蛍光物質等で標識 した経皮薬剤又は経皮候補薬剤の飽和性経皮浸透を測定'評価することや、表皮側 の溶液の pHを変化させ、 pHの相違による皮膚透過性の影響を測定'評価すること や、 NaN及び NaFを皮下組織側と表皮側とに共に用いて、経皮薬剤又は経皮候補
3
薬剤の浸透が、エネルギー依存性であるかどうかを測定'評価することが好まし 、。
[0028] 以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこ れらの例示に限定されるものではない。実施例において、全てのデータは、平均値 士標準誤差で示し、統計学的解析を Student' s t testで行った。平均値間の相違は、 p値が 0. 05未満であるときに有意とした。
実施例 1
[0029] [材料と動物]
[14C]インドメタシン(740MBqZmol)及び [3H]マン-トール(740GBqZmol)は 、 PerkinElmer Life Sciences, Inc.及び American Radiolabeled Chemicals Inc.X^り、そ れぞれ購入した。 Fluo— 3— AMと FM4— 64は、それぞれ株式会社同仁ィ匕学研究所 及び Molecular Probe社から購入した。 SUPERSCRIPT™II RNase H—は Invitrogen Corp.から購入した。正常ヒト成人皮膚 cDNAは、 Invitrogen Corp.及び BioChain Institute Inc.力も購入した。また、 5週齢から 7週齢のォスのへアレスマウス(HR— 1) を日本エスエルシー株式会社から、 5週齢から 7週齢のォスのへアレスマウス(FVB) を日本クレア株式会社から購入した。 FVB/Mrpl (一 Z—)マウスは、文献 (Nature Med.3: 1275-1279, 1997)記載の方法に準じて作製した。動物実験は、金沢大学宝町 キャンパスの動物実験に関する指針に従って行われた。
[逆転写 ポリメラーゼ連鎖反応 (RT— PCR) ]
ヘアレスマウスの皮膚を採取し、 β メルカプトエタノールをカ卩えた RLT緩衝液を入 れ、 RNeasy Mini Kit (QIAGEN社製)を用いて全 RNAを抽出した。 1マイクログラムの 全 RNAを、オリゴ(dT) (Life technologies)及び SUPERSCRIPT™ II RNase H—
12-18
Reverse Transcriptase 200 Uを用いて逆転写し cDN Aを作製した。反応後の混合物 に、適切なセットのマウスプライマー(表 1)及びヒトプライマー(表 2)を用いて、 PCR を 30サイクル行った。 PCR産物を、 2%のァガロースゲル上に電気泳動し、臭化工チ
ジゥムで染色した。 PCRの各生成物の量を、 AE— 6955Light Capture instrument ( ATTO社製)で測定した。
[0030] [表 1]
Tableに Gene-specific primers for mouse
Gene * 一 Forward primer Reverse pnmer 1 Product size
,
, 一
一
[0031] [表 2]
Table II. Gene-specific primers for human
Gene ' Forward primer1, Reverse primer 0 Product size (bp) OR 1 (ABCB 1 ) 5*-GCTCCTGACTATGCCAAAGC-3' 5-ATTAGGCCTTCCGTGCTGTA -3· 98
MRP1 (ABCC 1 ) 5'-CATGAAGGCCATCGGACTCT-3" 5.CAGGTCCACGTGCAGACAG-3' 259
M P2 (ABCC2) 5'-CTCATTCAGACGACCATCCA-3' 5'-GGCTGCCGCACTCTATAATC-3' 133
M P3 (ABCC3) S'-GACTTCCAGTGCTCAGAGGG-S' 5'-TGTCAGTCTCCAGGTCGATG-3' 139
P4 (ABCC4) 5'-CTGAATTAGCAGAATCAGGATCC-3' 5'-TTCAATCTGTGTGCAATGGTTAGC-3' 205
M P5 (ABCC5) 5 -3' 5 -3' 379
MRPG (ABCC6) 5'-CCCATTGGTCACCTGCTAAACC-3' 5-CAGCTGCAAACACCAGGCCATT-3' 442
RP7 (ABCC7) 5'.GGGTAGACACACATGAAGTCCAA-3' 5'-C3AAGGCAGTGTACCCTTGATG-3' 534
Gし UT5 (SLC2A5J 5'-AGCGTCTGTAGGGCTTTCTTG-3' 5'-CTCCTTGCAAACGTAGATGGC-3' 158
AE2 (SLC A2) 5-TTACGTCAAGAAGGTCCGGAC-3' 5'-GGTCGGTGAAGATACGGGTGA-3' 249
NHE3 (SLC9A3J 5'-GAGTCCTTCAAGTCGACCAAG-3' 5'-CAGGG GTCAATTCCTGCAG-3' 28S
PEPT1 (SLC15A1) 5'-ACCGCCATCTACCATACGTT-3' 5-GAGCGACACAATGGTCTTGA-3' 105
PEPT2 (SLC15A2) 5'-GCCATTOCTGACTCGT£3(3TT-3' 5'-TGTGTACCAC GTCCTCCC-3, 124
MCT1 <SLC16A1) 5'-AGCCCTCATGCGACCAATCG.3' 5'"CCATACATGTCATTGAGCCGAC-3' 675
ff-CAGTACTTCTTCAGTTTTGCAA 5tB
MCT3 (SLC16A3) 5'-ACCATCCTGGGCTTCATTGA-3' 5'-CAGAAGAAGTTGCCCAGCAG.3' 425
MCT4 (SLC16A4) S'-CCTCTTACCTTGTTTCTGTAGC-y 5*-TATAACCAGCCTGCTATAGGTG-3' 340
CT5 (SLC16A5) 5'-AGCTTCTACGCCCTGCAGAA-3' S'-TTGCCCAACTCACATGGCAG-S' 321
NPT1 (SLC17A1) 5'-AACGAG6CCGACTTACTTCTATGA-3' 5'-ACCAGGGAGGATGTGATGTATT-3' 232
NPT2 (SLC3 A1) 5 -CCAGAAGGTCATCAATACGGACTTC-3' 5'-ACAGAGGGCAATCTGGAAAGCGCT-3" 274
OATP-A (SLC21A3) ff-GTGATACAGTTCAATGCATTCG S'-CTCATCGCTGACAAGATTAG-S' 584
OATP-B (SLC21A9) 5*-CAGAAG 3TGGTATCAGCCTGA-3' S'-CTGCTAAGACCTTTCGCCGA-S' 174
OATP-C (SLC21A6) S'-ATCAGTTGCCGGACTAACCAT.B' 5'«CATGTGAGGTGCCTCCAAGT~3' 368
OATP-D (SLC21A11) S'-CTGTGAATGCCAAACCGATTC-S' 5'-AGGGATGAAGCCCAACAAAC-3' 343
OATP-E {SLC21A12) 5,-T ACCGCCGTTCCCATCCTT-3' 5'-CTGAGCTTGTTCACAAAGAAGCC-3' 376
OATP8 (SLC21A8) 5' TCAG GCC 3GCCTAACCTT-3' 5 -3' 427
OCT1 (SLC22A1) 5-GATTTAAAGATGCTTTCCCTCGAA-3' 5'-TCCCTCAGCC GAAGACTATGAA-3' 521
OCT2 (SLC22A2) 5-TTGCTGGAGGTCTGGTGCTGTT.3' 5'-GGTTGAGTTGTATGGGCTTTGTGATGAG-3' 250
OCT3 (SLC22A3) 5'-TGATCATCTTTGGTATCCTGGCATC-3' 5.-MCTTTCTCAAATCCTTGGTCGGCA-3' 562
OCTN1 (SLC22A ) 5'-TCATTCAACTGGTACCTGTGG-3' 5'-GACTACCCATGACGATGTAG-3' 246
OCTN2 (SLC22AS) 5'-CCATAATGCTGTGGATGACC-3' 5'-CCAAGGTAAACGAAGTAGGG-3' 412
OAT1 (SLC22A6》 5'-T<3TCCGAACCTCTCTTGCTGTGC-3' 5'-TTCCTCCTCCTTGTGTGGGTGG-3' 510
OAT2 (SLC22A7} 5 -3' S'-CAACCCAAGGGGCACCTTTAT^- 473
OAT3 (SLC22A6) 5'^CATACOCTGGTGGTCTTGT-3' 5'-GAACTTGGCTGGGACATCGAr-3' 332
OAT4 (SLC22A9) 5'-TTCTTCCTCCCGGAGACCCA-3' 5'-GGCTGAGTGAAGGTGTAAAGACA-3' 451
URAT1 (SLC22A12) 5'-CAGCTTTACCCAGAAGCCCT-3' 5"-GTAGGAGTTTCACGGGCATC-3' 197
ENT1 (SLC29A1) 5'-CTGAGCGGAACTCTCTCAGT-3' 5'-CTGGCAATAGCGCAGATCATG-3' 379
Beta-acln 5'-AAGAGATGGCCACGGCTGCT-3' 5*-TCCTTCTGCATCCTGTCGGCA-3' 275 a. Nomenclature within paren^ieses or a single name corresponds to lh« Official Gen» Symbol, according to the HUGO Gene Nomenclature CommittBe {hWp //www iiH afi.uk/ b. Sequences were taken from GenBank; the accession numbers were as fotk>ws: N .000927 (MDR1), NM01989d ( RP1), N _000392 (MRP2), MM— 020038 {MRP3), N _005845 (MRP4), ΝΜ_005βθθ (MRP5). NM.001171 ( RP6), N _000492 (WRP7). M55S31 (GLUT5)t N _O03O4O (AE2), N _004174 (NHE3), NM.005073 (PEPT1). S78203 (PEPT2), MM— 003051 (MCT1). NM_004731 ( CT2), NM_00 207 (MCT3). N _00 696 (MCT4), NM— 004695 ( CT5), NM_005074 (NPT1), NM_003052 (NPT2), NM_ 134431 (OATP-A). NM_0O7256 (OATP-B), N _006 46 (OATP-C), NM.013272 (OATP-D). N .01635 (OATP-E), NM_019B44 (OATP-8), NM_003O57 (OCT", N _003058 (OCT2), NM.021977 (OCT3).
AB007446 (OCTN1), AB015050 (OCTN2), NM.00 790 (OAT1), NM.006672 (OAT2), N .00 254 (OAT3), NM.018484 (OAT4).
NM.153378 (U AT1 ), U81375 (ENT1). NM_001101 ( β -actin). [Ussing- type Chamber Methodによる浸透実験]
浸透実験を、文献 (J. Pharm. Pharmacol. 49: 108-112, 1997、 J. Pharm. Sci. 92: 1502-1508, 2003)記載の方法で行った。簡潔に言うと、ヘアレスマウスを安楽死させ 、直に皮膚を切除して皮下脂肪を軽く分離した皮膚切片を、 0. 766cm2の露出区域 (exposed area)を有する Ussing- type Chamber内に縦方向に装着した。図 1に示すよ うに、皮膚切片で区画された皮下組織側のチャンバ一内に、ハンクス液 (HBSS、 13 6. 7mMの NaCl、 5. 36mMの KC1、 0· 952mMの CaClゝ 0· 812mMの MgSO、
0. 441mMの KH PO、 0. 385mMの Na PO、 25mMの D—グルコース及び 10m
Mの HEPES、 pH7. 4) 1. 2mLを、表皮側のチャンバ一内に、プロピレングリコール
:水(1: 1)の混合溶液 1. 2mLをそれぞれ添加し、溶液の温度を、皮下組織側では 3 7°Cに、表皮側では室温に維持した。皮膚組織の生存度を維持するために、チャン バーの両側の溶液に、 95%0 /5%COのガスを、輸送実験中に供給した。 O /
2 2 2
COの気泡は、組織に酸素を供給しただけではなぐ組織の周囲の溶液を混和した
2 [14C]インドメタシンと [¾]マン-トールとの経皮浸透性を測定するために、テスト 化合物を皮下組織側又は表皮側に用いて、所定の時間に、 0. 4mLの溶液を反対 側から採取し、同量の新鮮な溶液と交換した。採取したサンプルを液体シンチレーシ ヨンカウンターで測定した。また、 [14C]インドメタシンの経皮浸透に対する pHの効果 を調べるために、皮下組織側ではハンクス液 (pH7. 4)としたの〖こ対し、表皮側での 試験溶液をプロピレングリコール: 20mMのリン酸緩衝液(1 : 1)で構成した。浸透性 係数の値( μ L/cmVhr, P 及び P )は、時間(hr)に対する浸透性のプロットの sec abs
直線部の傾き力ら求めた( μ L/cm )。
[薄層クロマトグラフィー (TLC)方法]
TLCを用いて、インドメタシングルクロ-ドが実験中に発生するかどうかを文献( Pharm. Res. 17: 432-438, 2000)記載の方法に準じて調べた。簡潔に言うと、 [14C]ィ ンドメタシンの経皮浸透実験の後、テスト化合物の反対側の培地を、ジェチルエーテ ル (6mL)で抽出した。抽出物が乾燥するまで蒸発させ、残留物をエタノールに溶解 し、この溶液を TLCプレート上にプロットした。代謝物を、クロ口ホルム:酢酸(95 : 5v Zv)の混合液で分離し、ラジオアイソトープスキャナーを用いて定量した。得られた 強度と、標準の [14c]インドメタシンのものとを比較した。
[共焦点顕微鏡法]
ヘアレスマウスと脱毛クリームで脱毛し 24時間回復させた FVB及び FVBZMrpl ( —Z—)マウスの皮膚を、それぞれ氷上にてマイクロスライサー(DTK— 2000, Dosaka EM Co., LTD.)で皮膚切片(厚さ: 100 μ m)を作製した。皮膚切片は Fluo— 3—AM (10 iu M)とFM4—64 (l iu M)を添加した4° Cのハンクス液(pH7. 4)に 2時間浸 透させた後、皮膚切片を LabTek chambered micro cover glass (24X60mm)にのせ 、共焦点顕微鏡(Zeiss Axiovert 100M LSM510)に装着し、室温(20— 22° C)で、 4
88nmと 543nmレーザーを使用し、水浸レンズ(630倍)で蛍光を観察した。
[インドメタシンの方向性経皮浸透]
[14C]インドメタシン(47 M)及び [3H]マン-トール(0. 25 M)の経皮浸透性を 、 Ussing-type chamber methodを用いて、皮下から表皮側に向って(四角)、及び表 皮から皮下組織側に向って (丸) 4時間、ヘアレスマウス皮膚で調べた。結果を図 2に 示す (各点は、 3— 4回の実験における平均値士標準誤差を表す。 ) 0 [14C]インドメタ シンの経皮浸透は、直線的であり、分泌方向の浸透性 (皮下組織側から表皮側; P
sec
)は、吸収方向(表皮から皮下組織側; P )と比較して、 4倍高力 た (図 2— A)。これ
abs
に対し、 [3H]マン-トールの経皮浸透では、一方向性の輸送は観察されな力つた( 図 2— B)。 [14C]インドメタシンの浸透性は、 [3H]マン-トールと比べて、かなり高かつ た (5倍以上)。
[反対側に現れる放射能は、主として親化合物によるものである。 ]
インドメタシングルクロ-ドは、 CMOATZMRP2の基質であり(Pharm. Res. 17: 432-438, 2000)、インドメタシンは OAT1 (J. Pharmacol. Exp. Ther. 303:534-539, 2002)、 OAT2 (J. Pharmacol. Exp. Ther. 298:1179-1184, 2001)、 OAT3 (J.
Pharmacol. Exp. Ther. 303:534—539, 2002)及び NPT1 (Biochem. Biophys. Res. Commun. 270: 254-259, 2000)により輸送されるが、 cMOATZMRP2 (Pharm. Res. 17: 432-438, 2000)によっては輸送されない。インドメタシン力 経皮浸透実験中に 代謝した力どうかを調べるために、 [14c]インドメタシンを皮下組織側に添加した後、 表皮側に現れた放射能を、 6時間の薄層クロマトグラフィー (TLC)により分離した。 4C]インドメタシンの回収率は、 80%以上であった。標識化合物の 95%以上は、 [14 C]インドメタシンであった。したがって、本実験におけるインドメタシンの代謝は、ごく わずかであるとみなされた。
[インドメタシンの飽和性経皮浸透]
能動輸送の重要な特徴の一つは飽和性にあるので、 [14c]インドメタシンの経皮浸 透が飽和性であるかどうか調べた。 [14C]インドメタシン (47 M)及び [¾]マン-ト ール(0. 25 M)の経皮浸透を、 Ussing type chamberの両側に添加した非標識イン ドメタシン(500 μ Μ)の存在下(白柱)、非存在下(黒柱)で 4時間調べた結果を図 3
に示す (各柱は、 3— 4回の実験における平均値士標準誤差を表す。 ) 0その結果、 非標識インドメタシン(500 μ Μ)は [14C]インドメタシンの Ρ を増カロさせた力 P に sec abs は影響しな力つた(図 3— A)。これに対し、 [¾]マン-トールの浸透性に対する非標 識インドメタシンの効果は、観察されな力つた(図 3-B)。したがって、非標識インドメ タシンの効果は、 [14c]インドメタシンの浸透に特異的であり、 [14C]インドメタシンの 経皮浸透は、分泌方向に飽和性である。
[インドメタシンの ATP依存性経皮浸透]
[14C]インドメタシンの浸透力 エネルギー依存性であるかどうか調べるために、 [14 C]インドメタシンの浸透に対する ATP消費(depletor)の効果を調べた。 Ussing-type chamberの両側に、 NaN及び NaF (10mM)を負荷してから 30分後、 [14C]インドメ
3
タシン (47 M)及び [3H]マン-トール(0. 25 M)の経皮浸透性を、添カ卩した Na N及び NaF (10mM)の存在下(白円)及び非存在下 (黒円)で 4時間後に観察した
3
結果を図 4に示す (各点は、 4一 5回の実験における平均値士標準誤差を表す。 ) 0 その結果、 [14C]インドメタシンの P 力 NaN及び NaFの存在下で増加すること( sec 3
図 4-A)を見い出したが、 [ ]マン-トールの浸透性に対しては、何の効果も観察さ れな力つた(図 4 B)。これらの結果は、吸収方向の [14C]インドメタシンの浸透力 ェ ネルギー依存性であることを示した。
[インドメタシンの経皮浸透に対する pHの効果]
皮膚の環境が、弱酸性であるため、 [14C]インドメタシンの経皮浸透性に対する pH の効果を確認した。ヘアレスマウス皮膚の pHは、比較的一定のままであり(pH5. 9) (J. Investig. Dermatol. Symp. Proc. 3: 110-113, 1998)、ヒトの皮膚の pHに類似して いた (pH4—6) (21)。チャンバ一の表皮側で [14C]インドメタシン (47 /ζ Μ)及び [3H ]マン-トール(0. 25 M)の経皮浸透性の係数を、異なる pH値 (pH5. 0、 6. 0、 7 . 4)で、吸収方向(A)及び分泌方向(B)で観察した結果を図 5に示す (各柱は、 4一 5回の実験における平均値士標準誤差を表す。 ) 0インドメタシンの pKa値は 4. 5で あるので、表皮側の培地の pH (5. 0、 6. 0及び 7. 4)の変化は、インドメタシンのィォ ン化程度を変更させた。表皮側の pH値が減少すると、 [14C]インドメタシンの Ρ 力 S abs 上昇することを見い出した。これに対して、 [3H]マン-トールの P には何の変化も
観察されなかった(図 5-A)。反対に、表皮側において、 [14C]インドメタシン又は [¾ ]マン-トールの p に、 PHの効果は観察されな力つた(図 5— B)。その結果、 [14C]
sec
インドメタシンの一方向性の浸透は、表皮側にぉ 、て pH値の減少につれて消失した
[表皮側における、 pH5. 0でのインドメタシンの飽和性浸透]
表皮側において、 pH5. 0での [14C]インドメタシンの P を、非標識インドメタシン
abs
の非存在下又は存在下で調べた。 [14C]インドメタシン (47 M)及び [3H]マン-ト ール(0. 25 μ Μ) (Β)の経皮浸透性を、 Ussing- type chamberの両側に添加した非 標識インドメタシン (500 M)の存在下(白)及び非存在下 (黒)で 4時間後に調べた 結果を図 6に示す (各点は、 3— 5回の実験における平均値士標準誤差を表す。 )0 なお、非標識インドメタシンの存在下及び非存在下とも、チャンバ一の表皮側の pH 値は、 5. 0に保たれた。その結果、表皮側において、 pH5. 0で、 [14C]インドメタシン の P は、非標識インドメタシン(500 M)によって増加した(図 6— A)。しかし、 [3H] abs
マン-トールの P に対する、非標識インドメタシン(500 μ Μ)の効果は観察されな
abs
かった(図 6— B)。 [14C]インドメタシンの吸収方向の浸透は飽和性であるとみなされ た。
[Fluo— 3の方向性経皮浸透]
Fluo—3の方向性経皮浸透を、 Fluo— 3のカルボキシル基を脂溶性のァセトキシメ チルエステル体にして細胞膜透過性とし、細胞内のエステラーゼにより加水分解され て Fluo— 3となる Fluo— 3— AM ( 1—[2— Amino— 5— (2 , 7— dichloro— 6— hydroxy— 3— oxo- 9- xanthenyl)phenoxy]- 2- (2- amino- 5- methylphenoxy)ethane- Ν,Ν,Ν',Νし tetraa cetic acid, pentaacetoxymethyl ester ; 10 μ M)と: ¾:光色素 FM4— 64 (1 μ Μ)を添カロ したハンクス液を浸透させ、 Ussing-type chamberに設置し、チャンバ一の両側から排 泄された Fluo— 3を調べた。また、 Fluo—3— AMに、それぞれプロべネシド( probenecid) 5mM、 FCCP5 μ M、 TEA5mMをカ卩えた検体についても同様に Fluo 3の方向性経皮浸透を調べた。結果を図 7に示す。その結果、皮膚組織内で生成 された Fluo— 3の経皮浸透は、直線的であり、吸収方向(皮膚組織内から皮下組織 側;図 7左のコントロール)は、分泌方向の浸透性 (皮膚組織内から表皮側;図 7右の
コントロール)と比較して、 50倍高力つた。また、プロベネシド、 FCCP、 TEAの中で は、 FCCPを共存させた場合、 Fluo—3単独に比べて、約 2倍の吸収を示した。
[皮膚内におけるトランスポーターの発現]
ヘアレスマウス皮膚の全 RNA (パネル A)と、正常ヒト皮膚の cDNA (パネル B)にそ れぞれ、 RT— PCR及び PCRを行った。ヒト cDNAは、年齢 80歳 Z女性(パネル B— I )、年齢 44歳 Z男性 (パネル B - Π)及び年齢 44歳 Z男性、年齢 58歳 Z女性、年齢 6 5歳 Z女性の 3人の混合物(パネル B— III)を用いた。 PCR生成物は、 2%ァガロース ゲル電気泳動により分析し、臭化工チジゥムで染色した。結果を図 8に示す。
[0034] パネル Aの 1一 32レーンは、 1, Mdrla;2, Mdrlb;3, Mrpl;4, Mrp2;5, Mrp 3;6, Mrp4;7, Mrp5;8, Mrp6;9, Smvt;10, PepTl;ll, PepT2;12, Mctl; 13, Mct2;14, Mct3;15, Mct4;16, Nptl;17, Oatpl;18, Oapt2;19, Oapt 3 ;20, Oatp4;21, Oatp5;22, Oatpll;23, Oatpl4;24, mPGT;25, Octl;2 6, Oct2;27, Oct3;28, Octnl;29, Octn2;30, Octn3;31, Oatl;32, Oat2 をそれぞれ示す。
[0035] また、パネル Bの 1一 38レーンは、 1, j8—ァクチン; 2, Uratl;3, Mrpl;4, Mrp2
;5, Mrp3;6, Mrp4;7, Mrp5;8, Mrp6;9, Mrp7;10, Oatl;ll, Oat2;12, O at3;13, Oat4;14, Oatp— A;15, Oatp— B;16, Oatp-C;17, Oatp—D;18, O atp— E;19, Oatp8;20, Mdrl;21, Octl;22, Oct2;23, Oct3;24, Octnl;25 , Octn2;26, Nptl;27, Npt;28, Peptl;29, Pept2;30, Ae2;31, Nhe3;32 , Glut5;33, Entl;34, Mctl ;35, Mct2;26, Mct3;37, Mct4;38, Mct5をそ れぞれ示す。
[0036] ヘアレスマウス皮膚で、 MRP1、 MRP3、 MRP4、 MRP5、ペプチドトランンスポー ター 1 (PEPT1)、 PEPT2、モノカルボン酸トランスポーター 1 (MCT1)、 MCT2、 M CT4、 ΟΑΤΡ3、 ΟΑΤΡ11、プロスタグランジントランスポーター(PGT)、有機カチ オントランスポーター 3 (OCT3)、有機カチオン Zカル-チントランスポーター 1 (OC TNI)、 OCTN2及び OCTN3の発現を観察した(図 8— A)。
[0037] また、正常ヒト皮膚 (ResGen Invitrogen社製及び Biochain Institute社製)の cDNA 内で、トランスポーターの発現を観察した。正常ヒト皮膚で、 MRP1、 MRP3、 MRP4
、 MRP5、 MRP6、 GLUT5、 AE2、 MCT1、 MCT4、 MCT5、 OATP— B、 OATP — D、 OATP— E、 OCTNl、 OCTN2及び ENT1の発現を観察した(図 8— B)。 MRP 2、 MDR1、 PEPT1、 PEPT2、 MCT2、 MCT3、 OCTl、 OCT3及び URAT1の 発現は、ドナーによっては検出され、発現に個体差のあることが示唆された。
[考察]
非標識インドメタシン(500 M)による飽和は、分泌方向において、明ら力に観察 されたが、 [14C]インドメタシンの飽和された浸透は、表皮区画において、低 pHで、 吸収方向においても見い出された。これらの結果は、インドメタシン輸送に複数の輸 送システムが関与しているのであれば説明できる。経皮吸収の効率の点からは、この ような吸収方向の非直線の動態学は重要である。吸収方向のインドメタシンの経皮浸 透を飽和するために、インドメタシンを経皮投与したときの皮膚表面における濃度は、 上記実施例で用いた非標識インドメタシンの濃度(500 μ Μ)と比較すると、通常とて も高い。このように、上記実施例の結果は、経皮投与した薬剤の浸透性は、投与した 濃度に左右されることを示唆して 、る。
[0038] 表皮区画における pH値の減少は、 [14C]インドメタシンの Ρ を増加させる力 P
abs sec に影響しないことを見い出した。その結果、表皮区画において、 pH5. 0で [14C]イン ドメタシンの一方向性の浸透は消失する。 P 力このように増加した一つの可能性と
abs
して、角質層 (SC)内において非イオンィ匕した [14c]インドメタシンが分配されて増加 したことが挙げられる。それにより、角質層(SC)力 皮下組織側への高濃度勾配を 引き起こし、 [14C]インドメタシンの非直線 P を導く(図 6— A)。しかし、プロトン依存
abs
性輸送システムが [14c]インドメタシンの P に関与しているという、別の仮説もある。
abs
以前の研究で、本発明者らは、モノカルボン酸トランスポーター 1 (MCT1)力 pH依 存性方式で、弱有機酸の腸管吸収に関与して 、ることを証明した (Biochem.
Biophys. Res. Commun. 214: 482—489, 1995、 J. Pharm. Pharmacol. 51 : 1113—1121 , 1999)。一方で、有機ァ-オン性ィ匕合物を輸送する OATPファミリーのトランスポータ 一の発現も確認された。
[0039] [14C]インドメタシンの経皮浸透に関与している可能性があるトランスポーター(1つ 又は複数)を同定するために、ヘアレスマウス皮膚におけるトランスポーターの発現を
RT— PCRで調べた。 MRP1、 MRP3、 MRP4及び MRP5の発現を確認したほ力、 P
EPT1、 PEPT2、 MCT1、 MCT2、 MCT4、 OATP3、 OATPl l、 mPGT、 OCT3
、 OCTNl、 OCTN2及び OCTN3の発現もへアレスマウス皮膚で観察した(図 8)。 インドメタシンが、 OATl (J. Pharmacol. Exp. Ther. 303:534-539, 2002)、 OAT2 (J.
Pharmacol. Exp. Ther. 298:1179-1184, 2001)及び Oat3 (J. Pharmacol. Exp. Ther.
303:534-539, 2002)の基質であり、 NPT1の低基質(Biochem. Biophys. Res.
Commun. 270: 254-259, 2000)であること力 以前報告されている。し力し、本実施例 の結果においては、 ΟΑΤ1、 OAT3及び NPT1の発現は検出されず、他のトランス ポーター力 Sインドメタシンの浸透に関与している可能性を示唆した。 正常ヒト皮膚におけるトランスポーターの発現も調べ、ヘアレスマウス皮膚と比較し た。ヘアレスマウス皮膚における MRP、 MCT及び OCTNファミリーメンバーの発現 は、正常ヒト皮膚における発現と類似であり、ヘアレスマウス皮膚は、これらのトランス ポーターの機能を調べるためのよいモデルとなりうることを示唆した。近年の研究と同 様、 MRP2以外の MRPファミリーメンバーの発現を、全ての個体で検出した (J. Invest. Dermatol. 116: 541-548, 2001)。ヘアレスマウス皮膚でも、 Mrpl、 Mrp3、 M rp4及び Mrp5の発現を観察した力 Mrp2は観察されず、発現の特徴がヒト皮膚と 類似であることが示された。ヒト皮膚において OATP— B、 OATP— D及び OATP— E の発現を全ての個体で観察した。この結果は、最近の報告 (J. Invest. Dermatol. 120: 285-291, 2003)と一致した。 OATP— Bは、基質として、ステロイドの硫酸抱合体 ゃプラバスタチン、フエキソフエナジン等の薬物は受け入れる力 ダルク口-ド抱合体 は受け入れず、ァ-オン性化合物の胃腸吸収を媒介することが提案されて ヽる (J. Pharmacol. Exp. Ther. 306:703-708, 2003)。 OATP— Cは、ステロイド抱合体の両方 の型を輸送するとみなされていた(Pharm. Res. 18: 1262-1269, 2001)が、 OATP—D は特別な組織及び細胞に、プロスタグランジンをトランスロケートするときに重要な役 割を演じている(Am. J. Physiol. Renal Physiol 285:F1188-1197, 2003)。免疫組織化 学による染色により、 OATP— B力 表皮の全ての層で発現するが、皮下では発現し ないことが明らかになった。さらに、正常なヒト表皮ケラチノサイトによるエストロン硫酸 の取り込みが、 OATPファミリーの基質である、タウロコール酸によって 33%低下した
(J. Invest. Dermatol. 120: 285-291, 2003)。これらの研究成果は、有機ァ-オン輸 送システムが、ケラチノサイトによる、その基質の取り込みに関連している可能性を示 唆し、かかるトランスポーターが、薬剤の経皮輸送に重要な役割を演じているかどうか 明らかにするために、さらなる解析の必要性を示唆している。 MCT1、 MCT2及び M CT5の発現を、ヒト皮膚で検出した力 MCT2及び MCT3の発現は、いくつかのケ ースでしか検出できなかった(図 8)。 MCT1及び MCT4を、皮膚由来の複数の細胞 株で検出し、 MCTが、メラノーマにおける pH調整の主要な決定因子であることを示 唆した(Mol. Cancer Ther. 1:617-628, 2002)。以前の研究で、本発明者らは MCT1 が、安息香酸及び小腸及び脳内の乳酸などの外因性及び内因性の弱有機酸を含 む、モノカルボン酸の輸送に重要な役割を演じて 、ることを報告した (Biochem. Biophys. Res. Commun. 214: 482—489, 1995、 J. Pharm. Pharmacol. 51: 1113—1121, 1999、 Pharm. Res. 17:55-62, 2000)。皮膚内の MCTの発現は、皮膚の pH調節及び 弱有機酸の輸送の役割を示すかもしれない。 OCTNファミリーメンバーの発現を、全 ての個体で観察した(図 8)。 OCTNファミリ一は、長鎖脂肪酸の酸ィ匕に必須な補助 因子であるカル-チンの輸送に関与している。ヒト培養皮膚繊維芽細胞におけるイン ビトロのカル-チン輸送システムが特徴づけられた。カル-チンの取り込み用の Km は であり、ヒト OCTN2の値に近かった(N. Engl. J. Med. 319: 1331-1336, 1988、 Pediatr. Res. 28: 247-255, 1990、 Biochem. Pharmacol. 55:1729-1732, 1998) 。 OCTN1は、プロトン Z有機カチオンアンチポーター及び Z又は、有機カチオン Z カチオン交換体として、腎臓頂端膜及び他の組織で機能しうる、多選択性で pH依存 性の有機カチオントランスポーターであることが機能的に示された (J. Pharmacol. Exp. Ther. 289:768-773, 1999)。これに対し、 OCTN2は、有機カチオン輸送もカル 二チン輸送も媒介する多選択性のトランスポーターであるように考えられて 、る (J. Biol. Chem. 275: 40064-40072, 2000)。皮膚内の OCTNファミリーメンバーは、カル 二チン又は有機カチオンィ匕合物の取り込みに関与して 、る力もしれな 、。このように 、皮膚内の機能に関するさらなる研究が必要ではあるが、これらのトランスポーターの 皮膚内の発現が、皮膚の能動的なバリアシステムとして、基質の輸送に関与する可 能性を示している。
産業上の利用可能性
本発明により、インドメタシン等の経皮薬剤又は経皮候補薬剤の経皮浸透にぉ ヽ てトランスポーター(1つ又は複数)が関与していることが明らかにされた。また、 MRP 、 OATP、 MCT及び OCTNファミリーの複数のトランスポーターの mRNA発現を、 ヘアレスマウス皮膚と正常ヒト皮膚との両方で観察したことから、これら皮膚内のトラン スポーターの発現の生理学的な意味はさらに解明する必要があるが、このように多様 なトランスポーターの種類の存在は、能動的なノリアとして、生体異物の経皮浸透を コントロールするにあたっての、役割の可能性を示している。本発明により、皮膚内の トランスポーターの生理学的な役割のさらなる解明が進展するば力りでなぐ経皮薬 剤やィ匕粧品の優れた経皮デリバリーシステムの開発が可能となる。