明 細 書
キチンオリゴ糖ェリシター結合タンパク質
技術分野
[0001] 本発明は、キチンオリゴ糖ェリシターに結合するタンパク質に関する。
背景技術
[0002] ェリシターによる植物の生体防御のシグナル伝達過程の分子機構を解明する上で 、受容体分子の実体を明らかにすることは最重要課題の一つである力 植物細胞の 膜結合型受容体でリガンドとの対応関係を含めて明らかにされた例は極めて少ない 。ェリシター受容体に関しては、従来ダイズのグルカン系ェリシター結合タンパク質が 最も良く検討され、原形質膜のエリシター結合タンパク質をコードすると考えられる cDNAがクローユングされている。し力し、この場合にもこの cDNAから想定されるタン ノ ク質の構造が一般的な受容体様の構造をして 、な 、こともあって、シグナル伝達 過程でどのような機能を担っている力 まだ不明の点が多い。最近、分子遺伝学的手 法によりフラジェリンェリシター受容体と想定される受容体キナーゼ遺伝子 (FLS2)が 単離されている力 この遺伝子産物そのものがェリシターに結合するかどうかは未確 定である。その他のものに関しては、結合タンパク質が同定されているものすら限ら れており、キチン系ェリシターに関しては本発明者らの研究以外にはその実体に関 する報告は無い。
[0003] 本発明者らは、これまで糸状菌細胞壁の構成多糖であるキチンの特定サイズの断 片カ nMオーダーという低濃度でイネ培養細胞のファイトァレキシン合成、膜の脱分 極、イオンの流入'流出、タンパク質のリン酸化、活性酸素の生成、ジャスモン酸合成 、キチナーゼゃ PAL (フエ-ルァラニンアンモニアリアーゼ)等の遺伝子発現を引き起 こすことを明らかにしてきた (非特許文献 1一 6参照)。また、このエリシターの脱ァセ チル体であるキトサンオリゴ糖及び重合度 5以下のキチンオリゴ糖では、これらの細 胞応答のレベルが低下することも示した。これらの事実は、イネ培養細胞には、キチ ンオリゴ糖のサイズと構造を厳密に認識する受容体が存在することを示して ヽる。本 発明者らは、 125ι標識したキチンオリゴ糖を用いた実験から、イネの原形質膜画分に
高親和性のェリシター結合タンパク質が存在し、生化学的な解析から、培養細胞に 対するェリシター活性とよく対応した結合特異性を持つことも確認している (非特許文 献 7 9参照)。
なお、本願発明に関する先行技術文献を以下に示す。
非特 S干文献 1: Yamada, A., Shiouya, Ν·, Kodama, Ο. and Akatsuka, Τ·: Induction of phytoalexin formation in suspension— cultured rice cells by
N- acetylchitooligosaccharides, Biosci. Biotechnol. Biochem., 57, 405-409(1993) 非特許文献 2 : Minami, Ε·, Kuchitsu, Κ·, He, D.- Υ·, Kouchi, Η·, Midoh, Ν·,
Ohtsuki, Y. and shibuya, Ν·: Two novel genes rapidly and transiently activated in suspension-cultured rice cells by treatment with N— acetylchitoheptaose, a biotic elicitor for phytoalexin production. Plant Cell Physiol., 37, 5D3 (199b;
非特許文献 3 : Kikuyama, M., Kuchitsu, K. and Shibuya, N.: Membrane
depolarization induced by N— acetylchitooligosaccharide elicitor in
suspension-cultured rice cells. Plant Cell Physiol. 38, 902—909 (1997)
非特許文献 4 : He, D.-Y., Yazaki, Y" Nishizawa, Y" Takai, R" Yamada, K" Sakano,
Κ·, Shibuya, N. and Minami, E. Gene activation by cytoplasmic acidification in suspension-cultured rice cells in response to the potent elicitor,
N- acetylchitoheptaose. Mol. Plant-Microbe. Interact., 11, 1167 (1998)
非特言午文献 5 : R. Takai, K. Hasegawa, H. Kaku, N. Shibuya and E. Minami:Isolation and analysis of expression mechanisms of a rice gene, EL5, which shows structural similarity to ATL family from Arabidopsis, in response to
N- acetylchitooligosaccharide elicitor. Plant science, 160, 577-583(2001)
特言午文献 6 :Yamaguchi, Τ·, Minami, E. and Shibuya, N.: Activation of
phospholipases by N— acetylchitooligosaccharide elicitor in suspension-cultured rice cells mediates reactive oxygen generation, Physiol. Plant., 118, 361-370, (2003) 非特許文献 7 : Shibuya, Ν·, Kaku, Η·, Kuchitsu, Κ·, and Maliarik, M.J.: Identification of a novel high— affinity binding site for N— acetylchitooligosaccharide elicitor in the membrane fraction from suspension-cultured rice cells. FEBS Lett., 329,
75-78(1993)
非特許文献 8 : SWbuya, N" Ebisu, N" Kamada, Y" Kaku, H" Cohn, J. and Ito, Y.: Localization and binding characteristics of a high-affinity binding site for
N— acetylcnitooligosaccharide in the plasma membrane from suspension-cultured rice cells suggest a role as a receptor for the elicitor signal at the cell surface. Plant Cell Physiol, 37, 894—898(1996)
非特許文献 9 : Ito, Y., Kaku, H. and Shibuya N.: Identification of a high-affinity binding protein for N— acetylchitooligosaccharide elicitor in the plasma membrane of suspension-cultured rice cells by affinity labeling. The Plant Journal, 12(2), 347-356 (1997)
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0005] 本発明は、キチンオリゴ糖ェリシターに結合するタンパク質、及びその利用方法の 提供を課題とする。
課題を解決するための手段
[0006] 本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究を行った。キチンオリゴ糖エリ シター結合タンパク質を、キチンオリゴ糖ェリシターへの結合活性を保持したまま、キ チンオリゴ糖鎖を固定ィ匕したカラムにより精製する方法に関しては、膜タンパク質の 可溶ィ匕条件の設定、非特異的吸着タンパク質などの混入を防ぐためのプレカラムの 工夫、吸着容量,回収率を高めるための親和性担体のデザインと溶出条件の設定な どに種々の検討を必要とした。具体的には、 Triton X-100による原形質膜タンパク 質の可溶化、 APEA誘導体((GlcNAc) - APEA (aminophenylethylamino)誘導体)を用
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いたカラムの開発、非特異的吸着物質除去のためのプレカラム、効果的な溶出法を 組み合わせることで、収率良くエリシター結合タンパク質を単離精製した。次いで、 N 末端アミノ酸配列及び内部鎖アミノ酸配列を解読し、これらのアミノ酸配列情報に基 づいて、イネ cDNAライブラリーから本発明のタンパク質をコードする cDNAの単離に 成功した。
[0007] 本発明のタンパク質は糖タンパク質であり、 Con Aレクチンに結合する。そこで Con
Aカラムに結合するイネ原形質膜画分に対する抗体を作成し、種々のクロマトグラフィ 一を工夫し、本目的タンパク質に対する抗体 (抗 Con A-CEBiP抗体)を精製した。抗 Con A-CEBiP抗体がェリシター応答性活性酸素生成へ与える影響を調べたところ、 抗 Con A-CEBiP抗体で前処理することにより活性酸素生成は阻害され、本発明のタ ンパク質がキチンオリゴ糖ェリシター応答に関わる受容体タンパク質であることが示 唆された。 CEBiP遺伝子の発現を RNAi法で特異的にノックダウンさせた形質転^ ネ細胞に対する糖ェリシター処理の結果、活性酸素の生成が抑制されたことからも、 本発明のタンパク質がキチンオリゴ糖ェリシター応答に関わる受容体タンパク質であ ることが示唆された。また、マイクロアレイ解析により、イネ培養細胞においてキチンォ リゴ糖ェリシターに応答する遺伝子のうち、 7割強の遺伝子が CEBiPの発現量を低下 させることによって応答性を失うことから、 CEBiPはキチンオリゴ糖ェリシターの受容体 タンパク質であり、ェリシターシグナル伝達にぉ 、て重要な役割をもつタンパク質で あることが確認された。
即ち、本発明は、以下の〔1〕一〔16〕を提供するものである。
〔1〕以下の(a)— (d)のいずれかに記載の、キチンオリゴ糖ェリシターに対して結合 活性を有する植物のタンパク質をコードする DNA。
(a)配列番号: 1または 3に記載の塩基配列力 なる DNA
(b)配列番号: 1または 3に記載の塩基配列からなる DNAとハイブリダィズする DNA
(c)配列番号: 2または 4に記載のアミノ酸配列力 なるタンパク質をコードする DNA
(d)配列番号: 2または 4に記載のアミノ酸配列において 1または複数のアミノ酸が 置換、欠失、付加、および Zまたは挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコー ドする DNA
〔2〕植物がイネである、〔1〕に記載の DNA。
〔3〕〔1〕または〔2〕に記載の DNAによりコードされるタンパク質。
〔4〕〔1〕または〔2〕に記載の DNAを含むベクター。
[5]〔1〕もしくは〔2〕に記載の DNA、または〔4〕に記載のベクターを保持する形質転 換植物細胞。
〔6〕 [5]に記載の形質転換植物細胞を含む形質転換植物体。
〔7〕イネ由来である、〔6〕に記載の形質転 ^¾物体。
〔8〕〔6〕または〔7〕に記載の形質転換植物体の子孫またはクローンである、形質転換 植物体。
〔9〕〔6〕一〔8〕の 、ずれかに記載の形質転,物体の繁殖材料。
〔10〕〔6〕一〔8〕のいずれかに記載の形質転換植物体の製造方法であって、〔1〕もし くは〔2〕に記載の DNA、または〔4〕に記載のベクターを植物細胞に導入し、該植物細 胞から植物体を再生させる工程を含む方法。
〔11〕〔1〕もしくは〔2〕に記載の DNA、または〔4〕に記載のベクターを含有する、植物 の病害防除に用いる薬剤。
〔12〕植物力 Sイネである、〔11〕に記載の薬剤。
〔13〕病害力 ^、もち病である、〔12〕に記載の薬剤。
〔14〕〔3〕に記載のタンパク質を植物体の細胞内で発現させることを特徴とする、植物 の病害防除方法。
〔15〕植物力 Sイネである、〔14〕に記載の方法。
〔16〕病害力 ^、もち病である、 [15]に記載の方法。
図面の簡単な説明
[図 1]イネ培養細胞力ものキチンエリシター結合タンパク質の精製を示す図及び写真 である。
[図 2]抗 Con A- CEBiP抗体の精製方法を示す図である。
[図 3]ァフィユティーラベルした Con Aに結合するイネ原形質膜画分の 2次元
SDS-PAGEの結果を示す写真である。
[図 4]活性酸素生成における抗 CEBiP抗体又は抗血清の効果を示すグラフである。
[図 5]ペプチドシーケンサ一力 得た N末端 32残基アミノ酸配列を示す図である。
[図 6]オリゴキチン結合タンパク質のクローユングの概略図である。
[図 7]イネ由来キチンエリシター結合タンパク質の cDNAを示す図である。図中の塩基 配列を配列番号: 5、アミノ酸配列を配列番号: 6に示す。
[図 8]ゲノミツクサザンブロット分析の結果を示す写真である。
[図 9]キチンエリシター結合タンパク質の配列とゲノム DNAの配列の照合結果を示す
図である。
[図 10]可溶ィ匕培養細胞における (GlcNAc)の CEBiPの発現への影響を示す写真であ
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る。
[図 11]MALDI TOF-MSによる CEBiPの分子量の測定結果を示す図である。
[図 12]TFMSによる CEBiPの糖鎖除去を示す写真である。
[図 13]CEBiP-RNAiベクター中の CEBiP遺伝子断片の塩基配列を示す図である。
[図 14]非形質転換及び形質転換イネ細胞における CEBiP遺伝子のタンパク質及び RNAレベルの発現解析写真である。
[図 15]ェリシターによる非形質転換体及び CEBiP-RNAiイネ細胞の活性酸素の生成 を示すグラフである。
[図 16]ェリシター処理による非形質転換体及び CEBiP-RNAiイネ細胞の活性酸素の 生成を示すグラフである。
[図 17] (A)非形質転換体及び CEBiP-RNAi #6イネ細胞における、ェリシター処理で 発現量が増加及び減少する遺伝子数を示すグラフである。 (B) CEBiP遺伝子のノック ダウンにより顕著に抑制された遺伝子の機能別分類グラフである。
発明を実施するための最良の形態
[0010] 本発明者らは、植物におけるキチンオリゴ糖ェリシター結合タンパク質 (CEBiP)を 高い収率で単離精製し、該遺伝子配列を解読した。
[0011] 本発明は、以下の(a)—(d)のいずれかに記載の、キチンオリゴ糖ェリシターに対し て結合活性を有する植物のタンパク質をコードする DNA、および、該 DNAによりコー ドされるタンパク質を提供する。
(a)配列番号: 1または 3に記載の塩基配列力 なる DNA
(b)配列番号: 1または 3に記載の塩基配列からなる DNAとハイブリダィズする DNA
(c)配列番号: 2または 4に記載のアミノ酸配列力 なるタンパク質をコードする DNA
(d)配列番号: 2または 4に記載のアミノ酸配列において 1または複数のアミノ酸が置 換、欠失、付加、および Zまたは挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコード する DNA
[0012] 本発明における上記植物としては、特に限定されず、例えば、穀類、野菜、および
果榭等の有用農作物、観葉植物等の鑑賞用植物等が挙げられる。具体的には、該 植物として、イネ、トウモロコシ、コムギ、ォォムギ、ナタネ、ダイズ、ヮタ、ニンジン、ト マト、ジャガイモ、キク、バラ、カーネーション、シクラメン、シロイヌナズナ等を例示す ることができる。本発明の上記植物としては、好ましくはイネを挙げることができる。
[0013] 本発明のェリシター結合タンパク質の cDNAの塩基配列を配列番号: 1に、該 cDNA によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列を配列番号: 2に示す。また、上記 cDNAからシグナルペプチドをコードする部分を除!、た DNAの塩基配列を配列番号: 3、該 DNAによってコードされるタンパク質のアミノ酸配列を配列番号: 4に示す。本発 明のタンパク質は、内部に 4種類の配列(配列表の配列番号: 4の 139番目から 152番 目までの配列、 154番目から 161番目までの配列、 164番目から 176番目までの配列、 及び 177番目から 182番目までの配列)を有する。
[0014] 本発明の DNAは、当業者においては、一般的に公知の方法により単離することが 可能である。例えば、ハイブリダィゼーシヨン技術(Southern, EM., J Mol Biol, 1975, 98, 503.)やポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術(Saiki, RK. et al., Science, 1985, 230, 1350.、 Saiki, RK. et al., Science 1988, 239, 487.)を利用する方法が挙げられる。す なわち、配列番号: 1または 3に記載の塩基配列力もなる DNAもしくはその一部をプロ ーブとして、また配列番号: 1または 3に記載の塩基配列力 なる DNAに特異的にハ イブリダィズするオリゴヌクレオチドをプライマーとして、他の植物力 配列番号: 1また は 3に記載の塩基配列力 なる DNAと高い相同性を有する DNAを単離することは、 当業者にとって通常行い得ることである。このように、ハイブリダィゼーシヨン技術や PCR技術によって単離し得る、配列番号: 1または 3に記載の塩基配列力もなる DNA とハイブリダィズする DNAもまた、本発明の DNAに含まれる。
[0015] このような DNAを単離するためには、好ましくは低ストリンジェントな条件下でハイブ リダィゼーシヨン反応を行う。本発明にお ヽて低ストリンジェントなハイブリダィゼーショ ン条件(穏やかなハイブリダィゼーシヨン条件)とは、 5X SSPE、 1% SDS(W/V)、 0.1% BSA、 0.1%ポリビュルピロリドン、 0.1%フイコール 400、 100 μ g/ml変性サケ精巣 DNA 、またはこれと同等のストリンジエンシーのハイブリダィゼーシヨン条件を指す。また、 高ストリンジェントなハイブリダィゼーシヨン条件、例えば、 25%ホルムアミド (V/V)、 5X
SSPE、 1% SDS(W/V)、 0.1% BSA、 0.1%ポリビュルピロリドン、 0.1%フイコール 400、 100 μ g/ml変性サケ精巣 DNAの条件下では、より相同性の高い DNAを単離できることが 期待される。こうして単離された DNAは、アミノ酸レベルにおいて、配列番号: 2または 4に記載のアミノ酸配列と高い相同性を有すると考えられる。高い相同性とは、ァミノ 酸配列全体で少なくとも 35%、 40%、 50%、 60%、 70%、 80%、 90%、 95%、 98%以上の配列の 同一性を指す。
[0016] アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、カーリンおよびアルチユールによるアルゴリズ ム BLAST (Proc. Natl. Acad. Sei. USA, 1990, 87, 2264-2268.、 Karlin, S. & Altschul, SF" Proc. Natl. Acad. Sei. USA, 1993, 90, 5873.)を用いて決定できる。 BLASTのァ ルゴリズムに基づ 、た BLASTNや BLASTXと呼ばれるプログラムが開発されて!、る ( Altschul, SF. et al., J Mol Biol, 1990, 215, 403.) 0 BLASTNを用いて塩基配列を解 析する場合は、パラメータ一は、例えば score= 100、 wordlength= 12とする。また、 BLASTXを用いてアミノ酸配列を解析する場合は、パラメータ一は、例えば score = 50 、 wordlength=3とする。 BLASTと Gapped BLASTプログラムを用いる場合は、各プロ グラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知 で fco (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)。
[0017] また、本発明は、本発明のェリシター結合タンパク質と構造的に類似しているタンパ ク質、および該タンパク質をコードする DNAも提供する。このようなタンパク質をコード する DNAとしては、該タンパク質において 1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付カロ 、および Zまたは挿入されたアミノ酸配列力もなるタンパク質をコードする DNAが挙げ られる。例えば、本発明のェリシター結合タンパク質のホモログであって、糖鎖結合 可能なサイト(NXT(S))を有し、 LysMドメインを有する糖タンパク質をコードする DNA が例示できる。
[0018] 上記の DNAを調製するために、当業者によく知られた方法としては、上記ハイプリ ダイゼーシヨン技術(Southern, EM., J Mol Biol, 1975, 98, 503.)やポリメラーゼ連鎖 反応(PCR)技術(Saiki, RK. et al, Science, 1985, 230, 1350.、 Saiki, RK. et al., Science, 1988, 239, 487.)の他に、例えば、該 DNAに対し、 site— directed mutagenesis 法(Kramer, W. & Fritz, HJ" Methods Enzymol, 1987, 154, 350.)により変異を導入
する方法が挙げられる。改変されるアミノ酸の数は、改変後のタンパク質が、本発明 のェリシター結合タンパク質と構造的に類似している限り、特に制限はないが、一般 的には、 50アミノ酸以内、好ましくは 30アミノ酸以内、より好ましくは 10アミノ酸以内(例 えば、 5アミノ酸以内、 3アミノ酸以内)である。アミノ酸の改変は、好ましくは保存的置 換である。改変前と改変後の各アミノ酸についての hydropathic index (Kyte and Doolitte,(1982) J Mol Biol. 1982 May 5; 157(1): 105-32)や Hydrophilicity value (米国 特許第 4,554,101号)の数値は、 ±2以内が好ましぐさらに好ましくは ± 1以内であり、 最も好ましくは ±0.5以内である。また、自然界においても、塩基配列の変異によりコ ードするタンパク質のアミノ酸配列が変異することは起こり得ることである。また、塩基 配列が変異して 、ても、その変異がタンパク質中のアミノ酸の変異を伴わな 、場合 ( 縮重変異)があり、このような縮重変異 DNAも本発明に含まれる。
[0019] 本発明の DNAには、ゲノム DNA、 cDNA、および化学合成 DNAが含まれる。ゲノム DNAおよび cDNAの調製は、当業者にとって常套手段を利用して行うことが可能であ る。ゲノム DNAは、例えば、上記の植物のェリシター結合タンパク質をコードする遺伝 子を有する植物力もゲノム DNAを抽出し、ゲノミックライブラリー(ベクターとしては、プ ラスミド、ファージ、コスミド、 BAC、 PAC等が利用できる)を作成し、これを展開して、 該タンパク質をコードする DNAを基に調製したプローブを用いてコロニーノ、イブリダイ ゼーシヨンあるいはプラークハイブリダィゼーシヨンを行うことにより調製することが可 能である。また、上記のェリシター結合タンパク質をコードする DNAに特異的なプライ マーを作成し、これを利用した PCRを行うことによって調製することも可能である。また 、 cDNAは、例えば、該タンパク質をコードする遺伝子を有する植物から抽出した mRNAを基に cDNAを合成し、これを λ ZAP等のベクターに挿入して cDNAライブラリ 一を作成し、これを展開して、上記と同様にコロニーハイブリダィゼーシヨンあるいは プラークハイブリダィゼーシヨンを行うことにより、また、 PCRを行うことにより調製するこ とが可能である。
[0020] なお、本発明の DNAのうち天然由来のものは、キチンオリゴ糖ェリシターにより誘導 される。よって、本発明の DNAの誘導を指標に、被検植物体あるいは被検植物細胞 に生体防御機構が作動している力否かを判定できる。
[0021] 本発明の DNAは、その発現制御により表現型が改変された形質転換植物体の作 出などに利用することが可能である。また、本発明の DNAは、例えば、組み換えタン パク質の調製に利用できる。エリシタ一は植物の生体防御のシグナル伝達過程の分 子機構の研究において、重要な物質である。
[0022] 組み換えタンパク質を調製する場合には、通常、本発明の DNAを適当な発現べク ターに挿入し、該ベクターを適当な細胞に導入し、形質転換細胞を培養して発現さ せたタンパク質を精製する。組み換えタンパク質は、精製を容易にするなどの目的で 、他のタンパク質との融合タンパク質として発現させることも可能である。例えば、大 腸菌を宿主としてマルトース結合タンパク質との融合タンパク質として調製する方法( 米国 New England BioLabs社発売のベクター pMALシリーズ)、グルタチオン- S-トラン スフエラーゼ (GST)との融合タンパク質として調製する方法 (Amersham Pharmacia Biotech社発売のベクター pGEXシリーズ)、ヒスチジンタグを付カ卩して調製する方法( Novagen社の pETシリーズ)などを利用することが可能である。宿主細胞としては、組 み換えタンパク質の発現に適した細胞であれば特に制限はなぐ上記の大腸菌の他 、発現ベクターを変えることにより、例えば、酵母、種々の動植物細胞、昆虫細胞など を用いることが可能である。宿主細胞へのベクターの導入には、当業者に公知の種 々の方法を用いることが可能である。例えば、大腸菌への導入には、カルシウムィォ ンを利用した導入方法(Mandel, M. & Higa, A., Journal of Molecular Biology, 1970, 53, 158— 162.、 Hanahan, D., Journal of Molecular Biology, 1983, 166, 557— 580.)を 用いることができる。宿主細胞内で発現させた組み換えタンパク質は、該宿主細胞ま たはその培養上清から、当業者に公知の方法により精製し、回収することができる。 組み換えタンパク質を上記のマルトース結合タンパク質などとの融合タンパク質として 発現させた場合には、容易にァフィユティー精製を行うことが可能である。このように して作製される本発明の DNAによってコードされるタンパク質もまた、本発明に含ま れる。
[0023] 本発明のタンパク質は、植物培養細胞の原形質膜から単離精製することもできる。
本発明には、以下の工程によって精製されるタンパク質も含まれる。
(1)界面活性剤により原形質膜タンパク質を可溶化する工程
(2) (1)で得られた可溶ィ匕画分中のキチンオリゴ糖ェリシター結合タンパク質を (GlcNAc) -APEA誘導体に結合させる工程
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(3) (2)で結合したタンパク質を溶出させる工程
[0024] このようなタンパク質は、 N末端に配列表の配列番号: 4の 1番目から 32番目までの 配列を有し、内部に 4種類の配列(配列表の配列番号: 4の 139番目から 152番目まで の配列、 154番目から 161番目までの配列、 164番目から 176番目までの配列、及び 177番目から 182番目までの配列)を有する糖タンパク質である。より具体的には、可 溶化した原形質膜を、カラム操作にぉ ヽてチューブやカラムのガラス表面に非特異 的吸着での損失を防ぐために、あら力じめ OVA (卵白アルブミン)を流した 3種類の力 ラムにかける(プレカラム)。 1、 2本目のカラムはセファロースゲル担体ゃデキストラン に吸着する物質を除去するために用い、 3本目のカラムで目的の本発明のタンパク 質を吸着する。ただし、プレカラムは上記 2本に限定されるわけではない。 目的のタン ノ ク質を吸着するためのカラムには、キチンオリゴ糖をそのまま固定ィ匕するのではなく 、 (GlcNAc) -APEA(aminophenylethylamino)誘導体を用いることにより吸着容量が大
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幅に向上したカラムを使用する。次いで、カラム力も本発明のタンパク質を溶出させる 。 目的タンパク質の精製度を上げるために、溶出前に非ェリシター糖 (結合様式と構 造がキチンオリゴ糖に似て!/、るが活性がな!、糖)でカラムを洗浄してから、 目的タンパ ク質をカラム力も溶出させる。上記の単離精製法を用いることで、従来よりも高い精製 度で多量のェリシター結合タンパク質を得ることが可能になる。
[0025] 本発明のタンパク質を用いることにより、これに結合する抗体を調製することも可能 である。例えば、ポリクローナル抗体は、精製した本発明のタンパク質若しくはその一 部のペプチドをゥサギなどの免疫動物に免疫し、一定期間の後に血液を採取し、血 ぺぃを除去した血清より調製することが可能である。また、モノクローナル抗体は、上 記タンパク質若しくはペプチドで免疫した動物の抗体産生細胞と骨腫瘍細胞とを融 合させ、 目的とする抗体を産生する単一クローンの細胞 (ハイブリドーマ)を単離し、 該細胞力 抗体を得ることにより調製することができる。これにより得られた抗体は、 本発明のタンパク質の精製や検出などに利用することが可能である。本発明には、 本発明のタンパク質に結合する抗体が含まれる。また、本発明の抗体には、抗血清、
ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、およびこれら抗体の断片が含まれる。
[0026] また本発明は、上記 DNAまたは核酸を含むベクター、該ベクターを保持する形質 転換植物細胞、該形質転換植物細胞を含む形質転換植物体、該形質転換植物体 の子孫またはクローンである形質転換植物体、および該形質転換植物体の繁殖材 料を提供する。本発明の植物体は、本発明のタンパク質を生産するために利用でき る。また、該植物体は、いもち病などの病害を防除する機能を有する。
[0027] 本発明の DNAを発現する形質転換植物体を作製する場合には、本発明の DNAを 適当なベクターに挿入して、これを植物細胞に導入し、これにより得られた形質転換 植物細胞を再生させる。
[0028] さらに、本発明は、上記の形質転換植物体の製造方法であって、本発明の DNAま たは核酸、あるいは本発明のベクターを植物細胞に導入し、該植物細胞から植物体 を再生させる工程を含む方法を提供する。
[0029] 本発明の DNAまたは核酸の植物細胞への導入は、当業者においては、公知の方 法、例えばァグロバタテリゥム法、電気穿孔法 (エレクト口ポーレーシヨン法)、パーティ クルガン法により実施することができる。
[0030] 上記ァグロバタテリゥム法を用いる場合、例えば Nagelらの方法 (Microbiol. Lett.,
1990, 67, 325.)が用いられる。この方法によれば、組み換えベクターをァグロバタテリ ゥム細菌中に形質転換して、次いで形質転換されたァグロパクテリゥムを、リーフディ スク法等の公知の方法により植物細胞に導入する。上記ベクターは、例えば植物体 に導入した後、本発明の DNAが植物体中で発現するように、発現プロモーターを含 む。一般に、該プロモーターの下流には本発明の DNAが位置し、さらに該 DNAの下 流にはターミネータ一が位置する。この目的に用いられる組み換えベクターは、植物 への導入方法、または植物の種類に応じて、当業者によって適宜選択される。上記 プロモーターとして、例えばカリフラワーモザイクウィルス由来の CaMV35S、トウモロコ シのュビキチンプロモーター(特開平 2-79983号公報)等を挙げることができる。
[0031] また、上記ターミネータ一は、カリフラワーモザイクウイノレス由来のターミネータ一、 あるいはノパリン合成酵素遺伝子由来のターミネータ一等を例示することができるが 、植物体中で機能するプロモーターやターミネータ一であれば、これらに限定されな
い。
[0032] また、本発明の DNAまたは核酸を導入する植物は、外植片であってもよぐこれらの 植物から培養細胞を調製し、得られた培養細胞に導入してもよい。本発明の「植物細 胞」は、例えば葉、根、茎、花および種子中の胚盤等の植物細胞、カルス、懸濁培養 細胞等が挙げられる。
[0033] また、本発明の DNAまたは核酸の導入により形質転換した植物細胞を効率的に選 択するために、上記組み換えベクターは、適当な選抜マーカー遺伝子を含む、もしく は選抜マーカー遺伝子を含むプラスミドベクターと共に植物細胞へ導入するのが好 ましい。この目的に使用する選抜マーカー遺伝子は、例えば抗生物質ハイグロマイ シンに耐性であるハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子、カナマイシンまた はゲンタマイシンに耐性であるネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、および除草剤 ホスフィノスリシンに耐性であるァセチルトランスフェラーゼ遺伝子等が挙げられる。
[0034] 組み換えベクターを導入した植物細胞は、導入された選抜マーカー遺伝子の種類 に従って適当な選抜用薬剤を含む公知の選抜用培地に置床し培養する。これにより 形質転換された植物培養細胞を得ることができる。
[0035] 次 ヽで、本発明の DNAまたは核酸を導入した形質転換細胞から植物体を再生する 。植物体の再生は植物細胞の種類に応じて当業者に公知の方法で行うことが可能で ある(Toki. et al., Plant Physiol, 1995, 100, 1503-1507.)。例えばイネにおいては、 形質転換植物体を作出する手法については、ポリエチレングリコールによりプロトプラ ストへ遺伝子導入し、植物体 (インド型イネ品種が適して ヽる)を再生させる方法( Datta, S . et al., In Gene 1'ransfer Γο Plants (Potrykus I and Spangenberg Eds.), 1995, 66- 74.)、電気パルスによりプロトプラストへ遺伝子導入し、植物体(日本型イネ 品種が適している)を再生させる方法(Toki. et al., Plant Physiol, 1992, 100, 1503-1507.)、パーティクルガン法により細胞へ遺伝子を直接導入し、植物体を再生 させる方法(Christou, et al., Bio/technology, 1991, 9, 957- 962.)およびァグロバクテ リウムを介して遺伝子を導入し、植物体を再生させる方法(Hiei. et al, Plant J, 1994, 6, 271-282.)等、いくつかの技術が既に確立し、本願発明の技術分野において広く 用いられている。本発明においては、これらの方法を好適に用いることができる。
[0036] 形質転換細胞から再生させた植物体は、次!ヽで馴化用培地で培養する。その後、 馴化した再生植物体を、通常の栽培条件で栽培すると、植物体が得られ、成熟して 結実して種子を得ることができる。
[0037] なお、このように再生され、かつ栽培した形質転換植物体中の導入された外来 DNA または核酸の存在は、公知の PCR法やサザンハイブリダィゼーシヨン法によって、ま たは植物体中の核酸の塩基配列を解析することによって確認することができる。この 場合、形質転^ ¾物体力 の DNAまたは核酸の抽出は、公知の J.Sambrookらの方 法 (Molecularし loning, ¾f2¾x, Cold bpnng Harbor laboratory Press, 1989)に準し C 実施することができる。
[0038] 再生させた植物体中に存在する本発明の DNAよりなる外来遺伝子を、 PCR法を用 いて解析する場合には、上記のように再生植物体力ゝら抽出した核酸を铸型として増 幅反応を行う。また、本発明の核酸が DNAである場合には、該 DNAの塩基配列に従 つて適当に選択された塩基配列をもつ合成したオリゴヌクレオチドをプライマーとして 用い、これらを混合させた反応液中において増幅反応を行うこともできる。増幅反応 においては、 DNAの変性、アニーリング、伸張反応を数十回繰り返すと、本発明の DNA配列を含む DNA断片の増幅生成物を得ることができる。増幅生成物を含む反応 液を、例えばァガロース電気泳動にかけると、増幅された各種の DNA断片が分画さ れて、その DNA断片が本発明の DNAに対応することを確認することが可能である。
[0039] ー且、染色体内に本発明の DNAが導入された形質転換植物体が得られれば、該 植物体力も有性生殖または無性生殖により子孫を得ることが可能である。また、該植 物体やその子孫あるいはクローン力 繁殖材料 (例えば種子、果実、切穂、塊茎、塊 根、株、カルス、プロトプラスト等)を得て、それらを基に該植物体を量産することも可 能である。
[0040] 本発明は、植物の病害防除のための薬剤を提供する。本明細書において、植物の 病害防除とは、病原菌や害虫などの病原体の侵入に対する植物の自己防御反応を 増強させる機能を意味する。具体的には、植物が病害を受けた際に起こす、膜の脱 分極、活性酸素の生成、ファイトァレキシン等の抗菌物質の合成等の機能をいう。
[0041] 病害としては、紋枯病、コムギ黒変病、ォォムギ斑点病、イネごま葉枯病が挙げられ
る力 好ましくは、イネいもち病である。
[0042] 本発明の薬剤とは、本発明の DNAまたはベクター自体、または、本発明の DNAまた はベクターを含有する組成物のことである。前記において、「組成物」は種々の物質 を含有することができる。そのような物質は、該組成物が本発明の目的を達成するこ とができるものであれば特に限定はないが、例えば、該 DNAまたはベクターが安定的 に存在するための物質、該 DNAまたはベクターの植物細胞内への導入を補助する 物質、該 DNAやベクターの計量を容易にする増量のための物質等を挙げることがで きる。
[0043] 本発明はまた、本発明のタンパク質を植物体の細胞内で発現させることを特徴とす る、植物の病害防除方法を提供する。タンパク質等を植物体の細胞内で発現させる 方法は、上述のとおりである。
[0044] さらに本発明は、本発明の DNAに対するアンチセンス DNAを提供する。このような アンチセンス DNAを含むベクターを植物細胞に導入することで、本発明のタンパク質 の発現を特異的にノックダウンさせた形質転鎌物細胞を作製することができる。作 成された形質転換植物細胞は、本発明のタンパク質の機能の分析に利用することが できる。
[0045] なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に 組み入れられる。
実施例
[0046] 以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが本発明はこれら実施例に 制限されるものではない。なお、実施例は、下記の材料および方法に従って実施し た。
1.培養細胞及び原形質膜の調製
イネ培養細胞 (Oryza sativa L. cv. Nipponbare )は N6培地を改変した L培地( Kuchitsu, K., Kikuyama, M., and Shibuya, N. Protoplasma, 174, 79- 81(1993))を用 い、インキュベータ中にて 25°C、暗所、 150 rpmの振盪条件下で行い、振盪培養によ り継代維持 ·増殖を行 、実験に用 、た。
[0047] イネ培養細胞は 2週に 1回、滅菌した 1 mm角の金網上で裏ごし、細かくした細胞塊
を継代にした。なお、各実験においては、この裏ごしすることによる刺激の影響を考 慮して、この処理をして力も 4日以上経過したものを用いた。
[0048] イネ培養細胞力 原形質膜の調製は、渋谷らの方法 (Shibuya, N. , Ebisu, N. ,
Kamada, Υ., Kaku, Η., Cohn, J. and Ito, Y. Plant Cell Physiol, 37, 894—898(1996)) に従って分画遠心分離法により得たミクロソーム画分 (microsomal fraction: MF)を、デ キストラン Zポリエチレングリコールを用いた水性 2層分配法により分画して調製した 。得られた原形質膜画分は 1一 2 mlの PMバッファーに懸濁し、超音波処理で均一に したのち、 -80°Cで保存した。
[0049] 2.ェリシター糖及びその誘導体
ェリシターとして用いたキチンオリゴ糖 ((GlcNAc) )の 6量体以下のものは生化学ェ 業株式会社製の fine grade標品を用い、 7量体および 8量体は焼津水産化学工業より 譲渡された力-甲殻由来のキトサンオリゴ糖 7量体および 8量体をそれぞれ再ァセチ ルイ匕することより調製した。
[0050] (GlcNAc) -APEA誘導体及び (GlcNAc) -APEAへの放射性ヨウ素1251の導入は、伊
8 8
藤らの方法(Ito, Y., Kaku, H. and Shibuya N. The Plant Journal, 12(2), 347-356 (1997))に従った。
[0051] 3.ァフィ二ティラベリング
ダルタルアルデヒドによるエリシター結合タンパク質ァフィ-ティラベリングは、 125 I-(GlcNAc) -APEA誘導体のァミノ基とタンパク質側鎖のアミノ基同士が NaCNBHを
8 3 触媒としてダルタルアルデヒドを介して架橋するものであり、伊藤らの方法 (Ito, Y., Kaku, H. and Shibuya N. The Plant Journal, 12(2), 347-356 (1997》に従って行った
[0052] イネの原形質膜、可溶化原形質膜画分或いは精製した CEBiP画分と 100 nM (30 pmol) APEA誘導体を (液量 250 μ 1)氷中で 1時間反応させ、 30 μ gの NaCNBHを含
3 む 30 1の 2.5%ダルタルアルデヒド溶液をカ卩え、室温で 30分反応させた。反応後、 25 μ 1の 5 M NaCl及び 1.2 ml MeOHをカ卩え、ー晚- 80°Cにて放置したのち、遠心分離( 15,000 rpm、 2時間)を行い、沈殿画分を SDS電気泳動に供した。 SDS電気泳動は、 Multiphor IIマルチパーパス電気泳動装置によるプレキャスト型のポリアクリルアミド濃
度 8-18%グラジェントゲル (Pharmacia)を用いて、あるいはスラブゲル用電気泳動装 置で、ポリアクリルアミド濃度 10%, 15%もしくは 5-20%のグラジェントゲル(PAGEL、 ATTO)で行った。泳動後にゲルを 50%メタノール/ 10%酢酸水溶液中で 30分間固 定化処理し風乾したゲル、あるいはゲル内のタンパク質を PVDFメンブレン (Millipore ィモビロン- PSQトランスファーメンブレン)に転写したのち、バイオイメージングプレー トに 2— 7日間感光させた。プレートをイメージングプレートリーダー及びバイオィメー ジングアナライザー (BAS 2000、富士フィルム)で解析し、放射性ラベルされたタンパク 質を検出した。
[0053] (実施例 1)キチンエリシター結合タンパク質の精製とアミノ酸配列の解析
CEBiPタンパク質精製に用いたァフィユティーカラムは (GlcNAc) -APEA誘導体 (75
8
mg)及びグリシンをそれぞれ Activated CH-Sepharose 4Bゲル担体(乾燥ゲル 5 g)に フアルマシア社付属マニュアルに従って固定ィ匕することにより調製した。
[0054] CEBiPの精製は、以下のように行った。原形質膜画分(20.46 mg)を 0.5% Triton X— 100を含む TBSバッファー(2mM DTTゝ ImM PMSF、 0.15M NaCl、 ImM MgCl、
2
25mM Tris-HCl buffer (pH 7.0) )で 4°C、 1時間反応させた後、卓上超遠心機 (4°C、 70,000 rpm、 1時間)にて得られた上清を可溶化原形質膜画分とした。
[0055] イネ培養細胞原形質膜からのェリシター結合蛋白質の可溶ィ匕には、 TritonX-100 や n-dodecy卜 β -maltoside等の界面活性剤が有効であった。 0.5%濃度の Triton X-100により 60%の原形質膜タンパク質が可溶ィ匕され、 1251ラベルしたェリシター誘導 体との結合実験から、ェリシター結合タンパク質の約 30%が活性型として回収された 。可溶化画分中の結合活性は、原形質膜を用いて得られた結果とよく対応する結合 特性を示し、親和性標識の結果からも目的とするエリシター結合タンパク質が活性を 保持して可溶化されたことが確認された。
[0056] この画分を連結した 3本のカラム(Aカラム: Sephadex G-75 (15 ml); Bカラム:
Glycine— CH—Sepharose 4B (10 ml); Cカラム:(GlcNAc)— APEA— CH— Sepharose4B (11
8
ml))に供した (図 1)。微量な精製タンパク質がシリコンチューブやカラムのガラス表面 に非特異的吸着で損失することを防ぐために、予め、連結カラム及びチューブ等を 1 %卵白アルブミン(OVA)次いで、 0.17 M Glycine- HC1 bufferで洗浄後、 0.005%
Triton X- 100を含む TBSノ ッファーで平衡ィ匕した。次に、可溶化した原形質膜画分 を、セファロースゲル担体ゃデキストランに吸着する物質を除去するために目的カラ ム(Cカラム)の前に 2本のカラム (Aカラム、 Bカラム)を付けた、連結カラムで分画した 。 Cカラムには高吸着容量の新しい親和性クロマト用担体として (GlcNAc) -APEA
8
(aminophenylethylamino)誘導体を用いた。次いで、未吸着物質を除くためカラムを TBSバッファーで洗浄した。 目的カラムである Cカラムを、非ェリシター糖であるセ口へ キサオース及びキトサンへキサオース混合溶液(1 mg/ml、 20 ml)で洗浄後、 目的タ ンパク質を 0.17 M Glycine-HCl buffer (pH 2.3)で溶出した。溶出画分は、 1 M Tris溶 液で直ちに中和し、全量を 275 μ 1としたのち、各チューブに 25 μ 1の 5 M NaCl及び 1.2 ml MeOHをカ卩え、 -80°Cに一晩放置した。遠心分離により目的タンパク質を回収し、 最終容量を 80 μ 1になるように溶かした。その 1 μ 1を Multiphor IIマルチパーパス電気 泳動装置で、プレキャスト型のポリアクリルアミド濃度 8-18%グラジェントゲル
(Pharmacia)で電気泳動後、銀染色を行った。このように、 APEA誘導体を用いたカラ ムと非特異的吸着物質除去のためのプレカラム、効果的な溶出法を組み合わせるこ とで収率良く結合タンパク質を単離精製することができた。この方法で精製した画分 には Multiphor II電気泳動装置を用いた SDS電気泳動で 75kDa、 55kDaの 2つのバン ドが検出された (図 1)。
[0057] 残りの精製タンパク質溶液は、 ATTOの 15%ポリアクリルアミド SDS電気泳動に供し、 PVDF膜に転写、 CBB染色後、 目的タンパク質のバンドを切り出して、 HP241プロティ ンシーケンサシステム (HEWLETT PACKARD)にて N末端アミノ酸配列の解析を行つ た。
[0058] 目的タンパク質の内部鎖解析は、以下の方法で行った。ゲル力 バンドを切り出し 、 50 1の 0.1% SDSゝ 1 mM EDTAゝ 0.1 M Tris- HCl(pH 9.0)に浸漬し、リジンに特異 的なプロテアーゼ (リジノレエンドぺプチダーゼ、 Achromobacter protease I)をカロえ、 37 °Cー晚消化した。消化液を DEAE- 5PW(1 x 20 mm; Tosoh, Tokyo)と Mightysil RP-18(1 x 50 mm; Kanto Chemical, Tokyo)の連結カラムで分離した。溶媒として、 A には、 0.085% TFA aq. Bには、 0.075% TFA, 80% CH CN. Aqを用い、 1-12.5-60
3
%B/l-10-86min. 20 1/minで溶出した。溶出ピークは、ペプチドシーケンサー及び
MALDI-TOF MSでアミノ酸配列解読及び質量分析を行った。その結果、精製目的タ ンパク質の 32残基の N末端アミノ酸配列と、リシルエンドべプチダーゼ処理により 4ケ 所の内部鎖アミノ酸配列が同定された。
[0059] SDS電気泳動で検出された 75kDa、 55kDaの 2つのバンドはいずれも、 1251標識した (GlcNAc) -APEA誘導体で親和性標識され、 N末端アミノ酸配列が同一であった。さ
8
らに、リジンを特異的に切断するプロテアーゼによるペプチドマップの解析から、低分 子量のバンドは 75kDaタンパク質の C末端側が精製中に内在性のプロテア一ゼで部 分分解されたものと考えられた。
[0060] 上述のように、キチンオリゴ糖をそのまま固定ィ匕するのではなぐ APEA誘導体として 固定ィ匕する方法の開発によりカラム担体の吸着容量が大幅に向上し、操作条件全体 の検討と併せると初期の方法に比べ 20倍近い収率の向上につながった。最終的に 設定された条件下では、原形質膜に存在するェリシター結合タンパク質の約 1.6%が 回収されたものと推定される。この場合には精製過程で人為的に N末端アミノ酸残基 を修飾することも無ぐまた、収率の向上もあって、 32残基の N末端アミノ酸配列を解 読できた。また、このことにより特定のペプチド分解酵素で特異的に切断されたぺプ チドを分離'精製し、その解析から 4つの内部鎖アミノ酸配列を解読することができた
[0061] (実施例 2)抗 Con A- CEBiP抗体の調製と精製
CEBiPは、コンカナパリン A (Con A)に結合する糖タンパク質である。そこで Con A カラムに結合するイネ原形質膜画分に対する抗血清を作成し、種々のクロマトグラフ ィーを工夫し、本目的タンパク質を含む画分に対する抗血清 (抗 Con A-CEBiP抗体) を精製した。
[0062] 抗 Con A- CEBiP抗血清の調製は以下の手順で行った。 Con A- Sepharoseカラムを 用いて、可溶化したイネ原形質膜画分中の Con Aに結合する全タンパク質を調製し た。これを抗原として、ゥサギを免疫し、抗 Con A-bound fra.抗血清を得た。
[0063] この抗血清を以下の方法で精製を行った(図 2)。イネ原形質膜画分から (GlcNAc)
7
- Lys-Sepharoseを通過した画分及び非ェリシター糖(キトサンへキサオース及びセロ へキサオース)で溶出した画分をそれぞれ固定ィ匕したカラムを調製した。抗 Con
A- bound fra.抗血清を両カラムで分画し、抗 Con A- CEBiP抗体を得た。
[0064] 抗 Con A- CEBiP抗体の純度を確かめるために、 Con Aカラムに結合したイネ原形 質膜画分を1251で標識したェリシター糖でァフィユティーラベルしたのち、 2次元電気 泳動に展開後、 PVDF膜に転写した。転写膜上で抗 Con A-CEBiP抗体を用いて Western Bolttingを行った。その後、同膜上にある放射性ラベルされたタンパク質を、 バイオイメージングアナライザー (BAS 2000、富士フィルム)で解析した。放射能ラベル されたタンパク質と Western Boltting解析により発色したタンパク質が同一であるかど うかを確かめた。分子量スタンダードには、レインボータンパク質スタンダード(アマシ ャム社)及びプレシジョンプロテインスタンダード(BIO- RAD)を用いた。
[0065] その結果、 Western Bolttingで検出された 3つのスポットのうち主要な 2つは、放射性 標識されていた (図 3)。このことは、抗 Con A-CEBiP抗体力 CEBiPに対して高度に 精製されたことを示した。
[0066] (実施例 3)抗血清による活性酸素生成応答の阻害解析
イネ培養細胞力もプロトプラストを調製し、抗 ConA-CEBiP抗体のェリシター応答性 活性酸素生成への影響を調べた。
[0067] イネプロトプラストは以下の方法で調整した。
金網で裏ごし 4日目のイネ培養細胞を 2%Cellurase RS (Yaklt)及び 0.05% Pectolyase Y- 23を含む 0.1% CaCl , 0.02% MES, 9% Mannitol溶液(pH 5.6) 14 ml
2
中で、 30°C, 6時間穏やかに浸とうした。 25 /z mナイロンメッシュで細胞を濾過し、メッ シュ上の細胞を 20 mlの Washing buffer(0.1% CaCl /0.4 M Mannitol)で洗った(
2
Nishimura, N., Tanabe, S., He, D.— Y. , Yokota, T., Shibuya, N. and Minami, E. Plant Physiol. Biochem., 39, 1105-1110 (2001))。 50 mlのファルコンチューブに集め たプロトプラストを 600 rpm、 5分間の遠心で回収した。 Washing bufferを加え、数回プ ロトプラストを洗浄したのち、適当量の R2P培地に懸濁し、トーマ血球盤でプロトプラス ト数を調べた。プロトプラストは、 2xl06 cells/mlに調整後、 25°C、暗所にてー晚保温し た。
[0068] イネプロトプラストにおける活性酸素の生成は、ルミノール法(Schwacke, R. and
Hager, A. Planta, 187, 136- 141(1992》により行った。反応後の溶液は測定まで氷中
に保存した。ルミノール、フェリシアン化カリウムは 50 mMカリウムリン酸バッファー pH 7.9を溶媒とした。フェリシアンィ匕カリウムは使用直前に調製し、ルミノール溶液は低 温で遮光保存していたものを使用前に室温に戻して用いた。
[0069] イネプロプラスト(lxlO6 cells/500 μ 1)を 2 mlチューブに入れ、免疫前 (Preimmune)抗 血清或いは抗 Con A-CEBiP抗体で 30分間反応させた後、((GlcNAc) 、 100 μ g/ml)
8
1 μ 1あるいは R2P培地を加え 15分間ゆっくり攪拌後、 1000 rpm、 1分間、遠心分離し、 上清部を得た。また、同濃度のプロトプラストに R2P培地あるいは (GlcNAc) 1 1をカロ
8 えたものをコントロールとした。
[0070] チューブで反応後の溶液 25 μ 1、 50 mMカリウムリン酸バッファー(pH 7.9) 400 μ 1、 1.1 mMルミノール 25 μ 1、 14 mMフェリシアン化カリウム 50 μ 1を撹拌した後に、すば やくルミノメーター(Turner Design TD-20/20、 Sunnyvael CA)にて 10秒間化学発光 カウントを測定した。 H 0濃度は、巿販 H 0溶液 (30% H 0水溶液、和光純薬)によ
2 2 2 2 2 2
る発光を測定し、標準曲線を作成して算出した。
[0071] プロトプラストに GlcNAcを添カ卩すると、コントロールに比べて活性酸素の生成が 1.7 倍に増加した。この増加は、免疫前ゥサギ血清では、阻害されないが、抗 Con A-CEBiP抗体で前処理することによりほぼ完全に阻害された(図 4)。
[0072] これらの結果は、本タンパク質がキチンオリゴ糖ェリシターの受容体タンパク質であ ることを強く示唆するものであった。
[0073] (実施例 4)イネ cDNAライブラリ一中の CEBiPのスクリーニング
イネ(日本晴)培養細胞力もフエノール 'SDS法とオリゴ dT法で PolyA RNA(mRNA)を 単離し、これを铸型として ZAP-cDNA合成キット (STRATAGENE)にてイネ培養細胞 cDNAライブラリーを調製した。
[0074] 本発明のタンパク質の遺伝子クローユングに関しては、いくつかのアプローチにより 検討を行った。 N末端アミノ酸 15残基の配列に対する抗ペプチド抗体を作製し、抗体 を高純度に精製したのち、イネ培養細胞 cDNAライブラリーのスクリーニングを試みた 1S 目的タンパク質を含むクローンを単離することが出来な力つた。その原因として第 一に、 15残基のアミノ酸配列情報では特異性が不十分であり、イネ培養細胞中にこ の抗体と反応する他のタンパク質が (膜画分以外に)存在することが考えられる。精
製抗ペプチド抗体はミクロゾーム画分及び原形質膜画分を用いる限りでは単一バン ドを示す目的タンパク質とのみ反応した力 イネ cDNAライブラリーをスクリーニングし て得た陽性クローンは受容体とは異なる既知のタンパク質と類似した配列を持ってい た。このほか、この方法では目的タンパク質が大腸菌中でシグナルペプチドを含んだ 形で合成されるため、立体障害の問題力 この抗ペプチド抗体と反応することが困難 である可能性も考えられる。
[0075] このほか、デジエネレーテッドオリゴヌクレオチドプライマーを設計し、イネ培養細胞 mRNAから作製した環状一本鎖 DNAや、ゲノム DNAを铸型にして PCRを行う方法も検 討したが、多くのバンドが増幅され、サブクローユングが困難であった。また、このオリ ゴヌクレオチドをプローブとして直接ライブラリーのスクリーニングを行う方法も試みた 1S 非特異的なスポットが多く見られ、陽性クローンの単離に至らな力つた。
[0076] そこで、本発明者らは、イネ (日本晴)の使用頻度の高!、コドンを組み合わせた 7残 基の N末端アミノ酸配列 ("KSAILYTZ配列番号: 10 (逆向き) )に対応する上流向き プライマーを 72種類合成し、イネ培養細胞 cDNAライブラリーを铸型とし、それぞれの 合成プライマーとベクター上にある既知のプライマーで PCRを行った(図 5、 6)。合成 プライマー(TGTAGAGGATGGCGGACTTZ酉己列番号: 11)とベクターの Reverse primer (GGAAACAGCTATGACCATGZ配列番号: 12)で PCRを行なった結果、 目 的アミノ酸配列に対応する PCR増幅産物を得ることに成功した。得られた PCR断片を TAベクター(TA coining kit, Invitrogen)にサブクローユングし、 PCR断片の配列を解 読した。このときに得られた PCR断片の大きさは 280bpであり、翻訳されたタンパク質 の配列は、シグナルペプチドの前の残基、 Tからはじまり 49アミノ酸残基であった。
[0077] 目的タンパク質の N末端アミノ酸配列に対応する DNAをプラスミドから切り出し、これ をプローブとして、 147bpのプローブでイネ培養細胞 cDNAライブラリー(4 x 105 pfo)か ら目的遺伝子をスクリーニングした。
[0078] その結果、 N末端アミノ酸配列が合致する 3つの cDNAクローンを単離した。これら 3 種のクローンは、いずれも目的タンパク質の N末端アミノ酸配列と完全に一致する配 列を含んでいた。この mRNAは、 28アミノ酸残基のシグナルペプチド(M— 28から A— 1 )及び C末端側に 22アミノ酸残基の推定膜貫通領域 (A307から L328)を含んで ヽた (
図 7)。
[0079] (実施例 5)ゲノミツクサザンブロット分析
目的遺伝子のコピー数を調べるため、イネから単離したゲノム DNAを各種の制限酵 素で処理、ァガロースゲルによる電気泳動後、 目的タンパク質をコードする DNAをプ ローブとして、ゲノミツクサザンブロット分析を行った。その結果、数種の制限酵素処 理したゲノム DNAでシングルバンドが検出され(図 8)、 目的とするエリシター結合タン ノ ク質遺伝子はシングルコピーであることが示唆された。
[0080] このことはまた、 目的タンパク質をコードする mRNAと N末端配列を共有する低分子 量タンパク質をコードするもの力 いずれもこの単一遺伝子からスプライシング等の差 異によつて生成する可能性を示唆して 、る。
[0081] (実施例 6)イネゲノムライブラリ一中の CEBiPのスクニ一リング
イネゲノムライブラリーをプローブ 1 (図 7における A1から T181のアミノ酸配列部分 に対応する DNA断片)でスクリーニングした結果、いくつかの陽性クローンを単離する ことができた。この中で、もっとも鎖長の長い陽性クローン力も DNAを単離し、制限酵 素で切断後、それぞれをプラスミドベクターに導入し、全長 13,095bpの配列を決定し た。この配列中には、 目的タンパク質部分が完全にコードされていた。その後、イネゲ ノムデータベース検索力ゝら本発明者らが解析したゲノム DNAを含む遺伝子( AC099399)が見つかり、この遺伝子が第 3染色体に座乗していることが確かめられた 。このタンパク質の配列とゲノム DNA配列とを照合した結果、この部分のゲノム DNA 配列には 3箇所のイントロンが存在し(図 9)、これらのイントロンのスプライシングにより CEBiPの成熟 mRNAが合成されることが明ら力となった。
[0082] また、この目的遺伝子の発現は、キチンオリゴ糖ェリシターにより誘導されることが 確認された(図 10)。
[0083] この目的遺伝子の翻訳産物の解析から、キチンエリシター結合タンパク質は C末端 側にアミノ酸 22残基力 なる膜貫通領域を含むアミノ酸 328残基力 なり、分子量 34640であった。また、 11ケ所の糖鎖結合可能なサイト (NXT(S))のうち、ペプチドシー ケンス解析によりこれまで 4ケ所に糖鎖が付加していることが推測された。また、モチ ーフ検索から、ペプチドダリカン結合タンパク質に存在する LysMドメインが 2ケ所(図 7
における Y85— P131 (配列表の配列番号: 4の 85番目から 131番目までの配列)及び Y149— P192 (配列表の配列番号: 4の 149番目から 192番目までの配列))あることが 明らかになった。
[0084] この目的タンパク質の分子量は、最初に1251標識したェリシター糖によるァフィ二ティ 一ラベルで得られた 75kDaのタンパク質と分子量がかけ離れて 、た。すでに本発明 者らは、 Multiphor IIマルチパーパス電気泳動装置で、プレキャスト型のポリアクリル アミド濃度 8-18%グラジェントゲル (Pharmacia)を用いた電気泳動では、 目的タンパク 質が 7万 5千に検出されるが、一方、 ATTOのスラブ電気泳動装置を用いたものでは 、 6万 5千から 6万 7千に検出されることを報告している (Okada, M., Matsumura, M., and Shibuya, N., J Plant Physiol. 158, 121-124 (2001))。これまで使用していたレイン ボータンパク質スタンダードは非常にブロードであり、より正確なリコンビナントタンパ ク質で調製された分子量スタンダードを使用すると、これまで 65kDaから 67kDaであつ た目的タンパク質は、分子量 56kDaであった。さらに、より正確な CEBiPの分子量を測 定するために、 MALDI TOF-MS(Bruker ReFlex)を用いた。その結果、主として、 40kDa及び 35kDaの 2つのピークを得た(図 11)。これらの分子量の差は、 CEBiPへの 付加糖鎖の差によるものと考えられた。
[0085] (実施例 7)TFMS処理による CEBiP糖鎖の除去
遺伝子から算出される分子量と、電気泳動により推定した分子量の差は、糖鎖付加 によるものかどうかを確かめるために、トリフルォロメタンスルホン酸 (TFMS)によりイネ 原形質膜タンパク質中の糖タンパク質の糖鎖を化学的に切断し、 SDS-PAGEに続い て Western Bolttingを行ったのち、抗 CEBiP抗血清による目的タンパク質の検出を行 つた o
[0086] 抗 CEBiP抗血清は以下の方法で作製した。
まず、大腸菌大量発現系において CEBiPを発現させた。具体的には、 目的タンパク 質力も膜貫通領域を除 、た領域に対応する cDNA断片を PCRで調製し、それをポリヒ スチジン標識ベクターである pET16bに挿入したのち、配列を確認した。該 cDNA断片 の塩基配列を配列番号: 7に、 cDNAをコードするタンパク質のアミノ酸配列を配列番 号: 8に示す。これを大腸菌 BL21に導入し、 200 g/mlのカルべ-シリンを含む LB培
地中で 37°Cにて 4時間半培養を行った。遠心分離により大腸菌を集め、同濃度の力 ルベ-シリンを含む LB培地 lmlに再懸濁させた後、 50 1をカルべ-シリン (最終濃度 500 g/ml)を含む 8mlの LB培地に添カ卩し 3時間培養を行った。遠心分離により大腸 菌を集め、カルべ-シリン (最終濃度 500 g/ml)を含む 8mlの LB培地に再懸濁させ 、 IPTG (最終濃度 1 mM)を加え、 30°C、 2時間培養を行ったのち、遠心分離( 10000rpm、 20°C)で菌体を回収し、 -80°Cにて保存した。
[0087] 次に、 CEBiPを発現する菌体を PBSに懸濁したのち、ソ-ックで破砕し、遠心分離に より沈殿画分を得た。この沈殿画分を SDS電気泳動を行った。発現タンパク質を含む ゲルバンドを切り出し、 PBSをカ卩え、乳鉢で粉砕後、 4°Cで一晩攪拌し、目的タンパク 質を抽出した。これを抗原として、ゥサギに免疫を行い、抗 CEBiP抗血清を得た。
[0088] TFMS処理および目的タンパク質の検出は以下の方法で行なった。
イネ原形質膜画分 (20 /z g)をねじ口瓶に入れ、十分に乾燥させたのち、トリフルォロ メタンスルホン酸 (TFMS^O /z lに溶解させ、 0°C、 1時間静置した。反応液に氷冷した 1 M Trisを 500 μ 1カ卩ぇ中和したのち、チューブに 275 μ 1ずつ分注し、 27.5 μ 1の 5 Μ NaCl及び 1.2 ml MeOHを加え、 -80°Cで、ー晚放置後、遠心分離して、沈殿画分を 得た。この沈殿画分を SDS電気泳動、 Western Bolttingに供し、抗 CEBiP抗血清で目 的タンパク質の検出を行った。
[0089] その結果、 33kDa付近に陽性バンドが認められた(図 12)。この分子量は、遺伝子 力も算出される値とよく一致していた。
[0090] 岡田らは、イネの葉や根の原形質膜に CEBiPと同一と考えられる結合タンパク質を 見いだした (Okada, M., Matsumura, M., and Shibuya, N., J Plant Physiol. 158, 121-124 (2001))。キチンオリゴ糖カ^ダ-ンィ匕を誘導することが報告されているコムギ の葉から得た原形質膜にぉ 、ても同様のキチンオリゴ糖結合タンパク質が見 、ださ れたが分子サイズは若干異なっていた。種々の植物の培養細胞を調べた結果、ォォ ムギ、ニンジンなどの培養細胞の原形質膜に同様の結合タンパク質が見いだされた (Okada, M., Matsumura, M., Ito, Y., and Shibuya, N., Plant Cell Physiol, 43, 505-512 (2002》。これらのことは、こうしたキチン系エリシター認識系がイネに特有の ものではなく、多くの植物に存在する進化的に保存されたものであることを示唆して
いる。
[0091] 本遺伝子情報が明らかになることは、植物が病原菌由来のシグナル分子 (エリシタ 一)を認識し、細胞内'細胞間シグナル伝達経路を経て生体防御関連遺伝子の発現 を誘導するメカニズムを明らかにすることが期待され、病害に強い作物の育種や新規 な病害防除技術の開発に寄与することが考えられる。
[0092] (実施例 8) CEBiP遺伝子の発現量が抑制された形質転換イネの作製
イネ細胞における CEBiPのキチンエリシター受容体としての機能を証明するために 、 CEBiP遺伝子の発現を RNAi法で特異的にノックダウンさせた形質転^ネ細胞を ァグロバタテリゥム法で作製した。形質転換用のバイナリーベクターは Gateway system法を用いて構築した。まず、 CEBiP遺伝子クローンを铸型に、上流側プライマ 一(5'- CACCACAGAACAAGGGATGCCCGT- 3'Z配列番号: 14)および下流側プ ライマー(5'- GCTGGATAAACCAGTCATCAAAAT- 3'Z配列番号: 15)、 KOD- Plus DNAポリメラーゼ(TOYOBO社)を用いて PCRを行ない、 385 bpの CEBiP遺伝子断片 (図 13Z配列番号: 13)を増幅した。これを pENTR/D- TOPO Cloning kit (Invitrogen 社)を用いてエントリーベクターにクローン化した(pENTR- CEBiP- RNAi)。
[0093] pENTR- CEBiP- RNAiを制限酵素 MboIIで処理した後、 Gateway system用バイナリ 一ベクター pANDA (奈良先端大学島本功教授より分譲、 Miki D. & Shimamoto K. Plant cell physiology, 45,490—495, 2004)と混合し、 Gateway LR Clonase Enzyme Mix (Invitrogen社)を用いて、 CEBiP遺伝子断片が GUS遺伝子断片をはさんで逆向き に 2反復導入されたバイナリーベクター pANDA- CEBiP- RNAiを構築した。
[0094] pANDA- CEBiP- RNAiをエレクト口ポレーシヨン法で導入した Agrobacterium
tumefaciens EHA105株を用いて、イネ超迅速形質転換法(国際公開番号: WO 01/06844)によってイネ(品種:日本晴)を形質転換した。形質転換イネ細胞の選抜 は、カルべ-シリン及びハイグロマイシンを含む N6Dゲルライト培地(選抜培地)で約 10日毎に 4回以上植え継ぐことによって、形質転換イネカルス系統(CEBiP-RNAi系 統)を作出した。
[0095] CEBiP遺伝子の発現量の解析は、抗 CEBiPゥサギ抗血清による Western Boltting分 析法を用いた各イネカルスの CEBiPタンパク質や RT-PCR法による CEBiP遺伝子の転
写量の検出により行った。具体的には、非形質転換 (NT)イネカルス及び
CEBiP- RNAiイネカルス各 50 mgに SDS用試料溶液 150 μ 1を加え、 100°Cで 5分間加 熱後、ホモジナーザ一で粉砕した。遠心分離により上清部の各タンパク試料 20 gを SDS電気泳動で分離後、 PVDF膜にタンパク質を転写し、抗 CEBiP抗血清で CEBiPの 検出を行った。また、 NTイネカルスおよび 5系統の CEBiP-RNAiイネカルス(100 mg) から RNeasy Plant Mini Kit (QIAGEN社)を用いて RNAを抽出した。得られた各 RNA 100 ngを TOYOBO社の ReverTra Ace- α -キット中の Oligo(dT) と逆転写酵素を用い
20
て cDNAを合成し、その 1/4量の cDNAを铸型に、上流側プライマー(
5'- CACCCTACAGTGGTTACTCCA- 3'Z配列番号: 16)、下流側プライマー( 5'- TCCTATCTAATGAATATTCC- 3'Z配列番号: 17)および KOD- Plus DNAポリメ ラーゼ(TOYOBO社)を用いて PCRを行なった。 PCRは、 98°Cで 10秒、 45°Cで 2秒、 74 °Cで 30秒を 1サイクルとし、 25サイクル行なった。その後、 1.5%ァガロース中で電気泳 動し、 CEBiP遺伝子の転写産物由来の DNA断片量を確認した。コントロールとして、 ュビキチン遺伝子転写産物量ならびに pANDA-CEBiP-RNAiベクター中の GUS遺伝 子断片由来の転写物量も同様に確認した。ただし、 GUS遺伝子用には上流側プライ マー(5'- TACCCGCTTCGCGTCGGCAT- 3'Z配列番号: 18)、下流側プライマー( 5'- TGCTTCCGCCAGTGGCGCGA- 3'Z配列番号: 19)を、ュビキチン遺伝子用に は上流側プライマー(5'- CCAGTAAGTCCTCAGCCATGGA- 3'Z配列番号: 20)、 下流側プライマー(5'- GGACACAATGATTAGGGATCAC- 3'Z配列番号: 21)を使 用した。
CEBiP遺伝子の発現量の定量は、リアルタイム PCRにより測定を行った。 NTイネ力 ルス及び CEBiP-RNAi #3と #6イネカルスから誘導した培養細胞から抽出した RNA ( 250ng)に、 OligodTプライマーをカ卩え、 Superscript I (二ツボンジーン)により逆転写を 行った試料をリアルタイム RT-PCR用テンプレートとした。リアルタイム PCRの実行は、 LightCycler-FastStart DNAマスター SYBR Green I (Roche Diagnostics Japan)及び CEBiPの二種類のプライマー;上流プライマー(
5'- ATGGAACGCTGAAGCTTGGTGAGA- 3'Z配列番号: 22)と下流プライマー( 5'- CTCATCCTCTAAAGAACAGAGTCA- 3'Z配列番号: 23)を加え、 LightCycler
Instrumentで分析を行った。コントロールには、イネュビキチン遺伝子転写産物量を 用い、プライマーには、(5'- CCAGTAAGTCCTCAGCCATGGA- 3'Z配列番号: 20) と (5'-GGACACAATGATTAGGGATCAC- 3'Z配列番号: 21)を使用した。定量用 PCRプログラムは、 1サイクル 95°C10分、 45サイクル(95°C15秒、 60°C5秒、 72°C10秒) を用い、得られた結果をロシュ社のプロトコールに従って、ュビキチン遺伝子転写産 物量で補正後それぞれ培養細胞の CEBiP含量を算出した。
[0097] その結果、抗 CEBiPゥサギ抗血清を用いる Western Boltting法により、 CEBiPタンノ ク質は 4系統の CEBiP-RNAiイネ細胞(#3, #4, #6, #11)では検出されず、一方、 NTお よび CEBiP-RNAi #8由来のイネ細胞で検出された (図 14)。また、同様に RT-PCR法 による CEBiP遺伝子由来の転写物は、 4系統の CEBiP-RNAiイネ細胞では発現が確 認されず、 NT及び CEBiP-RNAi #8の両イネ細胞では遺伝子の発現が見られ、
Western Boltting解析の結果を支持した。遺伝子導入の指標となる GUS遺伝子断片 由来の転写物は、これらの 4系統の CEBiP-RNAiイネ細胞において確認され、コント口 ールとして用いたイネュビキチン遺伝子由来の転写物は、すべてのイネ細胞で検出 された。これらの結果により、 4系統の形質転 ネカルスにおいては、 CEBiP遺伝子 の発現量が抑制されて 、るものと判断した。
[0098] また、リアルタイム PCRによって CEBiPの発現量を定量した結果、 NTイネ細胞の CEBiPの発現量を 100%としたとき、 CEBiP-RNAi #3イネ細胞は 6.7%、 CEBiP-RNAi #6イネ細胞では 2.9%であった。従って、両 CEBiP-RNAiイネ細胞の CEBiP発現量は 、 NTイネ細胞に比べ、それぞれ 93.3%、 97.1%抑制されているものと考えられた(図 1 4)。以下の実施例にぉ 、ては # 3と # 6の 2種を RNA御制系統として用いた。
[0099] (実施例 9)糖ェリシターによる CEBiP-RNAiイネ培養細胞の活性酸素生成の解析 糖ェリシター処理による NTおよび CEBiP-RNAiイネ培養細胞における活性酸素生 成の解析は、以下のように行った。 NTイネカルス及び CEBiP-RNAiイネカルスを 30ml の N6培地の入った 100ml三角フラスコに入れ、 27°Cで一週間培養後、裏ごしを行い、 0.6mlの細胞を新しい 30mlの培地に移し、さらに 4日間培養した。各培養細胞を 60mg あるいは lOOmgを 2ml容チューブに入れ、 1mlの新しい N6培地を加えさらにー晚培養 を行った。ェリシターとして、(GlcNAc) (100ng/ml)、 Pseudomonas aeruginosa由来の
リポ多糖 (LPS, 50 g/ml, Sigma社)、 (GlcNH ) (2 g/ml)を用いた。 NT及び
2 7
CEBiP-RNAiイネ培養細胞にェリシターを加え、 30分あるいは 2時間処理を行った後 、培地溶液 25 1を取り、活性酸素の測定を行った。また、コントロールとして、同量の 蒸留水(DW)を加え、同様な処理を行った。活性酸素の測定は、チューブに 25 1の 反応後の溶液、 400 μ 1の 50 mMカリウムリン酸バッファー (ΡΚ, pH 7.9)、 25 1の 1.1 mMルミノール、 50 μ 1の 14 mMフェリシアン化カリウムをカ卩ぇ撹拌した後、すばやくル ミノメーター(Turner Design TD-20/20、 Sunnyvale, CA)にて 10秒間化学発光カウン トを測定した。
[0100] (GlcNAc)ェリシターによる各イネ細胞の活性酸素生成量を調べた結果、 NTイネ細
8
胞に比べ、 CEBiP-RNAiイネ細胞では、 74— 86%抑制されていることがわかった(図 1 5)。一方、 LPSで処理したイネ細胞では活性酸素の生成が誘導されることが最近明ら かになつたが(Desaki et al., unpublished)、この LPSで CEBiP-RNAi細胞ラインを処理 したところ、 NTイネ細胞と同様に活性酸素の誘導が見られた。 LPS処理による NTイネ 細胞の活性酸素生成量を 100%とした時、 NTイネ細胞では (GlcNAc)処理により約
8
86.3%の活性酸素の生成が見られるのに対して、 2系統 CEBiP-RNAiイネ細胞では 60%から 75%抑制されていた(図 16)。また、非ェリシター糖である(GlcNH ) に対す
2 7 る非応答性は両 CEBiP-RNAi系統にぉ 、ても保持されて 、た。これらの結果は、 CEBiPが、キチンエリシターを特異的に認識する受容体としてシグナル伝達に関与す る重要なタンパク質であることを強く示唆した。
[0101] (実施例 10)マイクロアレイによる解析
マイクロアレイ解析には、イネ完全長 cDNAデータベース力も作成されたオリゴァレ ィを使用した (Agilent社)。 Cyanine 3(Cy3)及び Cyanine 5(Cy5)標識した cRNAの調製 には、(GlcNAc)で 2時間処理した NT及び 2種の CEBiP-RNAiのイネ培養細胞(
8
(GlcNAc) -NTゝ (GlcNAc) -CEBiP- RNAW3及び (GlcNAc) - CEBiP- RNAi#6)及びコン
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トロールとして水で処理した各培養細胞力 単離した RNAを用いた。 Cy3、 Cy5標識 方法および Cy3及び Cy5標識した試料と 22Kのイネオリゴプローブを貼り付けたスライ ドグラスとのハイブリダィゼーシヨン方法は Agilent社のプロトコールに従って行った。 ハイブリダィゼーシヨンの試料の組み合わせは、 [l]Cy5標識 (GlcNAc) -NT I Cy3標
識 NT、 [2]Cy5標識 (GlcNAc) - CEBiP- RNAi#3 I Cy3標識 CEBiP- RNAi#3、 [3]Cy5標
8
識 (GlcNAc) -CEBiP-RNAi#6
8 I Cy3標識 CEBiP- RNAi#6を用い、さらにそれぞれの 標識試薬をスワップした (標識体を入れ替えた)実験も行った。得られた結果は、 http://tos.nias. afire. go. ip/cgi-bin/tosl7/arrav.cgii^^fト【こ飞 し 7こ。
[0102] その結果、 (GlcNAc) -NT I NT区では、 746個の遺伝子の発現量が増加し、 220個
8
の発現量が減少する遺伝子が同定された(図 17A)。それに対して、(GlcNAc)
8
-CEBiP-RNAi#6 I CEBiP-RNAi#6区では、 361個の発現量が増加する遺伝子及び 90個の発現量が減少する遺伝子が同定された。また、 CEBiP_RNAi#6細胞では、 (GlcNAc) -NT I NT区の 746個の発現量が増加する遺伝子のうち 71%にあたる 530個
8
の遺伝子は、ェリシター応答性が非形質転換体イネの結果に比べ 2倍以上の抑制( 45個)および消失し(図 17A)、それらの既知遺伝子群の中で約 5割が、防御、一次 代謝、シグナル伝達、ファイトァレキシン合成に関わる二次代謝等に関与する遺伝子 で占められて 、た(図 17B)。
[0103] また、それらのうち代表的な遺伝子を表 1に抜粋した。 CEBiP-RNAi細胞ではェリシ ター応答性遺伝子のうち、 CEBiP遺伝子 (AK073072)をはじめ、 Caffeoly-CoA 関連遺伝子、シキミ酸キナーゼ (AK066687)などのシキミ酸経路関連遺伝子、 1 -aminocyclopropane- 1 -carboxylate oxidase(AK058296)のようなエチレン生合成関 連遺伝子、 Laccase(AK103094)等のリグニン分解関連遺伝子、 MAPK経路関連遺伝 子のエリシター応答性が消失することから、これらの遺伝子群が CEBiPタンパク質の 下流に存在することが示唆された。興味あることに、細胞死に関わるとみられる Harpin induced protein(Hin, AK068115, AK063651)や Pirin(AK105971)の遺伝子、細胞死 の負の制御遺伝子 (Spl 11, AK105835)も同様にェリシター応答性を消失しているこ とから、これらの遺伝子群が、 CEBiPの下流にて制御されていることが示唆された。
[0104] また、(GlcNAc) -CEBiP-RNAi#6/ CEBiP-RNAi#6区のエリシター処理による発現
8
量が増加する遺伝子 361個中 100個(約 28%)は、 NT細胞に比較して発現量が増加し (図 17A)、 Ribosome inactivationg protein 2(AK103707)、 NADPH HC toxin reductase(AK065812)、 Calreticulin (AK060834)などの遺伝子が見られた(表 1)。
[0105] 一方、(GlcNAc) -NT
8 I NT区で発現量が減少する遺伝子の 80%にあたる 176個の遺 伝子は、 (GlcNAc) -CEBiP-RNAi#6/ CEBiP-RNAi#6区において非形質転換体の結
8
果に比べ 2倍以上の抑制及び消失し(図 17A)、主としてトランスポート、転写、防御 に関わる遺伝子が見られた (図 17B)。さらに、 216個のエリシター処理で発現量が増 加する遺伝子及び 44個の発現量が減少する遺伝子では、非形質転換体イネ及び CEBiP-RNAi#6イネ細胞 ヽずれにぉ 、ても同等な遺伝子応答がみられた。発現量が 増加する遺伝子の中には、 NAC transcription factor(AK067690)、 Small GTP-結合タ ンパク質 (AK066784)などがあり、一方、発現量が減少する遺伝子の中には、 Expansin(AKl 00959)及び Cysteine proteinase(AK072235)が含まれて!/、た。同様な傾 向は、 CEBiP- RNAW3イネ細胞にお!、ても得られた。
[0106] [表 1]
〜倍増加 ァクセッション 特徴
NT* RNAi #d 上方制御遺伝子
AK06J65 I Harpin induced protein N.Da
A 101431 Patatin-like protein N.D
A 105971 Pirin N.D
A 071 82 Caffeoyl-CoA 3-0-methyltraiisferase N.D
A 069456 Peroxidase N.D
AK066687 シキミ酸キナーゼ N.D
AK058296 1 -am inocyclopropane-1 -carboxylate oxidase N.D
AK073072 CEBiP N.D
AK0681 15 Harpin induced protein 10.1 編 68993 PAL 2.9
A 103094 case 2.1
AK067690 NAC Transcrption factor 3.4
AK066784 Small GTP-結合タンパク質(rab5A) 2.5
A 103707 Ribosome inactivating protein 2 27.S
A 065812 Zea mays NADPH HC toxin reductase 16.0
AK058891 (i- 1.3 glue anase 11.4
A 060834 Calieticulin 14.2 下方制御遺伝子
A 060423 Alanine :glyoxylate L
-66 26695404E1 71
aminotransfeiase like piotein N.D
A 071598 Lipid transfer protein N.D
A 060625 GDSし motiflipasefliydiolase N.D
A 060582 Replication protein Al(Os-RPAl) 2.S
AK102192 β-Galactosidase 2.8
AK腸 59 beta-Expansm(EXPB3) 5.4
A 072235 Cysteine proteinase
5.5 a N.D,検出せす
[0107] 一連のマイクロアレイの実験により、イネ培養細胞においてキチンオリゴ糖エリシタ 一に応答する遺伝子のうち、 7割強の遺伝子が CEBiPの発現量を低下させることによ つて応答性を失うことから、 CEBiPはキチンオリゴ糖ェリシターの受容体タンパク質で あり、ェリシターシグナル伝達にぉ 、て重要な役割をもつタンパク質であることが確認 された。
産業上の利用可能性
[0108] エリシタ一は、植物において、種々の生体防御関連遺伝子を誘導し、防御反応を 引き起こすことが知られている。本発明のタンパク質はェリシターの受容体であると考 えられるので、本発明のタンパク質を過剰発現させることで、種々な生体防御応答を
誘導できる。よって、本発明のタンパク質を用いることで、新規の、いもち病などの病 害防除技術が提供されると考えられる。また、イネのみでなく多くの植物にも本発明 のタンパク質と同様なタンパク質が存在する。本遺伝子情報が明らかになることで、 植物が病原菌由来のシグナル分子 (ェリシター)を認識し、細胞内 ·細胞間シグナル 伝達経路を経て生体防御関連遺伝子の発現を誘導するメカニズムが明らかになるこ とも期待され、病害に強いイネを含む、多くの作物の育種の開発に寄与することが考 えられる。