WO2005073595A1 - 偏心揺動型歯車装置 - Google Patents

Abstract

　外歯歯車の歯先部を切除した場合にピン押え部材を省略でき設計自由度を向上した偏心揺動型歯車装置を提供する。 　この偏心揺動型歯車装置は、内周に内歯ピン１５ａを有する内歯歯車１５と、内歯歯車に対して相対的に回転するキャリア１１と、転動体とその転動体を支持する輪体とを有しキャリアの外周と内歯歯車の内周との間に配設された一対の軸受１９，２０と、キャリアに回転自在に支持されたクランク軸と、歯先部を切除したトロコイド歯形の外歯を外周に有して内歯ピンに外周が噛み合うと共にクランク軸のクランク部分に係合しかつ一対の軸受間に配設された外歯歯車１３，１４と、を備え、クランク軸の回転により外歯歯車が偏心揺動運動して内歯歯車又はキャリアから回転出力を取り出すよう構成し、一対の軸受の外歯歯車側の端面部に内歯ピンの端部２３を受ける受け部２１を形成し、内歯ピンを受け部で支持することによりキャリア側への移動を規制する。

Description

明 細 書

偏心揺動型歯車装置

技術分野

[0001] 本発明は、外歯がトロコイド歯形であり、内歯がピン歯車である偏心揺動型歯車装 置に関するものである。

背景技術

[0002] 偏心揺動型歯車装置は、例えば産業用ロボットの関節部に設けられてロボットのァ 一ム部材を駆動する減速機等に用いられている。下記特許文献 1には、外歯がペリト ロコイド歯形からなり、内歯がピン歯車からなる偏心揺動型歯車装置が開示されてい る。この偏心揺動型歯車装置は、図 4 (a)、（b)のように、外歯 51の歯先 51aの先端 部を切除することで、ピン 52を挿入する円形溝が形成された内歯部材本体の内径部 との接触を避けるようにしたり、内歯 53のトルク伝達に寄与しない側のピン 52が強制 的に自転させられる時間が減少し、内部発熱を低減して焼付による故障を解消する ようにしている。

[0003] 上述のように外歯 51の歯先 51aの先端部を切除した場合、図 4 (a)の下方部分及 び図 4 (b)に示すように、偏心方向の 180° 対向位置でピン 52が遊んでしまうため、 ピン 52が傾いたりピン溝 52aから脱落し易くなつてしまう。力かる事態が発生すると、 ペリトロコイド歯形の外歯 51がピン 52を嚙み込んでしま 、異音が発生したり、ピン溝 5 2aが変形したりする。また、歯車装置の出力がロックしてしまうこともある。

[0004] 以上のような問題を解消するために、図 5、図 6に示すように、ピン 52を拘束 (ピンの 傾きを押さえる）するために、ピン押えリング 55を外歯 51と 51との間に配置したり（図 5)、または、ピン押えリング 56を外歯 51と軸受 58との間に配置し、もう 1つのピン押 えリング 57を外歯 51と軸受 59との間に配置する（図 6)必要があった (例えば、下記 特許文献 2参照)。

[0005] し力し、図 5,図 6のピン押えリング 55— 57のようなピン押え部材を使用すると、部 品点数が増加するとともに、装置が軸方向 Pに大きくなり設計自由度が損なわれてい 特許文献 1：特開平 02- 261943号公報

特許文献 2：特開平 05— 180278号公報

発明の開示

発明が解決しょうとする課題

[0006] 本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、外歯歯車の歯先部を切除した構 造を採用した場合にピン押え部材を省略でき設計自由度を向上できるようにした偏 心揺動型歯車装置を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0007] 上記目的を達成するために、本発明による偏心揺動型歯車装置は、内周に内歯ピ ンを有する内歯歯車と、前記内歯歯車に対して相対的に回転できるキャリアと、転動 体とその転動体を支持する輪体とを有し前記キャリアの外周と前記内歯歯車の内周 との間に配設された一対の軸受と、前記キャリアに回転自在に支持されたクランク軸 と、歯先部が切除されたトロコイド歯形の外歯を外周に有して前記内歯ピンに前記外 周が嚙み合うとともに前記クランク軸のクランク部分に係合しかつ前記一対の軸受間 に配設された外歯歯車と、を備え、前記クランク軸の回転によって前記外歯歯車が偏 心揺動運動して前記内歯歯車又は前記キャリア力 回転出力を取り出すように構成 した偏心揺動型歯車装置において、前記一対の軸受の前記外歯歯車側の端面部に 前記内歯ピンの端部を受ける受け部を形成し、前記内歯ピンを前記受け部で支持す ることにより前記内歯ピンの前記キャリア側への移動を規制することを特徴とする。

[0008] この偏心揺動型歯車装置によれば、一対の軸受の外歯歯車側の端面部に形成し た受け部で内歯ピンを受けて支持することにより、外歯歯車の歯先部が切除された 構造を採用した場合に、外歯歯車に対し遊ぶ状態にある内歯ピンのキャリア側への 移動を規制するので、従来のようなピン押え部材を省略でき、設計自由度を向上でき るとともに、装置をピン押え部材の分だけ軸方向に短くすることができる。また、受け 部は、軸受にピン押え機能を付加したので、専用の部品を使用する必要がなぐ部 品点数を少なくでき、コストメリットを得ることができる。

[0009] 上記偏心揺動型歯車装置において前記一対の軸受の輪体は外輪と内輪を備え、 前記受け部を前記外輪または前記内輪に形成するように構成できる。 発明の効果

[0010] 本発明の偏心揺動型歯車装置によれば、外歯歯車の歯先部を切除した構造を採 用した場合に従来のようなピン押え部材を省略できるので、部品点数を削減でき、設 計自由度を向上できる。

発明を実施するための最良の形態

[0011] 以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。図 1 は本発明の実施の形態による偏心揺動型歯車装置の側断面図である。図 2は図 1の 要部側断面図である。図 3は図 2の主軸受の外輪側面に設けた受け部とピンとの相 対位置関係を示す部分正面図である。

[0012] 図 1に示す偏心揺動型歯車装置 10は、内周部に形成された複数のピン溝（図 4参 照）と各ピン溝に配置された複数のピン (内歯) 15aとを有する内歯歯車 15と、内歯歯 車 15に対して相対的に回転可能なキャリア 11と、キャリア 11の外周と内歯歯車 15の 内周との間に配設されたラジアル玉軸受力 なる一対の主軸受 19, 20と、キャリア 1 1に回転自在に支持された複数のクランク軸 16と、歯先部が切除されたトロコイド系 のペリトロコイド歯形の外歯（図 4参照）を外周に有して各ピン 15aに外周が嚙み合うと ともにクランク軸 16のクランク部分 16c、 16dに係合しかつ一対の主軸受 19, 20間に 配設された外歯歯車 13, 14と、を備える。

[0013] 外歯歯車 13, 14は、複数のクランク軸 16のクランク部分 16c、 16dにより、コロ軸受 13a, 14aを介して内歯歯車 15の中心軸線に対し偏心して公転運動可能に支持さ れている。

[0014] キャリア 11は、ブロック 11aと、外歯歯車 13, 14に形成された複数の円形孔 9内に 位置する複数の柱部 l ibと、複数の柱部 l ibに複数のボルト l idで固定された端円 板 11cと、を備える。

[0015] キャリア 11は、内歯歯車 15に対し主軸受 19, 20を介して回転自在に結合され、ク ランク軸 16の両端部を円すぃコロ軸受 16a、 16bを介してブロック 11a及び端円板 1 lcで回転自在に支持する。なお、円すぃコロ軸受 16aは止めリング 16eでブロック 11 aに取り付け固定され、円すぃコロ軸受 16bは止めリング 16fで端円板 11cに取り付け 固定されている。 [0016] 複数のクランク軸 16の 1つには、その軸端部 16gに入力歯車 17が止めリング 16h により固定されて装着されている。キャリア 11及び外歯歯車 13, 14の略中心に貫通 して形成された中空孔 12を通して入力歯車 17の外歯 17aに嚙み合う歯車を有する 入力軸 (図示省略)が配置される。

[0017] クランク軸 16が入力歯車 17等を介して外部のモータ等力もの回転力が伝達されて 回転することにより、入力歯車 17の外歯 17aに嚙み合う入力軸（図 9参照）を介して 外部のモータ等からの回転力が伝達されて回転することにより、外歯歯車 13, 14が 公転運動しながら、外歯歯車 13, 14の歯数より例えば 1つ歯数が多い内歯歯車 15 のピン 15aに嚙合う。クランク軸 16の回転によって、公転 1回につき歯数差（1)に対 応して外歯歯車 13, 14が自転しながら偏心揺動運動することで、図 1の偏心揺動型 歯車装置 10は外側ケースとしての内歯歯車 15またはキャリア 11からその自転に対 応して減速回転出力を取り出すことのできる減速機として動作するようになって 、る。

[0018] 主軸受 19は、球状の転動体 19aと、転動体 19aを支持する外輪 19bと内輪 19cと から構成される輪体と、を有する。同様に、主軸受 20は、球状の転動体 20aと、転動 体 20aを支持する外輪 20bと内輪 20cとから構成される輪体と、を有する。

[0019] 主軸受 20は端円板 11cの段部に内輪 20cが外歯歯車 14の側面に接するように位 置しブッシュ 20dにより押さえられ、また、主軸受 19はブロック 11aの段部に内輪 19c が外歯歯車 13の側面に接するように位置して 、る。

[0020] また、主軸受 19近傍の内歯歯車 15とブロック 11aとの間にオイルシール 15cが配 置されている。内歯歯車 15は、外側ケースを構成し、孔 15bでボルトにより例えば口 ボットのアーム等に取り付けられる。

[0021] 次に、主軸受 19, 20の各端面に受け部を設けてピン 15aを拘束する構成について 図 2、図 3を参照して説明する。

[0022] 図 2のように、主軸受 19, 20の外輪 19b、 20bには、外歯歯車 13, 14側の各端面 においてピン溝（図 4)内のピン 15aを保持するようにピン 15aとほぼ平行に若干突き 出た突き出し部 22が設けられており、図 3のように、突き出し部 22により溝状に受け 部 21が形成されている。各ピン 15aは、ピン 15aの両端 23で受け部 21内に位置し支 持されている。 [0023] 外歯歯車 13, 14の歯先部が切除された構造を採用した場合に、図 2、図 3の受け 部 21で各ピン 15aを両端 23で受けて支持するので、図 4 (a)、（b)のように外歯歯車 13, 14に対しピン 15aが遊ぶ状態にあっても、力かるピン 15aのキャリア 11側への移 動を規制できる。

[0024] 従って、本実施の形態による偏心揺動型歯車装置 10によれば、従来の図 5,図 6よ うなピン押え部材 55— 57が必要ないので、装置の設計自由度が向上するとともに、 装置を軸方向 Pに短く構成できる。主軸受 19, 20にピン押え機能を付加したので、 専用の部品を使用する必要がなく部品点数を削減でき、コストメリットも得ることができ る。

[0025] 次に、本発明による別の実施の形態の偏心揺動型歯車装置について図 9,図 10を 参照して説明する。図 9は別の実施の形態による偏心揺動型歯車装置の側断面図 である。図 10は図 9の要部側断面図である。

[0026] 図 9の偏心揺動型歯車装置 10'は、図 1の構成と基本的に同じ構成であり、ピンを 拘束する受け部を主軸受の内輪に形成した点が異なり、同一部分には同じ符号を付 けてその説明を省略する。

[0027] 図 9のように、内歯歯車 15は、内周部が図 1よりも装置 10'の中心側に突き出ており 、複数のピン溝内に位置する複数のピン 15aは、主軸受 19, 20の外輪 19b、 20bを 越えて内輪 19c、 20cの近傍に位置している。このため、図 9,図 10のように、内輪 19 c、 20cには、外歯歯車 13, 14側の各端面においてピン溝（図 4)内のピン 15aを保 持するようにピン 15aとほぼ平行に若干突き出た突き出し部 22が設けられており、突 き出し部 22により溝状に受け部 21が形成されている。各ピン 15aは、ピン 15aの両端 23で受け部 21内に位置し支持されて 、る。

[0028] 上述のように、図 9,図 10では、外歯歯車 13, 14の歯先部が切除された構造を採 用した場合に、受け部 21で各ピン 15aを両端 23で受けて支持するので、図 4 (a)、 ( b)のように外歯歯車 13, 14に対しピン 15aが遊ぶ状態にあっても、かかるピン 15aの キャリア 11側への移動を規制できる。

[0029] また、図 9,図 10では、主軸受 19, 20の内輪 19c、 20cの突き出し部 22の端面で 外歯歯車 13, 14の軸方向の移動を規制している。 [0030] なお、中空孔 12に入力軸 12aが配置されており、入力軸 12aの歯車が入力歯車 1 7の外歯 17aに嚙み合い、入力軸 12aの回転により入力歯車 17が回転する。

[0031] 図 9,図 10の偏心揺動型歯車装置 10'によれば、図 1,図 2と同様に、従来の図 5, 図 6ようなピン押え部材 55— 57が必要ないので、装置の設計自由度が向上するとと もに、装置を軸方向 Pに短く構成できる。主軸受 19, 20にピン押え機能を付加したの で、専用の部品を使用する必要がなく部品点数を削減でき、コストメリットも得ることが できる。

[0032] 以上のように本発明を実施するための最良の形態について説明した力 本発明は これらに限定されるものではなぐ本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可 能である。例えば、図 1,図 2では、主軸受 19, 20の内輪 19c、 20cで、外歯歯車 13 , 14が軸方向に移動するのを規制しているが、外輪の突き出し部 22の端面で外歯 歯車 13, 14の軸方向の移動を規制しても良い。例えば、図 11のように、主軸受 19, 20の外輪 19b、 20bの突き出し部 22でピン 15aを受ける受け部 21を構成するととも に突き出し部 22の端面が外歯歯車 13, 14の側面で外歯歯車 13, 14が軸方向に移 動するのを規制する。図 11では、内輪 19c、 20は外歯歯車 13, 14の側面力 離れ ており、外歯歯車 13, 14の軸方向の移動規制に関与していない。

[0033] また、主軸受 19, 20の各端面に設ける受け部は図 7,図 8のように構成してもよい。

良!]ち、図 7のように、主軸受 19, 20の外輪 19b、 20bの各端面においてピン溝（図 4) 内のピン 15aを保持するようにピン 15aとほぼ平行に若干突き出た一対の突き出し部 22、 24が設けられており、図 8のように、突き出し部 22と 24との間に溝状に受け部 2 5が形成されている。各ピン 15aは、ピン 15aの両端 23で受け部 25内に位置し支持 されている。受け部 25で各ピン 15aを両端 23で受けて支持するので、外歯歯車 13, 14に対しピン 15aが遊ぶ状態にあっても、力かるピン 15aのキャリア 11側への移動を 規制でき、図 2,図 3と同様の効果を得ることができる。

[0034] また、図 2,図 7では、受け部 21, 25を主軸受 19, 20の外輪 19b、 20bの端面に形 成したが、同様の受け部を内輪 19c、 20cに形成するように構成してもよい（図 9,図 1 0参照)。

産業上の利用可能性 [0035] 本発明は、外歯がトロコイド歯形であり、内歯がピン歯車である偏心揺動型歯車装 置に関するものである。特に、産業用ロボット、工作機械、エレベータ用卷上装置、移 載装置、重量物蓋開閉装置等に用いる歯車装置に適している。

図面の簡単な説明

[0036] [図 1]本実施の形態による偏心揺動型歯車装置の側断面図である。

[図 2]図 1の要部側断面図である。

[図 3]図 2の主軸受の外輪側面に設けた受け部とピンとの相対位置関係を示す部分 正面図である。

[図 4]従来の偏心揺動型歯車装置を概略的に示す側面図 (a)及びその一部拡大図（ b)である。

[図 5]図 4における問題を解決するための従来の構成を示す要部側断面図である。

[図 6]図 4における問題を解決するための従来の別の構成を示す要部側断面図であ る。

[図 7]図 2の変形例を示す要部側断面図である。

[図 8]図 7の主軸受の外輪側面に設けた受け部とピンとの相対位置関係を示す部分 正面図である。

[図 9]別の実施の形態による偏心揺動型歯車装置の側断面図である。

[図 10]図 9の要部拡大側断面図である。

[図 11]図 1 ,図 2の別の変形例を示す要部側断面図である。

符号の説明

[0037] 10偏心揺動型歯車装置

10'偏心揺動型歯車装置

11キャリア

13, 14外歯歯車

15内困困車

15aピン、内歯ピン

16クランク軸

16c、 16dクランク部分 9a転動体

9b外輪

9c内輪

0主軸受

0a転動体

0b外輪

0c内輪

1 受け部

3ピンの両端 (端部) 5受け部

2aピン溝

P軸方向

Claims

請求の範囲

[1] 内周に内歯ピンを有する内歯歯車と、

前記内歯歯車に対して相対的に回転できるキャリアと、

転動体とその転動体を支持する輪体とを有し前記キャリアの外周と前記内歯歯車 の内周との間に配設された一対の軸受と、

前記キャリアに回転自在に支持されたクランク軸と、

歯先部が切除されたトロコイド歯形の外歯を外周に有して前記内歯ピンに前記外 周が嚙み合うとともに前記クランク軸のクランク部分に係合しかつ前記一対の軸受間 に配設された外歯歯車と、を備え、前記クランク軸の回転によって前記外歯歯車が偏 心揺動運動して前記内歯歯車又は前記キャリア力 回転出力を取り出すように構成 した偏心揺動型歯車装置において、

前記一対の軸受の前記外歯歯車側の端面部に前記内歯ピンの端部を受ける受け 部を形成し、前記内歯ピンを前記受け部で支持することにより前記内歯ピンの前記キ ャリア側への移動を規制することを特徴とする偏心揺動型歯車装置。

[2] 前記一対の軸受の輪体は外輪と内輪を備え、前記受け部を前記外輪または前記 内輪に形成したことを特徴とする偏心揺動型歯車装置。