明 細 書
核酸増幅用プライマー、核酸増幅用プライマーセット及びこれを用いた癌 の検查方法
技術分野
[0001] 本発明は、癌の臨床検査の分野において用いられる、 BRAF遺伝子のコドン 599 の突然変異 (以下、適宜「変異」と略記する。)の有無を判定する方法、これに用いる ための核酸増幅用プライマー、核酸増幅用プライマーセット、及び BRAF遺伝子コド ン 599の変異の有無を判定するための試薬キットに関する。
本発明は、さらに、 KRAS遺伝子の変異の検出と組み合わせた上記の方法、それ に用いるための核酸増幅用プライマー、核酸増幅用プライマーセット、及び試薬キッ トに関する。
背景技術
[0002] RAS—RAF— MEK— ERK—MAPをカスケードとするリン酸化酵素の経路は、細胞 の分化や成長、増殖を調節する重要な経路であることが知られている。 RASタンパク 質をコードする RAS遺伝子は、ヒトの様々な腫瘍で突然変異が認められている遺伝 子である。 RAS遺伝子に変異が起こると、細胞内のリン酸化が異常に亢進し、細胞 の分化や成長、増殖等の調節機能が不全となることが知られている。 RAS遺伝子の 変異は、ヒトの総ての腫瘍の 15%の頻度で起こっていることが報告されている。また、 RAS遺伝子の下流に位置し、 BRAFタンパク質をコードする BRAF遺伝子は、 RAS 遺伝子により活性化される癌遺伝子であり、 BRAF遺伝子に変異が起こると、細胞内 のリン酸化が異常に亢進し、細胞の分化や成長、増殖等の調節機能が不全となるこ とが知られている。 BRAF遺伝子の変異は、メラノーマにおいては 70%、大腸癌の 1 0%の頻度で起こっていることが報告されている。このように、 RAS遺伝子及び BRA F遺伝子の変異は、ヒトの腫瘍の形成に深い関連があることが推測される。
また、 BRAF遺伝子の変異ではコドン 599の変異(バリンからグルタミン酸への転換 ;「V599E」)は 80%を占めることが報告されている。
[0003] RAS遺伝子の一種である KRAS遺伝子の変異では、コドン 12及びコドン 13の変
異が合わせて 90%以上を占めることが報告されている。 BRAF遺伝子の V599Eを 有する癌細胞は機能的 RASなしで生育できるため、このホットスポットは、他の低頻 度の BRAF突然変異とは生物学的に区別されることが示唆されている。そして、 BR AFの V599E突然変異は、 KRAS遺伝子に突然変異を有する散発性大腸癌(CRC )におレ、ては見出されてレ、なレ、(非特許文献 1、 2)。
[0004] 従来、この BRAF遺伝子のコドン 599又は KRAS遺伝子のコドン 12もしくはコドン 1 3の変異の検出方法として、ダイレクトシーケンス法、 SSCP法、 WAVE法等が知ら れているが、いずれも、検出感度、検出に要する時間'コスト、その両方の点で問題 力 Sある。また、近時、 KRAS遺伝子のコドン 12の変異を再現性よぐ高感度で検出す る方法として、非特許文献 3に記載される技術が知られている。
[0005] 非特許文献 1 : Rajagopalan, Η·, Bardelli, A.,Lengauer, C., Kinzler, K.W.,Vogelstein,
B. , and Velculescu, V.E. 2002.Tumorigenesis: RAF/RAS
oncogenesandmismatchrepair status. Nature418:934.
非特許文献 2 : Yuen, S.T., Davies, H., Chan,T.L., Ho, J.W., Bignell, G.R., Cox,
C. 'Stephens, P., Edkins, S., Tsui, W.W.,Chan, A.S., et al. 2002. Similarity of thephenotypic patterns associated withBRAF and KRAS mutations in
colorectalneoplasia. Cancer Res 62:6451-6455.
非特許文献 3 : "Oncogene" 1991 Jun, 6 (6), 1079-1083 そこで、 BRAF遺伝子のコ ドン 599、 KRAS遺伝子のコドン 12及びコドン 13等の特定の変異を効率良ぐ低コス トで、かつ、高い精度で検出する方法が求められている。
発明の開示
[0006] そこで、本発明の課題は、上記のような特定の遺伝子の特定の変異、特に BRAF 遺伝子のコドン 599の変異を簡便に、かつ、精度よく検出する方法を提供することで ある。さらに、この検査方法に用いるための核酸増幅用プライマー、核酸増幅用ブラ イマ一セット、及び BRAF遺伝子コドン 599の変異検出試薬キットを提供することであ る。本発明は、さらに、大腸癌などの癌の診断及びその発症もしくは進行の可能性の 予測などに役立つ遺伝子変異の検査法を提供することを目的とする。
[0007] 力かる実情において、本発明者は、 BRAF遺伝子に作用し、塩基配列にミスマッチ
を導入した核酸増幅用プライマーを含む核酸増幅用プライマーセットを用いて、通常 の PCR法、又はネステッド PCR法、セミネステッド PCR法、ダブル PCR法のいずれか により BRAF遺伝子を増幅することにより、 BRAF遺伝子のコドン 599の変異を簡便 に、かつ精度よく検出し、 BRAF遺伝子のコドン 599の変異の有無を簡便に、かつ、 精度よく判定することができることを見出した。
[0008] 即ち、この核酸増幅用プライマーを含む核酸増幅用プライマーセットによれば、 BR AF遺伝子のコドン 599に変異があれば、この核酸増幅用プライマーセットの BRAF 遺伝子の増幅産物を特定の制限酵素が認識せず、当該 BRAF遺伝子のコドン 599 に変異がなければ、この核酸増幅用プライマーセットの BRAF遺伝子の増幅産物を 特定の制限酵素が認識する。そうすると、当該 BRAF遺伝子のコドン 599の変異の 有無により、当該核酸増幅用プライマーセットが異なる配列の BRAF遺伝子の増幅 産物を生成することから、当該特定の制限酵素が異なる長さの制限酵素断片を生成 する。よって、その制限酵素断片を制限酵素断片長多型を用いて検出することで、 B RAF遺伝子のコドン 599の変異を検出し、 BRAF遺伝子のコドン 599の変異の有無 を判定することができる。
[0009] また、この核酸増幅プライマーセットを用いた BRAF遺伝子のコドン 599の変異の 検出方法では、
1)第 1の核酸増幅用プライマーセットを用いて BRAF遺伝子の核酸増幅を行い、そ の BRAF遺伝子の増幅産物を特定の制限酵素で処理する第 1の工程と、
2)次いで、当該特定の制限酵素で処理した反応液に対して第 2の核酸増幅用プライ マーセットを用いて BRAF遺伝子の核酸増幅を行い、その BRAF遺伝子の増幅産 物を当該特定の制限酵素で処理する第 2の工程と、
3)次いで、その BRAF遺伝子の増幅産物の制限酵素断片を検出する第 3の工程と を有し、
当該第 1の工程において BRAF遺伝子のコドン 599に変異があれば、核酸増幅用 プライマーセットによる増幅産物を当該制限酵素が認識せず、当該 BRAF遺伝子の コドン 599に変異がなければ、当該核酸増幅用プライマーセットによる増幅産物を当 該制限酵素が認識する。そうすると、当該 BRAF遺伝子のコドン 599の変異の有無
により、当該核酸増幅用プライマーセットが異なる配列の BRAF遺伝子の増幅産物 を生成することから、当該特定の制限酵素が異なる長さの制限酵素断片を生成する 。よって、その制限酵素断片を制限酵素断片長多型を用いて検出することで BRAF 遺伝子のコドン 599の変異の有無を判定することができる。
[0010] さらに、この核酸増幅プライマーセットを用いた BRAF遺伝子のコドン 599の変異の 検出方法では、前記第 2の工程において、前記第 1の工程で用いる核酸増幅プライ マーセットのミスマッチとは異なるミスマッチを導入した核酸増幅プライマーを用いる。 このことにより、前記第 2の工程においてコドン 599の変異の有無によらず、 BRAF遺 伝子のコドン 599以外の箇所を前記制限酵素が認識する。
この第 2の工程では、当該第 1の工程で、 BRAF遺伝子のコドン 599の変異の有無 に起因して生成される、異なる長さの制限酵素断片を増幅することになる。その結果 、 BRAF遺伝子のコドン 599の変異の有無に起因して、異なる長さの増幅産物が多 量に生成されるので、この増幅産物を制限酵素で切断した制限酵素断片を、制限酵 素断片長多型などにより検出することで、 BRAF遺伝子のコドン 599の変異の有無を さらに高精度で判定することができる。
また、前記第 2の工程を経る場合には、第 1の工程のみ行った場合よりも、検出感 度がより高いことから、癌の細胞、組織を直接採取する以外にも、癌細胞の比率が比 較的低い、患者の血液、勝液、血清、糞便、精液、唾液、喀痰、脳脊髄液等を由来と する細胞や組織を採取して、 BRAF遺伝子のコドン 599の変異の有無を判定するこ とができる。そのため、低侵襲の(患者への負担が小さい)診断が可能になる。
[0011] 本発明の BRAF遺伝子のコドン 599の変異の検出方法は、別の態様においては、
1)当該 BRAF遺伝子のコドン 599に変異があれば、核酸増幅用プライマーセットに よる当該 BRAF遺伝子の増幅産物を制限酵素 Btslが認識せず、当該 BRAF遺伝子 のコドン 599に変異がなければ、当該核酸増幅用プライマーセットによる当該 BRAF 遺伝子の増幅産物を制限酵素 Btslが認識するような第 1の核酸増幅用プライマーセ ットを用いて得た増幅産物を制限酵素 Btslにより切断し、
2)次いで、前記第 1の核酸増幅用プライマーセットによる BRAF遺伝子の増幅産 物を錡型にして第 2の核酸増幅を行うことにより、当該 BRAF遺伝子のコドン 599に
変異を持つ増幅産物を、より大きな割合で増幅することを特徴とする、 BRAF遺伝子 のコドン 599の変異の検出方法である。
[0012] 当該第 2の工程で制限酵素 Btslで処理することにより、 BRAF遺伝子のコドン 599 の変異の認められなレ、(すなわち正常)核酸増幅産物は制限酵素にて切断されるた め、当該第 3の工程における核酸増幅工程では BRAF遺伝子コドン 599に変異の認 められる遺伝子のみが増幅されることになり、これにより BRAF遺伝子のコドン 599に 変異を持つ遺伝子が少量でも強く増幅されることになる。
このように、前記第 2の工程を経る場合には、第 1の工程のみ行った場合よりも、検 出感度がより高いことから、癌の細胞、組織を直接採取する以外にも、癌細胞の比率 が比較的低い、患者の血液、膝液、血清、糞便、精液、唾液、喀痰、脳脊髄液等を 由来とする細胞や組織を採取して、 BRAF遺伝子のコドン 599の変異の有無を判定 すること力 Sできる。そのため、低侵襲の(患者への負担が小さい)診断が可能になる。
[0013] 第 3の工程で得られた核酸増幅物を用いて KRAS遺伝子のコドン 12及びコドン 13 の変異を判定する方法としては、
(A)第 3の工程で得られた核酸増幅物を用いて、再度、制限酵素 Mval及び Bgllde 処理を行レ、制限酵素長多型 (RFLP)にて検出するする方法と、
(B)第 3の工程で得られた核酸増幅物を SSCP法、 WAVE法や、オリゴチップ(Oligo Chip)を用いて変異を判定する方法が代表的である。
[0014] 本発明では、上述の核酸増幅プライマーセットと、制限酵素と、 DNAポリメラーゼと を含む BRAF遺伝子コドン 599の変異検出試薬キットにより、 BRAF遺伝子コドン 59 9の変異の有無を精度よく判定することができる。
[0015] 本発明の検出方法、この検出方法に用いるための核酸増幅用プライマー、核酸増 幅用プライマーセット、及び BRAF遺伝子コドン 599の変異検出試薬キットによれば 、 BRAF遺伝子のコドン 599の変異を簡便に、かつ、精度よく検出し、 BRAF遺伝子 のコドン 599の変異を精度よく検出し、変異の有無を判定することができる。
[0016] 以上、 BRAF遺伝子について詳述した力 KRAS遺伝子のコドン 12及びコドン 13 についても同様に核酸増幅用プライマー及び検查方法を設計することができる。た だし、 KRAS遺伝子用のプライマーには、ミスマッチを 2つ導入する。
[0017] 即ち、特定のミスマッチを 2つ含む核酸増幅用プライマー、又はこの核酸増幅用プ ライマーを含む核酸増幅用プライマーセットによれば、 KRAS遺伝子のコドン 12に変 異があれば、特定の第 1の核酸増幅用プライマーセットによる KRAS遺伝子の増幅 産物を特定の第 1の制限酵素(たとえば Mval)が認識せず、当該 KRAS遺伝子のコ ドン 13に変異があれば、当該特定の第 1の核酸増幅用プライマーセットによる KRA S遺伝子の増幅産物を特定の第 2の制限酵素(たとえば Bgll)が認識せず、当該 KR AS遺伝子のコドン 12にもコドン 13にも変異がなければ、当該特定の第 1の核酸増 幅用プライマーセットによる当該 KRAS遺伝子の増幅産物を、特定の第 1及び第 2の 制限酵素(Mvalと Bgll)が認識する。
[0018] そうすると、当該 KRAS遺伝子のコドン 12及びコドン 13の変異の有無により、当該 特定の第 1の核酸増幅用プライマーセットが異なる配列の KRAS遺伝子の増幅産物 を生成することから、当該特定の第 1の制限酵素は、当該 KRAS遺伝子のコドン 12 の変異の有無に基づいて、異なる長さの制限酵素断片を生成し、当該特定の第 2の 制限酵素は、当該 KRAS遺伝子のコドン 13の変異の有無に基づいて、異なる長さ の制限酵素断片を生成する。よって、その制限酵素断片を、制限酵素断片長多型な どを用いて検出することで、 KRAS遺伝子のコドン 12及びコドン 13の変異を一度の 操作で検出でき、 KRAS遺伝子のコドン 12及びコドン 13の変異の有無をより少ない 核酸増幅工程で判定できる。
[0019] また、この核酸増幅用プライマーセットを用いて KRAS遺伝子のコドン 12及びコド ン 13の変異を検出する場合には、たとえば、
( 1 )第 1の工程:第 1の核酸増幅用プライマーセットを用いて当該 KRAS遺伝子の核 酸増幅を行う工程と、
(2)第 2の工程:第 1の工程で得られた KRAS遺伝子の増幅産物を前記特定の制限 酵素(Mval及び Bgll)で処理する工程と、
(3)第 3の工程:第 2の工程において制限酵素 Mval及び Bgllで処理された反応液を 铸型にして、第 2の核酸増幅用プライマーセットを用いて KRAS遺伝子の核酸増幅 を行う工程を行う。
[0020] この第 3の工程では、当該第 2の工程で制限酵素 Mvalで処理した場合には、 KR
AS遺伝子のコドン 12の変異の有無に起因して生成される、異なる制限酵素断片長 の KRAS遺伝子の増幅産物を増幅し、前記第 2の工程で制限酵素 Bgllで処理した 場合には、 KRAS遺伝子のコドン 13の変異の有無に起因して生成される、異なる制 限酵素断片長の増幅産物を増幅することになる。
[0021] また、前記第 2の工程を経る場合には、第 1の工程のみ行った場合よりも、検出感 度がより高いことから、癌の細胞、組織を直接採取する以外にも、癌細胞の比率が比 較的低い、患者の血液、瞎液、血清、糞便、精液、唾液、喀痰、脳脊髄液等を由来と する細胞や組織を採取して、 KRAS遺伝子のコドン 12及び 13の変異の有無を判定 すること力 Sできる。そのため、低侵襲の(患者への負担が小さい)診断が可能になる。
[0022] 第 3の工程で得られた核酸増幅物を用いて KRAS遺伝子のコドン 12及びコドン 13 の変異を判定する方法は、
(A)第 3の工程で得られた核酸増幅物を用いて、再度、制限酵素 Mval及び Bgllde 処理を行レ、制限酵素長多型 (RFLP)にて検出する方法と、
(B)第 3の工程で得られた核酸増幅物を SSCP法や、オリゴチップを用いて変異を判 定する方法が代表的である。
[0023] したがって、上述した BRAF遺伝子のコドン 599の変異の検出のための各工程の 前もしくは後、又はそれらと同時にもしくは並行して、 KRAS遺伝子のコドン 12及びコ ドン 13の変異の検出を行うことができる。たとえば、本発明の方法は、 BRAF遺伝子 のコドン 599の変異の検出のための各工程の前もしくは後又はそれらと同時にもしく は並行して、
1) KRAS遺伝子のコドン 12に変異があれば、第 1の核酸増幅用プライマーセット による当該 KRAS遺伝子の増幅産物を特定の第 1の制限酵素が認識せず、当該 K RAS遺伝子のコドン 13に変異があれば、当該第 1の核酸増幅用プライマーセットに よる当該 KRAS遺伝子の増幅産物を特定の第 2の制限酵素が認識せず、当該 KRA S遺伝子のコドン 12にもコドン 13にも変異がなければ、当該第 1の核酸増幅用プライ マーセットによる当該 KRAS遺伝子の増幅産物を、当該特定の第 1の制限酵素も当 該特定の第 2の制限酵素も認識するような第 1の核酸増幅用プライマーセットを用い て得た増幅産物を、前記第 1及び第 2の制限酵素で切断し、
2)次いで、前記第 1の核酸増幅用プライマーセットによる KRAS遺伝子の増幅産 物を铸型にして第 2の核酸増幅を行うことにより、当該 KRAS遺伝子のコドン 12及び 又はコドン 13に変異を持つ増幅産物を、より大きな割合で増幅することを特徴とす る、 KRAS遺伝子のコドン 12及びコドン 13の変異の検出のための各工程 を行い、 - その後、 BRAF遺伝子のコドン 599の変異の有無についての結果と、 KRAS遺伝 子のコドン 12及ぴコドン 13の変異の有無についての結果とを比較する工程をさらに 含むことができる。
[0024] このように、本発明の方法、この方法に用いるための核酸増幅用プライマー、核酸 増幅用プライマーセット、及び、上述の核酸増幅用プライマーセットと、制限酵素と、 DNAポリメラーゼを含むキットによれば、 BRAF遺伝子のコドン 599の変異とともに、 KRAS遺伝子のコドン 12及ぴコドン 13の変異の有無をもより少ない操作で精度よく '判定することができる。
図面の簡単な説明
[0025] [図 1]は、本発明に係る BRAF遺伝子のコドン 599の変異の検出方法の概要を示す 模式図である。
[図 2]は、本発明による BRAF遺伝子のコドン 599の変異の検出を^す図である。
[図 3]は、本発明に係る KRAS遺伝子のコドン 12及びコドン 13の変異の検出方法の 概要を示す模式図である。
[図 4]は、本発明による KRAS遺伝子のコドン 12及びコドン 13の変異の検出を示す 図である。
[図 5] (A) (B) (C) (D)は、 1つの表を構成し、実施例 2に記載した散発性大腸癌患 者由来の試料についての実験のうち、 21例の BRAF変異を有する試料及び 72例の KRAS変異を有する試料についての結果のまとめを示す。黒い四角はプロモーター のメチル化あり、空白の四角はプロモーターのメチル化なしを示す。
発明を実施するための最良の形態
[0026] (検出原理)
前述の通り、本発明は、 BRAF遺伝子に作用し、塩基配列にミスマッチを導入した
差巷え用紙(規則 )
核酸増幅用プライマーを含み、場合によってはさらに KRAS遺伝子に作用し、塩基 にミスマッチを導入した核酸増幅用プライマーをも含む核酸増幅用プライマーセット を用いることにより、 BRAF遺伝子のコドン 599の変異、及び場合によっては KRAS 遺伝子のコドン 12及び 13の変異を検出する。
[0027] 核酸増幅用プライマーにミスマッチを導入し、遺伝子の変異を検出する方法の一例 を示す。元々ある遺伝子を増幅する核酸増幅用のプライマーがある場合、その塩基 配列の 1又は 2以上の塩基を変換する。そして、当該核酸増幅用のプライマーを含む 核酸増幅用プライマーセットを用いて当該遺伝子を増幅したときに、当該遺伝子の 特定のコドンに変異があれば、当該核酸増幅用のプライマーセットは、その変異を伴 つた塩基配列に基づいて当該遺伝子を増幅するようにする。一方、当該遺伝子の特 定のコドンに変異がなければ、当該核酸増幅用のプライマーセットは、その変異を伴 わない塩基配列に基づいて当該遺伝子を増幅するようにする。このようなプライマー としては、たとえば、配列番号 5に示される BRAF遺伝子を含む配列において、塩基 番号 425番のアデニン (A)をグァニン (G)に置換させた配列を用い、その置換させ た塩基を含む塩基配列を含み、かつ塩基番号 428番から 430番を含まない塩基配 列で作成された核酸増幅用プライマーが挙げられる。
[0028] そうすると、その特定のコドンの変異の有無に基づいて、当該遺伝子の増幅産物は 、塩基配列を異にするようになる。そして、当該遺伝子のその特定のコドンに変異が ある場合の遺伝子の増幅産物に対しては、ある特定の制限酵素は認識せず、遺伝 子のコドンに変異がない場合の遺伝子の増幅産物に対しては、その増幅産物の特 定の 1箇所の回文構造を、当該特定の制限酵素が認識するようになる。そうすると、 当該遺伝子のその特定のコドンに変異がある場合には、その遺伝子の増幅産物の 制限酵素による断片は 1つになるが、その遺伝子のその特定のコドンに変異がある場 合には、その遺伝子の増幅産物の制限酵素による断片は 2つになる。このとき、この 2 つの断片の合計の断片長は、上の 1つの断片長とほぼ等しくなる。上記の BRAF遺 伝子のプライマーを用いた場合、この制限酵素としては Btslを使用することができる こうして、この遺伝子の特定のコドンの変異の有無を判定することができる。
[0029] また、 KRAS遺伝子の場合のように連続する 2つのコドンの変異を調べたい場合、 その塩基配列の 2以上の塩基を変換する。そして、当該核酸増幅用のプライマーを 含む核酸増幅用プライマーセット(第 1の核酸増幅用プライマーセット)を用いて当該 遺伝子を増幅したときに、当該遺伝子の特定の第 1のコドンに変異があれば、当該核 酸増幅用のプライマーセットは、その変異を伴った塩基配列に基づいて当該遺伝子 を増幅するようにする。また、当該核酸増幅用のプライマーを含む核酸増幅用プライ マーセットを用いて当該遺伝子を増幅したときに、当該遺伝子の特定の第 2のコドン に変異があれば、当該核酸増幅用のプライマーセットは、その変異を伴った塩基配 列に基づいて当該遺伝子を増幅するようにする。一方、当該遺伝子の当該特定の第 1のコドンにも当該特定の第 2のコドンにも変異がなければ、当該核酸増幅用のブラ イマ一セットは、その変異を伴わない塩基配列に基づいて当該遺伝子を増幅するよ うにする。
[0030] そうすると、当該特定の第 1のコドンの変異の有無及び、当該特定の第 2のコドンの 変異の有無に基づいて、当該遺伝子の増幅産物は、塩基配列を異にするようになる 。このようなプライマーとしては、たとえば、配列番号 11に示される KRAS遺伝子を含 む配列において、塩基番号 466番のアデニン (A)をシトシン(C)に、かつ塩基番号 4 67番のグァニン (G)をシトシン(C)に置換させた配列を用い、その置換させた 2塩基 を含み、かつ、塩基番号 470番から 475番を含まない塩基配列で作成された核酸増 幅用プライマーが挙げられる。
[0031] 次いで、こうして得られた当該遺伝子の増幅産物に対し、特定の第 1の制限酵素又 は特定の第 2の制限酵素を作用させる。
このとき、当該遺伝子の当該特定の第 1のコドンに変異がある場合の遺伝子の増幅 産物に対しては、ある特定の第 1の制限酵素は認識せず、当該遺伝子の当該特定 の第 1のコドンに変異がない場合の遺伝子の増幅産物に対しては、その増幅産物の 特定の第 1の 1箇所の回文構造を、当該特定の第 1の制限酵素が認識するようになる
[0032] そうすると、当該遺伝子の当該特定の第 1のコドンに変異がある場合には、その遺 伝子の増幅産物の制限酵素による断片は 1つになるが、当該遺伝子の当該第 1の特
定のコドンに変異がある場合には、その遺伝子の増幅産物の制限酵素による断片は
2つになる。このとき、この 2つの断片の合計の断片長は、上の 1つの断片長とほぼ等 しくなる。
[0033] 同様に、当該遺伝子の当該特定の第 2のコドンに変異がある場合の遺伝子の増幅 産物に対しては、ある特定の第 2の制限酵素は認識せず、当該遺伝子の当該特定 の第 2のコドンに変異がない場合の遺伝子の増幅産物に対しては、その増幅産物の 特定の第 2の 1箇所の回文構造を、当該特定の第 2の制限酵素が認識するようになる
[0034] そうすると、当該遺伝子の当該特定の第 2のコドンに変異がある場合には、その遺 伝子の増幅産物の制限酵素による断片は 1つになるが、当該遺伝子の当該第 2の特 定のコドンに変異がある場合には、その遺伝子の増幅産物の制限酵素による断片は 2つになる。このとき、この 2つの断片の合計の断片長は、上の 1つの断片長とほぼ等 しくなる。上記の KRAS遺伝子用プライマーを用いる場合、第 1の制限酵素としては Mval又は BstNI、第 2の制限酵素としては Bgllを使用することができる。
こうして、この遺伝子の特定の第 1のコドンと特定の第 2のコドンの 2箇所の変異を一 度の操作で検出でき、この遺伝子の特定の第 1のコドンと特定の第 2のコドンの 2箇 所の変異の有無を一度の操作で判定することができる。
[0035] (2次 PCR)
本発明では、上記のようにして、遺伝子の特定のコドンに変異がある場合には、 1つ の長い制限酵素断片を生成し、遺伝子の特定のコドンに変異がない場合には、 2つ の短い制限酵素断片を生成するが、これらの制限酵素断片を、別の組み合わせの 核酸増幅用プライマーセットを用いて増幅する。このとき、 1の核酸増幅用プライマー にミスマッチを導入する。今回は、その遺伝子の特定のコドンの変異の有無によらず 、前記特定の制限酵素が、その増幅産物の中の前記特定の 1箇所とは別の 1箇所の 回文構造を認識するように、ミスマッチを導入する。
そうすると、その遺伝子のその特定のコドンに変異がある場合には、その遺伝子の 増幅産物の制限酵素による断片は 2つになるが、その遺伝子のその特定のコドンに 変異がない場合には、その遺伝子の増幅産物の制限酵素による断片は 3つになる。
このとき、この 3つの断片の合計の断片長は、上の 2つの断片長とほぼ等しくなる。
[0036] また、前記遺伝子の前記特定の第 1のコドン、又は前記特定の第 2のコドンのコドン に変異がある場合には、 1つの長い制限酵素断片を生成し、当該遺伝子の当該特定 の第 1のコドンにも当該特定の第 2のコドンのコドンにも変異がない場合には、 2つの 短い制限酵素断片を生成するが、これらの制限酵素断片を、別の組み合わせの核 酸増幅用プライマーセットを用いて増幅する。このとき、通常は、前記特定の第 1の制 限酵素で処理した制限酵素断片を増幅するための核酸増幅用プライマーセット(第 2 の核酸増幅用プライマーセット)と、前記特定の第 2の制限酵素で処理した制限酵素 断片を増幅するための核酸増幅用プライマーセット(第 3の核酸増幅用プライマーセ ット)とは、異なる核酸増幅用プライマーセットとする。
[0037] 前記第 2の核酸増幅用プライマーセットの 1の核酸増幅用プライマーにミスマッチを 導入する。今回は、その遺伝子の特定の第 1のコドンの変異の有無によらず、前記特 定の第 1の制限酵素が、その増幅産物の中の前記特定の第 1の 1箇所とは別の 1箇 所の回文構造を認識するように、ミスマッチを導入する。
同様に、前記第 3の核酸増幅用プライマーセットの 1の核酸増幅用プライマーにミス マッチを導入する。今回は、その遺伝子の特定の第 2のコドンの変異の有無によらず 、前記特定の第 2の制限酵素が、その増幅産物の中の前記特定の第 2の 1箇所とは 別の 1箇所の回文構造を認識するように、ミスマッチを導入する。
[0038] そうすると、前記遺伝子の前記特定の第 1のコドンに変異がある場合には、当該遺 伝子の増幅産物の前記特定の第 1の制限酵素による断片は 3つになるが、当該遺伝 子の当該特定の第 1のコドンに変異がない場合には、当該遺伝子の増幅産物の当 該特定の第 1の制限酵素による断片は 2つになる。このとき、この 3つの断片の合計 の断片長は、上の 2つの断片長とほぼ等しくなる。
同様に、前記遺伝子の前記特定の第 2のコドンに変異がある場合には、当該遺伝 子の増幅産物の前記特定の第 2の制限酵素による断片は 3つになるが、当該遺伝子 の当該特定の第 2のコドンに変異がない場合には、当該遺伝子の増幅産物の当該 特定の第 2の制限酵素による断片は 2つになる。このとき、この 3つの断片の合計の 断片長は、上の 2つの断片長とほぼ等しくなる。
[0039] この方法では、もとの遺伝子の特定のコドンの変異の割合によらず、変異の有無に 基づいて生成される、異なる制限酵素断片を多量に増幅する。従って、もとの遺伝子 の特定のコドンの変異の割合が低くても、当該遺伝子の特定のコドンの変異の有無 に基づぐ増幅産物の差異が顕著になり、当該遺伝子の特定のコドンの変異を高感 度で検出できる。
[0040] (具体的な検出用プライマー及び方法の一例)
BRAF遺伝子のコドン 599の変異を検出する方法の一例を図 1に示す。 BRAF遺 伝子のコドン 599を含む領域を 2つの核酸増幅用プライマーからなる核酸増幅用プ ライマーセットで増幅する(図 1 (a) )。
ここに、 599Sは、配列番号 2で表される核酸増幅用プライマーであり、 BRAF遺伝 子の相補鎖の 18851番目力も 18878番目の部位(BRAF遺伝子の元の鎖の 1713 99番目から 171426番目の部位に相当)に結合する。
ここに、配列番号 1は、この BRAF遺伝子の相補鎖の 18601番目力 18900番目 の塩基配列を示すものである。
このとき、配列番号 2で表される核酸増幅用プライマーの 1番目の塩基は、 BRAF 遺伝子の相補鎖の 18878番目に結合し、配列番号 2で表される核酸増幅用プライマ 一の 28番目の塩基は、 BRAF遺伝子の相補鎖の 18851番目に結合する。
[0041] この 599Sは、 BRAF遺伝子のコドン 599に変異がある場合の遺伝子の増幅産物 に対しては、制限酵素 Btsl (ビ一.ティ一.エス'ワン)は認識せず、 BRAF遺伝子のコ ドン 599に変異がない場合の遺伝子の増幅産物に対しては、その増幅産物の特定 の 1箇所の回文構造を、制限酵素 Btslが認識するように設計されている。
具体的には、 599Sのうち、 BRAF遺伝子の相補鎖の 18852番目(BRAF遺伝子 の元の鎖の 171425番目に相当)の塩基に対応する塩基をグァニン(配列番号 2の プライマーの 27番目の塩基)に変換している。
[0042] また、 599wtASは、配列番号 3で表される核酸増幅用プライマーであり、 BRAF遺 伝子の相補鎖の 18747番目力も 18772番目に対応する部位(BRAF遺伝子の元の 鎖の 171505番目力ら 171530番目の咅 M立)に結合する。
このとき、配列番号 3で表される核酸増幅用プライマーの 1番目の塩基は、 BRAF
遺伝子の相補鎖の 18772番目に対応する部位に結合し、配列番号 3で表される核 酸増幅用プライマーの 28番目の塩基は、 BRAF遺伝子の相補鎖の 18747番目に 対応する部位に結合する。
そして、 599Sによるヌクレオチド (塩基)の連結は上流から下流に向かって行われ、 599wtASによるヌクレオチド(塩基)の連結は下流から上流に向かって行われ、 PC R反応により BRAF遺伝子の元の鎖の略 171399番目力、ら 171530番目の部分を増 幅する。
そうすると、この BRAF遺伝子の増幅産物を制限酵素 Btslで処理したときに、 BRA F遺伝子のコドン 599に変異がある場合の遺伝子の増幅産物に対しては、 132bpの 1つの制限酵素断片が生成され、 BRAF遺伝子のコドン 599に変異がない場合の遺 伝子の増幅産物に対しては、 34bpと、 98bpの 2つの制限酵素断片が生成される(図 l (b) )。
[0043] 次いで、前記の工程により、生成された BRAF遺伝子のコドン 599に変異がある場 合の 1つの制限酵素断片と、 BRAF遺伝子のコドン 599に変異がない場合の 2つの 制限酵素断片を、前記の核酸増幅用プライマーセットとは異なる核酸増幅用プライマ 一セットで増幅する(図 1 (c) )。ここに、 599Sは、前述の配列番号 2で表される核酸 増幅用プライマーでり、 BRAF遺伝子の相補鎖の 18851番目力 18878番目の部 位(BRAF遺伝子の 171399番目から 171426番目の部位に相当)に結合する。
[0044] —方、 599mtASは、配列番号 4で表される核酸増幅用プライマーであり、 BRAF 遺伝子の相補鎖の 18749番目力 18774番目に対応する部位(BRAF遺伝子の元 の鎖の 171503番目力ら 171528番目の咅位)に結合する。
このとき、配列番号 4で表される核酸増幅用プライマーの 1番目の塩基は、 BRAF 遺伝子の相補鎖の 18774番目に対応する部位に結合し、配列番号 2で表される核 酸増幅用プライマーの 26番目の塩基は、 BRAF遺伝子の相補鎖の 18749番目に 対応する部位に結合する。
そして、 BRAF遺伝子のコドン 599の変異の有無によらず、 BRAF遺伝子の増幅 産物に対しては、制限酵素 Btslが前記特定の 1箇所とは違う 1箇所の回文構造を認 識するように設計されている。
具体的には、 599mtASのうち、 BRAF遺伝子の相補鎖の 18764番目の塩基に対 応する塩基をグァニン (配列番号 4のプライマーの 11番目の塩基)に変換している。 そして、 599Sによるヌクレオチド (塩基)の連結は上流から下流に向かって行われ、 599mtASによるヌクレオチド(塩基)の連結は下流から上流に向かって行われ、 PC R反応により BRAF遺伝子を増幅する。
[0045] そうすると、増幅産物を制限酵素 Btslで処理したときに、 BRAF遺伝子のコドン 59 9に変異がある場合の遺伝子の増幅産物に対しては、 112bpと、 18bpの 2つの制限 酵素断片が生成され、 BRAF遺伝子のコドン 599に変異がない場合の遺伝子の増 幅産物に対しては、 34bpと、 78bpと、 18bpの 3つの制限酵素断片が生成される(図 1亂
[0046] これらの制限酵素断片を制限酵素長多型 (RFLP)を用レ、て検出すると、変異がな い試料においては、 78bpの制限酵素断片が検出され、変異がある試料においては 、 112bpの制限酵素断片が検出され、この相違に基づいて、 BRAF遺伝子のコドン 599に変異の有無を判定することができる(図 2 (a) )。
また、上記 112bpのバンドと、 78bpのバンドについて塩基配列を調べると、コドン 5 99に変異があるものは、コドン 599の 2番目のチミンがアデニンに変換していることが 分かる(図 2 (b) )。
[0047] 同様に、 KRAS遺伝子のコドン 12の変異、及びコドン 13の変異を一度の操作で検 出する方法の一例を図 3に示す。
配列番号 6で表される KRAS遺伝子のコドン 12及びコドン 13を含む領域(KRAS 遺伝子の 454番目の塩基から 613番目の 160塩基で、コドン 1の 1番目の塩基からコ ドン 54の 1番目の塩基)を 2つの核酸増幅用プライマーからなる核酸増幅用プライマ 一セットで増幅する(図 3 (a) )。ここに、 12& 13SPは、配列番号 7で表される核酸増 幅用プライマーであり、 KRAS遺伝子の 457番目力ら 486番目に対応する部位、即 ち、配列番号 6で表される KRAS遺伝子のコドン 12とコドン 13を含む領域の 4番目か ら 33番目の配列に対応する部位(実際には配列番号 6で表される KRAS遺伝子の コドン 12とコドン 13を含む領域の 4番目から 33番目の配列の相補鎖の部位)に結合 し、 a) KRAS遺伝子のコドン 12に変異がある場合の遺伝子の増幅産物に対しては、
制限酵素 Mval (ェム ·ブイ ·ェ一'ワン)は認識せず、 b) KRAS遺伝子のコドン 13に 変異がある場合の遺伝子の増幅産物に対しては、制限酵素 Bgll (ビー.ジ一.エル. ワン)は認識せず、 c) KRAS遺伝子のコドン 12にもコドン 13にも変異がない場合の 遺伝子の増幅産物に対しては、その増幅産物の特定の第 1の 1箇所の回文構造 (K RAS遺伝子の 484番目力ら 488番目の CCWGGZGGWCC)を、制限酵素 Mval が認識するように設計され、その増幅産物の特定の第 2の 1箇所の回文構造 (KRAS 遺伝子の 482番目力ら 492番目の GCCNNNNNGGCZCGGNNNNNCCG)を 、制限酵素 Bgllが認識するように設計されている。
[0048] 具体的には、 12& 13SPのうち、 KRAS遺伝子の 484番目の塩基に対応する塩基 をシトシン(配列番号 7のプライマーの 28番目の塩基)に変換し、 KRAS遺伝子の 48 3番目の塩基に対応する塩基をシトシン(配列番号 7のプライマーの 27番目の塩基) に変換している。
前者の変換により、コドン 12の変異の有無に伴う増幅産物の相違を Mval (又は Bs tNI (ビー'エス 'ティー'ェヌ'ワン))で識別でき、後者の変換により、コドン 13の変異 の有無に伴う増幅産物の相違を Bgllで識別することができる。
また、 WMASは、配列番号 8で表される核酸増幅用プライマーであり、 KRAS遺 伝子の 549番目から 576番目の部位、即ち、配列番号 6で表される KRAS遺伝子の 96番目から 123番目の部位に結合する(実際には配列番号 6で表される KRAS遺 伝子領域の 96番目力ら 123番目の配列の部位であって、配列番号 8の 1番目の塩 基が配列番号 6で表される KRAS遺伝子領域の 123番目に結合し、配列番号 8の 2 8番目の塩基が配列番号 6で表される KRAS遺伝子領域の 96番目に結合する)。 そして、 12& 13SPによるヌクレオチド (塩基)の連結は上流から下流に向かって行 われ、 WildASによるヌクレオチド(塩基)の連結は下流から上流に向かって行われ、 PCR反応により KRAS遺伝子を増幅する。
[0049] そうすると、この KRAS遺伝子の増幅産物を制限酵素 Mval (又は BstNI)で処理し たときに、 KRAS遺伝子のコドン 12に変異がある場合の遺伝子の増幅産物に対して は、 120bpの 1つの制限酵素断片が生成され、 KRAS遺伝子のコドン 12に変異がな い場合の遺伝子の増幅産物に対しては、 29bpと、 91bpの 2つの制限酵素断片が生
成される(図 3 (b) )。
一方、この KRAS遺伝子の増幅産物を制限酵素 Bgllで処理したときに、 KRAS遺 伝子のコドン 13に変異がある場合の遺伝子の増幅産物に対しては、 120bpの 1つの 制限酵素断片が生成され、 KRAS遺伝子のコドン 13に変異がない場合の遺伝子の 増幅産物に対しては、 32bpと、 88bpの 2つの制限酵素断片が生成される(図 3 (c) )
[0050] (第 1の制限酵素による断片の増幅)
次いで、前記の工程により、制限酵素 Mval (又は BstNI)で処理したことにより生成 された、 KRAS遺伝子のコドン 12に変異がある場合の 1つの制限酵素断片と、 KRA S遺伝子のコドン 12に変異がない場合の 2つの制限酵素断片を、前記の核酸増幅 用プライマーセットとは異なる核酸増幅用プライマーセット(「第 2の核酸増幅用プライ マーセット」に相当)で増幅する(図 3 (d) )。ここに、 12& 13SPは、前述の配列番号 7 で表される核酸増幅用プライマーであり、 KRAS遺伝子の 457番目力ら 486番目に 対応する部位、即ち、配列番号 6で表される KRAS遺伝子のコドン 12とコドン 13を含 む領域の 4番目から 33番目の配列に対応する部位(実際には配列番号 6で表される KRAS遺伝子のコドン 12とコドン 13を含む領域の 4番目力 33番目の配列の相補 鎖の部位)に結合する。
一方、 12mtASは、配列番号 9で表される核酸増幅用プライマーであり、 KRAS遺 伝子の 549番目から 576番目の部位、即ち、配列番号 6で表される KRAS遺伝子の 96番目力 123番目の部位に結合し (実際には配列番号 6で表される KRAS遺伝 子領域の 96番目力ら 123番目の配列の部位であって、配列番号 8の 1番目の塩基 が配列番号 6で表される KRAS遺伝子領域の 123番目に結合し、配列番号 8の 28 番目の塩基が配列番号 6で表される KRAS遺伝子領域の 96番目に結合する)、 KR AS遺伝子のコドン 12の変異の有無によらず、 KRAS遺伝子の増幅産物に対しては 、制限酵素 Mval (又は BstNI)が前記特定の第 1の 1箇所とは違う 1箇所の回文構造 を認識するように設計されてレ、る。
[0051] 具体的には、 12mtASのうち、配列番号 6で表される KRAS遺伝子の 103番目の 塩基に対応する塩基をシトシン (配列番号 8のプライマーの 21番目の塩基)に変換し
、 KRAS遺伝子の 104番目の塩基に対応する塩基をシトシン (配列番号 8のプライマ 一の 20番目の塩基)に変換してレ、る。
そして、 12& 13SPによるヌクレオチド (塩基)の連結は上流から下流に向かって行 われ、 12mtASによるヌクレオチド(塩基)の連結は下流から上流に向かって行われ 、 PCR反応により KRAS遺伝子を増幅する。
[0052] そうすると、増幅産物を制限酵素 Mval (又は BstNI)で処理したときに、 KRAS遺 伝子のコドン 12に変異がある場合の遺伝子の増幅産物に対しては、 99bpと、 21bp の 2つの制限酵素断片が生成され、 KRAS遺伝子のコドン 12に変異がない場合の 遺伝子の増幅産物に対しては、 29bpと、 60bpと、 21bpの 3つの制限酵素断片が生 成される(図 3 (f) )。
これらの制限酵素断片をァガロースゲル又はポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳 動により検出すると、変異がない試料においては、 60bpの制限酵素断片が検出され 、変異がある試料においては、 99bpの制限酵素断片が検出され、この相違に基づ いて、 KRAS遺伝子のコドン 12の変異の有無を判定することができる(図 4 (a) )。 また、上記コドン 12に変異があるバンドについての一例である力 塩基配列を調べ ると、コドン 12に変異があるものは、コドン 12の 2番目のグァニンがアデニンに変換し ていることが分かる(図 4 (b) )。
[0053] (第 2の制限酵素による断片の増幅)
次いで、前記の工程により、制限酵素 Bgllで処理したことにより生成された、 KRAS 遺伝子のコドン 13に変異がある場合の 1つの制限酵素断片と、 KRAS遺伝子のコド ン 13に変異がない場合の 2つの制限酵素断片を、前記の核酸増幅用プライマーセッ トとは異なる核酸増幅用プライマーセット(「第 3の核酸増幅用プライマーセット」に相 当)で増幅する(図 3 (e) )。ここに、 12& 13SPは、前述の配列番号 7で表される核酸 増幅用プライマーであり、 KRAS遺伝子の 457番目力ら 486番目に対応する部位、 即ち、配列番号 6で表される KRAS遺伝子のコドン 12とコドン 13を含む領域の 4番 目から 33番目の配列に対応する部位(実際には配列番号 1で表される KRAS遺伝 子のコドン 12とコドン 13を含む領域の 4番目から 33番目の配列の相補鎖の部位)に 結合する。
一方、 13mtASは、配列番号 5で表される核酸増幅用プライマーであり、 KRAS遺 伝子の 549番目から 576番目の部位、即ち、配列番号 6で表される KRAS遺伝子の 96番目力 123番目の部位に結合し (実際には配列番号 6で表される KRAS遺伝 子領域の 96番目力も 123番目の配列の部位であって、配列番号 8の 1番目の塩基 が配列番号 6で表される KRAS遺伝子領域の 123番目に結合し、配列番号 8の 28 番目の塩基が配列番号 6で表される KRAS遺伝子領域の 96番目に結合する)、 KR AS遺伝子のコドン 13の変異の有無によらず、 KRAS遺伝子の増幅産物に対しては 、制限酵素 Bgllが前記特定の第 2の 1箇所とは違う 1箇所の回文構造を認識するよう に設計されている。
[0054] 具体的には、 13mtASのうち、配列番号 6で表される KRAS遺伝子の 113番目の 塩基に対応する塩基をグァニン (配列番号 10のプライマーの 11番目の塩基)に変換 し、配列番号 6で表される KRAS遺伝子の 105番目の塩基に対応する塩基をグァニ ン (配列番号 10のプライマーの 19番目の塩基)に変換し、配列番号 6で表される KR AS遺伝子の 103番目の塩基に対応する塩基をシトシン (配列番号 10のプライマー の 21番目の塩基)に変換してレ、る。
そして、 12& 13SPによるヌクレオチド (塩基)の連結は上流から下流に向かって行 われ、 13mtASによるヌクレオチド(塩基)の連結は下流から上流に向かって行われ 、 PCR反応により KRAS遺伝子を増幅する。
[0055] そうすると、増幅産物を制限酵素 Bgllで処理したときに、 KRAS遺伝子のコドン 13 に変異がある場合の遺伝子の増幅産物に対しては、 106bpと、 14bpの 2つの制限 酵素断片が生成され、 KRAS遺伝子のコドン 13に変異がない場合の遺伝子の増幅 産物に対しては、 32bpと、 74bpと、 14bpの 3つの制限酵素断片が生成される(図 3 ( g) )。
これらの制限酵素断片をァガロースゲル又はポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳 動により検出すると、変異がない試料においては、 74bpの制限酵素断片が検出され 、変異がある試料においては、 106bpの制限酵素断片が検出され、この相違に基づ いて、 KRAS遺伝子のコドン 13の変異の有無を判定することができる(図 4 (c) )。 また、上記コドン 13に変異があるバンドについての一例である力 塩基配列を調べ
ると、コドン 13に変異があるものは、コドン 132の 2番目のグァニンがアデニンに変換 してレ、ること力 S分力る(図 4 (d) )。
[0056] (核酸増幅用プライマーの合成)
本発明における核酸増幅用プライマーは、公知の方法により合成することができ、 例えば、リン酸トリエステル法や、リン酸アミダイト法、リン酸基部位無保護法といった 固相化学的合成法を用いることができる。具体的には、オリゴヌクレオチド合成装置( Applied Biosystem社製、 Expedite Model 8909)等を用いて合成することができる。
[0057] (変異の検出方法)
本発明における BRAF遺伝子のコドン 599、及び場合によってはさらに KRAS遺 伝子のコドン 12及びコドン 13、の変異の検出方法は、試料の準備、遺伝子 (ゲノム D NA)の抽出、プライマーを用いた遺伝子増幅、増幅産物の制限酵素による切断、遺 伝子の変異の検出の過程からなる。
[0058] (検査用試料'病理検体の準備)
本発明の検査方法に供される、ヒトの試料は、 BRAFタンパク質をコードする遺伝 子(BRAF遺伝子)、及び場合によってはさらに KRAS遺伝子を含むものであればよ ぐ特に限定されない。具体的には、生体から採取した組織が挙げられ、手術により 切除した大腸癌などの癌の組織や、手術前の内視鏡検査等に用いる生体検査材料 (生検組織)、手術標本等が、試料の有効利用の点で好適に用いられる。その他、血 液、膝液、血清、糞便、精液、唾液、喀痰、脳脊髄液又はこれらを用いて核酸増幅反 応により BRAF遺伝子が増幅された反応液等も試料として挙げられる。
[0059] (DNAの抽出)
本発明の検查方法に供される DNAは、上記のようなヒトの試料から、ブレンダーを 用いて組織を破砕し、次いで、フヱノール'クロロフオルム法等の公知の遺伝子抽出 法により、抽出することができ、このような DNAを検查用試料として用いることができ る。
[0060] (遺伝子'核酸増幅)
本発明において、 BRAF遺伝子増幅方法としては、公知の方法を使用することが でき、例えば、 PCR法、 NASBA法、 LAMP法等が挙げられる。好ましくは、 PCR法
が用いられる。
[0061] (ネステッド PCR法)
本発明において、 PCRで核酸を増幅する場合の PCRは、ネステッド PCR法である こと力 Sできる。
ネステッド PCRは、外側のプライマーと内側のプライマーを使って 2段階の PCRを 行う方法であり、 目的とする領域からの最初の PCR産物を铸型にして、最初に使用し たプライマー位置より、両方とも内側にプライマーを設定して次の PCRを行う。
PCRは、 2つのプライマー対が適当な間隔で向き合って存在することによる特異性 に基づいて特定の断片を増幅する手法であるが、プライマーの類似配列によってミス スプライシングがときどき起こり、標的配列の増幅とともに非特異的な増幅が起こって しまう。この非特異的断片を含む PCR生成物を铸型にしてネステッド PCRを行うと、 非特異的な断片のなかにネステッドプライマーに類似した配列が存在する確率が極 めて低くなるため、非特異的増幅の"ノイズの海"から標的配列のみをうまく拾い出し てくることが可能になる。したがって、ネステッド PCR法は、バックグラウンドが出やす レ、 PCRの場合に有効な方法である。
[0062] 本発明においては、通常の PCR法を用いてもよぐまた、ネステッド PCRの他、セミ ネステッド PCR、ダブ/レ PCRを用いても良い。
[0063] (制限酵素)
制限酵素としては、変異を検出する遺伝子の特定のコドン (BRAF遺伝子のコドン 5 99など)に変異があれば、前記核酸増幅用プライマーを含む核酸増幅用プライマー セットによる増幅産物を認識せず、当該特定のコドンに変異がなければ、当該増幅 産物を認識するような、特定の制限酵素を用いる。たとえば、前記 BRAF遺伝子増幅 による増幅産物は、制限酵素 Btslにより処理する。 Btslの至適温度は 37°C付近であ る。また、前記 KRAS遺伝子増幅による増幅産物は、コドン 12の変異の検出には制 限酵素 Mvalにより処理する。 Mvalの至適温度は 37°C付近である。コドン 13の変異 の検出には制限酵素 Bgllにより処理する。 Bgllの至適温度は 37°C付近である。
[0064] (BRAF遺伝子の制限酵素断片の検出)
前記制限酵素で処理した断片は、制限酵素断片長多型等を用いて検出する。
[0065] (変異検出試薬'変異検出試薬キット)
本発明はまた、 BRAF遺伝子のコドン 599の変異の検出のための方法に用いられ る変異検出試薬及び変異検出試薬キットを含む。変異検出試薬としては、 BRAF遺 伝子のコドン 599を含む領域を増幅する核酸増幅用プライマー、 DNAポリメラーゼ、 ェキソヌクレア—ゼ、核酸検出用の標識等、本発明の方法に使用されるあらゆる試薬 のいずれであってもよレ、。本発明の試薬及びキットはまた、 KRAS遺伝子のコドン 12 及びコドン 13の変異の検出のための方法に用いられる変異検出試薬及び変異検出 試薬キットをも含むことができる。変異検出試薬としては、 KRAS遺伝子のコドン 12 及びコドン 13を含む領域を増幅する核酸増幅用プライマー、 DNAポリメラーゼ、ェ キソヌクレア—ゼ、核酸検出用の標識等、本発明の方法に使用されるあらゆる試薬の いずれであってもよレ、。
[0066] また、 BRAF遺伝子のコドン 599の変異の検出のための方法に用いられる変異検 出試薬キットは、本発明の検出方法に使用されるあらゆる試薬のうち少なくとも 2以上 をキットとして使用するものであればよい。また、蛍光標識をプローブした DNAも本キ ットに含めてもよい。
本発明のキットは、好ましくは、少なくとも本発明の BRAF遺伝子のコドン 599を含 む領域を増幅する核酸増幅用プライマーセット(及び場合によっては KRAS遺伝子 のコドン 12及びコドン 13を含む領域を増幅する核酸増幅用プライマーセット)を含む 実施例
[0067] 以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例 に限定されるものではない。 大腸癌患者の外科手術より得られた癌部及び正常粘膜部より抽出'精製したゲノム 遺伝子を準備した。
[0068] 実施例 1一 1 (BRAF遺伝子)
(プライマーの設計)
BRAF遺伝子のコドン 599の変異を検出する 1次 PCRでは、図 1中の 599S (配列
番号 2)と 599wtAS (配列番号 3)のプライマーを用いた:
599 S: TAAAAATAGGTGATTTTGGTCTAGCTGC
599wtAS: CCAAAAATTTAATCAGTGGAAAAATA
この実施例では、 BRAF遺伝子のコドン 599より 3塩基上流に存在する A (アデニン )に対応する部分の 599Sのプライマーを G (グァニン)に変換するミスマッチを導入す ることにより、コドン 599に変異がない遺伝子増幅産物の制限酵素 Btslによる認識部 位を作り出すこととした。
[0069] この 1次 PCRによる遺伝子増幅産物 5 μ ΐを用いて、制限酵素 Btslにより、最初の制 限酵素処理(1次制限酵素処理)を行った。次に 2次 PCRでは、図 1中の 599S (配列 番号 2)と 599mtAS (配列番号 4)のプライマーを用いた:
599mtAS: AAAAATTTAAGCAGTGGAAAAATAGC
本実施例では、セミネステッド PCR又はダブル PCRを用いた。この実施例では、 59 9mtASの 11番目の塩基を G (グァニン)に変換するミスマッチを導入することにより、 コドン 599の変異の有無によらず、コドン 599以外の部位で遺伝子増幅産物の制限 酵素 Btslによる認識部位を作り出すこととした。これにより、 1次 PCRの増幅産物が増 幅されるので、変異の有無がより顕著に判定でき、かつ、制限酵素反応を確認するこ とができる。
[0070] (1次 PCR)
10倍濃度の PCR緩衝溶液、 1. 5mM MgCl、 0. ImM デォキシヌクレオチド 3
2
リン酸(dNTP)、0. 2 μ Μの 599Sプライマー(酉己歹 IJ番号 2)、 0. 2 μ Μの 599wtAS プライマー(配列番号 3)、 1. 25U Taqポリメラーゼ(Ampli-TaqGold; Perkin- Elmer, Foster City, CA)とほぼ lOOngの BRAF遺伝子(DNA)を用レ、 PCR溶液を 25 μ 1と した。 PCRの温度条件は 95°Cで 11分の後、 95°Cで 30秒→58°Cで 30秒→72°Cで 30秒のサイクルを 30回繰り返して遺伝子を増幅した。その結果、 130bpの増幅産物 が得られた (図 1 (a) )。
[0071] (1次制限酵素処理)
上記 PCRにより得られた増幅産物の含まれる増幅産物液 25 μ 1のうち 5 μ 1を用い て、制限酵素 Btsl (New Englannd Biolabs社)による切断を行った。
[0072] 10倍濃度の NE緩衝溶液 (buffer) 3 / 1、 100倍濃度の BSA 0.3 μ 1、制限酵 素 31(1011//11) 0.2 /il、蒸留水 21.5/il、 1次 PCRで得られた増幅産物の含 まれる遺伝子増幅液 25 /ilのうち 5 /ilを用い、合計 30 μΐとした。切断反応は Btslの 至適温度である 37°Cで 2時間行った(図 1 (b) )。
[0073] (2次 PCR)
コドン 599の変異検出のための 1次 PCRの増幅産物を増幅するプライマーとして、 599S (配列番号 2)と、 599mtAS (配列番号 4)を用いた。
10倍濃度の PCR緩衝溶液、 1.5mM MgCl、0. ImM デォキシヌクレオチド 3
2
リン酸、 0.2μΜの 599Sプライマー(酉己歹 1J番号 2)、 0.2 μ Μの 599mtASプライマ 一(酉己列番号 4)、 1.25U Taqポリメラーゼ(Ampli-TaqGold; Perkin- Elmer, Foster City, CA)と上記 1次制限酵素処理による切断された増幅産物を铸型にして(1 μ 1)、 PCR溶液を合計 25 μΐとした。 PCRの温度条件は 95°Cで 11分の後、 95°Cで 30秒 →53°Cで 30秒→72°Cで 30秒のサイクルを 26— 30回繰り返して遺伝子を増幅した( 図 l(c))。
[0074] 10倍濃度の NE緩衝溶液 3μ1、 100倍濃度の BSA 0· 3 μ 1、制限酵素 Btsl(10 υ/μ1)0.2μ1、蒸留水 1· 5μ1、 1次 PCRで得られた増幅産物の含まれる遺伝子 増幅液 25 μ 1を用い、合計 30 μ 1とした。切断反応は Btslの至適温度である 37°Cで 6 時間以上行った (図 1(d))。
[0075] (制限酵素断片の検出)
上記、制限酵素で処理した制限酵素断片を、制限酵素断片長多型により検出した
[0076] コドン 599に変異力 Sなレヽ場合には、 2次制限酵素処理により、 78bp、 34bp、 18bp の 3種類の断片が検出される。一方、総てのコドン 599に変異がある場合は、 112bp 、 18bpの 2種類の断片が検出される力 実際には、総てのコドン 599のうちの一部に 変異力 Sあること力 S殆んどであり、この場合、 112bp、 78bp、 34bp、 18bpの 4種類の 断片が検出される。
基本的に、 112bpの断片が 78bpの断片と同等力、、より強く認められた場合に、コド ン 599に変異があると判定する。
結果を図 2 (a)に示す。
[0077] この例によれば、 540の左レーンには 78bp、 112bpの断片が検出され、コドン 599 の変異ありと判定され、残りの 5レーンでは 78bpの断片のみが検出され、コドン 599 の変異なしと判定された。
[0078] このように、本実施例によれば、 BRAF遺伝子のコドン 599の変異の検出を行うこと により、 BRAF遺伝子のコドン 599変異の有無を精度よく判定することができることが 確認された。
[0079] 実施例 1一 2 (KRAS遺伝子)
(プライマーの設計)
配列番号 11で表される KRAS遺伝子のコドン 12及びコドン 13 (配列番号 11に示 される配列の 470番目の塩基から 475番目の塩基)を含む領域を 2つの核酸増幅用 プライマーからなる核酸増幅用プライマーセットで増幅する(図 3 (a) )。
[0080] 今回用いたプライマー 12& 13SPは、 5 ' -ACTGAATATAAACTTGTGGTA GTTGGCCCT (配列番号 7)で表される核酸増幅用プライマーであり、配列番号 11 に示される KRAS遺伝子を含む配列において、塩基番号 466番のアデニン (A)をシ トシン (C)に、かつ塩基番号 467番のグァニン (G)をシトシン (C)に置換させた配列 の 440番カら 469番である。
[0081] このプライマーは、 a) KRAS遺伝子のコドン 12に変異がある場合の遺伝子の増幅 産物に対しては、制限酵素 Mvalは認識せず、 b) KRAS遺伝子のコドン 13に変異が ある場合の遺伝子の増幅産物に対しては、制限酵素 Bgllは認識せず、 c) KRAS遺 伝子のコドン 12にもコドン 13にも変異がない場合の遺伝子の増幅産物に対しては、 その増幅産物の特定の第 1の 1箇所の回文構造 (配列番号 11の 467番目力 471 番目の CCWGG/GGWCC)を、制限酵素 Mvalが認識するように設計され、その増 幅産物の特定の第 2の 1箇所の回文構造 (配列番号 11の 465番目力 475番目の G CCNNNNNGGC/CGGNNNNNCCG)を、制限酵素 Bgllが認識するように設計 されている。
[0082] 今回の 1次 PCRに用いたプライマーのもうひとつは
WildAS: AACAAGATTTACCTCTATTGTTGGATCA
である(配列番号 8)。これは配列番号 11に示される塩基配列の 532番目力 559番 目の相補鎖である。
[0083] この 1次 PCRによる遺伝子増幅産物を、コドン 12及びコドン 13の変異検出用にそ れぞれ 5 用いて、コドン 12の変異検出用には Mvalにより、最初の制限酵素処理( 1次制限酵素処理)を行い、コドン 13の変異検出用には Bgllにより、最初の制限酵 素処理( 1次制限酵素処理)を行つた。
[0084] 次に 2次 PCRでは、コドン 12の変異検出用には、 12& 13SP (配歹 1J番号 7)と 12mt AS (配列番号 9)のプライマーを用いた:
12& 13SP : ACTGAATATAAACTTGTGGTAGTTGGCCCT
12mtAS: AACAAGATTTACCTCTATTCCTGGATCA
コドン 13の変異検出用には、 12& 13SPと 13mtAS (配列番号 10)のプライマーを 用いた:
12& 13SP : ACTGAATATAAACTTGTGGTAGTTGGCCCT
13mtAS: AACAAGATTTGCCTCTATGGCTGGATCA
[0085] 本実施例では、セミネステッド PCR又はダブル PCRを用いた。この実施例では、コ ドン 12の変異検出用には、 12mtASの 19番目と 20番目の塩基を C (シトシン)に変 換するミスマッチを導入することにより、コドン 12の変異の有無によらず、コドン 12以 外の部位で遺伝子増幅産物の制限酵素 Mvalよる認識部位を作り出すこととした。こ れは、今回の実施例において、 KRAS遺伝子の変異の判定に制限酵素長多型 (RF LP)を用いて検出するためである。制限酵素長多型 (RFLP)の場合、制限酵素処理 が確実に行われた力を判定できたほうが望ましいため、今回の実地例も KRAS遺伝 子の突然変異の有無に関係なぐ制限酵素の働きが正常に行われたことを確認する ために制限酵素認識部位を人工的に作成を行った。これにより制限酵素反応を確認 すること力 Sできる。
[0086] (1次 PCR)
10倍濃度の PCR緩衝溶液、 1. 5mM MgCl、 0. ImMデォキシヌクレオチド 3リ
2
ン酸、 0. 2 μ Μの 12& 13SP (酉己歹 1J番号 2)、 0. 2 μ Μの WildAS (酉己歹番号 3)、 1. 25U Taqポリメラーゼ(Amplト TaqGold; Perkin-Elmer, Foster City, CA)とほぼ 100
ngの KRAS遺伝子(DNA)を用レ、 PCR溶液を 25 μ 1とした。 PCRの温度条件は 95 °Cで 11分の後、 95°Cで 30秒→58°Cで 30秒→72°Cで 30秒のサイクルを 30回,操り 返して遺伝子を増幅した。その結果、 120bpの増幅産物が得られた(図 3 (a) )。
[0087] 上記 PCRにより得られた増幅産物の含まれる増幅産物液 25 μ 1のうち 5 μ 1を用い て、コドン 12の変異検出用には制限酵素 MvaI (Takara社)による切断を行い、コドン 13の変異検出用には制限酵素 Bgll (Takara社)による切断を行った。
[0088] (コドン 12の変異検出のための 1次制限酵素処理)
10倍濃度のNEbuffer2 1 l、制限酵素 Mval (5U/ μ 1) 0. 5 μ 1、蒸留水 3. 5 μ 1、 1次 PCRで得られた増幅産物の含まれる遺伝子増幅液 25 μ 1のうち 5 μ 1を用い合計 20 μ 1とした。切断反応は Mvalの至適温度である 37°Cで 2時間行った(図 3 (b) )。
[0089] (コドン 13の変異検出のための 1次制限酵素処理)
10倍濃度の NEbuffer2 μ 1、制限酵素 Bgll (5U/ μ 1) 0. 5 μ 1,蒸留水 3. 5 μ 1、 1 次 PCRで得られた増幅産物の含まれる遺伝子増幅液 25 β 1のうち 5 β 1を用い合計 2 0 μ 1とした。切断反応は Bgllの至適温度である 37°Cで 2時間行った(図 3 (c) )。
[0090] (コドン 12の変異検出のための 2次 PCR)
コドン 12の変異検出のための 1次 PCRの増幅産物を増幅するプライマーとして、 1 2& 13SP (配列番号 7)と、 12mtAS (配列番号 9)を用レ、た。
10倍濃度の PCR緩衝溶液、 1. 5mM MgCl 、 0. ImMデォキシヌクレオチド 3リ
2
ン酸、 0. 2 μ Μの 12& 13SP (酉己歹 IJ番号 7)、 0. 2 /i Μの 12mtASプライマー(酉己歹 IJ 番号 9)、 1. 25U Taqポリメラーゼ(Ampl TaqGold; Perkin- Elmer, Foster City, CA )とコドン 12の変異検出のための 1次制限酵素処理による切断された増幅産物を铸 型にして(1 μ 1)、 PCR溶液を合計 25 μ 1とした。 PCRの温度条件は 95°Cで 11分の 後、 95。Cで 30秒→53°Cで 30秒→72°Cで 30秒のサイクノレを 26— 30回繰り返して 遺伝子を増幅した(図 3 (d) )。
[0091] (コドン 13の変異検出のための 2次 PCR)
コドン 13の変異検出のための 1次 PCRの増幅産物を増幅するプライマーとして、 1 2& 13SP (配列番号 7)と、 13mtAS (配列番号 10)を用レ、た。
10倍濃度の PCR緩衝溶液、 1. 5mM MgCl 、 0. ImMデォキシヌクレオチド 3リ
ン酸、 0. 2 μ Μの 12& 13SP (酉己歹 IJ番号 7)、 0. 2 /i Mの 13mtASプライマー(酉己歹 lj 番号 10)、 1. 25U Taqポリメラーゼ(Ampl TaqGold; Perkin- Elmer, Foster City, CA)とコドン 12の変異検出のための 1次制限酵素処理による切断された増幅産物を 铸型にして(1 μ 1)、 PCR溶液を合計 25 μ 1とした。 PCRの温度条件は 95°Cで 11分 の後、 95°Cで 30秒→53。Cで 30秒→72。Cで 30秒のサイクノレを 26 30回繰り返して 遺伝子を増幅した(図 3 (e) )。
[0092] (コドン 12の変異検出のための 2次制限酵素処理)
10倍濃度のNEbuffer3 μ l、制限酵素 Mval (5U/ μ 1) 1 μ 1、蒸留水 1 μ 1、 1次 Ρ CRで得られた増幅産物の含まれるコドン 12の変異検出のための 2次 PCRによる遺 伝子増幅液 25 μ 1を用い合計 30 μ 1とした。切断反応は Mvalの至適温度である 37 °Cで 6時間以上行った(図 3 (f) )。
[0093] (コドン 13の変異検出のための 2次制限酵素処理)
10倍濃度の NEbuffer3 μ 1、制限酵素 Bgll (5U/ /i 1) 1 μ 1、蒸留水 1 μ 1、 1次 PC Rで得られた増幅産物の含まれるコドン 13の変異検出のための 2次 PCRによる遺伝 子増幅液 25 β 1を用い合計 30 β 1とした。切断反応は Bgllの至適温度である 37°Cで 6時間以上行った(図 3 (g) )。
[0094] 上記、制限酵素で処理した制限酵素断片を、制限酵素断片長多型により検出した
[0095] (KRAS遺伝子コドン 12の変異の検出)
2次制限酵素処理により、コドン 12に変異がない場合には、 60bp、 29bp、 21bpの 3種類の断片が検出される。一方、総てのコドン 12に変異がある場合は、 99bp、 21b pの 2種類の断片が検出されるが、実際には、正常組織からの KRAS遺伝子を含む 場合カほとんどであるため、この場合、 99bp、 60bp、 29bp、 21bpの 4種類の断片力 S 検出される。実際には、 120bp、 91bpの断片も認められる場合がある力 これは、制 限酵素処理が不良である力、、錡型量が過剰の場合である。
基本的に、 99bpの断片が認められた場合に、コドン 12に変異があると判定する。 結果を図 4 (a)に示す。
[0096] この例によれば、右から 2から 4番目のレーンには 99bp、 60bpの断片が検出され、
コドン 12の変異ありと判定され、最右のレーンでは 60bpの断片のみが検出され、コド ン 12の変異なしと判定された。
[0097] (KRAS遺伝子コドン 13の変異の検出)
2次制限酵素処理により、コドン 13に変異がない場合には、 74bp、 32bp、 14bpの 3種類の断片が検出される。一方、総てのコドン 13に変異がある場合は、 106bp、 14 bpの 2種類の断片が検出されるが、実際には、正常組織からの KRAS遺伝子を含む 場合カほとんどであるため、この場合、 106bp、 74bp、 32bp、 14bpの 4種類の断片 が検出される。実際には、 120bp、 88bpの断片も認められる場合がある力 これは、 制限酵素処理が不良であるか、錡型量が過剰の場合である。
基本的に、 106bpの断片が認められた場合に、コドン 13に変異があると判定する。 結果を図 4 (c)に示す。
[0098] この例によれば、右から 3から 4番目のレーンには 106bp、 74bpの断片が検出され 、コドン 13の変異ありと判定され、最右のレーンでは 74bpの断片のみが検出され、コ ドン 13の変異なしと判定された。
[0099] 実施例 2
この実験において铸型として使用した DNAは、治療手術を受けた 234人の患者か ら得た腫瘍組織及び対応する正常粘膜の試料から抽出した。腫瘍及び正常粘膜組 織の両方の試料は、 -80°Cで保存し、 DNAを、プロティナーゼ K消化及びフエノー ノレークロロホルム抽出を含む標準的手順によって抽出した。
[0100] 実験方法は、実施例 1に記載したのと同様であった。ただし、一次 PCRにおいて、 Taqポリメラーゼを 0. 625U、铸型 DNAを 50ng使用し、温度条件は 95°Cで 11分の 後、 95。Cで 30禾少、 58°Cで 30禾少、 72。Cで 30禾少のサイクノレを 30回行レ、、その後さら (こ 72°Cで 5分間反応させた。
腫瘍のステージ決定は、 Duke's specificationに基づいて行った。
[0101] 結果のまとめを図 5に示す。
234例の CRC患者由来試料のうち、 21例(9%)において BRAF V599E変異が 、そして 72例(31 %)において KRAS遺伝子変異が検出された。この内訳を表 1に示 す。
[0102] [表 1]
G34A G12S 5 (2,1》
G34T G12C 2 (0.9)
[0103] BRAF遺伝子変異の全てのケースが、 1796位の塩基の Tから Aへのトランスバー ジョン (V599E)であった。 KRAS遺伝子変異の 72例のうち、 51例(71 %)が Gから Aへのトランジシヨンであり、 17例(24%)が Gから Tへのトランスバージョンであり、 7 例(10%)が Gから Cへのトランスバージョンであった。以前他の研究者によって報告 されていたように、ひとつの患者において BRAF及び KRASの両方に変異を有する 例はな力 た。
したがって、調べた 234例は次のようなサブグループに分けることができた: BRAF 遺伝子に変異を有する群(BRAF - mt)、 KRAS遺伝子に変異を有する群 (KRAS - mt)、及びこれらの遺伝子のいずれにも変異を有さない群(Wt)。これらの 3つのグル ープ及び MSIステータスを含む関連する臨床病理学的特徴を、表 2に示す。
[0104] [表 2]
[0105] BRAF— mtを有する CRCの 21例のうち、 16例(76%)が MSI—Hであり、一方、他 の 2つのグループの殆どが MSI— L/MSSであった。 BRAF変異(76%)又は KRA S変異(64%)を有する CRC患者の殆どは、 65歳以上であった。 BRAF及び KRAS の両方に関して野生型である CRC患者の 45%のみ力 65歳以上であった。性別に 関しては、 BRAF— mtの CRCは、男性よりも女性において頻発していた (表 2)。右側 結腸は、 BRAF変異を有する腫瘍の好発部位であり(76。/0)、 KRAS変異に関して はそれより顕著ではなく(44%)、両方の遺伝子に関して野生型の腫瘍については最 少であった(23%) (表 2)。組織学的等級については、 BRAF— mtは、病理学的に は、 poorly (未分ィ匕)又は mucinous (ムチン)(57%)の CRCにおいて、 moderately differentiated (33%)又は well differentiated (10%)の CRCよりも頻発していた。腫瘍 のステージは、変異のステータスとの関連性を示さなかった。
[0106] BRAF及び KRASの遺伝子の変異を調べた試料について、 MINT1、 MINT2、 MINT31、 CACNA1G、 pl6INK4a、 pl4ARF、 COX2、 DAPK及び MGMT、ならび に hMLHlプロモーター領域の 5'及び 3'領域を含む 9個の遺伝子座のメチル化の
状態を評価し、その結果を、問題の CRCが BRAF又は KRAS変異を有するかどうか に基づいて評価した (表 3)。
[表 3]
BRAF-mtKR -mt 曹
(n = 39) 19(90) 10(14)
MJNT1
Ml蘭
MINT3!
CAC觀 G
M(n = 39) 18綱 12(1?) pl6議 9(6/ < 0,0001
U(n = 195) 3(14) 卿 132 (94)
表中、「M」はプロモーターのメチル化あり、「U」はプロモーターのメチル化なしを示 す。 値21は Chi-square testによる。
hMLHlプロモーター領域の 5,及び 3,領域、ならびに MINT1、 MINT2、 MINT
31、 CACNA1G、 pl6 、及び pl4 のメチル化は、 BRAF-mtグループにお いて非常に多く見られた(Pく 0. 0001)。 hMLHlの 3 '領域のメチル化は、殆ど BR AF-mtグループのみにおいて観察された(BRAF-mt = 76% ; KRAS_mt = 0%; Wt= l % ; P< 0. 0001)。野生型グループとの比較においては、 KRAS変異は、 B RAF変異と同様に MINT2、 pl 6INK4a、及び pl4ARFのメチル化と統計的に相関して いた。し力、し、 MGMTのメチル化は、 KRAS_mtグループのみと関連していた(P = 0. 007)。 C〇X2及び DAPKのプロモーターのメチル化は、いずれのグループとも 相関を示さなかった。表 3には、統計的な結果を 3 X 2の定性的相関表(contingency table)について示してある。この相関表は、 BRAF変異、 KRAS変異及び両遺伝子 に関して野生型の腫瘍の間に差異が存在するという事実を明確にする。上記の特定 の差異は、この表の比率を調べることにより明白であり、これらの差異は、 2 X 2の表 を用いた個別の 2グノレープ比較によって統計的に有意であることが確認された。
[0109] 3つのグループ間での 11個のプロモーターのメチル化の頻度を決定した(表 4)。
[0110] [表 4]
サプクラス メチル ft遗 ¾子廒》¥均 »
(Subclass) (Average no of methylated !o ci) S.E. 95% C.I
S縦- m n = 21》 7.2 0.31 6,6-7.9 < 0.0001
A¾ 5-mt (n = 72) 1.8 0.17 1.5-2.1
Wl fn = 141 i 1.0 0.12 0.79-1J
[0111] 表中、「S. E.」はスタンダードエラーを示す。 値。は、 Wilcoxon/Kruskal-Wallis ' testに る。
234例の CRCのうち、 93例(40%)の CRC試料が KRAS又は BRAFのいずれか の変異を示した。 BRAF— mtの 21例は、 1箇所以上の遺伝子座においてメチル化を 示し、メチル化された遺伝子座の数の平均値は 7. 2であった(SE = 0. 31 , 95%CI = 6. 6—7. 9)。 KRAS— mtの 72例は、 1. 8箇所のメチル化された遺伝子座を有し ており(SE= 0. 17、 95%CI= 1. 5— 2. 1)、 Wtの 141ί列は、 1. 0箇所のメチノレイ匕 された遺伝子座を有していた(SE = 0. 12, 95%CI = 0. 79- 1. 3)。したがって、 B RAF— mt、 KRAS_mt及び Wtサブグループにおいて、メチル化された遺伝子座の 平均数には有意な差が見られた(Wilcoxon/Kruska卜 Wallis ' test, P< 0. 0001)。
[0112] したがって、本発明の方法により、 BRAF及び KRAS遺伝子の変異の有無を検查
することにより、 MINT1、 MINT2、 MINT31、 CACNA1G、 pl6 、 pl4 、 C OX2、 DAPK及び MGMT、ならびに hMLHlプロモーター領域の 5 '及び 3 '領域 のメチルイ匕のレベルを予測することができる。また、本発明の方法により被験者由来 の試料を調べることにより、癌の発症の可能性、そのタイプ、部位などを予測すること ができる。
産業上の利用可能性
[0113] 本発明の核酸増幅用プライマー、核酸増幅用プライマーセット、及び BRAF遺伝子 コドン 599の変異(及び KRAS遺伝子コドン 12及びコドン 13の変異)検出キットの製 造は、製薬業界、ノくィォテクノロジーの分野などで利用することができる。本発明の B RAF遺伝子のコドン 599の変異(及び KRAS遺伝子コドン 12及びコドン 13の変異) の検出方法、この検出方法に用いるための核酸増幅用プライマー、核酸増幅用ブラ イマ一セット、及び BRAF遺伝子コドン 599の変異(及び KRAS遺伝子コドン 12及び コドン 13の変異)検出キットは、医療業において有用に利用することができる。
[0114] この出願は、平成 15年 12月 26日出願の日本特許出願、特願 2003— 435628に 基づくものであり、特願 2003— 435628の明細書及び特許請求の範囲に記載された 内容は、すべてこの出願明細書に包含される。