明 細 書 新規な力リゥム依存的ナ卜リゥム一カルシウム交換体 技術分野
本発明は、 虚血後の再灌流による細胞傷害治療剤及ぴ 又は炎症性疾患治療剤 のスクリーニングに有用な、 力リゥ厶依存的ナトリゥム一カルシウム交換体に関 する。 背景技術
虚血に陥った臓器は、 可逆的傷害期を経て非可逆的傷害期へと進展する。 この 途中にて再灌流されれば、 傷害を阻止することができると考えられるが、 再灌流 自体が新たな傷害を加えることが実験的及び臨床的検討から指摘されており、 再 灌流傷害と呼ばれている。 再灌流障害の発生機序には、 再灌流時に産生されるフ リーラジカルと、 再灌流がもたらす細胞内カルシウムの過剰状態 (カルシウム過 負荷) の両者が大きな役割を演じていることが知られている (非特許文献 1及び 2 ) 。 カルシウム過負荷が発生する機序については種々の説があり、 (1 ) エネ ルギー依存性カルシウム交換機構の破綻でカルシウムが濃度勾配に従って細胞内 に流入する、 (2 ) 虚血時の細胞内ナトリウムイオン濃度の上昇に伴い、 ナトリ ゥム一カルシウム交換系を介してカルシウムが細胞内に流入する、 (3 ) 虚血中 の α受容体密度の上昇が再灌流後のカルシウム過負荷を促進する、 (4 ) 細胞膜 の高度な障害に伴い、 濃度勾配に従って細胞外からカルシウムが流入するなどの 要因が考えられてきた (非特許文献 3 ) 。 また、 脳における虚血再灌流時の遅発 性神経細胞壊死では、 グルタミン酸受容体の一つである N M D A (N-methy l-D- aspartate) 受容体が賦活化し、 N M D A作動性カルシウムチャンネルが開口し. 細胞内にカルシウムが流入すると考えられている (非特許文献 4 ) 。
実験動物で一過性の虚血後には、 血流を再開しても局所的に血流が再開されな い領域が生ずるノーリフロー (no ref l ow) 現象が、 脳、 心臓、 及び腎臓で観察 されている。 ノーリフロー現象発生の主な機序として、 微小血管構築の破壊及び
出血 (例えば、 白血球による毛細血管塞栓、 あるいは、 血管内皮細胞の膨化な ど) 、 又は血小板血栓などが挙げられている (非特許文献 5 ) 。 中大脳動脈閉塞 の病巣内の微小血管内につまっている細胞の種類は、 赤血球以外に多核白血球、 単球、 又は血小板が認められ、 特に白血球に分類される好中球による毛細血管塞 栓がノ一リフロー現象の原因として注目されている (非特許文献 5 ) 。 多核白血 球は、 微小血管を通過する際、 赤血球の流れも遅延させ、 脳における虚血時では. 血管内皮細胞や血小板と関与し、 多核白血球の細胞表面には接着因子に対する受 容体の発現が上昇する。 また、 Lーセレクチンや C D 1 1 、 C D 1 8、 又は I C A M— 1などの接着因子に対するモノクローナル抗体は、 白血球の集積を抑制し. 梗塞範囲を減少させたことから、 虚血再灌流における白血球の集積に、接着因子 の発現が重要であることが示唆された (非特許文献 6及び 7 ) 。 更に、 白血球に おける接着因子の発現が細胞内カルシウム濃度の上昇によって増加することが報 告されている (非特許文献 8 ) 。
細胞内のイオン環境を調整するイオンチャンネルは多数知られているが、 虚血 再灌流障害において特に重要な役割を果たすものには、 例えば、 ナトリウム一水 素交換体又はナトリウム一カルシウム交換体などがある。 虚血再灌流障害の過程 では、 虚血から再灌流という流れの中で 2つの局面が存在する。 まず 1つは虚血 であり、 この間は血液の供給がなく無酸素状態のため、 エネルギーの枯渴、 嫌気 性代謝の亢進、 及び有害な代謝産物の蓄積などが起こり、 徐々にアシドーシスが 進行する。 もう一つは再灌流であり、 これにより酸素が供給され、 エネルギーの 供給、 好気性代謝の再開、 及び蓄積した代謝産物の除去とともにアシドーシスは 是正される。 すなわち、 生体にとって生理的な状態に戻る。 ところが、 障害は再 灌流時に急激に進行することから、 虚血によるアシドーシスの状態よりも、 再灌
:お
し f'に-より中性化する状態の方がかえって悪いように見える。 この現象にはナトリ ゥ厶一水素交換体とナトリウム一カルシウム交換体が関与していることが知られ ている (非特許文献 9 ) 。
ナトリウム一水素交換体は細胞膜上に存在し、 細胞内の ρ Ηの調整に関与し、 ァシドーシスの時に濃度勾配に従って細胞外に水素イオンを排出すると同時にナ トリウムイオンを細胞内に取り込む働きを持つことが知られている。 虚血性前期
段階 (i schemi c precond it ioni ng) の過程でナトリウム一水素交換体の発現と活 性を抑制する機序が保護的な作用に関わっているという報告がある (非特許文献 1 0 ) 。 またナトリウム一水素交換体の活性化が好中球を活性化したり、 C D 1 1、 C D 1 8、 又は I C A M— 1などの発現を介して好中球の粘着を促進させた りすると報告されている (非特許文献 1 1 ) 。
ナトリウム一カルシウム交換反応には、 古典的なナトリウム一カルシウム交換 反応と、 カリウム依存的なナトリウム一カルシウム交換反応とがある (非特許文 献 1 2及び 1 3 ) 。 ナトリウム一カルシウム交換体は全ての組織に存在すると考 えられており、 その生理的意義は、 細胞外ナトリウムの流入を伴う細胞内カルシ ゥムの細胞外への排出である。 また、 細胞内ナトリウムを排出し、 細胞内にカル シゥムを流入させる逆反応も、 生理的に起こりうることが報告されている。
虚血灌流時におけるイオンの動態についての報告によれば、 虚血時には、 酸素 供給がなくなり嫌気性代謝が亢進することから、 エネルギーの基質 (A T P ) が 枯渴に向かうと同時にアシドーシスが進行する。 すなわち、 ナトリウムポンプが 不活性化して細胞外にナトリウムイオンが排出されないほか、 ァシドーシス補正 のためナトリウム一水素交換体によリ徐々に細胞外に水素イオンが排出され、 細 胞内にナトリウムイオンが流入する。 この細胞内ナトリウムイオンの蓄積は、 弓 I き続いてナトリウム一カルシウム交換体を介して細胞内カルシウムイオンの上昇 を招く。 更に、 再灌流時には組織周囲の P Hが急激に中性に戻ることから、 嫌気 性代謝で細胞内に蓄積した水素イオンと、 その周囲で低値となった水素イオンと の濃度勾配が大きくなる。 それに伴いナトリウム一水素交換体が活性化し、 急速 に水素イオンが細胞外に、 ナトリウムイオンが細胞内に流入する。 この急速なナ トリゥムイオンの流入に引き続いてナトリゥムーカルシウム交換体も活性化して, ナトリウムイオンが細胞外へ、 そしてカルシウムイオンが細胞内に輸送される。 すなわち、 細胞内カルシウム濃度が急速に上昇し、 カルシウム過負荷状態となる, この急激な p Hの上昇とカルシウムの細胞内流入が、 虚血再灌流における障害的 な反応の引き金のひとつと考えられている (非特許文献 9 ) 。 このように第一段 階としてナ卜リゥム一水素交換体の活性化、 第二段階としてナトリゥ厶ーカルシ ゥム交換体の活性化が虚血再灌流障害の比較的初期の過程において重要な役割を
果たす。
白血球における細胞内カルシウム濃度の上昇は虚血再灌流時だけではなく、 ホ ルミルメチォニルロイシニルフエ二ルァラニン ( f MLP) 、 ァラキドン酸、 又 はロイコトリェン B 4などの白血球遊走因子によつて引き起こされる好中球活性 化の過程で細胞内にカルシウムが流入することが重要であること、 そしてその流 入を抑制すると好中球の活性化が抑制されることが知られている (非特許文献 1 4) 。 また、 f ML P処理により細胞内 p Hの上昇が起こり、 ナトリウム一水素 交換体阻害剤は細胞内 P Hの上昇と白血球の遊走を抑制することが報告されてい る (非特許文献 1 5) 。
しかしながら、 現在のところ、 白血球におけるナトリウム一カルシウム交換体 の阻害が白血球の活性化を抑制するかどうかは明らかではなく、 虚血再灌流障害 及び 又は炎症の原因となる白血球活性化を引き起こすナトリウム一カルシウム 交換体は同定されていない。
また、 特許文献 1には、 ヒトナトリウム カルシウム交換体の配列として、 6 03アミノ酸からなる配列が記載されている。 非特許文献 1 6には、 脳で最も多 く、 視床核、 海馬 CA 1神経、 及び大脳皮質第 IV層で多く発現している、 644 アミノ酸をコードする力リウム依存的ナトリウム一カルシゥム交換体遺伝子 N C KX 3の配列が記載されている。 特許文献 2には、 480アミノ酸からなるヒト 診断タンパク質の配列が、 特許文献 3には、 235アミノ酸又は 1 69アミノ酸 からなるヒト分泌タンパク質の配列が記載されている。
(非特許文献 1 ) 「サーキュレーション (Circulation) 」 , (米国) , 1990 年, 第 82巻, p. 723-738 '
(非特許文献 2) Γァニュアル ' レビュー■ォブ'フィジオロジー (Annual Review of Physiology) J , (米国) , 1992年, 第 54巻, p. 243-256
(非特許文献 3) 「呼吸と循環 J , 2001年, 第 49巻, 第 1号, p. 5-11
(非特許文献 4) 「クリニカル 'ニューロサイエンス (CLINICAL
NEUR0SCIENCE) 」 , (米国) , 1999年, 第 17巻, 第 5号, p. 567-569
(非特許文献 5) 「呼吸と循環」 , 2001年, 第 49巻, 第 1号, p. 13-20
(非特許文献 6) 「サーキュレーション (Circulation) 」 , (米国) , 1993
年, 第 88巻, p. 649-658
(非特許文献 7) 「アメリカン 'ジャーナル 'ォブ 'パソロジー (American Journal of Pathology) j , (米国) , 1993年, 第 143巻, p. 410-418
(非特許文献 8) 「セル■ァドヒ一ジョン 'アンド 'コミュニケーション
(Cell Adhesion & Go瞧 uni cat ion) 」 , (スイス) , 1993年, 第 1卷, ρ· 21-32
(非特許文献 9) 森下靖雄ら著, 「臓器の虚血再灌流障害一基礎と臨床」 , 診 断と治療社, 2002年, p. 1-225
(非特許文献 1 0) 「サーキュレーション ' リサーチ (Circulation
Research) j , (米国) , 1999年, 第 85巻, p. 723-730
(非特許文献 1 1 ) 「ジャーナル 'ォブ 'カルディオパスキュラー■ファーマ コロジ一 (Journal of Cardiovascular Pharmacology) j , (米国) , 2001年, 第 37巻, p. 668-677
(非特許文献 1 2) 「蛋白質核酸酵素」 , 1998年, 第 43卷, 第 12号, p. 1555- 1560
(非特許文献 1 3) 「ジャーナル■ォブ 'バイオロジカル■ケミストリ一
(Journal of Biological Chemistry) 」 , (米国) , 1993年, 第 268巻, p. 6874-6877
(非特許文献 1 4) 「バイオケミカル 'アンド■バイオフィジカル' リサ一 チ -コミュニケーションズ (Biochemical & Biophysical Research
Communications) 」 , (米国) , 1981年, 第 103巻, p. 227-232
(非特許文献 1 5) 「プリティッシュ■ジャーナル■ォブ■ファーマコロジー (British Journal of Pharmacology) J , (英国) , 1998年, 第 124巻, p. 627-638
(非特許文献 1 6) 「ジャーナル 'ォブ■バイオロジカル■ケミストリー
(Journal of Biological Chemistry) 」 , (米国) , 2001年, 第 276巻, . 23161
(特許文献 1 ) 国際公開第 WO 02/26980号公報
(特許文献 2) 国際公開第 WOO 1 /75067号公報
(特許文献 3 ) 国際公開第 WO 00X43495号公報
発明の開示
従来技術に記載したように、 白血球の活性化において虚血再灌流時と炎症時と の間には、 白血球細胞内の p Hの上昇とそれに伴うナトリウム一水素交換体の活 性化、 そしてそれによつて引き起こされる細胞内カルシウム濃度の上昇など、 非 常に共通した局面を持つ。 白血球のナトリウム一カルシウム交換体は、 虚血再灌 流障害及び炎症時の白血球の活性化に関与していると考えられる。 すなわち、 虚 血再灌流時や炎症時において、 白血球のナトリウム一カルシウム交換体活性化を 阻害することは、 白血球の細胞内カルシウム濃度の上昇を抑制し、 その活性化を 抑えると考えられる。
本発明の課題は、 新規の白血球の力リゥム依存的ナトリゥムーカルシウム交換 体、 及びそれをコードする新規のポリヌクレオチドを提供し、 白血球細胞の活性 化を抑制させることを作用機序とする虚血再灌流による細胞傷害治療剤又は炎症 性疾患治療剤として有用な物質を得るための簡便なスクリーニング系を提供する ことにある。
本発明者は、 鋭意研究を行なった結果、 白血球に豊富に発現し、 配列番号 2又 は 4で表されるアミノ酸配列からなるカリウム依存的ナトリウム一カルシウム交 換体をコードするポリヌクレオチドを取得し、 それを発現する細胞を製造し、 前 記ナトリウム一カルシウム交換体の抑制化 (阻害) 剤、 すなわち、 虚血再灌流障 害治療剤又は炎症性疾患治療剤として有用な物質のスクリーニングツールを提供 した。 また、 前記ナトリウム一カルシウム交換体を発現する細胞を用いた活性の 検出系を構築し、 それの抑制化 (阻害) を指標とした虚血再灌流障害治療剤及び 炎症性疾患治療剤として有用な物質のスクリーニング法を提供した。 次いで、 前 記スクリーニング法を用い、 前記ナトリウム一カルシウム交換体の阻害剤を得、 前記阻害剤がヒト末梢多形核白血球の遊走を抑制すること、 すなわち、 白血球の 活性化が抑制されることを確認し、 白血球活性化抑制剤からなる新規な虚血再灌 流障害治療剤及び Z又は炎症性疾患治療剤を提供し、 本発明を完成した。
本発明は、
[ 1 ] ( 1 ) 配列番号 2又は 4で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
あるいは、 (2) 配列番号 2又は 4で表されるアミノ酸配列の 1又は複数の箇所 において、 全体で 1〜 5個のアミノ酸が置換、 欠失、 揷入、 及び 又は付加され たアミノ酸配列からなり、 しかも、 カリウム依存的ナトリウム一カルシウム交換 活性を示すポリペプチド;
[2] (1 ) 配列番号 2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、 あるい は、 (2) 配列番号 2で表されるアミノ酸配列の 1又は複数の箇所において、 全 体で 1〜 5個のアミノ酸が置換、 欠失、 挿入、 及び Z又は付加されたアミノ酸配 列からなり、 しかも、 カリウム依存的ナトリウム一カルシウム交換活性を示すポ リペプチドである、 [1 ] のポリペプチド;
[3] ナトリゥム一カルシウム交換活性が逆向きナトリゥム一カルシウム交換活 性である、 [1 ] 又は [2] のポリペプチド;
[4] [1 ] 〜 [3] のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
[5] [4] のポリヌクレオチドを含む発現ベクター;
[6] [5] の発現ベクターでトランスフエクシヨンされた細胞;
[7] [6] の細胞を用いることを特徴とする、 [1 ] 〜 [3] のポリペプチド を製造する方法;
[8] (1 ) [1:] 〜 [3] のポリペプチドを発現している細胞と試験物質とを 接触させる工程、
(2) 前記ポリべプチドのカリゥム依存的ナトリゥム一カルシウム交換活性が抑 制化されるか否かを分析する工程、 及び
(3) 前記ポリべプチドのカリウム依存的ナトリウム一カルシウム交換活性を抑 制化する物質を選択する工程
を含む、 前記ポリべプチドの抑制化剤をスクリーニングする方法;
[9] (1 ) [1:! 〜 [3] のポリペプチドを発現している細胞と試験物質とを 接触させる工程、
(2) 前記ポリべプチドのカリゥム依存的ナトリゥ厶ーカルシウム交換活性が抑 制化されるか否かを分析する工程、 及び
(3) 前記ポリべプチドのカリウム依存的ナトリウム一カルシウム交換活性を抑 制化する物質を選択する工程
を含む、 白血球活性化抑制剤をスクリーニングする方法;
[1 0] (1 ) [1:] 〜 [3] のポリペプチドを発現している細胞と試験物質と を接触させる工程、
(2) 前記ポリぺプチドのカリウム依存的ナトリウム一カルシウム交換活性が抑 制化されるか否かを分析する工程、 及び
(3) 前記ポリべプチドのカリウム依存的ナトリウム一カルシウム交換活性を抑 制化する物質を選択する工程
を含む、 虚血再灌流障害治療剤及び 又は炎症性疾患治療剤をスクリーニングす る方法;
[1 1 ] (1 ) [1;] 〜 [3] のポリペプチドを発現している細胞と試験物質と を接触させる工程、
( 2 ) 前記ポリぺプチドのカリゥム依存的ナ卜リゥムーカルシウム交換活性が抑 制化されるか否かを分析する工程、 及び
(3) 製剤化する工程
を含む、 虚血再灌流障害治療及び 又は炎症性疾患治療用医薬組成物の製造方 法;
[1 2] [8] の方法で得ることができる物質を有効成分とする、 白血球活性化 抑制用医薬組成物;
[1 3] [8] の方法で得ることができる物質を有効成分とする、 虚血再灌流障 害治療及び 又は炎症性疾患治療用医薬組成物;
[1 4] [8] の方法で得ることができる物質を投与する、 白血球活性化抑制方 法;
[1 5] [8] の方法で得ることができる物質を投与する、 虚血再灌流障害及び Z又は炎症性疾患治療方法;
[1 6] [8] の方法で得ることができる物質の、 白血球活性化抑制用医薬組成 物製造のための使用;並びに
[1 7] [8] の方法で得ることができる物質の、 虚血再灌流障害治療及び/又 は炎症性疾患治療用医薬組成物製造のための使用
に関する。
[ 1 ] 〜 [ 3 ] のポリペプチドを発現している細胞の、 白血球活性化抑制剤、 あるいは、 虚血再灌流障害治療剤及び 又は炎症性疾患治療剤スクリーニングの ための使用も、 本発明に含まれる。
本明細書における Γ虚血再灌流障害治療剤」 又は 「虚血再灌流障害治療用医薬 組成物」 には、 虚血再灌流障害である患者の治療のために使用する薬剤又は医薬 組成物と、 虚血再灌流障害の恐れのある対象に予防的に使用する薬剤又は医薬組 成物との両方が含まれる。 また、 「炎症性疾患治療剤」 又は 「炎症性疾患治療用 医薬組成物」 には、 炎症性疾患である患者の治療のために使用する薬剤又は医薬 組成物と、 炎症性疾患傾向にある対象に予防的に使用する薬剤又は医薬組成物と の両方が含まれる。
なお、 国際公開第 W002/26980号公報には、 本願の配列番号 4で表される 6 0 3 アミノ酸からなるアミノ酸配列と同一配列が記載されている。 しかし、 国際公開 第 W002/26980号公報には、 前記配列からなるポリべプチドやそれをコードするポ リヌクレオチドを実際に取得したとの記載や、 具体的な取得方法の記載はなく、 配列番号 4で表されるアミノ酸配列からなるポリべプチドゃこれをコードするポ リヌクレオチドは、 本発明者らが始めて提供した。 また、 国際公開第 W001/75067 号公報には、 3 5番目〜 4 8 0番目のアミノ酸配列が、 本願の配列番号 2で表さ れるアミノ酸配列における 2 5 7番目〜 6 2 2番目のアミノ酸配列と 8 2 %、 配 列番号 4で表されるアミノ酸配列における 2 5 7番目〜 6 0 3番目のアミノ酸配 列と 7 7 %—致する、 ヒト診断タンパク質 (4 8 0アミノ酸) が記載されている c 国際公開第 WO0O/43495号公報には、 3 3番目〜 2 3 5番目のァミノ酸配列及び 1 番目〜 1 6 9番目のアミノ酸配列が、 それぞれ、 本願の配列番号 4で表されるァ ミノ酸配列における 4 0 0番目〜 6 0 3番目のアミノ酸配列と 8 6 %、 4 3 5番 目〜 6 0 3番目のアミノ酸配列と 9 7 %—致するヒト分泌タンパク質 (2 3 5ァ ミノ酸) 及びヒ卜分泌タンパク質 (1 6 9アミノ酸) が記載されている。 J.
B i o l . Ghem., 276, 23161 , 2001には、 1 7番目〜 6 4 1番目のアミノ酸配列が、 本願の配列番号 2で表されるアミノ酸配列における 1 3番目〜 6 1 8番目のアミ ノ酸配列と 5 8 %、 配列番号 4で表されるアミノ酸配列における 1 3番目〜 5 9 9番目のアミノ酸配列と 5 8 %—致する N C K X 3 ( 6 4 4アミノ酸) が記載さ
P T/JP2003/009732
10 れている。 しかし、 いずれも、 虚血後の再灌流による細胞傷害治療剤及び 又は 炎症性疾患治療剤のスクリーニングに有用なポリべプチドを取得するために、 本 発明のポリべプチドの取得を示唆するものではなく、 本発明のポリべプチドは、 前記公知のポリべプチドから予想することができない白血球活性化抑制剤 (特に, 虚血後の再灌流による細胞傷害治療剤及び Z又は炎症性疾患治療剤) のスクリー ニングツールになるという有利な効果を有する。 発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明を詳細に説明する。
1 . 本発明のポリペプチド、 ポリヌクレオチド、 発現ベクター、 及び細胞
本発明のポリべプチドには、
( 1 ) 配列番号 2又は 4で表されるァミノ酸配列からなるポリべプチド;並びに
( 2 ) 配列番号 2又は 4で表されるァミノ酸配列の 1又は複数の箇所において、 全体で 1〜 5個のアミノ酸が置換、 欠失、 挿入、 及び 又は付加されたアミノ酸 配列からなり、 カリウム依存的ナトリウム一カルシウム交換活性 (好ましくは、 逆向きナトリウム—カルシウム交換活性) を示すポリペプチド (以下、 機能的等 価改変体と称する)
が含まれ、 配列番号 2又は 4で表されるアミノ酸配列からなるポリべプチドが好 ましい。
本明細書において、 「ナトリウム一カルシウム交換活性を示す」 とは、 細胞内 のナ卜リゥムを細胞外に排出し、 代わリに細胞外のカルシウムを細胞内に流入さ せる交換反応 (逆向き) を示すか、 あるいは、 細胞内のカルシウムを細胞外に排 出し、 代わりに細胞外のナトリウムを細胞内に流入させる交換反応 (順向き) を 示すことを意味する。 また、 「逆向きナトリウム—カルシウム交換活性を示す」 とは、 細胞内ナトリウムを細胞外に排出し、 代わりに細胞外のカルシウムを細胞 内に流入させる交換反応 (N a + , - C a 2 + 。交換;逆向き) を示すことを意味 する。 「順向きナトリウム一カルシウム交換活性を示す J とは、 細胞内のカルシ ゥムを細胞外に排出し、 代わリに細胞外のナ卜リゥムを細胞内に流入させる交換 反応 (N a + 。一 C a 2 + ,交換;順向き) を示すことを意味する。
〗〗 09732 或るポリペプチド (以下、 試験ポリペプチドと称する) が 「ナトリウム一カル シゥム交換活性を示す」 か否かは、 当業者に公知の方法 (Iwamoto T.ら, J. Biol. Chem. , 271, 22391-22397, 1996) で確認することができ、 特に限定され るものではないが、 例えば、 以下の方法を用いることができる。
まず、 前記試験ポリべプチドをコ一ドするポリヌクレオチドを含む発現べクタ 一で細胞をトランスフエクシヨンする。 次に、 逆向きナトリウム一カルシウム交 換活性を確認する場合は、 好ましくは、 後述の実施例 4に記載の方法を用いるこ とができ、 得られた細胞を 1価陽イオンに対するィオノフォア (例えば、 モネン シン) で処理して細胞内にナトリウムを取り込ませた後、 細胞外液を45 Caを含 む溶液に交換し、 細胞内ナトリウムと細胞外カルシウムとの交換反応を行なう。 細胞内の45 Caの放射活性を検出する。 一方、 順向きナトリウム一カルシウム交 換活性を確認する場合は、 得られた細胞を塩化カルシウム (45Ca c h I o r i d e) を含む培養液にて培養し、 カルシウムイオンを細胞に取り込ませる。 前 記細胞を洗浄用溶液にて洗浄し、 取り込まれなかったカルシウムイオンを取り除 く。 続いて、 ナトリウムイオンを含む測定用細胞外液に置換した後、 この溶液に 含まれる45 C aの放射活性を測定する。 放射活性が検出された場合、 試験ポリべ プチドが 「ナトリウム一カルシウム交換活性を示す」 と判定することができる。 本発明のポリペプチドとしては、 実施例 4に記載の方法で行った場合、 1 50 mmo I /L-N a C Iの細胞外液の場合に比べて、 2倍以上の放射活性が検出 されるものが好ましい。
更に、 試験ポリべプチドのナトリゥム一カルシウム交換活性が 「力リゥム依存 的」 であるか否かは、 当業者に公知の方法 (Kimura, Μ·, J. Biol. Chem. , 268, p.6874-6877, 1993; Kraev Α·ら, J. Biol. Chem. , 276, 23161-23172, 2001) で確認することができ、 特に限定されるものではないが、 例えば、 以下の方法
(好ましくは、 後述の実施例 4に記載の方法) により確認することができる。 す なわち、 前記試験ポリべプチドをコ一ドするポリヌクレオチドを含む発現べクタ —で細胞をトランスフエクシヨンし、 得られた細胞のナトリウム一カルシウム交 換活性測定時に細胞外液の K+濃度を変え、 各 K+濃度における細胞内45 C aの放 射活性を測定する。 K+の存在下において、 より高いナトリウム一カルシウム交
換活性が検出されれば、 前記試験ポリべプチドのナ卜リゥ厶ーカルシウム交換活 性が 「カリウム依存的」 であると判定することができる。
本発明のポリべプチドとしては、 実施例 4に記載の細胞外液 C又は細胞外液 D を用いた場合、 細胞外液 Aの 5倍以上の放射活性が検出されるものがより好まし い。
本発明のポリべプチドに含まれる、 配列番号 2又は 4で表されるアミノ酸配列 からなる各ポリペプチドは、 それぞれ、 6 2 2個又は 6 0 3個のアミノ酸残基か らなるヒト由来の新規の力リウム依存的ナトリウム一カルシウム交換体である。 配列番号 2又は 4で表されるァミノ酸配列からなるポリべプチドは、 後述の実施 例 2に示すように、 末梢白血球に発現している。
本発明の機能的等俩改変体は、 配列番号 2又は 4で表されるァミノ酸配列の 1 又は複数箇所 (例えば、 1〜3箇所) において、 全体で 1〜5個、 より好ましく は 1〜3個のアミノ酸が置換、 欠失、 挿入、 及び Z若しくは付加されたアミノ酸 配列からなり、 カリゥム依存的ナトリウム一力ルシゥム交換活性を示すポリぺプ チドである限り、 特に限定されるものではなく、 その起源もヒトに限定されない 例えば、 配列番号 2又は 4で表されるァミノ酸配列からなるポリベプチドのヒ 卜における変異体が含まれるだけでなく、 ヒト以外の生物 (例えば、 マウス、 ハ ムスター、 又はィヌ) 由来の機能的等価改変体が含まれる。 更には、 それらの天 然ポリペプチド (すなわち、 ヒ卜由来の変異体、 あるいは、 ヒ卜以外の生物由来 の機能的等価改変体) をコードするポリヌクレオチドを元にして、 あるいは、 配 列番号 2又は 4で表されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを元にし て、 遺伝子工学的に、 コードするアミノ酸配列を人為的に改変したポリヌクレオ チドを用いて製造したポリべプチド (天然ポリべプチドとアミノ酸配列が異なる ものを含む) などが含まれる。 なお、 本明細書において 「変異体」 (v a r i a t i o n ) とは、 同一種内の同一ポリペプチドにみられる個体差、 あるいは、 数 種間の相同ポリべプチドにみられる差異を意味する。
前記ヒト又はヒト以外の生物由来の機能的等価改変体は、 当業者であれば、 配 列番号 1又は 3で表されるポリヌクレオチドの塩基配列 (例えば、 配列番号 1で 表される塩基配列における第 1 4番〜第 1 8 8 2番の塩基からなる配列、 あるい
は、 配列番号 3で表される塩基配列における第 1 4番〜第 1 825番の塩基から なる配列) の情報を基にして、 適当なプライマー又はプローブを設計し、 前記プ ライマー又はプローブと、 目的とする生物 [例えば、 哺乳動物 (例えば、 ヒト、 マウス、 ハムスター、 又はィヌ) ] 由来の試料 (例えば、 総 RNA若しくは mR NA画分、 c DNAライブラリ一、 又はファージライブラリー) とを用いてポリ メラーゼ連鎖反応 (P CR) 法 (Saiki, R. Κ·ら, Science, 239, 487-491 , 1988) 又はハイブリダィゼーシヨン法を実施することにより、 ポリペプチドをコ 一ドするポリヌクレオチドを取得し、 そのポリヌクレオチドを適当な発現系を用 いて発現させ、 発現したポリペプチドが、 例えば、 実施例 4に記載の方法により ナトリウム一カルシウム交換活性を示すことを確認し、 更に、 実施例 4に記載の 方法により、 カリウムイオン依存的であることを確認することにより、 所望のポ リペプチドを取得することができる。 なお、 遺伝子組換え技術については、 特に 断りがない場合、 公知の方法 (例えば、 Man i at is, T.ら, "Molecular Cloning-A Laboratory Manual", Cold Spring Harbor し aboratory, NY, 1982) に従って実 施することが可能である。
また、 前記の遺伝子工学的に人為的に改変したポリヌクレオチドを用いて人為 的に改変したポリペプチドは、 常法、 例えば、 部位特異的突然変異誘発法
(site-specific mutagenesis; Mark, D. F. Ό, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81, 5662-5666, 1984) により、 ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを 取得し、 そのポリヌクレオチドを適当な発現系を用いて発現させ、 発現したポリ ペプチドが、 例えば、 実施例 4に記載の方法により、 ナトリウム一カルシウム交 換活性を示すことを確認し、 更に、 実施例 4に記載の方法により、 カリウムィォ ン依存的であることを確認することにより、 所望のポリぺプチドを取得すること ができる。
本発明のポリヌクレオチドは、 本発明のポリべプチドをコ一ドするポリヌクレ ォチドである限り、 特に限定されるものではなく、 例えば、 配列番号 1で表され る塩基配列における第 1 4番〜第 1 882番の塩基からなる配列、 あるいは、 配 列番号 3で表される塩基配列における第 1 4番〜第 1 825番の塩基からなる配 列を有するポリヌクレオチドを挙げることができる。 なお、 本明細書における用
語 「ポリヌクレオチド」 には、 DN A及び RN Aの両方が含まれる。
本発明のポリヌクレオチドの製造方法は、 特に限定されるものではないが、 例 えば、 国際公開第 D02/052000号公報等に記載されている (1 ) PCRを用いる 方法、 (2) 常法の遺伝子工学的手法 (すなわち、 c DNAライブラリーで形質 転換した形質転換株から、 所望の c DN Aを含む形質転換株を選択する方法) を 用いる方法、 又は (3) 化学合成法などを挙げることができる。 以下、 各製造方 法について、 順次、 説明する。
PCRを用いる方法では、 例えば、 以下の手順により、 本発明のポリヌクレオ チドを製造することができる。
すなわち、 本発明のポリペプチドを産生する能力を有するヒト細胞又は組織か ら mRNAを抽出する。 次いで、 本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレ ォチドの塩基配列に基づいて、 本発明のポリべプチドに相当する mRNAの全長 を挟むことのできる 2個 1組のプライマーセット、 あるいは、 その一部の mRN A領域を挟むことのできる 2個 1組のプライマーセッ卜を作成する。 抽出した前 記 mRN Aを錶型とする逆転写酵素一ポリメラーゼ連鎖反応 (RT— PCR) を 行なうことにより、 本発明のポリべプチドの全長 c DN A又はその一部を得るこ とができ、 所望により、 前記 DNAを制限酵素等で切断し、 接続することによつ て目的とする DN A断片を得ることができる。
常法の遺伝子工学的手法を用いる方法では、 例えば、 以下の手順により、 本発 明のポリヌクレオチドを製造することができる。
まず、 前記の PCRを用いた方法で調製した mRNAを鎢型として、 逆転写酵 素を用いて 1本鎖 c DN Aを合成した後、 この 1本鎖 c DNAから2本鎖c DN Aを合成する。
次に、 前記 2本鎖 c DN Aを含む組換えプラスミドを作製した後、 大腸菌 (例 えば、 DH5 株) に導入して形質転換させ、 例えば、 テトラサイクリン又はァ ンピシリンに対する薬剤耐性を指標として、 組換体を選択する。 このようにして 得られる形質転換株から、 目的の c DN Aを有する形質転換株を選択する方法と しては、 公知の形質転換株スクリーニング方法、 例えば、 合成オリゴヌクレオチ ドプローブを用いる形質転換株スクリーニング法、 あるいは、 PCRにより作製
したプローブを用いる形質転換株スクリーニング法を採用することができる。
得られた目的の形質転換株よリ本発明のポリヌクレオチドを採取する方法は、 公知の方法 (例えば、 Man i at is, T. ら, "Molecular Cloning- A Laboratory Manual", Cold Spring Harbor Laboratory, NY, 1982) に従って実施することが できる。 例えば、 細胞よりプラスミド DN Aに相当する画分を分離し、 得られた プラスミド DNAから cDN A領域を切リ出すことによリ行なうことができる。 化学合成法では、 例えば、 化学合成法によって製造した DNA断片を結合する ことによって、 本発明のポリヌクレオチドを製造することができる。 各 DNA断 片は、 DNA合成機 [例えば、 Ol igo 1000N1 DNA Synthesizer (Beckman社製) 又 は 394 DNA/RNA Synthesizer (Appl ied Biosystems社製) 等] を用いて合成する ことができる。
なお、 所望アミノ酸に対するコドンは、 それ自体公知であり、 その選択も任意 でよく、 例えば、 利用する宿主のコドン使用頻度を考慮して、 常法に従って決定 することができる (Grantham, ら, ucleic Acids Res. , 9, r43— r74,
1981) 。 更に、 これら塩基配列のコドンの一部改変は、 常法に従い、 所望の改変 をコードする合成ォリゴヌクレオチドからなるプライマ一を利用した部位特異的 突然変異誘発法 (site specific mutagenesis; Mark, D. F.ら, Proc. Natl.
Acad. Sci. USA, 81, 5662— 5666, 1984) 等により実施することができる。
これまで述べた種々の方法により得られる DN Aの配列決定は、 例えば、 ジデ ォキシヌクレオチド鎖終結法 (Messing, J.及び Vieira, J. , Gene, 19, 269— 276, 1982) 等により行なうことができる。 例えば、 反応液に蛍光でラベルした ジデォキシヌクレオチドを含む P C R法を用いて、 DN A断片に蛍光ジデォキシ ヌクレオチドを取り込ませる。 増幅させた DN A断片をシークェンサ一 [例えば, 3700 DN Aシークェンサ一 (PE Biosystems社製) など] で泳動し、 蛍光を 読みとることで塩基配列を決定することができる。
単離された本発明のポリヌクレオチドを、 適当なベクタ一 DN Aに再び組込む ことにより、 真核生物又は原核生物の宿主細胞をトランスフエクシヨンすること ができる。 また、 これらのベクターに適当なプロモーター及び形質発現にかかわ る配列を導入することにより、 それぞれの宿主細胞においてポリヌクレオチドを
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16 発現させることが可能である。
本発明の発現ベクターは、 本発明のポリヌクレオチドを含む限り、 特に限定さ れるものではなく、 例えば、 用いる宿主細胞に応じて適宜選択した公知の発現べ クタ一に、 本発明のポリヌクレオチドを揷入することにより得られる発現べクタ 一を挙げることができる。
また、 本発明の細胞も、 本発明の前記発現ベクターでトランスフエクシヨンさ れ、 本発明のポリヌクレオチドを含む限り、 特に限定されるものではなく、 例え ば、 本発明のポリヌクレオチドが、 宿主細胞の染色体に組み込まれた細胞である こともできるし、 あるいは、 本発明によるポリヌクレオチドを含む発現ベクター の形で含有する細胞であることもできる。 また、 本発明のポリペプチドを発現し ている細胞であることもできるし、 あるいは、 本発明のポリペプチドを発現して いない細胞であることもできる。 本発明の細胞は、 例えば、 本発明の発現べクタ —により、 所望の宿主細胞をトランスフエクシヨンすることにより得ることがで さる。
例えば、 真核生物の宿主細胞には、 脊椎動物、 昆虫、 及び酵母等の細胞が含ま れ、 脊椎動物細胞としては、 例えば、 サルの細胞である COS細胞 (Gluzman, Y., Cell, 23, 175-182, 1981) 、 チャイニーズ 'ハムスター卵巣細胞のジヒド 口葉酸レダクターゼ欠損株 (CHO— d h f r—細胞) (Uriaub, G.及び Chasin, L. に, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77, 4216-4220, 1980) 、 後述の実施例 4 で使用したチャイニーズ 'ハムスター肺線維芽細胞 (D e d e細胞、 ATCG: GGL - 39) 若しくはヒト胎児腎臓由来 HEK293細胞 (ATCC: CRL-1573) 、 前記 H E K293細胞にェプスタイン■バーウィルスの EBN A— 1遺伝子を導入した 2 93— EBNA細胞 (Invitrogen社) 、 又は L 929細胞 (ATGG: CRL-2148) 等を挙げることができる。
脊椎動物細胞の発現べクタ一としては、 通常、 発現しょうとする遺伝子の上流 に位置するプロモーター、 RN Aのスプライス部位、 ポリアデニル化部位、 及び 転写終結配列等を有するものを使用することができ、 更に必要により、 複製起点 を有していることができる。 前記発現ベクターの例としては、 例えば、 SV40 の初期プロモーターを有する pSV2 d h f r (Subratnani, S.ら, Mol. Cell.
Biol. , 1, 854-864, 1981) 、 ヒトの延長因子プロモーターを有する p E F— B OS (Mizushima, S.及び Nagata, S. , Nucleic Acids Res. , 18, 5322, 1990) 、 サイ卜メガロウィルスプロモーターを有する P CEP 4 (Invi'trogen社) 、 又は P I RES n e o 2 (GL0NTEGH社) 、 p c DNA3. 1 (Invitrogen社) 等を挙 げることができる。
宿主細胞として COS細胞を用いる場合には、 発現ベクターとして、 SV40 複製起点を有し、 COS細胞において自律増殖が可能であり、 更に、 転写プロモ 一ター、 転写終結シグナル、 及び RNAスプライス部位を備えたものを用いるこ とができ、 例えば、 pME I 8 S (Maruyama, 及び Takebe, Y. , Med.
I画 unol., 20, 27-32, 1990) 、 p E F-BOS (Mizushima, S.及び Nagata, S., Nucleic Acids Res., 18, 5322, 1990) 、 又は p CDM8 (Seed, B. , Nature, 329, 840-842, 1987) 等を挙げることができる。
前記発現ベクターは、 例えば、 DEAE—デキストラン法 (Luthman, H.及び Magnusson, G., Nucleic Acids Res., 11, 1295-1308, 1983) 、 リン酸カルシゥ ムー DN A共沈殿法 (Graham, F. L及ぴ van der Ed, A. J. , Virology, 52, 456-457, 1973) 、 市販のトランスフ iクシヨン試薬 (例えば、 FuGENE™ 6
Transfection Reagent; Roche Diagnostics社製) を用いた方法、 あるいは、 電 気パスル穿孔法 (Neumann, Ε·ら, EMB0 J., 1, 841-845, 1982) 等により、 CO S細胞に取り込ませることができる。
また、 宿主細胞として CHO細胞を用いる場合には、 本発明のポリペプチドを コードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターと共に、 G41 8耐性マーカー として機能する n e o遺伝子を発現することのできるベクター、 例えば、 p RS V n e o (Sambrook, J.ら, "Molecular Cloning-A Laboratory Manua I ", Cold Spring Harbor Laboratory, NY, 1989) 又は p SV 2— n e o (Southern, P. J. 及び Berg, P., J. Mo I. Appl. Genet. , 1, 327-341 , 1982) 等をコ ■ トランスフ ェクトし、 G41 8耐性のコロニーを選択することにより、 本発明のポリべプチ ドを安定に産生するトランスフエクションされた細胞を得ることができる。
更に、 宿主細胞として 293— EBN A細胞を用いる場合には、 発現ベクター として、 ェプスタイン .バーウィルスの複製起点を有し、 293— £巳 八細胞
で自己増殖が可能な P CEP 4 (Invitrogen社) などを用いることができる。 本発明の細胞は、 常法に従って培養することができ、 前記培養により細胞表面 に本発明のポリべプチドが生産される。 前記培養に用いることのできる培地とし ては、 採用した宿主細胞に応じて慣用される各種の培地を適宜選択することがで きる。 例えば、 COS細胞、 D e d e細胞の場合には、 例えば、 RPM I— 1 6 40培地又はダルベッコ修正イーグル最小必須培地 (DMEM) 等の培地に、 必 要に応じて牛胎仔血清 (FBS) 等の血清成分を添加した培地を使用することが できる。 また、 293— EBN A細胞の場合には、 牛胎仔血清 (FBS) 等の血 清成分を添加したダルベッコ修正イーグル最小必須培地 (DMEM) 等の培地に G41 8を加えた培地を使用することができる。
本発明の細胞を培養することにより、 前記細胞の細胞表面に生産される本発明 のポリべプチドは、 前記ポリぺプチドの物理的性質や生化学的性質等を利用した 各種の公知の分離操作法により、 分離精製することができる。 具体的には、 例え ば、 本発明のポリペプチドを表面に発現した細胞を培養し、 これらをバッファー に懸濁した後、 ホモジナイズし、 遠心分離することにより、 本発明のポリべプチ ドを含む細胞膜画分を得ることができる。 得られた細胞膜画分を可溶化した後、 通常のタンパク質沈殿剤による処理、 限外濾過、 各種液体クロマトグラフィー
[例えば、 分子ふるいクロマトグラフィー (ゲル濾過) 、 吸着クロマトグラフィ 一、 イオン交換体クロマトグラフィー、 ァフィ二ティクロマトグラフィー、 又は 高速液体クロマトグラフィー (HP LC) 等] 、 若しくは透析法、 又はこれらの 組合せ等により、.本発明のポリべプチドを精製することができる。
2. 虚血再灌流による細胞障害治療剤及び炎症性疾患治療剤スクリーニング 本発明のポリべプチドをカリウム依存的ナトリウム一カルシウム交換活性を示 すように発現している細胞を用いると、 本発明のポリべプチドを抑制化する物質 をスクリーニングすることができる。
従来技術欄に記載したとおり、 再灌流障害の発生機序において、 再灌流がもた らす細胞内カルシウムの過剰状態が大きな役割を演じていること、 そして、 カリ ゥム依存的ナトリゥムーカルシウム交換体は、 細胞内ナトリゥムの排出に伴う細
胞内へのカルシウム流入 (逆向き) に関与していることが知られている。 また、 虚血後の再灌流では、 再灌流により引き起こされた細胞内ナトリウム過剰を元の 状態に戻すため、 ナトリゥム一カルシウム交換体が細胞内のナ卜リゥ厶を細胞外 にくみ出し、 細胞内にカルシウムを流入させることが知られている。 更に、 白血 球における接着因子の発現が細胞内カルシウム濃度の上昇によって増加したこと, そして、 接着因子に対するモノクローナル抗体が白血球の集積を抑制し、 梗塞範 囲を減少したことが知られている。 従って、 白血球細胞の細胞内カルシウムの過 負荷を抑制することが、 それによつて引き起こされるであろう接着因子による白 血球の集積及び白血球の活性化を抑制し、 ノーリフロー現象に伴う細胞障害から の回避作用を有すると考えられる。
本発明のポリベプチドである配列番号 2又は 4記載の配列からなるポリベプチ ドは、 末梢白血球に豊富に発現している力リゥム依存的ナトリゥム—カルシウム 交換体である。 従って、 本発明のポリペプチドのカリウム依存的ナトリウム一力 ルシゥム交換 (逆向き) に対する抑制化剤が、 細胞内へのカルシウムの流入を抑 え、 白血球の活性化や接着を抑制することを作用機序とし、 虚血再灌流による細 胞障害治療に有用であると考えられる。
また、 白血球の活性化において虚血再灌流時と炎症時との間には、 白血球細胞 内の p Hの上昇とそれに伴うナトリウム一水素交換体の活性化、 そしてそれによ つて引き起こされる細胞内カルシウム濃度の上昇など、 非常に共通した局面が存 在し、 白血球のナトリウム一カルシウム交換体は、 虛血再灌流障害及び炎症時の 白血球の活性化に関与していると考えられる。 すなわち、 虚血再灌流時や炎症時 において、 白血球のナトリウム一カルシウム交換体活性化を阻害することは、 白 血球の細胞内カルシウム濃度の上昇を抑制し、 その活性化を抑えると考えられる < 従って、 本発明の細胞それ自体を、 本発明のポリペプチドの抑制化剤及び白血 球活性化抑制剤 (特には、 虚血再灌流による細胞障害治療剤及び Z又は炎症性疾 患治療剤) のスクリーニングツールとして使用することができる。
なお、 本明細書において、 本発明のポリペプチドを 「抑制化」 するとは、 カリ ゥム依存的ナトリウム一カルシウム交換活性を抑制することを意味し、 ポリぺプ チドの発現を抑制することによリ、 カリゥム依存的ナ卜リゥム一カルシウム交換
活性機能を抑制化することも含む。
本発明のポリペプチドの抑制化剤及び白血球活性化抑制剤 (特には、 虚血再灌 流による細胞障害治療剤及び 又は炎症性疾患治療剤) スクリーニング方法は、 本発明の細胞と試験物質とを接触させる工程、 前記ポリべプチドのカリウム依存 的ナトリウム一カルシウム交換活性が抑制化されるか否かを分析する工程、 及び 前記ポリべプチドのカリゥム依存的ナトリゥム一カルシウム交換活性を抑制化す る物質を選択する工程を含む。
本発明のスクリーニング方法にかけることのできる試験物質としては、 特に限 定されるものではないが、 例えば、 ケミカルファイルに登録されている種々の公 知化合物 (ペプチドを含む) 、 コンビナトリアル 'ケミストリー技術
(TerrettJ. K. , Tetrahedron, 51 , 8135-8137, 1995) によって得られた化合物 群、 あるいは、 ファージ 'ディスプレイ法 (Fe l i c i . F. , J. o l . B i o l . , 222, 301 -310, 1991 ) などを応用して作成されたランダム■ペプチド群を用いることがで きる。 また、 微生物の培養上清、 植物若しくは海洋生物由来の天然成分、 又は動 物組織抽出物などもスクリーニングの試験物質として用いることができる。 更に は、 本発明のスクリーニング方法により選択された化合物 (ペプチドを含む) を, 化学的又は生物学的に修飾した化合物 (ペプチドを含む) を用いることができる < 本発明のスクリーニング方法は、 力リゥム依存的ナトリゥムーカルシウム交換 体として機能するように本発明のポリべプチドを発現している細胞 (すなわち、 本発明のポリべプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターでトラ ンスフヱクシヨンされ、 前記ポリべプチドがカリウム依存的ナトリウム一カルシ ゥム交換体として機能するように発現された細胞、 及び、 本発明のポリペプチド をカリゥ厶依存的ナトリゥム—カルシウム交換体として機能するように発現して いる天然に存在する細胞を含む) と試験物質とを接触させる工程、 前記ポリぺプ チドのカリゥム依存的ナトリゥム一カルシウム交換活性が抑制化されるか否かを 分析する工程、 及び前記ポリべプチドのカリゥム依存的ナトリゥム一カルシウム 交換活性を抑制化する物質を選択する工程を含む限り、 特に限定されるものでは ないが、 本発明のポリぺプチドの抑制化を分析するのに用いる方法の違いに基づ いて、 例えば、
[ 1 ] 放射性同位元素4 5 C a 2 +イオンの取り込みを利用するスクリーニング方法、 あるいは、
[ 2 ] カルシウム感受性色素を利用するスクリーニング方法
を挙げることができ、 これらの方法の中でも、 放射性同位元素4 5 C a 2 +イオンの 取り込みを利用するスクリーニング方法が好ましく、 そして、 用いる細胞は、 本 発明のポリべプチドをコ一ドするポリヌクレオチドを含む発現ベクターでトラン スフエクシヨンして製造した本発明の細胞が好ましい。
[ 1 ] に記載の方法で、 虚血再灌流による細胞障害治療及び 又は炎症性疾患 治療に有用な、 本発明のポリべプチドを抑制化する物質をスクリーニングする場 合には、 例えば、 以下の方法で行うことができる。 まず、 本発明のポリペプチド を細胞表面に発現している細胞に、 1価陽イオンに対するィオノフォア (例えば, モネンシン) を用いてナトリウムを取り込ませた後、 試験物質を添加又は非添加 の放射性同位元素4 5 C a 2 +イオンを含む細胞外液に交換し、 細胞内の4 5 C a 2 + 放射活性を検出する。 次に、 試験物質添加又は非添加時の細胞内へ取り込まれた 放射活性の量の差に基づき、 本発明のポリべプチドが抑制化されるか否かを分析 する。 すなわち、 [ 1 ] に記載の本発明のスクリーニング方法では、 本発明のポ リぺプチドを細胞表面に発現している細胞に、 放射性同位元素4 5 C a 2 +イオンを 取り込ませると同時に前記細胞と試験物質とを接触させる工程、 及び前記細胞の 細胞内へ流入する放射活性の量を検出する工程を含む。
例えば、 本発明のポリペプチドを細胞表面に発現させた本発明の細胞を、 試験 物質とモネンシンとを含んだ細胞外液で処理し、 細胞内にナトリウムを取り込ま せた後、 前記細胞外液を、 試験物質と4 5 C a 2 +とを含む細胞外液に交換する。 ナ トリウム一カルシウム交換活性により細胞内に4 5 C a 2 +を取り込ませた後、 ナト リウム一カルシゥム交換活性の阻害剤であるランタンを含む溶液で洗浄し、 取り 込まれなかった4 5 C a 2 +を取り除く。 逆向きナトリウム一カルシウム交換活性が 抑制化すると、 前記細胞への4 5 C a 2 +流入量が減少するので、 細胞の放射活性を 逆向きナトリゥム一カルシウム交換活性の指標とし、 本発明のポリぺプチドが抑 制化されるか否かを分析することができる。 より具体的には、 後述の実施例 4に 記載の方法により逆向きナトリウム一カルシウム交換活性を検出することが好ま
しい。 試験物質添加による細胞内へ流入した放射活性量の変化を分析することに よリ、 本発明のポリぺプチドを抑制化する物質をスクリーニングすることができ る。
[ 2 ] に記載の方法で、 虚血再灌流による細胞障害治療及び 又は炎症性疾患 治療に有用な、 本発明のポリべプチドを抑制化する物質をスクリーニングする場 合には、 例えば、 本発明のポリペプチドを細胞表面に発現している細胞にカルシ ゥム感受性色素を取り込ませることで、 試験物質を添加又は非添加の細胞内の前 記色素の蛍光強度変化に基づき、 本発明のポリべプチドが抑制化されるか否かを 分析する。 すなわち、 [ 2 ] に記載の本発明のスクリーニング方法では、 本発明 のポリべプチドを細胞表面に発現している細胞に、 1価陽イオンに対するィオノ フォア (例えば、 モネンシン) とを含んだ細胞外液で処理し、 細胞内にナトリウ 厶を取り込ませた後、 前記細胞外液を、 試験物質とカルシウム感受性色素とを含 む細胞外液に交換する。 ナトリゥムーカルシウム交換活性によリ細胞内にカルシ ゥム感受性色素を取り込ませた後、 ナトリウム一カルシウム交換活性の阻害剤、 例えばランタンを含む溶液で洗浄し、 取り込まれなかったカルシウム感受性色素 を取り除く。 逆向きナトリウム一カルシウム交換活性が抑制化すると、 前記細胞 のカルシウム感受性色素の蛍光強度が減少するので、 蛍光強度を逆向きナ卜リウ ム一カルシウム交換活性の指標とし、 本発明のポリべプチドが抑制化されるか否 かを分析することができる。 試験物質を添加した際のカルシウム感受性色素の蛍 光強度を検出することにより、 本発明のポリベプチドを抑制化する物質をスクリ 一二ングすることができる。 本スクリーニング法は、 カルシウム感受性色素を取 リ込ませた後、 前記細胞と試験物質とを接触させる工程、 及び前記細胞内の前記 色素の蛍光強度を検出する工程を含む。 このスクリーニングは、 カルシウム感受 性色素が、 逆向きナトリウム一カルシウム交換体の活性化に伴うカルシウムの流 入を光学的に検出することができるという性質を利用するものである。
より具体的には、 前記カルシウム感受性色素として、 F u r a— 2又はその誘 導体などを用い、 本発明のポリペプチドの活性を検出することができ、 試験物質 存在下と非存在下とで前記色素の蛍光強度変化を比較することにより、 本発明の ポリぺプチドを抑制化する物質をスクリーニングすることができる。 具体的には,
逆向きナトリウム一カルシウム交換活性が抑制化すると、 蛍光強度が低下する。 これまで説明したように、 本発明のスクリーニング方法によれば、 本発明のポ リベプチドのカリゥム依存的ナトリゥムーカルシウム交換活性を抑制化する物質 (特には化合物) 、 すなわち、 阻害活性を有する物質 (特には化合物) をスクリ 一二ングすることができる。 本発明のスクリーニング方法において選択すべき阻 害活性を有する化合物とは、 配列番号 2又は 4で表されるァミノ酸配列からなる 新規力リゥ厶依存的ナ卜リゥムーカルシウム交換体の活性を抑制する化合物と定 義することができ、 I C50が 1 00jt mo I L以下の化合物が望ましい。 例 えば、 実施例 6記載の条件で、 試験化合物を一定時間作用させ、 その I C50が 1 O OjLimo I ZL以下の物質を、 阻害活性を有する物質として選択することが できる。 これらのスクリーニングにより単離される阻害化合物を主成分として、 配列番号 2又は 4で表されるァミノ酸配列からなる新規力リゥム依存的ナトリウ ム一カルシウム交換体を標的とする医薬を得ることができる。 例えば、 実施例 6 において選択された 2— [2- [4- (4—ニトロべンジロキシ) フエニル] ェ チル] イソチォゥレア メタンスルホネート (2- [2- [4- (4- n i trobenzy I oxy) pheny I ] ethy I ] i soth i our ea methanesulfonate;以下、 化合物 Aと称する) は、 配列番号 2又は 4で表されるアミノ酸配列からなる新規力リゥム依存的ナトリゥ ム一カルシウム交換体に対し、 それぞれ I C50が 1 5. 8jt/mo I ZL及び 3 5. 0 jc mo I ZLであった。 また、 3' , 4' —ジクロ口ベンザミル (3',4'- dichlorobenzamil ;以下、 化合物 Bと称する) は、 配列番号 2又は 4で表される アミノ酸配列からなる新規力リウ厶依存的ナトリウム一カルシウム交換体に対し, それぞれ I C50が 20. 2 jumo I ZL及び 58. 9 j!i m o I Lであった。 これらの事実から、 本発明のスクリーニング方法によって、 配列番号 2又は 4で 表されるアミノ酸配列からなる新規力リウム依存的ナトリウム一カルシウム交換 体の阻害剤を選択することができることは明らかである。
3. 本発明の医薬
本発明の配列番号 2又は 4で表されるァミノ酸配列からなる新規力リゥム依存 的ナトリウム一カルシウム交換体の活性を修飾する化合物 (好ましくは、 化合物
A又は化合物 B ) を有効成分とする医薬製剤は、 有効成分のタイプに応じて、 そ れらの製剤化に通常用いられる担体、 賦形剤、 又はその他の添加剤を用いて調製 することができる。 投与は、 例えば、 錠剤、 丸剤、 カプセル剤、 顆粒剤、 細粒剤, 散剤、 又は経口用液剤などによる経口投与、 あるいは、 静注若しくは筋注などの 注射剤、 坐剤、 経皮投与剤、 又は経粘膜投与剤などによる非経口投与が挙げられ る。 特に胃で消化されるぺプチドにあっては静注等の非経口投与が望ましい。
本発明による経口投与のための固体組成物は、 一つ又はそれ以上の活性物質が 少なくとも一つの不活性な希釈剤、 例えば、 乳糖、 マンニトール、 ブドウ糖、 微 結晶セルロース、 ヒドロキシプロピルセルロース、 デンプン、 ポリビニルピロリ ドン、 又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどと混合される。 前記組成物は, 常法に従って、 不活性な希釈剤以外の添加剤、 例えば、 滑沢剤、 崩壊剤、 安定化 剤、 又は溶解若しくは溶解補助剤などを含有していてもよい。 錠剤や丸剤は、 必 要により糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性物質などのフィルムで被覆していてもよ い。
経口のための液体組成物は、 乳濁剤、 溶液剤、 懸濁剤、 シロップ剤、 又はエリ キシル剤を含み、 一般的に用いられる不活性な希釈剤、 例えば、 精製水又はエタ ノールを含む。 前記組成物は、 不活性な希釈剤以外の添加剤、 例えば、 湿潤剤、 懸濁剤、 甘味剤、 芳香剤、 又は防腐剤を含有していてもよい。
非経口のための注射剤としては、 無菌の水性又は非水性の溶液剤、 懸濁剤、 又 は乳濁剤を含む。 水溶性の溶液剤又は懸濁剤には、 希釈剤として、 例えば、 注射 用蒸留水又は生理用食塩水などが含まれる。 非水溶性の溶液剤又は懸濁剤の希釈 剤としては、 例えば、 アルコール類 (例えば、 エタノール) 、 グリコール類 (例 えば、 プロピレングリコール又はポリエチレングリコール) 、 又はポリソルべ一 卜 8 0 (商品名) 等を含む。 前記組成物は、 更に、 湿潤剤、 乳化剤、 分散剤、 安 定化剤、 溶解若しくは溶解補助剤、 又は防腐剤などを含んでいてもよい。 組成物 は、 例えば、 バクテリア保留フィルタ一を通す濾過、 殺菌剤の配合、 又は照射に よって無菌化される。 また、 無菌の固体組成物を製造し、 使用に際し無菌水その 他の無菌用注射用媒体に溶解し使用することもできる。
本発明による医薬の投与量は、 前記スクリーニング法により選択された有効成
分の活性の強さ、 症状、 投与対象の年齢、 又は性別等を考慮して適宜決定される, 例えば、 経口投与の場合、 その投与量は、 通常、 成人 (体重 6 O k gとして) に おいて、 1 曰につき約 0. 1〜 10 Omg、 好ましくは 0. 1〜50mgである, また、 非経口投与の場合、 注射剤の形では 1 曰につき 0. 01〜50mg、 好ま しくは 0. 01〜 1 Omgである。 実施例
以下、 実施例によって本発明を具体的に説明するが、 これらは本発明の範囲を 限定するものではない。 なお、 特に断らない限り、 公知の方法 (例えば、
Man i at is, T. ら, olecular Cloning-A Laboratory Manual , Cold Spring Harbor Laboratory, NY, 1982; 及び Hi lie, B. , Ionic Channels of Excitable Membranes, 2nd Ed. , Sinauer Associates Inc. , MA, 1992) に従って実施した, 実施例 1 :新規力リゥム依存的ナトリゥム一カルシウム交換体をコードする遺伝 子の単離及び発現ベクターの構築
配列番号 2又は 4で表されるァミノ酸配列を有する本発明の新規ナトリウム一 カルシウム交換体をコードする全長 c DN Aは、 ヒ卜脳由来の c DN A
(Marathon-Ready cDNA; Glontech社) を錶型とし、 逆転写酵素一ポリメラーゼ 連鎖反応 (RT— PCR) 法により、 以下の手順で取得した。
まず、 ヒト脳由来の c DNA (Marathon-Ready cDNA; Clontech社) を錶型と して、 配列番号 5で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド (5' 末端に E c o R I認識配列が付加してある) をフォワードプライマーとして、 配列番号 6で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド (5' 末端に K p n I認識配 列が付加してある) をリバースプライマ一として、 DN Aポリメラーゼ
(PLATINUM Taq DNA Polymerase High- Fidel ity; GIBCO- BRL社) を用いて、 PC Rを行なった。 前記 PCRは、 最初に 95°C (1分間) で熱変性を行なった後、 98°C (1 0秒間) と 60°C (20秒間) と 68°C (3分間) とからなるサイク ルを 40回繰り返した。 その結果、 約 1 · 9 k b pの DN A断片が 2本増幅され た。 長い DNA断片を 「622」 と命名し、 短い DNA断片を 「603」 と命名 した。
得られた各 DN A断片を制限酵素 E c o R I及び Kp n Iで消化した後、 ブラ スミド p c DNA3. 1 (Invitrogen社) を用いてクローニングした。 得られた クローンを、 それぞれ、 p c D N A— 622及び p c D N A— 603と命名した < なお、 前記プラスミ ド p c DNA3. 1は、 サイトメガロウィルス由来のプロモ 一ター配列を持っており、 動物細胞に新規カリウム依存的ナトリウム一カルシゥ ム交換体を発現させるために使用することができる。
得られたクローン p c DNA— 622及び p c DN A-603の塩基配列を、 ジデォキシターミネータ一法により DN Aシークェンサ一 (ABI377 DNA
Sequencer; Appl ied Biosystems社) を用いて解析し、 それぞれ、 配列番号 1又 は 3で表される塩基配列が得られた。
配列番号 1で表される塩基配列 (総塩基対数 = 1 902塩基対) は、 第 1 4番 〜第 1 882香の塩基からなる配列で表されるオープンリーディングフレームを 有する。 前記オープンリ一ディングフレームから予測される 622ァミノ酸残基 からなるァミノ酸配列は、 配列番号 2で表されるァミノ酸配列であった。
配列番号 3で表される塩基配列 (総塩基対数 =1 845塩基対) は、 第 1 4番 〜第 1 825番の塩基からなる配列で表されるオープンリーディングフレームを 有する。 前記オープンリーディングフレームから予測される 603ァミノ酸残基 からなるァミノ酸配列は、 配列番号 4で表されるァミノ酸配列であった。
実施例 2 :カリウム依存的ナトリウム一カルシウム交換体のヒ卜組織における発 現分布の解析
ヒト組織における、 配列番号 1で表される、 新規カリウム依存的ナトリウム一 カルシウム交換体をコードする遺伝子の発現分布を、 逆転写酵素一ポリメラーゼ 連鎖反応 (RT— PCR) 法により以下の手順で解析した。
ヒ卜の各組織由来のポリ A+ RNA (各 5 n g ; Clontech社) を DNァーゼ 処理した後、 RT— P CRキット (SUPERSCRIPT First-Strand Synthesis
System for RT-PGR; GIBGO-BRL社) を用いて逆転写させ、 第 1鎖 c DNAを合成 した。
得られた第 1鎖 c DN Aを錶型として、 配列番号 7で表される塩基配列からな るオリゴヌクレオチドをフォワードプライマーとして、 配列番号 8で表される塩
基配列からなるオリゴヌクレオチドをリバースプライマ一として、 DNAポリメ ラーゼ (PLATINUM Taq DNA Polymerase; GIBCO-BRL社) を用いて、 PCRを行な つた。 前記 PC Rは、 最初に 94°C (1分間) で熱変性を行なった後、 98°C
(1 0秒間) と 64°C (20秒間) と 68°C (1分 30秒間) とからなるサイク ルを 35回繰り返した。 なお、 前記各プライマーの塩基配列は、 本発明の配列番 号 2又は 4で表されるアミノ酸配列からなるポリべプチドをコードする両遺伝子 に共通に存在する特異的な配列である。
ヒ卜の末梢白血球について RT— PC R解析を行なったところ、 約 750 b p 及び約 700 b pの DN A断片が、 増幅された。 約 750 b p及び約 700 b p の DNA断片は、 それぞれ 「配列番号 1で表される塩基配列における第 348番 〜第 1 1 01番の塩基からなる配列」 及び 「配列番号 3で表される塩基配列にお ける第 348番〜第 1 044香の塩基からなる配列」 を有していた。 この結果か ら、 本発明のカリウム依存的ナトリウム一カルシウム交換体の mRN A力 ヒト の末梢白血球において発現していることが明らかになった。
実施例 3 : カリウム依存的ナトリウム一カルシウム交換体の動物細胞 HEK29 3細胞、 De d e細胞、 及び C H O細胞における発現
配列番号 2又は 4で表されるァミノ酸配列からなるポリぺプチドの新規力リゥ ム依存的ナ卜リゥムーカルシウム交換活性を検出するために、 動物細胞に前記ポ リペプチドを発現させた。 前記動物細胞としては、 HEK293細胞 (ATGG : CRL-1573) 、 D e d e細胞 (ATGG: GGL- 39) 若しくは CHO—d h f r—細胞
(ATCC: CRL-9096) を用いた。 実施例 1で得られた発現べクター p c DNA— 6 22又は p c DNA— 603と、 市販のトランスフエクシヨン試薬
(UpofectAMINE2000; GIBGO- BRL社) とを用いて、 HEK293細胞、 D e d e 細胞、 又は CHO—d h f r—細胞の卜ランスフエクシヨンを行ない、 各細胞に てカリウム依存的ナトリウム一カルシウム交換体を発現させた。 なお、 具体的な 手順は、 前記トランスフ; Γクシヨン試薬に添付のマニュアルに従って実施した。 また、 コントロール細胞として、 プラスミ ド p c DN A 3. 1で卜ランスフエク シヨンした細胞も同様にして作成した。 得られたこれらのトランスフエクシヨン された細胞を、 以下の実施例 4及び実施例 5で使用した。
実施例 4 : 力リゥム依存的ナトリゥム一カルシウム交換活性の検出 実施例 3で得られた各細胞を用いてナトリウム一カルシウム交換活性を測定し た。
培地を、 モネンシンを含む細胞外液 [0. O 1 mmo I ZLモネンシン、 1 m mo I ZLゥァパイン、 1 46mmo l /L— N a C I、 4mm o I ZL— KC I、 0. "I mmo l /L— Ca C I 2、 2mmo l し一 MgC I 2、 1 Omm o I ZLグルコース、 0. 1 %牛血清アルブミン、 及び 1 Ommo I ZL— HEP ES-T r ί s (pH=7. 4) を含む溶液] に交換し、 37°Cで 30分間放置 することで細胞内にナトリウムを流入させた。 その後、 塩化カルシウム (45Ca C I 2; 55. 5 kBqZmL) を含む細胞外液 (細胞外液 A) [0. 01 mm o I ZLベラノ ミル、 1 mmo I ZLゥァバイン、 1 50 mm o I Z L— N a C I、 0. I mmo l Zし一 Ca C I 2mmo l /L— MgC I z 1 Ommo I ZLグルコース、 0. 1 %牛血清アルブミン、 及び 1 0 mmo I ZL— HEP ES-T r i s (p H = 7. 4) を含む溶液] に置換し、 室温で 1 5分間放置し, カルシウムイオンを細胞内のナトリゥムイオンと交換反応させた。
また、 細胞外液の N a C I を塩化コリン (Ch o l i n e Ch l o r i d e) に置換した細胞外液 (細胞外液 B) も使用した。 また、 カリウムイオンに対 する依存性を検討するために、 塩化カルシウム (45Ca C I 2; 55. 5 k Bq mL) 及び塩化カリウムを含む細胞外液 (細胞外液 C) [0. 01 mmo I / Lベラ/ ミル、 1 mmo l /Lゥァ /《イン、 4mmo l /L— KC I、 1 46m mo I ZL塩ィヒコリン、 0. I mmo l ZL— Ca C I 2、 2mmo I /L— M gC I 2、 1 Ommo I ZLグルコース、 0. 1 %牛血清アルブミン、 及び 1 0 mmo l /L-HEPES-T r i s (p H = 7. 4) を含む溶液] と、 細胞外 液 D (KC Iが 1 5 Ommo I ZLであり、 塩化コリンが含まれない点のみ、 細 胞外液 Cと異なる) も使用した。
前記細胞を、 1 2 Ommo I ZL塩化コリン、 1 0 mm o I L一 L a C I 3. 及び 1 Ommo I ZL— H E P ES— T r ί s (ρ Η = 7. 4) を含む洗浄用溶 液にて洗浄し、 取り込まれなかったカルシウムイオンを取り除いた。 続いて、 細 胞内に含まれるカルシウムイオンの放射活性を液体シンチレーシヨンカウンター
にて測定することで分析したところ、 配列番号 2又は 4で表されるァミノ酸配列 からなるポリペプチドを発現させた H EK 293細胞、 D e d e細胞、 又は CH O-d f r—細胞では、 細胞外液 B (細胞外液のナトリウムをコリンに置換し た細胞外液) を用いた場合、 細胞外液 Aの約 2倍と、 より高い放射活性が測定さ れた。 更に、 細胞外液 C又は細胞外液 D (つまり、 カリウムを含む細胞外液) を 用いたときの方が、 それぞれ、 細胞外液 Aの約 5倍又は約 1 0倍と、 より高い放 射活性が測定された。
この結果、 本発明の配列番号 2又は 4で表されるァミノ酸配列からなるポリぺ プチドを発現している細胞は、 カリウムイオンの存在下で、 より効率的に細胞内 ナトリウムイオンと細胞外カルシウムイオンとを交換させることを確認すること ができ、 配列番号 2又は 4で表されるァミノ酸配列からなる本発明のポリべプチ ドがカリゥム依存的ナトリゥムーカルシウム交換活性を示すことを確認すること ができた。
実施例 5 :新規力リゥム依存的ナトリゥ厶ーカルシウム交換体の安定発現細胞株 の構築
安定発現細胞株を構築するため、 実施例 3で製造した De d e細胞を最終濃度 400 8 1_の0— 41 8 (G I BCO— BRL社) を含む DM EM培養液で 培養し、 継代を繰り返した後、 細胞を 5000個 ウエルとなるように 96ゥェ ルプレー卜に播種し、 実施例 4で行った方法に基づき力リウム依存的ナトリウム 一力ルシゥム交換活性を測定し、 細胞外液 C又は細胞外液 Dを用いたときの放射 活性が 5000 c pmノウエル以上で、 SZN比が 1 0以上のカリウム依存的ナ トリウム一カルシウム交換活性をもつ細胞を選択した。 得られたこれらの D e d e細胞由来の安定発現細胞株を、 以下の実施例 6で使用した。
実施例 6 :放射性同位元素カルシウム (45Ca) イオンの放出を利用した新規力 リウム依存的ナトリウム一カルシウム交換体の活性を阻害する物質のスクリ一二 ング
実施例 4で行った方法に基づき、 配列番号 2又は 4で表されるァミノ酸配列か らなる新規力リゥム依存的ナトリゥムーカルシウム交換体の活性を阻害する物質 を、 カルシウムイオンの放射活性を測定することにより、 スクリーニングした。
実施例 5で得られた D e d e細胞由来の安定発現細胞を 5000個 ウエルと なるように 96ゥエルプレートに播種し、 実施例 4で行った方法に基づきカルシ ゥムイオンの放射活性を測定することにより阻害活性を測定し、 配列番号 2又は 4で表されるアミノ酸配列からなる新規力リゥム依存的ナ卜リゥムーカルシウム 交換体の活性を阻害する物質をスクリーニングした。 試験化合物溶液 [すなわち. 試験化合物をジメチルスルホキシド (DMSO) に溶解した溶液] は、 細胞をモ ネンシン処理後、 塩化カルシウム (45Ca C I 2; 55. 5 kBqZmL) を含 む細胞外液 C又は細胞外液 Dに加え測定を行い、 阻害活性が 30%以上のものを 選択した。
その結果、 配列番号 2又は 4で表されるァミノ酸配列からなる新規力リゥ厶依 存的ナトリゥ厶ーカルシウム交換体の活性を抑制する 2種類の化合物、 すなわち. 2— [2— [4— (4—ニトロべンジロキシ) フエニル] ェチル] イソチォウレ ァ メタンスルホネート [化合物 A 特開平 9- 67336号公報又は J Biol Chem.
1996. 271 (37) :22391-7.] 及び 3' , 4' —ジクロ口ベンザミル [化合物 Β ; 力 タログ化合物番号 Β-710, NIMH Chemical Inventory, U. S. A又は Proc Natl Acad Sci U S A. 1984 May ;81 (10) :3238-42.] が得られた。
実施例 7 : ヒ卜末梢多形核白血球における阻害剤の効果
ヒト末梢多形核白血球 (PMN) を用いて、 実施例 6で得られた化合物の評価 を行った。 血液サンプルは健康成人からの採血により得た。 遠心管にフイコール 分離液 (モノ ■ポリ分離液;大日本製薬) を分注し、 その上に新鮮な血液成分を そのまま重層し、 400 x gで 30分間、 室温下で遠心した。 上層 (単核球) 、 中間層(多核球)、 及び沈殿 (赤血球)に別れているので、 各層が混合しないように 回収し、 リン酸緩衝生理食塩水 (PBS) で懸濁して再び遠心して回収した後、 0. 2%ゥシ血清アルブミン (BSA) 含有 RPM I 1 640培地で懸濁し、 細 胞数を計測して実験に用いた。 また、 得られた多核白血球成分の一部をへマトキ シリン .ェォジン染色し、 好中球 (およそ 95%) と好酸球 (およそ 5%) が含 まれていることを確認した。
遊走試験は 24ゥエルのディスポーザブルケモタキシスチャンバ一
(Transwel I 3〃m ; コーニング社) を用い、 l O O nmo I ZLのホルミルメチ
ォニルロイシニルフエ二ルァラニン (f M L P) を含む培地 (0. 2%BSA, R PM I 1 640培地) に化合物 A又は化合物 Bの最終濃度が 1 O i mo I ZL 30 imo I ZL、 及び 1 00 mo I Z Lとなるような試験液を調製し、 下側 のゥエルに 1 m L注入した。 上側のゥエルに、 回収した PMNを 2. 0 1 06 個 Zゥヱル (0. 2m L) 注入し、 37°Cで 1時間培養後、 下側のゥエルに移動 してきた細胞数を血球計測板で算定した。 試験は独立した実験を 3回行った。 結果を表 1に示す。 表 1に示す値は、 被検化合物の代わりに DMSOを用いた 場合の値を 1 00としたときの相対値であり、 3回の独立した実験に基づく平均 値及び標準偏差 (S D) で示す。 また、 PMNを f M L Pで刺激しなかった場合 (BG) のデータも併記した。
表 1に示すように、 化合物 A及び化合物 Bは用量依存的に PMNの遊走を阻害 した。 これらの結果から、 配列番号 2又は 4で表されるアミノ酸配列からなる新 規カリゥム依存的ナトリゥ厶ーカルシウム交換体の活性を抑制する化合物は、 P MNの遊走を抑制する効果を有することが明らかになった。 すなわち、 これらの 化合物は虚血再灌流における細胞障害保護剤及びノ又は抗炎症性疾患剤として有 効な効果を有することがわかった。
表 1
_ 遊走細胞数 (相対値)
コントローノレ DMS O 1 00
化合物 A 1 0 U mo I Z L 7 8. 1 8 ± 25. 9 3
30 j« m o I / L 29. 50± 26. 1 6 00 m o I / L 1 6. 84± 1 0. 7 8 化合物 B 1 0 jU m o I /L 1 00. 68土 7. 27
30 m o I Z L 7 2. 90± 1 5. 8 5 00 m o I / L 44. 58 ± 32. 8 2
BG f M L P (一) 1 9. 22士 6. 20 産業上の利用可能性
本発明のポリべプチドは、 末梢白血球に発現しているカリウム依存的ナトリウ
ムーカルシウム交換体であるので、 本発明のポリペプチドは、 白血球の活性化並 びに虚血後の再灌流による細胞障害及び炎症に関与する。 従って、 本発明のポリ ぺプチドを抑制化する物質は、 白血球活性化抑制並びに虚血後の再灌流による細 胞障害治療及び 又は炎症性疾患の治療に有用である。
また、 本発明のポリべプチド及び前記ポリべプチドを細胞表面に発現する本発 明の細胞は、 白血球活性化抑制剤並びに虚血後の再灌流による細胞障害治療剤及 ぴ Z又は炎症性疾患治療剤のスクリーニングに有用であり、 本細胞を用いること により、 白血球活性化抑制剤並びに虚血後の再灌流による細胞障害治療剤及び Z 又は炎症性疾患治療剤の簡便なスクリーニング系を提供することができる。 更に, 本発明のポリヌクレオチド及び発現べクタ一は、 白血球活性化抑制剤並びに細胞 障害治療剤及びノ又は炎症性疾患治療剤のスクリーニングツールを製造するのに 有用である。
本発明のスクリーニングツール又はスクリーニング方法によれば、 白血球活性 化抑制剤並びに虚血再灌流による細胞障害保護剤及び抗炎症性疾患剤として有効 な物質をスクリーニングすることができる。 本発明の白血球活性化抑制用医薬組 成物は、 虚血再灌流による細胞障害の予防に有用であり、 炎症性疾患の治療及び /又は予防に有用である。 配列表フリーテキスト
以下の配列表の数字見出しく 2 2 3 >には、 「A r t i f i c i a l S e q u e n c e」 の説明を記載する。 具体的には、 配列表の配列番号 5〜 8の配列で 表される各塩基配列は、 人工的に合成したプライマー配列である。 以上、 本発明を特定の態様に沿って説明したが、 当業者に自明の変形や改良は 本発明の範囲に含まれる。