明 細 書
1, 3—プロパンジオールの製造方法 <技術分野 >
本発明は、 1 , 3—プロパンジオールの製造方法に関するものである。 詳しく は、 1, 3—プロパンジオールを脱水縮合反応させてポリマーとした際に、 ハー ゼン色数の小さいポリ トリメチレンエーテルグリコールを与えることのできる 1, 3一プロパンジオールの製造方法に関するものである。 ぐ背景技術 >
1, 3 _プロパンジオールの重要な用途の一つはポリ トリメチレンエーテルグ リコールの製造である。 しかしながら、 工業的に入手し得る 1 , 3—プロパンジ オールは、 着色したポリ 1、リメチレンエーテルダリコールを与えることが多い。 したがって 1, 3 _プロパンジオールを精製して、 着色の少ないポリ トリメチレ ンエーテルダリコールを得ることを可能にする方法が種々提案されている。
例えば、 1, 3—プロパンジオールを酸水溶液中で処理したのち、 この酸水溶 液に塩基を添加して水溶液を塩基性として蒸留する方法が提案されている (特許 文献 1 ) 。 しかしながら、 この方法は水溶液として精製を行うため、 処理量が増 加して処理装置が大型化するという問題に加えて、 水と 1 , 3 _プロパンジォー ルとを蒸留分離するので大量のエネルギーを消費するという問題がある。
また、 1, 3—プロパンジオールを酸触媒の存在下に加熱処理したのち、 蒸留 する方法が記載されている (特許文献 2 ) 。 この方法では酸触媒としてパーフル ォロスルフォン酸基を有する樹脂を用いるが、 これは高価である。 また、 処理温 度が高いと 1, 3—プロパンジオールが脱水縮合してオリゴマーを生成してしま い、 蒸留により回収し得る 1, 3—プロパンジオールの収率が低下するという問 題もある。
さらに、 発酵法により製造した 1, 3—プロパンジオールを含有する発酵液に
塩基を添加して pHを 7以上とし、 これを加熱濃縮してから蒸留や濾過などの方 法により ¾酵液から 1, 3—プロパンジオールを分離する方法が開示されている。
(特許文献 3 )
しかしながら、 この方法に於いては、 以下に述べる問題があることが本発明者 らにより明らかになった。 すなわち、 加熱温度が低いと粗 1, 3—プロパンジォ ール中の不純物が充分除去されずに精製効果が充分なく、加熱温度が高すぎると、 粗 1, 3—プロパンジオール中で分解反応が進行し、 蒸留された 1, 3—プロパ ンジオール中に分解反応により生じた不純物が混入してしまう。 また、 原料であ る 1, 3 _プロパンジオールとして、 着色の大きいものを用いて塩基存在下で蒸 留した場合には、 蒸留された 1, 3—プロパンジオール中の不純物を充分除くこ とができない。
これらいずれの場合にも、 蒸留 1, 3—プロパンジオールを用いて、 脱水縮合 反応によりポリ トリメチレンエーテルグリコールを製造した場合に、 着色してし まうという問題がある。
[特許文献 1 ]
米国特許第 5527973号明細書
[特許文献 2]
米国特許第 623 5 948 B 1号明細書
[特許文献 3]
米国特許第 636 1 983 B 1号明細書 く発明の開示 >
従って、 本発明は、 粗 1, 3—プロパンジオールから、 脱水縮合反応により着 色の少ないポリ トリメチレンエーテルグリコールを与える、 精製 1, 3—プロパ ンジオールを効率よく安全に取得することのできる方法を提供しようとするもの である。
本発明者らは、 化学合成法により製造した比較的純度の高い 1, 3—プロパン ジオールについてガスクロマトグラフィ一により分析を行っても不純物のピーク
がごく少量しか検出されないにも関わらず、 これを脱水縮合反応してポリマーを 製造すると黄色に着色してしまうことに着目して、 主として比較的純度の高い粗
1, 3—プロパンジオールを更に精製し、 ポリマーとしたときの着色を抑制する ことのできる 1 , 3—プロパンジオールを得る方法につき検討を行い、 これらの 課題を解決する方法を見いだした。
さらに、 塩基存在下の 1, 3—プロパンジオールの蒸留において、 蒸留釜中の 溶液の熱安定性を考慮して操作範囲を限定することにより、 安全に蒸留操作をお こなうことができ、 また、 着色の少ないポリ トリメチレンエーテルグリコールを 与える 1, 3—プロパンジオールを得ることができることを見いだし、 本発明を 完成した。
即ち本発明の第 1の要旨は、 純度 9 5重量%以上の粗 1, 3—プロパンジォ ールを塩基の存在下に加熱処理したのち、 蒸留して精製 1 , 3—プロパンジォー ルを留出させることを特徴とする 1 , 3—プロパンジオールの製造方法、 に存す る。
本発明の第 2の要旨は、 粗 1, 3プロパンジオールを塩基の存在下に 1 1 0 °C 以上 2 0 0 °C以下の温度で加熱処理したのち、 蒸留して精製 1 , 3—プロパンジ オールを留出させることを特徴とする 1, 3—プロパンジオールの製造方法、 に 存する。
本発明の第 3の要旨は、 粗 1, 3プロパンジオールを塩基の存在下に蒸留して 精製 1, 3—プロパンジオールを留出させるにあたり、 蒸留を下記式 (1 ) を満 たす条件にて行うことを特徴とする 1, 3—プロパンジオールの製造方法、 に存 する。
T≤ 2 0 0 - C ( 1 )
(式 (1 ) 中、 Τは蒸留温度 (°C) 、 Cは塩基濃度 (m o 1 %) を表す。 ) 本発明の第 4の要旨は、 上記製造方法で得られた精製 1, 3—プロパンジォー ルを、 酸触媒の存在下に脱水縮合反応させることを特徴とするポリ トリ
エーテルグリコールの製造方法、 に存する。 本発明の方法によれば、 脱水縮合反応により着色の少ないポリ トリメチレ: 一テルグリコールを与えることのできる 1, 3 —プロパンジオールを製造するこ とができる。
<発明を実施するための最良の形態 >
以下、 本発明につき、 詳細に説明する。 く粗 1, 3 _プロパンジオール >
本発明では、 脱水縮合させたときに着色したポリ トリメチレンエーテルグリコ ールを与える粗 1 , 3—プロパンジオールを精製処理に供する。
通常は後記する標準重合条件で重合させたときに、 米国公衆衛生協会 (A P H A) の規格に規定されているハーゼン色数が 5 0 0以上のポリ トリメチレンエー テルグリコールを与える、 粗 1 , 3 —プロパンジオールを精製処理に供する。 このような粗 1 , 3 —プロパンジオールとしては、 エチレンオキサイドをヒド 口ホルミル化したのち水素化する方法により製造されたものや、 ァク口レインを 酸触媒存在下に水和したのち水素化する方法により製造されたものが挙げられる。 このような粗 1 , 3—プロパンジオールは、 通常はアルデヒドゃケトン等のカル ポニル化合物や、 これらのカルボエル化合物のァセタールないしケタール化合物 を 4 0 0 P 程度含有している。 また発酵法により製造された 1, 3 —プロパ ンジオールは、 比較的着色の少ないポリ トリメチレンエーテルグリコールを与え るが、 発酵法の 1, 3 —プロパンジオールでも保存中に品質が劣化して着色した ポリ トリメチレンエーテルグリコールを与えるようになつたものは、 本発明方法 の処理対象となる。
粗 1 , 3 —プロパンジオールは、 後記する蒸留での負荷を軽減するため、 水や 有機溶媒など 1, 3—プロパンジオールよりも低沸点のものの含有量の少ないも のが好ましい。
通常は 1 , 3—プロパンジオールの含有量が 9 5重量%以上の粗 1, 3—プロ パンジオールを精製処理に供する。
精製処理に用いる 1 , 3—プロパンジオールは、 着色の少ないもの、 通常 A P H A 1 0 0以下、 好ましくは 6 0以下、 より好ましくは 3 0以下のものを用いる ことが好ましい。
本発明では粗 1 , 3—プロパンジオールをまず塩基の存在下に加熱する。粗 1, 3 _プロパンジオール中の不純物は通常は微量なので、 この加熱により不純物に 如何なる変化が生ずるかを、 加熱処理の前後の 1 , 3—プロパンジオールの分析 により確認するのは困難である。 しかしながら周知のように、 カルボニル化合物 を塩基の存在下に加熱するとアルドール縮合を起こしてより分子量の大きな化合 物に変化する。 本発明においても、 粗 1, 3—プロパンジオール中に微量に存在 していて、蒸留では 1, 3—プロパンジオールと分離することが困難な不純物が、 塩基存在下での加熱によりアルドール縮合して、 蒸留分離が可能な分子量の大き い化合物に変化するものと考えられる。
<塩基 >
塩基としては、 水酸化ナトリウム、 水酸化カリウム、 水酸化セシウム等のアル 力リ金属水酸化物;
水酸化マグネシウム、 水酸化カルシウム、 水酸化バリウム等のアルカリ土類金 属水酸化物;
炭酸ナトリウム、 炭酸カリウム、 炭酸セシウム、 炭酸水素ナトリウム、 炭酸水 素力リゥム等のアル力リ金属炭酸塩や炭酸水素塩;
塩基性炭酸マグネシウム等の塩基性炭酸塩;
炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属等の炭酸塩; ナトリウムメチラート、 ナトリゥムェチラ一ト等のアルカリ金属のアルコキシド;
酢酸ナトリゥム、 酢酸力リゥム等のアルカリ金属カルボン酸塩;
弗化カリウムを担持したアルミナ、 弗化カルシウム、 ソーダライト等の塩基性 ゼォライト ;
などを用いることができる。 中でも好ましいのは、 アルカリ金属の水酸化物、 炭 酸塩、 炭酸水素塩、 アルカリ土類金属の水酸化物などであり、 特に水酸化ナトリ ゥム、 水酸化カリウム、 炭酸ナトリウム、 炭酸カリウム、 水酸化カルシウムが安 価である、 処理効率がよい、 ハンドリングが容易などの点で好ましい。
<加熱処理 >
粗 1, 3—プロパンジオールの塩基存在下での加熱処理は、下限が通常は 8 0 °C 以上、 好ましくは 1 1 0 °C以上、 さらに好ましくは 1 2 0 °C以上、 特に好ましく は 1 3 0 °C以上、 最も好ましくは 1 4 0 °C以上であり、 上限が 2 0 0 °C以下、 好 ましくは 1 9 0 °C以下、 さらに好ましくは 1 8 0 °C以下である。
この温度が低すぎると塩基による処理の効果がでずに、 1 , 3—プロパンジォ ールに不純物が残留し、 着色したポリ トリメチレングリコールを与える。 また、 塩基による処理の効果をだすための長時間の加熱処理時間が必要となる傾向があ る。 また高すぎると精製された 1, 3—プロパンジオールに着色がみられたり、 着色したポリ トリメチレンダリコールを与える傾向がある。
これは、 温度が低すぎる場合には、 塩基によるカルボニル化合物の縮合反応が 進行し難く、 カルボニル化合物が残存してしまったり、 カルボュル化合物の縮合 反応の十分な進行のためには長時間を要するためと考えられる。 また、 高すぎる 場合には、 後述する示差走査熱量計による分析結果から推測されるように、 1, 3—プロパンジオールと塩基による分解反応が生じ、 蒸留 1, 3—プロパンジォ ール中に不純物が混入するためと推測している。
圧力は 1, 3—プロパンジオール (沸点 2 1 3 . 5 °C) が液相に保持される圧 力であればよく、 通常は常圧ないしはその近傍で行う。
雰囲気は 1 , 3—プロパンジオールが変質しないように窒素やアルゴンなどの 不活性ガス雰囲気であるのが好ましい。 所望ならば 1, 3—プロパンジオールよ りも低沸点の不純物の脱離を促進するため、加熱処理を減圧下に行ったり、粗 1, 3 _プロパンジオール中に不活性ガスを吹き込んでもよい。
処理に要する時間は加熱温度や塩基の共存量などにより異なるが、 下限が通常
0 . 5時間以上、好ましくは 1時間以上、 より好ましくは 1 . 5時間以上であり、 上限が通常 5 0時間以下、 好ましくは 2 0時間以下、 より好ましくは 5時間以下 である。 時間が短すぎると、 カルボニル化合物のアルドール縮合反応等の目的反 応が充分進行せずに、 1, 3—プロパンジオール中の不純物が残存する。 また長 すぎると 1, 3—プロパンジオールの精製にかかる負荷が増大する。
加熱処理は回分方式でも連続方式でも行うことができる。
回分方式の場合に用いる塩基の量は、 粗 1 , 3—プロパンジオールに対し下限 が通常 0 . 0 0 0 1重量倍以上、 好ましくは 0 . 0 0 1重量倍以上であり、 上限 が通常 0 . 3重量倍以下、 好ましくは 0 . 0 5重量倍以下の塩基を加えて攪拌下 に加熱すればよい。
連続方式としては、 塩基として不溶性のものを用いる場合には、 固定床流通方 式およびけん濁床方式のいずれでも行うことができる。けん濁床方式の場合には、 けん濁している塩基に対し 1時間当り 0 . . 1重量倍以上、 好ましくは 1重量倍以 上、 上限が通常 1 0 5重量倍以下、 好ましくは 1 0 3重量倍以下の粗 1 , 3—プロ パンジオールをけん濁床に供給すればよい。
固定床流通方式の場合には、 塩基に対して 1時間当たり 0 . 0 0 1重量倍以上、 好ましくは 0 . 0 1重量倍以上、 上限が通常 1 0 5重量倍以下、 好ましくは 1 0 3 重量倍以下の粗 1, 3—プロパンジオールを固定床に供給すればよい。
尚、 加熱は、 好ましくは、 精製 1 , 3—プロパンジオールが、 後述の標準重合 条件で、 ハーゼン色数 3 3 0以下のポリ トリメチレンエーテルグリコールを与え るように行われる。 ぐ蒸留 >
加熱処理を経た粗 1, 3 _プロパンジオールは蒸留して、 留出する精製 1 , 3 一プロパンジオールを製品として回収する。 1 , 3 _プロパンジオール中のポリ トリメチレンエーテルグリコールを着色させる不純物は、 加熱処理により 1 , 3 一プロパンジオールと容易に蒸留分離可能な化合物に変化しているので、 蒸留は 簡単な蒸留装置で行うことができる。 蒸留時の温度の上限は、 通常、 加熱処理温
度以下、 好ましくは 1 9 0 °C以下、 さらに好ましくは 1 5 0 °C以下である。 また 下限は通常 4 0 °C以上、 好ましくは 6 0 °C以上である。 蒸留温度が高すぎると粗 1, 3—プロパンジオール中での分解反応がおき、 蒸留成分に分解反応由来の不 純物が混入し、 ポリ トリメチレンエーテルグリコールを着色させる結果となる傾 向があり、 また低すぎると、 1, 3—プロパンジオールを蒸留するための減圧度 を上昇させるための負荷が大きくなる。 なお、 蒸留の際には塩基を部分中和して からおこなってもよいし、 全部中和をしてから蒸留をおこなってもよい。
また、 蒸留においてはその軽沸留分を除去すると、 不純物として含有される 2 ーヒドロキシルェチル一 1 , 3—ジォキサンの混入量を減少させることができる ので好ましい (後述する参考例 1参照) 。
本発明においては、 除去すべき軽沸留分の量とは、 全留出分に対して 1重量% 以下、 好ましくは 4重量%以下、 より好ましくは 1 0重量%以下の 1, 3—プロ パンジオールである。
また、 蒸留の際には、 蒸留温度と塩基の濃縮率を特定の範囲内に制限すること により、 蒸留釜中に残る溶液の熱安定性を向上させることができ、 安全に蒸留を おこなうことができる。
蒸留釜中に残留する溶液 (釜残液)の熱安定性は、一般には示差走査熱量計 (DSC) により情報をえることができ、 発熱開始温度、 発熱量、 発熱ピーク間の温度差等 により危険性が判断される。
発熱ピークの大きさとして、 1 0 0 J Z gの発熱量がひとつの危険性の目安と 考えられるので、 釜残液の D S Cにおける累積発熱量が 1 O O j / g以下となる 温度範囲での蒸留が好ましい。 しかし、 高温側に隣接する発熱ピークがあり、 そ のピークの発熱開始温度との温度差が近接してしている場合には、 低温領域にお ける発熱により温度が上昇し、 高温側の発熱開始温度に到達し、 高温側の発熱が 誘起されて、 より危険度が高くなるため、 より低い発熱量例えば、 累積発熱量が 5 0 J Z g以下となるような温度範囲での蒸留操作をおこなうことがより好まし い。
本発明に用いられる蒸留の際の操作条件は、 下記式 (1 ) を満たす範囲にて行
うことが好ましい。
T≤ 20 O-C (1)
式 (1) 中、 Τは蒸留温度 (°C) 、 Cは塩基濃度 (mo 1 %) を表す。
より好ましくは、 下記式 (2) を満たす範囲にて行う。
T≤ 1 80— 0. 8 X C (2) ここで蒸留温度とは、 蒸留釜中の溶液の温度とする。 また、 ここでいう塩基濃 度とは、 蒸留釜の溶液中の塩基のカチオン成分の濃度 (mo 1 %) で表す。 弱酸 強塩基の塩を用いる場合には強塩基のカチオン成分の濃度で表す (例えば、 K2 C03の場合、 全 K +の濃度を表す) 。 塩基での加熱処理後に、 塩基が中和された 場合には、 強酸により中和された場合には、 中和された分は除いたカチオン成分 の濃度で表し、 弱酸により中和された場合には、 全力チオン成分の濃度で表す。 また、 蒸留釜中の溶液がスラリーの場合には、 蒸留釜の 1, 3—プロパンジォー ル溶液中に溶解している塩基の濃度で表す。
これより高い温度範囲、 塩基濃度範囲では、 DSC分析において大きい発熱が 認められ、 蒸留釜中の溶液に分解反応等の副反応が起きやすい。
DSC分析におけるこの発熱反応の原因について、 濃縮された塩基含有 1, 3 一プロパンジオール溶液と、 同じ濃度の 1, 3—プロパンジオール、 塩基を混合 したものを比較したところ、 ほぼ同様な発熱挙動を示すことから、 主に 1, 3— プロパンジオールと塩基の作用により引き起こされるものであると推定している。 上記に示した操作条件より温度及び塩基濃度の高い範囲で塩基存在下の蒸留を 行った場合、 蒸留釜中の溶液の熱安定性が悪くなり、 蒸留温度がコントロールで きなくなり暴走する危険性が高い。 また、 蒸留釜中の溶液が熱分解をおこし、 不 純物が蒸留成分に混入し、 場合によっては着色した 1, 3—プロパンジオールを 与えることもある。 また、 このような操作範囲で蒸留された 1 , 3—プロパンジ オールを原料にした場合には着色したポリ トリメチレンダリコールとなる傾向が
ある。
このように、 上述した操作範囲で 1 , 3 —プロパンジオールを蒸留すれば、 安 全に操作できるだけでなく、 蒸留釜中の分解反応を抑制することが可能となり、 不純物の少ない 1, 3 —プロパンジオールを得、 着色の少ないポリ トリメチレン グリコールを得ることができる。
<精製 1, 3—プロパンジオール >
本発明方法により得られた精製 1, 3 _プロパンジオールは、 精製前の粗 1 , 3—プロパンジオールを原料とする場合よりも、 著しく着色の少ないポリ トリメ チレンエーテルダリコールを与える。 具体的な着色の程度は精製に供する粗 1, 3—プロパンジオールや精製条件の選択、 更には重合条件の選択等により異なる が、 下記の標準重合条件で重合させたときにハーゼン色数が 3 3 0以下、 更には 2 0 0以下の粗ポリ トリメチレンエーテルグリコール若しくは精製ポリ トリメチ レンエーテルグリコールを容易に得ることができる。 なお、 重合後、 精製操作を 用いた場合、 粗ポリ トリメチレンエーテルグリコール及び精製ポリ トリメチレン エーテルグリコール間でのハーゼン色数は殆ど変わらない。
本明細書において標準重合条件によるポリ トリメチレンエーテルグリコールの 製造とは次の方法を意味する。
標準重合条件:
蒸留管、 窒素導入管、 温度計および攪拌機を備えた 1 0 O m 1四つ口フラスコ に、 窒素を 1 0 O N m 1 Z分で供給しながら、 1, 3—プロパンジオール 5 0 . 0 gを仕込む。 攪拌しながら、 これに 9 5重量%濃硫酸 0 . 6 9 7 gをゆっく り と添加する。 フラスコをオイルバスに入れ 1 5 5 °Cに加熱する。 約 3 0分で昇温 し、 液温を 1 5 5 °C ± 2 °Cに調節して 9時間保持して反応させたのち室温に放置 して冷却する。 反応の間に生成した水は窒素に同伴させて留去する。 これを粗ポ リ トリメチレンエーテルグリコールとする。
上記標準重合条件で得られた粗ポリ トリメチレンエーテルグリコール (混合物) は、 常法により精製する。
その精製操作は、 例えば以下の操作 (精製操作 1 ) で行われる。
室温まで冷却された反応液を 5 0 gの n—プタノールを用いて 3 O O m lのナ ス型フラスコに移し、 これに 5 0 gの脱塩水を加えて 1時間緩やかに還流させて 硫酸エステルの加水分解を行う。 室温まで放置して冷却したのち、 2層に分離し た下層 (水層) を除去する。 上層 (油層) に 0 . 5 gの水酸化カルシウムを添加 して室温で 1時間攪拌したのち、 6 0 °Cに加熱して減圧下に n—ブタノールおよ ぴ水を留去する。 得られた油層を 1 5 0 gの n—ブタノールに溶解し、 0 . 4 5 μ πιのフィルターで濾過して不溶物を除去する。 濾液を 6 0 °Cに加熱し、 減圧下 に n—プタノールを留去する。 得られた油層を 6時間真空乾燥し、 精製ポリ トリ メチレンェ一テノレグリコーノレを得る。
<ポリ トリメチレンエーテルグリコールの製造方法 >
本発明の製造方法により得られる 1 , 3—プロパンジオールは、 触媒の存在下 に脱水縮合反応させて、 ポリ トリメチレンエーテルグリコールを製造することが できる。
ポリ トリメチレンエーテルダリコールの製造において用いることのできる触媒 としては、 従来からアルコール性水酸基の脱水縮合反応によりエーテル結合を生 成することが知られている任意の酸触媒を用いることができる。 また、 酸触媒と ともに塩基触媒を用いることもできる。 これらの触媒は反応系に溶解して均一系 触媒として作用するもの、 および溶解せずに不均一系触媒として作用するものの いずれであってもよい。
酸としては、 硫酸、 燐酸、 フルォロ硫酸、 リンタングステン酸等のへテロポリ 酸、 メタンスルフォン酸、 トリフルォロメタンスルフォン酸、 オクタンスルフォ ン酸、 1 , 1 , 2 , 2—テトラフルォロエタンスルフォン酸等のアルキル鎖がフ ッ素化されていてもよいアルキルスルフォン酸、 ベンゼンスルフォン酸や環にァ ルキル側鎖を有していてもよいベンゼンスルフォン酸、 例えばパラトルエンスル フォン酸等のァリールスルフォン酸など、後者としては、活性白土、ゼォライ ト、 シリカ一アルミナやシリカ—ジルコユア等の金属複合酸化物、 およびパーフルォ
口アルキルスルフォン酸基を側鎖に有する樹脂などがあげられる。 これらのうち で入手が容易でかつ安価である点では、 硫酸、 燐酸、 ベンゼンスルフォン酸、 パ ラトルエンスルフォン酸などが好ましく、 これらの中でも硫酸が最も好ましい。 併用できる塩基触媒としては、 有機塩基、 及びアルカリ金属が好ましく、 特に 有機塩基が好ましい。
有機塩基としては含窒素有機塩基、 特に 3級窒素原子を有する含窒素有機塩基 が好ましい。 そのいくつかを例示すると、 ピリジン、 ピコリン、 キノリン等のピ リジン骨格を有する含窒素複素環式化合物、 N—メチルイミダゾール、 1, 5— ジァザビシクロ [ 4 . 3 . 0 ] — 5 —ノネン、 1, 8—ジァザビシク口 [ 5 . 4 . 0 ] — 7—ゥンデセン等の N— C = N結合を有する含窒素複素環式化合物、 ト リエチルァミンやトリプチルァミン等のトリアルキルァミンなどがあげられる。 これらの中でもピリジン骨格を有するもの、 N— C = N結合を有する含窒素複素 環式化合物が好ましく、入手が容易で安価である点ではピリジンが最も好ましい。 上記の酸と塩基を併用する場合、 両者は反応系内で別々に存在していても良い し、 また、 酸と有機塩基とで塩を形成していても良い。 また予め酸と有機塩基と で塩を形成しているものを使用してもよい。
触媒の塩基であるアルカリ金属としては、 L i, N a , K, C sが好ましく、 N aが特に好ましい。 アルカリ金属を用いる場合、 アルカリ金属と触媒の酸とでァ ルカリ金属塩を形成しているものが好ましく用いられる。
アルカリ金属塩としては、 硫酸塩、 硫酸水素塩、 ハロゲン化物、 リン酸塩、 リ ン酸水素塩、 ホウ酸塩等の鉱酸の塩、 トリフルォロメタンスルフォン酸塩、 パラ トルエンスルフォン酸塩、 メタンスルフォン酸塩等の有機スルフォン酸塩、 蟻酸 塩、 酢酸塩等のカルボン酸塩などが挙げられる。 反応系内では、 アルカリ金属塩 とフリーの酸が共存するのが好ましく、 この場合、 アルカリ金属塩を形成する酸 とフリーの酸とは同一であることが好ましい。 この場合、 触媒である酸とそのァ ルカリ金属塩を各々用いても良いが、 アルカリ金属の炭酸塩、 炭酸水素塩、 水酸 化物、 金属単体等を触媒である酸と反応せしめることにより所望の酸およびアル 力リ金属塩よりなる触媒を調製することもできる。 例えば反応基質であるポリォ
ール中にてアルカリ金属炭酸塩と硫酸を反応せしめ、 硫酸および硫酸のアル力リ 金属塩を含む液とすることができる。
触媒の酸は原料のポリオールに対して通常は 0 . 0 0 1重量倍以上 0 . 3重量 倍以下の範囲で用いる。 均一系触媒として作用する酸であれば 0 . 0 0 1重量倍 以上 0 . 1重量倍以下の範囲で用いるのが好ましい。 なお、 連続反応でかつパー フルォロアルキルスルフォン酸基を側鎖に有する樹脂のように不均一触媒として 作用する酸を用いる場合には、 これを反応液と一緒に抜き出さずに反応装置内に 滞留させておき、 これに原料のポリオールを連続的に供給する方法を採用するこ とができる。 この場合には、 通常は反応装置内に滞留している酸に対して、 下限 が、 通常 0 . 0 1重量倍以上、 好ましくは 0 . 1重量倍以上であり、 上限が通常 1 0 0 0 0重量倍以下、 好ましくは 1 0 0 0重量倍以下の原料ポリオールを 1時 間に供給する。 なお、 この場合には反応装置内の酸に対する塩基の当量比が経時 的に低下することがあるので、 必要に応じて原料ポリオールと共に塩基を供給し て、 酸に対する有機塩基の当量比が所望の値を維持するようにする。
塩基の量としては、 有機塩基の場合は触媒の酸に対して当量未満、 すなわち触 媒の酸をすベては中和しない量比で用いる。 触媒の酸に対し、 好ましくは 0 . 0
1当量以上、 より好ましくは 0 . 0 5当量以上であり、 好ましくは 0 . 9当量以 下、 より好ましくは 0 . 5当量以下となるように用いるのがよい。
アルカリ金属塩の場合は触媒の酸に対し、アルカリ金属として、好ましくは 0 .
0 1当量以上、 より好ましくは 0 . 0 5当量以上であり、 好ましくは 0 . 9当量 以下、 より好ましくは 0 . 5当量以下となるように用いるのがよい。
1 , 3—プロパンジオールの脱水縮合反応によるポリ トリメチレンエーテルグ リコールの製造は、 回分方式でも連続方式でも行うことができる。 回分方式の場 合には、 反応器に原料のポリオールおよび触媒とを仕込み、 攪拌下に反応させれ ばよい。
連続反応の場合には、 例えば多数の攪拌槽を直列にした反応装置や流通式反応 装置の一端から原料のポリオールと触媒を連続的に供給し、 装置内をビス トンフ ローないしはこれに近い態様で移動させて、 他端から反応液を連続的に抜き出す
方法を用いることができる。 なお、 連続反応でかつパーフルォロアルキルスルフ オン酸基を側鎖に有する樹脂のように不均一触媒として作用する酸を用いる場合 には、 これを反応液と一緒に抜き出さずに反応装置内に滞留させておき、 これに 原料の 1, 3一プロパンジオールを連続的に供給する方法を採用することができ る。
脱水縮合反応の温度は、 下限が、 通常 1 2 0 °C以上、 好ましくは 1 4 0 °C以上 であり、 上限が通常 2 5 0 °C、 好ましくは 2 0 0 °C以下で反応を行うのがよい。 反応は窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。 反応圧力は 反応系が液相に保持される範囲であれば任意であり、 通常は常圧下で行われる。 所望ならば反応により生成した水の反応系からの脱離を促進するため、 反応を減 圧下で行ったり、 反応系に不活性ガスを流通させてもよい。
反応時間は触媒の使用量、 反応温度および生成する脱水縮合物に所望の収率や 物性などにより異なるが、 下限が、 通常、 0 . 5時間以上、 好ましくは 1時間以 上であり、 上限が通常 5 0時間以下、 好ましくは 2 0時間以下である。 なお、 反 応は通常は無溶媒で行うが、 所望ならば溶媒を用いることもできる。 溶媒は反応 条件下での蒸気圧、 原料および生成物の溶解性、 安定性などを考慮して、 常用の 有機合成反応に用いる有機溶媒から適宜選択して用いればよい。 用いることので きる有機溶媒としては、 例えば脂肪族炭化水素化合物、 芳香族炭化水素化合物な どが好ましく、 これらの溶媒は、 アルキル基、 ハロゲン原子などの置換基で置換 されていてもよい。 また、 有機溶媒の沸点としては 1 2 0〜3 0 0 °Cのものが好 ましい。 水と共沸する有機溶媒を用いることもできる。
生成ポリ トリメチレンエーテルダリコールの反応系からの分離 ·回収は常法に より行うことができる。 酸として不均一系触媒として作用するものを用いた場合 には、 まず濾過や遠心分離により反応液からけん濁している酸を除去する。 次い で蒸留または水などの抽出により低沸点のオリゴマーや塩基を除去して、 目的と するポリ トリメチレンエーテルグリコールを取得する。 均一系触媒として作用す る酸を用いた場合には、 まず反応液に水を加えてポリ トリメチレンエーテルダリ コール層と酸、 塩基およびオリゴマーなどを含む水層を分層させる。 なお、 ポリ
トリメチレンエーテルダリコールの一部は触媒として用いた酸とエステルを形成 している場合があり、 この場合には反応液に水を加えた後、 加熱してエステルを 加水分解してから分層させる。 この際、 ポリ トリメチレンエーテルグリコールお よび水の双方に親和性のある有機溶媒を水と一緒に用いると、 加水分解を促進す ることができる。 また、 ポリ トリメチレンエーテルグリコールが高粘度で分層の 操作性がよくない場合には、 ポリ トリメチレンエーテルグリコールに親和性があ り、 かつ蒸留によりポリ トリメチレンエーテルグリコールから容易に分離しうる 有機溶媒を用いるのも好ましい。 分層により取得したポリ トリメチレンエーテル グリコール相は蒸留して残存する水や有機溶媒を留去し、 目的とするポリ トリメ チレンエーテルグリコールを取得する。 なお、 分層により取得したポリ トリメチ レンエーテルダリコール相に酸が残存している場合には、 水やアルカリ水溶液で 洗浄したり、 ァニォン交換樹脂や水酸化カルシウム等の固体塩基で処理して残存 している酸を除去してから蒸留に供する。
本発明の方法により得られるポリ トリメチレンエーテルグリコールは、 重量平 均分子量 (Mw) 力 下限が通常 6 0 0以上、 好ましくは 1 2 0 0以上であり、 上限が通常 3 0 0 0 0以下、 好ましくは 1 5 0 0 0以下、 さらに好ましくは 1 0 0 0 0以下である。
数平均分子量 (M n ) は、 下限が通常 5 0 0以上、 好ましくは 1 0 0 0以上で あり、 上限が通常 1 0 0 0 0以下、 好ましくは 5 0 0 0以下である。
分子量分布 (MwZM n ) は、 1に近いほど好ましく、 上限は通常 3以下、 好 ましく.は 2 . 5以下である。
ポリ トリメチレンエーテルグリコールは、 弾性繊維や熱可塑性ポリエステルエ ラストマー、 熱可塑性ポリウレタンエラストマ一、 コーティング材などの用途に 使用できる。 ぐ実施例 >
以下に実施例により本発明を更に具体的に説明するが、 本発明はその要旨を超 えない限り、 以下の実施例によって限定されるものではない。
<収率算出方法 >
実施例 1〜 5及ぴ比較例 1〜 2における収率計算方法は以下の通りである (:" 1, 3— PD" とは 1, 3—プロパンジオールを示す)。
(精製ポリ トリメチレングリコールの重量) * 1 0 0/ {仕込み 1 , 3— PD重量 一 (仕込み 1, 3— PD) * 1 8/7 6 } =収率 (%)、 実施例 6 ~ 8及び比較例 3〜 5における収率計算方法は以下の通りである。
(収量/ NMRより計算した分子量) X (NMRから計算した重合度) = (重合した 1, 3— PDのモノレ数)
(重合した 1, 3— PDのモル数) / (原料 1, 3— PDのモノレ数) X 1 00 = 収率 (%)
<分子量及び分子量分布 >
精製ポリ トリメチレンエーテルグリコールの分子量 (実施例 1〜 5及び比較例 1〜2) は、 下記の条件でゲルパーミエーシヨンクロマトグラフィーにより測定 した。
カラム : TSK-GEL GMHXL-N( 7. 8 mmID X 3 0. 0 cmL) (東ソ一株式会社) 質量較正: POLYTETRAHYDROFURA CALIBRATION KIT (Polymer
Laboratories)
(MP= 5 4 7000, 2 8 3 00 0, 9 9 900, 6 7 5 0 0, 3 5 5 0 0, 1 5 0 0 0, 6 00 0, 2 1 70, 1 6 0 0, 1 3 00) 溶媒 : テトラヒ ドロフラン また、 Mn、 Mwはそれぞれ下記を意味する。
Mn:ゲルパーミエーションクロマトグラフィ一により算出した数平均分子量 (ポリテトラヒドロフランを基準に算出) 。
Mw:ゲルパーミエーシヨンクロマトグラフィーにより算出した重量平均分子 量 (ポリテトラヒドロフランを基準に算出) 。 重合反応後の粗ポリ トリメチレングリコールポリエーテルの分子量 (実施例 6 及ぴ比較例 3〜 5) は核磁気共鳴法 (NMR) により測定した。 クロ口ホルム- d (ACROS ORGANICS社製 TMS 0.03v/v%, 99.8+atm% D、 lot : AO 18554501) に試料を溶解させ、 — NMR装置 (BRUKER 製 AVANCE400 (400MHz)) により分析した。 生じた硫酸エステルがすべて加水分 解されたときの分子量として以下の式により求めた (ppmは TMS基準)。
分子量 = 〔 58 X(1.8ppmのメチレンピーク積分値 I 2) I {(3.8ppmのメチレ ンピーク積分値 +4.3〜4.4ppmのメチレンピーク積分値) /4}〕 +18 )
<ノ、一ゼン色数 >
ハーゼン色数はキシダ化学社製 APHA色数標準液 (NO. 500) を希釈 して調製した標準液を用い、 J I S KO 071 _ 1に準じて比色して求めた。 色差計は日本電色工業株式会社製 測色色差計 ΖΕ-2000を用い、 セル厚み: 10mm の条件で測定した。 実施例 1
蒸留管、 窒素導入管、 温度計および攪拌機を備えた 200m 1四つ口フラスコ に、 窒素を 10 ONm 1/分で流通させながら、 100. O gの 1, 3—プロパ ンジオール(アルドリツチ社製試薬、純度 98%、 B a t c h# 00312 J O) および 0. 5 gの水酸化ナトリウムを仕込んだ。 フラスコをオイルパスに入れて 加熱し、 液温が 147きになったならば温度を 147〜 152 °Cに保持した。 2 時間後、 フラスコを取り出して室温まで放置して冷却した。 次いで減圧下、 約 1 00°Cにて単蒸留した。 初留分約 10 gをすて、 留出物 81. 2 gを回収した。 このとき蒸留釜に残留している塩基は、 蒸留釜に残留している 1, 3—プロパン
ジオールに全て溶解しており、 その濃度は約 1 Omo 1 %となる。 この 1, 3— プロパンジオールを標準条件で重合し、 次いで前述の精製操作 1に従って精製を 行つた結果を表 1に示す。 比較例 1
水酸化ナトリゥムの代わりに、 パーフルォロスルフォン酸基を含有する樹脂で あるナフイオン NR 50 (7〜9me s h) 1. 0 gを用い、 かつ蒸留する前に ナフイオンを取り除いた以外は、 実施例 1と全く同様にして 1, 3 _プロパンジ オールの処理を行い、 留出物 77. 5 9 gを回収した。 この 1, 3—プロパンジ オールを標準重合条件で重合し、 次いで前述の精製操作 1に従って精製を行った 結果を表 1に示す。 比較例 2
実施例 1および比較例 1で精製処理に用いたのと同じ 1, 3—プロパンジォー ルを精製することなくそのまま標準重合条件で重合し、 次いで前述の精製操作 1 に従って精製を行った結果を表 1に示す。 実施例 2
還流冷却器、 窒素導入管、 温度計および攪拌機を備えた 20 Om 1四つロフラ スコに、 窒素雰囲気下に、 100. O gの 1, 3—プロパンジオール (アルドリ ツチ社製試薬、純度 98 %、 B a t c h # 003 1 2 J O) および 0. 66 gの 炭酸ナトリウムを仕込んだ。 フラスコをオイルパスに入れて加熱し、 液温が 14 7 °Cになったならば温度を 147〜 1 52 °Cに保持した。 2時間後、 フラスコを 取り出して室温まで放置して冷却した。 次いで減圧下、 約 100°Cにて単蒸留し た。 初留分約 10 gをすて、 留出物 8 1. 6 gを回収した。 このとき蒸留釜に残 留している塩基は、 蒸留釜に残留している 1, 3 _プロパンジオールに全ては溶 解していない。 溶解していない分も含めた炭酸ナトリウムの濃度は約 5mo 1 % であり、 溶解していない分も含めたカチオン濃度は約 1 lmo 1 %となる。
この 1, 3—プロパンジオール 50 gを、 蒸留管、 窒素導入管、 温度計おょぴ攪 拌機を備えた 10 Om 1四つ口フラスコに、 窒素を 10 ONm 1 /分で供給しな がら仕込んだ。 攪拌しながらこれに 95重量%濃硫酸 0. 69 7 gをゆっくりと 添加した。フラスコをオイルバスに入れ 1 5 5°Cに加熱した。約 30分で昇温し、 液温を 1 55°C± 2°Cに調節して 9時間保持して反応させたのち室温に放置して 冷却した。 反応の間に生成した水は窒素に同伴させて留去した。 室温まで冷却さ れた反応液を、 50 gのテトラヒドロフランを用いて 30 Om 1のナス型フラス コに移し、 これに 50 gの脱塩水を加えて 1時間緩やかに還流させて硫酸エステ ルの加水分解を行った。室温まで放置して冷却したのち、 2層に分離した下層(水 層) を除去した。 上層 (油層) に 0. 5 gの水酸化カルシウムを添加して室温で 1時間攪拌したのち、 50 gのトルエンを加えて 60°Cに加熱して減圧下にテト ラヒドロフラン、 水およびトルエンを留去した。 得られた油層を 100 gのトル ェンに溶解し、 0. 45 μΐηのフィルターで濾過して不溶物を除去した。 濾液を 60°Cに加熱し、 減圧下にトルエンを留去した。 得られた油層を 6時間真空乾燥 したものを精製ポリ トリメチレンエーテルダリコールとした。結果を表 1に示す。 実施例 3
炭酸ナトリウムの代わりに、 水酸化カルシウム 0. 93 gを用いた以外は、 実 施例 2と全く同様にして 1, 3—プロパンジオールの処理を行い、 留出物 80· 8 gを回収した。 このとき蒸留釜に残留している塩基は、 蒸留釜に残留している 1, 3—プロパンジオールに全ては溶解していない。 溶解していない分も含めた 水酸化カルシゥムの濃度は約 9 m o 1 %となる。
この 1, 3—プロパンジオールを実施例 2と全く同様にして重合させた結果を表 1に示す。 実施例 4
炭酸ナトリ ウムの代わりに、 炭酸カリウム 0. 86 gを用いた以外は、 実施例 2と全く同様にして 1, 3—プロパンジオールの処理を行い、 留出物 74. 6 g
を回収した。
このとき蒸留釜に残留している塩基は、 蒸留釜に残留している 1, 3—プロパン ジオールに全て溶解していた。 この時の炭酸カリウムの濃度は約 3mo 1 %であ り、 塩基濃度 (カチオン成分の濃度) は約 6 mo 1 %となる。
この 1 , 3—プロパンジオールを実施例 2と全く同様にして重合させた結果を表 1に示す。 実施例 5
炭酸ナトリウムの代わりに、 水酸化カリウム 0. 7 O gを用いた以外は、 実施 例 2と全く同様にして 1, 3—プロパンジオールの処理を行い、 留出物 82. 6 gを回収した。
このとき蒸留釜に残留している塩基は、 蒸留釜に残留している 1, 3—プロパン ジオールに全て溶解していた。 この時の塩基濃度は約 1 lmo 1 %となる。 この 1, 3—プロパンジオールを実施例 2と全く同様にして重合させた結果を表 1に示す。
重合体収率 M Mn Mw/Mn APHA (%) 色数 実施例 97 3523 1 773 1. 99 1 50
1
比較例 96 3430 1 700 2. 02 350
1
比較例 96 359 1 1 733 2. 07 > 500
2
実施例 94 3693 1867 1. 98 1 50 2
実施例 94 3452 18 10 1. 9 1 1 50 3
実施例 94 3505 1 852 1. 89 1 50 4
実施例 94 36 1 7 1 909 1. 90 1 50 5 実施例 6
還流冷却器、 窒素導入管、 温度計および攪拌機を備えた 20 Om 1四つロフラ スコに、 窒素雰囲気下に、 100. 6g の 1, 3—プロパンジオール (アルドリ ツチ社製試薬、 純度 98%、 Batch#10508AB) および 0. 67 gの水酸化カリゥム
(純正化学製特級、 純度 85%以上、 lot:2E1459) を仕込んだ。 フラスコをオイル バスに入れて加熱し、 反応器内温が 1 50°Cに到達してから 2時間保持し、 加熱 処理を行った。フラスコを取り出して室温まで放置して冷却した。次いで減圧下、 反応器内温約 100°Cにて単蒸留した。 初留分約 10 gを捨て、 留出物 68. 2 gを回収した。 加熱処理時の塩基濃度は 0. 9mo 1 %、 蒸留終了時の塩基濃度 は約 4 m o 1 %となつた。
この 1, 3—プロパンジオール 50 gを、 テープヒーターで 100°Cに保温し た蒸留管、 窒素導入管、 温度計および攪拌機を備えた 10 Om 1四つ口フラスコ に、 窒素を 10 ONm 1 Z分で供給しながら仕込んだ。 攪拌しながらこれに 9 5 重量%濃硫酸 0. 6 97 gをゆっくりと添加した。 フラスコをオイルバスに入れ て加熱し、 約 30分で反応器内温が 165 °Cに到達し、 その後 7時間加熱 ·攪拌
を保持して反応させた。 室温に放置して冷却した。 反応の間に生成した水は窒素 に同伴させて留去した。 NMRより計算した分子量、 色差計より測定した APHA 色数を表 2に示す。 比較例 3
1, 3—プロパンジオールを 101. 1 g、水酸化力リゥムを 0. 66 gとし、 オイルバスの温度を 235。C、 1, 3—プロパンジオールの加熱処理温度を 20 3°Cとした以外は、実施例 6と全く同様にして 1, 3—プロパンジオールの加熱■ 蒸留を行い、 留出物 70. 0 gを回収した。 この 1, 3—プロパンジオールを実 施例 6と全く同様にして重合させた結果を表 2に示す。 このとき、 塩基濃度は、 加熱処理時に於いては 0. 9mo 1 %、 蒸留終了時には約 4mo 1 %となった。 比較例 4
1 , 3—プロパンジオールを 100. 7 g、水酸化カリウムを 0. 72 gとし、 1 , 3—プロパンジオールの加熱処理温度を 70°Cとした以外は、 実施例 6と全 く同様にして 1, 3—プロパンジオールの加熱 '蒸留を行い、 窑出物 68. 0 g を回収した。 この 1, 3—プロパンジオールを実施例 6と全く同様にして重合さ せた結果を表 2に示す。 参考例 1
250 gの 1, 3—プロパンジォーノレ (A 1 d r i c h製、 10508 AB) に 1. 75 gの水酸化カリウムを加え、 実施例 1と同様に加熱処理、 蒸留した。 初期に流出した 1, 3—プロパンジオール 10 g (仕込みの 1, 3—プロパンジ オールに対し 4%) と本留 220 g (仕込みの 1, 3—プロパンジオールに対し 88%) のそれぞれにっき、 20w t°/。THF (キシダ化学製、 特級、 0. 03 w t%BHT含有)溶液を調製し、下記に示す GC条件で分析を行ったところ 1, 3—プロパンジオールの面積に対する、 2—ヒドロキシルェチル一 1, 3—ジォ キサンの面積は、 前者では 0. 2%であったのに対し後者では、 0. 08%であ
つた。
2—ヒドロキシルェチル 1, 3—ジォキサンは、 水及び酸触媒の存在下、 3 - ヒドロキシプロパノンに変化し、 着色原因物質と考えられる。 ゆえに、 2—ヒ ド ロキシルェチルー 1 , 3—ジォキサンをできるだけ除去しておくことは着色を防 ぐ意味で有効な方法である。
GC分析条件
カラム HR—20M 膜厚 0. 25 μπι、 0. 25 mm I D X 30 m キャリアー 窒素 約 1. 5m 1 i n、 スプリ ッ ト比 約 40 オーブン温度 50。C一 (10 °C/ i n昇温) — 230 °C (10分保持) 注入口、 検出器温度 240°C 比較例 5
還流冷却器、窒素導入管、温度計および攪拌機を備えた 1L四つ口フラスコに、 窒素雰囲気下に、 700 gの 1, 3—プロパンジオール(アルドリッチ社製試薬、 純度 98%、 Batch#04427AB) および 4. 9 gの水酸化カリウムを仕込んだ。 フ ラスコをオイルバスに入れて加熱し、 反応器内温が 1 50°Cに到達してから 2時 間保持し、加熱処理を行った。フラスコを取り出して室温まで放置して冷却した。 次いで減圧下、 反応器内温約 100°Cにて単蒸留した。 軽沸留分を捨てずに全て 回収し、 留出物 67. 5 gを回収した。 この 1, 3—プロパンジオールを実施例 6と全く同様にして重合させた結果を表 2に示す。 表 2
1,3-プロパンジオール NMRより計算した APHA色数 加熱処理温度 (°C) 分子量
実施例 6 150 1633 320
比較例 3 203 1650 470
比較例 4 70 1865 420
比較例 5 150 1771 ≥500
く示差走査熱量計 (DSC) による釜残液の熱分析実施例 >
以下の実施例における D S C分析は、 以下の条件にて測定した。
測定装置:セイコーィンスツルメント社 D S C一 6200
キヤリプレーション方法:
セイコーインスツルメント社製 S US密封セル (SUS 304製、 容積 (15 μ 1 ) ) を使用
温度、 熱量共に、 I n, Sn, P b , Z nの 4種の金属にて校正。
試料容器:セイコーインスツルメント社製 SU S密封セル (SUS 304製、 容 積 ( 15 μ 1 ) )
サンプリング雰囲気:充分に乾燥窒素 (純度 99. 999%以上、露点一 60°C) で置換された雰囲気内でサンプリング実施。
試料量:約 2 m g
測定温度: 30〜500°C
昇温温度: 10 °CZm i n
測定雰囲気:窒素 (純度 99. 999。/。以上、 露点一 60°C) 実施例 7
蒸留管、 窒素導入管、 温度計および攪拌機を備えた 30 Om 1四つ口フラスコ に、 窒素雰囲気下に、 150. O gの 1, 3 _プロパンジオール (アルドリッチ 社製試薬、純度 98%、 B a t c h# 10508 AB) および 1. 07 gの水酸 化カリウムを仕込んだ。 フラスコをオイルバスに入れて加熱し、 液温が 147°C になったならば温度を 147〜 152 °Cに保持した。 2時間後、 フラスコを取り 出して室温まで放置して冷却した。 次いで減圧下、 約 100°Cにて単蒸留した。 初留分 6. 7 gをすて、 留出物 127 gを回収した。 このときの釜残は、 残留 K OH分を除くと 13. 38 gとなり、 塩基濃度は 1 Omo 1 °/0となった。
この釜残液につき D S C分析をおこなったところ、 発熱ピークがみとめられ、 約 240°Cまでの累積発熱量が l O O JZgとなり、 これ以上の温度で蒸留すると 暴走反応となる危険性が認められた。 また、 累積発熱量が 50 jZgとなる温度
は約 190°Cであり、 より安全に蒸留するにはこれより低い温度を採用すること が好ましいことがわかった。 実施例 8
実施例 7と同様に 1, 3—プロパンジオールを塩基処理、 蒸留し、 蒸留釜中に 残こった 1, 3—プロパンジオール液が初期の 30 %になった時点、初期の約 5 % 以下になった時点のサンプルを抜き出し、 D S C分析をおこなった。
初期の 30%になった時点の塩基濃度は約 3mo 1 %、 初期の約 5%以下にな つた時点の塩基濃度は 16m o 1 °/0以上となる。
前者では、 250°C付近までの累積発熱量が 100 J Zgであり、また後者では、 さらに大きな発熱ピークが観測され、 200°C付近までの発熱量が 100 j/g となり、 これ以上の温度で蒸留すると暴走反応となる危険性が認められた。 また、 累積発熱量が 50 J/gとなる温度は前者で 200°C、 後者で 170°C であり、 より安全に蒸留するにはこれより低い温度を採用することが好ましいこ とがわかった。 本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、 本発明の意図と範囲を離れる ことなく様々な変更および変形が可能であることは、 当業者にとって明らかであ る。
なお、 本出願は、 2003年 5月 8日付けで出願された日本特許出願 (特願 2 003- 130643) に基づいており、 その全体が引用により援用される。 ぐ産業上の利用可能性 >
本発明によれば、 粗 1, 3—プロパンジオールから、 脱水縮合反応により着色 の少ないポリ トリメチレンエーテルグリコールを与える、 精製 1, 3—プロパン ジオールを効率よく安全に取得することのできる方法を提供することができる。