塩ストレス耐性を付与する遺伝子 技術分野
本発明は、 塩ス トレス耐性を付与する遺伝子、 及ぴ該遺伝子を導入した形質転 換植物等に関する。
明
背景技術
植物が受ける環境ス トレスには、 塩、 乾燥書、 高温、 低温、 強光、 空気汚染等が あるが、 農業生産の観点から最も問題となっているのが、 塩害及び乾燥である。 塩害はもともと塩分の高い地域のみならず、 灌漑を行うことによりそれまで問題 のなかった農地においても発生している。 現在、 アジアでは 1200万へクタールの 耕地が塩害や干ばつの被害を受けており、 実際に 950万へクタールの耕地が塩害 のため未使用のままになっている。 特に、 イネはアジアにおける主要穀物である のでイネに塩ストレス耐性が付与できれば未使用の農地も食料生産の場に変えら れて、 世界の穀物生産の安定化に貢献できる。 これまで、 劣悪環境下や不良土壌 でも栽培可能な環境ストレス耐性植物を遺伝子組換え技術を駆使して作出する 種々の試みが検討されている。 例えば、 塩ス トレスによって誘導される遺伝子を 単離し、 該遗伝子を発現させることで、 耐塩性植物の作出が可能になると考えら れる。 塩ストレス耐性付与遺伝子としてこれまでコゥライシバ由来のベタイン合 成酵素遺伝子 (特開 2001- 309789号) 、 Arthrobacter globiformis由来のコリ ン ォキシダーゼ遺伝子 (Mohanty A., et al., Theor. Appl. Genet. , 106, pp. 51- 57 (2002) ) 、 イネ由来の葉緑体型グルタミンシンターゼ (Hoshida H. , et al. , Plant Mol. Biol., 43, pp. 103- 111 (2000) ) 、 イネ由来の転写活性因子 (0s DREB) (Dobouzet J. G. , et al., Plant J. 33, pp. 751-763 (2003) ) 、 ホソバ ノハマァカザ由来の Na+ZH+アンチポーター遺伝子 (特開 2000- 157287号) 等が 知られている。 また、 糖代謝 ·合成に関与する酵素遺伝子では、 大腸菌由来のト レハロース合成関連遺伝子 (jang i. e. , et al. , Plant Physiol. , 131, pp.
516-524 (2003) ) 、 UDPガラク トースからガラクチノールを合成するガラクチノ ール合成酵素 (AtGolS)遺伝子が、 乾燥 ·塩 ·低温といった水ストレス耐性付与 に関与することがシロイヌナズナにおいて報告されている (細胞工学, Vol. 21,
No. 12, pp. 1455-1459 (2002); Teruaki T., et al. , The Plant Journal, 29 (4), pp. 417-426 (2002) ) 。 双子葉植物では、 シロイヌナズナ由来の Na+/H+アンチポ 一ター遺伝子にて形質転換した トマ ト (Zhang H. X., Blumwald E. , Nature
Biotechnol. , 19, pp. 765-768 (2001) ) や Brassica植物 (Zhang Η· X. , et al. ,
Proc. Natl. Acad. Sci USA. , 98, pp. 12832-12836 (2001) ) において 200mMで 10 週間にわたって塩ストレス耐性を評価した例があり、 果実や種子の収穫が報告さ れている。 しかしながら、 単子葉形質転換植物では移植から種子を収穫するまで という長期間の耐塩性を付与した遺伝子はない。 例えば、 形質転換ィネで塩スト レス耐性を示した条件としては lOOmMで 13日間、 150mMで 2週間、 300mMで 3日間と 短期である。 従って、 苗の移植から種子の収穫までといった数週間から数力月に わたる実際の生産工程に対応した耐塩性形質を上記の遗伝子群が付与できるとは 判断し難いのが現状である。
UDPグルコース 4—ェピメラーゼは、 UDPグルコースから UDPガラク トース、 逆 に UDPガラク トースから UDPダルコースの両方向の反応を触媒する酵素である。 こ れまで植物由来の UDPダルコース 4—ェピメラーゼ遺伝子 (以下、 UGE遺伝子とも いう) と しては、 例えばシロイヌナズナ、 グァーなどから単離されている
(Reiter W. D., Vanzin G. F., Plant Mol. Biol., 47, pp. 95— 113 (2001) ) 。 しかしながら、 塩ストレス耐性を付与することのできる UGE遺伝子についてはこ れまで知られていない。 また、 塩ス トレスによって UGE遺伝子が誘導される植物 種についてもこれまで報告がない。
ガラク トースは双子葉植物シロイヌナズナの芽生えにぉレ、て茎葉部の生長を抑 制する。 これは、 外から与えたガラク トースを植物が利用しきれず、 UDP—ガラ ク トースゃガラタ トースー 1ーリン酸が蓄積したことによると考えられている。 しかしながら、 シロイヌナズナの UGE遺伝子の 35Sと nosTの発現カセットを導入し た植物体では、 ガラク トース存在下でも生長が抑制されにくいことが報告されて おり、 UGE遺伝子の形質転換植物用選抜マーカーとしての有用性が指摘されてい
る (Reiter W. D. , Vanzin G. F., Plant Mol. Biol., 47, pp. 95 - 113 (2001) ; Dorraann P. & Benning, C., The Plant Journal, 13, pp. 641-652 (1998)参照) 。 また、 上記 UGE遺伝子導入植物体がガラク トース存在下で成長が抑制されないの は UGE遺伝子が蓄積した UDP -ガラタ トースを UDP -グルコースに変換したためと考 えられている。 一方、 ガラク トースは、 単子葉植物において芽生えの一部の組織、 幼葉鞘又は鞘葉、 種子根のホルモン (オーキシンゃジべレリンなど) による伸長 生長の抑制作用があるこ とが報告されているが ( Inouhe M. , et al. , Physiologia Plantalum, 66, pp. 370-376 (1986) )、 組織培養に関わる生理現象、 例えば発根に対する影響などについての研究報告はない。 また、 イネ科を含む単 子葉植物に対しては、 これまで UGE遺伝子を導入し、 ガラク トース存在下におけ る生育を調べた実験報告はない。
さらに、 近年、 遺伝子組換え農作物 (GM0)の安全性に関して最も問題視されて いるのが、 カナマイシン耐性遺伝子、 ハイグロマイシン耐性遗伝子等の抗生物質 耐性遺伝子がその組換え農作物に残存している点である。 この遺伝子は、 目的遺 伝子の導入のうまくいった細胞を初期段階で選り分けるための選抜マーカ一 (マ 一力一遺伝子) と呼ばれるもので、 細胞から植物体が再生し、 さらに発根、 馴ィ匕 した後は不要なものである。 一方、 人体に影響の少ないと考えられる糖による選 抜方法も近年報告されている。 これらは、 微生物の糖異性化酵素遗伝子をマーカ 一とし、 シロース (Haalarup A. , et al. , Plant し ell Reports, 18, pp. 76- 81 (1998) )やマンノ ース ( Joersbo M., et al. , Molecular Breeding, 4, pp. 111-117 (1998) )により選抜できる。 しかし、 これらのマーカー遺伝子は微生 物由来であり、 従来、 人間が食物として摂取したことのない DNAであるため安全 性については 100%確証があるとは言い難い。 従って、 抗生物質耐性遺伝子に代 わる安全性の高い選抜マーカー、 それを用いた発現用ベクターの確立が望まれて いる。 従って、 本発明の課題は、 長期間に渡って植物に塩ス トレス耐性を付与するこ とが可能な新規な遺伝子、 及びその遺.伝子を導入した塩ストレス耐性形質転換植 物等を提供することにある。 本発明の別の課題は、 抗生物質耐性遺伝子に代わる
安全性の高い選抜マーカーを提供することにある。 発明の開示
本発明者らは、 上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、 海水耐性シバ
(seashore paspalum) に塩ス トレスによって誘導される遺伝子があることに着 目し、 そのクローニングを試みたところ、 その遺伝子が UDPグルコース 4ーェピ メラーゼをコ一ドする遺伝子であることを見出し、 本発明を完成させるに至った。 即ち、 本発明は以下の発明を包含する。
(1) 以下の(a)、 (b)、 又は(c)に示すタンパク質をコードする遺伝子。
(a) 配列表の配列番号 2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質
(b) 配列表の配列番号 2に示すァミノ酸配列において 1若しくは数個のァミノ酸 が欠失、 置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、 かつ植物に塩ス ト レス 耐性を付与する活性を有するタンパク質
(c) 配列表の配列番号 2に示すァミノ酸配列において 1若しくは数個のァミノ酸 が欠失、 置換若しくは付加されたァミノ酸配列からなり、 かつ UDPグルコース 4 一ェピメラーゼ活性を有するタンパク質
(2) 以下の(d)、 (e)、 又は(f)に示す D N Aからなる遺伝子。
(d) 配列表の配列番号 1に示す塩基配列からなる D N A
(e) 配列表の配列番号 1に示す塩基配列からなる D N Aと相補的な塩基配列から なる D N Aとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、 かつ植物に塩スト レス耐性を付与する活性を有するタンパク質をコードする D N A
(f) 配列表の配列番号 1に示す塩基配列からなる D N Aと相補的な塩基配列から なる D N Aとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、 かつ UDPダルコ一 ス 4—ェピメラーゼ活性を有するタンパク質をコードする D N A
(3) (1)又は(2)に記載の遺伝子を含む組換えベクター。
(4) (1)若しくは(2)に記載の遺伝子、 又は(3)に記載の組換えベクターを導入し た形質転換植物。
(5) (1)若しくは(2)に記載の遺伝子、 又は(3)に記載の組換えベクターを導入し た塩ストレス耐性形質転換植物。
(6) 植物が単子葉植物である、 (4)又は(5)に記載の形質転換植物。
(7) 単子葉植物がイネ科、 ユリ科、 又はショウガ科に属する植物である、 (6)に 記載の形質転換植物。
(8) イネ科に属する植物が、 イネ、 ォォムギ、 コムギ、 トウモロコシ、 サトウ キビ、 シパ、 ソルガム、 ァヮ、 及ぴヒェから成る群から選択される、 (7)に記載 の形質転換植物。
(9) 植物が双子葉植物である、 (4)又は(5)に記載の形質転換植物。
(10) 双子葉植物が、 アブラナ科、 ナス科、 マメ科、 ゥリ科、 セリ科、 キク科、 ァオイ科、 ァカザ科、 フトモモ科、 又はャナギ科に属する植物である、 (9)に記 載の形質転換植物。
(11) (1)若しくは(2)に記載の遺伝子、 又は(3)に記載の組換えベクターを植物 に導入することを特徴とする、 植物に塩ストレス耐性を付与する方法。
(12) (1)又は(2)に記載の遺伝子を含有する形質転換植物選抜用マーカー。
(13) 植物が単子葉植物である、 (12)に記載の形質転換植物選抜用マーカー。
(14) 単子葉植物がイネ科、 ユリ科、 又はショゥガ科に属する植物である、 (13) に記載の形質転換植物選抜用マーカー。
(15) イネ科に属する植物が、 イネ、 ォォムギ、 コムギ、 トウモロコシ、 サトウ キビ、 シバ、 ソルガム、 ァヮ、 及びヒェから成る群から選択される、 (14)に記載 の形質転換植物選抜用マーカー。
(16) 植物が双子葉植物である、 (12)に記載の形質転換植物選抜用マーカー。
(17) 双子葉植物が、 アブラナ科、 ナス科、 マメ科、 ゥリ科、 セリ科、 キク科、 ァオイ科、 ァカザ科、 フトモモ科、 又はャナギ科に属する植物である、 (16)に記 載の形質転換植物選抜用マーカー。
(18) (1)若しくは(2)に記載の遺伝子、 又は(3)に記載の組換えベクターを植物 に導入し、 その植物をガラクトース含有培地にて培養し、 ガラクトース耐性の有 無を指標に前記遺伝子が導入された植物として選抜することを含む、 形質転換植 物の選抜方法。 図面の簡単な説明
図 1は、 Seashore Paspalum シバの第 1葉から第 3葉、 及び茎と節を含む切片 を示す。
図 2 Aは Ps ABAプローブによるノーザン解析結果、 図 2 Bは、 Ps UGEプローブ によるノーザン解析結果をそれぞれ示す。
図 3は、 Ps UGEl及び Ps UGE2の植物由来の UGEホモログとの系統樹 (アミノ酸 配列の比較) を示す。
図 4は、 系統樹作成で分類されたグループ 1に属する UGEホモログと Ps UGEl及 ぴ Ps UGE2とのアミノ酸比較を示す。
図 5は、 植物用発現ベクターの Ps UGElaZpBI221の構築手順を示す。
図 6は、 ゲノム PCRによる各種イネ品種における Ps UGE遺伝子検出結果を示す (レーン 1 :ベクター、 レーン 2 :非开質転換日本晴、 レーン 3 : Ps UGE形質転 換イネ、 レーン 4 : 日本晴、 レーン 5 : IR28、 レーン 6 : コシヒカリ、 レーン 7 :ポッカリ) 。
図 7は、 Ps UGE遺伝子導入日本唷 To世代、 該日本晴 To世代とコシヒカリを交配 した F1世代におけるゲノム PCRによる Ps UGE遺伝子検出結果を示す (上段: 日本 晴 To世代、 下段: 日本晴 To世代とコシヒカリとの交配 F1世代) 。
図 8は、 日本晴 To世代における RT- PCRによる Ps UGE遺伝子の発現確認を示す。 図 9は、 Ps UGE遗伝子導入ィネ (35S : Ps UGEla : nosT)、 非形質転換イネカルス 再分化個体 (コントロール) について、 各濃度のガラク トース添加培地で生育さ せた場合の発根の写真を示す。
図 1 0は、 Ps UGE遺伝子導入イネ (35S : Ps UGEla : nosT)、 非形質転換イネカル ス再分化個体 (コントロール) について、 ガラク トース添加培地で生育させた場 合の発根の写真、 不定根の数、 不定根の最大長 (cm)を示す。
図 1 1は、 Ps UGE遺伝子導入イネ (35S : Ps UGEla : nosT;)、 非形質転換イネカル ス再分化個体 (コントロール) について、 ガラク トース添加培地で生育させた場 合の苗条の写真、 苗条の最大長 (cm)を示す。
図 1 2は、 Ps UGE遺伝子導入日本晴 To世代の塩ス トレス (NaCl 3000ppm)耐性 評価試験の状況を示す。
図 1 3は、 Ps UGE遺伝子導入日本晴 To世代の塩ストレス (NaCl 3000ppm)耐性
評価結果を示す。
図 1 4は、 Ps UGE遺伝子導入イネの F1世代 (日本晴 Toとコシヒカリの交配) の 塩ス トレス (NaCl 3000ppm)耐性評価結果を示す。
図 1 5は、 Ps UGE遺伝子導入イネ (F1世代)の塩ス トレス条件での栽培 6週間後 の出穂状態を示す。
図 1 6は、 ガラク トースで選抜された個体のゲノム PCRの結果を示す (上段: Ps UGE遺伝子、 下段:ハイグロマイシン抵抗性遺伝子) 。
図 1 7は、 ゲノムサザンハイブリダィゼーシヨンによる Ps UGE遺伝子導入シロ ィヌナズナにおける Ps UGE遺伝子検出結果を示す (レーン 1 :非形質転換体、 レ ーン 2〜 5 : Ps UGE形質転換体) 。
図 1 8は、 RT- PCRによる Ps UGE遺伝子導入シロイヌナズナにおける Ps UGE遺伝 子発現確認結果を示す (レーン 1 :ベクター (pBI 122) 、 レーン 2 : Ps UGE形質 転換体 (Ps 6-3)、 レーン 3 : Ps UGE形質転換体 (Ps 10-1)、 レーン 4 : Ps UGE 形質転換体 (Ps 15-5) 、 レーン 5 :铸型なし、 レーン 6 :プライマーなし) 。 図 1 9は、 Ps UGE遺伝子導入シロイヌナズナについて、 ガラクトース添加培地 ( Aのみシュクロース添加培地) で生育させた場合の植物体の写真を示す (A: 非形質転換体、 B :非形質転換体、 C :ベクター (pBI 122) 、 D : Ps UGE形質転 換体 ( Ps 6-3)、 E : Ps UGE形質転換体 (Ps 11-1)、 F : Ps UGE形質転換体 (Ps 15-5) ) 。
図 2 0は、 Ps UGE遺伝子導入シロイヌナズナの塩ストレス条件での栽培 7日後 の生育状態を示す (1 :非形質転換体、 2 : Ps UGE形質転換体 (Ps 6-3)、 3 : Ps UGE形質転換体 (Ps 10-1)、 4 : Ps UGE形質転換体 (Ps 11-1 ) 、 5 : Ps UGE 形質転換体 (Ps 15-5) )。 以下、 本発明を詳細に説明する。 本願は、 2003年 4月 17 日に出願された日本 国特許出願 2003- 113194号、 及び 2004年 3月 17日に出願された日本国特許出願 2004-075932 号の優先権を主張するものであり、 該特許出願の明細書及ぴ Z又は 図面に記載される内容を包含する。
1 . 遺伝子のクローニング
(1) cDNAライブラリーの作製及びスクリーニング
本発明の塩ストレス耐性を付与する遺伝子は、 例えば以下のようにして取得す ることができる、 まず、 海水又は塩ス トレスを加えた状態 (塩処理区) と加えな い状態 (未処理区) でそれぞれ栽培した海水耐性シバ (seashore paspalum) か ら トータル RNAを調製し、 オリゴ dTを用いて作成した一本鎖 cDNAを鎳型として PCR を行い、 塩処理プローブと対照区プローブを作成する。
次に、 これらの 2種のプローブ (塩処理プローブと対照区プローブ) を用いて
、 seashore paspalum cDNAライブラリ一力 らディファレンシャノレスクリーニング 法によって塩処理区プローブでのみ特異的に検出されるクローンを選抜する。 次 に、 そのクローンに含まれる c D N Aの部分配列を基に作成したプローブを用い てノーザン解析を行い、 塩ス トレスによって seashore paspalumシバでは誘導さ れるがイネでは誘導されないクローンを二次選抜する。 最後にこのクローンをプ ローブとして用いて塩ストレスを加えた seashore paspalumシノ 力、ら調製した cDN
Aライブラリーから目的遺伝子を含むクローンを得る。
海水耐性シノ ( Seashore Paspalum ; Duedck A. E. and Peacock C. H. ,
Agronomy Journal vol. 77, pp. 47-50 (1985)などに記述)からの mRNAの抽出及 ひ cDNAライブラリ一の作製は常法に従って行うことができる。 mRNAの供給源とし ては、 例えば Seashore Paspalum の成葉が挙げられるが、 これに限定されるもの ではない。 mRNAの調製は、 通常行われる手法により行うことができる。 例えば、 上記供給源から、 グァニジゥムチオシァネート -トリフルォロ酢酸セシウム法な どにより全 RNAを抽出した後、 オリゴ dT-セルロースやポリ U-セファロ一ス等を用 いたァフィ 二ティーカ ラム法によ り 、 あるいはバッチ法によ り ポリ
(A) +RNA (mRNA)を得ることができる。 さらに、 ショ糖密度勾配遠心法等によりポ リ (A) +RNAを分画してもよい。
次いで、 得られた mRNAを鎵型として、 オリゴ dTプライマー及び逆転写酵素を用 いて一本鎖 cDNAを合成した後、 該一本鎖 cDNAから DNA合成酵素 I、 DNAリガーゼ及 ぴ RnaseH等を用いて二本鎖 cDNAを合成する。 合成した二本鎖 cDNAを T4DNA合成酵 素によって平滑化後、 アダプター (例えば、 EcoRIアダプター) の連結、 リン酸
化等を経て、 L gt l l等のベクターに組み込んで in vi troパッケージングすること によって cDNAライプラリーを作製することができる。 また、 えファージ以外にも プラスミ ドを用いて cDNAライブラリ一を作製することもできる。
上記のようにして得られる形質転換体から目的の DNAを有する株を選択するに は、 例えば、 えファージ (; L gt l l等)を用いた場合は、 L gt l lインサート増幅用 のプライマーを用いて PCRを行う方法を採用することができる。
ここで用いられる铸型 DNAとしては、 前記 mRNAから逆転写反応により合成され こ cDNAが挙げられる。 また、 プライマーとしては、 市販のランダムへキサマー等 が使用できる。
mRNAの抽出、 cDNAライブラリーの作製、 プローブの作製、 cDNAライブラリーの ディファレンシャルスクリ一ユングについては実施例 1に具体例を示した。 また クローニングされた遺伝子がシバ (paspalum) で塩ス トレス処理により誘導され ることは、 発現解析手法であるノ一ザンブロッ ト解析法又は RT- PCR法などにより 確認することができる。 その確認については、 実施例 3に具体例を示した。
(2) 塩基配列の決定
上記で得られた cDNAのクローンについて、 PCR産物を铸型にして cDNAの塩基配 列を決定する。 塩基配列の決定はマキサム-ギルバートの化学修飾法、 又は Ml 3フ ァ一ジを用いるジデォキシヌクレオチド鎖終結法等の公知手法により行うことが できるが、 通常は自動塩基配列決定装置 (例えば Appl i ed Bi osyst ems社製 ABI 373 シークェンサ一、 同社 310 DNAシークェンサ一等) を用いて配列決定が行われる, 得られた塩基配列を、 DNAS IS (日立ソフ トウェアエンジニアリング社) 等の DNA 解析ソフトによって解析し、 得られた DNA鎖中にコードされているタンパク質コ 一ド部分を見出すことができる。
本発明の塩ス トレス耐性を付与する遺伝子(以下、 Ps UGE遺伝子ともいう) は. 配列番号 2に示すァミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子である。 また、 本発明の遺伝子には、 配列番号 2に示すアミノ酸配列において 1若しく は数個のアミノ酸が欠失、 置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、 かつ 植物に塩ストレス耐性を付与する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子も 含まれる。
さらに、 本発明の遺伝子には、 配列番号 2に示すアミノ酸配列において 1若し くは数個のアミノ酸が欠失、 置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、 か つ UDPグルコース 4一ェピメラーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子 も含まれる。
ここで、 欠失、 置換若しくは付加されてもよいアミノ酸の数としては、 好まし くは、 1個から数個である。 例えば、 配列番号 2で表されるアミノ酸配列の 1〜 10個、 好ましくは 1〜5個のアミノ酸が欠失してもよく、 配列番号 2で表わされ るァミノ酸配列に 1〜10個、 好ましくは 1〜 5個のァミノ酸が付加してもよく、 あるいは、 配列番号 2で表されるアミノ酸配列の 1〜; 10個、 好ましくは 1〜5個 のアミノ酸が他のアミノ酸に置換してもよい。
また、 本発明の遺伝子には、 配列番号 2に示すアミノ酸配列と 65%以上の相同 性を有する遺伝子であって、 植物に塩ストレス耐性を付与する活性を有するタン パク質をコードする遺伝子も含まれる。
さらに、 本発明の遺伝子には、 配列番号 2に示すアミノ酸配列と 65%以上の相 同性を有する遗伝子であって、 UDPグルコース 4一ェピメラーゼ活性を有するタ ンパク質をコードする遺伝子も含まれる。
上記 65%以上の相同性は、 好ましくは 75%以上、 より好ましくは 85%以上、 最 も好ましくは 95%以上の相同性をいう。
ここで、 「植物に塩ストレス耐性を付与する活性」 とは、 植物に塩ストレスに 対する抵抗性を付与する活性をいう。 この活性は、 植物に対して NaCl濃度が 0 . 3〜 3 . 0 %の塩ストレスを 2週間〜 8週間継続的に与えた後の植物の生育状態の 目視観察、 生存率、 収量、 生長量などの項目を指標として判定することができる。 なお、 イネにおいては、 生育状態の目視観察結果は、 国際イネ研究所 (IRRI) の 耐塩性スコアを用いて数値化することもできる。 塩ス トレスの NaCl濃度は、 植物 により異なるが、 例えば、 イネでは 0 . 3 %、 ォォムギでは 1 %、 コムギおよび トウモロコシでは 0 . 3〜 1 %とすることができる。
活性の有無は、 上記の項目のいずれか一つ、 好ましくは 2つ以上の組合せにお いて得られた数値が、 対照となる植物 (非形質転換体など) のそれと比較して高 い場合は 「活性有り」 と判定できる。
上記の 「植物に塩ス トレス耐性を付与する活性を有する」 とは、 上記活性が、 配列番号 2に記載のァミノ酸配列を有するタンパク質が有する活性と実質的に同 等であることをいう。
また、 「UDPグルコース 4ーェピメラーゼ活性」 とは、 UDPグルコースから UDP ガラク トース、 逆に UDPガラク トースから UDPグルコースの両方向の反応を触媒す る活性をいい (下式参照) 、 UDPグルコース 4ーェピメラーゼは EC 5. 1. 3. 2で標 記される。
UDP-D-glucose ^ UDP-D-galactose 上記の 「UDPグルコース 4—ェピメラーゼ活性を有する」 とは、 上記反応の触 媒活性が、 配列番号 2に記載のァミノ酸配列を有するタンパク質が有する活性と 実質的に同等であることをいう。
上記 UDPグルコース 4—ェピメラーゼ活性は、 例えば、 Journal of Biological Chemi stry (1964) Vol. 239: 2469- 2481を参考に、 UDP -ガラク トースを基質とし て、 生成した UDP -グルコースを UDP-グルコースデヒ ドロゲナーゼによる NAD+から NADHの生成反応と共役させて、 分光光度計にて 340nmの吸光度上昇を測定するこ とにより、 その有無を確認することができる。
本発明の遺伝子はまた、 配列表の配列番号 1に示す塩基配列からなる D N Aと 相補的な塩基配列からなる D N Aとス トリンジェントな条件下でハイブリダィズ し、 かつ植物に塩ストレス耐性を付与する活性を有するタンパク質をコードする D N Aを含む。
本発明の遺伝子はまた、 配列表の配列番号 1に示す塩基配列からなる D N Aと 相補的な塩基配列からなる D N Aとストリンジ工ントな条件下でハイブリダイズ し、 かつ UDPグルコース 4—ェピメラーゼ活性を有するタンパク質をコードする D N Aを含む。
ここで、 ストリンジヱントな条件とは、 いわゆる特異的なハイブリッドが形成 され、 非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。 例えば、 相同性が高 い核酸、 すなわち配列番号 1で表わされる塩基配列と約 65%以上、 好ましくは約
75%以上、 より好ましくは約 85%以上、 最も好ましくは約 95%以上の相同性を有
する塩基配列からなる D N Aの相捕鎖がハイブリダィズし、 それより相同性が低 い核酸の相捕鎖がハイブリダィズしない条件が挙げられる。 より具体的には、 ナ トリウム濃度が 150〜900mM、 好ましくは 600〜900mMであり、 温度が 60〜68°C、 好 ましく 65°Cでの条件をいう。
上記アミノ酸の欠失、 付加、 及び置換は、 上記タンパク質をコードする遺伝子 を、 当該技術分野で公知の手法によって改変することによって行うことができる。 遺伝子に変異を導入するには、 Kunkel法又は Gapped duplex法等の公知手法又は これに準ずる方法により行うことができ、 例えば部位特異的突然変異誘発法を利 用した変異導入用キット (例えば Mutant- K (TAKARA社製) や Mutant- G (TAKARA社 製) )などを用いて、 あるいは、 TAKARA社の LA PCR in vitro Mutagenesis シリ 一ズキットを用いて変異が導入される。
いったん本発明の遺伝子の塩基配列が確定されると、 その後は化学合成によつ て、 又はクローニングされた cDNAを铸型とした PCRによって、 あるいはその塩基 配列を有する DNA断片をプローブとしてハイブリダイズさせることによって取得 することができる。 さらに部位特異的誘発等によつて前記遗伝子をコ一ドする修 飾された DNAを合成することができる。
2 . 組換えベクター及び形質転換植物の作製
(1) 組換えベクターの作製
本発明の組換えベクターは、 本発明の上記遺伝子を適当なベクターに揷入する ことによって作成できる。 本発明の遺伝子を植物細胞へ導入し、 発現させるため のベクターとしては、 pBI系のベクター、 pUC系のベクター、 pTRA系のベクターが 好適に用いられる。 pBI系及び pTRA系のベクターは、 ァグロパクテリゥムを介し て植物に目的遺: (云子を導入することができる。
特に pBI系のバイナリ一ベクター又は中間ベクター系が好適に用いられ、 例え ば、 ρΒΠ21、 ρΒΙ101、 ρΒΙ101. 2、 ρΒΙΙΟΙ. 3等が挙げられる。 バイナリーベクター とは大腸菌 (Escherichia coli) 及ぴァグロパクテリゥムにおいて複製可能なシ ャトルベクターで、 バイナリーベクターを保持するァグロバクテリムを植物に感 染させると、 ベクター上にある LB配列と RB配列より成るボーダー配列で囲まれた
部分の DNAを植物核 DNAに組み込むことが可能である (EMBO Journal, 10 (3) , 69 7-704 (1991) ) 。
一方、 pUC系のベクターは、 植物に遺伝子を直接導入することができ、 例えば 、 pUC18、 pUC19、 pUC9等が挙げられる。 また、 カルフラワーモザイクウィルス ( CaMV)、 ィンゲンマメモザィクウイノレス (BGMV)、 タバコモザィクウィルス (TMV ) 等の植物ウィルスベクターも用いることができる。
ベクターに本発明の遺伝子を挿入するには、 まず、 精製された DNAを適当な制 限酵素で切断し、 適当なベクター DNAの制限酵素部位又はマルチクローニンダサ ィ トに挿入してベクターに連結する方法などが採用される。
本発明の遺伝子は、 その遺伝子の機能が発揮されるようにベクターに組み込ま れることが必要である。 そこで、 ベクターには、 本発明の遺伝子の上流、 内部、 あるいは下流に、 プロモーター、 ェンハンサー、 ターミネータ一、 ポリ A付加シ グナル、 5' -UTR配列などを連結することができる。 なお、 通常であれば選択マーカーとして、 例えばハイグ口マィシン耐性遗伝子 、 カナマイシン耐性遺伝子、 ビアラホス耐性遺伝子等が必要であるが、 本発明に おいては目的とする Ps UGE遺伝子が導入されたクローンはガラク トース含有培地 における生育性を指標に選抜できるので選択マーカーは必ずしも必要としない。
「プロモーター」 としては、 植物細胞において機能し、 植物の特定の組織内 あるいは特定の発育段階において発現を導くことのできる D N Aであれば、 植 物由来のものでなくてもよい。 具体例としては、 カリフラワーモザイクウィル ス(CaMV) 35Sプロモーター、 ノパリン合成酵素遺伝子のプロモーター (Pnos)、 トウモロコシ由来ュビキチンプロモーター、 イネ由来のァクチンプロモーター 、 タバコ由来 pRタンパク質プロモーター等が挙げられる。
また、 構成的に植物で発現するプロモーターだけでなく、 塩ス トレスで誘導さ れることが明らかになつている遺伝子のプロモーター領域を用いることもできる。 そのよ う なプロモーターと しては、 例えば、 文献 (Shinozaki, K., and
Yamaguchi-Shmozaki, K. (2000) . Molecular responses to dehydration and low temperature: Differences and cross - talk between two stress signaling pathways. Curr. Opin. Plant Biol. 3, 217-223) 記載の遺伝子群などが利用で
さる。
「ェンハンサー」 は、 目的遺伝子の発現効率を高めるために用いられ、 例え ば CaMV35Sプ口モーター内の上流側の配列を含むェンハンサー領域が好適である
「ターミネータ一」 は、 前記プロモーターにより転写された遺伝子の転写を集 結できる配列であればよい。 具体例としては、 ノパリン合成酵素遺伝子のターミ ネーター (Tnos)、 カリフラワーモザイクウイノレスポリ Aターミネータ一等が挙 げられる。
(2) 形質転換植物の作製
本発明の形質転換植物は、 本発明の組換えベクターを、 目的遺伝子 (Ps UGE遺 伝子) が自己の遺伝子中に組み込まれ、 発現し得るように植物中に導入すること により得ることができる。
本発明の遺伝子又は組換えベクターを植物中に導入する方法としては、 ァグロ パクテリゥム法、 P E G—リン酸カルシウム法、 エレク ト口ポレーション法、 リ ポソーム法、 パーティクルガン法、 マイクロインジェクション法等が挙げられる 。 例えばァグロパクテリゥム法を用いる場合は、 プロ トプラストを用いる場合、 組織片を用いる場合がある。 プロ トプラストを用いる場合は、 Tiプラスミ ドをも っァグロバタテリゥムと共存培養する方法、 スフヱ口プラス ト化したァグロパク テリゥムと融合する方法 (スフエロプラス卜法) 、 組織片を用いる場合は、 リー フディスクにより対象植物の無菌培養葉片に感染させる方法 (リーフディスク法
) やカルス (未分化培養細胞) に感染させる等により行うことができる。
遺伝子が植物に組み込まれたか否かの確認は、 PCR法、 サザンハイブリダィゼ ーシヨン法、 ノーザンハイブリダイゼーション法等により行うことができる。 例 えば、 形質転換植物から DNAを調製し、 DNA特異的プライマーを設計して PCRを行 う。 PCRを行った後は、 増幅産物についてァガロースゲル電気泳動、 ポリアタリ ルアミ ドゲル電気泳動又はキヤピラリー電気泳動等を行い、 臭化工チジゥム、 SY
BR Green液等により染色し、 そして増幅産物を 1本のバンドとして検出すること により、 形質転換されたことを確認することができる。 また、 予め蛍光色素等に より標識したプライマーを用いて PCRを行い、 増幅産物を検出することもできる
。 さらに、 マイクロプレート等の固相に増幅産物を結合させ、 蛍光又は酵素反応 等により増幅産物を確認する方法でもよい。
本発明において形質転換に用いられる植物としては単子葉植物又は双子葉植物 のいずれであってもよい。 単子葉植物としては、 例えばイネ科 (イネ、 ォォムギ、 コムギ、 トウモロコシ、 サトウキビ、 シバ、 ソノレガム、 ァヮ、 ヒェ等) 、 ユリ科
(アスパラガス、 ユリ、 タマネギ、 ニラ、 カタタリ等) 、 ショウガ科 (ショウガ、 ミヨゥガ、 ゥコン等) に属する植物が挙げられ、 双子葉植物としては、 例えばァ ブラナ科(シロイヌナズナ、 キャベツ、 ナタネ、 カリフラワー、 ブロッコリ一、 ダイコン等) 、 ナス科 (トマト、 ナス、 ジャガイモ、 タバコ等) 、 マメ科 (ダイ ズ、 エンドゥ、 ィンゲン、 アルフアルファ等) 、 ゥリ科 (キユウリ、 メロン、 力 ボチヤ等) 、 セリ科 (ニンジン、 セロリ、 ミツバ等) 、 キク科 (レタス等) 、 ァ オイ科 (ヮタ、 オクラ等) 、 ァカザ科 (シュガービート、 ホウレンソゥ等) 、 フ トモモ科 (ユーカリ、 クローブ等) 、 ャナギ科 (ポプラ等) に属する植物が挙げ られるが、 これらに限定はされない。
本発明において、 形質転換の対象となる植物材料としては、 例えば、 根、 茎、 葉、 種子、 胚、 胚珠、 子房、 茎頂 (植物の芽の先端の生長点) 、 葯、 花粉等の植 物組織やその切片、 未分化のカルス、 それを酵素処置して細胞壁を除いたプロプ ラスト等の植物培養細胞が拳げられる。
また、 本発明において形質転換植物体とは、 植物体全体、 植物器官 (例えば根、 茎、 葉、 花弁、 種子、 種子、 実等) 、 植物組織(例えば表皮、 師部、 柔組織、 木 部、 維管束、 柵状組織、 海綿状組織等)、 植物培養細胞のいずれをも意味するも のである。
植物培養細胞を対象とする場合において、 得られた形質転換細胞から形質転換 体を再生させるためには既知の組織培養法により器官又は個体を再生させればよ い。
植物細胞から植物体への再生方法として一般的に知られている方法により、 当 業者であれば容易に行うことができる。 植物細胞から植物体への再生については、 例えば、 以下のように行うことができる。
まず、 形質転換の対象とする植物材料として植物組織又はプロトプラストを用
いた場合、 これらを無機要素、 ビタミン、 炭素源、 エネルギー源としての糖類、 植物生長調節物質 (オーキシン、 サイ トカイニン等の植物ホルモン) 等を加えて 滅菌したカルス形成用培地中で培養し、 不定形に増殖する脱分化したカルスを形 成させる (以下 「カルス誘導」 という) 。 このように形成されたカルスをォーキ シン等の植物生長調節物質を含む新しい培地に移しかえて更に増殖 (継代培養) させる。
カルス誘導は寒天等の固型培地で行い、 継代培養は例えば液体培養で行うと、 それぞれの培養を効率良くかつ大量に行うことができる。 次に、 上記の継代培養 により増殖したカルスを適当な条件下で培養することにより器官の再分化を誘導 し (以下、 「再分化誘導」 という) 、 最終的に完全な植物体を再生させる。 再分 化誘導は、 培地におけるオーキシンやサイトカイニン等の植物生長調節物質、 炭 素源等の各種成分の種類や量、 光、 温度等を適切に設定することにより行うこと ができる。 かかる再分化誘導により、 不定胚、 不定根、 不定芽、 不定茎葉等が形 成され、 更に完全な植物体へと育成させる。 あるいは、 完全な植物体になる前の 状態 (例えばカプセル化された人工種子、 乾燥胚、 凍結乾燥細胞及び組織等) で 貯蔵等を行ってもよい。
上記のようにして得られる形質転換植物は、 塩ストレスに対して耐性を獲得す る。 従って、 当該形質転換植物は、 塩ス トレス耐性植物として使用することがで きる。 ここで、 「塩ス トレス」 とは、 土壌に蓄積した塩類により土壌の水分ポテ ンシャルが低下して植物体が水分を吸収できなくなるなど、 塩類が植物体の生理 機能に損傷を与えるス トレスをいう。 塩類には、 植物に生育阻害、 収量低下、 枯 死を引き起こすあらゆる塩が含まれ、 例えば、 ナトリウム塩、 マグネシウム塩等 が含まれる。
塩ストレス耐性植物は、 Ps UGE遺伝子が組み込まれた形質転換植物 (トラン スジエニック植物) を、 上記塩ス トレス耐性植物として使用し得る程度に育種 することにより作出することができる。 この場合、 植物にとって上記塩ストレ スが生じる条件において、 生理機能に損傷を与えず、 かつ成長阻害や枯死等を せずに耐性を示す植物を選抜すればよい。 ス トレス耐性植物としての使用開始 時期は、 耐性を示す植物を選抜した後であればいつでもよい。
3 . 形質転換植物選抜用マーカー及ぴ選抜方法 ' 本発明の遺伝子は植物に導入し、 形質転換植物選抜用のマーカー遺伝子として 利用できる。 本発明のマーカー遺伝子は、 単独で導入してもよく、 発現させる他 の目的遺伝子とともに導入してもよい。
本発明のマーカー遺伝子を導入する植物としては、 単子葉植物又は双子葉植物 のいずれであってもよい。 単子葉植物、 双子葉植物としては、 前記に列挙したも のと同様の植物が挙げられるが、 これらの植物はカルスを形成し得るものが好ま しい。
本発明のマーカー遺伝子の導入する対象は、 根、 茎、 葉、 種子、 胚、 胚珠、 子 房、 茎頂 (植物の芽の先端の生長点) 、 葯、 花粉等の植物組織やその切片、 未分 化のカルス、 それを酵素処置して細胞壁を除いたプロプラスト等の植物培養細胞 を含む。 本発明において、 植物中へのマーカ一遣伝子の導入は、 通常、 植物から 取り出された植物組織片ゃカルス、 プロ トプラストに対して行われ、 導入された マーカ一遺伝子は植物組織の細胞中、 特にその染色体に取り込まれる。
マーカー遺伝子を植物に導入するにあたり、 マーカー遺伝子を単独で導入する 場合は、 プラスミ ドに連結して組換えベクターを調製する。 一方、 マーカー遺伝 子と発現の目的遺伝子とを共に導入する場合は、 マーカー遺伝子を目的の遺伝子 とともに同一のプラスミ ドに連結させて組換えベクターを調製する。 あるいは、 マーカー遺伝子をプラスミ ドに連結して得られる組換えベクターと、 目的遺伝子 をプラスミ ドに連結して得られる組換えべクターとを別々に調製してもよい。 別々に調製した場合は、 各ベクターを宿主にコ トランスフエク ト (共導入) する。 なお、 ベクターの調製の際に目的遺伝子又はマーカー遺伝子の上流にプロモータ 一を、 下流にターミネータ一などを連結することもできる。 プロモーターとして は、 例えばカリフラワーモザイクウイ レス 35Sプロモーター、 ァクチンプロモー ター、 ュビキチンプロモーター等が挙げられ、 ターミネータ一しては、 例えばノ パリン合成酵素遺伝子ターミネータ一等が挙げられる。 また、 上記ベクターを植 物に導入する方法としては、 前述した各方法と同様な方法が挙げられる。
本発明のマーカー遺伝子を単独で植物に導入すると、 ガラク トース耐性を有す
る個体 (形質転換植物) を得ることができる。 また、 ベクターを植物に導入する 際に、 本発明の上記マーカー遺伝子とともに、 他の特性、 例えば特定の細菌に対 する抗菌性、 特定の薬剤に対する耐性、 特定の有用物質の合成能、 特定の植物ホ ルモンに対する感受性又は本来の植物と異なる形態的特性等を発現する遺伝子を 同時にベクターに組み込んでおくと、 それらの特性を共に発現した再分化個体を 得ることができる。
上記のようにしてマーカー遺伝子を導入したプロ トプラスト又は植物組織から カルスを形成させ、 形成したカルスを更に培養させることが好ましい。 カルス誘 導、 継代培養、 再分化誘導の方法は前述の通りである。
本発明において、 形質転換植物の選抜方法は、 本発明の遺伝子又は組換えべク ターを植物に導入し、 その植物をガラク トース含有培地にて培養し、 ガラク トー ス耐性の有無を指標に前記遺伝子が導入された植物として選抜することにより行 う。 ここで、 「培養」 とは、 上記の 「カルス誘導」 、 「再分化誘導」 、 「完全な 植物体への成長 (発根、 発芽、 茎伸長) 」 の各段階における培養の全てを含む。 遺伝子が植物に導入されたか否かはガラクトースの存在下で上記培養を行い、 ガ ラタ トース耐性の有無を指標に判断することができ、 ガラクトース耐性を有する ものを遺伝子が植物に導入された植物として選抜する。 「ガラクトース耐性を有 する」 とは、 カルス誘導、 再分化誘導、 植物体への生長 (発根、 発芽、 茎成長な ど) がガラクトースに阻害されることなく正常に起こることをいう。
以上のようにして選抜された植物体は、 植物組織培養において通常採用されて いる前記の方法により完全な植物体に育成してもよく、 又は完全な植物体になる 前の状態 (例えばカプセル化された人工種子、 乾燥胚、 凍結乾燥細胞及び組織 等) で貯蔵等を行ってもよい。
上記のようにして選抜されたカルス又は植物体には Ps UGE遺伝子、 又は Ps UGE 遺伝子と目的遺伝子の両者が組込まれている。 従って、 これら遺伝子が存在する ことの確認は PCRなどにより、 遺伝子が発現したことの確認は RT-PCRなどにより それぞれ行うことができる。 発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、 本発明は下記の実施 例により限定されるものではない。
(実施例 1 ) 塩ストレス下誘導シパ遺伝子のクローニング
一般的な匪及び DNAの実験方法は、 Molecular cloning-a laboratory manual- second edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press New York 丄 989) tこ従 いこれを常法とした。 また、 実験中に使用したキッ トの使用方法はメーカーの示 すプロトコ一ノレに従った。
(1) 植物材料の調製
Seashore Papalumンノ (Duedck A. . and Peacock し. H. , Agronomy Journal vol. 77, 47-50 (1985))を砂の入った l/5000a ワグネルポットに植え付け、 東京湾から採水 した塩分濃度 2. 3〜2. 7%の海水で灌水し、 温室内で 3〜 6ヶ月間栽培した。 毎日 —回、 海水をポット上面からかけて、 ワグネルポットの排水口より海水がしみ出 るまで灌水を行った。 この海水灌水処理により、 最低 5年間この Seashore Papalumは生育維持し、 海水耐性を示した。
この材料の分枝より、 第 1葉から第 3葉、 茎、 及び節を含む切片 (図 1 ) を採 取し、 砂へ揷し芽を行い、 発根させてクローン苗を温室内にて育成した。 このク ローン苗を以下の海水ストレス又は水耕による塩ストレス実験に使用した。
海水ストレスは以下の通りに与えた。 まず、 育成した苗を l/5000a ワグネルポ ット (作土壤深 15cm) で、 水道水にて温室内で 4ケ月通常栽培した。 土壌は、 ィ ネ用培土と赤玉を 1: 1に混合したものを用いた。 苗がポット栽培で順調に生育し た段階 (植え付け 4ヶ月後) で、 上記の方法で海水灌水処理を開始した。
対照区となる材料は、 海水灌水処理を開始する前 (水道水栽培) にサンプリン グし、 一 80°Cに保存した。 塩ス トレス条件の材料は、 海水灌水処理 14日でサンプ リングし、 一 80°Cに保存した。 サンプリング部位は地上部の葉とした。 後述(3) のディファンレンシャルスクリ一二ング用の cDNAライブラリ一およびプローブ作 成のための RNAは、 この海水栽培した材料から抽出した。
水耕による塩ス トレス実験は以下のようにして行った。 まず、 上述の水道水栽 培したクローン苗より、 図 1に示した切片を採取して水耕 (蒸留水) で、 揷し芽 を行った。 これを明期 (照度 5000 lx、 温度 30°C) 16時間、 暗期 (照度: 0 lx、
温度 22°C) 8時間の条件で、 植物育成装置(トミー製、 Cultivation Chamber、 CU-251) にて 1週間育成し発根させた。 発根後、 蒸留水を下記表 1に示す改変 - 吉田水耒开培地 ( S. Yoshida, et al. , Laboratory Manual For Physiological Studies of Rice 3rd. Ed., The International Rice Research Institute, pp. 61-66 (1976); 微量元素は D. R. Hoagland & Arnon, D. I. , Univ. Calif. Coll. Agri. c. Exp. Sta. Circ. , p. 347 (1936)に記載の各元素、 鉄分は、 Murashige T. & Skoog F., Physiologia Plant. , pp. 473-497 (1962)の FeEDTAに 改変) に置き換え、 更に 1週間、 明期 (照度 10000 lx、 温度 30°C) 16時間、 暗期 (照度: 0 1x、 温度 22°C) 8時間の条件で育成した。
育成後、 塩ストレスを 4週間与えた。 塩ストレスの条件は上述の改変 ·吉田水 耕培地に 500mMの NaClを添加したものを用いた。 塩ストレスを与えて 4週間後に 地上部の葉を採取した。 後記 (4 ) のノーザン解析および後記 (5 ) の全長 cDNA 単離のための cDNAライブラリ一は水耕した切片より抽出した RNAを使用した。 表 1
改変 ·吉田水耕培地
尚、 上記水耕培地は 5N NaOHを用いて pH5. 5に調整した。 2日ごとに水耕液の体 積を調べ、 体積が減ったら、 蒸留水を加えて初期の体積 (ワグネルポットの場合、
4 L) に戻した。 また、 2週間に 1回、 水耕液を新鮮なものと交換した。
(2) RNAの調製と cDNAライブラリーの構築
生重量で 2 gの葉からトータル RNA約 l mg を Rneasy Mini Kit (キアゲン社製) 、 又は Chang, S. ら(1993)の方法 (Plant Mol. Biol. Report, 11, p. 113-116) を用いて抽出した。 両法の場合ともに、 Dnase I (タカラバイオ社製、 Rnaseフリ 一、 5 mM MgS04存在下、 25°C、 11時間) 処理を追加した。 さらに、 トータル RNA ¾¾ > BioMag belectaPure, mRNA Purification System (Polysci ences, Inc. 社 製) を用いて mRNAを 10 μ g精製した。 この1111¾^ 5 からォリ ゴ((1012_18にょり Time Saver cDNA合成キッ ト (アマシャムバイオサイエンス社製) を用いて 1st strand cDNAさらに 2nd strand cDNAを合成した。 次に、 cDNAをクローニングする ため Directional Cloning Kit (アマシャムバイオサイエンス社製) を用い、 λ gtl lのファージ用ベクターへ揷入したものを、 Ready-To- Go Lambda Packaging Kit (アマシャムバイォサイエンス社製) を用いてパッケージングを行った。 E. col i Y1088 を宿主として、 タイターチエックの後、 ディファレンシヤノレスク リ一エングに供した。
(3) プローブの調製とディファレンシャルスクリ一ニンク、、
上述の Seashore Paspalum シバを水道水栽培で挿し芽の状態から 4ヶ月育成し たもの (対照区) と 4ヶ月育成後から海水を灌水しつづけて 2週間経過したもの
(塩処理区) から、 それぞれトータル RNAをそれぞれ調製し、 オリゴ(dT) 12_18に より Time Saver cDNA合成キッ ト (アマシャムバイォサイエンス社製) を用いて 1st strand cDNAを作成した。 この 1st strand cDNAを鍀型として、 同キットに添 付されているランダムへキサマー (pdN6) を用い、 PCRを行った (PCR条件 : Preraix ExTaq (タカラバイオ社製) を用いて cDNAを 94°C 5分熱変性、 (94°C30秒、 55°C 1分、 72°C 1分) X 25サイクル、 72°C 1分、 Gene Amp PCRシステム 9600を使 用) 。 得られた PCR産物をゲル電気泳動で確認の後、 ECL direct label ing kit
(アマシャムバイオサイエンス社製) を用いて 2種類のプローブ (対照区と塩処 理区) を作成した。
cDNAライブラリ一を直径 14. 5cmのシャーレに撒き、 2000プラークからディファ レンシャルスクリーニングした。 Hybond N (アマシャムバイオサイエンス社製)
を使用してプラークプロッティングを行い、 プラークのシグナルの検出には ECL detection system (アマシャムバイオサイエンス社製) を用いた。 上述の 2種類 のプローブで 1枚のシートをそれぞれ検出し、 塩処理区プローブで検出されるが 対照区プローブでは検出されないプラークを塩処理区で特異的なものとして選抜 した。
選抜したクローンのインサート領域をプラスミ ドベクターへ移すため、 ファー ジ DNAを抽出した。 ファージ DNA を 94°C 10分処理して、 急冷したものを铸型とし. gtl lのフォヮ一ドプライマ一 (5,— GGT GGC GAC GAC TCC TGG AGC CCG— 3':配列 番号 3 ) とリバースプライマー (5, - TTG ACA CCA GAC CAA CTG GTA ATG- 3, :配 列番号 4 ) (タカラバイオ社製)を用いて Premix ExTaq (タカラバイオ社製 )で PCRを行った (95°C 1分、 (94°C 1分、 55°C 2分、 72 °C 2分) X 25サイクル、 72 °C 2分) 。 得られた PCR産物を pT7 Blue T-ベクターへ Perfectly Blunt Cloning Kit (Novagen社製) を用いてサブクローニングした。 選抜された複数個 のクローンを dRhodaraine dye-terminator ¾ (Ampl iTaq DNA polymerase FS ; Applied Biosystems社製)によりシーケンス反応を行った後、 ABI 310ジエネティ ックアナライザー(Applied Biosystems社製)を用いて両鎖方向から DNA配列を決 定した。
(4) ノーザン解析による第二次スクリーニング (イネとの比較)
得られた 2クローン' (Ps ABAと Ps uge) から二次選抜用プロ一ブを作成した。 Ps ABAプローブは、 pT7 Blue T-ベクターのクローニングサイ トを制限酵素 EcoRI (タカラバイオ社製) と poly Aを含まないようにィンサート内部を制限酵素 Alu I (New England Biolab社製) で切断し、 ァガロース電気泳動により切り出すこ とによって調製した (配列番号 5 ) 。 また、 Ps UGEプローブは、 最初のディファ レンシャルでとれた cDNAクローン Ps uge (配列番号 6 ) を pT7 Blue T-ベクター にサブクローエングし、 インサート内部にある Not Iサイ トと Sea I サイ トで切 り出すことによって調製した (配列番号 7 ) 。
Ps ABAプローブ (配列番号 5 ) :
GCCACTGGACTATGTGTGTGTGCAACTCTGTTCTGATTTGCTATATATAAG
最初のディファレンシャルでとれた cDNAクローン Ps uge (配列番号 6 )
CGACGGTGGCTACGCCCTGTGTTGTAGTactgtgaatatgatgtggtaataacaataacttgcagtgagact Ps UGEプローブ (配列番号 7 ) :
CCGATCCACGACGGTGGCTACGCCCTGTGTTGTAGT
調製した Ps ABAプローブ及び Ps UGEプローブを用いて Paspalumシバとイネ (品 種ポッカリ) での遺伝子発現の塩誘導性の比較を行い、 Paspalumシバでは発現が 塩ストレスにより誘導されるが、 イネでは誘導されないクローンを第二次選抜し た。 イネ (ポッカリ) は上述の改変 · 吉田水耕培地で育成し、 対照区 (OmM NaCl) と塩処理区(50 mM NaCl)での 1ヶ月後の茎葉部から トータル RNAを抽出し た。 トータル RNAの電気泳動、 ノーザンブロッテイング及ぴハイブリダィゼーシ ョンを常法に従って行った。
Ps ABAプローブによるノーザン解析では、 Paspalumとイネのいずれのトータル
RNAにも Ps ABA で検出される mRNAが発現し、 塩誘導性もあることが確認された
(図 2 A ) 。 よって、 この Ps ABAクローンは耐塩性の低いイネにもホモログが発 現しているとして選抜しなかった。 一方、 Ps UGEプローブによるノーザン解析で
は、 Ps UGEは Paspalumシバで塩誘導性が認められたが、 イネ (ポッカリ) で発現 が認められなかった (図 2 B) 。 従って、 この Ps UGEクローンを Paspalumシバ特 異的なクローンとして選抜した。 Ps UGEプローブの DNA配列を Blast Xによるホモ ロンー検糸'を trつた結果、 Guar (Cmopsis tetragonoloba の遺ィ 子 (Accession No. AJ005081, Joersbo, M., et al., Plant Science 142, pp. 147 - 154, 1999) 及ぴシロイヌナズナの遺伝子 ( Dormann, P. & Benning, C. , Archives of Biochemistry and Biophysics, 327, pp.27-34, 1996)とホモロジ一十生のあるこ とが判明した。 この Ps UGEクローンを全長 cDNA単離用のプローブとして利用した, (5) 全長 cDNAの単離と配列決定
吉田 ·水耕培地により塩ストレス (400mM NaCl) を 1週間与えた Paspalumシバ より mRNAlO gを取得し、 ZAP Express cDNA Gigapack III Gold Cloning kit
(Stratagene社製) を用レヽて、 cDNA合成、 Zap Express ベクターへのクローニン グ、 及びパッケージングを行った。 cDNAライブラリーを 14X9 cmの角形シャーレ 10枚に撒き、 約 100, 000プラークから選抜を行った。 Hybond N (アマシャムバイ ォサイエンス社製) を使用したプラークブロッティングを行い、 前記(4)でノー ザン解析に使用した Ps UGEプロープを ECL direct labeling kit (アマシャムバ ィォサイエンス社製) を用いて標識し、 プラークのシグナルの検出には ECL detection system (アマシャムバイオサイエンス社製) を用いた。 1〜3次スク リ一ユングの結果、 PS UGEプローブで検出されるプラークを 3つ単離した。 In vivo excisionにより、 それそれの cDNAを pBK_CMV phagemid vector (Stratagene 社製) に移した。 選抜された 3個の cDNAを dRhodamine dye-terminator法
(AmpliTaq DNA polymerase FS : Applied Biosystems社製)によりシーケンス 反応を行った後、 ABI 310ジエネティックアナライザー(Applied Biosystems社 製)を用いて両鎖方向から DNA配列を決定した。 シ ケンスには T7 と T3のプライ マー、 及ぴ各 cDNAに特異的なプライマーを用いた。 配列の解析は、 Genentyx
Mac. Ver. 11 (Soft ware Development Co. LTD, 2000)を用いた。
シーケンスの結果、 Ps UGEの配列とほぼ一致する cDNAクローン (Ps UGE1) が 得られた。 Ps UGE1の塩基配列を配列番号 1に、 それよりコードされるアミノ酸 配列を配列番号 2に示す。 また、 Ps UGE1とアミノ酸レベルで 6 5 %のホモロジ
一を有する cDNAクローン (Ps UGE2) が得られた。 Ps UGE2の塩基配列を配列番号 8に、 それよりコードされるァミノ酸配列を配列番号 9に示す。
(6)他種由来の UGEホモログとの比較
これまでに EST及ぴゲノム解析から登録されている植物 UGEホモログと Ps UGE1 及ぴ Ps UGE2との系統樹を作成した (図 3 ; シロイヌナズナの UGEファミ リー Atlg30620、 Atlgl2780、 Atlg63180、 Atlg64440、 At2g34850、 At4gl0960、 At4g23920とイネ 0s UGE (Accession No. AB087745)、 グァ Ct UGE (Accession No. AJ005081)を使用) 。 これによると Ps UGE1はグループ No. 1に分類された。 グ ループ No. 1に分類されたホモログ及び Ps UGE2のアミノ酸配列でァラインメント をかけた結果を図 4に示す。 同じグループ No. 1のいわゆるオルソログと考えられ るシロイヌナズナの UGE遺伝子、 及ぴ同じ Paspalum由来の Ps UGE2と比較して Ps UGE1は N末端のアミノ酸が約 10塩基ほど長い新規の特徴を有していた (図 4 ) 。
(実施例 2 ) 植物用発現べクタ一の作成
実施例 1で得られた Ps UGEの全長 cDNAを植物遺伝子導入用の発現ベクターへ以 下のようにして導入した。 まず、 3 ' 側の poly Aを除くため、 上述のクローン PS UGE1 を鎳型 に 、 イ ンサ ー ト 上流側 45bp 〜 64bp番 目 の配列 : 5' - ACAGAGCCGCAAAACCACAC-3 ' (配列番号 1 0 ) をセンスプライマー、 下流側 1314bp 〜1340bp番目の配列 : 5' -TTCGTAGCTAGGCACATTCGAGCGGTC-3 ' (配列番号 1 1 )をァ ンチセンスプライマーとし、 酵素 Pyrobest (タカラバイオ社製) を使用し、 98°C 2分、 (96°C30秒、 62°C30秒、 72°C 2分) X 30サイクル、 72°C 3分の条件で PCR を行った。 増幅された DNA断片 (約 1. 3kb) をァガロースゲル電気泳動で分離して 切り出し、 ゲル抽出キット (キアゲン社製) を用いて精製した。 この断片を PCR - Scrpit Amp Cloning Kit (Stratagene社製) を用い、 pCR- Script Amp SK (+)にク ローニングし、 シーケンスを行い、 配列を確認した。 この 1. 3kb断片をインサー トとして持つ pCR- Script Amp SK (+)のクローンを Ps UGElaとした。
Ps UGElaを制限酵素 Not I (東洋紡社製) で処理してエタノール沈澱した後、 タカラバイオ社製のブランティングキットを用いて平滑末端化し、 フヱノール抽 出により精製した。 さらにこの断片を Bam HI (東洋紡社製) で処理し、 切り出さ
れる PS UGE遺伝子断片 (約 1. 3kb) を 0. 7%ァガロースゲル電気泳動により分離し、 ゲル抽出キッ ト (キアゲン社製) を用いて精製した。
本遺伝子断片をプロモーターとターミネータ一の間に挿入するため、 pBI221
(クロンテック社製) を制限酵素 Sac I (東洋紡社製) で処理し、 エタノール沈 澱した。 次いで、 タカラバイオ社製のプランティングキッ トを用いて Sac I切断 部位を平滑末端化し、 フエノール抽出により精製した。 この断片を更に Bam HI
(東洋紡社製) で処理し、 ベクター部分と GUS部分を 0. 7%ァガロースゲル電気泳 動により分離し、 ゲル抽出キット (キアゲン社製) を用いてベクター断片を精製 した。 その後、 タカラバイオ社製のライゲーシヨンキッ ト ver. Iを用いて、 この ベクター部分と Ps UGE遣伝子断片 (約 1. 3kb) のライゲーション反応を行い、 大 腸菌 JM109への形質転換の後、 プロモーター部分に対してセンス方向に Ps UGE遺 伝子断片 (約 1. 3kb) が挿入したクローンを選抜した。 これを Ps UGEla/pBI221と した。 以上の構築手順を図 5に示す。
この Ps UGEla/pBI221の発現カセッ 1、部分を遗伝子導入用のバイナリ一べクタ 一に揷入するため、 以下の操作を行った。 Ps UGEla/pBI221を制限酵素 EcoRI (東 洋紡社製) で処理してエタノール沈澱した後、 タカラバイォ社製のプランティン グキッ トを用いて平滑末端化し、 フエノール抽出により精製した。 さらにこの DNA を制限酵素 Hind III (東洋紡社製) 処理し、 エタノール沈澱した後、 さらに Dralll (New England Biolab製) 処理し、 発現カセット部分 35S: Ps UGE: nos T
(約 2. 5 kb) とベクター部分を 0. 7%ァガロースゲル電気泳動により分離し、 ゲル 抽出キット (キアゲン社製) を用いて発現カセッ ト部分を精製した。 次にベクタ 一 pIG121Hm (Plant Cell Report, Vol. 12, pp. 7-11 (1992)、 名古屋大学 中村 研三氏より入手) を制限酵素 Sal I (東洋紡社製) 処理してエタノール沈澱した。 次いで、 タカラバイオ社製のブランティングキッ トを用いて Sal I切断部位を平 滑末端化し、 フエノール抽出により精製した。 このプラスミ ドベクター断片を更 に Hind III (東洋紡社製) で処理し、 ベクター部分と 35S: Intron- GUS : nos Tを
0. 7%ァガロースゲル電気泳動により分離し、 ゲル抽出キット (キアゲン社製) を 用いてベクター断片を精製した。 その後、 タカラバイオ社製のライゲーシヨンキ ット ver. Iを用いて、 Ps UGE遺伝子発現カセット断片とベクター断片のライゲー
ション反応を行い、 プラスミ ドベクター pIG121Hmの 35S: Intron- GUS : nos T部分 に、 Ps UGE遺伝子発現カセッ ト断片が揷入したクローンを選抜し、 Ps UGEla/ pBI 121Hmとした。
この Ps UGElaZpBI121Hmを Bam HI (東洋紡製) 処理し、 エタノール沈澱した後 タカラバイオ社製のプランティングキットを用いて平滑末端化し、 フエノール抽 出により精製した。 さらにこの断片を Hind III処理して、 Ps UGEla発現カセッ ト +35S:ハイグロマイシン抵抗性(HPT)遺伝子の DNA断片を 0 . 7 %のァガロース電 気泳動により切り出してキアゲン社製のゲル抽出キッ トにより精製した。 pBI221 (クロンテック社製)を制限酵素 Sac I (東洋紡製) で処理し、 エタノール 沈澱した後、 タカラバイオ社製のプランティングキットを用いて平滑末端化し、 フエノール抽出により精製した。 さらにこの断片を Hind III (東洋紡製) で処理 し、 ベクター部分と 35S: GUS部分を 0. 7°/。ァガロースゲル電気泳動により分離し、 ゲル抽出キット (キアゲン社製) を用いてベクター断片を精製した。 タカラバィ オ社製のライゲーションキッ ト ver. Iを用いて、 このベクター部分と Ps UGEla発 現カセット +35S: HPT遺伝子とのライゲーション反応を行い、 大腸菌 JM109への形 質転換の後、 プロモーター部分に対してセンス方向に Ps UGE遺伝子断片 (約 1. 3 kb) が揷入したクローンを選抜した。 これを Ps UGEla/PBI221Hmとした。
pIG121Hmを Sal Iと Bam HI処理して (東洋紡製) 、 ベクター部分と 35S: HPT遺 伝子部分を 0. 7%ァガロースゲル電気泳動により分離し、 35S: HPT遺伝子部分を切 り出してキアゲン社製のゲル抽出キッ トにより精製した。 これを更に、 タカラバ ィォ社製のブランテイングキッ トを用いて平滑末端化した。 次に pBI221を Hindlllと Sac I処理し、 0 . 7%ァガロースゲル電気泳動により分離し、 ゲル抽出 キッ ト (キアゲン社製) をもちいてベクター断片を精製した。 このベクター部分 をさらに宝バイオ社製のブランティングキットを用いて平滑末端化し、 タカラバ ィォ社製のラィゲーションキッ ト ver. Iを用いて、 このべクター部分と上述の 35S : HPT遺伝子部分とを連結した。 そして、 大腸菌; IM109への形質転換の後、 35S プロモーター: HPT遺伝子: Nosターミネータ一の順序に連結されたものを選ぴ HPT ZpBI221とした。 これは Ps UGEla/pBI221とのコ トランスフォーメシヨンに使用 した。
(実施例 3 ) 形質転換体 (イネ) の作製及び導入遺伝子の確認
( 1 ) Ps UGE形質転換イネの作製
イネ (品種: 日本晴、 滋賀県農協より種籾を入手可能) の完熟種子由来の再分 化能を有する液体培養系からプロトプラストを単離し供試材料とした。 プロ トプ ラス トの調製およびエレク トロポレーシヨンの方法は経塚らの方法 (Kyozuka et al. , Mol. Gen. Gnet. , 206, pp. 408-413, 1987) 、 鳥山らの方法 (Toriyama et al. , Bio/Technology 6, pp. 1072-1074) 、 赤木らの方法 (Akagi et al., Mol. Gen. Gnet., 215, pp. 501- 506, 1989) 等に準じて行った。
プロ トプラス トを 2 X 106/mL、 プラス ミ ド DNA ( Ps UGEla/pBI121Hm又は Ps UGEla/pBI221Hm又は Ps UGEla/pBI221と HPT/pBI221のコ トランスフォーメシヨ ン のいずれか) を 50 μ g/mLになるように 0. 4Mマンニトール、 70mMァスパラギン酸力 リ ウム、 5mMダルコン酸カルシウム、 5mM. MESの導入バッファーに懸濁しエレク ト ロボレーシヨ ンを行った。 電気パルスは電界強度 450Vん m、 時定数約 40msの減衰 波とした。 なお導入装置には島津社製の GTE- 10を、 導入チャンバ一には FTC- 54を 使用した。
R2P培地 (島本功 · 田清隆監修、 植物細胞工学シリーズ、 モデル植物の実験プ ロトコール、 秀潤社、 pp. 82— 88、 2001) を基本としたァガロース培地に包埋し たプロ トプラストを、 液体培地に加えナース細胞と共に培養した。 導入 14日後ナ ース細胞およぴ液体培地を除きハイグロマイシン 50 μ g/raLを添カロした R2P培地を 加え形質転換体の選抜を開始した。 耐性カルスが 1〜 2匪に成長後、 選抜された 形質転換カルスをハイグロマイシン 50 μ g/mLの R2SA培地 (島本功ら、 同上、 p . 83) に移植した。 10〜14日間培養し増殖させた後、 ハイグロマイシン 50 g/mLの再分化培地 (島本功ら、 同上、 pp. 78- 81) にカルスを移植し、 植物体を再 生させた。
再分化植物体をカルス塊からはずし、 50 g/Lハイグロマイシンを含むホルモ ンフリー培地 (島本功ら、 同上、 pp. 78- 81) に置床し、 発根してくる個体を選抜 し、 シャーレの蓋を開けて滅菌水をシャーレの培地上に注ぎ、 1週間馴化を行つ た。 この時、 培地が乾かないように 2日に 1回滅菌水を供給した。 馴化後、 選抜
された植物体 (日本晴 To世代とする) をイネ育成用土壌 (三菱化学製) :赤玉 ( 1 : 1 ) を入れたジフィーポット (縦 X横 X高さ : 5 cra X 5 cm X 6 cm) に植え 付け、 1 〜 2ヶ月後にプラスチック製のポット (幅 X奥行き X高さ : 15cm X
5. 5cm X 9. 5cm) へ移植してさらに 4 〜 1 0ヶ月育成し、 自殖又は交配し、 種子を 得た。 育成は隔離温室にて行った。
(2) Ps UGE遺伝子導入及び発現の確認
形質転換イネからのゲノム DNAの抽出は、 若葉を 1 〜 3 cmの長さに切り、 滅菌 したエツペンドルフチューブに入れ、 100 Lの TE 緩衝液 (lOmM Tris HC1、 pH8. 0、 Im EDTA) を更に添加し、 エツペンドルフチューブ用のホモジェナイザ 一で 1 〜 3分磨砕することによって行った。 磨碎後は氷上に保管し、 4 °C、 15, OOOrpmで 2分間遠心し、 上清を新しい滅菌チューブに移した。 この上清をゲ ソム DNA画分とした。
Ps UGE遺伝子の存在を確認するために、 ゲノム PCRを 5' -GTC GTC GAC AAC TTC CAC AA - 3' (配列番号 1 2 ) をセンスプライマー、 5, - TTG TTC TCG TAG TAG ATG TC- 3,(配列番号 1 3 ) をアンチセンスプライマーとし、 1. 25Uの酵素 K0D- Dash (東洋紡社製) 、 lOpmolesのプライマー、 0. 2mMの dNTP、 反応用緩衝液 (終濃 度: 20mM Tris-HCl (pH7. 5) 、 8mM MgCl2、 7. 5mM DTT、 2. 5 μ g/50 μ L BSA) を用 いて行った。 上述したゲノム DNAは 20 i Lの PCR反応液全量に対して lO ^ Lを使用し た。 反応装置は、 ABI社製の Gene Amp PCRシステム 9600又は Gene Amp PCRシステ ム 9700を使用し、 PCR条件は 98°C 2分、 (98°C30秒、 55°C 2秒、 74°C30秒) X 30 サイクル、 74°C 5分の後、 4 °Cで維持とした。
上記ゲノム PCRの結果を図 6に示す。 図 6に示すように、 配列番号 1 2をセン スプライマー、 配列番号 1 3をアンチセンスプライマーとして増幅させた 226bp の断片 (レーン 1:ベクター DNA)は Ps UGE形質転換日本晴 (レーン 3 ) でのみ検 出され、 非組換え体のイネ品種 (日本晴 (レーン 2 、 4 ) 、 コシヒカリ (レーン 6 ) 、 IR28 (レーン 5 ) 、 ポッカリ (レーン 7 ) ) ではいずれも検出されず、 形 質転換体の確認に適していることを示している。 また、 図 7は、 Ps UGE形質転換 日本晴 To世代 (遺伝子導入し、 選抜した個体) 、 該 To世代とコシヒカリの交配 F1 世代を用いて同じくゲノム PCRを行った結果を示す。 図 7において矢印は Ps UGE
遺伝子の内部配列 226bpに対応するバンドの位置を示す。 Vは発現ベクター Ps UGElaZpBI221を铸型とした場合の PCR産物、 NTは非組み換えイネのゲノム PCR産 物である。 図 7 (上段) に示されるように、 ハイグロマイシン耐性 To世代 22個体 のうち 20個体に Ps UGE遺伝子の存在を示すバンドが確認された。 日本晴 To世代と 非形質転換コシヒカリとの交配によって得た F1については、 図 7 (下段) は 46個 体中 29個体のゲノムに Ps UGE遺伝子の存在が確認された例を示している。 最終的 には 120個体のハイグロマイシン耐性イネ To世代のうち、 106個体に Ps UGE遺伝子 を示すバンドが確認された。 また、 全体で 193個体の F1世代のうち、 90個体のゲ ノムに Ps UGE遺伝子の存在が確認された。
Ps UGE形質転換日本晴 To世代における Ps UGE導入遺伝子の転写を確認するため に、 RT- PCRを配列番号 1 2 (同上) をセンスプライマー、 配列番号 1 3 (同上) をアンチセンスプライマーと し、 1. 25Uの酵素 K0D- Dash (東洋紡社製) 、 lOpmolesのプライマー、 0. 2mMの dNTP、 反応用緩衝液 (終濃度: 20mM Tri s - HC1 (pH7. 5) ゝ 8 mM MgCL、 7. 5 mM DTT、 2. 5 μ g/50 μ ΐ BSA) を用いて行った。 上 述したトータル RNAより 1 st strand cDNA合成キット (Life Sci ence'社製) を用い て作成した 1 st strand cDNAを 20 μ Lの PCR反応液全量に対して 0· 2〜: 10 μ Lを使用 した。 反応装置は、 ΑΒΙ社製の Gene Amp PCRシステム 9600又は Gene Amp PCRシス テム 9700を使用し、 PCR条件は 98°C 2分、 (98°C 30秒、 55°C 2秒、 74°C 30秒) X 30サイクル、 74°C 5分の後、 4 °Cで維持とした。
上記 RT- PCRの結果を図 8に示す。 図 8において矢印は Ps UGE遺伝子の内部配 列 226bpに対応するバンドの位置を示す。 Vは発現ベクター Ps UGElaZpBI221を 鏡型とした場合の PCR産物であり、 NTは非組み換えイネの 1 st strand cDNAを錶型 とした場合の RT - PCR産物である。 図 8に示されるように、 cDNAを鍚型とした場合、
22個体のハイグロマイシン耐性イネ (To世代) のうち 20個体に Ps UGE遺伝子の転 写を示すバンドが確認された。 1 st strand cDNA合成に用いたトータル RNAに対し てはバンドが検出されず、 このバンドがゲノム DNA由来のものではないことを示 している。 このようにして RT- PCRを実施した結果、 Ps UGE1をゲノムに有する 106 個体のハイグロマイシン耐性イネ (To世代) のうち、 95個体の日本晴 To世代が Ps
UGEを発現し、 さらに、 ゲノムに Ps UGEを有する 90個体の F1のうち、 81個体の F1
世代 (日本晴 To世代とコシヒカリを交配した植物体) に Ps UGE遺伝子の発現を確 し 。
(実施例 4 ) UDP -ガラク トースェピメラーゼ活性の確認
実施例 3で得られた Ps UGE形質転換イネ (To世代) 、 PsUGE遺伝子を発現しな いイネ対照区として非形質転換イネカルスからの再分化個体、 又は 35Sにより sGFPを発現する形質転換イネ (To世代) の葉身部 0. 1〜0. 15gを採取し、 液体窒素 で凍結し、 _80°Cにて保存した。 抽出用緩衝液 ( 25mM Hepes pH 7. 5, 0. 3 M sorbitol, 5 mM DTTにロッシュ製のプロテアーゼインヒビターカクテノレ complete mini 1タブレッ トを 7mlに溶かしたもの) を生重 0.:!〜 0. 15gの葉に対して 1〜 1. 5ml添加し、 さらに薬匙 1杯のポリクラール AT、 薬匙 1杯の石英砂を入れて、 手早く氷上で乳鉢を用いてすり潰した。 溶液状態になったところで、 2mlのエツ ペンチューブに移して 15000rpm、 4°Cにて 20分間遠心した。 上清を別チューブに 移して、 抽出用緩衝液で l mlにメスアップした。 得られた液 lmlを NAP- 10カラム (アマシャムバイオサイエンス社製) にのせ、 抽出用緩衝液 1. 5mlで溶出し脱塩 した。 この脱塩した溶出液 1. 5mlを Ps UGE形質転換イネの場合は 40 μ ΐを活性測定 に用いた。 非組換え体又は sGFPを発現する形質転換イネ (To世代) の場合は、 前 記溶出液 1. 5mlを YM- 10 (セントリコン、 ミリポア社製)に入れ、 6000 rpm (日立 himac) , 4 °Cにて 120分間遠心処理して 0. 3mlまで濃縮し、 40 μ 1を活性測定に用 いた。 タンパク質量はバイオラッド社製のプロティンアツセィキットにより定量 した。
活性測定は以下のように行なった。 まず、 50mM Tris HC1 (pH8. 5)、 1 mM NAD+ 含む反応液 (ブランク) 0. 46 mlに上記酵素液 40 μ Lを添加後、 温度 28°Cにて 340nmの吸光度上昇を 3分間測定することによってブランクの傾き Δ abs 1 /min を求めた。 なお、 吸光度の測定は、 分光光度計はベックマン DU-640を用いた。 次 に、 50mM Tris HC1 (ρΗ8· 5)、 1 mM NAD+、 0. 5mM UDP-ガラク トースを含む反応液 0. 46 mlに上記酵素液 40 i Lを添加後、 同様にして吸光度上昇を測定し、 傾き Δ abs 2/minを求めた。 厶 abs 2/min力、ら厶 abs 1 /minを差し弓 |いた厶 A340/min から、 次式を用いて比活性を計算した。
比活性 (mU/mgタンパク質) =
[厶 A340/minX反応液量(ml) +6220 (M— 1 ' cm— 1) ]÷酵素液量 (ml) ÷酵素液 のタンパク質濃度 (mg/ml) X1000
それぞれのイネに対して各 3系統の比活性 (mU/mg タンパク質) を測定し、 平 均値と標準誤差を求めた。 その結果、 Ps UGE形質転換イネでは 37.7±5.5、 非形 質転換イネのカルス再分化個体では 4. 1±1. 8、 sGFP形質転換イネでは 2. 8±0. 8の活性をそれぞれ示した。 即ち、 Ps UGE形質転換イネの UDP-ガラク トースェピ メラーゼ活性は、 PsUGE遺伝子を発現しないイネよりも 8〜10倍高く、 PsUGE遺伝 子は UDP-ガラクトースェピメラーゼ活性又は UDP- グルコースェピメラーゼ活性 を持つことを確認した。
(実施例 5 ) Ps UGE形質転換ィネ個体のガラクトース耐性の確認
実施例 3で得られた Ps UGE形質転換ィネ (35S:Ps UGEla:nosT)、 コントロール- として非形質転換イネ (日本晴) カルスからの再分化個体を用いて発根に対する ガラクトースの影響と Ps UGEの効果を調べた。 培養は、 抗生物質の入っていない 検定培地 MSHF (横井修司ら、 同上) のシュクロースを OmMとし、 ガラクトース濃 度をそれぞれ 21mM、 42mM、 84mM、 168mMとした培地、 あるいはグルコース濃度を 同じく 21mM、 42mM、 84mM、 168mMとした培地で、 16時間日長、 10000 lxで 1〜 2 週間行った。 培養結果を図 9に示す。 非形質転換イネカルス再分化個体では、 グ ルコースの濃度系列において発根がシュクロ一スとほぼ同等に起こるが、 ガラク トースの濃度系列では発根が完全に抑制された。 これに対して Ps UGE導入形質転 換イネ (35S:Ps UGEla:nosT)では、 ガラクト一スによる発根抑制がほぼ完全にな くなつた (図 9) 。 図 1 0は、 Ps UGE遺伝子導入イネ (35S:Ps UGEla:nosT)、 非 形質転換イネカルス再分化個体について、 ガラク トース添加培地で生育させた場 合の発根の写真、 不定根の数、 不定根の最大長 (cm)を示す。 また、 図 1 1は、
Ps UGE遺伝子導入イネ (35S:Ps UGEla:nosT)、 非形質転換イネカルス再分化個体 について、 ガラクトース添加培地で生育させた場合の苗条の写真、 苗条の最大長
(cm)を示す。 これらの図に示されるように、 根の生長及ぴ葉茎部の生長に対す るガラクトースの抑制効果も Ps UGE遺伝子により緩和されることが分かった。 こ
の結果から、 Ps UGE遺伝子はイネ科植物の糖代謝を改変し、 ガラクトースを利用 して生長可能なガラクトース耐性イネ科植物を作成する機能を持つことが見い出 された。
(実施例 6 ) Ps UGE遺伝子を導入した形質転換ィネの塩ストレス耐性の評価 (1) Ps UGE遺伝子を導入した日本晴 To世代における耐塩性スコァ評価試験
塩ス トレス耐性試験は、 横浜巿戸塚区に設置した隔離温室で行った。 試験期間 は 7月〜 9月で、 平均気温は 29°C、 最高気温は 34° (:、 最低気温 26°C、 平均湿度 70 〜90%であった。 日長は平均 14時間で照度は 5万 lxであった。 塩ス トレスは以下 のようにして与えた。 隔離温室内に縦 0. 9m、 横 1. 5m、 高さ 0. 15mのプラスチック 製の水槽を 3つ設置し、 人工海水 (日本動物薬品社製) を 10分の 1濃度に希釈し たものを水深 10cmの高さまで入れた。 この時点の NaCl濃度は 0. 3%であり、 塩分 濃度計 (ATAG0社製 ES421) により 0. 3%であることを確認した。 水分の蒸発によ る塩濃度の上昇を避けるため、 1 日に 1回塩分濃度を測定し、 濃度が上昇した場 合は水道水を入れて 0. 3%に調整した。 水槽には水流ポンプを設置して水槽内の 水を循環させ、 塩濃度の偏りを抑えた。
この水槽に、 実施例 3に示した方法で馴化後から 2ヶ月、 成熟期まで育成した Ps UGE遺伝子導入日本晴 To世代を栽培用のポッ ト (幅 X奥行き X高さ : 15cm X 5. 5cmX 9. 5cm) のまま水槽に浸漬し、 10%海水にて栽培を行った。 その試験状況 を図 1 2に示す。 試験に使用した To世代の植物体数は 95個体、 対照区のカルスか ら再分化した非形質転換体数は 18個体であった。 これらの個体の作成は実施例 3 の方法に従って行った。 各植物体を水槽に浸漬するに当たっては、 水槽を縦 57cm、 横 37cmに区切ってブロック化し、 乱数表を用いて各個体の水槽における位置を決 定した。
塩ス トレス耐性の評価は、 フィ リ ピンの国際イネ研究所 (IRRI) にて確立され た方法で行った。 10週間目に葉の枯れ程度を目視により調査し、 IRRIでの方法に 準じたスコアの定義(表 2 ) に従って、 各個体毎にスコアをつけた。 その結果を 図 1 3に示す。 日本晴の非組換え個体集団のスコアを白のカラムで、 Ps UGE遺伝 子導入 To個体の集団を黒カラムで示した。 横軸はスコアを、 縦軸は各スコアを示
した個体数の集団内における比率を示している。 非組み換え集団と比較して、 Ps UGE遺伝子導入集団はスコアの分布が高い方向へシフトし(中央値 0. 46→0. 52) 、 スコアの中央値が高くなった。 この差は%二乗検定において 5 %で有意であった, 以上の結果より、 Ps UGE遺伝子導入により耐塩性の向上が実証された。
表 2
耐塩性スコアの定
(2) Ps UGE遗伝子導入日本晴 Toとコシヒカリの交配による F1世代の塩ストレス耐 性評価試験
上記(1)で耐塩性の向上した Ps UGE遺伝子導入日本晴 To世代と日本晴よりも更 に耐塩性の低いコシヒカリを交配させて F1世代を得た。 F1種子おょぴその他の品 種の種子をジフィーポット (縦 X横 X高さ : 5 cm X 5 cm X 6 cm) に播き、 2〜3 葉期に実施例 3で示したようにゲノム PCR行い、 Ps UGE遺伝子が確認された F1集 団 (Fl Ps UGE+) と Ps UGE遺伝子が確認されない F1集団 (Fl PsUGE- ) を分けた。 分ける際には、 ジフィーポットのセルを切り分けて、 集団毎にトレイにまとめた。
Ps UGE遺伝子が確認された F l集団 (Fl PsUGE+) について、 Ps UGE遺伝子が確 認されない F 1集団 (Fl PsUGE-) 、 非形質転換イネ (品種名 : 日本晴、 コシヒ力 リ、 IR28)を対照として耐塩性試験を行った。 塩ス トレスは、 2〜3葉期の状態 のイネに対して与え、 ジフィ一ポットのまま水槽へ浸漬させる点を除いては、 前 記(1)と同じ条件にて行った。 また、 試験期間は 12月〜 2月で、 平均気温は 28°C、 最高気温は 32°C、 最低気温 24°C、 平均湿度 60〜80%であった。 日長は平均 9時間 で照度は 5千から 1万 lxであった。
上記試験結果を図 1 4に示す。 2週間目より Ps UGE遺伝子導入イネの集団は対 照である非形質転換イネ (日本晴) の集団に比較して生育がよく、 4週間〜 8週
間には非形質転換イネ (日本晴) の集団と比較して Ps UGE導入イネの集団は明ら かに生存する個体の多いことが分かった。 6週間〜 8週間には、 種子をつける個 体が Ps UGE導入イネの集団に認められた (図 1 4 ) 。 図 1 5は、 Ps UGE遺伝子導 入イネの塩ストレス条件での栽培 6週間後の出穂状態を示す。
また、 生存率、 枯死率、 穂のついた個体数の比率、 穂あたりの種子数を表 3に
799
まとめた。 81
Ps UGE遺伝子 3 o 2の確認された F 1集団 (Fl Ps UGE+) は、 対照区 (Ps UGE遺伝子の確認されない F 1集団 (Fl Ps UGE -) 、 日本晴、 コシヒカリ、 IR28) に比べて生存率が有意に高く、 BO穂のついた個体数も多かった。 対照区においては いずれの集団においても、 Fl Ps UGE+より生存率が上回ることはなかった。
また、 この条件で日本晴群、 コシヒカリ群、 及び IR28群では全く種子をつけて いない (その前に枯れた) 。 Fl Ps UGE+は、 Fl Ps UGE-と比較しても、 穂のつい た個体数が顕著に増加し、 コメの収量が増大するほどの強い耐塩性の付与効果が 認められた。 これは、 Ps UGE遺伝子が生存率でみた耐塩性向上効果を持つものの みならず、 長期的な栽培で収量をも向上させる耐塩性効果を有することを示して いる。
表 3
Ps UGE遺伝子導入日本晴 Toとコシヒカリを交配して得た F1世代における塩スト レス耐性評価
PsUGE- (2wks) 112 - - PsUGE- (4wks) 112 - - PsUGE- (8wks) 112 2(1.8) 2-4.0-6
コシヒカリ(2wks) 83.3 •7 6 - - コシヒカリ(4wks) 100.0 6 - - コシヒカリ(8wks) 100.0 6 0(0) - 日本暗 (8wks) 70.0 6 0(0) - IR28(8wks) 100.0 6 0(0)
(実施例 7 ) Ps UGE遺伝子の選抜マーカーとしての利用
実施例 3に示した方法を用いてエレクトロポレーション法により発現ベクター
Ps UGEla/pBI221Hmをイネプロトプラストに導入した。 このプロトプラストより カルスを再生させ、 さらに抗生物質ハイグロマイシンを含まない状態で 2〜 6週 間かけて再分化させ、 再分化させた植物体を、 シュクロースを O mMとし、 10mM〜 200mMの範囲のガラク トースを含む抗生物質の入っていないホルモンフリ一培地 (島本功ら、 同上、 pp. 78 - 81) に植え 1〜 2週間育成した。 植え付けた 40000個 体の再分化植物体中、 6個体が発根し生育も旺盛であった。 これらの 6個体につ いて導入した Ps UGEの内部配列プライマー (配列番号 1 2及ぴ 1 3 ) と発現べク ター Ps UGEla/PBI221Hmにより Ps UGE遺伝子と同時に導入されるハイグロマイシ ン抵抗性 (HPT) 遺伝子のプライマー (センスプライマー : 5, -ATG AAA AAG CCT GAA CTC AC- 3, (配列番号 1 4 ) 、 アンチセンスプライマー : 5, -CGA ACC CGC TCG TCT GGC TA-3 ' (配列番号 1 5 ) を用いてゲノム PCRによる遺伝子導入の確 認を行った (PCR条件は実施例 3を参照) 。 図 1 6に示すように、 全ての個体で Ps UGE遺伝子の 226バンドとともに、 ハイグロマイシン抵抗性 (HPT)遺伝子の内 部配列 400bpのバンドが得られた。
以上の実験から、 安全性の高い植物由来の Ps遺伝子をマーカー遺伝子とし、 抗 生物質と比較して人体に影響の少ない糖であるガラクトースを用いることによつ てイネ科組換え植物体の選抜が可能であることがわかった。
(実施例 8 ) 形質転換体 (シロイヌナズナ) の作製及び導入遺伝子の確認
(1) Ps UGE形質転換シロイヌナズナの作製
(1 - 1) 凍結融解法によるァグロパクテリゥムへの遺伝子導入
実施例 2にて作製したプラスミ ド UGEla/pBI221Hmをァグロバタテリゥムに凍 結融解法によって導入した。 まず、 24時間培養し飽和した Agrobacterium tumefaciens (GV3101株)の菌液 0. 5mlを 50mlの培養液 (LB培地) に入れ 8時間培養 した。 集菌後 300 μ 1の YEB培地(ビーフエタストラクト 5. 0g, ポリペプトン 5. 0g, バク トイース トエタス トラク ト l. Og, シュクロース 5. 0g, MgS04 - 7H20 0. 5g /
500 ml)に DNA溶液 0. を懸濁した。 懸濁液を液体窒素中で 5分静置後、 37°Cゥ ォータバスで静置した。 30°Cで 1時間培養し、 培養液をカナマイシン.(終濃度 50 μ g/ml) を含む LB寒天培地に塗布し、 2晚培養して形質転換体を選抜した。 出現
した形質転換コロニーについて single- colony i solationを行った後に、 コロニ 一を複数個釣菌し、 PCR法により目的のプラスミ ドの存在を確認した。
(1 - 2) 形質転換用ァグロバタテリゥムの培養
Ps UGE遺伝子の導入が確認されたァグロパクテリゥム 1コロニーを釣菌し、 前 培養としてカナマイシン (終濃度 50 μ /ηι1) を含む lmlの LB液体培地にて 30°Cで 約 24時間培養した。 この前培養液 750 1を 150 mlの LB培地に加え 30°Cで約 24時間 さらに培養した。 遠心分離により集菌し、 感染液 (1/2 X MS salt, 5% シュクロ ース, 0. 05% si lwet) に再懸濁した後に 600nmの吸光度を測定し、 600nmの吸光度 を 0. 5程度に調整した。 本溶液をシロイヌナズナの感染に用いた。
(1 - 3) シロイヌナズナの形質転換
シロイヌナズナの形質転換は、 島本功 ·岡田清隆監修、 植物細胞工学シリーズ、 モデル植物の実験プロトコール、 秀潤社、 pp. 109- 113、 2001に記載の減圧浸潤法 を用いて以下のようにして行った。
市販のシロイヌナズナ (品種: Columbia) の種子を、 培養土に撒種し、 23°C、 長日条件 (14時間明、 10時間暗) にて生育させた。 発芽後、 適当に間引きし、 約 2〜3週間後、 茎の高さが数 cmとなったところで摘心を行った。
上記の摘心した植物体を、 摘心後約 1週間後に(1— 2) で調製したァグロバクテ リウム感染液に減圧下で浸潤させた。 1日後、 植物体を浸潤液から取り出し、 2〜 4週間生育させ、 T1種子を採取した。
(2) Ps UGE遺伝子のホモラインの獲得
To世代より採種した Π種子をカナマイシン (終濃度 50 i g/ml) を含む 1/2MS寒 天培地に播種し、 耐性株を選抜した。 得られた T 1世代形質転換体をロックウー ルに定植し、 14時間日長、 24°Cにて栽培し、 T2世代種子を得た。 この T2世代種子 を選抜培地に播種し、 薬剤耐性が 3: 1に分離するラインを選び、 T3世代の分離比 を検定することにより、 ホモラインを獲得した。
(3)ゲノムサザンハイブリダィゼーションによる導入遺伝子の確認
獲得したホモライン (Ps UGE6- 3、 Ps 10-1、 Ps 11-1、 Ps 15-5) において、 Ps 遺伝子の導入を確認するために、 ゲノムサザンハイプリダイゼーションを行った。 ゲノム DNAはホモ接合体であると判断された T3世代種子を MS培地に播種し、 2週間
後地上部を収穫し、 液体窒素で保存した。 この試料よりキアゲン社製 Dneasy Kit を用いて、 ゲノム DNAを抽出した。 各 DNA (各 は、 制限酵素 Hindlllで消化し 0. 6%ァガロースゲルにて電気泳動した。 ゲルは、 メンブランに定法に従って移し た。 プローブは、 PBI 121のカナマイシン耐性 (NPT) 遺伝子領域を Alphos Direct にてラベルしたものを用いた。 ー晚 55°Cにてハイブリダーゼーションを行った後 1次洗浄液にて 55°C、 10分の洗浄を 2回行い、 2次洗浄液にて 5分 2回の洗浄を行つ た。 検出はプロ トコールに従った。 ゲノムサザンハイプリダイゼーシヨンの結果 を図 1 7に示す (レーン 1 :非形質転換体、 レーン 2〜5 : Ps UGE形質転換体) , レーン 2は 3から 4コピー、 レーン 3 , 4は 1コピー、 レーン 5は 8コピー以上と 推定された。
(4)導入遺伝子発現の確認
T3世代における Ps遺伝子の発現を確認するために、 RT- PCRを行った。 キアゲン 社製 Rneasy Mini Kitを用いてプレートの植物より全 RNAを抽出した。 全 RNAは、 Rnase free Dnaseを用いて、 ゲノム DNAを消化し除いた。 これを cDNA合成の铸型 に用い、 ol igo - dTをプライマーとして逆転写酵素作用させ、 1本鎖 c DNAを合成し た。 この 1本鎮 cDNAを鑄型に、 5' - GTG GTC GAC AAC TTC CAC AA- 3' (配列番号 1 6 ) 、 5, -TTG TTC TCG TAG ATG TA - 3, (配列番号 1 7 ) をプライマーとして PCR を行った。 PCR条件は 98°C 2分、 (95°C30秒、 55°C 30秒、 72°C 1分) X 30サイク ル、 74°C 5分の後、 4 °Cで維持とした。 RT— PCRの結果を図 1 8に示す。 検出さ れた断片長は約 250bpであり、 目的の長さであった。
(実施例 9 ) Ps UGE形質転換シロイヌナズナのガラク トース耐性の確認 野生型、 pBI 121形質転換体、 Ps UGE形質転換体のシロイヌナズナから種子を採 取し、 定法に従って滅菌処理を行い、 1/2 MS、 1% ガラク トース寒天培地に播種 し、 その生育を観察した。 結果を図 1 9に示す。 野生型、 及び pBI 121形質転換体 は、 ガラク トース培地にて著しく生育が阻害されたが、 Ps UGE形質転換体は、 阻 害されなかった。
(実施例 1 0 ) Ps UGE形質転換シロイヌナズナの耐塩性評価
Ps UGE形質転換シロイヌナズナ種子をロックウールに播種し、 14時間日長、 100 μ Ε、 湿度 60%の条件下で、 3週間生育させた。 培養液は、 PNSを 1週間に 1度の 頻度で与えた。 3週間後、 200 mM NaClを加え、 3日から 4日ごとに交換した。 ま た、 3日から 4日ごとに生育状況の観察を行った。 図 2 0に、 塩処理後 7日の写真 を示した。 非形質転換体はロゼット葉が完全に枯死しているが、 形質転換体では 花茎が伸張し、 採種に至ることが分かる。
(実施例 1 1 )
双子葉植物として、 トマト、 ポプラ、 ユーカリを例として、 その形質転換体の 作製及ぴ導入遺伝子の確認の手法を説明する。
1 . 形質転換体の作製
(1) Ps UGE形質転換トマトの作製
トマト (栽培品種: 'ミニトマト㈱福花園種苗) の種子を 70%エタノール (30 秒) 、 2%次亜塩素酸ナトリウム (15分) を用いて表面殺菌した後、 植物ホルモン を含まない MS寒天培地に置床し、 16時間日長、 25°Cで 1週間培養する。 得られた 無菌幼植物より子葉を切り取り、 2mg/lゼァチンと 0. lmg/1ィンドール酢酸添加 MS 寒天培地 (細分化培地、 9cmシャーレ) に置床し、 2日間同条件で培養し、 これを 形質転換材料として用いる。
Agrobacterium tumefaciens (EHA101株)に実施例 8と同様にして Ps UGE遺伝子 を導入し、 YEP培地 (バク トリプトン 10g、 イーストェクス トラタ ト 10g、 ダルコ ース 1 g / 1000ml)にてー晚培養することによって得られたァグロバタテリゥム 菌液を感染液として用いる。 2日間培養した子葉を滅菌シャーレに集めァグロバ クテリゥム菌液を感染させる。 滅菌したろ紙を用いて余分なァグロパクテリゥム 菌液を子葉から取り除き、 さらに、 ァグロパクテリゥムの急激な増殖を抑える為 に、 先に用いたシャーレ培地に滅菌ろ紙を引き、 その上に、 感染させた子葉を乗 せ、 24時間共存培養する。
(2) Ps UGE形質転換ポプラの作製
ポプラ (Poplus alba) の葉を洗剤でよく洗い、 1 %の次亜塩素酸で処理した 後、 滅菌水で洗浄し、 これを形質転換植物材料として用いる。 上記と同様にして
調製したァグロパクテリゥム菌液を感染液として用い、 形質転換は、 木材科学講 座 11、 バイオテクノロジー、 海青社、 p. 42、 2002に記載の具体的手順に従い、 リ ーフディスク法によつて行う。
(3) Ps UGE形質転換ユー力リの作製
ユーカリ (Eucalyptus camaldulensis) の in vitro植 体力、ら 3〜 5 mmの葉 切片 (葉柄は除く) を調製し、 これを形質転換材料として用いる。 上記と同様の ァグロパクテリゥム菌液を感染液として用い、 形質転換は、 Plant Cell Reports (1997) 16: 787- 791に記載の具体的手順に従って行う。
2 . 導入遺伝子の確認
再生させた植物体 (トマト、 ポプラ、 ユーカリ) の形質転換体よりそれぞれ lOOmgの葉を採取し、 キアゲン社製 Dneasy Kitを用いて DNAを抽出する。 この DNA を铸型に、 5, -GTG GTC GAC AAC TTC AA-3' (酉己列番号 1 6 ) 、 5 ' — TTG TTC TCG TAC ATG TA- 3, (配列番号 1 7 ) プライマーとして PCRを行う。 PCR条件は 98°C 2分、 (95°C30秒、 55。C30秒、 72°C 1分) X 30サイクル、 74°C 5分の後、 4 °Cで維持とする。 遺伝子の導入の確認は PCR産物をァガロースゲル電気泳動し、 目的の長さの断片を検出することにより行う。 本明細書で引用した全ての刊行物、 特許及び特許出願をそのまま参考として本 明細書に組み入れるものとする。 産業上の利用可能性
本発明によれば、 塩ス トレス耐性を付与できる遺伝子が提供される。 本遺伝子 をイネなどの植物に導入することにより、 塩ス トレスの環境下で長期間生育し、 種子をつけることのできる耐塩性植物を作出することができる。