ボリヌクレオチドからなるワクチン 技術分野
本発明は、 生体内において腫瘍特異免疫を発現させるためのワクチンに関する。 より詳細には、 CD4+ヘルパー T細胞により認識される抗原、 および腫瘍特異性抗 原、 腫瘍関連抗原または細胞関連抗原をコードする発現ベクターを含むポリヌク レオチドワクチンに関する。 ここで CD4+ヘルパー T細胞により認識される抗原は 好ましくは、 SE EX (serological ident i f icat ion of ant igen by recombinant cDNA express ion cloning) 法により同定された癌/精巣抗原である。 腫瘍免疫を 発現させるための CD4+ヘルパー T細胞の活性化を確実に達成するにはィンターフ ェロンガンマをコードする発現ベクターを同時に投与することが好ましい。 腫瘍 特異性抗原、 腫瘍関連抗原または細胞関連抗原は好ましくは、 一つまたは複数の 癌種において高い発現率を示し、 ヒトを含む哺乳動物の主要組織適合性 (MHC) 抗原クラス I分子のタイプと好ましい適合性を示して結合する抗原部位を含む抗 原である。 また、 これに限定されるわけではないが、 CD4+ヘルパー T細胞により 認識される抗原、 および腫瘍特異性抗原、 腫瘍関連抗原または細胞関連抗原をコ ードする発現べクタ一、 さらにインターフェロンガンマをコードする発現べクタ 一は、 好ましくは同じ細胞で発現され、 提示されることを可能とするように同一 の担体粒子等の上に固定され、 細胞内へ投与されるものである。 背景技術
ここ 10余年来、 日本における死亡原因では癌が第一位を占めており、 手術、 放射線および化学療法と共に免疫療法も第 4の治療法として期待されている。 免 疫療法は生体内の免疫応答のシステムを利用した治療法である。 免疫応答の誘起
と制御は Bリンパ球、 Tリンパ球、 抗体、 および、 抗原提示細胞 (APC) の間の 相互作用により行われる。 まず、 外来抗原は APCによるプロセシングを受け、 主 要組織適合複合体 (MHC) クラス Iおよびクラス I I分子に結合され、 ヘルパー T 細胞に提示される。 ヘルパー T細胞により MHCに結合した外来抗原が認識される ことにより、 T細胞の活性化が起こり、 サイ卜力インが分泌され、 抗原で刺激さ れた B細胞が抗体産生細胞へと分化するのを助けると共に、 キラ一 T細胞の分化 も促す。 分泌された抗体および活性化されたキラー T細胞により抗原を提示する 細胞が排除され、 外来抗原を排除する細胞性 ·体液性の反応が進行する。
抗原を発現する細胞の T細胞による排除は主に、 1) 体液性免疫 (活性化ヘル パー T細胞により特異的 B細胞クローンの増殖 ·分化が刺激され抗体が産生され、 抗体が抗原の認識と排除に働く) 、 2) 特異的細胞性免疫 (活性化ヘルパー T細 胞により抗原特異的に反応する細胞障害性 T細胞 (CTL) が誘導され、 直接標的 に作用する) 、 および、 3) 非特異的細胞性免疫 (活性化ヘルパー T細胞により 非特異的なナチュラルキラー細胞や活性化マクロファージ等が誘導されて働く) に分類することができる。 以上のように T細胞が中心的な役割を果たして、 標的 となる抗原を認識し免疫応答が動員される。
腫瘍拒絶においても、 先天性および自己由来の腫瘍細胞、 または、 その断片誘 導体を用いた適当な免疫化により宿主細胞において抗腫瘍免疫応答が誘導される ことが古くから知られている (L. Gross, Cancer Res. 3 : 326-333 (1943) ; E. J. Foley, Cancer Res. 13 : 835-837 (1953); R. T. Prehn and J. M. Main, J. Nat l. Ca ncer Inst. 18 : 769-778 (1957); G. Klein e t al. , Cancer Res. 20 : 1561-1572 (1980); L. Old et al. , Ann. N. Y. Acad. Sc i. 101 : 80-106 (1962); A. Globe r son and M. Feldman, J. Nat l. Cancer Ins t. 32 : 1229-1243 (1964) ) 。 このような抗腫 瘍免疫システムにおける CD8+および CD4+T細胞の役割が注目されている (R. J. N orth, Adv. Immunol 35 : 89-155 (1984); P. D. Greenberg, Adv. Immunol. 49 : 28
1-355 (1991); D. M. Pardol l and S. L Topal ian, Curr. Opin. Immunol. 10 : 588-5
94 (1998)) 。 特異的に免疫化されたマウス由来の CD8+T細胞は ^ r / におい て腫瘍標的細胞を破壊することができ (H. Wagner et al. , Adv. Cancer Res. 31: 77-124 (1980)) 、 免疫化されたドナーからの CD8+T細胞の受身的な転移(adopt ive transfer)は感受性マウスに腫瘍移植に対する抵抗性を与える (R. L North, Adv. Immunol 35: 89-155 (1984); P. D. Greenberg, Adv. Immunol. 49: 281-355 (1991); C. J. M. Melief, Adv. Cancer Res. 58: 143-175 (1992)) ことが報告され ている。 さらに、 抗 CD8+抗体は予め免疫化されたマウスの腫瘍移植に対する抵 抗性を消失させる (E. Nakayama and A. Uenaka, J. Exp. Med. 161: 345-355 (198 5); X. G. Gu et al., Cancer Res., 58: 3385-3390 (1998); Y. Noguchi et al. , Proc. Natl. Acad. Sci.USA 92: 2219-2223 (1994)) ことも知られている。 ここ十 年で、 マウスおよびヒトの腫瘍細胞由来で CD8+T細胞により認識される MHCクラ ス I結合べプチドが明らかにされてきた (T. Boon et al. , Annu. Rev. Immunol. 1 2: 337-368 (1994); S. A. Rosenberg, Immunity 10: 281-287 (1999)) 。
腫瘍抗原、 即ち腫瘍細胞上の標的分子には、 MHCクラス I分子によって提示さ れる腫瘍べプチドで細胞性免疫の主役である CD8+CTLの標的である分子 (腫瘍拒 絶抗原) 、 および、 腫瘍細胞膜に発現する腫瘍関連抗原と呼ばれる体液性免疫 (抗体) の標的となる分子の 2つの形態が存在する。 Tリンパ球に認識されるヒ ト腫瘍抗原が遺伝子レベルで明らかにされて以来、 種々のヒト腫瘍拒絶抗原が見 出されている。 メラノ一マにおいて、 腫瘍拒絶抗原を用いた特異免疫療法として のワクチン療法による明らかな抗腫瘍効果も認められている。 更に、 サイトカイ ンを併用しての免疫療法効果の増強や、 抗原ペプチドをパルスした樹状細胞、 ま たは、 抗原遺伝子を導入した樹状細胞の応用も試みられており、 最近では DNAヮ クチンも試みられている。
また、 CD4+T細胞によるヘルパー作用を増大させる方法も多数、 試みられてい ¾ (D. Pardoll and S. L. Topal ian, Curr. Opin. I画 unol. 10: 588-594 (1998) ; . F. Wang, Trends Immunol. 5: 269-276 (2001))。 従来の方法は 3つに分類するこ
とができる。 1つは、 例えば抗原のハプテン化(Y. Mizushima et al. , J. NaU. Ca ncer Inst. 74: 1269-1273 (1985) )、 または、 抗原に異種免疫原性ペプチドを直 接連結させる方法 (R. W. Chesnut et al. (1995) Vaccsine Design, eds. M. F. Po wel l and M. J. Newman (Plenum, New York) pp. 847-874; J. Rice et al., J. I腿 u nol. 167 : 1558-1565 (2001) ) 等の免疫抗原自体の修飾である。 第 2の方法は、 腫瘍抗原と、 腫瘍抗原をコードするウィルスベクタ一(M. Wang et al. , J. Immuiio l., 154: 4685-4692 (1995) )等の強いヘルパー決定基を持つ分子との共免疫化に よる方法である (R. Romieu et al. , J. Immunol. 161 : 5133-5137 (1998) ; N. Cas ares et al. , Eur. J. Immunol. 31 : 1780-1789 (2001) ) 。 最後の方法は、 CD40 リガンド(J. P. Ridge et al. , Nature (London) 393: 474-478 (1998); S. R. M. Ben nett et al. , Nature (London) 393 : 478-480 (1998); S. P. Schoenberg et al. , Nature (London) 393 : 480-483 (1998) )、 および、 CD4+T細胞のヘルパー機能お よび APCの CD4+T細胞との相互反応を調節するその他の刺激性または共刺激性シ グナル (A. Porgador et al. , J. Exp. Med. 188 : 1075-1082 (1998) )等の分子シグ ナルの発見に基づく方法であり、 この発見により CD8+T細胞の応答を増大させる 方法が提供されると考えられている。
一方、 抗体は従来、 抗腫瘍エフェクター機能に関しては大した役割を有さない と考えられていたが、 腫瘍抗原が細胞性免疫および体液性免疫の両方を含む強い 完全な免疫応答を誘導することも明らかになってきている(例えば、 Y. - T. Chen e t al. , Proc. Nat l. Acad. Sci. USA 94: 1914-1918 (1997); E. Jager et al. , J. Ex p. Med. 187 : 625-630 (2000) ; E. Jager et al. , Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97 : 1 2198-12203 (2000)など)。 腫瘍に対するワクチンとなり得る腫瘍関連抗原を同定 する方法として、 近年 Pfreundschuhら (Proc. Nat l. Acad. Sci. USA 94: 1914-1 918 (1997) ) により SEREXと呼ばれる方法が開発された。 該方法は、 ヒト血清を 用いてヒト腫瘍の cDNA発現ライブラリ一の検索を行うものであり、 インターネ ットには、 SEREX法により同定された遺伝子が SEREXデータベースとして 1800
種を超えて登録されている (www. licr.org/SEREX.html) 。
しかし、 同定された抗原ペプチドや DNAによりいかに効率良く腫瘍特異免疫を 誘導し、 腫瘍を完治させるためにどのようなアジュバントや APCを用いるべきか、 腫瘍の免疫系からの逃避にどのように対処するかといった多数の問題についての 解決は未だなされていない。
ところで、 CTLの定量的/定性的な増幅におけるヘルパー T細胞の必要性が良, く報告されているが、 それらにより認識される抗原分子の性質、 および、 抗腫瘍 免疫応答に対する機能的影響については未だにほとんど知られていない(P. D. Gre enberg, Adv. Immunol. 49: 281-355 (1991); D. M. Pardoll and S. L. Topal ian, C urr. Opin. Immunol. 10: 588-594 (1998); S. R. Bennett et al. , J. Exp. Med. 18 6: 65-70 (1997); R. F. Wang Trends I匪 imol. 5: 269-276 (2001); C. Fayolle et al. , J. Immunol. 147: 4069-4073 (1991); M. Shiral et al. , J. Immunol. 152: 1549-1556 (1994); K. Hung et al. , J. Exp. Med. 188: 2357-2368 (1998); F.0s sendorp et al. , J. Exp. Med. 187: 693-702 (1998); Y. Shen and S. Fujimoto, C ancer Res. 56: 5005-5011 (1996); T.Nishimura et al. , J. Exp. Med. 190: 61 7-627 (1999); D. R. Surman et al. , J. Immunol. 164: 562-565 (2000); A. Franc o et al. , Nat. Immunol. 1: 145-150 (2000); C. N. Baxevanis et al. , J. Immuno 1. 164: 3902-3912 (2000); F. Fallarino et al. , J. Immunol. 165: 5495-5501 (2000); A. L. Marzo et al. , Cancer Res. 59: 1071-3390 (1999); A. L. Marzo et al. , J. Immunol. 165: 6047-6055 (2000))。 最近提案されているヘルパー T細 胞、 CTLおよび APC間の連続的な細胞間相互作用では、 抗腫瘍免疫応答に関係す るヘルパー T細胞が、 広い範囲にわたる多様な抗原を認識する可能性が示唆され ている (J.P. Ridge et al. , Nature 393: 474-478 (1998); S. R. M. Bennett et a 1., Nature 393: 478-480 (1998); S. P. Schoenberger et al. , ature 393: 48 0-483 (1998); Z. Lu et al. , J. Exp. Med. 191: 541-550 (2000)) 。
上記において述べた SEREX法によりヒトおよびマウス腫瘍における体液性免疫
応答の分析が大幅に進められている (Y. -T. Chen et al. , Proc. Natl. Acad. Sci.U SA 94: 1914-1918 (1997); E, Jager et al. , J. Exp. Med. 187: 625-630 (2000); E. Jager et al. , Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97: 12198-12203 (2000); U. Sahin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 11810-11813 (1995); L. J. Old and Y. -T. Chen, J. Exp. Med. 187: 1163-1167 (1998); Y. -T. Chen, (2000) in "Principle and Practice of the Biologic Therapy of Cancer", ed. S. A. Rosenberg (Lipp incott Williams & Wilkins, Philadelphia) pp.557-570; T. Ono et al. , Int. J. Cancer 88: 845-851 (2000)) 。 SEREX法により同定された遺伝子の多くが完全 に配列決定した場合に野生型と同じ配列、 即ちアミノ酸置換等を有さないことが 報告されている (L. J. Old and Y.-T. Chen, J. Exp. Med. 187: 1163-1167 (1998); Y. -T. Chen, (2000) in "Principle and Practice of the Biologic Therapy of Cancer", ed. S. A. Rosenberg (Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphi a) pp.557-570) 。 従って、 これらの分子は変異により免疫原性を示すものでは なく、 また幾つかの SEREX抗原は普通の組織において腫瘍における限定的な発現 (例えば、 癌/精巣抗原およびメラニン細胞分化抗原等) を示すが、 ほとんどの SEREX同定抗原は普遍的に発現されている。 しかしながら、 これらの野生型分子 に対して高い力価を有する抗体が関連または非関連癌患者の血清試料中で、 健常 者と比べてより多く見つかつている。 現在のところ、 これらの腫瘍産物の増幅さ れた発現が体液性免疫を誘起する免疫原刺激であるとされている。 これらの分子 の全てが IgGクラスの抗体により検出されるので、 これらの野生型分子の CD4+ ヘルパー T細胞による認識が考えられる。 上記知見を勘案し、 本発明者らは腫瘍 細胞の免疫原性野生型分子が CD4+ヘルパー T細胞を活性化することにより腫瘍特 異的 CD8+CTLを増幅させることができるか、 即ち抗腫瘍免疫応答に関与すること を明らかにした (ENishikawa et al, Pro. Natl. Acad. Sci. USA 98 (25): 14571- 14576 (2001)) 。
DNAワクチンに関しては、 naked DNAの筋肉内投与により体液性および細胞性
免疫応答の両方が誘発されることが証明されている。 DNAワクチンが免疫応答を 誘発する正確な機構は現在のところ不明であるが (Pardoll et al., Immunity 3: 165-169 (1995)参照) 、 その有効性は、 体液性および細胞性免疫の誘発によ り示される。 この結果は、 DNAワクチンの投与後に naked DNAが発現され、 その ペプチド産物が MHCクラス Iおよびクラス II蛋白質と共に抗原として提示され ることを示す。
CTL上の T細胞レセプターが MHCクラス Iおよび/またはクラス II分子と結 合したウィルスまたは細菌等の由来の外来ペプチドを抗原として認識することに より、 各種リンホカイン産生および細胞増殖等の反応を促し、 ペプチドが由来す るウィルスまたは細菌等に感染した細胞を殺すことが知られている。 これらの抗 原ペプチドは、 その病原体中での存在場所や機能に関係なく APCまたは他の細胞 が細胞内に取込み、 処理した断片である。 人工的に CTL応答を生じさせるために は、 細胞内で蛋白質抗原を産生させる複製ベクターを用いる (J.R.Bennink and J. W. Yewdell, Curr. Top. Microbiol. Immunol. 163: 153 (1990); C. K. Stover et al., Nature 351: 456 (1991); A. Aldovini and R. A. Young, Nature 351: 479 (1991); R. Schfer et al. , J. Immunol. 149: 53 (1992); C. S. Hahn et al. , Pro c.Natl. Acad. Sci. USA 89: 2679 (1992)) か、 または、 細胞質ゾル中にペプチド を導入する方法 (F. R. Carbone and M. J. Bevan, J. Exp. Med. 169: 603 (1989); K. Deres et al. , Nature 342: 561 (1989); H. Takahasi et al. , Nature 344: 873 (1990); D.S.Collins et al. , J. Immunol. 148: 3336 (1992); M. J. Newman et al., J. Immunol. 148: 2357 (1992) )が知られている。
また、 nakedポリヌクレオチドをワクチンとして脊椎動物に接種する方法が検 討されている (wogoziiogzuggo年 10月 4日)。 マウス腹腔内、 静脈内または 筋肉内に投与された塩化カルシウム沈殿 MAが発現され得ることが公知である (N.Benvenisty and LReshef, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83: 9551-9555 (198 6)) 。 マウスにおいて、 DNA発現べクタ一を筋肉内注射することにより筋肉細胞
に該ベクターが取込まれ、 細胞内で該ベクターの発現が起こることが示された (J. A. Wolff et al., Science 247: 1465 (1990); G. Ascadi et a Nature 35 2: 815 (1991)) 。 この場合、 該ベクタ一はェピソ一ムとして維持され、 複製は されなかった。 ラット、 魚および霊長類の骨格筋、 並びに、 ラット心筋への注射 後には永続性の発現が観察された (H. Lin et al., Circulation 82: 2217 (199 0) ; R. N. Kitsis et al. , Pro Natl. Acad. Sci. USA 88: 4138 (1991); E. Hansen et al. , FEBS Lett. 290: 73 (1991); S. Jiao et al., Hum. Gene Therapy 3: 21
(1992); J. A. Wolff et al. , Human Mo 1. Genet. 1: 363 (1992)) 。 また、 APC 表面の B7および MHCのェピトープの提示が、 腫瘍除去の際の CTL活性化におい て同程度の役割を果たすことが報告されている (Edington, Biotechnology 11: 1117-1119 (1993)) 。 この際に、 APC表面の MHC分子が T細胞レセプ夕一にェピ ト一プの提示を行うと、 同じ APC表面上に発現されている B7が CTLA- 4または C D28に結合し、 第 2のシグナルとして作用する。 その結果、 APCを壌す CD8+T細 胞を増殖させるシグナルを発する CM+ヘルパー T細胞が急速に分裂する。
DNAによる免疫化のためには、 DNAの筋肉内投与の形態を必ずしも取る必要は なく、 例えば、 ゥシ成長ホルモン (BGH)をコードする DNAで被覆した金粒子をマ ウスの皮膚に投与することによりマウスで抗 BGH抗体が産生されることが Tang らにより示された(Nature 356: 152-154 (1992))。 また、 皮膚以外にもジェット 注射器を使用して生きている動物の筋肉組織、 脂肪組織および乳腺組織等をトラ ンスフェクトすることができることが報告されている (Furth et al., Analytic al Biochemistry 205: 365-368 (1992)) 。 核酸を生体内へ導入し得る種々の方 法が総説 (T. Friedman, Science 244: 1275-1281 (1989)) としても発表されて いる。 W093/17706 には、 動物にウィルスに対するワクチン摂取する方法として、 担体粒子を遺伝子構築物で被覆し、 被覆した粒子を動物の細胞内に投与する方法 が記載されている。 ヘルぺスウィルスに対する DNA免疫化(Cox et al., J.Virol. 67: 5664-5667 (1993) )等が報告されている。 また、 DNAワクチン、 並びに、 そ
の製造法および投与法等については米国特許第 4, 945, 050号、 第 5, 036, 006号、 第 5, 589, 466号、 および、 W094/16737等にも記載されている。 発明の開示
本発明の目的は、 腫瘍に対するより有効な免疫療法を提供することであり、 早 期癌の根治療法、 術後の癌の再発または転移の抑制療法、 および腫瘍が発見され ながらも手術が不可能で放射線および化学療法も有効でない患者に対する治療法 を提供することである。
本発明は、 腫瘍特異免疫を発現させるためのワクチンに関するものであり、 CD 4+ヘルパー T細胞により認識される抗原、 および腫瘍特異性抗原、 腫瘍関連抗原 または細胞関連抗原をコードする発現べクタ一および好ましくはイン夕一フエ口 ンガンマをコードする発現ベクターをポリヌクレオチドワクチンとして用いるこ とにより腫瘍特異免疫を誘導することができるという発見に基づくものである。 従って、 本発明は CD4+ヘルパー T細胞より認識される抗原、 および腫瘍特異性抗 原、 腫瘍関連抗原または細胞関連抗原さらに好ましくはインターフェロンガンマ をコードする発現ベクターを含む組成物に関する。 より詳細には、 CD4+ヘルパー T細胞により認識される抗原は好ましくは SEREX法により見つけられた分子であ り、 さらに好ましくは普通の組織において腫瘍における限定的な発現を示す SER EX抗原であり、 特に癌/精巣抗原として分類されている NY- ES0- 1、 MAGE-A4など が挙げられる。 本発明者はすでに、 SEREX抗原と腫瘍特異性抗原、 腫瘍関連抗原 ま は細胞関連抗原とを同時に提示することにより腫瘍特異免疫を強力に誘導で きることを示した ( Ni shikawa et al . Pro. Nat. Acad. Sc i. USA. 98 (25) : 14571 (2001) )が、 一方では SEREX抗原のみの提示の場合にはむしろ CD4+ヘルパー T細 胞の活性を抑制する結果として腫瘍特異免疫を抑制すること、 およびその抑制は インターフェロンガンマの同時発現によって阻止されることを発見した (特願 2 002 - 254967、 Nishikawa et al. Proc. Nat. Acad. Sci. USA. 100 (19) : 10902 (200
3)) 。
従って、 これに限定されるわけではないが、 CD4+ヘルパー T細胞、 および腫瘍 特異性抗原、 腫瘍関連抗原または細胞関連抗原、 さらに好ましくはインターフエ ロンガンマは好ましくは同じ細胞で発現され、 提示されることを可能とするよう にそれらをコードする発現べクタ一は同一の担体粒子上に固定され、 細胞内へ投 与されるものである。
本明細書中に記載の 「CM+ヘルパー T細胞により認識される抗原」 とは、 成熟 したヘルパー T細胞、 および、 その前駆体細胞上に発現する糖タンパク質 CD4+の ェピトープとなる部分を含むポリペプチドを指す。 T細胞受容体が MHCクラス II により提示された抗原を認識する際に、 CD4は MHCクラス IIの /32ドメインに結 合し、 T細胞の抗原認識能を高め、 細胞内にシグナル伝達し、 増殖やサイトカイ ンの分泌を促進する働きを持つ分子である。 本発明では、 CD4+ヘルパー T細胞に 認識される分子のうち特に SEREX法により同定される分子である。 これらに限定 されるわけではないが、 例えば癌/精巣抗原である NY-ES0_1、 MAGE- A4や熱ショ ックタンパク質である DnaJ- like 2、 DNAリガーゼ 1、 ガレクチン 1および、 pol y(A)結合タンパク質、 Homo sapiens へキサメチレン-ビス -ァストアミド誘導性 タンパク質、 ヒトレチノイン酸応答性蛋白質(retinoic acid-responsive protei n)、 E sapiens肝炎デルタ抗原反応蛋白質 A (hepatitis delta antigen interact ing protein A; DIPA)、 H. sa iens cDNA FLJ20644 fisクローン讓 2588 (FLJ2 0644fis) 等を挙げることができる。 SEREX法により同定される分子のほとんど は、 健常者にも普遍的に発現している野生型分子であるが、 健常な組織に対する 無用な免疫応答を回避するためには腫瘍に限定的に発現する SEREX同定分子が好 ましく、 例えば癌/精巣抗原である NY- ES0- 1や MAGE- A4は特に好ましい。
また、 本明細書中の 「臞瘍特異性抗原、 腫瘍関連抗原または細胞関連抗原」 と は、 腫瘍に関連した抗原、 あるいは特定の腫瘍細胞に特異的に発現している抗原 を指し、 癌と精巣のみに発現する抗原として MAGE、 BAGE、 GAGE, SAGE, NY-ES0-
1など、 発癌の過程において変異した遺伝子産物に由来する癌特異的変異抗原と して CDK4、 MUM- 1、 CASP- 8、 ras、 bcr- ablなど、 特定組織に限局して発現する組 織特異的抗原として MART- 1、 TRP、 チロシナーゼ、 gpl00、 PSA, プロティナーゼ 3など、 癌に高発現するタンパク質抗原として HER2/neu、 CEA、 SART1など、 ゥ ィルス抗原として EBV、 HPV、 HTLV-1 などが挙げられる。 ここで腫瘍特異性抗原、 腫瘍関連抗原または細胞関連抗原はその全長夕ンパク質であっても良いし、 免疫 原性を示す断片であってもよい。
腫瘍特異性抗原や腫瘍関連抗原は、 各種の癌で特徴的な発現を示し、 例えば H er2/neuは乳癌、 卵巣癌、 胃癌、 肺癌などで 20〜30%の発現率である。 また、 N Y-ES0-1は、 乳癌、 卵巣癌、 食道癌の 20〜30%に、 MAGE-A4は頭頸部癌、 食道癌 の 50〜60%、 肺癌の 20%に、 SAGEは肺癌、 食道癌、 頭類部癌の 20%に発現してい る。 従って、 これらの癌の治療に供する癌ワクチンに用いる腫瘍特異性抗原、 腫 瘍関連抗原または細胞関連抗原としては上記の高発現抗原が特に好ましい。 さら に、 NY- ES0- 1や MAGE-A4など癌/精巣抗原の中には、 MHCクラス Iに結合して CD 8+CTLを刺激する抗原部位と、 MHCクラス Πに結合して SEREX抗原と同定される 抗原部位とを同一分子中に有するものが複数知られており、 これらは特に好まし い抗原である。
さらに、 CD8+CTL細胞を活性化する腫瘍特異性抗原、 腫瘍関連抗原または細胞 関連抗原は本発明によるワクチンが投与される宿主動物の MHCクラス Iに結合し て初めてその機能を果たすものであるが、 宿主動物がヒ卜である場合に CD8+CTL 細胞の活性化抗原は各人が有する HLA—Aまたは Bまたは C座のクラス I分子に 結合しなければならない。 ちなみに抗原提示に重要であると考えられている HL A - A座に関しては 23種類のタイプが知られており、 日本人を含むモンゴリアン は A24や A2と呼ばれるタイプが多くて 70%以上を占め、 北米白人などのコ一力 シアンは Al、 A2、 A3および A29など、 アフリカンは A30や A2が多い。 Her2/neu はその分子内に HLA- A2や HLA- A24に結合するェピトープを有することが知られ
ており、 gpl00、 MART_1、 チロシナーゼなどの組織特異的抗原や MAGE- 3 (A3)、 MA GE - A4、 NY-ESO- 1などの癌/精巣抗原も A2に結合するェピトープを有することが 知られている。 また、 チロシナ一ゼや MAGE- A4、 NY-ESO- L SAGEなどの癌/精巣 抗原は A24に結合するェピトープを有することが知られている。 従って、 本発明 によるワクチンを宿主動物に接種する際には腫瘍におけるこれらの抗原の発現と ともに宿主動物個体の MHCのタイプを調べてそれに合致する抗原を選択すること が好ましい。
ここでより具体的には、 各抗原についての Genbankデータベース登録番号を以 下に示す。
NY-ES0-1: AJ003149
BAGE1: AF499647
GAGE1: NMJ01468
GAGE2:腿一 001472
GAGE8:丽— 012196
SAGE: NM_018666
HER-2/neu: Ml 1730, NMJ04448, NP— 004439
MAGE- A3:丽— 005362
MAGE-A4:丽— 002362
MAGE-A12:匪一 005367
DnaJ-l ike 2: NMJ01539, NP一 001530
PRAME:匪— 006115
Homo sapiens へキサメチレン-ビス-ァストアミド誘導性タンパク質: XM_00
8348
ヒトレチノイン酸応答性蛋白質: U50383
DIPA: XM— 006503
FLJ20644f is: AK000651
本発明において抗原をコードするポリヌクレオチドは、 本発明の方法により宿 主動物に投与することにより所望の免疫応答を生じさせ得る限り、 特に限定され るものではなく、 DNAまたは RNA等であり得る。 本発明の抗原をコードするポリ ヌクレオチドは、 該ポリヌクレオチドによりコードされるポリぺプチドが所望の 免疫応答を宿主において生じさせることができる限り、 そのヌクレオチド配列が 配列部位特異的変異誘発法等の公知の手法により (edi t. Ausubel et al. , Curr ent Protocol s in Molecular Biology (1987) John Wi ley & Sons, Sect ion 8. 卜 8. 5参照) 人工的に 1以上のアミノ酸配列を欠失 '置換'挿入 '付加されたも のでもよい。 また、 所望の免疫応答を宿主動物において生じさせ得る限り、 自然 界に存在する変異を有したポリペプチドをコードするものであっても良い。 この ような天然に存在する変異体は、 公知のハイブリダィゼ一シヨン技術 (edi t. Au subel et al., Current Protocols in Molecular Biology (1987) John Wi ley & Sons, Sect ion 6. 3- 6. 4参照) 、 および、 遺伝子増幅技術 (PCR) (edi t. Ausub el et al. , Current Protocol s in Molecul ar Biology (1987) John Wi ley & So ns, Sect ion 6. 1-6. 4参照)を利用して単離することもできる。
また、 抗原蛋白質をコードする遺伝子が知られている場合に、 その蛋白質のァ ミノ酸配列上の疎水性 親水性領域を解析し (Kyte and Dool i t t le, J. Mol. Biol. 157 : 105-122 (1982) ) 、 二次構造を解析し (Chou and Fasman, Ann. Rev. Bioch em. 47 : 251-276 (1978) ) アミノ酸配列中の抗原性領域を推定すること(例えば、 Anal. Biochem. 151 : 540-546 (1985)参照)、 そして、 推定されたアミノ酸配列の ペプチドを合成しその抗原性を PEPESCAN法 (Nature 314 (1985) ;特表昭 60 - 5 00684号公報) 等により決定することは当業者が容易に行い得ることである。 従 つて、 前記方法に基づき決定されたェピトープ部分を含むぺプチド断片をコード するポリヌクレオチドを化学合成等の手法により製造して本発明の抗原の発現べ クタ一として用いることもできる。
本発明において用いられる発現べクタ一は、 本発明の抗原遺伝子および好まし
くはインターフェロンガンマ遺伝子を組込んだ組換えべクタ一であり、 これらの 遺伝子を挿入するべクタ一としてはプラスミド、 ファージ、 コスミド、 ウィルス、 および、 当分野において従来用いられるその他のベクターを例示することができ る。 当業者であれば、 例えば、 edi t. Sambrook et al. , Molecul ar Cloning A L aboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1989) N. Y.、 および、 上 述の Ausubelらにより編集された文献に記載の技術により様々なプラスミドおよ びべクタ一を構築することが可能である。
ここで用いるプロモータ一、 ターミネータ一等の宿主内における発現制御を行 う因子は、 当業者であれば宿主の種類および目的に応じて公知の制御配列から適 宜選択し、 抗原遺伝子の上流および Zまたは下流に配置することが可能である。 従って、 抗原由来の制御配列を用いてもよいし、 異種の制御配列を用いることも 可能である。 また必要であれば、 抗生物質耐性マーカー等のマーカーを本発明の 発現ベクター中で用いることも可能である。 多数の市販のベクターを利用するこ とができるが、 本発明において必須ではないポリヌクレオチド配列を除去するこ とが好ましい。 インターフェロンガンマ遺伝子の発現べクタ一についても同様で ある。 また、 本発明で用いる CD4+ヘルパー T細胞により認識される抗原をコード するポリヌクレオチド、 および、 腫瘍特異性抗原、 腫瘍関連抗原または細胞関連 抗原をコ一ドするポリヌクレオチドおよびインターフェロンガンマをコードする ポリヌクレオチドは、 同一細胞内で発現されるよう調節されている限り、 各々異 なる発現ベクターに含まれていても、 1つの発現ベクターから発現されるように 構成されていてもよい。
本発明のワクチンは、 動物組織内への導入により、 本発明の抗原の //? w'ra発 現を誘導し、 所望の免疫応答を誘起するものである。 核酸を生体内へ導入する 種々の方法が知られており (T. Friedman, Sc ience 244 : 1275-1281 (1989) ) 、 本発明の抗原の /';? P ' ra発現を誘導し、 所望の免疫応答を誘起するものである限 り、 どのような導入方法を採用することもできる。
本発明の組成物はワクチンとして有用であり、 nakedプラスミドとして使用で き、 リボソーム内にパッケージングするか、 レトロウイルスベクター、 アデノウ ィルスベクター、 ワクシニアウィルスベクター、 ボックスウィルスベクタ一、 7 デノウィルス関連ベクターおよび HVJベクタ一等の各種ウィルスベクタ一として 形成するか (例えば、 K. Adolph "ウィルスゲノム法" CRC Press, Florida (199 6)参照) 、 または、 コロイド金粒子等のビーズ (担体) に被覆して用いることが できる。 これに限定されるわけではないが、 好ましくは遺伝子銃等により生体内 に導入される金粒子等の担体粒子上に、 CD4+ヘルパー T細胞により認識される抗 原および腫瘍特異性抗原、 腫瘍関連抗原または細胞関連抗原および好ましくはィ ン夕一フエロンガンマを発現させるベクタ一を付着させた形態のものである。 ポ リヌクレオチドで担体粒子をコートする技術は公知である(例えば、 W093/17706 参照)。 最終的にポリヌクレオチドは、 生体への投与に適する生理的食塩水等の 溶液中に調製することができる。 また、 免疫応答を増幅するために当分野におい て公知の蛋白質、 または、 他の担体等のアジュバントと一緒に本発明の組成物を 用いてワクチンとしてもよい。 その他、 プラスミドの細胞内取り込みの助けとな るカルシウムイオン等の薬剤を併用することも可能である。 その他、 必要に応じ トランスフエクションを容易にする医薬的に許容される薬剤を併せて用いること ができる。
本発明のポリヌクレオチドワクチンは、 投与された宿主動物中で免疫応答を引 き起こす方法であれば、 いかなる方法により投与してもよい。 好ましくは、 本発 明の組成物は適当な非経口経路、 例えば、 静脈内、 腹腔内、 皮下、 皮内、 脂肪組 織内、 乳腺組織内、 吸入または筋肉内の経路を介して注射、 注入、 または、 ガス 誘導性粒子衝撃法 (電子銃等による) 、 点鼻薬等の形態での粘膜経路を介する方 法等により宿主動物内において免疫応答を引き起こすのに十分な量で投与される。 また、 本組成物を 6 "/ でリボソームトランスフエクシヨン、 粒子衝撃法、 ま たは、 ウィルス感染等を利用して血液細胞、 および、 骨髄由来細胞 (APC等) 等
に投与して、 該細胞を動物に再導入することにより宿主動物を免疫化してもよい。 前述の投与方法のうち、 加速粒子による遺伝子形質転換技術は米国特許第 4, 945, 050号にも記載されており、 その改良法に基づく装置も市販されている(Biorad Laboratories) 中でも樹状細胞(dendri t ic cel l)に r/raでトランスフエク シヨンさせ、 体内に戻すことにより、 より好ましい結果が得られる。
本発明の宿主動物の種類は、 本発明の組成物により腫瘍免疫応答が増強される 限り特に限定されるものではないが、 特に、 マウス、 ラット、 ゥシ、 ブ夕、 並び に、 サルおよびヒト等の霊長類を含む哺乳動物が挙げられる。 特に霊長類、 中で もヒトが本発明の好ましい宿主動物である。
本発明の組成物の投与量は組成物中の成分の宿主における免疫原性に依存する が、 一定量の組成物を試験動物に投与し、 ELISA等の検定法により抗体力価を測 定するか、 クロム放出測定法等により CTL応答を検出するか、 または、 サイト力 ィン放出測定法を使用して Th応答を検出して、 免疫応答を観察することにより 当業者であれば免疫化に必要な適当な量を決定することができる。 組成物中の成 分の免疫原性が、 本発明の発現ベクターで用いる転写および翻訳プロモーター等 の制御配列の強さにも依存するものであることが当業者には理解される。 そして 当業者であれば、 使用する発現ベクターの種類に応じ本発明の組成物の投与量を 調節することも容易に行い得る。
従って本発明は、 臨床において有用な生体内で腫瘍特異免疫を発現させるため のワクチンを提供するものである。 より詳細には、 CD4+ヘルパー T細胞により認 識される抗原、 および腫瘍特異性抗原、 腫瘍関連抗原または細胞関連抗原および 好ましくはインターフェロンガンマをコードする発現ベクターを含むポリヌクレ ォチドワクチンおよび使用方法を提供するものである。 図面の簡単な説明
図 1は、 本発明にかかる組成物の、 ELISPOT assayの結果を示したグラフであ
る。 発明を実施するための最良の形態
続いて実施例により本発明をより詳細に説明するが、 本発明がこれらに限定さ れないことは言うまでもない。
実施例 1 NY- ES0- 1に含まれるヘルパーェピトープによる HER2特異的 CD8陽性 T細胞の増強効果
[方法]
1) プラスミド
以下の遺伝子を発現用べクタ一 pCAGGSに組み込んだプラスミドを作製し、 大 腸菌を用いて発現させ、 精製した。 それぞれを 1 2 g/ Uに調製し、 金粒子にコ 一ティングして、 Hel ios Gene Gun Sys temによる免疫に用いた。
• 147HER2 : c- erbB- 2/HER2/neu (HER2)の N末端から 147アミノ酸をコードする遺 伝子
· p63 (T) mini gene : HER2の CTLェピトープである HER2p63 (T), TYLPTNASLのみ をコードする遺伝子
• NY-ESO-1 : CT抗原である NY-ES0- 1をコードする遺伝子
• mIFN-g: マウスインターフェロンガンマをコードする遺伝子
2) 実験プロトコール
6〜8週齢の BALB/cマウスに以下の群で 2週間隔で 1回免疫し(各群 4匹)、 一 週間後に各群 2匹を sacr i f iceし、 脾臓より CD8陽性 T細胞を MACS sys temを用 いて調製した。 HER2p63 (T)ぺプチドをパルスした P L HTR (DBA/2マウス由来の ma s tocytoma)を標的細胞として、 IFN- g産生細胞を検出する ELISPOT assayを行つ た。 Negat ive controlには、 HER2p780 (PYVSRLLGI)ペプチドをパルスした PI. HTR を用いた。 実験は各々 2回ずつ行った。
(実験 1)
• 147HER2
• 147HER2 + mlFN-g
• 147HE 2 + NY-ESO-1
• 147HER2 + mlFN-g + NY-ESO-1
(実験 2)
• p63 (T) mini gene
• p63 (T) mini gene + mIFN-g
• p63 (T) mini gene + NY-ESO-1
• p63 (T) mini gene + mIFN-g + NY-ESO-1
[結果]
下表および図 1に結果を示す。
Ex.1 Ex.2 Ex.3 Ex.4 p63 (T) pulsed 200000 cells 40.3 46 109.3 100.6 p63 (T) pulsed 100000 cells 16.6 17.3 44 38 p63 (T) pulsed 50000 cells 7 9 17.6 17 p780 pulsed 200000 cells 0.3 2 1 2.6 p780 pulsed 100000 cells 1 0.6 1 0.6 p780 pulsed 50000 cells 0.3 0.6 0.3 0.3
Ex.1 147HER2 GG 2xday7
Ex.2 147HER2+IFN-g GG 2xday7
Ex.3 147HER2+NY-ES0-1 GG 2xday7
Ex.4 147HER2+IFN-g+NY-ES0-l GG 2xday7
(GGは、 Gene Gun投与を意味する。 )
9
産業上の利用の可能性
上記のように、 CD4+ヘルパー T細胞により認識される抗原、 および腫瘍特異性 抗原、 腫瘍関連抗原または細胞関連抗原の組み合わせ、 例えば HER- 2Zneuと N Y-ES0-1の組み合わせ、 さらに好ましくはィンターフェロンガンマの同時発現に より IFN- g産生細胞数が著しく増加し、 腫瘍特異的免疫が誘導されたことが明ら かである。