翻訳テンプレートおよびそのライブラリー、 それらから合成される蛋白質および 蛋白質のライブラリー、 ならびにそれらを構成する要素、 ならびにそれらの製造 法および利用方法 技術分野
現在、 多様な生物のゲノムの塩基配列が解読されようとしている。 ゲノムシー ケンスの研究では、 第 2幕のポストシーケンスの研究として、 解読したゲノム情 報からその意味を解析する研究、 すなわち、 遺伝子や蛋白質の構造や機能解析 ^Saegusa A. Japan boosts proteomics and cell biology... Nature 401, 6751 (1999), Dalton R, Abbott A. Can researchers find recipe for proteins and chips? Nature 402, 6763 (1999)), および蛋白質間、 核酸-蛋白質間相互作用解析などが期待されている(宫 本悦子、 柳川弘志 ( 2000 ) シリーズ ·ポストシークェンスのゲノム科学 3 : プロ テオミクス, pp. 136- 145; 宫本悦子、 柳川弘志 (2001 ) 蛋白質 .核酸 .酵素、 46 (2 ), pp. 138- 147)。 これらの構造および機能解析には、 蛋白質の大量発現が重要 となってくる。 蛋白質の大量発現が可能な無細胞翻訳系とともに、 蛋 質の大量 発現が可能で安定な翻訳テンプレートの開発が所望されている(白水美香子、 木 川隆則、 横山茂之(2000) シリーズ 'ポストシークェンスのゲノム科学 3 : プロテ 才ミクス, pp. 197- 205 )。
ボストゲノム機能解析によって、 重要な生体酵素の発見などによる医薬品の創 製など、 医療、 食料、 エネルギー、 環境など多くの分野の産業の基本ツールとし て積極的に利用可能である。 背景技術
ポストゲノム構造および機能解析研究のヅ一ルとして様々なものが開発されて きている。 どのような解析方法であっても、 蛋白質の解析に共通して欠かせない ものは、 蛋白質の合成工程であり、 さまざまな生物種のゲノムや cDNAから一万種 類以上の蛋白質を発現させねばならない。 そのためには、 ハイスループッ トで強
力な無細胞翻訳系が開発されてきた。 大腸菌内での発現方法と比較した利点は、 ( 1 )発現べクタ一にクローニングすることなく、 直線状 DNA断片や転写した m Aか ら直接目的の蛋白質が発現可能、 (2)短時間の反応で大量発現が可能、 (3)凝集し やすい性質や毒性を持つような発現の難しい蛋白質も生産可能、 などが挙げられ る。
これまで、 無細胞翻訳系として小麦胚芽の系 (Madin K, Sawasaki T, Ogasawara Τ, Endo Υ. A highly efficient and robust cell-free protein synthesis system prepared from wheat embryos: plants apparently contain a suicide system directed at ribosomes. Proc Natl Acad Sci U S A. 2000 Jan 18;97(2):559-64.)、 および大腸菌の系 (Shimizu Y, Inoue A, Tomari Y, Suzuki T, Yokogawa T, Nishikawa K, Ueda T. Cell-free translation reconstituted with purified components. Nat Biotechnol. 2001 Aug;19(8):751-5.)におレ、 て、 蛋白質の大量発現が研究されてきている。 それに伴い、 蛋白質の大量発現が 可能な安定した翻訳テンプレートの開発として、 mRNAの安定性向上と翻訳効率向 上のために、 一般的には 3' UTRが使われるが (Sachs A.B., Samow P, and Hentzw M.W. Starting at the Beginning, Middle, and Ena; Translation Initiation in Eukaryotes. (1997) Cell 89, 831-838)^ mRNAの化学構造の置換や修飾などの方法 (Ueda T, Tohda H, Chikazumi N, Eckstein F, Watanabe K., Cell-free translation system usine phosphorothioate-containing mRNA. Nucleic Acids Symp Ser. 1991;(25):151-2.)を用レヽ ることなどが考案されている。
また、 ポストゲノム機能解析研究のために開発されてきたいろいろな解析ヅ一 ルにも無細胞翻訳系による蛋白質合成が重要な役割を占めている。 その主なもの を以下に挙げる。 いずれも、 蛋白質の大量発現が不可欠である。
分子間相互作用の検出方法として、 これまで表面プラズモン共鳴法、 蛍光共鳴 エネルギー移動法、 蛍光偏光解消法、 エバネツセント場イメージング法、 蛍光相 関分光法、 蛍光イメージング法、 固相酵素免 ¾δ検定法などが知られている。 とり わけ、 蛍光相関分光法 (Fluorescence Correlation Spectroscopy: FCS) は、 測 定に必要な試料量が少なく (およそフェムトリヅトル) 、 測定時間が短く (およ そ 10秒) 、 HTSのための自動化が容易である (実際に EV0TEC社では 1日で 10万検 体以上のスクリーニングを行うウルトラ HT Sを目指した装置の開発を行なってい
る) 等の長所があり、 検出系として優れている (金城政孝 (1999) 蛋白質核酸酵 素 44 : 1431-1438) 。 さらに 2種類の蛍光色素を用いる蛍光相互相関分光法 (Fluorescence Cross-Correlation Spectroscopy: FCCS) では、 1種類の蛍光色素を 用いる FCSでは困難であつた同程度の大きさをもつ分子間の相互作用も検出が可 能であり、 タンパク質相互作用の HTSへの応用が期待されている。
一般に、 タンパク質相互作用の検出系では、 固相化のための夕グゃ蛍光色素等 のプローブでタンパク質を修飾する必要がある。 本発明者等は、 ピューロマイシ ン等の核酸誘導体を用いて翻訳系中でタンパク質の C末端を修飾する方法を先に 提案している (特開平 11-322781、 特開 2000-139468) 。 この方法は、 従来の化学 修飾法や蛍光夕ンパク質融合法に比べて、 夕ンパク質の機能を損ないにくい等の 利点がある。
一方、 進化分子工学のツールとして誕生した 「遺伝子(遺伝子型)と蛋白質(表 現型)の対応付け」 を応用して、 ポストゲノム機能解析における蛋白質間相互作 用を網羅的に解析する方法として、 in vitro virus法 (Miyamoto-Sato E, et al. The constraction of the virus type assignment molecule in evolutionary molecular engineering. Viva Origino 25, 35 (1997), Nemoto N, et al. In vitro virus: Bonding of mRNA bearing puromycin at the 3 '-terminal end to the C-terminal end of its encoded protein on the ribosome in vitro. FEBS Lett. 414, 405 (1997), W098/16636)、 STABLE法 (Doi N, Yanagawa H. STABLE: protein-DNA fusion system for screening of combinatorial protein libraries in vitro. FEBS Lett. 457, 227 (1999))、 ファージデイス フ。レ一、法 (Smith G.P. Searching for peptide ligands with an epitope library. Science 228, 1315 (1985))、 リボソーム 'ディスプレイ法 (Mattheakis, L.C. et al. (1994) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91,9022-9026, Mattheakis,L.C. & Dower,WJ. (1995)WO 95/11922) ) 、 mRNA- peptide fusion (mRNA display)法 (Roberts R.W, Szostak J.W. (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94, 12297)などである。 発明の開示
ポストゲノム構造および機能解析研究のツールとして様々なものが開発されて きている。 どのような解析方法であっても、 蛋白質の解析に共通して欠かせない
ものは、 蛋白質の合成工程であり、 さまざまな生物種のゲノムや cDNAから一万種 類以上の蛋白質を発現させねばならない。 その目的で、 ハイスループットで強力 な無細胞翻訳系が開発されてきた。 大腸菌内での発現方法と比較した利点は、 (1 ) 発現べク夕一にクローニングすることなく、 直線状 DNA断片や転写した mRNAから 直接目的の蛋白質が発現可能、 (2)短時間の反応で大量発現が可能、 (3)凝集しや すい性質や毒性を持つような発現の難しい蛋白質も生産可能、 などが挙げられる。 ここで、 mRNAの安定性向上と翻訳効率向上のために一般的に 3' UTRが使われるが Sachs A.B., Sarnow P., and Hentzw M.W. Starting at the Beginning, Middle, and Ena; Translation Initiation in Eukaryotes. (1997) Cell 89, 831-838)、 3, UTRは数百ベースと 長いので、 PCRで簡単にプライミングでつけることは出来ない。 そこで、 せっか く無細胞翻訳系を利用するのに 3' UTRを持つベクターに組み込んで利用すること に る (Madin K, Sawasaki T, Ogasawara Τ, Endo Υ. A highly efficient and robust cell-free protein synthesis system prepared from wheat embryos: plants apparently contain a suicide system directed at ribosomes. Proc Natl Acad Sci U S A. 2000 Jan 18;97(2):559-64.)o しかしながら、 最近の研究で 3, UTRの機能は翻訳量の調節にあ ることがわかってきており (Boucher N. et al. A common mechanism if stage-regulated gene expression in Leishmania mediated by a conserved 3' UTR element. J. Biol. Chem. 2002 Mar 23; [epub ahead of print])、 一概に翻訳を増加させるだけではなく抑制す る場合も考えられるなどの問題点も抱えている。 また、 mRNAの化学構造の置換や 修飾などの方法 (Ueda T, Tohda H, Chikazumi N, Eckstein F, Watanabe K., Cell-free translation system using phosphorothioate-contaming mRNA. Nucleic Acids Symp Ser. 1991;(25):151-2.)では、 化学構造を置換した材料が高価であったり、 安定性は得ら れるが、 翻訳に支障を来す可能性があるなどの問題点が挙げられる。
本発明の目的は、 以上の問題を解決するために、 作成方法が簡単で安定でかつ 高効率に蛋白合成を行える翻訳テンプレートを提供することである。 この翻訳テ ンプレートによって、 ポストゲノム構造および機能解析をハイスループットに行 うことが出来る。 また、 この翻訳テンプレートの利用により、 C末端ラベル化蛋 白質(Labeled protein and its oroducing methoa, labeling compound to be used in the method for analyzing function of genes, 2001, U.S.Patent 6,228,994, H. Yanagawa, N.
Nemoto, E. Miyamoto)による蛋白質の相互作用解析、 および対応付け分子 (Molecule that homologizes genotype and phenotype ana utilization thereof, 1998, PCT/JP97/03766 (W098/16636) H. Yanagawa, N. Nemoto, E. Miyamoto, Y. Fusimi)に よるゲノム機能解析、 進化分子工学への応用などの解析能力を従来よりもいっそ う向上させることが出来る。
本発明の第一の発明は、 蛋白質に翻訳される情報を含むコード部の 3'末端に PE Gスぺーサ一部をライゲーシヨンした翻訳効率の高い翻訳テンプレートとその合 成方法であり、 その PEGスぺーサ一部に機能性修飾物質を持たせることが可能な 構成を特徴とし、 およびそのテンプレートによって合成された蛋白質やそのライ ブラリーを提供するものである。 また、 第二の発明は、 第一の発明の翻訳テンプ レートを用いて合成された C末端ラベル化蛋白質とその合成方法であり、 特に、 翻訳テンプレートのコード部の 3'末端に特別な配列( XA配列)を用いることが特徴 であり、 また、 その C末端修飾剤に機能性修飾物質を持たせることが可能な構成 を特徴とし、 およびそのテンプレートによって合成された C末端修飾された蛋白 質とそのライプラリーを提供するものである。 第三の発明は、 第一の発明の翻訳 テンプレートを用いて合成された翻訳テンプレート C末端修飾された蛋白質(対 応付け分子)または PEGスぺーサ一部で C末端修飾された蛋白質、 とそれらの合成 方法であり、 特に、 翻訳テンプレートのコード部の 3'末端に特別な配列(A配列) を用いることが特徴であり、 また、 その PEGスぺーサ一部に機能性修飾物質を持 たせることが可能な構成を特徴とし、 およびそのテンプレートによって合成され た C末端修飾された蛋白質とそのライブラリーを提供するものである。
本発明の第一の発明は、 蛋白質に翻訳される情報を持つコ一ド部と PEGスぺー サ一部からなることを特徴とする翻訳テンプレートに関するものである。 コード 部は、 蛋白質に翻訳される情報であり、 どのような配列でも良いが、 好ましくは、 コード部の 3'末端領域にァクセプター領域 (A配列)を持つ、 または、 コード部の 3 '末端領域にァクセプター領域 (A配列)を持ち、 かつ A配列の 5'上流に翻訳増強配 列 (X配列) を持つことを特徴とする。 コード部の A配列と'して、 短いポリ A配列 を含む。 X配列として、 C (または G)丽 C (または G)配列を有する配列、 たとえば、 X hoi配列を有することを特徴とする。 PEGスぺーサ一部は、 ポリエチレングリコー
ルを主成分とした PEG領域、 コード部と連結するためのドナー領域、 および 3'末 端に CCA領域を持つ。 PEGスぺーサ一部は、 ドナー領域のみ、 CCA領域のみでもか まわないが、 好ましくは、 ポリエチレングリコールを主成分とした PEG領域を含 む構成をとる。 CCA領域は、 該翻訳テンプレートによって翻訳された蛋白質と、 ぺプチド転移反応によって結合する機能を有しないことを特徴とし得る。 PEG領 域のポリエチレングリコールの分子量は、 400以上であることを特徴とし得る。 また、 ドナ一領域および/または CCA領域において、 少なくとも 1つの機能付与ュ ニヅト(F)を含むことを特徴とし得る。 機能付与ユニット(F 1および/または F 2 ) が、 該翻訳テンプレートおよび/または該翻訳デンプレートから翻訳された蛋白 質を固定化または蛍光ラベル化することを特徴とし得る。 固定化物質としてピオ チンなどが考えられ、 蛍光性物質として、 フルォレセィン, Cy5, またはローダ ミングリーン(RhG)などが考えられる。 これらのコード分子や翻訳テンプレート、 およびそのライブラリー、 さらに、 リボソーム上で翻訳された蛋白質やそのライ ブラリーに関するものである。 翻訳テンプレートはコード部のみからなるもの (コード分子) であってもよい。
本発明の第二の発明は、 第一の発明の翻訳テンプレートにより翻訳され、 修飾 剤によって C末端ラベル化された蛋白質に関するものである。 翻訳テンプレート は、 蛋白質に翻訳される情報を持つコード部とポリエチレングリコールを主成分 とした PEGスぺーサ一部からなる。 コード部は、 A配列と X配列を有し、 A配列とし て、 短いポリ A配列を含む。 X配列として、 C (または G)匪 C (または G)配列を有する 配列、 たとえば、 Xhol配列を有することを特徴とする。 PEGスぺーサ一部は、 ポ リエチレングリコールを主成分とした PEG領域において、 ポリエチレングリコ一 ルの分子量が 400以上であることを特徴とする、 また、 ドナー領域および/または CCA領域において、 少なくとも 1つの機能付与ュニヅト(F )を含むことを特徴とし 得る。 CCA領域は、 該翻訳テンプレートによって翻訳された蛋白質と、 ペプチド 転移反応によって結合する機能を有しないことを特徴とし得る。 機能性修飾物質 ( F 1および/または F 2 )が、 該翻訳テンプレートおよび/または該翻訳テンプレー トから翻訳された蛋白質を固定化または蛍光ラベル化することを特徴とし得る。 固定化物質としてピオチンなどが考えられ、 蛍光性物質として、 フルォレセイン,
Cy5, またはローダミングリーン(RhG)などが考えられる。 また、 修飾剤は、 蛋 白質の C末端を標識する修飾部とピュー口マイシンを含むぺプチドアクセプ夕一 部、 およびそれらを連結するヌクレオチドのリンカ一、 からなる。 また、 修飾剤 は、 修飾部に、 機能性修飾物質 (F3)を含むことを特徴とし得る。 該 F3が、 該翻訳 テンプレートにより翻訳された蛋白質を固定化または蛍光ラベル化することを特 徴とする。 固定化物質としてピオチンなどが考えられ、 蛍光性物質として、 フル ォレセイン, Cy5, またはローダミングリーン(RhG)などが考えられる。 これら、 コード部および翻訳テンプレート、 およびそのライブラリーが、 修飾剤の存在下 で、 リボソーム上で翻訳されることにより合成されることを特徴とする蛋白質お よび蛋白質のライブラリーに関するものである。
本発明の第三の発明は、 翻訳テンプレートによって C末端修飾された蛋白質 (二 対応付け分子)に関するものである。 翻訳テンプレートは、 蛋白質に翻訳される 情報を持つコード部と PEGスぺ一サ一部からなる。 コード部の 3'末端に A配列を有 し、 A配列は、 短いポリ A配列を含む。 PEGスぺーサ一部は、 ポリエチレングリコ ールを主成分とした PEG領域において、 ポリエチレングリコールの分子量が 400以 上であることを特徴とする、 また、 ドナー領域および/または CCA領域において、 少なくとも 1つの修飾物質(F 1および/または F 2 )を含むことを特徴とし得る。 ま た、 CCA領域は、 該翻訳テンプレートによって翻訳された蛋白質と、 ペプチド転 移反応によって結合する機能を有することを特徴とし、 代表的には CCA領域にピ ユーロマイシンを有する。 また、 修飾物質(F 1および/または F 2 )が、 該翻訳テ ンプレートおよび/または該翻訳テンプレートから翻訳された蛋白質を固定化ま たは蛍光ラベル化することを特徴とし得る。 固定化物質としてピオチンなどが考 えられ、 蛍光性物質として、 フルォレセィン, Cy5, またはローダミングリーン (RhG)などが考えられる。 これら、 コード部および翻訳テンプレート、 およびそ のライブラリーが、 リボソーム上で翻訳されることにより合成される蛋白質 (二対 応付け分子)および蛋白質 (二対応付け分子)のライブラリーに関するものである。 これら 3つの発明を応用した発明として、 コード分子および翻訳テンプレート、 およびそのライブラリーを用いて、 無細胞翻訳系、 および細胞での蛋白質の大量 合成が可能であり、 蛋白質の構造と機能解析が実現できる。 また、 リボソーム上
で翻訳されることにより合成される蛋白質 (=蛋白質、 C末端ラベル化蛋白質、 対 応付け分子)およびそのライブラリーのいろいろな組み合わせを用いて、 in vitr oまたは in vivoで蛋白質と物質の相互作用解析が可能である。 たとえば、 対応付 け分子は、 分子進化工学的な機能物質の創製やゲノム機能解析に利用できる (図 4 )。 蛋白質と物質の相互作用解析において、 翻訳テンプレートとそのライブラ リーおよび/または蛋白質とそのライブラリーを蛍光ラベル化および/または固定 化することを特徴とする蛋白質と物質の相互作用解析も可能である(図 5 )。 たと えば、 各種のァフィ二ティー .スクリ一ニング、 マイクロアレイやプロテインチ ヅプは、 固定化の例であり、 FCCS解析などは、 蛍光ラベル化の例である(図 5 )。 以上の解析は、 in vitroにおける共翻訳や共翻訳スクリーニング法と組み合わせ て利用することもできる。
本発明は、 より詳細には、 以下のものを提供する。
1 . 蛋白質に翻訳される情報を持つ 0RF領域およびその 3'末端領域を有し、 3 ,末端領域は、 ァクセプター領域と、 ァクセプター領域の 5'上流に、 配列 S匪 Sを 含む翻訳増強配列とを含むことを特徴とするコード分子。
2 . ァクセプ夕一領域が、 長さ 2〜 1 0塩基のポリ. A配列を含むことを特徴 とする 1記載のコード分子。
3 . X配列が S肩 S配列であることを特徴とする 1または 2記載のコード分子。 4 . X配列が Xhol配列であることを特徴とする 1または 2記載のコード分子。
5 . 1〜 4 'のいずれか 1項に記載されたコード分子のライブラリー。
6 . 蛋白質に翻訳される情報を持つコード部と少なくともコード部と連結す るためのドナー領域を持つ PEGスぺーサ一部を含み、 コード部が 1〜4のいずれ か 1項に記載されたコード分子に由来する翻訳テンプレート。
7 . スぺーサ一部が、 コード部と連結するためのドナー領域、 およびポリエ チレングリコールを主成分とした PEG領域、 および 3'末端に CCA領域を持つことを 特徴とする PEGスぺ一サー分子に由来する 6記載の翻訳テンプレート。
8 . ポリエチレングリコールの分子量が 400以上であることを特徴とする 7 記載の翻訳テンプレート。
9 . CCA領域が、 該翻訳テンプレートによって翻訳された蛋白質と、 ぺプチ
ド転移反応によって結合する機能を有しないことを特徴とする 7記載の翻訳テン プレート。
1 0 . CCA領域にピュー口マイシンを有することを特徴とする 9記載の翻訳 テンフ 'レート。
1 1 . ドナー領域に機能付与ュニット F1および/または CCA領域に機能付与 ュニヅト F2を含むことを特徴とする?〜 1 0のいずれか 1項に記載の翻訳テンプ レート。
1 2 . 機能付与ユニット F1および/または F2が、 該翻訳テンプレートを固定 化および/または蛍光ラベル化するものであることを特徴とする 1 1に記載の翻 訳テンプレート。
1 3 · 機能付与ュニヅト F1および/または F2がピオチンであることを特徴と する 1 2記載の翻訳テンプレート。
1 4 . 機能付与ユニット F1および/または F2が、 フルォレセィン、 Cy5、 ま たはローダミングリーンであることを特徴とする 1 2記載の翻訳テンプレート。
1 5 . 6〜 1 4のいずれか 1項に記載された翻訳テンプレートのライブラリ
1 6 . 6〜 1 4のいずれか 1項に記載された翻訳テンプレートがリボソーム 上で翻訳されることにより合成されることを特徴とする蛋白質。
1 7 . 1 5に記載された翻訳テンプレートのライブラリ一がリボソーム上で 翻訳されることにより合成されることを特徴とする蛋白質のライブラリー。
1 8 . 6〜1 4のいずれか 1項に記載された翻訳テンプレートが、 修飾部と、 ピュー口マイシンを含むぺプチドアクセプ夕一部と、 それらを連結するヌクレオ チドのリンカ一とを含む、 蛋白質の C末端を標識する修飾剤の存在下で、 リボソ —ム上で翻訳されることにより合成されることを特徴とする蛋白質。
1 9 . 修飾部において、 少なくとも 1つの機能付与ユニット F3を含むことを 特徴とする 1 8に記載の蛋白質。
2 0 . 機能付与ユニット F3が、 該翻訳テンプレートにより翻訳された蛋白質 を固定化または蛍光ラベル化することを特徴とする 1 9記載の蛋白質。
2 1 . 機能付与ュニヅト F3がピオチンであることを特徴とする 2 0記載の蛋
白質。
2 2 . 機能付与ユニット F3が、 フルォレセイン, Cy5, またはローダミング リーンであることを特徴とする 2 0記載の蛋白質。
2 3 . 1 5に記載された翻訳テンプレートのライプラリーが、 修飾部と、 ピ ユーロマイシンを含むぺプチドアクセプ夕一部と、 それらを連結するヌクレオチ ドのリンカ一とを含む、 蛋白質の C末端を標識する修飾剤の存在下で、 リボソ一 ム上で翻訳されることにより合成されることを特徴とする蛋白質のライブラリー。
2 4 . 修飾部において、 少なくとも 1つの機能付与ユニット F3を含むことを 特徴とする 2 3に記載の蛋白質のライブラリ一。
2 5 . 機能付与ユニット F3が、 該翻訳テンプレートにより翻訳された蛋白質 を固定化または蛍光ラベル化することを特徴とする 2 4記載の蛋白質のライブラ リー。
2 6 . 機能付与ュニヅト F3がピオチンであることを特徴とする 2 5記載の蛋 白質のライブラリー。
2 7 . 機能付与ュニット F3が、 フルォレセィン, Cy5, またはローダミング リーンであることを特徴とする 2 5記載の蛋白質のライブラリ一。
2 8 . 蛋白質に翻訳される情報を持つ 0RF領域およびその 3'末端領域を有し、 3'末端領域は、 長さ 2〜 1 0塩基のポリ A配列を含むァクセプター領域を含むこ とを特徴とするコード分子。
2 9 . 2 8に記載されたコード分子のライブラリ一。
3 0 . 蛋白質に翻訳される情報を持つコード部と少なくともコード部と連結 するためのドナ一領域を持つ PEGスぺーサ一部を含み、 コード部が 2 8に記載さ れたコード分子に由来する翻訳テンプレート。
3 1 . スぺ一サ一部が、 コード部と連結するためのドナ一領域、 およびポリ エチレングリコールを主成分とした PEG領域、 および 3,末端に CCA領域を持つこと を特徴とする PEGスぺーサ一分子に由来する 3 0記載の翻訳テンプレート。
3 2 . CCA領域が、 該翻訳テンプレートによって翻訳された蛋白質と、 ぺプ チド転移反応によって結合する機能を有することを特徴とする 3 1記載の翻訳テ ンプレート。
3 3 . CCA領域にピュー口マイシンを有することを特徴とする 3 2記載の翻 訳テンプレート。
3 4 . 3 0〜3 3のいずれか 1項に記載された翻訳テンプレートのライブラ リー。
3 5 . 3 0〜3 3のいずれか 1項に記載された翻訳テンプレートが、 リボソ —ム上で翻訳されることにより合成されることを特徴とする蛋白質。
3 6 . 3 4に記載された翻訳テンプレートのライブラリーが、 リボソーム上 で翻訳されることにより合成されることを特徴とする蛋白質のライブラリー。
3 7 . コード部を持たないことを特徴とする 3 5記載の蛋白質。
3 8 . 蛋白質がコード部を持たないことを特徴とする 3 6記載の蛋白質のラ ィブラリー。
3 9 . 3 7に記載された蛋白質または 3 8記載のライブラリ一におけるコー ド部を、 RNaseによって切断することを特徴とする蛋白質またはそのライブラリ 一の製造法。
4 0 . 1 6、 1 8〜2 3、 3 5および 3 7のいずれか 1項に記載の蛋白質、 または、 1 7、 2 3〜2 7、 3 6および 3 8のいずれか 1項に記載の蛋白質のラ ィブラリーと物質を相互作用させて相互作用を解析することを含む、 蛋白質と物 質の相互作用解析方法。
4 1 . 相互作用の解析が、 蛍光相関分光法、 蛍光イメージングアナライズ法、 蛍光共鳴エネルギー移動法、 エバネッセント場分子イメージング法、 蛍光偏光解 消法、 表面プラズモン共鳴法、 または、 固相酵素免疫検定法により行われる、 4 0記載の蛋白質と物質の相互作用解析方法。
4 2 . 3 5に記載の蛋白質、 または、 3 6記載の蛋白質のライブラリ一にお いて、 該蛋白質の C末端に結合したコード部の塩基配列の増幅により蛋白質と物 質の相互作用を検出する方法。
4 3 . 無細胞共翻訳法または無細胞共翻訳スクリーニング法を用いることを 特徴とする 4 2記載の蛋白質と物質の相互作用を検出する方法。
4 4 . 相互作用の解析において、 翻訳テンプレートとそのライブラリーを蛍 光ラベル化および/または固定化することを特徴とする、 4 1記載の蛋白質と物
質の相互作用解析方法。
4 5 . 相互作用の解析において、 蛋白質とそのライブラリーを蛍光ラベル化 および/または固定化することを特徴とする、 4 0記載の蛋白質と物質の相互作 用解析方法。
4 6 . 相互作用の解析において、 in vitroで蛋白質と物質の相互作用を解析 する 4 0載の蛋白質と物質の相互作用を解析する方法。
4 7 . 相互作用の解析において、 in vitroで共翻訳法を利用することを特徴 とする 4 6記載の蛋白質と物質の相互作用を解析する方法。
4 8 . 1〜4および 2 8のいずれか 1項に記載されたコード分子もしくは 6 〜 1 4ぉょび3 0〜3 3のいずれか 1項に記載された翻訳テンプレートまたはそ のライブラリーをリボソーム上で翻訳することを含む蛋白質またはそのライブラ リーの製造方法。 図面の簡単な説明
図 1は、 本発明の翻訳テンプレート (A ) ならびにその構成要素であるコード 分子 (B ) およびスぺ一サ一分子 (C ) の構成を示す。 翻訳テンプレートは、 コ 一ド分子由来のコード部とスぺ一サ一分子由来のスぺーサ一部からなる。 F1およ び F2は蛍光色素を す。
図 2は、 C末端修飾された蛋白質(C末端ラベル化蛋白質) (A ) 、 本発明の翻 訳テンプレート (B ) 、 および、 修飾剤 (C ) の構成を示す。
図 3は、 C末端修飾された蛋白質(対応付け分子) (A ) 、 本発明の翻訳テンプ レート (B ) 、 および、 修飾剤 (C ) の構成を示す。
図 4は、 本発明の対応付け分子による物質や蛋白質の相互作用解析の一次スク リーニングの説明図を示す。 対応付け分子は、 進化分子工学として、 ランダムラ イブラリーなどから、 漸進的に進化させ、 所望の機能を獲得した物質を創製する ことに応用できる。 また、 ゲノム機能解析への応用として、 cDNAライブラリ一か ら所望の物質ゃ蛋白質と相互作用を持つ一群の遺伝子配列を網羅的に解析できる。 ここでは、 無細胞共翻訳スクリーニング法を利用することもできる。
図 5は、 本発明の対応づけ分子や C末端ラベル化法による物質や蛋白質の相互
作用解析の一次スクリーニングと二次スクリーニングの説明図を示す。 本発明翻 訳テンプレートから合成された C末端修飾タンパク質 (修飾剤で C末端修飾され た蛋白質、 翻訳テンプレートで C末端修飾された蛋白質 (対応付け分子)、 PEGに よって C末端修飾された蛋白質を利用したタンパク質を、 標的分子との間の相互 作用の解析に利用可能である。 図 4のスクリーニングを一次スクリーニングとし て物質ゃ蛋白質と相互作用の詳細を FCCSやマイクロアレイなどによりさらに解析 することが可能である。
図 6は、 コード分子の 3'末端配列の違いによる翻訳量の比較を示す。 C- junの 遺伝子配列を有する、 異なる 1 2種類の 3'末端配列を持つコード分子 (A8=A配列) の翻訳量の比較。 X配列のバリエーションと必要な条件を示した。 詳細は、 実施 例 1参照。
図 Ίは、 翻訳テンプレートが PEGスぺーサ一部を持たない場合および異なる PEG スぺーサ一部を持つ場合の翻訳量の比較を示す。
A: c-fosの遺伝子配列を有する A配列も X配列も持たないコード分子(1^½(11111 )) と, A配列を持つコード分子(A(mRNA) )、 および dCdCT(Flu)PEG4000dCdCPuro- Boc をライゲ一シヨンした翻訳テンプレート(+PEG4000dCdCPuro- Boc,)の翻訳量の比 較。 詳細は、 実施例 1参照。
B: C- junの遺伝子配列を有する A配列も X配列も持たないコード分子(None ( mRNA ) ), XA配列を持つコード分子 (XA(mRNA) )、 およびコード分子(XA(mRNA) )に(dC ) 2T(Fl u)T (XA+(dC ) 2T2 ), dCdCT(Flu)TPEG4000 (XA+PEG4000 ) , dCdCT(Flu)PEG4000dCdC Puro-Boc (XA+PEG4000dCdCPuro- Boc )をライゲ一シヨンした翻訳テンプレートの 翻訳量の比較 (電気泳動の結果 (写真) も示す) 。 詳細は、 実施例 1参照。
図 8は、 翻訳テンプレートの翻訳量と安定性を示す。
A : c - junの遺伝子配列を有する XA配列を持つコード分子(暴; XA配列)、 A配列も X 配列も持たないコード分子(口; None配列)、 およびコード分子(XA配列)と dCdCT (Flu)PEG4000dCdCPuro-Bocをライゲーシヨンした翻訳テンプレート(〇)の翻訳量 のタイムコース。 詳細は、 実施例 1参照。
B : C- junの遺伝子配列を有するコード分子(暴; XA配列)と、 およびコード分子(X A配列)と dCdCT(Flu)PEG4000dCdCPuro- Bocをライゲーシヨンした翻訳テンプレー
ト(〇)の安定性のタイムコース。 詳細は、 実施例 1参照。
図 9は、 本発明の翻訳テンプレートが異なる PEGスぺ一サ一部を持つ場合の翻 訳量の比較 (電気泳動の結果 (写真) も示す) を示す。
A: C- junの遺伝子配列を有するコード分子(XA配列, A配列)と dCdCT(Flu)PEG4000 dCdCPuro- Bocをラィゲ一シヨンした場合の翻訳テンプレートの添加量の違いによ る対応付け分子の形成効率。 対応付け分子、 Ligated mRNA; コード部に PEG スぺーサ一部がライゲーシヨンされた翻訳テンプレート。 レーン 1〜 6 ; RNA添 加量が 10, 25, 50, 100, 200, 400 nM. 詳細は、 実施例 2参照。
B : c-junの遺伝子配列を有するコード分子(XA配列, A配列)と dCdCT(Flu)PEG4000 dCdCPuro-Bocをライゲーシヨンした場合の翻訳テンプレートの添加量の違いによ るフリー蛋白質(Free protein)の合成率 (対応付け分子の形成量 +フリー蛋白質 の合成量 =100%)。 レーン 1〜6 ; RNA添加量が 10, 25, 50, 100, 200, 400 nM. 詳細は、 実施例 2参照。
図 1 0〜 1 4は、 本発明に使用される PEGスぺーサ一分子とその合成スキーム を示す。
図 1 5〜1 8は、 本発明に使用される修飾剤とその合成スキームを示す。
図 1 9は、 対応付け分子、 スぺーサ一分子およびコード分子の構造の概略を示 す。
図 2 0は、 スぺ一サー分子の一例の詳細な構成を示す。 D : ドナ一領域、 X2お よび XI:機能付与ュニヅト、 PEG: PEG領域、 A:ぺプチドアクセプ夕一領域。 Bio : ピオチン、 F1:蛍光色素。
図 2 1は、 コード分子の一例の詳細な構成を示す。
図 2 2は、 C末端修飾蛋白質 (A)、 修飾剤(B )、 および、 翻訳テンプレート(C ) の構成を示す図である。 発明を実施するための最良の形態
本発明の翻訳テンプレートがリボソーム上で翻訳されることにより合成される 蛋白質のうち、 翻訳テンプレートと結合している蛋白質 (対応付け分子) 、 さら に修飾剤の存在下で同様に合成される蛋白質 (C末端ラベル化蛋白質) に関して、
まず、 本発明を説明する。 なお、 本明細書において塩基を表す記号は、 特記しな い限り、 WIPO Standard ST.25の定義によるものである。
< 1 >対応付け分子
本明細書において、 対応付け分子とは、 表現型と遺伝子型と対応付ける分子を 意味する。 対応付け分子は、 遺伝子型を反映する塩基配列を有する核酸を含む遺 伝子型分子と、 表現型の発現に関与するタンパク質を含む表現型分子とが結合し てなる。 遺伝子型分子は、 遺伝子型を反映する塩基配列を、 その塩基配列が翻訳 され得るような形態で有するコード分子と、 スぺーサ一部とが結合してなる。 対応付け分子における、 表現型分子に由来する部分、 スぺ一サー分子に由来す る部分、 および、 コード分子に由来する部分をそれぞれ、 デコード部、 スぺ一サ 一部およびコード部と呼ぶ。 また、 遺伝子型分子における、 スぺーサ一分子に由 来する部分、 および、 コード分子に由来する部分をそれぞれ、 スぺ一サ一部およ びコード部と呼ぶ。
図 1 9に、 対応付け分子、 スぺーサ一分子およびコード分子の一例の大まかな 構成を示す。 この対応付け分子は、 ピュ一ロマイシンを含むスぺ一サ一(スぺ一 サ一部と呼ぶ)と表現型のコードを反映する塩基配列(コード部と呼ぶ)からなる。 この対応付け分子は、 コード分子に何らかの方法によってピュー口マイシンを含 むスぺ一サ一部を結合して遺伝子型分子とし、 無細胞翻訳系において、 リポソ一 ム上で表現型分子と連結した構成をもつ。 スぺーサ一分子は、 ポリエチレングリ コールを主成分とした PEG領域、 少なくともピューロマイシンまたはピューロマ イシンと 1残基以上の DNAおよび/または RNAからなる CCA領域、 少なくとも 1残基以 上の MAおよび/または Aを含むドナ一領域、 さらに、 少なくとも 1残基の DNAお よび/または RNAの塩基に機能修飾を施した機能付与ュニツ ト(X)からなる。 コ一 ド分子は、 デコード部の一部の配列からなる DNAおよび/または RNAのポリ A配列を 含む 3,末端領域、 および、 DNAおよび/または RNAからなる転写プロモーターおよ び翻訳ェンハンサ一を含んだ 5' UTR、 さらに、 主として表現型分子の配列からな る 0RF領域から構成される。 以下、 この例を参照して説明するが、 本発明はこれ に限定されるものではない。
< 1 - 1 >スぺーサ一分子
スぺ—サ—分子は、 核酸の 3'末端に結合できるドナ一領域と、 ドナー領域に結 合した、 ポリエチレングリコールを主成分とした PEG領域と、 PEG領域に結合した、 ペプチド転移反応によってペプチドと結合し得る基を含むペプチドァクセプ夕ー 領域とを含む。
核酸の 3,末端に結合できるドナー領域は、 通常、 1以上のヌクレオチドからな る。 ヌクレオチドの数は、 通常には 1〜1 5、 好ましくは 1〜2である。 ヌクレ ドナー領域の 5,末端の配列は、 ライゲーシヨン効率を左右する。 コード部とス ぺーサ一部をライゲ一シヨンさせるためには、 少なくとも 1残基以上を含むこと が必要であり、 ポリ A配列をもつァクセプ夕一に対しては、 少なくとも 1残基の d C (デォキシシチジル酸)または 2残基の dC dC (ジデォキシシチジル酸)が好ましい。 塩基の種類としては、 C>Uまたは T>G>Aの順で好ましい。
PEG領域はポリエチレングリコールを主成分とするものである。 ここで、 主成 分とするとは、 PEG領域に含まれるヌクレオチドの数の合計が 20 bp以下、 または、 ボリエチレングリコールの平均分子量が 400以上であることを意味する。 好まし くは、 ヌクレオチドの合計の数が 10 bp以下、 または、 ポリエチレングリコール の平均分子量が 1000以上であることを意味する。
PEG領域のポリエチレングリコールの平均分子量は、 通常には、 400〜30,000、 好ましくは1,000〜10, 000、 より好ましくは 2,000〜8,000である。 ここで、 ポリ エチレングリコールの分子量が約 400より低いと、 このスぺーサ一分子に由来す るスぺ一サ一部を含む遺伝子型分子を対応付け翻訳したときに、 対応付け翻訳の 後処理が必要となることがあるが (Liu, R, Barrick, E" Szostak, J置, Roberts, R.W. (2000) Methods in Enzymology, vol. 318, 268-293) 、 分子量 1000以上、 より好まし くは 2000以上の PEGを用いると、 対応付け翻訳のみで高効率の対応付けができる ため、 翻訳の後処理が必要なくなる。 また、 ポリエチレングリコールの分子量が 増えると、 遺伝子型分子の安定性が増す傾向があり、 特に分子量 1000以上で良好 であり、 分子量 400以下では DNAスぺーサ一と性質がそれほどかわらず不安定とな ることがある。
ペプチドァクセプ夕一領域は、 ぺプチドの C末端に結合できるものであれば特 に限定されないが、 例えば、 ピューロマイシン、 3,- N-アミノアシルピューロマ イシンアミノヌクレオシド (3, -N-Aminoacy lpurorayc in aiinonucleoside, PANS- アミノ酸) 、 例えばアミノ酸部がグリシンの PANS- Gly、 パリンの PANS-Val、 ァラ ニンの PANS-Ala、 その他、 全アミノ酸に対応する PANS-全アミノ酸が利用できる。 また、 化学結合として 3,-アミノアデノシンのァミノ基とアミノ酸のカルボキシ ル基が脱水縮合した結果形成されたアミ ド結合でつながつた 3' -N-アミノアシル アデノシンアミノヌクレオシド (3, -Aminoacyladenosine aminonucleosiae, AAN S -アミノ酸) 、 例えばアミノ酸部がグリシンの AANS-Gly、 パリンの AANS- Val、 ァ ラニンの AANS-Ala、 その他、 全アミノ酸に対応する AANS-全アミノ酸が利用でき る。 また、 ヌクレオシドまたはヌクレオシドとァミノ酸のエステル結合したもの なども利用できる。 その他、 ヌクレオシドまたはヌクレオシドに類似した化学構 造骨格を有する物質と、 アミノ酸またはアミノ酸に類似した化学構造骨格を有す る物質を化学的に結合可能な結合様式のものなら全て利用することができる。 ペプチドァクセプ夕一領域は、 好ましくは、 ピューロマイシンもしくはその誘 導体、 または、 ピューロマイシンもしくはその誘導体と 1残基もしくは 2残基の デォキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドからなることが好ましい。 ここで、 誘導体とはタンパク質翻訳系においてぺプチドの C末端に結合できる誘 導体を意味する。 ピューロマイシン誘導体は、 ピューロマイシン構造を完全に有 しているものに限られず、 ピュー口マイシン構造の一部が欠落しているものも包 含する。 ピューロマイシン誘導体の具体例としては、 PANS-アミノ酸、 AANS-アミ ノ酸などが挙げられる。
ぺプチドアクセプ夕一領域は、 ピュー口マイシンのみの構成でもかまわないが、 5'側に 1残基以上の DNAおよび/または RNAからなる塩基配列を持つことが好ましい。 配列としては、 dC-ピュ一ロマイシン, rC -ピューロマイシンなど、 より好ましく は dCdC -ピューロマイシン, rCrC-ピューロマイシン, rCdC-ピューロマイシン, d CrC-ピュー口マイシンなどの配列で、.アミノアシル- tRNAの 3,末端を模倣した CCA 配列 (Philipps, G.R. (1969) Nature 223, 374-377) が適当である。 塩基の種類とし ては、 C>Uまたは T>G>Aの順で好ましい。
スぺーサ一分子は、 ドナー領域と PEG領域との間に、 少なくとも 1つの機能付 与ユニットを含むことが好ましい。 機能付与ユニットは、 好ましくは、 少なくと も 1残基のデォキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドの塩基に機能修飾 を施したものである。 例えば、 機能修飾物質として、 固定化や蛍光ラベル化のた めの物質が挙げられる。 具体例としては、 図 2 0に示した蛍光物質、 ピオチン、 または His-tagなど各種分離タグなどを導入したものが可能である。
図 2 0に、 スぺーサ一分子の一例の詳細な構成を示す。 スぺーサ一分子は、 ポ リエチレングリコールを主成分とした PEG領域、 ピュー口マイシンまたはピュー ロマイシンと少なくとも 1残基の DNAおよび/または RNAからなる CCA領域、 少なく とも 1残基以上の DNAおよび/または RNAを含むドナー領域、 さらに、 少なくとも 1 残基の DNAおよび/または RNAの塩基に機能修飾を施した機能付与ュニット(X)から なる。 ここでは、 機能付与ユニット(X)として蛍光物質 T(F1 )とピオチン T(Bio)が 用いられている。
く 1一 2 >コード分子
コード分子は、 転写プロモータ一および翻訳ェンハンサーを含む 5'非翻訳領域 と、 5'非翻訳領域の 3'側に結合した、 タンパク質をコードする 0RF領域と、 0RF領 域の 3,側に結合した、 ァクセプタ一領域 (通常にはポリ A配列) および、 必要に よりその 5'側に翻訳増強配列 (例えば制限酵素 Xholが認識する配列) を含む 3'末 端領域を含む核酸である。
コード分子は、 DNAでも RNAでもよく、 RNAの場合、 5,末端に Cap構造があっても なくても良い。 また、 コード分子は任意のベクターやプラスミ ドに組み込まれた
3'末端領域は、 例えば、 Xhol配列とその下流にポリ A配列を含む。 スぺ一サ一 分子とコード分子とのライゲーシヨン効率に影響を与える要素としては 3'末端領 域のポリ A配列が重要であり、 ポリ A配列は、 少なくとも 2残基以上の dAおよび/ または rAの混合または単一のポリ A連続鎖であり、 好ましくは、 3残基以上、 より 好ましくは 6以上、 さらに好ましくは 8残基以上のポリ A連続鎖である。
コード分子の翻訳効率に影響する要素としては、 転写プロモーターと翻訳ェン ハンサ一からなる 5' UTR、 および、 ポリ A配列を含む 3'末端領域の組み合わせがあ
る。 3'末端領域のポリ A配列の効果は通常には 10残基以下で発揮される。 5' UTRの 転写プロモーターは T7/T3または SP6などが利用でき、 特に制限はない。 好ましく は SP6であり、 特に、 翻訳のェンハンサー配列としてオメガ配列やオメガ配列の 一部を含む配列を利用する場合は SP6を用いることが特に好ましい。 翻訳ェンハ ンサ一は好ましくはオメガ配列の一部であり、 オメガ配列の一部としては、 TMV のオメガ配列 (Gallie D.R., Walbot V. (1992) Nucleic Acids Res., vol. 20, 4631-4638) の一部(029)を含んだものが好ましい。
また、 翻訳効率に関し、 3'末端領域においては、 Xhol配列とポリ A配列の組み 合わせが重要となる。 また、 0RF領域の下流部分、 すなわち Xhol配列の上流に親 和性タグがついたものとポリ A配列の組み合わせも重要となる。 親和性夕グ配列 としては、 抗原抗体反応など、 タンパク質を検出できるいかなる手段を用いるた めの配列であればよく、 制限はない。 好ましくは、 抗原抗体反応によるァフィ二 ティー分離分析用タグである Flag- tag配列である。 ポリ A配列効果としては、 Fla g - tag等の親和性夕グに Xho I配列がついたものとそこへさらにポリ A配列がついた ものの翻訳効率が上昇する。
上記の翻訳効率に関し効果のある構成は、 対応付け効率にも有効である。
0RF領域については、 DNAおよび/または RNAからなるいかなる配列でもよい。 遺 伝子配列、 ェキソン配列、 イントロン配列、 ランダム配列、 または、 いかなる自 然界の配列、 人為的配列が可能であり、 配列の制限はない。 また、 コード分子の 5' UTRを SP6+029とし、 3'末端領域を、 たとえば、 Flag+XhoI+An(n=8)とすること で、 各長さは、 5,UTRで約 60bp、 3,末端領域で約 40bpであり、 PCRのプライマーに アダプター領域として組み込める長さである。 このため、 あらゆるベクターゃプ ラスミ ドゃ cDNAライブラリ一から PCRによって、 5,UTRと 3,末端領域をもったコー ド分子を簡単に作成できる。 コード分子において、 翻訳は 0RF領域を超えてされ てもよい。 すなわち、 0RF領域の末端に終止コドンがなくてもよい。
図 2 1に、 コード分子の一例の詳細な構成を示す。 コード分子は、 3'末端領域 と、 DNAおよび/または RNAからなる転写プロモ一ターおよび翻訳ェンハンサーを 含む 5' UTRと、 デコード部の配列情報からなる、 すなわち表現型タンパク質をコ —ドする 0RF領域とからなる。 ここでは、 3'末端領域として、 DNAおよび/または R
NAからなる親和性タグ配列、 Xhol配列、 ポリ A配列を含み、 Flag- tag配列を用い ている。 5,UTRとして、 転写プロモータ一の SP6、 翻訳ェンハンサ一のオメガ配列 の一部である 029を含む配列を用いている。
< 1一 3 >遺伝子型分子およびその製造方法
遺伝子型分子 (翻訳テンプレート) は、 転写プロモーターおよび翻訳ェンハン サーを含む 5'非翻訳領域と、 5'非翻訳領域の 3'側に結合した、 タンパク質をコー ドする 0RF領域と、 0RF領域の 3'側に結合した、 ポリ A配列を含む 3'末端領域を含 む核酸であるコード分子の 3'末端と、 スぺーサ一分子のドナ一領域とが結合して なる。
遺伝子型分子を構成するコ一ド分子は、 コード分子について説明したとおりで ある。 しかしながら、 必要により発現増強配列を有することが好ましい。
遺伝子型分子は、 上記コード分子の 3'末端と、 スぺーサ一分子のドナー領域を、 通常のリガーゼ反応により結合させることにより製造できる。 反応条件としては、 通常、 4〜 2 5 °Cで 4〜4 8時間の条件が挙げられ、 PEG領域を含むスぺーサ一 分子の PEG領域内のポリエチレングリコールと同じ分子量のポリエチレングリコ ールを反応系に添加する場合には、 15°Cで 0.5〜 4時間に短縮することも可能で ある。
スぺ—サ—分子とコード分子の組み合わせはライゲーシヨン効率に重要な効果 をもたらす。 ァクセプターにあたるコード部の 3'末端領域において、 少なくとも 2残基以上、 好ましくは 3残基以上、 さらに好ましくは 6〜 8残基以上の DNAお よび/または RNAのポリ A配列があること、 さらに、 5' UTRの翻訳ェンハンサ一とし ては、 オメガ配列の部分配列(029 ; 図 2 1 )が好ましく、 スぺーサ一部のドナ一 領域としては、 少なくとも 1残基の dC (デォキシシチジル酸)または 2残基の dCdC (ジデォキシシチジル酸)が好ましい。 このことによって、 RNAリガーゼを用いる ことで DNAリガ一ゼのもつ問題点を回避し、 かつ効率を 60〜 80%に保つことができ る。
遺伝子型分子が RNAである場合には、 ( a)転写プロモー夕一および翻訳ェンハン サーを含む 5'非翻訳領域と、 5'非翻訳領域の 3'側に結合した、 タンパク質をコー ドする 0RF領域と、 0RF領域の 3'側に結合した、 ポリ A配列を含む 3'末端領域を含
むコード分子の 3'末端と、 (b)上記のスぺ一サー分子のドナー領域であって RNAか らなるものとを、 スぺーサ一分子内の PEG領域を構成するポリエチレングリコー ルと同じ分子量をもつ遊離のポリエチレングリコールの存在下で、 RNAリガーゼ により結合させることが好ましい。
ライゲーシヨン反応時に、 PEG領域を含むスぺーサ一部の PEG領域と同じ分子量 のポリエチレングリコールを添加することによって、 スぺ一サ一部のポリェチレ ングリコ一ルの分子量によらずライゲーション効率が 80〜90%以上に向上し、 反 応後の分離工程も省略することができる。
< 1 - 4 >対応付け分子およびその製造方法
対応付け分子は、 上記の遺伝子型分子を、 ペプチド転移反応で、 遺伝子型分子 内の 0RF領域によりコードされたタンパク質である表現型分子と連結してなるも のである。
対応付け分子は、 遺伝子型分子を、 リボゾーム上で翻訳 (例えば無細胞翻訳系 で翻訳) することにより、 ペプチド転移反応で、 遺伝子型分子内の 0RF領域によ りコードされたタンパク質である表現型分子と連結することにより。
無細胞翻訳系は、 好ましくは、 小麦胚芽またはゥサギ網状赤血球のものである。 翻訳の条件は通常に採用される条件でよい。 例えば、 2 5〜3 7 °Cで 1 5〜240 分の条件が挙げられる。
無細胞翻訳系については、 これまで大腸菌(E . col i )、 ゥサギ網状赤血球、 小 麦胚芽の系で対応付け分子の形成が検討され、 ゥサギ網状赤血球の系でのみ対応 付け分子が確認されていたが (Nemoto, N,, Miyamoto-Sato, E., Yanagawa, H. (1997) FEBS Lett. 414, 405; Roberts, R.W, Szostak, J.W. (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94, 12297) 、 この態様によれば、 PEG領域を含むスぺーサ一部をもつ対応付け分子と して、 小麦胚芽の系でも対応付け分子の形成を行うことができる。 また、 これま でゥサギ網状赤血球の系では遺伝子型分子の安定性を欠くために実用性に乏しく、 短い鎖長の遺伝子型分子にのみ適用されてきたが (Roberts, R.W, Szostak, J.W. (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94, 12297; Nemoto, N., Miyamoto-Sato, E., Yanagawa, H. (1997) FEBS Lett. 414, 405)、 PEG領域を含むスぺーサ一部をもつ対 応付け分子は、 小麦胚芽の系ではより安定であり長い鎖長を取り扱える実用的な
系である。
< 2 > C末端ラベル化蛋白質
C末端ラベル化蛋白質は、 C末端が修飾された蛋白質であり、 図 2 2の Aに示 すように、 ラベル化剤が蛋白質の C末端に結合した構成をもっている。 すなわち、 C末端ラベル化蛋白質は、 蛋白質とラベル化剤とにより構成される。
C末端ラベル化蛋白質を構成する 「蛋白質」 とは、 その機能が既知または未知 である相互作用の解析対象として用いる蛋白質を意味する。 本発明の C末端ラベ ル化蛋白質は、 この蛋白質と後述する標的分子との相互作用の有無の測定に使用 できる。
この蛋白質は、 天然蛋白質またはその変異体、 および人工蛋白質またはその変 異体の何れでもよい。 天然蛋白質は、 種々の生物の器官、 組織または細胞に由来 する c D N Aライブラリーから転写および翻訳される、 多様性を有する蛋白質の ライブラリーをも含むものである。 人工蛋白質は、 天然蛋白質の全てもしくは部 分配列を組み合わせた配列、 またはランダムなァミノ酸配列を含むものである。
C末端ラベル化蛋白質を構成する蛋白質は、 全長蛋白質であることが好ましい。 本明細書において 「全長蛋白質」 とは、 C末端が完全に翻訳されている蛋白質、 すなわち、 その蛋白質をコードする塩基配列の終止コドンの一つ前までのコドン が翻訳されて得られた蛋白質を意味する。 全長蛋白質の N末端は、 シグナルぺプ チドの切断等何らかのプロセシングを受けていてもよい。
また、 C末端ラベル化蛋白質を構成する蛋白質は親和性タグと融合した蛋白質 であってもよい。 親和性タグの例としては、 ポリヒスチジンペプチドゃェピトー プペプチド、 グル夕チオン- S-トランスフェラーゼ、 プロテイン A、 マルトース結 合蛋白質、 カルモジュリン結合べプチド等が挙げられる。
C末端ラベル化蛋白質は、 ラベル化剤存在下で、 翻訳テンプレートを翻訳系で 発現させて蛋白質合成を行わせ、 合成された蛋白質を精製することにより製造す ることができる。 以下、 ラベル化剤、 翻訳テンプレートおよび製造の例について 説明するが、 本発明はこれらに限定されるものではない。
< 2 - 1 >ラベル化剤
ラベル化剤は、 図 2 2の Bに示すように、 蛋白質の翻訳系でのペプチド転移反
応、 すなわち、 リボソーム上でのペプチド転移反応によって蛋白質と結合し得る 基 (残基を含む) をもつぺプチドアクセプ夕一部が、 ヌクレオチドリンカーを介 して修飾部と結合した構成をもつ。 このラベル化剤の存在下で蛋白質合成を行い、 得られる C末端ラベル化蛋白質を精製し、 分子間相互作用の検出系を用いること によって、 蛋白質相互作用の検出が可能となる。
修飾部に含まれる修飾物質の具体例としては、 蛍光性、 非蛍光性修飾物質等が 挙げられる。 蛍光性物質としては、 フルォレセィン系列、 ローダミン系列、 Cy3、 Cy5、 ェォシン系列、 NBD 系列等の蛍光色素や、 緑色蛍光蛋白質 (GFP) 等の蛍光 性蛋白質がある。 また、 非蛍光性物質としては、 ピオチンのような補酵素、 蛋白 質、 ペプチド、 糖類、 脂質類、 色素、 ポリエチレングリコール等、 何らかの目印 となり得る化合物であればいかなるものでもよい。
C末端ラベル化剤においては、 修飾部が蛍光基、 蛋白質と結合する基 (例えば ピオチニル基やイミノビォチニル基) 、 または、 その両方をもつことが好ましい。 特に、 ピオチニル基やイミノビォチニル基を有することは、 本発明 C末端ラベル 化剤による修飾の効率が上昇するため、 好ましい。
ペプチドァクセプ夕一部は、 蛋白質の翻訳系で、 ペプチド転移反応によって蛋 白質と結合し得る基をもち、 好ましくはピュー口マイシンまたはその誘導体の残 基をもつ。
ピューロマイシンはアミノアシル tRNAと類似した構造をもち、 蛋白質合成を阻 害する抗生物質として知られているが、 低濃度では蛋白質の C末端に結合するこ とが知られて I、る (Miyamoto-Sato, E. et al. (2000) Nucleic Acids Res. 28: 1176-1182)。 本発明で用いることができるピューロマイシン誘導体は、 ピューロマイシンと類 似した構造を有し、 蛋白質の C末端に結合することができる物質であればいかな るものでもよい。 具体例としては、 3,- N-アミノアシルビユ一ロマイシンァミノ ヌクレオシド、 3,- N-アミノアシルアデノシンアミノヌクレオシド等が挙げられ る。
修飾部とぺプチドアクセプ夕一部との間をつなぐヌクレオチドリンカーとは、 具体的には、 リボヌクレオチドまたはデォキシリボヌクレオチドが 1個ないし複 数個つながった核酸または核酸誘導体であり、 特に好ましい例として、 シトシン
塩基を含むリボヌクレオチド (- rC- ) またはデォキシリボヌクレオチド (- dC -) が 1個ないし複数個つながった化合物が挙げられる。 その他、 修飾部とペプチド ァクセプ夕一部との間に挿入することによつて修飾蛋白質の収量を上げることが できる物質であればいかなるものでもよい。
ラベル化剤においては、 ヌクレオチドリンカーが 2' -デォキシシチジル酸、 2, -デォキシシチジル-(3,,5,)- 2,-デォキシシチジル酸、 リボシチジル酸、 また は、 リボシチジル-(3,, 5, )-リボシチジル酸であることが好ましい。
ラベル化剤は、 上記修飾部とペプチドァクセプ夕一部とを所望のヌクレオチド リンカーを介して、 それ自体既知の化学結合方法によって結合させることにより 製造することができる。 具体的には、 例えば、 適当な保護基で保護された上記べ プチドアクセプ夕一部を固相担体上に結合させ、 核酸合成機等を用いてヌクレオ チドリンカ一としてヌクレオチドホスホアミダイ ト、 およびデォキシヌクレオチ ドホスホアミダイ ト、 修飾物質として蛍光物質やピオチンなどを結合したヌクレ ォチドホスホアミダイ トを順次結合させた後、 脱保護を行うことによって作製す ることができる。 上記各部の種類、 または結合の種類によっては液相合成法で結 合させるかまたは両者を併用することもできる。 また、 修飾物質としてニッケル 等の金属イオンを用いる場合には、 金属イオンが配位しうる二トリロトリ酢酸や ィミノジ酢酸等のキレート性の試薬を結合させ、 次いで金属イオンを配位させる ことができる。
< 2 - 2 >翻訳テンプレート
翻訳テンプレートは、 本発明修飾蛋白質を製造する際に利用できる翻訳テンプ レートであり、 図 2 2の Cに示すように、 ポリ A配列を含む 3'末端領域、 転写プ 口モーターを含んだ 5'非翻訳領域(5' UTR)、 および、 蛋白質のコードされた 0RF領 域から構成される。 翻訳テンプレートは DNAでも RNAでもよい。
さらに詳細には、 翻訳テンプレートは、 蛋白質をコードする 0RF領域と、 0RF領 域の 5, 側に位置する、 転写プロモーターおよび翻訳ェンハンサーを含んだ 51T Rと、 0RF領域の 3'側に位置する、 ポリ A配列 (polyA)を含んだ 3,末端領域から構成 される。
さらに好ましい翻訳テンプレートは、 5,UTRの転写プロモー夕一として SP6 RNA
ポリメラーゼのプロモ一夕一配列を含み、 翻訳ェンハンサ一としてタバコモザィ クウィルス(TMV)のオメガ配列の一部(029)を含む。 また、 0RF領域がその下流部 分に親和性タグ配列を含むことが好ましい。 親和性タグ配列は、 上述の親和性夕 グをコードする配列であり、 好ましくは His- tag (ポリヒスチジンタグ) 配列を 含む。 本発明翻訳テンプレートを用いて製造された本発明修飾蛋白質をポリヒス チジンタグを用いて製造する場合には、 ポリヒスチジンタグは長い方が、 ニッケ ルキレート樹脂による回収率が向上するため、 好ましい。 ポリヒスチジンタグの 好ましい長さの範囲は、 修飾される蛋白質の種類や標識の種類により変化し得る が、 通常には、 8〜 1 2残基である。
なお、 本明細書において 「上流」 および 「下流」 とは、 転写または翻訳の方向 におけるものを意味する。
翻訳テンプレートは、 DNAである場合、 上記の領域を適当な DNAベクターまたは ブラスミ ドに導入することにより得られた DNAべク夕一またはプラスミ ドであつ てもよい。 また、 翻訳テンプレートは、 MAである場合、 5,末端に Cap構造があつ てもなくてもよい
< 2 - 3 > C末端ラベル化蛋白質の製造
C末端ラベル化蛋白質の製造に用いられる翻訳系としては、 無細胞蛋白質合成 系や細胞発現系が挙げられる。 無細胞蛋白質合成系の具体例としては、 小麦胚芽 抽出液、 ゥサギ網状赤血球抽出液、 大腸菌 S30抽出液等が挙げられる。 これらの 無細胞蛋白質合成系の中に、 上記翻訳テンプレートを加え、 同時に 1〜100 /Mの 修飾剤を加え、 25〜37°Cで 1〜数時間保温することによって C末端修飾蛋白質が 合成される。 合成された修飾蛋白質は、 そのまま次の精製プロセスまたは検出プ 口セスに供することができる。 一方、 細胞発現系の具体例としては、 大腸菌、 枯 草菌、 好熱菌、 酵母等の細菌から、 昆虫細胞、 哺乳類等の培養細胞、 さらに線虫、 ショウジヨウバエ、 ゼブラフィ ッシュ、 マウス等の細胞に至るまで、 遺伝子導入 が可能な細胞であればいかなるものでもよい。 これらの細胞の中に、 上記本発明 翻訳テンプレートを導入し、 同時に 1〜100 /Mの本発明修飾剤を電気穿孔法、 マ イク口インジヱクシヨン法等により細胞の中に導入し、 細胞の至適生育温度で数 時間保温することによつて修飾蛋白質が合成される。 合成された修飾蛋白質は、
細胞を破砕することによって回収し次の精製プロセスまたは検出プロセスに供す ることができる。 また、 そのまま細胞の中で検出プロセスに供することも可能で ある。 翻訳テンプレートは、 用いる翻訳系に合わせて適切なものを選択する。
C末端ラベル化蛋白質を精製する方法としては、 ァフィ二ティ一、 ゲルろ過、 イオン交換等のクロマトグラフィーや、 電気泳動、 沈澱、 透析等、 一般に蛋白質 の精製に用いられるあらゆる方法が利用可能である。 好ましくは、 ァフィ二ティ —クロマトグラフィー、 ゲルろ過、 イオンクロマトグラフィー、 電気泳動、 沈殿、 透析、 および、 それらの任意の組合せが挙げられる。 特に好ましい例として、 ポ リヒスチジンぺプチドゃェピトープぺプチド、 グル夕チオン- S-トランスフェラ —ゼ、 プロテイン A、 マルトース結合蛋白質、 カルモジュリン結合ペプチド等の 親和性タグを融合した修飾蛋白質を親和性樹脂で精製し、 さらに未反応の修飾剤 を完全に除去するためにゲルろ過カラムに数回かける方法がある。
また、 上記の親和性タグを融合した修飾蛋白質を親和性樹脂で予め精製した後、 修飾部のピオチニル基またはィミノピオチニル基とアビジンまたはストレプトァ ビジンの親和性を利用して、 未修飾蛋白質を完全に除き、 100%修飾された蛋白質 を得る方法もある。
く 3 >本発明のより具体的な態様の説明
第一の発明の翻訳テンプレート(図 1の A )は、 コード分子(図 1の B )に由来す るコード部と PEGスぺーサ一分子(図 1の C )に由来する PEGスぺーサ一部からなる。 本発明は、 基本的にはコード部の配列によらず、 コード部に PEGスぺ一サ一部を 連結(ライゲーシヨン)することでその安定性が向上して翻訳効率を向上出来る。 しかしながら、 さらにコード部の構成や PEGスぺーサ一部の種類によって、 その 翻訳効率をより向上させることが可能である。 以下にその詳細を記載する。
本発明コード部(図 1の B )は、 5'末端領域、 (ffiF領域、 3'末端領域からなり、 5 ,末端に Cap構造があってもなくてもよい。 また、 コード部の配列には特に制限は なく、 あらゆるベクタ一やプラスミ ドに組み込まれた遺伝子やランダム配列など の利用が考えられる。 また、 コード部の 3'末端領域には、 A配列としてポリ Ax 8 配列、 または X配列として Xhol配列や 4塩基以上で(Cまたは G)蘭 (Cまたは G)の配 列を持つもの (すなわち、 Xhol配列およびその他の 4塩基以上で SNNSの配列を持
つもの) 、 および A配列と X配列の組み合わせとしての XA配列がある。 A配列、 X配 列、 または XA配列の上流に親和性タグ配列として Flag- tag配列、 からなる構成が 考えられる。 ここで、 親和性タグ配列としては HA- tagや IgGの protein A( zドメイ ン)などの抗原抗体反応を利用したものや His- tagなど、 蛋白質を検出または精製 できるいかなる手段を用いるための配列でもかまわない。 ここで、 翻訳効率に影 響する範囲としては、 XA配列の組み合わせが重要であり、 X配列のなかで、 最初 の 4塩基が重要であり、 SNNSの配列を持つものが好ましい。 X配列の長さの上限 は、 翻訳増強の効果が得られる限り特に限定されないが、 通常には、 1 5塩基以 下、 好ましくは 6塩基以下である。 また、 5'末端領域は、 転写プロモーターと翻 訳ェンハンサーからなり、 転写プロモータ一は T7/T3または SP6などが利用でき、 特に制限はないが、 小麦の無細胞翻訳系では、 翻訳のェンハンサー配列としてォ メガ配列やオメガ配列の一部を含む配列を利用することが好ましく、 プロモー夕 —としては、 SP6を用いることが好ましい。 翻訳ェンハンサ一のオメガ配列の一 部(029)は、 TMVのオメガ配列 (Gallie D.R., Walbot V. (1992) Nucleic Acids Res., vol. 20, 4631-4638)の一部を含んだものである。 コード部の 0RF領域については、 DNA および/または RNAからなるいかなる配列でもよい。 遺伝子配列、 ェキソン配列、 イントロン配列、 ランダム配列、 または、 いかなる自然界の配列、 人為的配列が 可能であり、 配列の制限はない。
本発明 PEGスぺーサ一部(図 1の C )は、 CCA領域、 PEG領域、 ドナ一領域からな る。 最低限必要な構成は、 ドナー領域である。 翻訳効率に影響する範囲としては、 ドナ一領域のみならず PEGスぺーサ一部を持つものが好ましく、 さらにアミノ酸 との結合能力のないピュー口マイシンを持つことが好ましい。 PEG領域のポリエ チレングリコールの分子量の範囲は、 400〜30,000で、 好ましくは 1 , 000〜10,000、 より好ましくは 2,000〜6,000である。 また、 CCA領域にはピューロマイシンを含 む構成と含まない構成が可能であり、 ピューロマイシンについては、 ピューロマ イシン (Puromycin) 、 3, -N-アミノアシルピューロマイシンアミノヌクレオシド (3' -N-Aminoacylpuromycin aminonucleoside, PANS -アミノ酸) 、 例えばアミノ 酸部がグリシンの PANS- Gly、 パリンの PANS- Val、 ァラニンの PANS- Ala、 その他、 全アミノ酸に対応する PANS-全アミノ酸が利用できる。 また、 化学結合として 3' -
アミノアデノシンのァミノ基とアミノ酸のカルボキシル基が脱水縮合した結果形 成されたアミ ド結合でつながった 3,- N-ァミノアシルアデノシンアミノヌクレオ シド (3" -Aiinoacyl adenosine aminonucleoside, AANS -アミノ酸) 、 例えばアミ ノ酸部がグリシンの AANS- Gly、 パリンの AANS- Val、 ァラニンの AANS- Ala、 その他、 全アミノ酸に対応する AANS-全アミノ酸が利用できる。 また、 ヌクレオシドまた はヌクレオシドとアミノ酸のエステル結合したものなども利用できる。 その他、 ヌクレオシドまたはヌクレオシドに類似した化学構造骨格を有する物質と、 アミ ノ酸またはアミノ酸に類似した化学構造骨格を有する物質を化学的に結合可能な 結合様式のものなら全て利用することができる。 本翻訳テンプレートでは、 以上 のピュー口マイシン誘導体のァミノ基がアミノ酸と結合する能力を欠いたあらゆ る物質、 およびピューロマイシンを欠いた CCA領域も考えられるが、 リボソーム 上で蛋白質と結合不能なピューロマイシンを含むことで、 より翻訳効率を高めら れる。 その理由は定かではないが、 蛋白質と結合不能なピューロマイシンがリボ ソームを刺激することで夕一ンオーバーが促進される可能性がある。 CCA領域( CC A)の 5'側に 1残基以上の DNAおよび/または RNAからなる塩基配列を持つことが好 ましい。 塩基の種類としては、 C>Uまたは T>G>Aの順で好ましい。 配列としては、 dC-ピューロマイシン, rC -ピューロマイシンなど、 より好ましくは dCdC-ピュー ロマイシン, rCrC-ピュー口マイシン, rCdC-ピュー口マイシン, dCrC-ピュー口 マイシンなどの配列で、 ァミノアシル -tRNAの 3'末端を模倣した CCA配列 (Philipps G.R. (1969) Nature 223, 374-377)が適当である。 第一の発明では、 これらのピュー 口マイシンが何らかの方法でアミノ酸と結合不可能となっている。
本発明 PEGスぺ一サ一部は修飾物質 (F 1および/または F 2 )を有する構成が可能 である。 このことによって、 翻訳テンプレートを回収、 精製による再利用、 また は固定化などのためのタグとして利用することが出来る。 少なくとも 1残基の DNA および/または RNAの塩基に修飾物質として、 蛍光物質、 ピオチン、 または His - ta gなど各種分離タグなどを導入したものが可能である。 また、 コード部の 5'末端 領域を SP6+029とし、 3,末端領域を、 たとえば、 Flag+XhoI+An(n=8)とすることで、 各長さは、 5'末端領域で約 60bp、 3'末端領域で約 40bpであり、 PCRのプライマ一 にアダプター領域として設計可能な長さである。 これによつて新たな効果が生み
出された。 すなわち、 あらゆるベクターやプラスミドや cDNAライブラリーから PC Rによって、 本発明の 5'末端領域と 3' ,末端領域をもったコード部を簡単に作成可 能となり、 このコード部に、 3, UTRの代わりとして PEGスぺ一サ一部をライゲー シヨンすることで、 翻訳効率の高い翻訳テンプレートを得られる。
本発明 PEGスぺ一サ一部とコード部のライゲーシヨンは、 その方法については、 一般的な DNAリガ一ゼを用いるものや光反応による連結など何でもよく、 特に限 定されるものではない。 RNAリガーゼを用いるライゲ一シヨンでは、 コード部で ライゲーシヨン効率に影響を与える範囲としては 3,末端領域の A配列が重要であ り、 少なくとも 2残基以上の dAおよび/または rAの混合または単一のポリ A連続鎖 であり、 好ましくは、 3残基以上、 より好ましくは 6から 8残基以上のポリ A連続 鎖である。 PEGスぺ一サ一部のドナー領域の 5,末端の DNAおよび/または RNA配列は、 ライゲーシヨン効率を左右する。 コード部と PEGスぺ一サ一部を、 RNAリガーゼで ライゲーシヨンするためには、 少なくとも 1残基以上を含むことが必要であり、 ポリ A配列をもつァクセプ夕一に対しては、 少なくとも 1残基の dC (デォキシシチ ジル酸)または 2残基の dCdC (ジデォキシシチジル酸)が好ましい。 塩基の種類と しては、 C>Uまたは T>G>Aの順で好ましい。 さらに、 ライゲ一シヨン反応時に、 PE G領域と同じ分子量のポリエチレングリコールを添加することが好ましい。
第二の発明は、 修飾剤の存在下で、 第一の発明の翻訳テンプレートを用いた翻 訳によって合成された、 修飾剤で C末端修飾された蛋白質(図 2の A )であり、 翻 訳テンプレート(図 2の B )と、 修飾剤(図 2の C )からなる。 ここでの特徴は、 特 に翻訳テンプレートのコード部の構成にある。 以下詳細に記述する。
本発明翻訳テンプレート(図 2の B )の PEGスぺ一サ一部は、 ピューロマイシン がアミノ酸と連結出来ないことを特徴とし、 第一の発明と同様である。 また、 コ 一ド部も第一の発明と同様であるが、 特に、 C末端ラベル化に適した構成として は、 3'末端領域が、 XA配列であることが重要であり、 X配列のなかで、 最初の 4 塩基が重要で、 S匪 Sの配列を持つものが好ましい。 ここでも、 コード部の 5,末端 領域を SP6+029とし、 3,末端領域を、 たとえば、 Flag+XhoI+An(n=8)とすることで、 各長さは、 5,末端領域で約 60bp、 3'末端領域で約 40bpであり、 PCRのプライマー にアダプター領域として設計できる長さである。 これによつて、 あらゆるベクタ
—やプラスミ ドゃ cDNAライブラリーから PCRによって、 本発明の 5'末端領域と 3, 末端領域をもったコード部を簡単に作成可能となり、 このコード部に 3' UTRの代 わりとして PEGスぺーサ一部をライゲーシヨンすることで、 C末端ラベル化に適 した翻訳効率の高い翻訳テンプレートを得られる。
本発明修飾剤(図 2の C )は、 タンパク質の翻訳系でのペプチド転移反応、 すな わち、 リボソーム上でのぺプチド転移反応によってタンパク質と結合し得る基 (残基を含む) をもつぺプチドアクセプター部が、 ヌクレオチドリンカ一を介し て修飾部と結合した構成をもつ。 この修飾剤の存在下でタンパク質合成を行い、 得られる C末端修飾タンパク質を精製し、 分子間相互作用の検出系を用いること によって、 タンパク質相互作用の検出が可能となる。 修飾部には、 第一の発明の PEGスぺーサ一部と同様に修飾物質(F3 )が含まれる。 修飾物質として、 非放射性 修飾物質の具体例としては、 蛍光性、 非蛍光性修飾物質等が挙げられる。 蛍光性 物質としては、 フルォレセィン系列、 ローダミン系列、 Cy3、 Cy5、 ェォシン系列、 NBD 系列等の蛍光色素や、 緑色蛍光タンパク質,(GFP) 等の蛍光性タンパク質が ある。 また、 非蛍光性物質としては、 ピオチンのような補酵素、 タンパク質、 ぺ プチド、 糖類、 脂質類、 色素、 ポリエチレングリコール等、 何らかの目印となり 得る化合物であればいかなるものでもよい。 本発明修飾剤においては、 修飾部が 蛍光基、 タンパク質と結合する基、 または、 その両方をもつことが好ましい。 ぺ プチドアクセプ夕一部は、 タンパク質の翻訳系で、 ペプチド転移反応によって夕 ンパク質と結合し得る基をもち、 好ましくはピューロマイシンまたはその誘導体 の残基をもつ。 ピューロマイシンはアミノアシル tRNAと類似した構造をもち、 夕 ンパク質合成を阻害する抗生物質として知られているが、 低濃度ではタンパク質 の C末端に結合することが知られている (Miyamoto-Sato, E. et al. (2000) Nucleic Acids Res. 28: 1176-1182) 。 本発明で用いることができるピューロマイシン誘導 体は、 ピューロマイシンと類似した構造を有し、 タンパク質の C末端に結合する ことができる物質であればいかなるものでもよい。 具体例としては、 3' - N-アミ ノアシルピュー口マイシンアミノヌクレオシド、 3, - N-ァミノアシルアデノシン アミノヌクレオシド等が挙げられる。 修飾部とァクセプ夕一部との間をつなぐヌ クレオチドリンカーとは、 具体的には、 リボヌクレオチドまたはデォキシリボヌ
クレオチドが 1個ないし複数個つながった核酸または核酸誘導体であり、 特に好 ましい例として、 シトシン塩基を含むリボヌクレオチド (- rC- ) またはデォキシ リボヌクレオチド (- dC- ) が 1個ないし複数個つながった化合物が挙げられる。 その他、 修飾部とァクセプ夕一部との間に挿入することによつて修飾タンパク質 の収量を上げることができる物質であればいかなるものでもよい。 本発明修飾剤 においては、 ヌクレオチドリンカ一が 2' -デォキシシチジル酸、 2, -デォキシシチ ジル-(3' , 5' )-2, -デォキシチジル酸、 リボシチジル酸、 または、 リボシチジル- ( 3' , 5';)-リポシチジル酸であることが好ましい。
本発明の修飾剤は、 上記修飾部とァクセプ夕一部とを所望のヌクレオチドリン 力一を介して、 それ自体既知の化学結合方法によって結合させることにより製造 することができる。 具体的には、 例えば、 適当な保護基で保護された上記ァクセ プ夕一部を固相担体上に結合させ、 核酸合成機を用いてヌクレオチドリンカーと してヌクレオチドホスホアミダイ ト、 およびデォキシヌクレオチドホスホアミダ ィ ト、 機能性修飾物質として蛍光物質やピオチンなどを結合したホスホアミダイ トを順次結合させた後、 脱保護を行うことによって作製することができる。 上記 各部の種類、 または結合の種類によっては液相合成法で結合させるかまたは両者 を併用することもできる。 また、 機能性修飾物質としてニッケル等の金属イオン を用いる場合には、 金属イオンが配位しうるニトリロトリ酢酸やィミノジ酢酸等 のキレート性の試薬を結合させ、 次いで金属イオンを配位させることができる。 第三の発明は、 第一の発明の翻訳テンプレートを用いた翻訳によって合成され た、 翻訳テンプレートで C末端修飾された蛋白質(図 3の A;対応付け分子)と翻 訳テンプレート(図 3の B )を除去した、 PEGによって C末端修飾された蛋白質(図 3の C )の構成を持つ。 以下詳細に記述する。
翻訳テンプレート(図 3の B )の PEGスぺーサ一部は、 ピューロマイシンがアミ ノ酸と連結できることを特徴とする以外は第一の発明と同様である。 また、 コ一 ド部も第一の発明と同様であるが、 特に、 対応付けに適した構成としては、 3'末 端領域を A配列にすることが重要であり、 ト一夕ル蛋白の対応付けの効率が著し く向上してフリー蛋白質の量が激減することが確認された。 ここでも、 コード部 の 5'末端領域を SP6+029とし、 3,末端領域を、 たとえば、 Flag+XhoI+An(n二 8)とす
ることで、 各長さは、 5'末端領域で約 60bp、 3'末端領域で約 40bpであり、 PCRの プライマーにアダプタ一領域として設計できる長さである。 これによつて、 あら ゆるベクターやプラスミ ドゃ cDNAライブラリ一から PCRによって、 本発明の 末 端領域と 35末端領域をもったコード部を簡単に作成可能となり、 PEGスぺーサー 部をライゲーシヨンすることで、 対応付け効率の高い翻訳テンプレートが得られ る。 また、 本発明の PEGによって C末端修飾された蛋白質(図 3 C )は、 蛋白質の 相互作用検出などにおいて、 コード部を利用しない場合、 たとえば、 FCCS測定、 蛍光リ一ダー、 プロテインチヅプなどに応用する場合は、 RNase Aなどで意図的 に切断することが好ましい。 切断することによって、 コード部の妨害による蛋白 質間相互作用の検出の困難性が解消出来る。
対応付け分子は、 進化分子工学として、 ダーウィン進化機構を利用して、 「変 異(Mutation)」 、 「選択(Selection)j 、 「増幅(Ampl if ication)」 の 3つの単位 操作を繰り返すことで、 ランダムライブラリ一などから、 漸進的に進化させ、 所 望の機能を獲得した物質を創製することで工学的に応用することが可能である (図 4 )。 また、 ゲノム機能解析への応用として、 cDNAライブラリーから所望の物 質や蛋白質と相互作用を持つ一群の遺伝子配列を網羅的に解析可能である(図 4 )。 さらに、 図 4のスクリーニングを一次スクリーニング後に、 二次スクリーニング として、 図 5に示したように物質や蛋白質と相互作用の詳細を FCCSやマイクロア レイなどにより解析することが可能である。 以上の解析は、 in vitroにおける共 翻訳や共翻訳スクリーニング法と組み合わせて利用することもできる。 また、 一 次スクリーニングで対応付け分子を利用するときは A配列のコード部を利用し、 二次スクリーニングでは、 対応付け分子を利用するときは A配列のコード部、 C 末端ラベル化蛋白質を利用するときは XA配列のコード部をプライミングによって 変更して使用することで、 それぞれの効果を使い分けることが出来る。
無細胞タンパク質合成系の具体例としては、 小麦胚芽抽出液、 ゥサギ網状赤血 球抽出液、 大腸菌 S30抽出液等が挙げられる。 これらの無細胞タンパク質合成系 の中に、 上記翻訳テンプレートを加え、 C末端ラベル化の場合は、 同時に 1〜100 〃Mの修飾剤を加え、 25〜37°Cで 1〜数時間保温することによって C末端修飾夕ン パク質が合成される。 対応付けの場合は、 上記翻訳テンプレートを加えて、 25〜
37°Cで 1〜数時間保温するだけで対応付け分子が合成される。 合成された両修飾 タンパク質は、 そのまま次の精製プロセスまたは検出プロセス、 または直接細胞 への導入に供することができる。 細胞発現系の具体例としては、 大腸菌、 枯草菌、 好熱菌、 酵母等の細菌から、 昆虫細胞、 哺乳類等の培養細胞、 さらに線虫、 ショ ウジヨウバエ、 ゼブラフィッシュ、 マウス等に至るまでいかなる細胞でもよい。 これらの細胞の中に、 上記 C末端ラベル化または対応付けされた両修飾夕ンパク 質を直接導入することもできるし、 または、 上記本発明翻訳テンプレートを導入 し、 C末端ラベル化の場合は、 同時に 1〜100 Μの本発明修飾剤を電気穿孔法、 マイクロインジ: クシヨン法等により細胞の中に導入し、 細胞の至適生育温度で 数時間保温することによって修飾夕ンパク質が合成される。 対応付けの場合は、 上記本発明翻訳テンプレートを導入し、 細胞の至適生育温度で数時間保温するこ とによって対応付け分子が合成される。 合成された両修飾タンパク質は、 細胞を 破砕することによって回収し次の精製プロセスまたは検出プロセスに供すること ができる。 また、 そのまま細胞の中で検出プロセスに供することも可能である。 翻訳テンプレートは、 用いる翻訳系に合わせて適切なものを選択する。
本発明は、 本発明翻訳テンプレートから合成された C末端修飾タンパク質(修 飾剤で C末端修飾された蛋白質(図 2の A )、 翻訳テンプレートで C末端修飾され た蛋白質(図 3の A;対応付け分子)、 PEGによって C末端修飾された蛋白質(図 3 C ) )を利用した夕ンパク質と標的分子との間の相互作用の解析方法、 すなわち、 タンパク質と標的分子との間の相互作用を解析する方法であって、 該タンパク質 を含む本発明修飾タンパク質を用いることを特徴とする方法を提供する(図 5 )。 < 4 >解析方法
本発明の解析方法においては、 通常には、 上記で得られた本発明修飾タンパク 質と標的分子を、 修飾物質の種類や反応系の種類などにより適宜組み合わせて接 触せしめ、 該本発明修飾タンパク質または該標的分子が発する信号において両分 子間の相互作用に基づいて発生される上記信号の変化を測定することにより相互 作用を解析する。 相互作用の解析は、 例えば、 蛍光相関分光法、 蛍光イメージン グアナライズ法、 蛍光共鳴エネルギー移動法、 エバネッセント場分子イメージン グ法、 蛍光偏光解消法、 表面プラズモン共鳴法、 または、 固相酵素免疫検定法に
より行われる。 以下これらの方法の詳細については記述する。
「標的分子」 とは、 本発明修飾タンパク質と相互作用する分子を意味し、 具体 的にはタンパク質、 核酸、 糖鎖、 低分子化合物などが挙げられる。 タンパク質と しては、 本発明修飾タンパク質と相互作用する能力を有する限り特に制限はなく、 タンパク質の全長であっても結合活性部位を含む部分ペプチドでもよい。 またァ ミノ酸配列、 およびその機能が既知のタンパク質でも、 未知のタンパク質でもよ い。 これらは、 合成されたペプチド鎖、 生体より精製されたタンパク質、 または c D N Aライブラリー等から適当な翻訳系を用いて翻訳し、 精製したタンパク質 等でも標的分子として用いることができる。 合成されたぺプチド鎖はこれに糖鎖 が結合した糖夕ンパク質であってもよい。 これらのうち好ましくはアミノ酸配列 が既知の精製されたタンパク質か、 または c D N Aライブラリー等から適当な方 法を用いて翻訳および精製されたタンパク質を用いることができる。
核酸としては、 本発明修飾タンパク質と相互作用する能力を有する限り、 特に 制限はなく、 D N Aまたは R N Aも用いることができる。 また、 塩基配列または 機能が既知の核酸でも、 未知の核酸でもよい。 好ましくは、 タンパク質に結合能 力を有する核酸としての機能、 および塩基配列が既知のものか、 またはゲノムラ ィブラリー等から制限酵素等を用いて切断単離してきたものを用いることができ る。 糖鎖としては、 本発明修飾タンパク質と相互作用する能力を有する限り、 特 に制限はなく、 その糖配列または機能が、 既知の糖鎖でも未知の糖鎖でもよい。 好ましくは、 既に分離解析され、 糖配列または機能が既知の糖鎖が用いられる。 低分子化合物としては、 本発明修飾タンパク質と相互作用する能力を有する限り、 特に制限はない。 機能が未知のものでも、 またはタンパク質に結合する能力が既 に知られているものでも用いることができる。
これら標的分子が本発明修飾タンパク質と行う 「相互作用」 とは、 通常は、 夕 ンパク質と標的分子間の共有結合、 疎水結合、 水素結合、 ファンデルワールス結 合、 および静電力による結合のうち少なくとも 1つから生じる分子間に働く力に よる作用を示すが、 この用語は最も広義に解釈すべきであり、 いかなる意味にお いても限定的に解釈してはならない。 共有結合としては、 配位結合、 双極子結合 を含有する。 また静電力による結合とは、 静電結合の他、 電気的反発も含有する。
また、 上記作用の結果生じる結合反応、 合成反応、 分解反応も相互作用に含有さ れる。
相互作用の具体例としては、 抗原と抗体間の結合および解離、 タンパク質レセ プ夕一とリガンドの間の結合および解離、 接着分子と相手方分子の間の結合およ び解離、 酵素と基質の間の結合および解離、 核酸とそれに結合するタンパク質の 間の結合および解離、 情報伝達系におけるタンパク質同士の間の結合と解離、 糖 タンパク質とタンパク質との間の結合および解離、 または糖鎖とタンパク質との 間の結合および解離が挙げられる。
用いられる標的分子は、 態様に応じて修飾物質により修飾して用いることがで きる。 修飾物質は、 通常、 蛍光性物質などの非放射性修飾物質から選択される。 蛍光物質としては、 フリーの官能基 (例えばカルボキシル基、 水酸基、 アミノ基 など) を持ち、 タンパク質、 核酸等の上記標的物質と連結可能な種々の蛍光色素、 例えばフルォレセイン系列、 ローダミン系列、 Cy3、 Cy5、 ェォシン系列、 N B D 系列などのいかなるものであってもよい。 その他、 色素など修飾可能な化合物で あれば、 その化合物の種類、 大きさは問わない。
これらの修飾物質は、 標的分子と本発明修飾タンパク質との間の相互作用に基 づいて発生される信号の変化の測定または解析方法に適したものが適宜用いられ る。
上記修飾物質の標的分子への結合は、 それ自体既知の適当な方法を用いて行う ことができる。 具体的には、 例えば、 標的分子がタンパク質の場合、 上記に記載 した C末端を修飾する方法等を用いることができる。 また標的分子が核酸の場合 は、 予め修飾物質を共有結合などで結合させたオリゴ D N Aプライマーを用いた P C Rを行う方法などによつて簡便に修飾することができる。
また、 本発明修飾タンパク質または本発明に用いられる標的分子は態様に応じ て、 固相に結合させる場合があるが、 固相に結合させる方法としては、 修飾物質 を介して結合させるものと、 それ以外の部分により結合させるものが挙げられる。 修飾物質を介して結合させる場合に用いられる修飾物質は、 通常には、 特定の ポリペプチドに特異的に結合する分子 (以下、 「リガンド」 と称することがある。 ) であり、 固相表面には該リガンドと結合する特定のポリペプチド (以下、 「ァダ
プタータンパク質」 と称することがある) を結合させる。 アダプタ一タンパク質 には、 結合タンパク質、 受容体を構成する受容体タンパク質、 抗体なども含まれ る。
アダプタータンパク質/リガンドの組み合わせとしては、 例えば、 アビジンお よびストレブトアビジン等のピオチン結合タンパク質/ピオチン、 マルト一ス結 合夕ンパク質/マルトース、 Gタンパク質/グァニンヌクレオチド、 ポリヒスチ ジンぺプチド /二ヅケルまたはコバルト等の金属イオン、 グルタチオン一 S—ト ランスフェラ一ゼ /グル夕チオン、 D N A結合夕ンパク質/ D N A、 抗体/抗原 分子 (ェピトープ) 、 カルモジュリン/カルモジュリン結合ペプチド、 A T P結 合夕ンパク質/ A T P、 またはエストラジオール受容体夕ンパク質/エストラジ オールなどの各種受容体タンパク質/そのリガンドなどが挙げられる。
これらの中で、 アダプタ一夕ンパク質/リガンドの組み合わせとしては、 アビ ジンおよびストレプトアビジンなどのピオチン結合タンパク質、 マルト一ス結合 夕ンパク質/マルトース、 ポリヒスチジンぺプチド /ニッケルまたはコバルト等 の金属イオン、 ダル夕チオン一 S—トランスフェラーゼ /グル夕チオン、 抗体/ 抗原分子 (ェピトープ) 、 などが好ましく、 特にストレプトアビジン/ピオチン の組み合わせが最も好ましい。 これらの結合タンパク質は、 それ自体既知のもの であり、 該夕ンパク質をコードする D N Aは既にクロ一ニングされている。
アダプタ一夕ンパク質の固相表面への結合は、 それ自体既知の方法を用いるこ とができるが、 具体的には、 例えば、 タンニン酸、 ホルマリン、 グルタルアルデ ヒド、 ピルビックアルデヒド、 ビス一ジァゾ化べンジゾン、 トルエン- 2, 4-ジィ ソシァネート、 アミノ基、 活性エステルに変換可能なカルボキシル基、 またはホ スホアミダイ ドに変換可能な水酸基またはアミノ基などを利用する方法を用いる ことができる。
修飾物質以外の部分により固相に結合させる場合は、 通常タンパク質、 核酸、 糖鎖、 低分子化合物を固相に結合させるのに用いられる既知の方法、 具体的には 例えば、 タンニン酸、 ホルマリン、 グルタルアルデヒド、 ピルビヅクアルデヒド、 ビス一ジァゾ化べンジゾン、 トルエン- 2,4-ジイソシァネート、 アミノ基、 活性 エステルに変換可能なカルボキシル基、 またはホスホアミダイ ドに変換可能な水
酸基またはアミノ基などを利用する方法を用いることができる。
' 「測定」 とは解析のために用いられる信号の変化を収集するための手段であり、 いかなる意味においても限定的に解釈してはならない。 用いられる測定法として は、 例えば、 蛍光相関分光法、 蛍光共鳴エネルギー移動法、 エバネッセント場分 子イメージング法、 蛍光偏光解消法、 蛍光イメージングアナライズ法、 表面ブラ ズモン共鳴法、 固相酵素免疫検定法など、 分子間相互作用を検出できるあらゆる 系が利用可能である。
虫光木日 ¾分光 (Fluorescence Correlation Spectroscopy (FCS) : Eigen, Μ·, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91, 5740-5747(1994)) は、 共焦点レーザ一顕微鏡等の下 で、 粒子の流動速度、 または拡散率、 容積収縮等を測定する方法であり、 本発明 においては、 本発明修飾タンパク質 (C末端修飾タンパク質) と標的分子間の相 互作用により元の修飾分子 1分子の並進ブラゥン運動の変化を測定することによ り、 相互作用する分子を測定することができる。 具体的には試料粒子が励起光に より励起されて、 試料液容積の一部において蛍光を放射し、 この放射光を測定し 光子割合を得る。 この値は、 特定の時間に観測されている空間容積中に存在する 粒子の数と共に変化する。 上述した種々のパラメ一夕は自己相関関数を使用して この信号の変動から算出され得る。 この FCSを行う為の装置も力一ルヅアイス (Z eiss) 社等から市販されており、 本方法においてもこれらの装置を用いて解析を 行うことができる。 この方法を用いてタンパク質一標的分子間相互作用の測定ま たは解析を行う場合、 C末端修飾タンパク質または標的分子のいずれも溶液とし て供することが必要である (液相法) 。 標的分子は修飾の必要はない。 また相互 作用を調べようとする C末端修飾タンパク質より非常に分子量の小さい分子は、 C末端修飾タンパク質のブラウン運動に影響を及ぼさないため本方法においては しかし、 2種類の蛍光色素を用いる蛍光相互相関分光法 (FCCS) は、 1種類の 蛍光色素を用いる FCSでは困難であった同じくらいの分子量をもつタンパク質間 の相互作用も検出できる。 2種類の蛍光色素を用いる他の方法としては蛍光共鳴 エネルギー移動 (FRET) 法が知られているが、 FRETが生じるためには 2つの蛍光 色素が 40〜50A以内に近接する必要があり、 タンパク質の大きさや蛍光色素の付
いている位置によっては、 相互作用していても FRETが観測されない危険性がある。 FCCS法では相互相関の検出は蛍光色素間の距離に依存しないので、 そのような問 題がない。 一方、 他の検出系である蛍光偏向解消法と比較すると、 FCCS法は必要 なサンプル量が少なく、 検出時間が短く、 HTSのための自動化が容易等の長所が ある。 さらに FCCS法では蛍光標識された分子の大きさや数というきわめて基本的 な情報が得られるので、 表面プラズモン共鳴法のように汎用的な用途に利用でき る可能性がある。 両者の違いは、 表面プラズモン共鳴法ではタンパク質が固定化 された状態で相互作用を検出するのに対して、 FCCS法ではより天然の状態に近い 溶液中の相互作用を見ることができる点にある。 FCCS法では、 タンパク質の固定 化が必要ないかわりに、 タンパク質を蛍光色素で標識する必要があるが、 本発明 により、 この課題を克服することが可能となった。
本方法において C末端修飾タンパク質に標的分子を接触せしめる方法としては、 両分子が相互作用するに十分な程度に接触する方法であれば如何なるものであつ てもよいが、 好ましくは市販の F C S用装置の測定用ゥエルに通常生化学的に用 いられる緩衝液等に適当な濃度で C末端修飾タンパク質溶解した溶液を投入し、 さらに同緩衝液に適当な濃度で標的分子を溶解した溶液を投入する方法によって 行われる。
この方法において、 同時に多数の解析を行う方法としては、 例えば上記 F C S 用測定装置の各測定用ゥエルにそれぞれ異なる複数の C末端修飾夕ンパク質を投 入し、 これに特定の標的分子溶液を投入するか、 または特定の C末端修飾タンパ ク質を投入し、 各ゥエルに互いに異なる複数種の標的分子溶液を投入する方法が 用いられる。
蛍光イメージングアナライズ法は、 固相化された分子に、 修飾分子を接触せし め、 両分子の相互作用により、 固相化された分子上にとどまった修飾分子から発 せられる蛍光を、 市販の蛍光イメージングアナライザーを用いて測定または解析 する方法である。
この方法を用いてタンパク質一標的分子間相互作用の測定または解析を行う場 合、 C末端修飾タンパク質または標的分子のいずれか一方は上記した方法により 固相化されていることが必要である。 標的分子は固相化して用いる場合には修飾
されているものと、 されていないもののどちらも利用可能である。 また、 固相化 しないで用いる場合には上記した修飾物質により修飾されていることが必要であ る。 C末端修飾タンパク質は、 修飾部を介して固定化されているものも、 修飾部 以外の部分で固定化されているものも用いることができる。
C末端修飾タンパク質、 または標的分子を固相化するための基板としては、 通 常タンパク質や核酸等を固定化するのに用いられる二トロセルロースメンブレン やナイロンメンブレン、 またはプラスチック製のマイクロプレート等も用いるこ とができる。
本方法において修飾標的分子または C末端修飾タンパク質を固相化分子へ接触 せしめる方法としては、 両分子が相互作用するに十分な程度に接触する方法であ ればいかなるものであってもよいが、 好ましくは修飾標的分子または C末端修飾 タンパク質を生化学的に通常使用される緩衝液に適当な濃度で溶解した溶液を作 成し、 これを固相表面に接触させる方法が好ましい。
両分子を接触せしめた後、 好ましくは過剰に存在する修飾標的分子または C末 端修飾タンパク質を同緩衝液等により洗浄する工程を行い、 固相上にとどまった 標的分子または C末端修飾夕ンパク質の修飾物質から発せられる蛍光信号、 また は固相化されている修飾分子から発せられる蛍光と固相上にとどまつた修飾分子 から発せられる蛍光が混ざり合った信号を、 市販のイメージングアナライザーを 用いて測定または解析することにより、 固相化された分子と相互作用する分子を 同定することができる。
この方法において、 同時に多数の解析を行う方法としては、 例えば上記固相表 面に、 複数の c末端修飾夕ンパク質または修飾もしくは非修飾標的分子を番地付 けして固相化する方法、 または 1種類の C末端修飾タンパク質または修飾もしく は非修飾標的分子に固相化されていない複数種の c末端修飾夕ンパク質または修 飾標的分子を接触させる方法等が用いられる。 複数種の C末端修飾夕ンパク質ま たは修飾標的分子を接触させる場合には、 固相にとどまった該分子を緩衝液の濃 度の差等により解離させて取得し、 これを既知の方法により分析することにより 同定できる。
蛍光共鳴エネルギー移動 (FRET) 法は、 2種類の蛍光色素を用いる他の分子間
相互作用検出法としてよく知られている。 FRET とは、 2種類の蛍光色素の一方 (エネルギー供与体) の蛍光スペクトルと、 もう一方 (エネルギー受容体) の吸 収スペクトルに重なりがあるとき、 2つの蛍光色素間の距離が十分小さいと、 供 与体からの発光が起こらないうちに、 その励起エネルギーが受容体を励起してし まう確率が高くなる現象をいう。 したがって、 相互作用を検出したい 2つのタン パク質を、 それぞれ供与体および受容体となる蛍光色素で標識しておき、 供与体 を励起すれば、 2つのタンパク質が相互作用しない場合は、 蛍光色素間の距離が 大きいため FRETは起こらず、 供与体の蛍光スペクトルが観察されるが、 2つの 夕ンパク質が相互作用して蛍光色素間の距離が小さくなると、 FRETにより受容体 の蛍光スぺクトルが観察されるので、 蛍光スぺクトルの波長の違いからタンパク 質間相互作用の有無を判別することができる。 蛍光色素としては、 供与体がフル ォレセイン、 受容体がローダミンという組み合わせがよく用いられている。 また 最近では、 蛍光緑色タンパク質 (GFP) の波長の異なる変異体の組み合わせによ り、 細胞の中で FRETを観察し相互作用を検出する試みがなされている。 この方 法の欠点としては、 FRETが生じるために 2つの蛍光色素が 40〜50A以内に近接 する必要があるため、 夕ンパク質の大きさや蛍光色素の付いている位置によって は、 相互作用していても FRETが観測されない危険性があるという点が挙げられる。 エバネヅセント場分子イメージング法とは、 Funatsu, Τ·, et al., Nature, 374, 555-559 (1995)等に記載されている方法で、 ガラス等の透明体に固相化した分子 に溶液として第 2の分子を接触せしめ、 これにエバネヅセント場が発生する角度 でレーザー光等の光源を照射し、 発生したエバネッセント光を検出器によって測 定または解析する方法である。 これらの操作は、 それ自体既知のエバネッセント 場蛍光顕微鏡装置を用いて行うことができる。
この方法を用いてタンパク質一標的分子間相互作用の測定または解析を行う場 合、 C末端修飾夕ンパク質または標的分子のいずれか一方は上記した方法により 固相化されていることが必要である。 標的分子は固相化する場合は修飾の必要は ないが、 固相化しないで用いる場合には上記した修飾物質により修飾されている ことが必要である。
C末端修飾タンパク質、 または標的分子を固相化するための基板としては、 ガ
ラス等の材質の基板が用いられ、 好ましくは石英ガラスが用いられる。 また、 レ 一ザ一光の散乱等を防ぐために表面を超音波洗浄したものが好ましい。
本方法において固相化していない C末端修飾タンパク質または修飾標的分子を 固相化分子へ接触せしめる方法としては、 両分子が相互作用するに十分な程度に 接触する方法であればいかなるものであってもよいが、 好ましくは固相化して.い ない C末端修飾タンパク質または修飾標的分子を生化学的に通常使用される緩衝 液に適当な濃度で溶解した溶液を作成し、 これを固相表面に滴下する方法が好ま しい。
両分子を接触せしめた後、 エバネッセント場照明により励起された蛍光を C C Dカメラ等の検出器を用いて測定することにより、 固相化された分子と相互作用 する分子を同定することができる。
この方法において、 同時に多数の解析を行う方法としては、 例えば上記基板に、 複数の C末端修飾タンパク質または修飾標的分子を番地付けして固相化する方法 等が用いられる。
蛍光偏光法 (Perran, J., et al., J. Phys. Rad., 1, 390-401(1926)) は、 蛍光偏光で励 起された蛍光分子が、 励起状態の間、 定常状態を保っている場合には同一の偏光 平面で蛍光を放射するが、 励起された分子が励起状態中に回転ブラウン運動等を 行った場合に、 放射された蛍光は励起光とは異なった平面になることを利用する 方法である。 分子の運動はその大きさに影響を受け、 蛍光分子が高分子である場 合には、 励起状態の間の分子の運動はほとんどなく、 放射光は偏光を保ったまま になっているのに対して、 低分子の蛍光分子の場合は、 運動速度が速いために放 射光の偏光が解消される。 そこで、 平面偏光で励起された蛍光分子から放射され る蛍光の強度を、 元の平面とそれに垂直な平面とで測定し、 両平面の蛍光強度の 割合からこの分子の運動性およびその存在状態に関する情報が得られるものであ る。 この方法によれば、 夾雑物があってもこれに影響されることなく、 蛍光修飾 された分子と相互作用する標的分子の挙動を追跡できる。 これは蛍光修飾された 分子と標的分子が相互作用するときにのみ、 偏光度の変化として測定されるから である。
この方法を行うための装置としては例えば BECON (Panyera社製) 等が市販され
ており、 本方法もこれらの装置を用いることにより行うことができる。
この方法を用いてタンパク質一標的分子間相互作用の測定または解析を行う場 合、 C末端修飾タンパク質または標的分子のいずれも溶液として供する必要であ る。 標的分子は修飾の必要はない。 また相互作用を調べようとする C末端修飾夕 ンパク質より非常に分子量の小さい分子は、 C末端修飾タンパク質のブラウン運 動に影響を及ぼさないため本方法においてはふさわしくない。
本方法において C末端修飾タンパク質に標的分子を接触せしめる方法としては、 両分子が相互作用するに十分な程度に接触する方法であれば如何なるものであつ てもよいが、 好ましくは市販の蛍光偏光解消装置の測定用ゥエルに通常生化学的 に用いられる緩衝液等に適当な濃度で c末端修飾タンパク質溶解した溶液を投入 し、 さらに同緩衝液に適当な濃度で標的分子を溶解した溶液を投入する方法によ つて行われる。
本方法において測定する C末端修飾夕ンパク質および標的分子との間の相互作 用は、 必ずしも抗原抗体方法ほど特異性は高くないことが考えられるため、 最適 の組み合わせを検出するためには、 相互作用の程度を数値化することが有効であ る。 相互作用の程度を示す指標としては、 例えば一定濃度の C末端修飾タンパク 質に対して、 極大蛍光偏光度を与える最小標的物濃度の値等を用いることができ る。
この方法において、 同時に多数の解析を行う方法としては、 例えば上記蛍光偏 光解消法測定装置の各測定用ゥエルにそれぞれ異なる複数の c末端修飾夕ンパク 質を投入し、 これに特定の標的分子溶液を投入するか、 または特定の C末端修飾 夕ンパク質を投入し、 各ゥエルに互いに異なる複数種の標的分子溶液を投入する 方法が用いられる。
表面プラズモン共鳴法とは、 金属/液体界面で相互作用する分子によって表面 プラズモンが励起され、 これを反射光の強度変化で測定する方法である (Cullen, D.C., et al., Biosensors, 3(4), 211-225(1987-88)) 。 この方法を用いてタンパク質一 標的分子間相互作用の測定または解析を行う場合、 C末端修飾夕ンパク質は上記 した方法により固相化されていることが必要であるが、 標的分子の修飾は必要な い。
C末端修飾タンパク質を固相化するための基板としては、 ガラスの等の透明基 板上に金、 銀、 白金等の金属薄膜が構成されたものが用いられる。 透明基板とし ては、 通常表面プラズモン共鳴装置用に用いられるものであればいかなるもので あってもよく、 レーザー光に対して透明な材料からなるものとして一般的にはガ ラス等からなるものであり、 その厚さは 0 . l〜5 mm程度のものが用いられる。 また金属薄膜の膜厚は 1 0 0〜2 0 0 O A程度が適当である。 このような表面プ ラズモン共鳴装置用固基板として市販されているものも用いることができる。 C 末端修飾夕ンパク質の上記基板への固相化は前述した方法により行うことができ る。
本方法において標的分子を C末端修飾タンパク質へ接触せしめる方法としては、 両分子が相互作用するに十分な程度に接触する方法であればいかなるものであつ てもよいが、 好ましくは標的分子を生化学的に通常使用される緩衝液に適当な濃 度で溶解した溶液に固相化された C末端タンパク質を接触させる方法を用いるこ とができる。
これらの行程は市販の表面プラズモン共鳴装置、 例えば B IAcore2000 (Pharmacia Biosensor社製)によってもよい。 両分子を接触せしめた後、 それ自体既 知の表面プラズモン共鳴装置を用いて、 それぞれの反射光の相対強度の時間的変 化を測定することにより、 固相化された C末端修飾タンパク質と標的分子の相互 作用が解析できる。
この方法において、 同時に多数の解析を行う方法としては、 例えば上記表面プ ラズモン共鳴装置に用いられる基板に、 複数の C末端修飾タンパク質を番地付け して固相化するか、 または 1種類の固相化された C末端修飾夕ンパク質に複数種 の標的分子を接触させる方法等が用いられる。
固相酵素免疫検定法 ( Enzyme Linked Immunosorbent Assay ( EL I SA) : Crowther, J.R., Methods in Molecular Biology, 42 (1995)) は、 固相上に固定化した 抗原に対し、 抗体を含む溶液を接触せしめ、 両分子の相互作用 (抗原抗体反応) により、 固相化された抗原上にとどまった抗体をこれと特異的に結合する修飾分 子 (I g G等) から発せられる蛍光、 または修飾分子を基質とする色素から発せ られる信号を、 市販の検出器 (E L I S Aリーダー) を用いて測定または解析す
る方法である。
この方法を用いてタンパク質一標的分子間相互作用の測定または解析を行う場 合、 抗原となる C末端修飾タンパク質を上記した方法により固相化されているこ とが必要である。 また抗体となる標的分子は上記した修飾物質により修飾されて いることが必要である。
抗原となる C末端修飾タンパク質を固相化するための基板としては、 通常 E L I S Aに用いられるプラスチック製のマイクロプレート等も用いることができる。 本方法において抗体となる修飾標的分子を固相分子へ接触せしめる方法として は、 両分子が相互作用するに十分な程度に接触する方法であればいかなるもので あってもよいが、 好ましくは修飾標的分子を生化学的に通常使用される緩衝液に 適当な濃度で溶解した溶液を作成し、 これをマイクロプレートに注入する方法が 好ましい。
両分子を接触せしめた後、 好ましくは過剰に存在する固相化分子に結合してい ない修飾分子を同緩衝液等により洗浄する工程を行い、 固相上にとどまった修飾 分子から発せられる蛍光を、 市販の E L I S Aリーダ一等を用いて測定または解 析することにより、 固相化された抗原分子と相互作用する分子を同定することが できる。
この方法において、 同時に多数の解析を行う方法としては、 例えば上記マイク 口プレートの各穴にそれぞれ異なる複数の修飾標的分子を固相化する方法が用い られる。
相互作用する分子の同定方法としては、 上記のそれぞれの方法により測定され C末端修飾タンパク質との間に相互作用が認められた標的分子は、 該分子の一次 構造が未知の場合、 それ自体既知の適当な方法により、 その一次構造を解析する ことができる。 具体的には、 相互作用を認められた標的分子がタンパク質の場合、 ァミノ酸分析装置等によりァミノ酸配列を解析し、 一次構造を特定することがで きる。 また、 標的分子が核酸の場合には、 塩基配列決定方法により、 オート D N Aシーケンサ一などを用いれば塩基配列を決定することができる。
C末端修飾タンパク質の固相化のための装置としては、 上記に記載した C末端 修飾夕ンパク質の修飾部を介した固相への固定化方法を行うために、 既知の適切
な手段を組み合わせて装置を構築することもできる。 本装置における各手段自体 はそれぞれ既知のものであり、 これらの手段における、 基板の保持、 C末端修飾 タンパク質溶液の添加、 洗浄等の各操作は、 それ自体既知の方法により行えばよ い。 これらの操作を組み合わせ、 全自動または半自動の、 C末端修飾タンパク質 の固相化のための装置を構築することができる。
タンパク質一標的分子間相互作用測定のための装置としては、 上記に記載した タンパク質一標的分子間相互作用測定を行うために、 既知の適切な手段を組み合 わせて装置を構築することもできる。 本装置における各手段自体はそれそれ既知 のものであり、 これらの手段における、 基板の保持、 標的分子の添加、 洗浄、 信 号検出等の各操作は、 それ自体既知の方法により行えばよい。 これらの操作を組 み合わせ、 全自動または半自動の、 タンパク質—標的分子間相互作用測定のため の装置を構築することができる。 実施例
以下、 具体的に本発明の翻訳テンプレート、 C末端修飾蛋白質、 翻訳テンプレ ートによる C末端ラベル化法および対応付け方法についての実施例を記述するが、 下記の実施例は本発明についての具体的認識を得る一助とみなすべきものであり、 本発明の範囲は下記の実施例により何ら限定されるものでない。 実施例 1 翻訳テンプレートの作成とその翻訳 (C末端ラベル化) コード分子は、 マウス由来の C- junまたは C- fos(Gentz R, Rauscher FJ 3d, Abate C, Curran T (1989) Science 243:1695-9; Neuberg M, Schuermann M, Hunter JB, Muller R (1989) Nature 338:589-90)の組み込まれているプラスミ ド(C- junは、 pEU-T7JunF lag (配列番号 1 ) ; c - fosは、 pCMVFosCBPzz (配列番号 2 ) )から PCRで作成した。 PC Rのプライマーとしては、 C- junでは 5, UTR領域について 1種類(プライマー; 5' SP6 - 029(配列番号 3 ) )と 3,末端領域については 13種類(プライマー; 3,A8=A (配列 番号 6 )、 3,X(CTCGAG) (配列番号 7 )、 3, X(CTCGAG)A8=XA (配列番号 8 )、 3' X(CTCG CC )A8(配列番号 9 )、 3' X(CTCG)A8(配列番号 1 0 )、 3' X(CTC)A8(配列番号 1 1 )、 35 X(CTCT)A8(配列番号 1 2 )、 3, X(TTCG)A8(配列番号 1 3 )、 3, X(GTCC)A8(配列番
号 1 4 )、 3' X(CATG)A8(配列番号 1 5 )、 3' X(CTCC)A8(配列番号 1 6 )、 3' X(GTCG) A8(配列番号 1 7 )、 3' none (配列番号 5 ) )、 c - fosでは 5' UTR領域について 1種類 (プライマー; 5,T7(0, )- bait (配列番号 4 ) )と 3'末端領域については 2種類(ブラ イマ一; 3' baitFosD (配列番号 1 8 ), 3' baitFosDA (配列番号 1 9 ) )を用い、 計 1 5種類の DNAテンプレートを調製し、 QIAquick PCR Purification Kits(QIAGEN)で 精製した。 これらの MAテンプレートを、 RiboMAXTM Large Scale RNA Production Systems (Promega)をもちいて転写(37°C , 2h)し、 合成した mHNAを RNeasy Mini Kits (QIAGEN)で精製し、 mMAテンプレート (コード分子) を得た。
まず、 得られた mRNAテンプレートを翻訳テンプレートとして用いて、 翻訳を行 つた。 翻訳テンプレート 2 pmolを用いて、 Wheat Germ Extract (Promega)の 10〃 1 の系で翻訳(26°C, 60 min)を行い、 翻訳と同時に、 修飾剤として 240 pmolの Fluo r-dCpPuroを用いて、 蛋白質のラベル化 (Miyamoto-Sato, E., Nemoto, N., Kobayashi, K., and Yanagawa, H. (2000) Nucleic Acids Res. 28: 1176-1182; Nemoto, N., Miyamoto-Sato, E. and Yanagawa, H. (1999) FEBS Lett., 462: 43-46)を行い、 15%SDS- PAGEで電気泳動し、 バンドの蛍光(フルォレセィン)をマルチ画像解析装置、 Molecular Imager FX (Bio-Rad)で測定した。 その結果をまとめたグラフを図 6に示 す。
図 6から、 ポリ A配列 (A配列) より SNNS配列 (X配列) を有する場合に、 さら に SNNS-ポリ A配列 (XA配列) を有する場合に、 翻訳量が増加することが示された。 このことから、 XA配列を持つ翻訳テンプレートは、 一般的な翻訳や C末端ラベル 化により好ましいといえる。 また、 X配列を変えたときの翻訳結果から、 X配列が A配列と組み合わさって効果を現すには、 最低 4塩基からなることが必要であり、 第一番目と第四番目の塩基は Cか Gであることが要求され、 SNNS (Sは Cまたは G) の構成が必要であることが示された。
さらに、 mRNAテンプレートの 3'側に PEGスぺーサ一分子(下記製造例 1〜 4参照) をライゲーシヨンした翻訳テンプレートを作成した。 ここでは、 T4 RNAリガーゼ (宝酒造)をもちいて、 PEGスぺーサ一部((dC) 2 (T) 2, PEG棚, PEG4000Puro-Boc) と、 コード分子(Jun- X(CTCGAG)A8=Jun- XA (プライマー 3,X(CTCGAG)A8二 XAを用いて 得られたもの))またはコード分子(Fos- D(-A)または 3, baitFos-DA(+A) (プライマ
-35 baitFosDまたは 3, baitFosDAを用いて得られたもの))とのライゲ一シヨン( 15 °C, 20 h)を行い、 RNeasy Mini Kits (QIAGEN)で精製し、 8 M尿素 4%PAGEで電気泳 動し、 エチレンブロマイ ド(EtBr )で染色し、 バンドの蛍光(EtBrとフルォレセィ ン)をマルチ画像解析装置、 Molecular Imager FX (Bio-Rad)で検出した。 ライゲ一 シヨンした 2 pmolの翻訳テンプレートを用いて、 Wheat Germ Extract (Promega)ま たは、 PR0TEI0S ( Toyobo )を用いて、 10 / 1の系で翻訳(26°C; 1 , 3, 6, 20 hr )を 行い、 翻訳と同時に、 修飾剤として 240 pmolの Fluor- dCpPuroを用いて、 蛋白質 のラベルイ匕 fiVIiyamoto-Sato, E., Nemoto, N" Kobayashi, K., and Yanagawa, H. (200O) Nucleic Acids Res. 28: 1176-1182; Nemoto, N., Miyamoto-Sato, E. and Yanagawa, H. (1999) FEBS Lett., 462: 43-46)を行い、 15%SDS- PAGEで電気泳動し、 バンドの蛍光 (Fluorescein)をマルチ画像解析装置、 Molecular Imager FX (Bio- Rad)で測定し た。 RNAの安定性実験は、 PEGスぺ一サ一部の蛍光を用いて、 RNAの残量をマルチ 画像解析装置、 Molecular Imager FX (Bio- Had)で測定した。 対照としてライゲ —シヨンしていない翻訳テンプレートを用いて同様の手順を行った。 それらの結 果をまとめたグラフを図 7および図 8に示す。
図 7から、 コード部の配列は基本的にはどのような配列でも PEGスぺ一サ一部 をライゲーシヨンすることで翻訳量が増加することが示された(図 7の A )。 また、 XA配列を持つコード部をもつ翻訳テンプレート(XA)では、 XA配列も PEGスぺ一サ 一部も持たないコ一ド分子(None)に比べて、 翻訳量が約 3〜 4倍増加しているこ とが示された。 また、 XA配列を持つコード部では、 PEG4000Puro- Bocの構成が最 も翻訳量が増加することが示された(図 7の B )。 よって、 一般的な翻訳や C末端 ラベル化には PEGスぺーサ一部がライゲーシヨンされた XA配列を持つ翻訳テンプ レートを用いることが適しているといえる。 図 8から、 XA配列を持つコード分子 ( · ; XA)、 XA配列を持たないコード分子(口; None )は 3時間で翻訳量は飽和に達 したが、 PEG4000Puro- Bocをもつ翻訳テンプレート(〇; XA+PEG400Pm?o-Boc )は、 6時間でも翻訳の増加が見られた(図 8の A )。 また、 その翻訳量は、 6時間で比 較すると、 PEG4000Puro-Bocをもつ翻訳テンプレート(〇)は、 XA配列を持つコー ド分子(會; XA)の約 2倍、 XA配列を持たないコード分子(口; None ) の約 4倍で あった(図 8の A )。 コード分子と、 PEGスぺーサ一部をもつ翻訳テンプレートと
の安定性を比較すると、 コード分子(き; XA)は、 その mRNAが 1時間で 50%減るの に対して、 PEGスぺーサ一部をもつ翻訳テンプレート(〇)は、 1 3時間でようや く 50%減ることから、 PEGスぺーサ一部をもつコ一ド分子(〇)の安定性が非常によ いことがわかる(図 8の B )。 以上から、 翻訳テンプレート(〇)の翻訳量が増加し たのは、 ライゲーシヨンされた PEG4000Puro- Bo よる安定性向上が原因と考え られる。 実施例 2 翻訳テンプレートを用いた対応付け
コード分子(mRNAテンプレート)に PEGスぺーサ一分子(下記製造例 1〜 4参照) をライゲーシヨンしたものを翻訳テンプレートとして用いた。 ここでは、 実施例 1で得たコ一ド分子の mRNAテンプレート(Jun-XA, Jun- A)と PEGスぺーサ一部(PEG 2000Puro )を実施例 1と同様の方法でライゲーシヨンした。 ライゲ一シヨンした m Aテンプレートを小麦胚芽の無細胞翻訳系として Wheat Germ Extract (Promega) をもちいて、 実施例 1と同様の方法で翻訳し、 対応付け分子を 8 M尿素 10%SDS - PA GEで電気泳動し、 蛍光(フルォレセイン)によってマルチ画像解析装置、 Molecular Imager FX (Bio- Rad)で検出した。 また、 フリー蛋白質の量は、 翻訳と同時に、 修 飾剤として Fluor- dCpPuroを用いて、 蛋白質のラベル化 (Miyamoto-Sato, R, Nemoto, Ν·, Kobayashi, Κ·, and Yanagawa, H. 2000) Nucleic Acids Res. 28: 1176-1182; Nemoto, N., Miyamoto-Sato, E. and Yanagawa, H. (1999) FEBS Lett., 462: 43-46) を行い、 8 M尿素 10%SDS- PAGEおよび 1 5 %SDS- PAGEで電気泳動し、 バンド の蛍光(フルォレセィン)をマルチ画像解析装置、 Molecular Imager FX (Bio-Rad)で 測定し、 あわせて、 T7- tagによる抗体を用いたウェスタンプロットで総蛋白量を 決定した。 それらの結果をまとめたグラフを図 9に示す。
図 9から、 対応付け分子は、 XA配列を持つコード部と A配列を持つコード部に ついて比較すると、 添加する RNA量を変化させたときの対応付け効率は両方とも 7 0%でほとんど変わらないことが示された(図 9の A;)。 しかしながら、 添加した RN
Aテンプレートから合成された蛋白質総量(フリー蛋白質 +対応付け分子 =100%)に 対する対応付け効率については、 添加する MA量を変化させたとき、 A配列を持つ コード部の場合は 90% (フリー蛋白質 10%)を超える高い効率を示すことが示された
(図 9の B )。 一方、 XA配列を持つコード部の場合は、 フリー蛋白質の生成割合が 高い(図 9の. B )。 よって、 対応付け分子には XA配列よりも A配列を持つコード部 が適しているといえる。 製造例 1 PEGスぺーサ一分子 (11) の合成
PEGスぺーサ一分子 (U ) は、 図 1 0に示す試薬を用い、 図 1 1に示す方法で 合成した。 図 1 0中アミダイ ト試薬 (1〜5 ) はグレンリサーチ社 (ァメリカ合衆 国、 バージニア州) より購入した。 平均分子量 1000、 2000、 3000の PEGは日本油 脂 (東京都渋谷区) より購入した。 平均分子量 4000の PEGはフル力社 (スイス). より購入した。 それらを原料にしてアミダイ ト試薬 (6 )を、 Jaschkeらが報告し た方法 (Jaschke, A. et al . ( 1993 ) Tetrahedron Lett. 34 : 301-304) を用い 合成した。 図 1 1中 10は Ikedaらが報告した方法 ( Ikeda, S. et al . ( 1998) Tet rahedron Lett. 39 : 5975-5978) で合成した。 なお、 図 1 0中 DMTrは 4,4, -ジメ トキシトリチル基を、 図 1 1中 Fmocは 9-フルオレンメ トキシカルボ二ル基を示す。
10 (400 mg, ピューロマイシン lO^mol含有) に対し、 以下の A〜Dの処理を 所定の配列に従い、 所定数のヌクレオチドおよび PEGが導入されるまで繰り返し 仃なった。
A . 3%トリクロ口酢酸一塩化メチレン溶液を 1 inL加え室温で 3分間放置後、 塩化 メチレン 5 mLで 3回洗浄する。 再度同じ操作を繰り返した後、 無水ァセトニトリ ル 5 mLで 5回洗浄する。
B . ヌクレオチドアミダイ ト 30 zmol、 0.457 Mテトラゾールー無水ァセトニトリ ル溶液 100/zL、 および無水ァセトニトリル 1 mLを加え、 室温で 15分間振盪する。 ァセトニトリル 5 mLで 5回洗浄する。
C . 50 mMョゥ素溶液 (テトラヒドロフラン一ピリジン一水 = 7 5 : 2 0 : 5 ) 1 mLを加え室温で 3分間放置後、 ピリジン 5 mLで 3回洗浄する。 再度同じ操作を繰 り返した後、 無水ピリジン 5 mLで 5回洗浄する。
D . 10%無水酢酸—ピリジン溶液 1 mLおよび触媒量の 4, 4-ジメチルァミノピリジン を加え室温で 20分間放置後、 ピリジン 5 mLで 5回、 塩化メチレン 5 mLで 5回洗浄す る。
上記の処理をし所定の配列および所定数のヌクレオチドが導入された 10に濃ァ ンモニァ水 1.5 mLおよびエタノール 0.5 mLを加え、 室温で 14時間震盪した。 ろ過 により固相担体 (CPG) を取り除き、 ろ液を凍結乾燥した。 残査を HPLC [カラ ム : YMC社 (京都府) 製 YMC pack ODS-A SH-343-5, 溶離液 10- 60%ァセトニトリ ルー 0.1 M酢酸トリエチルアンモニゥム水溶液 (pH 7.0) の 30分間の直線濃度勾 配、 流速: 10 mL/分] で精製後、 PEGスぺーサ一分子 (11) を得た。 得られた PEG スぺーサ一分子 (U) の構造および収率を以下に示す。
p(dCp)2PEG(1000)p(dCp)2Puro 収率 8.7%
p(dCp)2T(Fl)pPEG(1000)pdCpPuro 収率 62%
p(dCp)2T(Fl)pPEG(1000)p(dCp)2Puro 収率 14%
p(dCp)2PEG(2000)p(dCp)2Puro 収率 7%
p ( dCp ) 2T(F 1 )pPEG( 2000 )pdCpPuro 収率 30%
p(dCp)2T(Fl)pPEG(2000)p(dCp)2Puro 収率 27%
p(dCp)2T(Bio)pPEG(2000)pdCpPuro 収率 9%
p(dCp)2T(Bio)pPEG(2000)p(dCp)2Puro 収率 8%
p(dCp)2T(Bio)pT(ri)pPEG(2000)pdCpPuro 収率 ¾
p(dCp)2T(Bio)pT(Fl)pPEG(2000)p(dCp)2Puro 収率 8%
p(dCp)2PEG(3000)pdCpPuro 収率 2%
p(dCp)2PEG(3000)p(dCp)2Puro 収率 22%
p(dCp)2T(Fl )PPEG(3000 )pdCpPuro 収率 29%
p(dCp)2T(Fl)PPEG(3000)p(dCp)2Puro 収率 23%
p(dCp)2T(Fl)pPEG(4000)pdCpPuro 収率 16%
p(dCp)2T(Fl)pPEG(4000)p(dCp)2Puro 収率 17% 製造例 2 PEGスぺ一サ一分子 (14) の合成
PEGスぺーサ一分子 (14) は、 図 1 0に示す試薬を用い、 図 1 1および 1 2に 示す方法で合成した。 図 1 0中、 ローダミングリーン(RhodG) 活性エステル(7) はモレキユラプローブ社 (アメリカ合衆国、 オレゴン州) より、 Cy5活性エステ ル(8)および Cy3活性エステル(9)はアマシャムフアルマシアバイオテク社 (ィギ
リス、 バヅキンガムシヤー) より、 購入した。 図 1 2中、 12は Ikedaらが報告し た方法 (Ikeda, S. et al. (1998) Tetrahedron Lett. 39: 5975-5978) を応用 し合成した。 なお、 図 1 0中、 Bocは tert-ブトキシカルボ二ル基を示す。
12 (400 mg3 ピューロマイシン ΙΟ ΒΙΟΙ含有) に対し、 PEGスぺーサ一分子 (1 1) の合成の場合と同様の A〜Dの処理を所定の配列に従い、 所定数のヌクレオ チドおよび PEGが導入されるまで繰り返し行なった。
上記の処理を行ない、 所定の配列および所定数のヌクレオチドが導入された 12 に濃アンモニア水 1.5 mLおよびエタノール 0.5 mLを加え、 室温で 14時間震盪した。 ろ過により固相担体 (CPG) を取り除き、 ろ液を凍結乾燥した。 残査を HPLC
[カラム : YMC社 (京都府) 製 YMC pack 0DS-A SH-343-5, 溶離液: 10-60% ァセ トニトリル— 0.1 M酢酸トリェチルアンモニゥム水溶液 (pH 7.0) の 30分間の直 線濃度勾配、 流速: 10 mL/分] で精製後、 13を得た。 13を 30%ァセトニトリル— 水 0.1 mLに溶かし、 7,8または 9を 10 11101、 および 1M 炭酸水素ナトリウム水溶液
(pH 8.3)を 10 zL加え室温で 2時間放置した。 反応液を同上の条件の HPLCで精製 後、 産物を含む画分を濃縮した。 残查を 60%トリフルォロ酢酸一水 1 mLにて室温 で 30分処理後、 濃縮乾固した。 残査を濃アンモニア水 1 mLにて室温で 15分処理後、 濃縮乾固した。 残査を同上の条件の HPLCで精製後、 産物を含む画分を濃縮し、 PE Gスぺーサ一分子 (14) を得た。 なお、 図 1 3中、 RhodGは図 1 0中 7の、 Cy5は図 10中 8の、 Cy3は図 1 0中 9の、 蛍光色素残基部をそれぞれ示す。 得られた PEGス ぺーサ一分子 (14) の構造および収率を以下に示す。
p(dCp)2T(Bio)pT(RhodG)pPEG(2000)p(dCp)2Puro 収率 11%
p(dCp)2T(Bio)pT(Cy5)pPEG(2000)p(dCp)2Puro 収率 8%
p(dCp)2T(Bio)pT(RhodG)pPEG(4000)p(dCp)2Puro 収率 12%
p(dCp)2T(Bio)pT(Cy5)pPEG(4000)p(dCp)2Puro 収率 10%
p(dCp)2T(Cy3)pPEG(4000)p(dCp)2Puro 収率 9% 製造例 3 Boc保護 PEGスぺーサ一分子 (15) の合成
図 14に示したように、 12 (400 ig, ピューロマイシン lO^mol含有) より、 P EGスぺーサ一部 (11) と同じ方法を用いて Boc保護 PEGスぺーサ一部 (15) を合成
した。 得られた Boc保護 PEGスぺーサ一分子 (15) の構造と収率を以下に示す。 p(dCp) 2T(Fl )pPEG(4000 )p(dCp) 2Puro(Boc ) 収率 41% 製造例 4 ピューロマイシン非含有 PEGスぺーサ一分子 (16) の合成
Jaschkeらが報告した方法 (Jaschke, A. et al. (1993) Tetrahedron Lett. 34: 301-304) に従い合成した。 得られたピューロマイシン非含有 PEGスぺーサ一分子 (16) の 構造と収率を以下に示す。
p(dCp) 2T(Fl )pTpPEG(4000) 収率 55% 製造例 5 修飾剤 1〜 7の合成
修飾剤 1〜 7は、 図 1 5および図 1 6に示した試薬を用い、 図 1 7および 1 8 にその概略を示す方法を用いて合成した。 図 1 5中、 アミダイ ト試薬 (15〜19) はグレンリサーチ社 (ァメリ力合衆国、 バージニア州) より、 スクシンイミ ド試 薬 (20〜22) はピアス社 (アメリカ合衆国、 イリノイ州) より購入した。
10または 12 (400 mg, ピューロマイシン 10〃mol含有) に対し、 PEGスぺ一サ —分子 (11 ) の合成に関して示した A〜Dの処理を所定数のアミダイ ト試薬が導 入されるまで繰り返し行なった。 その後、 50 mM炭酸ナトリウム-水を 2 mLまたは 濃アンモニア水 1 .5 mLおよびエタノールを 0.5 mL加え、 室温で 14時間震盪した。 ろ過により固相担体 (C P G ) を取り除き、 ろ液を減圧濃縮した。 残査を HPLC
[カラム : YMC社 (京都府) 製 YMC pack ODS-A SH-343-5, 溶離液: 10- 60%ァセ トニトリル— 0. 1 M 酢酸トリェチルアンモニゥム水溶液 (pH 7.0) の 30分間の直 線濃度勾配、 流速: 10 mL/分] で精製後、 凍結乾燥した。 その後、 修飾剤によつ ては、 残査を 30%ァセトニトリル一水 1 mLに溶解させ、 1 M炭酸水素ナトリウム- 水 (pH 8.3) を 0. 1 mL、 およびスクシンイミ ド試薬 (7,8または 20 ) 0. 1 腿 olを N, Ν' -ジメチルホルムアミ ド 0.5 mLに溶解させた液を加え、 室温で 2時間放置した。 その後、 減圧濃縮し、 残査を HPLC [カラム : YMC社 (京都府) 製 YMC pack 0DS-A
SH-343-5, 溶離液: 10- 60%ァセトニトリル— 0. 1 M酢酸トリエチルアンモニゥ ム水溶液 (pH 7.0) の 30分間の直線濃度勾配、 流速: 10 mL/分] で精製後、 凍結 乾燥した。 その後、 修飾剤によっては、 残查を 80%酢酸一水 2 mLに溶解させ、 室
温で 4時間放置後、 減圧濃縮した。 残査を 30%ァセトニトリル一水 1 mLに溶解させ、 1 M炭酸水素ナトリウム—水 (pH 8.3) を 0.1 mL、 およびスクシンィミ ド試薬 (2 1または 22 )0. 1 ipiolを Ν, Ν' -ジメチルホルムアミ ド 0.5 mLに溶解させた液を加え、 室温で 2時間放置した。 その後、 Poly- Pakl l (グレンリサーチ社) で脱塩し減圧 濃縮した。 その後、 上記の残査に 60%トリフルォロ酢酸—水 2 mLを加え、 室温で 3 0分間放置後、 減圧濃縮した。 残查を HPLC [カラム : YMC社 (京都府) 製 YMC pack ODS-A SH-343-5, 溶離液: 10- 60%ァセトニトリル一 0. 1 M酢酸トリェチルアンモ ニゥム水溶液 (pH 7.0) の 30分間の直線濃度勾配、 流速: 10 mL/分] で精製後、 凍結乾燥した。 得られた修飾剤 1 〜 7の物性デ一夕を以下に示す。
修飾剤 1 :収率 44%、 UV (50% MeOH-H20) え max 558 nm; MS m/z 2037 (M - H)一 修飾剤 2 :収率 32%、 UV (H20) え腹 558 nm; MS m/z 2035 (M-H)一
修飾剤 3 :収率 8¾ヽ UV (H20) Aniax 506 nm; MS m/z 2093 (M- H)—
修飾剤 4 :収率 8%、 UV (H20) max 506 nm; MS m/z 1979 (M - H)—
修飾剤 5 :収率 13%、 UV (H2O ) え腿 649 nm; MS m/z 2375 (M- H)一
修飾剤 6 :収率 131 UV (H2O ) Amax 649 nm; MS m/z 2261 (M - H)一
修飾剤 7 :収率 22%、 UV (H2O) Amax 646 nm; MS m/z 1977 (M-H)" 産業上の利用の可能性
本発明の一態様によれば、 翻訳系における翻訳テンプレートの安定性が向上し、 輝訳の絶対量が増加する。
また、 本発明の別の態様によれば、 翻訳系を用いる対応付け分子の製造におい て、 翻訳により生じる総蛋白質に対する目的の対応付け分子の割合が向上し、 効 率的に対応付け分子を得ることができる。