明 細 書 ヒドラジノ単糖類誘導体の製造方法およびその用途 技術分野
本発明は、 単糖類分析のために有用なヒドラジノ単糖類誘導体の製造方法およ びその用途に関する。 さらに詳しくは、 本発明は、 ヒ ドラジノ単糖類誘導体の製 造および糖類の還元末端に位置するアルドースおよびケトース単糖類の構造を決 定するためのヒドラジン類の使用に関する。 背景技術
糖または炭水化物とも称される糖類は、 生物系の主要な成分である。 糖類は植 物の乾燥重量の約 8 0 %を形成し、 そしてモノマー (単糖類) 力、、 または共有結 合した単糖類よりなるポリマー (オリゴ糖類) かのいずれかとして、 高等動物に おける'代謝経路の不可欠な成分である。 さらに、 糖類はしばしば、 より大きな生 物学的マクロ分子 (タンパク質、 脂質および核酸を含む) の一部として見出され る。 この広範な種類の形態において、 糖類は天然において非常に多くの重要な機 能を有する。
生物系における糖類の重要性のため、 遊離の単糖類およびオリゴ糖類のモノマ 一成分としての単糖類を同定する手段は非常に有用である。 さらに、 オリゴ糖類 の還元末端に位置する単糖類を同定する手段は、 オリゴ糖類構造の解析のために 重要である。
最近、 オリゴ糖類の構造解析方法として、 WO 9 6 1 7 8 2 4号 (特表平 1 1— 5 0 1 9 0 1号) に、 オリゴ糖の還元末端に存在する単糖類を N, N ' —ジ ァセチルヒ ドラジノ単糖類誘導体とし、 この誘導体をガスクロマトグラフィ^ 質量分析 (G C /M S ) などにより同定する方法が開示されている。 この方法に よれば、 原理的に全てのオリゴ糖の還元末端に存在する単糖類の種類を同定する ことが可能である。
し力 し、 上記の方法は単離された糖類にし力使用することが出来ないという問
題点がある。 数種類の糖類の混合物にこの方法を適用すると、 得られた数種類の ヒドラジノ単糖類誘導体が、 それぞれどの糖類に由来するかを決定することはで きない。 従って、 天然に存在する糖類をこの方法により分析するには、 予め糖類 を単離する必要がある。
例えば、 タンパク質や核酸にはそれ自体に紫外線の吸収があるため、 分離精製 操作においてこの吸収に基づいてその存在位置を追跡することが可能である。 し かし、 糖類にはこのような吸収が無いので、 分離精製を容易にするために糖類を 標識することが所望される。 この目的のためには、 例えば、 蛍光色素による標識 化が適している。 天然供給源に由来する他の混在物 (例えば、 タンパク質、 核酸 など) と糖類とが共存する場合、 標識された糖類は、 他の混在物と容易に区別さ れるべきである。 従って、 このような場合、 標識化は、 混在する糖類以外の成分 が標識されないよう、 糖類に対して選択的に行われなければならない。
天然供給源由来の他の成分を標識せずに、 糖類を選択的に標識する方法として は、 例えば、 糖類の還元性残基を標識する方法がある。 還元性残基としては、 例 えば、 糖類の還元末端に位置するカルボエル基、 遊離のアルデヒド基が挙げられ る。 糖類の還元性残基における反応としては、 還元アミノ化反応、 ヒドラジド化 反応などが挙げられる。 これらの反応は不可逆的な反応である。 還元アミノ化反 応を用いた糖類の標識化方法としては、 例えば、 2—ァミノピリジンを用いた方 法 (S. Hase, T. Ibukiおよび T. Ikenaka, Journal of Biochemistry, 95, 197 - 203 (1984) ) 力 そしてヒドラジド化反応を用いた糖類の標識化方法としては、 例えば、 Biotin- x_hydrazide (カルビオケム (Calbiochem) 社) を用いた方法
(B. Ridley, D. Mohnenら, Analytical Biochemistry, 249, 10-19 (1997) ) が 挙げられる。 後者の方法は、 還元末端を有する糖類と、 Biotin- x-hydrazideとの 反応によりヒドラゾンを形成させた後、 さらに還元化反応を行うことにより、 ヒ ドラジド結合を介した糖類のビォチン標識化物を調製する方法である。
WO 9 6 / 1 7 8 2 4号に開示された方法は、 糖類の遊離の還元末端を利用す るので、 上記のような方法によって糖類の還元末端を標識して単離された単糖類 を、 そのまま種類の同定用に使用することはできない。
さらに、 糖類の還元末端に位置する単糖類の構造を詳細に決定するためには、
単糖類の種類の同定の他に、 隣接単糖類との結合位置 (以下、 「置換位置」 とも いう) を決定する (すなわち、 還元末端に位置する単糖類と隣接する単糖類の還 元性水酸基との結合が何位の水酸基を介して行われているかを決定する) ことが 所望される。 上記 WO 9 6 / 1 7 8 2 4号には、 糖類の還元末端に位置する単糖 類の種類を同定する技術が開示されているのみであり、 置換位置を決定する技術 については言及されていない。
糖類を構成している各単糖間の結合位置を決定する方法としてはメチル化分析 が知られている。 一般的なメチル化分析は、 オリゴ糖のメチル化、 メチル化オリ ゴ糖の加水分解、 遊離メチル化単糖の還元、 メチル化糖アルコールのァセチル化、 部分メチル化ノァセチノレ化糖アルコール(partially methylated alditol acetates, PMM)の分析の順に行う。 部分メチル化 Zァセチルイヒ糖アルコールの 質量分析における開裂パターンとその法則性は古くより詳細に調べられており、 この開裂パターンよりァセチル基の位置の同定を行うことができる(B. Lindberg, Methods in Enzymology, Vol. 28, ppl78_195 (1972))。 一般的なメチルイヒ分析 においては、 オリゴ糖を構成するすべての単糖について PMMが生成する。 これら は、 通常ガスクロマトグラフィー Z質量分析装置 (G CZM S ) をもちいて分析 する。 ァセチノレ基の位置は質量分析の開裂パターンによって同定可能であるが、 単糖の種類の同定はガスクロマトグラフィ一上での標準物質との比較同定に頼ら ざるを得ず、 そのためにはオリゴ糖を構成するすべての単糖について可能なすべ ての PMAAを標準物質として用意しておく必要がある。 自然界に存在するすべての 単糖について、 可能な PMMを調製することは多大な労力を要し、 さらには自然界 に存在するすべての単糖の、 可能なすべての PMMを分離同定できるようなクロマ トグラフィーを行うことは事実上不可能である。 発明の目的
本発明の主な目的は、 単離された糖類でなくてもその還元末端に位置する単糖 類の種類おょぴ置換位置を決定することのできる手段を提供することにある。 発明の概要
上記目的を達成するため、 本発明者らは鋭意研究した結果、 糖類をヒドラジノ 単糖類誘導体とすることにより、 単離されていない糖類であっても、 W096/ 17824号と同様な方法で、 その還元末端に位置する単糖類の種類を決定する ことが可能であることを見出し、 本発明を完成するに至った。
すなわち、 本発明は、
(1) 少なくとも、 下記工程:
(a) 還元末端を有する糖類と、 式 (I) :
NH^NR1 (R2) (I)
[式中、 R1は、 検出可能な標識および Zまたは固定支持体をその一部として有
-する力 あるいは検出可能な標識および Zまたは固定支持体に結合可能であり、
R1— N間の結合が、 グリコシド結合を分解可能な反応によって分解可能な結合 である、 水素以外の基であり、 R 2は水素または炭素数:!〜 8のアルキル基であ る] '
で表されるヒドラジン類とを反応させてヒドラゾンを製造する工程:
(b) 工程 (a) で得られたヒドラゾンをヒドラジノ誘導体に還元する工程、 および
(c) 工程 (b) で得られたヒ ドラジノ誘導体を、 グリコシド結合を分解可能 な反応により分解し、 ヒドラジノ単糖類誘導体を得る工程、
を包含することを特徴とするヒドラジノ単糖類誘導体の製造方法、
(2) 工程 (b) で得られるヒドラジノ誘導体を工程 (c) に付す前に、 該ヒ ドラジノ誘導体の N—ァセチル化を行なう上記 (1) 記載の方法、
(3) 工程 (b) で得られるヒドラジノ誘導体もしくは N—ァセチル化された ヒドラジノ誘導体を工程 (c) に付す前に、 該ヒドラジノ誘導体の水酸基をメチ ル化する上記 (1) または (2) 記載の方法、
(4) R1がァシル基であることを特徴とする上記 (1) 〜 (3) のいずれか に記載の方法、
(5) R1が紫外もしくは可視吸光物質、 蛍光色素または固定支持体をその一
部として有するァシル基である上記 (1) (4) のいずれかに記載の方法、 (6) 少なくとも下記工程:
(a) 還元末端を有する糖類と、 式 (I)
ΝΗ,-NR1 (R2) (I)
[式中、 R1は、 検出可能な標識および Zまたは固定支持体をその一部として有 する力 \ あるいは検出可能な標識および Zまたは固定支持体に結合可能であり、 I^—N間の結合が、 ダリコシド結合を分解可能な反応によって分解可能な結合 である、 水素以外の基であり、 R 2は水素または炭素数 1 8のアルキル基であ る]
で表わされるヒドラジン類とを反応させてヒドラゾンを製造する工程、
(b) 工程 (a) で得られたヒドラゾンをヒドラジノ誘導体に還元する工程、
(c) 工程 (b) で得られたヒ ドラジノ誘導体を、 グリコシド結合を分解可能 な反応により分解し、 ヒドラジノ単糖類誘導体を得る工程、
(d) 工程 (c) で得られたヒドラジノ単糖類誘導体を完全にァセチルイヒする 工程、 および
(e) 工程 (d) で得られた完全にァセチルイ匕されたヒドラジノ単糖類誘導体 を同定する:!:程、
を包含することを特徴とする還元末端を有する糖類における還元末端単糖の同定 および Zまたは還元末端単糖の隣接単糖類との結合位置決定方法、
(7) 工程 (b) で得られるヒドラジノ誘導体を工程 (c) に付す前に、 該ヒ ドラジノ誘導体の N—ァセチル化を行なう上記 (6) 記載の方法、
(8) 工程 (b) で得られるヒドラジノ誘導体もしくは N—ァセチノレイ匕された ヒドラジノ誘導体を工程 (c) に付す前に、 該ヒドラジノ誘導体の水酸基をメチ ルイ匕し、 工程 (e) において還元末端単糖の隣接単糖類との結合位置を決定する 上記 (6) または (7) 記載の方法、
(9) 工程 (e) における同定がガスクロマトグラフィー/質量分析 (GC/ MS) によって実施される上記 (6) (8) のいずれかに記載の方法、
(10) 少なくとも下記工程:
(a) 還元末端を有する糖類と、 式 (I) :
NH2— NR1 (R2) (I)
[式中、 R1は、 検出可能な標識および Zまたは固定支持体をその一部として有 する力 あるいは検出可能な標識および Zまたは固定支持体に結合可能であり、 R1— N間の結合が、 グリコシド結合を分解可能な化学的反応によって分解可能 な結合である、 水素以外の基であり、 R 2は水素または炭素数 1〜8のアルキル 基である]
で表されるヒドラジン類とを反応させることによりヒドラゾンを製造する工程
(b) 工程 (a) で得られたヒドラゾンをヒドラジノ誘導体に還元する工程、
(c) 工程 (b) で得られたヒ ドラジノ誘導体を、 N—ァセチル化する工程、 を包含する還元末端を有する糖類の標識方法、
(1 1) 上記 (1) 〜 (10) のいずれかに記載の方法において使用される式 (I) :
NH^NR1 (R2) (I)
[式中、 R1は、 検出可能な標識および Zまたは固定支持体をその一部として有 する力、 あるいは検出可能な標識および Zまたは固定支持体に結合可能であり、 ί^—Ν間の結合が、 ダリコシド結合を分解可能な反応によって分解可能な結合 である、 水素以外の基であり、 R 2は水素または炭素数 1〜 8のアルキル基であ る]
で表わされるヒドラジン類。
(12) 上記 (11) 記載のヒドラジン類を含むことを特徴とするヒドラジノ 単糖類誘導体の製造用キット、
(13) 上記 (1 1) 記載のヒドラジン類を含むことを特徴とする糖類におけ る還元末端単糖の同定ぉよび Ζまたは還元末端単糖の隣接単糖類との結合位置決
; 定用キット、
(14) 上記 (1 1) 記載のヒドラジン類を含むことを特徴とする還元末端を 有する糖類の標識用キット、
(15) 式 (I I I) で表される糖類:
R4— N (Ac) -NHR1 (I I I)
[式中、 Acはァセチル基、 R1は、 検出可能な標識および/または固定支持体 をその一部として有する力 あるいは検出可能な標識および/または固定支持体 に結合可能であり、 R1— N間の結合が、 グリコシド結合を分解可能な化学的反 応によって分解可能な結合である、 水素以外の基であり、 R4は、 糖類とのダリ コシド結合を有していてもよい、 1ーデォキシアルドースの C— 1位に結合した 水素が除去された基もしくは 2—デォキシケトースの C— 2炭素に結合した水素 が 1つ除去された基である。 ただし R1がァセチル基であり、 かつ、 R4が糖類 とのダリコシド結合を有していない、 1ーデォキシアルドースの C—1位に結合 した水素が除去された基もしくは 2—デォキシケトースの C一 2炭素に結合した 水素が 1つ除去された基である場合を除く] 、 および
(16) R1がァシル基であることを特徴とする上記 (15) 記載の糖類、 を提供するものである。
本発明によれば、 単離されていない糖類であっても、 還元末端単糖の種類の同 定が可能となり、 また、 上記 (7) のごとく、 ヒドラジノ誘導体の水酸基をメチ ル化すると、 隣接単糖類との結合位置を決定できる。 固定支持体をその一部とし て有するかまたは固定支持体に結合可能な基を含むヒドラジン類を使用すると、 反応生成物と反応液との分離操作を要さずに、 上記のような同定/決定を実施で さる。 図面の簡単な説明
図 1 :種々の条件で放置した N—ァセチルラクトサミンのベンゾィルヒドラジ ン誘導体、 およびその N—ァセチル化物を展開した薄層ク口マトグラフィーを示
す図である。 発明の詳細な説明
本発明の方法によって製造されたヒドラジノ単糖類誘導体は、 W0 9 6 Z 1 7 8 2 4号 (特表平 1 1一 5 0 1 9 0 1号) (本明細書に出典明示で援用する) に 記載のような還元末端単糖の同定方法において使用される。 W0 9 6 Z 1 7 8 2 4号に記載の方法によれば、 単離された還元末端を有する糖類をヒドラジン類と 反応させてヒドラゾンを製造し、 ヒドラゾンをヒドラジノ誘導体に還元し、 この 際必要に応じてォリゴ糖からヒドラジノ単糖類誘導体を分解し、 ヒドラジノ単糖 誘導体をァセチル化して N, N' —ジァセチルヒドラジノ単糖類誘導体とし、 こ れを G CZM Sのような方法によって同定する。
本発明のヒドラジノ単糖類誘導体の製造方法の工程 (a ) における還元末端を 有する糖類としては、 特に限定するものではなく、 還元末端単糖の同定および/ または還元末端単糖の隣接単糖類との結合位置決定の対象となる ヽずれの糖類で もよく、 単糖類、 オリゴ糖類、 多糖類、 それらの混合物を包含する。 本発明の方 法において使用される糖類を含む試料は、 天然供給源由来のその他の成分 (タン パク質、 核酸など) をさらに含んでいてもよい。 本発明の方法において使用され る糖類を含む試料を天然供給源から得るための方法は、 例えば社団法人日本生ィ匕 学会編 「生化学実験講座 4 糖質の化学 (上) 」 (1 9 7 6年 4月 1 2日発行、 株式会社東京化学同人) に記載されている。
ここで用いる 「還元末端単糖」 なる語は、 アルドースの C-1位またはケトース の C- 2位が置換を受けていない糖類の末端 ( 「還元末端」 ) に位置する、 還元性 を有する単糖類をいう。 また、 「アルドース」 は、 C-1位にアルデヒド基を有し 得る、 遊離の単糖類かまたはオリゴ糖類の還元末端の単糖類のいずれかをいう。 「ケトース」 は、 単糖類の骨格に沿っていずれかの内部炭素原子にケトン基を有 し得る、 遊離の単糖類かまたはオリゴ糖類の還元末端の単糖類のいずれかをいう。 本発明のヒドラジノ単糖類誘導体の製造方法には、 WO 9 6 1 7 8 2 4号に 記載の方法に使用されるヒドラジン類とは異なる構造を有するヒドラジン類を使 用する。 これによつて、 分析するべき糖類を事前に単離する必要性が排除される。
ここに、 「ヒドラジン類」 とは、 一般的には、 ヒドラジンの水素原子を有機基で 置換した化合物を表すが、 本発明のヒドラジノ単糖類誘導体の製造方法において 使用される 「ヒドラジン類」 は、 式 (I ) :
NH 2— N R 1 (R 2) ( I )
[式中、 R 1は、 検出可能な標識および Zまたは固定支持体をその一部として有 する力、 あるいは検出可能な標識および/または固定支持体に結合可能であり、 R 1— N間の結合が、 グリコシド結合を分解可能な反応によって分解可能な結合 である、 水素以外の基であり、 R 2は水素または炭素数 1〜8のアルキル基であ る]で表される公知のまたは新規のいずれかの化合物である。 WO 9 6 / 1 7 8 2 4号に記載の方法に使用されるヒドラジン類においては、 ヒドラジンの 4個の 水素原子のうち 1個のみが 1〜 8個の炭素原子を有するアルキル基で置換され得 る。
「検出可能な標識」 は、 ヒドラジノ誘導体の精製を容易にする、 当該分野で公 知のいずれかの標識であり、 例えば、 紫外、 可視吸光標識 (例えば、 ベンゼンお よびその誘導体) 、 蛍光標識 (例えば、 フルォレツセイン、 ピレン、 アントラセ ンおよびそれらの誘導体) 、 放射性標識 (例えば、 放射性水素、 放射性炭素、 放 射性ヨウ素) およびビォチン標識ゃジゴキシゲユン標識などを包含する。 ヒドラ ジノ誘導体を製造した後に検出可能な標識を結合させることが所望される場合は、 検出可能な標識に結合可能な基を含むヒドラジン類と、 検出可能な基とは別々に 存在してもよいが、 そうでなければ検出可能な標識をその一部として有する基を 使用してもよい。 検出可能な標識をその一部として有する基の例としては、 蛍光 色素をその一部として有するァシル基が挙げられる。 例えば、 モレキュラープロ 一ブス (Molecular Probes) 社から市販されている 1ーピレン酪酸ヒドラジドを 使用して付加されるピレンによって発せられる蛍光を指標とし、 順相高速液体ク 口マトグラフィーのような当該分野で公知の方法を使用することによって、 ヒド ラジノ誘導体を容易に精製することができる。 その他に、 検出可能な基を有する ァシルヒドラジドとしてはビォチンヒドラジド (同人化学社製) ベンゾイノレヒド
ラジン (東京化成社製) 、 カスケードブルーヒドラジド (モレキュラープローブ ス社製) など、 多種の化合物が入手可能である。
また、 検出可能な標識に用いるためのヒドラジン化合物は、 当業者が容易に合 成して得ることができる。 例えば、 官能基としてカルボン酸をもつ化合物とヒド ラジンとを、 ペプチド合成に用いられる手法 [泉屋ら、 「ペプチド合成の基礎と 実験」 (1 9 8 5 ) 丸善株式会社] を用いて結合させれば、 容易にァシルヒドラ ジドを得ることができる。 また、 官能基としてアミノ基を有する化合物は、 たと えば無水コハク酸によって官能基をカルボン酸に変換後、 上記の方法でヒドラジ ンと縮合させることが可能である。 さらにまた、 官能基として水酸基を有する化 合物は、 ハロゲン化の後、 カーボヒドラジド(H2N-NH_C0- NH- NH2)と反応させるこ とでヒドラジンを導入することが可能である。
なお、 以上にあげたヒドラジン化合物の合成手法は検出可能な標識ィヒ合物の場 合に限らず、 固定支持体をもちいた場合も同様である。
本発明の方法におけるいずれかまたは全ての反応工程は、 液相で行ってもよく、 または固相で行ってもよい。 「固定支持体」 は、 ヒドラジノ誘導体に対する種々 の反応を固相で実施するために使用され得る。 例えば、 以下で詳細に説明するよ うに、 本発明の還元末端単糖の同定および Zまたは還元末端単糖の隣接単糖類と の結合位置決定方法において、 工程 ( b ) で得られるヒドラジノ誘導体を工程 ( c ) に付す前に、 ヒドラジノ誘導体の水酸基をメチル化することによって、 ェ 程 (e ) において還元末端単糖の隣接単糖類との結合位置を決定することができ る。 一般に、 このメチル化反応には、 数段階の反応 洗浄工程が含まれる。 ヒド ラジノ誘導体を固定支持体へ結合させることによって、 各工程ごとの反応生成物 と反応液との分離操作を省略することができる。
固定支持体が結合されたヒドラジノ誘導体が精製され得る場合は、 使用される 糖類が単離されている必要はないが、 一般に、 固定支持体をその一部として有す るかまたは固定支持体に結合可能である基を含むヒドラジン類は、 単離された糖 類に対して使用される。 単離されていない糖類に対しても、 糖類混合物を検出可 能な標識を含むヒドラジン化合物で標識し、 次に標識を目印にヒドラジノ誘導体 化糖を精製し、 精製したヒドラジン誘導体化糖を固定支持体に結合させることも
可能である。 例えば、 糖と過剰量の 4ーァミノべンズヒドラジドとを反応させる と、 糖はヒドラジド基と優先的に縮合しヒドラゾンを形成する。 還元後、 糖ヒド ラジノ誘導体をベンゼン環の紫外吸収を指標に精製することができる。 精製した 糖ヒ ドラジノ誘導体は、 この誘導体のもつアミノ基を介して、 例えば、 官能基と して N -ヒドロキシスクシィミドエステルを有する固定支持体に結合させることが できる。 固定支持体は、 ガラスビーズ、 ポリマーマトリックス、 焼結ガラスディ スク、 ファイバーガラス膜、 またはポリマー膜などを包含する。 固定支持体には、 通常、 ヒドラジン類ゃ糖ヒドラジノ誘導体を固定化するための官能基を有してい ることが望まれる。 官能基の例として、 アミノ基、 カルボキシル基、 水酸基、 ハ ロゲン化アルキル基等があげられる。 このような、 官能基を有する固定支持体の 例としては、 ノバピオケム (Nova Biochem) 社から市販されているノバシン T G ブロモレジン (NovaSyn TG bromo Resin) およびバイオラッド (Bio_Rad) 社か ら巿販されているバイオレックス 7 0レジン (Bio-Rex 70 Resin) が挙げられる。 このような固定支持体をその一部として有する基を含むヒドラジン類は、 例えば、 実施例 2に記載の手順によって製造される。 得られたヒドラジン類の還元力を、 「パーク 'ジョンソン法」 (Park, J. T.および Johnson, M. J. , J. Biol.
Chem. , 181, 149-151 (1949) ) のような当該分野で公知の方法に従って測定する ことができる。
工程 (a ) における還元末端を有する糖類とヒ ドラジン類との反応は、 当業者 に公知である適切な条件下で、 例えば、 適切な溶媒 (例えば、 DM S O、 ァセト 二トリル) 中、 4 0〜9 0 °Cで、 0 . 1〜2 0時間行われる。 例えば、 反応は、 1 0 %酢酸を含むジメチルスルホキシド (DM S O) 中で 9 0でで 1時間加熱す ることによって実施される。
工程 (b ) におけるヒドラゾンのヒドラジノ誘導体への還元は、 当業者に公知 のいずれかの適切な還元剤を使用して実施され得る。 適切な還元剤は、 例えば、 水素化ホウ素試薬、 ホウ素中心水素化物、 ボラン/ジポラン、 水素化アルミユウ ム試薬、 共有結合した炭素または水素と置換するアルコキシ基を有する他のアル ミニゥム中心水素化物を包含する。 触媒的水素化はまた、 水素ガスおよび種々の 金属おょぴラネーニッケル (ニッケル—アルミニウム合金) のような、 調製され
た金属合金を使用して行われ得る。 さらに、 金属還元物の溶解、 アルカリ金属
(リチウム、 ナトリウム、 またはカリウム) の使用、 および溶媒 (例えば、 アル コーノレ、 酢酸、 液体アンモニア、 または 1, 2—ジメトキシェタンなどのエーテ ル) 中の、 例えば、 亜鉛、 マグネシウム、 スズ、 鉄、 または水銀が一般に効果的 である。
還元反応は、 適切な溶媒 (例えば、 DM S O、 水) 中、 2 0〜9 0 °Cで、 1〜 2 0時間行われる。 例えば、 DM S O中の 2 . 5 Mボランジメチルァミン錯体お よび 3 0 %酢酸の溶液中で 8 0 °Cで 1時間加熱することによって、 または 1 M水 素化ホウ素ナトリゥム水溶液中で室温で 1 6時間放置することによって実施され る。 これらの反応のいずれかに要する時間が、 温度が上昇または低下するに従つ てそれぞれ短縮または延長し得るということは、 当業者には明らかである。 還元 工程での生成物および収量は、 例えば、 プロトン NMRおよび質量分析などの分 析技術にょリモニターすることができる。
なお、 工程 (a ) と (b ) とは分離された工程として以外にも、 同時進行する' 工程としても行えることは当業者ならば周知のことである。
さらにまた、 必要であれば還元反応後にヒドラジノ誘導体の N—ァセチルイ匕を 行っても良い。 ヒドラジン誘導体の N—ァセチル化の効果としては、 電荷の消滅 および化学的安定化が期待される。
工程 (c ) において、 ヒドラジノ誘導体を、 グリコシド結合を分解可能な反応 により分解し、 ヒドラジノ単糖類誘導体を得る。 この際、 工程 ( a ) において使 用されるヒドラジン類中に含まれる R i— N間の結合も同時に分解される。 当業 者に公知の、 グリコシド結合を分解可能ないずれかの反応を使用することができ る (例えば、 ビアマン (Biermann, C. J. ) 著、 Advances in Carbohydrate Chemistry and Biochemistry, Vol. 46, 251-271を参照のこと) 。 R 1は、 R 1— N間の結合が、 選択された反応条件下で分解可能であるように、 当業者によって 適切に選択される。 1つの実施態様において、 R 1はァシル基である。 別の実施 態様において、 R 1は検出可能な標識としての蛍光色素または固定支持体をその 一部として有するァシル基である。 分解の工程は、 水、 アルコール、 またはカル ボン酸のような種々の溶媒中で、 酸性条件を使用することにより達成され得る。
適切な分解剤としては、 水中の塩酸またはトリフルォロ酢酸溶液、 無水メタノー ル中の塩酸、 および無水酢酸溶液中の硫酸が挙げられ、 一般に分解は、 5 0〜1 1 0 °Cで、 1〜 1 0時間行われる。 例えば、 分解は、 5 %塩酸一メタノール中で 9 0 °Cで 4時間加熱することによって、 または 4 M塩酸中で 1 0 0でで 4時間加 熱することによって実施される。
工程 (a ) 〜 (c ) を包含する方法によって得られるヒ ドラジノ単糖類誘導体 は、 式 ( I I ) :
R 3— NH— NH— R 2 ( I I )
で表される。 式中、 R 3は式中の Nに共有結合した 1ーデォキシアルド一ス部ま たはデォキシケトース部である。 R 3が 1—デォキシアルドース部である場合、 Nへの共有結合は C-1位を介して生じる。 R 3がデォキシケトース部である場合、 Nへの共有結合は糖骨格におけるデォキシ炭素を介して生じる (これはケトン基 に元々存在した炭素である) 。 全ての場合において、 R 2は水素または炭素数 1 ~ 8のアルキル基である。
式 (I I ) のヒドラジノ単糖類誘導体のうち、 R 3で示される 1—デォキシァ ノレドース部またはデォキシケトース部が有する水酸基の全てまたはその一部がメ チルイ匕された構造を有するヒドラジノ単糖類誘導体を、 特に、 「O—メチルイ匕ヒ ドラジノ単糖類誘導体 J と称する。
R 3で示される基を構成するアルドースおよびケトースは、 いずれの遊離の単 糖またはオリゴ糖の還元末端単糖でもよく、 例えば、 アルドースとしては、 炭素 数 6個のアルドへキソース (例えば、 D—グルコース、 L一グルコース、 D—ァ ロース、 D—ァノレトロース、 D—ガラタトース、 D—グロース、 D—イ ドース、 D—マンノース、 および D—タロース) 、 炭素数 5個のアルドペントース (例え ば、 D—ァラビノース、 D—リキソース、 D—リポース、 および D—キシロー ス) 、 炭素数 4個のアルド一ステトロース (例えば、 D—エリ トロースおよび D 一トレオース) 、 炭素数 3個のアルドーストリオース (例えば、 D—ダリセルァ ノレデヒド) が挙げられ、 ケトースとしては、 炭素数 6個のケトースへキソース
(例えば、 D—フノレクトース、 D—プシコース、 D—ソルボース、 および D—タ ガトース) が挙げられる。
上記の方法で得られたヒドラジノ単糖類誘導体を用いて、 以下のように、 還元 末端を有する糖類における還元末端単糖の同定および/または還元末端単糖の隣 接単糖類との結合位置決定が実施される。
工程 (d ) において、 ヒドラジノ単糖類誘導体を完全にァセチルイ匕する。 用語 「ァセチル化」 は、 1つまたはそれより多くのァセチノレ基を分子に共有結合させ ることをいい、 「完全にァセチル化された」 分子は、 全ての遊離のヒドロキシル 基および窒素原子がァセチル化された分子である。
当該分野で公知のいずれかの適切な O—ァセチル化反応を、 誘導体を完全にァ セチル化するのに使用することができる。 これらには、 限定するものではないが、 無水酢酸/ピリジン混合物、 無水酢酸、 塩化亜鉛、 酢酸ナトリウム、 または硫酸、 またはピリジン溶液中のァセチルクロリドとの反応が含まれる (例えば、 Horton D. IA、 「The Amino SugarsJ 、 3-211頁 (R. W. Jeanloz編、 Academic Press . 1969) (本明細書に出典明示で援用する) を参照のこと) 。
N—ァセチノレイヒは、 O—ァセチル化よりも容易に起こる。 従って、 デォキシ一 ヒドラジノアルジトールおよびデォキシ一 (N '—アルキルヒドラジノ) アルジ トールの完全なァセチル化は、 上記の 「0—ァセチル化」 についての条性下で起 こり、 これらの分子の窒素基上おょぴ全ての遊離ヒドロキシル基上にァセチル基 を生じる。
0—ァセチノレ化は、 例えば、 試料にピリジン:無水酢酸の 2 : 1混合液を添加 し、 これを 3 7 °Cにて 1 6時間保温することによって実施される。
一方、 O—ァセチル化は行なわず N _ァセチル化を選択的に行なう場合は、 例 えば、 弱アルカリ性緩衝液中で無水酢酸と混合することによって実施される。 弱 アルカリ性緩衝液としては、 飽和重炭酸ナトリゥムが好んで用いられる。 なお本 明細書において 「N—ァセチノレ化」 とは、 特に断りの無い限り上記、 窒素原子選 択的なァセチル化を意味する。
本発明の方法において、 工程 ( b ) で得られるヒドラジノ誘導体を工程 (c ) に付す前に、 ヒドラジノ誘導体の水酸基をメチルイ匕してもよい。 このメチル化に
よって、 工程 ( e ) において還元末端単糖の隣接単糖類との結合位置 (または 「置換位置」 ) を決定することができる。
糖類を構成している各単糖類間の結合位置を決定する 「メチル化分析」 は、 還 元末端単糖の隣接単糖類との結合位置を決定するために有用な方法である。 この 方法において、 まず還元糖の遊離水酸基を完全にメチル化し、 得られたメチル化 糖類を分解して、 隣接単糖類との結合位置の水酸基のみが遊離した部分メチルイ匕 単糖類を生じさせ、 これをァセチル化し、 ァセチルイ匕された位置を同定する。 メ チル化は当該分野で公知のいずれかの方法によって実施される。 例えば、 メチル 化は、 箱守法 [S. Hakomori, J. Biochem. (Tokyo) , Vol. 55, 205-208 (1964) ] 、 DM S O— N a OH法 [I. Ciucanu and F. Kerek, Carbohydrate Research,
Vol. 131, 209-217 (1984) ]、 あるいは DM S O— N a O H法の改良法である Anumula らの方法 [Anumula, K. R. and Taylor, P. B. , Anal.. Biochem. ,
Vol. 203, 101- 108 (1992) ] (本明細書に出典明示で援用する) を用いて実施する ことができる。
なお本発明の還元末端糖と隣接単糖の結合位置の決定方法において、 R xがァ シル基であり、 メチノレ化の手段として DM S O— N a O H法、 あるいは Anumula らの方法を用いた場合、 ヒドラジノ誘導体の糖に直接結合している窒素原子 (N) がメチル化の前にァセチル化されていなければ後の工程 ( e ) における完 全にァセチル化されたヒドラジノ単糖類誘導体の同定が出来ない。 この場合ァセ チノレ化は N_ァセチノレ化であっても完全ァセチル化であってもよい。 なぜならば、 完全ァセチル化によって導入された O—ァセチル基はメチルイ匕に用いられる強塩 基条件下では速やかに脱離し、 代りにメチル基が導入されるからである。 なお該 条件において N—ァセチル基は残存する。
ヒドラジノ誘導体の N—ァセチル化は、 当業者によれば容易に実行可能で、 た とえばヒドラジノオリゴ糖誘導体を WO 9 6 / 1 7 8 2 4号 (特表平 1 1— 5 0 1 9 0 1 ) に記載の方法で行うことができる。 あるいは、 ヒドラジノオリゴ糖誘 導体を当業者に周知の方法、 たとえばピリジン'無水酢酸の 2対 1の混液中で 3 7 °Cでー晚放置する事により完全ァセチル化してもよい。
一方、 ヒドラジノ誘導体の、 糖由来の炭素原子に直接結合している窒素原子
(N) をァセチル化することに全く予期しない別の効果を見出した。 すなわち、 ヒ ドラジノ誘導体の、 糖由来の炭素原子に直接結合している窒素原子 (N) をァ セチル化することで、 ヒドラジノ誘導体の化学的安定性が増強されたのである。 糖ヒドラジノ誘導体は酸溶液中で不安定なのに対して、 ヒドラジノ誘導体の N— ァセチル化物は極めて安定であるという現象が観察された。 さらには、 ヒ ドラジ ノ誘導体の N—ァセチル化物は窒素原子のプロトン化による荷電がないため、 精 製や分析のためのクロマトグラフィーにおいて担体との相互作用がなく、 N—ァ セチルイ匕していないヒドラジノ誘導体に比べてシャープなピークやバンドがえら れるという利点も付加された。
工程 (e ) において、 上記で得られた完全にァセチル化されたヒドラジノ単糖 類誘導体を同定することによって、 還元末端を有する糖類における還元末端単糖 を同定することができる。 さらに上記のように、 ヒドラジノ誘導体の水酸基をメ チルイ匕すると、 還元末端単糖の隣接単糖類との結合位置を決定することができる。 本発明の誘導体は、 分析前に精製してもよく、 または例えば、 ガスクロマトグ ラフィ 1 ~_質量分析 (G C/M S ) および液体ク口マトグラフィ ~_質量分析
( L C/M S ) などにおけるように、 クロマトグラフィーが分析装置に連結され た系 (オンライン質量スペク トル分析と総称される) を使用する場合は、 必ずし も精製しなくてもよい。 完全にァセチル化されたヒドラジノ単糖類誘導体の精製 は、 ァセチノレ化の前に実施してもよくまたはァセチルイ匕の後に実施してもよい。 誘導体は、 好ましくはクロマトグラフィー、 より好ましくは、 高速液体ク口マト グラフィーを使用して精製される。
完全にァセチル化されたヒドラジノ単糖類誘導体は、 単糖類の構造の決定に使 用され得る。 構造決定の方法は、 好ましくは、 クロマトグラフィーによる分離お よび質量分析からなり、 より好ましくは、 その分離は、 ガスクロマトグラフィー による (G C/M S ) 。
誘導体の検出は、 当業者に公知のいずれかの適切な技術により行われ得る。 好 ましくは、 検出は、 代表的には 2 0 0 n mにおける紫外吸収、 または質量分析
(M S ) を使用して行われる。 G C/M Sおよび L CZM Sのようなオンライン 質量スペク トル分析を使用する (すなわち、 クロマトグラフィーによって分離さ
れた化合物が分析のために質量分析計に直接導入される) 誘導体の検出が特に好 ましい。
質量分析において、 真空中で気体状の試料が電子衝撃化 (E I ) または化学ィ オン化 (C I ) のような方法によってイオン化され、 その結果生じたイオンを検 出する。 オンライン質量スペク トル分析の場合は、 クロマトグラフィーによって 分離された分子を、 電子衝撃化または化学イオン化によりイオン化させる。 分析 に必要とされる試料の量は通常 1 p m o 1未満である。 基礎的な装置の総説につ いては Cooks, R. G., Glish, G.し, McLucky, S. A.およひ aiser, R. E. , Chemical and Engineering News, 1991年 3月 25日, 26- 41頁 (本明細書に出典明示で援用す る) を参照のこと。
なお本発明における糖の結合位置の決定方法は、 先行技術の項で述べた一般的 なメチル化分析とは異なり、 メチル化分析を還元末端単糖についてのみ行うこと を目的としている。 還元末端単糖の種類の同定は、 オリゴ糖をヒドラジノ誘導体 化し、 得られたヒドラジノオリゴ糖誘導体をグリコシド結合を分解可能な反応に より分解し、 ヒドラジノ単糖誘導体を得たのち完全ァセチル化し、 G CZM Sに よって行うことができる (Bendiak, B. and Fang, T. T., Carbohydr. Res. 327, 463-481 (2000) ) 。 還元末端単糖の隣接単糖類との結合位置の決定は一般的なメ チル化分析とほぼ同様の手順で行うことができる。 すなわち、 オリゴ糖をヒドラ ジノ誘導体化し、 得られたヒドラジノオリゴ糖誘導体を完全メチル化し、 '完全メ チル化ヒドラジノォリゴ糖誘導体をグリコシド結合を: ^旱可能な反応により分解 し、 部分メチルイヒヒドラジノ単糖誘導体を得たのち完全ァセチルイ匕し、 部分メチ ル化 Zァセチル化ヒドラジノ単糖誘導体(partially methylated 1- deoxy - 1 - hydrazino alditol acetates あるい f;partially methylated 2 - deoxy 2 - hydrazino alditol acetates, PM腿)を G CZM Sによって分析する。 このとき、 還元末端糖以外の糖も部分メチル化/ァセチル化糖として検出されるが、 部分メ チルイ匕/ァセチル化ヒドラジノ単糖誘導体とは G Cの保持時間やマススぺク トル によって区 Jされうる。 特にマススぺクトルによる区別は有効で、 たとえば、 ィ ソブタンをもちいた化学イオン化法による正イオンマススぺクトルを測定すれば、 PMHMの分子ィオンマスを検出することができる。 還元末端分析で還元末端単糖
の種類が同定できていれば、 期待される PMHMの可能な分子イオンマスは多くて も 6通りに絞られるため、 それらのマスによってクロマトグラムを走查すれば容 易に PMHMのピークが同定できる。
さらに検出された分子イオンの M S ZM Sスぺク トルを測定すれば、 その開裂 パターンから PMHAAのァセチル基の位置が同定できる。
PMHMの M S /M Sによる開裂パターンは、 基本的には従来より詳細に検討さ れてきた PMMの質量分析における開裂パターンとその法則性を適用することが可 能である。 し力、し、 PMHMはいまだ取得されたという報告はなく質量分析におけ る PMHAA特有の開裂パターンとその法則性の仔細につレ、ては全く検討が行われて いない。
PMHMは、 N, N, _ジァセチル化ヒドラジノオリゴ糖類、 たとえば 1—デォ キシー 1一 (N, N ' —ジァセチルヒドラジノ) 一ラクチトールなどを原料に製 造することができる。 N, N ' —ジァセチル化ヒドラジノオリゴ糖類の製造方法 についてはすでに WO 9 6 Z 1 7 8 2 4号 (特表平 1 1— 5 0 1 9 0 1 ) に開示 されている方法を用いることができる。 N、 N ' —ジァセチル化ヒドラジノオリ ゴ糖類を完全メチル化し、 次にたとえばメタノリシスのようなグリコシド結合分 解反応によって部分メチルイ匕ヒドラジノ単糖を得る。 えられた部分メチル化ヒド ラジノ単糖を完全ァセチル化することにより PMHAAを得ることができる。 えられ た PMHMはそのまま使用することができるが、 さらに、 逆相高速液体クロマトグ ラフィーなどのクロマトグラフィーによって精製して用いてもよい。
また、 PMHAAの特長の一つとして、 揮発しにくいという性質がある。 この性質 により PMAAの場合のように、 窒素吹き付けによる穏和な溶媒溜去の必要が無く、 濃縮遠心機をもち 、た減圧乾固を行ってもサンプルの損失が全く見られない。 本発明はまた、 上記のような本発明の方法において使用されるヒドラジン類、 およびこのヒドラジン類を必須の構成成分として含むヒドラジノ単糖類誘導体の 製造用または糖類における還元末端単糖の同定および/もしくは還元末端単糖の 隣接単糖類との結合位置決定用キットに関する。 キットには各工程の反応におい て使用されるその他の試薬、 反応容器および使用説明書などがさらに含まれ得る。
実施例
以下に、 実施例を挙げて本宪明をさらに詳しく説明するが、 本発明は、 これら に限定されるものではない。
実施例 1
ヒドラジノグルコース誘導体の調製および解析
(a) ヒ ドラゾンの調製
3 60 μ gのグルコースをよく乾燥し、 そこへジメチルスルホキシド(DM S O)中の 4 μΜΙ—ピレン酪酸ヒドラジド (モレキュラープローブス (Molecular Probes) 社) の溶液 20 μ 1を添加し、 超音波処理によりグルコースを充分に溶 解した。 そこへ 2 μ 1の酢酸を添加してよく撹拌した後、 反応液を 90°Cにて 1 時間加熱した。
(b) ヒ ドラゾンの還元
( a ) で得られた反応液を遠心濃縮機にて乾固した後、 残渣に E>MSひ中に 2. 5 Mボラ ジメチルァミン錯体および 30 %酢酸を含む溶液 20 μ 1を添加し、 ' 超音波処理により残渣を充分に溶解した後、 8 0 °Cにて 1時間加熱した。 反応液 を遠心濃縮機にて乾固した後、 これを 50 %ァセトニトリルに再溶解し、 順相高 速液体クロマトグラフィーにて精製した。 ピレン化グルコースの存在を、 精製物 の分子量を 4重極 3連イオンスプレー質量分析装置、 AP I — 3 00 (パーキン —エルマ一.サイェクス (Perkin- Elmer Sciex) 社製) にて測定して、 正分子ィ オン (46 7. 0) を検出することにより確認した。
(c) ピレン化グルコースのメタノリシス
(b) で得られた精製ピレン化グルコース (l O nmo l ) をガラス試験管に 入れ、 乾固した。 試験管に 5%塩酸一メタノール (ナカライテスタ社) を 1 00 μ 1添加し、 封管後 9 0°Cにて 4時間加熱した。 試験管を開管し、 遠心濃縮機に て試料を乾固し分解産物を得た。
(d) GCZMS分析
(c) で得られたピレン化グルコースのメタノリシス後の残渣に、 13C6— D 一グルコース (アルドリッチ (Aldrich) 社) を出発材料として公知の方法 (特 表平 1 1 _ 5 0 1 9 0 1 ) (本明細書に出典明示で援用する) に従って調製した、
1—デォキシー 1一 (N, N' —ジァセチノレヒドラジノ) 一 13C6_D_グルシ トーノレ 1 0 nmo 1を内部標準物質として添加し、 再び乾固した。 得られた残渣 にピリジン:無水酢酸の 2 : 1混合液を 1 0 0 1添加し、 よく撹拌した後、 3 7 °Cにて 1 6時間保温した。 試料を遠心濃縮機にて乾固した後、 残渣にクロロホ ルムを 200 μ 1添加して溶解し、 そのうちの 1 μ 1を GC/MSにスプリット レス導入して分析した。 G CZMS分析の条件は以下に示すとおりである。
System: GCQ (Finnigan MAT)
Column: DB- 5 (5% diphenyl-95% dimethyl polysiloxane, 0.25 ram i. d. x 30 m, 0.25 micrometer film thickness) (J & W Scientific)
Carrier: Herium (40 cm/sec)
Ionization" EI
Injector temperature: 300°C
Column initial temperature: 90。C
Time program: 90°C for 2 min, 90°C- 24°C/min - 210°C, and 210°C - 4°C/tnin_ 300°C
Injection: 1 microliter (splitless injection)
トータルイオンマスク口マトグラムにおいて、 1 6. 04分および 2 1. 2 1 分に主ピークが観察された。 完全ァセチル化 1—デォキシ一 1— (N, N, 一ジ ァセチルヒドラジノ) _12C6_D—グルシトールの特異的イオン ( [M— 4 2] +) 、 mZz =44 8のシングノレマスクロマトグラムにおいては 1 6. 04 分にピークが観察され、 このピークは、 内部標準由来の完全ァセチルイヒ 1ーデォ キシ一 1— (N, N, ージァセチルヒ ドラジノ) 一13 C6_D—グルシトールの 特異的イオン ( [M—4 2] +) 、 mZz =4 54のシングルマスクロマトグラ ムのピークと一致した。 2 1. 2 1分のピークは主イオンとして m/z = 3 0 2 を有し、 これは 1ーピレン酪酸メチルエステルの分子イオンに一致した。
実施例 2
ヒドラジン固定支持体
(a) カーポヒドラジド固定ィ匕ノバシン TGレジンの調製
ノバシン TGブロモレジン (NovaSyn TG bromo Resin) (ノバピオケム (Nova
Biochem) 社) 360 m gを DM S O中の 0. 5Mカーボヒドラジド (アルドリ ツチ (Aldrich) 社) の溶液に懸濁し、 室温で 16時間振とうした。 レジンを充 分量の DMSO、 水、 エタノールで洗浄後、 15mg/m 1の酢酸セシウム Zジ メチルホルムアミド (DMF) 溶液で処理し、 その後充分量の DMF、 水、 エタ ノールで洗浄して、 カーボヒドラジド固定化ノバシン TGレジンを得た。 導入さ れたカーボヒドラジドの還元力をパーク 'ジョンソン法 (Park, J. T.および Johnson, M. J. , J. Biol. Chem. , 181, 149-151 (1949)) に従って測定したと ころ、 レジン lmgあたり 1. 1 nmo 1の 4ーメ トキシフエ-ルヒドラジン塩 酸塩に相当する還元力が示された。
(b) ヒドラジン固定化バイレックス 70レジンの調製
イオン型をプロトンフォームに変換したバイオレックス 70レジン (Bio- Rex 70 Resin) (バイオラッド (Bio— Rad) 社) 2001118を51111の1^, N—ジメ チルホルムアミド (DMF) に懸濁し、 そこに 0. 5 gの 1—ェチル一3— (3 —ジメチルァミノプロピル) カルポジイミ ド塩酸塩 (EDC) (ナカライテスタ 社) を添加し、 室温で 16時間振とうした。 レジンを 20 m 1の DM Fで洗浄し た後、 DMF中の 10%ヒドラジン (ナカライテスク) 溶液を 5 ml添カロし、 さ らに 5時間振とうした。 レジンを充分量の DMF、 水、 1M塩酸、 水、 メタノー ルで洗浄し、 ヒドラジン固定化バイレックス 70レジンを得た。 導入されたヒド ラジンの還元力をパーク 'ジョンソン法 (Park, J. T.および Johnson, M. J., J. Biol. Chem. , 181, 149-151 (1949)) に従って測定したところ、 レジン 1 m gあ たり 27. 6 nmo 1の 4—メトキシフエエルヒドラジン塩酸塩に相当する還元 力が示された。
(c) 糖のレジンへの結合
( b ) で得られたヒドラジン固定化バイレックス 70レジン各 10 m gに、 D MSO中に: L O O mMグルコースおよび 10 %酢酸を含む溶液を 100 μ 1添加 し、 90°Cにて 1時間加熱した。 レジンを 5 Om 1の DMSOで洗浄し、 次いで レジンに 1 m 1の 1 M水素化ホゥ素ナトリウム水溶液を添加し、 室温で 16時間 放置した。 レジンを充分量の水、 0. 1M塩酸、 水、 エタノールで順次洗浄し、 乾燥した。
(d) 糖結合レジンの酸加水分解
. (c) で得られた各乾燥糖結合レジンをガラス試験管に移し、 4M塩酸を 1 0 0 μ 1加えて封管し、 1 0 0°Cにて 4時間加熱した。 開管した後、 上清を回収し、 減圧乾固し、 加水分解産物を得た。
(e ) GC/MS分析
(d) で得られた加水分解後の各残渣にピリジン:無水酢酸の 2 : 1混合液 1 00 μ \を添加し、 よく撹拌した後、 室温にて 1 6時間放置した。 試料を遠心濃 縮機にて乾固した後、 残渣にァセトニトリルを 200 1添加して溶解し、 その うちの 1 μ 1を GC/MSにスプリットレス導入して 1分析した。 GC/MS分 析の条件は以下に示すとおりである。
System: GCQ (Finnigan MAT)
Column: DB-5 (5% diphenyl-95% dimethyl polysiloxane, 0.25 ram i. d. x 30 m, 0.25 micrometer film thickness) (J & W Scientific)
Carrier: Herium (40 cm/sec)
Ionization: EI
Injector temperature: 300°C
Column initial temperature: 90。し
Time program: 90°C for 2 min, 90。C- (24。C/min)_210°C, and 210°C- (4。C /min) -300°C
Injection: 1 microliter (splitless injection)
完全ァセチル化 1ーデォキシ一 1一 (N, N' —ジァセチルヒドラジノ) 一 D —グルシトールの特異的イオン ( [M—4 2] +) 、 m/z =448のシングル マスク口マトグラムにおいて 14. 5分にピークが観察され、 このピークのマス クロマトグラフは標準の完全ァセチル化 1ーデォキシ _ 1一 (N, N' —ジァセ チノレヒドラジノ) 一 D—グルシトールのマスクロマトグラムのピークと一致した。 実施例 3
メチル化分析
(a) ピレン化ラタトースの調製
5 0 nmo 1のラタトースをよく乾燥し、 そこへ DMSO中の 400 nmo 1
1—ピレン酪酸ヒドラジド (モレキュラープローブス (Molecular Probes) 社) の溶液 10 μ 1を添加し、 超音波処理によりラタトースを充分に溶解した。 そこ へ 1 μ 1の酢酸を加えてよく撹拌した後、 反応液を 90 °Cにて 1時間加熱した。 遠心濃縮機にて反応液を乾固した後、 残渣に DMSO中に 2. 5Mポランジメチ ルァミン錯体および 30 %酢酸を含む溶液 1 Ο μ 1を添加し、 超音波処理により 残渣を充分に溶解した後、 80°Cにて 1時間加熱した。 反応液を遠心濃縮機にて 乾固した後、 50 °/0ァセトニトリルに再溶解し、 順相高速液体ク口マトグラフィ 一にて精製した。 精製ピレン化ラクトースの分子量を 4重極 3連イオンスプレー 質量分析装置、 AP I _300にて測定したところ、 正分子イオン (6 29. 3) が観察された。
(b) ピレン化ラクトースのメタノリシス
(a) で得られた精製ピレン化ラタトース (20 nmo l ) をガラス試験管に いれ乾固した。 試験管に 5%塩酸一メタノール (ナカライテスク社) を 1 00 t 1くわえ、 封管後 90°Cにて 4時間加熱した。 試験管を開管し、 遠心濃縮機にて 試料を乾固し分解産物を得た。
(c) GCZMS分析
ピレン化ラクトースのメタノリシス後の残渣にピリジン:無水酢酸 (2対 1) の混合液を 1 00 μ 1加え、 よく撹拌後 37°Cにて 1 6時間加温した。 試料を遠 心濃縮機にて乾固したのち、 残渣にァセトェトリノレを 200 μ 1加えて溶解し、 そのうちの 1 1を GCZMSにスプリットレス導入し分析した。 GCZMS分 析の条件は以下に示すとおりである。
System: GCQ (Finnigan MAT)
Column: DB- 5 (5% diphenyl-95 dimethyl polysiloxane, 0.25 mm i. d. x 30 m, 0.25 micrometer film thickness) (J & W Scientific)
Carrier- Herium (40 cm/sec)
Ionization: CI (Isobutane)
Injector temperature: 300°C
Column initial temperature: 90。C
Time program: 90°C for 2 min, 90。C- 24°C/tnin- 210°C, and 210。C- 4°C/min-
300。C
Injection: 1 microliter (splitless injection)
トータルイオンマスク口マトグラムでは 8. 1分と 14. 6分、 20. 1分に 主ピークが観察された。 完全ァセチル化 1—デォキシー 1一 (N, N, 一ジァセ チルヒドラジノ) 一 D—グルシトールの正分子イオン ( [M+H] +) に相当す る m/ z = 491のシングルマスクロマトグラムでは 14. 6分にピークが観察 され、 リテンションタイム、 マススペク トル共に標準の完全ァセチルイヒ 1ーデォ キシ _1一 (N, N, 一ジァセチルヒドラジノ) 一 D—グルシトールのそれと一 致した。
(d) ピレン化ラタトースのメチノレイ匕
(a) で得られた精製ピレン化ラタ トース、 100 nmo 1をスクリューキヤ ップ付ガラス試験管にとり減圧乾固した。 残渣にピリジン:無水酢酸 (2対 1) の混合液を 200 1加え、 よく撹拌後室温にて 16時間放置した。 試料を遠心 濃縮機にて乾固したのち、 残渣にメタノールを 100 1加えて再乾固した。 こ の試料について An umu 1 aらの方法(Anutnula, K. R. および Taylor, P. B.,
Anal. Biochem. , 203, 101-108 (1992))を用いてピレン化ラタトースの完全メチ ル化処理を施し、 クロ口ホルムにて抽出後減圧乾固した。
(e) メチノレ化ピレン化ラタ トースのメタノリシス
(d) で得られたメチルイ匕ピレン化ラタ トース (50nmo 1相当) をガラス 試験管にいれ乾固した。 試験管に 5%塩酸一メタノール (ナカライテスタ社) を 1 00 μ 1添加し、 封管後 90°Cにて 4時間加温した。 試験管を開管し、 遠心濃 縮機にて試料を乾固し、 分解産物を得た。
(f) GCノ MS分析
( e ) で得られたメチノレ化ピレンィ匕ラタトースのメタノリシス後の残渣に、 ピ リジン:無水酢酸 ( 2対 1 ) の混合液を 100 μ 1カロえ、 よく撹拌後室温にて 1 6時間放置した。 試料を遠心濃縮機にて乾固したのち、 残渣にァセトエトリルを 200 μ 1加えて溶解し、 そのうちの 1 n 1を GCZMSにスプリットレス導入 し分析した。 GCZMS分析の条件は以下に示すとおりである。
System: GCQ (Finnigan MAT)
Column: DB - 5 (5% diphenyl-95 dimethyl polysiloxane, 0.25 mm i. d. x 30 m, 0.25 micrometer film thickness) (J & W Scientific)
Carrier: Herium (40 cm/sec)
Ionization: CI (Isobutane)
Injector temperature: 300°C
Column initial temperature: 90。C
Time program: 90°C for 2 min, 90°C_24°C/min- 210°C, and 210°C- 4°C/min - 300°C
Injection: 1 microliter (splitless injection)
1 1. 3分に観察された主ピークのマススペクトルをとると、 4— O—ァセチ ルー 1ーデォキシ一 2, 3, 5, 6—0—テトラメチルー 1一 (N, N' —ジァ セチルー N, メチルヒドラジノ) —D—グルシトールの正分子イオンピーク
( [M+H] +) に相当する mZz = 3 9 3が観察された。
実施例 4
部分メチル化/ァセチル化ヒドラジノ単糖誘導体 (partially methylated 1- deoxy-l-hydrazino alditol acetates, PMHAA)の調製
ラタトース (G a 1 /3 1 -4G 1 c) (ナカライテスク社) 、 マンノビオース (Ma η α 1 - 2Ma n) (デキストララボラトリーズ社) 、 マンノトリオース (M a η α 1 - 6 [Ma n a l - 3] Ma n) (デキストララポラトリーズ社) 、 N—ァセチルラクトサミン (G a 1 i3 1—4 G 1 c NAc) (生化学工業社) 各
1 0 μΐηο 1ずつを、 WO 9 6/1 7 8 24号 (特表平 1 1— 50 1 9 0 1) 記 載の方法で Ν, Ν, 一ジァセチル化ヒドラジノ誘導体ィ匕した。 各オリゴ糖の Ν, Ν, 一ジァセチノレ化ヒドラジノ誘導体のうち 1 //mo 1ずつを Anumulaらの方法 (既述) で完全メチルイ匕した。 得られた完全メチルイ匕オリゴ糖 N, N, ―ジァセ チル化ヒドラジノ誘導体をガラス試験管にいれ乾固した。 試験管に 5%塩酸ーメ タノール (ナカライテスタ社) を 500 μ 1カロえ、 封管後 9 0°Cにて 4時間加温 した。 試験管を開管し、 遠心濃縮機にて試料を乾固し分解産物を得た。 メタノリ シス後の残渣に、 ピリジン:無水酢酸 ( 2対 1 ) の混合液を 3 00 μ 1加え、 よ く撹拌後 3 7 °Cにて 2時間加温した。 試料を遠心濃縮機にて乾固したのち、 残渣
にァセトニトリル水溶液を 1 0 0 0 μ 1加えて溶解し、 各 ΡΜΗΑΑを回収した。
G C/M S分析
各 ΡΜΗΜァセトニトリノレ溶液 1 μ 1 (出発物質 l nmolに相当) を G C/M Sに スプリツトレス導入し分析した。 G C /M S分析の条件は以下に示すとおりであ る。
System: GCQ (Finnigan MAT)
Column: DB - 5 (5% diphenyl- 95% dimethyl polysiloxane, 0. 25 mm i. d. x 30 m, 0. 25 micrometer film thickness) (J & W Scientific)
Carrier: Herium (40 cm/ sec)
Ionization: CI (Isobutane)
Injector temperature: 300°C
Column initial temperature: 90°C
Time program: 90°C for 2 rain, 90°C- 24°C/min- 210°C, and 210°C-4°C/min- 300°C
Injection: 1 micro丄 iter (splitless injection)
各 PMHMサンプルとも G C/M S分析では複数のピークが観察されたが、 それ ぞれの化学ィォン化マススペクトルに見られる分子正ィオンによつて PMHMのピ ークを同定した。
この結果より、 ラタトースからは 4一 O—ァセチル _ 1ーデォキシ _ 2, 3, 5 , 6— O—テトラメチルー 1 _ (N, N ' —ジァセチル一N ' メチルヒドラジ ノ) 一 D—ク、、ノレシ卜ーノレ (4-0-acetyl-l-deoxy-2, 3, 5, 6— 0— tetrametyl— 1一 (N, N' -diacetyl-N'-metylhydrazino) -D-glucitol) 力 マンノビオースからは 2—
0—ァセチルー 1ーデォキシ一 3, 4 , 5 , 6—O—テトラメチルー 1一 (N, N, 一ジァセチノレー N, メチノレヒドラジノ) — D—マンニトール (2-0- acetyl - l-deoxy-3, 4, 5, 6_0_tetrametyl - 1 - (N, -diacetyl-N'-raetylhydrazino) -D- raannitol) 力 マンノトリオースからは 3, 6—0—ジァセチルー 1—デォキシ 一 2, 4, 5— O—トリメチル一 1一 (N, N ' —ジァセチルー N ' メチルヒド ラジノ) 一 D—マンニ卜一ノレ (3, 6-0-diacetyl-l-deoxy-2, 4, 5-0-trimetyl-
1一 (Ν, Ν' -diacetyl-N'-metylhydrazino) -D-mannitol) 力 S、 N—ァセチノレラク卜
サミンからは 4一 O—ァセチル _ 1, 2—ジデォキシ一 3, 5, 6— O—トリメ チルー 1一 (N, N' —ジァセチル _N, メチルヒドラジノ) 一D—グルシトー ノレ (4—0_acetyi—l,2—dideoxy—3, 5, 6-0-trimetyl-2- (N-raethylacetoamido) -1- (N, N' -diacetyl-N'-metylhydrazino) -D-glucitol) がそれぞれ得られたことを 確認した。
ラタトースから得た 4一 O—ァセチル _ 1—デォキシー 2, 3, 5, 6-O- テトラメチル一 1— (N, N' —ジァセチル一 N, メチルヒドラジノ) 一 D—グ ルシ卜一ノレ (4-0-acetyl-l-deoxy-2, 3, 5, 6-0-tetrametyl-l- (N, N, - diacetyl- Ν'- tnetylhydrazino)- D- glucitol) の GCZMS分析では 1 1. 4分の ピークの化学イオン化マススペクトルに正分子イオンピーク ( [M+H] +) 、 m/z = 39 3が検出された。 マンノビオースから得た 2— O—ァセチル _ 1一 デォキシ一 3, 4, 5, 6— O—テトラメチノレ _ 1— (N, N' ージァセチルー N' メチノレヒドラジノ) 一D—マンニトーノレ (2-0-acetyl-l-deoxy-3, 4, 5, 6— 0— tetrametyl— 1— (N, N' -diacetyl-N'-metylhydrazino; -D-mannitol) の G C /M S分析では 1 1. 1分のピークの化学イオン化マススペクトルに正分子イオンピ ーク ( [M+H] +) 、 m/z = 3 93が検出された。 マンノトリオースから得 た 3, 6—0—ジァセチル _ 1—デォキシ _ 2, 4, 5— 0—トリメチル一 1— (N, N, 一ジァセチルー N, メチルヒドラジノ) 一 D—マンニトール (3, 6- 0- iacetyl-l-deoxy-2, 4, 5 - 0_trimetyl - 1 - (N, N'一 diacetyl - N' - tnetylhydrazino) -D-mannitol) の G C /M S分析では 1 3. 1分のピークの化学 イオン化マススペクトルに正分子イオンピーク ( [M+H] +) 、 m/ z = 42 1が検出された。 N—ァセチルラクトサミンから得た 4— O—ァセチルー 1, 2 一ジデォキシ一 3, 5, 6— 0—トリメチル一 1— (N, N' —ジァセチノレー N' メチノレヒドラジノ) 一D—グノレシト一ノレ (4-0-acetyl-l, 2-dideoxy-3, 5, 6 - 0- trimetyト 2- (N-raethylacetoamido) -1- (N, N' -diacetyl-N'- metylhydrazino) -D-glucitol) の GCZMS分析では 14. 5分のピークの化学 イオン化マススペクトルに正分子イオンピーク ( [M+H] +) 、 m/ z =43 4が検出された。
実施例 5
紫外吸光標識ヒドラジド誘導体の調製とメチル化分析
5 μταο 1のグルコース (ナカライテスタ) 、 ソホロース (G 1 c j3 1— 2G 1 c、 シグマ社) 、 ラミナリビオース (G l c j3 1— 3 G l c、 生化学工業) 、 マルトース (G l c a l— 4G l c、 関東化学) 、 ィソマルトース (G 1 c α 1 一 6 G 1 c、 生化学工業) をそれぞれよく乾燥し、 そこへ 2 5 / m o 1のべンゾ ィノレヒドラジン(Benzoylhydrazine) (東京化成) を含むジメチノレスルホキシド (Dimethysulf oxide, DMS0)溶液を 2 5 μ 1力 [[え、 超音波処理により糖類を充分に 溶角早した。 そこへ 2. 5 μ 1の酢酸を加えてよく撹拌した後、 反応液を 90でに て 1時間加温した。 遠心濃縮機にて反応 を乾固した後、 残渣に 2. 5Μボラ ン ·ジメチルァミン錯体(Borane- dimethylamine complex)、 30 %酢酸を含む D
M S O溶液を 5 0 μ 1添加し、 超音波処理により残渣を充分に溶解した後、 3 7°Cにて 1 6時間加温した。 反応液を遠心濃縮機にて乾固した後、 ァセトニトリ ル添加と乾固を繰り返した。 残渣を 1 00 / 1の水で溶解し、 過剰の試薬を 3 0 0 μ 1の水飽和酢酸ェチ で 3回抽出し除去した。 WO 9 6/1 78 24号 (特 表平 1 1— 5 0 1 90 1) に記載の方法をもちいて Ν—ァセチノレ化をおこない、 ダウエックス(D0Wex) 50W-X8 (室町化学) にて脱塩後、 さらに HP LCにて精製 し N—ァセチル化べンゾィルヒドラジン糖誘導体類をえた。
なお、 HP LCの条件は下記の通りである。
Pump: LC6A (Shimadzu)
Column: Asahipak 應 2P-50 (4.6 ram i. d. x 250 ram) (Show Denko)
Solvent A: Acetonitrile/water, 95:5
Solvent B: Acetonitrile/water, 1:1
Flow rate: 1 m丄 /min
Temperature: 40°C
Gradient: 0-100% Solvent B in 30 rain
Detection: Absorbance at 270 nm
各 N—ァセチル化べンゾィルヒドラジン糖誘導体類のうち 1 μ m o 1ずつを Anumulaらの方法 (既述) で完全メチル化した。 得られた完全メチル化 N—ァセ チル化べンゾィルヒドラジン糖誘導体の 20分の 1量をガラス試験管にいれ乾固
した。 試験管に 0 . 5 M塩酸含有 8 0 %酢酸水溶液を 1 0 0 μ 1加え、 封管後 1 0 0 °Cにて 6時間加温した。 試験管を開管し、 遠心濃縮機にて試料を乾固し分解 産物を得た。 残渣にピリジン:無水酢酸 ( 2対 1 ) の混合液を 2 0 0 μ 1加え、 よく撹拌した後 3 7 °Cにて 1 6時間加温した。 試料を遠心濃縮機にて乾固したの ち、 残渣にァセトニトリル水溶液を 1 0 0 1加えて溶解し、 PMHAAを回収した。 G C /M S分析
PMHMァセトニトリル溶液 1 μ 1 (出発物質 1 n m o 1に相当) を G CZM S にスブリットレス導入し分析した。 G C /M S分析の条件は以下に示すとおりで ある。
System: GCQ (Finnigan MAT)
Column: DB-5 (5% diphenyl-95% dimethyl polysiloxane, 0. 25 mm i. d. x 30 ra,
0. 25 micrometer film thickness) (J & W Scientific)
Carrier: Herium (40 cm/sec)
Ionization: CI (Isobutane)
Injector temperature : 300°C
Column initial temperature: 90。C
Time program: 90°C for 2 min, 90°C- 24°C/min_210°C, and 210°C-12°C/rain- 300°C
Injection: 1 micro丄 iter (splitless injection)
いずれの PMHMのトータルマスク口マトグラムにおいても複数のピークが観察 された。 N—ァセチノレ化べンゾィルヒドラジングノレコース由来サンプルの期待さ れる PMHMの正分子イオン ( [M+ H] +) 、 mZ z = 3 9 3のシングルマスク 口マトグラムでは、 9 . 2分にシングルピークを与えた。 残り 4サンプルの期待 される PMHAAの正分子イオン ( [M+ H] +) 、 m/ z = 3 9 3のシングルマス クロマトグラムでは、 N—ァセチル化べンゾィルヒドラジンソホロース由来サン プルは、 9 . 4分に、 N—ァセチル化ベンゾィルヒドラジンラミナリビオース由 来サンプズレは、 9 . 5分に、 N—ァセチル化ベンゾィルヒドラジンマルトース由 来サンプルは、 9 . 6分に、 N—ァセチル化べンゾィルヒドラジンイソマルトー ス由来サンプノレは、 1 0 . 2分に、 それぞれシングルピークを与えた。
各サンプルの PMHMのピークのマススぺクトゾレは、 サンプルによって明らかに異 なっており、 これらのマススぺクトル、 すなわち PMHMの開裂パターンの違いに よつてァセチノレ基の位置が同定できることが明らかとなった。
実施例 6
標識ヒドラジノ誘導体の N—ァセチル化物の調製と安定性試験
5 0 μΐηο 1の N—ァセチルラクトサミン (生化学工業;以下、 LNと略す) をよく乾燥し、 そこへ 1 0 0 μιηο 1のベンゾイ^/ヒドラジン
(Benzoylhydrazine) (東京化成) を含む DMS O溶液を 1 0 ◦ μ 1加え、 超音波 処理により糖類を充分に溶解した。 そこへ 8 0 μ 1の DMSOと 20 μ 1の酢酸 を加えてよく撹拌した後、 反応液を 9 0 °Cにて 1時間加温した。 力 B熱下、 遠心濃 縮機にて反応液を乾固した後、 残渣に 2M水素化ホウ素ナトリウム (ナカラィテ スク) を含有する 2 5 %ァセトニトリル水溶液を 500 μ 1加えて良く攪拌し、 室温で一 Β免放置した。 反応液に純水を 500 μ 1カロえたのち、 溶液の; ρ Ηが 5付 近になるまで酢酸を滴下し反応液を中和した。 試験管に中和した溶液を 800 1とり、 さらに、 純水を 1 m 1加えて希釈し、 WO 9 6/1 7 8 24号 (特表平 1 1 - 5 0 1 9 0 1) に記載の方法をもちいて N—ァセチル化をおこない、 ダウ エックス(Dowex) 50W-X8 (室町化学) にて脱塩後、 さらに H P L Cにて精製し L Nのベンゾィルヒドラジン誘導体 (以下、 LNベンゾィルヒドラジン誘導体と略 す) の N—ァセチル化物をえた。 なお、 同時に N—ァセチルイ匕しない LNベンゾ ィルヒドラジン誘導体の調製を行った。 5 0 μmo lのLN (生化学工業) をよ く乾燥し、 そこへ 1 00 /zmo 1のべンゾィルヒドラジン (東京化成) を含む D MS O溶液を 1 00 μ 1くわえ、 超音波処理により糖類を充分に溶解した。 そこ へ 8 0 1の DMSOと 20 /ζ 1の酢酸を加えてよく撹拌した後、 反応液を 9 0°Cにて 1時間加温した。 加熱下、 遠心濃縮機にて反応液を乾固した後、 残渣に 2 M水素化ホウ素ナトリゥムを含有する 2 5 %ァセトニトリル水溶液を 5 00
1加えて良く攪拌し、 室温で一 B¾放置した。 反応液に純水を 5 00 μ 1加えたの ち、 溶液の ρΗが 5付近になるまで酢酸を滴下し反応液を中和した。 中和した反 応液のうち 200 /x lをとり、 遠心濃縮機で乾固した後、 H P L Cにて精製し、 LNベンゾィノレヒドラジン誘導体をえた。 HP LCの条件はいずれも下記の通り
である。
Pump: LC6A (Shimadzu)
Column: Asahipak NH2P-50 (4.6 ram i. d. x 250 mm) (Sho a Denko)
Solvent A: Acetonitrile/ water, 95:5
Solvent B: Acetonitrile/water, 1:1
Flow rate: 1 m丄 /rain
Temperature ·* 40。 C
Gradient: 0-100% Solvent B in 30 min
Detection: Absorbance at 270 nm
精製した LNベンゾィルヒドラジン誘導体およびその N—ァセチル化物各 25 n m o 1ずつを、 5 μ 1の 10 %酢酸含有 DM S O溶液、 5 μ 1の 30 %齚酸含 有 DM S O溶液、 5 μ 1の 50 %酢酸含有 DM S O溶液にそれぞれ溶解し、 3 •7°Cにて一 B免加温した。 溶液を乾固した後、 5 μ 1の純水で再溶解し、 そのうち の 0. 5 y lを HPTLC (メノレク) にスポットし、 80%ァセトニトリル水溶 液にて展開後、 オルシノール硫酸法にて中性糖を検出した。
薄層クロマトグラフィーの結果を図 1に示す。 なお図 1において、 レーン 1は 無処理の L Nベンゾィルヒドラジン誘導体を、 レーン 2は 10 %酢酸含有 D M S O溶液中で保温した LNベンゾィルヒドラジン誘導体を、 レーン 3は 30%酢酸 含有 DMSO溶液中で保温した LNベンゾィルヒドラジン誘導体を、 レーン 4は 50 %酢酸含有 DM S O溶液中で保温した L Nベンゾィルヒドラジン誘導体を、 レーン 5は無処理の LNベンゾィルヒドラジン誘導体の N—ァセチル化物を、 レ ーン 6は 10%酢酸含有 DMSO溶液中で保温した LNベンゾィルヒドラジン誘 導体の N—ァセチル化物を、 レーン 7は 30 %酢酸含有 DM S O溶液中で保温し た LNベンゾィルヒドラジン誘導体の N—ァセチル化物を、 レーン 8は 50%酢 酸含有 DMSO溶液中で保温した LNベンゾィルヒドラジン誘導体の N—ァセチ ノレ化物をそれぞれ展開したレーンである。
LNベンゾィルヒドラジン誘導体は酸条件下で T L C上で移動度の小さい物質 に変化したが、 LNベンゾィルヒ ドラジン誘導体の N—ァセチル化物には全く変 化はなく、 ベンゾィルヒドラジン誘導体の N—ァセチル化物の化学的安定性が示
された。 産業上の利用の可能性
本発明によれば、 単離された糖類でなくても、 その還元末端に位置する単糖類 の種類および置換位置を決定することのできる手段が提供される。