明細書 炎症性サイ トカインの産生抑制剤 技術分野
本発明は、 炎症性サイ ト力インの産生抑制剤、 インターロイキン 1 0の産生亢 進剤、 ポリ- ADP-リボース—ポリメラーゼの阻害剤、 あるいはアポト一シス阻害 剤に関する。
免疫機構や造血機構において、 これらの機構をまえる細胞の間の情報伝達を担' う液性因子をサイ トカインと呼んでいる。 炎症性サイ トカインとは、 サイ トカイ ンのうち、 特に炎症症状をもたらすことが明らかにされているものの総称である c たとえばインターロイキン (以下 ILと省略する) -12、 IL- 18、 イン夕一フエ口 ン (以下 IFNと省略する) -ァ、 腫瘍壊死因子 (以下 TNFと省略する) -ひなどは、 炎症症状と密接に関連する炎症性サイ トカインである。 IL- 12は主に単球ゃマク 口ファージで、 IL- 18は主にマクロファ一ジゃクヅパ一細胞で、 また IFN-ァは主 に T細胞や N K細胞で産生される炎症性のサイ トカインである。 この他にも IFN -ひ、 IFN- ?ヽ TNF-^ s IL-Ι α, IL- 1 ?、 IL- 5、 IL- 6、 あるいは IL- 10等が炎症 性サイ トカインとして知られている。 これらの炎症性サイ トカインの産生の抑制 は、 炎症症状のコントロールを達成するための重要な手段と考えられている。 たとえば、 ベンズアミ ドゃニコチン酸アミ ド等の化合物が持つ TNF-ひ産生抑 制作用を利用して炎症症状の治療が可能となることが報告されている (W097/325 82) 。 特にこれらの化合物のうちの一部のものには、 アポト一シス誘導活性が確 認された。 アポトーシス誘導活性によって、 アポトーシスの誘導を通じた炎症症 状の制御も可能とされている。 この報告は、 具体的には、 全身性エリテマトーデ
ス (以下 SLEと省略する) 、 リウマチ性関節炎、 喘息、 敗血症、 潰瘍性大腸炎、 乾癬、 あるいは虚血性障害等の疾患の治療にニコチン酸アミ ドを応用できるとし ている。 この他、 3, 4, 2-フエニルスルホンアミ ド化合物類 (W096/36595) や、 N- 置換ニコチンアミ ド類 (特開平 9- 291032) にも、 TNF-ひの産生抑制作用を持つ 物質が報告されている。 また、 ニコチン酸には、 ハムスターの肺繊維症モデルに おいて治療効果が観察されたことが報告されている (Q. Wang et al., J. Bioch em. Toxicology, 1990, Vol .5, No. l, pl3-22. , Niacin Attenuates Bleomycin- Induced Lung Fibrosis in the Hamster. ) 。 しかし、 急性炎症についての有効 性は未知である。
炎症性サイ トカインは、 Fas、 および Fas リガンド (以下、 Fas- Lと省略す る) の産生を刺激し、 その結果としてアポトーシスを誘導する。 実際に TNF-ひ はアポトーシス誘導因子に位置付けられている。 したがって、 炎症性サイ トカイ ンの産生抑制は、 アポト一シスの抑制につながる可能性もある。 このように、 炎 症サイ トカインの産生抑制は、 炎症症状やアポト一シスに関連する多くの疾患の 病態制御において、 有用と考えられている。
アポト一シスは、 カスパーゼの活性化によってもたらされる細胞死である。 発 生やホメォス夕シスの過程で認められるプログラム細胞死だけでなく、 多くの疾 患にアポト一シスの関与していることが知られている。 たとえば癌は、 異常をき たした細胞のアポトーシス誘導機構が破綻した結果として生じた状態であると説 明することができる。 逆にアポトーシスの病的な亢進は、 組織の萎縮をもたらす。 アポトーシスの起きる仕組みが明らかになるにつれて、 様々な疾患とアポトー シスの関連性が疑われるようになった。 そして、 アポトーシスの制御によって、 これらの疾患の治療や予防が可能となることが推測されている。 たとえば、,肝炎 症状や移植片対宿主病 (GVHD) では、 パ一フォリンや Fas- Lの病態への関与が示 唆されている。 すなわち、 Fasと Fas- Lとの結合の阻害が、 炎症状の軽減につ ながるという報告がある。 また GVHDモデル動物の生存率が、 抗 Fas- L抗体の投
与によって改善された (実験医学 vol .17, No.13, pp.1635-1641, 1999) 。
このように、 アポトーシスに関与する因子の働きを阻害し、 アポト一シスを制 御することができる化合物が提供されれば、 アポトーシスの関与が疑われる疾患 の新しい治療剤として有用である。 アポトーシスを誘導する様々な因子が単離さ れ、 その全容は少しづつ明らかにされつつあると言って良い。 たとえば細胞障害 性リンパ球は細胞外から標的細胞のアポト一シスを誘導する。 このとき作用する サイ ト力インが、 Fas- Lである。 これらの因子を効果的にブロックすることがで きれば、 アポト一シスの制御が実現する。 しかしながら、 アポトーシス関連因子 を作用点とする医薬品の候補化合物は多くは報告されていない。
一方、 肺や動脈硬ィ匕巣などにおける線維化に対して 5-メチル -卜フエニル- 2- (1H)-ピリ ドンが治療効果を示すことが知られている (特公平 5-52814) 。 以下 に示す構造から、 この化合物もニコチン酸関連化合物と言える。 5-メチル -卜フ ェニル -2- ( 1H)-ピリ ドンは、 一般名を 「ピルフエ二ドン」 (pirfenidone)と名付 けられた。 またその誘導体についても、 同様の作用が報告されている (特表平 8 -510251) 。 下記式で示される化合物であるピルフエ二ドンは、 古くは呼吸器や 皮膚における炎症症状の治療に有用な化合物として報告された (USP3974281、 US P4042699 USP4052509) 。 その後、 抗線維化作用に着目され、 肺線維症を適用と する医薬品として開発途上にある化合物である (Nicod, LP. Lancet, Vol.354, July 24, 1999, p268 - 269) 。
ピルフエ二ドン
ピルフエ二ドンによる抗線維化作用については、 これまでに以下のような知見 が得られている。
•線維化を亢進するサイトカインの作用を抑制 (Lurton JM et al ., Am J Respi r Crit Care Med. 153 :A403.1996)、
•シクロフォスフアミドにより誘導されるマウス肺の線維化を低減する作用や、 ブレオマイシンによるハムスターの肺変化を抑制 (Kehrer and Margolin ( 199
7) Toxicol. Lett. 90 125; Schelegle et al (.1997) Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 216 392)、 .
•コラーゲンの過剰産生を抑制 ( Iyer et al ( 1999) J. Pharmacol . Exp. Ther. 2
89 211)、
•腫瘍壊死因子ひ (TNF-ひ) の合成および放出を抑制 (特表平 11- 512699)、 このような作用を基に、 現在、 ピルフエ二ドンは肺線維症、 硬化性腹膜炎、 強 皮症、 子宮平滑筋腫の治療薬として開発が進められている。
TNF- αは、 アポトーシス誘導因子に位置付けられる。 また肝炎による肝組織障 害に果たす TNF-ひの役割が重要であることも示唆されている(Guidotti L.,et a 1. , Immunity, 4:25-36, 1996, Kondo T. , et al . , Nature Med. , 3 :409-413, 1997, S eino K. , et al . , Gastroenterology, 113: 1315-1322, 1997)0 更に本発明者らは、 ピルフエ二ドンに、 炎症性サイ ト力インの産生抑制や、 アポトーシスの阻害剤と しての用途を見出し特許出願した (特願 2000-38048) 。 しかし、 これらの報告 の他に炎症性サイトカインの産生抑制や、 アポトーシスの阻害剤として利用する ことができるニコチン酸関連化合物は報告されていない。 発明の開示
本発明は、 新規な炎症性サイトカイン産生抑制剤、 インターロイキン 10の産 生亢進剤、 ポリ - ADP-リボース—ポリメラ一ゼの阻害剤、 あるいはアポト一シス 阻害剤の提供を課題とする。
本発明者らは、 人為的に起こした炎症状態に対して、 ニコチン酸関連化合物を 投与し、 その影響を詳細に解析することにより、 ニコチン酸関連化合物の作用機
構をより詳細に解析することができると考えた。 人為的な炎症のモデルとしては、 細菌性のリポ多糖 (以下 LPSと省略する) によって誘導される、 マウス肝の急性 肝炎モデルを選択した。 このモデルは、 激しい肝炎症状が急激に表れることから、 急性肝炎のモデルとして有用である。
このような解析を通じ、 本発明者らは、 ニコチン酸関連化合物に、 LPS誘導肝 炎の治療効果や予防効果を確認した。 更に本発明者らは、 このような効果をもた らしているニコチン酸関連化合物の作用機構を探索し、 その抗炎症作用、 ポリ- A DP-リボース—ポリメラ一ゼの阻害作用、 抗炎症性サイ トカインの産生促進作用、 あるいは抗アポトーシス作用を見出し、 本発明を完成した。 更に本発明者らは、 これらの作用を見出したニコチン酸関連化合物がいずれも生体内に存在している 事実に着目した。 そしてその量を上昇させる活性を指標として抗炎症作用を評価 できることを明らかにし、 抗炎症剤として有用な化合物のスクリ一ニング方法を 確立した。
すなわち本発明は、 以下の炎症性サイ ト力イン産生抑制剤、 インターロイキン 10の産生亢進剤、 ポリ -ADP-リボース一ポリメラ一ゼの阻害剤、 あるいはアポト —シスの阻害剤、 並びにそれらの用途に関する。
〔1〕 ニコチン酸、 ニコチンアミ ド、 1-メチル -2-ピリ ドン- 5-カルボキサミ ド、 および卜メチル -2-ピリ ドンからなる群から選択されるいずれかの化合物、 また はその製薬上許容される塩を主成分として含有する、 ィン夕一ロイキン 12およ び/またはインターフェロンァの産生抑制剤。
〔2〕 卜メチル -2-ピリ ドン- 5-カルボキサミ ド、 またはその製薬上許容される塩 を主成分として含有する、 腫瘍壊死因子ひ産生抑制剤。
〔3〕 ニコチンアミ ドまたはその製薬上許容される塩、 およびトリブトファンま たはその製薬上許容される塩を主成分として含有する、 腫瘍壊死因子 α産生抑制 剤。
〔4〕 ニコチン酸、 ニコチンアミ ド、 1-メチル -2-ピリ ドン- 5-カルボキサミ ド、
1-メチル -2 -ピリ ドン、 およびトリブトファンからなる群から選択されるいずれ かの化合物、 またはその製薬上許容される塩を主成分として含有する、 インター ロイキン 1 0の産生亢進剤。
〔5〕 ニコチン酸、 ニコチンアミ ド、 1-メチル -2-ピリ ドン- 5-カルボキサミ ド、 および卜メチル -2-ピリ ドンからなる群から選択されるいずれかの化合物、 また はその製薬上許容される塩を主成分として含有する、 アポト一シスの阻害剤。
〔6〕 ニコチン酸、 ニコチンアミ ド、 卜メチル -2-ピリ ドン- 5-カルボキサミ ド、 または卜メチル- 2-ピリ ドンからなる群から選択されるいずれかの化合物、 また はその製薬上許容される塩を主成分として含有する、 肝炎の予防剤または治療剤
〔7〕 ニコチン酸、 ニコチンアミ ド、 卜メチル -2-ピリ ドン- 5-カルボキサミ ド、 および卜メチル -2-ピリ ドンからなる群から選択されるいずれかの化合物、 また はその製薬上許容される塩を主成分として含有する、 ポリ - ADP-リボースーポリ メラーゼの阻害剤。
〔 8〕 〔 7〕 に記載のポリ - ADP-リボースーポリメラーゼの阻害剤を主成分とし て含有する、 ネクロ一シスに起因する疾患の予防剤または治療剤。
〔9〕·疾患が急性肝炎である 〔8〕 に記載の予防剤または治療剤。
〔1 0〕 肝炎が劇症肝炎である 〔8〕 に記載の予防剤または治療剤。
〔1 1〕 次の工程を含む、 抗炎症剤として有用な化合物のスクリーニング方法。 a ) 被検動物に候補化合物を投与する工程
b ) 被検動物の組織、 および/または生体液中に含まれるニコチン酸、 ニコチン アミ ド、 1-メチル -2-ピリ ドン- 5-カルボキサミ ド、 および卜メチル -2-ピリ ドン からなる群から選択されるいずれかの化合物を測定する工程、 及び
c ) 対照と比較して b ) の測定値を高める候補化合物を選択する工程
〔1 2〕 〔1 1〕 に記載の方法によって得ることができる化合物を主成分として 含む、 抗炎症剤。
本発明において有効成分として利用される化合物はいずれも公知のニコチン酸
関連化合物である。 これらの化合物の構造を以下に示す c
卜メチル -2-ピリ ドン- 5-カルボキサミ ド メチル -2-ピリ ドン
〔1〕 ィン夕一ロイキン 12および/またはィン夕一フエロンァの産生抑制剤 本発明は、 ニコチン酸、 ニコチンアミ ド、 卜メチル -2-ピリ ドン- 5-カルボキサ ミ ド、 および卜メチル -2-ピリ ドンからなる群から選択されるいずれかの化合物、 またはその製薬上許容される塩を主成分として含有する、 インターロイキン 12 および/またはィンターフェロンァの産生抑制剤に関する。
本発明において、 「製薬上許容される塩」 という場合には、 その水和物も包含 される。 例えば、 アルカリ金属 (リチウム、 ナトリウム、 カリウム等) 、 アル力 リ土類金属 (マグネシウム、 カルシウム等)、 アンモニゥム、 有機塩基およびァ ミノ酸との塩、 または無機酸 (塩酸、 臭化水素酸、 リン酸、 硫酸等) 、 および有 機酸 (酢酸、 クェン酸、 マレイン酸、 フマル酸、 ベンゼンスルホン酸、 P-トルェ
ンスルホン酸等) との塩が挙げられる。 これらの塩は、 通常行われる方法によつ て形成させることができる。 水和物を形成する時は、 任意の数の水分子を配位し ていてもよい。
あるいは本発明は、 有効量の前記化合物を投与する工程を含む、 インターロイ キン 12および/またはィン夕一フエロン" の産生抑制方法に関する。 更に本発 明は、 前記化合物のィン夕一ロイキン 12および/またはィンターフェロンァの 産生抑制剤の製造における使用に関する。
哺乳動物が LPSの投与によって激しい急性炎症症状を生じることは周知である c 哺乳動物の腹腔に LPSを投与すると、 まず TNF-ひの産生が起きる。 TNF- は IL- 12や IL- 18の産生をもたらし、 更にこの 2つのサイ トカインが IFN-ァ産生を誘 導する。 IFN-ァは Fasと Fas-Lを誘導する結果、 肝臓で急激な肝細胞アポトーシ スが誘導され、 アポト一シスを伴った欝血性壊死により肝不全に陥る(Tsutsui, H. , et al. 1997. IL-18 Accounts for Both TNF -ひ - and Fas Ligand- mediated Hepatotoxic Pathways in Endotoxin- Induced Liver Injury in Mice. J. I腿 u nol. 159:3961. ) o このサイ ト力インの一連の流れは、 同じく急性炎症で上昇す ることが知られている IL- 1、 IL- 6、 IL- 8、 GM-CSFなどの上昇よりも重要である ことが報告されている(Ozman, L., et al . 1994. Interleukin 12 , interferon 7 , and tumor necrosis factor are the key cyto ines of the generated Sh arzman reaction. J. Exp. Med. 180: 907, Wysocka, Mリ et al. 1995. Int erleukin 12 is required for interferon r production and lethality in lip opolysaccharide-induced shock in mice. Eur. J. Immunol. 25 : 67 )0
先に述べたようにいくつかのニコチン酸関連化合物には既に TNF-ひの産生抑 制作用が報告されている。 また抗ナイァシン化合物の投与により、 TNF-ひの産生 が亢進することは、 後に述べる実施例 1や実施例 7にも示すとおりである。 これ は、 抗ナイァシン化合物によって内因性ナイァシンが競合的阻害を受け、 TNF -ひ の産生が亢進したためと説明することができる。 実際、 抗ナイァシン化合物が内
因性ナイァシンに対して競合的阻害を起こすことにより、 ナイァシン欠乏症と同 様の症状を示すことが古くから知られている。 本発明者らは特定のニコチン酸関 連化合物が TNF-ひのみならず、 IL- 12や IFN- yに対してもその産生抑制作用を 持つことを明らかにした。
さて、 ここで説明したサイ ト力インの一連の流れにおいては、 T - が最も上 流に位置することに注意しなければならない。 つまり、 ニコチン酸関連ィ匕合物の 炎症性サイ トカイン抑制作用は、 TNF-ひの産生抑制の結果として表れている可能 性がある。 しかし本発明者らの知見によれば、 ニコチン酸関連化合物による炎症 性サイ トカインの産生抑制作用は、 間接的なものではない。 例えば、 LPS投与に よる TNF-ひ産生のピークは LPS投与後 1.25時間であり、 3時間後には血中から 検出されなくなるにも関わらず、 ニコチン酸関連化合物は LPS投与マウスの致死 防御に関して、 血中 TNF-ひ産生が過ぎてしまつてから投与しても (例えば LPS 投与後 3時間後) 、 致死を防御できる。
また、 ニコチン酸関連化合物は、 LPS投与 3時間後に投与してもアポトーシス を抑制する (実施例 1 3 ) 。 このようにニコチン酸関連化合物は、 TNF -ひが放出 された後でも急性炎症性ショックを抑制できるという特徴を有している。 さらに、 ニコチン酸関連化合物は、 LPS投与後 3時間が経過した後でも、 ポリ- ADP-リボ シル化、 および NAD量の低下を抑制する (実施例 1 3 ) 。 ニコチン酸関連化合物 によるこれらの効果は、 抗 TNF-ひ抗体などによる防御が、 TNF-ひが大量に血中 に放出された後に自動的に進む反応を抑えることができないのとは対照的である。 以上のことから、 ニコチン酸関連化合物によるこれらの作用は、 単に TNF-ひの 作用を抑制する結果として表われているものではないことは明らかである。
本発明の炎症性サイ トカイン産生抑制剤により産生を抑制されるサイ トカイン は、 いずれも Tヘルパー 1タイプのサイ ト力インである。 したがって、 本発明の 炎症性サイ トカイン産生抑制剤は、 Tヘルパー 1タイプのサイ トカイン産生の亢 進が原因となっている疾患であって、 特に IL-12、 および IFN-ァの産生の亢進を
原因とするものに有効である。 Tヘルパー 1タイプのサイ ト力インとは、 炎症性 サイトカインのうち、 Tヘルパー 1タイプの免疫応答の誘導に関与するサイ トカ イン群の総称である。 Tヘルパー 1タイプのサイ ト力インには、 Tヘルパー 1細 胞の分化を誘導するサイ トカインおよび Tヘルパー 1細胞が産生するサイ トカイ ンが含まれる。 Tヘルパー 1細胞の分化を誘導するサイ ト力インとしては、 具体 的には、 IL- 12等が含まれる。 これらのサイ ト力インは、 Tヘルパー 1タイプの 免疫応答の誘導に関与している (Xu, B. et al. J. Exp. Med. , 188: 1485, 199 8、 および Takeda, K. et al. Immunity. , 8: 383-390, 1998) 。 また、 Tヘルパ —1細胞が産生するサイ ト力インとしては、 具体的には、 IFN-ァ等が含まれる
(臨床免疫, 第 30卷, 第 11号, pl471-1478, 1998) 。
Tヘルパー 1 /Tヘルパー 2バランスの不均衡は、 免疫病発症の一因になると 考えられている。 Tヘルパー 1型免疫に偏った場合には、 細胞性免疫が増強され 癌や感染症に対する免疫応答は高まる半面、 同時に自己傷害性も高まり免疫病発 症の原因の一つとなる。 したがって本発明による炎症性サイ トカインの産生抑制 剤は、 たとえば Tヘルパー 1タイプの免疫応答の過剰が原因で起こると言われて いるすべての疾患に対して有効性が期待できる。 一般に臓器特異的自己免疫疾患 は、 Tヘルパー 1タイプの免疫応答への偏りが原因とする考え方がある。 具体的 には、 糖尿病、 肝障害、 自己免疫性脊髄炎、 潰瘍性大腸炎、 移植片対宿主病 (GV HD) 、 関節炎、 甲状腺炎、 橋本病、 外分泌腺炎、 細胞内感染症 (リューシュマ二 ァ、 結核菌、 ライ菌) 、 遅延型過敏症、 強皮症、 あるいはベーチエツト病等を示 すことができる。 本発明の炎症性サイ トカイン産生抑制剤は、 これらの疾患の予 防や治療に利用することができる。
上記疾患の中でも以下に示すような疾患は、 その病因が単に TNF- αだけに起 因するものではないと考えられており、 TNF-ひ産生抑制剤の適応症としては考え にくい。 すなわち、 糖尿病、 肝障害、 自己免疫性脊髄炎、 移植片対宿主病 (GVH D) 、 関節炎、 甲状腺炎、 橋本病、 外分泌腺炎、 細胞内感染症 (リューシュマ二
ァ、 結核菌、 ライ菌) 、 遅延型過敏症、 あるいはベーチェット病等は、 本発明に よる炎症性サイ トカイン産生抑制剤に特有の新規適応疾患といえる。
また本発明は、 卜メチル -2-ピリ ドン- 5-カルボキサミ ドまたはその製薬上許容 される塩を主成分として含有する、 TNF-ひの産生抑制剤に関する。 あるいは本発 明は、 ニコチンアミ ドまたはその製薬上許容される塩とトリブトファンまたはそ の製薬上許容される塩を主成分として含有する、 TNF-ひの産生抑制剤に関する。 あるいは本発明は、 有効量の前記化合物を投与する工程を含む、 TNF-ひの産生 抑制方法に関する。 更に本発明は、 前記化合物の TNF- の産生抑制剤の製造に おける使用に関する。
ベンズアミド類とニコチンアミ ドのアポトーシス誘導活性と TNF-産生阻害作 用が公知である (W097/32582) 。 また N-置換ニコチンアミ ド投与によって、 ホ スホジエステラーゼ IVおよび TNF-ひ産生を阻害し、 TNF-ひが関係する慢性炎症 性疾患の治療に有効であることが報告されている (特開平 9-291032号公報) 。 あるいは、 in 7 iroではニコチンアミドが LPS刺激したヒト末梢血モノサイ ト における TNF- a産生を抑制し、 そして in 'TOでは LPSを投与したマウスにお ける TNF-ひの産生抑制を示した(I讓 nol. Lett.1997 59/1, 7-11)。 また、 ニコ チンアミ ドがス一パ一抗原である SEB投与マウスで防御効果を示すとされている。 この報告においては、 IL- 1ひ、 TNF-ひ、 IL- 2R、 IL- 2、 および IFN- yの産生抑制 が確かめられている(Toxicology, 1996, 107/1, 69-81)。 この他に、 IL-1 5刺激 マウス脾臓/?細胞の TNF-ひ産生抑制について、 ニコチンアミ ドの作用をステロ ィ ド、 FK506、 およびサイクロスポリンの作用を比較した報告がある(Life Sci . , 1996, 59/17, 1423-1429)。
しかし、 卜メチル -2-ピリ ドン- 5-カルボキサミ ドの TNF-ひ産生抑制作用につ いては報告が無い。 またニコチンアミ ドとトリブトファンの組み合わせによって、 TNF-ひの産生抑制が達成される事実も未知である。 先に述べたように、 TNF-ひは 炎症性サイ トカインによる情報伝達系において最も上流に位置する。 したがって、
その産生を抑制する化合物は炎症症状のコントロールにおいて重要である。 TNF- ひの産生抑制剤は、 炎症性サイ トカインの作用によってもたらされる前述のよう な疾患の治療に有用である。 なお本発明においては、 インターロイキン 1 2、 ィ ンターフェロンァ、 あるいは TNF-ひの産生抑制剤を、 単に炎症性サイ ト力イン 産生抑制剤と称する場合がある。
〔2〕 PMPの阻害剤
次に本発明は、 ニコチン酸、 ニコチンアミ ド、 卜メチル -2-ピリ ドン- 5-カルボ キサミ ド、 および 1-メチル -2-ピリ ドンからなる群から選択されるいずれかの化 合物、 またはその製薬上許容される塩を主成分として含有する、 ポリ- ADP-リボ ース一ポリメラーゼ (poly- ADP-ribose- polymerase、 以下 PMPと省略する) の 阻害剤に関する。
あるいは本発明は、 有効量の前記化合物を投与する工程を含む、 PARPの阻害 方法に関する。 更に本発明は、 前記化合物の PMPの阻害剤の製造における使用 に関する。
PARPは、 傷害を受けた DNA鎖近傍の蛋白 (ヒストン、 PARP自身など) をポリ- ADP-リボシル化する反応を触媒する酵素である。 この酵素活性は切断された DNA に依存し、 アポトーシス時にカスパーゼ 3の切断 (116KDから 85KDへ) を受け て活性化されるという性質を有する。 PMPの基質は、 NADとポリ- ADP-リボシル 化のための受容体側の蛋白である。 この酵素の役割としては、 ポリ -ADP-リボシ ル化によって大量の細胞内 NADを消費することも重要視されている。 すなわち、 細胞や組織の NADと ATPを急激に減少させることによって細胞や組織のアポトー シスゃネクロ一シスを促進すると考えられている(Ha, H. C. and Snyder, S. H. Proc . Natl . Acad. Sci . Vol . 96, No.24, 13978 - 13982, 1999)。
したがって、 PMPの酵素阻害によって、 関節炎、 I型糖尿病、 各種神経細胞 死に由来する疾患 (脳虚血 .再灌流、 アルツハイマー、 パーキンソン病など) 、 レトロウイルス感染等の治療効果を期待できる。 また本発明の PARP阻害剤は、
ネクロ一シスを伴う疾患の治療剤または予防剤として有用である。 中でも急激な アポトーシスが原因で起きるネクローシスに起因する疾患には、 特に有効である このような疾患としては、 急性肝炎を挙げることができる。
すなわち本発明は、 ニコチン酸、 ニコチンアミ ド、 卜メチル -2-ピリ ドン- 5-力 ルポキサミ ド、 または メチル -2-ピリ ドンからなる群から選択されるいずれか の化合物、 またはその製薬上許容される塩を主成分として含有する、 肝炎の予防 剤または治療剤に関する。 あるいは本発明は、 有効量の前記化合物を投与するェ 程を含む肝炎の治療方法または予防方法に関する。 また本発明は、 前記化合物の 肝炎の予防剤または治療剤の製造における使用に関する。 前記化合物は、 特に急 性肝炎や劇症肝炎の予防や治療に有用である。
〔3〕 アポトーシスの阻害剤
更に本発明は、 ニコチン酸、 ニコチンアミ ド、 卜メチル -2-ピリ ドン- 5-カルボ キサミ ド、 および 1-メチル -2-ピリ ドンからなる群から選択されるいずれかの化 合物、 またはその製薬上許容される塩を主成分として含有する、 アポト一シスの 阻害剤に関する。
あるいは本発明は、 有効量の前記化合物を投与する工程を含む、 アポトーシス の阻害方法に関する。 更に本発明は、 前記化合物のアポトーシスの阻害剤の製造 における使用に関する。
ニコチン酸関連化合物が、 実施例に示すように、 アポトーシス阻害作用を持つ ことは新規な知見である。 特に LPS腹膜投与によって人為的に引き起こされた急 性肝炎症状において、 LPS投与後のニコチン酸関連化合物投与が治療的効果を示 すことに注目すべきである。 公知の抗アポト一シス活性化合物の多くは、 アポト —シスを生じる前に予防的に投与しておかなければ十分なアポトーシス阻害効果 を期待できない。 すなわち、 予防剤としては有効であっても治療剤としての有効 性は期待できないものであった。 これに対して本発明によるアポトーシス阻害剤 は、 進行しつつあるアポトーシスを阻害することができる。 すなわち、 治療的な
効果を期待することができるのである。 アポト一シスに対してこのような作用機 構を持つニコチン酸関連化合物は、 たとえば、 急性肝炎で起こる肝臓の内出血性 壊死 (急激な病的アポトーシスを伴う) や、 移植後慢性拒絶などに対する予防剤 であるとともに、 治療剤として発症後の投与に適する。 したがって本発明のアポ トーシス阻害剤は、 進行しつつあるアポトーシスを治療することを目的として用 いる医薬に関する。
アポトーシスが関与するそれ以外の適応疾患としては、 例えば、 糸球体腎炎、 急性肺傷害、 間質性肺炎、 心肥大、 心筋症、 網膜剥離、 自己免疫疾患、 心筋梗塞 虚血、 糖尿病、 炎症性腸疾患、 慢性関節リウマチ、 変形性関節症、 全身性エリテ マト一デス、 乾せん、 AIDS、 汎血球減少症、 不応性貧血、 再生不良性貧血、 ウイ ルス性肝炎、 劇症肝炎、 肝硬変、 脳虚血、 脳梗塞、 シ ーダレン症候群、 唾液腺 炎、 激症型骨髄腫、 動脈硬化、 ペーチエツト病、 多発性硬化症、 緑内障、 白内障、 パーキンソン病、 アルツハイマー、 筋萎縮性側索硬化症、 放射線傷害、 敗血症な どが挙げられる。
ニコチン酸関連化合物が、 アポトーシス関連因子である、 IL-12、 IFN-ァ、 P P、 あるいは TNF-ひの産生阻害に有効であることは既に述べた。 これらのアポト —シス関連因子は、 いずれも以下に述べるような機構に基づいてアポトーシスに 密接に関連することから、 ニコチン酸関連化合物は、 アポトーシスの阻害剤とし て有用である。
1 ) IL-12/IFN-ァ産生抑制と抗アポトーシス
実施例において ώ F W LPS投与マウスの実験で示されている通り、 ニコチン 酸関連化合物による上記炎症性サイ トカインの産生抑制は Fas、 Fas- Lの産生を 抑えることに繋がると考えられる。 その結果として、 肝細胞のアポト一シスが効 果的に抑制される。
2 ) 抗 PARPと抗アポトーシス
—般にアポトーシスは、 炎症を伴わないきれいな細胞死と言われている。 ただ
し、 LPS腹腔投与による肝炎のような病的なアポト一シスの場合は、 肝組織には 急激なアポト一シスに伴って広汎にネクロ一シスを生じることが報告されている この現象は、 実施例における病理所見でも観察されている。 その原因のひとつと して考えられているのが、 組織における NADの急激な減少である。 アポトーシス を起こした細胞では PMPによる ADP-リボシル化反応が急速に進み NADを大量に 消費することは先に述べた。 したがって、 急激なアポトーシスは、 組織における NADの大量消費を伴う。 ネクロ一シスは、 NADの減少に伴って組織内の ATPが減 少し、 組織の代謝回転が不全状態に陥ることによってもたらされると説明するこ とができる(Ha, H. C. and Snyder, S. H. Proc . Natl . Acad. Sci . Vol .96, No. 24, 13978-13982, 1999 )。
ニコチン酸関連化合物は、 PMP活性の阻害を通じてネクロ一シスの原因とな る NADの消費を抑制すると考えられる。 したがって、 ニコチン酸関連化合物は、 PMP阻害作用を通じて、 急性肝炎で起こる肝臓の内出血性壊死 (急激な病的ァ ポト一シスを伴う) の抑制に薬効的に貢献するものといえる。 .
以上に述べたように、 ニコチン酸関連化合物のアポトーシス阻害作用の作用点 を明らかにしたところに、 本発明の大きな意義がある。 アポトーシスは、 物理的 な作用をはじめとするさまざまな機構によって開始する複雑なシステムである。 したがって、 同じアポトーシスによってもたらされる疾患であっても、 その原因 は多様であることは言うまでも無い。 そのため、 ある疾患に有効であるアポト一 シス阻害剤が、 他のアポトーシス原因疾患に対しても同様の効果を示すとは限ら ない。 アポトーシス阻害剤を有効に治療や予防に生かすには、 その作用点を明ら かにした上で、 アポト一シスの原因に作用点を持つアポトーシス阻害剤を選択す るのが合理的である。 このような理由により、 ニコチン酸関連化合物の阻害作用 がどのアポト一シス関連因子に作用しているのかを見出した本発明の有用性は明 らかである。
「アポトーシス阻害剤」 は、 以下に示す疾患を含有するアポトーシスを起因と
する疾患の治療または予防に有効である。 従って、 これらの疾患のための治療剤、 または予防剤として利用することができる。
劇症肝炎、 C型及び B型ウィルス性肝炎、 原発性胆汁性肝硬変、 続発性肝硬変 糸球体腎炎、 尿細管 ·間質性腎炎、 巣状糸球体硬化症、 腎硬化症、 腹膜硬化症、 ネフローゼ症候群、 糖尿病性腎症
急性肺傷害、 間質性肺炎、 放射線肺障害
急性および慢性の移植片対宿主病 ( GVHD )、 手術後癒着
拡張性心筋症、 PTCA後の再狭窄
潰瘍性大腸炎、 クローン病
後天性免疫不全症候群 (AIDS)
慢性関節リウマチ
全身性エリテマトーデス、 ベーチェット病、 シヱーグレン症候群、 皮膚筋炎、 サ ルコィドーシス、 重症筋無力症、 筋萎縮性側索硬化症、 筋ジスドロフィ一、 SLE パーキンソン病、 アルヅハイマー病、 多発性硬化症、 ハンチントン病
再生不良性貧血、 敗血症
熱症、 ケロイ ド ·肥厚性瘢痕、 乾癬
網膜剥離
特に、 本発明では、 標的因子を明らかにしたことによって、 次のような疾患を 新たに適応症として挙げることができる。 すなわち、 肝炎 (劇症、 慢性、 アルコ ール性、 C型及び B型ウィルス性肝炎も含む) 、 毒物性あるいは代謝性肝障害、 ベーチェット病、 再生不良性貧血、 AIDS、 汎血球減少症、 不応性貧血、 脳梗塞、 緑内障、 白内障、 唾液腺炎、 放射性障害、 紫外線傷害、 日光皮膚炎、 多形紅斑、 固定薬疹、 GVHD, TEN, 偏平疣贅、 単純ヘルぺス、 エリテマトーデス、 苔癬化組 織反応、 尿細管傷害、 呼吸器感染症、 糖尿病、 動脈硬化症、 脳虚血、 心筋梗塞、 拡張型および肥大型心筋症、 円形脱毛症、 あるいは薬剤性脱毛症は、 本発明にお いて明らかにされた抗アポト一シス剤の新たな適応症である。 中でも、 劇症肝炎
と続発性肝硬変については、 本発明のアポトーシス阻害剤の投与によって発症後 の治療が可能なことから、 公知の薬剤では期待できない高度な治療効果を達成す るものである。
更に本発明は、 ニコチン酸、 ニコチンアミ ド、 卜メチル -2-ピリ ドン- 5-カルボ キサミ ド、 卜メチル -2-ピリ ドン、 およびトリブトファンで構成される群から選 択されるいずれかの化合物、 またはその製薬上許容される塩を主成分として含有 する、 IL- 10の産生亢進剤に関する。 また本発明は、 有効量の前記化合物を投与 する工程を含む、 IL- 10の産生の促進方法に関する。 加えて本発明は、 前記化合 物の IL-10の産生亢進剤の製造における使用に関する。
本発明者らは、 ニコチン酸、 ニコチンアミ ド、 卜メチル -2-ピリ ドン- 5-カルボ キサミ ド、 トリブトファン、 メチル -2-ピリ ドンが、 LPS投与マウスの IL -; 10 産生を更に亢進させる作用を有することを明らかにした。 抗炎症性の薬剤が強い 抗炎症作用を発揮するためには、 炎症性サイ ト力インである TNF-ひの産生抑制 のみならず、 抗炎症性サイ トカインである IL-10の産生亢進作用を有することが、 極めて有効であることが論じられている。 すなわち前記ニコチン酸関連化合物は、 いずれも炎症性サイ トカインの産生作用や PARPの阻害作用に加え、 抗炎症性サ ィ トカインである IL- 10の産生促進作用をも併せ持った、 抗炎症性の薬剤として は理想的な化合物であると言って良い。 中でも、 卜メチル -2-ピリ ドンの IL - 10 産生亢進作用は強かった。 本発明による IL-10の産生亢進剤は、 たとえば以下に 示す疾患の治療、 または予防に有用である。
多発性硬化症 (TH1依存性自己免疫疾患) 、 強皮症、 インスリン依存型糖尿病、 炎症性腸疾患、 クローン病、 敗血症、 敗血症性ショック、 C型肝炎、 重症穿孔性 腹 S莫炎、 変形性関節炎、 慢性関節リウマチ
本発明の炎症性サイ ト力イン産生抑制剤、 PMPの阻害剤、 アポトーシスの阻 害剤、 あるいは IL- 1.0の産生亢進剤を、 上記の疾患の治療あるいは予防を目的と してヒトに投与する場合は、 散剤、 顆粒剤、 錠剤、 カプセル剤、 丸剤、 液剤等と
して経口的に、 または注射剤、 坐剤、 経皮吸収剤、 吸入剤等として非経口的に投 与することができる。 また、 軟膏剤およびクリーム製剤として外用に用いること ができる。 本化合物の有効量にその剤型に適した賦形剤、 結合剤、 湿潤剤、 崩壊 剤、 滑沢剤等の医薬用添加剤を必要に応じて混合し、 医薬製剤とすることができ る。 注射剤の場合には、 適当な担体と共に滅菌処理を行って製剤とする。 投与量 は疾患の状態、 投与ルート、 患者の年齢、 または体重によっても異なり、 最終的 には医師の判断に委ねられるが、 成人に経口で投与する場合、 通常 10〜40ι^/1 g/日を投与することができる。 これを 1回あるいは数回に分割して投与すれば よい。
さて、 本発明において炎症性サイ ト力インの産生抑制作用、 アポトーシスの阻 害作用、 あるいは IL-10の産生亢進作用を明らかにしたニコチン酸関連化合物は、 いずれも生体中に見出される化合物である。 ニコチン酸関連化合物の生合成系と して、 NADサイクルが知られている。 すなわち、 L-トリブトファンからキヌレニ ンを合成されたキノリン酸が、 ニコチン酸モノヌクレオチドに変換される。 更に ニコチン酸アデニンヌクレオチド、 NAD (ニコチンアミ ドアデニンジヌクレオチ ド) 、 ニコチンアミ ド、 ニコチン酸を経て、 ニコチン酸モノヌクレオチドに戻る のが NADサイクルである。 NADサイクルにおいては、 以下のような生成物が生じ る。 これらの化合物は、 いずれも尿中等に見出されるニコチン酸の代謝物質であ る。 ,
NAD: NADP (ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸) を生成
ニコチン酸: トリゴネリンを生成
ニコチンアミ ド : 1-メチルニコチンアミ ドゃ 1-メチル -2-ピリ ドン- 5-カルボキ サミ ドを生成
これらの化合物は、 生体内において、 急性炎症や慢性炎症に対する潜在的な治 療効果を持つ化合物と位置付けられる。 したがって、 生体中において、 これらの ニコチン酸関連化合物の生成を促進することができれば、 生体の炎症症状の治療
を実現できる。 このような考えかたに基づいて、 本発明者らは、 生体中において、 これらニコチン酸関連化合物の生成を誘導する作用を指標として、 抗炎症剤とし て有用な化合物を見出し得ることを明らかにした。 すなわち本発明は、 次の工程 を含む、 抗炎症剤として有用な化合物のスクリ一ニング方法に関する。
a ) 被検動物に候補化合物を投与する工程
b ) 被検動物の生体液中に含まれるニコチン酸、 ニコチンアミ ド、 1-メチル- 2 - ピリ ドン- 5-カルボキサミ ド、 および 1-メチル -2-ピリ ドンからなる群から選択 されるいずれかの化合物を測定する工程
以下に本発明に基づくスクリーニング方法について具体的に説明する。 まず本 発明のスクリーニングは、 ヒトと類似の代謝回路を持ち、 ニコチン酸関連化合物 の代 If過程において、 ニコチン酸、 ニコチンアミ ド、 1-メチル -2-ピリ ドン- 5-力 ルポキサミ ド、 あるいは 1-メチル -2-ピリ ドン等を生成する動物を被検動物とし て用いる。 たとえば、 マウスやラットなどが一般的な実験動物として挙げられる。 このほか、 ゥサギ、 ィヌ、 ブ夕、 ヒヅジ、 ャギ、 あるいはゥシなどを利用するこ ともできる。 これらの被検動物に候補化合物を与える。 候補化合物は、 その吸収 特性等に基づいて、 経口的に摂取させることもできるし、 非経口的に投与するこ ともできる。 非経口投与とは、 皮注射注や腹腔投与が含まれる。 通常は、 0.5% メチルセルロース水溶液を担体 (Vehicle)として候補化合物の懸濁液 (あるいは 水溶液) を作製し、 それを同用量ずつ動物に経口投与する。 候補化合物の投与量 は、 たとえば体重 l kgあたり、 一般的には 10〜: 1000mg、 通常 50〜500mgの範囲 で適宜設定することができる。 対照としては担体のみを投与する群を置く。
候補化合物を投与して飼育を継続した後、 目的とする組織を摘出し、 そのニコ チン酸関連化合物の含有量の変化を経時的に観察する。 あるいは候補化合物を継 続的に投与して、 その影響を観察することもできる。 目的とする組織とは、 候補 化合物による抗炎症作用を期待する組織を意味する。 具体的には、 肝臓、 肺、 お よび腎臓のような臓器の他、 血清や尿のような体液も、 前記ニコチン酸関連化合
物の測定対象として重要である。 個別の組織における変化をもたらす候補化合物 は、 各組織に特異的な抗炎症作用を持つ化合物として有用である。 一方体液中に おけるニコチン酸関連化合物の含有量の上昇をもたらす化合物には、 全身性の抗 炎症作用を期待できる。
候補化合物投与後のニコチン酸関連ィ匕合物の測定間隔は、 適宜設定することが できる。 たとえば、 急速な作用を期待する場合には、 投与直後から短い時間間隔 で測定を行う。 逆に、 長期的な作用を確認したい場合には、 長時間にわたって二 コチン酸関連化合物の値の変化を継続して観察する。
ニコチン酸関連化合物を測定すべき試料は、 冷凍保存することができる。 した がって、 経時的に採取した試料を凍結保存しておき、 採取を完了した後にニコチ ン酸関連ィ匕合物の測定を同時に行うことができる。
各種生体試料に含まれるニコチン酸関連化合物を測定する方法は公知である。 たとえば NAD含量は、 Nisselbaumの方、法 (Nisselbaum, JS., and S. Green. A s im le ultramicro method for determination of pyridine nucleotide in tiss ues. Anal . Biochem. 27, 212-217, 1969)で定量することができる。 また、 その 他のニコチン酸関連化合物についても、 測定方法は公知である(T.A. Tyler R.R. S hrago J. Liq. Chromatgr. , 3,269, 1980、 北田善三、 井上雅成、 玉瀨喜久雄、 芋田真子、 蓮池秋一、 佐々木美智子、 谷川薫、 栄養と食糧、 35, 121, 1982、 K. ral, Presenilis A. Anal. Chemリ 314, 479, 1983)。
薬剤非投与のコント口一ル群マゥスの各臓器のそれぞれの二コチン酸関連化合 物濃度に比較して、 有意にニコチン酸関連化合物の濃度上昇が認められた候補化 合物を、 抗炎症作用を持つ化合物として選択する。 選択した候補化合物は、 その 抗炎症作用のレベルや安全性などについて評価する。 たとえば抗炎症作用のレべ ルは、 実施例に示す LPS感作マウスの急性炎症モデルにおける抗炎症作用の比較 によつて評価することができる。
本発明のスクリーニングの候補化合物には、 たとえば次のような化合物群を用
いることができる。 中でも、 NADサイクルに由来する化合物や、 ニコチン酸関連 化合物を合成的手法によつて修飾した化合物には、 ニコチン酸関連化合物の測定 値を上昇させることができる化合物が多く含まれる。
細胞抽出液、
遺伝子ライブラリ一の発現産物、
合成低分子化合物、
合成ぺプチド、
天然化合物
本発明のスクリ一ニング方法によって、 少量の投与によって大量のニコチン酸 投与と同様の抗炎症作用を示す化合物が取得できる可能性がある。 このようなィ匕 合物を抗炎症^の薬剤として用いれば、 ニコチン酸関連化合物の大量投与に換え ることも可能である。 ニコチン酸関連化合物の中には、 大量投与に伴って場合に より顔面紅潮や、 搔痒感等の軽微な副作用が起きることがある。 本発明のスクリ —二ングによって得ることができる化合物を用いれば、 このような副作用を避け ることが可能となる。 図面の簡単な説明
図 1は、 インビボ LPS投与マウスの血中 TNF- 産生に対する各種ニコチン酸 関連化合物の抑制効果を示す図である。 スチュ一デントの t検定により有意差を 検定した。 pく 0. 05 *、 pく 0.01 **、 pく 0.005 ***。
図 2は、 LPS投与マウスの血中 TNF- 、 M r および IL- 12 産生に対する ニコチン酸の抑制効果を示す図である。
図 3は、 LPSショックマウスの血清 TNF- αレベルに対するニコチン酸およびそ の誘導体の効果を示す図である。
図 4は、 LPS接種マウスの血中 TNF-ひ産生に対する卜メチル -2-ピリ ドン- 5- カルボキサミ ドの抑制効果を示す図である。
図 5は、 LPS接種マウスの血中 IL- 12産生に対する 1-メチル -2 -ピリ ドン- 5 -力 ルポキサミ ドの抑制効果を示す図である。 1M2P5Cと記載したカラムが卜メチル- 2 -ピリ ドン- 5-カルボキサミ ドの結果を示している。
図 6は、 LPS接種マウスの血中 IFNァ産生に対する メチル -2-ピリ ドン- 5 -力 ルポキサミ ドの抑制効果を示す図である。 1M2P5Cと記載したカラムが 1-メチル- 2 -ピリ ドン- 5-カルボキサミ ドの結果を示している。
図 7は、 LPS接種マウスの血中 TNF-ひ産生に対する 3-ピリジンスルホン酸の 効果を示す図である。
図 8は、 LPSショックモデルマウスの生存に及ぼすニコチンアミ ドの効果を示 す図である。
図 9は、 LPSショックモデルマウスの生存に及ぼすニコチンアミ ド、 およびト リブトファンの効果を示す図である。
図 1 0は、 LPSショックモデルマウスの生存に及ぼすニコチンアミ ドの後処理 効果を示す図である。 NMと記載したプロヅトがニコチンアミ ドの結果を示して いる。
図 1 1は、 LPSショヅクモデルマウスの生存に及ぼす卜メチル -2-ピリ ドン - 5 - カルボキサミ ドの前処理の効果を示す図である。 1M2P5Cと記載したプロットが 1 -メチル -2-ピリ ドン- 5-カルボキサミ ドの結果を示している。
図 1 2は、 LPSショヅクモデルマウスの生存に及ぼす卜メチル -2-ピリ ドン- 5- カルボキサミ ドの治療効果を示す図である。 1M2P5Cと記載したプロッ卜が卜メ チル -2-ピリ ドン- 5-カルボキサミ ドの結果を示している。
図 1 3は、 LPSショックモデルマウスの肝臓におけるニコチンアミ ドまたは 1- メチル -2-ピリ ドン- 5-カルボキサミ ド投与の効果を調べた組織切片のへマトキシ リン ·ェォシン染色像を示す写真である。 A: LPS非接種の対照、 B: LPS接種 3 時間後に担体のみを投与したマウス、 C: LPS接種 3時間後にニコチンアミ ドを 投与、 D : LPS接種の 3時間後に メチル -2-ピリ ドン- 5-カルボキサミ ドを投与。
図 1 4は、 LPSショックモデルマウスの S干臓におけるニコチンアミ ドまたは メチル -2-ビリ ドン- 5-カルボキサミ ド投与の効果を調べた組織切片の ssDNA染色 像を示す写真である。 A〜!)は図 1 3と同様である。
図 1 5は、 LPSショックモデルマウスの DNAラダ一形成、 ポリ - ADP-リボシル 化、 および NAD量に対するニコチンアミ ドおよび メチル -2-ピリ ドン- 5-カル ボキサミ ドの投与効果を示す図及び写真である。 図中、 NAはニコチンアミ ドを、 MPCは卜メチル - 2-ピリ ドン- 5-カルボキサミ ドを示す。
図 1 6は、 LPS投与マウスの血清 IL- 10レベルに対するニコチン酸およびその 誘導体の効果を示す図である。 ニコチン酸、 ニコチンアミ ド、 卜メチル -2-ピリ ドン- 5-カルボキサミ ド、 トリブトファンの IL- 10産生亢進作用を示す。
図 1 7は、 LPS投与マウスの血清 IL- 10レベルに対するニコチン酸およびその 誘導体の効果を示す図である。 特にその作用が強かった卜メチル -2-ピリ ドンの 結果を示す。 発明を実施するための最良の形態
以下、 実施例および参考例により本発明を具体的に説明するが、 本発明はこれ らに限定されるものではない。
[実施例 1 ] ニコチン酸関連化合物の抗 産生作用
血中 TNF-ひ産生に対する各種ニコチン酸関連化合物の抑制効果を調べた。 マ ウス (C57BL/6、 8週齢雌) を用い、 LPS接種の 5分前に担体 (0.5% CMC) (陰 性対照) または図示した各化合物を経口投与した (300mg/kg, n=4) 。
LPS (dO/ g/ g) +D-gal (250mg/kg) を腹腔内投与し、 75分後にマウスを屠 殺し血清を回収した。 血清中の TNF-ひを ELISAによりアツセィした。 その結果、 ニコチン酸、 ニコチンアミ ド、 1-メチル -2-ピリ ドン、 および 卜メチル -2-ピリ ドン- 5-カルボキサミ ドは TNF-ひの産生を抑制することが判明した (図 1 ) 。 抗 ナイァシン活性化合物であるピリジン- 3-スルホン酸を経口投与したマウスでは、
LPS投与による TNF-ひ産生は亢進した。 これは擬似的なナイァシン欠乏動物モデ ルと位置付けることができる。
また、 ニコチンアミ ドとトリブトファンの両方を除いた RPMI1640 (日研) に 透析 FCS(Gibco BRL)を 10%添加した培地 (欠損培地) で THP- 1細胞を 2回洗浄し、 そのまま同培地で培養した。 10 g/mLの LPSを添加してから 3.5時間後の培養 上清中への TNF- 産生量を比較したところ、 以下のような結果となった。 TNF - ひ産生は、 欠損培地で培養したものの方が逆に有意に高い分泌を示すことがわか つた
通常培地 (LPS無し) 1 5 . 7 ± 1 . 2 pg/mL
通常培地 (LPS添加) 1 9 7 + 1 5 pg/mL
欠損培地 (LPS無し) 9 3 ± 2 . 9 pg/mL . 欠損培地 (LPS添加) 7 2 7 ± 3 1 pg/mL
これらのことから、 ニコチンアミ ドとトリブトファンには LPS刺激に反応して 細胞が過剰に TNF-ひを産生しないよう潜在的に抑制をかけているような働きが あるのではないかと推察される。
以上のことから、 ニコチン酸関連化合物は、 急性炎症におけるサイ ト力イン産 生を制御し、 抗炎症作用を発揮することが明らかとなった。 急性炎症におけるサ ィ トカイン産生応答を、 ニコチン酸関連化合物によって制御する機構が生体内に 存在することが示唆される。
[実施例 2 ] ニコチン酸の抗炎症作用
インビボ LPSショックマウスの血中 T F-ひ、 IFNァ、 および IL- 12産生に対す るニコチン酸の抑制効果を調べた。 マウス (C57BL/6、 8週齢雌) を用い、 LPS接 種の 5分前に担体 (PBS) (P貪性対照) またはニコチン酸を経口投与した。 LPS (50 g/kg) +D-gal (250mg/kg) を腹腔内投与し、 TNFに関しては 75分後、 IL -12および INFに関しては 5時間後にマウスを屠殺し、 血清を回収した。 血清中 の TNF、 IL- 12、 および IFNを ELISAによりアツセィした。 ELISAには、 以下の巿
販のキヅトを用いた。 その結果、 ニコチン酸はインビボマウスの LPSショックに おいて血清中に出現する一連の炎症性サイ ト力イン、 TNF-ひ、 IL- 12、 および IF Nァの産生を抑制することが判明した (図 2 ) 。
ELISAに用いたキット :
マウス TNF- EUSAキット ( D Systems Cat. No.MTAOO)
マウス IL-12 ELISAキヅト (Genzyme Cat. No. Part 80-4244-03)
マウス IFN-ァ ELISAキヅト (R&D Systems Cat. No.MIFOO)
[実施例 3 ] ニコチン酸およびその誘導体の抗 TNF- α産生作用
血中 TNF- 産生に対するニコチン酸およびその誘導体の抑制効果を調べた。 マウス (C57BL/6、 9週齢雌) を用い、 LPS接種の 5分前に担体 (0.5% CMC) (陰 性対照) または図示した各化合物を経口投与した (300mg/kg, n=4) 。 LPS (10〃 g/kg) +D-gal (250mg/kg) を腹腔内投与し、 75分後にマウスを屠殺し血清を回 収した。 血清中の TNF-ひを ELISAによりアツセィした。 ニコチン酸、 ニコチン アミ ド、 および卜メチル -2-ピリ ドンは、 TNF-ひの産生を抑制した (図 3 ) 。
[実施例 4 ] ニコチン酸尿中代謝物の TNF-ひ産生抑制作用
インビボ LPSショックマウスの血中 TNF-ひ産生に対する メチル -2-ピリ ドン - 5 -カルボキサミ ドの抑制効果を調べた。 マウス (C57BL/6、 9週齢雌) (n二 4) を用い、 LPS接種の 5分前に担体 (0.5% CMC) (P貪性対照) または メチル -2-ピ リ ドン- 5-カルボキサミ ドを経口投与した。 LPS (50 g/kg) +D-gal (250mg/k g) を腹腔内投与し、 75分後にマウスを屠殺し、 血清を回収した。 血清中の TNF - αを ELISA (R&D, Quantikine) によりァヅセィした。 その結果、 卜メチル -2 -ピ リ ドン- 5-カルボキサミ ドはインビボマウスの LPSショックにおいて血清中に出 現する ひの産生を抑制することが判明した (図 4 ) 。
[実施例 5 ] ニコチン酸尿中代謝物の IL- 12産生抑制作用
インビボ LPSショックマウスの血中 IL- 12産生に対する卜メチル -2-ビリ ドン -5 -カルボキサミ ドの抑制効果を調べた。 マウス (C57BL/6、 9週齢雌) (n=4)
を用い、 LPS接種の 5分前に担体 (0.5% CMC) (陰性対照) または卜メチル -2 -ピ リ ドン- 5-カルボキサミ ドを経口投与した。 LPS (50 /g/kg) +D - gal (250mg/k g) を腹腔内投与し、 5時間後にマウスを屠殺し、 血清を回収した。 血清中の IL - 12を ELISAによりァヅセィした。 その結果、 卜メチル -2-ピリ ドン- 5-カルボキ サミ ドはインビボマウスの LPSショックにおいて血清中に出現する IL- 12の産生 を抑制することが判明した (図 5 ) 。
[実施例 6 ] ニコチン酸尿中代謝物の IFNァ産生抑制作用
インビボ LPSショヅクマウスの血中 IFNァ産生に対する 1-メチル -2 -ピリ ドン - 5 -カルボキサミ ドの抑制効果を調べた。 マウス (C57BL/6、 9週齢雌) (n二 4) を 用い、 LPS接種の 5分前に担体 (0.5% CMC) (陰性対照) または 1-メチル -2-ピリ ドン- 5-カルボキサミ ドを経口投与した。 LPS (50 zg/kg) +D-gal (250mg/kg) を腹腔内投与し、 5時間後にマウスを屠殺し、 血清を回収した。 血清中の IFNァ を ELISAによりァヅセィした。 その結果、 メチル -2-ピリ ドン- 5-カルボキサミ ドはインビボマウスの LPSショックにおいて血清中に出現する IFN yの産生を抑 制することが判明した (図 6 ) 。
[実施例 7 ] 抗ナイァシン化合物の TNF-ひ産生亢進作用
インビボ LPSショックマウスの血中 TNF-ひ産生に対する抗ナイァシン化合物 の効果を調べた。 マウス (C57BL/6、 7週齢雌) (n=3) を用い、 LPS接種の 1. 5 時間前に担体 (0.5% CMC) (陰性対照) または 3-ピリジンスルホン酸を経口投与 した。 LPS (50〃g/kg) +D-gal (250mg/kg) を腹腔内投与し、 75分後にマウス を屠殺し血清を回収した。 血清中の ひを ELISAによりアツセィした。 その結 果、 3-ピリジンスルホン酸はインビボマウスの LPSショックにおいて血清中に出 現する TNF o:の産生を亢進した (図 7 ) 。
[実施例 8 ] LPSショックモデルマウスの生存に及ぼすニコチンアミ ドの効果
LPSショックモデルマウスの生存に及ぼすニコチンアミ ドの効果を調べた。 LP S投与の 5分前に、 担体またはニコチンアミ ド 500ing/kg (200^ 1 . o. ) をマウ
ス (C57BL/6、 12週齢雌) (n=5) に経口投与した。 LPS [(E. coli, 50 ig/kg) +D-gal(250mg/kg)] を腹腔内投与した。 その後、 経時的に生き残ったマウスを 計数した。 その結果、 ニコチンアミ ドは LPSショヅクを防御することが判明した (図 8) 。
[実施例 9] LPSショックモデルマウスの生存に及ぼすニコチンアミ ドおよび トリブトフアンの効果
LPSショックモデルマウスの生存に及ぼすニコチンアミ ド、 およびトリプトフ アンの効果を調べた。 LPS投与の 5分前に、 担体 (0.5% CMC) または各化合物 (ニコチンアミ ドは 500mg/kg、 トリプ卜ファンは lg/kg) (200〃1 p.o.) をマ ウス (C57BL/6, 12週齢雌) (n=5) に経口投与した。 LPS [(E. coli, 50 g/k g)+D-gal(250mg/kg)] を腹腔内投与した。 その後、 経時的に生き残ったマウス を計数した。 その結果、 ニコチンアミ ド、 およびトリブトファンは LPSショック を防御することが判明した (図 9) 。
[実施例 10] LPSショックモデルマウスの生存に及ぼすニコチンアミ ドの後 処理の効果
LPSショックモデルマウスの生存に及ぼすニコチンアミ ド (NM) の LPS接種 後投与の効果を調べた。 LPS [(E. coli, 50 g/kg)+D-gal(250mg/kg)] をマウ ス (C57BL/6、 ; U- 12週齢雌) (n=5) に腹腔内投与する 5分前または 3時間後に、 担体 (0.5% CMC) またはニコチンアミ ド 1000mg/kg (200 /1 p.o.) を経口投与 した。 その後、 経時的に生き残ったマウスを計数した。 その結果、 ニコチンアミ ドは LPS接種の 3時間後の投与においても LPSショックを防御することが判明し た (図 10) 。
[実施例 1 1] LPSショヅクモデルマウスの生存に及ぼす卜メチル -2-ピリ ド ン- 5-カルボキサミ ドの前処理の効果
インビボ LPSショックモデルマウスの生存に及ぼす メチル -2-ピリ ドン- 5- カルボキサミ ド (1M2P5C) の LPS接種前投与の効果を調べた。 LPS [(E. coli, 5
0 ig/kg)+D-gal(250mg/kg)] をマウス (C57BL/6、 11週齢雌) (n=5) に鹰腔内 投与する 5分前に、 担体 (0.5% CMC) または 1M2P5C 1000mg/kg (200 zl p.o.) を投与した。 その後、 経時的に生き残ったマウスを計数した。 その結果、 1M2P5C は LPS接種の前投与においても LPSショックを防御することが判明した (図 1
1) o
[実施例 1 2] LPSショックモデルマウスの生存に及ぼす卜メチル -2-ピリ ド ン- 5-カルボキサミ ドの治療効果
インビボ LPSショックモデルマウスの生存に及ぼす卜メチル -2-ピリ ドン - 5 - カルボキサミド (1M2P5C) の治療効果を調べた。 LPS [{E. coli, 50 zg/kg)+D- gal(250mg/kg)] をマ.ウス (C57BL/6, 11週齢雌) (n=5) に腹腔内投与し、 3時 間後に担体 (0.5°/D CMC) または 1M2P5C 1000mg/kg (200 /1 p.o.) を投与した。 その後、 経時的に生き残ったマウスを計数した。 その結果、 1M2P5C は LPS接種 後に投与しても、 LPSショックを防御する治療効果を示すことが判明した (図 1
2) o
[実施例 13〗 LPS投与マウスの肝臓の鬱血性壊死ならびにアポト一シスに対 するニコチン酸関連化合物投与の効果
マウスに LPSを投与しておこる肝臓の鬱血性壊死に対するニコチン酸関連化合 物の効果を病理組織学的ならびに生化学的に検討を行った。 マウス(C57BL/6 約 10週齢雌)を用い、 健常マウス(対照)(ビ一クル (0.5%CMC)投与)および LPS投与 マウス、 E. coli ζ0μg/ g + D-galactosamine 250 mg/kg、 i.p. (volume 200〃 1))で、 薬剤投与群は、 ニコチン酸関連化合物としてニコチンアミ ドと メチル -2 -ピリ ドン- 5-カルボキサミ ドを選び、 それぞれニコチンアミ ド lg/kg、 1-メチ ル- 2-ピリ ドン- 5-カルボキサミ ド lg/kgを LPS接種から 3時間後に経口投与し、
LPS接種から約 5.5時間後に屠殺後解剖して肝臓を採取し一部は ioy。ホルマリン 緩衝液で固定し (病理組織学的検討用)一部はすぐにドライアイスで凍結後- 80°C で冷凍保存 (生化学的検討用)した。 病理組織学的検討では肝を切り出した (外側
左葉)後、 組織切片を作製後、 へマトキシリン 'ェォジン (H. E. )染色と ssDNA法 による染色を行った。 ssDNA法では抗 Single Stranded DNA(ssDNA) ·ゥサギポリ クロ一ナル抗体 (DAK0社製品コード A4506)を 1次抗体として使用し、 検出は DAK 0社 LSAB2キヅ卜/ HRP -ユニバーサル(カタログ NO.K0677)を使用した。 1次抗体 使用のプロトコールは以下の文献と同様に行なった。
Narese I, et al. , Antibody against single-stranded DNA detects both pr ogranuned cell death and drug- induced apoptosis. Histochemistry 101 : 73-7 8, 1994.
oba ashi S, et al . , Detection of DNA fragmentation in human breast ca ncer tissue by an antibody specific to single stranded DNA. Breast Cance r 5:47-52, 1998.
検出は添付のプロトコールに従って行った。
所見は表 1に一括した。 健常マウスでは表の項目については全く異常は認めら れなかった。 一方 Vehicle (担体) 投与群では高度の鬱血 (一部に出血)、 好酸体 (単細胞性の壊死)、 核の濃縮と崩壊、 空胞、 肝細胞内に大小の硝子滴を多少認め た。 なお、 ssDNA染色では散在性に褐色に染まるかなりの数の肝細胞を認めた。 ニコチンアミ ド投与群 (表中の M) では、 好酸体と硝子滴がほんの数箇所で見 られ、 一部に微小空胞と粗鬆化も見られるが、 全体として殆ど 「正常」 (対照) と変わらない。 ssDNA染色では陽性細胞が極少数観察されたが、 Vehicle群に比 ベると著しく抑制されていた。 卜メチル -2-ピリ ドン- 5-カルボキサミ ド投与群 (表中の MPC) はニコチンアミ ド群と比べて核の所見や硝子滴がやや多く認めら れ、 ssDNA陽性細胞も少数認められるが、 この群も Vehicle群と比較するとアポ ト一シスが顕著に抑制されている。 以上の顕微鏡の写真を図 1 3 (へマトキシリ ン■ェォジン(H.E. )染色) および図 1 4 (ssDNA法による染色) に示した。
表 1
[マウス C57BL/6]
披検據器 肝艨
染色方法 H.E. ssDNA
病理所見 a小菜像明瞭 e核濃縮 h粗鬆化 kアポト—シス
b ¾g血 (出血) f 核崩壊 i硝子滴
c暗細胞 g空胞 j細胞浸潤
d好酸体 (単細胞壊死) 総合判定 b c d e f h 1 j k
正常マウス 士 ±
担体 +++一 ++ ++ ++ + ++ ++ ++++
NA 土 ― 十 + ± ± + + + +
PC ± + + + + + 土 + ++ 注) 1. [病変の程度] —:所見なし 士:極軽度 +:軽度 ++:中等度 +++:髙度
++++:極 i¾度 これらの肝臓組織の生化学的検討も行った。 検討した項目は肝臓の MAラダー 形成、 ポリ- ADP-リボシル化、 NAD含量の変化である。 DNAラダ一形成は、 各マウ スの月干臓からゲノム DNAを調製し、 ヮコ一の Apoptosis Ladder Detection Kit Wakoに従って検出した。 ポリ- ADP-リボシル化は Anti-poly(ADP- Ribose)polyclo nal antibody(rabMt, polyclonal )でウエスタンブロットにて検出した。 NAD量 は Nisselbaumの方法によって行った。 (Nisselbaum,J. S. , and S. Green. A sim l e ultramicro method for determination of pyridine nucleotides in tissues. Anal . Biochem. 27, 212-217(1969) )。 生化学的な検討の結果を図 1 5にまとめ
生化学的な検討によって、 DNAラダ一形成、 ポリ -ADP-リボシル化はニコチン アミ ド、 1-メチル -2-ピリ ドン- 5-カルボキサミ ドで顕著に抑制されており、 アポ ト一シスが抑制されていることが判った。 また、 アポトーシスに伴う NAD含量の 減少もこれら薬剤投与で抑制されていたが、 興味深いことにニコチンアミ ドでは NAD含量が上昇していた。 これは、 ニコチンアミ ドが NADの前駆体であり、 大量
の NAD投与によって肝臓で NADが大量に生合成されたからではないかと思われる ( 薬剤の投与が LPS接種 3時間後であることも考え合わせると、 以上の結果から、 ニコチンアミ ド、 卜メチル -2-ピリ ドン- 5-カルボキサミドなどニコチン酸関連化 合物には、 抗炎症作用に加えて抗アポト一シス作用があり、 これらの複合的作用 によって組織障害に対する防御作用を有すると推察される。
[実施例 1 4 ] IL-10産生に対する各種ニコチン酸関連化合物の亢進作用 血中 IL- 10産生に対する各種ニコチン酸関連化合物の亢進作用を調べた。 マウ ス (C57BL/6、 18週齢雌) を用い、 LPS接種の 5分前に担体 (0.5%CMC) (Ρί性 対照) または各種ニコチン酸関連ィヒ合物を経口投与した (300 mg/kg、 n = 3) 。
LPS (50 zg/kg) +D-gal (250 mg/kg) を腹腔投与し、 3時間後にマウスを屠 殺し血清を回収した。 血清中の IL- 10を ELISA (Genzyme) によりアツセィした。 その結果、 検討したすべての化合物 (ニコチン酸、 ニコチンアミ ド、 卜メチル- 2 -ピリ ドン- 5-カルボキサミ ド、 トリブトファン、 卜メチル -2-ピリ ドン) に LPS 投与マウスの IL- 10産生を更に亢進させる作用があることが明らかになった (図 1 6 ) 。 特に卜メチル -2-ピリ ドンの作用は強かった (図 1 7 ) 。 産業上の利用の可倉 I、生
本発明により、 ニコチン酸関連化合物が持つ、 IL- 12、 IFN-ァ、 あるいは TNF - ひといつたアポトーシスに関連する炎症性サイ トカインの産生阻害作用が明らか にされた。 また、 ニコチン酸関連化合物が持つ PARPの阻害作用も明らかとなつ た。 更に、 ニコチン酸関連化合物が、 抗炎症性サイ トカインである IL- 10の産生 亢進作用を有することが見出された。
これらのアポトーシス関連因子は、 いずれも相互に密接に関連しながらアポト 一シス実行カスケードにおいて重要な位置を占める因子である。 したがって、 こ れらの因子を阻害することによって、 アポトーシスを効果的に阻害することがで きる。 アポト一シスは、 疾患において様々な病態の原因となっていることが推定
されている。 たとえば、 劇症肝炎は肝細胞のアポトーシスが原因となっている。 したがって、 アポト一シス関連因子の阻害剤は、 これらの病態の治療に有用であ る。
アポト一シスは、 複雑な細胞制御機構の総合的な作用の結果として生じる現象 である。 一方、 疾患の原因となるアポト一シスを誘導する原因は多様である。 し たがって、 今後は、 何がアポトーシスの原因となっているのかを見極め、 原因に 直接作用する薬剤を選択することによって、 治療効果を高める努力が求められる 本発明のアポトーシス関連因子阻害剤は、 その標的因子が明らかであることから、 このような、 標的因子を見極めた上での効果的な治療を可能とする。
本発明のアポ卜一シス関連因子阻害剤は、 単にアポト一シスの阻害剤として有 用なだけでなく、 その作用機構を明らかにしたことにより、 新たな有用性が期待 される。 すなわち、 たとえば本発明における炎症性サイ ト力イン (IL- 12、 IFN- ァ、 および TNF -ひ) は、 アポト一シス関連因子であると同時に、 様々な炎症症 状においても重要な役割を果たしている。 したがって、 本発明の炎症性サイ ト力 イン産生抑制剤は、 これらのサイ トカインが関与する炎症症状の緩和に利用する こともできる。 また、 PMPは、 例えば NADを消費することによって組織の壊死 を誘導する作用があることから、 PMPの阻害剤はネクロ一シス阻害剤としての 用途が考えられる。 加えてニコチン酸関連化合物が、 抗炎症性のサイ トカインで ある IL-10の産生亢進作用を有することが見出された。 このことは、 ニコチン酸 関連化合物を用いて炎症症状をコントロールすることの意義を更に大きくする。 したがって、 これらの薬剤は、 抗炎症剤、 免疫異常治療剤、 Abdominal cavity i nflammation (腹膜炎等) 、 慢性関節リウマチ、 関節炎、 クローン病、 癌悪液質、 糖尿性網膜症、 乾せん、 虚血性疾患、 アルヅハイマーなどの予防および治療のた めの薬剤としても有用である。
以上のように、 本発明による炎症性サイ トカインの産生抑制剤、 抗炎症性サイ トカインの産生促進剤、 あるいはアポトーシス阻害剤は、 その標的因子が明らか
であるために、 アポトーシスが関連する疾患に対して、 より合理的で有効な治療 手段、 あるいは予防手段を提供する。